JP2013121689A - 高防湿性フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、高い透明性と水蒸気バリア性とを有するフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】
基材フィルムの少なくとも片面に、有機珪素化合物を蒸着用モノマーガスとして使用するプラズマ化学気相成長法により、1層またはそれ以上の酸化珪素蒸着層を設け、次いで、該形成直後の酸化珪素蒸着層の表面に、インラインで、有機珪素化合物及び脂環式炭化水素を蒸着用モノマーガスとして使用するプラズマ化学気相成長法により、1層またはそれ以上の珪素含有炭化水素層を設け、これによって、前記酸化珪素蒸着層中に炭素原子をドープしてなる高防湿性フィルムを提供する。
【選択図】 図1
Description
1.基材フィルムの少なくとも片面に、有機珪素化合物を蒸着用モノマーガスとして使用するプラズマCVD法により、1層またはそれ以上の酸化珪素蒸着層を設け、次いで、該形成直後の酸化珪素蒸着層の表面に、インラインで、有機珪素化合物及び脂環式炭化水素を蒸着用モノマーガスとして使用するプラズマCVD法により、1層またはそれ以上の珪素含有炭化水素層を設け、これによって、前記酸化珪素蒸着層中に炭素原子をドープしてなる高防湿性フィルム。
2.前記1層またはそれ以上の酸化珪素蒸着層の層厚の合計が5〜200nmであって、該層中に存在する珪素の原子数(Sia)に対する、脂環式炭化水素由来の炭素の原子数(CHa)の比(CHa/Sia)が、0.10〜1.80であり、前記1層またはそれ以上の珪素含有炭化水素層の層厚の合計が5〜200nmであって、該層中に存在する珪素の原子数(Sib)に対する、脂環式炭化水素由来の炭素の原子数(CHb)の比(CHb/Sib)が、0.50〜3.00であることを特徴とする、上記1に記載の高防湿性フィルム。
3.L*a*b*表色系におけるL*が80〜95であり、a*が0.1〜2.0であり、b*が1〜20であることを特徴とする、上記1または2に記載の高防湿性フィルム。
4.40℃・相対湿度100%における水蒸気透過率が1.0g/m2・day・atm以下であることを特徴とする、上記1〜3のいずれかに記載の高防湿性フィルム。
5.少なくとも、上記1〜4のいずれかに記載の高防湿性フィルムからなる層と、最表層となるヒートシール性樹脂層とを有することを特徴とする、積層材。
6.上記5に記載の積層材を用い、ヒートシール性樹脂層を熱融着して製袋または製函したことを特徴とする包装用容器。
なお、本発明において、ドープとは、珪素含有炭化水素層中の炭素原子が、酸化珪素蒸着層中に取り込まれる現象を意味する。
炭化水素(メタン、エチレン、アセチレン等)のみを蒸着用モノマーガスとして使用して形成されるDLC膜は、良好な酸素バリア性を示すが、水蒸気に対してはバリア能を有しない。
<I>本発明の高防湿性フィルムの層構成
図1は、本発明の高防湿性フィルムの層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
図1に示されるように、本発明の高防湿性フィルムは、基材フィルム1、酸化珪素蒸着層2及び珪素含有炭化水素層3からなる構成を基本とする。
また、酸化珪素蒸着層2及び珪素含有炭化水素層3は、基材フィルム1の両面に設けてもよい。
以下、本発明において使用される樹脂名は、業界において慣用されるものが用いられる。
本発明において、基材フィルムとしては、化学的ないし物理的強度に優れ、酸化珪素蒸着層及び珪素含有炭化水素層を形成する条件に耐え、これらの層の特性を損なうことなく良好に保持し得ることができる任意の透明樹脂フィルムを使用することができる。
本発明の高防湿性フィルムの製造において、基材フィルムの少なくとも片面に、有機珪素化合物を蒸着用モノマーガスとして使用するプラズマCVD法により、1層またはそれ以上の酸化珪素蒸着層を積層する。
本発明の高防湿性フィルムの製造においては、上記のようにして形成された直後の上記酸化珪素蒸着層の表面に、インラインで、有機珪素化合物及び脂環式炭化水素を蒸着用モノマーガスとして使用するプラズマCVD法により、1層またはそれ以上の珪素含有炭化水素層を積層する。2層以上の珪素含有炭化水素層を積層する場合、2層目以降の層は、アウトラインで積層することもできるが、本発明において特に重要な点は、形成直後の酸化珪素蒸着層上に直接、珪素含有炭化水素層を、インラインで積層することである。
なお、本発明において、珪素含有炭化水素層の厚さは、米国SLOAN社製、表面形状測定器DEKTAK3030によって測定することができる。
安全性の理由からヘキサメチルジシロキサンを使用することが特に好ましい。
特に、脂環式炭化水素としてシクロヘキサンを使用することにより、上記の効果が一層高まるため好ましい。
また、CHb/Sibが0.50より小さいと、高い水蒸気バリア性が得られないため好ましくない。また、3.00より大きいと、水蒸気バリア性及び透明性が損なわれる。
なお、本発明において、各層中の珪素原子数(Si)及び脂環式炭化水素由来の炭素原子数(CH)の比は、X線光電子分光分析装置(島津製作所製ESCA)により計測され
る。
<V>製造
本発明の高防湿性フィルムは、上記酸化珪素蒸着層と、上記珪素含有炭化水素層とを、2室以上の成膜室を有するプラズマCVD装置を用いて、インラインで、プラズマCVD法により積層することにより製造される。
図3に示されるプラズマCVD装置11は、基材フィルム供給室12、第1の成膜室13、第2の成膜室14及び巻取り室16から構成されることを基本構造とするものである。
この場合、第1及び第2の成膜室を用いて、2層の酸化珪素蒸着層を積層し、第3の成膜室で、1層の酸化珪素蒸着層を積層することができる。
さらに別の態様では、第1の成膜室を用いて、1層の酸化珪素蒸着層を積層し、第2の成膜室を用いて、1層の酸化珪素蒸着層を積層し、第3の成膜室を用いて、さらなる任意の層、例えば酸化珪素蒸着層を積層してもよい。
巻き取られる。
なお、各成膜室内の真空度は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
本発明の高防湿性フィルムは、珪素含有炭化水素膜を有しながらも、良好な透明性を有する。
好適には、本発明の高防湿性フィルムは、L*a*b*表色系におけるL*が75〜95であり、a*が0.1〜2.0であり、b*が0〜20の範囲を示すものである。さらに好適には、本発明の高防湿性フィルムは、L*a*b*表色系におけるL*が80〜95であり、a*が0.5〜1.3であり、b*が0〜17の範囲を示すものである。
また、水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製 PERMATRAN3/33)を用いて、測定温度40℃、相対湿度100%で測定される値である。
本発明の高防湿性フィルムは、任意の機能層をさらに積層したり、任意の機能フィルムとラミネートしたりすることにより、積層材を形成することができる。
本発明の高防湿性フィルムを含む積層材は、優れた水蒸気バリア性、酸素バリア性及び透明性が要求される種々の用途に使用することができる。
[実施例1]
厚さ12μmのPETフィルム(ユニチカ製エンブレット)を、2つの成膜室(第1及び第2の成膜室)を有する巻き取り式プラズマCVD装置に装着し、そのコロナ処理面上に、下記条件1にて、厚さ20nmの酸化珪素蒸着層(第1層)を形成した。
使用成膜室:第1の成膜室
供給ガス:HMDSO:酸素=1:10(単位:slm)のガス組成物
成膜室の真空度:3.0Pa
供給電力:22kW
フィルム搬送速度:50m/min
次いで、上記で形成された酸化珪素蒸着層上に、インラインで、下記条件2にて、厚さ10nmの珪素含有炭化水素層(第2層)を積層し、本発明の高防湿性フィルムを製造した。
使用成膜室:第2の成膜室
供給ガス:シクロヘキサン:HMDSO=9:1(単位:slm)のガス組成物
成膜室の真空度:3.0Pa
供給電力:22kW
フィルム搬送速度:50m/min
厚さ12μmのPETフィルム(ユニチカ製エンブレット)を、実施例1と同じプラズマCVD装置に装着し、そのコロナ処理面上に、下記条件1にて、厚さ20nmの酸化珪素蒸着層(第1層)を形成した。
使用成膜室:第1の成膜室
供給ガス:HMDSO:酸素=1:10(単位:slm)のガス組成物
成膜室の真空度:3.0Pa
供給電力:22kW
フィルム搬送速度:50m/min
次いで、上記で形成された酸化珪素蒸着層上に、インラインで、下記条件2にて、厚さ10nmの珪素含有炭化水素層(第2層)を積層し、本発明の高防湿性フィルムを製造した。
使用成膜室:第2の成膜室
供給ガス:シクロヘキサン:HMDSO=4.5:1(単位:slm)のガス組成物
成膜室の真空度:3.0Pa
供給電力:22kW
フィルム搬送速度:50m/min
厚さ12μmのPETフィルム(ユニチカ製エンブレット)を、実施例1と同じプラズマCVD装置に装着し、そのコロナ処理面上に、下記条件1にて、厚さ20nmの酸化珪素蒸着層(第1層)を形成した。
使用成膜室:第1の成膜室
供給ガス:HMDSO:酸素=1:10(単位:slm)のガス組成物
成膜室の真空度:3.0Pa
供給電力:22kW
フィルム搬送速度:50m/min
次いで、上記で形成された酸化珪素蒸着層上に、インラインで、下記条件2にて、厚さ10nmの珪素含有炭化水素層(第2層)を積層し、本発明の高防湿性フィルムを製造した。
使用成膜室:第2の成膜室
供給ガス:シクロヘキサン:HMDSO=1:1(単位:slm)のガス組成物
成膜室の真空度:3.0Pa
供給電力:22kW
フィルム搬送速度:50m/min
厚さ12μmのPETフィルム(ユニチカ製エンブレット)を、3つの成膜室(第1、第2及び第3の成膜室)を有する巻き取り式プラズマCVD装置に装着し、そのコロナ処理面上に、下記条件1にて、厚さ20nmの酸化珪素蒸着層(第1層)を形成した。
使用成膜室:第1の成膜室
供給ガス:HMDSO:酸素=1:10(単位:slm)のガス組成物
成膜室の真空度:3.0Pa
供給電力:22kW
フィルム搬送速度:50m/min
次いで、上記で形成された酸化珪素蒸着層上に、インラインで、下記条件2にて、厚さ20nmの第二の酸化珪素蒸着層(第2層)を形成した。
使用成膜室:第2の成膜室
供給ガス:HMDSO:酸素=1:10(単位:slm)のガス組成物
成膜室の真空度:3.0Pa
供給電力:22kW
フィルム搬送速度:50m/min
次いで、上記で形成された第二の酸化珪素蒸着層上に、インラインで、下記条件3にて、厚さ10nmの珪素含有炭化水素層(第3層)を積層し、本発明の高防湿性フィルムを製造した。
使用成膜室:第3の成膜室
供給ガス:シクロヘキサン:HMDSO=9:1(単位:slm)のガス組成物
成膜室の真空度:3.0Pa
供給電力:22kW
フィルム搬送速度:50m/min
厚さ12μmのPETフィルム(ユニチカ製エンブレット)を、実施例1と同じプラズマCVD装置に装着し、そのコロナ処理面上に、下記条件1にて、厚さ20nmの酸化珪素蒸着層(第1層)を形成した。
使用成膜室:第1の成膜室
供給ガス:HMDSO:酸素=1:10(単位:slm)のガス組成物
成膜室の真空度:3.0Pa
供給電力:22kW
フィルム搬送速度:50m/min
次いで、上記で形成された酸化珪素蒸着層上に、インラインで、下記条件2にて、厚さ10nmの炭化水素層(第2層)を積層し、積層フィルムを製造した。
使用成膜室:第2の成膜室
供給ガス:シクロヘキサン:アルゴン=5:1(単位:slm)のガス組成物
成膜室の真空度:3.0Pa
供給電力:22kW
フィルム搬送速度:50m/min
厚さ12μmのPETフィルム(ユニチカ製エンブレット)を、実施例1と同じプラズマCVD装置に装着し、そのコロナ処理面上に、下記条件1にて、厚さ20nmの酸化珪素蒸着層(第1層)を形成した。
使用成膜室:第1の成膜室
供給ガス:HMDSO:酸素=1:10(単位:slm)のガス組成物
成膜室の真空度:3.0Pa
供給電力:22kW
フィルム搬送速度:50m/min
次いで、上記で形成された酸化珪素蒸着層上に、インラインで、下記条件2にて、厚さ10nmの酸化珪素蒸着層(第2層)を積層し、2層の酸化珪素蒸着層を有する積層フィルムを製造した。
使用成膜室:第2の成膜室
供給ガス:HMDSO:酸素=1:10(単位:slm)のガス組成物
成膜室の真空度:3.0Pa
供給電力:22kW
フィルム搬送速度:50m/min
厚さ12μmのPETフィルム(ユニチカ製エンブレット)を、2つの成膜室(第1及び第2の成膜室)を有する巻き取り式プラズマCVD装置に装着し、そのコロナ処理面上に、第1成膜室のみを使用し、下記条件1にて、厚さ20nmの酸化珪素蒸着層(第1層)を形成した。
使用成膜室:第1の成膜室
供給ガス:HMDSO:酸素=1:10(単位:slm)のガス組成物
成膜室の真空度:3.0Pa
供給電力:22kW
フィルム搬送速度: 50m/min
次いで、上記で形成された酸化珪素蒸着フィルムを巻き取り式CVD装置から外し、再度同CVD装置に装着後、第1成膜室のみを使用し、下記条件2にて、厚さ10nmの珪素含有炭化水素層(第2層)をアウトラインで積層した。
使用成膜室:第1の成膜室
供給ガス:シクロヘキサン:HMDSO=9:1(単位:slm)のガス組成物
成膜室の真空度:3.0Pa
供給電力:22kW
フィルム搬送速度:50m/min
実施例1〜5及び比較例1〜2で得られたフィルムについて、各層の厚さ、各層中の珪素原子数に対する炭化水素由来の炭素原子数の比(CH/Si)、色相(L*a*b*表色系におけるL*値、a*値、b*値)及び水蒸気透過率を、下記の方法により測定した。結果を以下の表1に示す。
PET基材フィルムに、第1層として酸化珪素蒸着層を積層し、その上にシリコンウェハを貼り付け、次いで、第2層として炭化水素層または酸化珪素蒸着層を積層し、各層の厚さを、Sloan社製表面形状測定器(DEKTAK3030)で測定した。実施例4については、第2層の上にさらにシリコンウェハを貼り付け、次いで、第3層を積層し、各層の厚さを測定した。
X線光電子分光分析装置(島津製作所製 製品名「ESCA−3400」)を用いて、励起X源;AlKα(15kV、120W)、検出角度:90°、測定面積:6.0mmΦの条件下でスペクトルを測定し、得られた炭素含有率からHMDSO由来の炭素含有率を差し引いたものを炭化水素由来の炭素含有率とした。次いで得られた同炭化水素由来の炭素含有率と珪素含有率の比をCH/Siとした。
色相は、JIS Z 8722に記載された方法に準拠し、コニカミノルタ製分光測色計CM−2600dを用いて、光源として標準イルミナントD65(色温度が6504Kに近似する昼光。平均的な昼色の分光分布を持つ光。紫外域を比較的多く含んでいる。)を用いて、視野角10°で、専用白色板使用条件下で反射光により測定した。
水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製 PERMATRAN3/33)を用いて、測定温度40℃、相対湿度100%で、第2層の側から浸入し、基材フィルムの側へ透過する水蒸気の量を測定した。
2、2a、2b 酸化珪素蒸着層
3 珪素含有炭化水素層
11 プラズマCVD装置
12 基材フィルム供給室
13 第1の成膜室
14 第2の成膜室
15 第3の成膜室
16 巻取り室
17 巻き出しロール
18、24、25、31、32、38 補助ロール
19、26、33 冷却・電極ドラム
20、27、34 原料揮発供給装置
21、28、35 ガス供給装置
22、29、36 原料供給ノズル
23、30、37 グロー放電プラズマ
39 巻取りロール
40 電源
41、42、43 マグネット
Claims (6)
- 基材フィルムの少なくとも片面に、有機珪素化合物を蒸着用モノマーガスとして使用するプラズマ化学気相成長法により、1層またはそれ以上の酸化珪素蒸着層を設け、
次いで、該形成直後の酸化珪素蒸着層の表面に、インラインで、有機珪素化合物及び脂環式炭化水素を蒸着用モノマーガスとして使用するプラズマ化学気相成長法により、1層またはそれ以上の珪素含有炭化水素層を設け、これによって、前記酸化珪素蒸着層中に炭素原子をドープしてなる高防湿性フィルム。 - 前記1層またはそれ以上の酸化珪素蒸着層の層厚の合計が5〜200nmであって、該層中に存在する珪素の原子数(Sia)に対する、脂環式炭化水素由来の炭素の原子数(CHa)の比(CHa/Sia)が、0.10〜1.80であり、
前記1層またはそれ以上の珪素含有炭化水素層の層厚の合計が5〜200nmであって、該層中に存在する珪素の原子数(Sib)に対する、脂環式炭化水素由来の炭素の原子数(CHb)の比(CHb/Sib)が、0.50〜3.00であることを特徴とする、請求項1に記載の高防湿性フィルム。 - L*a*b*表色系におけるL*が80〜95であり、a*が0.1〜2.0であり、b*が1〜20であることを特徴とする、請求項1または2に記載の高防湿性フィルム。
- 40℃・相対湿度100%における水蒸気透過率が1.0g/m2・day・atm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高防湿性フィルム。
- 少なくとも、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高防湿性フィルムからなる層と、最表層となるヒートシール性樹脂層とを有することを特徴とする、積層材。
- 請求項5に記載の積層材を用い、ヒートシール性樹脂層を熱融着して製袋または製函したことを特徴とする包装用容器。
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