JP2013138111A - 希土類磁石の製造方法 - Google Patents

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康宏 勝川
Eisuke Hoshina
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Abstract

【課題】改質合金の拡散浸透を促進させることができ、もって保磁力性能の高い希土類磁石を製造することのできる希土類磁石の製造方法を提供する。
【解決手段】希土類磁石材料となる粉末Bを加圧成形して成形体Sを製造する第1のステップ、成形体Sに対して保磁力を高める改質合金Mを接触させた状態で、異方性を与える熱間塑性加工を施して希土類磁石前駆体Cを製造する第2のステップ、希土類磁石前駆体Cを熱処理してその内部に改質合金Mを拡散浸透させて希土類磁石RMを製造する第3のステップからなる希土類磁石の製造方法である。
【選択図】図3

Description

本発明は、希土類磁石の製造方法に関するものである。
ランタノイド等の希土類元素を用いた希土類磁石は永久磁石とも称され、その用途は、ハードディスクやMRIを構成するモータのほか、ハイブリッド車や電気自動車等の駆動用モータなどに用いられている。
この希土類磁石の磁石性能の指標として残留磁化(残留磁束密度)と保磁力を挙げることができるが、モータの小型化や高電流密度化による発熱量の増大に対し、使用される希土類磁石にも耐熱性に対する要求は一層高まっており、高温使用下で磁石の保磁力を如何に保持できるかが当該技術分野での重要な研究課題の一つとなっている。車両駆動用モータに多用される希土類磁石の一つであるNd-Fe-B系磁石を取り挙げると、結晶粒の微細化を図ることやNd量の多い組成合金を用いること、保磁力性能の高いDy、Tbといった重希土類元素を添加することなどによってその保磁力を増大させる試みがおこなわれている。
希土類磁石の製造方法の一例を概説すると、たとえばNd-Fe-B系の金属溶湯を急冷凝固して得られた微粉末を加圧成形しながら成形体とし、この成形体に磁気的異方性を付与するべく熱間塑性加工を施して希土類磁石前駆体(配向磁石)を製造し、この希土類磁石前駆体に対し、その保磁力を高める改質合金を拡散浸透させて希土類磁石を製造する方法が一般に適用されている。なお、特許文献1には、この改質合金として低融点のNd-Cu合金を使用し、これを配向磁石表面に付着し、熱処理することで拡散浸透させる技術が開示されている。
上記する一般的な製造方法においては、配向磁石の表面に酸化膜やその成形過程で使用される離型剤等が不純物として付着してしまうことが往々にしてあり、これらを残した状態でその上から改質合金を配向磁石に配し、改質合金を融解させて拡散浸透をおこなおうとすると、酸化膜や不純物が改質合金の拡散浸透を阻害してしまい、保磁力を十分に高めることができないといった問題が生じ得る。そこで、従来は配向磁石の表面の酸化膜や離型剤を除去した後に改質合金の拡散浸透を実施しており、改質合金の効果的な拡散浸透を図るためにこの酸化膜等の除去工程が必須の工程となっていた。
特開2011−061038号公報
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、希土類磁石前駆体表面の酸化膜等を除去する工程を要することなく、改質合金の拡散浸透を促進させることができ、もって保磁力性能の高い希土類磁石を効率的に製造することのできる希土類磁石の製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による希土類磁石の製造方法は、希土類磁石材料となる粉末を加圧成形して成形体を製造する第1のステップ、前記成形体に対して保磁力を高める改質合金を接触させた状態で、異方性を与える熱間塑性加工を施して希土類磁石前駆体を製造する第2のステップ、希土類磁石前駆体を熱処理してその内部に改質合金を拡散浸透させて希土類磁石を製造する第3のステップからなるものである。
本発明による希土類磁石の製造方法は、成形体に対して磁気的異方性を与える熱間塑性加工(強加工ともいう)を施す際にこの成形体と保磁力を高める改質合金を接触させておき、この状態で熱間塑性加工をおこなうことにより、この熱間塑性加工の際の圧延や押出しによって成形体が塑性変形して改質合金との接触面の面積を広げて新生面を生ぜしめ、成形体の新生面と改質合金が接触してなる希土類磁石前駆体を形成することが大きな特徴である。
第1のステップで製造される成形体の表面には少なからず酸化膜が形成されていたり、あるいは加圧成形の際に成形型の表面に塗布される離型剤が付着している。既述するように、これら酸化膜や離型剤が溶融した改質合金の拡散浸透を阻害する大きな要因となることから、本発明の製造方法では、酸化膜や離型剤を取り除くための工程(不純物除去工程)を不要とし、酸化膜や離型剤の存在を許容しながらも改質合金の効果的な拡散浸透を実現したものである。
すなわち、第1のステップで製造された成形体の表面に改質合金を接触させた状態で熱間塑性加工をおこなうことにより、改質合金と接触する成形体の表面積はたとえは数倍に広げられる。たとえば表面積が5倍に広がった場合には、当初の面積の全面に酸化膜が形成されている場合であっても、5倍に広がった後の表面積においては、そのうちの80%程度(広がる前の4倍程度の表面積分)は新生面、すなわち、圧延等によって改質合金と接触する表面に露出した酸化膜等の存在しない面が形成される。
また、成形体に接触している改質合金も同様に圧延等によって塑性変形して広がる。その一方で、酸化膜等も組成変形して多少の広がりを呈するものの、成形体等に比して酸化膜の変形性能は極めて小さく、したがって、成形体等の広がりに比して酸化膜等の広がりは極めて少ない。さらに、酸化膜は極めて薄いことから、大きく変形しようとすると分断されてしまう。これらのことから、成形体と改質合金双方の接触部分のうち、その多くの領域では界面に酸化膜や離型剤が介在しないものとなる。
このように成形体と改質合金の界面の多くの領域に酸化膜や離型剤が介在しない状態で、熱間塑性加工によって磁気的異方性が付与された希土類磁石前駆体が製造される(第2のステップ)。
なお、本発明の製造方法が製造対象とする希土類磁石には、組織を構成する主相(結晶粒)の粒径が200μm以下程度のナノ結晶磁石は勿論のこと、粒径が300μm以上のもの、さらには粒径が1μm以上の焼結磁石や樹脂バインダーで結晶粒が結合されたボンド磁石などが包含されるが、中でも、熱間塑性加工を必須とするナノ結晶磁石に対して好適なものである。
第2のステップでは、熱間塑性加工でできる新生面の酸化を抑制するべく、相互に接触した成形体と改質合金を真空炉や減圧炉などに載置した状態で熱間塑性加工をおこなうのが望ましい。その他の方法としては、相互に接触した成形体と改質合金を金属製の容器に密封(いわゆるキャニング)したものを熱間塑性加工する方法がある。この方法によれば、真空雰囲気を形成せずとも熱間塑性加工の際に成形体と改質合金の界面が大気暴露されないことから、新生面の酸化を抑制することができる。
第2のステップにおける熱間塑性加工においては、高温雰囲気下、たとえば1秒以下の短時間で塑性加工がおこなわれることから、この加工段階では改質合金の溶融やその拡散浸透はおこなわれない。
そこで、第3のステップにおいて、希土類磁石前駆体を一定時間熱処理し、希土類磁石前駆体の表面にある塑性加工された改質合金を溶融させ、その溶湯を希土類磁石前駆体の内部に拡散浸透させることでその粒界相が改質され、保磁力性能が高められた希土類磁石が製造される(第3のステップ)。
成形体と改質合金を接触させた状態でキャニングしたものを熱間塑性加工した場合には、この第3のステップにおいてもキャニング状態のままで熱処理をおこない、溶融した改質合金の拡散浸透をおこなうのがよい。改質合金が拡散浸透されている途中の希土類磁石前駆体の酸化も抑制することができ、保磁力性能、磁化性能のより一層高い希土類磁石を製造することができる。
上記する本発明の希土類磁石の製造方法によれば、溶融した改質合金の拡散浸透の前段で希土類磁石前駆体の表面に形成されている酸化膜や付着している離型剤等を除去するための工程を要することなく、改質合金を効果的に拡散浸透させることができ、保磁力性能に優れた希土類磁石を製造することができる。
また、本発明による希土類磁石の製造方法の他の実施の形態は、希土類磁石材料となる粉末を成形型内に充填して粉末の塊体を形成し、層状に形成された保磁力を高める改質合金を該塊体に接触させた状態で加圧成形して成形体を製造する第1のステップ、前記成形体に対して異方性を与える熱間塑性加工を施して希土類磁石前駆体を製造する第2のステップ、希土類磁石前駆体を熱処理してその内部に改質合金を拡散浸透させて希土類磁石を製造する第3のステップからなるものである。
本実施の形態の製造方法は、成形体を製造する第1のステップにおいて希土類磁石用の粉末の塊と層状を成す改質合金が接触姿勢で加圧された成形体を製造するものであり、既述する製造方法が第2のステップの希土類磁石前駆体を製造する段階で希土類磁石用の粉末からなる成形体と改質合金を接触させることに対して双方は相違している。
しかしながら、いずれの形態の製造方法も、改質合金の拡散浸透前に酸化膜や離型剤等の除去を必要とせず、溶融した改質合金を効果的に拡散浸透できるという同様の効果を奏するものである。
本実施の形態の製造方法では、成形体内に粉末を充填して塊体を形成し、これに層状に形成された改質合金を接触させた状態で双方を加圧成形して成形体を製造することのほかに、予め塊体を同一もしくは別途の成形型内で加圧成形しておき、成形型内に収容された加圧成形済みの塊体に接触するように改質合金を層状に充填し、これを加圧成形して成形体を製造する方法であってもよい。
また、希土類磁石用の粉末の塊と改質合金をともに予め加圧成形しておき、双方を成形型に接触姿勢で収容して加圧成形する方法であってもよい。
また、好ましくは、成形型内に充填された塊体、もしくは既に加圧成形された塊体に対し、層状の改質合金(既に加圧成形されたものを含む)を塊体の左右、もしくは上下に2層配した状態で加圧成形するのが好ましい。
このように、希土類磁石材料となる粉末の塊体と、上下もしくは左右でこの塊体をサンドイッチする2層の層状の改質合金からなる3層構造のものを加圧成形することで、加圧成形の際の熱処理に要する時間を短縮することができる。
また、本実施の形態において、前記第1のステップにおける加圧成形は、熱間成形であってもよいし、冷間成形であってもよく、冷間成形の場合にはさらに成形体の密度を高めるための熱間緻密化処理をおこなうのがよい。
第1のステップにおける熱間成形では、たとえば650℃程度の高温で加圧成形がおこなわれることから、得られる成形体はその密度が高められている。一方、冷間成形の場合には、20〜30℃といった室温程度で粉末を加圧成形して塊状にしただけであり、その密度は高くなっていないため、加圧成形されてできた塊を熱間成形と同程度の温度で熱間緻密化処理(密度向上を目的とした熱間加工)をおこなうのが望ましい。
なお、熱間成形では、650℃程度の高温状態の成形型に対してロボットハンド等のマニピュレータを使用して離型剤を塗布する必要がある一方で、冷間成形の場合にはそのような必要はなく、冷えた状態の成形型に離型剤を塗布した後に冷間成形でできた粉末塊を成形型に収容して熱間緻密化処理をおこなうことができ、このような製造時のメリットが冷間成形にはある。
いずれの方法であっても、第1のステップで得られた成形体はその表面に層状の改質合金を有しており、第2のステップでこれに熱間塑性加工をおこなって磁気的異方性を付与して希土類磁石前駆体を製造し、第3のステップで所定時間熱処理をおこなって改質合金を溶融させ、希土類磁石前駆体の内部に拡散浸透させることによって保磁力性能の高められた希土類磁石が製造される。
以上の説明から理解できるように、本発明の希土類磁石の製造方法によれば、溶融した改質合金の拡散浸透の前に希土類磁石前駆体の表面に形成されている酸化膜や付着している離型剤等を除去するための工程を不要としながら、したがって、高い製造効率の下で改質合金を効果的に拡散浸透させることができ、保磁力性能に優れた希土類磁石を効率的に製造することができる。
(a)、(b)の順で本発明の希土類磁石の製造方法の実施の形態1の第1のステップを説明した模式図である。 第1のステップで製造された成形体のミクロ構造を説明した図である。 製造方法の実施の形態1の第2のステップを説明した模式図である。 塑性加工によって成形体の表面に新生面が生じることを説明した模式図である。 第2のステップで製造された希土類磁石前駆体のミクロ構造を説明した図である。 (a),(b)の順で製造方法の実施の形態1の第3のステップを説明した模式図である。 (a),(b)ともに、本発明の希土類磁石の製造方法の実施の形態2の第1のステップを説明した模式図である。
以下、図面を参照して本発明の希土類磁石の製造方法の実施の形態を説明する。なお、図示例はナノ結晶磁石である希土類磁石の製造方法を説明したものであるが、本発明の希土類磁石の製造方法はナノ結晶磁石の製造に限定されるものではなく、結晶粒の相対的に大きな焼結磁石等の製造に適用できることは勿論のことである。
(希土類磁石の製造方法の実施の形態1)
図1a、bはその順で本発明の希土類磁石の製造方法の実施の形態1の第1のステップを説明した模式図であり、図2は第1のステップで製造された成形体のミクロ構造を説明した図である。また、図3は製造方法の実施の形態1の第2のステップを説明した模式図であり、図4は塑性加工によって成形体の表面に新生面が生じることを説明した模式図であり、図5は第2のステップで製造された希土類磁石前駆体のミクロ構造を説明した図である。さらに、図6a,bはその順で製造方法の実施の形態1の第3のステップを説明した模式図である。
図1aで示すように、たとえば50kPa以下に減圧したArガス雰囲気の不図示の炉中で、単ロールによるメルトスピニング法により、合金インゴットを高周波溶解し、希土類磁石を与える組成の溶湯を銅ロールRに噴射して急冷薄帯B(急冷リボン)を製作し、これを粗粉砕する。
粗粉砕された急冷薄帯Bを図1bで示すように超硬ダイスDとこの中空内を摺動する超硬パンチPで画成されたキャビティ内に充填し、超硬パンチPで加圧しながら(X方向)加圧方向に電流を流して通電加熱することにより、ナノ結晶組織のNd-Fe-B系の主相(50nm〜200nm程度の結晶粒径)と、主相の周りにあるNd-X合金(X:金属元素)の粒界相からなる成形体Sを製作する(第1のステップ)。
ここで、粒界相を構成するNd-X合金は、Ndと、Co、Fe、Ga等のうちの少なくとも1種以上の合金からなり、たとえば、Nd-Co、Nd-Fe、Nd-Ga、Nd-Co-Fe、Nd-Co-Fe-Gaのうちのいずれか一種、もしくはこれらの二種以上が混在したものであって、Ndリッチな状態となっている。
図2で示すように、成形体Sはナノ結晶粒MP(主相)間を粒界相BPが充満する等方性の結晶組織を呈している。
第1のステップで成形体Sが製造されたら、図3で示すように、成形体Sの表面、たとえばその上下面にそれぞれ層状の改質合金M,Mを配し、ベルコンBCと回転押圧ロールPRからなる圧延装置のベルコンBC上にこれを載置し、ベルコンの移動に応じて成形体Sと改質合金Mを上下2つの回転姿勢(Y2方向)の転押圧ロールPR、PR間に通す(Y1方向)。
ここで、改質合金Mとしては、Nd-Y-Z合金(Y:遷移金属元素、Z:重希土類元素)やNd-Y合金(Y:遷移金属元素)などを挙げることができる。
遷移金属元素Yとしては、Cu、Fe、Mn、Co、Ni、Zn、Tiなどのうちのいずれか一種を適用することができ、重希土類元素Zとしては、Dy、Tb、Hoなどのうちのいずれか一種を適用することができる。たとえば、Nd-Cu-Dy合金、Nd-Cu-Tb合金などを挙げることができる。
この際、回転押圧ロールPRは加熱されて高温状態となっており、短時間で高温の転押圧ロールPR、PR間を成形体Sおよび改質合金Mが通過する過程で双方が圧延され、磁気的異方性が付与される(熱間塑性加工)。
同図で示すように、熱間塑性加工によって圧延された成形体S’の表面には同様に圧延された改質合金M’が密着している(第2のステップ)。
第2のステップまでの製造過程において、成形体Sは大気暴露等によって酸化膜がその表面に形成されていたり、あるいは第1のステップにおける加圧成形の際に成形体に塗布された離型剤が付着している。
これら酸化膜や離型剤は、溶融した改質合金の拡散浸透を阻害する大きな要因となることから、改質合金の拡散浸透の前段でこれらの除去工程が必要になるが、図示する製造方法ではこのような除去工程は一切不要である。その理由を図4を参照して説明する。
熱間塑性加工によって成形体Sが圧延されることにより、たとえば図4の上図のように1×1の面積の正方形領域(改質合金との接触面における面積からこの正方形領域を仮に取り出して説明している)は、圧延によって下図のように5×5の面積の正方形領域となり得る(圧延態様によって広がり方の程度は多様である)。なお、上図において、成形体Sの表面には酸化膜Saが形成されている。
図4の下図のように成形体が圧延されることで、酸化膜Sa以外のいわゆる新生面S’が形成され、酸化膜Saが介在しない改質合金との接触界面となる。なお、一般に、成形体Sに比してその表面に形成された酸化膜Saの変形性能は極めて低く、したがって、たとえば図示するように成形体Sが1×1の面積が5×5の面積に塑性変形するのに対して、酸化膜Saは1×1の面積が2×2の面積に塑性変形するに過ぎないことが本発明者等によって特定されている。また、酸化膜Saは極めて薄い膜であるため、1×1の面積から仮に5×5の面積に変形させようとするとその途中で分断されてしまう。したがって、図示例においては、成形体Sの5×5の面積から酸化膜Saの2×2の面積を除いた多くの領域が改質合金との接触面となり得る。
図示例のように圧延によって成形体Sにおける改質合金との接触面が数倍に広がることで、酸化膜Saや離型剤等の改質合金拡散浸透の際の阻害要因による影響が格段に低減される。すなわち、改質合金の拡散浸透に際して酸化膜等の除去工程を要することなく、後工程で実行される改質合金の拡散浸透を促進させることが可能となる。
第2のステップにおける熱間塑性加工により、図5で示すように、異方性のナノ結晶粒MPを有する結晶組織の希土類磁石前駆体Cが製造される。なお、熱間塑性加工による加工度(圧縮率)が大きい場合、たとえば圧縮率が10%程度以上の場合の熱間強加工を強加工と称することができる。
第2のステップは、新生面に酸化膜が形成されるのを抑制するべく、真空雰囲気もしくは減圧雰囲気、もしくは不活性ガス雰囲気等の下で実施されるのが好ましい。また、他の方法として、相互に接触した成形体と改質合金を金属製の容器に密封(キャニング)したものを熱間塑性加工する方法であってもよい。
第2のステップで希土類磁石前駆体Cが製造されたら、次に、図6で示すように、製造された希土類磁石前駆体Cをヒータ内蔵の高温炉H内に収容し、炉内を少なくとも改質合金M’の融点以上の高温雰囲気として所定時間載置する。
たとえば改質合金としてNd-Cu合金やNd-Cu-Dy合金を使用する場合は、それらの融点が600℃以下(530〜580℃程度)であることから、高温炉H内を600〜650℃の温度雰囲気下とすることで粒界相BPが溶融し、改質合金であるNd-Cu合金やNd-Cu-Dy合金を溶融させることができる。
溶融したNd-Cu合金やNd-Cu-Dy合金の溶湯は、時間の経過に応じて粒界相BP内に拡散浸透していく。
改質合金の溶湯を粒界相内に拡散浸透させ、ある程度の時間が経過すると、図5で示す希土類磁石前駆体Cの結晶組織が組織変化し、図6bで示すように結晶粒MPの界面が明りょうになり、結晶粒MP,MP間の磁気分断が進行し、保磁力が向上した希土類磁石RMが製造される。
(希土類磁石の製造方法の実施の形態2)
図7a,bはともに、本発明の希土類磁石の製造方法の実施の形態2の第1のステップを説明した模式図である。
製造方法の実施の形態2は、成形体を製造する第1のステップにおいて希土類磁石用の粉末の塊と層状を成す改質合金が接触した成形体を製造するものであり、製造方法の実施の形態1が第2のステップの希土類磁石前駆体Cを製造する段階で希土類磁石用の粉末からなる成形体と改質合金を接触させることに対して双方は相違している。
まず、図7aで示す製造方法は、パンチPとダイスDから構成される成形体内に希土類磁石用の粉末Bを充填して塊体をキャビティの中央に形成し、この左右に層状に形成された改質合金Mを配し、粉末Bの塊体と左右の層状の改質合金M,Mを接触させた状態で加圧成形して成形体を製造する方法である。
これに対し、図7bで示す製造方法は、キャビティ内にまず改質合金Mを充填して下層を形成し、この上に希土類磁石用の粉末Bを充填して塊体を形成し、この塊体の上にさらに改質合金Mを充填して上層を形成し、粉末Bの塊体と上下の層状の改質合金M,Mを接触させた状態で加圧成形して成形体を製造する方法である。
ここで、いずれの製造方法においても、希土類磁石用の粉末Bを別途の成形型で予め加圧成形しておいたものを図示する成形型に収容するようにしてもよい。同様に、層状の改質合金Mも、別途の成形型で予め加圧成形しておいたものを図示する成形型に収容するようにしてもよい。
また、図7a,bのいずれの方法であっても、第1のステップにおける加圧成形は、熱間成形であってもよいし、冷間成形であってもよく、冷間成形の場合にはさらに成形体の密度を高めるための熱間緻密化処理をおこなうのが望ましい。
図7a,bのいずれの方法であっても、第1のステップで得られた成形体はその表面に層状の改質合金を有しており、第2のステップでは、図3に示すように成形体に熱間塑性加工をおこなって磁気的異方性を付与して希土類磁石前駆体を製造する。次いで、第3のステップでは、図6で示すように所定時間熱処理をおこなって改質合金を溶融させ、これを希土類磁石前駆体の内部に拡散浸透させることによって保磁力性能の高められた希土類磁石が製造される。
[磁気特性を評価した実験とその結果]
本発明者等は、以下の方法で実施例および比較例の希土類磁石を製作し、双方の磁気特性の一つである保磁力を測定した。
(実施例)
合金組成14.6Nd74.2Fe4.5Co0.5Ga6.2B(原子比)に対応する割合で配合した原料をアーク炉内で溶解して合金インゴットを得、これをAtガス雰囲気中でメルトスピニングし、リボン状の薄片を得た。この薄片は厚さが30μmである。この薄片を200μm程度に粉砕し、粉末状の材料を得た。
得られた材料を50mm×300mmの内寸の超硬製ダイスのキャビティに充填し、超硬製パンチによって成形圧200MPaで加圧しながら600℃で5分加熱して成形体を得た。
次いで、得られた成形体上に50mm×300mm×0.5mm(厚み)の改質合金を配して800℃で1秒未満の時間で圧延処理した。ここで、圧延条件は、ロール直径300mm、ロール回転数5rpm、圧下率50%である。また、改質合金は、合金組成が90.5Nd9.5Cu(原子比)に対応する割合で配合した原料をアーク炉で溶解して製作した合金ビレットから切削加工によって得たものである。
次いで、圧延によって得られた希土類磁石前駆体を真空中(1×10−2Pa以下)、500℃で60分の熱処理をおこない、溶融した改質合金を拡散浸透させて希土類磁石を得た。
(比較例)
合金組成14.6Nd74.2Fe4.5Co0.5Ga6.2B(原子比)に対応する割合で配合した原料をアーク炉内で溶解して合金インゴットを得、これをAtガス雰囲気中でメルトスピニングし、リボン状の薄片を得た。この薄片は厚さが30μmである。この薄片を200μm程度に粉砕し、粉末状の材料を得た。
得られた材料を50mm×300mmの内寸の超硬製ダイスのキャビティに充填し、超硬製パンチによって成形圧200MPaで加圧しながら600℃で5分加熱して成形体を得た。
次いで、得られた成形体を800℃で1秒未満の時間で圧延処理して熱間塑性加工体を得た。ここで、圧延条件は、ロール直径300mm、ロール回転数5rpm、圧下率50%である。得られた成形体は概ね50mm×600mm×3mm(厚み)である。
得られた熱間塑性加工体上に50mm×600mm×0.5mm(厚み)の改質合金を配し、真空中(1×10−2Pa以下)、500℃で60分の熱処理をおこない、溶融した改質合金を拡散浸透させて希土類磁石を得た。なお、改質合金は、合金組成が90.5Nd9.5Cu(原子比)に対応する割合で配合した原料をアーク炉で溶解して製作した合金ビレットから切削加工によって得たものである。なお、比較例の製造過程においては、成形体表面から酸化膜等の不純物の除去はおこなっていない。
(磁気特性評価)
実施例および比較例の希土類磁石に対してそれぞれ、中心部からワイヤーカットによって2mm角の試験片を切り出し、振動試料型磁力計(VSM)によって双方の保磁力を測定した。
測定の結果、実施例の保磁力は23.1(kOe)(これに79.6を乗じてkA/m換算される)であり、比較例の保磁力は20.4(kOe)であった。
この実験結果より、比較例に比して実施例の保磁力は格段に向上しており、これは、比較例の希土類磁石がその製造過程で成形体等の表面に酸化膜等の不純物が残り、これが改質合金の拡散浸透を阻害したこと、一方で、実施例の希土類磁石の製造過程では酸化膜等が残っているものの、希土類磁石用の粉末成形体の新生面と改質合金の接触面を介して効果的に改質合金が拡散浸透した結果であると推察できる。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
R…銅ロール、B…急冷薄帯(急冷リボン)、D…超硬ダイス、P…超硬パンチ、S…成形体、S’…塑性加工後の成形体、Sa…酸化膜、S’…新生面、C…希土類磁石前駆体、M…改質合金、M’…塑性加工後の改質合金、MP…主相(ナノ結晶粒、結晶粒)、BP…粒界相、RM…希土類磁石、H…高温炉

Claims (6)

  1. 希土類磁石材料となる粉末を加圧成形して成形体を製造する第1のステップ、
    前記成形体に対して保磁力を高める改質合金を接触させた状態で、異方性を与える熱間塑性加工を施して希土類磁石前駆体を製造する第2のステップ、
    希土類磁石前駆体を熱処理してその内部に改質合金を拡散浸透させて希土類磁石を製造する第3のステップからなる希土類磁石の製造方法。
  2. 希土類磁石材料となる粉末を成形型内に充填して粉末の塊体を形成し、層状に形成された保磁力を高める改質合金を該塊体に接触させた状態で加圧成形して成形体を製造する第1のステップ、
    前記成形体に対して異方性を与える熱間塑性加工を施して希土類磁石前駆体を製造する第2のステップ、
    希土類磁石前駆体を熱処理してその内部に改質合金を拡散浸透させて希土類磁石を製造する第3のステップからなる希土類磁石の製造方法。
  3. 前記第2のステップでは、成形型内に形成された塊体を加圧成形し、加圧成形された塊体に対して層状に形成された改質合金を接触させた状態でさらに加圧成形をおこなって成形体を製造する請求項2に記載の希土類磁石の製造方法。
  4. 前記第2のステップでは、塊体に対して、その加圧成形の加圧方向に対して左右もしくは上下に2層の層状の改質合金を配する請求項2または3に記載の希土類磁石の製造方法。
  5. 前記第1のステップにおける加圧成形が熱間成形である請求項2〜4のいずれかに記載の希土類磁石の製造方法。
  6. 前記第1のステップにおける加圧成形が冷間成形であり、冷間成形されてなる成形体の密度を高める熱間緻密化処理をおこなった後に第2のステップに移行する請求項2〜4のいずれかに記載の希土類磁石の製造方法。
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