JP2013130262A - 摩擦伝動変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】変速開始時t1から偏心軸回転角θを1→2変速方向へ増大させると、1速ローラ対のローラ間押圧接触力Fcが低下されると共に、2速ローラ対のローラ間押圧接触力Fcが増大され、これにより1速ローラ対の伝達トルクT1が低下されると共に、2速ローラ対の伝達トルクT2が増大され、1速ローラ対および2速ローラ対のトルク分担が逆転してトルクフェーズが生起される。イナーシャフェーズ(t2〜t3)中は、偏心軸を回転角θから明らかな通り1→2変速方向と逆の方向へ戻し回転させる。イナーシャフェーズ終了時t3以降は、偏心軸を回転角θにより示す通り1→2変速方向へ回転させ、1→2変速を完遂させる。
【選択図】図3
Description
変速可能にするため、ローラ対をなす一方のローラのグループ(例えば駆動ローラ群)および他方のローラのグループ(例えば従動ローラ群)のうち、一方を同軸一体構造とし、他方を偏心軸の偏心部に回転自在に支持し、該偏心軸を回転させて各ローラ対の軸間距離を変えることにより、選択的にいずれか一のローラ対で動力伝達を行うように構成する。
先ず、本発明の前提となる摩擦伝動変速機を説明するに、これは、
回転自在に支持された駆動ローラと従動ローラとを押圧接触させ、これら駆動ローラおよび従動ローラ間の押圧接触部に生じる摩擦伝達力によって、駆動ローラおよび従動ローラ間での動力伝達が可能であり、
上記駆動ローラおよび従動ローラを、径の異なる複数のローラ対で構成し、駆動ローラおよび従動ローラの一方を偏心軸の偏心部に回転自在に支持し、該偏心軸を回転させて各ローラ対の軸間距離を変えることにより選択的に、いずれか一のローラ対で前記動力伝達を行うようにしたものである。
この偏心軸変速用回転一時中断手段は、上記動力伝達を行うローラ対が上記一のローラ対から他のローラ対に切り替わる変速用に行う上記偏心軸の回転途中で、該偏心軸の変速用回転を一時的に中断させるものである。
動力伝達を行うローラ対を切り替える変速用に行う偏心軸の回転途中で、当該偏心軸の変速用回転を一時的に中断させるため、
この中断により、変速前に動力伝達を行っていたローラ対が摩擦伝動変速機の伝動系にブレーキ作用を及ぼし、トルクフェーズ中におけるトルク変化に伴うイナーシャフェーズでのトルクの突き上げを当該ブレーキ作用により解消、若しくは少なくとも緩和することができる。
<実施例の構成>
図1(a),(b)は、本発明の一実施例になる変速制御装置を具えた摩擦伝動変速機を示し、これを、車両の駆動系に用いるのに好適な、以下のごとき摩擦伝動変速機として構成する。
入力軸31は、両端31a,31bを軸受32,33によりケース34に対し回転自在に支承して、軸線O1の周りに回転可能とする。
そのため1速従動ローラ21および2速従動ローラ22はそれぞれ、1速駆動ローラ11および2速駆動ローラ12に対し、ほぼ同じ軸直角面内に配置する。
偏心軸35は、両端35a,35bを軸受38,39によりケース34に対し回転自在に支承して、軸線O2の周りに回転可能となし、偏心部35-1, 35-2の軸心(1速従動ローラ21および2速従動ローラ22の回転中心21a,22a)を、偏心軸35の回転位置制御により第1速および第2速間で変速が可能となるような位相ずれのもと、偏心軸35の回転中心O2から所定量εだけオフセットさせる。
かかる偏心軸35の回転位置制御により、従動ローラ群2をなす従動ローラ21,22のうち一の従動ローラが、駆動ローラ群1をなす駆動ローラ11,12のうち対応する駆動ローラに対し径方向に押圧接触される。
なお、相互に接触する一のローラ対により伝達されて、対応する従動ローラに達した動力は、隣り合う従動ローラ21,22間を図1(a)のごとくドグギヤ42で径方向相対変位可能に回転係合させておくことにより、2速従動ローラ22から図1(a)に一点鎖線矢印で示す方向に取り出すことができる。
サーボモータ41により偏心軸35を軸線O2の周りで図1(b)の矢印αと反対方向へ回転させると、図1(a)に示すように偏心軸35の偏心部35-1(1速従動ローラ21の回転中心21a)が入力軸31に接近する。
これにより遂には1速従動ローラ21が外周面を1速駆動ローラ11の外周面に押圧接触されてこれらローラ間で動力伝達を行い得るようになり、入力軸31への動力を1速駆動ローラ11および1速従動ローラ21から、1速変速段で図1(a)の一点鎖線矢印方向へ取り出すことができる。
なお、この時におけるローラ11,21間の押圧接触力は、伝達トルク最大値をスリップ無しに伝達し得る大きさとする。
これにより遂には2速従動ローラ22が、外周面を図1(b)に矢印βで示すように2速駆動ローラ12の外周面に押圧接触されてこれらローラ間で動力伝達を行い得るようになり、入力軸31への動力を2速駆動ローラ12および2速従動ローラ22から、2速変速段で図1(a)の一点鎖線矢印方向へ取り出すことができる。
なお、この時におけるローラ12,22間の押圧接触力は、伝達トルク最大値をスリップ無しに伝達し得る大きさとする。
摩擦伝動変速機の伝達トルクが小さい低負荷時に(アクセル開度が小さい時に)、伝達トルクに対してローラ間押圧接触力が過大となり、大きな変速ショックが発生したり、度重なる衝撃で変速制御系や伝動系の耐久性が低下する。
この低負荷時変速制御を、1速変速段から2速変速段への1→2アップシフトが行われる場合について、図2,3を参照しつつ以下に説明する。
ステップS11においては、当該1→2アップシフトを生起させるためサーボモータ41により偏心軸35を図1(b)に矢印αで示す方向へ回転させ、偏心軸回転角θを図3の変速開始瞬時t1から図示のごとく1→2変速方向へ増大させることにより、図1(a)に示す1速変速段選択状態から図1(b)に示す2速変速段選択状態への変速を進行させる。
従ってステップS18は、本発明における入力トルク増大手段に相当する。
ステップS13においては、サーボモータ41により偏心軸35を1→2変速方向と逆の方向へ戻し回転させ、偏心軸回転角θを図3のイナーシャフェーズ開始瞬時t2から図示のごとく1→2変速方向と逆の方向へ低下させる。
この時における偏心軸35の戻し回転量は、変速機入力トルクが大きな高負荷であるほど大きな戻し回転量に設定する。
本実施例ではこの変速応答遅れを防止するために、次のステップS14において、入力軸31に結合されている動力源(図示せず)を、変速機入力回転数Ninがイナーシャフェーズ(t2〜t3)中、図3に例示する所定の時間変化割合で変速後変速段(2速)対応回転数に向かうよう回転速度制御する。
従ってステップS14は、本発明における入力回転制御手段に相当する。
ここで2速ローラ対12,22のローラ間摩擦係数μは上記の変速中、図3に例示するような時系列変化を呈し、イナーシャフェーズが終了する瞬時t3に最大値μ_maxとなり、ローラ間摩擦係数μが最大値μ_maxになった時をもってイナーシャフェーズ終了と判定し得る。
ローラ間摩擦係数μが最大値±μ_maxとなるローラ間すべり速度±V_maxを基準とし、2速ローラ対12,22のローラ間すべり速度Vの絶対値|V|が|V|=|±V_max|になった時をもってイナーシャフェーズ終了と判定することができる。
これにより偏心軸回転角θが、図3のイナーシャフェーズ終了瞬時t3以降、図示のごとくに所定の速度で再び1→2変速方向へ増大され、2速変速段選択状態への変速を進行させる。
これによりローラ対の切り替えが終了して図3の瞬時t4に至るとき、ステップS17は制御を終了して図2のループから抜ける。
上記した本実施例の変速制御装置によれば、動力伝達を行うローラ対を切り替える変速に際して行うべき偏心軸35の回転途中で、偏心軸35を一時的に変速方向と逆の方向へ回転させるため(ステップS13、図3のイナーシャフェーズ中t2〜t3)、
かかる偏心軸35の逆向き回転により、変速前に動力伝達を行っていたローラ対(図2,3では1速ローラ対11,21)が摩擦伝動変速機の伝動系にブレーキ作用を及ぼし、トルクフェーズ中(図3のt1〜t2)におけるトルク変化に伴うイナーシャフェーズ(図3のt2〜t3)でのトルクの突き上げを上記のブレーキ作用により解消、若しくは少なくとも緩和することができる。
このことは、図3に示す変速機出力トルクToutのレベルがほぼ変化せず、一定であることから明らかである。
低負荷時に大きな変速ショックが発生するという前記した従来装置の問題を生ずることがなくなると共に、度重なる衝撃で変速制御系および伝動系の耐久性が低下するという従来装置の問題を生ずることもなくなる。
上記問題の原因であるトルクの突き上げが実際に発生するタイミングに調時して偏心軸35の逆方向回転を行うこととなり、上記の効果を一層顕著なものとなし得る。
ステップS15でのイナーシャフェーズ終了判定を、変速後変速段に関わるローラ対のローラ間スリップ速度Vに基づき、その絶対値|V| が最大摩擦係数発生スリップ速度|±V_max|になった時をイナーシャフェーズ終了時と判定するため、
正確に検出可能なローラ間スリップ速度Vに基づきイナーシャフェーズを高精度に判定することができて、上記の効果を更に顕著なものとなし得る。
変速ショックや耐久性に関する前記した問題を生ずることのない高負荷時に、ステップS13での偏心軸35の戻し回転が無駄に行われて、変速応答が悪化するという問題を回避することができる。
前記した変速ショックや耐久性の問題が顕著になる高負荷時においては、これに呼応して前記したブレーキ作用が大きくなることとなり、当該高負荷時においても確実に上記の効果を得ることができる。
図3に示す変速機出力トルクToutのレベル一定からも明らかなように、1速ローラ対11,21のブレーキ作用によるトルクの落ち込みショックを回避することができる。
ステップS13による偏心軸35の戻し回転が変速機入力回転数Ninの変速後変速段(2速)対応回転数への低下を遅らせて変速応答遅れを大きくするところながら、この変速応答遅れをステップS14での動力源の回転速度制御により回避することができる。
なお上記した実施例では、ステップS13でイナーシャフェーズ(図3のt2〜t3)中に偏心軸35を変速方向と逆方向へ図3のごとく戻し回転させることとしたが、この代わりに偏心軸35をイナーシャフェーズ中、イナーシャフェーズ開始時の回転位置に保って、変速方向への回転を一時的に中断するようにしてもよい。
この場合も、偏心軸35を変速方向と逆方向へ戻し回転させる場合ほどではないが、1速ローラ対11,21による前記したブレーキ作用が得られて、前記した作用・効果を奏することができる。
2 従動ローラ群
11 1速駆動ローラ
12 2速駆動ローラ
21 1速従動ローラ
22 2速従動ローラ
31 入力軸
32,33 軸受
34 ケース
35 偏心軸
35-1,35-2 偏心部
36,37 ボールベアリング
38,39 軸受
41 サーボモータ
42 ドグギヤ
Claims (8)
- 回転自在に支持された駆動ローラと従動ローラとを押圧接触させ、これら駆動ローラおよび従動ローラ間の押圧接触部に生じる摩擦伝達力によって、駆動ローラおよび従動ローラ間での動力伝達が可能であり、
前記駆動ローラおよび従動ローラを、径の異なる複数のローラ対で構成し、駆動ローラおよび従動ローラの一方を偏心軸の偏心部に回転自在に支持し、該偏心軸を回転させて各ローラ対の軸間距離を変えることにより選択的に、いずれか一のローラ対で前記動力伝達を行うようにした摩擦伝動変速機において、
前記動力伝達を行うローラ対が前記一のローラ対から他のローラ対に切り替わる変速用に行う前記偏心軸の回転途中で、該偏心軸の変速用回転を一時的に中断させる偏心軸変速用回転一時中断手段を設けたことを特徴とする摩擦伝動変速機の変速制御装置。 - 請求項1に記載された、摩擦伝動変速機の変速制御装置において、
前記偏心軸変速用回転一時中断手段は、前記偏心軸を変速用回転と逆の方向へ一時的に戻し回転させるものであることを特徴とする摩擦伝動変速機の変速制御装置。 - 請求項1または2に記載された、摩擦伝動変速機の変速制御装置において、
前記偏心軸変速用回転一時中断手段は、前記摩擦伝動変速機の入出力回転比が変速前回転比から変速後回転比に変化し始めたイナーシャフェーズ開始時に、前記偏心軸の変速用回転を一時的に中断させるものであることを特徴とする摩擦伝動変速機の変速制御装置。 - 請求項3に記載された、摩擦伝動変速機の変速制御装置において、
前記偏心軸変速用回転一時中断手段は、前記一のローラ対を成す駆動ローラおよび従動ローラ間の周速差であるスリップ速度が負値になる時をもって前記イナーシャフェーズの開始と見なすものであることを特徴とする摩擦伝動変速機の変速制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載された、摩擦伝動変速機の変速制御装置において、
前記偏心軸変速用回転一時中断手段は、前記摩擦伝動変速機への入力トルクが設定値未満の低負荷状態である場合に、前記偏心軸の変速用回転一時中断制御を行うものであることを特徴とする摩擦伝動変速機の変速制御装置。 - 請求項2〜5のいずれか1項に記載された、摩擦伝動変速機の変速制御装置において、
前記偏心軸変速用回転一時中断手段は、前記偏心軸の変速用回転と逆の方向への一時的な戻し回転量を、前記摩擦伝動変速機への入力トルクが大きい高負荷であるほど多くするものであることを特徴とする摩擦伝動変速機の変速制御装置。 - 請求項2〜6のいずれか1項に記載された、摩擦伝動変速機の変速制御装置において、
前記偏心軸変速用回転一時中断手段が前記偏心軸を変速用回転と逆の方向へ一時的に戻し回転させる前に、前記摩擦伝動変速機への入力トルクを増大させる入力トルク増大手段を設けたことを特徴とする摩擦伝動変速機の変速制御装置。 - 請求項2〜7のいずれか1項に記載された、摩擦伝動変速機の変速制御装置において、
前記偏心軸変速用回転一時中断手段が前記偏心軸を変速用回転と逆の方向へ一時的に戻し回転させる間、前記摩擦伝動変速機の入力回転を変速後回転数に向かうよう制御する入力回転制御手段を設けたことを特徴とする摩擦伝動変速機の変速制御装置。
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