JP2013140102A - 溶融金属の試料採取装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】組み立ての煩雑さを解消でき、溶融金属浴の一定の位置で良好な状態の試料採取が可能な、迅速分析を実現し得る溶融金属の試料採取装置の提供。
【解決手段】溶融金属を導入する開口と、溶融金属を充填するための空間とを有する鋳型、該鋳型の上記開口を緊密に塞ぐための蓋部材、該鋳型に溶融金属を導入するための一方の足の長さが長いU字形状の石英管、一方の端部が紙板で塞がれた状態である上記鋳型を内部に保持するための紙管を有し、該紙管内を減圧状態にして溶融金属を上記鋳型内に導入させた際に、溶融金属に置換された鋳型内の空気が、上記蓋部材及び上記紙管を介して大気中に放出できる構造のものであり、蓋部材は、通気機能を有する耐火性の無機多孔質体で形成されており、その一部に、上記石英管の鋳型側端部を、鋳型の空間に連通した状態で配置させるための貫通孔が設けられている溶融金属の試料採取装置。
【選択図】図1
【解決手段】溶融金属を導入する開口と、溶融金属を充填するための空間とを有する鋳型、該鋳型の上記開口を緊密に塞ぐための蓋部材、該鋳型に溶融金属を導入するための一方の足の長さが長いU字形状の石英管、一方の端部が紙板で塞がれた状態である上記鋳型を内部に保持するための紙管を有し、該紙管内を減圧状態にして溶融金属を上記鋳型内に導入させた際に、溶融金属に置換された鋳型内の空気が、上記蓋部材及び上記紙管を介して大気中に放出できる構造のものであり、蓋部材は、通気機能を有する耐火性の無機多孔質体で形成されており、その一部に、上記石英管の鋳型側端部を、鋳型の空間に連通した状態で配置させるための貫通孔が設けられている溶融金属の試料採取装置。
【選択図】図1
Description
本発明は、溶融金属の試料採取装置に関し、さらに詳しくは、内部に溶融金属を上方から導入するための開口を有する鋳型が保持されている紙管内を減圧状態にして、石英製の導管を介して溶融金属を鋳型内に導入させる方式のものであって、溶融金属を鋳型内の空間に良好に充填でき、コンタミネーションのない良好な溶融金属試料の採取ができると同時に、鋳型内に溶融金属を導入するための導入路からも良好な溶融金属試料を採取できる溶融金属の試料採取装置に関する。
従来より、製鋼過程においては、溶融状態の金属(溶鋼)をサンプリングし、発光分光分析による金属成分の組成分析、或いはC・S・N等のガス分析を行うことによってプロセス管理及び製品管理が行われている。したがって、溶融金属のサンプリング及び各種の分析は、より迅速に、より正確に行われる必要がある。このような目的で使用される溶融金属の試料採取装置の一つとして、溶融金属が導入するための空間を有する鋳型を用い、鋳造されたものから成分分析用の試料を採取する方式のものがある。この場合に、採取した溶融金属(溶鋼)に浮遊するスラグ等が混入するのを有効に防止するため、溶融金属中に石英管を挿入して、押込み方式あるいは吸引方式で採取する方法が多用されている。例えば、溶融金属を採取するための中空部分を有する2個の金属製等の半割体を備えた試料採取装置を使用し、該中空部内に石英管からなる導管を介して溶融金属を導入した後、凝固させ、特定の形状の金属塊を取り出すことによって、種々の分析目的或いは分析装置により合致した形状の、試料調製が容易なディスク型サンプルを得る試料採取装置が知られている(特許文献1、2参照)。
特許文献2に記載の試料採取装置は出願人の提案によるものであるが、該装置を用いれば、サンプリングした溶融金属が凝固した状態となった際に、ディスク型サンプルと導管との連結部分が格段に細いものが得られる。このため、両者を極めて容易に分離することができるので、取り出した中空容器内の溶融金属から、分析目的に合せて適宜な形状に切り出すといった処理がより容易にでき、迅速なサンプル調製、更には、サンプリングの自動化も可能になるという利点がある。
しかしながら、上記した従来の試料採取装置は、溶融金属を採取するための中空部分を有する2個の金属製等の半割体を使用し、溶融金属を吸引方式又は押し込み方式で採取するものであるため、溶融金属が中空部分へ良好な状態に充填されない場合があった。すなわち、本発明者の検討によれば、上記した従来技術で用いられている鋳型では、溶融金属が導入された場合における鋳型内の空気の排気を1mm程度の径の排気孔で行っているため、この排気孔が溶融金属で塞がれてしまい、このことが原因して排気不足による溶融金属の充填不足が発生し、採取したものがサンプル不良となる場合があった。また、別の問題として、上記した鋳型に設けられた排気孔がサンプルの側面になるため、この排気孔からの鋳バリができ、試料調製時のハンドリングに不具合となる場合があるので、この鋳バリを除去する作業が必要になる場合があった。
上記のことから、本発明者は、より良好な分析用サンプルを、より効率よくより確実に得るためには改善の余地があることを認識した。さらに、従来技術では、石英製の直線状の導管を用い、溶融金属中に浸漬させた導管の一方の端部から中空部分へと溶融金属を押し込むか、内部に金属製等の半割体を収容した紙管内を減圧状態にすることによって、該導管の端部から中空部分へと溶融金属を吸引しているが、溶融金属の一部が導管の端部から流れ出してしまう(以下「ダレ」と呼ぶ)という問題を生じる場合があった。これに対して、図6に示したような、ディスク型サンプルとその導管との連結部分を格段に細くできる特許文献2に記載の技術によれば格段に改善できるものの、ダレの問題を全くなくすことはできなかった。また、特許文献2に記載された従来の装置は、中空部の形状を特有のものとすることで、サンプルの形状を各種の分析試料の調製がし易いものとできるが、試料型の下部から導入する方式であるためと考えられるが、溶融金属が中空部に良好な状態に充填されない場合もあった。さらに、2個の金属製等の半割体を用いるため、試料採取装置の組み立てが煩雑であるといった面もあり、より組み立て易い簡便で、溶融金属の採取がより確実に行える装置の開発が望まれる。
従って、本発明の目的は、内部に鋳型を保持した紙管内を減圧状態にして溶融金属を鋳型内に導入させる方式の溶融金属の試料採取装置において、鋳型に充填した溶融金属がダレを生じることがなく、溶融金属が鋳型内の空間に、より良好な状態に確実に充填される結果、コンタミネーションのない良好な状態の溶融金属を簡便に確実に採取することができ、しかも、採取した試料から、形状の異なる種々の分析用の試料調製が容易にでき、さらには、その組み立ても容易な溶融金属の試料採取装置を提供することにある。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。即ち、本発明は、溶融金属を上方から導入するための開口と、溶融金属を充填するための空間とを有する鋳型、該鋳型の上記開口を緊密に塞ぐための蓋部材、該鋳型に溶融金属を導入するための一方の足の長さが長いU字形状の石英管、上記鋳型を内部に保持するための一方の端部が紙板で塞がれた底部を有する紙管、を少なくとも有してなる、該紙管内を減圧状態にして溶融金属を上記鋳型内に導入させた際に、溶融金属に置換された鋳型内の空気が上記蓋部材及び上記紙管を介して大気中に放出される構造のものであり、上記石英管は、溶融金属中に浸漬される側の一方の端部にキャップがされており、該キャップが溶解することで該端部から侵入した溶融金属を、鋳型の空間に連通しているもう一方の端部から、該空間内に且つ鋳型の上方から導入するためのものであって、溶融金属に浸漬される側の足の長さが、鋳型の空間に連通している端部がある側の足の長さよりも長く、且つ、逆U字となるようにして配置されており、上記蓋部材は、通気機能を有する耐火性の無機多孔質体で形成されており、その一部に、上記石英管の鋳型側の端部を鋳型の空間に連通した状態で配置させるための貫通孔が設けられていることを特徴とする溶融金属の試料採取装置を提供する。
本発明の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。上記蓋部材の鋳型の開口を塞いでいる部分における厚みが、7mm〜10mmの範囲内にあること。上記鋳型側の端部がある石英管の足の直線部分の長さが、少なくとも40mm以上あること。上記通気機能を有する無機多孔質体が、耐火性粒子を樹脂で被覆した熱硬化性のコーテッドサンドであり、上記蓋部材は、該コーテッドサンドを加熱加圧することで形成されていること。上記通気機能を有する無機多孔質体が、けい砂、アルミナ系人工砂、オリビン砂、ジルコン砂、クロマイト砂の少なくとも一つから成る骨材と、リン酸塩系、炭酸塩系、硫酸マグネシウム系の一種又は二種以上の混合物からなる粘結剤と、これらに添加される水とから構成される水溶性鋳物砂からなること。上記鋳型が、上記紙管の底部に配置された紙管の上に配置されて、該底部に設置しないようにして保持されていることである。
本発明によれば、内部に鋳型を保持した紙管内を減圧状態にして溶融金属を鋳型内に導入させる方式の溶融金属の試料採取装置において、その組み立てが従来のものに比べて簡便であり、しかも、溶融金属を採取した後にダレを生じることなく、鋳型の上部から溶融金属を導入する方式としたことで、溶融金属の自重でより効率よく鋳型内の空間及びこれに続く導管の部分に溶融金属が良好な状態に確実に充填されるため、鋳型の空間から良好な状態の溶融金属試料を採取できると同時に、鋳型内に溶融金属を導入するための経路である導管部分からも良好な状態の溶融金属試料を採取できる、簡便で、しかもより効率的に、良好な状態の溶融金属の試料採取装置が提供される。また、本発明によって提供される溶融金属の試料採取装置では、通気機能を有する耐火性の無機多孔質体から形成された蓋部材を用いているが、溶融金属を採取した場合に、該蓋部材から溶融金属試料へのコンタミネーションは皆無であり、この点でも全く問題のない良好な試料採取ができる溶融金属の試料採取装置が提供される。より具体的には、溶融金属を鋳型内に導入した場合、蓋部材に溶融金属が接触するのは溶融金属が満杯になった時点であり、溶融金属は既に凝固した状態となっているので、蓋部材と溶融状態の金属が接触することがなく、蓋部材を形成している無機多孔質体から溶融金属試料へのコンタミネーションは生じない。このため、蓋部材と溶融金属とが接触する部分に酸化ジルコニウム等を塗布してコンタミネーションが生じるのを防止する必要はない。
次に、本発明の好ましい実施形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
本発明の溶融金属の試料採取装置は、図1に示したように、下記の点を特徴とする。
(1)溶融金属を上方から導入するための開口が設けられた鋳型を用いたこと。
(2)該鋳型の開口を緊密に塞ぐために、該開口に嵌合される蓋部材を用い、且つ、該蓋部材を、通気機能を有する耐火性の無機多孔質体で形成したこと。
(3)鋳型に溶融金属を導入するための石英管を一方の長さが長いU字形状のものとし、具体的には、溶融金属中に浸漬される側の一方の端部にキャップがされており、該キャップが溶解することで該端部から侵入した溶融金属を、鋳型の空間に連通しているもう一方の端部から、該空間内に且つ鋳型の上方から導入するためのものであって、溶融金属に浸漬される側の足の長さが、鋳型の空間に連通している端部がある側の足の長さよりも長く、且つ、逆U字となるようにして配置させたこと。
本発明の溶融金属の試料採取装置は、図1に示したように、下記の点を特徴とする。
(1)溶融金属を上方から導入するための開口が設けられた鋳型を用いたこと。
(2)該鋳型の開口を緊密に塞ぐために、該開口に嵌合される蓋部材を用い、且つ、該蓋部材を、通気機能を有する耐火性の無機多孔質体で形成したこと。
(3)鋳型に溶融金属を導入するための石英管を一方の長さが長いU字形状のものとし、具体的には、溶融金属中に浸漬される側の一方の端部にキャップがされており、該キャップが溶解することで該端部から侵入した溶融金属を、鋳型の空間に連通しているもう一方の端部から、該空間内に且つ鋳型の上方から導入するためのものであって、溶融金属に浸漬される側の足の長さが、鋳型の空間に連通している端部がある側の足の長さよりも長く、且つ、逆U字となるようにして配置させたこと。
上記した(1)〜(3)の構成を有する本発明の溶融金属の試料採取装置は、下記の優れた効果を奏するものとなる。まず、上記した(1)の構成を有するため、本発明の溶融金属の試料採取装置で溶融金属を採取した場合に、鋳型の上部から溶融金属を導入する方式であるので、溶融金属の自重でより効率よく鋳型内の空間に確実に溶融金属が充填されることに加え、(3)の構成を有するため、鋳型に上方から溶融金属を導入する部分の導管に充填されている溶融金属もダレることがない。
上記した(2)の構成を有するため、本発明の溶融金属の試料採取装置は、組み立てが従来のものよりも格段に容易になるのに加えて、紙管内を減圧状態にして溶融金属を鋳型内に導入させた際に、溶融金属に置換された鋳型内の空気が、蓋部材及び紙管を介して速やかに良好な状態で大気中に放出される。このため、後述するように、導管の形状が従来よりも長さが長く導入路がU字形状をしているにもかかわらず、鋳型内に極めて容易且つ速やかに溶融金属を導入することができる。
上記した(3)の構成を有するため、先にも述べたように、本発明の溶融金属の試料採取装置で採取され、凝固した溶融金属試料は、鋳型内に充填されたもののみならず、これに続く導管部分に充填された溶融金属も、ダレを生じることがなく、分析試料として使用できる良好な状態のものであるため、1度のサンプリングで、形状の異なる2種類の大きさのディスク型サンプルを得ることが可能になる。
上記した本発明の顕著な効果を発揮させるために特に重要な点は、鋳型の開口を塞ぐための蓋部材を、通気機能を有する耐火性の無機多孔質体で形成した点と、溶融金属を導入するための導管である石英管の形状を特有のものにした点にある。本発明者の検討によれば、従来の吸引方式で溶融金属をサンプリングする場合、例えば、図6に示したように、中空部を有する試料型に1mm程度の径の小孔を設け、この小孔を介して型内の空気と溶融金属とを置換していたが、場合によっては置換が良好な状態に行われない結果、型内に十分に溶融金属が充填されずに空胴となる部分が生じ、良好な試料採取ができない場合があった。一方、このような問題は、従来から、広く行われている、いわゆる柄杓型の、上部が開放された容器で溶融金属を汲み上げる方式においては生じることはない。しかし、この方式は、上部が開放された柄杓型の容器を用いての試料採取は非常に簡便であるものの、特に微量な値が問題となる場合には、より正確な分析値を得ることが極めて重要になるので、溶融金属浴上部にあるスラグ層を避けてスラグ層の下側の溶融金属を確実に採取するという点では課題がある方法である。
上記した現状に対し、本発明者は、溶融金属浴上部にあるスラグ層の影響を確実に避けることができ、試料型内の空気と溶融金属とをより速やかに置換して、溶融金属を良好な状態に試料型内に充填でき、しかも組み立てを簡便にすることができ、さらには、導管からのダレがなく、しかも、種々の形状の試料採取を簡便にすることが可能になる溶融金属の試料採取装置を提供するべく鋭意検討の結果、本発明に至ったものである。すなわち、本発明者は、まず、試料を採取するための試料型として、確実に良好な状態の試料を採取するために、上方から溶融金属の自重をも利用して導入できる開口と、溶融金属を充填するための空間とを有する鋳型を用い、該鋳型の開口を、蓋部材を用いて緊密に塞ぐと同時に、採取した溶融金属試料に蓋部材からのコンタミがないことは勿論、溶融金属が導入された場合に鋳型内の内部の空気が蓋部材を介して速やかに溶融金属と置換できる構造にできれば、従来技術の課題を解決できると考え、このような蓋部材を構成し得る材料について種々検討を行った。その結果、蓋部材を、通気機能を有する耐火性の無機多孔質体で形成し、さらに、石英管からなる導管の形状を特定のU字状とすれば、鋳型の空間内に上方から溶融金属の自重をも利用して効率的に、しかも良好な状態に十分に充填でき、これに加えて、鋳型の空間に連続している導管部分から、形状の異なる良好な状態の試料採取が可能になることを見出して本発明に至った。
以下に、本発明の溶融金属の試料採取装置を特徴づける蓋部材を構成する材料として特に有用な、通気機能を有する耐火性の無機多孔質体について説明する。その一つとしては、耐火性粒子を樹脂で被覆した熱硬化性のコーテッドサンドが有用であり、該コーテッドサンドを加熱加圧することで形成した蓋部材を用いることが好ましい。このような材料としては、特に、特開2002−113548号公報に記載されている耐火性粒子をフェノール系樹脂で被覆したシェルモールド用レジンコーテッドサンドを用いることが好ましい。該レジンコーテットサンドは、鉄製品由来の鉱滓から鉄源を回収した後に得られる二次鉱滓を構成材料として配合したことを特徴とするものであるが、本発明で使用する鋳型の開口を緊密に塞ぐ蓋部材の構成材料に用いた場合に、緊密性と高い耐熱性とを示すとともに、優れた通気機能を示し、鋳型の空間に溶融金属が充填された場合に、該空間内の空気が蓋部材を介して外部に速やかに移動するので、空間内の空気と溶融金属とを速やかに置換でき、この結果、鋳型の空間に溶融金属が十分に充填されて、溶融金属が充填されずに空胴となる部分が生じるといったことがない。また、本発明者が検討した結果、採取した溶融金属試料に蓋部材を構成する材料からのコンタミの問題を生じることもなかった。
上記したシェルモールド用レジンコーテッドサンドは、特に本発明に好適に用いられるが、耐火性粒子は、鋳型の骨材となるものであって鋳造に適する粒径の無機粒子であればよく、もっとも一般的には珪砂が挙げられる。珪砂の他に、例えば、ジルコンサンド、オリビンサンド、クロマイトサンド、アルミナサンド等を用いたものであってもよく、上記したように、特殊な無機粒子として、転炉スラグなどのスラグ系粒子を用いることができる。これら粒子は、単独であるいは2種以上を混合して用いてもよい。
また、前記フェノール系樹脂は、フェノール類とアルデヒド類との反応生成物を主体とする熱硬化性樹脂であって、前記耐火性粒子を結合する接着剤として機能するものである。このフェノール系樹脂としては、従来公知のものを用いることができるが、もっとも多用されるフェノール系樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂が挙げられる。なお、ノボラック型フェノール樹脂を用いる場合には、硬化剤を併用して熱硬化を促進する必要がある。この際に用いる硬化剤としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミンが挙げられる。
フェノール系樹脂の配合量は、樹脂の種類や要求される強度等によって設定されるが、一般的に耐火性粒子100重量部に対して0.5〜10重量部、より好ましくは1〜4重量部の範囲とされる。また、フェノール系樹脂と耐火性粒子との親和性や滑性を向上させるため混和剤として、例えば、アミノ系、エポキシ系、ビニル系の各シランカップリング剤やワックス類を配合することもできる。
先に述べたように、本発明では、上記した耐火性粒子とフェノール系樹脂の他に、二次鉱滓を併用したものを用いることが好ましいが、その際には、フェノール系樹脂の耐火性粒子と二次鉱滓に対する親和性や滑性を向上させるため混和剤、例えばアミノ系、エポキシ系、ビニル系の各シランカップリング剤やワックス類を配合することが好ましい。
さらに、本発明者の検討によれば、通気機能を有する耐火性の無機多孔質体からなる蓋部材を形成する材料としては、上記した材料の他にも、例えば、特開2004−174598号公報に記載されている、けい砂、アルミナ系人工砂、オリビン砂、ジルコン砂、クロマイト砂の少なくとも一つから成る骨材と、リン酸塩系、炭酸塩系、硫酸マグネシウム系の一種又は二種以上の混合物からなる粘結剤と、これらに添加される水とから構成される水溶性の鋳物砂等を用いることができる。
本発明の溶融金属の試料採取装置は、鋳型と、該鋳型の開口を緊密に塞ぐ上記したような通気機能を有する耐火性の無機多孔質体からなる蓋部材とを有してなるが、溶融金属を鋳型内に導入した場合に、蓋部材を介して鋳型内の空気が外部に速やかに放出されるようにする必要がある。このためには、蓋部材に用いる形成材料の通気性にもよるが、例えば、先に述べたシェルモールド用レジンコーテッドサンドを用いた場合であれば、図1或いは図3に示した、鋳型1の開口を塞ぐ部分における蓋部材3の厚みcが、7mm〜10mmの範囲内、より好ましくは、8mm〜9mmの範囲内となるようにすることが好ましい。本発明者らの検討によれば、この蓋部材3の厚みcが薄すぎると、鋳型1内に溶融金属が導入されてきた場合に、熱崩壊してしまい開口を緊密に塞いだ状態を維持でき難くなる場合があるので好ましくない。さらに、あまり厚すぎると経済的でないばかりか、鋳型内の空気が蓋部材を通気して速やかに外部へ放出され難くなるので好ましくない。上記蓋部材3には、図1或いは図3に示したように、溶融金属を導入するための導管である特有のU字形状の石英管2を後述するように配置させるために、石英管2を通すための貫通孔を設ける必要がある。図3に示したように、この部分の厚みは、強度を高めるために、上記した範囲よりも厚くすることが好ましい。
本発明の溶融金属の試料採取装置は、上記に加えて、溶融金属を鋳型内の空間に導入するための石英管2からなる導管の形状を、図4に示したような、一方の足の長さが長い特定のU字形状としたことを特徴とする。すなわち、本発明では、上記した石英管2が内部に保持した紙管内を吸引することで減圧しながら、導管とする石英管2の、キャップがされた一方の端部を溶融金属中に浸漬させて試料採取を行うが、石英管2を特有の形状としたことで、下記のようにして、溶融金属は、石英管2を介して鋳型1の空間内に速やかに導入される。まず、石英管2の足の長い側の、キャップがされた一方の端部を溶融金属中に浸漬させると、溶融金属中の表面に浮遊するスラグの下の適宜な位置で該キャップが溶解することで、該端部から溶融金属が、減圧になった石英管2内に侵入する。したがって、キャップの形成材料としては、分析項目にもよるが、分析値への影響を考えて極低炭素材料を用いて形成することが好ましい。もう一方の石英管2の端部は、上記鋳型の空間内に溶融金属が導入されるように、鋳型内に開放されている。また、上記鋳型の空間内に、上方から導入されるように、石英管のU字形状を、図4に示したように、溶融金属に浸漬される溶融金属側端部のある側の足の長さが、鋳型側端部がある側の石英管の足の長さよりも長くなるようにする必要がある。また、鋳型側端部がある側の石英管の直線部分にも、ダレがない良好な状態に溶融金属が充填されるので、後述するように、この部分からも分析用の試料採取が可能になる。導管である本発明に用いる石英管の太さは特に限定されないが、例えば、内径が6mmφのものや、7mmφのもの等を用いることができる。
本発明の溶融金属の試料採取装置では、図1に示したように、上記したような形状の石英管2が、逆U字となるように配置される。すなわち、本発明の溶融金属の試料採取装置を構成する石英管2は、蓋部材3に設けた貫通孔によって、その鋳型側端部が、鋳型1内の溶融金属を充填するための空間Aに向けて開放されている。このように構成することで、石英管2を介して鋳型1の上方から溶融金属が、鋳型1の空間Aに導入されて充填されることになる。このため、鋳型1の空間Aに充填された溶融金属がダレを起こすことは決してない。また、蓋部材3の耐火性と通気性によって、溶融金属が鋳型1の空間Aに充填された場合に、空間A内の空気が速やかに溶融金属に置換されるので、この点でも採取した試料に空胴が生じることがなく、鋳型1に設けた空間Aの部分から、溶融金属が十分に充填された良好な状態の試料を確実に採取することができる。
本発明の溶融金属の試料採取装置では、さらに、図1或いは図4に示したように、逆U字状となるように配置した石英管2を介し、鋳型1の上方から溶融金属が鋳型1の空間Aに導入される構造としたことで、U字を構成する鋳型側端部を含む短い直線状の石英管の部分Bには溶融金属が十分に充填され、また、その構造から石英管の部分Bに充填された溶融金属が決してダレを起こすことがない。このため、直線状である石英管の部分Bからも、十分に溶融金属が充填された良好な状態の試料を確実に採取できる。石英管の部分Bから良好な溶融金属試料を採取する目的からは、図1中に示したこの部分の長さbが40mm以上となるように設計することが好ましい。図5に、本発明の溶融金属の試料採取装置で採取された溶融金属が固化した後に取りだされた試料を示した。図5(1)は鋳型1、石英管2及び蓋部材3を取り除いた際の固化した溶融金属の形状を示した概略図である。また、図5(2)は、上記のうちの、各種分析用試料として用いることができる試料部分のみにしたものの形状を示した概略図であり、図5(3)は、各種分析用試料とできる試料を切り出した場合の形状を示した概略図である。
本発明の溶融金属の試料採取装置に用いる鋳型は、溶融金属を上方から導入するための開口と、溶融金属を充填するための空間とを有するものであればよい。例えば、図2に示したような、底面を有する高さの低い円筒形状とすれば、鋳型の開口が大きいため、溶融金属を充填した場合に、より速やかに鋳型内の空気が溶融金属に置換されるので、固化した溶融金属を取り出した場合に、ダレや空洞のない良好な状態のディスク状の試料を採取し易いものとなる。鋳型の材料としては、従来、広く用いられている汲み上げ式の溶融金属の試料採取装置に用いられている容器と同様のものにする等、いずれのものであってもよい。
本発明の溶融金属の試料採取装置は、上記したような鋳型と、該鋳型の開口を塞ぐための蓋部材と、石英管とを組み合わせ、図1に示したように、一方の端部が紙板で塞がれた状態の底部を有する紙管内に、上記鋳型を保持させる。該紙管の底部は、通常、紙板を用いて形成し、溶融金属側の面に耐火性を付与するためにモルタルを塗る。また、鋳型は、底部に直接、設置してもよいが、図1に示したように、底部に紙管を配置し、その上に鋳型を設置するように構成すれば、鋳型内に溶融金属が導入された場合に、その急冷効果によって、より発光分析に適した組織の試料を得ることができるので、より好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明について詳細に説明する。
<実施例1>
実施例1では、図2〜図4に示した寸法の、鋳型1、蓋部材3、石英管2と、140mmの長さの紙管4を用いて、図1に示したように組み合わせて、溶融金属の試料採取装置を4個作製した。蓋部材3には、先に説明した、珪砂を主成分とする耐火性粒子をフェノール系樹脂で被覆した、特開2002−113548号公報に記載されている実施例1で用いたレジンコーテッドサンドを金型に入れて加熱加圧することで、図3に示した、蓋部材3の厚みcが8mmである形状のものを形成して使用した。石英管2には、石英管2の部分Bの長さbが47mmとなるようにした図4に示した形状のものを用いた。また、組み立ての際に、溶融金属側端部がある側の石英管2の紙管4から出ている足の長さa(図1参照)が120mmとなるようにした。そして、特開平8−35962号公報に記載されている簡易な減圧タンクを使用し、それぞれ紙管内を減圧にし、実際の溶融金属浴から試料採取を行った。
<実施例1>
実施例1では、図2〜図4に示した寸法の、鋳型1、蓋部材3、石英管2と、140mmの長さの紙管4を用いて、図1に示したように組み合わせて、溶融金属の試料採取装置を4個作製した。蓋部材3には、先に説明した、珪砂を主成分とする耐火性粒子をフェノール系樹脂で被覆した、特開2002−113548号公報に記載されている実施例1で用いたレジンコーテッドサンドを金型に入れて加熱加圧することで、図3に示した、蓋部材3の厚みcが8mmである形状のものを形成して使用した。石英管2には、石英管2の部分Bの長さbが47mmとなるようにした図4に示した形状のものを用いた。また、組み立ての際に、溶融金属側端部がある側の石英管2の紙管4から出ている足の長さa(図1参照)が120mmとなるようにした。そして、特開平8−35962号公報に記載されている簡易な減圧タンクを使用し、それぞれ紙管内を減圧にし、実際の溶融金属浴から試料採取を行った。
この結果、いずれの場合も、試料採取後、溶融金属が固化した結果、鋳型1内の空間Aと、鋳型側端部を含む短い直線状の石英管の部分Bから、空洞等のない良好な状態の試料を採取することができた。これらの試料から図5(3)のようにして分析用の試料を切り出し、その後研磨して分析用試料を作製し、これらを用いて分析した。その結果、分析用試料間で、バラツキのない分析値が得られ、良好な試料採取ができたことが確認された。
また、本実施例では、図1に示した紙管4の底部5に紙管を配置し、その上に鋳型1を設置した溶融金属の試料採取装置を用いたが、底部に紙管を配置せずに、鋳型1を底部5に直接設置した溶融金属の試料採取装置を用いて実際の溶融金属浴から試料採取を行ったところ、上記と同様に空洞等のない良好な状態の試料を採取することができた。しかし、鋳型1内の空間Aから採取したそれぞれの試料を比較したところ、底部5に紙管を配置して試料採取した場合の方が、より発光分析に適した組織の試料を得ることができることがわかった。これは、鋳型1を紙管4の底部5に直接設置した場合と比べ、底部5に配置した紙管の上に設置した鋳型1の方が温度を低く保つことができるので、その急冷効果によって良好な組織の試料が得られたものと考えられる。
<実施例2〜6>
実施例2〜6では、用いる蓋部材3の形状を変えた以外は実施例1と同様にして溶融金属の試料採取装置をそれぞれ4個ずつ作製した。具体的には、図3中にcで示した鋳型の開口を塞いでいる部分における厚みを、5mm(実施例2)、7mm(実施例3)、9mm(実施例4)、10mm(実施例5)及び12mm(実施例6)とした以外は実施例1と同様にして得た蓋部材3をそれぞれに用いて、実施例1と同様に溶融金属の試料採取装置を組み立てた。それぞれ得た各溶融金属の試料採取装置を用い、実施例1と同様にして、実際の溶融金属浴から試料採取を行った。この結果、いずれも良好な試料採取ができることを確認した。蓋部材3のcで示した厚みを8mmとして行った実施例1の場合を含め、より詳細に得られた試料について検討した結果、蓋部材3のcで示した厚みを7mm〜10mmの範囲とした実施例1、3〜5の試料採取装置を用いた場合に、より歩留まりよく、良好な試料採取ができることが確認された。さらに、特に、蓋部材3のcで示した厚みを7mm又は8mmの範囲とした実施例1、3の試料採取装置を用いた場合に、より速やかに溶融金属に置換された鋳型内の空気が蓋部材及び紙管を介して大気中に放出できたためと考えられるが、より歩留まりよく、より良好な試料採取ができることを確認した。
実施例2〜6では、用いる蓋部材3の形状を変えた以外は実施例1と同様にして溶融金属の試料採取装置をそれぞれ4個ずつ作製した。具体的には、図3中にcで示した鋳型の開口を塞いでいる部分における厚みを、5mm(実施例2)、7mm(実施例3)、9mm(実施例4)、10mm(実施例5)及び12mm(実施例6)とした以外は実施例1と同様にして得た蓋部材3をそれぞれに用いて、実施例1と同様に溶融金属の試料採取装置を組み立てた。それぞれ得た各溶融金属の試料採取装置を用い、実施例1と同様にして、実際の溶融金属浴から試料採取を行った。この結果、いずれも良好な試料採取ができることを確認した。蓋部材3のcで示した厚みを8mmとして行った実施例1の場合を含め、より詳細に得られた試料について検討した結果、蓋部材3のcで示した厚みを7mm〜10mmの範囲とした実施例1、3〜5の試料採取装置を用いた場合に、より歩留まりよく、良好な試料採取ができることが確認された。さらに、特に、蓋部材3のcで示した厚みを7mm又は8mmの範囲とした実施例1、3の試料採取装置を用いた場合に、より速やかに溶融金属に置換された鋳型内の空気が蓋部材及び紙管を介して大気中に放出できたためと考えられるが、より歩留まりよく、より良好な試料採取ができることを確認した。
1:鋳型
2:蓋部材
3:石英管(導管)
4:紙管
5:底部
2:蓋部材
3:石英管(導管)
4:紙管
5:底部
Claims (6)
- 溶融金属を上方から導入するための開口と、溶融金属を充填するための空間とを有する鋳型、該鋳型の上記開口を緊密に塞ぐための蓋部材、該鋳型に溶融金属を導入するための一方の足の長さが長いU字形状の石英管、上記鋳型を内部に保持するための一方の端部が紙板で塞がれた底部を有する紙管、を少なくとも有してなる、該紙管内を減圧状態にして溶融金属を上記鋳型内に導入させた際に、溶融金属に置換された鋳型内の空気が上記蓋部材及び上記紙管を介して大気中に放出される構造のものであり、
上記石英管は、溶融金属中に浸漬される側の一方の端部にキャップがされており、該キャップが溶解することで該端部から侵入した溶融金属を、鋳型の空間に連通しているもう一方の端部から、該空間内に且つ鋳型の上方から導入するためのものであって、溶融金属に浸漬される側の足の長さが、鋳型の空間に連通している端部がある側の足の長さよりも長く、且つ、逆U字となるようにして配置されており、
上記蓋部材は、通気機能を有する耐火性の無機多孔質体で形成されており、その一部に、上記石英管の鋳型側の端部を鋳型の空間に連通した状態で配置させるための貫通孔が設けられていることを特徴とする溶融金属の試料採取装置。 - 前記蓋部材の鋳型の開口を塞いでいる部分における厚みが、7mm〜10mmの範囲内にある請求項1に記載の溶融金属の試料採取装置。
- 前記鋳型側の端部がある石英管の足の直線部分の長さが、少なくとも40mm以上ある請求項1又は2に記載の溶融金属の試料採取装置。
- 前記通気機能を有する無機多孔質体が、耐火性粒子をフェノール系樹脂で被覆した熱硬化性のコーテッドサンドであり、前記蓋部材は、該コーテッドサンドを加熱加圧することで形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶融金属の試料採取装置。
- 前記通気機能を有する無機多孔質体が、けい砂、アルミナ系人工砂、オリビン砂、ジルコン砂、クロマイト砂の少なくとも一つから成る骨材と、リン酸塩系、炭酸塩系、硫酸マグネシウム系の一種又は二種以上の混合物からなる粘結剤と、これらに添加される水とから構成される水溶性鋳物砂からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶融金属の試料採取装置。
- 前記鋳型が、前記紙管の底部に配置された紙管の上に配置されて、該底部に設置しないようにして保持されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶融金属の試料採取装置。
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