JP2013140648A - 磁気ディスク用ガラス基板の製造方法および磁気ディスク用ガラス基板 - Google Patents

磁気ディスク用ガラス基板の製造方法および磁気ディスク用ガラス基板 Download PDF

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Abstract

【課題】研削及び研磨における表面加工量を抑えつつ、ナノスクラッチの残存を抑制する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法および磁気ディスク用ガラス基板を提供する。
【解決手段】磁気ディスク用ガラス基板の製造方法では、成形直後におけるガラスブランクの板厚の10%より小さい表面加工量で表面加工することによって、磁気ディスク用ガラス基板を製造する。当該製造方法は、プレス金型を用いて熔融ガラスをプレス成形することにより、ガラスブランクを前記磁気ディスク用ガラス基板のガラス素板として作製する成形工程と、主表面が成形工程時の表面凹凸の状態にある前記ガラス素板の前記主表面の一方を支持固定して前記ガラス素板に貫通する穴を開けるコアリング工程と、前記穴が開けられた前記ガラス素板の端面の面取りを行う工程と、前記面取りを行った前記ガラス素板の主表面に対して、研削及び研磨の少なくとも一方の表面加工を行う工程と、を有する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスク用ガラス基板に関する。
今日、パーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、あるいはDVD(Digital Versatile Disc)記録装置等には、データ記録のためにハードディスク装置が内蔵されている。このハードディスク装置では、ガラス基板に磁性層が設けられた磁気ディスクが用いられ、磁気ディスクの面上を僅かに浮上させた磁気ヘッド(DFH(Dynamic Flying Height)ヘッド)で磁性層に磁気記録情報が記録され、あるいは読み取られる。この磁気ディスクの基板には、ガラス基板が他の金属基板等に比べて塑性変形をしにくい性質を持つことから、ガラス基板が好適に用いられる。
一方、ハードディスク装置における記憶容量の増大の要請を受けて、磁気ディスクには磁気記録の高密度化が図られている。例えば、磁性層における磁化方向を基板の面に対して垂直方向にする垂直磁気記録方式を用いて、磁気記録情報エリアの微細化が行われている。これにより、1枚のディスク基板における記憶容量を増大させることができる。しかも、記憶容量の一層の増大化のために、磁気ヘッドの磁気記録面からの浮上距離を極めて短くして磁気記録情報エリアを微細化することも行われている。このような磁気ディスクの基板においては、磁性層の磁化方向が基板面に対して略垂直方向に向くように、磁性層が平らに形成される。このために、ガラス基板の表面粗さは可能な限り小さく作製されている。
また、磁気ヘッドの浮上距離が短いことによりヘッドクラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害を引き起こし易い。これらの障害は磁気ディスクの主表面上の局部的な微小な凹凸の他に微細なパーティクル等の欠陥によっても発生するため、磁気ディスクの主表面の他に磁気ディスクの内周及び外周に沿った端面にある欠陥も可能な限り小さく作製されている。
このような磁気ディスクに用いるガラス基板の製造方法として、例えば、ガラス外周部の端面を規制することなく、ガラスを上型と下型との間でプレス成形処理した後、重心を中心として中央孔を形成する重心コアリング処理を行い、第1ラッピング処理、内周端面精密加工処理、内周端面研磨加工処理、第2ラッピング処理、ポリッシング処理および洗浄処理を行うハードディスク用ガラス基板の製造方法が知られている(特許文献1)。
特開2003−63831号公報
上記公知の製造方法では、磁気ディスク用ガラス基板として作製されたガラス基板の主表面には、ナノスクラッチが残存し、十分に主表面の傷を取りきれない場合がある。ナノスクラッチとは、幅1μm以下であり深さ数nm程度の極めて浅い溝状の傷であり、研削、研磨によって除去されなかった傷の残りである。
このナノスクラッチの残存は、磁気ディスクの低コスト化のために、磁気ディスク用ガラス基板も作製コストの低下の要請を受けて、研削、研磨における取り代である表面加工量(研削量+研磨量)を少なくするために生じた問題である。また、磁気ディスク用ガラス基板の主表面の表面粗さを従来に比べて小さくすることが求められているため、従来問題とならなかったナノスクラッチが問題となってきた。
そこで、本発明は、研削及び研磨における表面加工量を抑えつつ、上述したナノスクラッチの残存を抑制することができる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法および磁気ディスク用ガラス基板を提供することを目的とする。
本発明者らは、ナノスクラッチの発生の原因を鋭意検討した結果、円板状のガラス素板の中央部に貫通孔を形成するためのコアリング、ガラス素板の端面の面取りを行うとき、ガラス素板を支持固定する支持台等の治具との接触により、ガラス素板の主表面に大きな傷が発生し、この傷が研削、研磨によって十分に取りきれず、ナノスクラッチとして残存することを知見した。また、面取りされたガラス素板の端面の研磨を行う際に、スペーサを挟んで複数のガラス素板を積層して複数のガラス素板を纏めて研磨するが、このとき、スペーサとの接触による傷や積層体を作るときの当てキズ等が発生し、ナノスクラッチとして残存する原因にもなっていた。そこで、本発明者らは、下記発明を想到するに至った。
本発明の一態様は、成形直後におけるガラスブランクの板厚の10%より小さい表面加工量で表面加工することによって、磁気ディスク用ガラス基板を製造する方法である。当該製造方法は、
プレス金型を用いて熔融ガラスをプレス成形することにより、ガラスブランクを前記磁気ディスク用ガラス基板のガラス素板として作製する成形工程と、
主表面が成形工程時の表面凹凸の状態にある前記ガラス素板の前記主表面の一方を支持固定して前記ガラス素板に貫通する穴を開けるコアリング工程と、
前記穴が開けられた前記ガラス素板の端面の面取りを行う工程と、
前記面取りを行った前記ガラス素板の主表面に対して、研削及び研磨の少なくとも一方の表面加工を行う工程と、を有する。
また、前記ガラス素板の端面の面取りを行った後、前記表面加工を行う前に、面取りされた前記端面の研磨を行うことが好ましい。
また、本発明の他の一態様は、前記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により製造された磁気ディスク用ガラス基板の前記主表面に、少なくとも磁性層を成膜することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板である。
上述の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法および磁気ディスク用ガラス基板によれば、研削及び研磨における表面加工量を抑えつつ、従来問題となっていたナノスクラッチの残存を抑制することができる。
(a)〜(c)は、本発明の磁気ディスク用ガラス基板を用いて作製される磁気ディスクを説明する図である。 本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の一例のフローを示すフローチャートである。 本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の中のプレス成形の一例を説明する図である。 本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の中のコアリングの一例を説明する図である。 (a),(b)は、本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の中のラッピングの一例を説明する図である。
以下、本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法および磁気ディスク用ガラス基板について詳細に説明する。図1(a)〜(c)は、本実施形態で作製される磁気ディスク用ガラス基板を用いて作製される磁気ディスク1を説明する図である。
(磁気ディスクおよび磁気ディスク用ガラス基板)
図1(a)に示す、ハードディスク装置に用いる磁気ディスク1は、円環状の磁気ディスク用ガラス基板(以降、ガラス基板という)2の主表面に、図1(b)に示すように少なくとも磁性層(垂直磁気記録層)等を含む層3A,3Bを成膜している。より具体的には、層3A,3Bには、例えばガラス基板2の主表面上に、主表面に近いほうから順に、少なくとも付着層、下地層、磁性層(磁気記録層)、保護層、潤滑層が積層された構成になっている。
例えばガラス基板2を、真空引きを行った成膜装置内に導入し、DCマグネトロンスパッタリング法にてAr雰囲気中で、ガラス基板の主表面上に付着層から磁性層まで順次成膜する。付着層としては例えばCrTi、下地層としては例えばCrRuを用いることができる。さらに、例えばCoTaZr/Ru/CoTaZrの軟磁性層、CoCrSiO2の非磁性グラニュラー下地層、CoCrPt−SiO2・TiO2のグラニュラー磁性層等が形成される。上記成膜後、例えばCVD法によりCを用いて保護層を成膜し、同一チャンバ内で、表面に窒素を導入する窒化処理を行うことにより、磁気記録媒体を形成することができる。その後、例えばPFPE(ポリフルオロポリエーテル)をディップコート法により保護層上に塗布することにより、潤滑層が形成される。
磁気ディスク1は、図1(c)に示すように、ハードディスク装置の磁気ヘッド4A,4Bのそれぞれが、磁気ディスク1の高速回転、例えば7200rpmの回転に伴って磁気ディスク1の表面から10nm以下、例えば5nm浮上する。すなわち、図1(c)中の距離Hが10nm以下、例えば5nmである。この状態で、磁気ヘッド4A,4Bは、磁性層に情報を記録し、あるいは読み出しを行う。この磁気ヘッド4A,4Bの浮上によって、磁気ヘッド4A,4Bは、磁気ディスク1に対して摺動することなく、しかも近距離で磁性層に対して記録あるいは読み出しを行うので、磁気記録情報エリアの微細化と磁気記録の高密度化を実現する。
このとき、磁気ディスク1のガラス基板2の中央部から外周エッジ部5まで、目標とする表面精度で正確に加工され、距離Hを10nm以下に保った状態で磁気ヘッド4A,4Bを正確に動作させることができる。
このような磁気ディスク1に用いるガラス基板2は、後述する工程を経て得られるが、ガラス基板2の主表面の表面粗さ、すなわち算術平均粗さRa(JIS B 0601:2001)は0.15nm以下、例えば0.03〜0.15nmであることが、距離Hを10nm以下に保って磁気ヘッド4A,4Bを正確に動作させる上で好ましい。また、主表面の最大表面粗さRmax(JIS B 0601:2001)が2nm以下であることが好ましい。勿論、ガラス基板2には上述したナノスクラッチが残存していないことが好ましい。算術平均粗さRa及び最大表面粗さRmaxは、ガラス基板2中の1μm×1μmの計測エリアについて、256×256の計測点を原子間力顕微鏡で計測することにより得られる。
本実施形態における磁気ディスクに用いるガラス基板2の材料として、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリボロシリケートガラスなどを用いることができる。特に、化学強化を施すことができ、また主表面の平坦度及びガラス基板の強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を作製することができるという点で、アルカリアルミノシリケートガラスを好適に用いることができる。
本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の組成は限定するものではないが、本実施形態のガラス基板2は好ましくは、酸化物基準に換算し、モル%表示で、
・SiO:50〜75%、
・Al:1〜20%、
・LiO、NaO及びKOから選択される少なくとも1種の成分:合計で12〜35%、
・MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOから選択される少なくとも1種の成分:合計で0〜20%、
・ZrO、TiO、La、Y、Ta、Nb及びHfOから選択される少なくとも1種の成分:合計で0〜10%、
を有する組成からなるアルミノシリケートガラスである。なお、アモルファスのアルミノシリケートガラスであることが好ましい。
また、ガラス基板2は、円環状の薄板のガラス基板である。ガラス基板2のサイズは限定されないが、例えば、公称直径2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板に好適である。
以下、ガラス基板2の製造工程について説明する。図2は、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の一例のフローを示すフローチャートである。
(1)板状のガラスブランクの作製(プレス成形)
板状のガラスブランクの作製では、プレス金型を用いて熔融ガラスをプレス成形することによりガラスブランクを作製する(ステップS10)。図3は、本実施形態で行うプレス成形の一例を説明する図である。
プレス成形の工程では、図3に示すプレス金型を用いる。具体的には、受けゴブ形成型である下型10上に、溶融ガラスからなるガラスゴブ(ガラス塊)が供給され、下型10と対向するゴブ形成型である上型12とを使用してガラスゴブが挟まれてプレス成形される。これにより、磁気ディスク用ガラス基板の元となる円板状のガラスブランク14が成形される。なお、プレス成形は、図3に示すプレス金型に限られず、落下するガラスゴブをガラスゴムの両側からプレス金型で挟んでプレス成形する、特開2011−138589号公報に開示されるプレス成形方法を用いることもできる。なお、後述するラッピング、研削、第1研磨及び第2研磨における取り代である表面加工量(ラッピング量+研削量+研磨量)を小さくしても、目標とする板厚、例えば0.8mmを確保でき、目標とする表面粗さ、例えば算術平均粗さRaを0.15nm以下とすることができ、しかも、コストの増大を抑制する点から、プレス成形で作製されるガラスブランク14の板厚が0.9mm以下となるように、プレス成形することが好ましい。
なお、成形直後の板状のガラスをガラスブランクといい、このガラスブランクを用いて以降の加工処理が施されるとき、この板状のガラスをガラス素板という。
(2)コアリング工程
次に、作製された円板状のガラスブランク14を磁気ディスク用ガラス基板のガラス素板14として用いてコアリングが施される(ステップS12)。図4は、本実施形態におけるコアリングの一例を説明する図である。コアリング工程では、具体的には、図4に示すように、円筒状のダイヤモンドドリル16を用いて、円板状のガラス素板14の中心部に内孔を形成し、円環状のガラス素板14をつくる。このとき、ガラス素板14を支持台18に載せて固定して内孔を形成する。支持台18によるガラス素板14の支持固定は、支持台18の表面に設けられた吸引口を通してガラス素板14を吸引することにより行われる。すなわち、プレス成形時の主表面の表面凹凸の状態を有するガラス素板14の主表面の一方を支持固定してガラス素板14に貫通する穴を開ける。この場合、支持固定するガラス素板の主表面には、表面凹凸(表面粗さ)の小さい側の主表面が用いられることが好ましい。プレス金型を用いたプレス成形では、図3に示すようなプレス成形で作製されたガラスブランク14を下型10から取り出す際、容易に取り出せるように下型10の表面に固体潤滑剤(例えば窒化ホウ素)を塗布する。このため、ガラスブランク14と下型10の表面との間に形成される潤滑層により、潤滑層と接するガラスブランク(ガラス素板)14の主要面の表面粗さは粗くなる。これに対して上型12に向く主表面の表面粗さは下型10に向く主表面に比べて細かい。したがって、上型12に向くガラスブランク14の主表面、すなわち上型12に向くガラス素板14の主表面を支持台18に接触させる面とすることが好ましい。これにより、ダイヤモンドドリル16を用いた穿孔によって、支持台18に支持固定されたガラス素板14の位置ずれを抑制することができる。位置ずれが生じると、ガラス素板14の主表面に傷が形成されやすく、ナノクラックが残存し易くなる。すなわち、プレス成形で作製されるガラスブランク14は、第1主表面と表面粗さ(表面凹凸)が第1主表面に比べて小さい第2主表面とを有し、コアリング時、表面凹凸が第1主表面に対して小さい第2主表面が支持台18に接触して支持台18に支持固定される。また、支持台18にはガラス素板14の主表面と接触する部分に弾性部材が設けられ、この弾性部材を用いてガラス素板14を支持固定することが、ガラス素板14の主表面に傷をつけない点で好ましい。
(3)チャンファリング工程
コアリング工程の後、円板状のガラス素板14の端部(外周端面及び内周端面)に面取り面を形成するチャンファリング(面取り)工程が行われる(ステップS14)。チャンファリング工程では、コアリング工程によって円環状に加工されたガラス素板14の外周面および内周面に対して、例えば、ダイヤモンド砥粒を用いた総型砥石等によって面取りが施される。総型砥石とは、複数の砥粒サイズと、ガラス素板14をチャンファリングのために当接させる砥石面の傾斜角度が異なる複数の砥石型が用意された研削用工具である。総型砥石は、例えば、特許第3061605号公報に記載の工具が例示される。この総型砥石により、面取りを施しつつ、ガラス素板14の直径も所定の大きさ、例えば65mmに揃えられる。ガラス素板14の端部には、主表面に対して垂直な面取りされなかった側壁面と、面取りされた面取り面とを有するが、以降では、側壁面及び面取り面を纏めて端面という。
(4)端面研磨工程
次に、円環状のガラス素板14の端面研磨(エッジポリッシング)が行われる(ステップS16)。
端面研磨では、円環状のガラス素板14の内周端面及び外周端面をブラシ研磨により鏡面仕上げを行う。このとき、スペーサ等の端面研磨用の治具をガラス素板14間に挟んで積層した複数のガラス素板14を、研磨ブラシを用いて研磨を行う。さらに、研磨に用いる研磨液は、酸化セリウム等の微粒子を遊離砥粒として含む。端面研磨を行うことにより、ガラス素板14の端面での塵等が付着した汚染、ダメージあるいは傷等の損傷の除去を行うことにより、サーマルアスペリティの発生の防止や、NaやK等のコロージョンの原因となるイオン析出の発生を防止することができる。
(5)ラッピング工程(第1研削工程)
次に、端面研磨されたガラス素板14の両主表面に対して、アルミナ系遊離砥粒(粒子サイズ:直径5〜50μm程度)を用いたラッピング加工を行う(ステップS18)。図5(a)は、ラッピングで使用されるラッピング装置20の概略断面図である。図5(b)は、図5(a)中のX−X線に沿った断面図である。なお、後述する研削工程、第1研磨工程及び第2研磨工程に使用される研削装置及び研磨装置においても、ラッピング装置20と略同様の構成とすることができる。ラッピングでは、ガラス素板14の平坦度を目標とする範囲に収まるようにガラス素板14の主表面が研削される。
ラッピング装置20は、遊星歯車運動式のガラス素板の両主表面を研削する加工装置である。ラッピング装置20は、装置本体部Aとスラリー循環装置Bとを有する。装置本体部Aは、保持板23a、24a、ラッピング定盤である上下定盤(上定盤23、下定盤24)、キャリア25、太陽ギア26、インターナルギア27を有している。
上定盤23、下定盤24は、鋳鉄で形成されている。上定盤23と下定盤24とは互いに反対方向に回転するようになっている。
太陽ギア26とインターナルギア27は上定盤23と下定盤24との間に配置されており、太陽ギア26とインターナルギア27の間に複数のキャリア25が配置されている。図5(b)では、5つのキャリア25が設けられているが、この数に限定されない。
キャリア25は、複数のガラス素板14を保持している。図5(b)では、1つのキャリア25に4つのガラス素板14が設けられるが、この数に限定されない。
キャリア25の外周には太陽ギア26とインターナルギア27とに噛み合う歯車が形成されている。上下定盤23,24の回転と共に太陽ギア26とインターナルギア27が回転することにより、キャリア25が自転及び公転(遊星歯車運動)するようになっている。
上記構成のラッピング装置20において、上下定盤23,24の間にキャリア25により保持したガラス素板14を密着させ、このキャリア25を太陽ギア26とインターナルギア27とに噛合させ、ガラス素板14を上下定盤23,24によって挟圧する。その後、パッド21とガラス素板14の主表面との間に遊離砥粒を含んだスラリーを供給して回転させることによって、ガラス素板14が上下定盤23,24上で自転しながら公転(遊星歯車運動)して両面を同時に表面加工する。
図5(a)に示されるスラリー循環装置Bは、送液管32(供給経路)、排液管33(排出経路)、送液溝34、排液受け35、送液ポンプ36、スラリータンク37を備えている。
送液管32から供給されたスラリーは送液溝34を通して、パッド21とガラス素板14との間に必要十分に供給される。送液管32の末端にフィルタ38が備えられ、排液管33の末端にフィルタ39が備えられ、ラッピング中に発生する塵埃を除去するようになっている。
送液管32は、一端を送液ポンプ36に取り付けられ、他端を送液溝34に取り付けられている。送液溝34は上定盤23の上部に取り付けられており、上定盤23に穿孔された複数の孔を通して、スラリーをラッピング装置20(上定盤23と下定盤24の間)に供給する。
排液管33は、一端を排液受け35に取り付けられ、他端をスラリータンク37に取り付けられている。排液受け35は下定盤24から排出されたスラリーを受けるためのものであり、その底に穿孔された複数の孔を通して排液管33に連結されている。これにより、ガラス素板14の研磨に使用されて排液受け35に排出されたスラリーが排液管33内に流れ込み、スラリータンク37に貯えられる。
スラリータンク37は、排液管33から排出されたスラリーを一時的に貯える容器である。送液ポンプ36は、スラリータンク37内のスラリーを吸い上げて、送液管32、送液溝34を介して再び上定盤23に供給する。
フィルタ38は、送液管32と送液溝34の間に設けられており、スラリーに混入している塵埃を濾過してからスラリーを装置本体部Aに導入する。フィルタ39は、排液管33とスラリータンク37の間に設けられており、排出されたスラリーに混入している塵埃を濾過してスラリーをスラリータンク37に導入する。
(6)固定砥粒による研削工程(第2研削工程)
固定砥粒による研削工程では、研削装置を用いて円環状で板状のガラス素板14の両側の主表面に対して研削加工を行う(ステップS20)。研削装置は、図5(a),(b)に示すラッピング装置20に対して以下の点を除き、同様の構成を有する研削装置を用いる。この研削装置は、ラッピング装置20が遊離砥粒を用いるのに対し、固定砥粒を用いる点である。例えば、パッド21の替わりに、ダイヤモンド砥粒を分散させたダイヤモンドシート等が用いられる。
なお、上述した(5)の工程で行うラッピングと、(6)の工程で行う固定砥粒による研削は、後述するガラス素板14の主表面粗さを低減する研磨(第1研磨及び第2研磨)の前に、平坦度を向上し、板厚を揃え、あるいは、さらに、うねりを低減するために行う研削として位置づけられる。したがって、(5)の工程で行うラッピングは、第1研削といい、(6)の工程で行う固定砥粒による研削は第2研削ともいう。
(7)第1研磨(主表面研磨)工程
次に、円環状のガラス素板14の主表面に第1研磨が施される(ステップS22)。第1研磨は、図5(a),(b)に示す加工装置と同様の構成を有する研磨装置を用いて遊離砥粒で行われる。研磨剤である遊離砥粒には、粒子サイズ(直径)が略0.5〜2.0μmの酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の微粒子が用いられる。この粒子サイズは、研削工に用いるダイヤモンド砥粒の粒子サイズに比べて小さい。第1研磨は、(6)の研削により主表面に残留した傷、歪みの除去、うねり、微小うねりの調整を目的とする。
(8)化学強化工程
次に、第1研磨後の円環状のガラス素板14は化学強化される(ステップS24)。化学強化液として、例えば硝酸カリウム(60重量%)と硝酸ナトリウム(40重量%)の混合液等を用いることができる。化学強化では、化学強化液が、例えば300℃〜500℃に加熱され、洗浄したガラス素板14が、例えば200℃〜300℃に予熱された後、円環状のガラス素板14が化学強化液中に、例えば1時間〜4時間浸漬される。この浸漬の際には、円環状のガラス素板14の両主表面全体が化学強化されるように、複数の円環状のガラス素板14の端部を保持して収納するかご(ホルダ)を用いて行うことが好ましい。
このように、ガラス素板14を化学強化液に浸漬することによって、ガラス素板14の表層にあるLiイオン及びNaイオンが、化学強化液中のイオン半径が相対的に大きいNaイオン及びKイオンにそれぞれ置換され、ガラス素板14の表面に圧縮層が形成されることにより強化される。なお、化学強化処理された円環状のガラス素板14は洗浄される。例えば、硫酸で洗浄された後に、純水等で洗浄される。
(9)第2研磨(最終研磨)工程
次に、化学強化されて十分に洗浄されたガラス素板14に第2研磨が施される(ステップS26)。第2研磨は、主表面の鏡面研磨を目的とする。第2研磨では例えば、第1研磨と同様の構成の研磨装置を用いる。このとき、第1研磨と異なる点は、遊離砥粒の種類及び粒子サイズが異なることと、パッドの硬度が異なることである。パッドは、発泡ウレタン等のウレタン製研磨パッド、スエードパッド等が用いられる。
第2研磨に用いる遊離砥粒として、例えば、研磨液に混濁させたシリカからなるコロイダルシリカ等の微粒子(粒子サイズ:直径10〜50nm程度)が用いられる。この微粒子は、第1研磨で用いる遊離砥粒に比べて細かい。コロイダルシリカ等の微粒子が混濁した研磨液(スラリー)には、シリカが例えば0.1〜40質量%、好ましくは、3質量%〜30質量%含むことが、研磨の加工効率を確保し、表面粗さを高める点で好ましい。
研磨されたガラス素板14は洗浄される。洗浄では、中性洗浄液あるいはアルカリ性洗浄液を用いた洗浄であることが、洗浄によってガラス表面に傷等の欠陥を形成せず、さらに表面粗さを粗くさせない点で好ましい。これにより、主表面の算術平均粗さRaを0.15nm以下、例えば0.03〜0.15nmとすることができる。中性洗浄液の他に、純水、酸(酸性洗浄液)、IPA等を用いた複数の洗浄処理を施すこともできる。こうして、ガラス素板14を洗浄することにより、磁気ディスク用ガラス基板2が作製される。
本実施形態のガラス素板14の加工において、ガラス素板14に対してコアリング及びチャンファリング(面取り)が行われた後、あるいは、さらには端面研磨が行われた後、ラッピングが行われる。このように、コアリング及びチャンファリング(面取り)が行われた後、あるいはさらに端面研磨が行われた後にラッピングを行うのは、コアリングの際に、図4に示すように支持台18に接触するガラス素板14の主表面に傷ができても、効率よくラッピングにより傷を除去することができるからである。また、チャンファリング(面取り)、あるいはさらに端面研磨の際に、ガラス素板14を固定支持するときに主表面が支持部材等の治具やスペーサ等と接触することで主表面に傷ができても、効率よくラッピングにより傷を除去することができる。
また、(5)のラッピングから(9)の第2研磨にいたるガラス素板14の主表面の表面加工では、磁気ディスク用ガラス基板2の低コスト化を目指すために、加工による主表面の取り代である表面加工量を、プレス成形直後のガラスブランク14の板厚の10%より小さくする。この場合、上記表面加工量はプレス成形直後のガラスブランク14の板厚の4.8%以上であることが好ましい。すなわち、プレス成形直後のガラスブランク14における板厚と第2研磨による表面加工後のガラス素板14における板厚との差分は、プレス成形直後のガラスブランク14における板厚の10%の厚さより小さくする。この場合、上記差分はプレス成形直後のガラスブランク14における板厚の4.8%以上であることが実用上主表面を加工する点で好ましい。例えば、プレス成形直後のガラスブランク14の板厚が0.85mmの場合、50μmを(5)のラッピングから(9)の第2研磨にいたるガラス素板14の主表面の表面加工量とする。この場合、(5)のラッピング及び(6)の研削における取り代である表面加工量(ラッピング量+研削量)は略29〜39μmであることが好ましく、(7)の第1研磨における取り代である表面加工量(研磨量)は略10〜20μmであることが好ましく、(9)の第2研磨における取り代である表面加工量(研磨量)は略1〜2μmであることが好ましい。
このように、ガラス素板14の主表面の表面加工における表面加工量をプレス成形直後のガラスブランク14における板厚の10%より小さくすることによって、表面加工によって従来除去されていた、例えば幅が略0.5μm以下、深さが略5nm以下のナノスクラッチが残存するようになってきた。このため、本実施形態では、このナノスクラッチが残存しないように、ガラス素板14のコアリング及びチャンファリング(面取り)を行った後、あるいはさらに端面研磨を行った後、ラッピングを行う。これにより、ナノスクラッチが残存しなくなるとともに、ガラス素板14の主表面の算術平均粗さRaが0.15nm以下になるようなラッピング、研削、研磨等の表面加工が実現される。しかも、プレス成形直後のガラスブランクにおける板厚の10%より小さい表面加工量でガラス素板14の主表面の表面加工を行うことができるので、ガラス基板2の製造において低コストを実現できる。
(実施例、従来例、比較例)
本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の効果を確認するために、上述した実施形態の製造方法を一部変更して2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板を種々作製した。作製したガラス基板2は、上述した実施形態のガラス組成を満たす。
下記表1には、ガラス基板の製造方法の工程の順番と、プレス成形時のガラスブランク14の板厚と、第2研磨後のガラス素板14の板厚と、ナノスクラッチの有無を示している。ナノスクラッチの有無は、第2研磨終了後のガラス素板14の主表面を、光学式欠陥検査装置(KLA−Tencor社製、商品名:OSA6100)を用いて検査した後、画像を目視で見て確認した。
Figure 2013140648
従来例及び比較例2は、プレス成形後、ラッピング(第1研削)、コアリング、チャンファリング、端面研磨、の順番とし、比較例1及び実施例1,2は、プレス成形後、コアリング、チャンファリング、端面研磨、ラッピング(第1研削)の順番とした。一方、従来例及び比較例1は、プレス成形時のガラスブランクの板厚を0.9mmとし、表面加工量を0.1mm(プレス成形時の板厚の11.1%)として、0.8mmの板厚のガラス基板2を作製した。比較例2及び実施例1は、プレス成形時のガラスブランクの板厚を0.88mmとし、表面加工量を0.08mm(プレス成形時の板厚の9.1%)として、0.8mmの板厚のガラス基板2を作製した。実施例2は、プレス成形時のガラスブランクの板厚を0.84mmとし、ラッピング(第1研削)を行わず、固定砥粒による研削(第2研削)、第1研磨及び第2研磨を行って、表面加工量を0.04mm(プレス成形時の板厚の4.8%)として、0.8mmの板厚のガラス基板2を作製した。
表1の結果より、従来例、比較例1のように、表面加工量を0.1mm(プレス成形時の板厚の11.1%)とした場合、コアリング、チャンファリング、端面研磨、ラッピングの順番に依存することなく、ナノスクラッチが十分に除去されている。これに対して、比較例2のように、表面加工量を0.08mm(プレス成形時の板厚の9.1%)とした場合、ナノスクラッチが残存することがわかる。一方、比較例2と異なり、プレス成形後、コアリング、チャンファリング、端面研磨、ラッピングの順番で加工する実施例1では、表面加工量を0.08mm(プレス成形時の板厚の9.1%)とした場合でも、ナノスクラッチが除去されることがわかる。また、実施例2より、表面加工量を0.04mm(プレス成形時の板厚の4.8%)とした場合でも、ナノスクラッチが除去されることがわかる。
また、実施例1,2は、ガラス素板の主表面の算術平均粗さRaが0.15nm以下であることも確認された。
以上より、成形工程(プレス成形)直後のガラスブランク14における板厚と第2研磨終了後のガラス素板14における板厚との差分、すなわち、ラッピング(第1研削)、固定砥粒による研削(第2研削)、第1研磨及び第2研磨における表面加工量を、プレス成形直後のガラスブランク14における板厚の10%の厚さより小さくし、例えば9.1%以下とし、プレス成形後、コアリングチャンファリング、端面研磨をした後、ラッピングを行うことが、有効であることがわかる。このとき、実施例2より、プレス成形直後のガラスブランク14における板厚の4.8%の厚さ以上の表面加工量があればナノスクラッチを除去することができることも確認された。
以上、本発明の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法および磁気ディスク用ガラス基板について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
1 磁気ディスク
2 ガラス基板
3A,3B 層
4A,4B 磁気ヘッド
5 外周エッジ部
10 下型
12 上型
14 ガラス素板(ガラスブランク)
16 ダイヤモンドドリル
18 支持台
20 ラッピング装置
23 上定盤
23a,24a 保持板
24 下定盤
25 キャリア
26 太陽ギア
27 インターナルギア
32 送液管
33 排液管
34 送液溝
35 排液受け
36 送液ポンプ
37 スラリータンク
38,39 フィルタ
A 研磨装置本体部
B スラリー循環装置


Claims (7)

  1. 成形直後におけるガラスブランクの板厚の10%より小さい表面加工量で表面加工することによって、磁気ディスク用ガラス基板を製造する方法であって、
    プレス金型を用いて熔融ガラスをプレス成形することにより、ガラスブランクを前記磁気ディスク用ガラス基板のガラス素板として作製する成形工程と、
    主表面が成形工程時の表面凹凸の状態にある前記ガラス素板の前記主表面の一方を支持固定して前記ガラス素板に貫通する穴を開けるコアリング工程と、
    前記穴が開けられた前記ガラス素板の端面の面取りを行う工程と、
    前記面取りを行った前記ガラス素板の主表面に対して、研削及び研磨の少なくとも一方の表面加工を行う工程と、を有することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  2. 前記成形工程で作製される前記ガラスブランクは、第1主表面と、前記第1主表面の表面凹凸に比べて表面凹凸が小さい第2主表面とを有し、
    前記コアリング工程では、前記第2主表面を支持固定する、請求項1に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  3. 前記表面加工を行う工程では、前記ガラス素板の主表面の算術平均粗さRaが0.15nm以下になるように前記表面加工が行われる、請求項1または2に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  4. 前記成形工程で作製される前記ガラスブランクの板厚は、0.9mm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  5. 前記コアリング工程では、前記主表面は、前記主表面と接触する弾性部材を用いて支持固定される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  6. 前記ガラス素板の端面の面取りを行った後、前記表面加工を行う前に、面取りされた前記端面の研磨を行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法により製造された磁気ディスク用ガラス基板の前記主表面に、少なくとも磁性層を成膜することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板。
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