JP2013119491A - 黒鉛薄膜およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】薄片化した黒鉛粒子を凝集させずに黒鉛薄膜を製造する方法を提供すること。
【解決手段】板状黒鉛粒子と、該板状黒鉛粒子に吸着した、下記式(1):
−(CH−CHX)− (1)
(式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体とを備える微細化板状黒鉛粒子および有機溶媒を含有する板状黒鉛粒子分散液からなる有機層を形成する層形成工程と、
該有機層から前記有機溶媒を除去して、複数の前記微細化板状黒鉛粒子が板面方向に連続的に接触して配置されている黒鉛薄膜を形成する溶媒除去工程と、
を含むことを特徴とする黒鉛薄膜の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、板状の黒鉛粒子を含有する黒鉛薄膜およびその製造方法に関する。
黒鉛粒子は、熱伝導性、導電性、機械的強度など様々な特性に優れており、このような黒鉛粒子からなる薄膜は、様々な分野において、導電体材料や熱伝導体材料などとして注目されている。しかしながら、黒鉛粒子は凝集しやすく、従来の黒鉛薄膜は必ずしも十分な特性を有するものではなかった。
そこで、従来から、薄片化した黒鉛粒子を水などの溶媒に分散させ、この分散液を用いて黒鉛塗膜を形成する方法が提案されている。例えば、特開2011−184264号公報(特許文献1)には、黒鉛とアルカリ金属の水酸化物と水とを混合してアルカリ性の水分散液を調製することによって、前記黒鉛を薄片化し、この薄片化された黒鉛を含む水分散液を基板上に塗布、乾燥させて薄片化黒鉛を含む薄膜を製造する方法が開示されている。また、特開2011−32156号公報(特許文献2)には、高品質、高配向性のグラファイト結晶を水などの溶媒中で撹拌して前記グラファイト結晶の表面からグラファイト層を剥離してグラフェンを含む溶液を調製し、この溶液を基板上に塗布、乾燥させて薄膜を製造する方法が開示されている。しかしながら、これらの方法において調製した薄片化黒鉛やグラフェンは、水分散液中や溶液中で凝集しやすく、得られた黒鉛薄膜の特性も未だ十分なものではなかった。
また、特許文献2には、高品質、高配向性のグラファイト結晶を濃硫酸などを含む溶液中に浸漬して前記グラファイト結晶の表面を酸化しながらグラファイト層を剥離してグラフェンを含む溶液を調製し、この溶液を基板上に塗布、乾燥させて薄膜を製造する方法も開示されている。しかしながら、グラファイト結晶の表面を酸化するとグラファイト構造の一部が破壊されやすく、黒鉛粒子の本来の特性に比べて、薄膜の特性が低下する傾向があった。
特開2011−184264号公報 特開2011−32156号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、薄片化した黒鉛粒子を凝集させずに黒鉛薄膜を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、黒鉛粒子、特定の芳香族ビニル共重合体、過酸化水素化物を混合して粉砕処理を施すことによって得られる微細化板状黒鉛粒子を有機溶媒に分散させ、この分散液を用いて黒鉛薄膜を作製することによって、複数の前記微細化板状黒鉛粒子が凝集せずに板面方向に連続的に接触することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の黒鉛薄膜は、板状黒鉛粒子と、該板状黒鉛粒子に吸着した、下記式(1):
−(CH−CHX)− (1)
(式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体とを備える微細化板状黒鉛粒子を含有し、
複数の該微細化板状黒鉛粒子が板面方向に連続的に接触して配置されていることを特徴とするものである。また、このような本発明の黒鉛粒子においては、前記微細化板状黒鉛粒子の板面と前記黒鉛薄膜の膜面とが平行であることが好ましい。
本発明の黒鉛粒子の製造方法は、板状黒鉛粒子と、該板状黒鉛粒子に吸着した、下記式(1):
−(CH−CHX)− (1)
(式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体とを備える微細化板状黒鉛粒子および有機溶媒を含有する板状黒鉛粒子分散液からなる有機層を形成する層形成工程と、
該有機層から前記有機溶媒を除去して、複数の前記微細化板状黒鉛粒子が板面方向に連続的に接触して配置されている黒鉛薄膜を形成する溶媒除去工程と、
を含むことを特徴とする方法である。前記層形成工程においては、前記微細化板状黒鉛粒子の板面と前記有機層の表面とが平行となるように、前記有機層を形成することが好ましい。
また、本発明の黒鉛粒子の製造方法においては、前記層形成工程において前記有機層を水面上に形成し、前記溶媒除去工程において前記黒鉛薄膜を水面上に形成することがより好ましく、前記水面上に形成された黒鉛薄膜を膜面方向に圧縮する工程をさらに含むことがより好ましい。
本発明の複合体は、このような本発明の黒鉛薄膜が基板上に配置されていることを特徴とするものである。このような本発明の複合体は、前記本発明の黒鉛薄膜の製造方法を用いて基板上に黒鉛薄膜を形成することによって製造することができる。また、前記本発明の黒鉛薄膜の製造方法を用いて黒鉛薄膜を水面上に形成した後、該黒鉛薄膜を基板上に写し取ることによって製造することもできる。
なお、本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子を用いることによって、微細化された板状黒鉛粒子が凝集することなく、板面方向に連続的に接触している黒鉛薄膜が形成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、黒鉛粒子は、本来、有機溶媒との相互作用が小さく、凝集しやすいものであるため、有機溶媒中に高度に分散させることは困難であった。
一方、本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子においては、微細化された板状の黒鉛粒子に前記芳香族ビニル共重合体が吸着しているため、板状黒鉛粒子間の凝集力が低下し、有機溶媒中への分散性が向上すると推察される。さらに、芳香族ビニル共重合体の吸着性が安定しているため、微細化板状黒鉛粒子の分散安定性も向上すると推察される。そして、このような微細化板状黒鉛粒子の分散安定性は、乾燥などにより有機溶媒除去する過程においても保持されていると推察される。その結果、本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子を含有する分散液を基板上に塗布し、塗膜を乾燥させた場合、微細化板状黒鉛粒子が均一に分散している状態で有機溶媒が除去されるため、微細化板状黒鉛粒子は、凝集しにくく、さらに、板面が塗膜の表面と平行となるように配向しやすいため、板面方向に連続的に接触した状態が形成され、本発明の黒鉛薄膜が得られると推察される。
また、本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子の分散液を水面上にゆっくり滴下すると、前記微細化板状黒鉛粒子は、疎水性であるため、水中には沈降せず、有機溶媒とともに水面上に浮遊する。また、この疎水性により、微細化板状黒鉛粒子は、板面が水面と平行となるように配向すると推察される。そして、このような状態で、有機溶媒が蒸発などにより除去されると、水面上では微細化板状黒鉛粒子同士が、板面と水面との平行状態を維持したまま、集合するため、複数の微細化板状黒鉛粒子が板面方向に連続的に接触した状態が形成され、本発明の黒鉛薄膜が得られると推察される。
さらに、本発明の黒鉛薄膜が、酸化により微細化された黒鉛粒子からなる薄膜に比べて優れた導電性および熱伝導性を示す理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の黒鉛薄膜においては、本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子中の板状黒鉛粒子が構造欠陥の少ないもの(ラマンスペクトルにおけるDバンドのピークがほとんど観測されないもの)であるため、グラファイト構造が保持され、黒鉛本来の特性がそのまま発現すると推察される。一方、黒鉛粒子を酸化により微細化する場合、黒鉛粒子の表面だけでなく、内部まで酸化することによって十分に微細化することが可能となる。しかしながら、黒鉛粒子を内部まで酸化すると粒子の微細化とともにグラファイト構造の一部が破壊される傾向にある。このため、酸化により微細化された黒鉛粒子においては、グラファイト構造に起因する特性、例えば、導電性、熱伝導性などの黒鉛本来の特性が低下すると推察される。
本発明によれば、微細化された複数の板状黒鉛粒子が板面方向に連続的に接触している黒鉛薄膜を得ることが可能となる。
実施例1で得られた黒鉛薄膜の表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例1で得られた黒鉛薄膜の表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例1で得られた黒鉛薄膜の表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例5で得られた黒鉛薄膜の表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例5で得られた黒鉛薄膜の表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例5で得られた黒鉛薄膜の表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。 比較例1で得られた粒子塊の表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。 比較例1で得られた粒子塊の表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。 比較例2で得られた粒子塊の表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。 比較例2で得られた粒子塊の表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子について説明する。本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子は、板状黒鉛粒子とこの板状黒鉛粒子に吸着した芳香族ビニル共重合体とを備えるものである。
前記板状黒鉛粒子は、特に制限されず、例えば、グラファイト構造を有する公知の黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛(例えば、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛))をグラファイト構造が破壊されないように粉砕することによって得られるものである。
このような板状黒鉛粒子の厚さとしては特に制限はないが、0.3〜2000nmが好ましく、0.3〜1000nmがより好ましく、0.3〜100nmが特に好ましく、1〜100nmが最も好ましい。また、板状黒鉛粒子の平面方向の大きさとしては特に制限はないが、例えば、長軸方向の長さ(長径)としては0.01〜500μmが好ましく、0.1〜100μmがより好ましく、1〜50μmが特に好ましく、短軸方向の長さ(短径)としては0.01〜500μmが好ましく、0.1〜100μmがより好ましく、0.3〜50μmが特に好ましい。
また、本発明にかかる板状黒鉛粒子の表面には、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などの官能基が結合(より好ましくは共有結合)していることが好ましい。このような官能基は、本発明にかかる芳香族ビニル共重合体との親和性を有するものであり、芳香族ビニル共重合体の板状黒鉛粒子への吸着量が増大し、本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子は有機溶媒中への分散性が高くなる傾向にある。その結果、このような微細化板状黒鉛粒子を含有する分散液を用いて黒鉛薄膜を作製する場合において、微細化板状黒鉛粒子の凝集が十分に抑制され、微細化板状黒鉛粒子が均一に配置した黒鉛薄膜が得られる傾向にある。
このような官能基は、板状黒鉛粒子の表面近傍(好ましくは、表面から深さ10nmまでの領域)の全炭素原子の50%以下(より好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下)の炭素原子に結合していることが好ましい。官能基が結合している炭素原子の割合が前記上限を超えると、板状黒鉛粒子は、親水性が増大するため、芳香族ビニル共重合体との親和性が低下する傾向にある。また、官能基が結合している炭素原子の割合の下限としては特に制限はないが、0.01%以上が好ましい。なお、水酸基などの前記官能基はX線光電子分光法(XPS)により定量することができ、粒子表面から深さ10nmまでの領域に存在する官能基の量を測定することができる。なお、板状黒鉛粒子の厚さが10nm以下の場合には、板状黒鉛粒子の全領域に存在する官能基の量が測定される。
本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子を構成する芳香族ビニル共重合体は、下記式(1):
−(CH−CHX)− (1)
(式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
で表されるビニル芳香族モノマー単位と他のモノマー単位とを含有するものである。
このような芳香族ビニル共重合体において、前記ビニル芳香族モノマー単位は黒鉛粒子に対する吸着性を示し、他のモノマー単位は有機溶媒および黒鉛粒子表面近傍の官能基との親和性を示す。したがって、このような芳香族ビニル共重合体は、板状黒鉛粒子に吸着して板状黒鉛粒子同士の凝集力を低下させるとともに板状黒鉛粒子に有機溶媒との親和性を付与し、板状黒鉛粒子を有機溶媒中に高度に分散させることが可能となる。
また、上述したように、ビニル芳香族モノマー単位は黒鉛粒子に吸着しやすいため、ビニル芳香族モノマー単位の含有率が高い共重合体ほど、板状黒鉛粒子への吸着量が増大し、本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子は有機溶媒中への分散性が高くなる傾向にある。ビニル芳香族モノマー単位の含有量としては、芳香族ビニル共重合体全体に対して10〜98質量%が好ましく、30〜98質量%がより好ましく、50〜95質量%が特に好ましい。ビニル芳香族モノマー単位の含有量が前記下限未満になると、芳香族ビニル共重合体の板状黒鉛粒子への吸着量が低下し、微細化板状黒鉛粒子の有機溶媒中での分散性が低下する傾向にある。ビニル芳香族モノマー単位の含有量が前記上限を超えると、板状黒鉛粒子に有機溶媒との親和性が付与されず、微細化板状黒鉛粒子の有機溶媒中での分散性が低下する傾向にある。
前記式(1)中のXで表される基が有していてもよい置換基としては、アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、水酸基、アミド基、イミノ基、グリシジル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基)、カルボニル基、イミド基、リン酸エステル基などが挙げられ、中でも、微細化板状黒鉛粒子の有機溶媒中での分散性が向上するという観点から、メトキシ基などのアルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
このようなビニル芳香族モノマー単位としては、例えば、スチレンモノマー単位、ビニルナフタレンモノマー単位、ビニルアントラセンモノマー単位、ビニルピレンモノマー単位、ビニルアニソールモノマー単位、ビニル安息香酸エステルモノマー単位、アセチルスチレンモノマー単位などが挙げられ、中でも、微細化板状黒鉛粒子の有機溶媒中での分散性が向上するという観点から、スチレンモノマー単位、ビニルナフタレンモノマー単位、ビニルアニソールモノマー単位が好ましい。
本発明にかかる芳香族ビニル共重合体を構成する他のモノマー単位としては特に制限はないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルイミダゾール類、ビニルピリジン類、無水マレイン酸およびマレイミド類からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーから誘導されるモノマー単位が好ましい。このような他のモノマー単位を含む芳香族ビニル共重合体を用いることによって、微細化板状黒鉛粒子は有機溶媒との親和性が向上し、有機溶媒中に高度に分散させることが可能となる。
前記(メタ)アクリレート類としては、アルキル(メタ)アクリレート、置換アルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート)などが挙げられる。前記(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
前記ビニルイミダゾール類としては、1−ビニルイミダゾールなどが挙げられる。前記ビニルピリジン類としては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどが挙げられる。前記マレイミド類としては、マレイミド、アルキルマレイミド、アリールマレイミドなどが挙げられる。
このような他のモノマーのうち、微細化板状黒鉛粒子の有機溶媒中での分散性が向上するという観点から、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アリールマレイミドが好ましく、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2−ビニルピリジン、アリールマレイミドがより好ましく、フェニルマレイミドが特に好ましい。
本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子において、前記芳香族ビニル共重合体の数平均分子量としては特に制限はないが、1千〜100万が好ましく、5千〜10万がより好ましい。芳香族ビニル共重合体の数平均分子量が前記下限未満になると、黒鉛粒子に対する吸着能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、有機溶媒への溶解性が低下したり、粘度が著しく上昇して取り扱いが困難になる傾向にある。なお、芳香族ビニル共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(カラム:Shodex GPC K−805LおよびShodex GPC K−800RL(ともに、昭和電工(株)製)、溶離液:クロロホルム)により測定し、標準ポリスチレンで換算した値である。
また、本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子においては、前記芳香族ビニル共重合体としてランダム共重合体を用いても、ブロック共重合体を用いてもよいが、微細化板状黒鉛粒子の有機溶媒中での分散性が向上するという観点から、ブロック共重合体を用いることが好ましい。
本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子において、前記芳香族ビニル共重合体の含有量としては、前記板状黒鉛粒子100質量部に対して10−7〜10−1質量部が好ましく、10−5〜10−2質量部がより好ましい。芳香族ビニル共重合体の含有量が前記下限未満になると、板状黒鉛粒子への芳香族ビニル共重合体の吸着が不十分なため、微細化板状黒鉛粒子の有機溶媒中での分散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、板状黒鉛粒子に直接吸着していない芳香族ビニル共重合体が存在する傾向にある。
このような板状黒鉛粒子とこれに吸着した芳香族ビニル共重合体とを備える微細化板状黒鉛粒子は、以下のようにして製造することができる。すなわち、本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子は、原料の黒鉛粒子、前記式(1)で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体、過酸化水素化物、および有機溶媒を混合し、得られた混合物に粉砕処理を施し、必要に応じて、ろ過などによって有機溶媒を除去することによって得ることができる。
原料として用いられる黒鉛粒子(以下、「原料黒鉛粒子」という)としては、グラファイト構造を有する公知の黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛(例えば、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛))が挙げられ、中でも、粉砕することによって前記範囲の厚さを有する板状黒鉛粒子となるものが好ましい。このような原料黒鉛粒子の粒子径としては特に制限はないが、0.01〜5mmが好ましく、0.1〜1mmがより好ましい。
また、原料黒鉛粒子を構成する板状黒鉛粒子の表面には、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などの官能基が結合(好ましくは共有結合)していることが好ましい。前記官能基は前記芳香族ビニル共重合体との親和性を有するものであり、芳香族ビニル共重合体の板状黒鉛粒子への吸着量が増大し、得られる微細化板状黒鉛粒子は有機溶媒中への分散性が高くなる傾向にある。
このような官能基は、板状黒鉛粒子の表面近傍(好ましくは、表面から深さ10nmまでの領域)の全炭素原子の50%以下(より好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下)の炭素原子に結合していることが好ましい。官能基が結合している炭素原子の割合が前記上限を超えると、板状黒鉛粒子は、親水性が増大するため、芳香族ビニル共重合体との親和性が低下する傾向にある。また、官能基が結合している炭素原子の割合の下限としては特に制限はないが、0.01%以上が好ましい。
また、過酸化水素化物としては、カルボニル基を有する化合物(例えば、ウレア、カルボン酸(安息香酸、サリチル酸など)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトンなど)、カルボン酸エステル(安息香酸メチル、サリチル酸エチルなど))と過酸化水素との錯体;四級アンモニウム塩、フッ化カリウム、炭酸ルビジウム、リン酸、尿酸などの化合物に過酸化水素が配位したものなどが挙げられる。このような過酸化水素化物は、本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子を製造する際に酸化剤として作用し、原料黒鉛粒子のグラファイト構造を破壊せずに、炭素層間の剥離を容易にするものである。すなわち、過酸化水素化物が炭素層間に侵入して層表面を酸化しながら劈開を進行させ、同時に芳香族ビニル共重合体が劈開した炭素層間に侵入して劈開面を安定化させ、層間剥離が促進される。その結果、板状黒鉛粒子の表面に前記芳香族ビニル共重合体が吸着して、微細化板状黒鉛粒子を有機溶媒中に高度に分散させることが可能となる。
本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子を製造する際に用いられる有機溶媒としては特に制限はないが、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、N−メチルピロリドン(NMP)、ヘキサン、トルエン、ジオキサン、プロパノール、γ−ピコリン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAC)が好ましく、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、N−メチルピロリドン(NMP)、ヘキサン、トルエンがより好ましい。
本発明にかかる微細化板状黒鉛粒子を製造する場合、先ず、前記原料黒鉛粒子と前記芳香族ビニル共重合体と前記過酸化水素化物と前記有機溶媒とを混合する(混合工程)。前記原料黒鉛粒子の混合量としては、有機溶媒1L当たり0.1〜500g/Lが好ましく、10〜200g/Lがより好ましい。原料黒鉛粒子の混合量が前記下限未満になると、有機溶媒の消費量が増大し、経済的に不利となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると液の粘度が上昇して取り扱いが困難となる傾向にある。
また、前記芳香族ビニル共重合体の混合量としては、前記原料黒鉛粒子100質量部に対して0.1〜1000質量部が好ましく、0.1〜200質量部がより好ましい。芳香族ビニル共重合体の混合量が前記下限未満になると、芳香族ビニル共重合体の板状黒鉛粒子への吸着量が減少し、微細化板状黒鉛粒子の有機溶媒中での分散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、芳香族ビニル共重合体が有機溶媒に溶解しなくなるとともに、液の粘度が上昇して取り扱いが困難となる傾向にある。
また、前記過酸化水素化物の混合量としては、前記原料黒鉛粒子100質量部に対して0.1〜500質量部が好ましく、1〜100質量部がより好ましい。前記過酸化水素化物の混合量が前記下限未満になると、微細化板状黒鉛粒子の有機溶媒中での分散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、原料黒鉛粒子が過剰に酸化され、微細化板状黒鉛粒子の導電性および熱伝導性が低下する傾向にある。
次に、前記混合工程で得られた混合物に粉砕処理を施して原料黒鉛粒子を板状黒鉛粒子に粉砕する(粉砕工程)。これにより、生成した板状黒鉛粒子の表面に前記芳香族ビニル共重合体が吸着して、有機溶媒中での分散安定性に優れた微細化板状黒鉛粒子を得ることができる。
本発明にかかる粉砕処理としては、超音波処理(発振周波数としては15〜400kHzが好ましく、出力としては500W以下が好ましい。)、ボールミルによる処理、湿式粉砕、爆砕、機械式粉砕などが挙げられる。これにより、原料黒鉛粒子のグラファイト構造を破壊させずに原料黒鉛粒子を粉砕して板状黒鉛粒子を得ることが可能となる。また、粉砕処理時の温度としては特に制限はなく、例えば、−20〜100℃が挙げられる。また、粉砕処理時間についても特に制限はなく、例えば、0.01〜50時間が挙げられる。
次に、本発明の黒鉛薄膜について説明する。本発明の黒鉛薄膜は、板状黒鉛粒子とこの板状黒鉛粒子に吸着した芳香族ビニル共重合体とを備える前記微細化板状黒鉛粒子を含有し、複数の前記微細化板状黒鉛粒子が板面方向に連続的に接触して配置されたものである。
このような黒鉛薄膜は、例えば、以下のようにして製造することができる。すなわち、先ず、前記微細化板状黒鉛粒子と有機溶媒とを含有する板状黒鉛粒子分散液を調製する。前記有機溶媒としては、前記微細化板状黒鉛粒子を製造する際に用いられるものとして例示した有機溶媒を使用することができる。このような板状黒鉛粒子分散液において、前記微細化板状黒鉛粒子の濃度としては、有機溶媒1L当たり0.1〜200g/Lが好ましく、1〜100g/Lがより好ましい。微細化板状黒鉛粒子の濃度が前記下限未満になると、溶媒の消費量が増大し、経済的に不利になるとともに、黒鉛薄膜が形成されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、微細化板状黒鉛粒子の接触により分散液の濃度が上昇して流動性が低下するため、黒鉛薄膜が形成できない傾向にある。
次に、このような板状黒鉛粒子分散液を用いて板状黒鉛粒子分散液からなる有機層を形成する(層形成工程)。このような有機層の形成方法としては、基板上に前記板状黒鉛粒子分散液を塗布する方法が一般的であるが、本発明においては、水面上に前記板状黒鉛粒子分散液をゆっくり滴下して前記有機層を形成することもできる。これらの層形成方法においては、前記微細化板状黒鉛粒子を、その板面が前記有機層の表面と平行になるように配向させることが好ましい。これにより、前記微細化板状黒鉛粒子を、その板面が前記黒鉛薄膜の膜面と平行となるように配置することができ、膜面方向の導電性および熱伝導性に優れた黒鉛薄膜を得ることができる。また、前記層形成方法のうち、水面上に前記有機層を形成する方法によれば、板状黒鉛粒子が疎水性であることを利用して、前記微細化板状黒鉛粒子の板面と前記有機層の表面とを容易に平行にすることが可能となる。
次に、このようにして、基板上または水面上に形成した板状黒鉛粒子分散液からなる有機層から有機溶媒を除去する(溶媒除去工程)。これにより、複数の前記微細化板状黒鉛粒子が板面方向に連続的に接触して配置されている本発明の黒鉛薄膜が基板上または水面上に形成される。有機溶媒の除去方法としては特に制限はないが、微細化された複数の板状黒鉛粒子が板面方向に連続的に接触しやすいという観点から、自然乾燥による方法が好ましい。特に、水面上に前記有機層を形成した場合には、水面を安定した状態に保ちながら有機溶媒を除去できることから、自然乾燥による方法が特に好ましい。
また、本発明の黒鉛薄膜を水面上に形成した場合には、前記水面上に形成された黒鉛薄膜を膜面方向に圧縮すること(圧縮工程)が好ましい。これにより、微細化された複数の板状黒鉛粒子が板面方向に連続的に接触している確率が高くなり、黒鉛薄膜の膜面方向の導電性および熱伝導性がさらに向上する傾向にある。
次に、本発明の複合体について説明する、本発明の複合体は、基板と、この基板上に配置されている本発明の黒鉛薄膜とを備えるものである。上述したように、本発明の黒鉛薄膜が膜面方向の導電性および熱伝導性に優れていることから、本発明の複合体は、導電性複合体(例えば、電極複合体)や熱伝導性複合体(例えば、透明電熱ヒーター)として使用することが可能である。本発明の複合体に用いられる基板としては特に制限はないが、例えば、ガラス基板、金属板、セラミック板、半導体基板などが挙げられる。
このような複合体は、上述したように、基板上に前記板状黒鉛粒子分散液を塗布し、有機溶媒を除去して基板上に直接、本発明の黒鉛薄膜を形成することによって製造することができる。また、上述したように、水面上に黒鉛薄膜を形成した場合には、基板上に黒鉛薄膜を写し取り、それを乾燥させることによって製造することができる。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<芳香族ビニル共重合体の数平均分子量>
芳香族ビニル共重合体の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(昭和電工(株)製「Shodex GPC101」)を用いて以下の条件で測定し、標準ポリスチレンで換算した。
(測定条件)
・カラム:Shodex GPC K−805LおよびShodex GPC K−800RL(ともに、昭和電工(株)製)。
・溶離液:クロロホルム。
・測定温度:25℃。
・サンプル濃度:0.1mg/ml。
・検出手段:RI。
(調製例1)
スチレン(ST)1.8g、N,N−ジメチルメタクリルアミド(DMMAA)0.2g、アゾビスイソブチロニトリル8mgおよびトルエン7mlを混合し、窒素雰囲気下、85℃で6時間重合反応を行なった。放冷後、クロロホルム−エーテルを用いて再沈殿により精製し、0.99gのST−DMMAA(9:1)ランダム共重合体を得た。このST−DMMAA(9:1)ランダム共重合体の数平均分子量(Mn)は、52000であった。
黒鉛粒子(日本黒鉛工業(株)製「EXP−P」、粒子径100〜600μm)20mg、ウレア−過酸化水素包接錯体80mg、前記ST−DMMAA(9:1)ランダム共重合体20mgおよびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)2mlを混合し、室温で5時間超音波処理(出力:250W)を施して黒鉛粒子分散液を得た。この黒鉛粒子分散液をろ過し、ろ滓をDMFで洗浄した後、真空乾燥して微細化板状黒鉛粒子を回収した。
(実施例1)
調製例1で得られた微細化板状黒鉛粒子3mgをクロロホルム1mlに添加し、室温で60分間超音波処理(出力:250W)を施し、微細化板状黒鉛粒子を含有する分散液を得た。
直径100mmφのガラス製シャーレにイオン交換水を1cmの深さで入れ、静置した。このイオン交換水の水面上に前記微細化板状黒鉛粒子を含有する分散液をゆっくりと滴下したところ、分散液は、直ちに水面上に広がり、その後、急激に水面で島状に集合し、黒鉛薄膜が形成された。この黒鉛薄膜をスライドグラス上に静かにすくい取って乾燥した。
得られた黒鉛薄膜は可視光を透過するものであった。また、この黒鉛薄膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した結果を図1A〜1Cに示す。図1A〜1Cに示した結果から明らかなように、複数の微細化板状黒鉛粒子が連続的に接触しており、さらに黒鉛薄膜の表面に平行に配向していることが確認された。また、この黒鉛薄膜の表面の任意の2点間(距離:1cm)の電気抵抗を、テスターを用いて室温で測定したところ、電気抵抗は100Ωであった。
(実施例2)
実施例1と同様にして水面上に黒鉛薄膜を形成した。その後、スライドグラスを用いて膜面積が実施例1の黒鉛薄膜の80%となるように、この黒鉛薄膜を膜面方向に圧縮した。圧縮後の黒鉛薄膜をスライドグラス上に静かにすくい取って乾燥した。
得られた黒鉛薄膜は可視光を透過するものであった。また、この黒鉛薄膜の表面の任意の2点間(距離:1cm)の電気抵抗を、テスターを用いて室温で測定したところ、電気抵抗は70Ωであった。
(実施例3〜4)
クロロホルムの代わりにそれぞれ酢酸エチルまたはジクロロメタンを1ml用いた以外は実施例1と同様にして黒鉛薄膜を作製した。得られた黒鉛薄膜はいずれも可視光を透過するものであった。
(実施例5)
実施例1と同様にして微細化板状黒鉛粒子を含有する分散液を作製した。この分散液0.1mlをスライドグラス上に塗布し、自然乾燥させて黒鉛薄膜を作製した。
得られた黒鉛薄膜は可視光を透過するものであった。また、この黒鉛薄膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した結果を図2A〜2Cに示す。図2A〜2Cに示した結果から明らかなように、複数の微細化板状黒鉛粒子が連続的に接触しており、さらに黒鉛薄膜の表面に平行に配向していることが確認された。また、この黒鉛薄膜の表面の任意の2点間(距離:1cm)の電気抵抗を、テスターを用いて室温で測定したところ、電気抵抗は240Ωであった。
(比較例1)
黒鉛粒子(日本黒鉛工業(株)製「EXP−P」)3mgをクロロホルム1mlに添加し、室温で60分間超音波処理(出力:250W)を施し、黒鉛粒子を含有する分散液を得た。
前記微細化板状黒鉛粒子を含有する分散液の代わりに、この黒鉛粒子を含有する分散液を用いた以外は実施例1と同様に水面上に分散液をゆっくり滴下した。その結果、分散液は、直ちに水面上に広がったものの、その後、粒子塊が生成した。この粒子塊をスライドグラス上に静かにすくい取って乾燥した。
得られた粒子塊を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した結果を図3A〜3Bに示す。図3A〜3Bに示した結果から明らかなように、粒子塊は複数の板状黒鉛粒子の集合体ではあるものの、それらは連続的には接触していなかった。また、この粒子塊の表面の任意の2点間(距離:1cm)の電気抵抗を、テスターを用いて室温で測定したところ、電気抵抗は100MΩであった。
(比較例2)
比較例1と同様にして黒鉛粒子を含有する分散液を調製した。前記微細化板状黒鉛粒子を含有する分散液の代わりに、この黒鉛粒子を含有する分散液を用いた以外は実施例5と同様にスライドグラス上に分散液を塗布し、自然乾燥させたところ、粒子塊が生成した。
得られた粒子塊を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した結果を図4A〜4Bに示す。図4A〜4Bに示した結果から明らかなように、粒子塊は複数の板状黒鉛粒子の集合体ではあるものの、それらは連続的には接触していなかった。また、この粒子塊の表面の任意の2点間(距離:1cm)の電気抵抗を、テスターを用いて室温で測定したところ、電気抵抗は150MΩであった。
以上説明したように、本発明によれば、微細化された複数の板状黒鉛粒子が板面方向に連続的に接触している黒鉛薄膜を得ることが可能となる。
したがって、本発明の黒鉛薄膜は、導電性や熱伝導性に優れた板状黒鉛粒子が膜表面に略平行な方向に連続的に接触した状態で形成されたものであるため、膜表面方向の導電性や熱伝導性に優れており、導電体材料や熱伝導体材料などなどとして有用である。

Claims (9)

  1. 板状黒鉛粒子と、該板状黒鉛粒子に吸着した、下記式(1):
    −(CH−CHX)− (1)
    (式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
    で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体とを備える微細化板状黒鉛粒子を含有し、
    複数の該微細化板状黒鉛粒子が板面方向に連続的に接触して配置されていることを特徴とする黒鉛薄膜。
  2. 前記微細化板状黒鉛粒子の板面と前記黒鉛薄膜の膜面とが平行であることを特徴とする請求項1に記載の黒鉛薄膜。
  3. 基板と、該基板上に配置されている請求項1または2に記載の黒鉛薄膜とを備えることを特徴とする複合体。
  4. 板状黒鉛粒子と、該板状黒鉛粒子に吸着した、下記式(1):
    −(CH−CHX)− (1)
    (式(1)中、Xはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基またはピレニル基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
    で表されるビニル芳香族モノマー単位を含有する芳香族ビニル共重合体とを備える微細化板状黒鉛粒子および有機溶媒を含有する板状黒鉛粒子分散液からなる有機層を形成する層形成工程と、
    該有機層から前記有機溶媒を除去して、複数の前記微細化板状黒鉛粒子が板面方向に連続的に接触して配置されている黒鉛薄膜を形成する溶媒除去工程と、
    を含むことを特徴とする黒鉛薄膜の製造方法。
  5. 前記層形成工程において、前記微細化板状黒鉛粒子の板面と前記有機層の表面とが平行となるように、前記有機層を形成することを特徴とする請求項4に記載の黒鉛薄膜の製造方法。
  6. 前記層形成工程において前記有機層を水面上に形成し、前記溶媒除去工程において前記黒鉛薄膜を水面上に形成することを特徴とする請求項4または5に記載の黒鉛薄膜の製造方法。
  7. 前記水面上に形成された黒鉛薄膜を膜面方向に圧縮する工程をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の黒鉛薄膜の製造方法。
  8. 請求項4または5に記載の製造方法により、基板上に黒鉛薄膜を形成することを特徴とする請求項3に記載の複合体の製造方法。
  9. 請求項6または7に記載の製造方法により、前記黒鉛薄膜を水面上に形成した後、該黒鉛薄膜を基板上に写し取ることを特徴とする請求項3に記載の複合体の製造方法。
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