JP2013110980A - 光学活性なコハク酸イミド誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学活性なコハク酸イミド誘導体の効率的な製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の光学活性なコハク酸イミド誘導体の製造方法は、式(I)で示されるラセミ化合物にアスペルギルス(Aspergillus)属の微生物に由来するプロテアーゼまたはペプチダーゼを反応させて、式(II)で示される光学活性化合物を得る工程を包含し、そして該式(I)および式(II)で示される化合物において、Rは、分岐を形成していてもよい炭素数1から4のアルキル基である。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の光学活性なコハク酸イミド誘導体の製造方法は、式(I)で示されるラセミ化合物にアスペルギルス(Aspergillus)属の微生物に由来するプロテアーゼまたはペプチダーゼを反応させて、式(II)で示される光学活性化合物を得る工程を包含し、そして該式(I)および式(II)で示される化合物において、Rは、分岐を形成していてもよい炭素数1から4のアルキル基である。
【選択図】なし
Description
本発明は、光学活性なコハク酸イミド誘導体の製造方法に関する。
アルドース還元酵素阻害剤である(R)−ラニレスタットは、糖尿病性神経障害治療薬として期待されている。光学活性なコハク酸イミド誘導体(R体)である(R)−ラニレスタットは、従来、ラセミ化合物を再結晶により光学分割することによって製造されていた(特許文献1および非特許文献1)。
特許文献2は、ラセミ化合物を酵素により立体選択的に加水分解して光学活性なコハク酸イミド誘導体を得る方法を報告している。しかし、この方法で得られる化合物の光学純度および収率は不十分である。
T. Negoroら、J. Med. Chem.、1998年、第41巻、p. 4118-4129
本発明の目的は、光学活性なコハク酸イミド誘導体の効率的な製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、式(I)で示されるラセミ化合物に特定の酵素を反応させることにより、光学活性なコハク酸イミド誘導体を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、光学活性なコハク酸イミド誘導体の効率的な製造方法を提供し、該方法は、
以下の式(I):
以下の式(I):
で示されるラセミ化合物にアスペルギルス(Aspergillus)属の微生物に由来するプロテアーゼまたはペプチダーゼを反応させて、
以下の式(II):
以下の式(II):
で示される光学活性化合物を得る工程
を包含し、そして
該式(I)および式(II)で示される化合物において、
Rは、分岐を形成していてもよい炭素数1から4のアルキル基である。
を包含し、そして
該式(I)および式(II)で示される化合物において、
Rは、分岐を形成していてもよい炭素数1から4のアルキル基である。
1つの実施態様では、上記微生物は、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)である。
1つの実施態様では、上記式(I)および式(II)で示される化合物において、Rはエチル基またはイソブチル基である。
本発明によれば、光学活性なコハク酸イミド誘導体の効率的な製造方法を提供することができる。
本発明の光学活性なコハク酸イミド誘導体の製造方法は、式(I)で示されるラセミ化合物に以下に示す酵素を反応させて、式(II)で示される光学活性化合物を得る工程を包含する。
本発明の製造方法に用いられるラセミ化合物は、式(I)で示される。
式(I)において、Rは、分岐を形成していてもよい炭素数1から4のアルキル基である。好ましくは直鎖の炭素数1から4のアルキル基であり、より好ましくはエチル基、イソブチル基である。
式(I)で示されるラセミ化合物は、例えば、特許文献1に記載の方法により製造することができる。
式(I)で示されるラセミ化合物には、式(II)で示されるエナンチオマー(R体)と式(III)で示されるエナンチオマー(S体)とが含まれる。
式(I)で示されるラセミ化合物に以下に示す酵素を反応させると、式(III)で示されるエナンチオマー(S体)のみが該酵素により選択的に加水分解を受け、式(IV)で示される化合物が生成する。
式(IV)で示される化合物は、自発的に脱炭酸し、式(V)で示される化合物を生成する。
一方、式(II)で示されるエナンチオマー(R体)は、酵素の作用を受けずに存続する。
このようにして、式(I)で示されるラセミ化合物から式(II)で示される光学活性なコハク酸イミド誘導体が得られる。
式(V)で示される化合物のα位を再度アルコキシカルボニル化することにより、式(I)で示されるラセミ化合物を生成することができ、最終的に式(I)で示されるラセミ化合物から理論上100%の収率で、式(II)で示される光学活性化合物を得ることができる。
本発明で用いる酵素は、アスペルギルス(Aspergillus)属の微生物に由来するプロテアーゼまたはペプチダーゼであり、これらを2種以上混合して用いてもよい。好ましくは、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)に由来するプロテアーゼまたはペプチダーゼであり、これらを2種以上混合して用いてもよい。より好ましくは、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)由来プロテアーゼXP−488(ナガセケムテックス株式会社製)である。微生物から調製されたものであってもよいし、組換えDNA技術により製造されたものであってもよいし、市販されているものであってもよい。精製されたものであってもよいし、酵素産生微生物などそのままであってもよい。
本発明で用いる酵素は、式(I)で示されるラセミ化合物に含まれるエナンチオマーのうち、式(III)で示されるエナンチオマー(S体)に反応して、これを加水分解するが、式(II)で示されるエナンチオマー(R体)には反応しない。例えば、アスペルギルス・メレウス由来プロテアーゼXP−488のE値((S体に対する反応速度)/(R体に対する反応速度))は500以上である。
酵素の量としては、特に限定されず、例えば、式(I)で示されるラセミ化合物1質量部に対して0.01〜2質量部であり、好ましくは0.1〜1質量部である。
酵素を反応させる溶媒としては、例えば、水、緩衝液、有機溶媒、有機溶媒と水との混合溶媒、有機溶媒と緩衝液との混合溶媒が挙げられる。
緩衝液は、酸性化合物とアルカリ性化合物とを水中で混合し任意のpHに調整したものである。
酸性化合物としては、例えば、リン酸、クエン酸、ホウ酸、酢酸が挙げられるが、好ましくはリン酸、クエン酸である。
アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアが挙げられるが、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。
緩衝液のpHとしては、例えば、5〜7の範囲であり、好ましくは6.5〜7の範囲である。
緩衝液の濃度としては、例えば、0.05〜0.2mol/Lの範囲であり、好ましくは0.08〜0.12mol/Lの範囲である。
有機溶媒としては、安定であり、酵素反応を阻害しない限り、特に限定されず、例えば、アルコール類(エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノールなど)、セロソルブ類(メトキシエタノール、エトキシエタノールなど)、非プロトン性極性有機溶媒類(ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、テトラメチルウレア、スルホラン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、脂肪族炭化水素類(ペンタン、ヘキサン、c−ヘキサン、オクタン、デカン、デカリン、石油エーテルなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンなど)、ハロゲン化炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素など)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、低級脂肪族酸エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルなど)、アルコキシアルカン類(ジメトキシエタン、ジエトキシエタンなど)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリルなど)が挙げられる。これらを2種以上混合して用いてもよい。
溶媒の量としては、特に限定されず、例えば、式(I)で示されるラセミ化合物1質量部に対して1.5〜3質量部であり、好ましくは1.9〜2.1質量部である。
酵素を反応させる温度としては、特に限定されず、例えば、20〜35℃であり、好ましくは25〜30℃である。
式(II)で示される光学活性化合物は、式(V)で示される化合物とは、例えば、カラムクロマトグラフィーにより容易に分離することができる。次いで、式(II)で示される化合物は、再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどにより容易に精製することができる。
このようにして式(II)で示される光学活性化合物が得られる。
式(II)において、Rは式(I)で示されるRと同一である。
式(II)で示される光学活性化合物は、例えば、特許文献1の参考例12に記載の方法により、4−ブロモ−2−フルオロベンジルアミンを反応させることにより、2−(4−ブロモ−2−フルオロベンジル)−1,2,3,4−テトラヒドロピロロ(1,2−a)ピラジン−4−スピロ−3’−ピロリジン−1,2’,3,5’−テトラオン((R)−ラニレスタット)の合成に用いられる。
本発明により得られる光学活性なコハク酸イミド誘導体の光学純度は、例えば、アスペルギルス・メレウス由来プロテアーゼXP−488を用いると、95%ee(R体)以上を達成することもできる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、本実施例において、式(II)で示される光学活性化合物の光学純度は、光学活性カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析結果から求めた。HPLCの分析条件は以下のとおりである。
(HPLC条件)
カラム:Daicel Chiralcel AY−H(0.46cm×25cm,ダイセル化学工業株式会社製)
溶媒:ヘキサン/イソプロピルアルコール(5:1)
流速:0.5mL/分
温度:20℃
検出器:UV(206nm)
カラム:Daicel Chiralcel AY−H(0.46cm×25cm,ダイセル化学工業株式会社製)
溶媒:ヘキサン/イソプロピルアルコール(5:1)
流速:0.5mL/分
温度:20℃
検出器:UV(206nm)
(参考例1:3−エトキシカルボニル−2,5−ジオキソ−3−(ピロール−1−イル)ピロリジン(化合物(4))および3−イソブトキシカルボニル−2,5−ジオキソ−3−(ピロール−1−イル)ピロリジン(化合物(5))の合成)
2−(ピロール−1−イル)マロン酸ジエチルエステル(化合物(1))をA. Nudelmanら、J. Med. Chem.、1978年、第21巻、p.962-964に記載の方法により合成して得た。
化合物(1)20gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液7mLに、氷冷攪拌下、水素化ナトリウム(60%)0.4gを徐々に加えた後、室温にて30分間攪拌し、次いでブロモアセトニトリル1.2gを加え、室温にて4時間攪拌した。反応液を希塩酸中に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、n−ヘキサン/酢酸エチル(5:1)で溶出・精製し、2−シアノメチル−2−(ピロール−1−イル)マロン酸ジエチルエステル(化合物(2))を91.6%の収率で得た。
化合物(2)0.5gのテトラヒドロフラン(THF)/水(1:1)溶液15mLに、塩化パラジウム42mgおよびアセトアミド1.12gを加えた後、室温にて24時間攪拌した。反応液をセライトで濾過し、濾液を回収した。残渣を酢酸エチルで洗浄し、濾液と洗浄液とを合わせて、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、n−ヘキサン/酢酸エチル(5:1)で溶出・精製し、2−カルバモイルメチル−2−(ピロール−1−イル)マロン酸ジエチルエステル(化合物(3))0.49gを87.7%の収率で得た。
化合物(3)0.5gおよび炭酸カリウム0.025gのアセトン7.5mL懸濁液を24時間加熱還流した。反応液を冷却後、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し、水洗、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をn−ヘキサンから再結晶して、3−エトキシカルボニル−2,5−ジオキソ−3−(ピロール−1−イル)ピロリジン(化合物(4))0.403gを96.3%の収率で得た。
化合物(4)150mgにイソブチルアルコール1.5mLおよびオルトチタン酸テトライソプロポキシド62.7mgを加え、混合物を攪拌しながら2時間加熱還流した。反応液を冷却後、セライトで濾過し、濾液を回収した。残渣を酢酸エチルで洗浄し、濾液と洗浄液とを合わせて、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、n−ヘキサン/酢酸エチル(7:1)で溶出・精製し、3−イソブトキシカルボニル−2,5−ジオキソ−3−(ピロール−1−イル)ピロリジン(化合物(5))132.4mgを78.5%の収率で得た。
(実施例1:(R)−3−エトキシカルボニル−2,5−ジオキソ−3−(ピロール−1−イル)ピロリジン(化合物(6))の製造1)
21.4mgの化合物(4)(0.091mmol)に0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH6.5)200μLを加え、次いで補助溶媒としてアセトン50μLを加え、化合物(4)を溶解した。この溶解液にアスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)由来プロテアーゼXP−488(ナガセケムテックス株式会社製)20mgを添加し、混合液を30℃にて1.5時間撹拌した。
21.4mgの化合物(4)(0.091mmol)に0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH6.5)200μLを加え、次いで補助溶媒としてアセトン50μLを加え、化合物(4)を溶解した。この溶解液にアスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)由来プロテアーゼXP−488(ナガセケムテックス株式会社製)20mgを添加し、混合液を30℃にて1.5時間撹拌した。
この混合液に2mol/L塩酸を加えて混合液を酸性にし(pH2)、次いで酢酸エチル500μLを加え、混合液を攪拌した。この混合液を食塩で塩析した後、セライトで濾過し、濾液を回収した。残渣を酢酸エチルで洗浄し、濾液と洗浄液とを合わせた。水層を分離除去して得られた有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を減圧留去した。粗生成物をH−NMRで分析した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、n−ヘキサン/酢酸エチル(7:1)で溶出・精製し、10.7mgの化合物(6)、および8.6mgの2,5−ジオキソ−3−(ピロール−1−イル)ピロリジン(化合物(8))を油状物質として得た。
得られた化合物(6)のNMRスペクトルは以下のとおりであった:1H NMR(CDCl3,400MHz)δ:1.25(t,J=7.1Hz,3H),3.35(d,J=18.0Hz,1H),3.60(d,J=18.0Hz,1H),4.28(q,J=7.1Hz,2H),6.26(dd,J=2.2,2.1Hz,2H),6.93(dd,J=2.2,2.1Hz,2H),8.10(br,1H);IRνmax:3298,3153,2950,1716cm−1
比旋光度[α]25 D=−61.5°(c 0.375,MeOH)。
比旋光度[α]25 D=−61.5°(c 0.375,MeOH)。
得られた化合物(8)のNMRスペクトルは以下のとおりであった:1H NMR(CDCl3,400MHz)δ:3.00(dd,J=18.6,5.7Hz,1H),3.35(dd,J=18.6,9.6Hz,1H),5.09(dd,J=9.6,5.7Hz,1H),6.25(dd,J=2.2,2.1Hz,2H),6.70(dd,J=2.2,2.1Hz,2H),8.06(br,1H)。
NMRのシグナルの面積比(化合物(6):3.60(d,J=18.0Hz,1H−4a)、および化合物(8):3.00(dd,J=18.6,5.7Hz,1H−4a))から転換率は50.0%と推定された。
得られた化合物(6)の光学純度は、HPLCで分析した結果[保持時間:(R)体=25.0分、(S)体=21.4分]、98.7%ee(R体)であった。E値は、ln[(1−0.5)(1−0.987)]/ln[(1−0.5)(1+0.987)]=758.3であった。
(比較例1:(R)−3−エトキシカルボニル−2,5−ジオキソ−3−(ピロール−1−イル)ピロリジン(化合物(6))の製造2)
アスペルギルス・メレウス由来プロテアーゼXP−488(ナガセケムテックス株式会社製)20mgに代えて豚肝臓エステラーゼ(シグマ社,製品番号:E2884:PLE)50μL(277.2ユニット)を用いたこと、21.4mgの化合物(4)(0.091mmol)に代えて22.7mgの化合物(4)(0.097mmol)を用いたこと、0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH6.5)に代えて0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH7)を用いたこと、および酵素反応時間として1.5時間に代えて34分間としたこと以外は、実施例1と同様に実験した。15.9mgの化合物(6)、および7.4mgの化合物(8)を油状物質として得た。転換率は39.1%と推定された。
アスペルギルス・メレウス由来プロテアーゼXP−488(ナガセケムテックス株式会社製)20mgに代えて豚肝臓エステラーゼ(シグマ社,製品番号:E2884:PLE)50μL(277.2ユニット)を用いたこと、21.4mgの化合物(4)(0.091mmol)に代えて22.7mgの化合物(4)(0.097mmol)を用いたこと、0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH6.5)に代えて0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH7)を用いたこと、および酵素反応時間として1.5時間に代えて34分間としたこと以外は、実施例1と同様に実験した。15.9mgの化合物(6)、および7.4mgの化合物(8)を油状物質として得た。転換率は39.1%と推定された。
得られた化合物(6)の光学純度は、HPLCで分析した結果[保持時間:(R)体=25.0分、(S)体=21.4分]、32.7%ee(R体)であった。E値は5.6であった。
(実施例2:(R)−3−イソブトキシカルボニル−2,5−ジオキソ−3−(ピロール−1−イル)ピロリジン(化合物(9))の製造)
21.4mgの化合物(4)(0.091mmol)に代えて20.3mgの化合物(5)(0.077mml)を用いたこと、および酵素反応時間として1.5時間に代えて2時間としたこと以外は、実施例1と同様に実験した。10.6mgの化合物(9)、および7.7mgの化合物(8)を油状物質として得た。転換率は48.1%と推定された。
得られた化合物(9)のNMRスペクトルは以下のとおりであった:1H NMR(CDCl3,400MHz)δ:0.85(d,J=6.7Hz,6H),1.90(m,1H),3.37(d,J=18.0Hz,1H),3.62(d,J=18.0Hz,1H),3.97(dd,J=10.8,6.8Hz,1H),4.00(dd,J=10.8,6.4Hz,1H),6.28(dd,J=2.5,2.0Hz,2H),8.35(br,1H);IRνmax:3209,3082,2962,2873,2779,1716cm−1
比旋光度[α]26 D=−42.9°(c 0.475,MeOH)。
比旋光度[α]26 D=−42.9°(c 0.475,MeOH)。
得られた化合物(9)の光学純度は、HPLCで分析した結果[保持時間:(R)体=26.0分、(S)体=19.6分]、91.6%ee(R体)であった。E値は510.4であった。
以上の結果を表1にまとめる。
表1より明らかなように、本発明に用いられるアスペルギルス・メレウス由来プロテアーゼを用いた場合(実施例1および2)では、従来の豚肝臓エステラーゼを用いた場合(比較例1)と比較すると、得られる化合物(6)または(9)の光学純度が従来技術では成し得なかった90%eeをはるかに上回り、本発明の方法が目的化合物の生成効率に優れていることがわかる。
また、実施例1と実施例2との間においては、基質化合物(4)および(5)の相違(すなわち、各化合物を構成するRのエチル基とイソブチル基との嵩の相違)により、本発明に用いられるアスペルギルス・メレウス由来プロテアーゼは、より嵩の低い基質化合物(例えば、実施例1の基質化合物)の方が短時間で反応し、かつその際の生成物の光学純度が向上することがわかる。
一方、実施例2と比較例1との間においては、たとえ基質化合物(4)を用いたとしても、従来の豚肝臓エステラーゼでは、本発明に用いられるアスペルギルス・メレウス由来プロテアーゼを基質化合物(5)に反応させた場合の光学純度を達成できないこともわかる。
以上のことから、本発明に用いられるプロテアーゼを用いると、ラセミ化合物から光学活性なコハク酸イミド誘導体を効率的に製造できることがわかる。
本発明によれば、光学活性なコハク酸イミド誘導体の効率的な製造方法を提供することができる。
Claims (3)
- 前記微生物が、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記式(I)および式(II)で示される化合物において、Rがエチル基またはイソブチル基である、請求項1に記載の製造方法。
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