JP2013123417A - 植物育成病害防除照明装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】植物に人工光源からの光を照射する植物育成病害防除照明装置において、植物にダメージを与えることなく植物病害を十分に防除し、かつ植物の成長を促進すると共に植物に含まれる栄養素を増加させる。
【解決手段】植物育成病害防除照明装置1は、植物Pに光を照射する光源として、遠赤色光を照射する第1の光源2と紫外線を照射する第2の光源3とを備える。これら光源2、3の照射動作は、制御部4により制御される。制御部4の動作時間帯は、時間設定部5により設定される。時間設定部5は、第1の光源2が日没後に2〜4時間照射動作し、その後、第2の光源3が日出までに1〜3時間照射動作するように設定される。植物Pに対して日没から日出までの時間帯に遠赤色光と紫外線とが順次照射されるので、植物Pにダメージを与えることなく植物病害を十分に防除し、かつ植物Pの成長を促進すると共に植物Pに含まれる栄養素量を増加させることができる。
【選択図】図1
【解決手段】植物育成病害防除照明装置1は、植物Pに光を照射する光源として、遠赤色光を照射する第1の光源2と紫外線を照射する第2の光源3とを備える。これら光源2、3の照射動作は、制御部4により制御される。制御部4の動作時間帯は、時間設定部5により設定される。時間設定部5は、第1の光源2が日没後に2〜4時間照射動作し、その後、第2の光源3が日出までに1〜3時間照射動作するように設定される。植物Pに対して日没から日出までの時間帯に遠赤色光と紫外線とが順次照射されるので、植物Pにダメージを与えることなく植物病害を十分に防除し、かつ植物Pの成長を促進すると共に植物Pに含まれる栄養素量を増加させることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、植物病害を防除し、かつ植物の成長を促進すると共に植物に含まれる栄養素を増加させる植物育成病害防除照明装置に関する。
従来から病原菌や害虫による植物病害を防除するために、殺菌・殺虫作用を有する紫外線を植物に対して照射することが知られている。しかしながら、紫外線の照射は、病原菌や害虫だけでなく、特に、日照量が少ない場合において植物にも葉焼け等のダメージを与えることがある。このような植物へのダメージを回避するために、日照量が所定量以下になると紫外線の照射を停止する装置がある(例えば、特許文献1参照)。また、太陽光を模した可視光を紫外線と同時に照射することで、植物へのダメージの低減を図る方法がある(例えば、特許文献2参照)。
一方、従来から植物の成長を調節するために、植物に対して可視光を照射することが知られている。例えば、ナス科植物(特に、トマト)に対して赤色光及び遠赤色光の少なくとも一方の光を日没後に照射することで、その植物の果実糖度が高まる(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、上記特許文献1の装置では、日照量が少ない場合には植物に対して紫外線が照射されないので、十分な病害防除に至らない虞がある。また、上記特許文献2の方法では、紫外線と可視光とが植物に対して同時に照射されるため、植物は紫外線による細胞障害に対抗する準備を整える前に紫外線照射を受けることになり、紫外線によるダメージを受け易い。更に、これら特許文献1、2の装置や方法は、植物の成長を促進したり植物に含まれる栄養素を増加させるものではない。
また、上記特許文献3の方法は、ナス科植物の果実糖度を高めるものであって、必ずしも植物の成長を促進するものではない。更に、この特許文献3の方法は、植物病害を防除するものではない。
本発明は、上記課題を解決するものであって、植物にダメージを与えることなく植物病害を十分に防除し、かつ植物の成長を促進すると共に植物に含まれる栄養素を増加させることができる植物育成病害防除照明装置を提供することを目的とする。
本発明の植物育成病害防除照明装置は、植物に対して光を照射する光源を備え、波長域685〜780nmの遠赤色光成分を含む光を照射する第1の光源と、波長域250〜340nmの紫外線成分を含む光を照射する第2の光源と、前記第1の光源及び第2の光源の照射動作を制御する制御部と、前記制御部に対して前記第1の光源及び第2の光源を照射動作させる時間帯を設定する時間設定部と、を備え、前記時間設定部は、前記第1の光源が日没後の時間帯に0.05μmol/m2/s以上の放射照度で2〜4時間照射動作し、その後、前記第2の光源が日出までの時間帯に3μW/cm2以上の放射照度で1〜3時間照射動作するように設定されていることを特徴とする。
前記時間設定部は、前記第2の光源の照射動作終了後、更に、前記第1の光源が日出までの時間帯に0.05μmol/m2/s以上の放射照度で1〜2時間照射動作するように設定されていることが好ましい。
前記第2の光源から照射される光は、波長域340〜380nmの光の光量が波長域250〜340nmの光の光量の1/2以下となるように制御されていることが好ましい。
前記第2の光源から照射される光は、波長域250〜280nmの光と波長域280〜340nmの光との光量比が0.04〜0.1:1となるように制御されていることが好ましい。
前記第2の光源は、積算放射照度が0.2〜10kJ/m2となるように光を照射することが好ましい。
本発明によれば、植物に対して日没から日出までの時間帯に第1の光源からの遠赤色光成分を含む光と、第2の光源からの紫外線成分を含む光と、が順次に照射される。これにより、植物にダメージを与えることなく植物病害を十分に防除し、かつ植物の成長を促進すると共に植物に含まれる栄養素量を増加させることができる。
本発明の実施形態に係る植物育成病害防除照明装置(以下、照明装置という)について、図1乃至図9を参照して説明する。本照明装置は、完全閉鎖型の植物苗生産システム、農業用のビニルハウス若しくはガラスハウス等の施設栽培、又は露地栽培等において野菜や花卉の植物病害を防除し、かつこれら植物の成長を促進すると共に植物に含まれる栄養素を増加させるものである。ここでいう植物病害とは、灰色カビ病、菌核病、トマト輪紋病、白星病、うどんこ病、ベト病、炭そ病、すすカビ病といった糸状菌(カビ)により引き起こされるものを指す。
図1に示すように、照明装置1は、畝Fに植えられた植物Pに対して光を照射する第1の光源2及び第2の光源3を備える。第1の光源2は波長域685〜780nmの遠赤色光成分を含む光を照射し、第2の光源3は波長域250〜340nmの紫外線成分を含む光を照射する。これら光源2、3は、植物Pの上方に配置される。光源2、3の照射動作は、制御部4により制御される。制御部4が動作する時間帯は、時間設定部5により設定される。光源2、3及び時間設定部5は、それぞれ配電線6により制御部4と電気的に接続される。
第1の光源2は、遠赤色光成分を含む光を照射する発光体21と、発光体21から発せられる光のうち主に遠赤色光成分を透過させる遠赤色光フィルタ22と、を有する。発光体21は、例えば、遠赤色光を発する遠赤色LEDや遠赤色蛍光灯や遠赤色EL素子、又は遠赤色光を含む光を発する白熱灯やHIDランプ(高圧ナトリウムランプ、キセノンランプ等)により構成される。遠赤色光フィルタ22は、例えば、カラー樹脂、カラーガラス又は光学多層膜処理を施した光学フィルタにより構成される。第1の光源2は、0.05μmol/m2/s以上の放射照度で植物Pに対して光を照射する。放射照度は、Leica製ライトメータLi-250及びセンサLi-190SAを用いて測定される。なお、発光体21が主に波長域685〜780nmの光を直接に照射するように構成されている場合には、第1の光源2は遠赤色光フィルタ22を有さなくてもよい。また、発光体21上に塗膜や蒸着膜を形成することにより、発光体21から発せられる光の光学特性を調整する構成としてもよい。
第2の光源3は、紫外線成分を含む光を照射する発光体31と、発光体31から発せられる光のうち波長が250nm以下の光をカットする紫外線フィルタ32と、を有する。発光体31は、UV−C(波長域200〜280nm)及びUV−B(波長域280〜340nm)を主に含む光を照射する。発光体31は、例えば、パナソニック電工株式会社製の紫外線ランプ(型番YGRKX21799)、水銀灯、メタルハライドランプ(例えば、パナソニック電工株式会社製のスカイビーム)、キセノンランプ、又は紫外LED等により構成される。紫外線フィルタ32は、ガラスや樹脂等でできた波長制御用の光学フィルタにより構成される。紫外線フィルタ32は、UV−C、UV−B、UV−A(波長域340〜380nm)及び可視光の透過をそれぞれ制限する機能を有していてもよい。第2の光源3は、3μW/cm2以上の放射照度で植物Pに対して光を照射する。放射照度は、クリニカルサプライ製UV−B紫外線強度計UVR-3036/S2を用いて測定される。なお、発光体31が直接に波長域250〜340nmの光を照射するように構成されている場合には、第2の光源3は紫外線フィルタ32を有さなくてもよい。また、発光体31上に塗膜や蒸着膜を形成することにより、発光体31から発せられる光の光学特性を調整する構成としてもよい。
制御部4は、マイコン、リレー及びスイッチ等により構成され、光源2、3から照射される光の放射照度を調節する調光装置を有する。調光装置は、例えば、ライトコントローラにより構成され、電気的に放射照度を調節する。
時間設定部5は、タイマやマイコン等により構成され、ユーザによって予め設定された時間に光源2、3を照射動作させる。図2に示すように、時間設定部5は、第1の光源2が日没後の時間帯に2〜4時間照射動作し、その後、第2の光源3が日出までの時間帯に1〜3時間照射動作するように設定される。第1の光源2からの光照射と第2の光源3からの光照射とは、通常、連続的に行われるが、短い時間(例えば、数分)であれば互いに重畳していたりブランクがあってもよい。
図3に示すように、蛍光灯(発光体21)と遠赤色光フィルタ22とにより構成された第1の光源2から照射される光(実線で示す)は、例えば、略740nmにピーク波長を有する。また、遠赤色LED(発光体21)により構成された第1の光源2から照射される光(一点鎖線で示す)は、例えば、略735nmにピーク波長を有する。
図4に示すように、第2の光源3は、例えば、直管型紫外線ランプにより構成される。このような第2の光源3は、円筒状のガラス管33と、ガラス管33の端部に設けられた電極端子34と、電極端子34と電気的に接続されガラス管33の内部に設けられたフィラメント35と、を有する。ガラス管33の内部には気体状の水銀原子36が封入され、ガラス管33の内壁には蛍光体37が塗布される。蛍光体37は、水銀原子36のアーク放電によって生じたUV−Cにより励起されてUV−Bを発する蛍光体とされる。電極端子34を介して外部電源よりフィラメント35に電力が供給されると、加熱されたフィラメント35から電子がガラス管33内に放出される。ガラス管33内に放出された電子は水銀原子36に衝突して水銀原子36を励起し、励起された水銀原子36はUV−Cを発する。次いで、このUV−Cは蛍光体37を励起し、励起された蛍光体37はUV−Bを発する。このようにして、第2の光源3の内部においてUV−C及びUV−Bが発生する。第2の光源3から出射されるUV−C及びUV−Bの光学特性は、ガラス管33を構成する材料の紫外線透過性や蛍光体37の種類及び量等を調節することで制御することができる。
図5は、上述のパナソニック電工株式会社製の紫外線ランプにより構成された第2の光源3から照射される光の分光特性を示す。このようなUV−Bを多く含む光は、高い光エネルギを持つので強い細胞障害作用を持ち、優れた殺菌・殺虫作用を有する。
光源2、3がLEDのような単体光量の少ない発光体により構成されている場合、十分量の光量を確保するため、図6に示すように、各々複数の光源2、3が一つの筐体7内にまとめて収容される。筐体7は、熱伝導率が高くて放熱性に優れると共に高い光反射性を有する材料、例えば、アルミニウムやステンレス等の金属により構成される。
光源2、3は、通常、植物Pの上方に配置される。しかしながら、植物Pの背が高い場合や枝葉が多い場合には、上方に配置された光源2、3だけでは植物Pの下方や内部にまで十分量の光を照射することができない虞がある。そこで、図7に示すように、植物Pの上方に配置された上部第1の光源2a及び上部第2の光源3a(以下、上部光源2a、3aという)に加え、植物Pの側方や下方にも光源2、3を配置してもよい。植物Pの側方には側部第1の光源2b及び側部第2の光源3b(以下、側部光源2b、3bという)が配置され、植物Pの下方には下部第1の光源2c及び下部第2の光源3c(以下、下部光源2c、3cという)が配置される。これにより、光源2、3からの光を植物P全体に十分量照射することができる。ここで、側部光源2b、3b及び下部光源2c、3cは、任意の角度で植物Pに対して光を照射することができるように、それらの取り付け角度が調節可能となっている。
図8は、上方から見たときの植物Pに対する上部光源2a、3a、側部光源2b、3b及び下部光源2c、3cの配置を示す。なお、ここでは図を簡単にするために光源2、3を一つの部材として示している。上部光源2a、3aは、畝Fが伸びる方向(植物Pが連なる方向)と略平行に、互いに一定間隔を置いて複数配置される。側部光源2b、3bは、シリンダ等で覆われることで防水加工が施され、畝Fが伸びる方向と略平行に、畝Fの間の領域に互いに一定間隔を置いて複数配置される。下部光源2c、3cは、シリンダ等で覆われることで防水加工が施され、畝Fが伸びる方向と略平行に、畝Fの間の地面上に互いに一定間隔を置いて複数配置される。これにより、各光源2、3の光照射範囲に対して植物Pが広い範囲に亘って連なっている場合であっても、植物Pに対して十分量の光を照射することができる。なお、側部光源2b、3b及び下部光源2c、3cは、ホローライトガイド方式の照明器具、光ファイバ、又は細長い形状に成形されたEL器具等の連続光源により構成されてもよい。
上部光源2a、3a、側部光源2b、3b及び下部光源2c、3cの配光及び光量は、植物Pの生育に応じて調節される。例えば、植物Pが初期の生育ステージにあってまだ小さい場合、植物Pから離れた上部光源2a、3aは消灯され、植物Pに近い側部光源2b、3b及び下部光源2c、3cは点灯される。このとき、側部光源2b、3b及び下部光源2c、3cは、それらの取り付け角度等を調整することで配光が狭く設定され、植物Pに対して集中的に光を照射できるように調節される。また、初期の生育ステージにある植物Pは枝葉がまだ十分に発達していないので、植物Pに対して照射される光は光量が低くても植物P全体に行き渡る。そのため、側部光源2b、3b及び下部光源2c、3cは、それぞれ照射する光の光量を下げることが好ましい。
一方、植物Pが大きく成長した場合には、上部光源2a、3a、側部光源2b、3b及び下部光源2c、3cのすべてが点灯される。このとき、側部光源2b、3b及び下部光源2c、3cは、それらの取り付け角度等を調整することで配光が広く設定され、植物Pの広い範囲に対して光を照射できるように調節される。また、大きく成長した植物Pは多くの枝葉を持ち得るため、植物Pに対して照射される光は高い光量でないと植物Pの内部にまで行き渡らない。そのため、上部光源2a、3a、側部光源2b、3b及び下部光源2c、3cは、それぞれ照射する光の光量を増加させることが好ましい。
上記のように構成された照明装置1が植物Pに与える病害防除効果、成長促進効果及び栄養素増加効果を、実際に照明装置1を用いてイチゴ(品種:章姫)を栽培することで確認した。病害防除効果は、100果当たりのイチゴ果実のうどんこ病被害果率により評価した。成長促進効果は、イチゴ10株当たりのイチゴ果実の収穫個数により評価した。栄養素増加効果は、イチゴ果実の糖度及びビタミンC含有量により評価した。
(実施例1)
イチゴは、12月〜2月の期間に太陽光が照射される環境において栽培された。第1の光源2としては、上述の遠赤色LEDを用いた(図3参照)。第1の光源2は、イチゴに対して0.05μmol/m2/sの放射照度で遠赤色光を照射した。第2の光源3としては、上述のパナソニック電工株式会社製の紫外線ランプを用いた(図5参照)。第2の光源3は、イチゴに対して3μW/cm2の放射照度で紫外線を含む光を照射した。
イチゴは、12月〜2月の期間に太陽光が照射される環境において栽培された。第1の光源2としては、上述の遠赤色LEDを用いた(図3参照)。第1の光源2は、イチゴに対して0.05μmol/m2/sの放射照度で遠赤色光を照射した。第2の光源3としては、上述のパナソニック電工株式会社製の紫外線ランプを用いた(図5参照)。第2の光源3は、イチゴに対して3μW/cm2の放射照度で紫外線を含む光を照射した。
図9に示すように、実施例1においては、第1の光源2からの遠赤色光が日没後の20時から23時までの3時間イチゴに対して照射され、その後、第2の光源3からの紫外線が23時から1時までの2時間イチゴに対して照射された。すなわち、第1の光源2からの遠赤色光と第2の光源3からの紫外線とは、連続的にイチゴに対して照射された。その結果、表1に示すように、実施例1によるイチゴは、うどんこ病被害果率が2.8%、10株当たりの収穫個数が289個、糖度が12.1、そしてイチゴ100g当たりのビタミンC含有量が109.81mgであった。
これに対し、図10に示すように、比較例1においては、光源2、3からの光は照射されず、太陽光のみがイチゴに対して照射された。その結果、表1に示すように、比較例1によるイチゴは、うどんこ病被害果率が56%、収穫個数が200個、糖度が9.6、そしてビタミンC含有量が103.67mgであった。この結果は、照明装置1が効率良くイチゴの病害を防除し、かつイチゴの成長を促進すると共にイチゴに含まれる栄養素を増加させることを示している。
図11に示すように、比較例2においては、第2の光源3からの紫外線が9時から15時までの6時間、太陽光と共にイチゴに対して照射された。その結果、表1に示すように、比較例2によるイチゴは、うどんこ病被害果率が14%、収穫個数が222個、糖度が10.5、そしてビタミンC含有量が104.12mgであった。この結果は、昼間における第2の光源3からの紫外線照射が、ある程度の病害防除効果、成長促進効果及び栄養素増加効果を与えることを示しているが、これらの効果は実施例1のものよりも弱い。
図12に示すように、比較例3においては、第1の光源2からの遠赤色光が20時から23時までの3時間イチゴに対して照射され、第2の光源3からの紫外線はイチゴに対して照射されなかった。その結果、表1に示すように、比較例3によるイチゴは、うどんこ病被害果率が52%、収穫個数が238個、糖度が10.8、そしてビタミンC含有量が104.99mgであった。この結果は、効率の良いイチゴの病害防除、成長促進及び栄養素増加には、第1の光源2からの遠赤色光照射だけでは不十分で、第2の光源3からの紫外線照射が必要とされることを示している。
図13に示すように、比較例4においては、第2の光源3からの紫外線が23時から1時までの2時間イチゴに対して照射され、第1の光源2からの遠赤色光はイチゴに対して照射されなかった。その結果、表1に示すように、比較例4によるイチゴは、うどんこ病被害果率が5.2%、収穫個数が215個、糖度が10.2、そしてビタミンC含有量が104.95mgであった。この結果は、第2の光源3からの紫外線だけでもある程度イチゴの病害を防除することはできるが、イチゴの成長促進及び栄養素増加には第1の光源2からの遠赤色光照射が必要とされることを示している。
上記のように、本実施形態の照明装置1によれば、植物Pに対して日没から日出までの時間帯に第1の光源2からの遠赤色光成分を含む光と、第2の光源3からの紫外線成分を含む光とが順次に照射される。そのため、植物Pは、第2の光源3からの紫外線照射を受ける前に第1の光源2からの遠赤色光照射により活性化され、紫外線による細胞障害に対抗する準備を整えることができる。これにより、紫外線は、植物Pに対して殆どダメージを与えることなく、効率良く植物Pに取り付いた病原菌や害虫を駆除して植物病害を防除することができる。また、遠赤色光は、植物Pの代謝を活性化することで、植物Pの花芽分化に悪影響を及ぼすことなく、植物Pの成長を促進すると共に植物Pに含まれる栄養素量を増加させる。このような照明装置1は、通年に亘って利用可能であるが、特に、太陽光が減少する秋から春先にかけての短日期に有効に利用することができる。
糸状菌の胞子形成は、UV−Aにより誘導されることが知られている。図14に示すように、糸状菌によって引き起こされる灰色カビ病の発生率は、第2の光源3から照射される光のUV−A/(UV−B+UV−C)比が1よりも小さい場合に低い(第2の光源3から照射されるUV−Cとは、波長域250〜280nmの光を指す)。従って、第2の光源3から照射される光は、そのUV−A光量がUV−BとUV−Cとの合計光量よりも少ない、より好ましくは、UV−A光量がUV−BとUV−Cとの合計光量の1/2以下となるように制御される。これにより、糸状菌の胞子形成を抑制して、糸状菌の拡散及び蔓延を防止することができる。
また、図15に示すように、イチゴのうどんこ病被害果率は、第2の光源3から照射される光のUV−C/UV−B比がゼロの場合は高く、この状態からUV−C光量を増加させると顕著に低減される。一方、イチゴの日焼け率は、UV−C/UV−B比がゼロの場合は低く、UV−C光量が増加するにつれて高まり、特に、UV−C/UV−B比が0.1を超えると急激に高くなる。従って、第2の光源3から照射される光のUV−C/UV−B比をゼロよりも大きくて0.1以下、より好ましくは、0.04よりも大きくて0.1以下となるように制御することで、うどんこ病被害果率及び日焼け率の両方を低く抑えることができる。
更に、図16に示すように、イチゴのうどんこ病被害果率は、第2の光源3から照射される光の積算放射照度が0.2kJ/m2以上であれば低く抑えられる。一方、イチゴの日焼け率は、第2の光源3から照射される光の積算放射照度が10kJ/m2以下であれば低く抑えられる。従って、第2の光源3から照射される光の積算放射照度を0.2〜10kJ/m2の範囲に制御することで、うどんこ病被害果率及び日焼け率の両方を低く抑えることができる。
次に、本実施形態の変形例に係る照明装置について説明する。本変形の照明装置は、上述の照明装置1と同一の構成を備え、照明装置1とは光源2、3の光照射パターンのみ異なる。図17に示すように、本変形例では、まず、第1の光源2からの遠赤色光が日没後の時間帯に2〜4時間照射され、次いで、第2の光源3からの紫外線が1〜3時間照射された後、再び第1の光源2からの遠赤色光が日出までの時間帯に1〜2時間照射される。
(実施例2)
本変形例の照明装置が植物Pに与える病害防除効果、成長促進効果及び栄養素増加効果を、この照明装置を用いて実際にイチゴを栽培することで確認した。光源2、3及びこれら光源2、3が照射する光の放射照度は、上記実施例1と同一とした。
本変形例の照明装置が植物Pに与える病害防除効果、成長促進効果及び栄養素増加効果を、この照明装置を用いて実際にイチゴを栽培することで確認した。光源2、3及びこれら光源2、3が照射する光の放射照度は、上記実施例1と同一とした。
図18に示すように、実施例2においては、まず、第1の光源2からの遠赤色光が20時〜23時まで3時間照射され、次いで、第2の光源3からの紫外線が23時〜1時まで2時間照射された後、第1の光源2からの遠赤色光が1時〜3時まで2時間照射された。その結果、表2に示すように、実施例2によるイチゴは、うどんこ病被害果率が2.6%、収穫個数が298個、糖度が12.5、そしてビタミンC含有量が111.67mgとなり、すべての項目において実施例1によるイチゴ(表1参照)よりも優れていた。
これに対し、図19に示すように、比較例5においては、イチゴに対して第1の光源2からの遠赤色光が20時〜23時までの3時間及び1時〜3時までの2時間の2回に分けて照射され、第2の光源3からの紫外線は照射されなかった。その結果、表2に示すように、比較例5によるイチゴは、うどんこ病被害果率が53%、収穫個数が236個、糖度が10.7、そしてビタミンC含有量が105.11mgであった。この結果は、効率の良いイチゴの病害防除、成長促進及び栄養素増加には、第1の光源2からの遠赤色光照射だけでは不十分で、第2の光源3からの紫外線照射が必要とされることを示している。
また、図20に示すように、比較例6においては、イチゴに対して第1の光源2からの遠赤色光が20時〜3時まで7時間照射され、第2の光源3からの紫外線が23時〜1時まで2時間照射された。すなわち、23時〜1時の間において光源2、3からの光が互いに重畳して照射された。その結果、表2に示すように、比較例6によるイチゴは、うどんこ病被害果率が6%、収穫個数が278個、糖度が11.3、そしてビタミンC含有量が106.89mgとなり、すべての項目において実施例1によるイチゴよりも劣っていた。この結果は、効率の良いイチゴの病害防除、成長促進及び栄養素増加には、第1の光源2からの遠赤色光と第2の光源3からの紫外線とを互いに重複することなく別個に照射することが重要であることを示している。
本変形例の照明装置によれば、植物Pに対して第2の光源3からの紫外線が照射された後に第1の光源2からの遠赤色光が照射されるので、上記実施形態の照明装置1に比べて、更に植物Pを活性化することができる。そのため、より植物Pにダメージを与えることなく植物病害を防除し、かつより効率良く植物Pの成長を促進すると共に植物Pに含まれる栄養素量を増加させることができる。また、植物Pが遠赤色光照射により日出前から活性化されているので、植物Pは日出後に太陽光に含まれる紫外線によってダメージを受け難い。
なお、本発明に係る照明装置は、上記実施形態及びその変形例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本照明装置は、太陽光が届かない完全閉鎖系の植物生産工場等に設置されてもよい。この場合、第1の光源及び第2の光源の光照射タイミングは、例えば、植物の育成に用いられる人工光源の明期/暗期スケジュールに基づいて制御される。
1 植物育成病害防除照明装置
2 第1の光源
3 第2の光源
4 制御部
5 時間設定部
P 植物
2 第1の光源
3 第2の光源
4 制御部
5 時間設定部
P 植物
Claims (5)
- 植物に対して光を照射する光源を備えた植物育成病害防除照明装置であって、
波長域685〜780nmの遠赤色光成分を含む光を照射する第1の光源と、
波長域250〜340nmの紫外線成分を含む光を照射する第2の光源と、
前記第1の光源及び第2の光源の照射動作を制御する制御部と、
前記制御部に対して前記第1の光源及び第2の光源を照射動作させる時間帯を設定する時間設定部と、を備え、
前記時間設定部は、前記第1の光源が日没後の時間帯に0.05μmol/m2/s以上の放射照度で2〜4時間照射動作し、その後、前記第2の光源が日出までの時間帯に3μW/cm2以上の放射照度で1〜3時間照射動作するように設定されていることを特徴とする植物育成病害防除照明装置。 - 前記時間設定部は、前記第2の光源の照射動作終了後、更に、前記第1の光源が日出までの時間帯に0.05μmol/m2/s以上の放射照度で1〜2時間照射動作するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の植物育成病害防除照明装置。
- 前記第2の光源から照射される光は、波長域340〜380nmの光の光量が波長域250〜340nmの光の光量の1/2以下となるように制御されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の植物育成病害防除照明装置。
- 前記第2の光源から照射される光は、波長域250〜280nmの光と波長域280〜340nmの光との光量比が0.04〜0.1:1となるように制御されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の植物育成病害防除照明装置。
- 前記第2の光源は、積算放射照度が0.2〜10kJ/m2となるように光を照射することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の植物育成病害防除照明装置。
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