以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施の形態は、本発明が適用されるハイブリッド車両を、内燃機関として筒内噴射とポート噴射とを併用するデュアル噴射タイプの内燃機関、例えば直列4シリンダのガソリンエンジンを採用するハイブリッド車両としている。
まず、構成について説明する。
図1に示すように、ハイブリッド車両100は、内燃機関としてのエンジン1と、電動機としてのモータMG1およびモータMG2と、動力分割機構101と、リダクション機構107と、ディファレンシャルギヤ102と、駆動輪103と、インバータ104と、バッテリ105と、制御ユニット106とを備えている。このハイブリッド車両100は、シリーズ・パラレル型のハイブリッド車両であり、エンジン1およびモータMG2との少なくとも一方を駆動源として走行可能になっているとともに、モータMG1によりエンジン1を始動するようになっている。
エンジン1とモータMG1とモータMG2とは、動力分割機構101を介して相互に連結されている。動力分割機構101に連結されるモータMG2の回転軸108には、リダクション機構107が接続されている。モータMG2の回転軸108は、リダクション機構107およびディファレンシャルギヤ102を介して、駆動輪103と連結されるとともに、動力分割機構101を介して、エンジン1のクランクシャフト14に連結されている。動力分割機構101は、エンジン1の駆動力を、モータMG1とリダクション機構107とに分割することができる。動力分割機構101による駆動力の配分は、任意に変更することができる。モータMG1は、動力分割機構101を介してエンジン1のクランクシャフト14を回転させることにより、エンジン1を始動するスタータとして機能することができる。
動力分割機構101は、遊星歯車機構から構成されており、サンギヤ110と、リングギヤ111と、複数のプラネタリピニオンギヤ112と、プラネタリキャリア113とを備えている。サンギヤ110は、クランクシャフト14と同軸のキャリア軸114に軸中心を貫通された中空のサンギヤ軸115に連結されている。リングギヤ111は、キャリア軸114と同軸のリングギヤ軸であるモータMG2の回転軸108に連結されている。プラネタリピニオンギヤ112は、サンギヤ110とリングギヤ111との間に配置され、サンギヤ110の外周を自転しながら公転するようになっている。プラネタリキャリア113は、キャリア軸114に連結され、各プラネタリピニオンギヤ112の回転軸を軸支している。
動力分割機構101では、サンギヤ110、リングギヤ111およびプラネタリキャリア113にそれぞれ結合されたサンギヤ軸115、モータMG2の回転軸108およびキャリア軸114の3軸が動力の入出力軸とされ、3軸のいずれか2軸に入出力される動力が決定されると、残りの1軸に入出力される動力は、決定された2軸に入出力される動力に基づいて定まるようになっている。
リダクション機構107は、動力取出ギヤ120と、チェーンベルト121と、動力伝達ギヤ列122とを備えている。動力取出ギヤ120は、チェーンベルト121を介して動力伝達ギヤ列122に接続されている。また、動力取出ギヤ120は、動力分割機構101のリングギヤ111に結合されており、リングギヤ111から受ける動力をチェーンベルト121を介して動力伝達ギヤ列122に伝達するようになっている。動力伝達ギヤ列122は、ディファレンシャルギヤ102を介して駆動輪103に動力を伝達するようになっている。
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができるとともに電動機として駆動できる周知の同期発電電動機からなる。モータMG1およびモータMG2は、それぞれインバータ104に接続されている。各インバータ104は、バッテリ105に接続されている。バッテリ105は、モータMG1およびMG2に対して充放電を行うようになっている。モータMG1は、電動機の出力軸としての出力軸109を備えている。
制御ユニット106は、ハイブリッド用電子制御ユニット(Electronic Control Unit;以下、ECUという)140と、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)141と、モータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)142と、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)143とを備えている。制御ユニット106は、ハイブリッド車両の制御装置の制御手段を構成している。
ECU140は、エンジンECU141と、モータECU142と、バッテリECU143とに、図示しない通信ポートを介して接続されている。ECU140は、エンジンECU141と、モータECU142と、バッテリECU143と各種制御信号やデータのやり取りを行うようになっている。
エンジンECU141は、エンジン1およびECU140に接続されている。エンジンECU141は、エンジン1の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するとともに、入力した信号に応じて燃料噴射制御や点火制御、吸入空気量調節制御などの運転制御を行うようになっている。モータECU142は、インバータ104およびECU140に接続されている。モータECU142は、モータMG1およびモータMG2を駆動制御するようになっている。
バッテリECU143は、バッテリ105およびECU140に接続されている。バッテリECU143は、バッテリ105の充放電電流の積算値に基づいて、残容量(以下、SOC(State of charge)という)を演算するようになっている。
図2および図3に示すように、エンジン1は、内燃機関本体としてのエンジン本体2と、吸気装置3と、排気装置4と、燃料供給装置5と、冷却装置6とを備えている。
エンジン本体2は、シリンダブロック10と、シリンダヘッド20とを備えている。シリンダブロック10およびシリンダヘッド20は、4つのシリンダとしてのシリンダ11を備えている。シリンダ11は、鉛直方向を長手方向にして設けられている。
シリンダブロック10は、ピストン12と、コネクティングロッド13と、内燃機関本体の出力軸としてのクランクシャフト14と、クランク角センサ15とを備えている。ピストン12は、シリンダ11内で往復動可能に設けられている。ピストン12は、コネクティングロッド13に回転可能に連結されている。コネクティングロッド13は、クランクシャフト14に回転可能に連結されている。クランク角センサ15は、クランクシャフト14の回転数を検出してECU140に入力するようになっている。
また、エンジン本体2では、シリンダブロック10とシリンダヘッド20とピストン12とによって、燃焼室16が形成されている。エンジン本体2は、燃焼室16において燃料と空気との混合気を所望のタイミングで燃焼させることによりピストン12を往復動させ、コネクティングロッド13を介してクランクシャフト14を回転させるようになっている。
シリンダヘッド20は、吸気ポート21と、吸気バルブ22と、図示しない吸気カムシャフトと、排気ポート23と、排気バルブ24と、図示しない排気カムシャフトと、点火プラグ25とを備えている。吸気ポート21は、吸気装置3の吸気通路と燃焼室16とを連通する。吸気バルブ22は、昇降により吸気ポート21と燃焼室16との間を開閉し、吸気装置3の吸気通路から燃焼室16への吸入空気Aの導入を制御するようになっている。吸気カムシャフトは、吸気バルブ22を昇降させる。
排気ポート23は、燃焼室16と排気装置4の排気通路とを連通する。排気バルブ24は、昇降により燃焼室16と排気ポート23との間を開閉し、燃焼室16から排気装置4の排気通路への排出ガスGの排出を制御するようになっている。排気カムシャフトは、排気バルブ24を昇降させる。
吸気バルブ22は、開弁時に燃焼室16を吸気通路に連通させ、排気バルブ24は、開弁時に燃焼室16を排気通路に連通させるようになっている。そして、吸気バルブ22の開弁により燃焼室16が吸気通路に連通した状態でピストン12が下降するとき、燃焼室16は、吸気通路を通して吸入空気Aを吸入することができる。また、排気バルブ24の開弁により燃焼室16が排気通路に連通した状態でピストン12が上昇するとき、燃焼室16は、排気通路を通して排出ガスGを排出することができる。
点火プラグ25は、燃焼室16内に火花点火可能に露出して設けられている。点火プラグ25は、ECU140によって、点火時期を制御されるようになっている。
吸気装置3は、吸気口管30と、エアクリーナ31と、吸気管32と、エアロフローメータ33と、スロットルバルブ34と、サージタンク35と、吸気マニホールド36とを備えている。エアクリーナ31は、吸気装置3の上流部で、内蔵するフィルタにより吸入空気Aから粉塵などを除去して清浄化するようになっている。エアロフローメータ33は、吸入空気Aの吸入流量を検出するようになっている。
スロットルバルブ34は、エアクリーナ31とサージタンク35との間に設けられるとともに、電子制御式で各シリンダ11に供給される吸入空気Aの吸入流量を調節するようになっている。吸気マニホールド36は、吸気管32と各シリンダ11とを接続している。
吸入空気Aは、吸気口管30から、エアクリーナ31→スロットルバルブ34→サージタンク35→吸気マニホールド36という順で流通されて、各シリンダ11に流入されるようになっている。また、吸気マニホールド36と各シリンダ11との接続により、エンジン本体2と吸気装置3とが接続されている。
排気装置4は、排気マニホールド40と、排出ガス管41と、図示しない排気後処理器とを備えている。
排気マニホールド40は、各シリンダ11から排出された排出ガスGを流通させる。この排気マニホールド40と各シリンダ11との接続により、エンジン本体2と排気装置4とが接続されている。排出ガス管41は、排気マニホールド40と排気後処理器とを接続している。
燃料供給装置5は、低圧側燃料供給機構50と、高圧側燃料供給機構80とを備えている。燃料供給装置5は、エンジン本体2のクランクシャフト14およびモータMG1の出力軸109の少なくとも一方の回転により燃料を要求燃圧に昇圧してエンジン本体2に供給するようになっている。ここでの要求燃圧は、エンジン1の出力を十分に高めることができる燃圧とする。
低圧側燃料供給機構50は、燃料圧送部51と、低圧側燃料配管52と、低圧側デリバリーパイプ53と、低圧側インジェクタ54とを備えている。
燃料圧送部51は、燃料タンク511と、フィードポンプユニット512と、サクションフィルタ513と、燃料フィルタ514と、燃圧制御弁515と、これらを連結する燃料管516とを備えている。
燃料タンク511は、エンジン本体2で消費される燃料、例えばガソリンを貯留する。フィードポンプユニット512は、図示しないフィードポンプを内蔵し、ECU140から発信されるオン/オフ指令信号に基づいて、駆動および停止されるようになっている。
フィードポンプユニット512は、燃料タンク511内から燃料を汲み上げ、汲み上げた燃料を、例えば1[MPa]未満の一定可変範囲内の圧力に加圧して吐出できるようになっている。さらに、フィードポンプユニット512は、ECU140の制御により、単位時間当りの吐出量[m3/sec]や吐出圧[MPa]を変化できるようになっている。
すなわち、フィードポンプユニット512は、ECU140によりオン/オフ駆動および回転数制御されることで、その単位時間当りの吐出量や吐出圧を可変制御することができるようになっている。フィードポンプユニット512は、低圧側燃料供給機構50および高圧側燃料供給機構80の供給配管を通した燃料の供給流量および供給圧力のうち少なくとも一方を増加させることができる可変燃料ポンプあるいは可変燃圧ポンプとなっている。
サクションフィルタ513は、フィードポンプユニット512の吸入口に設けられ、異物の吸入を阻止するようになっている。燃料フィルタ514は、フィードポンプユニット512の吐出口に設けられ、吐出燃料中の異物を除去するようになっている。
燃圧制御弁515は、フィードポンプユニット512から吐出される燃料の圧力を開弁方向に受圧する図示しないダイヤフラムと、このダイヤフラムを閉弁方向に付勢する図示しない圧縮コイルばねとを内蔵する。燃圧制御弁515は、ダイヤフラムが受圧する燃料の圧力が設定圧を超えると開弁し、ダイヤフラムが受圧する燃料の圧力が設定圧に満たない間は閉弁状態を維持するようになっている。これにより、燃圧制御弁515は、低圧側燃料配管52内に吐出される燃料の圧力を、予め設定された低圧側の供給圧、例えば400[kPa]などに調圧するようになっている。
低圧側燃料配管52は、燃料圧送部51から低圧側デリバリーパイプ53までを連結する管からなる。ただし、低圧側燃料配管52は、燃料通路を形成する任意の部材であって、燃料パイプに限定されるものではなく、燃料通路が貫通形成される1つの部材や、互いの間に燃料通路が形成される複数の部材であってもよい。
低圧側デリバリーパイプ53は、シリンダ11の直列配置方向の一端側で、低圧側燃料配管52に接続されている。低圧側デリバリーパイプ53には、シリンダ11の直列配置方向にシリンダ11と同じ間隔を隔てて、低圧側インジェクタ54が連結されている。低圧側デリバリーパイプ53は、燃料圧送部51からの燃料を各低圧側インジェクタ54に同等の圧力で分配するようになっている。また、低圧側デリバリーパイプ53には、内部の燃料圧力を検出する低圧側燃料圧力センサ53aが装着されている。
低圧側インジェクタ54は、噴孔部54aを各シリンダ11に対応する吸気ポート21内に露出してポート噴射用インジェクタとして設けられている。低圧側インジェクタ54は、ECU140からの噴射指令信号により駆動される図示しない電磁弁部と、電磁弁部への通電時に噴孔部54aから吸気ポート21内に燃料を噴射するよう開弁動作する図示しないノズル部とを備えた燃料噴射弁からなる。複数の低圧側インジェクタ54のうちいずれかが開弁動作するとき、低圧側デリバリーパイプ53内の加圧された燃料が、低圧側インジェクタ54の噴孔部54aから吸気ポート21内に噴射されるようになっている。
高圧側燃料供給機構80は、高圧ポンプとしての高圧ポンプ部81と、配管としての高圧側燃料配管82と、高圧側デリバリーパイプ83と、インジェクタとしての高圧側インジェクタ84とを備えている。
高圧ポンプ部81は、上流側管90と、下流側管91と、パルセーションダンパ92と、高圧ポンプ本体93と、電磁スピル弁94とを備えている。高圧ポンプ部81は、シリンダヘッド20の上側に取り付けられるとともに、低圧側燃料配管52と高圧側燃料配管82との間に接続されている。上流側管90は、低圧側燃料配管52の分岐管52aに接続されている。下流側管91は、高圧側燃料配管82に接続されている。
パルセーションダンパ92は、上流側管90に設けられるとともに、燃料圧力を受圧する弾性の図示しないダイヤフラムと、図示しない圧縮コイルばねとを有している。パルセーションダンパ92は、ダイヤフラムの弾性変形により内部容積を変化させ、上流側管90内の燃料の圧力脈動を抑制するようになっている。
高圧ポンプ本体93は、ポンプハウジング931と、プランジャ932と、カムシャフト933と、フォロアリフタ934と、戻りばね935とを備えている。
ポンプハウジング931は、内部に形成された円柱状の加圧室931aを備えている。プランジャ932は、円柱状で、ポンプハウジング931内で摺動可能に設けられるとともに、摺動により加圧室931aの容積を変化させるようになっている。カムシャフト933は、エンジン本体2の排気カムシャフトの一端に設けられているとともに、端部にカム933aを有している。
フォロアリフタ934は、プランジャ932に一体化されているとともに、カム933aに押圧されることによりプランジャ932を摺動させるようになっている。戻りばね935は、ポンプハウジング931とフォロアリフタ934との間に設けられた圧縮コイルばねからなるとともに、フォロアリフタ934をカム933aに付勢している。このため、エンジン1の駆動中はカムシャフト933は常に回転しているため、高圧ポンプ本体93は常に作動している。また、エンジン1の停止中であっても、MG1によりエンジン本体2が押し回されている場合は、高圧ポンプ本体93は作動するようになる。
高圧ポンプ本体93では、加圧室931aが、プランジャ932の往復移動によって容積を変化させることにより、フィードポンプユニット512からの燃料の吸入と加圧および吐出作業とを行うようになっている。
高圧ポンプ本体93は、低圧側燃料配管52から加圧室931aに導入された燃料を、例えば400[kPa]程度から、例えば4[MPa]〜13[MPa]程度に加圧して、高圧側燃料配管82に吐出するようになっている。
電磁スピル弁94は、弁体941と、電磁駆動コイル942と、押圧ばね943とを備えている。
弁体941は、ポンプハウジング931に対して摺動可能に設けられていて、上流側管90と加圧室931aとの間を開弁および閉弁可能にしている。電磁駆動コイル942は、ECU140により通電を制御されて弁体941を電磁駆動する。押圧ばね943は、圧縮コイルばねからなるとともに、弁体941を常時開弁方向に付勢している。
弁体941は、電磁駆動コイル942が非励磁状態となる非駆動時には、フィードポンプユニット512から給送される燃料を加圧室931a内に導入するよう開弁動作するようになっている。また、弁体941は、電磁駆動コイル942が励磁状態となる駆動時には、高圧ポンプ本体93の加圧および吐出動作を可能にするよう閉弁動作するようになっている。
電磁スピル弁94は、ECU140からの入力信号に応じ閉弁するときには、高圧の逆流を阻止する逆止弁機能を有するようになっている。また、電磁スピル弁94は、ECU140からの入力信号に応じ開弁するときには、プランジャ932の変位に応じ加圧室931a内への燃料の吸入または加圧室931a内の燃料の低圧側燃料配管52への漏出を許容するようになっている。
電磁スピル弁94は、電磁駆動コイル942が励磁されるときに弁体941により加圧室931aを閉塞する。そして、電磁スピル弁94は、プランジャ932の往復移動による加圧室931aの容積変化により、加圧室931a内への燃料の吸入と、加圧室931a内での燃料の加圧と、加圧室931aからの燃料の吐出とを行うようになっている。
高圧側燃料配管82は、高圧ポンプ部81から高圧側デリバリーパイプ83までを連結する管からなるとともに、途中にチェック弁82aを備えている。高圧側燃料配管82は、燃料通路を形成する任意の部材であって、燃料パイプに限定されるものではなく、燃料通路が貫通形成される1つの部材や、互いの間に燃料通路が形成される複数の部材であってもよい。
チェック弁82aは、高圧ポンプ部81の近傍に設けられている。チェック弁82aは、高圧ポンプ部81側の燃料圧力が高圧側インジェクタ84側の燃料圧力に対し、例えば100[kPa]程度の有意の差圧を持って大きくなると開弁する一方、高圧ポンプ部81側の圧力が高圧側インジェクタ84側の圧力に略等しいか小さくなると閉弁するようになっている。
高圧側デリバリーパイプ83は、シリンダ11の直列配置方向の一端側で、高圧側燃料配管82に接続されている。高圧側デリバリーパイプ83には、シリンダ11の直列配置方向にシリンダ11と同じ間隔を隔てて、高圧側インジェクタ84が連結されている。これにより、高圧側デリバリーパイプ83は、高圧ポンプ部81からの燃料を各高圧側インジェクタ84に同等の圧力で分配するようになっている。また、高圧側デリバリーパイプ83には、内部の燃料圧力を検出する高圧側燃料圧力センサ83aが装着されている。
高圧側インジェクタ84は、噴孔部84aを各シリンダ11の燃焼室16内に露出して筒内噴射用インジェクタとして設けられている。高圧側インジェクタ84は、ECU140からの噴射指令信号により駆動される図示しない電磁弁部と、電磁弁部への通電時に噴孔部84aから燃焼室16内に燃料を噴射するよう開弁動作する図示しないノズル部とを備えた燃料噴射弁からなる。複数の高圧側インジェクタ84のうちいずれかが開弁動作するとき、高圧側デリバリーパイプ83内の加圧された燃料がその高圧側インジェクタ84の噴孔部84aから燃焼室16内に噴射されるようになっている。
冷却装置6は、ウォータジャケット61と、図示しないウォータポンプと、図示しないラジエータとを備えている。冷却水Wは、ウォータポンプ→ウォータジャケット61→ラジエータ→ウォータポンプの順で循環するようになっている。
ウォータジャケット61は、シリンダブロック10に形成されたシリンダブロックウォータジャケット61aと、シリンダヘッド20に形成されたシリンダヘッドウォータジャケット61bと、冷却水温度センサ61cとを備えている。シリンダブロックウォータジャケット61aおよびシリンダヘッドウォータジャケット61bは、互いに連結されて各シリンダ11の周囲に設けられている。ウォータジャケット61は、内部に冷却水Wを流通させることによりエンジン本体2を冷却するようになっている。
ECU140は、CPU(Central Processing Unit)140aと、固定されたデータの記憶を行うROM(Read Only Memory)140bと、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)140cと、書き替え可能な不揮発性のメモリからなる図示しないバックアップメモリと、A/D変替器やバッファなどを有する図示しない入力インターフェース回路と、駆動回路などを有する図示しない出力インターフェース回路とを備えている。ECU140にはハイブリッド車両100のイグニッションスイッチのオン/オフ信号が取り込まれるようになっている。
ECU140には、上述したエアロフローメータ33と、クランク角センサ15と、低圧側燃料圧力センサ53aと、高圧側燃料圧力センサ83aと、冷却水温度センサ61cと、アクセルペダル71の踏み込み角度からアクセル開度を検出するアクセルセンサ72と、ハイブリッド車両100の速度を検出する車速センサ73と、燃料の温度を検出する図示しない燃料温度センサと、吸気の温度を検出する図示しない吸気温度センサとが接続されている。アクセルペダル71は、エンジン本体2およびモータMG2の少なくとも一方の運転者の加速要求を設定するようになっている。
ECU140は、ROM140b内に予め格納された制御プログラムに従い、アクセルセンサ72により検出されるアクセル開度や、エアロフローメータ33により検出される吸入空気量や、クランク角センサ15により検出されるエンジン回転数などに基づいて燃焼毎に必要な基本噴射量を算出するようになっている。また、ECU140は、基本噴射量や予めバックアップメモリに格納されている設定値情報などに基づいて、エンジン1の運転状態に応じた各種補正や空燃比フィードバック補正などを施した燃料噴射量を算出するようになっている。さらに、ECU140は、算出した燃料噴射量に基づいて、低圧側インジェクタ54および高圧側インジェクタ84への噴射指令信号や電磁スピル弁94を駆動するための弁駆動指示信号などを適時に出力するようになっている。
ECU140は、電磁スピル弁94による加圧室931aから低圧側燃料配管52への燃料の漏出量を調節する。ECU140は、少なくともこの調整により、高圧ポンプ本体93から高圧側デリバリーパイプ83に供給される燃料の圧力をエンジン1の運転状態および高圧側インジェクタ84の噴射特性に応じて最適な燃圧に制御できるようになっている。
例えば、ECU140は、一定の信号周期内において電磁スピル弁94の電磁駆動コイル942を励磁状態にするオン時間とその励磁状態を解くオフ時間とを設定することができる。そして、ECU140は、信号周期内におけるオン時間の比(0%〜100%;以下、デューティ比という)を変化させることにより、電磁スピル弁94による加圧室931aからの燃料の漏出量を調節することができる。
また、ECU140は、エンジン1の始動時に、低圧側インジェクタ54による燃料噴射を最初に実施させるようになっている。そして、ECU140は、高圧側燃料圧力センサ83aにより検出される高圧側デリバリーパイプ83内の燃料圧力が予め設定された圧力値を超えたとき、高圧側インジェクタ84による燃料噴射に必要な燃料圧力レベルに達し得る状態になったと判断するようになっている。この判断に基づき、ECU140は、高圧側インジェクタ84への噴射指令信号の出力を開始するようになっている。
さらに、ECU140は、例えば高圧側インジェクタ84からの筒内噴射を基本としながら、エンジン1の始動暖機時や低回転高負荷時などのように筒内噴射では混合気形成が不十分となる特定の運転状態下では、ポート噴射を併用するようになっている。または、ECU140は、例えば高圧側インジェクタ84からの筒内噴射を基本としながら、ポート噴射が有効な高回転高負荷時などに低圧側インジェクタ54からのポート噴射を実行するようになっている。あるいは、ECU140は、エンジン1が筒内噴射を伴わないポート噴射のみによる運転を実行するようになっている。
また、ECU140は、例えばハイブリッド車両100の高速走行中にアクセル71がオフ状態になったときに、電磁スピル弁94の電磁駆動コイル942への通電を止め、高圧ポンプ部81を加圧動作のできない燃料カットの状態にするようになっている。
本実施の形態のハイブリッド車両100の制御装置は、エンジン本体2と、モータMG1と、燃料供給装置5とを備えている。ECU140は、エンジン本体2の停止時にハイブリッド車両100への急加速要求がある場合は、緩加速要求がある場合よりも、モータMG1の出力軸109の回転数を急速に上昇させるようになっている。これにより、ECU140は、燃料供給装置5により、エンジン1の出力を十分に高めることができる要求燃圧にまで燃料を昇圧するようになっている。また、本実施の形態のハイブリッド車両100の制御装置は、急加速要求の程度が大きいほど、モータMG1の出力軸109の回転数の上昇を早くするようになっている。
本実施の形態のハイブリッド車両100の制御装置では、エンジン1およびモータMG2との少なくとも一方を駆動源として走行可能になっているとともに、エンジン1の停止中にはモータMG1により燃料供給装置5を作動させて要求燃圧にまで燃料を昇圧できるようになっている。すなわち、ハイブリッド車両100は、走行の駆動源となるモータMG2と、燃料供給装置5を作動させるモータMG1とを別個に有している。
また、本実施の形態のハイブリッド車両100の制御装置では、ECU140は、エンジン本体2の停止時にハイブリッド車両100への緩加速要求がある場合は、急加速要求がある場合よりも、モータMG1の出力軸109の回転数を緩慢に上昇させ燃料供給装置5により燃料を要求燃圧に昇圧するようになっている。
すなわち、本実施の形態のハイブリッド車両100の制御装置では、ECU140は、第1の加速制御モードと、第2の加速制御モードとの少なくとも2つのモードを備えている。ECU140は、エンジン本体2の停止時にハイブリッド車両100への急加速要求がある場合は、第1の加速制御モードを選択する。そして、ECU140は、第1の加速制御モードが選択された場合は、第2の加速制御モードが選択された場合に比べ、モータMG1の出力軸109の回転数を急速に上昇させ燃料供給装置5により燃料を要求燃圧に昇圧するようになっている。ここで、モータMG1の出力軸109の回転数を急速に上昇させるとは、モータMG1の出力軸109の角速度を上昇させる上昇率、すなわち上昇の度合いを、第2の加速制御モードが選択された場合に比べ大きくすることを意味する。
一方、ECU140は、エンジン本体2の停止時にハイブリッド車両100への緩加速要求がある場合は、第2の加速制御モードを選択する。そして、ECU140は、第2の加速制御モードが選択された場合は、第1の加速制御モードが選択された場合に比べ、モータMG1の出力軸109の回転数を緩慢に上昇させ燃料供給装置5により燃料を要求燃圧に昇圧するようになっている。ここでの緩い加速要求とは、通常の加速を意味する。また、モータMG1の出力軸109の回転数を緩慢に上昇させるとは、モータMG1の出力軸109の角速度を上昇させる上昇率、すなわち上昇の度合いを、第1の加速制御モードが選択された場合に比べ小さくすることを意味する。
また、本実施の形態のハイブリッド車両100の制御装置は、アクセルペダル71を備えている。そして、ECU140は、急加速要求があるか否かを、アクセルペダル71の開度が所定開度より大きいか否かに基づいて判断するようになっている。ECU140は、アクセル開度とその操作時間とを検出し、例えば、1[s]以内にアクセル開度50[%]以上になるようにアクセルペダル71が運転者により踏み込まれたときに、急加速要求があるものと判断する。また、ECU140は、アクセル開度に基づいて要求燃圧を算出するアクセル開度−要求燃圧マップをROM140bに備えている。
また、本実施の形態のハイブリッド車両100の制御装置は、少なくともモータMG1に電力を供給するバッテリ105を備えている。ECU140は、バッテリ105がモータMG1に十分な出力を与えられるか否かを判断するためのSOCの制限値を設定してRAM140cに記憶している。そして、ECU140は、エンジン本体2の停止時にハイブリッド車両100への急加速要求があるとともにバッテリ105のSOCが制限値より大きい場合に、緩加速要求がある場合よりも、モータMG1の出力軸109の回転数を急速に上昇させ燃料供給装置5により燃料を要求燃圧に昇圧するようになっている。
次に、動作について説明する。
図4に示すフローチャートは、ECU140のCPU140aによって、RAM140cを作業領域として実行されるハイブリッド車両100の制御プログラムであり、このハイブリッド車両100の制御プログラムはECU140のROM140bに記憶されている。
上述のように構成された本実施の形態のハイブリッド車両100の制御装置では、このハイブリッド車両100の制御処理は、ECU140によって予め決められた時間間隔(例えば、10ms)ごとに実行されるようになっている。また、ここでは、ハイブリッド車両100は停車中であるものとしている。
ECU140は、エンジン本体2が停止中であるか否かを判断する(ステップS1)。エンジン本体2が停止中であるか否かは、クランク角センサ15により検出されるエンジン回転数NEが0であるか否かに基づいて、ECU140により判断される。ECU140が、エンジン本体2が停止中でないと判断したときは(ステップS1;NO)、処理をメインルーチンに戻す。
ECU140が、エンジン本体2が停止中であると判断したときは(ステップS1;YES)、ECU140は、ハイブリッド車両100に対する運転者による加速要求があるか否かを判断する(ステップS2)。ハイブリッド車両100への運転者による加速要求があるか否かは、アクセルセンサ72により検出されたアクセル開度が0でないか否かに基づいて、ECU140により判断される。ECU140が、ハイブリッド車両100への運転者による加速要求がないと判断したときは(ステップS2;NO)、処理をメインルーチンに戻す。
ECU140が、ハイブリッド車両100への運転者による加速要求があると判断したときは(ステップS2;YES)、ECUは、ハイブリッド車両100に対する運転者による急加速要求があるか否かを判断する(ステップS3)。ハイブリッド車両100への運転者による急加速要求があるか否かは、アクセルセンサ72により検出されたアクセル開度の動きが急であるか否かに基づいて、ECU140により判断される。ECU140は、例えば、1[s]以内にアクセル開度が50[%]以上になるようにアクセルペダル71が運転者により踏み込まれたときに、急加速要求があるものと判断する。
ECU140が、ハイブリッド車両100への運転者による急加速要求があると判断したときは(ステップS3;YES)、ECU140は、運転者のアクセルペダル71の操作により要求された燃圧と、高圧側デリバリーパイプ83内の実際の燃圧との差が大きいか否かを判断する(ステップS4)。要求燃圧と実燃圧との差が大きいか否かは、アクセルセンサ72により検出されたアクセル開度からアクセル開度−要求燃圧マップを用いて算出された要求燃圧と、高圧側燃料圧力センサ83aにより検出された高圧側デリバリーパイプ83の内部の燃圧とを比較することにより、ECU140で判断される。ECU140は、例えば、要求燃圧が15[MPa]であるとともに、実燃圧が要求燃圧の50[%]以下で出力ロスが大きくなってしまうような場合に、要求燃圧と実燃圧との差が大きいと判断する。
ECU140が、要求燃圧と実燃圧との差が大きいと判断したときは(ステップS4;YES)、ECU140は、バッテリ105のSOCが制限値より大きいか否かを判断する(ステップS5)。バッテリ105のSOCが制限値より大きいか否かは、バッテリECU143により算出されたSOCと予め設定した制限値とを比較することにより、ECU140で判断される。
ECU140が、ハイブリッド車両100への運転者による急加速要求があると判断し(ステップS3;YES)、要求燃圧と実燃圧との差が大きいと判断し(ステップS4;YES)、バッテリ105のSOCが制限値より大きいと判断した場合は(ステップS5;YES)、ECU140は、第1の加速制御モードを選択し、モータMG1の回転数NMを早く上昇させる(ステップS6)。
一方、ECU140が、ハイブリッド車両100への運転者による急加速要求がないと判断するか(ステップS3;NO)、または要求燃圧と実燃圧との差が大きくないと判断するか(ステップS4;NO)、またはバッテリ105のSOCが制限値より大きくないと判断した場合は(ステップS5;NO)、ECU140は、第2の加速制御モードを選択し、モータMG1の回転数NMをステップS6の場合よりも遅く上昇させる(ステップS9)。
ECU140は、モータMG1の出力軸109の回転力を動力分割機構101を介してエンジン本体2のクランクシャフト14に伝達し、カムシャフト933からフォロアリフタ934を往復動させて高圧ポンプ本体93を作動させて、高圧側デリバリーパイプ83での燃圧を上昇させる(ステップS7)。ECU140は、モータMG1の回転数NMを早く上昇している場合は、燃料供給装置5を急速に作動させ短時間で高圧側デリバリーパイプ83での燃圧を上昇することができる。また、ECU140は、モータMG1の回転数NMを遅く上昇している場合は、燃料供給装置5を緩慢に作動させ、燃料供給装置5を急速に作動させる場合よりも長い時間をかけて高圧側デリバリーパイプ83での燃圧を上昇することができる。
ECU140は、高圧側デリバリーパイプ83での燃圧が要求燃圧に到達したか否かを判断する(ステップS8)。高圧側デリバリーパイプ83での燃圧が要求燃圧に到達したか否かは、既に算出された要求燃圧と、高圧側燃料圧力センサ83aにより検出された高圧側デリバリーパイプ83の内部の燃圧とを比較することにより、ECU140で判断される。
ECU140が、高圧側デリバリーパイプ83での燃圧が要求燃圧に到達したと判断したときは(ステップS8;YES)、ECU140は、処理を終了してメインルーチンに戻す。ECU140が、高圧側デリバリーパイプ83での燃圧が要求燃圧に到達していないと判断したときは(ステップS8;NO)、ECU140は、高圧側デリバリーパイプ83での燃圧上昇を続行する(ステップS7)。
なお、高圧側デリバリーパイプ83内の燃圧が要求燃圧に達する前に、クランクシャフト14の回転数と、ポート噴射または筒内噴射における燃圧とが、エンジン1の始動条件を満たすようになると、ECU140はエンジン1を始動する。
これにより、ECU140は、モータMG1の回転数NMを早く上昇している場合は、運転者の急加速要求に対してエンジン本体2に供給する燃料の圧力を短時間で要求燃圧にまで昇圧するので、エンジン本体2からの出力を短時間で高めることができる。また、ECU140は、モータMG1の回転数NMを遅く上昇している場合は、運転者の急加速要求に対してエンジン本体2に供給する燃料の圧力を、モータMG1の回転数NMを早く上昇している場合よりも長い時間かけて要求燃圧にまで昇圧する。このため、ECU140は、モータMG1の回転数NMを早く上昇している場合よりも、エンジン本体2からの出力を長い時間かけて高めることができる。
また、ECU140は、運転者の急加速要求の程度が大きいほど、モータMG1の出力軸109の回転数の上昇が早くなるようにしている。これにより、ECU140は、運転者の急加速要求が大きい場合に、ハイブリッド車両100の急加速の程度を大きくすることができる。また、ECU140は、運転者の急加速要求が小さい場合に、ハイブリッド車両100の急加速の程度を小さくすることができる。
次に、作用について説明する。
上述したハイブリッド車両100が走行後に停車しているときに、運転者がアクセルペダル71を踏み込んだ際のハイブリッド車両100の動作を、図5に示すタイムチャートに沿って説明する。ここでは、ハイブリッド車両100は、エンジン1を停止するとともに、モータMG1を駆動して燃料供給装置5により高圧側デリバリーパイプ83内の燃圧を所定の保持圧に維持している。また、バッテリ105のSOCは十分に大きく、制限値を超えているものとしている。
図5に示すように、T0以前の停車時は、アクセルペダル71はオフであり、MG1回転数NMは、高圧側デリバリーパイプ83内の燃圧を所定の保持圧に維持する回転数としている。エンジン回転数NEは、クランクシャフト14がモータMG1の出力軸109に同期することにより、MG1回転数NMと一致している。車速は0[km/h]となっている。
T0において、運転者がアクセルペダル71を急激に大きく踏み込んで、急加速要求を出す。これにより、ECU140は、高圧側デリバリーパイプ83内の燃料に対する要求燃圧を設定する。要求燃圧は、例えば保持圧の2倍以上になり、保持圧より十分に大きくなっている。
ECU140は、エンジン1が停止中であることと、急加速要求があることと、要求燃圧と実燃圧の差が大きいことと、SOCが制限値より大きいこととの全てを検出する。これにより、ECU140は、MG1回転数NMを図5中一点鎖線で示す緩加速要求時よりも早く上昇させる(図5中、実線で示す)。
ECU140は、モータMG1の出力軸109の回転力を、動力分割機構101およびクランクシャフト14を介して燃料供給装置5に伝達する。ECU140は、MG1回転数NMを早く上昇しているので、燃料供給装置5を図5中一点鎖線で示す緩加速要求時よりも急速に作動させ短時間で高圧側デリバリーパイプ83での燃圧を上昇することができる(図5中、実線で示す)。
また、ECU140は、モータMG2を駆動して、ハイブリッド車両100を発進させる。これにより、ECU140は車速を徐々に増加させる。
高圧側デリバリーパイプ83内の燃圧が要求燃圧に達する前のT1において、クランクシャフト14の回転数と、ポート噴射または筒内噴射における燃圧とが、エンジン1の始動条件を満たすようになると、ECU140はエンジン1を始動する。これにより、ECU140は、MG1回転数NMおよびエンジン回転数NEを更に早く上昇させる。また、ECU140は、燃料供給装置5を更に急速に作動させ短時間で高圧側デリバリーパイプ83での燃圧を上昇する。
また、ECU140は、モータMG2およびエンジン1の駆動力によりハイブリッド車両100を加速させる。ECU140は、少なくともT2において高圧側デリバリーパイプ83内の燃圧が要求燃圧に達するまで、ハイブリッド車両100を急加速させる。なお、高圧側デリバリーパイプ83内の燃圧が要求燃圧に達した後は、ECU140は、エンジン1の出力トルクや高圧側デリバリーパイプ83内の燃圧などの条件の変化に応じて車速を適宜加速させる。
一方、運転者が、T0においてアクセルペダル71を緩慢に踏み込んで、緩加速要求を出したとする。この場合、ECU140が、エンジン1が停止中であることと、緩加速要求があることとを検出する。これにより、ECU140は、MG1回転数NMを急加速要求時よりも遅く上昇させる(図5中、一点鎖線で示す)。
これにより、ECU140は、エンジン本体2の停止時に運転者からハイブリッド車両100への緩加速要求があった場合に、燃料供給装置5からエンジン本体2に高圧燃料を緩慢に供給するようにできる。このため、ECU140は、ハイブリッド車両100への急加速要求があった場合よりも、エンジン本体2の出力を長い時間かけて上昇することができる。よって、ECU140は、車速を緩慢に上昇させ、ハイブリッド車両100はゆっくりと加速する(図5中、一点鎖線で示す)。
以上のように、本実施の形態に係るハイブリッド車両100の制御装置によれば、エンジン1の停止時に急加速要求があった場合は、緩加速要求がある場合よりも、モータMG1の出力軸109の回転数を急速に上昇させ、燃料供給装置5を急速に作動させ短時間で燃圧を上昇することができる。これにより、ハイブリッド車両100の制御装置は、運転者の急加速要求に対してエンジン1に供給する燃料の圧力を短時間で要求燃圧にまで昇圧することができるので、エンジン1からの出力を短時間で高めることができる。このため、ハイブリッド車両100の制御装置は、ハイブリッド車両100の加速の応答性を高めることができ、ドライバビリティを向上することができる。
また、本実施の形態に係るハイブリッド車両100の制御装置によれば、運転者の急加速要求の程度が大きい場合にモータMG1の出力軸109の回転数の上昇が早くなるので、ECU140は、燃料供給装置5からエンジン本体2に高圧燃料をより早急に供給できる。これにより、ECU140は、急加速要求が大きい場合にハイブリッド車両100の急加速の程度を大きくするとともに、急加速要求が小さい場合にハイブリッド車両100の急加速の程度を小さくすることができる。このため、ECU140は、運転者の急加速要求の程度とハイブリッド車両100の加速の程度とを合致させ、運転者の違和感を抑えた加速性を実現し、ドライバビリティを向上することができる。
また、本実施の形態に係るハイブリッド車両100の制御装置によれば、エンジン1の停止時にハイブリッド車両100への緩加速要求がある場合は、急加速要求がある場合よりも、モータMG1の回転数を遅く上昇させる。これにより、ECU140は、エンジン1の停止時に運転者からハイブリッド車両100への緩加速要求があった場合は、燃料供給装置5からエンジン本体2に高圧燃料を、急加速要求がある場合より緩慢に供給するようになる。このため、ECU140は、例えば、運転者の要求が緩加速要求であるにも関わらず車両は急加速して運転者が違和感を覚えるような加速になることを防止できる。よって、ECU140は、運転者の加速要求の程度とハイブリッド車両100の加速の程度とを合致させ、運転者の違和感を抑えた加速性を実現し、ドライバビリティを向上することができる。
また、本実施の形態に係るハイブリッド車両100の制御装置によれば、ECU140は、急加速要求の有無をアクセル開度を検出して所定開度と比較することで検出しているので、運転者の急加速要求の有無を容易かつ確実に判断できるようになる。
また、本実施の形態に係るハイブリッド車両100の制御装置によれば、バッテリ105のSOCが制限値より大きく、バッテリ105から十分な出力を得られる場合にのみ、モータMG1の回転数を早く上昇させるようになる。このため、ECU140は、エンジン1に供給する燃料を要求燃圧に確実に昇圧することができる。
上述した本実施の形態のハイブリッド車両100の制御装置においては、ハイブリッド車両100の停止中にエンジン1が停止している場合に制御を行うようにしている。しかしながら、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置においては、これに限られず、モータMG2によりEV走行中にエンジン1が停止している場合に制御を行うようにしてもよい。
また、上述した本実施の形態のハイブリッド車両100の制御装置においては、ハイブリッド車両100はシリーズ・パラレル型のハイブリッド車両としている。しかしながら、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置においては、これに限られず、シリーズ型やパラレル型のハイブリッド車両であってもよい。あるいは、モータを1つのみ有するタイプのハイブリッド車両であってもよい。
また、上述した本実施の形態のハイブリッド車両100の制御装置においては、エンジン1を筒内噴射とポート噴射とを併用するデュアル噴射タイプとしている。しかしながら、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置においては、これに限られず、エンジン1を筒内噴射のみを使用するものとしてもよい。
また、上述した本実施の形態のハイブリッド車両100の制御装置においては、ECU140は、エンジン本体2の停止時に急加速要求があるとともにバッテリ105のSOCが制限値より大きい場合に、モータMG1の出力軸109の回転数を急速に上昇させている。しかしながら、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置においては、これに限られず、バッテリ105のSOCを制限値と比べることなく判断するようにしてもよい。この場合、判断制御を簡易化することができる。
以上のように、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、筒内噴射タイプのエンジンを搭載したハイブリッド車両において、エンジン停止時に急加速要求があった場合にエンジンに供給する燃料の圧力を急速に昇圧できるという効果を奏するものであり、ハイブリッド車両の制御装置に有用である。