JP2013130113A - 作動ガス循環型エンジン - Google Patents

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Abstract

【課題】作動ガス循環型エンジンにおいて、部品点数及び圧力損失の増大を最小限に抑えつつ、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去する。
【解決手段】燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に再供給するための循環通路に凝縮手段が介装された作動ガス循環型エンジンにおいて、排気ポートから凝縮手段までの循環通路である上流側循環通路の少なくとも一部と、凝縮手段から吸気ポートまでの循環通路である下流側循環通路の少なくとも一部とが、熱伝導可能な状態で接触するように構成することにより、凝縮手段の上流側の循環通路及びその中を流れる既燃ガスの温度を下げ、結果として、燃焼室に再供給される既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気の量を更に低減する。
【選択図】図3

Description

本発明は、燃料と酸化剤と作動ガスとを燃焼室に供給して同燃料を燃焼させると共に、同燃焼室から排出された既燃ガス中の作動ガスを同燃焼室に循環(再供給)する作動ガス循環型エンジンに関する。より詳しくは、本発明は、部品点数及び圧力損失の増大を最小限に抑えつつ、既燃ガス中に含まれる、燃料の燃焼によって生ずる生成物(以降、「燃焼生成物」とも称する)をより効率的に除去することができる作動ガス循環型エンジンに関する。
従来から、燃焼室に燃料(例えば、水素)と酸化剤(例えば、酸素)と作動ガス(例えば、不活性ガス)とを供給して同燃料を燃焼させると共に、同燃焼室から排出された既燃ガス中の作動ガスを、循環通路を通して同燃焼室に循環させる、所謂「作動ガス循環型エンジン」が提案されている。かかる作動ガス循環型エンジンにおいては、作動ガスの比熱比及びエンジンの圧縮比が大きい程、エンジンの理論熱効率が高くなることが知られており、比熱比が大きい作動ガスとしては、例えば、希ガス類に属する単原子ガスであるヘリウム、ネオン、アルゴン等の不活性ガスが望ましいことも知られている。かかる比熱比が大きいガスを作動ガスとして用いるエンジンは、比較的小さい比熱比を有するガス(例えば、空気、窒素等)を作動ガスとして用いるエンジンと比較して、より高い熱効率で運転され得る。現時点における当該技術分野においては、これらの作動ガスの中で、アルゴンが広く使用されている。
また、作動ガス循環型エンジンにおいて使用される燃料としては、例えば、天然ガス、ガソリン等の炭化水素系燃料、水素等を使用することができる。更に、作動ガス循環型エンジンにおいて使用される酸化剤としては、例えば、酸素を使用することができる。作動ガス循環型エンジンにおいて使用される燃料と酸化剤との組み合わせとして、例えば、天然ガス、ガソリン等の炭化水素系燃料と酸素との組み合わせを使用する場合、燃焼生成物として、水、二酸化炭素、及び微量の窒素酸化物や硫黄酸化物が生成する。一方、作動ガス循環型エンジンにおいて使用される燃料と酸化剤との組み合わせとして、水素と酸素との組み合わせを使用する場合、燃焼生成物としては、水のみが生成する。現時点における当該技術分野においては、作動ガス循環型エンジンにおいて使用される燃料と酸化剤との組み合わせとして、水素と酸素との組み合わせが広く使用されている。
上記のように、作動ガス循環型エンジンの既燃ガス中には、燃料(例えば、天然ガス、ガソリン等の炭化水素系燃料、水素等)の燃焼によって生ずる燃焼生成物(例えば、水、二酸化炭素等)と作動ガス(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等)とが含まれる。これらの中で、特に水蒸気は3原子分子のガスであり、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の単原子の不活性ガスのみならず、空気や窒素と比較しても、より小さい比熱比を有する。従って、このように小さい比熱比を有する水蒸気を含む既燃ガスを、そのまま燃焼室に循環(再供給)すると、作動ガス全体としての比熱比が低下し、上死点(TDC)付近における燃焼室内の温度や圧力が低下し、結果としてエンジンの熱効率の低下を招く虞がある。
従って、作動ガス循環型エンジンにおいては、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に循環(再供給)するための循環通路と、同循環通路に介装され、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物(例えば、水、二酸化炭素等)を分離・除去する手段とを備えることが一般的である。かかる燃焼生成物を分離・除去する手段としては、例えば、温度の低下に伴って凝縮する性質を有する燃焼生成物(例えば、水)を、既燃ガスを冷却することにより凝縮させて当該燃焼生成物を既燃ガスから分離・除去する凝縮器(例えば、図1を参照)や、燃焼生成物(例えば、二酸化炭素)を多孔質構造によって吸着する吸着剤(例えば、ゼオライト等)等を用いる手段、及び燃焼生成物(例えば、二酸化炭素)を溶解して吸収する溶液(例えば、モノエタノールアミン溶液)を用いる手段等が知られている。
ところで、温度の低下に伴って凝縮する性質を有する燃焼生成物(例えば、水)は、既燃ガス中に蒸気として含まれている。図2に示す既燃ガスにおける燃焼生成物の飽和蒸気量と温度との関係を表すグラフからも判るように、既燃ガス中に蒸気として含まれることが可能な燃焼生成物の最大量(飽和蒸気量)は、既燃ガスの温度の上昇と共に増大し、既燃ガスの温度の下降と共に減少する。従って、既燃ガスを冷却することにより燃焼生成物を凝縮させて既燃ガスから分離・除去する場合、より多い量の燃焼生成物を分離・除去するためには、より大幅に既燃ガスの温度を下降させる必要がある。図2に示すように、温度T2において燃焼生成物をV2だけ含む既燃ガスを、温度T1まで冷却すると、既燃ガスにおける燃焼生成物の飽和蒸気量がV1まで減少するので、この飽和蒸気量の差分(V2−V1)に相当する量の燃焼生成物が凝結して、既燃ガスから分離・除去される。
即ち、既燃ガスを冷却することによって作動ガス循環型から排出される既燃ガス中に含まれる燃焼生成物を分離・除去する凝縮器において、燃焼生成物を既燃ガスから効率的に分離・除去するためには、凝縮器における熱交換効率を高め、凝縮器における既燃ガスの冷却性能を向上させる必要がある。凝縮器における熱交換効率を高めるためには、例えば、凝縮器や凝縮器における熱交換に使用される冷媒を冷却するための冷却手段(例えば、ラジエタ等の放熱器)の容量を大きくすることが必要となる。しかしながら、凝縮器や冷却手段の容量を大きくすることは、凝縮器や冷却手段を備える作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての重量の増加を招き、また当該設備の設計仕様によっては、かかる大容量の凝縮器や冷却手段を搭載するスペースをエンジンの近傍に確保することが困難である場合がある。
上記のように、凝縮器における熱交換効率の向上には限界があるため、当該技術分野においては、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に循環(再供給)するための循環通路上に複数の凝縮器を配設することにより、エンジンの近傍における凝縮器を搭載するスペースの制約を解消し、且つ凝縮器や冷却手段を備える作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の重量の増加を抑制しつつ、既燃ガスの冷却性能を向上させることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
しかしながら、上記のように燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に循環(再供給)するための循環通路上に複数の凝縮器を配設する場合、既燃ガスの冷却性能を向上させることは可能であるものの、凝縮器や冷却手段を備える作動ガス循環型エンジンを搭載する設備(例えば、車両等)の全体としての部品点数が増大して当該設備の製造コストが増大するのみならず、既燃ガスが凝縮器内を通過する際の圧力損失も増大し、エンジン出力の低下等の問題を招く虞がある。
そこで、当該技術分野においては、作動ガス循環型エンジンにおいて、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に循環(再供給)するための循環通路の少なくとも一部(例えば、エンジンの排気ポートと凝縮器との間の循環通路)を冷却する冷却装置を更に配設することにより、既燃ガスの冷却性能を向上させることが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
上記のように燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に循環(再供給)するための循環通路を冷却する冷却装置を更に配設すると、既燃ガスの圧力損失を増大させること無く、既燃ガスの温度をより低くすることができる。その結果、より多い量の燃焼生成物を凝縮器において凝縮させて、既燃ガスから分離・除去することができる。しかしながら、循環通路を冷却する冷却装置の構成要素としての放熱器(例えば、ラジエタ等)やポンプ等の部品を追加する必要があるため、エンジンの部品点数が増大し、エンジンの大型化や製造超す炉の増大を招く虞がある。また、冷却装置を作動させるための電力も必要となるため、エンジンのエネルギー効率が低下し、燃費の悪化を招く虞がある。
以上のように、当該技術分野においては、部品点数及び圧力損失の増大を最小限に抑えつつ、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去することができる作動ガス循環型エンジンに対する継続的な要求が存在する。
特開2009−281206号公報 特開2011−094585号公報
前述のように、当該技術分野においては、部品点数及び圧力損失の増大を最小限に抑えつつ、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去することができる作動ガス循環型エンジンに対する継続的な要求が存在する。本発明は、かかる要求に応えるために為されたものである。より具体的には、本発明は、作動ガス循環型エンジンにおいて、部品点数及び圧力損失の増大を最小限に抑えつつ、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去することができる技術を提供することを1つの目的とする。
本発明の上記目的は、
燃焼室に連通した吸気ポートと同燃焼室に連通した排気ポートとを同燃焼室の外部において接続する循環通路と、
前記循環通路に介装されると共に入口部及び出口部を有し、熱交換器及び気液分離器を備える凝縮手段と、
を備え、
前記循環通路は、前記燃焼室に燃料と酸化剤と作動ガスとを供給して前記燃焼室において同燃料を燃焼させると共に、前記燃焼室から前記排気ポートを通して排出される既燃ガスを前記循環通路及び前記吸気ポートを通して前記燃焼室に供給し、
前記凝縮手段は、前記循環通路から前記凝縮手段の入口部を通して流入する既燃ガスに含まれる、前記燃料の燃焼によって生ずる生成物である燃焼生成物の蒸気を、前記熱交換器によって凝縮させて凝縮液とすることによって、前記燃焼生成物を前記既燃ガスから除去し、前記燃焼生成物が除去された既燃ガスと前記凝縮液とを前記気液分離器によって分離し、前記燃焼生成物が除去された既燃ガスを同凝縮手段の出口部から前記循環通路へと排出する、
作動ガス循環型エンジンであって、
前記排気ポートから前記気液分離器までの前記循環通路である上流側循環通路の少なくとも一部と前記気液分離器から前記吸気ポートまでの前記循環通路である下流側循環通路の少なくとも一部とが熱伝導可能な状態で接触している、
作動ガス循環型エンジンによって達成される。
本発明によれば、上記のように、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に再供給するための循環通路に凝縮手段が介装された作動ガス循環型エンジンにおいて、排気ポートから凝縮手段までの循環通路である上流側循環通路の少なくとも一部と、凝縮手段から吸気ポートまでの循環通路である下流側循環通路の少なくとも一部とが、熱伝導可能な状態で接触するように構成することにより、凝縮手段の上流側の循環通路及びその中を流れる既燃ガスの温度を下げ、結果として、燃焼室に再供給される既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気の量を更に低減することができる。即ち、本発明によれば、作動ガス循環型エンジンにおいて、部品点数及び圧力損失の増大を最小限に抑えつつ、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去することができる。
凝縮器及び冷却手段を備える作動ガス循環型エンジンの構成を示す模式図である。 既燃ガスにおける燃焼生成物の飽和蒸気量と温度との関係を表すグラフである。 本発明の1つの実施態様に係る作動ガス循環型エンジンを含むシステムの構成を示す模式図である。 本発明のもう1つの実施態様に係る作動ガス循環型エンジンを含むシステムの構成を示す模式図である。 図3及び図4に示す作動ガス循環型エンジンが備える二重配管構造の断面図を表す模式図である。 本発明の1つの実施態様に係る作動ガス循環型エンジンを含むシステムの各部位における循環ガス(既燃ガス)の温度履歴を模式的に示すグラフである。
前述のように、本発明は、作動ガス循環型エンジンにおいて、部品点数及び圧力損失の増大を最小限に抑えつつ、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去することができる技術を提供することを1つの目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に再供給するための循環通路に凝縮手段が介装された作動ガス循環型エンジンにおいて、排気ポートから凝縮手段までの循環通路である上流側循環通路の少なくとも一部と、凝縮手段から吸気ポートまでの循環通路である下流側循環通路の少なくとも一部とが、熱伝導可能な状態で接触するように構成することにより、凝縮手段の上流側の循環通路及びその中を流れる既燃ガスの温度を下げ、結果として、燃焼室に再供給される既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気の量を更に低減することができることを見出し、本発明を想到するに至ったものである。
即ち、本発明の第1態様は、
燃焼室に連通した吸気ポートと同燃焼室に連通した排気ポートとを同燃焼室の外部において接続する循環通路と、
前記循環通路に介装されると共に入口部及び出口部を有し、熱交換器及び気液分離器を備える凝縮手段と、
を備え、
前記循環通路は、前記燃焼室に燃料と酸化剤と作動ガスとを供給して前記燃焼室において同燃料を燃焼させると共に、前記燃焼室から前記排気ポートを通して排出される既燃ガスを前記循環通路及び前記吸気ポートを通して前記燃焼室に供給し、
前記凝縮手段は、前記循環通路から前記凝縮手段の入口部を通して流入する既燃ガスに含まれる、前記燃料の燃焼によって生ずる生成物である燃焼生成物の蒸気を、前記熱交換器によって凝縮させて凝縮液とすることによって、前記燃焼生成物を前記既燃ガスから除去し、前記燃焼生成物が除去された既燃ガスと前記凝縮液とを前記気液分離器によって分離し、前記燃焼生成物が除去された既燃ガスを同凝縮手段の出口部から前記循環通路へと排出する、
作動ガス循環型エンジンであって、
前記排気ポートから前記凝縮手段までの前記循環通路である上流側循環通路の少なくとも一部と前記凝縮手段から前記吸気ポートまでの前記循環通路である下流側循環通路の少なくとも一部とが熱伝導可能な状態で接触している、
作動ガス循環型エンジンである。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、燃焼室に燃料と酸化剤と作動ガスとを供給して燃料を燃焼させると共に、燃焼室から排出された既燃ガスを、循環通路を通して燃焼室に循環させる(再供給する)エンジンである。また、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、排気ポートから排出される既燃ガス中に含まれる、燃料の燃焼によって生ずる生成物である燃焼生成物の蒸気が、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に再供給するための循環通路に介装された凝縮手段によって分離・除去される。より具体的には、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、凝縮手段が備える熱交換器が、循環通路から凝縮手段の入口部を通して流入する既燃ガスを冷却して、同既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気を凝縮させて凝縮液とし、凝縮手段が備える気液分離器が、同既燃ガスと燃焼生成物の凝縮液とを分離する。斯くして燃焼生成物の蒸気が除去された既燃ガスは、凝縮手段の出口部から循環通路へと排出され、燃焼室へと再供給(循環)される。
凝縮手段が備える熱交換器は、既燃ガスを冷却して、既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気を凝縮させて凝縮液とすることが可能である限り、如何なる構成のものであってもよい。例えば、熱交換器は、循環通路から流入する既燃ガス(循環ガス)を熱媒体と熱交換させることにより同既燃ガスを冷却して、同既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気を凝縮させて凝縮液とする熱交換器であってもよい。この場合、熱媒体は、例えば、空気等の気体であってもよく、又は水や油等の液体であってもよい。また、熱交換器は、既燃ガスとの熱交換により既燃ガスから熱を受け取って高温となった熱媒体を冷却する冷却手段を備えていてもよい。かかる冷却手段としては、例えば、ラジエタ等の放熱器を挙げることができる。この場合、熱媒体は、熱交換器と冷却手段との間で循環されて、既燃ガスからの熱の受け取りと、冷却手段への熱の受け渡しを繰り返すことができる。
一方、凝縮手段が備える気液分離器は、上記熱交換器によって凝縮された燃焼生成物の凝縮液を既燃ガスから分離することが可能である限り、如何なる構成のものであってもよい。例えば、気液分離器は、凝縮手段のケーシング内において既燃ガスの旋回流を発生させて、遠心力によって燃焼生成物の凝縮液を既燃ガスから分離する気液分離器であってもよい。あるいは、気液分離器は、上記熱交換器によって凝縮された燃焼生成物の凝縮液が溜まるように構成された凝縮手段のケーシングの底部であってもよい。
本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて使用される燃料としては、例えば、ガソリン、軽油、天然ガス、プロパン、水素等の、種々の燃料を用いることができる。但し、本発明は、前述のように、作動ガス循環型エンジンにおいて、部品点数及び圧力損失の増大を最小限に抑えつつ、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去しようとするものである。より具体的には、本発明は、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に再供給するための循環通路に介装された凝縮手段によって、排気ポートから排出される既燃ガス中に含まれる燃焼生成物の蒸気を分離・除去する作動ガス循環型エンジンにおいて、部品点数及び圧力損失の増大を最小限に抑えつつ、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去しようとするものである。従って、上記燃料としては、当該燃料の燃焼に伴って生ずる生成物が、少なくとも温度の下降に伴って凝縮する性質を有する燃焼生成物を含む燃料が想定される。かかる燃焼生成物としては、例えば、水が挙げられる。
上記燃料は、上記エンジンの運転状態における燃料の相(例えば、液相、気相等)に応じた構成を有する燃料貯蔵部(例えば、タンク、ボンベ等)に貯蔵することができる。また、上記燃料は、同燃料貯蔵部から、例えば、同エンジンの燃焼室内に直接噴射(所謂「筒内噴射」)しても、又は同エンジンの吸気ポート内に噴射する等して酸化剤及び作動ガスと予め混合してもよい。
かかる燃料噴射を行う噴射手段は、例えば、例えば、作動ガス循環型エンジンに関する各種制御を行うための電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)からの指示信号に応答して噴射口を弁体により開閉し、同噴射口が同弁体により開かれた際に同噴射手段に供給されている燃料の圧力により燃料を噴射する噴射弁であってよい。更に、燃料の噴射に用いられる圧力は、例えば、燃料が気相にある場合の燃料貯蔵部としての燃料タンク内の燃料ガスの圧力に基づくものであってもよく、例えば、燃料の圧力を高めるための圧縮機(例えば、コンプレッサ、ポンプ等)によって高められた燃料の圧力に基づくものであってもよい。更にまた、燃料の噴射に用いられる圧力は、燃料貯蔵部と噴射手段との間に介装された燃料噴射圧調整手段(例えば、圧力レギュレータ等)により一定の設定圧以上にならないように規制されていてもよい。
また、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて使用される酸化剤としては、例えば、酸素、過酸化水素等の、種々の酸化剤を用いることができる。上記酸化剤は、酸化剤貯蔵部(例えば、タンク、ボンベ等)に貯蔵することができ、同酸化剤貯蔵部から、例えば、同エンジンの燃焼室内に直接噴射しても、又は同エンジンの燃焼室内に供給される前に、作動ガスと予め混合してもよい。
更に、上記燃料の燃焼モードは、用いられる燃料の性状やエンジンの仕様等に応じて適宜選択することができる。より具体的には、例えば、少なくとも酸化剤と作動ガスとを含むガスが燃焼室内にて圧縮されている高圧縮状態にある期間内の所定の時期に燃料を燃焼室内に直接噴射(所謂「高圧噴射」)して燃料を拡散燃焼させてもよい。また、前述のように酸化剤と作動ガス及び予め混合された燃料を、燃焼室内に設けられた点火手段から発生した火花によって点火して火花点火燃焼させてもよい。
ところで、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、前述のように、排気ポートから凝縮手段までの循環通路である上流側循環通路の少なくとも一部と、凝縮手段から吸気ポートまでの循環通路である下流側循環通路の少なくとも一部とが、熱伝導可能な状態で接触するように構成される。排気ポートから凝縮手段までの循環通路である上流側循環通路においては、エンジンから排出された直後の非常に高い温度を有する既燃ガスが循環通路の内部に流れている。従って、当該部分の温度は非常に高い。一方、凝縮手段から吸気ポートまでの循環通路である下流側循環通路においては、凝縮手段によって既燃ガス中に含まれる燃焼生成物の蒸気が分離・除去された後の相対的に低い温度を有する既燃ガスが循環通路の内部に流れている。従って、当該部分の温度は相対的に低い。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、非常に高い温度を有する上流側循環通路の少なくとも一部と、相対的に低い温度を有する下流側循環通路の少なくとも一部とが、熱伝導可能な状態で接触するように構成される。従って、上流側循環通路と下流側循環通路とが接触する部分においては、非常に高い温度を有する上流側循環通路から相対的に低い温度を有する下流側循環通路へと熱が伝達される。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジンの排気ポートから循環通路を介して凝縮手段の入口部に流入する既燃ガスの温度を、前述の従来技術に係る作動ガス循環型エンジンにおけるように特段の冷却装置を追加すること無く、効果的に下降させることができる。その結果、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える凝縮手段においては、循環通路から凝縮手段の入口部を通して流入する既燃ガスをより低い温度にまで冷却することができ、より多くの量の燃焼生成物の蒸気を凝縮させて既燃ガスから分離・除去することができる。即ち、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、部品点数の増大を最小限に抑え且つ圧力損失の増大を伴うこと無く、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去することができる。
ところで、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて上流側循環通路と下流側循環通路とが接触する部分の構造は、上流側循環通路と下流側循環通路とが熱伝導可能な状態で接触する限り、如何なるものであってもよい。例えば、上流側循環通路及び下流側循環通路を例えば金属等の熱伝導率の高い材質によって構成し(例えば、金属製パイプ等)、これらを互いに接触させることにより、非常に高い温度を有する上流側循環通路から相対的に低い温度を有する下流側循環通路へと熱を伝達させ、これらの間での熱交換を行わせることができる。この際、当該熱交換の効率をより高めるためには、上流側循環通路と下流側循環通路との間で熱伝導が行われる面積(伝熱面積)を、より大きくすることが望ましい。
上記のように上流側循環通路と下流側循環通路との間での伝熱面積を、より大きくするためには、例えば、上流側循環通路と下流側循環通路とが熱伝導可能な状態で接触している部分において、上流側循環通路の内部に下流側循環通路を配設することができる。これにより、非常に高い温度を有する上流側循環通路は、かかる構成を備えない一般的な作動ガス循環型エンジンと同様に当該循環通路の外側に向かって放熱することができるのみならず、当該循環通路の内部に配設された相対的に低い温度を有する下流側循環通路(内側)に向かっても放熱することができる。結果として、かかる構成を有する作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジンの排気ポートから循環通路を介して凝縮手段の入口部に流入する既燃ガスの温度を、前述の従来技術に係る作動ガス循環型エンジンにおけるように特段の冷却装置を追加すること無く、効果的に下降させることができる。
従って、本発明の第2の実施態様は、
本発明の前記第1の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンであって、
前記上流側循環通路と前記下流側循環通路とが熱伝導可能な状態で接触している部分において、前記上流側循環通路の内部に前記下流側循環通路が設けられている、
作動ガス循環型エンジン。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、上流側循環通路と下流側循環通路とが熱伝導可能な状態で接触している部分において、上流側循環通路の内部に下流側循環通路が設けられている。これにより、上述のように、非常に高い温度を有する上流側循環通路は、かかる構成を備えない一般的な作動ガス循環型エンジンと同様に当該循環通路の外側に向かって放熱することができるのみならず、当該循環通路の内部に配設された相対的に低い温度を有する下流側循環通路(内側)に向かっても放熱することができる。従って、かかる構成を有する作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジンの排気ポートから循環通路を介して凝縮手段の入口部に流入する既燃ガスの温度を、前述の従来技術に係る作動ガス循環型エンジンにおけるように特段の冷却装置を追加すること無く、効果的に下降させることができる。その結果、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える凝縮手段においては、循環通路から凝縮手段の入口部を通して流入する既燃ガスをより低い温度にまで冷却することができ、より多くの量の燃焼生成物の蒸気を凝縮させて既燃ガスから分離・除去することができる。即ち、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、部品点数の増大を最小限に抑え且つ圧力損失の増大を伴うこと無く、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去することができる。
尚、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて上流側循環通路の内部に下流側循環通路が設けられている部分の具体的な構造としては、例えば、上流側循環通路を相対的に大きい径を有する配管として形成し、下流側循環通路を相対的に小さい径を有する配管として形成し、相対的に大きい径を有する上流側循環通路の内部に、相対的に小さい径を有する下流側循環通路を配設してなる二重配管構造を挙げることができる。本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、かかる二重配管構造を、エンジンの排気ポートと凝縮手段との間に配設することができる。この場合、当該二重配管構造以外の部分は、一般的な作動ガス循環型エンジンと同様に構成することができる。即ち、かかる構成においては、排気ポートから凝縮手段までの循環通路である上流側循環通路の途中に上記のような二重配管構造を介在させ、エンジンの排気ポートから排出される既燃ガスが当該二重配管構造の外側の循環通路を流れるように構成する。一方、凝縮手段から吸気ポートまでの循環通路である下流側循環通路については、凝縮手段から排出される、燃焼生成物の凝縮液が分離された後の既燃ガスが当該二重配管構造の内側の循環通路を経由してエンジンの吸気ポートに戻るように構成する。具体的には、凝縮手段の出口部から延在する下流側循環通路を、当該二重配管構造の外側の循環通路を貫通させて当該二重配管構造の内側の循環通路の上流側(凝縮手段側)の端部に接続し、当該二重配管構造の内側の循環通路の下流側(エンジンの吸気ポート側)の端部を、当該二重配管構造の外側の循環通路を貫通させてエンジンの吸気ポートから延在する下流側循環通路に接続する。かかる構成により、上流側循環通路と下流側循環通路とが熱伝導可能な状態で接触している部分において、上流側循環通路の内部に下流側循環通路を配設することができる。
当然のことながら、かかる構成においても、上記二重配管構造においては、凝縮手段に到達する前の非常に高い温度を有する既燃ガスが、かかる構成を備えない一般的な作動ガス循環型エンジンと同様に上流側循環通路の外側に向かって放熱することができるのみならず、上流側循環通路の内部に配設された相対的に低い温度を有する下流側循環通路(内側)に向かっても放熱することができる。結果として、かかる構成を有する作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジンの排気ポートから循環通路を介して凝縮手段の入口部に流入する既燃ガスの温度を、前述の従来技術に係る作動ガス循環型エンジンにおけるように特段の冷却装置を追加すること無く、効果的に下降させることができる(より詳細には、図3を参照しつつ後述する)。
更に、本実施態様の1つの変形例として、例えば、上記のような二重配管構造を、凝縮手段が備える気液分離器まで延在させ、当該二重配管構造の外側の循環通路に該当する上流側循環通路を介して、エンジンの排気ポートから排出される既燃ガスを気液分離器まで導き、当該二重配管構造の内側の循環通路に該当する下流側循環通路を介して、気液分離器によって燃焼生成物の凝縮液が分離された後の既燃ガスを、エンジンの吸気ポートに通じる循環通路に戻すように構成してもよい。
当然のことながら、かかる構成においても、上記二重配管構造の凝縮手段よりも上流側(エンジンの排気ポート側)の領域においては、当該二重配管構造の外側の循環通路に該当する上流側循環通路を流れる既燃ガスが、かかる構成を備えない一般的な作動ガス循環型エンジンと同様に上流側循環通路の外側に向かって放熱することができるのみならず、上流側循環通路の内部に配設された相対的に低い温度を有する下流側循環通路(内側)に向かっても放熱することができる。これに加えて、当該二重配管構造の凝縮手段が備える熱交換器が配設された領域に対応する部分においては、当該二重配管構造の外側の循環通路に該当する上流側循環通路を流れる既燃ガスが当該熱交換器によって冷却されるのみならず、当該二重配管構造の内側の循環通路に該当する下流側循環通路を流れる既燃ガスによっても冷却される。結果として、かかる構成を有する作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジンの排気ポートから循環通路を介して凝縮手段の入口部に流入する既燃ガスの温度を、前述の従来技術に係る作動ガス循環型エンジンにおけるように特段の冷却装置を追加すること無く、効果的に下降させることができるのみならず、凝縮手段において、熱交換器及び当該二重配管構造の内側の循環通路に該当する下流側循環通路を流れる既燃ガスの両方によって、更により効果的に既燃ガスを冷却することができる(より詳細には、図4を参照しつつ後述する)。
尚、上記説明においては、本発明の特定の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおける上流側循環通路と下流側循環通路とが熱伝導可能な状態で接触している部分の構成の具体例として、上流側循環通路の内部に下流側循環通路が設けられている構造を例示し、更なる具体例として、上流側循環通路を相対的に大きい径を有する配管として形成し、下流側循環通路を相対的に小さい径を有する配管として形成し、相対的に大きい径を有する上流側循環通路の内部に、相対的に小さい径を有する下流側循環通路を配設してなる二重配管構造を例示した。しかしながら、本発明に係る作動ガス循環型エンジンの実施態様は、かかる特定の実施態様に限定されるものではない。即ち、本発明に係る作動ガス循環型エンジンにおける上流側循環通路と下流側循環通路とが熱伝導可能な状態で接触している部分の構成は、部品点数及び圧力損失の増大を最小限に抑えつつ、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去するという本発明の1つの目的を達成することができる限りにおいて、如何なる構造を有するものであってもよい。
ところで、上記酸化剤としては、前述のように、例えば、酸素、過酸化水素等の、種々の酸化剤を用いることができるが、例えば、入手の容易さや管理の容易さの観点からは、酸化剤として酸素を用いることが望ましい。
従って、本発明の第3の実施態様は、
本発明の前記第1又は前記第2の実施態様の何れか1つに係る作動ガス循環型エンジンであって、
前記酸化剤が酸素である、
作動ガス循環型エンジンである。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、酸化剤として酸素を用いる。酸素は、上述のように、入手及び管理が容易であるので、作動ガス循環型エンジンにおける酸化剤として望ましい。尚、酸化剤として酸素を用いる本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、例えば、酸化剤貯蔵部としての酸素ボンベに酸素を貯蔵することができる。そして、同酸化剤貯蔵部から、例えば、同エンジンの燃焼室内に酸素を直接噴射しても、又は同エンジンの燃焼室内に供給される前に、酸素を作動ガスと予め混合してもよい。
ところで、前述のように、上記作動ガスとしては、例えば、空気や窒素等の、種々のガスを用いることができるが、エンジンの熱効率を高め、且つ、例えば、窒素酸化物のような、環境保護の観点から排出を抑制することが求められている汚染物質を削減するためには、例えば、大きい比熱比を有する単原子の不活性ガスを用いることが望ましい。かかる比熱比が大きいガスを作動ガスとして用いる場合、比較的小さい比熱比を有するガス(例えば、空気、窒素等)を作動ガスとして用いる場合と比較して、より高い熱効率でエンジンを運転することができる。かかる大きい比熱比を有する単原子の不活性ガスとしては、希ガス類に属するヘリウム、ネオン、アルゴン等を挙げることができるが、内燃機関の作動ガスとしては、これらの中ではアルゴンが広く用いられている。
従って、本発明の第4の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第3の実施態様の何れか1項に係る作動ガス循環型エンジンであって、
前記作動ガスがアルゴンである、
作動ガス循環型エンジンである。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、作動ガスとしてアルゴンを用いる。アルゴンは、上述のように、内燃機関の作動ガスとしては、これらの中ではアルゴンが広く用いられており、入手及び管理が容易であるので、作動ガス循環型エンジンにおける作動ガスとして望ましい。また、高い比熱比を有し且つ不活性なアルゴンを作動ガスとして使用する本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、本発明の利点を十分に発揮して、同エンジンを高い熱効率にて運転することができ、且つ、例えば、窒素酸化物のような、環境汚染物質の排出を抑制することができる。尚、作動ガスとしてアルゴンを用いる本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、作動ガスとしてのアルゴンは、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に再供給するための循環通路内に密封されるので、基本的には、作動ガスを貯蔵・供給するための作動ガス貯蔵部を設ける必要は無い。しかしながら、例えば、同エンジンの運転に伴って、作動ガスとしてのアルゴンが循環通路から漏れ出した場合に、漏れ出したアルゴンを循環通路に補填することを目的として、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが、作動ガス貯蔵部(例えば、ボンベ等)を更に備えていてもよい。
ところで、上記燃料としては、前述のように、例えば、ガソリン、軽油、天然ガス、プロパン、水素等の、種々の燃料を用いることができる。しかしながら、ガソリンを始めとする炭化水素系燃料を用いる場合は、燃焼生成物として二酸化炭素(CO)も発生するため、二酸化炭素をも既燃ガス(循環ガス)から分離・除去する必要が生ずる。一方、本発明は、前述のように、作動ガス循環型エンジンにおいて、部品点数及び圧力損失の増大を最小限に抑えつつ、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去しようとするものである。より具体的には、本発明は、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に再供給するための循環通路に介装された凝縮手段によって、排気ポートから排出される既燃ガス中に含まれる燃焼生成物の蒸気を分離・除去する作動ガス循環型エンジンにおいて、部品点数及び圧力損失の増大を最小限に抑えつつ、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去しようとするものである。従って、上記燃料としては、燃焼生成物として水蒸気(HO)のみを生ずる水素を使用することが特に望ましい。
従って、本発明の第5の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第4の実施態様の何れか1つに係る作動ガス循環型エンジンであって、
前記燃料が水素である、
作動ガス循環型エンジンである。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは、燃焼生成物として水(HO)のみを生ずる水素を燃料として使用する。従って、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、炭化水素系燃料を使用する作動ガス循環型エンジンにおける燃焼生成物に含まれる二酸化炭素を分離・除去するための手段を設ける必要が無い。即ち、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、排気ポートから排出される既燃ガス中に含まれる水蒸気を分離・除去する凝縮手段を、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に再供給するための循環通路に介装することによって、既燃ガス中に含まれる全ての燃焼生成物を分離・除去することができる。
ところで、本発明が適用される作動ガス循環型エンジンは、燃焼室における燃料の燃焼によって発生する熱(燃焼熱)により作動ガスを加熱し、作動ガスを膨張させることによってピストンを押し、動力を得る内燃機関である。シリンダ内でのピストンの下降によって生ずる負圧によって作動ガスを燃焼室内に吸入する所謂「自然吸気型」のエンジンにおいては、燃焼室内に取り込まれる混合ガス(作動ガス、燃料、及び酸化剤)の量は、基本的には常に一定である(ボア及びストロークにより定まる)。
従って、例えば要求トルクの増大等に応じて燃焼室内に導入する燃料及び酸化剤の量を増やすと、混合ガスに占める作動ガスの比率が相対的に下がり、燃焼室内の既燃ガスにおいて燃焼熱を受け取る作動ガスの量が減少する。一方、混合ガスに占める燃料及び酸化剤の比率は相対的に上がり、燃焼室内の既燃ガスにおいて燃焼熱を受け取る燃焼生成物の量が増大する。前述のように、一般的に、燃焼生成物(例えば、水、二酸化炭素等)の比熱比は作動ガス(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等)の比熱比よりも小さいため、結果としてエンジンの熱効率の低下を招く虞が高まる。燃焼生成物の中でも、燃焼の初期に発生する水は特に大きい比熱を有し、大量の燃焼熱を受け取ることができるので、エンジンの熱効率を大幅に低下させる傾向が強い。
また、上記のように混合ガスに占める作動ガスの比率が相対的に下がると、燃焼室内の既燃ガスにおいて燃焼熱を受け取る作動ガスの量が減少するので、燃料の燃焼後の燃焼室内の温度が上昇する。その結果、例えば、作動ガスに受け取られずにシリンダの壁面から外部に逃げる熱エネルギーが増大したり(冷却損失の増大)、あるいは既燃ガスが非常に高い温度を保ったままで燃焼室から排出されたり(排気損失の増大)して、エンジンの熱損失が増大することに繋がる虞が高まる。
上記のようなエンジンの熱効率の低下や熱損失の増大を抑制するには、(例えば、要求トルクに応じて変化する)燃焼室内に導入する燃料及び酸化剤の量に応じて、燃焼室内に導入する作動ガスの量を制御することが望ましい。但し、本発明が適用される作動ガス循環型エンジンはスロットルを備えないため、燃焼室内に導入する作動ガスの量を制御するには、燃焼室内に導入する作動ガスの圧力を制御する必要がある。具体的には、例えば、要求トルクの増大に応じて燃焼室内に導入する燃料及び酸化剤の量を増やす場合は、燃焼室内に導入する作動ガスの圧力を上げて作動ガスの量を増やし、逆に要求トルクの減少に応じて燃焼室内に導入する燃料及び酸化剤の量を減らす場合は、燃焼室内に導入する作動ガスの圧力を下げて作動ガスの量を減らす制御を行う必要がある。
一方、本発明が適用される作動ガス循環型エンジンにおいて、例えば、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に循環(再供給)するための循環通路から外部への作動ガスの漏出に伴う作動ガスの再充填や、外部から循環通路内への空気の混入に伴うエンジンの熱効率の低下を抑制するには、循環通路内の圧力と外部の圧力(例えば、大気圧)との差圧をできるだけ小さく保つことが望ましい。上記差圧が大きい場合、例えば、上記のように、循環通路から外部への作動ガスの漏出、外部から循環通路内への空気の混入等の問題に繋がる虞が高まるため、高い気密性が循環通路に求められる。また、上記差圧が大きい場合、当該差圧に起因して、循環通路には常に応力が係ることとなるため、高い機械的強度が循環通路に求められる。
上述のように、本発明が適用される作動ガス循環型エンジンにおいては、燃焼室内に導入する燃料及び酸化剤の量に応じて燃焼室内に導入する作動ガスの圧力を制御したり、循環通路内の圧力と外部の圧力(例えば、大気圧)との差圧をできるだけ小さく保ったりすることができることが、より望ましい。かかる作動ガスの圧力制御を行うための手段として、本発明が適用される作動ガス循環型エンジンは、過給機を更に備えていてもよい。
従って、本発明の第6の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第5の実施態様の何れか1つに係る作動ガス循環型エンジンであって、
過給機を更に備える、
作動ガス循環型エンジンである。
上記のように、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンは過給機を更に備える。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、上述のように、燃焼室内に導入する燃料及び酸化剤の量に応じて燃焼室内に導入する作動ガスの圧力を制御したり、循環通路内の圧力と外部の圧力(例えば、大気圧)との差圧をできるだけ小さく保ったりすることができる。
尚、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンに搭載される過給機は、特定の形式のものに限定されるものではない。即ち、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンに搭載される過給機は、例えば、排気タービン式の過給機であるターボチャージャ、クランクシャフト等からの動力によって駆動する過給機であるスーパーチャージャ等の種々の形式の過給機の中から適宜選択することができる。
従って、本発明の第7の実施態様は、
本発明の前記第6の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンであって、
前記過給機がターボチャージャである、
作動ガス循環型エンジンである。
また、本発明の第8の実施態様は、
本発明の前記第6の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンであって、
前記過給機がスーパーチャージャである、
作動ガス循環型エンジンである。
尚、これらの過給機の具体的な構成並びに動作については当該技術分野において周知であるので、本明細書における詳細な説明は割愛するが、ターボチャージャは、本発明に係る作動ガス循環型エンジンに適用される過給機として特に好ましい特徴を有するので、この点につき、ここで説明を加える。
ターボチャージャは、当該技術分野において周知であるように、燃焼室から排出される既燃ガスのエネルギー(運動エネルギー及び熱エネルギー)を利用してタービンを高速で回転させ、タービンの回転力で遠心式圧縮機(コンプレッサ)を駆動することにより圧縮した作動ガス(循環ガス)を燃焼室内に送り込む過給機である。従って、エンジンの負荷が高い場合(即ち、燃焼室内に導入する燃料及び酸化剤の量が多い場合)は、既燃ガスの温度及び圧力が上昇し、過給圧が上がるので、燃焼室内に導入する作動ガスの圧力を上げて作動ガスの量を容易に増やすことができる。逆に、エンジンの負荷が低い場合(即ち、燃焼室内に導入する燃料及び酸化剤の量が少ない場合)は、既燃ガスの温度及び圧力が下降し、過給圧が下がるので、燃焼室内に導入する作動ガスの圧力を下げて、作動ガスの量を容易に減らすことができる。
上記に加えて、ターボチャージャは、上記のように、燃焼室から排出される非常に高い温度を有する既燃ガスによってタービンを回転させ、当該タービンの回転力によってコンプレッサを駆動して、凝縮手段から循環通路に排出される相対的に低い温度を有する循環ガスを圧縮して、燃焼室内に送り込む。従って、ターボチャージャにおいては、例えば、タービンとコンプレッサとを繋ぐシャフト、ターボチャージャ内部における既燃ガス及び循環ガスの流路を画定する構造部材、ターボチャージャの筐体等を介して、非常に高い温度を有する既燃ガスから相対的に低い温度を有する循環ガスへと熱を伝達することができる。これにより、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジンの排気ポートから循環通路を介して凝縮手段の入口部に流入する既燃ガスの温度を更に効果的に下降させることができる。その結果、本実施態様に係る作動ガス循環型エンジンが備える凝縮手段においては、循環通路から凝縮手段の入口部を通して流入する既燃ガスを更により低い温度にまで冷却することができ、更により多くの量の燃焼生成物の蒸気を凝縮させて既燃ガスから分離・除去することができる。
以上のように、本発明によれば、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に再供給するための循環通路に凝縮手段が介装された作動ガス循環型エンジンにおいて、排気ポートから凝縮手段までの循環通路である上流側循環通路の少なくとも一部と、凝縮手段から吸気ポートまでの循環通路である下流側循環通路の少なくとも一部とが、熱伝導可能な状態で接触するように構成することにより、凝縮手段の上流側の循環通路及びその中を流れる既燃ガスの温度を下げ、結果として、燃焼室に再供給される既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気の量を更に低減することができる。
以下、本発明の特定の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにつき、添付図面を参照しつつ説明する。但し、以下に述べる説明はあくまで例示を目的とするものであり、本発明の範囲が以下の説明に限定されるものと解釈されるべきではない。
図3は、前述のように、本発明の1つの実施態様に係る作動ガス循環型エンジンを含むシステムの構成を示す模式図である。当該システムは、作動ガス循環型エンジンの本体部10、ターボチャージャ11、燃料供給部20、酸化剤供給部30、循環通路(上流側循環通路41及び下流側循環通路42)、並びに凝縮手段50(熱交換器51及び気液分離器52)を備えている。このエンジンは、燃焼室に酸化剤(例えば、酸素)及び作動ガス(例えば、アルゴンガス)を供給し、このガスを圧縮することにより高温高圧となったガス中に燃料(例えば、水素ガス)を噴射することにより燃料を拡散燃焼させる形式のエンジンである。なお、図3は、エンジン本体部10の特定気筒の断面のみを示しているが、複数の気筒を含むエンジンの場合は、他の気筒も同様な構成を備えている。
エンジン本体部10は、特定の構成に限定されるものではなく、例えば、シリンダヘッドと、シリンダブロックが形成するシリンダと、シリンダ内において往復運動するピストンと、クランク軸と、ピストンとクランク軸とを連結しピストンの往復運動をクランク軸の回転運動に変換するためのコネクティングロッドと、シリンダブロックに連接されたオイルパンとを備えるピストン往復動型エンジンであってもよい(何れも図示せず)。
この場合、ピストンの側面にはピストンリングが配設され、シリンダヘッド、シリンダ及びオイルパンから形成される空間は、ピストンにより、ピストンの頂面側の燃焼室と、クランク軸を収容するクランクケースと、に区画されている(何れも図示せず)。
シリンダヘッドには、燃焼室に連通した吸気ポートと、燃焼室に連通した排気ポートと、が形成されている(何れも図示せず)。吸気ポートには吸気ポートを開閉する吸気弁が配設され、排気ポートには排気ポートを開閉する排気弁が配設されている(何れも図示せず)。更に、シリンダヘッドには、燃料(例えば、水素ガス)を燃焼室内に直接噴射する燃料噴射弁が配設されている(図示せず)。
燃料供給部20は、燃料タンク(例えば、水素ガスタンク)、燃料ガス通路、燃料ガス圧レギュレータ、燃料ガス流量計及びサージタンク等を備えることができる(何れも図示せず)。また、酸化剤供給部30は、酸化剤貯蔵部(例えば、酸素ガスタンク)、酸化剤通路、酸化剤流量調整機構(例えば、酸素ガス圧レギュレータ)、酸化剤流量計(例えば、酸素ガス流量計)、及び酸化剤混合機構(例えば、酸素ガスミキサ)を備えることができる(何れも図示せず)。
尚、エンジン本体部10、燃料供給部20、及び酸素供給部30の具体的な構成並びに動作については、例えば、作動ガス循環型水素エンジン等に関する当該技術分野において周知であるので、本明細書における詳細な説明は割愛する。また、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンは、過給機としてターボチャージャ11を備えているが、前述のように、かかる過給機は必須の構成要件ではなく、かかる過給機を備えない自然吸気型の作動ガス循環型エンジンにも、本発明を適用することができる。
循環通路は、上述のように、上流側循環通路41及び下流側循環通路42を備え、上流側循環通路41と下流側循環通路42との間に、入口部と出口部とを有する凝縮手段50が介装されている。このように、循環通路は、排気ポートと吸気ポートとを燃焼室の外部にて接続する「既燃ガス(循環ガス)の循環通路」を構成している。
上流側循環通路41は、排気ポートと凝縮手段50の入口部とを接続している。下流側循環通路42は、凝縮手段50の出口部と吸気ポートとを接続しており、その途中に、酸化剤混合機構(例えば、酸素ガスミキサ)等(図示せず)を介して酸化剤供給部30が合流している。
凝縮手段50は、上述したように既燃ガス(循環ガス)の入口部と出口部とを備える。更に、凝縮手段50は、熱交換器51及び気液分離器52を備えている。熱交換器51は、熱媒体(例えば、冷却水)71の導入口及び熱媒体71の排出口を備える。更に、熱媒体71の導入口と排出口とを接続する熱媒体循環部には、既燃ガスとの熱交換により既燃ガスから熱を受け取って高温となった熱媒体71を冷却する冷却手段を備えることができる。かかる冷却手段としては、例えば、ラジエタ等の放熱器を挙げることができる。尚、図3においては、放熱器(ラジエタ)等の冷却手段の図示は割愛した。
凝縮手段50は、入口部から導入されて出口部から排出される既燃ガス(循環ガス)に含まれる燃焼生成物の蒸気(例えば、水蒸気)を、熱媒体71の導入口から導入されると共に凝縮器の内部を通過した後に熱媒体71の排出口から排出される熱媒体71によって冷却し、凝縮させる。凝縮された燃焼生成物の凝縮液(例えば、水)は、気液分離器52によって既燃ガス(循環ガス)から分離され、凝縮液排出口60から外部に排出される。斯くして燃焼生成物の蒸気が除去(分離)されたガスは、凝縮手段50の出口部から循環通路40に排出される。
即ち、凝縮手段50は、「入口部及び出口部を有する水蒸気凝縮手段50であって、循環通路40から同入口部を通して流入するガスに含まれる燃焼生成物の蒸気(例えば、水蒸気)を凝縮させることにより同入口部を通して流入するガスから同蒸気を除去したガスを同出口部から循環通路40へと排出する」機能を備えている。尚、水蒸気凝縮手段50は、例えば冷却水等の液体の熱媒体(冷媒)を使用するものであってもよく、あるいは、例えば空気等の気体の熱媒体(の送風)により内部を通過するガス中に含まれる燃焼生成物の蒸気を凝縮させる空冷式熱交換器51を備えるものであってもよい。
ところで、上記酸化剤としては、前述のように、例えば、酸素、過酸化水素等の、種々の酸化剤を用いることができるが、例えば、入手の容易さや管理の容易さの観点から、酸化剤として酸素を用いることが望ましい。
また、作動ガスとしては、前述のように、空気や窒素等の、種々のガスを用いることができるが、例えば、アルゴン、ネオン、ヘリウム等の、比熱比が大きい不活性ガスを用いることが望ましい。かかる比熱比が大きいガスを作動ガスとして用いる場合、比較的小さい比熱比を有するガス(例えば、空気、窒素等)を作動ガスとして用いる場合と比較して、より高い熱効率でエンジンを運転することができる。上記に加えて、例えば、窒素酸化物のような汚染物質の排出を削減して環境保護に貢献しようとする観点からも、不活性ガスを用いることが望ましい。これらの不活性ガスの中では、アルゴンが内燃機関の作動ガスとして広く用いられている。
更に、燃料としては、前述のように、ガソリン、軽油、天然ガス、プロパン、水素等の種々の燃料を用いることができる。但し、本発明は、前述のように、作動ガス循環型エンジンにおいて、部品点数及び圧力損失の増大を最小限に抑えつつ、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去しようとするものである。より具体的には、本発明は、燃焼室から排出される既燃ガスを燃焼室に再供給するための循環通路に介装された凝縮手段によって、排気ポートから排出される既燃ガス中に含まれる燃焼生成物の蒸気を分離・除去する作動ガス循環型エンジンにおいて、部品点数及び圧力損失の増大を最小限に抑えつつ、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去しようとするものである。従って、上記燃料としては、当該燃料の燃焼に伴って生ずる生成物が、少なくとも温度の下降に伴って凝縮する性質を有する燃焼生成物を含む燃料が想定される。かかる燃焼生成物としては、例えば、水が挙げられる。中でも、二酸化炭素(CO)を排出せず、地球温暖化の防止に貢献しようとする観点からは、燃焼生成物として水(HO)のみを発生させる水素を燃料として用いることが望ましい。
尚、本実施例においては、前述のように、燃焼室に酸化剤及び作動ガスを供給し、このガスを圧縮することにより高温高圧となったガス中に燃料を噴射することにより燃料を拡散燃焼させる形式のエンジンが例示されている。しかしながら、本発明に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、前述のように、種々の酸化剤、作動ガス、及び燃料を用いることができる。従って、使用される酸化剤、作動ガス、及び燃料との組み合わせや、エンジンの設計仕様(例えば、圧縮比等)に応じて、燃焼室内における燃料の燃焼モードも適宜選択することができる。即ち、使用される酸化剤、作動ガス、及び燃料との組み合わせや、エンジンの設計仕様(例えば、圧縮比等)によっては、作動ガス及び酸化剤と予め混合された燃料を燃焼室内に設けられた点火手段から発生した火花によって点火して火花点火燃焼させる形式のエンジンにも、本発明を適用することもできる。
凝縮手段50は、上述したように、上流側循環通路41と下流側循環通路42との間に配設されている。即ち、凝縮手段50の入口部は上流側循環通路41を介してエンジン本体部10の排気ポートに接続されている。凝縮手段50の出口部は下流側循環通路42を介してエンジン本体部10の吸気ポートに接続されている。これにより、凝縮手段50は、入口部から流入する既燃ガス(循環ガス)を熱交換器51によって冷却して、既燃ガスに含まれる燃焼生成物の蒸気(例えば、水蒸気)を凝縮させて凝縮液(例えば、水)とし、気液分離器52によって当該凝縮液を非凝縮ガスと分離して外部に排出すると共に、当該非凝縮ガスを出口部から下流側循環通路42に供給する。
ところで、図2を参照しながら前述したように、熱交換器51によって既燃ガスを冷却することにより燃焼生成物を凝縮させて既燃ガスから分離・除去する際に、より多い量の燃焼生成物を分離・除去するためには、より大幅に既燃ガスの温度を下降させる必要がある。本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、排気ポートと凝縮手段50の入口部とを接続する上流側循環通路41の一部と、凝縮手段50の出口部と吸気ポートとを接続する下流側循環通路42の一部とが、熱伝導可能な状態で接触している。より具体的には、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、上流側循環通路41と下流側循環通路42とが熱伝導可能な状態で接触している部分において、上流側循環通路41の内部に下流側循環通路42が設けられている。即ち、当該部分は、前述のように、上流側循環通路41が相対的に大きい径を有する配管として形成され、下流側循環通路42が相対的に小さい径を有する配管として形成され、相対的に大きい径を有する上流側循環通路41の内部に、相対的に小さい径を有する下流側循環通路42が配設された二重配管構造を有する。尚、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおける当該二重配管構造以外の部分は、一般的な作動ガス循環型エンジンと同様に構成されている。
本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、上流側循環通路41の途中に上記二重配管構造を介在させ、エンジンの排気ポートから排出される既燃ガスが当該二重配管構造の外側の循環通路を流れるように構成する。一方、下流側循環通路42については、凝縮手段50から排出される、燃焼生成物の凝縮液が分離された後の既燃ガスが当該二重配管構造の内側の循環通路を経由してエンジンの吸気ポートに戻るように構成する。具体的には、凝縮手段50の出口部から延在する下流側循環通路42を、当該二重配管構造の外側の循環通路を貫通させて当該二重配管構造の内側の循環通路の上流側(凝縮手段50側)の端部に接続し、当該二重配管構造の内側の循環通路の下流側(エンジンの吸気ポート側)の端部を、当該二重配管構造の外側の循環通路を貫通させてエンジンの吸気ポートから延在する下流側循環通路42に接続する。かかる構成により、上流側循環通路41と下流側循環通路42とが熱伝導可能な状態で接触している部分において、上流側循環通路41の内部に下流側循環通路42を配設することができる。
ここで、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンが備える二重配管構造の外側の循環通路(上流側循環通路41)を流れる非常に高い温度を有する既燃ガスから二重配管構造の内側の循環通路(下流側循環通路42)を流れる相対的に低い温度を有する既燃ガスへの放熱につき、図5を参照しながら説明する。図5は、前述のように、図3及び図4(後述)に示す作動ガス循環型エンジンが備える二重配管構造の断面図を表す模式図である。本実施例に係る作動ガス循環型エンジンが備える二重配管構造においては、凝縮手段に到達する前の非常に高い温度を有する既燃ガスは、図5に示す外向きの矢印によって表されるように、かかる構成を備えない一般的な作動ガス循環型エンジンと同様に上流側循環通路41の外側に向かって放熱することができる。これに加えて、凝縮手段に到達する前の非常に高い温度を有する既燃ガスは、図5に示す外向きの矢印によって表されるように、上流側循環通路41の内部に配設された相対的に低い温度を有する下流側循環通路42(内側)に向かっても放熱することができる。
結果として、かかる構成を有する本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジンの排気ポートから循環通路を介して凝縮手段50の入口部に流入する既燃ガスの温度を、前述の従来技術に係る作動ガス循環型エンジンにおけるように特段の冷却装置を追加すること無く、効果的に下降させることができる。その結果、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンが備える凝縮手段50においては、上流側循環通路41から凝縮手段50の入口部を通して流入する既燃ガスをより低い温度にまで冷却することができ、より多くの量の燃焼生成物の蒸気を凝縮させて既燃ガスから分離・除去することができる。即ち、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、部品点数の増大を最小限に抑え且つ圧力損失の増大を伴うこと無く、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去することができる。
図4は、前述のように、本発明のもう1つの実施態様に係る作動ガス循環型エンジンを含むシステムの構成を示す模式図である。当該システムは、前述のように上流側循環通路41が相対的に大きい径を有する配管として形成され、下流側循環通路42が相対的に小さい径を有する配管として形成され、相対的に大きい径を有する上流側循環通路41の内部に、相対的に小さい径を有する下流側循環通路42が配設された二重配管構造を、凝縮手段50が備える気液分離器52まで延在させ、当該二重配管構造の外側の循環通路に該当する上流側循環通路41を介して、エンジンの排気ポートから排出される既燃ガスを気液分離器52まで導き、当該二重配管構造の内側の循環通路に該当する下流側循環通路42を介して、気液分離器52によって燃焼生成物の凝縮液が分離された後の既燃ガスを、エンジンの吸気ポートに通じる循環通路に戻すように構成したことを除き、実施例1に係る作動ガス循環型エンジンを含むシステムと同様の構成を有する。
従って、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンを含むシステムの構成の詳細については、ここでは繰り返して説明しない。尚、上記のような構成を有する本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいても、図5に示すように、上記二重配管構造の凝縮手段50よりも上流側(エンジンの排気ポート側)の領域においては、当該二重配管構造の外側の循環通路に該当する上流側循環通路41を流れる既燃ガスが、かかる構成を備えない一般的な作動ガス循環型エンジンと同様に上流側循環通路41の外側に向かって放熱することができるのみならず、上流側循環通路41の内部に配設された相対的に低い温度を有する下流側循環通路42(内側)に向かっても放熱することができる。これに加えて、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、当該二重配管構造の凝縮手段50が備える熱交換器51が配設された領域に対応する部分において、当該二重配管構造の外側の循環通路に該当する上流側循環通路41を流れる既燃ガスが当該熱交換器51によって冷却されるのみならず、当該二重配管構造の内側の循環通路に該当する下流側循環通路42を流れる既燃ガスによっても冷却される。結果として、かかる構成を有する本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジンの排気ポートから循環通路を介して凝縮手段50の入口部に流入する既燃ガスの温度を、前述の従来技術に係る作動ガス循環型エンジンにおけるように特段の冷却装置を追加すること無く、効果的に下降させることができるのみならず、凝縮手段において、熱交換器及び当該二重配管構造の内側の循環通路に該当する下流側循環通路42を流れる既燃ガスの両方によって、より効果的に既燃ガスを冷却することができる
結果として、かかる構成を有する本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジンの排気ポートから循環通路を介して凝縮手段50の入口部に流入する既燃ガスの温度を、前述の従来技術に係る作動ガス循環型エンジンにおけるように特段の冷却装置を追加すること無く、より効果的に下降させることができる。その結果、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンが備える凝縮手段50においては、上流側循環通路41から凝縮手段50の入口部を通して流入する既燃ガスを更により低い温度にまで冷却することができ、更により多くの量の燃焼生成物の蒸気を凝縮させて既燃ガスから分離・除去することができる。即ち、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、部品点数の増大を最小限に抑え且つ圧力損失の増大を伴うこと無く、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより一層効率的に除去することができる。
ここで、本発明の特定の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおいて、上流側循環通路と下流側循環通路とが熱伝導可能な状態で接触している部分による循環ガス(既燃ガス)の冷却効果につき、図6を参照しながら詳しく説明する。図6は、前述のように、本発明の1つの実施態様に係る作動ガス循環型エンジンを含むシステムの各部位における循環ガス(既燃ガス)の温度履歴を模式的に示すグラフである。尚、本実施例においては、上流側循環通路と下流側循環通路とが熱伝導可能な状態で接触している部分の構造として、前述のように上流側循環通路の内部に下流側循環通路が設けられた二重配管構造を採用した場合を想定して、かかる二重配管構造による循環ガス(既燃ガス)の冷却効果につき説明する。しかしながら、前述のように、本発明の特定の実施態様に係る作動ガス循環型エンジンにおける上流側循環通路と下流側循環通路とが熱伝導可能な状態で接触している部分の構造は、かかる二重配管構造に限定されるものではない。
図6に示す破線によって表されているように、二重配管構造(上流側循環通路と下流側循環通路とが熱伝導可能な状態で接触している部分)を備えない従来技術に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、循環ガスがエンジンの燃焼室に吸入され、当該燃焼室の内部における燃料の燃焼により、循環ガスの温度がT1からT2に上昇し、次いで、エンジンから排出された循環ガスが凝縮手段に流入し、凝縮手段が備える熱交換器によって冷却され、当該ガスに含まれる燃焼生成物が分離・除去されることに伴って、循環ガスの温度がT2からT1に戻り、次いで、凝縮手段から排出された(温度T1の)循環ガスが、再びエンジンの燃焼室に吸入されるものとする。
一方、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、循環ガスがエンジンの燃焼室に吸入され、当該燃焼室の内部における燃料の燃焼により、循環ガスの温度がT1からT2に上昇するところまでは、上記従来技術に係る作動ガス循環型エンジンと同様である。しかしながら、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、上述のように、上流側循環通路と下流側循環通路とが熱伝導可能な状態で接触している部分としての二重配管構造を備えている。かかる構成により、エンジンから排出された循環ガスは、凝縮手段に流入する前に、二重配管構造において上流側循環通路と接触する下流側循環通路によって冷却される。これにより、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、図6に示す実線によって表されているように、凝縮手段に流入する前の循環ガスの温度がT2からT3に下降する。次いで、上記従来技術に係る作動ガス循環型エンジンと同様に、循環ガスが凝縮手段に流入し、凝縮手段が備える熱交換器によって冷却され、当該ガスに含まれる燃焼生成物が分離・除去される。
しかしながら、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、上記のように、凝縮手段に流入する前の循環ガスの温度がT3まで既に下降している。即ち、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、凝縮手段に流入する前の循環ガスの温度が、上記従来技術に係る作動ガス循環型エンジンと比較して、ΔT(=T2−T3)だけ低くなっている。従って、凝縮手段が備える熱交換器による冷却の結果、循環ガスの温度は、当初のT1よりも更に低いT4まで下降する。このように、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、凝縮手段において循環ガスがより低い温度にまで冷却されることにより、より多い量の燃焼生成物の蒸気(例えば、水蒸気)を凝縮させ、循環ガスから分離・除去することができる。その後、凝縮手段から排出された(温度T4の)循環ガスは、再びエンジンの燃焼室に吸入される前に、二重配管構造において下流側循環通路と接触する上流側循環通路によって加熱される。これにより、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、図6に示す実線によって表されているように、再びエンジンの燃焼室に吸入される前の循環ガスの温度がT4からT1に戻る。次いで、上記従来技術に係る作動ガス循環型エンジンと同様に、凝縮手段から排出された(温度T1の)循環ガスが、再びエンジンの燃焼室に吸入される。
以上のように、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、上流側循環通路と下流側循環通路とが熱伝導可能な状態で接触している部分(二重配管構造)が上流側循環通路に介在することにより、エンジンから排出された循環ガスは、凝縮手段に流入する前に、二重配管構造において上流側循環通路と接触する下流側循環通路によって冷却される。これにより、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、エンジンの排気ポートから上流側循環通路を介して凝縮手段の入口部に流入する既燃ガスの温度を効果的に下降させることができる。その結果、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンが備える凝縮手段においては、上流側循環通路から凝縮手段の入口部を通して流入する既燃ガスをより低い温度にまで冷却することができ、より多くの量の燃焼生成物の蒸気(例えば、水蒸気)を凝縮させて既燃ガスから分離・除去することができる。即ち、本実施例に係る作動ガス循環型エンジンにおいては、部品点数の増大を最小限に抑え且つ圧力損失の増大を伴うこと無く、既燃ガス中に含まれる燃焼生成物をより効率的に除去することができる。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成及び実行手順の組み合わせを有する幾つかの実施例について説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることができる。
10…エンジンの本体部、11…過給機(ターボチャージャ)、20…燃料供給部、30…酸化剤供給部、40…循環通路、41…上流側循環通路、42…下流側循環通路、50…凝縮手段、51…熱交換器、52…気液分離器、60…凝縮液排出口、70…放熱器(ラジエタ)、及び71…熱媒体。

Claims (8)

  1. 燃焼室に連通した吸気ポートと同燃焼室に連通した排気ポートとを同燃焼室の外部において接続する循環通路と、
    前記循環通路に介装されると共に入口部及び出口部を有し、熱交換器及び気液分離器を備える凝縮手段と、
    を備え、
    前記循環通路は、前記燃焼室に燃料と酸化剤と作動ガスとを供給して前記燃焼室において同燃料を燃焼させると共に、前記燃焼室から前記排気ポートを通して排出される既燃ガスを前記循環通路及び前記吸気ポートを通して前記燃焼室に供給し、
    前記凝縮手段は、前記循環通路から前記凝縮手段の入口部を通して流入する既燃ガスに含まれる、前記燃料の燃焼によって生ずる生成物である燃焼生成物の蒸気を、前記熱交換器によって凝縮させて凝縮液とすることによって、前記燃焼生成物を前記既燃ガスから除去し、前記燃焼生成物が除去された既燃ガスと前記凝縮液とを前記気液分離器によって分離し、前記燃焼生成物が除去された既燃ガスを同凝縮手段の出口部から前記循環通路へと排出する、
    作動ガス循環型エンジンであって、
    前記排気ポートから前記凝縮手段までの前記循環通路である上流側循環通路の少なくとも一部と前記凝縮手段から前記吸気ポートまでの前記循環通路である下流側循環通路の少なくとも一部とが熱伝導可能な状態で接触している、
    作動ガス循環型エンジン。
  2. 請求項1に記載の作動ガス循環型エンジンであって、
    前記上流側循環通路と前記下流側循環通路とが熱伝導可能な状態で接触している部分において、前記上流側循環通路の内部に前記下流側循環通路が設けられている、
    作動ガス循環型エンジン。
  3. 請求項1又は請求項2の何れか1項に記載の作動ガス循環型エンジンであって、
    前記酸化剤が酸素である、
    作動ガス循環型エンジン。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の作動ガス循環型エンジンであって、
    前記作動ガスがアルゴンである、
    作動ガス循環型エンジン。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の作動ガス循環型エンジンであって、
    前記燃料が水素である、
    作動ガス循環型エンジン。
  6. 請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の作動ガス循環型エンジンであって、
    過給機を更に備える、
    作動ガス循環型エンジン。
  7. 請求項6に記載の作動ガス循環型エンジンであって、
    前記過給機がターボチャージャである、
    作動ガス循環型エンジン。
  8. 請求項6に記載の作動ガス循環型エンジンであって、
    前記過給機がスーパーチャージャである、
    作動ガス循環型エンジン。
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