図1は、本発明の実施の形態に係る医療機器管理システム500の構成を示す図である。医療機器管理システム500は医療施設内に構築される。医療機器管理システム500は、複数のタグリーダ30、複数の内視鏡システム40、複数の洗浄装置60、医療機器管理装置100および表示装置300を備え、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)などのネットワーク80を介して通信可能に接続される。
タグリーダ30は医療機器に付された識別タグを読み取る。以下、本明細書では医療機器として内視鏡スコープ(以下、単にスコープという)を例に説明する。スコープに付される識別タグは、自己および/またはスコープの個体識別情報を埋め込んだタグである。以下、RFID(Radio Frequency Identification)技術を用いたICタグが使用される例で説明する。RFIDではタグリーダ30は短距離無線送信用の電波を送出する。識別タグ20はその電波を受信すると、その反射波に個体識別情報を乗せて返信する。タグリーダ30はその反射波を受信することにより、自己の近傍に特定の識別タグ20が存在することを認識できる。なお、識別タグ20はタグリーダ30からの電波をエネルギーとして動作するため、電池を内蔵する必要がなく小型化できる。
図1において第1内視鏡システム40aは第1トロリー50aに搭載され、検査室1に設置される。原則として、内視鏡システム40は特定の検査室内で使用される。内視鏡システム40がその検査室の外に持ち出された場合は、内視鏡システム40のマスタ情報を更新することで、内視鏡システム40が再設置された検査室を特定してもよい。トロリー50はスコープを把持するためのスコープホルダを備える。本実施の形態では2本のスコープを把持できるスコープホルダを備える。スコープホルダはアーム状でもよいし、ポール状でもよい。
第1タグリーダ30aは第1内視鏡システム40aの第1挿入口42a近傍に設置される。第1挿入口42aは第1内視鏡システム40aを構成する映像処理装置に設置される。内視鏡システム40の詳細な構成は後述する。第1挿入口42aにはスコープ10の画像用コネクタ端子が挿入される。スコープ10は図示しない固体撮像素子(例えば、CCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ)を含む。固体撮像素子は光信号を電気信号に変換する。変換された電気信号は信号線を通り、上記画像用コネクタ端子から映像処理装置に出力される。
第2タグリーダ30bは第1トロリー50aのスコープホルダの第1把持部近傍に設置され、第3タグリーダ30cは当該スコープホルダの第2把持部近傍に設置される。図1では第1スコープ10aが当該スコープホルダの第1把持部に把持されている。第1スコープ10aには第1識別タグ20aが付されている。
第2タグリーダ30bは第1識別タグ20aから個体識別情報を受信すると、その個体識別情報を含む機器情報をネットワーク80を介して医療機器管理装置100に送信する。これにより、医療機器管理装置100は第1スコープ10aが第1トロリー50aのスコープホルダの第1把持部に把持されていることを認識できる。機器情報には、スコープ10および/またはタグリーダ30の個体識別情報、個体識別情報の受信時刻などを含めることができる。
第2内視鏡システム40bは第2トロリー50bに搭載され、検査室2に設置される。第4タグリーダ30dは第2内視鏡システム40bの第2挿入口42b近傍に設置される。第5タグリーダ30eは第2トロリー50bのスコープホルダの第1把持部近傍に設置され、第6タグリーダ30fは第2トロリー50bのスコープホルダの第2把持部近傍に設置される。図1では第2スコープ10bが当該スコープホルダの第1把持部に把持されている。第2スコープ10bには第2識別タグ20bが付されている。
第5タグリーダ30eは第2識別タグ20bから個体識別情報を受信すると、その個体識別情報を含む機器情報をネットワーク80を介して医療機器管理装置100に送信する。これにより、医療機器管理装置100は第2スコープ10bが第2トロリー50bのスコープホルダの第1把持部に把持されていることを認識できる。
検査室2では検査室1と異なり、第2内視鏡システム40bの第2挿入口42bに第2スコープ10bの画像用コネクタ端子が接続されている。図1では第2スコープ10bの操作部に第2識別タグ20bが付されている。第4タグリーダ30dが第2挿入口42bに第2スコープ10bの画像用コネクタ端子が接続されたことを検出するには次の方法が考えられる。
まず、医療従事者が第2挿入口42bに第2スコープ10bの画像用コネクタ端子を挿し込む際、第2スコープ10bに付された第2識別タグ20bを、第4タグリーダ30dにかざす動作をすることをルールとすることが考えられる。次に、第2スコープ10bの画像用コネクタ端子の近傍にも識別タグを付することが考えられる。次に、映像処理装置が第2挿入口42bに第2スコープ10bの画像用コネクタ端子が挿し込まれたことを検知すると、映像処理装置が画像用コネクタ端子が差し込まれたスコープの個体識別情報を含む機器情報をネットワーク80を介して医療機器管理装置100に送信することが考えられる。この場合、第2挿入口42bに第4タグリーダ30dを設置する必要はない。
図1において第1洗浄装置60aおよび第2洗浄装置60bが洗浄室に設置される。洗浄装置60は使用済みのスコープ10を洗浄消毒するための装置である。洗浄装置60には2本同時に洗浄消毒できるタイプもある。洗浄装置60は洗浄履歴を管理する。洗浄履歴には洗浄日時、スコープ10の個体識別情報、実施者の個体識別情報などが含まれる。
第7タグリーダ30gは第1洗浄装置60aの上部に設置される。第7タグリーダ30gと第1洗浄装置60aの内部制御回路は電気的に接続される。第8タグリーダ30hは第2洗浄装置60bの上部に設置される。第8タグリーダ30hと第2洗浄装置60bの内部制御回路は電気的に接続される。洗浄を実施する医療従事者または補助者は、洗浄するスコープ10に付された識別タグ20を洗浄装置60のタグリーダ30にかざして、スコープ10の個体識別情報を洗浄装置60に入力する。また、当該医療従事者または補助者は識別タグ付きIDカードを洗浄装置60のタグリーダ30にかざして、自己の個体識別情報を洗浄装置60に入力する。なお、スコープ10の個体識別情報および実施者の個体識別情報を操作部からキー入力してもよい。
洗浄装置60は、タグリーダ30にスコープ10の識別タグ20がかざされたとき、またはスコープ10の洗浄が開始されたとき、そのスコープ10の個体識別情報を含む機器情報をネットワーク80を介して医療機器管理装置100に送信する。また、洗浄装置60はその洗浄が終了したとき洗浄履歴情報を含む機器情報をネットワーク80を介して医療機器管理装置100に送信する。
図1において第1保管庫70aおよび第2保管庫70bが保管室に設置される。第1保管庫70aおよび第2保管庫70bはそれぞれスコープハンガーを備える。図1では1つのスコープハンガーに3本のスコープが取付けられる例を描いている。第1保管庫70aのスコープハンガーの第1把持部近傍に第9タグリーダ30iが設置され、第2把持部近傍に第10タグリーダ30jが設置され、第3把持部近傍に第11タグリーダ30kが設置される。図1では第3スコープ10cが当該スコープハンガーの第1把持部に把持されている。第3スコープ10cには第3識別タグ20cが付されている。
第9タグリーダ30iは第3識別タグ20cから個体識別情報を受信すると、その個体識別情報を含む機器情報をネットワーク80を介して医療機器管理装置100に送信する。これにより、医療機器管理装置100は第3スコープ10cが第1保管庫70aのスコープハンガーの第1把持部に把持されていることを認識できる。
第2保管庫70bのスコープハンガーの第1把持部近傍に第12タグリーダ30lが設置され、第2把持部近傍に第13タグリーダ30mが設置され、第3把持部近傍に第14タグリーダ30nが設置される。図1では第4スコープ10dが当該スコープハンガーの第1把持部に把持されている。第4スコープ10dには第4識別タグ20dが付されている。
第12タグリーダ30lは第4識別タグ20dから個体識別情報を受信すると、その個体識別情報を含む機器情報をネットワーク80を介して医療機器管理装置100に送信する。これにより、医療機器管理装置100は第4スコープ10dが第2保管庫70bのスコープハンガーの第1把持部に把持されていることを認識できる。
医療機器管理装置100はネットワーク80を介して収集される機器情報から、医療施設内におけるスコープ10の所在を特定し、少なくとも所在を含むスコープ10のステータスを表示装置300に表示させる。医療機器管理装置100はPCまたはサーバにより構築される。医療機器管理装置100の詳細な構成は後述する。
表示装置300は医療施設内において医療従事者の見やすい位置に設置される。例えば、ナースステーションやメイン通路の壁などに設置される。表示装置300は大画面ディスプレイであることが好ましい。表示装置300は医療機器管理装置100にネットワーク80ではなく、専用ケーブルで接続されてもよい。
図2は、内視鏡システム40の構成を示す図である。内視鏡システム40は、光源装置410、映像処理装置420、記録装置430、表示装置440および入力装置450を備える。本明細書ではスコープ10は内視鏡システム40の構成要素ではないと考える。光源装置410はスコープ10の光源用コネクタ端子に接続され、スコープ10内に光を照射する。
映像処理装置420はスコープ10の画像用コネクタ端子に接続される。スコープ10は医師により、検査または処置の対象者(以下、単に対象者という)の体腔内に挿入される。スコープ10内部に設置された固体撮像素子は体腔内の画像を撮像し、撮像した画像を電気信号に変換して撮像信号として映像処理装置420に出力する。映像処理装置420は、スコープ10から入力された撮像信号に対して、増幅、ノイズ除去、アナログ/デジタル変換、利得調整、輝度比の調整、フィルタ処理等を行い、固体撮像素子がとらえている画像をライブ画像として表示装置440に表示する。医師が、表示装置440の画面に表示されるライブ画像を見ながら、スコープ10の操作部を操作して撮影画像のキャプチャ指示を生成すると、映像処理装置420は、画像キャプチャ指示をもとに、撮影画像データを生成する。この撮影画像データは記録装置430に記録されるか、図示しない通信装置を介して図示しない外部の画像記録装置に送信されて記録される。その他、映像処理装置420は内視鏡システム40全体を制御する。
入力装置450はスイッチや、キーボード、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、タッチパネル、マイクロフォンなどで構成され、ユーザによる撮像開始、撮像終了、撮像条件指定などの映像処理装置420に対する指示入力のために用いられる。
図3は、本発明の実施の形態に係る医療機器管理装置100の構成を示す。医療機器管理装置100は、機器情報取得部110、ステータス管理部120、判定部130、記録部140および表示制御部150を備える。記録部140は、マスタ情報保持部142およびステータス保持部144を含む。
これらの構成は、ハードウェア的には、任意のプロセッサ、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウェア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組み合わせによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
機器情報取得部110は医療施設内の複数箇所に設置されたタグリーダ30から、ネットワーク80を介してスコープ10に付された識別タグ20の読取情報を含む機器情報を取得する。機器情報取得部110は取得した機器情報をステータス管理部120に供給する。
ステータス管理部120は医療施設内で使用されているスコープ10の所在、使用中か否か、洗浄の有無などを含むスコープ10のステータスを管理する。マスタ情報保持部142は医療施設内で使用されている、スコープ10、識別タグ20、タグリーダ30、内視鏡システム40、洗浄装置60に関するマスタ情報を保持する。マスタ情報には、それぞれの機器の機種名、シリアルナンバー、その他の基本情報が含まれる。その他の基本情報には、タグリーダ30、内視鏡システム40および洗浄装置60のそれぞれの設置位置が含まれる。内視鏡システム40および洗浄装置60の設置位置は医療施設内の部屋名で規定される。マスタ情報には各スコープ10と各識別タグ20との関連付け情報も含まれる。
ステータス保持部144はステータス管理部120の指示に従い、医療施設内で使用されている各スコープ10のステータスを保持する。ステータスとして、少なくともスコープ10の所在、使用中か否か及び洗浄の有無を保持する。
ステータス管理部120は機器情報取得部110から機器情報を受けると、その機器情報からスコープ10の所在を特定する。ステータス管理部120は、どのタグリーダ30でどの識別タグ20が読み取られたかを特定することにより、その識別タグ20が付されたスコープ10の所在を特定できる。その際、ステータス管理部120は必要に応じて、マスタ情報保持部142に保持されるマスタ情報を参照する。ステータス管理部120は機器情報により特定されるスコープ10の所在と、ステータス保持部144に保持される当該スコープ10の所在とを比較する。両者が一致しない場合、ステータス管理部120はステータス保持部144に保持される当該スコープ10の所在を、機器情報により特定されるスコープ10の所在に更新する。なお、従前の所在を履歴情報として一定の期間、保持してもよい。
洗浄装置60に設置されたタグリーダ30から、洗浄開始時に送信される機器情報には洗浄開始情報が含まれる。ステータス管理部120は、機器情報取得部110から洗浄開始情報を受けると、ステータス保持部144の該当するスコープ10のステータスを洗浄中に変更する。洗浄装置60に設置されたタグリーダ30から、洗浄終了時に送信される機器情報には洗浄履歴情報が含まれる。ステータス管理部120は、機器情報取得部110から洗浄履歴情報を受けると、ステータス保持部144の該当するスコープ10のステータスを洗浄済みに変更する。それとともに、当該スコープ10の付加情報として当該洗浄履歴情報を記録する。
ステータス管理部120は、機器情報取得部110からスコープ10の使用に関する情報を取得すると、判定部130に使用に関するステータスの変化を判定させる。ステータス管理部120は、判定部130による判定結果をステータス保持部144の該当するスコープ10のステータスに反映させる。例えば、判定部130により使用開始と判定されたスコープ10のステータスを未使用から使用中に変更する。
判定部130はステータス管理部120からの依頼に応じてスコープ10が使用中か否か判定する。より具体的には、判定部130はスコープ10が対象者の体内に挿入されたときスコープ10の使用開始と判定し、体内が抜き出されたときスコープ10の使用終了と判定する。スコープ10が対象者の体内に挿入されたか否かは、例えば次の2つの方法により判定できる。
第1判定方法では、判定部130はスコープ10により撮像された画像にもとづき、スコープ10が対象者の体内に挿入されたか否かを判定する。スコープ10により撮像された画像は映像処理装置420に出力される。映像処理装置420は、スコープ10から入力される画像の色情報にもとづきスコープ10が対象者の体内に挿入されたか否かを判定できる。体腔内の画像は体腔に入る前の画像と比較して、赤色度合いが高くなる。映像処理装置420はスコープ10により撮像された画像を解析して赤成分(R成分)を特定する。映像処理装置420は、この赤成分(R成分)の値が所定の設定値より大きくなったとき体腔内の画像であると判定し、当該設定値より小さくなったとき体腔外の画像であると判定する。当該設定値は設計者による実験やシミュレーションにより得られた値に設定される。
映像処理装置420は、画像の赤成分(R成分)が設定値より大きくなったときその変化を機器情報としてネットワーク80を介して医療機器管理装置100に通知する。また、画像の赤成分(R成分)が設定値より小さくなったときもその変化を機器情報としてネットワーク80を介して医療機器管理装置100に通知する。判定部130はこの機器情報を受けることにより、その映像処理装置420に接続されているスコープ10が使用中か否かを判定できる。また、使用開始時刻および使用終了時刻も特定できる。なお、スコープ10により撮像された画像の解析は映像処理装置420で実行される構成に限るものではない。例えば、医療機器管理装置100の図示しない画像処理部で実行されてもよい。
第2判定方法は、上部内視鏡検査時に適用可能な方法である。判定部130は、対象者が装着するマウスピースに設置された検知部により検知される、スコープ10がマウスピースを通過したか否かを示す情報にもとづき、スコープ10が対象者の体内に挿入されたか否かを判定する。上部内視鏡検査時には対象者の歯を保護するとともに対象者が歯でスコープ10を噛むことを防止するために、上部内視鏡検査時に対象者がマウスピースを装着することが一般的である。第2判定方法では、マウスピースにタグリーダ30を設置し、スコープ10の先端部に識別タグ20を付する。タグリーダ30はネットワーク80に接続される。マウスピースに設置されるタグリーダ30は、スコープ10がマウスピースを通過したことを検知する。なお、スコープ10の長手方向にそれぞれ間隔を空けて複数の識別タグ20を付せば、タグリーダ30は、複数の識別タグ20から電波を受信する順番により、スコープ10が体内に挿入されたのか、体内から抜き出されたのかを検知できる。
映像処理装置420は、スコープ10が体内に挿入されたとき及び体内から抜き出されたとき、その旨を機器情報としてネットワーク80を介して医療機器管理装置100に通知する。判定部130はこの機器情報を受けることにより、その映像処理装置420に接続されているスコープ10が使用中か否かを判定できる。また、使用開始時刻および使用終了時刻も特定できる。なお、スコープ10がマウスピースを通過するときを検知する方法は、ICタグを用いる方法に限るものではない。例えば、スコープ10とマウスピースとの物理的接触を利用する方法や赤外線通信を用いる方法であってもよい。
判定部130は、内視鏡システム40にスコープ10が取り付けられても、当該スコープ10が対象者の体内に挿入されるまで、スコープ10を未使用と判定する。未使用の状態では、当該スコープ10が使用される予定の検査または処置以外の、検査または処置に当該スコープ10を使用できる。当該スコープ10が使用される予定の検査または処置より、優先順位の高い検査または処置が発生した場合、医療従事者は当該スコープ10を内視鏡システム40から抜き取り、他の内視鏡システム40に差し込み当該スコープ10を使用できる。
人間ドックや健康診断といった目的に応じて、表示するスコープの優先順位を変更してもよい。
また、医師Aが特定のスコープ10を愛用している場合を想定する。当該スコープ10が医師Bの検査または処置に使用されることが予定されている場合、医師Aが当該スコープ10を使用するため、当該スコープ10と、当該スコープ10と機能的に代替できるスコープを交換する場合がある。この交換を、医師Bの検査または処置のために医師Aが愛用しているスコープ10の画像用コネクタ端子が映像処理装置420に差し込まれても対象者の体内に挿入されるまで許容する。
ステータス管理部120は、ステータス保持部144を参照して現在のスコープ10のステータスを示すリスト(以下、スコープリストと表記する)を生成する。このステータスには少なくともスコープ10の所在が含まれる。上述したように、スコープ10のステータスは機器情報取得部110により取得された機器情報により特定される。
表示制御部150は、少なくとも所在を含むスコープリストを表示装置300に表示させる。その際、表示制御部150はスコープリストに含まれるスコープ10の内、医療行為に使用中の医療機器を非表示にする。当該スコープリストにはスコープ10の洗浄の有無がさらに含まれてもよい。この場合において、表示制御部150は医療行為に使用中のスコープ10および使用後未洗浄のスコープ10を非表示にする。
図4は、スコープリストの一例を示す図である。図4では、医療施設内に6本のスコープが存在する例を示している。図4に示すスコープリストの項目には、スコープの機種名、スコープのシリアルナンバー、所在する場所、洗浄履歴が含まれる。洗浄履歴は、洗浄済か未洗浄かを示す洗浄の有無、洗浄完了日時、洗浄装置の機種名、洗浄装置のシリアルナンバー、洗浄実施者が含まれる。洗浄装置の機種名およびシリアルナンバーは、スコープの洗浄が実施された洗浄装置に関する情報である。医療行為に使用中のスコープは洗浄履歴が空欄となる。未洗浄のスコープは、洗浄完了日時、洗浄装置の機種名、洗浄装置のシリアルナンバー、洗浄実施者が空欄となる。なお、未洗浄のスコープについては洗浄終了予定時刻または洗浄終了までの残り時間が項目に含まれてもよい。
図5は、図4に示すスコープリストの第1表示方法を示す図である。第1表示方法では、表示制御部150はスコープリストに含まれるスコープの内、医療行為に使用中のスコープを表示しない。図4のスコープリストに含まれる2行目のスコープ(機種名A−E200、シリアルナンバー12345683)が医療行為に使用中であるため、図5に示される表示リストでは、そのスコープが省略されている。
図6は、本発明の実施の形態に係る医療機器管理装置100の、第1表示方法に係る動作を示すフローチャートである。機器情報取得部110は、医療施設内に設置されたタグリーダ30から機器情報を取得する(S10)。ステータス管理部120は取得された機器情報にもとづき、ステータス保持部144に保持されるスコープ10のステータスを更新する。ステータス管理部120はステータス保持部144に保持されるデータをもとにスコープリストを生成する(S12)。
表示制御部150は生成されたスコープリスト内に検査に使用中のスコープが存在するか否か判定する(S14)。存在する場合(S14のY)、該当するスコープを非表示に設定する(S16)。存在しない場合(S14のN)、ステップS16をスキップする。表示制御部150は、当該スコープリストを表示装置に表示させる(S22)。ステップS10〜ステップS22までの処理が、表示処理が終了するまで(S24のY)、繰り返し実行される(S24のN)。なお、ステップS12〜ステップS22に示す、スコープリストの生成および表示処理は、所定の期間毎に(例えば、1分毎、5分毎)に実行される。
図7は、図4に示すスコープリストの第2表示方法を示す図である。第2表示方法では、表示制御部150はスコープリストに含まれるスコープの内、医療行為に使用中のスコープおよび使用後未洗浄のスコープを表示しない。図4のスコープリストに含まれる2行目のスコープ(機種名A−E200、シリアルナンバー12345683)が医療行為に使用中であり、4行目のスコープ(機種名A−E200H、シリアルナンバー12345680)が未洗浄である。図7に示される表示リストでは、これらのスコープが省略されている。
図8は、本発明の実施の形態に係る医療機器管理装置100の、第2表示方法に係る動作を示すフローチャートである。図8のフローチャートは図6のフローチャートにステップS18およびステップS20が追加された構成である。表示制御部150はステップS12で生成されたスコープリスト内に使用後未洗浄のスコープが存在するか否か判定する(S18)。存在する場合(S18のY)、該当するスコープを非表示に設定する(S20)。存在しない場合(S18のN)、ステップS20をスキップする。その他のステップは図6と同様であるため、説明を省略する。
以下、表示制御部150が表示装置300にスコープリストを表示する際の表示順について説明する。その前提として本明細書で使用する、スコープの機種名を構成する記号、数字の意味について説明する。図4、図5、図7に示すようにスコープの機種名は「第1記号」−「第2記号」「系列数字」「第3記号」「第4記号」の組合せで構成される。
図9は、スコープの機種名を構成する記号と意味の対応関係の一例を示す図である。図9(a)は第1記号の対応テーブルであり、図9(b)は第2記号の対応テーブルであり、図9(c)は第3記号の対応テーブルであり、図9(d)は第4記号の対応テーブルである。図9(a)に示す第1記号はスコープ種別を示す。「A」が上部消化管用、「B」が大腸用、「C」が十二指腸用、「D」が小腸用である。この順番は使用頻度が高いと想定される順番である。第2記号は第1特徴記号である。第1特徴はスコープの撮影画質を示す。「E」が高画質、「F」が中画質、「G」が低画質を示す。第3記号は第2特徴記号である。第2特徴は付加機能を示す。「H」がズーム機能、「I」が硬度可変機能、「J」が形状検知機能を示す。これらの順番は使用頻度が高いと想定される順番である。第4記号は挿入部有効長を示す。「K」が長、「L」が中、「M」が短を示す。
表示制御部150は以下の優先順位に従い、スコープリストに含まれるスコープをソートする。まず第1優先として、表示制御部150は図9(a)に示す対応テーブルを参照して、スコープ種別によりソートする。例えば、スコープリストに機種名A−E200のスコープと機種名B−E200のスコープが含まれる場合、表示制御部150は前者を後者より上位に表示させる。これにより、使用頻度の高い種別のスコープほど上位に表示されることになる。
次に第2優先として、表示制御部150は系列数字によりソートする。系列数字が新しい型のスコープを示す。例えば、スコープリストに機種名A−E200のスコープと機種名A−E100のスコープが含まれる場合、表示制御部150は前者を後者より上位に表示させる。これにより、同じ種別のスコープが複数ある場合、新しい型のスコープほど上位に表示されることになる。
次に第3優先として、表示制御部150は図9(b)に示す対応テーブルを参照して、スコープの撮影画質順によりソートする。例えば、スコープリストに機種名A−E200のスコープと機種名A−F200のスコープが含まれる場合、表示制御部150は前者を後者より上位に表示させる。これにより、同じ種別のスコープが複数あり、かつそれらが同じ型のスコープである場合、画質が高いスコープほど上位に表示されることになる。
次に第4優先として、表示制御部150は図9(c)に示す対応テーブルを参照して、スコープの付加機能の使用頻度順によりソートする。例えば、スコープリストに機種名A−E200Hのスコープと機種名A−E200Jのスコープが含まれる場合、表示制御部150は前者を後者より上位に表示させる。これにより、同じ種別のスコープが複数あり、かつそれらが同じ型および同じ画質のスコープである場合、使用頻度が高い付加機能を搭載したスコープほど上位に表示されることになる。
次に第5優先として、表示制御部150は図9(d)に示す対応テーブルを参照して、挿入部有効長順によりソートする。例えば、スコープリストに機種名A−E200Kのスコープと機種名A−E200Lのスコープが含まれる場合、表示制御部150は前者を後者より上位に表示させる。これにより、同じ種別のスコープが複数あり、かつそれらが同じ型、同じ画質および同じ付加機能を搭載するスコープである場合、挿入部有効長が長いスコープほど上位に表示されることになる。
これらの優先順位が全て同じスコープ同士については、表示制御部150はシリアルナンバーの大きいほうを上位に表示させる。
図10は、ソートされたスコープリストの一例を示す図である。図10に示すスコープリストは上述した優先順位に従いソートされたものである。上部消化管用スコープ群が最上位に表示され、大腸用スコープ群、十二指腸用スコープ群の順に表示される。それぞれの群の中では、型が新しいスコープほど上位に表示され、画質が高いスコープほど上位に表示され、使用頻度が高い付加機能を搭載したスコープほど上位に表示され、挿入部有効長が長いスコープほど上位に表示され、シリアルナンバーが大きいスコープほど上位に表示される。優先順位は上述した通りである。
図11は、本発明の実施の形態に係る医療機器管理装置100の、第1表示方法に係る動作(ソートあり)を示すフローチャートである。図11のフローチャートは図6のフローチャートにステップS13が追加された構成である。表示制御部150はステップS12で生成されたスコープリストに含まれるスコープを優先順位に従いソートする(S13)。その他のステップは図6と同様であるため、説明を省略する。なお、第2表示方法に係る図8に示したフローチャートにステップS13を追加してもよい。
以上説明したように本実施の形態によれば、少なくともスコープの所在を含むスコープリストを表示することにより、医療従事者はスコープの所在確認時間を短縮できる。検査室、洗浄室、保管室などに実際に足を運ばなくてもスコープの所在を確認できる。その際、使用中のスコープを非表示とすることにより、表示をシンプルにするとともに使用中のスコープを取りに行くという徒労を回避できる。また、使用後未洗浄のスコープを非表示にすることにより、表示をシンプルにするとともに未洗浄のスコープを取りに行くという徒労を回避できる。また、使用頻度が高いと想定されるスコープを上位に表示することにより、医療従事者がスコープリストを見る際、使用頻度が高いスコープの所在を認識しやすくなる。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
スコープリストに含まれる複数のスコープをソートする際の上述した優先順位は一例であり、様々な優先順位が可能である。例えば、その優先順位をユーザが任意に設定できてもよい。また例えば、表示制御部150は機能的に同じスコープの優先順位をシリアルナンバーではなく、累積使用回数にもとづきソートしてもよい。具体的には、累積使用回数が少ないほど上位に表示させる。これにより、機能的に同じ複数のスコープの使用回数が平準化する使用方法を医療従事者に促すことができる。さらに例えば、表示制御部150は機能的に同じスコープの優先順位をシリアルナンバーではなく、直近の洗浄終了時刻にもとづきソートしてもよい。具体的には、現在から直近の洗浄終了時刻との時間が長いほど上位に表示させる。これにより、機能的に同じ複数のスコープの洗浄終了から使用開始までの時間が平準化する使用方法を医療従事者に促すことができる。
また、タグリーダ30の設置場所は上述した場所に限るものではない。例えば、使用後洗浄前のスコープや、洗浄後使用前のスコープを一時的に保管する仮置場に設置されてもよい。
また、スコープが場所Aから離れ、場所Bに到着するまでの期間、ステータス管理部120はそのスコープを移動中というステータスで管理してもよい。表示制御部150は、そのスコープについてスコープリストの場所の項目に、移動中と表示させる。