JP2013135142A - 希土類磁石用の急冷リボンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Dy、Tbといった重希土類金属を使用することなく、従来の希土類磁石の製造方法に比して低温で保磁力(特に高温雰囲気下における保磁力)を高める改質合金を、希土類磁石用の急冷リボン前駆体に対して無駄なく、効果的に拡散浸透させることのできる希土類磁石用の急冷リボンの製造方法を提供する。
【解決手段】合金インゴットを溶解して所定の表面粗度のロール面Ro1を有する回転ロールRoに噴射することで、該ロール面Ro1の表面粗度がその一側面に転写された希土類磁石用の急冷リボン前駆体Bを製造するステップ、急冷リボン前駆体Bの表面粗度を有する面Baに改質合金であるRE-Y合金(Y:金属元素であって重希土類元素を含まない)の急冷リボンDを当接し、双方を加圧した状態でRE-Y合金の融点以上の温度で熱処理し、RE-Y合金の融液を急冷リボン前駆体Bに拡散浸透させて希土類磁石用の急冷リボンを製造するステップからなる。
【選択図】図3

Description

本発明は、希土類磁石用の急冷リボンの製造方法に関するものである。
ランタノイド等の希土類元素を用いた希土類磁石は永久磁石とも称され、その用途は、ハードディスクやMRIを構成するモータのほか、ハイブリッド車や電気自動車等の駆動用モータなどに用いられている。
この希土類磁石の磁石性能の指標として残留磁化(残留磁束密度)と保磁力を挙げることができるが、モータの小型化や高電流密度化による発熱量の増大に対し、使用される希土類磁石にも耐熱性に対する要求は一層高まっており、高温使用下で磁石の保磁力を如何に保持できるかが当該技術分野での重要な研究課題の一つとなっている。車両駆動用モータに多用される希土類磁石の一つであるNd-Fe-B系磁石を取り挙げると、結晶粒の微細化を図ることやNd量の多い組成合金を用いること、保磁力性能の高いDy、Tbといった重希土類元素を添加することなどによってその保磁力を増大させる試みがおこなわれている。
希土類磁石としては、組織を構成する結晶粒(主相)のスケールが3〜5μm程度の一般的な焼結磁石のほか、結晶粒を50nm〜300nm程度のナノスケールに微細化したナノ結晶磁石があるが、中でも、上記する結晶粒の微細化を図りながら高価な重希土類元素の添加量を低減すること(フリー化)のできるナノ結晶磁石が現在注目されている。
希土類磁石の製造方法を概説すると、たとえばNd-Fe-B系の金属溶湯を急冷凝固して得られた急冷リボン(急冷薄帯)を所望の大きさに裁断して磁石用の粉末とし、この粉末を加圧成形しながら焼結して焼結体を製造する。ナノ結晶磁石の場合には、この焼結体にさらに磁気的異方性を付与するための熱間塑性加工を施して成形体を製造する。
この成形体に対し、保磁力性能の高い重希土類元素を種々の方法で付与することで保磁力性能の高められた希土類磁石を製造することができ、その一例として特許文献1,2に開示の製造方法を挙げることができる。
まず特許文献1には、熱間塑性加工された成形体に対し、Dy、Tbの少なくとも一方を含む蒸発材料を蒸発させ、成形体の表面から粒界拡散させる製造方法が開示されている。
この製造方法では、蒸発材料を蒸発させる工程において850〜1050℃程度の高温処理を要件としており、この温度範囲は、残留磁束密度の向上と結晶粒成長が速すぎるのを抑制することから規定されたものとしている。
しかしながら、850〜1050℃程度もの温度範囲で熱処理をおこなうと結晶粒が粗大化してしまい、その結果として保磁力が低下する可能性が高くなる。すなわち、Dy、Tbを粒界拡散させていながらも、結果として保磁力を十分に高めることができないことになってしまう。
一方、特許文献2には、希土類磁石の表面に、Dy、Tb、Hoの少なくとも一種の元素、もしくは、これらとCu、Al、Ga、Ge、Sn、In、Si、P、Coの少なくとも一種の元素の合金を接触させ、結晶粒径が1μmを超えないように熱処理して粒界拡散させる製造方法が開示されている。
ここで、特許文献2では、熱処理の際の温度が500〜800℃の範囲の場合にDy等の結晶粒界相への拡散効果と熱処理による結晶粒の粗大化抑制効果のバランスに優れ、高保磁力の希土類磁石が得やすくなるとしている。そして、その種々の実施例は、Dy-Cu合金を使用して500〜900℃で熱処理するものが開示されているが、種々の実施例の中でも代表的な85Dy-15Cu合金の融点は1100℃程度であることから、この金属溶湯を拡散浸透しようとすると1000℃程度以上の高温処理を要し、結果として結晶粒の粗大化を抑制できない。
このような種々の状況(Dy等が高価であること、高融点の重希土類元素を含む改質合金を粒界相へ拡散させる際の高温雰囲気下における結晶粒の粗大化など)に鑑み、本発明者等は、Dy、Tbといった重希土類金属を使用しない改質合金(改質相)を使用し、しかも、この改質合金を急冷リボンに付与して該急冷リボンの保磁力性能を向上させる製造方法の発案に至っている。
ところで、この希土類磁石用の急冷リボンはその厚みが20〜30μm程度、平面寸法は1〜2mm×数mm程度の小さくて薄い帯であり、改質合金の拡散浸透に際しても同程度のサイズの改質合金の急冷リボンが使用される。希土類磁石用の急冷リボンの表面に改質合金の急冷リボンを載せ、熱処理して改質合金の急冷リボンを溶融させて希土類磁石用の急冷リボン前駆体内に拡散浸透させて急冷リボンを製造している。
しかしながら、この製造方法においては、液相となった改質合金が希土類磁石用の急冷リボンから流れ落ち易く、その一部のみが希土類磁石用の急冷リボン内に拡散浸透するにとどまり、改質合金が無駄になるとともに希土類磁石用の急冷リボンの保磁力を十分に高めることができないといった問題や、改質合金の熱処理の際にこれが希土類磁石用の急冷リボンの表面でずれてしまい、改質合金が存在する箇所とそうでない箇所で保磁力が大きく相違するといった問題が本発明者等によって特定されている。
特開2011−035001号公報 特開2010−114200号公報
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、Dy、Tbといった重希土類金属を使用することなく、従来の希土類磁石の製造方法に比して低温で保磁力(特に高温雰囲気下における保磁力)を高める改質合金を、希土類磁石用の急冷リボン前駆体に対して無駄なく、効果的に拡散浸透させることのできる希土類磁石用の急冷リボンの製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による希土類磁石用の急冷リボンの製造方法は、RE-Fe-B系の主相(RE:Nd、Prの少なくとも一種)と、該主相の周りにあるRE-X合金(X:金属元素であって重希土類元素を含まない)からなる組成の合金インゴットを溶解し、これを所定の表面粗度のロール面を有する回転ロールに噴射することで、該ロール面の表面粗度がその一側面に転写された希土類磁石用の急冷リボン前駆体を製造する第1のステップ、前記希土類磁石用の急冷リボン前駆体の前記表面粗度を有する面に改質合金であるRE-Y合金(Y:金属元素であって重希土類元素を含まない)の急冷リボンを当接し、双方を加圧した状態でRE-Y合金の融点以上の温度で熱処理し、RE-Y合金の融液を希土類磁石用の急冷リボン前駆体に拡散浸透させて希土類磁石用の急冷リボンを製造する第2のステップからなるものである。
本発明の希土類磁石用の急冷リボンの製造方法は、Dy、Tbといった重希土類金属を使用しない改質合金の急冷リボンを希土類磁石用の急冷リボン前駆体に拡散浸透させて希土類磁石用の急冷リボンを製造するものである。そして、希土類磁石用の急冷リボン前駆体の表面に所定の表面粗度(凹凸)を付しておき、この表面粗度を有する側面に改質合金の急冷リボンを当接させ、双方を加圧することによって、相対的に軟質な改質合金の急冷リボンを相対的に硬質な希土類磁石用の急冷リボン前駆体の表面凹凸内に変形させながら入り込ませることで、改質合金の急冷リボンを希土類磁石用の急冷リボン前駆体の表面からずれ難くして、該表面の全面に改質合金の急冷リボンを密着させることができるものである。この状態で改質合金の急冷リボンを溶融させることで、溶融した改質合金を希土類磁石用の急冷リボン前駆体の全体に拡散浸透させることができ、しかも、無駄な改質合金の発生を解消することができるものである。
ここで、希土類磁石用の急冷リボン前駆体の一側面に所定の表面粗度を形成する方法としては、合金インゴットの溶湯を所定の表面粗度のロール面を有する回転ロールに噴射するに当たり、このロール面に予め所定の表面粗度を設けておくことで、合金インゴットの溶湯がその一側面に噴射され、硬化した際にロール面の表面粗度を急冷リボンの一側面に転写する方法を挙げることができる。なお、ロール面に設けられた表面粗度がそのまま、形成される希土類磁石用の急冷リボン前駆体の表面に転写されることが本発明者等によって特定されている。
なお、本明細書でいう「表面粗度」とは、中心線平均粗さ(Ra)のことであり、粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を長さで割った値をマイクロメートルで表わしたものである。
ここで、本発明による希土類磁石用の急冷リボンの製造方法の好ましい実施の形態として、前記第1のステップでは、希土類磁石用の急冷リボン前駆体を製造することのほかに、前記改質合金の合金インゴットを溶解し、これを所定の表面粗度のロール面を有する回転ロールに噴射することで、該ロール面の表面粗度がその一側面に転写された改質合金の急冷リボンを製造し、前記第2のステップでは、希土類磁石用の急冷リボン前駆体と改質合金の急冷リボンそれぞれの前記表面粗度を有する面同士を当接して加圧する形態を挙げることができる。
この実施の形態によれば、希土類磁石用の急冷リボン前駆体の表面の凹凸と改質合金の急冷リボンの表面の凹凸が相互に噛み合い、双方の密着性をより一層高めることができる。
また、前記表面粗度はRa=0.05μm〜5μmの範囲であるのが好ましい。
まず、表面粗度Raは可及的に小さい方が急冷リボンの表面が均等に冷却されることから好ましい。しかしながら、Raが0.04μm以下では、希土類磁石用の急冷リボン前駆体の表面と改質合金の急冷リボンが密着せず、急冷リボン同士が乖離してしまうことが本発明者等によって特定されており、したがって0.04μm以下は好ましくない。
これらのことより、Ra=0.05μmをその下限値に規定したものである。
一方、Raが5μmを越えると、急冷リボンを製造する際の急冷時に溶解原料と回転ロールのロール面の密着性が悪くなり、このことが急冷速度を低下させ、結果として粗大粒子の生成に繋がってしまうこともまた本発明者等によって特定されている。このことより、Ra=5μmを表面粗度の好ましい範囲の上限値に規定したものである。
希土類磁石用の急冷リボン前駆体の粒界相を構成するRE-X合金は、主相成分によっても相違するものの、REがNdの場合には、Ndと、Co、Fe、Ga、Cu、Al等のうちの少なくとも1種以上の合金からなり、たとえば、Nd-Co、Nd-Fe、Nd-Ga、Nd-Co-Fe、Nd-Co-Fe-Gaのうちのいずれか一種、もしくはこれらの二種以上が混在したものであって、Ndリッチな状態となっている。なお、REがPrの場合には、Nd同様にPrリッチな状態となっている。
上記製造方法では、この粒界相の改質合金であるRE-Y合金としてDyやTbといった重希土類元素を含まないものを使用することから、Dy合金等に比してその融点を格段に低下させることができる。
上記するようにDy合金等に比して融点が格段に低く、かつ保磁力性能を向上させることができ、さらには原料価格が比較的安価な金属元素として、Nd-Cu合金やNd-Al合金を挙げることができる。
改質合金がNd-Cu合金の場合には、その融点が520℃程度と低温であることから、520〜650℃の範囲で合金を溶融させる。この温度範囲であれば、急冷リボンの組成をなす主相を粗大化させることなく、溶融したNd-Cuを拡散浸透させることができる。なお、この「520℃」には、製造時の条件(室温、製造装置の状態やその温度など)による誤差を勘案し、その±5%程度の温度範囲が含まれるものとする。
一方、改質合金がNd-Al合金の場合には、その融点が600〜650℃とやはり低温であることから、急冷リボンの組成をなす主相を粗大化させることなく、溶融したNd-Alを拡散浸透させることができる。なお、この「600〜650℃」には、製造時の条件(室温、製造装置の状態やその温度など)による誤差を勘案し、その±5%程度の温度範囲が含まれるものとする。
上記製造方法で製造される急冷リボンから製造される希土類磁石としては、ナノ結晶磁石のほか、主相(粒子)の大きさが1μm以上の焼結磁石やボンド磁石などが含まれる。また、製造される希土類磁石は、保磁力性能が高められていることから車両(特にハイブリッド車や電気自動車)の駆動用モータに適用されることは勿論のこと、これ以外にも、多様な用途、たとえばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などの製品に適用することもできる。
以上の説明から理解できるように、本発明の希土類磁石用の急冷リボンの製造方法によれば、少なくとも希土類磁石用の急冷リボン前駆体の表面に所定の表面粗度を付与しておき、この表面に改質合金の急冷リボンを当接させ、双方を加圧して改質合金の急冷リボンを希土類磁石用の急冷リボン前駆体の表面凹凸内に入り込ませ、この状態で熱処理して改質合金の急冷リボンを溶融させて希土類磁石用の急冷リボン前駆体の内部に拡散浸透させることにより、使用された改質合金の急冷リボンを無駄にすることなく、その融液が全域に拡散浸透され、全体的に保磁力性能が高められた希土類磁石用の急冷リボンを製造することができる。
本発明の希土類磁石用の急冷リボンの製造方法の実施の形態1の第1のステップを説明した模式図である。 図1のII部の矢視図である。 (a)、(b)の順で、製造方法の実施の形態1の第2のステップを説明した模式図である。 (a)、(b)の順で、製造方法の実施の形態2の第2のステップを説明した模式図である。 希土類磁石用の急冷リボンの保磁力性能を比較した実験結果を示す図である。 希土類磁石用の急冷リボン前駆体の表面粗度の相違に応じた急冷リボン前駆体と改質合金の急冷リボンの密着性を観察した撮像図であって、(a)はRa=0.04の場合の撮像図であり、(b)はRa=0.1の場合の撮像図であり、(c)はRa=0.5の場合の撮像図であり、(d)はRa=2の場合の撮像図である。 Ra=10の場合の希土類磁石用の急冷リボンのSEM画像図である。
以下、図面を参照して本発明の希土類磁石用の急冷リボンの製造方法の実施の形態を説明する。
(希土類磁石用の急冷リボンの製造方法の実施の形態1)
図1は本発明の希土類磁石用の急冷リボンの製造方法の実施の形態1の第1のステップを説明した模式図であり、図2は図1のII部の矢視図であり、図3a、bはこの順で、製造方法の実施の形態1の第2のステップを説明した模式図である。
図1で示すように、たとえば50kPa以下に減圧したArガス雰囲気の不図示の炉中で、単ロールによるメルトスピニング法により、合金インゴットを高周波溶解し、希土類磁石を与える組成の溶湯を銅製の回転ロールRoに噴射して希土類磁石用の急冷リボン前駆体Bを製造する。
ここで、急冷リボン前駆体Bの組成は、RE-Fe-B系の主相(RE:Nd、Prの少なくとも一種)と、該主相の周りにあるRE-X合金(X:金属元素であって重希土類元素を含まない)からなり、たとえばこれがナノ結晶組織の場合には、50nm〜200nm程度の結晶粒径の主相からなる。
ここで、粒界相を構成するNd-X合金は、Ndと、Co、Fe、Ga、Cu、Al等のうちの少なくとも1種以上の合金からなり、たとえば、Nd-Co、Nd-Fe、Nd-Ga、Nd-Co-Fe、Nd-Co-Fe-Gaのうちのいずれか一種、もしくはこれらの二種以上が混在したものであって、Ndリッチな状態となっている。
回転ロールRoのロール面Ro1には、図2で示すように所定の表面粗度を形成する凹凸Ro2が設けてあり、合金インゴットの溶湯を回転ロールRoに噴射した際に形成された急冷リボン前駆体Bのうち、そのロール面Ro1側の側面には、図3aで示すようにロール面Ro1の凹凸Ro2(所定の表面粗度)が転写され、希土類磁石用の急冷リボン前駆体Bが製造される(第1のステップ)。
ここで、この表面粗度は、Ra=0.05μm〜5μmの範囲に調整されているのが望ましい。表面粗度Raは可及的に小さい方が急冷リボンの表面が均等に冷却されることから好ましい一方で、Raが0.04μm以下では、希土類磁石用の急冷リボン前駆体の表面と改質合金の急冷リボンが密着せず、急冷リボン同士が乖離してしまうことが本発明者等によって特定されていることから、Raは0.05μm以上が望ましい。一方、Raが5μmを越えると、急冷リボンを製造する際の急冷時に溶解原料と回転ロールのロール面の密着性が悪くなり、このことが急冷速度を低下させ、結果として粗大粒子の生成に繋がってしまうこともまた本発明者等によって特定されており、このことからRaは5μm以下が望ましい。
次に、図3aで示すように、希土類磁石用の急冷リボン前駆体Bのうち、凹凸Bbを有する面を上にしてこの面に改質合金であるRE-Y合金(Y:金属元素であって重希土類元素を含まない)の急冷リボンDを当接する。なお、改質被膜の急冷リボンDも溶解温度の設定以外は希土類磁石用の急冷リボン前駆体と同様の方法および条件で製作できる。
ここで、図示する製造方法では、RE-Y合金として、Nd-Cu合金とNd-Al合金のいずれか一種が使用される。すなわち、本製造方法では、急冷リボンDの粒界相の改質合金であるRE-Y合金としてDyやTbといった重希土類元素を含まないものを使用することから、Dy合金等に比してその融点を格段に低下させることができる。
改質合金がNd-Cu合金の場合にはその融点が520℃程度であり(520〜650℃の範囲で溶融させる)、Nd-Al合金の場合にはその融点が600〜650℃程度であり、ともにDy等の合金に比して格段に低温であり、Dy等の合金を使用する際に問題となる結晶粒の粗大化の問題は生じ得ない。
図3aで示すように、当接する急冷リボン前駆体Bと改質合金の急冷リボンDを加圧することにより(プレスP)、相対的に軟質な急冷リボンDが相対的に硬質な急冷リボン前駆体Bの凹凸Bb内に変形しながら入り込み、図3bで示すように、急冷リボン前駆体Bと改質合金の急冷リボンDが双方の全面で良好に密着することができる。
急冷リボン前駆体Bと改質合金の急冷リボンD双方の界面を密着させたら、これを不図示の高温炉に収容し、改質合金の融点以上の高温雰囲気として改質合金の急冷リボンDを溶融させ、図3bで示すように溶融した急冷リボンDを急冷リボン前駆体Bの内部に拡散浸透させ(X方向)、希土類磁石用の急冷リボンが製造される。
図示する製造方法の実施の形態1によれば、比較的低い温度で改質合金の急冷リボンを拡散浸透できることから希土類磁石用の急冷リボンを形成する主相の粗大化を抑制することができ、さらに、使用される改質合金の急冷リボンDの全部を無駄にすることなく、効果的に急冷リボン前駆体Bに拡散浸透させることができ、もって全体的にばらつきなく、高い保磁力性能を有した希土類磁石用の急冷リボンを製造することができる。
(希土類磁石用の急冷リボンの製造方法の実施の形態2)
図4a、bはこの順で、製造方法の実施の形態2の第2のステップを説明した模式図である。
製造方法の実施の形態2では、第1のステップにおいて、希土類磁石用の急冷リボン前駆体を製造したのとほぼ同様の方法(溶解温度のみ変更)でその表面に所定の表面粗度(凹凸)を有する改質合金の急冷リボンD1を製造する。すなわち、希土類磁石用の急冷リボン前駆体Bのみならず、改質合金の急冷リボンD1の表面D1aにも凹凸D1bを形成するものである。
そして、図4aで示すように、希土類磁石用の急冷リボン前駆体Bの凹凸Bbと改質合金の急冷リボンD1の表面D1aの凹凸D1bを噛み合わせた状態として加圧するものである。
この方法によれば、双方の凹凸Bb,D1bが噛み合った状態で加圧されることから、相対的なずれが完全に解消でき、双方の界面の密着性は一層高まる。
双方の界面を密着させたら、これを不図示の高温炉に収容し、改質合金の融点以上の高温雰囲気として改質合金の急冷リボンD1を溶融させ、図4bで示すように溶融した急冷リボンD1を急冷リボン前駆体Bの内部に拡散浸透させ(X方向)、希土類磁石用の急冷リボンが製造される。
なお、製造された希土類磁石用の急冷リボンは、たとえば不図示の成形型(ダイスとパンチから構成される)内に充填されて加圧成形されて焼結体が製造される。そして、これがナノ結晶磁石の場合には、この焼結体に対して熱間塑性加工(強加工)によって磁気的異方性が付与されてナノ結晶組織の希土類磁石が製造される。
なお、ナノ結晶磁石の希土類磁石以外にも、製造された希土類磁石用の急冷リボンは、粒径が1μm以上の焼結磁石やボンド磁石などに使用できることは勿論のことである。
[希土類磁石用の急冷リボンの保磁力性能を比較した実験とその結果]
本発明者等は、以下の表1で示す希土類磁石用の急冷リボン前駆体製造の際の条件、および、表2で示す改質合金の急冷リボン製造の際の条件に基づき、片側冷却によって、Nd29.9Pr0.4Fe64.2Co4.0B0.9Ga0.6(mass%)組成の急冷リボン、および、Nd70Cu30(at%)組成の急冷リボンを作成した。そして、双方のロール面側の側面同士を張り合わせ、バンドプレス機によって圧力を印加(100MPa)した。
高温炉で600℃、30分の熱処理をおこない、製造された希土類磁石用の急冷リボン(実施例1)の磁気特性の評価をおこなった。
Figure 2013135142
Figure 2013135142
なお、比較例1として、上記表1,2の表面粗度をRa=0.04μmとし、他の条件は同じとして希土類磁石用の急冷リボンを製作した。
磁気特性の結果を図5に示している。同図より、保磁力に関しては、改質合金拡散前が18.7kOeであるのに対して、実施例1は23.6kOe、比較例1は19.6kOeと、保磁力性能の向上の程度には大きな乖離があることが実証されている。
この実験において、比較例のものは改質合金の拡散浸透をおこなう熱処理の際に拡散浸透の急冷リボンがずれてしまい、その拡散浸透が不均一になっているために保磁力性能が十分に高まっていないと考えられる。
一方、実施例1のものは改質合金の拡散浸透面積が増加し、その全体が効果的に拡散浸透していること、双方の急冷リボンが相互に噛み合った状態で加圧されることから密着性が良好になっていることからその拡散浸透が均一になっており、このことによって保磁力性能が比較例1に比して格段に高くなっていると考えられる。
本発明者等はさらに、ロール面の表面粗度Raが0.04(比較例1)、0.1(実施例1)のほか、0.5(実施例2)、2(実施例3)の場合の双方の急冷リボン間の界面を光学顕微鏡で観察して界面密着性を検証した。それぞれの撮像図を図6a〜dに示す。さらに、Ra=10(比較例2)の希土類磁石用の急冷リボンを製作し、その内部のSEM画像を撮影した。これを図7に示す。
図6a〜dより、実施例1、2、3はともに、界面の密着性が極めて良好であることが確認できる一方で、比較例1の界面には大きな隙間が生じていることが分かる。
一方、図7より、比較例2では、その内部に粗大粒領域が存在していることが確認できる。これは、急冷リボンを製造する際の急冷時に溶解原料と回転ロールのロール面の密着性が悪く、このことが急冷速度を低下させ、結果として粒子の粗大化を齎していると考えられる。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
Ro…回転ロール、Ro1…ロール面、Ro2…凹凸(所定の表面粗度)、B…希土類磁石用の急冷リボン前駆体、Ba…一側面、Bb…凹凸(所定の表面粗度)、D,D1…改質合金の急冷リボン、D1b…凹凸(所定の表面粗度)

Claims (6)

  1. RE-Fe-B系の主相(RE:Nd、Prの少なくとも一種)と、該主相の周りにあるRE-X合金(X:金属元素であって重希土類元素を含まない)からなる組成の合金インゴットを溶解し、これを所定の表面粗度のロール面を有する回転ロールに噴射することで、該ロール面の表面粗度がその一側面に転写された希土類磁石用の急冷リボン前駆体を製造する第1のステップ、
    前記希土類磁石用の急冷リボン前駆体の前記表面粗度を有する面に改質合金であるRE-Y合金(Y:金属元素であって重希土類元素を含まない)の急冷リボンを当接し、双方を加圧した状態でRE-Y合金の融点以上の温度で熱処理し、RE-Y合金の融液を希土類磁石用の急冷リボン前駆体に拡散浸透させて希土類磁石用の急冷リボンを製造する第2のステップからなる希土類磁石用の急冷リボンの製造方法。
  2. 前記第1のステップでは、希土類磁石用の急冷リボン前駆体を製造することのほかに、前記改質合金の合金インゴットを溶解し、これを所定の表面粗度のロール面を有する回転ロールに噴射することで、該ロール面の表面粗度がその一側面に転写された改質合金の急冷リボンを製造するものであり、
    前記第2のステップでは、希土類磁石用の急冷リボン前駆体と改質合金の急冷リボンそれぞれの前記表面粗度を有する面同士を当接して加圧する請求項1に記載の希土類磁石用の急冷リボンの製造方法。
  3. 前記表面粗度がRa=0.05μm〜5μmの範囲である請求項1または2に記載の希土類磁石用の急冷リボンの製造方法。
  4. 前記RE-Y合金がNd-Cu合金であり、第2のステップでは、520〜650℃の温度でNd-Cu合金を溶融させてNd-Cu合金の融液を拡散浸透させる請求項1〜3のいずれかに記載の希土類磁石用の急冷リボンの製造方法。
  5. 前記RE-Y合金がNd-Al合金であり、第2のステップでは、600〜650℃の温度でNd-Al合金を溶融させてNd-Al合金の融液を拡散浸透させる請求項1〜3のいずれかに記載の希土類磁石用の急冷リボンの製造方法。
  6. 前記希土類磁石がナノ結晶磁石である請求項1〜5のいずれかに記載の希土類磁石用の急冷リボンの製造方法。
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