JP2013123991A - 車両用動力伝達装置の制御装置 - Google Patents

車両用動力伝達装置の制御装置 Download PDF

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達也 今村
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淳 田端
Toru Matsubara
亨 松原
Yuji Iwase
雄二 岩▲瀬▼
Hiroyuki Shibata
寛之 柴田
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Abstract

【課題】ロック機構に反力を持たせて電動機を回転駆動させることにより、モータ走行可能な車両用動力伝達装置において、ロック機構の耐久性低下を抑制することができる車両用動力伝達装置の制御装置を提供する。
【解決手段】第2回転要素RE2を回転停止させた状態で第1電動機MG1を回転駆動させるモータ走行中に、駆動輪14の回転変動が生じる場合には、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少させるため、第1電動機MG1のトルクTmg1の減少によってブレーキBにかかるトルクTbが減少し、ブレーキBの耐久性低下を抑制することができる。
【選択図】図9

Description

本発明は、車両用動力伝達装置の制御装置に係り、特に、所定の回転軸を回転停止させた状態で電動機を回転駆動させることによりモータ走行可能な車両用動力伝達装置の制御装置に関するものである。
電動機に連結された第1回転要素、回転要素を選択的に回転停止させるロック機構に連結された第2回転要素、および駆動輪に連結された第3回転要素を少なくとも有する差動機構を備え、前記ロック機構によって前記第2回転要素を回転停止させた状態で前記電動機を回転駆動させることにより、前記第3回転要素にモータ走行用のトルクが伝達される車両用動力伝達装置が知られている。例えば特許文献1の車両がその一例である。
特許文献1に記載の車両において、エンジン22のクランクシャフト26がロック機構としてのクラッチC1を介して非回転部材である車体に連結されており、クラッチC1が係合されるとクランクシャフト26が回転停止させられるように構成されている。そして、モータ走行モードにおいては、クラッチC1を係合させてクラッチC1に作用する反力を用いてモータMG1のトルクを駆動軸としてのリングギヤ軸32aに伝達し、さらにモータMG2からもトルクを出力して両モータからの動力によるモータ走行や、或いは、これらのモータMG1、MG2の一方から出力されるトルクによってモータ走行が実行される。
特開2008−265600号公報
ところで、特許文献1の車両において、上記エンジン22のクランクシャフト26をクラッチC1によって回転停止させた状態でモータMG1、モータMG2を用いて車両を走行させるモータ走行時において、駆動輪側からのトルク変動によって駆動輪の回転速度が変動すると、電動機の慣性トルクが増加するため、クラッチC1に大きなトルクがかかり、クラッチC1の耐久性が悪化する可能性があった。なお、特許文献1では、エンジンの駆動軸(クランクシャフト)を回転停止させるロック機構がクラッチC1であったが、例えばワンウェイクラッチやドグクラッチなどクラッチに変わって回転要素を固定できる他の機構が設けられる場合であっても、その機構に大きなトルクが負荷されることは同じであるため、耐久性が低下する可能性がある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、電動機に連結された第1回転要素、回転要素を選択的に回転停止させるロック機構に連結された第2回転要素、および駆動輪に連結された第3回転要素を少なくとも有する差動機構を備え、前記ロック機構によって前記第2回転要素を回転停止させた状態で前記電動機を回転駆動させることにより、前記第3回転要素にモータ走行用のトルクが伝達される車両用動力伝達装置において、ロック機構の耐久性低下を抑制することができる車両用動力伝達装置の制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するための、第1発明の要旨とするところは、(a)電動機に連結された第1回転要素、回転要素を選択的に回転停止させるロック機構に連結された第2回転要素、および駆動輪に連結された第3回転要素を少なくとも有する差動機構を備え、前記ロック機構によって前記第2回転要素を回転停止させた状態で前記電動機を回転駆動させることにより、前記第3回転要素にモータ走行用のトルクが伝達される車両用動力伝達装置の制御装置において、(b)前記第2回転要素を前記ロック機構によって回転停止させた状態で前記電動機を回転駆動させて前記第3回転要素にトルクを伝達するモータ走行中に、前記駆動輪の回転変動が生じる場合には、前記電動機のトルクを減少させるものである。
このようにすれば、前記第2回転要素を回転停止させた状態で前記電動機を回転駆動させるモータ走行中に、前記駆動輪の回転変動が生じる場合には、前記電動機のトルクを減少させるため、電動機のトルクの減少によってロック機構にかかるトルクが減少し、ロック機構の耐久性低下を抑制することができる。
また、好適には、第2発明の要旨とするところは、第1発明の車両用動力伝達装置の制御装置において、前記駆動輪には走行用電動機が動力伝達可能に連結されており、前記電動機のトルクを減少させる際には、前記走行用電動機のトルクを増加させるものである。このようにすれば、前記電動機のトルクを減少させると車両の駆動力低下が生じるが、走行用電動機のトルクを増加させることでその駆動力低下分を補うことができ、電動機のトルクを減少させても走行用電動機を用いて運転者の要求駆動力を発生させることができる。
また、好適には、第3発明の要旨とするところは、第1発明または第2発明の車両用動力伝達装置の制御装置において、前記駆動輪に制動トルクを付与するブレーキ信号乃至は前記駆動輪を機械的にロックするパーキングロック機構を作動させるパーキングロック信号が出力されることに基づいて、前記電動機のトルクを減少させるものである。このようにすれば、急ブレーキやパーキングロック機構が作動すると、ロック機構に大きなトルクがかかるが、ブレーキ信号乃至パーキングロック信号が出力されると電動機のトルクを減少させることで、そのロック機構にかかるトルクを減少させることができる。
また、好適には、第4発明の要旨とするところは、第1発明の車両用動力伝達装置の制御装置において、前記ロック機構にかかるトルクが予め設定されている閾値よりも大きくなると、前記電動機のトルクを減少させることを特徴とする。このようにすれば、ロック機構にかかるトルクが閾値よりも小さい場合には、電動機のトルクが減少されないので、電動機のトルクが減少される回数、言い換えれば、車両の駆動力低下が生じる回数を低減することができる。
本発明が好適に適用されるハイブリッド車両用駆動装置の構成を例示する骨子図である。 図1の駆動装置によるハイブリッド駆動を制御するために備えられた電気系統の要部を例示する図である。 図2の電子制御装置等に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。 図1の差動機構である遊星歯車装置における3つの回転要素の回転速度を相対的に表すことができる共線図である。 図4の共線図において、モータ走行モードで走行中に駆動輪にトルク変動が生じた場合の共線図を示している。 図5の共線図において、第1電動機のトルクを減少させたときの共線図を示している。 例えば−5000Nm程度のトルク変動が発生した際にクラッチにかかるトルクを示す図である。 回転速度の変化率に対する減少量を求めるための関係マップの一例である。 図2の電子制御装置の制御作動の要部すなわち、エンジンのクランク軸をロックさせた状態で第1電動機から出力されるトルクによって車両を走行させるモータ走行中に駆動輪にトルク変動が発生した際、クラッチにかかるトルクを減少させてクラッチの耐久性低下を抑制することができる制御作動を説明するためのフローチャートである。 本発明の他の実施例であるハイブリッド車両用駆動装置の構成を示す骨子図である。 図10のハイブリッド車両用駆動装置を制御する電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。 本発明のさらに他の実施例である車両用電動駆動装置の構成を示す骨子図である。 図12に示す遊星歯車装置における各回転要素の回転速度を相対的に表す共線図である。 本発明のさらに他の実施例である車両用電動駆動装置の構成を示す骨子図である。 図14に示す遊星歯車装置における各回転要素の回転速度を相対的に表す共線図である。 本発明の他の実施例であるハイブリッド車両用駆動装置の構成を例示する骨子図である。 図16の駆動装置において、エンジンを停止させて第1電動機および第2電動機によるモータ走行を実行したときの、各回転要素の回転状態を示す共線図である。
ここで、好適には、電動機と第1回転要素との間の動力伝達経路に歯車機構等の機械要素が介挿されても構わない。同様に、ロック機構と第2回転要素との間の動力伝達経路に歯車機構等の機械要素が介挿されていても構わない。同様に、駆動輪と第3回転要素との間の動力伝達経路に歯車機構等の機械要素が介挿されていても構わない。
また、好適には、第1電動機のトルクを減少させるとは、その大きさを小さくするだけでなく、トルクを零にする、さらにはトルクの向き逆方向に変更して出力することも含むものとする。
また、好適には、差動機構の出力軸と駆動輪との間の動力伝達経路に摩擦クラッチが介挿されており、駆動輪の回転変動が生じた場合には、摩擦クラッチのトルク容量を低下させる。このようにすれば、トルク変動が生じると摩擦クラッチで滑りが生じるため、差動機構に伝達されるトルクが低下してロック機構にかかるトルクを減少させることができる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が好適に適用されるハイブリッド車両用動力伝達装置10(以下、単に動力伝達装置10という)の構成を例示する骨子図である。この図1に示す動力伝達装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に用いられるものであって、駆動源(主動力源)であるエンジン12と、左右1対の駆動輪14l、14r(以下、特に区別しない場合には単に駆動輪14という)との間の動力伝達経路に、第1駆動部16、第2駆動部18、差動歯車装置20、及び左右1対の車軸22l、22r(以下、特に区別しない場合には単に車軸22という)を主に備えて構成されている。
上記エンジン12は、例えば、気筒内噴射される燃料の燃焼によって駆動力を発生させるガソリンエンジン或いはディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、上記第1駆動部16は、3つの回転要素であるサンギヤS、キャリヤCA、及びリングギヤRを有する遊星歯車装置24と、その遊星歯車装置24のサンギヤSに連結された第1電動機MG1(本発明の電動機)とを、備えて構成されている。また、上記エンジン12の駆動軸であるクランク軸26と、非回転部材であるハウジング(トランスアクスルハウジング)28との間には、これらを選択的に断続するロック機構としてのブレーキBが設けられている。ブレーキBは、摩擦材を備え、その摩擦材の押し付け荷重によってトルク容量を制御できるよく知られた摩擦ブレーキ(摩擦係合装置)である。ブレーキBが完全係合されると、クランク軸26がハウジング28に連結されて回転停止させられる。
前記エンジン12のクランク軸26は、前記第1駆動部16の入力軸として上記遊星歯車装置24のキャリアCAに連結されている。また、そのクランク軸26は、機械式オイルポンプ30に連結されており、前記エンジン12の駆動によりそのオイルポンプ30から後述する油圧制御回路46の元圧としての油圧が発生させられるようになっている。また、遊星歯車装置24のリングギヤRは、出力歯車32、第2駆動部18、差動歯車装置20、車軸22を介して駆動輪14に動力伝達可能に連結されている。また、遊星歯車装置24のサンギヤSは、第1電動機MG1に連結されている。すなわち、上記遊星歯車装置24は、第1回転要素RE1としての第1電動機MG1に連結されたサンギヤS、入力回転部材であって前記エンジン12のクランク軸26に連結された第2回転要素RE2としてのキャリアCA、及び出力回転部材である第3回転要素RE3としてのリングギヤRを備えた差動機構に対応する。また、リングギヤRには、パーキングレンジが選択された際に作動してリングギヤRおよびそれに連結された出力歯車32を回転停止させて車両を停止させる公知であるパーキングロック機構33が設けられている。
上記出力歯車32は、前記第1駆動部16の入力軸としてのクランク軸26と平行な中間出力軸34と一体的に設けられた大径歯車36と噛み合わされている。また、同じくその中間出力軸34と一体的に設けられた小径歯車38が、前記差動歯車装置20の入力歯車40と噛み合わされている。また、上記大径歯車36は、第2電動機MG2(本発明の走行用電動機)の出力軸42に連結された第2出力歯車44と噛み合わされている。すなわち、第2電動機MG2が駆動輪14に動力伝達可能に連結されている。ここで、好適には、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、何れも駆動力を発生させるモータ(発動機)及び反力を発生させるジェネレータ(発電機)としての機能を有するモータジェネレータであるが、前記第1電動機MG1は少なくともジェネレータとしての機能を備え、上記第2電動機MG2は少なくともモータとしての機能を備えるものである。
以上のように構成された動力伝達装置10において、前記第1駆動部16におけるエンジン12から出力された回転は、差動機構としての前記遊星歯車装置24を介して前記出力歯車32から出力され、上記中間出力軸34に設けられた大径歯車36及びその大径歯車36よりも歯数が少ない小径歯車38を介して前記差動歯車装置20の入力歯車40に入力される。ここで、前記出力歯車32から出力された回転は、上記大径歯車36の歯数と小径歯車38の歯数とで定まる所定の減速比で減速されて前記差動歯車装置20の入力歯車40に入力される。また、その差動歯車装置20は、よく知られた終減速機として機能している。
また、前記第1駆動部16における第1電動機MG1の回転は、前記遊星歯車装置24を介して前記出力歯車32に伝達され、前記中間出力軸34に設けられた大径歯車36及び小径歯車38を介して前記差動歯車装置20の入力歯車40に伝達されるように構成されている。また、前記第2駆動部18における第2電動機MG2の回転は、前記出力軸42及び第2出力歯車44を介して前記中間出力軸34に設けられた大径歯車36に伝達され、その大径歯車36及び小径歯車38を介して前記差動歯車装置20の入力歯車40に伝達されるように構成されている。すなわち、本実施例の動力伝達装置10においては、前記エンジン12、第1電動機MG1、及び第2電動機MG2の何れもが走行用の駆動源として用いられ得るように構成されている。
図2は、本実施例の動力伝達装置10によるハイブリッド駆動を制御するために備えられた電気系統の要部を例示する図である。この図2に示すように、前記動力伝達装置10は、例えばハイブリッド駆動制御用電子制御装置50、エンジン制御用電子制御装置52、及び電動機制御用電子制御装置54を備えている。これらの電子制御装置50、52、54は、何れもCPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェイス等から成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより前記エンジン12、第1電動機MG1、及び第2電動機MG2によるハイブリッド駆動制御、およびブレーキBの作動制御をはじめとする各種制御を実行する。ここで、本実施例においては、上記電子制御装置52が主に前記エンジン12の駆動制御を、上記電子制御装置54が主に前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2の駆動制御を、上記電子制御装置50が上記電子制御装置52、54を介しての前記動力伝達装置10全体の駆動制御等を行う態様について説明するが、これら電子制御装置50、52、54は、必ずしも個別の制御装置として備えられたものでなくともよく、一体の制御装置として備えられたものであってもよい。また、上記電子制御装置50、52、54それぞれが更に個別の制御装置に分けて備えられたものであってもよい。
図2に示すように、上記電子制御装置50には、前記動力伝達装置10の各部に設けられた各種センサやスイッチ等から各種信号が供給されるようになっている。具体的には、、車速センサ56から車速Vを表す信号、アクセル開度センサ58から運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号、MG1回転速度センサ60から第1電動機MG1の回転速度Nmg1を表す信号、MG2回転速度センサ62から第2電動機MG2の回転速度Nmg2を表す信号、出力軸回転速度センサ64から出力歯車32の回転速度Noutに対応する信号、車両加速度センサ66から車両の加速度αを表す信号、エンジン回転速度センサ68から前記エンジン12の回転速度Neに対応する信号、タイヤ軸回転速度センサ70から各車輪(駆動輪14を含む)の回転速度Nrを表す信号、タイヤ軸トルクセンサ72から駆動輪14のトルクTsを表す信号、フットブレーキセンサ74からフットブレーキペダルのストローク量Bsを表すブレーキ信号、サイドブレーキセンサ76からサイドブレーキの作動を表すサイドブレーキ信号Bside、パーキングロックセンサ78からのパーキングロック機構33の作動を表すパーキングロック信号Park、車重センサ80からの車重Mを表す車重信号等がそれぞれ上記電子制御装置50に供給されるようになっている。
また、前記電子制御装置50からは、前記電子制御装置52、54へそれぞれ前記エンジン12の駆動制御、前記第1電動機MG1の駆動制御、及び前記第2電動機MG2の駆動制御を行うための指令信号、各車輪に設けられたホイルブレーキ82(図1参照)によって付与される制動トルクTwrの制御を行うためのブレーキ油圧指令信号、ブレーキBのトルク容量を制御するための油圧信号等が出力されるようになっている。すなわち、前記電子制御装置52に対して、エンジントルク指令として、例えばエンジン出力制御装置96(図3を参照)を介して前記エンジン12の出力を制御するための信号である、そのエンジン12の吸気管に備えられた電子スロットル弁の開度θthを操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、燃料噴射装置による吸気管等への燃料供給量を制御する燃料供給量信号、或いは点火装置によるエンジン12の点火時期を指令する点火信号等が出力される。また、前記電子制御装置54に対して、MG1トルク指令及びMG2トルク指令として、第1インバータ98及び第2インバータ99(図3を参照)を介して図示しないバッテリから前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2に対して供給される電気エネルギ等を制御するための指令信号が出力される。また、ブレーキBのトルク容量を制御するために、ブレーキBに供給される係合油圧Pbを調圧する油圧制御回路46に備えられた電磁制御弁に対して、その電磁制御弁からの出力圧を制御するための油圧指令信号が出力される。また、各車輪に設けられたホイルブレーキ82の制動トルクTwrを制御するために、ホイールブレーキ82のブレーキ油圧Pbを制御するブレーキ油圧制御回路48に備えられた電磁制御弁に対して、その電磁制御弁からの制御圧を制御するためのブレーキ油圧指令信号が出力される。
図3は、前記電子制御装置50、52、54等に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。好適には、この図3に示すハイブリッド駆動制御部84及びロック機構作動制御部86は、何れも前記電子制御装置50に機能的に備えられるものであるが、これらの制御機能は、前記電子制御装置50、52、54の何れに備えられたものであってもよく、更にはそれら前記電子制御装置50、52、54とは別の制御装置に備えられたものであってもよい。また、ハイブリッド駆動制御部84に含まれるエンジン駆動制御部88が前記電子制御装置52に、第1電動機駆動制御部90、第2電動機駆動制御部92、およびトルク変動判定部94が前記電子制御装置54に機能的に備えられるというように、それらの制御機能が前記電子制御装置50、52、54に分散的に備えられると共に各電子制御装置50、52、54相互間で情報の送受信を行うことで処理を実行するものであっても構わない。
図3に示すハイブリッド駆動制御部84は、前記動力伝達装置10のハイブリッド駆動制御を行う。具体的には、エンジン出力制御装置96を介して前記エンジン12の駆動を制御すると共に、前記第1インバータ98および第2インバータ99を介して前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2の駆動(力行)乃至発電(回生)を制御する。斯かる制御を行うために、エンジン駆動制御部88、第1電動機駆動制御部90、および第2電動機駆動制御部92を含んでいる。以下、これらの制御機能について分説する。
エンジン駆動制御部88は、基本的には、エンジン出力制御装置96を介してエンジン12の駆動を制御する。具体的には、エンジン12の出力が電子制御装置50により算出される目標エンジン出力(目標回転速度乃至目標出力トルク)となるように、エンジン12の吸気管に備えられた電子スロットル弁の開度θthを操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、燃料噴射装置による吸気管等への燃料供給量を制御する燃料供給量信号、及び点火装置によるエンジン12の点火時期を指令する点火信号等を、電子制御装置52を介してエンジン出力制御装置96へ供給する。
第1電動機駆動制御部90は、基本的には、第1インバータ98を介して第1電動機MG1の作動を制御する。具体的には、第1電動機MG1の出力が電子制御装置50により算出される目標第1電動機出力(目標回転速度乃至目標出力トルク)となるように、図示しないバッテリと第1電動機MG1との間の電気エネルギの入出力を制御するための信号を、電子制御装置54を介して第1インバータ98へ供給する。
第2電動機駆動制御部92は、基本的には、第2インバータ99を介して第2電動機MG2の作動を制御する。具体的には、第2電動機MG2の出力が電子制御装置50により算出される目標第2電動機出力(目標回転速度乃至目標出力トルク)となるように、図示しないバッテリと第2電動機MG2との間の電気エネルギの入出力を制御するための信号を、電子制御装置54を介して第2インバータ99へ供給する。
ハイブリッド駆動制御部84は、エンジン駆動制御部88、第1電動機駆動制御部90、及び第2電動機駆動制御部92を介して動力伝達装置10によるハイブリッド駆動制御を行う。例えば、予め定められて記憶装置に記憶された図示しないマップから、アクセル操作量センサにより検出されるアクセル操作量Acc及び車速センサにより検出される車速V等に基づいて、駆動輪14に伝達されるべき駆動力(駆動トルク)の目標値である要求駆動力Treq(要求駆動トルク)を算出し、算出されたその要求駆動力Treqに応じて、低燃費で排ガス量の少ない運転となるようにエンジン12、第1電動機MG1、及び第2電動機MG2の少なくとも1つから要求出力を発生させる。すなわち、エンジン12を停止させると共に第1電動機MG1及び第2電動機MG2のうち少なくとも一方を駆動源とするモータ走行モード(EVモード)、専らエンジン12を駆動源としてその動力を機械的に駆動輪14に伝えて走行するエンジン走行モード、及びエンジン12及び第2電動機MG2(或いはそれに加えて第1電動機MG1)を共に駆動源として走行するハイブリッド走行モード等を、車両の走行状態に応じて選択的に成立させる。
ハイブリッド駆動制御部84は、好適には、エンジン12が停止させられる走行モードであるモータ走行モードと、そのエンジン12の駆動が行われる走行モードであるエンジン走行モード乃至ハイブリッド走行モードとの切替制御を行う。例えば、図示しないバッテリの充電容量SOCが予め定められた閾値Sboより大きい場合には、エンジン12が停止させられる走行モードであるモータ走行モードを成立させる一方、バッテリSOCが上記閾値Sbo以下である場合には、エンジン12の駆動が行われる走行モードであるエンジン走行モード乃至ハイブリッド走行モードを成立させる。また、好適には、アクセル開度センサ58により検出されるアクセル操作量Acc及び車速センサ56により検出される車速V等に基づいて斯かる走行モードの切替制御を行うものであってもよい。
ロック機構作動制御部86は、エンジン12のクランク軸26を回転停止させるロック機構として機能するブレーキBの作動を制御する。具体的には、前記油圧制御回路46からブレーキBに供給される油圧Pbを制御することで、そのブレーキBの係合状態すなわちエンジン12のクランク軸26の固定(ハウジング28に対する固定)乃至その固定の解除を制御する。例えば、ハイブリッド駆動制御部84によりエンジン12が停止させられる走行モードであるモータ走行モード等が成立させられる場合には、油圧制御回路46からブレーキBに供給される油圧Pbを増加させることで、ブレーキBのトルク容量を増加させてブレーキBを完全係合させる。すなわち、前記エンジン12のクランク軸26を前記ハウジング28に対して固定するようにブレーキBを制御する。また、ハイブリッド駆動制御部84によりエンジン12の駆動が行われる走行モードであるエンジン走行モード乃至ハイブリッド走行モード等が成立させられる場合には、油圧制御回路46から第1ブレーキBに供給される油圧Pbを減少させることで、クランク軸26とハウジング28との接続を遮断させてクランク軸26を回転可能な状態とする。なお、本実施例のブレーキBは、油圧Pbが供給されない状態で解放される、すなわちクランク軸26とハウジング28との連結が遮断される、所謂ノーマリオープンタイプが採用されている。
図4は、差動機構である遊星歯車装置24における3つの回転要素の回転速度を相対的に表すことができる共線図であり、縦線Y1〜Y3は紙面向かって左から順に縦線Y1が第1電動機MG1に連結された第1回転要素RE1であるサンギヤSの回転速度を、縦線Y2がエンジン12およびブレーキBに連結された第2回転要素RE2であるキャリアCAの回転速度を、縦線Y3が駆動輪14および大径歯車36、第2出力歯車44等を介して第2電動機MG2に連結された第3回転要素RE3であるリングギヤRの回転速度をそれぞれ示している。図4は前記エンジン12の駆動が行われない(エンジン12が停止させられる)走行モードであるモータ走行モードであって、特に定常走行時における各回転要素の相対速度を示している。
図4を用いて動力伝達装置10の作動について説明すると、遊星歯車装置24は、第1回転要素RE1としてのサンギヤS、第2回転要素RE2および入力回転部材としてのキャリアCA、および第3回転要素RE3および出力回転部材としてのリングギヤRを備えた差動機構に対応する。また、上記第1回転要素RE1としてのサンギヤSが第1電動機MG1に連結され、第2回転要素RE2としてのキャリアCAがエンジン12に連結され、第3回転要素RE3としてのリングギヤRが大径歯車36、第2出力歯車44等を介して前記第2電動機MG2に動力伝達可能に接続されることで、前記遊星歯車装置24、第1電動機MG1、及び第2電動機MG2を主体とする電気的無段変速部が構成される。
また、図4を用いてモータ走行モードにおける動力伝達装置10の作動について説明すると、エンジン12の駆動は行われず、その回転速度は零とされる。また、好適には、ロック機構作動制御部86により油圧制御回路46を介してブレーキBがクランク軸26とハウジング28とを接続するように作動させられ、エンジン12の回転がロック(回転停止)される。斯かる状態においては、図4には図示されないが、第2電動機MG2を回転駆動させてその力行トルクが車両前進方向の駆動力として駆動輪14へ伝達される。また、第1電動機MG1を回転駆動させてその力行トルクが車両前進方向の駆動力として駆動輪14へ伝達される。具体的には、第1電動機MG1の力行トルクが、第2回転要素RE2に接続されたブレーキBを反力要素として第3回転要素RE3であるリングギヤRに伝達され、そのリングギヤRの回転速度が正回転方向に引き上げられている。
図4に示すように、第2回転要素がブレーキBによって回転不能にロックされ、第1電動機MG1からサンギヤSに駆動力としてトルクTmg1が入力されると、出力回転部材であるリングギヤRにトルク(Tmg1/ρ)が伝達される。なお、ρは遊星歯車装置24のギヤ比すなわちサンギヤSの歯数ZsとリングギヤRの歯数Zrの比(=Zs/Zr)に対応する。このとき、第2回転要素であるキャリヤCAには、反力トルクTb(=Tmg1×{(1/ρ)−1})が発生する。ここで、上記{(1/ρ)−1}を定数kと定義する。従って、反力トルクTbがTmg1×kとなる。また、リングギヤRに伝達されるトルク(=Tmg1/ρ)を反力トルクTbで表現すると、トルクTb/(k×ρ)となる。ここで、(1/(k×ρ))を定数hと定義する。従って、リングギヤRに伝達されるトルクがTb×hで表現される。なお、定数k、hは、いずれも遊星歯車装置24のギヤ比ρに基づいて一義的に設定される値である。また、図4に示すトルクTrlは、車両の走行負荷に対応し、定常走行時ではリングギヤRに伝達されるトルク(Tb×h)と釣り合っている。
図5は、前記モータ走行モードで走行中に駆動輪14にトルク変動が生じて駆動輪14に回転変動が生じた場合の共線図を示している。なお、駆動輪14にトルク変動が生じる場合とは、例えば波状路を走行中に車輪が浮いて着地した場合、急なブレーキ操作を行った場合、走行中にパーキングロック機構を作動させた場合、岩場に乗り上げた場合等が該当する。
図5において、リングギヤRに作用するトルクTdistが、トルク変動によって車両を停止させる方向に働く変動トルクTdistを示している。この変動トルクTdistが負荷されると、共線図において第2回転要素RE2を中心に時計回りに回転する。これより、電動機MG1が連結された第1回転要素RE1(サンギヤS)に加速度(角加速度)が発生するので、第1回転要素RE1に連結された第1電動機MG1の慣性による慣性トルク(=I×(dω/dt))が発生し、第2回転要素RE2に連結された反力要素として作用するブレーキBにその慣性トルクに基づくトルク(=I×(dω/dt)×k)が伝達される。なお、Iは第1電動機MG1の慣性モーメントを示し、ωは第1回転要素RE1(サンギヤS)の角速度を示している。従って、図5に示すように、ブレーキBには、第1電動機MG1の駆動力(Tmg1)によるトルク(=Tmg1×k)に加えて、第1電動機MG1の慣性トルクに基づくトルク(=I×(dω/dt)×k)が作用する。このとき、ブレーキBに作用するトルクTb{=Tmg1×k+I×(dω/dt)×k}が予め設定された許容トルクを超えると、ブレーキBを構成する摩擦材が摩耗するなどして耐久性が低下する可能性があった。
これに対して、第1電動機駆動制御手段90は、上記駆動輪14の回転変動(トルク変動)が発生する際には、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少させる制御を実行する。第1電動機MG1のトルクTmg1が減少すると、トルクTmg1によってブレーキBに作用するトルク(=Tmg1×k)が減少することとなる。
図6に、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少させたときの共線図を示す。図6において、上向きのトルクを正のトルク、下向きを負のトルクとすると、定常走行時において負の方向に出力されていたトルクTmg1が正のトルク(以下、区別しやすいようにTmg1'と記載する)に変更されている。なお、本発明において第1電動機MG1のトルクTmg1を減少させるとは、その値を零側に変更するだけでなく、さらにその駆動力の向きを変更する、すなわちトルクの正負を反転することまで含むものとする。第1電動機MG1のトルクTmg1'が正のトルクに変更されると、図6に示すように、ブレーキBに係る反力トルク(=Tmg1'×k)の向きも反転する。従って、ブレーキBには、トルク変動によって生じるトルクI×(dω/dt)×kと電動機MG1によるトルクTmg1'×kの差分(=I×(dω/dt)×k−Tmg1'×k)だけ作用することとなり、結果として、ブレーキBに係るトルクTmg'が減少する。なお、図6においては、第1電動機MG1のトルクTmg1'を正のトルクに変更しているが、必ずしも正のトルクにまで減少させる必要はなく、負のトルクのままで、その値を減少するものであっても構わない。このような場合であっても、電動機MG1によってブレーキBに作用するトルク(Tmg1'×k)は減少するので、第1電動機MG1の駆動力Tmg1を減少させない場合に比べるとブレーキBに作用するトルクTb(=I×(dω/dt)×k+Tmg1'×k)は減少する。
図7に、定常走行で走行中に例えば−5000Nm程度の変動トルクTdistが負荷された際のブレーキBにかかるトルクTbを示す。図7において、横軸が第1電動機MG1のトルクTmg1を示し、縦軸がブレーキBにかかるトルクTbを示している。また、破線がブレーキBの許容トルクTallowであり、予め定格的に定められており、トルクTbが許容トルクTallowを超えるとブレーキBの耐久性が低下する。図7に示すように、Tmg1が正の値に大きくなるに従って、言い換えれば、第1電動機MG1のトルクTmg1の減少量が大きくなるに従ってブレーキBにかかるトルクTbが小さくなっている。そして、第1電動機MG1のトルクTmg1が前記許容トルクTallowを超えない範囲とすることで、ブレーキBの耐久性低下が抑制される。
前記第1電動機MG1の駆動力Tmg1の減少量Aは、例えば駆動輪14の回転速度Nrの変化率β(すなわち単位時間あたりの駆動輪14の回転速度Nrの回転変動量)を逐次検出し、この変化率βに基づいて決定される。変化率βが大きくなると、前記変動トルクTdistが大きくなる。すなわち、変化率βは変動トルクTdistの関連値となる。従って、変化率βに基づいてブレーキBに係るトルクTbが許容トルクTallowとなるように、減少量Aを決定することができる。
具体的には、変化率βに対する前記減少量Aが、例えば予め実験や計算によって求められた図8に示す関係マップに基づいて設定される。図8において横軸は変化率βを示し、縦軸が減少量Aを示している。図8に示すこの変化率βに対する減少量Aは、ブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallow以下となる値に設定されており、変化率βが大きくなるに従って、減少量Aが大きくなる。ここで、閾値β1以下の領域では減少量Aが零となっているのは、閾値β1以下の領域では、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少しなくともブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallow以下の値となるためである。言い換えれば、閾値β1は、ブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallow以下の値に設定されている。
或いは、タイヤ軸トルクセンサ72によって逐次検出される駆動輪14のトルクTsから変動トルクTdistを直接検出し、この検出された変動トルクTdistに基づいて減少量Aを決定することもできる。具体的には、変動トルクTdistに対する減少量Aについても図8に示したような関係マップを予め記憶しており、その関係マップから実際の変動トルクTdistに基づいて減少量Aが求められる。なお、変動トルクTdistに対する減少量Aは、図8と同じ傾向を有するマップとなる。すなわち、図8の横軸(変化率β)を変動トルクTdistに入れ替えたものとなる。また、変動トルクTdistが閾値Tdist1以下の領域では、減少量Aが零に設定されている。これは、前述の変化率βと同様に、閾値Tdist1以下の領域では、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少しなくともブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallow以下の値となるためである。言い換えれば、閾値Tdist1は、ブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallow以下となる値に設定されている。
或いは、タイヤ軸回転速度センサ70によって逐次検出される各車輪(駆動輪14を含む)の回転速度Nrを検出して、前後輪或いは左右車輪の回転速度差であるスリップ量Nslipを逐次算出し、算出されたスリップ量Nslipに基づいて減少量Aを決定することもできる。なお、車輪がスリップすると、スリップが止まった際(タイヤグリップ時)にトルク変動が発生し、そのスリップ量Nslipが大きくなるに従って変動トルクTdistも大きくなる。すなわち、スリップ量Nslipは変動トルクTdistの関連値となる。従って、スリップ量Nslipに基づいてブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallowとなるように、減少量Aを決定することができる。
前記スリップ量Nslipに基づいて減少量Aを決定する場合であっても、スリップ量Nslipに対する減少量Aが求められる図8に示したような関係マップが予め求められて記憶されており、その関係マップから実際のスリップ量Nslipに基づいて減少量Aが求められる。なお、スリップ量Nslipに対する減少量Aは、図8と同じ傾向を有するマップとなる。すなわち、図8の横軸(変化率β)をスリップ量Nslipに入れ替えたものとなる。また、スリップ量Nslipが閾値Nslip1以下の領域では、減少量Aが零に設定されている。これは、前述の変化率βと同様に、閾値Nslip1以下の領域では、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少しなくともブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallow以下の値となるためである。言い換えれば、閾値Nslip1は、ブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallow以下となる値に設定されている。
或いは、ブレーキBの滑り量Ncslipを逐次検出して、検出されたスリップ量Ncslipに基づいて減少量Aを決定することもできる。なお、ブレーキBの滑り量Ncslipは、エンジン回転速度Neを検出することで求められる。トルク変動が発生すると、ブレーキBにかかるトルクTbが大きくなるため、滑りが生じる。これより、ブレーキBの滑り量Ncslipは、変動トルクTdistの関連値となるので、ブレーキBの滑り量Ncslipに基づいて減少量Aを決定することもできる。
具体的には、滑り量Ncslipに対する減少量Aが求められる図8に示したような関係マップが予め求められて記憶されており、その関係マップから実際の滑り量Ncslipに基づいて減少量Aが決定される。なお、滑り量Ncslipに対する減少量Aは、図8と同じ傾向を有するマップとなる。すなわち、図8の横軸(変化率β)を滑り量Ncslipに入れ替えたものとなる。また、滑り量Ncslipが閾値Ncslip1以下の領域では、減少量Aが零に設定されている。これは、前述の変化率βと同様に、閾値Ncslip1以下の領域では、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少なくともブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallow以下の値となるためである。言い換えれば、閾値Ncslip1は、ブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallow以下となる値に設定されている。
或いは、フットブレーキセンサ74によって逐次検出されるフットブレーキペダルのストローク量Bsに基づいて減少量Aを決定することもできる。ストローク量Bsが大きくなると、車輪に付与される制動トルクが大きくなるため、変動トルクTdistが大きくなる。すなわち、ストローク量Bsは変動トルクTdistの関連値となるので、ストローク量Bsに基づいて減少量を決定するもできる。
具体的には、ストローク量Bsに対する減少量Aが求められる図8に示したような関係マップが予め求められて記憶されており、その関係マップから実際のストローク量Bsに基づいて減少量Aが決定される。なお、ストローク量Bsに対する減少量Aは、図8と同じ傾向を有するマップとなる。すなわち、図8の横軸(変化率β)をストローク量Bsに入れ替えたものとなる。また、ストローク量Bsが閾値Bs1以下の領域では、減少量Aが零に設定されている。これは、前述の変化率βと同様に、閾値Bs1以下の領域では、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少しなくともブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallow以下の値となるためである。言い換えれば、閾値Bs1は、ブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallow以下となる値に設定されている。
或いは、パーキングロックセンサ78からのパーキングロック機構33の作動を表すパーキングロック信号Parkに基づいて減少量Aを決定することもできる。パーキングロック機構33が作動すると、出力歯車32が急激に回転停止させられるのでトルク変動が発生する。すなわち変動トルクTdistが付与される。従って、パーキングロック信号Parkに基づいて減少量Aを決定することもできる。なお、パーキングロック信号Parkが出力された際の低減量Aは、予め設定されている一定値、あるいは、車速Vに基づいて決定される。車速Vが大きい状態でパーキングロック機構33が作動すると、変動トルクTdistも大きくなる。従って、パーキングロック信号Parkが出力された際には、その時の車速Vに基づいて減少量Aを決定することができる。この場合であっても図8に示すような関係マップとなる。すなわち、横軸を車速Vに入れ替えたものとなる。また、車速Vが予め設定されている車速V1以下の領域では、パーキングロック信号Parkが出力されても減少量Aが零とされる。これは、車速Vが閾値V1以下の領域ではパーキングロック機構33がパーキングロックされた場合であっても、変動トルクTdistが小さくブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallow以下の値となるためである。言い換えれば、閾値V1は、ブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallow以下となる値に設定されている。
第1電動機駆動制御部90は、上述した各パラメータに基づいて第1電動機MG1のトルクTmg1の減少量Aを決定し、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少させる。これより、ブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallow以下となり、ブレーキBの耐久性低下が抑制される。
ここで、第1電動機MG1のトルクTmg1が減少されると、その背反として駆動輪14に伝達される駆動力が低下する。すなわち、運転者の要求駆動力Treqを満足しなくなり、運転者に違和感を与えることとなる。これに対して、第2電動機駆動制御部92は、第1電動機MG1のトルクTmg1の減少による駆動力を補うように、トルクTmg2を増加する。すなわち、第1電動機MG1のトルクTmg1の減少によって駆動輪14に伝達される駆動力低下量を算出し、その駆動力低下量が駆動輪14に伝達されるように第2電動機MG2のトルクTmg2を増加させる。従って、第1電動機MG1のトルクTmg1が減少しても要求駆動力Treqが駆動輪14に伝達されることとなる。
図3に戻り、トルク変動判定部94は、上記第1電動機MG1のトルクTmg1を減少させる制御を実施するか否かを判定するものである。上述したように、上記制御を実行しない場合であってもブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallow以下となる場合もあり、そのような場合には第1電動機MG1のトルクTmg1を減少する必要がない。トルク変動判定手段94は、前記変化量βが予め設定されている閾値β1以上であるか否か、前記変動トルクTdistが予め設定されている閾値Tdist1以上であるか否か、前記スリップ量Nslipが予め設定されている閾値Nslip1以上であるか否か、前記滑り量Ncslipが予め設定されている閾値Ncslip1以上であるか否か、ストローク量Bsが予め設定されている閾値Bs1以上であるか否か、パーキングロック信号Parkが出力された際の車速Vが予め設定されている閾値V1以上であるか否かに基づいて、ブレーキBに係るトルクが予め設定されている許容トルクTallow(閾値)よりも大きいか否かを判定し、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少させるか否かを判定する。これらのいずれか1つが肯定された場合、ブレーキBに係るトルクTbが予め設定されている許容トルクTallow(閾値)よりも大きくなるため、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少させる必要があるものと判断される。
図9は、電子制御装置50〜54の制御作動の要部すなわち、エンジン12のクランク軸26をロックさせた状態で第1電動機MG1から出力される駆動力Tmg1によって車両を走行させるモータ走行中に駆動輪14にトルク変動が発生した際、ブレーキBにかかるトルクTbを減少させてブレーキBの耐久性低下を抑制することができる制御作動を説明するためのフローチャートであって、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
先ず、トルク変動判定手段94に対応するステップST1(以下、ステップを省略する)において、第1電動機MG1によるモータ走行中に発生した駆動輪14のトルク変動によって、ブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallow(閾値)を超えるか否かが判定される。具体的には、駆動輪14の回転速度の変化率βが閾値β1以上であるか否か、変動トルクTdistが閾値Tdist1以上であるか否か、車輪のスリップ量Nslipが閾値Nslip1以上であるか否か、ブレーキBの滑り量Ncslipが閾値Ncslip1以上であるか否か、ブレーキペダルのストローク量Bsが閾値Bs1以上であるか否か、パーキングロック機構33がパーキングロックされた際の車速Vが閾値V1以上であるか否かに基づいて、トルクTbが許容トルクTallow以上であるか否かが判定される。これらが何れも各閾値未満である場合、ST1が否定されて本ルーチンが終了させられる。
ST1が肯定される場合、第1電動機駆動制御部90に対応するST2において、ST1において閾値以上となったパラメータに基づいて、ブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallowとなる第1電動機MG1のトルクTmg1の減少量Aが算出される。そして、第1電動機駆動制御部90に対応するST3において、ST2で算出された減少量A分だけ第1電動機MG1のトルクTmg1が減少させられる。さらに、第2電動機駆動制御部92に対応するST4において、ST3で実施された第1電動機MG1のトルクTmg1の減少量A分を補うように、第2電動機MG2のトルクTmg2が増加させられる。従って、第1電動機MG1のトルクTmg1が減少されても、運転者の要求駆動力Treqが出力される。
上述のように、本実施例によれば、第2回転要素RE2を回転停止させた状態で第1電動機MG1を回転駆動させるモータ走行中に、駆動輪14の回転変動が生じる場合には、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少させるため、第1電動機MG1のトルクTmg1の減少によってブレーキBにかかるトルクTbが減少し、ブレーキBの耐久性低下を抑制することができる。
また、本実施例によれば、駆動輪14には第2電動機MG2が動力伝達可能に連結されており、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少させる際には、第2電動機MG2のトルクを増加させるものである。このようにすれば、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少させると車両の駆動力低下が生じるが、第2電動機MG2のトルクTmg2を増加させることでその駆動力低下分を補うことができ、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少させても第2電動機MG2を用いて運転者の要求駆動力を発生させることができる。
また、本実施例によれば、ブレーキBにかかるトルクTbが予め設定されている許容トルクTallow(閾値)よりも大きくなると、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少させることを特徴とする。このようにすれば、ブレーキBにかかるトルクTbが許容トルクTallowよりも小さい場合には、第1電動機MG1のトルクTmg1が減少されないので、第1電動機MG1のトルクTmg1が減少される回数、言い換えれば、車両の駆動力低下が生じる回数を低減することができる。
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図10は、本発明の他の実施例であるハイブリッド車両用動力伝達装置100(以下、動力伝達装置100という)の構成を示す骨子図である。動力伝達装置100を前述の実施例の動力伝達装置10と比較すると、出力回転部材であるリングギヤRと出力歯車32との間にクラッチCが設けられており、他の構成は動力伝達装置10と変わらない。以下、動力伝達装置10と相違する点であるクラッチCについて説明する。
クラッチCは、出力回転部材であるリングギヤRと駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられている。このクラッチCは、摩擦材を備え、例えば油圧によって制御される摩擦材の押し付け荷重によってトルク容量を制御できるよく知られた摩擦クラッチである。なお、クラッチCは、油圧Pcが供給されない状態で係合される、すなわちリングギヤRと出力歯車32とが接続される、所謂ノーマリクローズタイプが適用されている。
図11は、ハイブリッド車両用動力伝達装置100を制御する電子制御装置102の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、前述した実施例の図3に対応している。図3の機能ブロック線図と比較すると、クラッチCを制御するクラッチ作動制御部104がさらに追加されている。なお、他の機能については前述の実施例と同様であるため、その説明を省略する。
クラッチ作動制御部104は、前記第1電動機駆動制御部90による第1電動機MG1のトルクTmg1の減少制御時に併せて実行される。具体的には、第1電動機MG1のトルクTmg1の減少に加えて、さらにクラッチCのトルク容量を低下する制御が実行される。クラッチCのトルク容量が低下されると、駆動輪14にトルク変動が発生してもクラッチCで滑りが生じ、クラッチCのトルク容量を超えるトルクがリングギヤRに伝達されない。従って、クラッチCのトルク容量が低下することで、ブレーキBに係るトルクTbも減少することとなる。なお、このクラッチCのトルク容量は、前述した実施例の減少量Aと同様に、駆動輪14の回転速度の変化率β、変動トルクTdist、車輪のスリップ量Nslipが閾値Nsl、ブレーキBの滑り量Ncslip、ブレーキペダルのストローク量Bsが閾値Bs1、およびパーキングロック機構33がパーキングロックされた際の車速Vに対するクラッチCのトルク容量の関係マップを予め記憶しており、実際の値と関係マップに基づいて最適な値に制御される。
このように、第1電動機MG1のトルクTmg1を減少する制御に併せて、クラッチCのトルク容量を減少させる制御を実行することでも、ブレーキBにかかるトルクTbを減少させることができる。
図12は、本発明のさらに他の実施例である車両用電動式動力伝達装置120(以下、動力伝達装置120という)の構成を示す骨子図である。この動力伝達装置120は、駆動源である電動機MGと左右一対の駆動輪14l、14rとの間の動力伝達経路に、第1駆動部122、第2駆動部124、差動歯車装置20、および左右一対の車軸22l、22rを主に備えて構成されている。
第1駆動部122は、遊星歯車装置126から主に構成されている。遊星歯車装置126のサンギヤSはワンウェイクラッチOWCに連結され、キャリヤCAは出力歯車128に連結され、リングギヤRは電動機MGに連結されている。このワンウェイクラッチOWCが設けられることにより、サンギヤSは一方向への回転が許容され、他方への回転が阻止される。なお、ワンウェイクラッチOWCが本発明のロック機構に対応している。
第2駆動部124は、出力歯車128、出力歯車128と噛み合うドリブンギヤ130、ドリブンギヤ130と共にカウンタ軸132に設けられそのドリブンギヤ130よりも小径の小径歯車134を備えて構成されている。また、前記小径歯車134は、差動歯車装置20の入力歯車40に噛み合わされている。このように構成される動力伝達装置120にあっては、電動機MGからトルクTmgが出力されると、サンギヤSに連結されたワンウェイクラッチOWCを反力要素として、出力回転部材であるキャリヤCAに走行用のトルクが伝達される。
図13は、遊星歯車装置126における各回転要素の回転速度を相対的に表す共線図であり、縦軸Y1〜Y3は左から順番に、ワンウェイクラッチOWCに連結されたサンギヤS(本発明の第2回転要素RE2)の回転速度、出力歯車128に連結されたキャリヤCA(本発明の第3回転要素RE3)の回転速度、電動機MGに連結されたリングギヤR(本発明の第1回転要素RE1)の回転速度をそれぞれ示している。図13からもわかるように、電動機MGによるモータ走行時は、サンギヤSの回転速度がワンウェイクラッチOWCによって零に固定されており、そのワンウェイクラッチOWCを反力要素として、キャリヤCAにトルクが伝達される。
ここで、破線で示すように駆動輪14から車両を停止させる方向の変動トルクTdistが作用すると、前述した実施例と同様に、ワンウェイクラッチOWCには、電動機MGによるトルクに加えて破線で示すトルク(=I×dω/dt×k)がさらに負荷され、ワンウェイクラッチOWCにかかるトルクTowcが定格的に定められる許容トルクTallow以上となると、ワンウェイクラッチOWCの耐久性が低下する可能性がある。これに対して、本実施例においても、一点鎖線で示すように電動機MGの駆動力Tmg'を減少させることで、ワンウェイクラッチOWCにかかるトルクTowc'が減少される。図13においては、電動機MGのトルクTmgが減少させられ、トルクの向きが正の方向から負の方向に変更されている。このような場合、ワンウェイクラッチOWCにかかるトルクTowc'が、変動トルクTdistによってかかるトルク(I×dω/dt×k)と、一点鎖線で示す電動機MG1のトルクTmg1によって係るトルク(=Tmg×k)のとの差分(I×dω/dt×k−Tmg×k)となり、結果として、ワンウェイクラッチOWCにかかるトルクTowc'が減少することとなる。
図14は、本発明のさらに他の実施例である車両用電動式動力伝達装置140(以下、動力伝達装置140という)の構成を示す骨子図である。この動力伝達装置140は、駆動源である電動機MGと左右一対の駆動輪14l、14rとの間の動力伝達経路に、第1駆動部142、第2駆動部144、差動歯車装置20、および左右一対の車軸22l、22rを主に備えて構成されている。
第1駆動部142は、遊星歯車装置146から主に構成されている。遊星歯車装置146のサンギヤSはワンウェイクラッチOWCに連結され、キャリヤCAは電動機MGに連結され、リングギヤRは出力歯車148に連結されている。
第2駆動部144は、出力歯車148、出力歯車148と噛み合うドリブンギヤ150、ドリブンギヤ150と共にカウンタ軸152に設けられそのドリブンギヤ150よりも小径の小径歯車154を備えて構成されている。また、前記小径歯車154は、差動歯車装置20の入力歯車40に噛み合わされている。このように構成される動力伝達装置140にあっても、電動機MGからトルクTmgが出力されると、サンギヤSに連結されたワンウェイクラッチOWCを反力要素として、出力回転部材であるリングギヤRに走行用のトルクが伝達される。
図15は、遊星歯車装置146における各回転要素の回転速度を相対的に表す共線図であり、縦軸Y1〜Y3は、左から順番にワンウェイクラッチOWCに連結されたサンギヤS(本発明の第2回転要素RE2)の回転速度、電動機MGに連結されたキャリヤCA(本発明の第1回転要素RE1)の回転速度、出力歯車148に連結されたリングギヤR(第3回転要素RE3)の回転速度をそれぞれ示している。図15からもわかるように、電動機MGによるモータ走行時は、サンギヤSの回転速度がワンウェイクラッチOWCによって零に固定されており、そのワンウェイクラッチOWCを反力要素として、リングギヤRにトルクが伝達される。
ここで、破線で示すように駆動輪14から車両を停止させる方向に働く変動トルクTdistが作用すると、前述の実施例と同様に、ワンウェイクラッチOWCには、電動機MGによるトルクに加えて破線で示すトルク(=I×dω/dt×k)がさらに負荷され、ワンウェイクラッチOWCにかかるトルクTowcが定格的に定められる許容トルクTallow以上となると、ワンウェイクラッチOWCの耐久性が低下する可能性がある。これに対して、本実施例においても、一点鎖線で示すように電動機MGのトルクTmg'を減少させることで、ワンウェイクラッチOWCにかかるトルクTowc'が減少する。図15においては、電動機MGのトルクTmgが減少させられ、トルクの向きが正の方向から負の方向に変更されている。このような場合、ワンウェイクラッチOWCにかかるトルクTowc'が、変動トルクTdistによってかかるトルク(I×dω/dt×k)と、一点鎖線で示す電動機MG1のトルクTmg1によって係るトルク(=Tmg×k)のとの差分(I×dω/dt×k−Tmg×k)となり、結果として、ワンウェイクラッチOWCにかかるトルクTowc'が減少することとなる。
図16は、本発明の他の実施例であるハイブリッド車両用動力伝達装置180(以下、単に動力伝達装置180という)の構成を例示する骨子図である。動力伝達装置180は、非回転部材であるハウジング28内において、エンジン12と図示しない駆動輪に連結された出力歯車182との間の動力伝達経路上に、第1遊星歯車装置184、第1電動機MG1、第2遊星歯車装置186、第2電動機MG2を主に備えて構成されている。なお、図16では図示しないが出力歯車182は、図示しない差動歯車装置等を介して駆動輪に連結されている。すなわち、駆動輪にトルク変動が生じると出力歯車182に伝達される。
第1遊星歯車装置184は、第1サンギヤS1、互いに噛み合う複数対の第1ピニオンギヤP1、その第1ピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1ピニオンギヤP1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を備える公知のダブルピニオン型の遊星歯車装置である。第2遊星歯車装置186は、第2サンギヤS2、第2ピニオンギヤP2、その第2ピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2ピニオンギヤP2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備える公知のシングルピニオン型の遊星歯車装置である。
これら第1遊星歯車装置184および第2遊星歯車装置186において、第1サンギヤS1と第2リングギヤR2とが互いに連結されて第1回転要素RE1が構成され、第1リングギヤR1によって第2回転要素RE2が構成され、キャリヤCA2によって第3回転要素RE3が構成され、第1キャリヤCA1と第2サンギヤS2とが互いに連結されて第4回転要素RE4が構成される。そして、これら4つの回転要素によって、全体として差動作用を生じる差動機構として機能する。
また、第1電動機MG1は第1回転要素RE1に連結され、第2電動機MG2は第4回転要素RE4に連結され、エンジン12は第2回転要素RE2に連結され、出力歯車182は第3回転要素RE3に連結されてる。さらに、エンジン12のクランク軸188には逆転を防止するロック機構として機能するワンウェイクラッチOWCが連結され、第1回転要素RE1には、サンギヤS1とリングギヤR2とを選択的に断続するためのクラッチCが設けられるとともに、第1回転要素RE1を回転停止させるためのブレーキBが設けられている。このように動力伝達装置180が構成されることで、第1電動機MG1および第2電動機MG2のうちの少なくとも一方の電動機の運転状態を制御することで差動状態を制御することができる。
図17は、動力伝達装置180において、エンジン12を停止させて第1電動機MG1および第2電動機MG2によるモータ走行を実行したときの、各回転要素の回転状態を示す共線図である。なお、図17に示すモータ走行時では、クラッチCが解放されるとともに、ブレーキBが係合されている。図17において、左から順番に第4回転要素RE4、第2回転要素RE2、第3回転要素RE3、第1回転要素RE1の回転速度を示している。
図17に示すように第1電動機MG1からトルクTmg1が出力されると、ワンウェイクラッチOWCを反力要素として第4回転要素RE4にトルクが伝達される。さらに、第2電動機MG2からも第4回転要素RE4にトルクTmg2が伝達される。そして、この第4回転要素RE4に伝達されたトルク(Tmg1、Tmg2)は、ブレーキBを反力要素として第3回転要素RE3に伝達される。
このように構成される動力伝達装置180においても、図示しない駆動輪においてトルク変動が発生すると、ワンウェイクラッチOWCに逆転方向に働くトルクが作用することとなる。これに対して、前述の実施例と同様に第1電動機MG1の駆動力Tmg1を減少させることで、ワンウェイクラッチOWCにかかるトルクTowcを減少させることができる。また、これに併せてブレーキBのトルク容量Tbrkを減少させて滑らせることによってもワンウェイクラッチOWCにかかるトルクTowcを低減させることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、動力伝達装置10、100にはエンジン12のクランク軸26を回転停止させるロック機構としてブレーキBが使用されていたが、必ずしもブレーキBに限定されず、ワンウェイクラッチやドグクラッチなどクランク軸26を回転停止させる構成であれば適宜変更しても構わない。同様に、動力伝達装置120、140、180ではロック機構としてワンウェイクラッチOWCが使用されていたが、摩擦クラッチやドグクラッチ等を使用しても構わない。
また、前述の実施例の各動力伝達装置10等は一例であって、差動機構の一回転要素をロック機構によって回転停止させた状態で電動機によるモータ走行が実施可能な構成であれば、矛盾のない範囲で本発明を適宜実施することができる。
また、前述の実施例の駆動装置10において、トルク変動が生じた際に、ブレーキBのトルク容量を低下させる制御を併せて実施しても構わない。
また、前述の実施例の駆動装置10、100において、第2電動機MG2が第1電動機MG1と異なる回転軸上に配置されているが、これら第1電動機MG1および第2電動機MG2が一軸上に配置される構成であっても構わない。
また、前述の実施例の駆動装置100において、クラッチCがリングギヤRと出力歯車32との間に設けられているが、クラッチCの位置はこれに限定されず、リングギヤRと駆動輪14との間の動力伝達経路上であれば特に限定されない。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10、100、180:ハイブリッド車両用動力伝達装置(車両用動力伝達装置)
14:駆動輪
24:遊星歯車装置(差動機構)
50:ハイブリッド駆動制御電子制御装置(電子制御装置)
52:エンジン制御用電子制御装置(電子制御装置)
54:電動機制御用電子制御装置(電子制御装置)
120、140:車両用電動式動力伝達装置(車両用動力伝達装置)
B:ブレーキ(ロック機構)
MG:電動機
MG1:第1電動機(電動機)
MG2:第2電動機(走行用電動機)
OWC:ワンウェイクラッチ(ロック機構)

Claims (4)

  1. 電動機に連結された第1回転要素、回転要素を選択的に回転停止させるロック機構に連結された第2回転要素、および駆動輪に連結された第3回転要素を少なくとも有する差動機構を備え、前記ロック機構によって前記第2回転要素を回転停止させた状態で前記電動機を回転駆動させることにより、前記第3回転要素にモータ走行用のトルクが伝達される車両用動力伝達装置の制御装置であって、
    前記第2回転要素を前記ロック機構によって回転停止させた状態で前記電動機を回転駆動させて前記第3回転要素にトルクを伝達するモータ走行中に、前記駆動輪の回転変動が生じる場合には、前記電動機のトルクを減少させることを特徴とする車両用動力伝達装置の制御装置。
  2. 前記駆動輪には走行用電動機が動力伝達可能に連結されており、
    前記電動機のトルクを減少させる際には、前記走行用電動機のトルクを増加させることを特徴とする請求項1の車両用動力伝達装置の制御装置。
  3. 前記駆動輪に制動トルクを付与するブレーキ信号乃至は前記駆動輪を機械的にロックするパーキングロック機構を作動させるパーキングロック信号が出力されることに基づいて、前記電動機のトルクを減少させることを特徴とする請求項1または2の車両用動力伝達装置の制御装置。
  4. 前記ロック機構にかかるトルクが予め設定されている閾値よりも大きくなると、前記電動機のトルクを減少させることを特徴とする請求項1の車両用動力伝達装置の制御装置。
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