JP2013116103A - 植物の非生物的ストレスを軽減する方法 - Google Patents

植物の非生物的ストレスを軽減する方法 Download PDF

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    • C12N15/8293Abscisic acid [ABA]

Abstract

【課題】植物の非生物的ストレスを軽減する方法を提供すること。
【解決手段】低温ショックタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを導入した組換えイネ科植物及び/又は当該植物の栽培域をアブシシン酸で処理する、組換えイネ科植物の非生物的ストレスを軽減する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、非生物的ストレスを軽減する方法に関する。
植物は、非生物的ストレス条件に遭遇すると、緩やかにあるいは急激に細胞の生理機能が低下して様々な障害が現れる場合がある。植物が受けるこれらの非生物的ストレスを軽減するため、枯草菌の低温ショックタンパク質遺伝子(cspB)等を植物のゲノムに人為的に挿入することにより、低温ショックタンパク質が植物体内で産出された、非生物的ストレスが軽減された組換え植物が作出されている。また、植物ホルモンを初めとしたいくつかの化学物質は、植物の生理的状態を調整することで、非生物的ストレスを軽減する効果を有することが知られている(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。しかし、実際には効果の点では必ずしも十分とはいえなかった。
国際公開第2005/033318号パンフレット
"Amelioration of chilling injuries in cucumber seedlings by abscisic acid" Arnon Rikin and Amos E. Richmond, (1976) Physiologia Plantarum 38: pp. 95-97 "Chilling injury in Cotton (Gossypium hisutum L.): Light requirement for the reduction of injury and for the protective effect of abscisic acid" Arnon Rikin, Carlos Gitler and Dan Atsman (1981) Plant and Cell Physiology Volume 22, Issue 3 pp. 453-460
本発明は、植物の非生物的ストレスを軽減する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、低温ショックタンパク質遺伝子がゲノムに挿入された組換えイネ科植物に特定の化合物を処理した場合に、非生物的ストレスが軽減されることを見出した。
即ち、本発明は、以下の[1]〜[8]を提供するものである。
[1] 低温ショックタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを導入した組換えイネ科植物及び/又は当該植物の栽培域をアブシシン酸で処理する、組換えイネ科植物の非生物的ストレスを軽減する方法。
[2] 低温ショックタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAが、枯草菌cspBタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、又は大腸菌cspAタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAである、[1]に記載の方法。
[3] 低温ショックタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAが、下記の(a)から(c)のいずれかのDNAである、[1]に記載の方法。
(a) 配列番号1のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA。
(b) 配列番号2のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA。
(c) (a)又は(b)のアミノ酸配列との配列同一性が62.5%以上のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA。
[4] アブシシン酸で処理する方法が、組換えイネ科植物への散布処理、又は、組換えイネ科植物の栽培域への土壌処理である、[1]から[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 非生物的ストレスが、高温ストレス、低温ストレス、及び/又は乾燥ストレスである、[1]から[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 低温ショックタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを導入した組換えイネ科植物及び/又は当該植物の栽培域をアブシシン酸で処理する、組換えイネ科植物の収量を改善する方法。
[7] 組換えイネ科植物が、イネ又はトウモロコシである、[1]から[6]のいずれかに記載の方法。
[8] 非生物的ストレスを軽減するための、低温ショックタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを導入した組換えイネ科植物及び/又は当該植物の栽培域へのアブシシン酸の使用。
本発明によれば、組換えイネ科植物の非生物的ストレスを軽減することが可能となる。
植物バイナリーベクタープラスミドpRH-2x35S-cspB-CRの構造模式図である。図中の「2xCaMV35S-p」は2x35Sプロモーター塩基配列を、「cspB」は枯草菌cspBタンパク質をコードする塩基配列を、「CR-t」はCRターミネーター塩基配列を、「Nos-t」はnosターミネーター塩基配列を、「APH4」は大腸菌由来ハイグロマイシン耐性遺伝子aph4(GenBank accession number V01499)の塩基配列を、「Nos-p」はnosプロモーターの塩基配列を、「attB」はプラスミド構築の際に利用するGatewayリーディングフレームカセット由来の相同組換え領域の塩基配列を表す。 植物バイナリーベクタープラスミドpRH-2x35S-cspA-CRの構造模式図である。図中の「2xCaMV35S-p」は2x35Sプロモーター塩基配列を、「cspA」は大腸菌cspAタンパク質をコードする塩基配列を、「CR-t」はCRターミネーター塩基配列を、「Nos-t」はnosターミネーター塩基配列を、「APH4」は大腸菌由来ハイグロマイシン耐性遺伝子aph4(GenBank accession number V01499)の塩基配列を、「Nos-p」はnosプロモーターの塩基配列を、「attB」はプラスミド構築の際に利用するGatewayリーディングフレームカセット由来の相同組換え領域の塩基配列を表す。
本発明は、低温ショックタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを導入した組換えイネ科植物、組換えイネ科植物の栽培域、又は組換えイネ科植物と組換えイネ科植物の栽培域をアブシシン酸で処理することにより、非生物的ストレスに暴露された又は暴露されるであろう当該組換え植物の非生物的ストレスを軽減し、収量を改善する方法である。
本発明における、イネ科植物のゲノムに導入されるDNAの塩基配列にコードされる「低温ショックタンパク質」としては、例えば、野生型の枯草菌の低温ショックタンパク質(cspB遺伝子産物、GenBank Accession number AAB01346)、大腸菌の低温ショックタンパク質(cspA遺伝子産物、GenBank Accession number AAA23617)等を挙げることができる。cspAファミリーに属する細菌の低温ショックタンパク質については多くの研究がなされている。
cspAファミリーに属する細菌の野生型低温ショックタンパク質の具体例としては、例えば、表1に示されるタンパク質が挙げられる。
Figure 2013116103
本明細書における「低温ショックタンパク質」なる用語には、野生型の低温ショックタンパク質だけでなく、野生型の低温ショックタンパク質のアミノ酸配列に1つ又は複数のアミノ酸の置換、付加、または欠失が導入されたアミノ酸配列を有するタンパク質も含まれる。
例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列は、野生型枯草菌cspBタンパク質(GenBank Accession number AAB01346)のアミノ酸配列の2番目のロイシンがバリンに置換されたものであり、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、野生型大腸菌cspAタンパク質(GenBank Accession number AAA23617)のアミノ酸配列の2番目のセリンがアラニンに置換されたものである。本明細書においては、これらの野生型の低温ショックタンパク質のアミノ酸配列に1つ又は複数のアミノ酸の置換、付加、または欠失が導入されたアミノ酸配列を有するタンパク質もそれぞれ「枯草菌cspBタンパク質」、「大腸菌cspAタンパク質」と称する。本発明方法では、これらのアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAがゲノムに導入された組換え植物も使用できる。
上記に挙げた低温ショックタンパク質のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の欠失、付加もしくは置換を人為的に行う手法としては、例えば、アミノ酸配列をコードするDNAに対して部位特異的変異を導入する手法が挙げられ、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Research, 12, 9441-9456 (1984))、変異導入用プライマーを用いたポリメラーゼ・チェーン・リアクション(PCR)法、任意の塩基配列を有するDNA分子を設計して人工合成することにより作成する方法、アミノ酸配列のいずれかをコードするDNAに対してランダムに変異を導入する手法などが挙げられる。前記の、ランダムに変異を導入する手法としては、例えば、アミノ酸配列をコードするDNAを鋳型とし、それぞれのDNAの全長を増幅できるようなプライマー対を用い、基質に用いるdATP、dTTP、dGTP、dCTPの各々の添加濃度を変化させた反応条件下や、あるいは、ポリメラーゼの反応を促進させるMg2+の濃度を増加させた反応条件下でPCRを行う方法等が挙げられる。このようなPCR法を用いたDNAへの変異導入の手法としては、例えば、Method in Molecular Biology, (31), 1994, 97-112 に記載の方法があげられる。
かかるアミノ酸配列を有する低温ショックタンパク質の機能は、大腸菌の低温ショックタンパク質遺伝子4重欠損株(cspA、cspB、cspE、cspG)に当該アミノ酸配列をコードする塩基配列を含むDNAを導入し、欠損遺伝子が機能相補され大腸菌が15℃以下の低温で生育可能になることを評価することで確認できる。(PNAS (2006)vol. 103 pp.10122-10127)
本発明において「配列同一性」とは、2つの塩基配列または2つのアミノ酸配列間の配列同一性をいう。配列同一性は、比較対象の配列の全領域にわたって最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象の塩基配列またはアミノ酸配列が最適な状態にアラインメントされるためには、付加、または、欠失(例えば、ギャップ等)を許容してもよい。このような配列同一性は、例えば、FASTA(Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,4, 2444-2448 (1988))、BLAST(Altschul et al., Journal of Molecular Biology, 215, 403-410 (1990))、CLUSTAL W(Thompson, Higgins & Gibson, Nucleic Acids Research, 22, 4673-4680 (1994))等のプログラムを用いて配列同一性解析を行いアラインメントを作成することによって算出する
ことができる。上記のプログラムは、例えば、DNA Data Bank of Japan(国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センター (Center for Information Biology and DNA Data Bank of Japan; CIB/DDBJ)内で運営される国際DNAデータバンク)のウエブサイト(http://www.ddbj.nig.ac.jp/)等において、一般的に利用可能である。また、配列同一性は市販の配列解析ソフトウェアを用いて求めることもできる。具体的には、配列同一性はDNASIS-Pro Ver. 3.0(日立ソフトウエアー・エンジニアリング社製)を用いて配列同一性解析を行ってアラインメントを作成することにより算出することができる。
例えば、当該方法により配列番号1のアミノ酸配列と配列番号2のアミノ酸配列の配列同一性解析を行ってアラインメントを作成した結果、62.5%の配列同一性が存在した。
本発明における「低温ショックタンパク質」としては、前記いずれかの低温ショックタンパク質のアミノ酸配列、例えば配列番号1または2のアミノ酸配列との配列同一性が、アミノ酸配列全長で、62.5%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上のアミノ酸配列を有するタンパク質も使用できる。
一般的には、低温ショックタンパク質が植物体内で産出される組換え植物は、当該タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAの上流に植物細胞で機能可能なプロモーター塩基配列を含むDNAが機能可能な形で接続されてなるDNAを、宿主植物細胞で利用可能なベクタープラスミドに組み込んで、これを宿主植物細胞に導入することにより得ることができる。
植物細胞で機能可能なプロモーターとは、植物細胞に導入するタンパク質のアミノ酸配列をコードする遺伝子(構造遺伝子)の塩基配列の上流5’-側に接合し、当該構造遺伝子から転写RNAを生成させる機能を持つ塩基配列のことである。植物細胞で機能可能なプロモーターとしては、例えば、ノパリン合成酵素遺伝子プロモーターなどのT-DNA由来のプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス由来の19Sプロモーターもしくは35Sプロモーター等の植物ウイルス由来のプロモーター、植物由来のフェニルアラニンアンモニアリアーゼ遺伝子プロモーター、イネ由来又はシロイヌナズナ由来のアクチン遺伝子のプロモーター、イネ由来のユビキチン遺伝子のプロモーターなどを挙げることができる。また、プロモーター塩基配列を有するDNAの直後にイネ由来のアクチン遺伝子のイントロン等のイントロン塩基配列を有するDNAを接合したDNAを、植物細胞で機能可能なプロモーター塩基配列を含むDNAとして使用することも出来る。
また、上記のような植物細胞で機能可能なプロモーター塩基配列と当該タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAとが機能可能な形で接続されてなるDNAの下流に、植物細胞で機能可能なターミネーター塩基配列を含むDNAを連結させてもよい。
植物細胞で機能可能なターミネーター塩基配列とは、植物細胞に導入する構造遺伝子の塩基配列の下流3’−側に接合し、当該構造遺伝子からのRNAの転写を終結し、転写物を安定化するためのポリアデニン配列を付加させる機能を持つ塩基配列のことである。植物細胞で機能可能なターミネーター塩基配列としては、例えば、ノパリン合成酵素遺伝子(NOS)の3’非翻訳領域のターミネーターなどのT-DNA由来のターミネーター、アグロバクテリウム・ツメファシエンス由来の転写7遺伝子の3’非翻訳領域のターミネーター、WO 2000/020613に記載の植物由来のターミネーターなどのターミネーター塩基配列を挙げることができる。
本発明において使用される、低温ショックタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを導入した組換えイネ科植物は、上記の低温ショックタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むDNAによる形質転換によりゲノム中に当該DNAが挿入された組換えイネ科植物である。(以下、「本組換えイネ科植物」と記す。)具体的には、WO 2005/033318に記載の枯草菌の低温ショックタンパク質cspBのアミノ酸配列や大腸菌の低温ショックタンパク質cspAのアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを導入した組換えトウモロコシや組換えイネ等を挙げることができ、好ましくは、枯草菌の低温ショックタンパク質cspBのアミノ酸配列や大腸菌の低温ショックタンパク質cspAのアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを導入した組換えイネを挙げることができる。
次に、本発明において使用されるアブシシン酸について説明する。
アブシシン酸(以下、本化合物と記することもある)はワタの葉柄から落葉促進物質として単離された植物ホルモンの一種である。
本化合物の態様としては、例えば、以下のものが挙げられる。
アブシシン酸(CAS登録番号 14375-45-2)には、(S)−(+)−アブシシン酸(CAS登録番号 21293-29-8)等の不斉炭素原子に基づく光学異性体等の立体異性体、互変異性体等の異性体が存在するが、本発明においては、任意の異性体を単独または任意の異性体比で含有したアブシシン酸を使用することができる。
また、本発明に用いる本化合物は、その存在状態によっては、農薬学上許容される塩の形態で存在することもある。
これらの塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の金属塩(例えば、ナトリウム、カリウム、またはマグネシウムの塩);アンモニアとの塩;モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ−低級アルキルアミン、ジ−低級アルキルアミン、トリ−低級アルキルアミン、モノ−ヒドロキシ低級アルキルアミン、ジ−ヒドロキシ低級アルキルアミン、トリ−ヒドロキシ低級アルキルアミン等の有機アミンとの塩などが挙げられるが、これらの塩に限定されない。
本化合物は、和光純薬工業株式会社等から試薬として購入し、入手することができる。
また、本化合物の(S)-(+)-体は、シグマアルドリッチ株式会社等から試薬として購入し、入手することもできる。
本発明方法において、本化合物は、本化合物単独でも使用することが可能であるが、後述するとおり種々の不活性成分を用いて製剤化して使用することもできる。
製剤化の際に用いられる固体担体としては、例えばカオリンクレー、アッタパルジャイトクレー、ベントナイト、モンモリロナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石等の鉱物、トウモロコシ穂軸粉、クルミ殻粉等の天然有機物、尿素等の合成有機物、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の塩類、合成含水酸化珪素等の合成無機物等からなる微粉末又は粒状物等が挙げられ、液体担体としては、例えばキシレン、アルキルベンゼン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、ダイズ油、綿実油等の植物油、石油系脂肪族炭化水素類、エステル類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、及び水が挙げられる。
界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホネートホルモアルデヒド重縮合物等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、及びアルキルトリメチルアンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤が挙げられる。
その他の製剤用補助剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、アラビアガム、アルギン酸及びその塩、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ザンサンガム等の多糖類、アルミニウムマグネシウムシリケート、アルミナゾル等の無機物、防腐剤、着色剤、及びPAP(酸性リン酸イソプロピル)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)等の安定化剤が挙げられる。
本発明においては、アブシシン酸は、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物生長調整剤等と混合して使用することもできる。
本発明において対象となる植物が非生物的ストレスに暴露されうる生育ステージは、発芽期、育苗時、栄養生長期、生殖生長期、収穫期を含む全てのステージを含む。
本発明方法において本化合物を植物に処理する場合、その処理対象は、当該植物の全体であっても一部(茎葉、芽、穎、花、穂等)であってもよく、又、その処理時期は、当該植物の種々の生育ステージ(播種後の出芽前後などの発芽期、育苗時、苗移植時、挿し木又は挿し苗時、定植後の生育時などの栄養生長期、開花前、開花中、開花後、出穂直前又は出穂期などの生殖生長期、収穫予定前、成熟予定前、果実の着色開始期などの収穫期)であってよい。また、本明細書においては、苗は、挿し木、種黍等を含むものとする。
アブシシン酸による処理は、通常、本化合物の有効量を植物体に直接又はその生育場所に処理することにより行われる。植物の生育場所としては、植物を植えつける前または植えつけた後の土壌等が挙げられる。
植物又は植物の生育場所に処理する場合は、本化合物による処理は、対象植物に対して、1回もしくは複数回実施する。
本発明方法における処理方法としては、例えば、茎葉散布等の植物の茎葉、花器又は穂への処理、土壌処理等の植物の栽培地への処理、苗への処理等が挙げられる。
本発明方法における植物の茎葉、花器又は穂への処理としては、例えば、茎葉散布、樹幹散布等の植物の表面に処理する方法、開花前、開花中、開花後を含む開花時期における花器あるいは植物全体に散布処理する方法、穀物等おいては出穂時期の穂あるいは植物全体に散布する方法が挙げられる。
本発明方法における土壌処理方法としては、例えば、土壌への散布、土壌混和、土壌への薬液潅注(薬液潅水、土壌注入、薬液ドリップ)が挙げられ、処理する場所としては例えば、植穴、作条、植穴付近、作条付近、栽培地の全面、植物地際部、株間、樹幹下、主幹畦、培土、育苗箱、育苗トレイ、苗床等が挙げられ、処理時期としては、発芽直後、育苗期、定植前、定植時、及び定植後の生育期等が挙げられる。また、上記土壌処理において、本化合物を含有する被服肥料等の固形肥料を土壌へ処理してもよい。また、本化合物を潅水液に混合してもよく、例えば、潅水設備(潅水チューブ、潅水パイプ、スプリンクラー等)への注入、条間湛水液への混入、水耕液への混入等が挙げられる。また、あらかじめ潅水液と本化合物を混合し、例えば、上記潅水方法やそれ以外の散水、湛水等のしかるべき潅水方法を用いて処理することができる。
本発明方法における苗への処理としては、例えば、本化合物を水で適当な有効成分濃度に希釈調製した希釈液を苗全体に散布する散布処理、その希釈液に苗を浸漬する浸漬処理、粉剤に調製した本化合物を苗全体に付着させる塗布処理が挙げられる。また、苗を植えつける前または植えつけた後の土壌への処理としては、例えば、本化合物を水で適当な有効成分濃度に希釈調製した希釈液を、苗を植えつけた後に苗及び周辺土壌に散布する方法、粉剤または粒剤等の固形剤に調製した本化合物を、苗を植えつけた後に周辺土壌に散布する方法が挙げられる。
乳剤、水和剤、フロアブル剤、マイクロカプセル剤等の本化合物を含有する製剤は、通常、水で希釈して散布することにより処理する。この場合、前記製剤中の本化合物の濃度は、通常0.1〜1,000 ppm、好ましくは1〜100 ppmの範囲である。粉剤、粒剤等の本化合物を含有する製剤は通常希釈することなくそのまま処理する。
また、本化合物を植物または植物の生育場所に処理する場合、処理溶液中における本化合物の濃度は、好ましくは0.1〜1,000 ppm、より好ましくは1〜100 ppmの範囲である。なお本化合物を含む栽培溶液を用いて水耕栽培を行う場合は、当該栽培溶液中における本化合物の濃度は、好ましくは0.1〜100 ppm、より好ましくは1〜10 ppmの範囲である。
本発明方法は、畑、水田、芝生等の農耕地又は非農耕地用のいずれにても実施することができる。
本発明の方法を適用し得るイネ科植物として、以下のような植物が挙げられる。
農作物:トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク、ソルガム、サトウキビ等。
芝草:シバ類(ノシバ、コウライシバ等)、バミューダグラス類(ギョウギシバ等)、ベントグラス類(コヌカグサ、ハイコヌカグサ、イトコヌカグサ等)、ブルーグラス類(ナガハグサ、オオスズメノカタビラ等)、フェスク類(オニウシノケグサ、イトウシノケグサ、ハイウシノケグサ等)、ライグラス類(ネズミムギ、ホソムギ等)、カモガヤ、オオアワガエリ等。
上記イネ科植物としては、好ましくはイネ、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、エンバク、より好ましくは、イネ又はトウモロコシが挙げられる。
本組換えイネ科植物は、少なくとも1つの低温ショックタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAが導入されている組換えイネ科植物であって、当該DNAに加えて低温ショックタンパク質遺伝子以外の、植物に除草剤耐性を付与する遺伝子や害虫に対する選択的毒素を産生する遺伝子、植物に病害抵抗性を付与する遺伝子などが、交配育種あるいは遺伝子組換え法にて導入された組換え植物であってもよい。
また、本組換えイネ科植物は、殺虫剤、殺菌剤、及び特定の除草剤に対するセーフナー等を処理した種子を播種し生育させたものであってもよい。
本発明において、「非生物的ストレス」とは、植物が生育する環境の物理化学的条件によって植物にもたらされるストレスをいう。環境条件として、植物に与える影響において重要な非生物的ストレスは、高温ストレス又は低温ストレスである温度ストレス、乾燥ストレス又は塩ストレス等のストレスである。植物は、非生物的ストレスに暴露されるとその細胞の生理機能が低下し、植物の生理状態が悪化して生育が阻害される。高温ストレスとは、植物の生育適温又は発芽適温よりも高い温度に暴露された場合に受けるストレスをいい、具体的には、植物が栽培されている環境における平均栽培温度が25℃以上、より厳しくは30℃以上、更に厳しくは35℃以上である条件を挙げることができる。低温ストレスとは、植物の生育適温又は発芽適温よりも低い温度に暴露された場合に受けるストレスをいい、具体的には、植物が栽培されている環境における平均栽培温度が15℃以下、より厳しくは10℃以下、更により厳しくは5℃以下である条件を挙げることができる。また、乾燥ストレスとは、降雨量や灌水量の減少により土壌中の水分含量が減少し、吸水が阻害され植物の生育が阻害されるような水分環境に暴露された場合に受けるストレスをいい、具体的には、土壌の種類により値は異なることがあるが、植物が栽培されている土壌含水率が15重量%以下、より厳しくは10重量%以下、更に厳しくは、7.5重量%以下の条件、または、植物が栽培されている土壌のpF値が、2.3以上、厳しくは2.7以上、更に厳しくは3.0以上の条件、を挙げることができる。なお、土壌のpF値は、「土壌・植物栄養・環境事典」(大洋社、1994年、松坂ら)の61〜62頁の「pF値測定法」に記述されている原理に従い、測定することができる。また、塩ストレスとは、植物が栽培されている土壌あるいは水耕液中の塩類の蓄積により浸透圧が上昇し植物の吸水が阻害される結果、生育が阻害されるような環境に暴露された場合に受けるストレスをいい、具体的には、土壌あるいは水耕液中の塩による浸透圧ポテンシャルが0.2 MPa(NaCl濃度では2,400 ppm)以上、厳しくは0.25 MPa以上、さらに厳しくは0.30 MPaである条件である。土壌における浸透圧は、土壌を水で希釈して上澄み液の塩濃度を分析することによって、以下のラウールの式に基づいて求めること
ができる。
ラウールの式: π(atm)=cRT
R=0.082(L・atm/mol・K)
T=絶対温度(K)
c=イオンモル濃度(mol/L)
1atm=0.1MPa
植物の非生物的ストレスは、非生物的ストレス条件に暴露されていない植物と暴露された植物とを次のいずれかの植物表現型の変化において比較することにより、把握される。
即ち、当該植物表現型は植物の非生物ストレスの指標となる。
<植物表現型>
(1)苗立ち率
(2)健全葉数(または率)
(3)草丈
(4)植物体重量
(5)葉面積
(6)葉色
(7)種子の数又は重量
(8)収穫物の品質
(9)着花率・結実率・種子充填率
(10)クロロフィル蛍光収率
(11)水分含量
(12)蒸散能
当該指標は、次のようにして測定することができる。
(1)苗立ち率
植物の種子を、例えば土壌中、ろ紙上、寒天培地上、砂上などに播種し、一定期間栽培後、生育する幼植物の割合を調査する。
(2)健全葉数(又は、率)
各植物について健全な葉の枚数を数え、総健全葉数を調査する。あるいは植物の全ての葉数に対する健全葉数の割合を調査する。
(3)草丈
各植物について地上部分の茎の根元から先端の枝葉までの長さを測定する。
(4)植物体重量
各植物の地上部を切り取り、重量を測定して、植物新鮮重量を求める、あるいは切り取ったサンプルを乾燥させた後に重量を測定して、植物乾燥重量を求める。
(5)葉面積
植物をデジタルカメラで撮影し、写真の緑色の部分の面積を画像解析ソフト例えばWin ROOF(三谷商事社製)で定量することにより、植物の葉面積を求める。
(6)葉色
植物の葉をサンプリングし、葉緑素計(例えばSPAD-502、コニカミノルタ製)を用いて葉緑素量を測定することにより、葉色を求める。また、植物をデジタルカメラで撮影し、写真の緑色の部分の面積を画像解析ソフト例えばWin ROOF(三谷商事社製)で色抽出を行い定量することにより、植物の葉の緑色部分の面積を求める。
(7)種子の数又は重量
植物を種子が結実あるいは登熟するまで栽培した後、植物当りの種子数又は総種子重量を測定する。また、種子が登熟するまで栽培した後、例えば穂数、登熟歩合、千粒重などの収量構成要素を調査する。
(8)収穫物の品質
植物を種子が登熟するまで栽培した後、例えば成分分析を行って澱粉、タンパク質又は脂質の含量を測定することで収穫物の品質を評価する。
(9)着花率・結実率・種子充填率
植物を着果するまで栽培した後に着花数を数え、種子登熟後に結実数と種子充填数を数え結実率(結実数/着花数×100)、種子充填率%(種子充填数/結実数×100)を求める。
(10)クロロフィル蛍光収率
パルス変調クロロフィル蛍光測定装置(例えば、IMAGING-PAM、WALZ社製)を用いて、植物のクロロフィル蛍光値(Fv/Fm)を測定することによって、クロロフィル蛍光収率を求める。
(11)水分含量
植物の各生育段階において、上記「(4)植物体重量」に記載の方法に従い、植物新鮮重量と植物乾燥重量を求め、植物新鮮重量から植物乾燥重量を差し引いた値を、植物の水分含量
として算出する。また、近赤外光を照射し、この特定波長の吸収量(透過量)を計測することによって、植物の水分含量を非破壊的に測定する。例えば、スキャナライザー(レムナテック社製)を用いて水分含量を測定する。
(12)蒸散能
植物の各生育段階において、ポロメーター(例えば、AP4、デルタT社製)を用いて葉の表面からの水の蒸散を測定する。
非生物的ストレスの軽減効果は、当該植物が非生物的ストレス条件に暴露された後の前記指標のいずれかについて、アブシシン酸を処理した植物と処理しない植物とを比較する
ことによって評価することができる。
本明細書においては、非生物的ストレスを以下の式であらわされる「ストレスの強さ」によって定量化することができる。
「ストレスの強さ」=100×「非生物的ストレスに暴露されていない植物におけるいずれか一つの植物表現型」/「非生物的ストレスに暴露された植物における当該いずれか一つの植物表現型」
本発明方法は、前記式で表される「ストレスの強さ」が、通常、105〜200、好ましくは110〜180、より好ましくは120〜160である非生物的ストレスに暴露された又は暴露されるであろう植物に適用するものである。
植物が非生物的ストレスに暴露されることによって、前記の表現型の少なくとも1つに影響が認められる。即ち、
(1)苗立ち率低下
(2)健全葉数(または率)の減少
(3)草丈低下
(4)植物体重量減少
(5)葉面積増加率の低下
(6)葉色退色
(7)種子の数又は重量の減少
(8)収穫物の品質の悪化
(9)着花率、結実率、種子充填率の低下
(10)クロロフィル蛍光収率の低下
(11)水分含量の減少
(12)蒸散能の低下
等が観察され、これを指標として植物の非生物的ストレスの大きさを測定することができる。
本発明において、組換えイネ科植物の収量を改善するとは、アブシシン酸処理群での収穫後の各植物の地上部全体或は一部の、草丈、植物体新鮮重量又は植物体乾燥重量等を測定し、無処理群と比較して増加する効果が認められることをいう。植物の地上部全体を評価する場合は、植物の種子が結実あるいは登熟するまで栽培した後、地上部を刈り取り、植物全体の草丈、植物体新鮮重量又は植物体乾燥重量を計測する。植物の地上部の一部を評価する場合は、植物個体当りの種子数や総種子重量等を測定する、又は、穂数、登熟歩合、千粒重等の収量構成要素を調査して評価する。
以下、本発明を製剤例、処理例、及び試験例にてさらに詳しく説明するが、本発明は以下の例のみに限定されるものではない。なお、以下の例において、部は特にことわりの無い限り重量部を示す。
製剤例1
アブシシン酸を3.75部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエ−テル14部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム6部、及びキシレン76.25部をよく混合することにより、乳剤を得る。
製剤例2
アブシシン酸を75部、プロピレングリコールを15部(ナカライテスク製)、Soprophor FLKを15部(ローディア日華製)、アンチフォームCエマルションを0.6部(ダウコーニング社製)、及びイオン交換水を120部の割合で混合後、当該スラリーを湿式粉砕し、湿式粉砕スラリーを得る。ケルザンS(ケルコ社製)0.3部、Veegum granules (R.T. Vanderbilt社製) 0.6部、プロキセルGXL(アーチケミカルズ製)0.6部をイオン交換水72.9部に添加混合し、増粘剤水溶液を得る。得られた湿式粉砕スラリー75.2部と増粘剤水溶液24.8部を加え混合し、フロアブル製剤を
得る。
製剤例3
アブシシン酸を15部、ソルビタントリオレエ−ト1.5部、及びポリビニルアルコ−ル2部を含む水溶液28.5部を混合し、湿式粉砕法で微粉砕した後、この中にキサンタンガム0.05部及びアルミニウムマグネシウムシリケ−ト0.1部を含む水溶液45部を加え、さらにプロピレングリコ−ル10部を加えて攪拌混合し、フロアブル製剤を得る。
製剤例4
アブシシン酸を45部、プロピレングリコールを5部(ナカライテスク製)、Soprophor FLKを5部(ローディア日華製)、アンチフォームCエマルションを0.2部(ダウコーニング社製)、プロキセルGXLを0.3部(アーチケミカル製)、及びイオン交換水を49.5部の割合で混合し、原体スラリーを調製する。該スラリー100部に150部のガラスビーズ(Φ=1mm)を投入し、冷却水で冷却しながら、2時間粉砕する。粉砕後、ガラスビーズをろ過により除き、フロアブル製剤を得る。
製剤例5
アブシシン酸を50.5部、NNカオリンクレーを38.5部(竹原化学工業製)、Morwet D425を10部、Morwet EFWを1.5部(アクゾノーベル社製)の割合で混合し、AIプレミックスを得る。当プレミックスをジェットミルで粉砕し、粉剤を得る。
製剤例6
アブシシン酸を5部、合成含水酸化珪素1部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、ベントナイト30部、及びカオリンクレー62部をよく粉砕混合し、水を加えてよく練り合せた後、造粒乾燥することにより、粒剤を得る。
製剤例7
アブシシン酸を3部、カオリンクレー87部、及びタルク10部をよく粉砕混合することにより粉剤を得る。
製剤例8
アブシシン酸を22部、リグニンスルホン酸カルシウム3部、ラウリル硫酸ナトリウム2部、及び合成含水酸化珪素73部をよく粉砕混合することにより、水和剤を得る。
実施例1 cspB遺伝子導入組換えイネ系統の作出
(1)イネ形質転換用基本バイナリーベクターpRH-2x35S-GW-CRの構築
まず、pBI121(クロンテック社製)を鋳型に、2種の特異的プライマー(H35-2F(配列番号3)、35_1RC(配列番号4))を用いPCRを行い、末端に制限酵素HindIII及びXbaIの認識配列をそれぞれ有する植物細胞で機能可能なプロモーターであるカリフラワーモザイクウイルス由来35Sプロモーター領域であるDNA断片を増幅した。PCRはDNAポリメラーゼPrimeSTAR(タカラバイオ社製)を用いて、98℃で10秒間、次いで56℃で5秒間、さらに72℃で60秒間の保温を1サイクルとしてこれを30回繰り返した。増幅したDNA断片を制限酵素HindIII及びXbaIで制限酵素処理し、同様に処理したプラスミドpRI909(タカラバイオ社製)に挿入し、プラスミドpRI909-35Sとした。

H35-2F: 5’- CCAAGCTTAGATTAGCCTTTTCAATTTC -3’ (配列番号3)
35_1RC:5’-CCTCTAGACGTGTTCTCTCCAAATG-3’ (配列番号4)
同様に前述のpBI121を鋳型にして、2種類の特異的プライマー(35S-1F(配列番号5)、35S-1R(配列番号6))を用いPCRを行い、0.2 kbpの大きさの35Sプロモーターのエンハンサー領域であるDNA断片を増幅した。増幅したDNA断片を、EcoRVで処理したプラスミドpRI909-35Sの切断部分に挿入し、カリフラワーモザイクウイルス由来35Sエンハンサー領域の塩基配列と35Sプロモーターの塩基配列がタンデムに接合されてなるプロモーター塩基配列(2x35S)を有するプラスミドpRI909-2x35Sとした。

35S-1F:5’-CTATCTGTCA CTTTATTGTG AAGATAGTGG-3’ (配列番号5)
35S-1R:5’-ATCACATCAA TCCACTTGCT TTGAAGACG-3’ (配列番号6)
次に、pBI121を鋳型に、2種の特異的プライマー(SCR-1F(配列番号7)、ECR_1RC(配列番号8))を用いPCRを行い、末端に制限酵素SacI及びEcoRIの認識配列をそれぞれ有する植物細胞で機能可能なターミネーターであるニンジン根部PRタンパク質遺伝子由来のCRターミネーター塩基配列からなるDNA断片を増幅した。PCRは前述のDNAポリメラーゼを用いて、98℃で10秒間、次いで58℃で5秒間、さらに72℃で30秒間の保温を1サイクルとしてこれを30回繰り返した。増幅したDNA断片を制限酵素SacI及びEcoRIで処理し、同様に処理した2x35Sプロモーター塩基配列を含むプラスミドpRI909-2x35Sに挿入し、2x35SプロモーターとCRターミネーターの塩基配列を含むプラスミドpRI909-35S-CRを構築した。

SCR-1F:5’-CCGAGCTCGAATTCGCGGCCGCACTTCTTAC-3’ (配列番号7)
ECR_1RC:5’-CCGAATTCGAGCTCTCAACTTCGTAATTTTATG-3’ (配列番号8)
次に、プラスミドpRI909-35S-CRを制限酵素BamHI及びSacIで処理した後、切り出されたDNA断片の平滑末端化を行った。平滑末端化した直鎖状プラスミドpRI909-35S-CRをGateway Vector Conversion system(ライフテクノロジー社製)を用いてGateway Vector化し、プロモーター(2x35S)の塩基配列とCRターミネーターの塩基配列の間にGatewayリーディングフレームカセット塩基配列を有するプラスミドpRI909-35S-GW-CRを構築した。
更に、植物バイナリーベクターpRI909及び特開2000-1166577に記載のpIG121HMを鋳型に、8種のプライマー(Hind-1F(配列番号9)、909A-1RC(配列番号10)、9APH-1F(配列番号11)、APHT-1RC(配列番号12)、APHT-1F(配列番号13)、APH9-1RC(配列番号14)、A909-1F(配列番号15)、EcoT-1RC(配列番号16))を用いフュージョンPCRを行い、T-DNA塩基配列由来のNOSプロモーターとNOSターミネーターの塩基配列の間にハイグロマイシン耐性遺伝子(aph4)を有し、末端に制限酵素HindIII及びEcoT22Iの認識配列を有する発現カセットのDNA断片を増幅した。PCRは同様のDNAポリメラーゼを用いて、98℃で10秒間、次いで60℃で5秒間、さらに72℃で120秒間の保温を1サイクルとしてこれを40回繰り返した。増幅したDNA断片を制限酵素HindIII及びEcoT22Iで処理し、当該断片を同様に処理した植物バイナリーベクターpRI909の制限酵素HindIII及びEcoT22Iの認識配列の間に挿入し、カナマイシン耐性遺伝子発現カセットをハイグロマイシン耐性遺伝子発現カセットに置換した植物バイナリーベクターpRH-2x35S-GW-CRを構築した。

Hind-1F:5’-ATGCAAGCTTGGCACTGGCCGTC-3’(配列番号9)
909A-1RC:5’-AGGCTTTTTCATGCGAAACGATCCAGATCCGGTGCA-3’(配列番号10)
9APH-1F:5’-GATCGTTTCGCATGAAAAAGCCTGAACTCACCGCGACGTCTG-3’(配列番号11)
APHT-1RC:5’-TAGGTCAGGCTCTCGCTAAATTCCCCAATGTCAAG-3’(配列番号12)
APHT-1F:5’-CTTGACATTGGGGAATTTAGCGAGAGCCTGACCTA-3’(配列番号13)
APH9-1RC:5’-AGAGTCCCGCCTATTCCTTTGCCCTCGGACGAGTGCTGG-3’(配列番号14)
A909-1F:5’-GCAAAGGAATAGGCGGGACTCTGGGGTTCGAAATGAC-3’(配列番号15)
EcoT-1RC:5’-CCATCTCATAAATAACGTCATGCATTACATGTTAATTATTACATGC-3’(配列番号16)
(2)枯草菌cspBタンパク質をコードする塩基配列を有する発現バイナリーベクターの構築
まず、配列番号1で示される枯草菌cspBタンパク質のアミノ酸配列をコードする配列番号17で示される塩基配列を有するDNA断片を全合成した。これを鋳型に、2種の特異的プライマー(CspB-1F(配列番号18)、CspB-1RC(配列番号19))を用いPCRを行い、cspBをコードするDNA断片を増幅した。PCRは(1)と同じDNAポリメラーゼを用いて、94℃で2分間の保温を行った後、98℃で10秒間、次いで58℃で5秒間、さらに72℃で30秒間の保温を1サイクルとしてこれを30回繰り返し、最後に72℃で2分間の保温を行った。回収精製した当該増幅断片の5‘末端にアデニンを付加し、遺伝子クローニングキットpCR8/GW/TOPO TA Cloning Kit(ライフテクノロジー社製)を用いてキット付属のプラスミドpCR8/GW/TOPOに挿入した。これを大腸菌DH5α株のコンピテントセル(東洋紡社製)に形質転換した。形質転換した大腸菌からプラスミドpENTR-cspBを調製し、その塩基配列を解析した。

CspB-1F:5’-ATGGTGGAGGGGAAGGTCA-3’(配列番号18)
CspB-1RC:5’-TCACGCTTCCTTGGTAACGTTAGC-3’(配列番号19)
次に、(1)で得られた2x35SプロモーターとCRターミネーターの塩基配列を含む植物バイナリーベクターpRH-2x35S-GW-CRと、配列番号1で示される枯草菌cspBタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するプラスミドpENTR-cspBに対して、LR Clonase(ライフテクノロジー社)を用いてLR反応を行ない、これを大腸菌DH5α株のコンピテントセル(東洋紡社製)に形質転換して、2x35SプロモーターとCRターミネーターの塩基配列の間に枯草菌cspBタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する発現カセットを含むプラスミドpRH-2x35S-CspB-CRを調製し、その塩基配列を確認した。その結果、配列番号20で示される塩基配列を有するプラスミドpRH-2x35S-CspB-CR(図1)を得た。
(3)cspB遺伝子のイネへの形質転換
実施例1(2)で作製されたベクターpRH-2x35S-CspB-CRをアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens strain LBA4404)に導入した。得られたアグロバクテリウムを50 mg/L カナマイシン、100 mg/L スペクチノマイシンを含むLB寒天培地(0.5% 酵母エキス、1.0% バクトトリプトン、0.5% 食塩、1% 寒天)で培養して薬剤耐性コロニーを選抜することにより、組換えアグロバクテリウムを得た。得られた組換えアグロバクテリウムをToki S.らの方法(Plant J., 47, 969-976,2006)に準じてイネ品種「日本晴」に形質転換した。
イネの種子の籾がらを取り除いた後、70%エタノールで5分浸漬の後、滅菌チューブに入れ滅菌液(2.5%次亜塩素酸ナトリウム、0.02% Triton X-100)中で20分振とうし、2.5%次亜塩素酸ナトリウム水溶液にて20分振とうし滅菌を行った。滅菌した種子は、滅菌チューブに入れ滅菌水で3回洗浄を行った。洗浄後、カルス誘導培地(N6Dプレート:N6無機塩、N6ビタミン、2 mg/L 2,4-D、30 g/L スクロース、0.3 g/L カザミノ酸、2.9 g/L プロリン、4 g/L ゲランガム、pH5.8)上に置床し、植物インキュベーター中で32℃、日長24時間にて5日間培養した。培養した種子約100粒を50 mLのチューブに入れ、アグロバクテリウム懸濁液を注ぎ、約2分間ゆっくり振とうした。その後、アグロバクテリウム懸濁液を、ピッペッターを用いて除去した。感染させたイネ種子は、無菌ろ紙上で余分な水分を除き、共存培養培地(2N6-ASプレート:N6無機塩、N6ビタミン、30 g/L スクロース、10 g/L グルコース、0.3 g/L カザミノ酸、2 mg/L 2,4-D、10 mg/L アセトシリンゴン、4 g/L ゲランガム、pH5.2)に移して、28℃、暗黒下にて3日間共存培養した。アグロバクテリウムを除くため3日間共存培養した種子約100粒を50 mLのチューブに入れ滅菌水を注ぎ、2分間振とうし洗浄した。この操作を5回繰り返した後、500 mg/L クラフォラン溶液を加え、約2分間ゆっくり振とうした。クラフォラン溶液は、無菌ピペッターを用いて除去した。洗浄した種子は、無菌ろ紙上に置き、種子の余分な水分を除き、選抜培地〔N6Dプレート:N6無機塩、N6ビタミン、2 mg/L 2,4-D、30 g/L スクロース、0.3 g/L カザミノ酸、2.9 g/L プロリン、50 mg/L ハイグロマイシン、500 mg/L クラフォラン、4 g/L ゲランガム、pH5.8〕に並べて28℃、明条件下にて約3〜4週間培養することで、薬剤耐性カルスを取得した。取得した薬剤耐性カルスを再分化培地(RE-IIIプレート:MS無機塩、MSビタミン、30 g/L スクロース、30 g/L ソルビトール、2 g/L カザミノ酸、20 mg/L NAA、2 mg/L カイネチン 500 mg/L、クラフォラン、50 mg/L ハイグロマイシン、4 g/L ゲランガム、pH5.8)に移植して28℃、明条件下にて再分化するまで培養した。
再分化した個体は、発根培地(HFプレート:MS無機塩、MSビタミン、30 g/L スクロース、50m g/L ハイグロマイシン、4 g/L 寒天、pH5.8)に移植し、28℃、明条件下にて発根するまで培養した。10ラインの発根した再生個体を取得した。それらを、培土を入れたポットに移植し、人工気象室内で28℃、日長12時間で生育させることにより、7ラインのT1種子を得た。
次世代の種子を取得するため、得られた各ラインT1種子を改変MS寒天培地(MS無機塩類、B5ビタミン、30 g/L スクロース、50 mg/L ハイグロマイシン、8 g/L寒天、pH5.8)に播種し、28℃、明条件下で2週間栽培した。ハイグロマイシン耐性を示した形質転換体を、予め培土を入れたポットに移植し、人工気象室内で28℃、日長12時間で生育させた。
得られたイネ形質転換体についてリアルタイムPCR法を用いて導入遺伝子の発現解析を行った。得られた7ラインの組換えイネ系統の個体から、植物RNA抽出キット「RNeasy Plant Mini Kit」(QIAGEN)を用いて全RNAを抽出し、抽出された全RNAから、cDNA合成キット「ReverTra Ace」(TOYOBO)を用いてcDNAを合成した。合成されたcDNAを鋳型として、7500 Fast Real-time PCR装置(Applied Biosystems社製)を使用しSYBR Premix Ex Taqキット(タカラバイオ社製)を用いて添付のプロトコールにしたがって、リアルタイムPCRを行った。組換えイネ系統で発現しているcspBタンパク質をコードする塩基配列を有するmRNA量の検出には、2種の特異的プライマー(cspB-F-1(配列番号21)、cspB-R-1(配列番号22))を用いた。また、内部標準として、イネポリユビキチン遺伝子(GenBank Accession Number AK102389)を特異的に検出する特異的プライマー・セット(rubi3-70F(配列番号23)、rubi3-70RC(配列番号24))を使用し、ΔΔCt法に基づいて当該mRNAを定量した。

cspB-F-1:5'-TGTGCACTTCTCCGCCATT-3'(配列番号21)
cspB-R-1:5'-CTGGCCCTCTTCGAGTGTCT-3'(配列番号22)
rubi3-70F:5'-CCTCCGTGGTGGTCTCTGA -3'(配列番号23)
rubi3-70RC:5'-CGGCATAGGTATAATGAAGTCCAA 3'(配列番号24)
その結果、得られた組換えイネ7系統すべてで、導入したcspB遺伝子の発現が認められた。上記の得られた組換えイネ系統の中で、多くの種子数が採取された組換えイネ系統、系統2、系統9、系統10について、非生物学的ストレスの軽減効果を評価した。
試験例1 cspB遺伝子導入組換えイネ系統のアブシシン酸(ABA)処理による高温ストレス軽減評価試験(草丈)
(供試植物)
cspB遺伝子導入組換えイネ系統 系統2、系統9、系統10、及び、野生型イネ(品種:日本晴)
上記組換えイネ系統は、ハイグロマイシンを50 μg/mlを含む2倍希釈の木村B液体培地(Plant science,199(1996) 39-47)に播種して、昼28℃/夜23℃、日長12時間で7日間水耕栽培後、試験に使用した。野生型イネは、2倍希釈の木村B液体培地に播種し、同様の条件で水耕栽培後、試験に使用した。
(ABA処理)
播種後7日目の組換えイネ系統および野生型イネの各3個体の幼苗を、培土を充填したプラスチック製カップ(高さ58 mm×55 mm直径)に移植後に湛水し、28℃、日長12時間で5日間、人工気象室内で栽培を行った。
播種後12日間栽培後のイネ実生が生育したポットの土壌に、10 ppmの濃度の(S)-(+)-ABA水溶液(0.1% DMSO含有)を15 mL灌注処理した。無処理群として、15 mLの0.1% DMSOを含む水を同様に灌注処理した。灌注処理後、さらに、28℃、日長12時間で2日間、栽培を行った。
(高温ストレス処理)
灌注処理2日間後に、イネ実生をポットごと50℃の人工気象機内に移し、1.5時間インキュベートし、高温ストレス処理を行った。
(評価方法)
高温ストレス処理後、人工気象室内で湛水し、昼28℃/夜23℃、日長12時間で、7日間回復栽培を行った。回復栽培後に、各処理群のイネ個体の草丈を測定した。
(結果)
野生型及び各組換え系統のイネの無処理群及びABA処理群の草丈の測定値の平均を表2に示した。
すべての組換えイネ系統で、ABA処理群は、無処理群と比較して草丈の値が増加していた。
当該組換えイネ系統にABAを処理した群のストレス軽減効果は、すべての組換えイネ系統で、表2に示した野生型ABA処理群のストレス軽減効果と組換え系統無処理群のストレス軽減効果の和である相加効果と比較しても、さらに増大していた。したがって、本発明のイネ組換え系統に対してABAの処理によって相乗的にストレスが軽減したことを確認できた。
Figure 2013116103
ストレス軽減効果=無処理群或はABA処理群の草丈の平均値−野生型無処理群の平均値
相加効果=野生型ABA処理群のストレス軽減効果+組換え系統無処理群のストレス軽減効果
相加効果との差異=組換え系統ABA処理群のストレス軽減効果の値−相加効果の値
また、本試験に用いた本組換えイネ系統2、9及び10を、ストレス処理後も、種子が登熟するまで回復栽培を継続し、その収量を調査する。その結果、組換えイネに対してアブシシン酸を処理した群では無処理群に対して収量の改善が期待される。
実施例2 cspA遺伝子導入イネ組換え体系統の作出
(1)大腸菌cspAタンパク質をコードする塩基配列を有する発現バイナリーベクターの構築
まず、配列番号2で示される大腸菌cspAタンパク質のアミノ酸配列をコードする配列番号25で示される塩基配列を有するDNA断片を全合成した。これを鋳型に、2種の特異的プライマー(CspA-1F(配列番号26)、CspA-1RC(配列番号27))を用いPCRを行い、cspAをコードするDNA断片を増幅した。PCRは実施例1の(1)と同じDNAポリメラーゼを用いて、94℃で2分間の保温を行った後、98℃で10秒間、次いで58℃で5秒間、さらに72℃で30秒間の保温を1サイクルとしてこれを30回繰り返し、最後に72℃で2分間の保温を行った。回収精製した当該増幅断片の5‘末端にアデニンを付加し、遺伝子クローニングキットpCR8/GW/TOPO TA Cloning Kit(ライフテクノロジー社製)を用いてキット付属のプラスミドpCR8/GW/TOPOに挿入した。これを大腸菌DH5α株のコンピテントセル(東洋紡社製)に形質転換した。形質転換した大腸菌からプラスミドpENTR-cspAを調製し、その塩基配列を解析した。

cspA:(配列番号25)
CspA-1F: 5’-ATGGCAGGCAAGATGACAGG-3’(配列番号26)
CspA-1RC: 5’-TCAGAGGGACGTGACATTGCCAG-3’(配列番号27)
次に、実施例1で得られたプラスミドpRH-2x35S-GW-CRとプラスミドpENTR-cspAから、実施例1(2)の方法と同様に、2x35SプロモーターとCRターミネーターの塩基配列の間に大腸菌cspAタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する発現カセット(配列番号28)を含むプラスミドpRH-2x35S-CspA-CR(図2)を得た。
(2)cspA遺伝子のイネへの形質転換
実施例2(1)で作製されたベクターpRH-2x35S-CspA-CRを用いて、実施例1(3)の方法に従って組換アグロバクテリウムを作成し、イネ品種日本晴に形質転換した。30系統の再生個体が選抜され、その中で18系統からT1種子を取得した。
実施例1(3)と同様の方法で、得られたイネ形質転換体についてリアルタイムPCR法を用いて導入遺伝子の発現解析を行った。組換えイネ系統で発現しているcspAタンパク質をコードする塩基配列を有する転写RNA量の検出には、特異的プライマー・セット(cspA-F-2(配列番号29)、cspA-R-2(配列番号30))を用いた。

cspA-F-2:5'-GGCATCGTGAAGTGGTTCAA-3'(配列番号29)
cspA-R-2:5'-CCCATCGTCTGGAGTGATGA-3'(配列番号30)
その結果、得られた組換えイネ18系統すべてで、導入したcspA遺伝子の発現が認められた。
実施例3 cspB遺伝子導入組換えトウモロコシ系統の作出
実施例1で作成した配列番号1のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAを含む、植物細胞内で低温ショックタンパク質遺伝子を発現するプラスミド pRH-2x35S-cspB-CRのT-DNA 領域を、デント種に分類されるトウモロコシ品種LH59の未熟胚細胞にアグロバクテリウム法を用いて導入する。
トウモロコシ品種LH59の未熟胚細胞から脱分化したカルスとプラスミドpRH-2x35S-cspB-CRを含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス ABI株を共置培養した後、カルベニシリン及びハイグロマイシンBを添加した組織培養培地で細胞の選抜を行う。ハイグロマイシンBによって形質転換していない個体を除去する。その際、形質転換に用いたアグロバクテリウムは、カルベニシリンを添加した組織培養培地により除去される。
組織培養により選抜された未熟胚細胞を再分化させ、再分化個体を得る。当該再分化個体の第1世代を非組換えトウモロコシ品種LH59と交配させ、トウモロコシ組換え系統を得る。当該トウモロコシ組換え系統個体の後代の系統の導入遺伝子を解析し形態特性を調査して系統選抜を行い、cspBタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むDNAを導入した組換えトウモロコシ系統を作出する。
作出されたトウモロコシ組換え系統は、実施例1に記載した方法により、リアルタイムPCR法を用いて、植物に導入したcspBタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む転写RNAを定量し、発現の高い系統を選抜する。
試験例2 トウモロコシのABA土壌処理による高温ストレス軽減評価試験
(供試植物)
cspB遺伝子導入組換えトウモロコシ
上記実施例3で作出されるcspB遺伝子導入組換えトウモロコシ或はcspB遺伝子導入組換えトウモロコシMON87460系統(モンサント社)の種子をポット内の土壌に播種し、非生物的ストレスに感受性を示す生長段階まで、ストレスのない条件下で栽培する。
(ABA処理、高温ストレス処理)
栽培後のトウモロコシが生育したポットの土壌に、アブシシン酸(ABA)水溶液(0.1% DMSO含有)を10 mL灌注処理する。無処理群として、0.1% DMSOを含む水を同様に10 mL灌注処理する。灌注処理後、さらに栽培を行う。その後、試験例1に示した方法に準じた方法を用いて当該組換えトウモロコシ系統が高温ストレスを感受する条件及び時間で、高温ストレス処理を行う。
(評価方法)
ストレス処理後に回復栽培を行い、その後、試験例1に示した方法により草丈を調査する。同様に、ストレス処理後も回復栽培を継続し、地上部新鮮重量や種子重量等を測定し、収量を調査する。ABA処理群では、無処理群と比較して草丈の増加等のストレスの軽減が期待できる。また、種子が登熟するまで回復栽培を継続すると、地上部新鮮重量の増加等の収量の改善が期待できる。
試験例3 cspB遺伝子導入組換えイネ系統のABA処理による高温ストレス軽減評価試験(種子収量)
(供試植物)
実施例1で作出したcspB遺伝子導入組換えイネ系統10、及び、野生型(品種:日本晴)
試験例1において、高温ストレス処理、回復栽培を行なって草丈を測定した後、当該組換えイネ系統のABA処理群、及び、野生型イネのABA処理群を、昼28℃/夜23℃、日長12時間で種子が登熟するまで人工気象室内で引き続き栽培した。
(評価方法)
組換えイネ系統のABA処理群、及び、野生型イネのABA処理群を高温ストレス処理後に種子が登熟するまで90日間栽培し、各処理群の得られた登熟した種子の粒数を調査した。
(結果)
高温ストレス処理後90日間栽培した各処理群のイネから得られた種子の粒数は、野生型イネのABA処理群では1個体あたり平均12粒であり、一方、組換えイネ系統のABA処理群では1個体あたり平均16粒であった。このことから、当該組換えイネにABAを処理することにより野生型イネにABAを処理した場合に比較して種子収量の改善が認められた。
試験例4 cspB遺伝子導入組換えイネ系統のABA処理による低温ストレス軽減評価試験(植物新鮮重量)
(供試植物)
実施例1で作出したcspB遺伝子導入組換えイネ系統2、及び、野生型イネ(品種:日本晴)
当該組換えイネ系統を、ハイグロマイシンを50 μg/mlを含む2倍希釈の木村B液体培地に播種し、昼28℃/夜23℃、日長12時間で5日間水耕栽培し、試験に使用した。野生型イネは、2倍希釈の木村B液体培地に播種し、同様の条件で水耕栽培後、試験に使用した。
(ABA処理)
播種後5日間栽培した当該組換えイネ系統及び野生型イネの幼苗を、0.1 ppmの濃度のアブシシン酸(ABA)(和光純薬製)を含む2倍希釈の木村B液体培地2 mL(0.1% DMSO含有)を分注した24穴プレート(高さ20mm×15 mm直径/穴)に移し、昼28℃/夜23℃、日長12時間で2日間栽培した。無処理群として、2倍希釈の木村B液体培地2 mL(0.1% DMSO含有)を分注した24穴プレートで播種後5日間栽培した野生型イネを同条件下で栽培した。
(低温ストレス処理)
ABA処理2日間後の当該組換えイネ系統及び野生型イネの実生を2倍希釈の木村B液体培地に移し、4℃、日長12時間の条件で5日間インキュベートし、低温ストレス処理を行った。
(評価方法)
低温ストレス処理後、上記のイネ実生をホグラント液体培地(Calif. Agric. Exp. Station Circular (1938);347:1-32)に移し、23℃、日長12時間で、14日間栽培した後に、各処理群のイネ個体の根部を切除し、各イネ個体の植物新鮮重量を測定した。
(結果)
当該組換えイネ系統、及び、野生型イネの無処理群、及び、ABA処理群の1個体当たりの植物新鮮重量の平均値を表3に示した。
当該組換えイネ系統において、ABA処理群は、無処理群と比較して植物新鮮重量が増加していた。
当該組換えイネ系統にABAを処理した群のストレス軽減効果は、表3に示した野生型ABA処理群のストレス軽減効果と組換え系統無処理群のストレス軽減効果の和である相加効果と比較しても、さらに増大していた。したがって、本発明のイネ組換え系統に対してABAの処理によって相乗的にストレスが軽減したことを確認できた。
Figure 2013116103
ストレス軽減効果=無処理群或はABA処理群の植物新鮮重量の平均値−野生型無処理群の平均値
相加効果=野生型ABA処理群のストレス軽減効果+組換え系統無処理群のストレス軽減効果
相加効果との差異=組換え系統ABA処理群のストレス軽減効果の値−相加効果の値
試験例5 cspB遺伝子導入組換えイネ系統のABA散布処理による低温ストレス軽減評価試験(植物新鮮重量)
(供試植物)
cspB遺伝子導入組換えイネ系統2
当該組換えイネ系統を、ハイグロマイシンを50 μg/mlを含む2倍希釈の木村B液体培地に播種して、昼28℃/夜23℃、日長12時間で5日間水耕栽培し、試験に使用した。
(ABA処理)
播種後5日目の当該組換えイネ系統の幼苗に、30 ppmの濃度の(S)-(+)-ABA溶液(0.1% DMSO含有)を散布した。その後、2倍希釈の木村B液体培地に移し、昼28℃/夜23℃で2日間栽培した。
(低温ストレス処理)
ABA処理2日間後に、当該組換えイネ系統の実生を、4℃、日長12時間で5日間インキュベートし低温ストレス処理を行った。
(評価方法)
低温ストレス処理後、イネ実生をホグラント液体培地に移し、23℃、日長12時間で14日間、回復栽培を行なった。回復栽培後に、健全葉数を計数した。
(結果)
当該組換えイネ系統のABA処理群は、当該組換えイネ系統の無処理群に比べて一個体あたりの健全葉数の平均値が1.8倍増大しており、cspB遺伝子導入組換えイネにABAを散布処理することでストレス軽減効果が認められた。
試験例6 cspB遺伝子導入組換えイネ系統のABAナトリウム塩又はABAカリウム塩溶液処理による低温ストレス軽減評価試験(植物新鮮重量)
(供試植物)
cspB遺伝子導入組換えイネ系統
実施例1で作出したcspB遺伝子導入組換えイネ系統を、ハイグロマイシンを50 μg/mLを含む2倍希釈の木村B液体培地に播種し、昼28℃/夜23℃、日長12時間で5日間水耕栽培後、試験に使用する。
(ABA処理)
播種後5日目の組換えイネ系統および野生型イネの幼苗を、24穴プレート(高さ20mm×15 mm直径/穴)にABA 0.1 ppmの相当の濃度になるようにABAナトリウム塩水溶液又はABAカリウム塩水溶液を添加した2倍希釈の木村B液体培地2 mL(0.1%DMSO含有)に移し、昼28℃/夜23℃、日長12時間で2日間栽培する。ABAナトリウム塩水溶液はABA水溶液にABAと等モルの水酸化ナトリウムを添加して調製し、ABAカリウム塩水溶液は、ABAナトリウム塩水溶液と同様に、ABAと等モルの水酸化カリウムを添加して調製する。無処理群として、2倍希釈の木村B液体培地2 mL(0.1% DMSO含有)を分注した24穴プレートで播種後5日間栽培した組換えイネ系統及び野生型イネを同条件下で栽培する。
(低温ストレス処理)
ABA処理2日後の当該組換えイネの実生を、4℃、日長12時間で5日間インキュベートし低温ストレス処理を行う。
(評価方法)
5日間低温ストレス処理を行った後、当該組換えイネの実生をホグラント溶液に移し、23℃、日長12時間で14日間、栽培を行なった後に、各処理群の各イネ個体の根部を切除し、地上部の植物新鮮重量を調査する。
当該組換えイネのABA処理群では、無処理群と比較して植物新鮮重量が増加し、ABAナトリウム塩又はABAカリウム塩処理によるストレスの軽減が期待される。
試験例7 cspB遺伝子導入組換えイネ系統のABA処理による乾燥ストレス軽減評価試験(植物新鮮重量)
(供試植物)
実施例1で作成したcspB遺伝子導入組換えイネ系統2、及び、野生型イネ(品種:日本晴)
当該組換えイネ系統を、ハイグロマイシンを50 μg/mlを含む2倍希釈の木村B液体培地に播種して、昼28℃/夜23℃、日長12時間で7日間水耕栽培後、試験に使用した。野生型イネは、2倍希釈の木村B液体培地に播種し、同様の条件で水耕栽培後、試験に使用した。
(ABA処理)
播種後7日目の当該組換えイネ系統および野生型イネを2倍希釈の木村B液体培地に移し、昼28℃/夜23℃、日長16時間で6日間水耕栽培した。6日後に、0.3 ppmの濃度の(S)-(+)-ABAを含む2倍希釈の木村B液体培地(0.1%DMSO含有)に移し、当該イネ実生を1日間ABA処理した。無処理群は、2倍希釈の木村B液体培地(0.1%DMSO含有)で同様に栽培した。
(乾燥ストレス処理)
ABA処理1日間の後、当該イネ実生を、空の50 mL容テストチューブに移して、昼28℃/夜23℃、日長16時間、湿度80%(RH)の条件下で2日間風乾し、乾燥ストレス処理を行った。
(評価方法)
2日間の乾燥ストレス処理の後、当該イネ実生をホグラント溶液に移し、昼28℃/夜23℃、日長16時間で14日間、回復栽培を行なった。回復栽培後に、各処理群のイネ5個体を一組にして植物新鮮重量を測定した。
(結果)
組換えイネ系統及び野生型の無処理群及びABA処理群のイネ5個体の植物新鮮重量の測定値の平均値を表4に示した。
組換えイネ系統において、ABA処理群は、無処理群と比較して植物新鮮重量の値が増加していた。
組換えイネ系統にABAを処理した群のストレス軽減効果は、表4に示した野生型ABA処理群のストレス軽減効果と組換え系統無処理群のストレス軽減効果の和である相加効果と比較しても、さらに増大していた。したがって、本発明のイネ組換え系統に対してABAの処理によって相乗的にストレスが軽減したことを確認できた。
Figure 2013116103
ストレス軽減効果=無処理群或はABA処理群の植物新鮮重量の平均値−野生型無処理群の平均値
相加効果=野生型ABA処理群のストレス軽減効果+組換え系統無処理群のストレス軽減効果
相加効果との差異=組換え系統ABA処理群のストレス軽減効果の値−相加効果の値
試験例8 cspA遺伝子導入組換えイネ系統のABA処理による高温ストレス軽減評価試験(草丈)
(供試植物)
実施例2で作出したcspA遺伝子導入組換えイネ系統5及び、野生型イネ(品種:日本晴)
当該組換えイネ系統を、ハイグロマイシンを50 μg/mlを含む2倍希釈の木村B液体培地に播種して、昼28℃/夜23℃、日長12時間で7日間水耕栽培後、試験に使用した。野生型イネは、2倍希釈の木村B液体培地に播種し、同様の条件で水耕栽培後、試験に使用した。
(ABA処理、高温ストレス処理、評価方法)
ABA処理、高温ストレス処理、評価方法は、試験例1の方法に従って行った。
(結果)
野生型及び当該組換えイネ系統の無処理群及びABA処理群の草丈の測定値の平均を表5に示した。
当該組換えイネ系統において、ABA処理群は、無処理群と比較して草丈の値が増加していた。
当該組換えイネ系統にABAを処理した群のストレス軽減効果は、表5に示した野生型ABA処理群のストレス軽減効果と組換え系統無処理群のストレス軽減効果の和である相加効果と比較しても、さらに増大していた。したがって、本発明のイネ組換え系統に対するABAの処理によって相乗的にストレスが軽減したことを確認できた。
Figure 2013116103
ストレス軽減効果=無処理群或はABA処理群の草丈の平均値−野生型無処理群の平均値
相加効果=野生型ABA処理群のストレス軽減効果+組換え系統無処理群のストレス軽減効果
相加効果との差異=組換え系統ABA処理群のストレス軽減効果の値−相加効果の値
試験例9 cspA遺伝子導入組換えイネ系統のABA処理による低温ストレス軽減評価試験(植物新鮮重量)
(供試植物)
実施例2で作出したcspA遺伝子導入組換えイネ系統8、及び、野生型イネ(品種:日本晴)
当該組換えイネ系統を、ハイグロマイシンを50 μg/mlを含む2倍希釈の木村B液体培地に播種し、昼28℃/夜23℃、日長12時間で7日間水耕栽培後、試験に使用した。野生型イネは、2倍希釈の木村B液体培地に播種し、同様の条件で水耕栽培後、試験に使用した。
(ABA処理、低温ストレス処理、評価方法)
ABA処理、低温ストレス処理、評価方法は、試験例4の方法に従って行った。
(結果)
野生型及び当該組換えイネ系統の無処理群及びABA処理群の植物新鮮重量の測定値の平均を表6に示した。
組換えイネ系統において、ABA処理群は、無処理群と比較して植物新鮮重量の値が増加していた。
組換えイネ系統にABAを処理した群のストレス軽減効果は、表6に示した野生型ABA処理群のストレス軽減効果と組換え系統無処理群のストレス軽減効果の和である相加効果と比較しても、さらに増大していた。したがって、本発明の組換えイネ系統に対するABAの処理によって相乗的にストレスが軽減したことを確認できた。
Figure 2013116103
ストレス軽減効果=無処理群或はABA処理群の植物新鮮重量の平均値−野生型無処理群の平均値
相加効果=野生型ABA処理群のストレス軽減効果+組換え系統無処理群のストレス軽減効果
相加効果との差異=組換え系統ABA処理群のストレス軽減効果の値−相加効果の値
試験例10 トウモロコシ土壌処理による低温ストレス軽減評価試験
(供試植物)
cspB遺伝子導入組換えトウモロコシ
上記実施例3で作出されるcspB遺伝子導入組換えトウモロコシ或はcspB遺伝子導入組換えトウモロコシMON87460系統(モンサント社)の種子をポット内の土壌に播種し、27℃、日長16時間で7日間栽培する。
(ABA処理)
播種7日後の組換えトウモロコシのポットの土壌に、ABA水溶液(0.1% DMSO含有)を灌注処理する。無処理群として、0.1% DMSOを含む水を同様に灌注処理する。灌注処理後、同様の条件でさらに2日間、栽培を行う。
(低温ストレス処理)
ABA処理を2日間行った組換えトウモロコシを2.5℃、日長16時間で5日間インキュベートし、低温ストレス処理を行う。
(評価方法)
ストレス処理後に組換えトウモロコシを27℃、日長16時間で5日間回復栽培を行い、健全葉数を調査する。組換えトウモロコシのABA処理群では、組換えトウモロコシの無処理群と比較して健全葉数が多く観察でき、ストレスの軽減が期待できる。また、種子が登熟するまで回復栽培を継続すると、地上部新鮮重量の増加等の収量の改善が期待できる。
試験例11 トウモロコシ土壌処理による乾燥ストレス軽減評価試験
(供試植物)
cspB遺伝子導入組換えトウモロコシ
上記実施例3で作出されるcspB遺伝子導入組換えトウモロコシ或はcspB遺伝子導入組換えトウモロコシMON87460系統(モンサント社)の種子をポット内の土壌に播種し、非生物的ストレスに感受性を示す生長段階まで、27℃、日長16時間で乾燥ストレスのない条件下で栽培する。
(ABA処理)
栽培後の当該組換えトウモロコシが生育したポットの土壌に、ABA水溶液(0.1% DMSO含有)を灌注処理する。無処理群として、0.1% DMSOを含む水を同様に、灌注処理する。灌注処理後、同様の条件で栽培し、ABA処理を行う。その後、当該組換えトウモロコシ系統が乾燥ストレスを感受する水分を制限条件及び時間で、乾燥ストレス処理を行う。
(評価方法)
乾燥ストレス処理後に27℃、日長16時間で回復栽培を行い、当該組換えトウモロコシの健全葉数を調査する。
当該組換えトウモロコシのABA処理群では、当該組換えトウモロコシの無処理群と比較して健全葉数が多く観察でき、ストレスの軽減が期待できる。また、種子が登熟するまで回復栽培を継続すると、地上部新鮮重量の増加等の収量の改善が期待できる。
本発明によれば、組換えイネ科植物の非生物的ストレスを軽減することが可能となり、イネ科植物の収量の増大が期待し得る。
配列番号1
枯草菌cspBタンパク質
配列番号2
大腸菌cspAタンパク質
配列番号3
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号4
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号5
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号6
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号7
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号8
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号9
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号10
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号11
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号12
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号13
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号14
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号15
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号16
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号17
枯草菌cspB遺伝子
配列番号18
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号19
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号20
cspB発現カセット
配列番号21
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号22
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号23
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号24
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号25
大腸菌cspA遺伝子
配列番号26
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号27
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号28
cspA発現カセット
配列番号29
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号30
PCR用に設計されたオリゴヌクレオチドプライマー

Claims (8)

  1. 低温ショックタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを導入した組換えイネ科植物及び/又は当該植物の栽培域をアブシシン酸で処理する、組換えイネ科植物の非生物的ストレスを軽減する方法。
  2. 低温ショックタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAが、枯草菌cspBタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、又は大腸菌cspAタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAである、請求項1に記載の方法。
  3. 低温ショックタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAが、下記の(a)から(c)のいずれかのDNAである、請求項1に記載の方法。
    (a) 配列番号1のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA。
    (b) 配列番号2のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA。
    (c) (a)又は(b)のアミノ酸配列との配列同一性が62.5%以上のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA。
  4. アブシシン酸で処理する方法が、組換えイネ科植物への散布処理、又は、組換えイネ科植物の栽培域への土壌処理である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 非生物的ストレスが、高温ストレス、低温ストレス、及び/又は乾燥ストレスである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  6. 低温ショックタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを導入した組換えイネ科植物及び/又は当該植物の栽培域をアブシシン酸で処理する、組換えイネ科植物の収量を改善する方法。
  7. 組換えイネ科植物が、イネ又はトウモロコシである、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
  8. 非生物的ストレスを軽減するための、低温ショックタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを導入した組換えイネ科植物及び/又は組換えイネ科植物の栽培域へのアブシシン酸の使用。
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