JP2013123161A - 基地局装置、無線通信方法、及び無線通信システム - Google Patents

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Abstract

【課題】受信側の装置において複数の信号を合成する際の位相の同期精度を高めた上で周波数利用効率を向上させる。
【解決手段】基地局装置は、アンテナごとに、該アンテナと端末装置との間のアップリンクにおける各周波数成分のチャネル情報を取得するチャネル情報取得部と、アンテナに対応する各周波数成分のチャネル情報の複素位相を基に算出される複素位相を基準として、個々のアンテナそれぞれに対応する各周波数成分のチャネル情報から基準とした各周波数成分のチャネル情報に対する相対的なチャネル情報を算出し相対成分取得部と、アンテナそれぞれに対する周波数成分ごとに、相対的なチャネル情報から得られる物理量の平均値を算出し、該平均値に基づいて受信ウエイトを算出する受信ウエイト演算部と、算出された受信ウエイトを用いて受信処理をする受信信号処理部とを備える。
【選択図】図9

Description

本発明は、限られた周波数資源を用い、且つ無線伝送における伝送距離の長距離化により回線設計上の厳しい制限が強いられる環境において、送信側の総送信電力を抑えながらも受信側の受信電力ないしは信号対雑音電力比(SNR:Signal to Noise Power Ratio)を向上させ、省電力で大容量の効率的な伝送を可能にする基地局装置、無線通信方法、及び無線通信システムに関する。
近年のインターネットの普及とともに、既に全世帯の90%にも及ぶ世帯で光ファイバを用いた回線が利用可能となっている。このようにブロードバンド化の流れは確実に進展してはいるが、実際には、光回線の敷設による採算が見込めない地域があることから、ブロードバンド・ゼロ地域の解消を如何にして実現するかという問題はなかなか解決する術が見つからない現状がある。このような光回線の敷設による採算が見込めない地域を不採算地域(条件不利地域)という。
このような不採算地域における対策としては、無線回線を利用することが有利とされており、例えば、WiMAX(Worldwide interoperability for microwave access)(登録商標、以下同様)と呼ばれる無線規格を用いたサービスのための周波数チャネルを10[MHz]確保し、この周波数チャネルを用いたWiMAXサービスを、条件不利地域を中心に適用する「地域WiMAX」と呼ばれる施策が実施されている。この施策に用いられているWiMAXでは、例えば基地局は10[W]程度の大きな送信電力で信号送信を行い、この結果、半径3km程度のエリアを1局でカバーすることが可能となっている。
一般に、見通しがきく環境では送信局と受信局の間での伝搬に伴い受信信号強度は、距離の2乗に反比例する。見通し外の場合には受信信号強度は距離の3〜4乗に反比例するようになり、回線設計上にはより厳しい制限が課せられることになる。仮に見通しを想定したとしても、伝送距離を2倍に伸ばすためには、送信電力を2=4倍にする必要があり、より線形性の高い送信アンプを必要とする。しかし、そのような送信アンプは高価であるとともに、そのような送信アンプを用いると、電力効率は著しく低下するため消費電力は急激に増加してしまう。
近年は特に環境問題が注目され、無線を含めたインフラの低消費電力化が要求されており、高出力の送信アンプを用いた非効率的な通信は好ましくない。このような問題を解決するための方法としては、例えば、非特許文献1に記載のように、複数の中継局を介在させたコヒーレント伝送が有効である。非特許文献1では、中継においては非再生中継を仮定しているが、このコヒーレント伝送のポイントは、中継の形態が「非再生中継」であるか、又は「再生中継」であるかに依存しておらず、あくまでも受信側において各信号が同位相で合成されるように送信することである。このようなコヒーレント伝送を行う場合の別の形態の1つとして、分散アンテナシステムがある。
分散アンテナシステムは、1つの制御局に場所的に分散されて設置された複数のアンテナ(厳密にはアンテナに、光・電気変換や信号増幅等を行う装置が組み合わされた無線モジュールないしはリモート基地局)が接続された構成であり、制御局と各アンテナ間は光ファイバ等で接続される。
また、他の形態として、1つの基地局に複数の中継局が無線接続された構成(無線中継システム)をとることもできる。この場合は、基地局が制御局となり、中継局がアンテナないしは無線モジュールとなり、全体として分散アンテナシステムを構成することになるが、基地局と中継局とが無線により接続される点で異なる構成である。
いずれの場合も、複数のアンテナ(中継局)が受信端末側で各信号が同位相で合成されるように送信するコヒーレント伝送を行う。以下、その詳細な説明を行う。
[従来技術におけるコヒーレント伝送のシステム概要]
(無線中継システム)
図25は、従来技術における無線中継システムの概要を示す図である。
同図に示すように、無線中継システムは、送信局901と、N個の中継局902−1〜902−Nと、受信局903とを具備している。送信局901は、受信局903宛ての無線パケットを一旦中継局902−1〜902−Nに対して送信する。中継局902−1〜902−Nは、送信局901から受信した信号に対して各種受信信号処理を行い、送信局901が送信した無線パケットを再生(復元)する。次に、各中継局902−1〜902−Nは、再生した同一の無線パケットを同時刻に受信局903に対して送信する。この際、各中継局902−1〜902−Nは、それぞれが送信した信号が受信局903において同一の位相で受信されるように、送信信号の位相を調整する。受信局903では、各中継局902−1〜902−Nから送信された信号全てが伝送路上で合成されて受信される。この際、各中継局902−1〜902−Nから送信された信号が、受信局903において同程度の受信電力で受信されるとするならば、合成された後の信号は、合成される前の信号に対して振幅でN倍となる。また、受信電力は、振幅の2乗に比例するため(N倍となる。
ここで、無線中継システムにおける中継局902が1局の場合と、N局の場合とで比較する。評価条件を公平にするために、1局で中継する場合には単一の中継局902が送信電力をPとして送信し、N局で中継する場合には中継局902−1〜902−Nがそれぞれ送信電力をP/Nとして(総送信電力が一定の条件)送信するものとして比較する。N局の中継局902−1〜902−Nから送信した場合、各中継局902−1〜902−Nから送信された信号は伝送路で合成され、中継局902−1〜902−Nのいずれか1局からの受信信号に比べ、受信局903における受信信号の振幅はN倍になり、その結果、総受信電力は(N倍となる。しかし、N局で送信した場合、1つの中継局902当たりの送信電力は、単一の中継局902で送信した場合の1/Nとなっている。そのため、受信電力は、(1/N)×(N=N倍となる。
つまり、中継局902−1〜902−Nの総送信電力を一定としているにもかかわらず、1局で中継する場合と比較して受信局903における受信電力がN倍となり、回線利得として10×Log10[dB]を稼ぐことが可能になる。
(分散アンテナシステム)
図26は、従来技術における分散アンテナシステムの概要を示す図である。
同図に示すように、分散アンテナシステムは、協調的な通信を行う3つのセル911−1〜911−3を形成するリモート基地局912−1〜912−3と、複数の端末装置913−1〜913−6と、光ファイバ915を介して各リモート基地局912−1〜912−3に接続された制御局914とを具備している。なお、各リモート基地局912−1〜912−3と制御局914とを接続する光ファイバ915は、同軸ケーブルなどであってもよい。また、ここでは3つのセル911−1〜911−3と3つのリモート基地局912−1〜912−3を想定して説明を行うが、一般的には3以外の数であっても良い。
各リモート基地局912−1〜912−3は、それぞれが形成するセル内に位置する各端末装置913−1〜913−6と、同一の周波数チャネルを用いて通信を行う。制御局914は、光ファイバ915を介して、リモート基地局912−1〜912−3を制御する。同一の周波数チャネルを用いた通信を行うため、各端末装置913−1〜913−6は、複数のリモート基地局912−1〜912−3から送信された信号を同時に受信することができる。例えば、端末装置913−4は、全てのリモート基地局912−1〜912−3から信号を受信することができる。
ここで、リモート基地局912−1〜912−3それぞれと端末装置913−4との間のチャネル情報が既知であれば、リモート基地局912−1〜912−3は、それぞれが端末装置913−4宛てに送信する際に、各リモート基地局912−1〜912−3から送信された信号が端末装置913−4において同位相となるように送信ウエイト乗算を施すことができる。この場合、端末装置913−4において受信される信号は、同位相合成されるので受信電力が増加する。その結果、端末装置913−4における通信特性が改善される。このような、同位相合成を行うための信号処理の制御は全て制御局914で実施され、リモート基地局912−1〜912−3は制御局914の指示に従い動作する。
分散アンテナシステムにおいて、制御局914と各リモート基地局912−1〜912−3との間は光ファイバ915で接続されており、この光ファイバ915上で転送される信号を各リモート基地局912−1〜912−3では光/電気変換を行うことで無線回線上において送信する電気信号を生成し、信号増幅などの処理の後にこれをアンテナから送信する。このような制御を利用することで、全てのチャネル情報を把握した制御局914に受信側において同位相合成となるような信号処理の機能を集約し、その結果、各リモート基地局912−1〜912−3における位相制御の不確定性を回避しながら通信品質の向上を図ることを可能としている。
なお、厳密な意味での分散アンテナシステムでは、各リモート基地局912−1〜912−3は同時に複数の端末装置913−1〜913−6と同一周波数上で空間多重を行うマルチユーザMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術を利用してさらなる特性改善を図ることができる。マルチユーザMIMO技術を利用する際の制御は、多数の送信アンテナを利用することで、端末側における希望信号の同位相合成と、異なる端末間の干渉信号を除去するためのヌル制御とを両立しているという点を除けば、基本的にはコヒーレント伝送を基礎とした制御である。
[コヒーレント伝送におけるチャネルフィードバックの概要]
コヒーレント伝送を行うためには、送受信局間のチャネルの状態を把握する必要がある。これは、複数の送信局又は中継局から送信された信号が同位相で受信局に届くようにするために、送信局及び中継局において、受信局との間のチャネルの状態を把握し、チャネルの状態に応じた送信ウエイトを用いて信号を送信するためである。
図27は、従来技術におけるチャネルフィードバックの処理を示すフローチャートである。従来技術におけるチャネルフィードバックの方法は大別して2種類の方法がある。ここでは、フォワードリンクのチャネル推定結果を直接取得する「(A)直接的な方法」と、バックワードリンクの情報を用いて換算推定する「(B)間接的な方法」とについて説明する。
一般的には、フォワードリンクとその逆方向のバックワードリンクのチャネル情報は一致しない。それは、フォワードリンクで用いられる送信側のハイパワーアンプと受信側のローノイズアンプの組み合わせと、バックワードリンクで用いられる送信側のハイパワーアンプと受信側のローノイズアンプの組み合わせが異なり、フォワードリンクのチャネル情報とバックワードリンクのチャネル情報との間で複素位相や振幅が異なるからである。
しかし、後述する換算処理(キャリブレーション処理)を実施することで、バックワードリンクのチャネル情報からフォワードリンクの情報を換算推定することが可能である。なお、以降の説明においては、先の説明における「リモート基地局」及び「中継局」を区別しない場合は「無線モジュール」と呼ぶことにする。
図27(A)は、直接的な方法の処理を示すフローチャートである。同図に示すように、直接的な方法では、チャネル情報を推定開始する(ステップS901)と、各無線モジュールから端末装置宛にチャネル推定用のプリアンブル信号などを含む無線パケットを送信する(ステップS902)。
端末装置は、各無線モジュールから送信された無線パケットを受信し、受信した無線パケットに含まれているプリアンブル信号などを用いてチャネル推定を実施する(ステップS903)。端末装置では、このチャネル推定結果を「制御情報収容用の無線パケット」に収容し、無線モジュールに送信する(ステップS904)。
無線モジュールは、端末装置が送信した「制御情報収容用の無線パケット」を受信し、チャネル情報を取得する(ステップS905)。更に、無線モジュールは、受信したチャネル情報をメモリに保存し、チャネル情報に関するデータベースを構築し(ステップS906)、処理を終了する(ステップS907)。
図27(B)は、間接的な方法の処理を示すフローチャートである。同図に示すように、間接的な方法では、チャネル情報を推定開始する(ステップS908)と、端末装置から無線モジュール宛にチャネル推定用のプリアンブル信号などを含む無線パケットを送信する(ステップS909)。
無線モジュールは、端末装置から送信された無線パケットを受信し、無線パケットに含まれているプリアンブル信号などを用いてチャネル推定を実施する(ステップS910)。無線モジュールは、このバックワードリンクにおけるチャネル情報の推定結果に、換算処理を施し、フォワードリンク側のチャネル情報を取得する(ステップS911)。
バックワードリンクにおけるチャネル情報からフォワードリンクにおけるチャネル情報を算出する換算処理は、フォワードリンクにおけるハイパワーアンプと、バックワードリンクにおけるローノイズアンプとの相違を補正する係数を用いることにより実施することが可能である。具体的には、バックワードリンクにおけるチャネル情報に、ハイパワーアンプとローノイズアンプとの相違を補正する係数を乗算することによって、ステップS911における変換処理を実施することができる。
更に、無線モジュールは、端末装置から受信したバックワードリンクにおけるチャネル情報と、変換処理により得られたフォワードリンクにおけるチャネル情報とをメモリに保存し、チャネル情報を記憶するデータベースを構築し(ステップS912)、処理を終了する(ステップS913)。
このようにしてチャネル情報を事前に取得しておき、一般的には実際に通信を行う際にこのチャネル情報を基に送信ウエイトを算出する。なお、チャネル情報は時間とともに変動するため、状況に応じて例えば周期的に更新することが一般的である。また、上記の中でチャネル情報をデータベース化して保存するのは、無線モジュール以外の制御局等で行っても構わない。
また、分散アンテナシステムを例にとれば、この送信ウエイト算出処理は各無線モジュールで個別に行うのではなく、制御局において集中制御的に一括処理を行うことが一般的である。特に、マルチユーザMIMOにより複数の端末装置と同時に同一周波数チャネルで通信を行う際には、全てのチャネル情報を用いなければ送信ウエイトを算出することはできない。ただし、マルチユーザMIMOではなく、1台の端末装置との間での1対1通信を行う場合に限定すれば、チャネル情報から得られる伝送路上での複素位相の回転をキャンセルする送信ウエイト(つまり、全ての無線モジュールでチャネル情報と送信ウエイトを乗算すると複素位相が定数となる)を利用可能であるので、無線モジュールで個別に処理をすることも可能である。
[従来技術におけるコヒーレント伝送の信号処理概要]
従来技術におけるコヒーレント伝送の信号処理について、以下に簡単に説明する。
まず、端末装置に対してコヒーレント伝送を行う無線通信装置の構成について説明する。無線通信装置は、送信を行う機能と、受信を行う機能とを備えるのが一般的で、特にチャネル情報のフィードバックを行う際には両方の機能を同時に利用することになる。ここでは、説明の便宜上、無線通信装置の送信側の機能と、受信側の機能とを分けて説明する。
また、本発明に係わる信号処理は物理層が中心となっており、無線通信装置におけるMAC層以上の上位レイヤの処理はここでは本質的ではない。このため、MAC層以上の信号処理については省略し、基地局装置における送信機能ブロック及び受信機能ブロックに対するデータの入出力は、基本的にはMAC層側の機能ブロックとのデータの入出力に相当し、MAC層側の構成はここでは図示せずに省略する。
更には、分散アンテナシステムを例にとる場合には、先にも説明した通り、通常は複数の端末装置との間において同時に同一周波数軸上で空間多重を行い周波数資源の有効利用を図るが、この空間多重機能に関する説明は後述するマルチユーザMIMO技術の説明において行うものとし、ここでは説明を省略する。
(ダウンリンクにおける送信側の構成例)
図28は、従来技術における無線通信装置のダウンリンクに係る送信側の構成の一例を示す概略ブロック図である。同図に示すように、無線通信装置は、ダウンリンク(フォワードリンク)に係る構成として、制御局装置92と、光ファイバ96−1〜96−Nを介して接続されたリモート基地局としての無線モジュール97−1〜97−Nとを具備している。また、ここではOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)変調方式及びSC−FDE(Single Carrier Frequency Domain Equalization:周波数領域等化シングルキャリア伝送)方式を用いる場合を例にとり説明を行う。なお、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)方式は、物理レイヤにおける処理は基本的にOFDM変調方式を利用しているため、下記の説明ではOFDMとOFDMAは同等の方式として扱うことにする。
制御局装置92は、送信信号処理回路921、IFFT&GI付与回路922−1〜922−K、D/A(デジタル/アナログ)変換器923−1〜923−N、ローカル発振器924、ミキサ925−1〜925−N、フィルタ926−1〜926−N、E/O(Electrical/Optical:電気/光)変換器927−1〜927−N、チャネル情報取得回路941、チャネル情報記憶回路942、及び送信ウエイト算出回路943を備えている。
D/A変換器923−1〜923−N、ミキサ925−1〜925−N、フィルタ926−1〜926−N、及びE/O変換器927−1〜927−Nは、無線モジュール97−1〜97−Nに対応して設けられている。
無線モジュール97−1〜97−Nは、それぞれが同じ構成を有しており、O/E(Optical/Electrical:光/電気)変換器971−1〜971−N、ハイパワーアンプ(High Power Amplifier:HPA)972−1〜972−N、及びアンテナ素子973−1〜973−Nを備えている。
送信信号処理回路921は、MAC層側(上位の装置)から送信すべきデータが入力されると、入力されるデータに基づいて無線回線で送信する無線パケットを生成して変調処理を行う。更に、送信ウエイト算出回路943はチャネル情報記憶回路942に記憶されているチャネル情報を基に送信ウエイトを算出し、送信信号処理回路921は変調処理がなされたベースバンド信号に、送信ウエイト算出回路943が算出した送信ウエイトを乗算し、ベースバンドにおける送信信号のサンプリングデータを生成する。
また、送信信号処理回路921は、生成したサンプリングデータを各無線モジュール97−1〜97−Nにおいて送信する送信信号として、無線モジュール97−1〜97−Nに対応するD/A変換器923−1〜923−Nに出力する。
D/A変換器923−1〜923−Nは、それぞれが送信信号処理回路921から入力される送信信号(デジタル・サンプリングデータ)からベースバンドのアナログ信号に変換してミキサ925−1〜925−Nに出力する。
ミキサ925−1〜925−Nは、ローカル発振器924から入力される局部発振信号と、D/A変換器923−1〜923−Nから入力されるアナログ信号とを乗算して、無線周波数の信号にアップコンバートする。
ミキサ925−1〜925−Nがアップコンバートした信号には、送信すべきチャネルの帯域外の周波数成分の信号が含まれている。フィルタ926−1〜926−Nは、ミキサ925−1〜925−Nがアップコンバートした信号から、送信すべきチャネルの帯域外の成分を除去して、送信すべき電気的な信号を生成する。
E/O変換器927−1〜927−Nは、フィルタ926−1〜926−Nが生成した電気的な信号を光信号に変換し、光ファイバ96−1〜96−Nを介して無線モジュール97−1〜97−Nに送信する。無線モジュール97−1〜97−Nに送信する信号を、E/O変換器927−1〜927−Nを用いて光信号に変換することにより、信号のレベル損失やノイズ混入を防ぐことができる。
チャネル情報取得回路941は、無線モジュール97−1〜97−Nそれぞれと、不図示の端末装置との間の各周波数成分のチャネル情報を取得し、取得したチャネル情報をチャネル情報記憶回路942に記憶させる。
送信ウエイト算出回路943は、信号送信の都度、チャネル情報記憶回路942から読み出したチャネル情報に基づいて、各周波数成分の送信ウエイトを算出する。
各無線モジュール97−1〜97−Nにおいて、O/E変換器971−1〜971−Nは、制御局装置92から受信した光信号を電気信号に変換して、ハイパワーアンプ972−1〜972−Nに出力する。ハイパワーアンプ972−1〜972−Nは、O/E変換器971−1〜971−Nから出力された電気信号を増幅し、アンテナ素子973−1〜973−Nを介して不図示の端末装置に送信する。
ここで、無線通信装置の重要な特徴は、単一のローカル発振器924が出力する局部発振信号を各ミキサ925−1〜925−Nに入力している点である。単一のローカル発振器924から出力された局部発振信号を各ミキサ925−1〜925−Nにおいて用いることにより、各ミキサ925−1〜925−Nに入力される信号の相対的な位相関係は常に固定的(ほぼ同位相)になる。したがって、各無線モジュール97−1〜97−N間相互の位相の不確定性が回避されることから、受信側の端末装置で同位相合成となる送信ウエイト乗算処理が容易になる。
図29は、従来技術における無線通信装置による送信処理の一例を示すフローチャートである。無線通信装置において、チャネル情報取得回路941は、図27に示した手順で、送信処理とは別の機会に逐次、ダウンリンクのチャネル情報を取得し(ステップS928)、この取得されたチャネル情報はチャネル情報記憶回路942に記憶される(ステップS929)。
このダウンリンクのチャネル情報を取得及び記憶する処理は定期的に行われ、常に最新のチャネル情報がチャネル情報記憶回路942に記憶されている。
一方、各無線モジュール97−1〜97−Nから端末装置に向けての信号の送信に際して、無線通信装置は、送信処理を開始すると(ステップS921)、制御局装置92において送信信号処理回路921が各周波数成分の送信信号を生成する(ステップS922)。同時に、宛先局を指示してチャネル情報記憶回路942に記憶されているアンテナ素子973−1〜973−Nそれぞれと宛先局の端末装置との組み合わせに対応するチャネル情報の読出しを行い、送信ウエイト算出回路943にて送信ウエイトを算出する(ステップS930)。
また、送信信号処理回路921は、送信ウエイト算出回路943が算出した送信ウエイトを送信信号に周波数成分ごとに乗算する(ステップS923−1〜S923−N)。
また、送信信号処理回路921と、IFFT&GI付与回路922−1〜922−NからE/O変換器927−1〜927−Nとは、各周波数成分の信号の合成(IFFT処理)を含む各種送信信号処理を施して(ステップS924−1〜S924−N)、各無線モジュール97−1〜97−Nに光ファイバ96−1〜96−Nを介して転送する(ステップS925−1〜S925−N)。
各無線モジュール97−1〜97−Nは、制御局装置92から転送された信号を各アンテナ素子973−1〜973−Nを介して送信し(ステップS926−1〜S926−N)、送信処理を終了させる(ステップS927−1〜S927−N)。
以上の説明では、制御局装置92において、ステップS923−1〜S923−Nと、ステップS924−1〜S924−Nとの処理を行う場合について説明した。しかし、ステップS922で生成した送信信号を各無線モジュール97−1〜97−Nに転送し(ステップS925−1〜S925−Nに相当)、その後に、ステップS923−1〜S923−Nと、ステップS924−1〜S924−Nとの処理を行うようにしてもよい。すなわち、無線モジュール97−1〜97−Nにおいて、ステップS923−1〜S923−Nと、ステップS924−1〜S924−Nとの処理を行うようにしてもよい。ただし、この場合にはミキサ925−1〜925−Nに入力する局部発振信号の位相の不確定性を補償する工夫を別途行う必要があるため、相互に周波数誤差や複素位相の不確定性をもたない共通の局部発振信号をアップコンバートに利用することが基本的な構成となる。
(アップリンクにおける受信側の構成例)
図30は、従来技術における無線通信装置のアップリンクに係る受信側の構成の一例を示す概略ブロック図である。同図に示すように、無線通信装置は、アップリンク(バックワードリンク)に係る構成として、ダウンリンクに係る構成と同様に、制御局装置92と、光ファイバ96−1〜96−Nを介して接続されたリモート基地局としての無線モジュール97−1〜97−Nとを具備している。
制御局装置92は、図28に示した構成に加えて、O/E変換器931−1〜931−N、ミキサ932−1〜932−N、ローカル発振器933(ローカル発振器924と共用することも可能)、フィルタ934−1〜934−N、A/D(Analogue/Digital:アナログ/デジタル)変換器935−1〜935−N、FFT回路936−1〜936−N、チャネル情報推定回路937、受信ウエイト算出回路938、及び受信信号処理回路939を更に備えている。
無線モジュール97−1〜97−Nは、図28に示した構成に加えて、ローノイズアンプ(Low Noise Amplifier:LNA)974−1〜974−N、及びE/O変換器975−1〜975−Nを備えている。
各無線モジュール97−1〜97−Nにおいて、ローノイズアンプ974−1〜974−Nは、アンテナ素子973−1〜973−Nを介して受信した信号を増幅してE/O変換器975−1〜975−Nに出力する。
E/O変換器975−1〜975−Nは、ローノイズアンプ974−1〜974−Nから入力された電気的な信号を光信号に変換して、光ファイバ96−1〜96−Nを介して制御局装置92に送信する。
制御局装置92において、O/E変換器931−1〜931−Nは、無線モジュール97−1〜97−Nから受信した光信号を電気信号に変換してミキサ932−1〜932−2に出力する。
ミキサ932−1〜932−Nは、O/E変換器931−1〜931−Nから出力される電気信号と、ローカル発振器933から出力される局部発振信号とを乗算し、無線周波数の信号からベースバンドの信号にダウンコンバートする。
ミキサ932−1〜932−Nにおいてダウンコンバートされた信号には、受信すべきチャネルの帯域外の周波数成分も含まれる。そこで、フィルタ934−1〜934−Nは、ミキサ932−1〜932−Nにおいてダウンコンバートされた信号から、受信すべきチャネルの帯域外の周波数成分を除去する。
A/D変換器935−1〜935−Nは、フィルタ934−1〜934−Nにより帯域外の周波数成分が除去された信号を、デジタル・ベースバンド信号に変換してFFT回路936−1〜936−Nに出力する。FFT回路936−1〜936−Nは、A/D変換器935−1〜935−Nから入力されるデジタル・ベースバンド信号を周波数成分ごとに信号に分離する。この際、FFT回路936−1〜936−Nは、各周波数成分の信号に対して、OFDMシンボルごとにガードインターバルを除去し、残りのサンプリングデータに対してFFT処理を施し、時間軸上の信号を周波数軸上の信号に変換する。
FFT回路936−1〜936−Nにより変換された周波数軸上の信号は、受信信号処理回路939に集約され、ここで周波数成分ごとに所定の受信ウエイトが乗算され、更に合成される。受信信号処理回路939は、OFDM(A)変調方式が用いられている場合、信号に対してサブキャリアごとの復調処理を行い、SC−FDE方式が用いられている場合、各周波数成分の信号に対し周波数軸上での信号等化処理を施し、その信号をIFFT処理で合成した信号に対する復調処理を行う。これらの復調処理によって再生されたデータをMAC層側に出力する。
ここで、受信信号処理回路939で用いられる受信ウエイトは、上述の信号処理とは別の処理により取得する。具体的には、FFT回路936−1〜936−Nにより変換された周波数軸上の信号は、チャネル情報推定回路937にも出力される。
チャネル情報推定回路937は、入力されたデジタル・ベースバンド信号に含まれるチャネル推定用の信号に基づいて、各無線モジュール97−1〜97−Nそれぞれと端末装置との間のチャネル情報を周波数成分ごとに推定し、推定したチャネル情報を受信ウエイト算出回路938に出力する。
受信ウエイト算出回路938は、チャネル情報推定回路937から出力されたチャネル情報に基づいて、受信ウエイトを算出して受信信号処理回路939に出力する。
なお、ここでは信号受信時に取得するチャネル情報に基づいて受信ウエイトを算出することを明示するために、チャネル情報推定回路937及び受信ウエイト算出回路938を受信信号処理回路939と別に示した。しかし、受信信号処理回路939が、チャネル情報推定回路937及び受信ウエイト算出回路938を含む構成としてもよい。すなわち、チャネル情報推定回路937及び受信ウエイト算出回路938は、受信信号処理回路939の機能の一部とみなすことも可能である。なお、ここでは説明を省略したが、受信した信号のシンボルタイミングを検出する処理などその他の細かな機能も、チャネル情報推定回路937ないしは受信信号処理回路939などに含まれて、全体としての信号処理を実現している。
無線通信装置では、ダウンリンクに係る構成と同様に、一つのローカル発振器933から出力される局部発振信号を各ミキサ932−1〜932−Nに入力している。これにより、各ミキサ932−1〜932−Nに入力される局部発振信号の相対的な位相関係は常に固定的(ほぼ同位相)になる。ただし、アップリンクに係る構成に関して、ミキサ932−1〜932−Nにおいてダウンコンバートが行われた後の信号に対して、チャネル情報推定回路937がチャネル情報の推定を行うので、仮にローカル発振器933からの局部発振信号の位相関係が異なっていても、その影響を除去した受信信号処理を行うことは原理的には可能である。
なお、無線モジュール97−1〜97−Nごとに個別のローカル発振器を用いるような構成では、ローカル発振器ごとに周波数誤差が生じることを避けられないため、時間とともに無線モジュール97−1〜97−Nごとに独立で異なる位相の回転が加わり、その影響を除去することが困難となる。したがって、アップリンクに係る構成においても、相互に周波数誤差や複素位相の不確定性をもたない共通の局部発振信号をダウンコンバートに利用することが基本的な構成となる。
図31は、従来技術における無線通信装置による受信処理の一例を示すフローチャートである。同図に示す各ステップのうち、ステップS931−1〜S931−NからステップS934−1〜S934−Nの処理は、各無線モジュール97−1〜97−Nで受信した信号に対して個別に行われる処理である。これに対して、ステップS936〜S937の処理は、ステップS931−1〜S931−NからステップS934−1〜S934−Nの処理の結果を受信信号処理回路939に集約して行う処理である。
各無線モジュール97−1〜97−Nは信号を受信する(ステップS931−1〜S931−N)。ここでの受信とは、受信した信号(ないしはそれをダウンコンバートした信号)に対してアナログ/デジタル変換を施す処理まで含み、以降の信号処理はこれらのデジタル化された受信信号に対しする処理を意味する。すなわち、各無線モジュール97−1〜97−Nのアンテナ素子973−1〜973−Nにおいて受信された信号が制御局装置92に転送され、A/D変換器935−1〜935−Nによりデジタル化されるまでの処理を意味する。
制御局装置92において、FFT回路936−1〜936−Nは、無線モジュールにおいて受信された各信号を周波数成分ごとに分離するためにFFT処理を実施する(ステップS932−1〜932−N)。周波数成分毎に分離された信号は、チャネル情報推定回路937及び受信信号処理回路939に出力される。チャネル情報推定回路937は、各無線モジュール97−1〜97−Nの受信信号に含まれる無線パケットに付与されていた既知のパターンからなるプリアンブル信号に基づいて、周波数成分ごとにチャネル推定を実施する(ステップS933−1〜933−N)。すなわち、チャネル情報推定回路937は、周波数成分ごとに伝送路上での信号の減衰、及び複素位相の回転状態を把握し、信号の減衰及び複素位相の回転状態を示すチャネル情報を受信ウエイト算出回路938に出力する。
受信ウエイト算出回路938は、チャネル情報推定回路937から出力される無線モジュール97−1〜97−Nにおいて受信した信号に対する周波数成分ごとのチャネル情報に基づいて、各周波数成分の受信ウエイトを算出し(ステップS935)、更にこの算出された受信ウエイトを受信信号処理回路939に出力する。
一方、受信信号処理回路939は、受信ウエイト算出回路938が算出した受信ウエイトを、FFT回路936−1〜936−Nから入力されるデジタル・ベースバンド信号を各周波数成分に分離した信号に対し、周波数成分ごとに乗算し(ステップS934−1〜934−N)、各アンテナ素子に対する乗算結果を周波数成分ごとに加算合成し(ステップS936)、加算合成された信号に対して通常の受信信号処理を実施し(ステップS937)、処理を終了する(ステップS938)。
[フェーズドアレーアンテナ技術について]
なお、コヒーレント伝送と類似の技術として、多数のアンテナ素子を用いたフェーズドアレーアンテナ技術がある(例えば、非特許文献3)。
図32は、フェーズドアレーアンテナの原理を示す図である。同図には、5つのアンテナ素子961−1〜961−5が、互いに間隔dを隔てて直線状に配置されているフェーズドアレーアンテナが示されている。フェーズドアレーアンテナにおいてアンテナ素子961−1〜961−5の配列方向に対して角度θ方向の指向性を形成する場合、その方向に対してアンテナ素子961−1〜961−5ごとの経路長差がdCosθであることを考慮して、同位相合成するように各アンテナ素子961−1〜961−5を用いて送受信する信号それぞれに対して調整を行えばよい。
ここで、送受信する信号の波長がλである場合、隣接するアンテナ素子961−1〜961−5間で((2πdCosθ)/λ)ずつ位相をずらした信号を出力することにより、角度θ方向に対して指向性を形成することができる。この位相差((2πdCosθ)/λ)は、送受信する信号にアナログ的に移相器を用いて与えてもよいし、デジタル信号処理において与えてもよい。
フェーズドアレーアンテナでは、このようにして、所定の角度方向に対するアンテナ利得を稼ぐことができる。なお、一般には、指向性利得が最大となるメインローブ方向の周りに細かな利得のうねりを示すサブローブが生じるため、その影響を低減しメインローブを安定的に運用するために、アンテナ素子961−1〜961−5の間隔dをλ/2以下にする。
ただし、波長λに対しアンテナ素子961−1〜961−5間隔が短くなるにつれ、アンテナ素子961−1〜961−5同士の素子間結合や様々な要因により、単純な同位相合成の場合に比べ大幅に利得は低減する。この場合、個々のアンテナ素子961−1〜961−5から送受信される信号は、送受信点において独立な波として振幅を単純に加算できる波動と異なり、あたかも多数のアンテナ素子961−1〜961−5全体で一つの仮想的なアンテナ素子を構成し、その仮想的なアンテナ素子から一つの信号(波動)を送信するといった振る舞いとなる。この点で、単純な同位相合成が成り立つコヒーレント伝送とは異なる現象と見ることができる。
[マルチユーザMIMO技術について]
(マルチユーザMIMOの概要)
コヒーレント伝送や、フェーズドアレーアンテナ技術は、基本的に回線利得を改善する技術であり、広域のサービスエリアを一つの基地局でカバーする際の回線容量を増大させるためには、別の無線通信技術が必要となる。一方で周波数資源は限りがあるために、ここでは限られた資源を高い周波数利用効率で利用するための技術として、例えば非特許文献4にて検討されているマルチユーザMIMO技術について説明をする。
図33は、マルチユーザMIMOシステムの構成例を示す概略図である。同図に示すように、マルチユーザMIMOシステムは、基地局装置801と、端末装置802−1、802−2、802−3(端末装置#1〜#3)と具備している。実際に一つの基地局装置801が収容する端末装置802の数は多数であるが、そのうちの数局を選び出し(同図では端末装置802−1〜802−3)、通信を行う。各端末装置802は、基地局装置801と比較して送受信アンテナ数が一般に少ない。例えば、基地局装置801から端末装置802への通信(ダウンリンク)を行う場合について説明する。
基地局装置801は、多数のアンテナ素子を用いて複数の指向性ビームを形成する。例えば、各端末装置802−1〜803に対してそれぞれ3つのMIMOチャネルを割り当て、全体として9系統の信号系列を送信する場合を考える。その際、端末装置802−1に対して送信する信号は、端末装置802−2及び端末装置802−3方向には指向性利得が極端に低くなるように調整し、この結果として端末装置802−2及び端末装置802−3への干渉を抑制する。同様に、端末装置802−2に対して送信する信号は、端末装置802−1及び端末装置802−3方向には指向性利得が極端に低くなるように調整する。同様の処理を端末装置802−3にも施す。このように指向性制御を行う理由は、例えば端末装置802−1においては、端末装置802−2及び端末装置802−3で受信した信号の情報を知る術がないため、端末装置802間での協調的な受信処理ができない。つまり、3本しかない端末装置802−1のみの受信処理において、9系統の全ての信号系列を信号分離することは非常に厳しい。そこで、各端末装置802−1〜802−3には他の端末装置802の信号が受信されないように、送信側で干渉分離を事前に行う。
以上が既存のマルチユーザMIMOシステムの概要である。次に、指向性ビームの形成方法について、以下に説明を加える。ここでは、基地局装置801が9つのアンテナ素子を備え、各端末装置802−1〜802−3が3つのアンテナ素子を備える場合について説明する。例えば、図33において、基地局装置801の第j(j=1,…,9)のアンテナ素子と、端末装置802−1の第1のアンテナ素子との間のチャネル情報をh1jと表記する。基地局装置801の各アンテナ素子(j=1,…,9)と、端末装置802−1の第1のアンテナ素子とのチャネル情報を用いて行ベクトルhを(h11,h12,h13,…,h18,h19)と表記する。同様に、基地局装置801の第jのアンテナ素子と、端末装置802−1の第2のアンテナ素子及び第3のアンテナ素子との間のチャネル情報をh2j及びh3jと表記し、対応する行ベクトルh及びhを(h21,h22,h23,…,h28,h29)及び(h31,h32,h33,…,h38,h39)と表記する。端末装置802−2及び端末装置802−3のアンテナ素子に対して同様の連番をふり、行ベクトルh〜hを(h41,h42,h43,…,h48,h49)〜(h91,h92,h93,…,h98,h99)と表記する。
加えて、基地局装置801が送信する9系統の信号をt〜tと表記し、これを成分とする列ベクトルをTx[all]=(t,t,t,…,t,tと表記する。ここで、右肩のTの文字はベクトル、行列の転置を表す。また同様に、端末装置802−1〜80−3の9本のアンテナ素子での受信信号をr〜rと表記し、これを成分とする列ベクトルをRx[all]=(r,r,r,…,r,rと表記する。最後に、行ベクトルh〜hを第1から第9行成分とする行列を、全体チャネル情報行列H[all]と表記する。
この場合、マルチユーザMIMOシステム全体として、次式(1)の関係が成り立つ。
Figure 2013123161
これに対し送信指向性制御を行うため、9行9列の送信ウエイト行列Wを導入し、式(1)を次式(2)のように書き換える。
Figure 2013123161
更に、送信ウエイト行列Wを列ベクトルw〜wに分解し、W=(w,w,w,…,w,w)と表記すると、式(2)における「H[all]・W」を次式(3)のように表せる。
Figure 2013123161
ここで、例えば6つの行ベクトルh〜hと、3つの列ベクトルw〜wとの乗算(各成分の乗算したものの総和、複素ベクトルの場合は内積とは異なる)が全てゼロになるように、w〜wの値を選ぶことを考える。同時に、行ベクトルh〜h及びh〜hと列ベクトルw〜wとの乗算、行ベクトルh〜hと列ベクトルw〜wとの乗算が全てゼロになるように、w〜wの値を選ぶことにする。
すると、式(3)に示す9行9列の行列H[all]・Wは、3行3列の部分行列を用いて、次式(4)のように表すことができる。
Figure 2013123161
式(4)において、H[1]、H[2]、及びH[3]は3行3列の行列であり、「0」は成分が全てゼロの3行3列の行列である。このような条件を満たす変換行列を送信ウエイト行列Wに選択することで、式(4)は次式(5−1)〜式(5−3)で表される3つの関係式に分解できる。
Figure 2013123161
ここで、Tx[1]=(t,t,t、Tx[2]=(t,t,t、Tx[3]=(t,t,t、Rx[1]=(r,r,r、Rx[2]=(r,r,r、Rx[3]=(r,r,rとした。このようにして、一つの基地局が1対1でMIMO通信を行う、いわゆるシングルユーザMIMO通信が3系統、同時並行的に通信を行っている状態とみなすことができるようになる。
次に、送信ウエイトベクトルw〜wの決定方法の例を以下に説明する。手順としては、端末装置802−1に対する送信ウエイトベクトルw〜wを決定し、順次、端末装置802−2に対する送信ウエイトベクトルw〜w、端末装置802−3に対する送信ウエイトベクトルw〜wを決定する。
まず、第1ステップとして、端末装置802−2、802−3に対する6つの行ベクトルh〜hが張る6次元部分空間における6つの基底ベクトルe〜eを求める。求める方法は、グラムシュミットの直交化法の他、様々な方法があるが、ここでは例としてグラムシュミットの直交化法を例に説明する。
まず、一つの行ベクトルhに着目し、この方向で絶対値が1のベクトルを基底ベクトルeとする。基底ベクトルeは次式(6)として表される。
Figure 2013123161
式(6)における(h )は同一ベクトルの絶対値の2乗を意味するスカラー量であり、この値の平方根での除算は行ベクトルhを規格化することを意味する。また、「h 」は、行ベクトルhに対するエルミート共役ベクトルであり、行と列を転置し且つ各成分の複素共役を取ることで得られるベクトルである。
次に、行ベクトルhに着目し、この行ベクトルの中から基底ベクトルe方向の成分をキャンセルした行ベクトルh’を求めた後、更に規格化する。行ベクトルh’と基底ベクトルeとは、次式(7−1)及び式(7−2)で表される。
Figure 2013123161
式(7−2)における(h )は、行ベクトルhの基底ベクトルe方向への射影を意味する。同様の処理を次式(8−1)及び次式(8−2)のように行う。
Figure 2013123161
ここで、式(8−1)におけるΣの総和の範囲は、4≦i≦(j−1)(jは5〜9の整数)の整数iに対する総和となっている。つまり、既に確定した規定ベクトル方向の成分をキャンセルすることを意味する。このようにして、6つの基底ベクトルe〜eを求めることができる。
次に、第2ステップとして、端末装置802−1に対する送信ウエイトベクトルw〜wを求める。まず、行ベクトルh〜hから、基底ベクトルe〜eが張る6次元部分空間の成分をキャンセルする。具体的には、次式(9)で表される。
Figure 2013123161
ここで、式(9)におけるjは1〜3の整数であり、Σの総和の範囲は4≦i≦9の整数iに対する総和となっている。このようにして求めた行ベクトルh’〜h’の3つのベクトルが張る3次元空間は上述の行ベクトルh〜hのいずれとも直交している。この3次元空間内の3つのベクトル(必ずしも直交ベクトルである必然性はない)を選び、そのベクトルの複素共役ベクトルを送信ウエイトベクトルw〜wとして設定すれば、他の端末装置802−2、802−3への干渉を抑圧することができる。
なお、3つのベクトルの選び方は如何なる方法でも構わないが、例えば特異値分解を行って得られるユニタリー行列を構成する3つの直交ベクトルを用いれば、他の端末装置802に干渉を与えない部分空間内に限定された固有モード伝送が可能になり、効率的な伝送が可能になる。
最後に、第3ステップとして、これと同様の処理を端末装置802−2、端末装置802−3に対しても行えば、最終的に全体の送信ウエイトベクトルw〜wを求めることができる。
以上が送信ウエイト行列Wの求め方である。
図34は、マルチユーザMIMOシステムにおける送信ウエイト行列Wを算出する手順を示すフローチャートである。まず、送信ウエイト行列Wの算出にあたり、全ての端末装置802へのチャネル情報行列Hを取得する(ステップS801)。宛先とする端末装置802に対して通し番号を付与し、その通し番号を示す変数をkとした場合、まずkを初期化する(ステップS802)。更に、kをカウントアップし(ステップS803)、現在のkが示す値に対応する端末装置802(#1)に対する部分チャネル情報(ここでは便宜上、Hmainと表記する。)を抽出し(S804)、それ以外の宛先の端末装置802に対する部分チャネル情報行列(ここでは便宜上、Hsubと表記する。)を抽出する(ステップS805)。
更に、部分チャネル行列Hsubの各行ベクトルが張る部分空間の直交基底ベクトルを算出し、これを基底ベクトル{e}と置く(ステップS806)。次に、式(9)に相当する処理として、着目している端末装置802(#1)に対する部分チャネル情報行列HmainからステップS806において求めた基底ベクトル{e}に関する成分をキャンセルし、これを行列〜Hmainとする(ステップS807)。ここで、ステップS807において、「〜(チルダ)」が上に付されたHを「〜H」と表記する。以下、数式等においても同様に、「^(ハット)」などの記号が文字の上に付されている文字を表記する場合、当該記号を文字の前に表記する。
更に、行列〜Hmainの行ベクトルが張る部分空間の任意の直交基底ベクトルを算出し、これを基底ベクトル{e}とする(ステップS808)。ここで、任意の基底ベクトルとは、例えば行列〜Hmainを特異値分解した際の右特異行列を構成するベクトルなどを選んでもよい。その後、基底ベクトル{e}の各ベクトルのエルミート共役ベクトル(複素共役ベクトルを転置した列ベクトル)として、端末装置802(#1)の信号に関する送信ウエイトベクトル{w}を決定する(ステップS809)。
ここで、全ての宛先の端末装置802の送信ウエイトベクトルを決定済みか否かを判定し(ステップS810)、残りの端末装置802があれば、ステップS803からステップS809までの処理を繰り返す。全ての端末装置802の送信ウエイトベクトルを決定済みであれば、送信ウエイトベクトル{w}を各列ベクトルとする行列として送信ウエイト行列Wを決定し(ステップS811)、処理を終了する。
なお、チャネル情報は一般的には周波数成分ごとに異なるため、広帯域の信号、例えばOFDM変調方式を用いた信号であれば、周波数成分ごと、すなわちサブキャリアごとに同様の送信ウエイトを算出することになる。またここでは、端末装置802−1〜802−3がそれぞれアンテナを3素子ずつ備えている場合を例に取り説明したため、ステップS808にて〜Hmainの各行ベクトルが張る部分空間の直交基底ベクトルを算出する処理を含んでいたが、端末装置が1本のアンテナのみを備える場合には、ステップS808は単に〜Hmainに相当する行ベクトルを規格化することに対応する。
(マルチユーザMIMOの装置構成例)
図35は、マルチユーザMIMOシステムにおける基地局装置80の構成の一例を示す概略ブロック図である。同図に示すように、基地局装置80は、送信部81、受信部85、インタフェース回路87、MAC層処理回路88、及び通信制御回路820を備えている。MAC層処理回路88はスケジューリング処理回路881を有している。
基地局装置80は、インタフェース回路87を介して、外部機器ないしはネットワークとのデータの入出力を行う。インタフェース回路87は、入力されるデータのうち、無線回線上で転送すべきデータを検出し、検出したデータをMAC層処理回路88に出力する。MAC層処理回路88は、基地局装置80全体の動作の管理制御を行う通信制御回路820の指示に従い、MAC層に関する処理を行う。ここで、MAC層に関する処理には、インタフェース回路87で入出力されるデータと、無線回線上で送受信されるデータの変換、MAC層のヘッダ情報の付与などが含まれる。この処理の中で、スケジューリング処理回路881は、マルチユーザMIMO伝送において同時に空間多重を行う端末装置の組み合わせを含む各種スケジューリング処理を行う。スケジューリング処理回路881は、スケジューリング結果を通信制御回路820に出力する。
マルチユーザMIMOでは、複数の端末装置宛に一度に信号を送信するため、複数系統の信号系列がMAC層処理回路88から送信部81に出力される。
図36は、基地局装置80における送信部81の構成例を示す概略ブロック図である。同図に示すように、送信部81は、送信信号処理回路811−1〜811−L(Lは2以上の整数)と、加算合成回路812−1〜812−K(Kは2以上の整数)と、IFFT&GI付与回路813−1〜813−Kと、D/A変換器814−1〜814−Kと、ローカル発振器815と、ミキサ816−1〜816−Kと、フィルタ817−1〜817−Kと、ハイパワーアンプ(HPA)818−1〜818−Kと、アンテナ素子819−1〜819−Kと、送信ウエイト処理部830とを備えている。送信信号処理回路811−1〜811−Lと、送信ウエイト処理部830とは、図35において示した通信制御回路820に接続されている。
送信ウエイト処理部830は、チャネル情報取得回路831と、チャネル情報記憶回路832と、マルチユーザMIMO(MU−MIMO)送信ウエイト算出回路833とを備えている。
ここで、同図における送信信号処理回路811−1〜811−Lの添え字のLは、同時に空間多重を行う多重数を表す。また、加算合成回路812−1〜812−Kからアンテナ素子819−1〜819−Kまでの回路の添え字のKは、基地局装置80が備えるアンテナ系統数を表す。
マルチユーザMIMOでは、複数の端末装置宛に一度に信号を送信するため、複数系統の信号系列がMAC層処理回路88から送信部81に入力され、入力された複数系統の信号系列が送信信号処理回路811−1〜811−Lに入力される。送信信号処理回路811−1〜811−Lは、宛先の端末装置それぞれに送信すべきデータ(データ入力#1〜#L)がMAC層処理回路88から入力されると、無線回線で送信する無線パケットを生成して変調処理を行う。ここで、例えばOFDM変調方式を用いるのであれば、各信号系列の信号は周波数成分ごとに変調処理が行われる。更に、変調処理がなされたベースバンド信号に周波数成分ごとに送信ウエイトを乗算する。各アンテナ素子819−1〜819−Kに対応した送信ウエイトが乗算された信号は、必要に応じて残りの信号処理が施され、ベースバンドにおける送信信号のサンプリングデータとして加算合成回路812−1〜812−Kに入力される。
加算合成回路812−1〜812−Kに入力された信号は、周波数成分ごとに合成される。合成された信号は、IFFT&GI付与回路813−1〜813−Kにて周波数軸上の信号から時間軸上の信号に変換され、更にガードインターバルの挿入やOFDMシンボル間(SC−FDEであればブロック伝送のブロック間)の波形整形等の処理が行われ、アンテナ素子819−1〜819−Kごとに、D/A変換器814−1〜814−Kでデジタル・サンプリングデータからベースバンドのアナログ信号に変換される。更に、各アナログ信号は、ローカル発振器815から入力される局部発振信号と、ミキサ816−1〜816−Kで乗算され、無線周波数の信号にアップコンバートされる。ここで、アップコンバートされた信号には、送信すべきチャネルの帯域外の周波数成分に信号が含まれるため、フィルタ817−1〜817−Kで帯域外の周波数成分を除去し、送信すべき電気的な信号を生成する。生成された信号は、ハイパワーアンプ818−1〜818−Kで増幅され、アンテナ素子819−1〜819−Kより送信される。
なお、図36では、各周波数成分の信号の加算合成を加算合成回路812−1〜812−Kで実施した後に、IFFT処理、ガードインターバルの挿入、波形整形等の処理を行っているが、送信信号処理回路811−1〜811−Lにてこれらの処理を行い、IFFT&GI付与回路813−1〜813−Kを省略する構成としてもよい。この場合、送信信号処理回路811−1〜811−Lにおける送信ウエイト乗算後の必要に応じた残りの信号処理とは、IFFT処理、ガードインターバルの挿入、波形整形等の処理をさす。
なお、送信信号処理回路811−1〜811−Lで乗算される送信ウエイトは、信号送信処理時に、送信ウエイト処理部830に備えられているマルチユーザMIMO送信ウエイト算出回路833より取得する。送信ウエイト処理部830では、チャネル情報取得回路831で別途チャネル情報を取得しておき、これを逐次更新しながら、チャネル情報記憶回路832に記憶する。信号の送信時にマルチユーザMIMO送信ウエイト算出回路833は、宛先局に対応したチャネル情報をチャネル情報記憶回路832から読み出し、読み出したチャネル情報を基に送信ウエイトを算出する。マルチユーザMIMO送信ウエイト算出回路833は、算出した送信ウエイトを送信信号処理回路811−1〜811−Lに出力する。
また、宛先局の管理や、全体のタイミング制御など、全体の通信に係る制御を通信制御回路820が管理する。上述の送信ウエイトの算出に係る信号処理を行う送信ウエイト処理部830に対し、通信制御回路820は宛先局等を示す情報を出力する。
図37は、マルチユーザMIMOシステムにおける基地局装置80における受信部85の構成の一例を示す概略ブロック図である。同図に示すように、基地局装置80は、アンテナ素子851−1〜851−Kと、ローノイズアンプ(LNA)852−1〜852−Kと、ローカル発振器853と、ミキサ854−1〜854−Kと、フィルタ855−1〜855−Kと、A/D変換器856−1〜856−Kと、FFT回路857−1〜857−Kと、受信信号処理回路858−1〜858−Lと、受信ウエイト処理部860とを備えている。受信信号処理回路858−1〜858−Lと、受信ウエイト処理部860とは、図35において示した通信制御回路820に接続されている。
受信ウエイト処理部860は、チャネル情報推定回路861と、マルチユーザMIMO(MU−MIMO)受信ウエイト算出回路862とを備えている。
アンテナ素子851−1〜851−Kで受信した信号をローノイズアンプ852−1〜852−Kで増幅する。増幅された信号とローカル発振器853から出力される局部発振信号とがミキサ854−1〜854−Kで乗算され、増幅された信号は無線周波数の信号からベースバンドの信号にダウンコンバートされる。ダウンコンバートされた信号には、受信すべき周波数帯域外の周波数成分も含まれるため、フィルタ855−1〜855−Kで帯域外成分を除去する。帯域外成分が除去された信号は、A/D変換器856−1〜856−Kでデジタル・ベースバンド信号に変換される。デジタル・ベースバンド信号は全てFFT回路857−1〜857−Kに入力され、所定のシンボルタイミングで時間軸上の信号を周波数軸上の信号に変換(各周波数成分の信号に分離)する。この各周波数成分に分離された信号は、受信信号処理回路858−1〜858−Lに入力されるとともに、チャネル情報推定回路861にも入力される。
チャネル情報推定回路861では、各周波数成分に分離されたチャネル推定用の既知の信号(無線パケットの先頭に付与されるプリアンブル信号等)を基に各端末装置のアンテナ素子と、基地局装置の各アンテナ素子851−1〜851−Kとの間のチャネル情報を周波数成分ごとに推定し、その推定結果をマルチユーザMIMO受信ウエイト算出回路862に出力する。マルチユーザMIMO受信ウエイト算出回路862では、入力されたチャネル情報を基に乗算すべき受信ウエイトを周波数成分ごとに算出する。この際、各アンテナ素子851−1〜851−Kで受信された信号を合成する受信ウエイトは、信号系列ごとに異なり、抽出すべき信号系列に対応する受信信号処理回路858−1〜858−Lそれぞれに入力される。
受信信号処理回路858−1〜858−Lでは、FFT回路857−1〜847−Kから入力された周波数成分ごとの信号に対し、マルチユーザMIMO受信ウエイト算出回路862から入力された受信ウエイトを乗算し、各アンテナ素子851−1〜851−Kで受信された信号を周波数成分ごとに加算合成する。受信信号処理回路858−1〜858−Lは、加算合成した信号に対して復調処理を施し、再生されたデータをMAC層処理回路88に出力する。
ここで、異なる受信信号処理回路858−1〜858−Lでは、異なる信号系列の信号処理が行われる。また、MAC層処理回路88は、MAC層に関する処理(例えば、インタフェース回路87に対して入出力するデータと、無線回線上で送受信されるデータとの変換、MAC層のヘッダ情報の終端など)を行う。この処理の中でスケジューリング処理回路881は、マルチユーザMIMO伝送において同時に空間多重を行う端末装置の組み合わせを含む各種スケジューリング処理を行い、スケジューリング結果を通信制御回路820に出力する。MAC層処理回路88にて処理された受信データは、インタフェース回路87を介して外部機器ないしはネットワークに出力される。
また、送信元の端末装置の管理や、全体のタイミング制御など、全体の通信に係る制御を通信制御回路820が管理する。また、上述の受信ウエイトの算出に係る信号処理を行う受信ウエイト処理部860に対し、通信制御回路820から送信元の端末装置等を示す情報が入力される。
なお、信号受信に関しても送信の場合と同様に、OFDM変調方式ないしはSC−FDE方式を用いた広帯域のシステムでは、上述の受信ウエイトの乗算は周波数成分ごとに行われる。つまりA/D変換器856−1〜856−Kから出力される信号に対し、FFT回路857−1〜857−KでFFTを行い各周波数成分に分離し、分離した周波数成分ごとに、チャネル情報推定回路861での信号処理、及び、受信信号処理回路858−1〜858−Lでの受信信号処理が実施されることになる。
(マルチユーザMIMOの送信処理)
図38は、マルチユーザMIMOにおける基地局装置80の送信処理を示すフローチャートである。マルチユーザMIMOでは、データの送信とは別に行うダウンリンクのチャネル情報のフィードバックが定期的になされている。チャネル情報取得回路831はダウンリンクにおけるチャネル情報を取得すると(ステップS831)、端末装置ごとに各周波数成分のチャネル情報をチャネル情報記憶回路832に記憶させる(ステップS832)。ステップS831及びステップS832の処理は、逐次行われる。
基地局装置80からの信号送信処理が開始されると(ステップS821)、マルチユーザMIMO送信ウエイト算出回路833は、宛先である端末装置に対応する各周波数成分のチャネル情報をチャネル情報記憶回路832から読み出す(ステップS822)。
マルチユーザMIMO送信ウエイト算出回路833は、読み出したチャネル情報を基に、先に示した処理によりマルチユーザMIMO用の送信ウエイトを周波数成分ごとに算出する(ステップS823)。ステップS822及びステップS823の処理とは別に、送信信号処理回路811−1〜811−Lは、宛先ごとの送信すべきデータに対し、各種変調処理等の送信信号処理により、宛先局ごとに各周波数成分の送信信号を生成する(ステップS824)。
送信信号処理回路811−1〜811−Lは、生成した送信信号に、ステップS823においてマルチユーザMIMO送信ウエイト算出回路833が算出した送信ウエイトを乗算する(ステップS825)。また、送信信号処理回路811−1〜811−Lは一連の信号処理を施し、加算合成回路812−1〜812−Lはアンテナ素子819−1〜819−Lごとに各周波数成分の各端末装置宛の送信信号に対する加算合成を行い、更にIFFT&GI付与回路813−1〜813−Kにて周波数軸上の信号から時間軸上の信号に変換され、更にガードインターバルの挿入やOFDMシンボル間(SC−FDEであればブロック伝送のブロック間)の波形整形等の処理を行い、D/A変換器814−1〜814−Kに出力する(ステップS826−1〜S826−K)。IFFT&GI付与回路813−1〜813−Kから出力された信号は、D/A変換器814−1〜814−Kからハイパワーアンプ818−1〜818−Kにおける信号処理が施され、アンテナ素子819−1〜819−Kそれぞれから送信され(ステップS827−1〜S827−K)、処理を終了する(ステップS828−1〜S828−K)。
なお、ステップS827−1〜S827−Kにおける処理は、ベースバンド信号から無線周波数へのアップコンバート処理、フィルタによる帯域が周波数成分の除去、ハイパワーアンプによる信号の増幅などを含む。
(マルチユーザMIMOの受信処理)
図39は、マルチユーザMIMOにおける基地局装置80の受信処理を示すフローチャートである。まず、第1から第Kのアンテナ素子851−1〜851−Kにて信号を受信する(ステップS841−1〜S841−K)。ここでの受信とは、受信した信号ないしそれをダウンコンバートした信号に対し、アナログ/デジタル変換を施す処理までを含む。以降の信号処理は、デジタル化された受信信号に対する処理を意味する。
続いて、各アンテナ素子851−1〜851−Kに対応する受信信号に対し、FFT回路857−1〜857−Kによる各周波数成分への分離等の信号処理を行う(ステップS841−1〜S842−K)。更に、チャネル情報推定回路861は、無線パケットに付与されていた既知のパターンのプリアンブル信号の受信状態より、各周波数成分のチャネル推定を実施する(ステップS843−1〜S843−K)。ここで、伝搬路上での信号の減衰、及び複素位相の回転状態を把握する。このステップS843−1〜S843−Kで行うチャネル推定では、ステップS843−1、S843−2、・・・、S843−Kを個別に示した通り、空間多重される信号系列ごとに個別にチャネル推定を行う必要がある。この個別のチャネル推定とは、送信元の端末装置それぞれから送信された信号を分離可能な状態で行う必要がある。OFDM変調方式を例にとれば、一般的には空間多重数と同数のシンボル数のチャネル推定用のプリアンブル信号が必要となる。各端末装置は空間多重数と同数のシンボル数(ないしはそれ以上)で且つそれぞれが異なるパターンのプリアンブル信号を付与して信号送信を行い、基地局装置80はそのパターンの違いを利用して、ステップS843−1〜S843−Kにて個別のチャネル推定を行うことになる。
マルチユーザMIMO受信ウエイト算出回路862は、チャネル情報推定回路861が推定したチャネル情報を用いて、空間多重された信号系列ごと及び周波数成分ごとに個別の適切な受信ウエイトを算出する(ステップS844)。更に、受信信号処理回路858−1〜858−Lは、信号系列ごと及び周波数成分ごとに算出された受信ウエイトを、周波数成分ごとに分離された各アンテナ素子の受信信号に乗算する(ステップS845−1〜S845−K)。
ここで、受信ウエイトは、空間多重された信号系列ごとに用意されているため、ステップS845−1〜845−Lにおける乗算結果は、空間多重された信号系列ごとに別々の結果となる。それぞれの信号系列の信号は、各アンテナ素子851−1〜851−Kの信号が周波数成分ごとに加算合成され(ステップS846−1〜846−L)、合成された信号系列に対して、第1信号系列の信号処理(ステップS847−1)から第L信号系列の信号処理(ステップS847−L)までの処理が行われ、処理を終了する(ステップS848−1〜S848−L)。
なお、ここでは簡単のために線形の受信ウエイトを用いる場合の例を示したが、一般にはMIMOに関してはMLD(Maximum Likelihood Detection)等の非線形の信号処理を行うようにしてもよい。この場合、ステップS845−1〜S845−L、ステップS846−1〜846−L、及びステップS847−1〜847−Lにおける処理は、一体として非線形の信号検出処理が行われることになる。また、線形の受信ウエイトの算出に関しては、図34に示した送信ウエイトの算出処理と同様の手法で算出することが可能である。その他にも、擬似逆行列を利用した受信ウエイトや、MMSEウエイトを利用することも可能である。なお、ここでは、受信に用いるアンテナ素子851−1〜851−Kの数Kに対し、空間多重された信号系列数がLとして説明をしたが、一般的にはKとLとは一致する必要はなく、Lの値がKの値以下であれば多数の信号系列の信号を空間多重することができる。
以上説明を行ったが、マルチユーザMIMOの典型的な特徴は、アップリンクにおける基地局装置80での受信処理において送信側と受信側との間のチャネル情報を基に、受信の都度、受信ウエイトを算出する点(ステップS844)、及び、ダウンリンクにおける送信処理において最新のチャネル情報を読み出し(ステップS822)、読み出したチャネル情報を基に送信ウエイトを算出する点(ステップS823)にある。つまり、送信ウエイト及び受信ウエイトの算出は、送信ないし受信の都度行う点にある。これは、チャネルの時変動に起因したものであり、良好なチャネル推定精度を得るためには周期的にチャネル情報のフィードバック処理をする必要がある。チャネルのフィードバック周期を短く設定するに従い、チャネルフィードバックのための制御情報の送受信が必要になりオーバーヘッドは増大する。更に、基地局において空間多重された信号を受信する際には複数の端末装置のチャネル推定をそれぞれ個別に行う必要があり、そのために所望の数の直交したプリアンブルが必要となる。一般的には、プリアンブル信号のパターンそのものが直交していることが好ましいが、そのようなパターンを設定できなければ、空間多重数と同数のシンボル数のオーバーヘッドが必要であり、空間多重数の増大に従ってそのオーバーヘッドも増大する。
原晋介他、「コヒーレント送信による消費電力の削減」、電子情報通信学会ソサイエティ大会BS−3−1、2009年9月 松田大輝他、「最大比送信を用いる分散アンテナシステムのチャネル容量に関する一検討」、信学技法RCS2007−196、pp.61−66、2008年2月 築地武彦著、「電波・アンテナ工学入門」、総合電子出版社、pp.166−168、2002年3月 鷹取泰司他、「次世代高速無線アクセスシステムへの下りリンクマルチユーザMIMO技術の適用」電子情報通信学会論文誌 B、通信 J93−B(9)、 pp1127−1139、2010年09月
上述したコヒーレント伝送及び分散アンテナシステムでは、チャネル情報が送信側で既知である必要がある。この条件に対して、実際のシステムでは、以下の課題が発生する。
(課題1)
例えば、100局の無線モジュールを利用して20[dB]の回線利得を稼ぐ場合について考える。通信において、20[dB]の回線利得改善を前提として無線通信装置等の回路を設計するため、一つの無線モジュールと端末装置との間のチャネル推定を行う際には、通信時に比べて20[dB]劣化した環境でチャネル推定を行わなければならない。例えば、実際の通信における所要SNRが10[dB]であったとすると、チャネル推定は−10[dB]という雑音が支配的な環境で実施しなければならない。しかし、このような雑音が支配的な環境では、推定した極めて不確かなチャネル情報から送信ウエイトを求めても同位相合成を実現することはできない。
なお、分散アンテナシステムは、図26に示したように、複数のセルがオーバーラップする領域に存在する端末装置を想定している。すなわち、分散アンテナシステムで送受信に関与するリモート基地局は地理的に端末装置に比較的近接する数局のみであり、その結果低SNRとはならず、そもそも上述のチャネル推定精度の問題は発生していなかった。また、複数の中継局を利用したコヒーレント伝送が記載されている非特許文献1では、その「まとめ」の章においても記載があるように、チャネル情報の推定法を含む各種制御の達成方法についてはこの文献内で「あえて言及しないこと」を明言している。すなわち、著者は現時点ではコヒーレント伝送の実現は困難であるとの認識であり、非特許文献1ではこれらの数々の課題を解決できさえすれば有益な効果が得られる可能性があるという主張を行っていると推察される。このように従来技術では、コヒーレント伝送に必要な超低SNR領域でのチャネル情報のフィードバックを行うための方法が確立されていない。
(課題2)
都市部のように自動車の往来が常に絶えない環境を想定すると、チャネルの状況は時間とともに変動する。仮にチャネル推定精度が所望のレベルにありチャネルのフィードバックが可能な場合であっても、チャネルのフィードバックに要するオーバーヘッドによる伝送効率の低下を考慮すれば、チャネルをフィードバックする周期は比較的長めに設定する必要があり、この結果、実際の送受信時刻よりも過去のチャネル情報を基にした送受信ウエイトを利用することになる。しかし、チャネルの時変動により最適な送受信ウエイトは変化するため、期待する回線利得は得られないことがあり、通信が不安定化してしまうという問題がある。
以上説明したように、複数の無線モジュール又は複数のアンテナ素子を介したコヒーレント伝送を行うためには、上記の「受信電力が低い環境ではチャネル情報の精度が低くなること」(課題1)、「チャネルの時変動に起因して通信が不安定化してしまうこと」(課題2)を解決し、受信側としての端末装置において同位相で信号が合成されるように、各無線モジュール又は各アンテナ素子から送信する信号を調整するための新たな技術が求められることになる。また、送信側と同様に、各無線モジュール又は各アンテナ素子で受信した信号に対する受信信号処理においても、全く同様の課題が存在する。
(課題3)
上記の課題が解決できる状況であったとしても、20[dB]などの高い回線利得を稼ぐことが可能である場合、非常に広域のエリアを一括してサービスエリアとすることができるようになるため、広域のエリア内に位置する多数の端末装置で周波数資源を共用しなければならない。エリアが広くなり周波数資源を共用する端末装置数が増えると、1台の端末装置あたりのスループットが結果的に低下する。端末装置あたりのスループットを所定の値以上にするには、システム全体におけるスループットを高める必要がある。しかし、周波数資源は限られているため、通信に利用する周波数帯域を広げることはできない。つまり、周波数利用効率を高めることで、1台の端末装置あたりのスループットを向上させる必要がある。
(課題3)に対しては、マルチユーザMIMO技術が有効であるが、大幅なスループットの増大のためには空間多重数を膨大にする必要があり、このために様々な課題が新たに生じる。
例えば、超多数(例えば、100本)のアンテナ素子を用いたマルチユーザMIMO伝送では、送信ウエイト及び受信ウエイトの算出において、「総送信アンテナ素子数」×「総受信アンテナ素子数」の行列を扱うことになり、この行列のサイズの増加に合わせてデータの送受信ごとに求められる送信ウエイト及び受信ウエイトの算出に対する影響が大きくなる。一般に、逆行列算出や特異値分解等の演算処理量(具体的には、回路として構成する際に加算回路に比べて乗算回路は回路規模が大きくなるため、乗算回数ないし除算回数を基準として評価される)は、行列サイズの3乗に比例して増加するといわれている。一般的に想定されるマルチユーザMIMOに用いられるアンテナ素子数に対して1桁以上多いアンテナ素子の数を用いる場合、要求される演算量は1000倍以上になってしまう。また、チャネルが時変動する環境であれば、データの送受信ごとに送信ウエイト又は受信ウエイトを算出する必要があるので、逐次、演算負荷による影響は著しく大きくなる。すなわち、送信ウエイト及び受信ウエイトの算出に要する時間が長くなり、空間多重化を効率よく行うことが困難になってしまうという問題がある。
更に、マルチユーザMIMO伝送で超多数の信号を空間多重する場合には、少なくともアップリンクにおいて、空間多重した信号を分離した上で、受信側で個別のパスのチャネル推定が必要となる。このようなチャネル推定を行うためには、少なくとも空間多重数の直交したプリアンブル信号が必要となる。一般的には、プリアンブル信号のパターンそのものが直交していることが好ましいが、そのようなパターンを設定できなければ、空間多重数と同数のシンボル数のオーバーヘッドが必要となる。これはMACレイヤの効率を低下させることとなり、周波数利用効率を低くしてしまうことになる。
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、受信側の装置において複数の信号を合成する際の位相の同期精度を高めつつ、周波数利用効率を向上させる基地局装置、無線通信方法、及び無線通信システムを提供することにある。
上記問題を解決するために、本発明は、複数のアンテナ素子を備えた基地局装置と、該基地局装置と無線通信を行う複数の端末装置を具備し、前記基地局装置と少なくとも2つの前記端末装置とが同一周波数成分上で同一時刻に空間多重伝送を行うことが可能な無線通信システムにおける基地局装置であって、前記端末装置ごとに、該端末装置から受信したトレーニング信号に基づいて、該端末装置と複数の前記アンテナ素子それぞれとの間のアップリンクにおける各周波数成分のチャネル情報を取得するチャネル情報取得部と、前記端末装置ごとに、前記アンテナ素子に対応する各周波数成分のチャネル情報の複素位相を基に算出される複素位相を基準として、個々の前記アンテナ素子それぞれに対応する各周波数成分のチャネル情報の複素位相から前記基準とした各周波数成分のチャネル情報の複素位相を補正した相対的なチャネル情報を算出する相対成分取得部と、前記端末装置ごとに、前記相対成分取得部が複数回に亘って算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分のチャネル情報から得られる物理量の平均値を算出し、該平均値に基づいて、前記端末装置ごとに、複数の前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための受信ウエイトを算出する受信ウエイト演算部と、前記アンテナ素子ごとに、該アンテナ素子を介して前記端末装置から受信した受信信号を周波数成分ごとに分離し、データの送信元として選択された前記端末装置ごとに、該端末装置に対応し前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における受信ウエイトと、前記周波数成分ごとに分離した受信信号とを乗算し、前記受信ウエイトが乗算された受信信号を複数の前記アンテナ素子に亘り周波数成分ごとに加算合成して受信処理を行う受信信号処理部とを備えることを特徴とする基地局装置である。
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記受信ウエイト演算部は、前記端末装置ごとに、前記相対成分取得部が複数回に亘って算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分の相対的なチャネル情報の平均値を算出するチャネル情報平均部と、前記端末装置ごとに、前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための受信ウエイトを、前記相対的なチャネル情報の平均値から算出する受信ウエイト算出部とを有していることを特徴とする。
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記アンテナ素子ごとに、該アンテナ素子と前記端末装置との間のアップリンクにおけるチャネル情報からダウンリンクにおけるチャネル情報を算出する際に用いるキャリブレーション係数を周波数成分ごとに記憶しているキャリブレーション係数記憶部と、前記チャネル情報平均部が前記端末装置ごとに算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分の相対的なチャネル情報の平均値に、前記アンテナ素子及び周波数成分の組み合わせに対応するキャリブレーション係数を乗じてダウンリンクにおけるチャネル情報を算出するダウンリンクチャネル情報算出部と、前記端末装置ごとに、前記ダウンリンクチャネル情報算出部が算出したダウンリンクにおける前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分のチャネル情報から、前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための送信ウエイトを算出する送信ウエイト算出部と、前記端末装置と、前記送信ウエイト算出部が算出した送信ウエイトとを対応付けて記憶する送信ウエイト記憶部と、データの送信先として選択された前記端末装置ごとに、該端末装置に送信する送信信号を周波数成分ごとの信号に分離し、前記選択された端末装置に対応する送信ウエイトを前記送信ウエイト記憶部から読み出し、分離した信号それぞれに対し周波数成分ごとの前記読み出した送信ウエイトを乗じ、宛先となる複数の前記端末装置に対する該信号を前記アンテナ素子ごとに合成し、該合成された信号を前記選択された端末装置に対して前記アンテナ素子それぞれから同時に送信する送信信号処理部とを更に備えていることを特徴とする。
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記受信ウエイト演算部は、前記端末装置ごとに、前記相対成分取得部が算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分の相対的なチャネル情報から、複数の前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための仮受信ウエイトを算出する仮受信ウエイト算出部と、前記仮受信ウエイト算出部が複数回に亘って算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における仮受信ウエイトの平均値を、前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための受信ウエイトとして算出する受信ウエイト平均部とを有していることを特徴とする。
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記アンテナ素子ごとに、該アンテナ素子と前記端末装置との間のアップリンクにおけるチャネル情報からダウンリンクにおけるチャネル情報を算出する際に用いるキャリブレーション係数を周波数成分ごとに記憶しているキャリブレーション係数記憶部と、前記相対成分取得部が算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分の相対的なチャネル情報に、前記アンテナ素子及び周波数成分の組み合わせに対応するキャリブレーション係数を乗じてダウンリンクにおけるチャネル情報を算出するダウンリンクチャネル情報算出部と、前記端末装置ごとに、前記ダウンリンクチャネル情報算出部が算出したダウンリンクにおける前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分のチャネル情報から、前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための仮送信ウエイトを算出する仮送信ウエイト算出部と、前記仮送信ウエイト算出部が複数回に亘って算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における仮送信ウエイトの平均値を、前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための送信ウエイトとして算出する送信ウエイト平均部とを更に備えていることを特徴とする。
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記端末装置は、複数の周期に亘るトレーニング信号を送信し、前記チャネル情報取得部は、前記アンテナ素子ごとに、前記トレーニング信号を周期ごとに分離して、分離した前記トレーニング信号を複数周期に亘り合成し、合成したトレーニング信号に基づいて前記アップリンクにおける各周波数成分のチャネル情報を取得することを特徴とする。
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記受信信号処理部が前記受信信号を周波数成分ごとの信号に分離するFFT処理における、ポイント数をNとし、サンプリング周期をΔtとし、前記受信信号に含まれるシンボルの周期をT(=N×Δt)とし、自装置においてダウンコンバートに用いる第1の局部発振信号と、前記端末装置においてアップコンバートに用いる第2の局部発振信号との周波数誤差をΔfとした場合、前記チャネル情報取得部は、受信した信号から複数のシンボル周期だけ連続したトレーニング信号を抽出し、前記トレーニング信号に対して前記周期TのM0倍(M0は2以上の整数)の期間に亘ってサンプリングデータを取得し、前記サンプリングデータにおいて第m’番目のサンプリングデータのm’をポイント数Nで除算した際の剰余mと商Mとを用いてS(M) と表記した場合に、前記サンプリングデータそれぞれに係数Exp(−2πjΔf・Δt・[M×N+m])を乗算した値をmの示す値ごとに加算平均化した値である式(A1)で表される値と、該値の複素共役との積の和である式(A2)で表される値を算出し、式(A2)を最大にする周波数誤差Δfを算出し、
Figure 2013123161
前記式(A1)に、前記算出した周波数誤差Δfを代入して得られる値に対してFFT処理をして得られた値に基づいて、前記各周波数成分のチャネル情報を算出することを特徴とする。
また、本発明は、上記に記載の発明において、各周波数成分において、アップリンクにおける各チャネル情報と、ダウンリンクにおける各チャネル情報とにおける複素位相の回転量の相対的な関係が前記複数のアンテナ素子間で一定である場合、前記送信信号処理部は、前記キャリブレーション係数が複数のアンテナ素子及び周波数成分で1とみなして処理を行うことを特徴とする。
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記端末装置から受信した受信信号に含まれるチャネル推定用信号は、複数の前記端末装置で共通のチャネル推定用信号であることを特徴とする。
また、上記問題を解決するために、本発明は、複数のアンテナ素子を備えた基地局装置と、該基地局装置と無線通信を行う複数の端末装置を具備し、前記基地局装置と少なくとも2つの前記端末装置とが同一周波数成分上で同一時刻に空間多重伝送を行うことが可能な無線通信システムにおける無線通信方法であって、前記端末装置ごとに、該端末装置から受信したトレーニング信号に基づいて、該端末装置と複数の前記アンテナ素子それぞれとの間のアップリンクにおける各周波数成分のチャネル情報を取得するチャネル情報取得ステップと、前記端末装置ごとに、前記アンテナ素子に対応する各周波数成分のチャネル情報の複素位相を基に算出される複素位相を基準として、個々の前記アンテナ素子それぞれに対応する各周波数成分のチャネル情報の複素位相から前記基準とした各周波数成分のチャネル情報の複素位相を補正した相対的なチャネル情報を算出する相対成分取得ステップと、前記端末装置ごとに、前記相対成分取得部が複数回に亘って算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分のチャネル情報から得られる物理量の平均値を算出し、該平均値に基づいて、前記端末装置ごとに、複数の前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための受信ウエイトを算出する受信ウエイト演算ステップと、前記アンテナ素子ごとに、該アンテナ素子を介して前記端末装置から受信した受信信号を周波数成分ごとに分離し、データの送信元として選択された前記端末装置ごとに、該端末装置に対応し前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における受信ウエイトと、前記周波数成分ごとに分離した受信信号とを乗算し、前記受信ウエイトが乗算された受信信号を複数の前記アンテナ素子に亘り周波数成分ごとに加算合成して受信処理を行う受信信号処理ステップとを有することを特徴とする無線通信方法である。
また、上記問題を解決するために、本発明は、複数のアンテナ素子を備えた基地局装置と、該基地局装置と無線通信を行う複数の端末装置を具備し、前記基地局装置と少なくとも2つの前記端末装置とが同一周波数成分上で同一時刻に空間多重伝送を行うことが可能な無線通信システムであって、前記基地局装置は、前記端末装置ごとに、該端末装置から受信したトレーニング信号に基づいて、該端末装置と複数の前記アンテナ素子それぞれとの間のアップリンクにおける各周波数成分のチャネル情報を取得するチャネル情報取得部と、前記端末装置ごとに、前記アンテナ素子に対応する各周波数成分のチャネル情報の複素位相を基に算出される複素位相を基準として、個々の前記アンテナ素子それぞれに対応する各周波数成分のチャネル情報の複素位相から前記基準とした各周波数成分のチャネル情報の複素位相を補正した相対的なチャネル情報を算出する相対成分取得部と、前記端末装置ごとに、前記相対成分取得部が複数回に亘って算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分のチャネル情報から得られる物理量の平均値を算出し、該平均値に基づいて、前記端末装置ごとに、複数の前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための受信ウエイトを算出する受信ウエイト演算部と、前記アンテナ素子ごとに、該アンテナ素子を介して前記端末装置から受信した受信信号を周波数成分ごとに分離し、データの送信元として選択された前記端末装置ごとに、該端末装置に対応し前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における受信ウエイトと、前記周波数成分ごとに分離した受信信号とを乗算し、前記受信ウエイトが乗算された受信信号を複数の前記アンテナ素子に亘り周波数成分ごとに加算合成して受信処理を行う受信信号処理部とを備えることを特徴とする無線通信システムである。
この発明によれば、実際のデータ通信に先行して、所定のトレーニング信号を受信することでチャネル情報を取得し、更に時間的に異なるタイミングで複数回に亘り取得されたチャネル情報の相対成分ないしは相対成分から算出される受信ウエイト等の物理量を平均化し、その平均化の結果得られた情報を基に実際のデータ通信で用いる固定的な受信ウエイトを事前に算出し、この受信ウエイトを用いて受信処理を行う。これにより、基地局装置は複数のアンテナ素子で受信した信号を合成する際の同位相合成の同期精度を高め、多少のチャネル時変動が伴う環境でも時変動の影響を抑圧して信号受信を安定的に行うことができる。
また、多数のアンテナ素子を用いることにより、ヌル制御を行わずともアンテナ素子の数に応じた希望信号対干渉信号電力比(Signal to Interference Power Ratio:SIR)を得ることができ、同時に空間多重を行う端末装置の組み合わせに依存せずに通信対象の端末装置に対応する受信ウエイトを用い、空間多重を実現することができ、その結果としてアップリンクの周波数利用効率を向上させることができる。
本発明に係る無線通信システムが具備する基地局装置の設置例を示す図である。 本発明に係る基地局装置が行う信号合成の動作例を示す図である。 チャネル推定の概要を示す図である。 本発明におけるトレーニング信号の例を示す図である。 アップリンクとダウンリンクとのチャネル情報の非対称性を示す図である。 キャリブレーションの概要を示す図である。 第1の実施形態における基地局装置10の構成を示す概略ブロック図である。 同実施形態における基地局装置10が備える受信部100の構成の一例を示す概略ブロック図である。 同実施形態における送受信ウエイト算出部120の構成例を示す概略ブロック図である。 同実施形態における基地局装置10における送信部140の構成の一例を示す図である。 同実施形態におけるアップリンクのチャネル情報を取得する短時間平均化処理を示すフローチャートである。 同実施形態におけるアップリンクのチャネル情報の相対成分を取得する相対成分取得処理を示すフローチャートである。 同実施形態におけるアップリンクのチャネル情報の長時間平均化処理を示すフローチャートである。 同実施形態におけるダウンリンクのチャネル情報を取得する処理を示すフローチャートである。 同実施形態の基地局装置10における送信ウエイト及び受信ウエイトを算出する処理を示すフローチャートである。 同実施形態における基地局装置10の送信処理を示すフローチャートである。 同実施形態における基地局装置10の受信処理を示すフローチャートである。 第2の実施形態における送受信ウエイト算出部220の構成を示す概略ブロック図である。 同実施形態におけるアップリンクのチャネル情報を取得する処理を示すフローチャートである。 第3の実施形態における送受信ウエイト算出部320の構成を示す概略ブロック図である。 第4の実施形態における送受信ウエイト算出部420の構成を示す概略ブロック図である。 第5の実施形態における送受信ウエイト算出部520の構成を示す概略ブロック図である。 第6の実施形態における送受信ウエイト算出部620の構成を示す概略ブロック図である。 各実施形態においてアップリンクのチャネル情報の相対成分を取得する他の相対成分取得処理を示すフローチャートである。 従来技術における無線中継システムの概要を示す図である。 従来技術における分散アンテナシステムの概要を示す図である。 従来技術におけるチャネルフィードバックの処理を示すフローチャートである。 従来技術における無線通信装置のダウンリンクに係る送信側の構成の一例を示す概略ブロック図である。 従来技術における無線通信装置による送信処理の一例を示すフローチャートである。 従来技術における無線通信装置のアップリンクに係る受信側の構成の一例を示す概略ブロック図である。 従来技術における無線通信装置による受信処理の一例を示すフローチャートである。 フェーズドアレーアンテナの原理を示す図である。 マルチユーザMIMOシステムの構成例を示す概略図である。 マルチユーザMIMOシステムにおける送信ウエイト行列Wを算出する手順を示すフローチャートである。 マルチユーザMIMOシステムにおける基地局装置80の構成の一例を示す概略ブロック図である。 マルチユーザMIMOシステムにおける基地局装置80における送信部81の構成の一例を示す概略ブロック図である。 マルチユーザMIMOシステムにおける基地局装置80における受信部85の構成の一例を示す概略ブロック図である。 マルチユーザMIMOにおける基地局装置81の送信処理を示すフローチャートである。 マルチユーザMIMOにおける基地局装置81の受信処理を示すフローチャートである。
[本発明の動作原理について]
本発明の本質は、基地局装置が、基地局装置に備えられている多数の無線モジュールと、端末装置との間のチャネルの特性を示すチャネル情報の推定値を長時間に亘って測定し、チャネル情報の推定値の平均値に基づいて算出した送信ウエイト及び受信ウエイトを用いることにより、複数の無線モジュールを用いてチャネル時変動の影響を低減させながら、同位相合成を用いたコヒーレント伝送に伴う回線利得の獲得と、ピンポイントで同位相合成となる地域以外での低い回線利得を利用した与・被干渉の低減を利用した高次の空間多重を実現することにある。この際、従来のマルチユーザMIMO伝送技術では必須であった同時に空間多重を行う端末装置の組み合わせに依存し複雑な演算により算出される送受信ウエイトを用いたヌル制御を用いずに、着目する1台の端末装置のみに関するチャネル情報ベクトルより簡単な演算で得られる送受信ウエイトを利用することで、多数のアンテナ素子を用いながらも現実的な演算量で、且つ送受信の都度、逐次行うべきリアルタイム処理における処理の負荷を大きく低減しながら、マルチユーザMIMO伝送技術と同等の効果を実現可能である点がポイントとなる。
なお、高次の空間多重の実現に関しては、SIR特性を管理するためのスケジューリング技術、SIR特性改善のための指向性制御技術等との併用により、より効果的な運用が可能になる。
(前提条件)
本発明では、各無線モジュールと端末装置との見通しが必ずしも確保できている必要はないが、無線モジュールと端末装置とは比較的高所に固定されていることが推奨される。この場合、各無線モジュールと端末装置との間の伝送路(チャネル)は、「直接的な見通し波」と、固定的な巨大な建築物等による「安定した反射波」と、地上(低所)付近の車や人などの「移動を伴う物体からの多重反射波」とが混在したものとみなすことができる。この場合、「直接的な見通し波」と「安定した反射波」とは、「移動を伴う物体からの多重反射波」に比べ、受信レベルが相対的に高く、更に時変動が小さい。一方、「移動を伴う物体からの多重反射波」は、「直接的な見通し波」と「安定した反射波」とに比べ、受信レベルが低く、時変動が大きく激しい。
何らかのチャネル推定用の信号(以降、「トレーニング信号」と呼ぶ)を連続的、又は間欠的に長時間に亘り送信し、受信側では受信した信号を長時間に亘り平均すると、その結果、「移動を伴う物体からの多重反射波」の信号は、そのランダム性故に複素位相及び振幅の変動の平均値はゼロに近づく。一方で、「直接的な見通し波」及び「安定的な反射波」に関する成分は非ゼロの一定値に収束する。結果的に、時変動成分が相対的に小さな安定したパスに相当するチャネル推定結果が抽出されることになる。
なお、従来技術におけるコヒーレント伝送の説明においては「無線モジュール」とは「中継局」又は分散アンテナシステムにおける「リモート基地局」であった。これらは、当然ながら従来技術における制御局ないしは基地局から物理的に離れた場所に位置していた。分散アンテナシステムを例にとれば、複数のセルの中心にリモート基地局が位置する形態であるし、無線を用いた中継局であれば、無線を用いる必要があるほどには離れていることになる。しかし、本発明で意図する個別の無線モジュールからの信号の(送信及び受信の両方に対しての)同位相合成においては、必ずしも無線モジュールをリモート基地局や中継局のように遠くまで離す必要はない。
また、各無線モジュールのアンテナ素子とアンテナ素子の間隔が、通信の搬送波周波数の波長よりも小さくなると、アンテナ素子間の相互結合により想定している信号の同位相合成が乱される可能性があるが、概ね1波長以上の間隔がアンテナ素子相互に確保されていれば、この問題は回避できる。
つまり、本発明においては1波長以上の間隔が相互に確保された多数のアンテナ素子が、一つの基地局装置に接続された構成が基本となる。当然ながら、各アンテナ素子から送受信される信号は送受信ウエイトの係数が異なるため、アンテナ素子ごとに、ハイパワーアンプ、ローノイズアンプ、フィルタ等の無線周波数帯におけるRF(Radio Frequency:無線周波数)回路が個別に設けられるとともに、接続されており、これらが一つの無線モジュールを構成する。
これまでの説明においては、各無線モジュールが物理的に制御局などと異なる場所に離散的に配置されていたために、アンテナ素子とほぼ一体型の無線モジュールを意図して「無線モジュール」という用語で様々な説明を行っていたが、本発明においては制御局と多数の無線モジュールが1箇所に集約され、一般的には一つの基地局装置という形態が自然であるため、その実現の構成によっては「無線モジュール」という表現が適切でない場合がありうる。
例えば、機能的にはベースバンド信号処理等の制御局に相当する機能と複数のハイパワーアンプ、ローノイズアンプ、フィルタ等の無線周波数帯でのRF回路の機能が一つの筐体内に実装され、その筐体と多数のアンテナ素子間を同軸ケーブルで接続する構成を想定するならば、送受信時のアンプ、フィルタ系での振幅/複素位相の変動に対する補正を行うことを考慮した上で、「端末装置と無線モジュール間のチャネル情報」という表現は実質的には「端末装置のアンテナ素子と無線モジュールのアンテナ素子間のチャネル情報」と表現されることが多い。したがって、以降、チャネルの説明においては無線モジュールという用語の代わりにアンテナ素子という用語を用いて説明することにする。
(無線通信システムの設置例と基本原理)
図1は、本発明に係る無線通信システムが具備する基地局装置の設置例を示す図である。同図において、符号11は基地局装置が設置されている建築物を示し、符号12−1〜12−2は端末装置を示し、符号13−1〜13−4は基地局装置が備えているアンテナ素子を示し、符号14−1〜14−3は地上の移動体を示し、符号15−1〜15−2は大型の建築物(当然、静止状態)を示している。
ここで、基地局装置が備えるアンテナ素子13−1〜13−4は、建築物11の屋上などに設置されていたりして、非常に高所に設置されている。端末装置12−1〜12−2は、電信柱などの上や、一般のビルの屋上など、基地局装置のアンテナ素子13−1〜13−4よりは相対的に低所であるかも知れないが、比較的高所に設置されている。一方、基地局装置のアンテナ素子13−1〜13−4や、端末装置12−1〜12−2よりも比較的低所に位置する場所には、地上の移動体14−1〜14−3である車に加え、人や風に揺れる樹木など、ランダムに変動する反射波の起点(反射点)が多数存在する。
例えば、端末装置12−1と、基地局装置のアンテナ素子13−1〜13−4とは、見通し環境(図中、太い実線の矢印で直接波を表示)にある。一方、端末装置12−2と、基地局装置のアンテナ素子13−1〜13−4とは、大型の建築物15−2の遮蔽により見通し環境にはないが、大型の建築物15−1などの反射体があり、安定した反射波(図中、太い実線の矢印で表示)が到達している。
また、見通し環境の端末装置12−1にとって、見通し波以外に大型の建築物による安定的な反射波が存在し、常にそれらが合成されて信号が到達する状況であるかもしれない。このような太い実線の矢印で表した信号を安定的な入射波とみなす。一方、地上の移動体14−1〜14−3等からの反射波は、多数回のランダムな多重反射として到達する信号が多く、相対的に受信される信号のレベルは低く、更に複素位相成分及び振幅は時間とともにランダムに変動する。
多数の微弱かつランダムな波を合成すると、その結果得られる信号は、安定的な入射波に対して相対的に信号強度が小さい。したがって、「安定的な入射波」に「ランダムな多重反射波」を合成して得られる「時変動する入射波」は、「安定的な入射波」の周りに微小な誤差が加わった信号と見ることができる。
次に、このような状況において、基地局装置が行う信号の合成について説明する。
図2は、本発明に係る基地局装置が行う信号合成の動作例を示す図である。ここでは、一例として、図1における端末装置12−1から送信された信号を、基地局装置のアンテナ素子13−1〜13−4にて受信した際に、適切な受信ウエイトを用いて合成する場合を示している。
基地局装置のアンテナ素子13−1〜13−4では、「時変動する入射波」を受信している。これらを合成する際に用いる受信ウエイトは、「安定的な入射波」を基準にして、各アンテナ素子での信号が同位相合成されるように定められている。図2において点線で示した信号は、「安定的な入射波」に対して受信ウエイトを乗算し、各アンテナ素子13−1〜13−4で位相が同位相に揃えられた信号である。
実際の「時変動する入射波」に受信ウエイトを乗算した信号、即ち図2における細い実線で示した「時変動する入射波」は、点線で示した「安定的な入射波」から微小にずれているため厳密には各アンテナ素子で同位相合成とはなっていないが、「時変動する入射波」は「安定的な入射波」に近い振る舞いを示すため、多数のアンテナ素子の信号を「安定的な入射波」を基準にして設定した受信ウエイトを用いて合成すると、太い実線で示した大きな振幅の合成された信号となる。つまり、基地局装置で用いるアンテナ素子の数を膨大な数に増やせば、統計的な効果として各アンテナ素子の「安定的な入射波」成分は同位相合成され、「ランダムな多重反射波」は相互に打ち消しあうために、「安定的な入射波」に対して時変動成分は相対的に非常に小さなレベルに抑えられる。
ここで、図1及び図2の説明においては、あくまでも簡単のために基地局装置側に4本のアンテナ素子を備える場合について説明を行ったが、以下に示すように、本発明では非常に多数のアンテナ素子を備えることで統計的な効果を得ることが可能になる。
なお、この「安定的な入射波」に基づく統計的な信号の同位相合成は、送信時に用いる送信ウエイトと受信時に用いる受信ウエイトの双方において同様に利用することができる。基地局装置で用いる送受信ウエイトはチャネル推定結果に基づき算出されるものであるが、そのチャネル推定は基地局装置が送信するトレーニング信号を端末装置側で受信して行っても、端末装置が送信する信号を基地局装置で受信してチャネル推定しても構わない。一般的に、ダウンリンクとアップリンクのチャネル情報は送信/受信に用いるアンプ/フィルタ等が異なるために非対称であるが、アップリンクのチャネル推定結果とダウンリンクのチャネル推定結果には所定の換算式が成り立ち、後述するキャリブレーション処理を用いれば、端末装置が送信したトレーニング信号を基地局装置の全てのアンテナ素子で同時に受信し、その結果を用いたチャネル推定によりアップリンクのチャネル情報を取得し、これに所定の換算式を適用することでダウンリンク方向のチャネル情報を取得することが可能である。
以上に説明したように、基地局装置の各アンテナ素子と、各端末装置のアンテナ素子との間のチャネル情報に対する長時間に亘る平均化処理により、ランダムな時変動成分を抑制し、時間変動のない見通し波ないしは安定的な構造物等からの安定的な入射波を抽出することが可能になる。この抽出された長時間平均のチャネル情報を基に、ターゲットとする端末装置に対して同位相合成を行うことで、高い回線利得を獲得することが可能となる。一般に、ある1本のアンテナ素子から送信された信号が別の場所の1本のアンテナ素子で受信される際の振幅を1としたときに、N本のアンテナ素子から送信された信号を同位相合成すると、受信信号の振幅の期待値はN倍になる。受信電力は振幅の2乗に比例するので、受信電力はN倍となる。つまり10Log10(N)[dB]の利得を得ることが可能になり、Nが仮に100であれば同位相合成によるコヒーレント伝送に伴う回線利得は40[dB]に相当する。
次に、与・被干渉の低減を利用した高次の空間多重に関して説明する。上述の同位相合成は、特定の端末装置をターゲットにして行うものであり、当該端末装置に対してのみピンポイントで高い回線利得を得ることができる。例えば、図1の端末装置12−1に対して同位相合成を行えば、端末装置12−2のように同位相合成とならない他の地点では、ランダムな位相合成となる。図1では基地局装置のアンテナ素子13−1〜13−4が4素子の場合を示したが、アンテナ素子がN個の場合、ランダムな位相合成の結果、期待値として受信電力はN倍になる。このような状況で、2つの信号系列を同時に空間多重した場合、同位相合成がなされている希望信号に関しては回線利得が送信アンテナ素子1本あたりN倍であるのに対して、干渉となる非希望信号に関しては回線利得が送信アンテナ素子1本あたりN倍となる。そのため、相対的なSIR値は10Log10(N)[dB]となる。
このように、送信アンテナ素子の数(N)が仮に100であれば、空間多重を行いながらも期待値として20[dB]のSIRを稼ぐことができる。つまり、図1における太い実線で示した二つのパスを利用し、端末装置12−1及び端末装置12−2の両方と基地局装置との通信を同時に同一周波数帯で実施することが可能となる。
通常、アンテナの本数が膨大な場合に、一般的なマルチユーザMIMO技術で空間多重を行う際、アンテナの本数の3乗に比例する信号処理の演算量が見込まれるため、回路規模的に現実的な数のアンテナ素子による運用が強いられてきた。特に、重要なのはある端末装置への信号が他の端末装置に対して干渉とならないようにするためのヌル制御であるが、本発明においてはこのようなヌル制御を行わずとも、単純に求めることが可能な送信ウエイトを用いても、高いSIRを確保することができ、安定的に空間多重を行うことができる。その結果、マルチユーザMIMOと同等の効果を得ながらも、一般的なマルチユーザMIMOのような空間多重する端末装置の組み合わせに依存する複雑な信号処理を必要としない、新たな空間多重技術を実現することができる。
なお、先ほどの例を基に説明を行えば、送信アンテナの数(N)が100である場合、10系統の信号を空間多重すると干渉電力は相対的に約10倍となるために、SIRの期待値は約10[dB]となる。もちろん、平均SIR値が10[dB]でもある程度の分布の広がりがあるため、所要SIR値が10[dB]の場合に10多重ないしはそれ以上の空間多重を行うためには、SIR特性が良好な端末装置の組み合わせを行うスケジューリング機能を組み合わせることが好ましい。ただし、ここで行うスケジューリング機能は、時間とともに変動するチャネル情報を反映したリアルタイムの制御を前提とする必要はなく、先に説明した長時間平均により時変動成分を平均化した固定的なチャネル情報を用いて行うことができる。そのため、通信を行うたびに逐次複雑な信号処理を行うことを避け、通信の開始の前に行う事前処理において、その負荷の大きい処理を完了させ、処理の結果を用いた運用を行うことにより、運用中の負荷を低減させることができる。
このように本発明では、リアルタイムのチャネル情報を用いて厳密な同位相合成を目指す代わりに、厳密な送受信ウエイトからは若干の誤差を伴う送受信ウエイトであったとしてもある程度の誤差以内に抑えられる送受信ウエイトを用い、多数のアンテナ素子を用いて合成することで統計的な効果により安定的かつ高い回線利得を引き出す準最適な同位相合成を目指す点が第1の重要なポイントである。
また本発明では、長時間平均化を行い取得したチャネル情報を用いて空間多重を行う送受信ウエイトを算出する際に、ダウンリンクであれば、ある端末装置宛に基地局装置の多数のアンテナ素子から送信される信号が端末装置で受信される際に複素位相が同位相合成となる様に送信ウエイトを算出し、アップリンクであれば、端末装置が送信した信号を基地局装置の多数のアンテナ素子にて受信した信号を合成する際に複素位相が同位相合成となる様に受信ウエイトを算出する。つまり、多数の端末を同時に空間多重する際にその組み合わせを意識することなく、端末毎に個別に算出される送受信ウエイトを用いて高次の空間多重を行うことが可能であり、この点が第2の重要なポイントである。
更に本発明では、送受信ウエイトはチャネルの時変動を意識することなく固定的な値となるため、例えば通信サービスの運用開始前に事前に取得しておけば、データの送受信を行うサービス運用時には、個々に送受信ウエイト算出のための演算をすることなく、単純にメモリに記憶された送受信ウエイトを読み出すだけで良いため、通信に用いるアンテナ素子数を膨大な数に増やしたとしても信号処理の負荷を低く抑えることが可能であり、この点が第3の重要なポイントである。
更に本発明では、通信の都度、送受信ウエイトの算出のために個別のアンテナ素子間のチャネル推定を行わないので、空間多重数と同数のチャネル推定用のプリアンブル信号を付与する必要がない。このため、OFDM変調方式を用いる場合を例にとれば、従来であれば10多重の空間多重のためには異なる10シンボルのチャネル推定用のプリアンブル信号が必要であったが、本発明では空間多重数に依存せずに1シンボルのチャネル推定用のプリアンブル信号で足りることになる。この結果、MACレイヤの効率の低下を抑えて高次の空間多重を実施することが可能となり、この点が第4の重要なポイントである。
以上の動作原理に対し、詳細な実施形態の説明の前に、これらを実現するための補足事項を以下に簡単に整理しておく。
(チャネル推定の平均化処理について)
本発明に係る基地局装置は、「安定的な入射波」に基づく統計的な信号の同位相合成を行うための送受信ウエイトを用いることが特徴であるが、この「安定的な入射波」に対応したチャネル推定の概要について、ここで説明しておく。
先ほども説明した通り、基地局装置は、移動体において反射しランダムに変動する多重反射波の影響を取り除くことで「安定的な入射波」に関する成分を抽出する。基地局装置は、多数のアンテナ素子による統計的な効果を得る前段として、各アンテナ素子においても「安定的な入射波」に関する成分を抽出するために、基地局装置の各アンテナ素子と端末装置のアンテナ素子との間の個々のチャネルのチャネル推定を長時間に亘り実施し、その結果を平均化することで「安定的な入射波」に対応したチャネル情報を取得する。
その具体的な取得方法を説明する前に、まず、図1における車等の移動体14−1〜14−3において反射する反射の影響について考える。これらの移動体からの反射波の状況は、移動体の位置があまり変位しない短時間ではそれ程大きくは変動しないが、これらの移動体が物理的に異なる位置に移動すれば反射波の影響は全く異なるものになることが予想される。つまり、移動体において反射しランダムな多重反射の状況がそれ程大きく変動しない短時間の間でチャネル情報の平均化処理を行ったとしても、ランダムな反射波の基になる移動体が大きく移動した際には、また別のチャネル状態になっていることが予想される。
図3は、チャネル推定の概要を示す図である。ここでは、チャネル情報の推定結果をI/Q複素平面上での点に対応したベクトルとして示している。同図において、符号16は「安定的な入射波」に対応した長時間平均のチャネル情報の推定値に対応するベクトルを示している。符号17−1〜17−4は比較的短時間のチャネル推定結果を用いて平均化したチャネル情報に対応するベクトルを示している。符号18は時変動により発生するチャネル推定誤差の範囲を示している。
同図において、例えば、チャネル情報17−2と、チャネル情報17−4とは、円状に分布する時変動により発生するチャネル推定値の誤差範囲18において、両端に位置する関係であり、そのふたつのベクトルの相対的な差(誤差)が大きい。しかし、多数の平均化されたチャネル情報17−1〜17−4を更に平均化すれば、チャネル推定誤差18の円の中心に相当する「安定的な入射波」に対応した長時間平均のチャネル推定値16に対応するチャネル情報を取得することが可能になる。これにより、各々の瞬時のチャネル推定値との誤差は誤差範囲18の円の半径以下に抑えられ、円の両端に位置する場合に比べて相対的に小さく抑えることができる。
更に、実際の誤差の分布は、チャネル推定誤差の範囲18の円内に一様に分布するのではなく、平均値である長時間平均のチャネル推定値16の近傍であるほど分布の密度が高いと推察される。したがって、長時間平均のチャネル推定値16に近づけるためには、移動体の配置の相関が少なくなる離散的な時間で多数回行ったチャネル推定により得られたチャネル情報を平均化することが好ましい。
次に、この長時間平均のチャネル情報の求め方について、注意すべき点を中心に説明する。一般に、基地局装置のクロック信号と、端末装置のクロック信号とは完全に同期が取れておらず、ある程度の周波数誤差が存在する。例えば、OFDM変調方式やSC−FDE伝送技術のようなブロック伝送を行う場合には、1シンボルのシンボル周期(ないしはブロック周期)は少しずつシンボルタイミングが基地局装置と端末装置との間でずれることになり、このシンボルタイミングのずれは全周波数で共通の複素位相の回転として表れる。なお、基地局装置のクロック信号、及び端末装置のクロック信号は、A/D変換や、D/A変換を行う際のサンプリング周期を定めるクロック信号のことである。
同様の複素位相の回転という課題は、ベースバンド信号と無線周波数信号との間のアップコンバート、ダウンコンバートで用いるローカル発振器が出力する局部発振信号の基地局装置と端末装置との間の非同期性や周波数誤差によっても問題となる。
送信と受信との間が非同期で周波数誤差が伴う場合、仮に空間上のチャネル情報に時変動がない場合でも、異なる時刻に測定するチャネル情報は、その時間差と周波数誤差とに依存する形で複素位相成分が変動する。
これは、例えば、受信側のダウンコンバート処理でミキサにおいて乗算するローカル発振器から入力される局部発振信号の初期複素位相を通信の都度、毎回一致させることができないことに起因する。通信における信号検出処理では、トレーニング信号でチャネル推定を行う際に、その初期複素位相の影響まで含めた結果としてのチャネル情報を取得するため、トレーニング信号に後続する信号の信号検出処理において問題となることはない。しかし、離散時間で平均化する際には、仮にチャネル情報に時変動がなくてもこの初期複素位相の不確定性により時変動があったように見えてしまうために問題となる。
しかし、受信時の同位相合成を実現するための送信ウエイト及び受信ウエイトの算出に必要となるチャネル情報は、伝送路の特性を示すチャネル情報の複素位相を含む絶対的な値そのものではなく、アンテナ素子ごとのチャネル情報における複素位相の相対的な関係さえ分かれば十分なのである。したがって、離散的な時刻に測定したチャネル推定結果を平均化する際には、基地局装置の複数のアンテナ素子から基準となるアンテナ素子を1つ設定し、そのアンテナ素子で推定されたチャネル情報の複素位相成分だけ、各アンテナ素子におけるチャネル情報の複素位相成分にオフセットを付加すれば良い。
具体的には、基地局装置がK個のアンテナ素子を備えている場合、アンテナ素子#i(i=1,…,K)で観測された第k周波数成分のチャネル情報がA・Exp(φ (k)j)であるとする。ここでjは虚数単位を表し、Aはアンテナ素子#iのチャネル情報の振幅成分を表し、φ (k)はアンテナ素子#iの第k周波数成分のチャネル情報の複素位相を表す。
このとき、アンテナ素子#1の複素位相φ (k)を用いて、全てのアンテナ素子に複素位相−φ (k)のオフセットを加えると、オフセットによる補正後のアンテナ素子#iのチャネル情報としてA・Exp{(φ (k)−φ (k))j}が得られる。空間上のチャネル情報が不変であるならば、この補正後のチャネル情報は基地局装置と端末装置とのクロック信号及び局部発振信号の周波数誤差の影響(すなわち複素位相の初期位相の不確定性の影響)を受けない。以降の説明では、この初期位相の不確定性除去のための補正後のチャネル情報を「(チャネル情報の)相対成分」と呼ぶことにする。なお、この補正は周波数成分ごとに個別に行うものとする。
したがって、チャネル情報の平均化を行う際には、このような補正を行い、複素位相成分の不確定性を排除した上で平均化を実施する必要がある。その他、この平均化を行う上で、本発明における課題の(課題1)で示した回線利得が大幅に不足する領域では、チャネル推定により取得したチャネル情報の平均化を行う以前に、その基になる情報の取得が困難な場合があることに注意しなければならない。このような状況では、何らかのチャネル推定用のトレーニング信号を受信したとしても、一般にはその信号の受信を検知することができない。OFDM変調方式の場合を例にとれば、OFDMシンボルタイミングの検出ができないことを意味し、当然ながらガードインターバルの除去もできなければFFTを実施することもできない。以下に、このような低SNR環境におけるチャネル推定の平均化処理の方法と具体的なトレーニング信号の例を示す。
(本発明におけるトレーニング信号の例)
図4は、本発明におけるトレーニング信号の例を示す図である。同図において符号1−1〜1−3は一般的なOFDMシンボルを示し、符号2−1〜2−3はガードインターバルを含まない有効な信号領域を示し、符号3−1〜3−3は本発明におけるトレーニング信号を示し、符号4−1〜4−3は信号の末尾領域を示し、符号5−1〜5−3はガードインターバルを示し、符号6−1〜6−3は実際のチャネル推定に用いる信号周期を示している。なお、OFDM信号は、複数のサブキャリア成分を含むが、本図ではあるサブキャリア一つを抜き出して正弦波として図示している。
従来のOFDM信号であれば、OFDMシンボル(1−1〜1−3)周期の信号は、実際のデータとして有効な信号領域(2−1〜2−3)を生成し、この信号の末尾領域(4−1〜4−3)を信号の先頭領域にガードインターバル(5−1〜5−3)としてコピーして貼り付け、全体のOFDMシンボル(1−1〜1−3)を生成していた。通常の通信においては、ガードインターバルを取り除いた有効な信号領域(2−1〜2−3)の先頭部分のタイミングをタイミング検出により抽出し、そのタイミングを起点とした場合の振幅及び複素位相に関する情報をチャネル推定では取得する。
しかし、本発明の送受信ウエイトの算出においては各アンテナ素子の相対的な位相関係を取得できれば十分であるために、正確な初期複素位相の把握までは不要であり、OFDMシンボルの先頭のような適切なタイミングを起点とする必要はない。したがって、ガードインターバルを設定したOFDM信号である必要はなく、OFDMシンボルの有効な信号領域(2−1〜2−3)を取り出して連続させた信号であるトレーニング信号(3−1〜3−3)を多数回繰り返し送信すれば良い。ここで各区間は連続的につながっているために、この複数の周期に亘るトレーニング信号においては実質的にはシンボルタイミングというものは意味を成さない。受信側では、受信したトレーニング信号(3−1〜3−3)に対して任意の開始タイミング、例えば実際のチャネル推定に用いる信号周期(6−1〜6−3)で信号を切り取り、区間6−1、区間6−2、区間6−3の信号に対して加算処理を行えばよい。
(基地局装置と端末装置とのローカル発振器周波数誤差の補償)
なお、このトレーニング信号を用いたチャネル平均化においては、複数の連続する区間6−1、区間6−2、区間6−3の比較的短時間平均を行うことになるが、この「比較的短時間」の定量的な意味は、基地局装置と端末装置との間のクロック信号及び局部発振信号の周波数誤差に依存する影響(厳密には、下記に示す周波数誤差補償処理後に残る、残留周波数誤差の影響)を無視できる範囲での平均化を意味する。
例えば、中心周波数が2.4[GHz]の局部発振信号において、ローカル発振器の周波数誤差が1p.p.m.である場合、局部発振信号の周波数誤差の最大値は2.4[kHz]である。つまり、416μ秒で位相が2π回転してしまう誤差である。このとき、平均化を行う時間長の中で周波数誤差に伴う複素位相の回転が1周期(2π)の1/10以内に抑えたいと考えるならば、平均化に使える時間長は約40μ秒となる。
しかし、広域をサービスエリアにするWiMAXの例を見れば、長遅延波の影響を排除するための1シンボル周期は約100μ秒に設定されており、平均化処理を行う時間としては十分ではない。これらの問題を解決するために、ここでは周波数誤差を補償するための以下の補正処理を行う。
一般的には周波数誤差補正はAFC(Automatic Frequency Control)と呼ばれる信号処理で対処可能である。今回のトレーニング信号のように同一の信号が繰り返し受信される状況であれば、一般には1周期分だけシフトした信号を乗算することで周波数誤差成分を抽出することが可能である。このAFC処理を適用して周波数誤差を抽出し、その周波数誤差をキャンセルする補正を行うことが可能である。しかし、受信信号が低SNRである場合、AFC処理を適用して隣接するシンボルから周波数誤差を抽出しようとしても、ノイズに埋もれて誤った周波数誤差を抽出してしまう可能性がある。したがって、AFC処理も、もともとの信号のSNRを改善可能な時間長に亘り実施する必要がある。
例えば、時刻tにおける複素数で表されるサンプリングデータをS(t)と表し、周波数誤差をΔfと表すと、時刻tにおける複素位相の回転量は2πΔf・tとなる。そこで、サンプリングデータS(t)に対して理想的に周波数補償すると、周波数補償されたサンプリングデータは、S(t)・Exp(−2πjΔf・t)となる。
また、サンプリング周期をΔtと表し、1シンボルの周期をTとすると、1周期のデータ数はN=T/Δtで与えられる。このとき、時刻t=m’・Δtとし、更に、mとMとをm=mod(m’,N)、M=Int(m’/N)とすれば、サンプリングデータS(t)を離散的な時刻により定められる数列{S(M) }と表記できる。ここで、関数「mod」は、m’をNで除算した際の余りを求める関数である。また、関数「Int」は、m’をNで除算した際の商(整数部)を求める関数である。
更に、サンプリングデータS(t)を理想的に周波数補償した数列を{S(M) ・Exp(−2πjΔf・Δt・[M×N+m]}と表記できる。ここで、全体としてM0シンボル周期のサンプリングを行うものとする。
周波数補償した数列{S(M) ・Exp(−2πjΔf・Δt・[M×N+m]}を、mごとに多数のMでの加算したサンプリングデータ〜Sは次式(10)で表される。ここで、式(10)において、「〜(チルダ)」が上に付されたSを「〜S」と表記する。また、「Exp(X)」は自然対数の底eのX乗を示す関数である。
Figure 2013123161
AFC処理によりSNRを改善するには、式(10)で表される〜Sの振幅を最大にするΔfを求めればよい。そこで、次式(11)で表される評価関数G(Δf)を定める。
Figure 2013123161
式(11)における^S(M,M’)は、次式(12)で表される。
Figure 2013123161
評価関数G(Δf)を最大にするΔfを求めれば良いので、次式(13)で表される条件式が求まる。
Figure 2013123161
条件式(13)を満たす実数Δfを数値的に求めれば、基地局装置と端末装置との間の周波数誤差が算出され、このΔfを用いて式(10)で与えられる1周期分の加算・平均化されたサンプリングデータを用い、チャネル推定を行えばよい。OFDM変調方式であれば、この1周期のサンプリングデータを基にFFT処理により、各サブキャリア成分のチャネル情報を算出する。
なお、必ずしも式(13)を用いなくても、Δfのとりうる範囲が限定されているならば、その範囲内の適当な刻み幅でΔfを設定し、それらのΔfに対して式(11)を算出して最大値を与えるΔfを検索しても良い。この場合、先ほど例示したのと同様に使用する中心周波数が仮に2.4GHzで周波数誤差が1p.p.m.であるならば、Δfの範囲は−2.4kHzから+2.4kHz以内となる。この刻み幅の最適値は求められる精度に応じて変わるが、例えば、10Hz刻みでΔfを設定し、式(11)を算出するならば、式(11)を最大にする真のΔfに対して±5Hz以内の残留周波数誤差の範囲でΔfを検索することが可能である。つまり、周波数誤差は5Hz以内に抑えられ、M0周期の平均化を行う際の時間長(M0×T)を5m秒程度と想定しても、平均化を行う期間内の位相の誤差は2πの1/40(角度は9度)以内に収まる。平均化の期間中に位相は定常的に回転することを考慮すれば、運用上、支障のない程度の精度でチャネル情報を算出することが可能である。これは逆にいえば、平均化を行う期間内の位相の誤差を所定の値に抑えられる範囲で、M0周期の平均化を行う際の時間長(つまりM0の値)が制限されることになる。
(基地局装置と端末装置とのシンボルタイミング誤差)
以上は基地局装置と端末装置のローカル発振器の周波数誤差に伴う補正の説明である。同様にクロック周波数誤差により、シンボルタイミングのずれの問題も考慮する必要がある。先ほどの説明と同様、1p.p.m.の周波数誤差を伴うシステムを想定すると、1秒という測定時間を想定した場合にこの期間に発生するシンボルタイミングの累積時間誤差は1μ秒程度になる。
広域の無線アクセスシステムの規格として普及しているWiMAXの場合を例にとるならば、1シンボルは約100μ秒であり、FFTのポイント数(近似的にはサブキャリア数)が1024とすれば、最も周波数の高いサブキャリアの周期は約0.1μ秒程度になる。同様に、WiFi(登録商標、以下同様)を想定するならば、1シンボルは4μ秒であり、そこに64ポイントFFTを想定すると、最も周波数の高いサブキャリアの周期は約0.06μ秒となる。シンボルタイミングの誤差の累積値はこれらの周期に対して十分小さく設定されることが好ましい。そのため、例えば、チャネル情報の平均化を行う測定時間を5m秒とするならば、1p.p.m.の周波数誤差による累積時間誤差は0.005μ秒となり、WiMAXやWiFiの最も周波数の高いサブキャリアの周期よりも一桁以上小さな誤差に抑えられている。
WiMAXの例では、チャネル情報の平均化を行う測定時間を5m秒とした場合にこの時間長はシンボル周期の50倍の時間長となるので、十分に加算・平均化により信号のSNRを改善することが可能になり、取得した情報を用いて更に離散時間で平均化することにより、移動体からのランダムな多重反射波の影響も除去できる。
このように、平均化処理を行う際には、連続する比較的短い時間スケールでの平均化と離散時間のチャネル推定結果での平均化を2段階で行う。なお、比較的短い時間スケールでの平均化を行う際の時間長は上述の制限を受けることに注意を要する。また、離散時間のチャネル推定結果においては、上述のようにアンテナ素子#1の複素位相φ (k)を用いて、全てのアンテナ素子に複素位相−φ (k)のオフセットを加えることで、初期複素位相の不確定性の問題は回避できる。
(アンプの個体差による影響(キャリブレーション)について)
実際の無線通信装置では、送信側の信号処理において、送信の直前にハイパワーアンプにて信号増幅を行うことが多い。この場合、ハイパワーアンプの個体差により増幅率に誤差があるとともに、ハイパワーアンプ内で複素位相がハイパワーアンプごとに異なる値で回転する場合がある。同様に、受信側の信号処理において、受信の直後にローノイズアンプにて信号増幅を行うことが多い。この場合、ローノイズアンプの個体差により増幅率に誤差があるとともに、ローノイズアンプ内で複素位相がローノイズアンプごとに異なる値で回転する場合がある。
特に、ハイパワーアンプ及びローノイズアンプの増幅率及び位相回転量には、周波数依存性がある。周波数依存性を伴う増幅率及び複素位相の回転量の個体差が無視できないほどに大きい場合には、アップリンクのチャネル情報からダウンリンクのチャネル情報を推定する際に、キャリブレーション処理を施す必要がある。この増幅率及び位相回転量の誤差は時間的にはほぼ安定しているため、増幅率及び位相回転量の誤差を事前に測定しておき、誤差の影響をキャンセルするための係数を用いてアップリンクのチャネル情報からダウンリンクのチャネル情報に換算する。
以下の実施形態における基地局装置では、アップリンクのチャネル推定結果に長時間平均を行ったチャネル情報を用いて、送信ウエイト及び受信ウエイトを算出する。先の説明においても、実際にはハイパワーアンプやローノイズアンプ(厳密にはその他のフィルタ等の回路を含めた送信系及び受信系の回路等)により、振幅や複素位相が変化する場合がある。この場合、振幅や複素位相の変化に応じた補正をするためのキャリブレーション係数を事前に取得しておき、これを補正に用いると説明した。キャリブレーション処理は、公知の技術を用いても構わないが、以下にキャリブレーション処理の一例を説明する。
図5は、アップリンクとダウンリンクとのチャネル情報の非対称性を示す図である。同図において、符号25−1〜25−3は無線モジュールを示し、符号21−1〜21−3はハイパワーアンプ(HPA)を示し、符号22−1〜22−3はローノイズアンプ(LNA)を示し、符号23−1〜23−3は時分割スイッチ(TDD−SW)を示し、符号24−1〜24−3はアンテナ素子を示している。
ここでは、基地局装置においてチャネル情報に影響を与える機能のみを抽出したため、図示した以外の構成は省略したが、無線モジュール25−1〜25−3にはその他の機能も含まれる。また、信号がハイパワーアンプ21−1〜21−3それぞれを通過する際に、振幅及び複素位相がZHPA#1(f)、ZHPA#2(f)、ZHPA#3(f)変化するものとする。また、信号がローノイズアンプ22−1〜22−3それぞれを通過する際に、振幅及び複素位相がZLNA#1(f)、ZLNA#2(f)、ZLNA#3(f)変化するものとする。ここでは一般的な条件として周波数依存性があるものとし、第k周波数成分に対する周波数「(f)」の表記を行っている。
ここで、例えば、無線モジュール25−1及び無線モジュール25−2から試験用の無線モジュール25−3に信号を送信する場合のチャネル情報について説明する。ここでは、無線モジュール25−1のアンテナ素子24−1と、無線モジュール25−3のアンテナ素子24−3との間の空間上のチャネル情報がh(f)で表され、無線モジュール25−2のアンテナ素子24−2と無線モジュール25−3のアンテナ素子24−3との間の空間上のチャネル情報がh(f)で表されている。
このとき、実際に無線モジュール25−1から無線モジュール25−3に信号を送信する際のチャネル情報は、空間上のh(f)にハイパワーアンプ21−1の通過に伴う変化を示す係数ZHPA#1(f)、及びローノイズアンプ22−3の通過に伴う変化を示す係数ZLNA#3(f)が乗算された値として観測される。
同様に、無線モジュール25−2から無線モジュール25−3に信号を送信する際のチャネル情報は、空間上のh(f)にハイパワーアンプ21−2の通過に伴う変化を示す係数ZHPA#2(f)、及びローノイズアンプ22−3の通過に伴う変化を示す係数ZLNA#3(f)が乗算された値として観測される。
したがって、無線モジュール25−1から無線モジュール25−3へのチャネルは、ZHPA#1(f)・h(f)・ZLNA#3(f)で表される。また、無線モジュール25−2から無線モジュール25−3へのチャネルは、ZHPA#2(f)・h(f)・ZLNA#3(f)で表される。このため、無線モジュール25−1と無線モジュール25−2との間では、チャネル情報h(f)とh(f)の差に加えて、相対的にZHPA#2(f)/ZHPA#1(f)の差が発生する。
この状況は受信側においても同様であり、無線モジュール25−3から送信された信号を無線モジュール25−1にて受信する場合、チャネル情報は空間上のh(f)にハイパワーアンプ21−3の通過に伴う変化を示す係数ZHPA#3(f)と、ローノイズアンプ22−1の通過にともなる変化を示す係数ZLNA#1(f)とが乗算された値として観測される。
同様に、無線モジュール25−3から送信された信号を無線モジュール25−2にて受信する場合、チャネル情報は空間上のh(f)にハイパワーアンプ21−3の通過に伴う変化を示す係数ZHPA#3(f)と、ローノイズアンプ22−2の通過に伴う変化を示す係数ZLNA#2(f)とが乗算された値として観測される。
したがって、無線モジュール25−3から無線モジュール25−1へのチャネルは、ZHPA#3(f)・h(f)・ZLNA#1(f)で表される。また、無線モジュール25−3から無線モジュール25−2へのチャネルは、ZHPA#3(f)・h(f)・ZLNA#2(f)で表される。このため、無線モジュール25−1と無線モジュール25−2との間では、チャネル情報h(f)とh(f)の差に加えて、相対的にZLNA#2(f)/ZLNA#1(f)の差が発生する。
上述したように、実施形態における基地局装置は、受信したトレーニング信号に対して長時間平均をとることにより、各アンテナ素子に接続されているローノイズアンプ22−1〜22−3による変化を含むチャネル情報をアップリンクにて取得可能である。
しかし、基地局装置はダウンリンクにおけるチャネル情報を直接求めることができない。そこで、アップリンクのチャネル情報から換算することで、ダウンリンクのチャネル情報を取得する。この換算のためには、各アンテナ素子24−1〜24−3に接続されているローノイズアンプ22−1〜22−3及びハイパワーアンプ21−1〜21−3の個体差の影響をキャンセルする必要がある。
そこで、基地局装置の製造段階において、リファレンスとなる試験用の無線モジュール25−3を用意し、試験用の無線モジュール25−3のアンテナ端子と、無線モジュール25−1、25−2のアンテナ端子とを直接ケーブルで接続し、伝搬路上のチャネル情報が共通の値となる環境で、ハイパワーアンプ21−1〜21−3及びローノイズアンプ22−1〜22−3による変化を含むチャネル情報を測定し、測定したチャネル情報を用いて補正を行う。
図6は、キャリブレーションの概要を示す図である。同図において、符号26−1〜26−3はアンテナ端子を示し、符号27は同軸ケーブルを示している。なお、図5に示した機能部と同じ機能部には同じ符号を付している。
図6(A)は、無線モジュール25−3と無線モジュール25−1とを同軸ケーブルで接続した構成を示している。図6(B)は、無線モジュール25−3と無線モジュール25−2とを同軸ケーブルで接続した構成を示している。図5が実際の空間上を信号が伝搬した状態を示しているのに対して、図6がアンテナ素子を介さずに同軸ケーブル上を信号が伝搬した状態を示している。
無線モジュール25−1、25−2と、無線モジュール25−3とを接続する伝搬路としての同軸ケーブル27のチャネル情報は、h(f)である。
このとき、無線モジュール25−1から無線モジュール25−3へのチャネル情報は、ZHPA#1(f)・h(f)・ZLNA#3(f)で表される。無線モジュール25−2から無線モジュール25−3へのチャネル情報は、ZHPA#2(f)・h(f)・ZLNA#3(f)で表される。
また、無線モジュール25−3から無線モジュール25−1へのチャネル情報は、ZHPA#3(f)・h(f)・ZLNA#1(f)で表され、無線モジュール25−3から無線モジュール25−2へのチャネル情報は、ZHPA#3(f)・h(f)・ZLNA#2(f)で表される。
そこで、これらのチャネル情報を測定した後に、次式(14)及び式(15)で表されるキャリブレーション係数C(f)、C(f)を算出しておく。
Figure 2013123161
Figure 2013123161
先ほど、無線モジュール25−3から無線モジュール25−1へのチャネル情報はZHPA#3(f)・h(f)・ZLNA#1(f)で表され、無線モジュール25−3から無線モジュール25−2へのチャネル情報はZHPA#3・(f)・h(f)・ZLNA#2(f)で表されると説明した。これらに式(14)及び式(15)のキャリブレーション係数C(f)、C(f)を乗算すると次式(16)及び式(17)が得られる。
Figure 2013123161
Figure 2013123161
式(16)及び式(17)の右辺は、先ほど説明した、無線モジュール25−1から無線モジュール25−3へのチャネル情報、及び、無線モジュール25−2から無線モジュール25−3へのチャネル情報に一致している。
このように、式(14)及び式(15)に相当するキャリブレーション係数を基地局装置の製造段階において取得しておき、これらを基地局装置内に記憶しておくことにより、これらのキャリブレーショ係数を用いてアップリンクのチャネル情報からダウンリンクのチャネル情報を算出することができる。
なお、以下の実施形態では、これらのキャリブレーション係数を予め取得し、その値をデジタル信号処理上で利用する場合の説明を中心に行うが、当然ながらアナログ回路上において、これらのキャリブレーション係数が全てほぼ一定の値(複素位相が一定値であれば、絶対値そのものには差があっても構わない)となるように基地局装置内で調整を行っていれば、全てのキャリブレーション係数が1であるとみなした処理に読み替えることも可能である。同様に、アップリンクとダウンリンクの複素位相が一定値となるように調整されている場合にも、結果的に式(14)及び式(15)で示されるキャリブレーション係数の複素位相が全てのアンテナ素子でほぼ一定値になるため、同様の効果を得ることができる。
以上の動作原理のもと、具体的な実施形態について以下に説明を行う。
(第1の実施形態)
本発明に係る第1の実施形態では、複数のアンテナ素子を備える基地局装置と、基地局装置と通信をする複数の端末装置を具備する無線通信システムを例にして説明を行う。
図7は、第1の実施形態における基地局装置10の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、基地局装置10は、受信部100、送信部140、送受信ウエイト算出部120、インタフェース回路170、MAC層処理回路180、及び通信制御回路110を備えている。MAC層処理回路180はスケジューリング処理回路181を有している。
基地局装置10は、インタフェース回路170を介して、外部機器ないしはネットワークとのデータの入出力を行う。インタフェース回路170は、入力されるデータのうち、無線回線上で転送すべきデータを検出し、検出したデータをMAC層処理回路180に出力する。MAC層処理回路180は、基地局装置10全体の動作の管理制御を行う通信制御回路110の指示に従い、MAC層に関する処理を行う。ここで、MAC層に関する処理には、インタフェース回路170で入出力されるデータと、無線回線上で送受信されるデータの変換、MAC層のヘッダ情報の付与などが含まれる。この処理の中で、スケジューリング処理回路181は、空間多重伝送において同時に空間多重を行う端末装置の組み合わせを含む各種スケジューリング処理を行う。スケジューリング処理回路181は、スケジューリング結果を通信制御回路110に出力する。
本実施形態における空間多重伝送では、複数の端末装置宛に一度に信号を送信するため、複数系統の信号系列がMAC層処理回路180から送信部140に出力される。また、複数の端末装置から送信された複数系統の信号系列が受信部100からMAC層処理回路180に出力される。送受信ウエイト算出部120は、受信部100と送信部140とが空間多重してデータを送受信する際に用いる受信ウエイト及び送信ウエイトを管理する。
以下、基地局装置10における受信(アップリンク)に係る構成(受信部100)と、送信(ダウンリンク)に係る構成(送信部140)とに分けて説明する。
図8は、本実施形態における基地局装置10が備える受信部100の構成の一例を示す概略ブロック図である。同図に示すように、受信部100は、アンテナ素子101−1〜101−K、TDDスイッチ102−1〜102−K、ローノイズアンプ(LNA)103−1〜103−K、ローカル発振器104、ミキサ105−1〜105−K、フィルタ106−1〜106−K、A/D変換器107−1〜107−K、FFT回路108−1〜108−K、及び受信信号処理回路109−1〜109−Lを備えている。受信信号処理回路109−1〜109−Lと、TDDスイッチ102−1〜102−Kとは、図7に示した通信制御回路110に接続されている。また、FFT回路108−1〜108−Kと、受信信号処理回路109−1〜109−Lは、図7に示した送受信ウエイト算出部120と接続されている。なお、アンテナ素子101−1〜101−Kは、図1におけるアンテナ素子13−1〜13−4に対応する。
本実施形態の基地局装置10には、K個のアンテナ素子101−1〜101−Kそれぞれに対応する、TDDスイッチ102−1〜102−KからA/D変換器107−1〜107−Kまでの回路が並列に設けられ、A/D変換器107−1〜107−Kの出力にFFT回路108−1〜108−Kが接続されている。また、アップリンクのチャネル情報からダウンリンクのチャネル情報を推定するために、送受信で同一のアンテナ素子101−1〜101−Kを用いている。TDDスイッチ102−1〜102−Kが送信信号と受信信号との流れを切り替えている。
TDDスイッチ102−1〜102−Kは、アンテナ素子101−1〜102−Kを介して受信した信号をローノイズアンプ103−1〜103−Kに出力する。ローノイズアンプ103−1〜103−Kは、TDDスイッチ102−1〜102−Kから出力される信号を増幅して、ミキサ105−1〜105−Kに出力する。ローカル発振器104は、予め定められた周波数を有する局部発振信号を生成し、生成した局部発振信号を各ミキサ105−1〜105−Kに出力する。ここで、各ミキサ105−1〜105−Kに入力される局部発振信号は同一の信号であり、周波数及び位相がそろった局部発振信号が各ミキサ105−1〜105−Kに入力される。
ミキサ105−1〜105−Kは、ローノイズアンプ103−1〜103−Kから入力された信号に対し、ローカル発振器104から入力される局部発振信号を乗算してダウンコンバートしてフィルタ106−1〜106−Kに出力する。フィルタ106−1〜106−Kは、ミキサ105−1〜105−Kがダウンコンバートした信号に含まれる受信すべきチャネルの帯域外の信号を除去し、A/D変換器107−1〜107−Kに出力する。
A/D変換器107−1〜107−Kは、フィルタ106−1〜106−Kから入力されるベースバンド信号をデジタル化する。FFT回路108−1〜108−Kは、A/D変換器107−1〜107−Kから入力されるデジタル・ベースバンド信号が通常のデータ通信信号を含む信号であれば、当該デジタル・ベースバンド信号を周波数成分ごとの信号に分離する。この際、FFT回路108−1〜108−Kは、各周波数成分の信号に対して、OFDMシンボル(ないしはブロック伝送のブロック)ごとにガードインターバルを除去し、残りのサンプリングデータに対してFFT処理を施し、時間軸上の信号を周波数軸上の信号に変換し、当該信号を受信信号処理回路109−1〜109−Lに出力する。更に、FFT回路108−1〜108−Kは、通信制御回路110の制御に応じて、入力されるデジタル・ベースバンド信号が通常のデータ通信信号と異なるチャネル推定用のトレーニング信号であれば、当該信号を送受信ウエイト算出部120に出力する。FFT回路108−1〜108−Kに入力されるデジタル・ベースバンド信号がデータ通信信号を含む信号であるか、それとは異なるトレーニング信号であるかの判定は、通信制御回路110が行う。
ここで、「通常のデータ通信信号と異なるチャネル推定用のトレーニング信号」とは、本発明において送受信ウエイトの算出に用いるチャネル情報の推定処理において使用される図4に示すトレーニング信号3−1〜3−3信号であって、無線通信におけるユーザ・データないしは各種制御情報を収容した無線パケットとは全く異なる信号である。本発明では、第2の実施形態を除き、通常のデータ通信とは異なる信号処理(以下の図11に示すチャネル情報の短時間平均化処理等)を行う必要があり、この信号は図4にて説明した通り、従来のOFDM信号等とは異なるため、信号処理の内容も微妙に異なる。このため、FFT回路108−1〜108−Kでは、この通常のデータ通信信号と異なるチャネル推定用のトレーニング信号に対しては、FFTに伴う一連の処理を施さず、デジタル・ベースバンド信号のまま送受信ウエイト算出部120に出力し、送受信ウエイト算出部120においてFFTを含む処理を実施する機能が実装されているものとしている。ただ、詳細は後述するが、ここに記載された機能を実現するために、他の機能ブロックに同等の処理を実施することで代替することは当然可能であり、それも本発明の実現方法の一部であるとみなす。
受信信号処理回路109−1〜109−Lは、それぞれが、空間多重を用いてデータを送信する端末装置ないしは空間多重された信号系列に対応付けられ、受信信号から対応する端末装置のデータを検出する信号検出処理を行う。具体的には、受信信号処理回路109−1〜109−Lは、各周波数成分に分離した信号に対して、それぞれに割り当てられた送信元の端末装置に対応する受信ウエイトを送受信ウエイト算出部120から入力し、周波数成分ごとに受信ウエイトを乗算する。受信信号処理回路109−1〜109−Lは、周波数成分ごとに、アンテナ素子101−1〜101−Kそれぞれに対し、受信ウエイトを乗算した信号を加算合成し、加算合成した信号に対して信号検出処理を行い、得られたデータ出力#1〜#LをMAC層処理回路180に出力する。
具体的には、受信信号処理回路109−1〜109−Lは、OFDM(A)変調方式が用いられている場合、加算合成された信号に対してサブキャリアごとの復調処理を行い、SC−FDEが用いられている場合、加算合成された各周波数成分の信号に対し周波数軸上での信号等化処理を施し、その信号をIFFT処理で合成した信号に対する復調処理を行う。ここでの復調処理には、加算合成等の信号処理が施された後の信号に対するチャネル推定を含み、ここで推定されたチャネル情報を基に信号検出処理が行われる。更に、必要に応じて誤り訂正の復号処理を施し、データを出力する。MAC層処理回路180におけるMAC層上での信号処理などは、公知の技術を用いた処理と同じであり、ここでは説明を省略する。
受信信号処理回路109−1〜109−Lが信号処理を行う際、送信元の端末装置ごとに異なる受信ウエイトを用いる必要がある。通信制御回路110は、一連の通信に係る制御全般を管理するが、特に、どのタイミングでどの端末装置からの信号を受信するか、どの受信ウエイトを用いるのかを管理する。そのため、本実施形態における基地局装置10と端末装置との間のアクセス制御は、基地局装置10の集中制御により管理している。
なお、補足であるが、通信制御回路110は、自装置(基地局装置10)と端末装置との間の大まかなタイミングの同期に関して、GPS等を用いた絶対的な時刻・タイミングの同期を用いるようにしてもよい。
また、絶対的な時刻の同期の他にも、基地局装置10と端末装置との間の大まかな距離が分かっていれば、その距離に相当する伝搬遅延を端末装置に事前に設定しておき、端末装置は、基地局装置10のタイミングの基準となる信号の受信時刻に対し、所定のオフセットとして伝搬遅延を減算した時間にアップリンクの信号を送信開始するようにしてもよい。
具体的には、時分割多元接続(Time Division Multiple Access:TDMA)を用いたアクセス制御の例を用いれば、端末装置は、TDMAフレーム先頭のプリアンブル等のタイミング検出により得られるフレームタイミングを基準とし、フレーム内のスロット割り当ての内容を把握して通信の動作を行う。通常であれば、アップリンクのタイムスロットのタイミングで信号を送信するが、いわゆるタイム・アライメントと呼ばれる制御では、伝搬遅延を見込んでその遅延分だけ端末が自らの認識しているタイミングに対して先行した時間のタイミングで信号の送信を開始し、結果的に基地局装置10にその信号が到着する時刻を、基地局が認識しているタイミング通りになるように調整する。
この際に必要となる調整量は、実際の信号は基地局装置10から端末装置、更に基地局装置10へと往復することになるため、端末装置は伝搬遅延の2倍の時間だけ前倒しで送信を開始することになる。なお、このタイミングの調整は必ずしも端末装置で行わなくてもよく、基地局装置10が自装置と端末装置との距離ないしはその距離に相当する伝搬遅延を把握することができれば、基地局装置10において信号が受信される時刻をその時間分(伝搬遅延の2倍)だけ後ろ倒しに調整することで、タイミング調整を行うことも可能である。ないしは、直接的に基地局装置から端末装置に対し、その時間分だけ前倒しした時間を送信タイミングであると指示を行ってもよい。
このように、GPSを用いた絶対時刻の同期ないしはタイム・アライメント制御等のいずれかの手段で把握したタイミングで基地局装置10は受信処理を開始し、シンボルタイミングも既知として処理を行うことが可能である。これらのタイミング制御、アクセス制御、TDDスイッチ102−1〜102−Kの切り替え、受信ウエイトを読み出すときにおける送信元である端末装置情報の提供など、これらを合わせて全て通信制御回路110が制御・管理を行う。
次に、送受信ウエイト算出部120の構成について説明する。
図9は、本実施形態における送受信ウエイト算出部120の構成例を示す概略ブロック図である。同図に示すように、送受信ウエイト算出部120は、チャネル情報短時間平均回路121、相対成分取得回路122、受信ウエイト演算部130、受信ウエイト記憶回路125、キャリブレーション回路126、送信ウエイト演算部131、送信ウエイト記憶回路128、及びキャリブレーション係数記憶回路129を有している。受信ウエイト演算部130は、チャネル情報長時間平均回路123と、受信ウエイト算出回路124とより構成される。送信ウエイト演算部131は、送信ウエイト算出回路127より構成される。
チャネル情報短時間平均回路121は、通信制御回路110の指示に従い、FFT回路108−1〜108−Kから入力される信号に対してトレーニング信号の短時間平均化処理(必要に応じ周波数誤差補償を行い、更に時間軸上の信号をFFT処理により周波数成分ごとに分離する)を行い、端末装置ごとに、端末装置とアンテナ素子101−1〜101−Kそれぞれとの間のアップリンクのチャネル情報を周波数成分ごとに取得する。相対成分取得回路122は、例えばアンテナ素子101−1の複素位相を基準とし、各アンテナ素子101−1〜101−Kそれぞれのチャネル情報のアンテナ素子101−1との相対成分を取得する。チャネル情報長時間平均回路123は、端末装置ごとに、相対成分取得回路122が取得した離散的な時刻に取得された複数回分のアンテナ素子101−1〜101−Kそれぞれに対する相対成分から、アンテナ素子101−1〜101−Kそれぞれに対する相対成分の平均値を算出する長時間平均化処理を行い、算出した平均値をチャネル情報として出力する。
受信ウエイト算出回路124は、チャネル情報長時間平均回路123が出力したチャネル情報に基づいて、端末装置ごとに受信ウエイトを算出し、算出した受信ウエイトを受信ウエイト記憶回路125に出力する。受信ウエイト記憶回路125は、受信ウエイト算出回路124が算出した受信ウエイトを記憶する。
キャリブレーション回路126は、チャネル情報長時間平均回路123が出力したチャネル情報に予め定められたキャリブレーション係数を乗算してダウンリンクのチャネル情報を取得する。送信ウエイト算出回路127は、キャリブレーション回路126が取得したダウンリンクのチャネル情報に基づいて、端末装置ごとに送信ウエイトを算出し、算出した送信ウエイトを送信ウエイト記憶回路128に出力する。送信ウエイト記憶回路128は、送信ウエイト算出回路127が算出した送信ウエイトを記憶する。なお、送信ウエイト記憶回路128は、基地局装置10が備えるアップリンクに係る構成の一部にもなっている。
キャリブレーション係数記憶回路129には、アンテナ素子101−1〜101−Kごとに、アップリングのチャネル情報から、ダウンリンクのチャネル情報を算出する際に用いる各周波数成分におけるキャリブレーション係数を予め記憶している。
なお、送受信ウエイト算出部120にて行うチャネル情報の推定に係わる一連の処理、及びそれに後続する送受信ウエイトの算出とその記憶等の一連の処理は、全て周波数成分ごとに行われる。つまり、式(11)又は式(13)を用いて行う周波数誤差を推定した後は、周波数誤差を補正した式(10)で与えられる短時間平均化後の各mに対するサンプリングデータ〜Smに対してFFT処理を行い、各周波数成分に分離することでアップリンクの短時間平均化されたチャネル情報を取得した後、それを基に各周波数成分に対して一連の処理を行う。
図10は、本実施形態における基地局装置10における送信部140の構成の一例を示す図である。同図に示すように、送信部140は、送信信号処理回路141−1〜141−L、加算合成回路142−1〜142−K、IFFT&GI付与回路143−1〜143−K、D/A変換器144−1〜144−K、ローカル発振器145、ミキサ146−1〜146−K、フィルタ147−1〜147−K、及びハイパワーアンプ(HPA)148−1〜148−Kを更に備えている。送信信号処理回路141−1〜141−Lと、TDDスイッチ102−1〜102−Kとは、図7に示した通信制御回路110に接続されている。また、送信信号処理回路141−1〜141−Lは、図7に示した送受信ウエイト算出部120に接続されている。ここで、アンテナ素子101−1〜101−K、及びTDDスイッチ102−1〜102−Kは、アップリンクに係る構成(受信側)とで共通に用いられる。実際には、基地局装置10において、アップリンクに係る構成と、ダウンリンクに係る構成とが一体となって動作するものであるが、説明の都合上、分けて説明をしている。
送信信号処理回路141−1〜141−Lは、それぞれが、空間多重を用いてデータを送信する宛先の端末装置に対応付けられ、対応付けられた端末装置に送信するデータに対して信号処理を行う。具体的には、送信信号処理回路141−1〜141−Lは、送信すべきデータ入力#1〜#LがMAC層処理回路180から入力されると、OFDM(A)変調方式又はSC−FDEにおける所定の送信処理を実行する。データ入力#1〜#Lは、宛先の端末装置ないしは空間多重する信号系列それぞれに対応するデータであり、宛先の端末装置に対応付けられた送信信号処理回路141−1〜141−Lに入力される。送信信号処理回路141−1〜141−Lは、基地局装置10においてOFDM(A)変調方式が用いられる場合、サブキャリアごとの信号の変調処理を行う。送信信号処理回路141−1〜141−Lは、送信ウエイト記憶回路128に記憶されている送信ウエイトのうち、それぞれに割り当てられた宛先の端末装置に対応する各アンテナ素子101−1〜101−Kそれぞれの送信ウエイトを送信ウエイト記憶回路128から読み出し、変調処理を行ったサブキャリアごとの信号に対し、読み出した送信ウエイトをサブキャリアごとに乗算する。
また、送信信号処理回路141−1〜141−Lは、基地局装置10においてSC−FDEが用いられる場合、シングルキャリアの変調処理が施された信号を、送信信号のブロック単位でFFTにより各周波数成分に分離する。送信信号処理回路141−1〜141−Lは、送信ウエイト記憶回路128に記憶されている送信ウエイトのうち、宛先の端末装置に対応した送信ウエイトを読み出し、周波数成分に分離した信号に対し、読み出した送信ウエイトを周波数成分ごとに乗算する。
その後、送信信号処理回路141−1〜141−Lは、OFDM(A)変調方式及びSC−FDEのいずれが用いられる場合においても、送信ウエイトを乗算したアンテナ素子ごとの各周波数成分の信号を加算合成回路142−1〜142−Kに出力する。加算合成回路142−1〜142−Kは、送信信号処理回路141−1〜141−Lが生成した信号を周波数成分ごとに合成し、IFFT&GI付与回路143−1〜143−Kに出力する。IFFT&GI付与回路143−1〜143−Kは、加算合成回路142−1〜142−Kにおいて合成された信号に対しIFFT処理を施し、周波数軸上から時間軸上の信号に変換し、更にガードインターバルを付与し、必要に応じて波形整形を行い送信すべきデジタル・ベースバンド信号を生成し、D/A変換器144−1〜144−Kに出力する。なお、デジタル・ベースバンド信号は、アンテナ素子101−1〜101−Kそれぞれに対応し、個別に信号処理される。
D/A変換器144−1〜144−Kは、IFFT&GI付与回路143−1〜143−Kから入力された信号をアナログ信号に変換しミキサ146−1〜146−Kに出力する。
ローカル発振器145は、アップコンバートに用いられる局部発振信号であって所定の周波数を有する局部発振信号をミキサ146−1〜146−Kに出力する。
ミキサ146−1〜146−Kは、D/A変換器144−1〜144−Kから入力されるアナログ信号に対し、ローカル発振器145から入力される局部発振信号を乗算して無線周波数にアップコンバートした信号をフィルタ147−1〜147−Kに出力する。なお、ミキサ146−1〜146−Kに入力される局部発振信号は同一の信号であり、周波数及び位相がそろった局部発振信号が各ミキサ146−1〜146−Kに入力される。
フィルタ147−1〜147−Kは、ミキサ146−1〜146−Kから入力される信号に含まれ送信すべきチャネルの帯域外の信号を除去し、ハイパワーアンプ148−1〜148−Kに出力する。
ハイパワーアンプ148−1〜148−Kは、フィルタ147−1〜147−Kから入力される信号を増幅し、TDDスイッチ102−1〜102−Kを介してアンテナ素子101−1〜101−Kより送信する。
通信制御回路110は、更に、送信タイミングや、宛先の端末装置の管理、TDDスイッチ102−1〜102−Kの切り替えの制御を行う。
なお、以上の説明では、IFFT&GI付与回路143−1〜143−Kにおいて行う信号処理が加算合成回路142−1〜142−Kの後段において処理される場合について説明を行ったが、IFFT&GI付与回路143−1〜143−Kにおいて行う信号処理を送信信号処理回路141−1〜141−Lにて実施し、時間軸上のデジタル・サンプリングデータとした上で、各サンプリング時刻のサンプリングデータを加算合成回路142−1〜142−Kにて全宛先の端末装置に亘り加算合成するという処理に置き換えても、同等の信号処理が可能であり、どちらの構成を選択しても構わない。ただし、この場合、IFFTを行う回数が上記説明よりも多くなるため、全体的な回路規模抑制の観点からは図10の構成が好ましいと思われる。
(チャネル推定から送受信ウエイトの算出処理)
以下、図11から図15を用いて、本実施形態の基地局装置10におけるチャネル推定から送信ウエイト及び受信ウエイトの算出までの処理を説明する。これらの一連処理は、端末装置と通信を開始する前に行うことが基本であるが、一旦、これらの処理を行った上で、逐次学習を行いながらチャネル情報の精度の向上、すなわち送信ウエイト及び受信ウエイトの精度の向上を図ることも可能である。
また、基地局装置10は、ブロードバンドサービスの中で利用されることを想定し、ある程度の帯域幅で通信を行う場合を対象とした。このため、OFDM(A)変調方式や、SC−FDE等の通信方式が用いられることを想定し、ブロック単位で各周波数成分を分離して信号処理をする説明を行っている。
アップリンクのチャネル推定においては、例えば、図4に示したようなトレーニング信号を端末装置から連続的に送信し、それを基地局装置10が受信し、比較的短い時間での平均化処理(図11)を行う。更に、基地局装置10において、各アンテナ素子101−1〜101−Kそれぞれの相対的なチャネル情報の差を示す相対成分を取得し(図12)、長時間での平均化処理(図13)を行う3段階の信号処理を行う。
このようにして求めたアップリンクのチャネル情報に対し、キャリブレーション係数を乗算してダウンリンクのチャネル情報を取得し(図14)、アップリンク及びダウンリンクのチャネル情報に基づいて送信ウエイト及び受信ウエイトを算出する(図15)。
以下、各処理を説明する。
図11は、本実施形態におけるアップリンクのチャネル情報を取得する短時間平均化処理を示すフローチャートである。
基地局装置10において、チャネル情報短時間平均回路121は、端末装置から短時間平均化用のチャネル推定のトレーニング信号の受信が開始されると(ステップS101)、サンプリングのカウンタとしてのm及びMをゼロにリセットする(ステップS102)。ここで、カウンタとは、式(10)におけるm、Mのことであり、第Mシンボルの第mサンプルの意味である。チャネル情報短時間平均回路121は、FFT回路108−1〜108−Kから入力されるトレーニング信号に対してサンプリングを行い、サンプリングした信号をS(M) とする(ステップS103)。
チャネル情報短時間平均回路121は、サンプリング周期Δtが経過するたびに、カウンタmに「1」を加算し(ステップS104)、カウンタmがデータ数Nと一致した(m=N)か否かを判定し(ステップS105)、カウンタmがデータ数Nと一致していない(m≠N)場合(ステップS105:No)、ステップS103に処理を戻し、ステップS103〜S105を繰り返す。ここで、データ数Nは、1シンボル当たりのサンプル数であり、予め定められた値である。
一方、カウンタmがデータ数Nと一致した場合(ステップS105:Yes)、チャネル情報短時間平均回路121は、1シンボル分のサンプリングが完了したとみなし、次のシンボルをサンプリングするために、カウンタmに0を代入し、カウンタMに「1」を加算する(ステップS106)。
チャネル情報短時間平均回路121は、カウンタMが所定の値(式(10)のM)に達したか否かに応じてサンプリング終了か否かを判定し(ステップS107)、一続きのサンプリングが完了していない場合(ステップS107:No)、ステップS103に処理を戻し、ステップS103〜S106の処理を繰り返して行う。ここで、一続きのサンプリングとは、予め定められたシンボル数M0のサンプリングのことである。
一方、一続きのサンプリングが完了した場合(ステップS107:Yes)、チャネル情報短時間平均回路121は、式(12)を用いて^S(M,M’)を算出し(ステップS108)、式(13)の解ないしは式(11)を最大にする周波数誤差Δfを算出する(ステップS109)。
チャネル情報短時間平均回路121は、算出した周波数誤差Δfを用い、式(10)から複数周期に亘り加算平均化されたサンプリングデータ〜Sを算出する(ステップS110)。
チャネル情報短時間平均回路121は、短時間平均されたサンプリングデータ〜Sに対してFFTを行い、各周波数成分の情報を算出し(ステップS111)、短時間平均化の処理を終了する(ステップS112)。
なお、周波数誤差Δfが無視可能なほどに小さいことが事前に分かっている場合(設計上、この様な設定となっている場合)、ないしは短時間平均化を行う時間(T×M)が十分に短く設定されている場合には、周波数誤差Δfの補正に相当する処理S108及びS109を省略し、Δf=0として処理S110を直接実施することも可能である。
チャネル情報短時間平均回路121は、アンテナ素子101−1〜101−Kごとに、複数の周期に亘るトレーニング信号を周期ごとに分離し、分離した各トレーニング信号を合成して短時間の平均化処理を行う。更に、各アンテナ素子101−1〜101−Kで受信した信号に含まれる異なる周期を有する各周波数成分の信号をFFTにて周波数成分ごとに分離し、分離した周波数成分ごとの信号から各アンテナ素子101−1〜101−Kと端末装置との間のアップリンクにおける各周波数成分のチャネル情報を取得する。
図12は、本実施形態におけるアップリンクのチャネル情報の相対成分を取得する相対成分取得処理を示すフローチャートである。相対成分取得回路122は、チャネル情報短時間平均回路121が第1のアンテナ素子101−1から第Kのアンテナ素子101−Kそれぞれに対応する信号に対して短時間平均化処理を終了すると(ステップS121−1〜S121−K)、短時間平均化処理が終了した各アンテナ素子101−1〜101−Kに対応するチャネル情報における第k周波数成分^h(k) ,…,^h(k) がチャネル情報短時間平均回路121から入力される(ステップS122−1〜122−K)。
相対成分取得回路122は、第1のアンテナ素子101−1におけるチャネル情報(^h(k) )と、その複素共役(^h(k) とから、オフセット値e−jφ(k)(=(^h(k) /‖^h(k) ‖)を算出する(ステップS123)。ここで「‖x‖」は、xの絶対値を表す。なお、このオフセット値は周波数成分ごとに個別に求める。
相対成分取得回路122は、算出した第k周波数成分に対するオフセット値e−jφ(k)を各アンテナ素子101−1〜101−Kに対応する第k周波数成分^h(k) 、…、^h(k) に乗算し(ステップS124−1〜S124−K)、相対的な複素位相関係を示すチャネル情報〜h(k) ,…〜h(k) を求め、処理を終了する(ステップS125−1〜S125−K)。
上述のように、相対成分取得回路122は、第1のアンテナ素子101−1のチャネル情報を基準として、各アンテナ素子101−1〜101−Kの相対的なチャネル情報〜h(k) ,…〜h(k) を算出する。なお、相対成分取得回路122は、端末装置ごとに、全ての周波数成分について上記のステップS121−1〜ステップS125−Kまでの処理を行い、各端末装置に対する全ての周波数成分における短時間平均のチャネル情報の相対成分〜h(k) ,…,〜h(k) を算出する。
図13は、本実施形態におけるアップリンクのチャネル情報の長時間平均化処理を示すフローチャートである。上述の図11及び図12の各処理は、連続又は離散的な時間で複数回実施され、各処理において算出された短時間平均のチャネル情報を基に、長時間平均化処理において長時間平均化されたチャネル情報を算出する。
チャネル情報長時間平均回路123は、1回目からQ回目の短時間平均化処理(相対成分取得を含む)が完了すると(ステップS131−1〜131−Q)、相対成分取得回路122から短時間平均のチャネル情報〜h(k) [q],…〜h(k) [q](q=1,…,Q)が入力される(ステップS132−1〜S132−Q)。ここで、短時間平均のチャネル情報の相対成分〜h(k) [q]は、q回目に算出された第1のアンテナ素子101−1の第k周波数成分に対するチャネル情報である。したがって、ステップS132−1〜S132−Qは時間的に異なるタイミングで行われる処理に相当する。なお、長時間平均化処理の対象になる回数Qは、無線通信システムを運用する環境などに基づいて予め定められる。
また、チャネル情報長時間平均回路123は、次式(18)を用いて、長時間平均のチャネル情報h(k) (i=1,…,K)を算出する(ステップS133)。なお、ステップS132−1〜S132−Qは時間的に異なるタイミングで処理が完了するため、長時間平均化処理であるステップS133の実施までの間、このチャネル情報の相対成分を一時的にメモリに記憶しておき、一度にステップS133を実施しても構わない。ないしは、ステップS133のΣによる総和の個々の加算処理を、ステップS132−1〜S132−Qの個々の処理が完了毎に実施し、次の処理までの間メモリに記憶しておいて、加算の都度、それらを読み出してステップS133を実施しても構わない。
Figure 2013123161
また、チャネル情報長時間平均回路123は、各アンテナ素子101−1〜101−Kごとに、各周波数成分のチャネル情報それぞれを平均化した長時間平均のチャネル情報h(k) を算出すると、長時間平均化処理を終了する(ステップS134)。なお、図15を用いて説明する受信ウエイトの算出は、ここで取得したアップリンクのチャネル情報を用いて行われることになるが、これらの処理を行うにあたり、一時的にメモリに記憶しておいても構わない。
以上の処理により、アップリンクのチャネル情報が直接的に取得できる。また、本実施形態では、相対成分取得処理(図12)を行っているので、1回目からQ回目までの各短時間平均処理における位相のずれの影響を受けることなく長時間平均のチャネル情報を算出することができる。なお、上述のチャネル情報h(k) 等の右肩の添え字kは周波数成分を識別する番号(サブキャリア番号)を表している。
図14は、本実施形態におけるダウンリンクのチャネル情報を取得する処理を示すフローチャートである。基地局装置10は、基地局装置10から端末装置へのダウンリンクに関しては、アップリンクのように直接的にチャネル情報を取得することが困難なので、アップリンクのチャネル情報を基にダウンリンクのチャネル情報を推定する。
基地局装置10において、キャリブレーション回路126は、チャネル情報長時間平均回路123からアップリンクのチャネル情報h(k) が入力され(ステップS142)、入力されたチャネル情報h(k) に対する第iのアンテナ素子101−iにおける第k周波数成分に対応するキャリブレーション係数C(k) をキャリブレーション係数記憶回路129から読み出す(ステップS143)。
キャリブレーション回路126は、入力されたチャネル情報h(k) と、読み出したキャリブレーション係数C(k) とを乗算し(ステップS144)、乗算結果をダウンリンクのチャネル情報として、処理を終了する(ステップS145)。この場合も、図15を用いて説明する送信ウエイトの算出は、ここで取得したダウンリンクのチャネル情報を用いて行われることになるが、これらの処理を行うにあたり一時的にメモリに記憶しておいても構わない。
キャリブレーション回路126は、各アンテナ素子101−1〜101−Kそれぞれに対して、周波数成分ごとに上述のステップS142からステップS144の処理を行う。
図15は、本実施形態の基地局装置10における送信ウエイト及び受信ウエイトを算出する処理を示すフローチャートである。アップリンクにおけるチャネル情報に対する受信ウエイトの算出処理と、ダウンリンクにおけるチャネル情報に対する送信ウエイトの算出処理とは同等であるので、ここでは、ダウンリンクにおける送信ウエイトを算出する処理について説明し、アップリンクにおける受信ウエイトを算出する処理の具体的な説明を省略する。また、これらの処理はある端末装置に着目して説明するものであり、全ての端末装置に対して同様の処理を行う。
送信ウエイト算出回路127は、処理を開始すると(ステップS151)、第iのアンテナ素子101−iにおける第k周波数成分のチャネル情報h(k) がキャリブレーション回路126から入力される(ステップS152)。
送信ウエイト算出回路127は、キャリブレーション回路126から入力されたチャネル情報h(k) の複素共役(h(k) を算出し、算出した複素共役(h(k) をチャネル情報h(k) の絶対値で除算した値を送信ウエイトw(k) にする(ステップS153)。すなわち、送信ウエイト算出回路127は、次式(19)を用いて、送信ウエイトw(k) を算出する。
Figure 2013123161
送信ウエイト算出回路127は、算出した送信ウエイトw(k) を送信ウエイト記憶回路128に記憶させ(ステップS154)、処理を終了する(ステップS155)。
送信ウエイト算出回路127は、各アンテナ素子101−1〜101−Kそれぞれに対して、周波数成分ごとに全ての端末装置に対して上述のステップS152からステップS153の処理を行う。
なお、受信ウエイト算出回路124は、送信ウエイト算出回路127と同様の演算により、チャネル情報長時間平均回路123から入力されるチャネル情報h(k) から受信ウエイトを算出し、算出した受信ウエイトを受信ウエイト記憶回路125に記憶させる。
なお、一般に複数のアンテナで受信した場合の信号合成のためのウエイトとしては、フェージング等の影響によりアンテナごとの信号の受信レベルに大きな差が見られる場合があり、その場合には受信レベルの低いアンテナ素子の受信信号の雑音の影響を抑制するために、以下に示す最大比合成のウエイトを用いることが多い。したがって、本実施形態では式(19)の代わりに、以下に示す式(20)を用いることも可能である。
Figure 2013123161
式(19)と式(20)との二つのウエイトの違いは、第iアンテナ素子の係数の大きさ(絶対値)がアンテナ素子ごとに微妙に異なるか同一であるかの差であり、式(20)では相対的に雑音のレベルが高い(すなわち受信レベルの低い)信号の重みを軽くする効果を取り込んでいる。しかし、長時間平均化されたチャネル情報との乗算後にはともに複素位相がゼロないし一定値となるように調整されている点では両者は共通している。広義の意味では式(20)も同位相合成のウエイトの一種といえる。本実施形態では、このように長時間平均化されたチャネル情報との乗算後に複素位相がゼロないし一定値となるウエイトであればその他のウエイトを用いても同様の効果を得ることができる。
一般には、送信ウエイトとしては式(19)のウエイトを、受信ウエイトとしては式(20)のウエイトを用いるのが好ましい。なお、本実施形態では基地局装置と端末装置の間の見通しが確保できるように設置されることが推奨されるので、非常に多くの多重反射波が存在するマルチパス環境とは異なり見通し波が支配的な環境であるため、アンテナ素子ごとの受信レベルの差は比較的つきにくい。この結果、式(20)で求めたウエイトは、実効的には式(19)と等価なウエイトとなる。
なお、送受信ウエイトは、アンテナ素子ごとのウエイトの値を各要素の成分として構成されるベクトル(ウエイトベクトル)の示す方向が実効的な意味をもつ。このため、あるウエイトベクトルに所定の係数を乗算したベクトルは方向的には同一であるため、アンテナ素子ごとに一定の係数が乗算されたウエイトベクトルは乗算される係数に依存せずに全て等価である。つまり、式(19)や式(20)で与えられる各ベクトルの成分全体に共通の係数が乗算されたウエイトは、全て本発明におけるウエイトと等価なものである。
図15に関する以上の説明は送信ウエイトの算出に関するものであったが、受信ウエイトに関しても対応する回路(例えば、キャリブレーション回路126に対してチャネル情報長時間平均回路123、送信ウエイト算出回路127に対して受信ウエイト算出回路124、送信ウエイト記憶回路128に対して受信ウエイト記憶回路125)に置き換えて、同様の処理を行うことで受信ウエイトの算出処理を実施することができる。
図11から図15に示した上述の処理を事前に実施し、そこで得られた送信ウエイト及び受信ウエイトを送信ウエイト記憶回路128及び受信ウエイト記憶回路125に記憶させておく。なお、図11及び図15に示した処理は、通信開始後も適当な周期で通信を一時的に休止させて実行することが可能である。そこで得られた短時間平均のチャネル情報を用いて図13から図15に示した処理を行い、逐次、送信ウエイト及び受信ウエイトを更新するようにしてもよい。
(送信処理)
次に、基地局装置10における信号の送信処理について図を参照して説明する。
図16は、本実施形態における基地局装置10の送信処理を示すフローチャートである。先にも触れたが、ここではOFDM(A)変調方式ないしはSC−FDEを用いている場合について説明する。
基地局装置10において、送信処理が開始されると(ステップS161)、通信制御回路110が公知の技術を用いて空間多重の対象となる端末装置を選択する(ステップS162)。なお、ここでは同時に空間多重する端末装置の選択方法、すなわちスケジューリング方法の詳細についての説明を省略する。送信信号処理回路141−1〜141−Lは、入力されるデータ入力#1〜#Lから各周波数成分の送信信号の生成を行う(ステップS163−1〜S163−L)。
ステップS163−1〜S163−Lにおいて、送信信号処理回路141−1〜141−Lが行う処理は、例えば、OFDM(A)変調方式を用いている場合、MACレイヤの信号処理を施した無線パケットを構成するビット列に対し必要に応じて誤り訂正のための符号化処理、タイミング検出信号やチャネル推定用信号等からなるオーバーヘッド情報(プリアンブル信号)の付与等を施し、サブキャリアごとにビットを分けて所定の変調方式(例えばBPSK、QPSK、16QAM等)での信号点のマッピング処理等を行う。また、SC−FDEを用いている場合、送信信号処理回路141−1〜141−Lは、OFDM(A)変調方式と同様にMACレイヤの信号処理を施した無線パケットを構成するビット列に対し必要に応じて誤り訂正のための符号化処理、タイミング検出信号やチャネル推定用信号等からなるオーバーヘッド情報(プリアンブル信号)の付与等を施し、所定の変調方式(例えばBPSK、QPSK、16QAM等)での信号点のマッピング処理等のシングルキャリアの送信信号処理を行い、周波数軸上での送信ウエイト乗算処理を行うためにブロック単位でFFTを実施し、送信信号の各周波数成分を生成する。
また、送信信号処理回路141−1〜141−Lは、通信制御回路110が選択した端末装置を示す情報に基づいて、自回路に割り当てられた端末装置に対応し各アンテナ素子101−1〜101−Kそれぞれの各周波数成分の送信ウエイトを送信ウエイト記憶回路128から読み出す(ステップS164−1〜S164−L)。
送信信号処理回路141−1〜141−Lは、それぞれが各アンテナ素子101−1〜101−Kで送信する信号ごとに、ステップS163−1〜S163−Lにおいて生成した各周波数成分に分離した信号と、ステップS164−1〜S164−Lにおいて読み出した各周波数成分の送信ウエイトとを乗算し、加算合成回路142−1〜142−Kに出力する(ステップS165−1〜S165−L)。
加算合成回路142−1〜142−Kは、それぞれが各送信信号処理回路141−1〜141−Lから入力された信号を加算合成し、この信号に対しIFFT&GI付与回路143−1〜143−Kにて周波数軸上の信号から時間軸上の信号に変換すると共にガードインターバルが付与され、必要に応じて波形整形等の一連の処理を行う(ステップS166−1〜S166−K)。この信号それぞれに対して、D/A変換器144−1〜144−KによるサンプリングデータのD/A変換や、ミキサ146−1〜146−Kによる無線周波数へのアップコンバート、フィルタ147−1〜147−Kによる帯域外信号の除去、ハイパワーアンプ148−1〜148−Kによる増幅が行われ、各アンテナ素子101−1〜101−Kから送信され(ステップS167−1〜S167−K)、送信処理が終了する(ステップS168−1〜S168−K)。
これらの一連の処理(ステップS163−1〜S163−LからステップS167−1〜167−K)は、無線パケットが複数シンボル又は複数ブロックに亘る場合には、OFDMシンボルやSC−FDEのブロック単位での処理がシンボル数ないしブロック数分だけ引き続き実施されることで無線パケット全体の送信信号処理が実施される。
本実施形態における基地局装置10の送信処理の特徴としては、ステップS164−1〜S164−Lにおいて送信ウエイト記憶回路128に記憶されている送信ウエイトのうち、宛先の端末装置に対応する送信ウエイトを読み出して利用する点であり、端末装置の組み合わせや時々刻々と微妙に変化するチャネル情報を意識せず、事前に算出された各端末装置に対応する送信ウエイトを利用することである。すなわち、受信ウエイト算出回路124が算出する空間多重伝送のための受信ウエイトと、送信ウエイト算出回路127が算出する空間多重伝送のための送信ウエイトとは、同時に空間多重を行う端末装置の組み合わせに依存しないウエイトであることを特徴としている。
これにより、送信する都度、送信ウエイトを算出することなく、送信処理を行うことができる。また、利用する送信ウエイトが端末装置の組み合わせに依存しないということは、送信ウエイト記憶回路128に記憶すべき情報量は、周波数成分の数(例えばサブキャリア数)×収容する端末装置数の送信ウエイトベクトルのみで良く、端末装置数が増えた場合においても送信ウエイト記憶回路128の記憶容量の増加を抑制することができるという特徴も併せ持つ。
また、このようにして送信された信号は、各端末装置のアンテナ素子において、基地局装置10のアンテナ素子101−1〜100−Kから送信された信号が、周波数成分ごとに同位相で受信されることになる。各端末装置において受信された信号は、特に基地局装置10が行う各種信号処理を意識することなく受信できる通常の信号として処理することが可能である。
また、ステップS163−1〜S163−Lにおいて行うチャネル推定用信号等のオーバーヘッド情報(プリアンブル信号)の付与においては、複数の端末装置に対して共通のパターンの信号を利用することが可能である。これはステップS165−1〜S165−Lにおいて行う送信ウエイトの乗算により、各端末装置において他の端末装置宛の信号が十分に抑圧された状態で受信可能となるために、各端末装置に個別のプリアンブル信号を割り当てる必要がないからである。この結果、高次の空間多重を行いながらも、空間多重数に依存したシンボル数のプリアンブル信号を付与する必要が無くなり、MACレイヤの効率の低下を抑えることが可能となる。
(受信処理)
図17は、本実施形態における基地局装置10の受信処理を示すフローチャートである。端末装置が送信する信号は、本実施形態における基地局装置10が実施する各種信号処理を意識することなく、通常の信号として送信される。ここでは、同時に空間多重する端末装置の選択方法、即ちスケジューリング方法の詳細は省略するが、通信制御回路110は公知の技術を用いて、空間多重してデータを伝送する端末装置を選択する。
基地局装置10において、受信処理が開始されると(ステップS171)、通信制御回路110は、空間多重してデータを伝送する端末装置の組み合わせを選択し(ステップS172)、アップリンクに関するスケジューリング内容を選択された端末装置に対して通知する(ステップS173)。ここでの通知方法は、例えばTDMAフレームを用いた基地局集中制御を採用するWiMAXのようなシステムであれば、フレーム先頭部分におけるUL−MAP(アップリンクの割り当てマップ)にて、割り当てのあるサブキャリア番号やタイムスロット(OFDMシンボル位置)、更には継続する時間(OFDMシンボル数)などを通知する。もちろん、他の方法で割り当てを端末装置に通知してもよいし、アクセス制御の方法次第では端末装置側に通知するステップS173を省略することも可能である。なお、ステップS172における端末装置の組み合わせは、上位の装置から指示された端末装置の組み合わせを用いるようにしてもよい。
ステップS173の処理に合わせて、送信元の端末装置に対応する受信ウエイトのうち、自回路に割り当てられた端末装置に対応し各アンテナ素子101−1〜101−Kそれぞれの各周波数成分の受信ウエイトを受信ウエイト記憶回路125から読み出しを行う(ステップS176)。
これと並行して、割り当て指示(端末装置への送信指示)を行った所定のタイミングから各アンテナ素子101−1〜101−Kを介して信号を受信する(ステップS174−1〜S174−K)。ここでの受信とは、受信した信号ないしそれをダウンコンバートした信号に対し、アナログ/デジタル変換を施す処理までを含む。その後、FFT回路108−1〜108−Kにてシンボル単位で信号を抽出し、ガードインターバルを除去してFFT処理を実施し、時間軸上の信号を周波数軸上の信号に変換するなどの各種の受信信号処理を実施する(ステップS175−1〜175−K)。
更に、受信信号処理回路109−1〜109−Lは、受信ウエイト記憶回路125から読み出した受信ウエイトと、周波数成分ごとに分離した受信信号とを乗算する(ステップS177−1〜S177−K)。受信信号処理回路109−1〜109−Lは乗算結果を送信元の端末装置ごとに加算合成する(ステップS178−1〜S178−L)。ステップS177−1〜S177−K及びステップS178−1〜S178−Lにおける処理は、それ全体で受信信号ベクトルに受信ウエイト行列を乗算する演算に相当する。
受信信号処理回路109−1〜109−Lは、このようにして信号分離された各信号系列(データ出力#1〜#L)に対して、所定の受信信号処理を行い(ステップS179−1〜S179−L)、一連の処理を終了する(ステップS180−1〜S180−L)。
ここで、所定の受信信号処理とは、空間多重された信号を信号分離した後の処理である。したがって、通常のSISO通信と同様の信号処理である。また、受信信号処理には、OFDM(A)変調方式が用いられている場合、サブキャリアごとの復調処理を含み、SC−FDEが用いられている場合、各周波数成分の受信信号に対し周波数軸上での信号等化処理を施し、その信号をIFFT処理で合成した信号に対するシングルキャリアの復調処理を含む。更には、必要に応じて誤り訂正の復号処理などを実施してもよい。当然ながら、以上の処理の後段でMACレイヤ等の信号処理も行われるが、公知の技術による処理と変わらないためここでは省略する。
なお、シンボルタイミングに関しては、各アンテナ素子101−1〜101−Kでの受信信号の受信レベルが非常に微弱な場合には、受信信号からタイミング検出を行うのは困難な場合がある。この場合には、例えばGPSを用いた絶対的な時間同期の他に、周期的なフレーム構成を用いて、直前のフレームタイミング検出用の信号などで得られたタイミングを基準にして、後続するフレームの受信タイミングを推定するなど、如何なる同期手段を用いて受信信号の受信タイミング及びシンボルタイミングを決定するようにしてもよい。このとき、端末装置は送信タイミングを決定する際に、同期された受信タイミングを基準として基地局からの指示等に従い所定のタイミングで信号を送信すればよい。
上述のように、本実施形態の無線通信システムでは、基地局装置10及び端末装置が双方ともに比較的高所に設置され、この結果として見通し波ないしは固定的な巨大な建築物等からの安定的な反射波が基地局装置及び端末装置間で期待される環境で、見通し波及び安定した反射波の合成により与えられる安定した入射波成分に対応するチャネル情報を取得する。基地局装置10は、取得したチャネル情報に基づいて、送信ウエイト及び受信ウエイトを生成し、この受信ウエイトを用いることで基地局装置における信号の同位相合成を実現する。また、基地局装置10が生成した送信ウエイトを用いて複数のアンテナ素子101−1〜101−Kから信号を送信することで、端末装置は伝搬路上において合成された信号を高い精度で位相が揃えられた信号として受信することができる。
また、基地局装置10におけるチャネル情報の取得では、短時間平均を行うことでチャネル推定の推定精度を向上している。更に、アンテナ素子101−1〜101−Kを介して受信する離散した時刻の複数の受信信号を合成することにより、各アンテナ素子101−1〜101−Kを介して受信する受信信号におけるランダムな時変動成分の安定的な成分に対する相対的な比率を統計的に抑圧することができ、時変動の影響を低減させることができる。
これにより、端末装置とアンテナ素子101−1〜101−Kとの間のチャネル情報の取得が困難なほどに、各アンテナ素子101−1〜101−Kによる回線利得が不足する環境であっても、各アンテナ素子101−1〜101−Kから送信された信号が端末装置において同位相合成される送信ウエイトを算出することができる。
また、送信ウエイト及び受信ウエイトの算出に係わるチャネル情報のフィードバックにおいて、リアルタイムのチャネル情報のフィードバックを頻繁に行う場合には問題となるチャネル推定のためのオーバーヘッドによる伝送効率の低下を回避することができる。実際、サービス開始前に長時間平均化チャネル情報を取得しておけば、データ通信を行うサービス中にはチャネル情報フィードバックを一切行わなくても運用可能である。更には従来であれば逐次行われていた送信ウエイト及び受信ウエイトの算出に伴う演算の負荷も、無線通信システムの運用開始時に1回だけ算出すれば良くなるため、通常運用時の負荷の低減を図ることも可能である。これらの送信ウエイト及び受信ウエイトの算出は、リアルタイム処理が前提の従来技術では短時間での演算処理完了が求められる場合が多く、このために高速演算が可能なハードウエア処理が前提となることが多かった。しかし、従来技術では膨大な演算量ゆえにハードウエア規模が増大する問題があったが、基地局装置10によれば無線通信システムの運用開始時に時間をかけて演算処理を行うことが許されるようになるために、演算処理時間の遅いソフトウエア処理であっても対処可能になり、全体的なハードウエア規模を低減するといった副次的な効果も得ることができるようになる。
このように、上述の送信ウエイト及び受信ウエイトを利用してK個のアンテナ素子(無線モジュール)を用いて送受信を行うことで、総送信電力が一定の条件下において最大で10Log10K[dB]の回線利得を得ることが可能となる。この結果、総送信電力を抑える省エネ効果や、高出力の高価な線形性の高い高利得アンプの代わりに安価なアンプが利用可能になる経済効果などを得ることができる。これと同時に、L系統の信号系列を同時に同一周波数上で空間多重することで、伝送容量の増大、すなわち周波数利用効率の向上をもたらすことができる。
また、図37に示した基地局装置80の受信部85は、信号を受信する都度、チャネル推定に用いるプリアンブル信号等をA/D変換器856−1〜856−Kからチャネル情報推定回路861に出力し、チャネル情報推定回路861が受信信号のチャネル推定を行う。チャネル推定の結果は、マルチユーザMIMO受信ウエイト算出回路862に入力され、ここでMIMOのチャネル行列に対する所定の演算処理から受信ウエイトを算出し、これを受信信号処理回路858−1〜858−Lに出力し、これを基に受信信号検出処理を行う。最も典型的な処理例では、MIMOチャネル行列の逆行列ないしは擬似逆行列を受信ウエイトとして算出するが、当然ながら、宛先の端末装置の組み合わせが異なる場合、仮に着目する端末装置のチャネル情報(チャネルベクトル)として同一のベクトルを選択したとしても、他のチャネルベクトルが異なるときには逆行列演算により求められる受信ウエイト行列を構成する該当端末装置に対応した行ベクトルは異なるものとなり、受信ウエイトは異なる。
これに対して、本実施形態における基地局装置10は、信号を受信する都度、空間多重された信号系列を分離するための受信ウエイトを生成するための情報取得を目的としてチャネル推定をし、推定結果から受信ウエイトを算出することは不要である。この点が図37に示した基地局装置80の受信部85とは本質的に異なる。特に、基地局装置10では、長時間平均を行った多数のアンテナ素子101−1〜101−Kに対応するチャネル情報を基に、事前に算出した受信ウエイトを用いる。
従来のマルチユーザMIMO技術において信号を受信する都度受信ウエイトを算出するのは、空間多重されている各信号系列(データ入力#1〜#L)からの干渉信号の強度が無視できないレベルであり、これを抑圧するためにヌル制御として他の端末装置の信号を合成時にキャンセルする係数を算出する必要があるからである。この信号抑圧のための信号処理が先に示した(擬似)逆行列などの算出であるが、行列サイズの3乗に比例して演算負荷が増大し、リアルタイム処理が不可能になる傾向にある。
本実施形態における基地局装置10は、端末装置の組み合わせが定まると、当該組み合わせに含まれる端末装置に対応した受信ウエイトを読み出して受信信号処理を行うのみでよいので、受信ウエイト算出演算に関してリアルタイム処理を必要としない(すなわち受信ウエイトはメモリからの単純な読み出しだけでよい)ため、膨大なアンテナ素子数を想定しても現実的なハードウエア構成で実現可能である。
また、基地局装置80は、マルチユーザMIMO技術において信号を受信する都度、同時に空間多重される端末装置ごとにそれぞれ個別にチャネル推定を行う必要があり、その結果を用いて受信ウエイトを算出していた。この個別のチャネル推定のためには、空間多重数と同数の直交プリアンブルないしは空間多重数と同数のシンボル数のチャネル推定用信号のプリアンブル信号が必要であった。この場合、空間多重数と同数のシンボル数だけのオーバーヘッドが発生することから、MACレイヤの効率の低下につながっていた。しかし本発明では、空間多重されている端末装置ごとにチャネル推定を行うことなくステップS177−1〜S177−Kにて受信ウエイトを受信信号に対して乗算し、その結果として送信元の端末装置ごとに信号分離がなされる。これにより、ステップS179−1〜S179−Lにおいて行う信号系列ごとの受信信号処理においては、あたかも空間多重数が1であるかの様に単一のチャネル推定用のプリアンブル信号(例えば1シンボル)があれば信号検出処理を実施することが可能である。この結果、高次の空間多重を行いながらも、空間多重数に依存したシンボル数のプリアンブル信号を付与する必要がなくなり、MACレイヤの効率の低下を抑えることが可能となる。
また、基地局装置10に具備されているアンテナ素子101−1〜101−Kの数を非常に大きな数とした場合、個々の送信アンテナ素子対受信アンテナ素子のチャネルの時間変動があっても、多数のアンテナ素子間にてランダムに変化すれば、全体として統計的に平均化された状態とみなすことができ、時間変動の影響を低減することが可能である。
また、送信ウエイト記憶回路128に各端末装置に対する送信ウエイトを予め記憶させておくことにより、空間多重してデータを送信する際に、宛先の端末装置に対応する送信ウエイトを読み出すようにした。これにより、送信の都度、送信ウエイトを算出することなく、空間多重してデータを送信することができ、簡易な処理で膨大なアンテナ素子数を用いた高次の空間多重を実現し、その結果としてダウンリンクの周波数利用効率を向上させることができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態における基地局装置10では、アップリンクにおけるチャネル情報を取得する際に図10に示した短時間平均処理を実施する構成を説明した。しかし、これは(課題1)への対応を前提とするものであった。例えば、回線設計的にはチャネル推定は実施可能なレベルであるが、より高い伝送レートでの通信のために、回線利得を更に得るための手段として基地局装置10を用いる場合には、必ずしも短時間平均を行う必要はない。この場合、アップリンクのチャネル情報を取得する短時間平均化処理(図10)は、単に、チャネル推定処理に置き換えることができる。
図18は、第2の実施形態における送受信ウエイト算出部220の構成を示す概略ブロック図である。本実施形態における基地局装置は、基地局装置10(図7、図8及び図10)において、送受信ウエイト算出部120を送受信ウエイト算出部220に置き換えた構成となっている。
同図に示すように、送受信ウエイト算出部220は、チャネル情報推定回路221、相対成分取得回路122、受信ウエイト演算部130、受信ウエイト記憶回路125、キャリブレーション回路126、送信ウエイト演算部131、送信ウエイト記憶回路128、及びキャリブレーション係数記憶回路129を有している。受信ウエイト演算部130は、チャネル情報長時間平均回路123と、受信ウエイト算出回路130とより構成される。送信ウエイト演算部131は、送信ウエイト算出回路127より構成される。このように、送受信ウエイト算出部220は、チャネル情報短時間平均回路121をチャネル情報推定回路221に置き換えた構成となっている。なお、送受信ウエイト算出部220において、送受信ウエイト算出部120(図9)と同じ機能部には同じ符号を付して、その説明を省略する。
チャネル情報推定回路221は、公知の技術を用いて、FFT回路108−1〜108−Kから入力される信号に基づいてアップリンクのチャネル情報を取得する。
図19は、本実施形態におけるアップリンクのチャネル情報を取得する処理を示すフローチャートである。
基地局装置において、チャネル情報推定回路221は、アンテナ素子101−1〜101−Kを介して受信された受信信号が入力されると(ステップS201)、サンプリングのカウンタとしてのmにゼロを代入してリセットする(ステップS202)。ここでのカウンタとは、OFDMシンボルの第mサンプルの意味である。
チャネル情報推定回路221は、入力された信号に対してサンプリングを行い、この信号をサンプリングデータSとし(ステップS203)、カウンタmに「1」を加算し(ステップS204)、カウンタmとサンプル数Nとが一致しているか否かを判定する(ステップS205)。ここで、Nは1シンボルのサンプル数であり、予め定められた値である。
カウンタmとサンプル数Nとが一致していない場合(ステップS205:No)、チャネル情報推定回路221は、ステップS203に処理を戻し、ステップS203〜S205を繰り返す。一方、カウンタmとサンプル数Nとが一致している場合(ステップS205:Yes)、チャネル情報推定回路221は、1シンボル分のサンプリング完了とみなし、FFTにより各周波数成分のチャネル情報を取得し(ステップS206)、処理を終了する(ステップS207)。
なお、ここまではトレーニング信号として図4に相当する信号を想定した説明を行ってきたが、本実施形態ではガードインターバルを伴う通常のOFDMシンボルの信号を用いることも可能であり、この場合には取得するサンプル数はガードインターバル分を含めた数になりNよりも大きな数になる。この場合、図19のフローチャートはOFDMシンボルからガードインターバルに相当するサンプルを除いた残りの信号に対する処理に相当し、ガードインターバルを伴う場合には、ステップS205はmとガードインターバルを含めた1シンボルのサンプル数が一致するかの判断となり、更にステップS206ではガードインターバルの除去に相当する処理が追加されることになる。
なおこの処理は、サービス運用中に受信したデータに対してFFT回路108−1〜108−Kが行う処理内容とほぼ一致している。第1の実施形態においては、図11のステップS101〜S107の処理とステップS111の処理の間にステップS108〜S110の処理を実施するため、敢えてステップS111で行うFFT処理はFFT回路108−1〜108−Kとは別の機能ブロックで行うものとして説明していたが、第2の実施形態においてはステップS108〜S110の処理を省略可能なため、図19に示す処理は全てFFT回路108−1〜108−Kで実施することも可能である。ここでは全体の機能を明示的な機能ブロックとして表記したが、実際の装置への回路の実装に際しては、共通機能の共用化を目的として複数のブロックが一体として動作する構成であったとしても構わない。
また、複数シンボルのトレーニング信号を利用し、図19の信号処理を複数回実施し、実施後の周波数成分ごとのチャネル推定結果を平均化し、チャネル推定精度を高めても構わない。同様に、複数シンボルのトレーニング信号に対し、図11のステップS108及びステップS109を省略した処理と同様に、複数シンボルでサンプリングデータを時間軸上で平均化したのちにFFTにより各周波数成分のチャネル情報を取得するステップS206を実施する構成としても構わない。
第2の実施形態では、もともとチャネル推定精度が高いために、多数のシンボル数での短時間平均化処理は必要なく、結果的に少ないシンボル数での平均化処理が可能となるために、周波数誤差Δfの影響は無視できるようになり、周波数誤差を補償する図11のステップS108及びステップS109は省略することも可能となる。
なお、チャネル情報推定回路221は、各アンテナ素子101−1〜101−Kごとに、上述の処理を実施する。また、本実施形態において、相対成分取得回路122は、チャネル情報推定回路221が各アンテナ素子101−1〜101−Kごとの各周波数成分のチャネル情報を取得すると、相対成分取得処理(図12)を開始する。
なお、回線設計的にはチャネル推定が実施可能なレベルである場合、受信信号処理回路109−1〜109−Lにおいて、アップリンクの受信レベルがタイミング検出できるレベルであることが予想され、この場合、通信制御回路110が全てのタイミング管理を行う必要はなく、信号の受信検出に合わせて一連の受信信号処理を実施するようにしてもよい。この変更により、必ずしも基地局装置による集中制御は必須ではなくなり、アクセス制御としては基地局集中制御型TDMA方式以外にも、自律分散型の例えばCSMA(Carrier Sense Multiple Access:搬送波感知多重アクセス)方式を用いることも可能である。
(第3の実施形態)
第1の実施形態における基地局装置10では、アップリンクのチャネル情報からダウンリンクのチャネル情報を算出する際に、式(14)及び式(15)に示したキャリブレーション係数を用いる構成を説明した。しかし、先にも説明したが、ローノイズアンプ103−1〜103−K、フィルタ106−1〜106−K、ハイパワーアンプ148−1〜148−K、フィルタ147−1〜147−Kなどにおける周波数成分ごとの複素位相の回転量のアップリンクとダウンリンクとの間の相対値(複素位相の角度差)が全てのアンテナ素子に対応する回路で一定値になるようにアナログ的な信号処理で調整を行ってある場合(例えば、アップリンクとダウンリンクの複素位相が一定値となるように調整していても良い)、キャリブレーション係数を用いた処理を行う必要はない。この場合、ダウンリンクのチャネル情報を取得する処理(図14)は、省略することができ、上りリンクのチャネル情報とダウンリンクのチャネル情報とが等価になるので、送信ウエイトと受信ウエイトとは共通の値になる。
第3の実施形態における基地局装置は、ローノイズアンプ103−1〜103−Kからフィルタ106−1〜106−Kまでの受信に係る構成における周波数成分ごとの複素位相の回転量と、ミキサ146−1〜146−Kからハイパワーアンプ148−1〜148−Kまでの送信に係る構成における周波数成分ごとの複素位相の回転量の角度差が同じになるようにアナログ的な信号処理で調整してある場合に適した構成である。
図20は、第3の実施形態における送受信ウエイト算出部320の構成を示す概略ブロック図である。本実施形態における基地局装置は、基地局装置10(図7、図8及び図10)において、送受信ウエイト算出部120を送受信ウエイト算出部320に置き換えた構成となっている。
同図に示すように、送受信ウエイト算出部320は、送受信ウエイト算出部120(図9)におけるキャリブレーション回路126、及びキャリブレーション係数記憶回路129を省いた構成となっている。また、送受信ウエイト算出部320は、受信ウエイト演算部130と、送信ウエイト演算部131とを送受信で共用化した送受信ウエイト演算部330を備えている。送受信ウエイト演算部330は、チャネル情報長時間平均回路123と、送受信ウエイト算出回路324とより構成される。
送受信ウエイト算出回路324は、受信ウエイト算出回路124と同様に、チャネル情報長時間平均回路123が取得したチャネル情報に基づいて、送受信ウエイトを算出し、算出した送受信ウエイトを送受信ウエイト記憶回路325に記憶させる。
なお、本実施形態における基地局装置におけるダウンリンクに係る構成(送信側)は、送信信号処理回路141−1〜141−Lが送受信ウエイト記憶回路325から送受信ウエイトを読み出す点が基地局装置10と異なり、他の構成は同じであるので説明を省略する。
また、受信ウエイトとして式(20)に記載の最大比合成のウエイトを用いる場合には、チャネル情報長時間平均回路までは共通化可能であるが、送受信ウエイト算出回路324、送受信ウエイト記憶回路325は送信と受信で異なる送受信ウエイトが必要となるため、この場合には第3の実施形態では図20に示した送受信ウエイト算出部320に替えて、図18に示した送受信ウエイト算出部220においてキャリブレーション係数記憶回路129、キャリブレーション回路126を省略した送受信ウエイト算出部220の構成で実現する。
なお、本実施形態の基地局装置において、ローノイズアンプ103−1〜103−K、フィルタ106−1〜106−K、及びハイパワーアンプ148−1〜148−K、フィルタ147−1〜147−Kなどについては、周波数成分ごとの複素位相の回転量を調整するためにアナログ的な調整が必要となるが、ここでは明示的にその調整回路を表記せず、これらの回路の一部に内在しているものとして省略している。
また、本実施形態における基地局装置では、送受信ウエイト算出回路324及び送受信ウエイト記憶回路325が、送信ウエイトと受信ウエイトとの算出及び記憶を行う構成について示した。しかし、これに限ることなく、第1の実施形態における基地局装置10と同じ構成において、キャリブレーション係数をアンテナ素子及び周波数成分の全ての組み合わせにおいて「1」とみなして送信ウエイトを算出するようにしてもよい。
(第4の実施形態)
以上の実施形態の説明においては、チャネル情報の推定(短時間平均化処理を含む)の後、相対成分を取得し、相対成分に換算されたチャネル情報を時間的に異なる複数回に亘り平均化(長時間平均化)し、この長時間平均のチャネル情報から送受信ウエイトを算出していた。このようにして、時変動の影響を低減させた伝送路特性(安定パス)に対する送受信ウエイトを求めることが可能であるが、この安定パスに対する送受信ウエイトは、近似的には類似の方法を用いても実現することが可能である。
具体的には、相対成分に換算されたチャネル情報を取得後、長時間平均化を行わずに当該チャネル情報から送受信ウエイトの算出処理(送信ウエイトの場合にはアップリンクのチャネル情報からダウンリンクのチャネル情報に変換するキャリブレーション処理を含む)を実施する。受信ウエイト及び送信ウエイトの算出を時間的に異なる複数回のタイミングに亘り実施し、その結果得られた複数の受信ウエイト及び送信ウエイトそれぞれを平均化する。これにより、安定パスに対応した受信ウエイト及び送信ウエイトを取得することが可能である。つまり、チャネル情報に対する長時間平均化処理と、送受信ウエイトの算出処理との順番を入れ替え、長時間平均化処理の対象をチャネル情報に替えて送受信ウエイトにするというものである。この送受信ウエイト算出の近似解法を第1の実施形態に適用した場合の構成を第4の実施形態として説明する。
図21は、第4の実施形態における送受信ウエイト算出部420の構成を示す概略ブロック図である。本実施形態における基地局装置は、基地局装置10(図7、図8及び図10)において、送受信ウエイト算出部120を送受信ウエイト算出部420に置き換えた構成となっている。
同図に示すように、送受信ウエイト算出部420は、チャネル情報短時間平均回路121、相対成分取得回路122、受信ウエイト記憶回路125、キャリブレーション回路126、送信ウエイト記憶回路128、キャリブレーション係数記憶回路129、受信ウエイト演算部430、送信ウエイト演算部431を有している。受信ウエイト演算部430は、仮受信ウエイト算出回路433と、受信ウエイト長時間平均回路434とより構成される。送信ウエイト演算部431は、仮送信ウエイト算出回路435と、送信ウエイト長時間平均回路436とより構成される。
送受信ウエイト算出部420は、第1の実施形態における送受信ウエイト算出部120(図9)と次の点で異なっている。受信ウエイト算出回路124及び送信ウエイト算出回路127が仮受信ウエイト算出回路433及び仮送信ウエイト算出回路435に置き換えられている。更に、アップリンクのチャネル情報に対して長時間平均化を行っていたチャネル情報長時間平均回路123が、送受信ウエイトを複数回に亘り長時間平均化する受信ウエイト長時間平均回路434及び送信ウエイト長時間平均回路436に置き換えられている。なお、送受信ウエイト算出部420において、送受信ウエイト算出部120と同じ機能部には同じ符号を付して、その説明を省略する。
仮受信ウエイト算出回路433は、相対成分取得回路122が出力したチャネル情報に基づいて、端末装置ごとに仮受信ウエイトを算出する。仮受信ウエイトとは、1回限りで推定されたチャネル情報に基づき算出された安定パスに対するウエイトとしては精度の低い受信ウエイトである。受信ウエイト長時間平均回路434は、端末装置ごとに、仮受信ウエイト算出回路433が取得した離散的な時刻に対応して取得された複数回分のアンテナ素子101−1〜101−Kそれぞれに対する仮受信ウエイトに対し、仮受信ウエイトの平均値を算出する長時間平均化処理を行う。また、受信ウエイト長時間平均回路434は、算出した平均値を安定パスに対する高精度の受信ウエイトとして受信ウエイト記憶回路125に記憶させる。
仮送信ウエイト算出回路432は、キャリブレーション回路126が取得したダウンリンクのチャネル情報に基づいて、端末装置ごとに仮送信ウエイトを算出し、算出した仮送信ウエイトを算出する。仮送信ウエイトとは、1回限りで推定されたダウンリンクのチャネル情報に基づき算出された安定パスに対するウエイトとしては精度の低い送信ウエイトである。送信ウエイト長時間平均回路433は、端末装置ごとに、仮送信ウエイト算出回路432が取得した離散的な時刻に対応して取得された複数回分のアンテナ素子101−1〜101−Kそれぞれに対する仮受信ウエイトに対し、仮送信ウエイトの平均値を算出する長時間平均化処理を行う。また、送信ウエイト長時間平均回路433は、算出した平均値を安定パスに対する高精度の送信ウエイトとして送信ウエイト記憶回路128に記憶させる。
本実施形態における受信ウエイトの算出は、第1の実施形態において説明したチャネル情報の長時間での平均化処理(図13)、及び受信ウエイトの算出処理(図15)に基づいて行われるが、以下の点が異なる。本実施形態では、図13に示したステップS132−1〜S132−Qの後で、図15に示したステップS153を実施し、図13に示したステップS133での平均化処理をチャネル情報に対する平均化から受信ウエイトの平均化に変更し、最後に図15に示したステップS154でメモリに記憶させる。
また、本実施形態における送信ウエイトの算出は、同様に、第1の実施形態において説明したチャネル情報の長時間での平均化処理(図13)、ダウンリンクのチャネル情報の取得処理(図14)、及び送信ウエイトの算出処理(図15)に基づいて行われるが、以下の点が異なる。本実施形態では、図13に示したステップS132−1〜S132−Qの後で、図14に示したステップS141〜S145の処理でキャリブレーションを実施し、更に、図15に示したステップS153を実施し、その後に図13に示したステップS133での平均化処理をチャネル情報に対する平均化から送信ウエイトの平均化に変更し、最後にステップS154でメモリに記憶させる。
(第5の実施形態)
上述の送受信ウエイトの近似解法を第2の実施形態に対して適用した構成を第5実施形態として説明する。図22は、第5の実施形態における送受信ウエイト算出部520の構成を示す概略ブロック図である。本実施形態における基地局装置は、基地局装置10(図7、図8及び図10)において、送受信ウエイト算出部120を送受信ウエイト算出部520に置き換えた構成となっている。同図に示すように、送受信ウエイト算出部520は、チャネル情報推定回路221、相対成分取得回路122、受信ウエイト記憶回路125、キャリブレーション回路126、送信ウエイト記憶回路128、キャリブレーション係数記憶回路129、受信ウエイト演算部430、送信ウエイト演算部431を有している。また、受信ウエイト演算部430は、仮受信ウエイト算出回路433と、受信ウエイト長時間平均回路434とより構成される。また、送信ウエイト演算部431は、仮送信ウエイト算出回路435と、送信ウエイト長時間平均回路436とより構成される。なお、送受信ウエイト算出部520において、送受信ウエイト算出部220(図18)又は送受信ウエイト算出部420(図21)と同じ機能部には同じ符号を付して、その説明を省略する。
送受信ウエイト算出部520は、チャネル情報短時間平均回路121をチャネル情報推定回路221に置き換えている点が、第4実施形態の送受信ウエイト算出部420(図21)と異なっている。
本実施形態における受信ウエイト及び送信ウエイトの算出処理は、第4の実施形態におけるチャネル情報の短時間平均処理(図11)に替えて、第2の実施形態において示したチャネル情報の取得処理(図19)を行う点が異なり、他の処理については第4の実施形態と同様である。
(第6の実施形態)
同様に、送受信ウエイトの近似解法を第3の実施形態に適用した構成を第6の実施形態として説明する。図23は、第6の実施形態における送受信ウエイト算出部620の構成を示す概略ブロック図である。本実施形態における基地局装置は、基地局装置10(図7、図8及び図10)において、送受信ウエイト算出部120を送受信ウエイト算出部620に置き換えた構成となっている。
同図に示すように、送受信ウエイト算出部620は、チャネル情報短時間平均回路121、相対成分取得回路122、送受信ウエイト記憶回路325、送受信ウエイト演算部630を有している。また、送受信ウエイト演算部630は、仮送受信ウエイト算出回路633と、送受信ウエイト長時間平均回路634とより構成される。なお、送受信ウエイト算出部620において、送受信ウエイト算出部320(図20)と同じ機能部には同じ符号を付して、その説明を省略する。
送受信ウエイト算出部620は、送受信ウエイト演算部630の構成が第3実施形態における送受信ウエイト算出部320(図20)と異なっている。
仮想受信ウエイト算出回路633は、相対成分取得回路122が算出したチャネル情報の相対成分に基づいて、仮送受信ウエイトを算出する。送受信ウエイト長時間平均回路634は、送受信ウエイト算出回路633が算出した送受信ウエイトを時間的に異なる複数回に亘り平均化(長時間平均化)し、この長時間平均の送受信ウエイトを安定パスに対する送受信ウエイトとして送受信ウエイト記憶回路325に記憶させる。
この構成により、本実施形態における送受信ウエイト演算部630では、相対成分取得回路122が算出したチャネル情報の相対成分から仮送受信ウエイト算出回路633にて仮送受信ウエイトを算出し、その結果を用いて送受信ウエイト長時間平均回路634にて送受信ウエイトの長時間平均化を行う。つまり、本実施形態では、第3実施形態と比較すると、長時間平均を行う対象の物理量がチャネル情報の相対成分から送受信ウエイトに置き換えられ、更に長時間平均化処理と送受信ウエイトの算出処理の順番が入れ替わっている。
なお、本実施形態における基地局装置におけるダウンリンクに係る構成(送信側)は、送信信号処理回路141−1〜141−Lが送受信ウエイト記憶回路325から送受信ウエイトを読み出す点が基地局装置10と異なり、他の構成は同じであるので説明を省略する。
また、受信ウエイトとして式(20)に記載の最大比合成のウエイトを用いる場合には、相対成分取得回路122までは共通化可能であるが、仮送受信ウエイト算出回路633、送受信ウエイト長時間平均回路634、送受信ウエイト記憶回路325は送信と受信で異なる送受信ウエイトが必要となるため、この場合には第6の実施形態では図23に示した送受信ウエイト算出部620に替えて、図22に示した送受信ウエイト算出部520においてキャリブレーション係数記憶回路129、キャリブレーション回路126を省略した送受信ウエイト算出部520の構成で実現する。
以上が、第1から第6の実施形態の説明である。以下に、これらの実施形態に共通な補足事項を示しておく。
OFDM変調方式では全てのサブキャリアが同一の端末装置との通信に利用されているので、その際の送受信ウエイトは全サブキャリアで共通の組み合わせの端末装置に対する送受信ウエイトを用いていた。しかし、OFDMAでは、時間軸及び周波数軸上にパッチワーク状に異なる組み合わせの端末装置への割り当てを寄せ集めているため、時間(OFDMシンボル)及び周波数(サブキャリア)ごとに、割り当てられている端末装置に対する送受信ウエイトを用いる必要がある。この場合には、複数面で構成される受信信号処理回路109−1〜109−L及び送信信号処理回路141−1〜141−Lは、周波数及び時刻に関係なく通信相手となる端末装置に対応しているというものではなく、ある各周波数成分ないしは各時刻(OFDMシンボル)に着目した場合に通信相手となる端末局に対応していると理解すべきである。しかし、その差を除けばOFDMとOFDMAとは全く同様に処理することが可能であり、本明細書中ではOFDMを中心に説明を行ったが、OFDMAにおいても全く同様に本発明を適用することができる。
また、SC−FDEに関しても様々な運用上のバリエーションが存在するが、送信側で送信ウエイトを乗算し、各アンテナ素子から送信された信号が空間上で合成された後の受信信号処理、及び受信側で受信ウエイトを乗算し、各アンテナ素子の信号が加算合成された後の受信信号処理のいずれにおいても、上述の各実施形態にでは従来のSC−FDEで行われる処理をそのまま適用する構成としているために、全てのバリエーションのSC−FDEに適用可能である。
更に、受信ウエイトを乗算した信号を複数のアンテナ素子に亘り加算合成する際に、必ずしも全てのアンテナ素子に亘り加算合成する必要はなく、全体の中の一部の複数のアンテナ素子に亘り加算合成を行ったとしても、全体として本発明の意図する動作を実現することは可能であり、結果として同様の効果を得ることができる。同様に、送信ウエイトを乗算した複数の端末装置宛の信号をアンテナ素子毎に加算合成する際においても、加算合成を全てのアンテナ素子に亘り実施せず、一部の複数のアンテナ素子において加算合成を行ったとしても、全体として本発明の意図する動作を実現することは可能である。
また同様に、本発明第3及び第6の実施形態において、各周波数成分の必ずしも全てのアンテナ素子において複素位相の回転量が同一(ないしは、キャリブレーション係数が1)である必要はなく、この条件が一部の複数のアンテナ素子に限定されていたとしても、全体として本発明の意図する動作を実現することは可能である。
更に同様に、本発明においてはデータ通信の際に用いるチャネル推定用のプリアンブル信号は全ての端末装置において共通のプリアンブル信号とすることは可能であるが、一部の端末装置で他のプリアンブル信号を用いる構成とすることも当然ながら可能であり、少なくとも複数の端末装置に対して同時に空間多重して信号を送受信する際に共通のプリアンブルを用いたとすれば、それは本発明の意図する動作に相当する。
更に、本発明における図11から図13で示したチャネル情報の取得処理において、それらの処理を開始するための指示等の各種制御情報の基地局装置と端末装置の間の交換処理は如何なる方法で実現しても構わない。これらの処理は基本的にはサービス運用開始前に行うものであり、その場合には適切な送受信ウエイトが当初は未知であるために、基地局装置と端末装置の間で十分な回線利得が確保できない状況で各種制御が行われることが想定される。しかし、サービス運用開始前であれば、例えば作業員が端末装置の設置作業において手動で処理開始の指示を行うことも可能であるし、一時的に他の無線規格を利用して制御を行っても構わない。したがって、チャネル情報の取得処理を開始するための指示等の各種制御処理方法に係わりなく、本発明を実施することは可能である。
また更に、相対成分を取得する際に用いる複素位相のオフセット値φ(k)は、図12に示した処理以外の方法で取得することも可能である。
図24は、上述の各実施形態においてアップリンクのチャネル情報の相対成分を取得する他の相対成分取得処理を示すフローチャートである。同図に示す処理と図12に示した処理との差分は、相対成分の取得の際に用いる複素位相のオフセット値φ(k)を、特定のアンテナ素子101−1の複素位相を基準とする代わりに、ステップS193において全てのアンテナ素子101−1〜101−Kの複素位相(すなわち0〜2πで表される角度)の平均値を用いる点である。ステップS122−1〜122−Kにてアンテナ素子101−1〜101−Kに対応するチャネル情報における第k周波数成分^h(k) ,…,^h(k) を基に、次式(21)を用いて第k周波数成分に対する全アンテナの複素位相の平均値φ(k)を求め、これをステップS124−1〜S124−Kにて用いることで相対成分の取得を実現する。なお、このオフセット値は周波数成分ごとに個別に求める。
個々のアンテナ素子101−1〜101−Kの複素位相成分は誤差を含む場合においても、式(21)では誤差の平均化を行うことになるので、結果的に精度の高い相対成分を求めることができる。
Figure 2013123161
また、ダウンリンクのチャネル情報の取得方法としては、本明細書で示したアップリンクのチャネル情報を利用する方法の他に、従来技術の図27(A)の直接的な方法で示したように、ダウンリンクで直接トレーニング信号を送信し、そのトレーニング信号を受信した端末装置が取得したチャネル情報をフィードバックする形で基地局装置に設定する方法も考えられる。この場合、図4で示したトレーニング信号を、基地局装置が備えるアンテナ素子から1本ずつ順番に送信し、図11から図13で示した処理と同様の処理を端末装置側で実施し、その結果得られた平均化されたアンテナ素子ごと及び周波数成分ごとのチャネル情報を何らかの方法で基地局にフィードバックして設定し、基地局装置側ではこれを利用して送信ウエイトを算出する構成としても同様の効果を得ることは可能である。ただし、この場合であってもアップリンクのチャネル情報の取得においては各端末装置からのトレーニング信号の送信は必須であり、この点に関しては上述の実施形態と全く同様である。
また、例えば式(19)及び式(21)ではチャネル情報h(k) (ないしは^h(k) )の複素位相に対応した物理量を抽出する処理を行っているが、チャネル情報h(k) (ないしは^h(k) )の実数部と虚数部の比率から複素位相の角度情報を取得し、その角度情報を基に式(19)及び式(21)と等価な値を算出することも可能である。これは数式的には異なる処理に見えるが、数学的には全く等価な処理であり、全ての演算処理に対しこのような数学的に等価な代替の手段で処理を代用することも当然ながら可能である。
更に、本発明の図1に示した本発明に係る無線通信システムが具備する基地局装置の設置例では、端末装置12−1〜12−2は1本のアンテナを備えるものとして図示したが、端末装置が複数のアンテナを備えていたとしても同様の処理を行うことは可能である。原理的には、端末装置12−1〜12−2が複数本のアンテナを備えていれば、一つの端末装置に複数の信号系列を空間多重することも可能である。この場合、端末装置12−1〜12−2の各アンテナを個々の端末装置のアンテナ素子と見なすことで、本発明を同様に実施することが可能である。ただし、本発明では端末装置12−1〜12−2と基地局装置のアンテナ素子13−1〜13−4は相互に見通し環境であることを想定しているため、一般的には基地局と一つの端末装置の間でMIMO伝送を行うことは困難(第2固有値以降がゼロに近づく)であることが多い。そこで端末装置が複数本のアンテナを備えている場合には、実際には単一信号系列の送受信を複数アンテナのダイバーシチ構成として運用するのが現実的である。この場合には、複数のアンテナを適当なウエイトで合成することで、仮想的な1本のアンテナとみなすことが可能であり、この仮想的な1本のアンテナとの間で同様の処理を実現すれば、全く同様に本発明を適用することが可能である。
また更に、以上の動作原理及び実施形態の説明の中では、各アンテナ素子に対応したチャネル情報や送受信ウエイトについて述べてきたが、各アンテナ素子のチャネル情報ないしは送受信ウエイトを成分として構成されるベクトルは、そのベクトルの示す方向が実効的な意味をもつ。このため、あるベクトルに所定の係数を乗算したベクトルは方向的には同一であるため、アンテナ素子ごとに一定の係数が乗算されたベクトルは乗算される係数に依存せずに全て等価な意味合いをもつことになる。
一方で、本発明の前提条件で説明した通り、基地局装置と端末装置のアンテナはそれぞれ見通し環境ないしは見通し環境に近い環境を想定しているため、各アンテナ素子で受信される信号の強度及び振幅は概ね一定の値となっていることが期待される。このため、例えば各アンテナ素子のチャネル情報のベクトルは、実効的にはベクトルの各成分の絶対値はそれほど大きな意味を持たず、チャネル情報の値を規格化した値(チャネル情報をその絶対値で除算して得られる複素数)が有意な情報となる。このため、以上の動作原理及び実施形態の説明の中で用いられた「チャネル情報」を、近似的に「チャネル情報の値を規格化した値」とみなした処理は本発明と全く等価なものであり、その意味で上述の「チャネル情報」とは広義の意味で「チャネル情報の値を規格化した値」までを含むものとする。
なお、本発明に記載の物理量の平均値は、上述の各実施形態において説明したように、チャネル情報の平均値と仮受信ウエイトの平均値とに対応する。
なお、本発明における基地局装置の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、送信ウエイト及び受信ウエイト、並びに送受信ウエイトを算出する処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウエアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。更に、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
1−1、1−2、1−3 OFDMシンボル
2−1、2−2、2−3 有効な信号領域
3−1、3−2、3−3 トレーニング信号
4−1、4−2、4−3 末尾領域
5−1、5−2、5−3 ガードインターバル
6−1、6−26−3 信号周期
10 基地局装置
11、15−1、15−2、15−3 建築物
12−1、12−2 端末装置
13−1、13−2、13−3、13−4 アンテナ素子
14−1、14−2、14−3 地上の移動体
16 長時間平均のチャネル推定値に対応するベクトル
17−1、17−2、17−3、17−4 短時間平均のチャネル情報に対応するベクトル
18 チャネル推定誤差の範囲
21−1、21−2、21−3 ハイパワーアンプ(HPA)
22−1、22−2、22−3 ローノイズアンプ(LNA)
23−1、23−2、23−3 時分割スイッチ(TDD−SW)
24−1、24−2、24−3 アンテナ素子
25−1、25−2、25−3 無線モジュール
26−1、26−2、26−3 アンテナ端子
27 同軸ケーブル
80 基地局装置
81 送信部
85 受信部
87 インタフェース回路
88 MAC層処理回路
92 制御局装置
96−1、96−2、96−N 光ファイバ
97、97−1、97−2、97−N 無線モジュール
100 受信部
101、101−1、101−2、101−K アンテナ素子
102−1、102−2、102−K TDDスイッチ
103−1、103−2、103−K ローノイズアンプ(LNA)
104 ローカル発振器
105−1、105−2、105−K ミキサ
106−1、106−2、106−K フィルタ
107−1、107−2、107−K A/D変換器
108−1、108−2、108−K FFT回路
109−1、109−2、109−L 受信信号処理回路(受信信号処理部)
110 通信制御回路
120 送受信ウエイト算出部
121 チャネル情報短時間平均回路(チャネル情報取得部)
122 相対成分取得回路(相対成分取得部)
123 チャネル情報長時間平均回路(チャネル情報平均部)
124 受信ウエイト算出回路(受信ウエイト算出部)
125 受信ウエイト記憶回路
126 キャリブレーション回路(ダウンリンクチャネル情報算出部)
127 送信ウエイト算出回路(送信ウエイト算出部)
128 送信ウエイト記憶回路
129 キャリブレーション係数記憶回路(キャリブレーション係数記憶部)
130 受信ウエイト演算部
131 送信ウエイト演算部
140 送信部
141−1、141−2、141−L 送信信号処理回路(送信信号処理部)
142−1、142−2、142−K 加算合成回路
143−1、143−2、143−K IFFT&GI付与回路
144−1、144−2、144−K D/A変換器
145 ローカル発振器
146−1、146−2、146−K ミキサ
147−1、147−2、147−K フィルタ
148−1、148−2、148−K ハイパワーアンプ(HPA)
170 インタフェース回路
180 MAC層処理回路
181 スケジューリング処理回路
220 送受信ウエイト算出部
221 チャネル情報推定回路
320 送受信ウエイト算出部
324 送受信ウエイト算出回路
325 送受信ウエイト記憶回路
330 送受信ウエイト演算部
420 送受信ウエイト算出部
430 受信ウエイト演算部
431 送信ウエイト演算部
433 仮受信ウエイト算出回路
434 受信ウエイト長時間平均回路
435 仮送信ウエイト算出回路
436 送信ウエイト長時間平均回路
520 送受信ウエイト算出部
620 送受信ウエイト算出部
630 送受信ウエイト演算部
633 仮送受信ウエイト算出回路
634 送受信ウエイト長時間平均回路
801 基地局装置
802、802−1、802−2、802−3 端末装置
811−1、811−2、811−L 送信信号処理回路
812−1、812−2、812−K 加算合成回路
813−1、813−2、813−K IFFT&GI付与回路
814−1、814−2、814−K D/A変換器
815、853、924、933 ローカル発振器
816−1、816−2、816−K ミキサ
817−1、817−2、817−K フィルタ
818−1、818−2、818−K ハイパワーアンプ(HPA)
819−1、819−2、819−K アンテナ素子
820 通信制御回路
830 送信ウエイト処理部
831 チャネル情報取得回路
832 チャネル情報記憶回路
833 マルチユーザMIMO送信ウエイト算出回路
851−1、851−2、851−K アンテナ素子
852−1、852−2、852−K ローノイズアンプ(LNA)
853 ローカル発振器
854−1、854−2、854−K ミキサ
855−1、855−2、855−K フィルタ
856−1、856−2、856−K A/D変換器
857−1、857−2、857−K FFT回路
858−1、858−2、858−L 受信信号処理回路
860 受信ウエイト処理部
861 チャネル情報推定回路
862 マルチユーザMIMO受信ウエイト算出回路
881 スケジューリング処理回路
901 送信局
902、902−1、902−N 中継局
903 受信局
911−1、911−2、911−3 セル
912−1、912−2、912−3 リモート基地局
913−1、913−2、913−3、913−4、913−5、913−6 端末装置
914 制御局
915 光ファイバ
921 送信信号処理回路
922−1、922−2、922−N IFFT&GI付与回路
923−1、923−2、923−N D/A変換器
924 ローカル発振器
925−1、925−2、925−N ミキサ
926−1、926−2、926−N フィルタ
927−1、927−2、927−N E/O変換器
931−1、931−2、931−N O/E変換器
932−1、932−2、932−N ミキサ
933 ローカル発振器
934−1、934−2、934−N フィルタ
935−1、935−2、935−N A/D変換器
936−1、936−2、936−N FFT回路
937 チャネル情報推定回路
938 受信ウエイト算出回路
939 受信信号処理回路
941 チャネル情報取得回路
942 チャネル情報記憶回路
943 送信ウエイト算出回路
961−1、961−2、961−3、961−4、961−5 アンテナ素子
971−1、971−2、971−N O/E変換器
972−1、972−2、972−N ハイパワーアンプ(HPA)
975−1、975−2、975−N E/O変換器
974−1、974−2、974−N ローノイズアンプ(LNA)
973−1、973−2、973−N アンテナ素子

Claims (11)

  1. 複数のアンテナ素子を備えた基地局装置と、該基地局装置と無線通信を行う複数の端末装置を具備し、前記基地局装置と少なくとも2つの前記端末装置とが同一周波数成分上で同一時刻に空間多重伝送を行うことが可能な無線通信システムにおける基地局装置であって、
    前記端末装置ごとに、該端末装置から受信したトレーニング信号に基づいて、該端末装置と複数の前記アンテナ素子それぞれとの間のアップリンクにおける各周波数成分のチャネル情報を取得するチャネル情報取得部と、
    前記端末装置ごとに、前記アンテナ素子に対応する各周波数成分のチャネル情報の複素位相を基に算出される複素位相を基準として、個々の前記アンテナ素子それぞれに対応する各周波数成分のチャネル情報の複素位相から前記基準とした各周波数成分のチャネル情報の複素位相を補正した相対的なチャネル情報を算出する相対成分取得部と、
    前記端末装置ごとに、前記相対成分取得部が複数回に亘って算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分のチャネル情報から得られる物理量の平均値を算出し、該平均値に基づいて、前記端末装置ごとに、複数の前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための受信ウエイトを算出する受信ウエイト演算部と、
    前記アンテナ素子ごとに、該アンテナ素子を介して前記端末装置から受信した受信信号を周波数成分ごとに分離し、データの送信元として選択された前記端末装置ごとに、該端末装置に対応し前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における受信ウエイトと、前記周波数成分ごとに分離した受信信号とを乗算し、前記受信ウエイトが乗算された受信信号を複数の前記アンテナ素子に亘り周波数成分ごとに加算合成して受信処理を行う受信信号処理部と
    を備えることを特徴とする基地局装置。
  2. 請求項1に記載の基地局装置であって、
    前記受信ウエイト演算部は、
    前記端末装置ごとに、前記相対成分取得部が複数回に亘って算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分の相対的なチャネル情報の平均値を算出するチャネル情報平均部と、
    前記端末装置ごとに、前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための受信ウエイトを、前記相対的なチャネル情報の平均値から算出する受信ウエイト算出部と
    を有していることを特徴とする基地局装置。
  3. 請求項2に記載の基地局装置であって、
    前記アンテナ素子ごとに、該アンテナ素子と前記端末装置との間のアップリンクにおけるチャネル情報からダウンリンクにおけるチャネル情報を算出する際に用いるキャリブレーション係数を周波数成分ごとに記憶しているキャリブレーション係数記憶部と、
    前記チャネル情報平均部が前記端末装置ごとに算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分の相対的なチャネル情報の平均値に、前記アンテナ素子及び周波数成分の組み合わせに対応するキャリブレーション係数を乗じてダウンリンクにおけるチャネル情報を算出するダウンリンクチャネル情報算出部と、
    前記端末装置ごとに、前記ダウンリンクチャネル情報算出部が算出したダウンリンクにおける前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分のチャネル情報から、前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための送信ウエイトを算出する送信ウエイト算出部と、
    前記端末装置と、前記送信ウエイト算出部が算出した送信ウエイトとを対応付けて記憶する送信ウエイト記憶部と、
    データの送信先として選択された前記端末装置ごとに、該端末装置に送信する送信信号を周波数成分ごとの信号に分離し、前記選択された端末装置に対応する送信ウエイトを前記送信ウエイト記憶部から読み出し、分離した信号それぞれに対し周波数成分ごとの前記読み出した送信ウエイトを乗じ、宛先となる複数の前記端末装置に対する該信号を前記アンテナ素子ごとに合成し、該合成された信号を前記選択された端末装置に対して前記アンテナ素子それぞれから同時に送信する送信信号処理部と
    を更に備えていることを特徴とする基地局装置。
  4. 請求項1に記載の基地局装置であって、
    前記受信ウエイト演算部は、
    前記端末装置ごとに、前記相対成分取得部が算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分の相対的なチャネル情報から、複数の前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための仮受信ウエイトを算出する仮受信ウエイト算出部と、
    前記仮受信ウエイト算出部が複数回に亘って算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における仮受信ウエイトの平均値を、前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための受信ウエイトとして算出する受信ウエイト平均部と
    を有していることを特徴とする基地局装置。
  5. 請求項4に記載の基地局装置であって、
    前記アンテナ素子ごとに、該アンテナ素子と前記端末装置との間のアップリンクにおけるチャネル情報からダウンリンクにおけるチャネル情報を算出する際に用いるキャリブレーション係数を周波数成分ごとに記憶しているキャリブレーション係数記憶部と、
    前記相対成分取得部が算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分の相対的なチャネル情報に、前記アンテナ素子及び周波数成分の組み合わせに対応するキャリブレーション係数を乗じてダウンリンクにおけるチャネル情報を算出するダウンリンクチャネル情報算出部と、
    前記端末装置ごとに、前記ダウンリンクチャネル情報算出部が算出したダウンリンクにおける前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分のチャネル情報から、前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための仮送信ウエイトを算出する仮送信ウエイト算出部と、
    前記仮送信ウエイト算出部が複数回に亘って算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における仮送信ウエイトの平均値を、前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための送信ウエイトとして算出する送信ウエイト平均部と
    を更に備えていることを特徴とする基地局装置。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の基地局装置において、
    前記端末装置は、複数の周期に亘るトレーニング信号を送信し、
    前記チャネル情報取得部は、前記アンテナ素子ごとに、前記トレーニング信号を周期ごとに分離して、分離した前記トレーニング信号を複数周期に亘り合成し、合成したトレーニング信号に基づいて前記アップリンクにおける各周波数成分のチャネル情報を取得する
    ことを特徴とする基地局装置。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の基地局装置において、
    前記受信信号処理部が前記受信信号を周波数成分ごとの信号に分離するFFT処理における、ポイント数をNとし、サンプリング周期をΔtとし、前記受信信号に含まれるシンボルの周期をT(=N×Δt)とし、自装置においてダウンコンバートに用いる第1の局部発振信号と、前記端末装置においてアップコンバートに用いる第2の局部発振信号との周波数誤差をΔfとした場合、
    前記チャネル情報取得部は、
    受信した信号から複数のシンボル周期だけ連続したトレーニング信号を抽出し、
    前記トレーニング信号に対して前記周期TのM0倍(M0は2以上の整数)の期間に亘ってサンプリングデータを取得し、
    前記サンプリングデータにおいて第m’番目のサンプリングデータのm’をポイント数Nで除算した際の剰余mと商Mとを用いてS(M) と表記した場合に、前記サンプリングデータそれぞれに係数Exp(−2πjΔf・Δt・[M×N+m])を乗算した値をmの示す値ごとに加算平均化した値である式(A1)で表される値と、該値の複素共役との積の和である式(A2)で表される値を算出し、式(A2)を最大にする周波数誤差Δfを算出し、
    Figure 2013123161
    前記式(A1)に、前記算出した周波数誤差Δfを代入して得られる値に対してFFT処理をして得られた値に基づいて、前記各周波数成分のチャネル情報を算出する
    ことを特徴とする基地局装置。
  8. 請求項3又は請求項5のいずれかに記載の基地局装置において、
    各周波数成分において、アップリンクにおける各チャネル情報と、ダウンリンクにおける各チャネル情報とにおける複素位相の回転量の相対的な関係が前記複数のアンテナ素子間で一定である場合、
    前記送信信号処理部は、前記キャリブレーション係数が複数のアンテナ素子及び周波数成分で1とみなして処理を行う
    ことを特徴とする基地局装置。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の基地局装置であって、
    前記端末装置から受信した受信信号に含まれるチャネル推定用信号は、複数の前記端末装置で共通のチャネル推定用信号である
    ことを特徴とする基地局装置。
  10. 複数のアンテナ素子を備えた基地局装置と、該基地局装置と無線通信を行う複数の端末装置を具備し、前記基地局装置と少なくとも2つの前記端末装置とが同一周波数成分上で同一時刻に空間多重伝送を行うことが可能な無線通信システムにおける無線通信方法であって、
    前記端末装置ごとに、該端末装置から受信したトレーニング信号に基づいて、該端末装置と複数の前記アンテナ素子それぞれとの間のアップリンクにおける各周波数成分のチャネル情報を取得するチャネル情報取得ステップと、
    前記端末装置ごとに、前記アンテナ素子に対応する各周波数成分のチャネル情報の複素位相を基に算出される複素位相を基準として、個々の前記アンテナ素子それぞれに対応する各周波数成分のチャネル情報の複素位相から前記基準とした各周波数成分のチャネル情報の複素位相を補正した相対的なチャネル情報を算出する相対成分取得ステップと、
    前記端末装置ごとに、前記相対成分取得部が複数回に亘って算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分のチャネル情報から得られる物理量の平均値を算出し、該平均値に基づいて、前記端末装置ごとに、複数の前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための受信ウエイトを算出する受信ウエイト演算ステップと、
    前記アンテナ素子ごとに、該アンテナ素子を介して前記端末装置から受信した受信信号を周波数成分ごとに分離し、データの送信元として選択された前記端末装置ごとに、該端末装置に対応し前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における受信ウエイトと、前記周波数成分ごとに分離した受信信号とを乗算し、前記受信ウエイトが乗算された受信信号を複数の前記アンテナ素子に亘り周波数成分ごとに加算合成して受信処理を行う受信信号処理ステップと
    を有することを特徴とする無線通信方法。
  11. 複数のアンテナ素子を備えた基地局装置と、該基地局装置と無線通信を行う複数の端末装置を具備し、前記基地局装置と少なくとも2つの前記端末装置とが同一周波数成分上で同一時刻に空間多重伝送を行うことが可能な無線通信システムであって、
    前記基地局装置は、
    前記端末装置ごとに、該端末装置から受信したトレーニング信号に基づいて、該端末装置と複数の前記アンテナ素子それぞれとの間のアップリンクにおける各周波数成分のチャネル情報を取得するチャネル情報取得部と、
    前記端末装置ごとに、前記アンテナ素子に対応する各周波数成分のチャネル情報の複素位相を基に算出される複素位相を基準として、個々の前記アンテナ素子それぞれに対応する各周波数成分のチャネル情報の複素位相から前記基準とした各周波数成分のチャネル情報の複素位相を補正した相対的なチャネル情報を算出する相対成分取得部と、
    前記端末装置ごとに、前記相対成分取得部が複数回に亘って算出した前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分のチャネル情報から得られる物理量の平均値を算出し、該平均値に基づいて、前記端末装置ごとに、複数の前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における空間多重伝送のための受信ウエイトを算出する受信ウエイト演算部と、
    前記アンテナ素子ごとに、該アンテナ素子を介して前記端末装置から受信した受信信号を周波数成分ごとに分離し、データの送信元として選択された前記端末装置ごとに、該端末装置に対応し前記アンテナ素子それぞれに対する各周波数成分における受信ウエイトと、前記周波数成分ごとに分離した受信信号とを乗算し、前記受信ウエイトが乗算された受信信号を複数の前記アンテナ素子に亘り周波数成分ごとに加算合成して受信処理を行う受信信号処理部と
    を備える
    ことを特徴とする無線通信システム。
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