[第1の実施形態]
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。図1〜13、15は、本発明の第1の実施形態を示す図である。図1は、本実施形態に係る回転電機用ロータを含む回転電機の一部を示す概略断面図である。図1に示すように、回転電機10は、電動機または発電機として機能するものであり、図示しないケーシングに固定されたステータ12と、ステータ12と所定の空隙をあけて径方向内側に対向配置され、ステータ12に対し回転可能な回転電機用ロータ(以下、単に「ロータ」という。)14とを備える。なお、「径方向」とは、ロータ14の回転中心軸に対し直交する放射方向をいう(本明細書全体及び特許請求の範囲で、特に断らない限り「径方向」の意味は同じである。)。
ステータ12は、磁性材製のステータコア16と、ステータコア16に配設された複数相(例えばU相、V相、W相の3相)のステータコイル20u,20v,20wとを含む。ロータ14は、磁性材製のロータコア24と、ロータコア24の中心部に挿入して嵌合固定されたシャフト25と、ロータコア24の軸方向両側に配置された2つのエンドプレート26a,26bとを含む。また、ロータ14は、ロータコア24に配設された複数のロータコイルである、N極誘導コイル28n、S極誘導コイル28s、N極コモンコイル30n、及びS極コモンコイル30sと、N極誘導コイル28nに接続された第1ダイオード38と、S極誘導コイル28sに接続された第2ダイオード40とを含む。
まず、図2〜5を用いて回転電機10の基本構成を説明し、その後、ロータ14の詳細構造を説明する。図2は、本実施形態のロータを含む回転電機において、ロータ及びステータの周方向一部を示す概略断面図である。図3は、本実施形態のロータを含む回転電機において、ロータコイルに流れる誘導電流により生成される磁束がロータ中に流れる様子を示す模式図である。図4は、ロータコイルにダイオードを接続して示す、図3に対応する図である。
図2に示すように、ステータ12は、ステータコア16を含み、ステータコア16の内周面の周方向複数個所には、径方向内側へ(ロータ14へ向けて)突出する複数のティース18が配置されており、各ティース18間にスロット22が形成されている。ステータコア16は、けい素鋼板等の磁性を有する電磁鋼板のような金属板の積層体等の磁性材料により形成される。複数のティース18は、ロータ14の回転軸である回転中心軸周りの周方向に沿って互いに間隔をおいて配列されている。なお、「周方向」とは、ロータ14の回転中心軸を中心として描かれる円形に沿う方向をいう(本明細書全体及び特許請求の範囲で、特に断らない限り「周方向」の意味は同じである。)。
各相のステータコイル20u,20v,20wは、スロット22を通ってステータコア16のティース18に短節集中巻で巻装されている。このように、ティース18にステータコイル20u,20v,20wが巻装されることで磁極が構成される。そして、複数相のステータコイル20u,20v,20wに複数相の交流電流を流すことで、周方向に並べられたティース18が磁化し、周方向に回転する回転磁界をステータ12に生成することができる。なお、ステータコイル20u,20v,20wは、このようにステータ12のティース18に巻き回しする構成に限定するものではなく、例えばティース18から外れたステータコア16の環状部分の周方向複数個所に複数相のステータコイルを巻き回しするトロイダル巻きとし、ステータ12に回転磁界を生じさせることもできる。
ティース18に形成された回転磁界は、その先端面からロータ14に作用する。図2に示す例では、3相(U相、V相、W相)のステータコイル20u,20v,20wがそれぞれ巻装された3つのティース18により1つの極対が構成されている。
一方、ロータ14は、磁性材料製のロータコア24と、複数のロータコイルである、N極誘導コイル28n、N極コモンコイル30n、S極誘導コイル28s、及びS極コモンコイル30sとを含む。ロータコア24は、外周面の周方向複数個所に径方向外側に向けて(ステータ12に向けて)突出して設けられた複数の磁極部であり、主突極であり、かつ第2ティースであるN極形成突極32n及びS極形成突極32sを有する。N極形成突極32nとS極形成突極32sとは、ロータコア24の周方向に沿って交互に、かつ、互いに間隔をおいて配置されており、各突極32n、32sがステータ12と対向している。ロータコア24の環状部分であるロータヨーク33及び複数の突極32n、32sは、磁性材製の金属板を複数積層した積層体である複数のロータコア要素を環状に連結することにより、一体に設けられている。これについては、後で詳しく説明する。N極形成突極32nとS極形成突極32sとは、互いに同一の形状及び大きさを有する。
より詳しくは、ロータ14の周方向に関して1つおきのN極形成突極32nのそれぞれに、2つのN極ロータコイルである、N極コモンコイル30nとN極誘導コイル28nとが集中巻きで巻き回しされている。また、ロータ14において、N極形成突極32nと隣り合う別の突極であり、周方向1つおきのS極形成突極32sのそれぞれに、2つのS極ロータコイルである、S極コモンコイル30sとS極誘導コイル28sとが集中巻きで巻き回しされている。各コモンコイル30n、30sは内側コイルであり、各誘導コイル28n、28sは外側コイルである。
ロータ14は、周方向に隣り合う突極32n、32sの間に形成されたスロット34(図3)を有する。すなわち、ロータコア24には、複数のスロット34が、ロータ14の回転軸まわりの周方向に互いに間隔をおいて形成されている。また、ロータコア24は、回転軸であるシャフト25(図1)の径方向外側に嵌合固定されている。
各N極誘導コイル28nは、各N極形成突極32nにおいて、N極コモンコイル30nよりも先端側、すなわち、ステータ12に近い側に巻かれている。各S極誘導コイル28sは、各S極形成突極32sにおいて、S極コモンコイル30sよりも先端側、すなわち、ステータ12に近い側に巻かれている。なお、図3に示すように、各突極32n、32sの周囲に巻かれる誘導コイル28n、28s及び各コモンコイル30n、30sは、それぞれ突極32n(または32s)の周囲の長さ方向(図3の上下方向)に沿って設けられたソレノイドが、突極32n(または32s)の周方向(図3の左右方向)に複数層整列した整列巻きで配置されることもできる。なお、各突極32n、32sの先端側に巻かれる誘導コイル28n、28sは、突極32n、32sの周囲に複数回、すなわち複数ターン分、渦巻状に巻いた構成とすることもできる。
図4、図5に示すように、ロータ14の周方向に隣り合う2個の突極32n、32sを1組として、各組で1個のN極形成突極32nに巻かれたN極誘導コイル28nの一端と、別のS極形成突極32sに巻かれたS極誘導コイル28sの一端とを、2個の磁気特性調整部であり整流素子である第1ダイオード38及び第2ダイオード40を介して接続している。すなわち、図5は、本実施形態において、ロータ14(図2)の周方向に隣り合う2つの突極32n、32s(図2)に巻装した複数のコイル28n、28s、30n、30sの接続回路の等価回路を示す図である。図5に示すように、N極誘導コイル28n及びS極誘導コイル28sの一端は、互いに順方向が逆になる第1ダイオード38及び第2ダイオード40を介して、接続点Rで接続されている。
図4、図5に示すように、各組でN極形成突極32nに巻かれたN極コモンコイル30nの一端は、S極形成突極32sに巻かれたS極コモンコイル30sの一端に接続されている。N極コモンコイル30n及びS極コモンコイル30sは互いに直列に接続されることで、コモンコイル組36を形成している。さらに、N極コモンコイル30nの他端は接続点Rに接続され、S極コモンコイル30sの他端は、N極誘導コイル28n及びS極誘導コイル28sの接続点Rとは反対側の他端に接続されている。また、各誘導コイル28n、28s及び各コモンコイル30n,30sの巻回中心軸は、ロータ14(図2)の径方向と一致している。なお、各誘導コイル28n、28s及び各コモンコイル30n、30sは、対応する突極32n(または32s)に、樹脂等により造られる電気絶縁性を有するインシュレータ(図示せず)等を介して巻装されることもできる。
このような構成では、後述するように、N極誘導コイル28n、S極誘導コイル28s、N極コモンコイル30n及びS極コモンコイル30sに整流された電流が流れることで各突極32n、32sが磁化し、磁極部として機能する。図3に戻って、ステータコイル20u、20v、20wに交流電流を流すことで、ステータ12が回転磁界を生成するが、この回転磁界は、基本波成分の磁界だけでなく、基本波よりも高い次数の高調波成分の磁界を含んでいる。
より詳しくは、ステータ12に回転磁界を発生させる起磁力の分布は、各相のステータコイル20u、20v、20wの配置や、ティース18及びスロット22(図2)によるステータコア16の形状に起因して、(基本波のみの)正弦波分布にはならず、高調波成分を含むものとなる。特に、集中巻においては、各相のステータコイル20u、20v、20wが互いに重なり合わないため、ステータ12の起磁力分布に生じる高調波成分の振幅レベルが増大する。例えばステータコイル20u、20v、20wが3相集中巻の場合は、高調波成分として、入力電気周波数の時間的3次成分であり、空間的な2次成分の振幅レベルが増大する。このようにステータコイル20u、20v、20wの配置やステータコア16の形状に起因して起磁力に生じる高調波成分は空間高調波と呼ばれている。
ステータ12からロータ14に、この空間強調波成分を含む回転磁界が作用すると、空間高調波の磁束変動により、ロータ14の突極32n、32s間の空間に漏れ出す漏れ磁束の変動が発生し、これにより図3に示す各誘導コイル28n、28sの少なくともいずれかの誘導コイル28n、28sに誘導起電力が発生する。また、ステータ12から近い、突極32n、32sの先端側の誘導コイル28n、28sは、主に誘導電流を発生させる機能を有し、ステータ12から遠い、コモンコイル30n、30sは、主に突極32n、32sを磁化する機能を有する、すなわち電磁石として機能する。また、図5の等価回路から理解されるように、隣り合う突極32n、32s(図2〜図4)に巻装された誘導コイル28n、28sを流れる電流の合計がコモンコイル30n、30sにそれぞれ流れる電流となる。隣り合うコモンコイル30n、30s同士を直列に接続しているので、両方で巻き数を増加させたのと同じ効果を得られ、各突極32n、32sに流れる磁束を同じとしたままで各コモンコイル30n、30sに流す電流を低減できる。
各誘導コイル28n、28sに誘導起電力が発生すると、N極誘導コイル28n、S極誘導コイル28s、N極コモンコイル30n及びS極コモンコイル30sにダイオード38,40の整流方向に応じた直流電流が流れ、コモンコイル30n、30sが巻装された突極32n、32sが磁化することで、この突極32n、32sが磁極の固定された磁石である磁極部として機能する。図4に示す、周方向に隣り合うN極誘導コイル28n及びN極コモンコイル30nと、S極誘導コイル28s及びS極コモンコイル30sとで巻き方向が逆になっており、周方向に隣り合う突極32n、32s同士で磁化方向が逆になる。図示の例では、N極誘導コイル28n及びN極コモンコイル30nが巻装された突極32nの先端にN極が生成され、S極誘導コイル28s及びS極コモンコイル30sが巻装された突極32sの先端にS極が生成されるようにしている。このため、ロータ14の周方向においてN極とS極とが交互に配置される。すなわち、ロータ14は、ステータ12で生成される磁界に含まれる高調波成分が鎖交することにより、周方向にN極及びS極が交互に形成されるように構成される。
また、図2に示すように、ロータ14の周方向に関する各誘導コイル28n、28s及び各コモンコイル30n、30sの幅θは、ロータ14の電気角で180°に相当する幅よりも短く設定し、各誘導コイル28n、28s及び各コモンコイル30n、30sは、それぞれ突極32n、32sに短節巻きで巻装されている。より好ましくは、ロータ14の周方向に関する各誘導コイル28n、28s及び各コモンコイル30n、30sの幅θは、ロータ14の電気角で90°に相当する幅に等しく、あるいはほぼ等しくしている。ここでの各誘導コイル28n、28s及び各コモンコイル30n、30sの幅θについては、各誘導コイル28n、28s及び各コモンコイル30n、30sの断面積を考慮して、各誘導コイル28n、28s及び各コモンコイル30n、30sの断面の中心幅で表すことができる。すなわち、各誘導コイル28n、28s及び各コモンコイル30n、30sの内周面の幅と外周面の幅との平均値で各誘導コイル28n、28s及び各コモンコイル30n、30sの幅θを表すことができる。
また、本実施形態では、ロータ14は、周方向の複数個所に配置された突極32n、32sの周方向両側面から突出する補助突出部である補助突極42を含んでいる。補助突極42は、各突極32n、32sの周方向(図3、図4の左右方向)両側面において、軸方向(図3、図4の表裏方向)の複数個所から、周方向に対し傾斜した方向にそれぞれ突出する板状の磁性体である。例えば、図示の例では、補助突極42は、各突極32n、32sの周方向両側面の径方向中間部に、先端に向かうほどロータ14の径方向外側になるように周方向に対し傾斜している。複数の補助突極42は、突極32n、32sの周方向の両側面において、N極誘導コイル28nとN極コモンコイル30nとの間、及び、S極誘導コイル28sとS極コモンコイル30sとの間のそれぞれから突出している。すなわち補助突極42は、根元部において、対応する突極32n、32sに磁気的に接続されている。
また、同じスロット34内に配置され、互いに対向する別の突極32n、32sから突出する複数の補助突極42同士は、機械的に連結されている。一方、スロット34内で互いに対向する別の突極32n、32sから突出する複数の補助突極42同士は、磁気的に分断されることもできる。図3、図4では、互いに同じスロット34内に配置されるN極形成突極32nの補助突極42と、S極形成突極32sの補助突極42とが互いに磁気的に分断されることを模式的に示している。このような補助突極42は、突極32n、32sを含む補助突極42と同じ磁性材料により形成されている。
また、各突極32n(または32s)に巻かれた誘導コイル28n(または28s)とコモンコイル30n(または30s)とは、対応するスロット34内で補助突極42で仕切られて分離されている。同じ突極32n、32sに巻かれる誘導コイル28n、28sとコモンコイル30n、30sとは、ロータコア24の軸方向端面よりも外側に設けられる図示しない片側または両側のコイルエンド側等、補助突極42から外れた部分で互いに接続されている。後述する図8に示すように、各突極32n(32sも同様である)の先端部に周方向両側に突出し、誘導コイル28n、28sの抜け止めを図るための鍔部44を形成することもできる。なお、この鍔部44は省略することもできる。
このようなロータ14を含む回転電機10(図2)では、3相のステータコイル20u、20v、20wに3相の交流電流を流すことでティース18(図2)に形成された回転磁界(基本波成分)がロータ14に作用し、これに応じて、ロータ14の磁気抵抗が小さくなるように、突極32n、32sがティース18の回転磁界に吸引される。これによって、ロータ14にトルク(リラクタンストルク)が作用する。
また、ティース18に形成された空間高調波成分を含む回転磁界がロータ14の各誘導コイル28n、28sに鎖交すると、各誘導コイル28n、28sには、空間高調波成分に起因するロータ14の回転周波数(回転磁界の基本波成分)と異なる周波数の磁束変動によって、各誘導コイル28n、28sに誘導起電力が発生する。この誘導起電力の発生に伴って各誘導コイル28n、28sに流れる電流は、各ダイオード38,40により整流されることで一方向(直流)となる。そして、各ダイオード38,40で整流された直流電流が各誘導コイル28n、28s及び各コモンコイル30n、30sに流れるのに応じて各突極32n、32sが磁化することで、各突極32n、32sが磁極が(N極かS極のいずれか一方に)固定された磁石として機能する。前述のように、ダイオード38,40による誘導コイル28n、28sの電流の整流方向が互いに逆方向であるため、各突極32n、32sに生じる磁石は、周方向においてN極とS極が交互に配置されたものとなる。
しかも、図3に示すように、各突極32n、32sの周方向両側面に補助突極42が、先端に向かうほど径方向外側になるように周方向に対し傾斜する方向に形成されている。このため、例えば図3の破線矢印α、βで示す方向に、ステータ12からロータ14に、ステータ12の起磁力として、空間的2次の空間高調波の磁束であるq軸磁束が流れる場合を考えると、補助突極42により誘導コイル28n、28sに多くの磁束を鎖交させることができる。すなわち、ステータ12とロータ14とのある位相関係で、空間高調波のq軸磁束が、ステータ12の一部のティース18から一部の補助突極42を介して、突極32n、32sの一部へ多く誘導され、突極32n、32sの一部から別のティース18へ誘導される場合があり、誘導コイル28n、28sに多くの磁束を鎖交させることができる。また、q軸磁束の向き及び大きさは電気的1周期の中で変化するが、誘導コイル28n、28sに流れる磁束の最大量が多くなることで、誘導コイル28n、28sの鎖交磁束の変化を大きくできる。例えば、図3の破線矢印βで示すように、ステータ12のティース18からS極の補助突極42を介してS極形成突極32sにq軸磁束が流れようとする場合があり、S極形成突極32sをN極とする方向に磁束が流れようとする。この場合、これを妨げる方向にS極誘導コイル28sに誘導電流が流れようとし、その流れは第2ダイオード40(図4)で妨げられない。このため、図3に実線矢印で示すように、S極形成突極32sからロータコア24のロータヨーク33を介してN極形成突極32nに抜ける方向の磁束である、誘導電流による磁束が流れる。
また、これとは逆、すなわち、図3の破線矢印αと逆方向に、ステータ12のティース18からN極形成突極32nを介して補助突極42にq軸磁束が流れようとする場合があり、N極形成突極32nをS極とする方向に磁束が流れようとする。この場合、これを妨げる方向にN極誘導コイル28nに誘導電流が流れようとし、その流れは第1ダイオード38(図4)で妨げられることなく、N極形成突極32nをN極とする方向に電流を流す。この場合も、S極形成突極32sからロータヨーク33を介してN極形成突極32nに抜ける方向の、誘導電流による磁束が流れる。この結果、各突極32n、32sがN極またはS極に磁化する。上記のように各突極32n、32sの両側面から補助突極42が突出しているので、補助突極42がない、すなわち各スロット34内で周方向に隣り合う突極32n、32s同士の間に空間しかない場合に比べて、各誘導コイル28n、28sに鎖交する磁束の振幅の最大値を大きくできるので、鎖交磁束の変化を大きくできる。
そして、各突極32n、32s(磁極が固定された磁石)の磁界がステータ12により生成される回転磁界(基本波成分)と相互作用して、吸引及び反発作用が生じる。このステータ12により生成される回転磁界(基本波成分)と突極32n、32s(磁石)の磁界との電磁気相互作用(吸引及び反発作用)によっても、ロータ14にトルク(磁石トルクに相当するトルク)を作用させることができ、ロータ14がステータ12で生成される回転磁界(基本波成分)に同期して回転駆動する。このように回転電機10は、ステータコイル20u、20v、20wへの供給電力を利用してロータ14に動力(機械的動力)を発生させるモータとして機能させることができる。
なお、上記では、隣り合う2つの突極32n、32sを1組として、各組において、2つの突極32n、32sに巻かれた誘導コイル28n、28s同士を2つのダイオード38,40を介して接続する場合を説明した。このため、2つの突極32n、32sに対して2つのダイオード38,40が必要になる。これに対して、ロータ14の全部の突極32n、32sに巻かれた全部のコイル28n、28s、30n、30s同士を接続するとともに、ダイオード38,40として2つのみを使用することもできる。図6は、ロータコイルに接続するダイオードの数を少なくした別例を示す、図5に対応する図である。図6に示す別例では、上記の図3、図4等に示した構成において、ロータの周方向1つ置きの突極である全部のN極形成突極32n(図3参照)の先端側に巻装した複数のN極誘導コイル28n同士を直列に接続することでN極誘導コイル組Knを形成し、ロータのN極形成突極32nと隣り合う全部のS極形成突極32s(図3参照)の先端側に巻装した複数のS極誘導コイル28s同士を直列に接続することでS極誘導コイル組Ksを形成している。N極誘導コイル組Kn及びS極誘導コイル組Ksの一端は、互いに順方向が逆になる第1ダイオード38及び第2ダイオード40を介して、接続点Rで接続されている。
また、ロータの周方向に隣り合う2つのN極形成突極32n及びS極形成突極32s(図3参照)を1組とした場合に、各組においてN極コモンコイル30n及びS極コモンコイル30s同士を直列に接続することでコモンコイル組C1を形成するとともに、全部の突極32n、32sに関する全部のコモンコイル組C1同士を直列接続している。さらに、直列接続した複数のコモンコイル組C1のうち、一端となる1つのコモンコイル組C1のN極コモンコイル30nの一端を接続点Rに接続し、他端となる別のコモンコイル組C1のS極コモンコイル30sの一端を、N極誘導コイル組Kn及びS極誘導コイル組Ksの接続点Rとは反対側の他端に接続している。このような構成では、上記の図4、図5に示した構成と異なり、ロータに設けるダイオードの総数を第1ダイオード38及び第2ダイオード40の2つに減らすことができる。
以上が、本実施形態のロータ14を含む回転電機10の基本的構成とその作用であるが、本実施形態では、ロータ14として、周方向複数個所に配置された複数のロータコア要素を含む構成を採用し、さらにステータ12で発生した磁束の多くが通過する磁気経路での磁気抵抗を減少させ、回転電機10の性能向上を図るために、次の具体的構成を採用している。図7〜図13、図15を用いてロータ14の具体的構造を説明する。なお、図7〜図9、図13において、上記の図1〜6で示した要素と同一または対応する要素には同一の符号を付している。
図7は、図1のロータ14におけるA−A断面図である。図8は、図7のB部拡大図である。図9は、一部を省略して図7の矢印C方向に見た拡大図である。図10〜12は、ロータコアにおいて、図9の矢印D、E、F位置に配置された複数の金属板の周方向一部をそれぞれ示す図である。
図7に示すように、本実施形態のロータ14は、ロータコア24と、ロータコア24の中心部に嵌合固定されたシャフト25とを備える。シャフト25は、外周面の周方向複数個所に設けられ、径方向に突出する複数の外側凸部46を含んでいる。図8に示すように、各外側凸部46は、全体的に軸方向に対し直交する平面に関する断面形状が同一である軸方向に長い形状である。各外側凸部46は、周方向幅が小さいシャフト側根元部48と、シャフト側根元部48に接続され、シャフト側根元部48の周方向幅よりも大きくなった周方向幅を有するシャフト側先端部50とを含む。シャフト側先端部50は略楕円の断面形状を有する。シャフト側先端部50は、周方向の幅が最大となる最大幅部分52(図8)を有し、最大幅部分52の周方向の幅D1は、シャフト側根元部48の周方向の最大幅D2(図8)よりも大きくなっている。シャフト25は、けい素を含まない鉄鋼材料である無垢材等の剛性の高い材料により造られている。
図7に戻って、ロータコア24は、それぞれ複数ずつのロータコア要素である、第1コア要素54と第2コア要素56とを含む。ロータコア24は、第1コア要素54と第2コア要素56とを周方向に1つずつ交互に配置し、環状に連結することにより形成されている。各コア要素54,56は、複数の薄板の金属板を軸方向に積層することにより形成されている。すなわち、各コア要素54,56は、それぞれ複数ずつの異なる形状の第1金属板58及び第2金属板60を有する。各金属板58,60は、けい素鋼板のような電磁鋼板等の磁性を有する金属板である。第1金属板58は、図10、図12に示すように、シャフト25に対する結合側に設けられる第1ロータ側根元部62と、第1ロータ側根元部62の径方向外側に接続される第1ロータ側先端部64とを含む。第1ロータ側根元部62は、ロータヨーク33(図7)を形成し、第1ロータ側先端部64はN極形成突極32nまたはS極形成突極32s(図7)を形成する。
第1ロータ側根元部62は、基部66の周方向両側で径方向内側に突出する2つの脚部68を含む。2つの脚部68の間の内側面を含む、第1ロータ側根元部62の径方向内側面に内側凹部70が形成されている。内側凹部70の内側には、シャフト25に設けられた外側凸部46が軸方向に嵌合される。各内側凹部70は、各コア要素54,56の径方向内端に開口するように形成され、奥部に周方向幅が大きくなった幅広部72を有する。第1ロータ側根元部62の周方向両側面は、ロータ14の放射方向と一致する。第1ロータ側根元部62の周方向両側面において、内側凹部70の周方向幅が最大となる部分よりも径方向内側部分に半円部74が形成されている。
また、第1ロータ側先端部64は略矩形状の胴体部76と、胴体部76の周方向両側面から周方向に対し傾斜した方向に突出する傾斜突出部78とを有する。各傾斜突出部78は、上記の補助突極42(図2等)を形成する。各傾斜突出部78の先端部にピン孔85が軸方向に貫通して形成されている。各胴体部76の先端部の周方向両側面に、それぞれ鍔部44(図8)を形成するための周方向突出部80が形成されている。
このような第1金属板58は、図10〜12に示す第2金属板60に積層される。第2金属板60も第1金属板58と同様に、シャフト25に対する結合側に設けられる第2ロータ側根元部82と、第2ロータ側根元部82の径方向外側に接続される第2ロータ側先端部84とを含む。第2ロータ側根元部82は、上記の第1ロータ側根元部62と同じ形状を有し、2つの脚部68と内側凹部70とを有する。第2ロータ側先端部84は、第1金属板58の第1ロータ側先端部64(図10)と同様に、胴体部76を有するが、その周方向両側面には傾斜突出部78(図10)を形成していない。第2金属板60のそれ以外の形状及び大きさは第1金属板58と同様である。すなわち、第2金属板60も第1金属板58と同様に、第2ロータ側根元部82の周方向両側面に半円部74が形成され、先端側に周方向突出部80を有する。なお、鍔部44を省略する場合、周方向突出部80も省略される。各金属板58,60は、周方向中央に関して左右で対象形状である。また、第1金属板58と第2金属板60とは、例えば互いに同じ、またはほぼ同じ厚さを有する。
そして、図7に示すように、複数枚積層した第1金属板58に、複数枚積層した第2金属板60を積層し、これを繰り返すことでN極形成突極32nを含む第1コア要素54が形成されている。また、複数枚積層した第2金属板60に、複数枚積層した第1金属板58を積層し、これを繰り返すことでS極形成突極32sを含む第2コア要素56が形成されている。この場合、第1コア要素54と第2コア要素56とを、それぞれの傾斜突出部78の先端部を軸方向(図7の表裏方向)に見て一致するように配置した状態で、同じ種類の金属板58(または60)の軸方向の配置位置が、少なくとも一部で第1コア要素54と第2コア要素56とでずれるようにしている。このため、傾斜突出部78の軸方向位置は、第1コア要素54及び第2コア要素56同士でずれている。
さらに、図7に示すように、隣り合うコア要素54,56同士で傾斜突出部78の先端部を軸方向に見て一致させた状態で、互いの傾斜突出部78の先端部同士の間に軸方向の隙間が形成されるようにしている。このために、図9に示すように、第2金属板60の積層枚数は、第1金属板58の積層枚数よりも2枚だけ多くするか、または3枚以上多くしている。また、図8に示すように、第1コア要素54の傾斜突出部78よりも根元側にN極コモンコイル30nを巻き回しするとともに、第1コア要素54の傾斜突出部78よりも先端側にN極誘導コイル28nを巻き回ししている。また、第2コア要素56の傾斜突出部78よりも根元側にS極コモンコイル30sを巻き回しするとともに、第2コア要素56の傾斜突出部78よりも先端側にS極誘導コイル28sを巻き回ししている。
そして、図7に示すように、第1コア要素54と第2コア要素56とを周方向に交互に配置して、環状に突き合わせている。この場合、隣り合うコア要素54,56のロータ側根元部62,82の周方向側面同士が周方向に接している。また、図8、図9に示すように、周方向に隣り合う第1コア要素54の傾斜突出部78の先端部と第2コア要素56の傾斜突出部78の先端部とが、それぞれのピン孔85(図8)を軸方向に整合させる、すなわち軸方向に見て重畳させるように配置されている。
また、隣り合うコア要素54,56の互いの傾斜突出部78を軸方向に重畳させた部分で、互いに軸方向に整合する複数のピン孔85に連結ピン86が挿入されている。各連結ピン86のいずれかのコア要素54(または56)から外側に突出した一端部または両端部をかしめることで、連結ピン86の抜け止めを図ることもできる。各連結ピン86の一端部にのみかしめ部を形成する場合、各連結ピン86の他端部には予め直径が他の部分よりも大きくなった頭部を一体に形成して抜け止めを図れるようにする。この場合、各連結ピン86は、頭部と反対側を先にして対応する複数のピン孔85に挿入し、ロータコア24の軸方向端部から外側に突出した部分にかしめ部を形成する。各コア要素54,56は、連結ピン86により連結ピン86を中心とする揺動可能に連結されることもできる。なお、各連結ピン86は、圧入により対応するピン孔85に挿入されることもできる。
また、各コア要素54,56で積層した複数の金属板58,60の半円部74を互いに軸方向に整合させ、軸方向に長い半円筒部を形成するとともに、隣り合うコア要素54,56同士の根元部で互いに対向する半円筒部を対向させて略円筒のピン係合部87を形成している。すなわち、複数のコア要素54,56の周方向複数個所にピン係合部87が配置されている。各ピン係合部87にガタ減少ピン88を挿入可能としている。このようにしてロータコア24が形成される。各連結ピン86及び各ガタ減少ピン88は、ステンレス材等の非磁性材料により形成されることができる。
各コア要素54,56の胴体部76を積層した部分により、ロータコア24の周方向に交互に配置されるN極形成突極32nとS極形成突極32sとが形成される。また、ロータコア24の周方向複数個所で、複数の傾斜突出部78を積層した部分により複数の補助突極42が形成される。各コア要素54,56のロータ側根元部62,82を環状に突き合わせた部分により略環状のロータヨーク33が形成される。この状態で、ロータコア24は、軸方向に対し直交する断面で考えた場合に、軸方向の異なる位置に応じて、図10〜12の3つの異なる形状が形成される。図10〜12は、互いにロータコア24の周方向の同じ範囲を示している。例えば、図10の軸方向の1つの位置では、第1コア要素54に第1金属板58が配置され、第2コア要素56に第2金属板60が配置されている。図11の軸方向の別の位置では、第1コア要素54及び第2コア要素56の両方に第2金属板60が配置されている。図12の軸方向のさらに別の位置では、第1コア要素54に第2金属板60が配置され、第2コア要素56に第1金属板58が配置されている。すなわち、図9に矢印δ方向で示すように、ロータコア24を軸方向の片側から他側に向かって見た場合に、予め規定した複数枚の第1金属板58を積層した部分と複数の第2金属板60を積層した部分とが周方向(図9の左右方向)に隣り合い、その他側(図9の下側)に、1枚ずつの第2金属板60を周方向に隣り合うように配置したものをそれぞれ積層している。また、その他側に、予め規定した複数枚の第2金属板60を積層した部分と複数の第1金属板58を積層した部分とが周方向に隣り合うものを積層し、その他側に、1枚ずつの第2金属板60を周方向に隣り合うように配置したものを積層し、これを繰り返している。
なお、第1金属板58及び第2金属板60の配置関係及び積層枚数はこれに限定するものではない。例えば、各コア要素54,56で、第1金属板58の積層枚数と第2金属板60の積層枚数とを同じとし、第1金属板58の傾斜突出部78の先端部同士が軸方向に接触するようにすることもできる。この場合、各傾斜突出部78により補助突極42が形成される。
また、第1コア要素54で第1金属板58と第2金属板60とを1枚ずつ交互に配置し、周方向で第1金属板58同士が隣り合わないように、第2コア要素56で第1金属板58と第2金属板60とを1枚ずつ交互に配置することもできる。この場合、補助突極42となる各傾斜突出部78の先端部が、第1コア要素54と第2コア要素56とで軸方向の交互に配置される。
図8に示すように、ロータコア24の各スロット34内で誘導コイル28n、28s及びコモンコイル30n、30sを配置した空間には樹脂が充填されている。このため、各コイル28n、28s、30n、30sが固められるとともに、ロータコア24からの各コイル28n、28s、30n、30sの脱落が阻止される。また、ロータコア24の外周面にカーボンファイバーにより形成される線材を巻き付けることもできる。この構成によれば、各コイル28n、28s、30n、30sの脱落がより有効に阻止される。
このようなロータコア24を製造する場合、例えば次のように製造される。まず、複数の連結ピン86のうち、1つの連結ピン86だけを隣り合う2つのコア要素54,56から取り外し、他の連結ピン86により隣り合うコア要素54,56の補助突極42同士を連結ピン86を介して連結した状態で、各コア要素54,56を1列等に並べて各突極32n、32sの周囲に、対応する誘導コイル28n、28s及び対応するコモンコイル30n、30sを巻装する。例えば、各コモンコイル30n、30sは空芯の巻き状態としたものを、対応するコア要素54,56の根元側から胴体部76に向け嵌合させることもできる。次いで、各連結ピン86を中心に、隣り合うコア要素54,56同士を揺動させながら環状に配置して、ピン未挿入のピン孔85に連結ピン86を挿入する。これによって、ロータコア24が形成される。
また、図1に示すように、ロータ14は、ロータコア24の中心部に嵌合されたシャフト25と、シャフト25に固定された2つのエンドプレート26a、26bとを含む。この場合、図7に示すように、シャフト25の外周面の周方向複数個所に、上記で説明した外側凸部46が形成されている。各外側凸部46の軸方向長さは、例えばロータコア24の軸長とほぼ同じか、またはこの軸長よりも少し長くする。各外側凸部46は、各コア要素54,56の内側凹部70に軸方向に嵌合される。このため、シャフト25は、各外側側凸部46をロータコア24の各内側凹部70に軸方向に嵌合させるように、ロータコア24の内側に軸方向に嵌合されている。また、ロータコア24にシャフト25が嵌合された状態で、図8に示すように、隣り合うコア要素54,56の脚部68同士を押し広げるように、複数のピン係合部87に複数のガタ減少ピン88が軸方向に押し込まれる、すなわち挿入されている。
さらに、図1に示すように、ロータコア24の軸方向両側に配置されるように、2つのエンドプレート26a、26bがシャフト25の周囲に圧入等により嵌合固定され、さらに、ロータコア24の軸方向両端に突き当てられている。各エンドプレート26a、26bの軸方向片側に、各コイル28n、28s、30n、30sにおいて、ロータコア24の軸方向両端よりも外側に配置されるコイルエンドを避ける凹部90が形成されている。各エンドプレート26a、26bは非磁性材料で形成され、外周端部と内周端部との軸方向片側端部でロータコア24に突き当てられている。例えば、各エンドプレート26a、26bの外周部の軸方向端部は、各補助突極42の連結部の軸方向端部に突き当てられることもできる。この場合、各エンドプレート26a、26bの外周部の軸方向端部に、各連結ピン86の端部でロータコア24よりも軸方向に突出した部分を挿入保持する凹部が形成されることもできる。
また、2つのエンドプレート26a、26bの少なくとも一方のエンドプレート26a(または26b)に第1ダイオード38または第2ダイオード40またはその両方のダイオード38,40が保持されている。ただし、本実施形態は、このような構成に限定せず、各ダイオード38,40はシャフト25またはロータコア24に直接または間接に固定されていればよい。
このようにロータ14は、外周面に設けられた複数の外側凸部46を含むシャフト25と、複数の外側凸部46の一部の外側凸部46がそれぞれ軸方向に嵌合される内側凹部70を含む複数ずつの第1コア要素54及び第2コア要素56と、各コア要素54,56に巻き回しされる複数のコイル28n、28s、30n、30sとを含む。複数のコア要素54,56がシャフト25の外側の周方向複数個所に配置されることで、シャフト25に結合されたロータコア24が形成されている。また、周方向に隣り合うコア要素54,56同士は、シャフト25に対する結合側に設けられるロータ側根元部62,82で周方向に接している。
また、シャフト25の各外側凸部46は、先端部に周方向の幅が最大となる最大幅部分52(後述する図13の矢印D1で周方向幅を示す部分)が形成されている。また、隣り合う外側凸部46同士の間で、最大幅部分52よりも径方向内側に、隣り合う2つのコア要素54,56の根元側で先端部の周方向の合計幅が、隣り合う外側凸部46の先端部同士の間の周方向の最小幅よりも大きくなった脚部68が係止されている。隣り合うコア要素54,56間には有限な微小隙間であるギャップが形成され、少なくともガタ減少ピン88をその間に挿入しない状態で、隣り合うコア要素54,56間同士で圧縮応力及び引っ張り応力を発生させないようにしている。隣り合うコア要素54,56間にガタ減少ピン88を押し込んだ状態では、ガタ減少ピン88により隣り合うコア要素54,56間のガタと、シャフト25及びロータコア24の間のガタとを減少できる。
さらに、各ガタ減少ピン88は、シャフト25の各外側凸部46の最大幅部分52よりも径方向内側、すなわち後述する図13の破線Gよりも径方向内側であって、周方向に隣り合うコア要素54,56同士の間に配置されている。
また、各コア要素54,56は、周方向両側面から突出する補助突極42を有し、隣り合う複数のコア要素54,56の補助突極は先端部で互いに連結ピン86を介して連結されている。また、各コア要素54,56の周囲に、各補助突極42の径方向内側に配置されるように、複数のコイル28n、28s、30n、30sの一部であるコモンコイル30n、30sが巻き回しされている。
このようなロータ14によれば、周方向複数個所に配置された複数のコア要素54,56を含む構成で、ステータ12で発生した磁束の多くが通過する磁気経路がシャフト25を通過しないので、磁気経路での磁気抵抗を減少させることができ、回転電機10の性能向上を図れる。
これについて、図13を用いて説明する。図13は、本実施形態のロータにおいて、磁束の流れを示す、図8のG部拡大対応図である。図13に示すように、ロータ14を含む回転電機の使用状態で、1つの瞬間では、ステータ12(図1)からロータ14の1つの突極32s(図7)に磁束が入り、その磁束が別の突極32nに向け流れる場合がある。この場合、本実施形態では、図13の破線矢印のように、1つの突極32sを形成する1つのコア要素56から別の突極32nを形成する別のコア要素54に、シャフト25を通過することなく磁束の多くが磁気経路に沿って流れる。隣り合うコア要素54,56同士は、ロータ側根元部62,82で周方向に接触しているので、磁束の多くは、この接触部を介して流れる。このため、ロータコア24内を流れる磁束は、磁気経路に沿ってこの接触部に存在する微小な隙間であるギャップ(図13の一点鎖線Pで囲んだ部分)を1度だけ通過するのみである。しかも、隣り合うコア要素54,56同士は磁気抵抗の低い同じ磁性材料により形成でき、磁気経路の途中で磁束密度が過度に変化しないので、渦電流損失の低減を図れるとともに、磁気経路中で磁束が過度に減少しない。このため、ステータ12で発生した磁束の多くが通過する磁気経路がシャフト25を通過しないので、磁気経路での磁気抵抗を減少させることができ、回転電機の性能向上を図れる。
これに対して、図14は本発明から外れる比較例のロータ14aを示している。比較例のロータ14aでは、本実施形態のロータ14(図1等)において、シャフト25の外周面の周方向複数個所に軸方向に長い外側凹部92が形成されている。各外側凹部92は、奥部の周方向の幅が、開口部よりも大きくなっている。また、比較例のロータ14aでは、本実施形態のロータ14と同様に、シャフト25の外側にN極形成突極32nを有する第1コア要素54aと、S極形成突極32sを有する第2コア要素56aとが周方向の交互に配置され、各コア要素54a,56a同士が補助突極42の先端部で連結ピン86を介して互いに連結されている。
一方、比較例では、本実施形態と異なり、各コア要素54a,56aの根元側端部の径方向内端に、シャフト25の外側凹部92に軸方向に嵌合させる内側凸部94が形成されている。すなわち、比較例ではシャフト25とコア要素54a,56aとに設ける凹部及び凸部の関係が本実施形態と逆になっている。また、周方向に隣り合うコア要素54a,56a同士は、シャフト25結合側の根元部を含めて、周方向に接していない。各コア要素54a,56aの径方向内側面はシャフト25の外周面に接している。このような比較例で、図14に破線矢印で示すように、ステータで生成された磁束が1つの突極32sから別の突極32nに向け流れる場合を考える。この場合、磁束は、1つの突極32sからシャフト25に流れ、シャフト25から別の突極32nに流れる。このため、ロータ14で多くの磁束が通過する磁気経路は、図14の丸印γで囲んだギャップである、コア要素54a、56aとシャフト25との間の径方向のギャップを2度通過している。また、シャフト25は高剛性が要求されるので、シャフト25よりも高剛性が要求されないコア要素54a、56aと同じ磁性材料により形成することは困難であり、シャフト25とコア要素54a、56aとで磁束密度が大きく変化する。このため、渦電流損失が発生しやすい。したがって、磁気経路での磁気抵抗が増大し、損失が増大するのでロータ14aを含む回転電機の性能が低下する要因となる。本実施形態では、比較例と異なり、磁束の多くが通過する磁気経路がシャフト25を通過しないので、このような不都合をなくせる。
また、本実施形態では、特許文献3のロータの場合と異なり、隣り合うコア要素54,56同士で凸部と凹部とを係合させる必要がなくなり、小型化を図れる。
また、本実施形態では、ロータコア24は、複数のコア要素54,56を環状に連結することにより形成されているので、複数のコア要素54,56を環状に連結する前の段階で、各突極32n、32sに、対応するコイル28n、28s、30n、30sを容易に巻線することができ、しかもスロット34内でのコイル28n、28s、30n、30sの占積率、すなわち充填率の向上を図れる。
また、シャフト25の各外側凸部46は、先端部に周方向の幅が最大となる幅D1(図8)を有する最大幅部分52が形成されている。また、隣り合う外側凸部46同士の間で、最大幅部分52よりも径方向内側に、隣り合う2つのコア要素54,56の根元側で先端部の周方向の合計幅が、隣り合う外側凸部46の先端部同士の間の周方向の最小幅よりも大きくなった脚部68が係止されている。このため、ロータコア24に使用時に遠心力が作用するのにもかかわらず、シャフト25の径方向外側にロータコア24が抜け出ることを有効に防止できる。すなわち、外側凸部46は、ロータコア24を遠心力にかかわらずシャフト25に保持する機能を有する。
また、各ガタ減少ピン88は、シャフト25の各外側凸部46の周方向の幅が最大となる最大幅部分52よりも径方向内側であって、周方向に隣り合うコア要素54,56同士の間に配置されている。このため、各ガタ減少ピン88によりステータ12(図1)からロータ14に磁束が流れる磁気経路中での磁気抵抗が増大されるのを抑制でき、かつ、シャフト25とロータコア24との間の嵌合部のガタ詰めを図れる等、ガタを減少できる。しかもガタ減少ピン88を用いずにロータコア24にシャフト25を締まり嵌めで嵌合させる場合のように過大な応力がロータコア24に作用するのを防止でき、磁気経路中での磁気抵抗損失をより低減できる。また、使用時に各コア要素54,56に遠心力が作用することで、例えば図13のRで示す部分で外側凸部46と脚部68とが互いに押し付け合い、図13に実線矢印Qで示す方向に各コア要素54,56が変形しようとする。ただし、この変形方向にガタ減少ピン88が配置されているので、この変形を防止でき、各コア要素54,56の過度な応力の発生を抑制しつつ抜け止めを有効に図れる。過度な応力がコア要素54,56に作用しないことで、磁気経路での磁気抵抗を減少できる。
また、各補助突極42は、各コア要素54,56との接続側である根元側から先端に向かうに従って径方向外側になるように周方向に対し傾斜している。このため、各補助突極42を磁性材により形成していると、補助突極42の先端部の位置に応じてステータ12で発生する空間高調波の必要な磁束成分を効率よく補助突極42からN極形成突極32nまたはS極形成突極32sに誘導して、補助突極42よりも径方向外側に配置された誘導コイル28n、28sに効率よく多くの磁束を鎖交させ、回転電機10のトルク及び効率を向上させることができる。
また、図9に示したように、スロット34内で隣り合うコア要素54,56同士で、各補助突極42の先端部同士の間に軸方向の隙間を形成すれば、各補助突極42を介して隣り合う突極32n、32s同士の間で、それぞれの補助突極42とロータヨーク33(図7)とを介して、回転電機10のトルクに寄与しない磁束がループするループ経路が形成されるのを防止できる。このため、ステータ12から出る多くの磁束をロータ14を通ってステータ12に戻すことができ、トルクの向上を図れる。
なお、このような補助突極42の代わりに、各コア要素54,56の周方向側面から樹脂または非磁性の金属である非磁性材料製の補助突出部を突出させることもできる。この場合でも、各スロット34内で連結した隣り合う補助突出部の内側にコモンコイル30n、30sを配置でき、コモンコイル30n、30sの脱落をより有効に防止できる。この場合、複数のコア要素54,56に巻き回しされるすべてのコイルを、対応する補助突出部の径方向内側に配置することもできる。例えば、少なくとも隣り合うN極形成突極32nとS極形成突極32sとに巻き回しされるコイル同士を電気的に分断させ、N極形成突極32nとS極形成突極32sとに巻き回しされるコイル同士で、別のダイオードを接続することもできる。
なお、各外側凸部46の根元部の周方向の最大幅D2(図8)を、隣り合う外側凸部46の先端部間に配置される2つのコア要素54,56の周方向のそれぞれの最小幅D3(図8)よりも小さくすることもできる。このような構成では、強度が相対的に低い金属板で脚部68の周方向幅を大きくできる一方、強度を確保しつつ、強度が相対的に高いシャフト25の外側凸部46の周方向幅を小さくできる。このため、ロータ14の小型化を図りつつ、磁気経路となるコア要素54,56の互いに接する部分の磁気経路の幅を大きくでき、磁気抵抗を大きくすることなく、各構成部材の強度確保を図れる。
図15〜17は、本実施形態のロータ14を用いて応力、磁束密度及び磁束流れをそれぞれ解析した結果を示す図である。図15は、ロータ14の回転時に作用する圧縮応力の分布を、ロータ14の周方向一部で示す図である。図15で黒地で示した部分Aは、圧縮応力が最大となる部分であり、斜線の間隔が狭い部分B、斜線の間隔が広い部分C、砂地で示した部分D、白地で示した部分Eの順に、圧縮応力が低くなっている。また、矢印ηで磁束の流れを示している。図15から明らかなように、高い応力はシャフト25に発生し、ロータコア24の各コア要素54,56内で磁束が通過する磁気経路において、磁化特性を悪化させる要因となる、応力の過度に高い部分は発生していない。また、遠心力に対して各コア要素54,56の根元部でも過大な応力を発生させることがなく、しかも、シャフト25にロータコア24及び各コイルを保持できる。
図16は、ステータからロータ中に磁束を流す場合において、図13に対応するロータの磁束密度コンター(等高線表示)を示す図である。図16で黒地で示した部分Aは最も磁束密度が低い部分であり、斜線の間隔が狭い部分B、斜線の間隔が広い部分C、砂地で示した部分D、白地で示した部分Eの順に、磁束密度が高くなっている。なお、図16では、ガタ減少ピン88を非磁性材により形成している(後述する図17の場合も同様である)。上記の図13を参照しつつ図16を見れば明らかなように、ロータ14中の磁束密度は磁気経路中で大きく変化することなく、しかも磁束密度が過度に低くならない。
図17は、ステータからロータ中に磁束を流す場合のロータの周方向一部の磁束流れの解析結果を示す図である。図17では、矢印により磁束の流れ方向を簡略化して示している。また、図17の解析結果では、ロータコア24中で磁束は、シャフト25の外側凸部46の最大幅部分よりも径方向外側に多く流れている。この解析結果から明らかなように、ロータ14を流れる磁束の多くはシャフト25を通過することがない。また、ガタ減少ピン88を非磁性材により形成することで、ガタ減少ピン88に磁束が通過せず、渦電流損失等の損失を増加させることがない。
なお、上記の実施形態では、シャフト25の外側凸部46の先端部と各コア要素54,56の内側凹部70の奥部との断面形状が略楕円である場合を説明したが、本発明はこれに限定するものではない。例えば、外側凸部46の先端部と各内側凹部70の奥部との断面形状として、略円形、略三角形、略矩形、略菱形等、種々の形状を採用できる。
[第2の実施形態]
図18は、本発明の第2の実施形態のロータを構成するロータコア24を示す斜視図である。図19は、図18のロータコア24の軸方向一部を構成する複数の第1金属板96を示す図である。図20は、図18のロータコア24の軸方向一部を構成する複数の第2金属板60を示す図である。図21は、図18のロータコア24の軸方向一部を構成する複数の第3金属板98を示す図である。
図18に示すように、本実施形態のロータを構成するロータコア24では、上記の第1の実施形態で使用していた、両側に傾斜突出部78を有する第1金属板58(図8、図10等参照)を使用していない。すなわち、ロータコア24は、図19に示す複数の第1金属板96と、図20に示す複数の第2金属板60と、図21に示す複数の第3金属板98とにより形成されている。図19の第1金属板96は、上記の第1金属板58において、胴体部76の周方向片側面のみから傾斜突出部78を突出させている。図21の第3金属板98は、上記の第1金属板58において、胴体部76の周方向他側面のみから傾斜突出部78を突出させている。これに対して、図20の第2金属板60は、上記の第1の実施形態で使用していた第2金属板60と同様の形状を有する。
図18のロータコア24は、それぞれ複数ずつのロータコア要素である、第1コア要素54と第2コア要素56とを含む。ロータコア24は、N極形成突極32nを有する第1コア要素54と、S極形成突極32sを有する第2コア要素56とを周方向に1つずつ交互に配置し、環状に連結することにより形成されている。各コア要素54,56は、第1金属板96と第2金属板60と第3金属板98とを1枚ずつ順に積層しそれを繰り返すか、または複数枚の第1金属板96と1枚の第2金属板60と複数枚の第3金属板98とを順に積層しそれを繰り返すことにより形成されている。この場合、各コア要素54,56での軸方向同位置に配置される金属板96,60,98は、各コア要素54,56同士で同種類としている。そして各金属板96,60,98の積層体を環状に並べて、隣り合う積層体のロータ側根元部100の周方向側面同士を周方向に接触させている。また、各スロット34(図18)内に配置される隣り合うコア要素54,56の傾斜突出部78の先端部を軸方向に見て重畳させるように配置し、互いのピン孔85を整合させている。これにより、ロータコア24が形成される。ロータコア24では、周方向の交互に第1コア要素54と第2コア要素56とが配置されている。
図示しないロータでは、第1コア要素54にN極誘導コイル28nとN極コモンコイル30n(図8等参照)とが巻き回しされ、第2コア要素56にS極誘導コイル28sとS極コモンコイル30s(図8等参照)とが巻き回しされている。隣り合う第1コア要素54及び第2コア要素56の互いに整合させたピン孔85に連結ピン86(図8等参照)が挿入されている。また、シャフト25(図8等参照)の外側凸部46を各コア要素54,56の内側凹部70に軸方向に嵌合させるように、ロータコア24にシャフト25が嵌合されている。この状態で、隣り合うコア要素54,56同士のロータ側根元部100の周方向側面の半円部74により形成される略円筒状のピン係合部87に、ガタ減少ピン88(図8等参照)がそれぞれの脚部68を押し広げるように、軸方向に挿入されている。
このようなロータの場合も、周方向複数個所に配置された複数のコア要素54,56を含む構成で、ステータ12(図1等参照)で発生した磁束の多くが通過する磁気経路がシャフト25を通過しないので、磁気経路での磁気抵抗を減少させることができ、回転電機の性能向上を図れる。その他の構成及び作用は、上記の第1の実施形態と同様である。
なお、本実施形態において、第1金属板96と第3金属板98とを同じ形状の1種類の金属板により形成し、表裏を逆にして第1金属板96と第3金属板98とに区別することもできる。また、ロータコア24において、第2金属板60を省略することもできる。例えば、第1金属板96と第3金属板98とを1枚ずつまたは複数枚ずつ交互に積層することで複数の積層体を形成し、複数の積層体を環状に連結することでロータコアを形成することもできる。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。