JP2013119664A - 透明導電膜およびその形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ZnOを用いた透明導電膜の抵抗率と透過率の兼ね合いが調整できるようにする。
【解決手段】第1工程S101で、図1の(a)に示すように、基板101の上にアンドープのZnOからなる第1膜102を形成する。次に、第2工程S102で、GaまたはAlがドープされたZnOからなる第2膜103を第1膜102の上に接して形成する。これらのことにより、基板101の上に形成されたアンドープのZnOからなる第1膜102と、第1膜102の上に接して形成されてGaまたはAlがドープされたZnOからなる第2膜103とを備える透明導電膜が形成できる。
【選択図】 図1
【解決手段】第1工程S101で、図1の(a)に示すように、基板101の上にアンドープのZnOからなる第1膜102を形成する。次に、第2工程S102で、GaまたはAlがドープされたZnOからなる第2膜103を第1膜102の上に接して形成する。これらのことにより、基板101の上に形成されたアンドープのZnOからなる第1膜102と、第1膜102の上に接して形成されてGaまたはAlがドープされたZnOからなる第2膜103とを備える透明導電膜が形成できる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ZnOを用いた透明導電膜およびその形成方法に関する。
酸化亜鉛系の透明導電膜は、既に様々な分野に広く応用されている。酸化亜鉛系の透明導電膜は、ITO(Indium Tin Oxide)に比べ特性は若干劣るが、金属亜鉛自体の原料コストがインジウムよりも低いため、大面積化が必要とされる太陽電池などで主に使われている。ただし、アンドープZnOは、電気伝導性が酸素欠陥から生じるため、熱に弱く安定性があまり良くないことと、10-3Ωcm台までしか抵抗率が到達しないという問題点がある。このため、ZnO系の透明導電膜としては、特性の安定しているAlドープZnO(AZO)およびGaドープZnO(GZO)が、現在盛んに用いられている(非特許文献1参照)。
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ところで、透明導電膜の特性は、抵抗率と透過率の組み合わせで決定され、抵抗率が低く、透過率が高いことが望ましい。しかし、抵抗率が低い構成では、必然的にプラズマ振動数に対応する波長が短くなるため、より短波長側まで光の吸収が生じることになり、透過率が低くなる。概して、抵抗率と透過率はトレードオフの関係にある。
透明導電膜の太陽電池への適用を考えると、太陽光のスペクトルが紫外から赤外まで分布しているので、可視域の透過率が高くなければならないことは言うまでも無く、近赤外から赤外領域の透過率も高いことが要求される。また、同時に、低い抵抗率であることも要求される。ZnOを用いた透明導電膜では、10-4Ωcm台の抵抗率が得られないので、必然的にAZOやGZOを使うことになる。
しかしキャリア密度が1020cm3台を超えると、伝導に寄与する電子が縮退し、近赤外領域の透過率が下がってしまう。このように、GaやAlは、ドーパントとして高いキャリア密度を生成するが、近赤外領域の透過率低下を招く。一方で、Bのようなドーパントとしての活性度の低い元素を用いれば、近赤外領域の透過率は高くなる(非特許文献2参照)。しかし、Bを添加した場合のZnOは、アンドープZnOと同程度の抵抗率しか得られないという問題がある。これらのことを背景に、抵抗率と透過率の兼ね合いを調整できるような透明導電膜およびその形成方法が求められている。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、ZnOを用いた透明導電膜の抵抗率と透過率の兼ね合いが調整できるようにすることを目的とする。
本発明に係る透明導電膜の形成方法は、基板の上にアンドープのZnOからなる第1膜を形成する第1工程と、GaまたはAlがドープされたZnOからなる第2膜を第1膜の上に接して形成する第2工程とを少なくとも備える。なお、第2膜を、第1膜と同じ膜厚に形成するとよい。
また、本発明に係る透明導電膜は、基板の上に形成されたアンドープのZnOからなる第1膜と、第1膜の上に接して形成されてGaまたはAlがドープされたZnOからなる第2膜とを備える。なお、第2膜は、第1膜と同じ膜厚に形成されているとよい。
以上説明したことにより、本発明によれば、ZnOを用いた透明導電膜の抵抗率と透過率の兼ね合いが調整できるようになるという優れた効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における透明導電膜の形成方法を説明するための説明図である。まず第1工程S101で、図1の(a)に示すように、基板101の上にアンドープのZnOからなる第1膜102を形成する。基板101は、例えば、ガラス基板である。また、第1膜102は、例えば、ZnOターゲットを用いたスパッタ法により形成すればよい。
次に、第2工程S102で、GaまたはAlがドープされたZnOからなる第2膜103を第1膜102の上に接して形成する。第2膜103は、例えば、ZnOターゲットと、Ga2O3ターゲットもしくはAl2O3ターゲットを用いたスパッタ法により形成すればよい。
これらのことにより、基板101の上に形成されたアンドープのZnOからなる第1膜102と、第1膜102の上に接して形成されてGaまたはAlがドープされたZnOからなる第2膜103とを備える透明導電膜が形成できる。このように、積層した構造とすることで、ZnOを用いた透明導電膜の抵抗率と透過率の兼ね合いが調整できるようになる。
ここで、透明導電膜は応用上、透明なガラス基板上に形成される場合が多い。アンドープのZnO、AlをドープしたZnO(AZO)、GaをドープしたZnO(GZO)などのZnO系の材料をガラス基板上に成膜する場合の一般的な問題点として、界面付近の結晶性が悪いことが知られている。このような構成では、透明導電膜が厚くなるにつれて結晶性が改善し、c軸配向を示すZnO(002)回折ピークの強度は強くなる。ZnO(002)のピーク強度は、およそ膜厚の2乗に比例する。キャリア生成とキャリアの移動は結晶性に深く関わっており、結晶性が向上すると、キャリア密度,移動度ともに増大して低抵抗化する。従って、電気伝導の大半は、結晶性が向上する透明導電膜の上部が担っていることになる。一方で、基板との界面に近いところは、上部に結晶性の優れた膜を形成するための下積みとみなすことができる。
透過率に関しては、主に透明導電膜中のキャリア密度に依存し、膜全体として寄与する。このことから、基板に近いところにキャリア密度が低く、透過率が高いZnO膜を配し、ZnO膜の結晶性を十分に向上させ、この上に、AZOやGZOなどのキャリア密度が高い結晶膜を形成すれば、課題を解決することができる。基板に近いところの第1膜となるZnO膜は、GZOからなる第2膜のための結晶テンプレートを提供する役割を果たし、光吸収が少ない分だけ、透過率は高くなる。
ZnOターゲットを備えるスパッタ源と、Al2O3もしくはGa2O3ターゲットを備えるスパッタ源が、1台の装置に接続されているスパッタ装置を使ってこのプロセスを行うには、まずアンドープのZnO膜をスパッタしてから、ZnOとAl2O3の同時スパッタ、もしくはZnOとGa2O3の同時スパッタを実行すればよい。あるいは、ZnOターゲットと、AZOもしくはGZOターゲットが別々の成膜室に収められている場合には、まずZnO膜をスパッタしてから、次の成膜室へ基板を搬送し、AZO膜もしくはGZO膜をスパッタすればよい。この場合、それぞれのプロセスが干渉しないため、最適な特性のZnO、AZO(GZO)膜を順番に成膜することが可能である。また、これらのように、連続して第1膜および第2膜を形成することで、積層する膜の界面特性が向上し、特性のよい透明導電膜が形成できる。
次に、全体の膜厚が決まっている場合に、アンドープZnOの第1膜とAZO(GZO)の第2膜の各々にどれだけの膜厚を振り分ければ、最適な結果が得られるかを考える。まずZnOの膜厚が大きく、AZO(GZO)の膜厚が薄い場合には、電気伝導に寄与するAZO(GZO)の膜厚割合が少な過ぎることになり、与えられた膜厚を十分に利用していないことになる。逆にAZO(GZO)がより厚い場合には、AZO(GZO)の下の方はまだ結晶性が悪いため、電気伝導への寄与が少ないにも関わらず、AZO(GZO)の下の部分が全体の透過率を下げてしまう。以上の考察から、ZnO第1膜およびAZO(GZO)第2膜の膜厚を、ほぼ同じに設定することが望ましいことが分かる。
次に、上述した透明導電膜の形成方法を実施する成膜装置について説明する。図2は、透明導電膜の形成に用いられる成膜装置の構成を示す構成図である。図2では、断面を模式的に示している。この成膜装置は、ロードロック室201から基板Wを搬入し、ゲートバルブ202により仕切られた成膜室203へ基板Wを搬送する。成膜室203にはZnOターゲットを備えるスパッタ源204、およびGa2O3ターゲットを備えるスパッタ源205が、基板Wを見込む位置に備えられている。
この成膜装置は、スパッタ成膜装置であり、スパッタ源204,スパッタ源205としては、マグネトロンスパッタやECRプラズマスパッタが考えられる。また、ロードロック室201および成膜室203は、図示しない排気機構により減圧排気される。また、成膜室203には、図示しないガス供給機構が設けられ、酸素ガスなどが導入可能とされている。
この成膜装置を用い、まず、スパッタ源204により、アルゴンプラズマによってZnOターゲットだけを用い、基板WにZnOをスパッタ成膜する。このときに酸素ガスを多く導入すると、ZnOターゲットが過剰に酸化してしまい、GZO膜の形成時に過剰な量の酸素原子が膜中に取り込まれ、GZO膜が高抵抗化する。成膜室203の残留ガスに含まれるO2やH2Oは酸素の供給源となるので、外部から入れる酸素ガスの量は精密に制御することが重要となる。
次に、スパッタ源204に加えてスパッタ源205を動作させ、ZnOターゲットからのスパッタとGa2O3ターゲットからのスパッタを重畳し、既に形成されているZnO膜(第1膜)の上にGZO膜(第2膜)を形成する。これにより、基板Wの上に形成されたアンドープのZnOからなる第1膜と、この第1膜の上に接して形成されてGaまたはAlがドープされたZnOからなる第2膜とからなる透明導電膜が形成できる。
上述した成膜の場合、Ga2O3ターゲットに印加するパワーを変化させることで、GZO膜中のGa濃度を変化させることが可能である。酸素ガスは導入しなくても、Ga2O3ターゲット中に含まれている酸素原子がGZO膜中の酸素欠陥を終端する。
ここで注意したいのは、GZO膜の抵抗率が最小になるGa濃度において、必ずしも透過率が最大にはならないということである。透過率の方を重視するか、もしくは、抵抗率を中心に考えるかで、GZO膜中に導入すべきGaの量は変わってくる。この最適条件は膜厚にも多少依存する。さらに、抵抗率がある程度悪くても、Ga濃度が高い方が熱的安定性が良好であるという報告もあるため(非特許文献3参照)、Ga濃度の設定値は、単に抵抗率と透過率だけで決まる訳ではない。
次に、他の成膜装置について説明する。図3は、透明導電膜の形成に用いられる他の成膜装置の構成を示す構成図である。図3では、断面を模式的に示している。この成膜装置は、ロードロック室301と、ロードロック室301とゲートバルブ302により仕切られた第1成膜室303を備える。また、この成膜装置は、第1成膜室303とゲートバルブ304により仕切られた第2成膜室305を備える。
第1成膜室303にはZnOターゲットを備えるスパッタ源331が備えられている。また、第2成膜室305には、GZOターゲットを備えるスパッタ源351が備えられている。また、ロードロック室301,第1成膜室303,第2成膜室305は、図示しない排気機構により減圧排気される。また、第1成膜室303,第2成膜室305には、図示しないガス供給機構が設けられ、酸素ガスなどが導入可能とされている。
この成膜装置における成膜では、まず、ロードロック室301から基板Wを搬入し、ゲートバルブ302を介して第1スパッタ室303へ基板Wを搬送し、スパッタ源331を動作させて基板Wの上にZnO膜(第1膜)をスパッタ成膜する。このとき、十分に酸素ガスを流した方が、ZnO膜中の酸素欠陥が消えて、より透過率の高いZnO膜が得られる。
次に、基板Wを第2スパッタ室304へ移送し、スパッタ源351を動作させて既に形成されているZnO膜の上にGZO膜(第2膜)をスパッタ成膜する。このときも、最適な抵抗率が得られるよう、酸素ガスの流量を設定すればよい。酸素ガスを流さない方がよい場合もある。前述した成膜装置の場合と異なり、ZnOターゲットとGZOターゲットとは異なる領域(スパッタ室)に配置されているため、ZnO膜およびGZO膜は、各々に最適な酸素ガス流量を選択することができる。
次に、実際に作製した透明導電膜について説明する。以下では、図2を用いて説明した成膜装置を用いて試料を作製している。ZnOターゲットを備えたECRスパッタ源からのスパッタとGa2O3ターゲットを備えたRFマグネトロンからのスパッタを同時に行い、GZO膜を形成した場合の特性について述べる。Ga2O3ターゲットに近い基板上の位置におけるGa濃度が高くなるため、1枚の52×76mmの矩形ガラス基板を使うことにより、Ga濃度を変化させた電気的特性と光学的特性が一度に得られた。ZnO第1膜の膜厚とGZO第2膜の膜厚とを等しくし、50nm、100nm、150nm、200nmに設定した4条件を設定した。基板は加熱していないが、ECRプラズマが照射されることにより、成膜中の基板表面の温度は50℃程度にまで上昇した。
また、GZO/ZnO構造の優位性を示すために、次に示す層構造の試料を作製した。まず、基板の上に、同じ膜厚でZnO膜(第1膜)およびGZO膜(第2膜)を積層して形成した第1試料を作製した。また、基板の上に、第1試料のZnO膜と同じ膜厚でZnO膜のみを形成した第2試料を作製した。また、基板の上に、第1試料の積層膜の全膜厚と同じ膜厚でZnOのみを形成した第3試料を作製した。第3試料は、積層膜における各層の膜厚に対して2倍の膜厚となっている。また、基板の上に第1試料の積層膜の全膜厚と同じ膜厚でGZO膜のみを形成した第4試料を作製した。第4試料も、積層膜における各層の膜厚に対して2倍の膜厚となっている。
これら各試料についてシート抵抗および透過率を測定した。
まず、積層膜における各層の膜厚を50nmとした場合、第1試料,第2試料,第3試料,および第4試料のシート抵抗を測定すると、図4に示す結果となる。また、図4では、第1試料と第2試料との測定結果より、第1試料ではZnO膜とGZO膜とが並列に接続されているものとして、第2膜としてのGZO膜のみのシート抵抗を計算により求めている。また、GZO膜をZnOとGa2O3の複合酸化物と見なし、横軸に、GZO膜中のGa濃度をGa2O3の重量百分率(wt%)で表している。
一般に透明導電膜の結晶性は、膜厚が増加するほど改善するため、膜厚の増加に伴い、キャリア密度およびHall移動度は増大し、抵抗率は減少する。このため、全体の膜厚を揃えて特性を比較することが重要となる。また、作製プロセス上の観点からは、厚い膜厚の成膜にはコストがかかるので、どの程度の膜厚でどの様な特性が得られるのかが重要となる。
まず、第2試料のシート抵抗は、図4の(a)に示すように、約900Ω/□と一番高い値となっている。なお、第2試料のZnO膜にGaは含まれていないので、横軸のGa2O3濃度は、便宜上ウエハ上の場所に対応して、同じ場所のGZO膜との比較においてのみ意味を持つ。
次に、膜厚が100nmの第3試料では、図4の(b)に示すように、シート抵抗は、第1試料に対して約半分になっている。また、当然ながら、最も抵抗が低いのは、図4の(c)に示すように、膜厚100nmのすべてがGZOの第4試料である。室温(20〜25℃)で成膜しているため、抵抗率はGa2O3重量が5wt%で極小になっている。
これに比べて、GZO/ZnOの第1試料の極小点は、図4の(d)に示すように、Ga2O3の重量が3wt%にシフトしている。第4試料(c)と第1試料(d)とを比較すると、Ga2O3の重量が3wt%でのシート抵抗はほぼ同じである。なお、第2膜としてのGZO膜のみのシート抵抗を計算により求めると、図4の(e)に示すように、Ga2O3の重量が大きいと、シート抵抗が増加している。
一方、透過率については、図5に示すように、第1試料(実線)と第4試料(点線)とで、波長1000nmよりも短波長において同等であるが、波長1000nmから3000nmにかけては、第1試料の方が高くなっている。このため、近赤外域の透過率を重視するのであれば、第1試料、すなわち、本実施の形態における透明導電膜を選ぶ方がよい。
次に、積層膜における各層の膜厚を100nmとした場合の、第1試料,第2試料,第3試料,および第4試料のシート抵抗を測定した結果について説明する。図6の(a)に示すように、膜厚100nmとしたZnO膜のみの第2試料のシート抵抗が最も高い。しかし、膜厚が2倍のZnOのみの第3試料では、図6の(b)に示すように、図4の結果に比較して、シート抵抗は37%に減少している。また、図6の(c),(d),(e)に示すように、Ga2O3重量の低いところでは、第4試料,第1試料,および計算値による第2膜としてのGZO膜のみのシート抵抗は、あまり変わらないことが明らかである。
これに対し、透過率については、図7に示すように、第1試料(実線)と第4試料(点線)とを比較すると、波長500nm付近に関しては、第1試料の方が若干透過率が低いが、波長1000−3000nmにかけては、第1試料の方が透過率が高く、両者の透過率は最大で50%も異なる。なお、第4試料は、Ga2O3の重量が3wt%の場合である。この結果からも明らかなように、太陽電池のように近赤外域の透過率が重要とされる応用先においては、第1試料、すなわち、本実施の形態における透明導電膜の方が有利である。
次に、積層膜における各層の膜厚を150nmとした場合の、第1試料,第2試料,第3試料,および第4試料のシート抵抗を測定した結果について説明する。図8の(a)に示すように、膜厚150nmとしたZnO膜のみの第2試料のシート抵抗が最も高い。これに対し、膜厚が2倍のZnOのみの第3試料は、図8の(b)に示すように、低いシート抵抗となっている。また、図8の(c),(d),(e)に示すように、Ga2O3重量の少ないところでは、第4試料,第1試料,および計算値による第2膜としてのGZO膜のみのシート抵抗は、あまり変わらない。全体的な傾向も、前述した結果と同様である。また、前述した結果に比較して、膜厚が厚くなっている分だけ、全体にシート抵抗は低下している。
また、透過率については、図9に示すように、第1試料(実線)と第4試料(点線)とを比較すると、可視域の透過率は、第1試料の方が10%程度低い。これに対し、1000−3000nmの領域では、第1試料の方が透過率の低下は穏やかであり、第4試料より高い透過率となる。なお、第4試料は、Ga2O3の重量が3wt%の場合である。
次に、積層膜における各層の膜厚を200nmとした場合の、第1試料,第2試料,第3試料,および第4試料のシート抵抗を測定した結果について説明する。図10の(a)および(e)に示すように、全体に膜厚が厚いため、Ga2O3の重量が10wt%を超える高濃度では、第2膜としてのGZO膜のみのシート抵抗(計算値)が、第2試料のシート抵抗と同程度の値となる。なお、図10の(b)は第3試料、図10の(c)は第4試料、図10の(d)は第1試料の測定結果である。
また、透過率については、図11に示すように、第1試料(実線)と第4試料(点線)とを比較すると、800nmよりも短波長域では両者の透過率は同程度であるが、800nmよりも長波長側では差が大きく、各波長において約40%近くの違いがある。特に、膜厚が400nmとなっている第4試料の透過率は、プラズモン共鳴に対応する波長がかなり短波長側へ来ているため、波長800nmよりも長波長で急激に透過率が落ちている。これに対し、第1試料のカーブはずっと緩やかに低下している。この結果より、多少シート抵抗を犠牲にしても、透過率の方を優先するのであれば、第1試料、すなわち、本実施の形態における透明導電膜の方が、勝っていると言える。
以上の結果をもとに、全膜厚が200nmの場合について、アンドープのZnOからなる第1膜と、GaがドープされたZnOからなる第2膜とに、どの様な割合で膜厚を振り分けるのが最適かを考察する。以下の比較では、図12の(a)に示すように第1膜であるZnO膜を150nmとし、第2膜であるGZO膜を50nmとした第1条件、図12の(b)に示すように第1膜であるZnO膜および第2膜であるGZO膜の両者を100nmとした第2条件、図12の(c)に示すように第1膜であるZnO膜を50nmとし、第2膜であるGZO膜を150nmとした第3条件を設定する。
ここで、第1層であるZnO膜からシート抵抗への寄与を無視し、第2膜であるGZO膜は、Ga2O3濃度3wt%の場合を考えると、まず、図4に示した結果より第1条件のシート抵抗は210Ω/□となり、図6に示した結果より第2条件のシート抵抗は60Ω/□となり、図8に示した結果より第3条件のシート抵抗は45Ω/□となる。第1条件の210Ω/□は、明らかに抵抗値が高すぎる。
透過率に関しては、第2膜であるGZO膜の膜厚が主に効くため、第2条件については、図7の実線に示す結果が近いスペクトルとなり、第3条件については、図9の実線に示す結果が近いスペクトルとなる。第2条件と第3条件とを比較すると、図7の実線に示す結果の方が、波長全域にわたり高い透過率を示している。太陽電池用の透明導電膜においてはこの特性の利点が大きいため、第2条件の場合、すなわち、第1膜と第2膜とを同じ膜厚とした実施の形態における透明導電膜が、最適な結果を与えることがわかる。
以上に説明したように、本発明によれば、例えば、シート抵抗が僅かに高くなるが、近赤外から赤外域にわたる透過率を数10%も高くすることができる。また、GaまたはAlがドープされたZnOからなる第2膜は、第1膜と同様にZnO系材料であり、これらは同様なエッチング特性を有し、各々の単層の場合と同様の加工特性となる。従って、本発明における透明導電膜は、ZnO系の単層構造の透明導電膜と同様に、様々な構造を製造可能である。このように、本発明によれば、ZnOを用いた透明導電膜の抵抗率と透過率の兼ね合いが、容易に調整できるようになる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。上述では、主にGaをドープした場合について説明したが、Alをドープした場合についても同様であることは言うまでもない。
101…基板、102…第1膜、103…第2膜。
Claims (4)
- 基板の上にアンドープのZnOからなる第1膜を形成する第1工程と、
GaまたはAlがドープされたZnOからなる第2膜を前記第1膜の上に接して形成する第2工程と
を少なくとも備えることを特徴とする透明導電膜の形成方法。 - 請求項1記載の透明導電膜の形成方法において、
前記第2膜を、前記第1膜と同じ膜厚に形成することを特徴とする透明導電膜の形成方法。 - 基板の上に形成されたアンドープのZnOからなる第1膜と、
前記第1膜の上に接して形成されてGaまたはAlがドープされたZnOからなる第2膜と
を備えることを特徴とする透明導電膜。 - 請求項3記載の透明導電膜において、
前記第2膜は、前記第1膜と同じ膜厚に形成されていることを特徴とする透明導電膜。
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