JP2013138723A - ゴルフボール用樹脂組成物およびゴルフボール - Google Patents

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Abstract

【課題】反発性に優れたゴルフボール用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)(a−1)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(a−2)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂、(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂より成る群から選択される少なくとも一種の樹脂成分と、(B)塩基性脂肪酸金属塩とを含有し、固体高分解能炭素核磁気共鳴法(NMR法)によって観測される13C核のスピン−格子緩和時間(T1)が、5.56秒以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、ゴルフボール用樹脂組成物およびこれを用いたゴルフボールに関するものである。
ゴルフボールの構造としては、例えば、ゴルフボール本体からなるワンピースゴルフボール、コアとカバーとを有するツーピースゴルフボール、センターと前記センターを被覆する一層の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するカバーとを有するスリーピースゴルフボール、センターと前記センターを被覆する少なくとも二以上の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するカバーとを有するマルチピースゴルフボールが挙げられる。ゴルフボールの各層を構成する材料として、アイオノマー樹脂が使用されている。アイオノマー樹脂は、剛性が高く、ゴルフボールの構成部材として使用すると、飛距離の大きいゴルフボールが得られる。そのため、アイオノマー樹脂は、ゴルフボールの中間層やカバーの材料として広く使用されている。
例えば、特許文献1には、E/X/Yコポリマー(ここで、Eはエチレンであり、XはC3〜C8のα,βエチレン性不飽和カルボン酸であり、Yは、アルキル基が1〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートから選択される軟化コモノマーである)を含む熱可塑性組成物であって、a.前記E/X/Yコポリマーは、ASTM D−1238、条件Eにしたがって、190℃で、2160グラムの重量を用いて測定して、10分あたり少なくとも75グラムのメルトインデックスを有し、b.Xは、前記E/X/Yコポリマーの約2〜30wt%であり、Yは、前記E/X/Yコポリマーの約17〜40wt%であり、かつ、c.Xの少なくとも55%は、1つ以上のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属のカチオンによって中和されることを特徴とする熱可塑性組成物が開示されている。前記熱可塑性組成物は、ゴルフボール用に使用され得る。
特許文献2には、(a)オレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、(b)オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物とを質量比で100:0〜25:75になるように配合したベース樹脂と、(e)非アイオノマー熱可塑性エラストマーとを質量比で100:0〜50:50になるように配合した樹脂成分100質量部に対して、(c)分子量が280〜1500の脂肪酸及び/又はその誘導体5〜80質量部と、(d)上記ベース樹脂及び(c)成分中の未中和の酸基を中和できる塩基性無機金属化合物 0.1〜10質量部とを必須成分として配合してなる混合物であることを特徴とするゴルフボール用材料が開示されている。
特許文献3には、(A)エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂100質量部に対して、(B)炭素数が18〜30の脂肪酸の金属塩を25質量部〜100質量部含有することを特徴とするゴルフボール用樹脂組成物が開示されている。
特許文献4には、(a)重量平均分子量(Mw)が120,000〜200,000であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比が3.0〜10.0であるオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体、またはその金属中和物 100質量部、(b)有機酸又はその金属塩 75〜200質量部、及び(c)塩基性無機金属化合物を含有し、上記(c)成分は、上記(a),(b)成分中の酸基を中和するための成分であり、その配合量が上記(a),(b)成分中の酸基に対して30〜130モル%に相当する量である樹脂組成物を含有することを特徴とするゴルフボール用材料が開示されている。
特許文献5には、(a)重量平均分子量(Mw)が40,000〜200,000であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比が3.5〜8.5であるオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体であって、その共重合体の酸基の30モル%以上が中和された金属中和ポリマーと、(b)有機酸又はその金属塩と、(c)上記(a),(b)成分中の酸基のうち70モル%以上を中和するための塩基性無機金属化合物とを含有し、その樹脂混合物のショアD硬度が30〜50であることを特徴とするゴルフボール用材料が開示されている。
特表2004−524418号公報 特開2002−219195号公報 特開2011−101788号公報 特開2010−142640号公報 特開2011−104365号公報
従来、ゴルフボールのコアとしては、ゴム組成物の硬化物が用いられてきた。しかし、ゴム組成物の硬化物は、熱可塑性がなく、コアに成形した後は、リサイクルすることができないという問題があった。最近、射出成形が可能な熱可塑性樹脂を用いて、コアを成形することが検討されているが、ゴム組成物の硬化物のように反発性に優れた軟質な材料は得られていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、射出成形が可能であって、反発性に優れたゴルフボール用樹脂組成物を提供することを目的とする。本発明は、さらに、打球感および反発性に優れたゴルフボールを提供することを課題とする。
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(A)(a−1)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(a−2)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂、(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂より成る群から選択される少なくとも一種の樹脂成分と、(B)塩基性脂肪酸金属塩とを含有し、固体高分解能炭素核磁気共鳴法(NMR法)によって観測される13C核のスピン−格子緩和時間(T1)が、5.56秒以下であることを特徴とする。
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、固体高分解能炭素核磁気共鳴法(NMR法)によって観測される13C核のスピン−格子緩和時間(T1)が、5.56秒以下であることを特徴とする。アイオノマー樹脂について、固体高分解能炭素核磁気共鳴法(NMR法)によって観測される13C核のスピン−格子緩和時間(T1)により磁化率の減衰を測定したとき、この緩和時間(T1)は、エチレン鎖のトランスコンホメーションに由来すると考えられている。本発明者らは、トランスコンホメーションをとる可能性がある部位には、エチレン結晶とイオン会合体周りのエチレン鎖拘束層とがあり、磁化率の減衰測定における緩和成分も短時間成分と長時間成分とに分離できると考え、エチレン鎖拘束層が反発性と相関があることを見出した。すなわち、前記緩和時間(T1)が短くなると、エチレン拘束層の運動性が高くなり、反発性が向上する。そして、本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、固体高分解能炭素核磁気共鳴法(NMR法)によって観測される13C核のスピン−格子緩和時間(T1)が、5.56秒以下と短く、エチレン拘束層の運動性が高くなり、反発性が高い。斯かるゴルフボール用樹脂組成物から形成された構成部材を有するゴルフボールは、打球感および反発性に優れる。
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(A)(a−1)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(a−2)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂、(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂より成る群から選択される少なくとも一種の樹脂成分と、(B)塩基性脂肪酸金属塩とを含有する。(A)前記樹脂成分と(B)塩基性脂肪酸金属塩とを含有する本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、射出成形およびリサイクルできる。
本発明によれば、射出成形およびリサイクルが可能であって、反発性に優れたゴルフボール用樹脂組成物が得られる。本発明のゴルフボール用樹脂組成物を用いたゴルフボールは、打球感および反発性に優れる。
反発係数と緩和時間(T1)との関係を示すグラフ。
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(A)(a−1)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(a−2)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂、(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂より成る群から選択される少なくとも一種の樹脂成分と、(B)塩基性脂肪酸金属塩とを含有し、固体高分解能炭素核磁気共鳴法(NMR法)によって観測される13C核のスピン−格子緩和時間(T1)が、5.56秒以下であることを特徴とする。
前記緩和時間(T1)が5.56秒以下であれば、反発性の高いゴルフボール用樹脂組成物が得られる。前記緩和時間(T1)は、5.05秒以下がより好ましい。前記緩和時間(T1)の下限は、特に限定されないが、0.001秒が好ましく、0.002秒がより好ましい。前記緩和時間(T1)は、後述する方法により測定することができる。前記緩和時間(T1)は、後述する(A)樹脂成分および(B)塩基性脂肪酸金属塩の種類、含有量などを適宜選択することにより制御することができる。
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(A)(a−1)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(a−2)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂、(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂より成る群から選択される少なくとも一種の樹脂成分と(B)塩基性脂肪酸金属塩とを含有する。
まず、本発明で使用する(A)(a−1)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(a−2)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂、(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂より成る群から選択される少なくとも一種の樹脂成分
について説明する。
前記(a−1)成分は、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体であって、そのカルボキシル基が中和されていない非イオン性のものである。また、前記(a−2)成分としては、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂を挙げることができる。
前記(a−3)成分は、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体であって、そのカルボキシル基が中和されていない非イオン性のものである。前記(a−4)成分としては、オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸と、α,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂を挙げることができる。
なお、本発明において、「(a−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体」を単に「二元共重合体」と称し、「(a−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂」を「二元系アイオノマー樹脂」と称し、「(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体」を単に「三元共重合体」と称し、「(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂」を「三元系アイオノマー樹脂」と称する場合がある。
前記オレフィンとしては、炭素数が2〜8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンであることが好ましい。前記炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。
前記(a−1)二元共重合体としては、エチレンと(メタ)アクリル酸との二元共重合体が好ましく、前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。前記(a−3)三元共重合体としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体が好ましい。前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
前記(a−1)二元共重合体または(a−3)三元共重合体中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、4質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下である。
前記(a−1)二元共重合体または(a−3)三元共重合体のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、5g/10min以上が好ましく、より好ましくは10g/10min以上、さらに好ましくは15g/10min以上であり、1700g/10min以下が好ましく、より好ましくは1500g/10min以下、さらに好ましくは1300g/10min以下である。前記(a−1)二元共重合体または(a−3)三元共重合体のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が5g/10min以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、構成部材の成形が容易になる。また、前記(a−1)二元共重合体または(a−3)三元共重合体のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が1700g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
前記(a−1)二元共重合体の具体例を商品名で例示すると、例えば、三井デュポンポリケミカル社から商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルN1050H」、「ニュクレルN2050H」、「ニュクレルN1110H」、「ニュクレルN0200H」)」で市販されているエチレン−メタクリル酸共重合体、ダウケミカル社から商品名「プライマコア(PRIMACOR)(登録商標)5980I」で市販されているエチレン−アクリル酸共重合体などを挙げることができる。
前記(a−3)三元共重合体の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル社から市販されている商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルAN4318」「ニュクレルAN4319」)」、デュポン社から市販されている商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルAE」)」、ダウケミカル社から市販されている商品名「プライマコア(PRIMACOR)(登録商標)(例えば、「PRIMACOR AT310」、「PRIMACOR AT320」)」などを挙げることができる。前記(a−1)二元共重合体または(a−3)三元共重合体は、単独または二種以上を組み合わせて使用しても良い。
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、15質量%以上が好ましく、16質量%以上がより好ましく、17質量%以上がさらに好ましく、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率が、15質量%以上であれば、得られる構成部材を所望の硬度にしやすくなるからである。また、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率が、30質量%以下であれば、得られる構成部材の硬度が高くなり過ぎず、耐久性と打球感が良好になるからである。
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、15モル%以上が好ましく、20モル%以上が好ましく、90モル%以下が好ましく、85モル%以下がより好ましい。中和度が15モル%以上であれば、得られるゴルフボールの反発性および耐久性が良好になる。一方、中和度が90モル%以下であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好になる(成形性が良い)。なお、前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
二元系アイオノマー樹脂の中和度(モル%)=100×二元系アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/二元系アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7311(Mg)、ハイミランAM7329(Zn)など」が挙げられる。
さらにデュポン社から市販されている「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li))」などが挙げられる。
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn))」などが挙げられる。
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂は、例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。前記商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂の曲げ剛性率は、140MPa以上が好ましく、より好ましくは150MPa以上、さらに好ましくは160MPa以上であり、550MPa以下が好ましく、より好ましくは500MPa以下、さらに好ましくは450MPa以下である。前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂の曲げ剛性率が低すぎると、ゴルフボールのスピン量が増加して飛距離が低下する傾向があり、曲げ剛性率が高すぎると、ゴルフボールの耐久性が低下する場合がある。
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、0.1g/10min以上が好ましく、より好ましくは0.5g/10min以上、さらに好ましくは1.0g/10min以上であり、30g/10min以下が好ましく、より好ましくは20g/10min以下、さらに好ましくは15g/10min以下である。前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が0.1g/10min以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、例えば、薄い層の成形が可能となる。また、前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が30g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で50以上が好ましく、より好ましくは55以上、さらに好ましくは60以上であり、75以下が好ましく、より好ましくは73以下、さらに好ましくは70以下である。前記スラブ硬度が、ショアD硬度で50以上であれば、得られる構成部材が高硬度となる。また、前記スラブ硬度が、ショアD硬度で75以下であれば、得られる構成部材が硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性がより良好となる。
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、2質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下である。
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、20モル%以上が好ましく、より好ましくは30モル%以上であり、90モル%以下が好ましく、より好ましくは85モル%以下である。中和度が20モル%以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物を用いて得られるゴルフボールの反発性および耐久性が良好になり、90モル%以下であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好になる(成形性が良い)。なお、アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
アイオノマー樹脂の中和度(モル%)=100×アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミランAM7327(Zn)、ハイミラン1855(Zn)、ハイミラン1856(Na)、ハイミランAM7331(Na)など)」が挙げられる。さらにデュポン社から市販されている三元系アイオノマー樹脂としては、「サーリン6320(Mg)、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン9320W(Zn)など)」が挙げられる。またエクソンモービル化学(株)から市販されている三元系アイオノマー樹脂としては、「アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。なお、商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Mgなどは、中和金属イオンの種類を示している。前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂は、単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂の曲げ剛性率は、10MPa以上が好ましく、より好ましくは11MPa以上、さらに好ましくは12MPa以上であり、100MPa以下が好ましく、より好ましくは97MPa以下、さらに好ましくは95MPa以下である。前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂の曲げ剛性率が低すぎると、ゴルフボールのスピン量が増加して飛距離が低下する傾向があり、曲げ剛性率が高すぎると、ゴルフボールの耐久性が低下する場合がある。
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、0.1g/10min以上が好ましく、より好ましくは0.3g/10min以上、さらに好ましくは0.5g/10min以上であり、20g/10min以下が好ましく、より好ましくは15g/10min以下、さらに好ましくは10g/10min以下である。前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が0.1g/10min以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、薄い層の成形が容易になる。また、前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が20g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で20以上が好ましく、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上であり、70以下が好ましく、より好ましくは65以下、さらに好ましくは60以下である。前記スラブ硬度が、ショアD硬度で20以上であれば、得られる構成部材が柔らなく成り過ぎず、ゴルフボールの反発性が良好になる。また、前記スラブ硬度が、ショアD硬度で70以下であれば、得られる構成部材が硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性がより良好となる。
(A)前記樹脂成分としては、(a−1)二元共重合体、(a−2)二元系アイオノマー樹脂、(a−3)三元共重合体、または(a−4)三元系アイオノマー樹脂を単独で使用してもよく、あるいは、2種以上を混合して使用してもよい。本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(A)樹脂成分として、(a−3)三元共重合体、または、(a−4)三元系アイオノマー樹脂を含有することが好ましい。得られる構成部材が硬くなり過ぎず、反発性が高くなるからである。
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(A)前記樹脂成分と(B)塩基性脂肪酸金属塩とを含有する。本発明のゴルフボール用樹脂組成物が、(B)塩基性脂肪酸金属塩を含有することにより、(A)樹脂成分の未中和のカルボキシル基が中和されて、反発性が向上する。以下、(B)塩基性脂肪酸金属塩について説明する。
(B)塩基性脂肪酸金属塩は、脂肪酸と金属酸化物又は水酸化物とを反応させる公知の製造方法により得られるが、一般の脂肪酸金属塩が脂肪酸と反応当量の金属酸化物又は水酸化物とを反応させるのに対して、塩基性脂肪酸金属塩は脂肪酸と反応当量以上の過剰に金属酸化物又は水酸化物を加えて得られたもので、その生成物の金属含有量、融点等は一般の脂肪酸金属塩とは異なる。
(B)塩基性脂肪酸金属塩としては、例えば、下記一般式(1)で示されるものが好ましい。
mMO・M(RCOO) ・・・(1)
(1)式中、mは、上記式(1)に示される塩基性脂肪酸金属塩中の金属酸化物または金属水酸化物のモル数を示すものである。mは、0.1〜2.0であることが好ましく、0.2〜1.5であることがより好ましい。mが0.1未満であれば、得られる樹脂組成物の反発性が低下する場合があり、mが2.0を超えると、塩基性脂肪酸金属塩の融点が高くなり過ぎて、樹脂成分への分散性が困難になる場合がある。MおよびMは、それぞれ周期表第2族または第12族に属する金属が好ましい。MおよびMは、同一または異なっていてもよい。第2族に属する金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムを挙げることができる。第12族に属する金属としては、亜鉛、カドミウム、水銀を挙げることができる。MおよびMの金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛が好ましく、マグネシウムがより好ましい。
式(1)において、RCOOは、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸の残基を示す。(B)塩基性脂肪酸金属塩の飽和脂肪酸成分の具体例(IUPAC名)としては、ブタン酸(C4)、ペンタン酸(C5)、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)、ウンデカン酸(C11)、ドデカン酸(C12)、トリデカン酸(C13)、テトラデカン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、ヘキサデカン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、オクタデカン酸(C18)、ノナデカン酸(C19)、イコサン酸(C20)、ヘンイコサン酸(C21)、ドコサン酸(C22)、トリコサン酸(C23)、テトラコサン酸(C24)、ペンタコサン酸(C25)、ヘキサコサン酸(C26)、ヘプタコサン酸(C27)、オクタコサン酸(C28)、ノナコサン酸(C29)、トリアコンタン酸(C30)などを挙げることができる。
(B)塩基性脂肪酸金属塩の不飽和脂肪酸成分の具体例(IUPAC名)としては、ブテン酸(C4)、ペンテン酸(C5)、ヘキセン酸(C6)、ヘプテン酸(C7)、オクテン酸(C8)、ノネン酸(C9)、デセン酸(C10)、ウンデセン酸(C11)、ドデセン酸(C12)、トリデセン酸(C13)、テトラデセン酸(C14)、ペンタデセン酸(C15)、ヘキサデセン酸(C16)、ヘプタデセン酸(C17)、オクタデセン酸(C18)、ノナデセン酸(C19)、イコセン酸(C20)、ヘンイコセン酸(C21)、ドコセン酸(C22)、トリコセン酸(C23)、テトラコセン酸(C24)、ペンタコセン酸(C25)、ヘキサコセン酸(C26)、ヘプタコセン酸(C27)、オクタコセン酸(C28)、ノナコセン酸(C29)、トリアコンテン酸(C30)などを挙げることができる。
(B)塩基性脂肪酸金属塩の脂肪酸成分の具体例(慣用名)としては、例えば、酪酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ミリストレイン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、パルミトレイン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、エライジン酸(C18)、バクセン酸(C18)、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、12−ヒドロキシステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ガドレイン酸(C20)、アラキドン酸(C20)、エイコセン酸(C20)、べヘニン酸(C22)、エルカ酸(C22)、リグノセリン酸(C24)、ネルボン酸(C24)、セロチン酸(C26)、モンタン酸(C28)、メリシン酸(C30)などを挙げることができる。
(B)塩基性脂肪酸金属塩は、塩基性不飽和脂肪酸金属塩であることが好ましい。前記不飽和脂肪酸成分としては、オレイン酸(C18)、エルカ酸(C22)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、アラキドン酸(C20)、エイコサペンタエン酸(C20)、ドコサヘキサエン酸(C22)、ステアリドン酸(C18)、ネルボン酸(C24)、バクセン酸(C18)、ガドレイン酸(C20)、エライジン酸(C18)、エイコセン酸(C20)、エイコサジエン酸(C20)、ドコサジエン酸(C22)、ピノレン酸(C18)、エレオステアリン酸(C18)、ミード酸(C20)、アドレン酸(C22)、イワシ酸(C22)、ニシン酸(C24)、および、テトラコサペンタエン酸(C24)よりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
(B)塩基性脂肪酸金属塩は、炭素数が8〜30の塩基性脂肪酸金属塩が好ましく、炭素数が12〜24の塩基性脂肪酸金属塩が好ましい。(B)塩基性脂肪酸金属塩の具体例としては、塩基性ラウリン酸マグネシウム、塩基性ラウリン酸カルシウム、塩基性ラウリン酸亜鉛、塩基性ミリスチン酸マグネシウム、塩基性ミリスチン酸カルシウム、塩基性ミリスチン酸亜鉛、塩基性パルミチン酸マグネシウム、塩基性パルチミン酸カルシウム、塩基性パルミチン酸亜鉛、塩基性オレイン酸マグネシウム、塩基性オレイン酸カルシウム、塩基性オレイン酸亜鉛、塩基性ステアリン酸マグネシウム、塩基性ステアリン酸カルシウム、塩基性ステアリン酸亜鉛、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、塩基性ベヘニン酸マグネシウム、塩基性ベヘニン酸カルシウム、塩基性ベヘニン酸亜鉛などが挙げられる。(B)塩基性脂肪酸金属塩としては、塩基性脂肪酸マグネシウムが好ましく、塩基性ステアリン酸マグネシウム、塩基性ベヘニン酸マグネシウム、塩基性ラウリン酸マグネシウム、および、塩基性オレイン酸マグネシウムがより好ましい。(B)前記塩基性脂肪酸金属塩は、単独若しくは2種以上の混合物として使用することもできる。
(B)塩基性脂肪酸金属塩の融点は、特に制約されないが、例えば金属がマグネシウムの場合は、100℃以上のものが好ましく、300℃以下のものが好ましく、290℃以下のものがより好ましく、280℃以下のものがさらに好ましい。融点が、上記範囲であれば、樹脂成分への分散性が良好になるからである。
(B)塩基性脂肪酸金属塩の金属成分の含有量は、1モル%以上が好ましく、1.1モル%以上がより好ましく、2モル%以下が好ましく、1.9モル%以下がより好ましい。金属成分の含有量が前記範囲内であれば、得られるゴルフボールの反発性が一層向上するからである。なお、(B)塩基性脂肪酸金属塩の金属成分の含有量は、金属塩1モルあたりに含まれる金属量gを、その金属の原子量で割った値をいい、モル%で表す。
本発明で使用するセンター用組成物中における(B)塩基性脂肪酸金属塩の含有量は、前記(A)樹脂成分100質量部に対して、25質量部以上が好ましく、33質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、100質量部以下が好ましい。(B)前記塩基性脂肪酸金属塩の含有量を25質量部以上とすることにより、ゴルフボールの反発性が向上し、100質量部以下とすることにより、低分子量成分の増加にともなうゴルフボールの耐久性の低下を抑制できるからである。
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、樹脂成分として、(A)樹脂成分のみを含有することが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性エラストマーや熱可塑性樹脂を含有しても良い。他の熱可塑性エラストマーや熱可塑性樹脂を含有する場合、樹脂成分中の(A)樹脂成分の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
前記他の熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えばアルケマ(株)から商品名「ペバックス(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(例えば、「エラストランXNY85A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(例えば、「ラバロンT3221C」)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマー等が挙げられる。
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、さらに、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料などの顔料成分、重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、ゴルフボールの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、得られるゴルフボール構成部材に隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるゴルフボールの耐久性が低下する場合があるからである。
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、例えば、(A)成分と(B)成分とをドライブレンドすることにより得られる。また、ドライブレンドした混合物を、押出してペレット化してもよい。ドライブレンドには、例えば、ペレット状の原料を配合できる混合機を用いるのが好ましく、より好ましくはタンブラー型混合機を用いる。押出は、一軸押出機、二軸押出機、二軸一軸押出機など公知の押出機を使用することができる。
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、ショアD硬度で20以上が好ましく、25以上がより好ましく、30以上がさらに好ましく、65以下が好ましく、60以下がより好ましく、56以下がさらに好ましい。ショアD硬度で20以上のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、反発性(飛距離)に優れるゴルフボールが得られる。一方、ショアD硬度で65以下のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、打球感に優れるゴルフボールが得られる。ここで、ゴルフボール用樹脂組成物の硬度とは、ゴルフボール用樹脂組成物をシート状に成形して測定したスラブ硬度であり、後述する測定方法により測定する。
本発明のゴルフボール用樹脂組成物のメルトフローレイト(190℃×2.16kg)は、0.01g/10min以上が好ましく、0.05g/10min以上がより好ましく、0.1g/10min以上がさらに好ましく、100g/10min以下が好ましく、80g/10min以下がより好ましく、50g/10min以下がさらに好ましい。ゴルフボール用樹脂組成物のメルトフローレイトが、上記範囲内であれば、ゴルフボール構成部材への成形性が良好である。
本発明のゴルフボール用樹脂組成物の曲げ剛性率は、10MPa以上が好ましく、15MPa以上がより好ましく、20MPa以上がさらに好ましく、450MPa以下が好ましく、400MPa以下がより好ましく、350MPa以下がさらに好ましい。曲げ剛性率が10MPa以上のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、反発性(飛距離)に優れるゴルフボールが得られる。また、曲げ剛性率が450MPa以下であれば、得られるゴルフボールが適度に柔らかくなって、打球感が良好となる。
本発明のゴルフボール用樹脂組成物の反発弾性は、40%以上が好ましく、43%以上がより好ましく、46%以上がさらに好ましい。反発弾性が、40%以上のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、反発性(飛距離)に優れるゴルフボールが得られる。前記曲げ剛性率と反発弾性は、ゴルフボール用樹脂組成物をシート状に成形して測定した曲げ剛性率および反発弾性であり、後述する測定方法により測定する。
本発明のゴルフボールは、本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成された構成部材を有するものであれば、特に限定されない。例えば、ワンピースゴルフボール;単層コアと、前記単層コアを被覆するように配設されたカバーとを有するツーピースゴルフボール;センターと前記センターを被覆するように配設された単層の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するように配設されたカバーとを有するスリーピースゴルフボール;または、センターと前記センターを被覆するように配設された一以上の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するように配設されたカバーを有するマルチピースゴルフボール(前記スリーピースゴルフボールを含む)を構成するいずれかの構成部材が本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成されているゴルフボールを挙げることができる。これらの中でも、少なくとも一層以上のコアと前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記コアの少なくとも一層が、本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成されている態様、または、ワンピースゴルフボールのゴルフボール本体が本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成されている態様が好ましい。特に、単層コアと、前記単層コアを被覆するように配設されたカバーとを有するツーピースゴルフボールであって、前記単層コアが本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成されている態様、または、センターと前記センターを被覆するように配設された一以上の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するように配設されたカバーを有するマルチピースゴルフボールであって、前記センターが、本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成されている態様が好ましい。
以下、本発明のゴルフボールを、コアと前記コアを被覆するように配設されたカバーとを有するツーピースゴルフボールであって、前記コアが、本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成されている態様に基づいて詳述するが、本発明は斯かる態様に限定されない。
前記コアは、例えば、本発明のゴルフボール用樹脂組成物を射出成形することにより成形される。具体的には、1MPa〜100MPaの圧力で型締めした金型内に、160℃〜260℃に加熱溶融したゴルフボール用樹脂組成物を1秒〜100秒で注入し、30秒〜300秒間冷却して型開きすることにより行うことが好ましい。
前記コアの形状としては、球状であることが好ましい。コアの形状が球状でない場合には、カバーの厚みが不均一になる。その結果、部分的にカバー性能が低下する箇所が生じるからである。
前記コアの直径は、39.00mm以上が好ましく、39.25mm以上がより好ましく、39.50mm以上がさらに好ましく、42.37mm以下が好ましく、42.22mm以下がより好ましく、42.07mm以下がさらに好ましい。前記コアの直径が39.00mm以上であれば、カバー層の厚みが厚くなり過ぎず、その結果、反発性が良好となる。一方、コアの直径が42.37mm以下であれば、カバー層が薄くなり過ぎず、カバーの保護機能が十分に発揮される。
前記コアは、直径39.00mm〜42.37mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にセンターが縮む量)が、1.00mm以上が好ましく、1.10mm以上がより好ましく、5.00mm以下が好ましく、4.90mm以下がより好ましく、4.80mm以下がさらに好ましい。前記圧縮変形量が、1.00mm以上であれば打球感が良好となり、5.00mm以下であれば、反発性が良好となる。
前記コアの表面硬度は、ショアD硬度で20以上が好ましく、25以上がより好ましく、30以上がさらに好ましく、70以下が好ましく、69以下がより好ましい。コアの表面硬度を、ショアD硬度で20以上とすることにより、コアが軟らかくなり過ぎることがなく、良好な反発性が得られる。また、コアの表面硬度をショアD硬度で70以下とすることにより、コアが硬くなり過ぎず、良好な打球感が得られる。
前記コアの中心硬度は、ショアD硬度で20以上であることが好ましく、22以上がより好ましく、24以上がさらに好ましい。コアの中心硬度がショアD硬度で20未満であると、軟らかくなりすぎて反発性が低下する場合がある。また、コアの中心硬度は、ショアD硬度で50以下であることが好ましく、48以下がより好ましく、46以下がさらに好ましい。中心硬度がショアD硬度で50を超えると、硬くなり過ぎて、打球感が低下する傾向があるからである。本発明において、コアの中心硬度とは、コアを2等分に切断して、その切断面の中心点についてスプリング式硬度計ショアD型で測定した硬度を意味する。
前記コアが、充填剤を含有することも好ましい。充填剤は、主として最終製品として得られるゴルフボールの密度を1.0〜1.5g/cmの範囲に調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。充填剤の配合量が0.5質量部未満では、重量調整が難しくなり、30質量部を超えると樹脂成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
本発明のゴルフボールのカバーは、樹脂成分を含有するカバー用組成物から形成されることが好ましい。前記樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂若しくは2液硬化型ウレタン樹脂などのウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などの各種樹脂、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどを挙げることができる。前記樹脂成分は、単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
前記アイオノマー樹脂としては、(a−2)成分、または、(a−4)成分として例示したものを使用することが好ましい。
ゴルフボールのカバーを構成するカバー用組成物は、樹脂成分として、ポリウレタン樹脂(ポリウレタンエラストマーを含む)またはアイオノマー樹脂を含有することがより好ましい。カバー用組成物の樹脂成分中のポリウレタン樹脂またはアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
カバー用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
本発明のゴルフボールのカバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する圧縮成形法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する射出成形法を挙げることができる。
カバー用組成物を射出成形してカバーを成形する場合、あらかじめ押出して得られたペレット状のカバー用組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、基材樹脂成分や顔料などのカバー用材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、上記ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、カバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができる。具体的には、9MPa〜15MPaの圧力で型締めした金型内に、200℃〜250℃に加熱したカバー用組成物を0.5秒〜5秒で注入し、10秒〜60秒間冷却して型開きすることにより行うことが好ましい。
カバーには、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
カバーの厚みは、2.0mm以下が好ましく、1.6mm以下がより好ましく、1.2mm以下がさらに好ましく、1.0mm以下が特に好ましい。カバーの厚みが2.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上がさらに好ましい。カバーの厚みが0.1mm未満では、カバーの成形が困難になるおそれがあり、また、カバーの耐久性や耐摩耗性が低下する場合もある。
カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、25μm以下が好ましく、18μm以下がより好ましい。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が25μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
本発明のゴルフボールは、直径が40mm〜45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、2.2mm以上がより好ましく、4.0mm以下であることが好ましく、3.5mm以下がより好ましい。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を4.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
以上、本発明のゴルフボール用樹脂組成物をコアに用いる態様について説明したが、本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、センター、中間層、あるいは、カバーにも用いることもできる。センターが本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成される場合、中間層を形成する材料としては、例えば、カバー材料として例示した樹脂成分を用いることができる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
[評価方法]
(1)スラブ硬度(ショアD硬度)
ゴルフボール用樹脂組成物を用いて、熱プレス成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
(2)メルトフローレイト(MFR)(g/10min)
MFRは、フローテスター(島津製作所社製、島津フローテスターCFT−100C)を用いて、JIS K7210に準じて測定した。なお、測定は、測定温度190℃、荷重2.16kgの条件で行った。
(3)反発弾性(%)
ゴルフボール用樹脂組成物を用いて、熱プレス成形にて厚み約2mmのシートを作製し、当該シートから直径28mmの円形状に打抜いたものを6枚重ねることにより、厚さ約12mm、直径28mmの円柱状試験片を作製した。この試験片についてリュプケ式反発弾性試験(試験温湿度23℃、50RH%)を行った。なお、試験片の作製および試験方法は、JIS K6255に準じて行った。
(4)圧縮変形量(mm)
球形体に初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向に球形体が縮む量)を測定した。圧縮変形量は、球形体No.5の変形量を1.00として指数化した値で示した。
(5)反発係数
各球形体に198.4gの金属製円筒物を40m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の円筒物および球形体の速度を測定し、それぞれの速度および重量から各球形体の反発係数を算出した。測定は、各球形体について12個ずつ行って、その平均値を各球形体の反発係数とした。
(6)打球感
アマチュアゴルファー(上級者)10人により、ドライバーを用いた実打テストを行って、各人の打撃時のフィーリングを下記基準で評価させた。10人の評価のうち、最も多い評価をそのゴルフボールの打球感とした。
評価基準
優:衝撃が少なくてフィーリングが良い。
良:普通。
不良:衝撃が大きくてフィーリングが悪い。
(7)固体高分解能炭素核磁気共鳴法(NMR法)によって観測される13C核のスピン−格子緩和時間(T1)の測定方法
装置:Bruker Avance 400
測定方法:Torcha法によるT1緩和時間測定
測定周波数:100.6256207MHz
測定温度:室温
基準物質:アダマンタン
マジック角回転の回転数:5000Hz
パルス幅:4.80μsec
コンタクトタイム:2000μsec
パルスの間隔:1μsec,100msec、500msec、1sec、2sec、3sec、4sec、6sec、8sec、10sec、12sec、15sec、20sec、40sec、80sec、120sec
磁場強度:9.4T
[球形体(コア)の作製]
表1〜表3に示すように、配合材料をドライブレンドし、二軸混練型押出機によりミキシングして、ストランド状に冷水中に押し出した。押出されたストランドをペレタイザーにより切断してペレット状のゴルフボール用樹脂組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160〜230℃に加熱された。得られたペレット状のゴルフボール用樹脂組成物を220℃にて射出成形し、直径40mmの球形体(コア)を得た。
Figure 2013138723
Figure 2013138723
Figure 2013138723
表1〜表3で使用した原料は以下の通りである。
サーリン6320:デュポン社製、マグネシウムイオン中和エチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル三元共重合体アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):1.0g/10min)
ニュクレルAN4319:三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):55g/10min、曲げ剛性率:21MPa)
ニュクレルN1560:三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン・メタクリル酸共重合体(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):60g/10min、ショアD硬度:53、曲げ剛性率:83MPa)
塩基性オレイン酸マグネシウム:日東化成工業社製(金属含有量1.8モル%、(1)式において、M=M=Mg,R=炭素数17)
オレイン酸マグネシウム:日東化成工業社製
オレイン酸:和光純薬工業社製
ベヘニン酸マグネシウム:和光純薬工業社製
水酸化マグネシウム:和光純薬工業社製
表1〜表3から明らかなように、(A)(a−1)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(a−2)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂、(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂より成る群から選択される少なくとも一種の樹脂成分と、(B)塩基性脂肪酸金属塩とを含有し、固体高分解能炭素核磁気共鳴法(NMR法)によって観測される13C核のスピン−格子緩和時間(T1)が、5.56秒以下であるゴルフボール用樹脂組成物は、反発性が高く、射出成形およびリサイクルが可能であった。また、斯かるゴルフボール用樹脂組成物から作製したゴルフボールは、いずれも打球感が良好であった。
ゴルフボールNo.3〜No.7とゴルフボールNo.18〜No.24とを比較すると、ゴルフボールNo.24では、樹脂成分100質量部に対するMgのモル数が0.17モルの場合、反発性が低下するのに対し、ゴルフボールNo.7では、樹脂成分100質量部に対するMgのモル数が0.33モルであっても反発性がさらに向上していることが分かる。この結果より、本願発明で使用する塩基性脂肪酸金属塩は、単なる脂肪酸金属塩に比べて、中和能力が高く、得られるゴルフボール用樹脂組成物の反発性向上効果が高いことが分かる。
図1は、反発係数と緩和時間(T1)との関係を示すグラフである。緩和時間が短くなるに従って、反発係数も大きくなることが分かる。特に、緩和時間が5.56秒以下であれば、反発係数が0.821以上のコアが得られていることが分かる。
本発明によれば、反発性および打球感に優れたゴルフボールが得られる。

Claims (8)

  1. (A)(a−1)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(a−2)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂、(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂より成る群から選択される少なくとも一種の樹脂成分と、(B)塩基性脂肪酸金属塩とを含有し、固体高分解能炭素核磁気共鳴法(NMR法)によって観測される13C核のスピン−格子緩和時間(T1)が、5.56秒以下であることを特徴とするゴルフボール用樹脂組成物。
  2. (B)前記塩基性脂肪酸金属塩は、炭素数が8〜30の塩基性脂肪酸金属塩である請求項1に記載のゴルフボール用樹脂組成物。
  3. (B)前記塩基性脂肪酸金属塩は、塩基性不飽和脂肪酸金属塩である請求項1または2に記載のゴルフボール用樹脂組成物。
  4. (B)前記塩基性脂肪酸金属塩の不飽和脂肪酸成分は、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ステアリドン酸、ネルボン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エライジン酸、エイコセン酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、アドレン酸、イワシ酸、ニシン酸、および、テトラコサペンタエン酸よりなる群から選択される少なくとも一種である請求項3に記載のゴルフボール用樹脂組成物。
  5. (B)前記塩基性脂肪酸金属塩の金属成分が、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、または、バリウムである請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴルフボール用樹脂組成物。
  6. (B)前記塩基性脂肪酸金属塩の含有量は、(A)樹脂成分100質量部に対して、25質量部〜100質量部である請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴルフボール用樹脂組成物。
  7. 少なくとも一層以上のコアと前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記コアの少なくとも一層が請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴルフボール用樹脂組成物から形成されていることを特徴とするゴルフボール。
  8. ゴルフボール本体が請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴルフボール用樹脂組成物から形成されていることを特徴とするワンピースゴルフボール。
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