JP2013107433A - 車両用ドアパネルの補強構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両の重量増加や製造コストの高騰等を殆ど招かずにドアのアウターパネルの面剛性の向上を図ることができる補強構造を提供する。
【解決手段】車両用ドアパネルの補強構造4は、ドアハンドル装置5、補強部材取り付け部6b、及び補強部材7を備える。ドアハンドル装置5は、ハンドル基体8及びハンドルレバー9を有する。ハンドル基体8は、車両1のボディ3に開閉自在に取り付けられたドア2のアウターパネル2aに設けられている。ハンドルレバー9は、ハンドル基体8に回動自在に取り付けられている。補強部材取り付け部6bは、基体8に取り付けられ、アウターパネル2aの外側に露出した基体8の周縁部8aの周囲に位置するアウターパネル2aに内面15側から対向する。補強部材7は、補強部材取り付け部6bに直接又は間接的に取り付けられてアウターパネル2aの内面15に当接する。
【選択図】図5

Description

本願発明は、例えば自動車などの車両のドアパネルの補強構造に係り、特にアウトサイドドアハンドル周辺のアウターパネルの面剛性の向上を図ることができる車両用ドアパネルの補強構造に関する。
例えば自動車などの車両においては、ドアを閉める際に、ドアのアウターパネルに取り付けられたアウトサイドドアハンドルの周辺部に対して外側から手を掛けて押すことが多い。この際、アウターパネルに面剛性が足りないと、押す力に耐え切れずにアウターパネルが一旦撓んで凹んだ後、再び元の形状に復元する、いわゆるベカつきが発生し易くなる。ベカつきは、剛性感が感じられず、商品性が低下する。また、ベカつきが発生すると、その凹んだ跡が塗装面に残ることがある。ベカつきの跡はアウターパネルの質感や美観を損ね、ひいては自動車全体の質感や美観を損ねる。これらの結果、自動車そのものの商品価値が著しく低下してしまう。ベカつきの発生を防ぐためには、例えばアウターパネルの面剛性を向上させる必要がある。
これまでには、例えば本願の図7に示すように、リンフォース101と呼ばれる補強部材を用いて車両用ドア102のアウターパネル103の面剛性を向上させる技術があった。この技術では、アウターパネル103の内側において、アウトサイドドアハンドル104の周辺部に別部品であるリンフォース101を取り付ける。そして、このリンフォース101をアウターパネル103の内面に当接させて、アウターパネル103の面剛性を部分的に向上させる。なお、これと同様に、アウトサイドドアハンドルの周辺部に別部品の補強部材等を取り付けて車両用ドアのアウターパネルの面剛性を部分的に向上させる技術が、例えば下記の特許文献1〜4に開示されている。
先ず、特許文献1に開示されている考案においては、例えばその第1図に示すように、ドア12のアウタパネル10の回動端側上部にドアハンドル13の取り付け穴14が形成されている。それとともに、アウタパネル10には、取り付け穴14の上方に位置してハンドル上方外壁部Aが形成されている。そして、ハンドル上方外壁部Aの内壁面に対して、取り付け穴14の上縁部101に上端が溶接された補強板19の中央部分が、接合材層20を介して接合されている。補強板19が前述したリンフォース101に相当する。
また、特許文献2に開示されている考案においては、例えばその第1図及び第5図に示すように、ドアアウターパネル1のアウターハンドル2の取付部位の周辺裏側に、板金製の補強板7を添設している。補強板7が前述したリンフォース101に相当する。
また、特許文献3に開示されている発明においては、例えばその図3に示すように、自動車用ドア2を構成するドアアウターパネル11に、ドアアウトサイドハンドル4の取付部を設ける。それとともに、この取付部の上部に位置するドアアウターパネル11の裏面に補強用シート12を貼着して、自動車用ドア2の補強構造を構成する。そして、ドアアウターパネル11のベルトライン部8の裏面にアウターリンフォース13を配設する。それとともに、アウターリンフォース13の下部をドアアウトサイドハンドル4の取付部の上端まで延設して、補強シート12に固着している。若しくは、前述した自動車用ドア2の補強構造において、補強用シート12として熱硬化性シートを用いる。そして、熱硬化性シート12の室内側の面に熱硬化性シーラー25を設ける一方、ドアアウターパネル11のベルトライン部8の裏面にアウターリンフォース13を配設する。それとともに、アウターリンフォース13の下部をドアアウトサイドハンドル4の取付部の上端まで延設して、熱硬化性シーラー25に固着している。アウターリンフォース13が前述したリンフォース101に相当する。
さらに、特許文献4に開示されている発明においては、例えばその図1及び図2に示すように、ドアハンドル1の取付構造がエスカッション13と操作レバー14とを有している。エスカッション13には、ドアのアウターパネル11に開設された取付穴12に装着された状態で、取付穴12の開口縁部に車室外O方向より当接するフランジ16が周縁に形成されている。操作レバー14は、エスカッション13を挿通して車室外Oへ露出し、ドア開放時に上方へ傾動操作される。また、取付穴12の開口縁部には、車室内I側へ後退しエスカッション13のフランジ16が配置される段差面31を形成する。また、取付穴12の開口縁より内側へ延出した複数の取付部32,33,34には、エスカッション13より延出したボルト35を挿通する挿通穴36を設ける。
その一方で、各取付部32〜34より車室内I側に配置される金属製のブラケット37に、固定面42と、左対面部43及び右対面部44と、左湾曲部45と、右湾曲部46とを設ける。固定面42は、ボルト35によって各取付部32〜34に共締めされる、上方へ開口したコ字状に形成されている。左対面部43及び右対面部44は、固定面42の左側部及び右側部に設けられ、段差面31より外側の外周領域にてアウターパネル11に対面するように上下に延在されている。左湾曲部45は、左対面部43の上端部より右対向面44側へ向けて湾曲されている。右湾曲部46は、右対面部44の上端部より左対向面43側へ向けて湾曲されている。さらに、段差面31より上方側に位置した左対面部43及び右対面部44の各湾曲部45,46と、段差面31より下方側に位置した左対面部43及び右対面部44の下部と、に緩衝材51,52,53,54を部分的に設ける。そして、両対面部43,44の上下部を、各緩衝材51〜54を介して部分的にアウターパネル11の裏面に当接させている。金属製ブラケット37が前述したリンフォース101に相当する。
このように、ドアハンドル装置に別部品であるリンフォース若しくはリンフォースに相当する補強部材を取り付けてドアのアウターパネルの面剛性を向上させる工夫は、従来から多数なされている。しかし、ドアハンドル装置にリンフォース等を取り付けてアウターパネルの面剛性を上げるためには、例えばドアのインナーパネルにリンフォース等を溶接する必要が生じる。このため、リンフォース等の比較的大掛かりな補強部材を用いる場合には、ドアの内部における取り付け構造を予め考慮して設計する必要がある。このように、リンフォース等を用いる場合には、構造上の制約が大きく、リンフォース等を取り付けることができない場合が多い。また、部品が著しく大型化したり、部品数が著しく増加したりし易く、車両の重量増加につながる。さらには、生産現場における組み付け工数の増加や、これに伴う製造コストの高騰や生産効率の低下等々につながる。ひいては、車両の単体価格を高騰させる大きな原因となる。
また、例えば本願の図8に示すように、車両用ドア201のアウターパネル202に剛性向上材203を貼り付けて、アウターパネル202の面剛性を部分的に向上させる技術もある。剛性向上材203は、アウターパネル202の外側表面のうちアウトサイドドアハンドル204周辺の人間が手を掛けて押すことが多い領域205に対向して、アウターパネル202の内面上に貼り付けられる。しかし、剛性向上材203は一般的に非常に高価である。また、剛性向上材203は熱硬化性樹脂から成るもの多く、熱硬化する際に収縮し易い。剛性向上材203が収縮すると、剛性向上材203が張り付けられたアウターパネル202の表面が凹み易い。すなわち、アウターパネル202の外観に、一般にヒケと呼ばれる、部材の熱収縮による不良が発生し易い。このヒケも、前述したベカつきと同様にアウターパネルの質感や美観を損ねる。このヒケの問題は、熱硬化性シート12を用いる特許文献3の発明においても同様に発生するおそれが高い。
さらに、例えば本願の図9(a),(b),(c)に示すように、車両用ドア301のインナーパネル302の一部を補強用のステー303として用いる技術もある。この技術においては、インナーパネル302の一部をアウトサイドドアハンドル304周辺まで延ばす。それとともに、延ばされたインナーパネル302のアウトサイドドアハンドル304側の先端部に緩衝材306を取り付ける。そして、補強用ステー303としてのインナーパネル302の延ばされた部分を、緩衝材306を介してアウターパネル305の内面に間接的に当接させる。これにより、アウターパネル305の面剛性を部分的に向上させる。しかし、この補強用ステー303によりアウターパネル305を内側から支える構造は、インナーパネル302からアウターパネル305付近までステー303を延ばす必要がある。このため、車両用ドア301を含めた車両全体の重量増加が顕著である。また、車両用ドア301の限られた内部空間においては、ステー303以外の他の部品の取り付けや成形に関する構成及び構造上の様々な制限があるため、ステー303を設けることができない場合も多い。
実開平4−45121号公報 実開平2−69523号公報 特開平11−180144号公報 特許第3493598号公報
前述したように、これまでの車両用ドアのアウターパネルの面剛性を向上させる技術は、構成及び構造上の制約が多く汎用性が低いため、ドアや車両の種類によっては適用することができない場合があった。また、部品が著しく大型化したり、部品数が著しく増加したりする傾向があり、車両の重量増加につながり易かった。車両の重量増加は、燃費低下の大きな要因となる。それとともに、部品の大型化や部品数の増加は、生産現場における組み付け工数の増加や、これに伴う製造コストの高騰や生産効率の低下等々につながる。ひいては、車両の単体価格を高騰させる大きな要因となる。これらは、ベカつきやヒケ等の不良と同様に、最終生産品としての自動車そのものの商品価値を損ねて、市場における競争力を低下させてしまう。
本願発明は、以上説明した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、外観を損なうおそれが殆どなく、汎用性が高く、且つ、著しい車両の重量増加、製造コストの高騰、及び生産効率の低下を殆ど招くことなく、アウトサイドドアハンドル周辺のアウターパネルの面剛性の向上を図ることができる車両用ドアパネルの補強構造を提供することにある。
前記課題を解決して目的を達成するために、本願の請求項1に係る車両用ドアパネルの補強構造は、車両のボディに開閉自在に取り付けられたドアのアウターパネルに設けられたハンドル基体、及び該ハンドル基体に回動自在に取り付けられたハンドルレバーを有するドアハンドル装置と、前記ハンドル基体に取り付けられ、前記アウターパネルの外側に露出した前記ハンドル基体の周縁部の周囲に位置する前記アウターパネルに内面側から対向する補強部材取り付け部と、該補強部材取り付け部に直接又は間接的に取り付けられて前記アウターパネルの内面に当接する補強部材と、を具備することを特徴とするものである。
このような構成からなる本願請求項1に係る車両用ドアパネルの補強構造においては、既存品であるドアハンドル装置に補強部材を直接又は間接的に取り付けるだけで、アウトサイドドアハンドル周辺のアウターパネルの面剛性の向上を図ることができる。このため、ドアハンドル装置が設けられている車両であれば、その大きさや形状及び車種等に殆ど依存することなく広範囲に適用することができる。また、リンフォースのようなドアハンドル装置とは別部品の大掛かりな装置等を新たに設ける必要もない。さらに、熱硬化性シートのようなアウターパネルの変形を引き起こすおそれの高い部材を用いる必要もない。
また、前記課題を解決して目的を達成するために、本願の請求項2に係る車両用ドアパネルの補強構造は、請求項1に記載の車両用ドアパネルの補強構造において、前記補強部材取り付け部は、前記ハンドルレバーの回動操作により生じる駆動力を前記ドアの開扉操作に供する動力伝達装置を支持する支持具を兼ねることを特徴とするものである。
このような構成からなる本願請求項2に係る車両用ドアパネルの補強構造においては、補強部材取り付け部が、動力伝達装置を支持する支持具を兼ねている。このため、既存品であるドアハンドル装置を利用するだけでよいので、別部品等の余分な構成部品を用いる必要がない。また、補強部材取り付け部はそれ自体の強度が予め高く設定されており、補強機能が高い。
また、前記課題を解決して目的を達成するために、本願の請求項3に係る車両用ドアパネルの補強構造は、請求項1又は2に記載の車両用ドアパネルの補強構造において、前記補強部材取り付け部に、前記補強部材取り付け部と前記アウターパネルの内面との間隔を狭める補助ブラケットを設けるとともに、該補助ブラケットに前記補強部材を取り付けることにより前記補助ブラケットを介して前記補強部材を前記補強部材取り付け部に取り付けることを特徴とするものである。
このような構成からなる本願請求項3に係る車両用ドアパネルの補強構造においては、補強部材取り付け部とアウターパネルの内面との間隔を狭める補助ブラケットに補強部材が取り付けられる。このため、補助ブラケットの大きさや形状等をドアの内部構造等に応じて適宜、適正に設定することにより、様々な種類のドアや車両に適用範囲を広げることができる。また、補助ブラケットによって、補強部材取り付け部とアウターパネルの内面(裏面)との間隔を補強部材に適した間隔に設定することができる。これにより、異なる車両やドアに共通のドアハンドル装置を利用して本願発明に係る車両用ドアパネルの補強構造を達成することができる。
また、前記課題を解決して目的を達成するために、本願の請求項4に係る車両用ドアパネルの補強構造は、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の車両用ドアパネルの補強構造において、前記補強部材取り付け部は、前記ハンドル基体から前記ドアの上方に向けて延設されて前記ハンドル基体よりも上側の前記アウターパネルの内面に対向することを特徴とするものである。
このような構成からなる本願請求項4に係る車両用ドアパネルの補強構造においては、車両用のドアを閉じる際に使用者が手を掛けて押すことが多い場所であるハンドル基体の上側に、補強部材取り付け部が配置されている。このため、アウターパネルの凹み易い箇所を効率良く補強することができる。
さらに、前記課題を解決して目的を達成するために、本願の請求項5に係る車両用ドアパネルの補強構造は、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の車両用ドアパネルの補強構造において、前記補強部材は緩衝材であることを特徴とするものである。
このような構成からなる本願請求項5に係る車両用ドアパネルの補強構造においては、一般的な緩衝材を用いてアウターパネルを補強することができる。
前述したように、本願請求項1に係る発明においては、既存のドアハンドル装置が設けられている車両であれば、その大きさや形状及び車種等に殆ど依存することなく広範囲に適用することができる。また、リンフォースのようなドアハンドル装置とは別部品の大掛かりな装置等を新たに設ける必要もない。さらに、熱硬化性シートのようなアウターパネルの変形を引き起こすおそれの高い部材を用いる必要もない。したがって、本願請求項1に係る発明によれば、外観を損なうおそれが殆どなく、汎用性が高く、且つ、著しい車両の重量増加、製造コストの高騰、及び生産効率の低下を殆ど招くことなく、アウトサイドドアハンドル周辺のアウターパネルの面剛性の向上を図ることができる車両用ドアパネルの補強構造を提供することができる。
また、本願請求項2に係る発明においては、既存品であるドアハンドル装置を利用するだけでよいので、別部品等の余分な構成部品を用いる必要がない。また、補強部材取り付け部自体の強度が予め高く設定されており、補強機能が高い。したがって、本願請求項2に係る発明によれば、外観を損なうおそれが殆どなく、汎用性が高く、且つ、著しい車両の重量増加、製造コストの高騰、及び生産効率の低下を殆ど招くことなく、アウトサイドドアハンドル周辺のアウターパネルの面剛性の向上を、より効率良く図ることができる車両用ドアパネルの補強構造を提供することができる。
また、本願請求項3に係る発明においては、本願発明に係る車両用ドアパネルの補強構造の適用範囲を広げることができる。したがって、本願請求項3に係る発明によれば、外観を損なうおそれが殆どなく、汎用性がより高く、且つ、著しい車両の重量増加、製造コストの高騰、及び生産効率の低下を殆ど招くことなく、アウトサイドドアハンドル周辺のアウターパネルの面剛性の向上を、より効率良く図ることができる車両用ドアパネルの補強構造を提供することができる。
また、本願請求項4に係る発明においては、アウターパネルの凹み易い箇所を効率良く補強することができる。したがって、本願請求項4に係る発明によれば、外観を損なうおそれが殆どなく、汎用性が高く、且つ、著しい車両の重量増加、製造コストの高騰、及び生産効率の低下を殆ど招くことなく、アウトサイドドアハンドル周辺のアウターパネルの面剛性の向上を、より効率良く図ることができる車両用ドアパネルの補強構造を提供することができる。
さらに、本願請求項5に係る発明においては、一般的な緩衝材を用いてアウターパネルを補強することができる。したがって、本願請求項5に係る発明によれば、外観を損なうおそれが殆どなく、汎用性がより高く、且つ、著しい車両の重量増加、製造コストの高騰、及び生産効率の低下を殆ど招くことなく、アウトサイドドアハンドル周辺のアウターパネルの面剛性の向上を図ることができる車両用ドアパネルの補強構造を提供することができる。
本願発明の第1の実施の形態に係る自動車のバックドア周辺全体を示す斜視図である。 図1中バックドアを拡大して示す斜視図である。 本願発明の第1の実施の形態に係るアウトサイドドアハンドル装置の主要部の構造及び取り付け箇所を示す斜視図である。 図3のアウトサイドドアハンドル装置の構造の一部を拡大して示す斜視図である。 図4中破断線A−A’に沿って示す断面図である。 本願発明の第2の実施の形態に係る自動車のアウトサイドドアハンドル装置の周辺の構造を示し、(a)は装置の構成部品の一部を分解して示す斜視図であり、(b)は(a)において分解された装置の構成部品を組み立てた状態を示す斜視図である。 第1の従来例に係る自動車のバックドアのアウトサイドドアハンドル装置の付近を破断して示す斜視図である。 第2の従来例に係る自動車のバックドアを示す斜視図である。 第3の従来例に係る自動車のバックドアの構成部品を示し、(a)はバックドア全体を示す斜視図であり、(b)は(a)のアウトサイドドアハンドル装置の付近のアウターパネルを不図示にして矢印Z方向から臨んで示す正面図であり、(c)は(b)中破断線X−X’に沿って示す断面図である。
以下、図1〜図6を参照して、本願発明に係る車両用ドアパネルの補強構造について説明する。なお、以下の説明においては、便宜上、図1中矢印を用いて示すように、前後左右上下の各方向を、車両として一般的な自動車1の前後左右上下の各方向に合わせることとする。したがって、本願の明細書及び図面等において前後、左右、及び上下の各方向は、それぞれ自動車1の長さ、幅、及び高さの各方向でもある。また、以下の説明においては、図1〜図3に示すように、自動車1が備える複数枚のドアのうちボディ3の後部に設けられたバックドア2に、本願発明に係る車両用ドアパネルの補強構造4を適用することとする。
[第1の実施の形態]
先ず、本願発明の第1の実施の形態に係る車両用ドアパネルの補強構造4について、図1〜図5を参照しつつ説明する。この第1実施形態に係る車両用ドアパネルの補強構造4は、図3及び図5に示すように、ドアハンドル装置5、補強部材取り付け部6b、及び補強部材7を備えている。ドアハンドル装置5は、図1〜図3及び図5に示すように、ハンドル基体8及びハンドルレバー9を有している。このドアハンドル装置5は、バックドア2のアウターパネル2aから外側に露出して設けられることから、アウトサイドドアハンドル装置とも称される。
ハンドル基体8は、図1〜図3及び図5に示すように、自動車1のボディ3に開閉自在に取り付けられたバックドア2のアウターパネル2aに設けられている。バックドア2は、ボディ3の上部に設けられている図示しないヒンジの車両の左右方向に沿った軸を回動の中心として上下方向に回動する。バックドア2には、図1〜図3に示すように、その上部にリヤガラス10が取り付けられている。そして、バックドア2は、その下部をアウターパネル2aによって外側から覆われている。アウターパネル2aの上部には、リヤワイパー11が回動自在に取り付けられている。リヤワイパー11は、リヤガラス10の直ぐ下側において、アウターパネル2aの左右方向の略中央部に取り付けられている。
ハンドル基体8は、図1〜図3に示すように、リヤワイパー11から間隔を空けられてリヤワイパー11の下側に設けられている。より具体的には、ハンドル基体8は、バックドア2の下部となるアウターパネル2aの上下方向及び左右方向の両方向の中央部に設けられている。このアウターパネル2aの中央部に設定されたハンドル取付け部12には、図3及び図5に示すように、ハンドル基体8を取り付けるための開口部13が形成されている。
ハンドル基体8は、図3に示すように、後述する補強部材取り付け部6b、補強部材7、及びハンドルレバー9等と組み合わされた状態で、アウターパネル2aに形成された開口部13にバックドア2の外側から嵌め込まれる。この際、図5に示すように、ハンドル基体8の外枠部となる周縁部8aは、開口部13の縁部13aにその外側から当接してアウターパネル2aの外側に露出される。これに併せて、ハンドル基体8の外枠部8aの内側部分、及びこの内側部分の車両後方側に配置されて使用者の手が掛けられるハンドルレバー9の部分もバックドア2の外側に露出される。これに対して、アウターパネル2aの内側(アウターパネル2aの車両前方側、裏側)に配置されるハンドル基体8の補強部材取り付け部6b及び補強部材7は、開口部13の内側に潜り込まされてバックドア2の内部に収納される。開口部13に嵌入されたハンドル基体8は、図3に示すように、アウターパネル2aにその内側からボルト14等を用いて複数箇所を固定されて組み付けられる。この状態において、補強部材取り付け部6b及び補強部材7は、図5に示すように、アウターパネル2aの裏側に配置されてアウターパネル2aの内面(裏面)15と対向している。なお、アウターパネル2aに取り付けられたドアハンドル装置5は、アウトサイドドアハンドルとも称される。
ハンドルレバー9は、図5に示すように、ハンドル基体8に回動自在に取り付けられている。ハンドルレバー9は、アウターパネル2aの内側に設けられたハンドルレバー回動軸16を回動の中心としてハンドル基体8に対して回動する。また、ハンドルレバー9のアウターパネル2aの内側の一端部9aには、図4及び図5に示すように、動力伝達装置17の一部が接続されている。動力伝達装置17は、ハンドルレバー9の回動操作により生じる駆動力をバックドア2の開扉操作に供するための装置である。具体的には、動力伝達装置17とは、バックドア2の閉じ状態を維持するための図示しないラッチ機構とハンドルレバー9とを接続するケーブルである。このため、動力伝達装置17は、ハンドルレバー9とラッチ機構とを連結する連結装置とも称される。以下の説明においては、ケーブル17が接続されているハンドルレバー9の一端部9aをケーブル接続側端部と称することとする。
ケーブル17のハンドルレバー9側の端部は、ハンドルレバー9から上方に向かって配索されている。ケーブル17は、主にハンドルレバー9の回動に伴って動くケーブル本体17a、及びこのケーブル本体17aをその外側から覆うケーブルカバー17bからなる。ケーブル本体17aは、例えば金属製のワイヤー等によって形成されており、ケーブルカバー17bの内側に摺動自在に保持されている。図4及び図5に示すように、これらケーブル本体17a及びケーブルカバー17bのうち、内側のケーブル本体17aのみがハンドルレバー9のケーブル接続側端部9aに接続されている。これに対して、外側のケーブルカバー17bは、動力伝達装置としてのケーブル17を支持する支持具6の上端部6aに固定されている。以下の説明においては、支持具6をケーブル支持具又はケーブルホルダーと称することとする。ケーブルホルダー6は、アウターパネル2aの内側においてドアハンドル装置5の一部を構成している。尚、ケーブルホルダー6は、ハンドル基体8に一体成形されていてもよいし、ハンドル基体8と別体に形成してハンドル基体8に組み付けられていてもよい。
前述した構造により、ケーブル本体17aは、ハンドルレバー9の回動に応じてケーブルカバー17bの内部をその長手方向に沿って往復運動することができる。具体的には、ハンドルレバー9は、ケーブルホルダー6の基端側(ハンドル基体8側)に設けられたハンドルレバー回動軸16を回動の中心として、図5中両向き矢印B,Cで示す方向に沿って回動する。すると、ハンドルレバー9のケーブル接続側端部9aが、同じくハンドルレバー回動軸16を回動の中心として、図5中両向き矢印Dで示す方向に沿って回動する。この結果、ケーブル接続側端部9aに接続されたケーブル本体17aが、図5中両向き矢印Eで示す方向に沿って往復運動する。つまり、使用者がバックドア2を開けようとして、ハンドルレバー9に手を掛けてハンドルレバー9を引き出す方向に回転させる。すると、ハンドルレバー9のケーブル接続側端部9aが、同じくハンドルレバー回動軸16を回動の中心として回動して、下方に移動する。この結果、ケーブル接続側端部9aに接続されたケーブル本体17aが、ケーブルホルダー6に保持されたケーブルカバー17bから引き出される。
なお、ハンドルレバー9の回動操作により生じた駆動力は、ケーブル本体17aを介して確実にラッチ機構に伝達される必要がある。このため、ケーブルホルダー6は、使用者の操作力に耐えてケーブルカバー17bを確実に固定して支持できる強度を有して造られている。それとともに、ケーブルホルダー6は、図4及び図5に示すように、バックドア2の内部においてハンドル基体8に直接固定されて取り付けられている。そして、ハンドル基体8は、アウターパネル2aに直接固定されているとともに、ドアハンドル装置5全体の構造上の基盤となっている。このため、ハンドル基体8は、ドアハンドル装置5の各構成部品の中でも比較的高い強度を有している。これらの結果、ケーブルホルダー6は、それ自体の強度はもちろんのこと、その設置構造も含めた周辺全体の強度を、ドアハンドル装置5の各構成部品の中でも比較的高く設定されている。そして、このケーブルホルダー6の一部に、後述する補強部材7が取り付けられる。
また、図示を伴う詳細な説明は省略するが、前述したように上下に開閉するバックドア2では、通常、その開放側端部となる下端部にラッチ機構が設けられている。そして、ボディ3のバックドア用開口の下部周縁には、閉じられたバックドア2のラッチ機構と対応する位置に、ラッチ機構が有する係止爪が係合するストライカが設けられている。開いているバックドア2が閉じられてラッチ機構の係止爪がボディ3のストライカに係合することにより、バックドア2の閉じ状態が維持される。これにより、一旦閉じられたバックドア2はボディ3に対して回動不可となり、ハンドルレバー9を操作しない限り不用意に開くおそれがなくなる。また、閉じられたバックドア2を開ける際には、ハンドルレバー9を外側に引き出す。すると、ハンドルレバー9のケーブル接続側端部9aが下方に向けて回動して、ケーブル本体17aが下方に向けて引き下げられる。これにより、ケーブル17のラッチ機構側の端部のケーブル本体17aが移動してラッチ機構に作用し、ボディ3のストライカに係合されていたラッチ機構の係止爪がストライカから外れる。この結果、ラッチ機構によるバックドア2の固定(閉じ状態の維持)が解錠されて、閉じられていたバックドア2を開くことができる。
また、通常、上下に開閉するバックドア2を閉じる際には、自動車1の使用者は、バックドア2の下端部(開放側端部)に設けられた図示しない手掛けや下端部自体に手を掛けて上方に開いているバックドア2を引き下げる。この際、使用者は、バックドア2の閉じ状態を確実なものとするために、併せてアウターパネル2aの中心付近であるアウトサイドドアハンドル5の周辺部に対しても外側から手を掛けて押すことが多い。かかる場合、アウターパネル2aの手で押される部分の面剛性若しくはパネル剛性が足りないと、背景技術において説明したように、ベカつきが生じ易くなる。ベカつきは、アウターパネル2aの見栄えを悪くするばかりでなく、自動車1全体の商品価値を損なうおそれが高いので、その発生を防止する必要がある。ベカつきの発生を防止するためには、アウターパネル2aの中心付近であるアウトサイドドアハンドル5の周りに位置するアウターパネル2aの手で押される可能性がある領域のパネル剛性を向上させる必要がある。好ましくは、アウターパネル2aの手で押される可能性がある領域のうち、特に手で押される可能性が高い領域のパネル剛性を集中的に向上させるとよい。なお、本願明細書中においては、アウターパネル2aの面剛性若しくはパネル剛性を、単にパネル剛性と称する場合もある。
本実施形態のバックドア2の場合、使用者は、力を加え易いハンドル基体8とリヤワイパー11との中間部の領域に手を掛けてバックドア2を押す可能性が高いことが経験的に知られている。したがって、本実施形態においては、アウターパネル2aの外面18上のうち図2において概ね斜線を引いて示す領域19が、パネル剛性を向上させる必要が高い部分となる。本願発明では、アウターパネル2aの内側(裏側)に設置されたケーブルホルダー6に補強部材7を取り付け、この補強部材7をアウターパネル2aの内側から領域19に当接させる。これにより、領域19のパネル剛性を向上させて、使用者がバックドア2を閉じる際に押してもベカつきが発生しないようにしている。以下の説明においては、ケーブルホルダー6の補強部材7が取り付けられる部分6bを補強部材取り付け部と称することとする。なお、アウターパネル2aの外面18をアウターパネル2aの表面、前述したアウターパネル2aの内面15をアウターパネル2aの裏面と称する場合もある。
ケーブルホルダー6の補強部材取り付け部6bは、図5に示すように、前述したアウターパネル2aの領域19に対してアウターパネル2aの内面15側から対向する位置に設定されている。具体的には、補強部材取り付け部6bは、アウターパネル2aの内側において、アウターパネル2aの外側に露出しているハンドル基体8の周縁部8aよりも外側に延設されて配置されている。より具体的には、補強部材取り付け部6bは、アウターパネル2aの内側に配置されたハンドル基体8からバックドア2の上方に向けて延設されている。それとともに、補強部材取り付け部6bは、アウターパネル2aの裏面15から離された状態で、開口部13の縁部13a及びハンドル基体8の外枠部8aを越えた位置まで突出するように延設されている。このような構造により、補強部材取り付け部6bは、ハンドル基体8よりも上側に位置する領域19に対して、ハンドル基体8が取り付けられる開口部13の縁部13aから離された位置でアウターパネル2aの内面15側から対向することができる。それとともに、補強部材取り付け部6bは、図3及び図5に示すように、補強部材7を実質的に面で支えることができる形状に形成されている。ひいては、補強部材取り付け部6bは、図5に示すように、略平面形状からなる領域19に対して、実質的に面と面で対向する配置であって、アウターパネル2aの変形を受け止めて抑制する大きさ及び形状に形成されている。
補強部材7は、図5に示すように、補強部材取り付け部6bに取り付けられてアウターパネル2aの内面15に当接している。この補強部材7も、補強部材取り付け部6bと同様に、略平面形状からなる領域19に対してアウターパネル2aの内面15側から面と面で当接し合う大きさ及び形状に形成されている。具体的には、補強部材7は、アウターパネル2aの変形を受け止めて抑制することができる程度の適正な大きさに形成されている。それとともに、補強部材7は、その厚さが補強部材取り付け部6bとアウターパネル2aの内面15との間の空間を隙間なく充填することができる程度の適正な大きさ(厚さ)に形成されている。さらに、補強部材7は、補強部材取り付け部6bとアウターパネル2aの内面15との間の寸法のばらつきに対応できるように適度な弾性力を有している。これらにより、補強部材取り付け部6bは、領域19に対してアウターパネル2aの内面15側から補強部材7を介して間接的に、面と面で当接し合うことができる。
また、補強部材7は、背景技術において説明したアウターパネル2aのベカつきを適正に抑制若しくは防止できる程度の適正な硬さを有する材料によって作製されることが好ましい。具体的には、補強部材7は、人間の手によって押される程度の大きさの力に対抗できる程度の反発力及び復元力を有している材料によって作製されることが好ましい。本実施形態においては、補強部材7として、硬質のスポンジ等の一般的な素材からなる汎用品を用いることとする。このような材料から成る補強部材7は、軽量であるとともに入手し易く且つ安価である。また、硬質スポンジ等から成る補強部材7は、緩衝材とも称される。そして、この緩衝材7は、前述した大きさ及び形状を満たすために、本実施形態においては、図3に示すように、略直方体形状に形成されている。緩衝材7は、例えば図示しない工業用の接着剤等を用いて補強部材取り付け部6bに固定される。また同様に、緩衝材7は、そのアウターパネル2aの内面15に当接する側の面を工業用の接着剤等を用いてアウターパネル2aの内面15に接着されても構わない。
図5中白抜き矢印Fは、自動車1の使用者が開いているバックドア2を手で押して閉じる際に、アウターパネル2aの領域19に対してその表側から加えられる人手による力の向きを示している。前述した構成及び構造から成る車両用ドアパネルの補強構造4によれば、アウターパネル2aの領域19を緩衝材7がその裏側から効果的に支えている。これにより、領域19に対して図5中白抜き矢印Fで示す向きに沿って外力が掛かっても、この外力を緩衝材7が適正に反発、吸収、若しくは分散させることができる。すなわち、アウターパネル2aの領域19におけるパネル剛性を向上させることができる。この結果、本実施形態の車両用ドアパネルの補強構造4によれば、アウターパネル2aの領域19におけるベカつきを適正に抑制若しくは防止することができる。
以上説明したように、この第1実施形態に係る車両用ドアパネルの補強構造4においては、アウターパネル2aの補強部材として、安価で軽量な汎用品の緩衝材7を用いる。これにより、アウターパネル2aの領域19におけるパネル剛性を向上させて、ベカつきを適正に抑制若しくは防止することができる。しかも、バックドア2のアウターパネル2aに組み付けられるアウトサイドドアハンドル装置5自体に緩衝材7を直接取り付けるだけでよい。すなわち、本実施形態に係る車両用ドアパネルの補強構造4においては、アウトサイドドアハンドル装置5の一部を、アウターパネル2aの裏面15から離した状態で開口部13の縁部13a及びハンドル基体8の外枠部8aを越えた位置まで突出するように延設する。そして、この延設部分を、緩衝材7を取り付ける補強部材取り付け部6bとして利用するだけである。
このような構成及び構造によれば、背景技術において説明したリンフォースのような、アウトサイドドアハンドル装置5とは別部品の、大柄で重く且つ高価な部材や装置等を新たに設ける必要がない。このため、バックドア2の内部構造等に起因する様々な制限により、補強部材7をバックドア2の内部に取り付けることができないという問題が生じるおそれは殆ど無い。また、リンフォースのような補強部材は、たとえバックドア2の内部に取り付けることができたとしても、その取り付け作業が煩雑且つ困難になり易い。このため、自動車1の生産効率が低下したり、自動車1の大幅な重量増加を招いたりするおそれがある。これに対して、本実施形態の車両用ドアパネルの補強構造4では、アウトサイドドアハンドル装置5の一部に緩衝材7を取り付けるだけなので、その取り付け作業は極めて容易である。ひいては、アウターパネル2aへのアウトサイドドアハンドル装置5の組み付け作業が容易になる。
したがって、本実施形態の車両用ドアパネルの補強構造4では、自動車1の生産効率が低下し難く、自動車1の生産に掛かるコストや人件費の高騰を抑制することができる。ひいては、最終的な自動車1の車両本体価格を安価に抑えることができる。また、自動車1の大幅な重量増加を招くおそれも殆ど無いので、自動車1の車重を軽量に仕上げることができる。これにより、自動車1の燃費を向上させることができる。
また、前述した構成及び構造からなる本実施形態の車両用ドアパネルの補強構造4では、背景技術において説明した熱硬化性シートのような、アウターパネル2aの変形やヒケを引き起こすおそれの高い高価で特殊な部材を用いる必要もない。このため、アウターパネル2aの外観を損なうおそれが殆ど無い。また、硬質スポンジ等の柔軟性に富む材料から成る緩衝材7を補強部材として用いるので、ドアパネルの精度やアウターパネル2aにアウトサイドドアハンドル装置5を組み付ける際の組み付け誤差を緩衝材7に吸収させることもできる。これらの結果、本実施形態の車両用ドアパネルの補強構造4によれば、アウターパネル2aの所定の領域19のパネル剛性を向上させることができるのみならず、最終生産品としての自動車1全体の商品価値を向上させて、市場における競争力を高めることができる。
また、前述した構成及び構造からなる本実施形態の車両用ドアパネルの補強構造4では、入手し易く且つ加工し易い材料から成る緩衝材7を補強部材として用いる。このため、本実施形態の車両用ドアパネルの補強構造4は、アウトサイドドアハンドル装置5が設けられているドア2であれば、その大きさや形状、若しくは車種等に殆ど依存することなく広範囲に適用することができる。すなわち、本実施形態の車両用ドアパネルの補強構造4は、緩衝材7の大きさ及び形状を、ドア2の大きさ、形状、若しくは内部構造等に応じて適宜、適正に変更するだけで、殆ど全ての車両1に適用することができる。
さらには、本実施形態においては、バックドア2の内部におけるアウトサイドドアハンドル装置5の上方部分には、アウターパネル2aの裏面15に沿って上方に延びてアウターパネル2aの裏側に入り込むハンドルレバー9の支持部となる回動軸16やケーブルホルダー6が設けられる。このため、アウターパネル2aの裏面15に対向する補強部材取り付け部6bを、比較的少ない延設量で且つ容易に設定することができる。この際、比較的剛性の高いハンドルレバー9の支持部16やケーブルホルダー6を利用して補強部材取り付け部6bを構成するので、剛性の確保が容易である。また、補強部材取り付け部6bは、ハンドル基体8に対してハンドルレバー9の支持部16やケーブルホルダー6の突出方向と略同じ方向に向かって突出している。このため、開口部13を介したバックドア2のアウターパネル2aへのアウトサイドドアハンドル装置5の組み付け作業が容易である。この点も、前述した自動車1の生産効率の向上の一因として大きく寄与している。それとともに、アウトサイドドアハンドル装置5のハンドルレバー9を操作する際に、その操作者の手が触れる可能性の高いアウトサイドドアハンドル装置5の上方部分19のアウターパネル2aの面剛性を、効率良く向上させることができる。
以上説明したように、前述した構成及び構造からなるこの第1実施形態に係る車両用ドアパネルの補強構造4によれば、外観を損なうおそれが殆どなく、汎用性が高く、且つ、著しい車両1の重量増加、製造コストの高騰、及び生産効率の低下等を殆ど招くことなく、アウトサイドドアハンドル装置5の周辺のアウターパネル2aの面剛性の向上を図ることができる。
[第2の実施の形態]
次に、本願発明の第2の実施の形態に係る車両用ドアパネルの補強構造21について、図6を参照しつつ説明する。この第2実施形態に係る車両用ドアパネルの補強構造21は、補強部材7を取り付ける位置が前述した第1実施形態に係る車両用ドアパネルの補強構造4と異なっているだけであり、他の部分は第1実施形態に係る車両用ドアパネルの補強構造4と同様である。したがって、前述した第1実施形態と同一部分には同一符号を付して、その具体的且つ詳細な説明を省略する。
本実施形態においては、図6に示すように、補強部材取り付け部6bにアウターパネル2aの内面15との間隔を狭める補助ブラケット22を設ける。そして、この補助ブラケット22に補強部材7を取り付けることにより、補助ブラケット22を介して補強部材7を補強部材取り付け部6bに間接的に取り付ける。補助ブラケット22は、その補強部材7が取り付けられる補強部材取り付け面22aが補強部材取り付け部6bよりも大きい矩形の平面形状に形成されている。そして、補助ブラケット22は、その補強部材取り付け面22aが補強部材取り付け部6bからアウターパネル2aの内面15に向けて突出若しくは延出する形状に形成されている。それとともに、補助ブラケット22は、その補強部材取り付け部6bへの取り付け部22bが補強部材取り付け部6bをその外側から部分的に狭持する形状に形成されている。
補助ブラケット22は、補強部材取り付け部6bに着脱自在に形成されている。また、補助ブラケット22は、ケーブルホルダー6やハンドルレバー9などのアウトサイドドアハンドル装置5の主要な構成部品と同等以下の重さ、大きさ、及び形状に形成されている。したがって、補助ブラケット22は、アウトサイドドアハンドル装置5に組み付けられた際には、実質的にドアハンドル装置5の構成部品の一部とみなすことができる。また、このような構造から成る補助ブラケット22は、スペーサーあるいはアタッチメントとも称することができる。
以上説明したように、この第2実施形態に係る車両用ドアパネルの補強構造21においては、補助ブラケット22を介して補強部材7を補強部材取り付け部6bに間接的に取り付ける。このような構成によれば、補強部材取り付け部6bからアウターパネル2aに向けた補助ブラケット22の突出量若しくは延出量を、バックドア2の内部構造等に応じて適宜、適正な大きさに設定することができる。これにより、補強部材取り付け部6bとアウターパネル2aの内面15との間の距離が異なる車両にも同じアウトサイドドアハンドル装置5を使用することが可能となる。また、補助ブラケット22は、その補強部材取り付け面22aの面積を補強部材取り付け部6bの面積とは異なる大きさに設定することができる。例えば、先述したように、補強部材取り付け面22aの面積を補強部材取り付け部6bの面積よりも大きく設定する。これにより、前述した第1実施形態の領域19よりも広い領域におけるアウターパネル2aのパネル剛性を容易に向上させることができる。ひいては、アウターパネル2aをより凹み難くすることができる。
したがって、この第2実施形態に係る車両用ドアパネルの補強構造21は、前述した第1実施形態に係る車両用ドアパネルの補強構造4よりもさらに広範囲な車両1に適用することができる。しかも、補助ブラケット22は、背景技術において説明したリンフォースとは異なり、ドアハンドル装置5に組み付けられた際には、実質的にアウトサイドドアハンドル装置5の構成部品の一部とみなすことができる重さ、大きさ、及び形状に形成されている。このため、車両用ドアパネルの補強構造21を採用した場合でも、車両1の大幅な重量増加や生産コストの高騰を招くおそれは殆ど無い。また、補助ブラケット22は、補強部材取り付け部6bに着脱自在に設計されているので、その組み付け作業が極めて容易である。しかも、補助ブラケット22を補強部材取り付け部6bに固定する際には、一般的な工業用の接着剤等を用いて迅速且つ容易に固定することができる。さらに、補助ブラケット22は、開口部13の縁部13a及びハンドル基体8の外枠部8aを越えた位置まで突出するように延設した補強部材取り付け部6bに取り付けられる。それとともに、補助ブラケット22は、ハンドル基体8に対して補強部材取り付け部6bと同方向に配置される。このような構造によれば、補助ブラケット22は、開口部13からのアウトサイドドアハンドル装置5の組み付け作業の支障とならない。
以上説明したように、この第2実施形態に係る車両用ドアパネルの補強構造21によれば、前述した第1実施形態に係る車両用ドアパネルの補強構造4と同様の効果を得ることができる。また、アウターパネル2aをより凹み難くすることができる。さらに、補助ブラケット22の大きさや形状等をバックドア2の内部構造等に応じて適宜、適正に設定することにより、様々な種類のドア2や車両1に適用範囲を広げることができる。これらの結果、本実施形態に係る車両用ドアパネルの補強構造21によれば、汎用性をより高くすることができると共に、アウトサイドドアハンドル装置5の周辺のアウターパネル2aの面剛性を、より効率良く向上させることができる。
なお、本願発明に係る車両用ドアパネルの補強構造は、前述した第1及び第2の各実施形態には制約されない。本願発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、その構成や形状、設定、あるいは工程等々を種々様々に変更したり、あるいは組み合わせたりして実施して構わない。
例えば、前述した第1及び第2の各実施形態に係る車両用ドアパネルの補強構造4,21を適用することができるドアは、前述したバックドア2には限られない。それとともに、それら各車両用ドアパネルの補強構造4,21を適用することができるドア2は、前述した上下方向若しくは縦方向に開閉するドア2には限られない。各車両用ドアパネルの補強構造4,21は、例えば運転席や助手席のドアのように、左右方向若しくは横方向に開閉するドアに適用されても構わない。また、各車両用ドアパネルの補強構造4,21は、いわゆるスライド式のドアに適用されても構わない。さらには、各車両用ドアパネルの補強構造4,21を適用する箇所は、前述したアウトサイドドアハンドル装置5の上側には限られない。各車両用ドアパネルの補強構造4,21は、例えばアウトサイドドアハンドル装置5の右側、左側、若しくは下側のいずれに適用されても構わない。すなわち、各車両用ドアパネルの補強構造4,21は、車両1が備える任意のドア2について、それらが開閉される際に人の手によって押される可能性がある部分に自在に適用することができる。
また、補強部材7の硬さは、あくまで人の手によって押される程度の大きさに耐えられる程度の強度を有していればよい。ドア2のアウターパネル2aが人の手によって押された際に、全く凹まない程の硬度を有している必要はない。より具体的には、補強部材7は、ドア2のアウターパネル2aが人の手によって押された際に、ベカつきが発生しない程度の硬度や反発力等を有する材料を用いて形成されていればよい。それとともに、補強部材7の形状は、前述した直方体形状には限られない。補強部材7の大きさ及び形状は、ドア2のアウターパネル2aのうち人の手によって押される可能性のある領域をベカつきが発生しないように支えることができる大きさ及び形状に形成されていればよい。これは、先述した第2実施形態に係る補助ブラケット22の補強部材取り付け面22aについても同様である。
本願発明に係る車両用ドアパネルの補強構造は、ドアハンドル装置、補強部材取り付け部、及び補強部材を備える。ドアハンドル装置は、ハンドル基体及びハンドルレバーを有する。ハンドル基体は、車両のボディに開閉自在に取り付けられたドアのアウターパネルに設けられている。ハンドルレバーは、ハンドル基体に回動自在に取り付けられている。補強部材取り付け部は、基体に取り付けられ、アウターパネルの外側に露出した基体の周縁部の周囲に位置するアウターパネルに内面側から対向する。補強部材は、補強部材取り付け部に直接又は間接的に取り付けられてアウターパネルの内面に当接する。このような構成によれば、略全ての自動車に設けられているドアハンドル装置を活用してアウトサイドドアハンドル周辺のアウターパネルの面剛性を向上させることができる。したがって、本願発明に係る車両用ドアパネルの補強構造は、外観を損なうおそれが殆どなく、汎用性が高く、且つ、著しい車両の重量増加、製造コストの高騰、及び生産効率の低下を殆ど招くことなく、アウトサイドドアハンドル周辺のアウターパネルの面剛性の向上を図るために利用することができる。
1 自動車(車両)
2 バックドア(ドア)
2a アウターパネル
3 ボディ
4 第1実施形態に係る車両用ドアパネルの補強構造
5 アウトサイドドアハンドル装置(ドアハンドル装置)
6 ケーブルホルダー(ケーブル支持具)
6a ケーブルホルダーの上端面
6b ケーブルホルダーの補強部材取り付け部
7 緩衝材(補強部材)
8 ハンドル基体
8a ハンドル基体の外枠部(ハンドル基体の周縁部)
9 ハンドルレバー
10 リヤガラス
11 リヤワイパー
12 ハンドル取付け部
13 開口部
13a 開口部の縁部
14 ボルト
15 アウターパネルの内面
16 ハンドルレバーの回動軸
17 ケーブル(動力伝達装置)
17a ケーブル本体
17b ケーブルカバー
18 アウターパネルの外面
19 アウターパネルの外面の人の手により押される可能性のある領域
21 第2実施形態に係る車両用ドアパネルの補強構造
22 補助ブラケット(スペーサー、アタッチメント)
22a 補助ブラケットの補強部材取り付け面
22b 補助ブラケットの取り付け部

Claims (5)

  1. 車両のボディに開閉自在に取り付けられたドアのアウターパネルに設けられたハンドル基体、及び該ハンドル基体に回動自在に取り付けられたハンドルレバーを有するドアハンドル装置と、
    前記ハンドル基体に取り付けられ、前記アウターパネルの外側に露出した前記ハンドル基体の周縁部の周囲に位置する前記アウターパネルに内面側から対向する補強部材取り付け部と、
    該補強部材取り付け部に直接又は間接的に取り付けられて前記アウターパネルの内面に当接する補強部材と、
    を具備することを特徴とする車両用ドアパネルの補強構造。
  2. 前記補強部材取り付け部は、前記ハンドルレバーの回動操作により生じる駆動力を前記ドアの開扉操作に供する動力伝達装置を支持する支持具を兼ねることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアパネルの補強構造。
  3. 前記補強部材取り付け部に、前記補強部材取り付け部と前記アウターパネルの内面との間隔を狭める補助ブラケットを設けるとともに、該補助ブラケットに前記補強部材を取り付けることにより前記補助ブラケットを介して前記補強部材を前記補強部材取り付け部に取り付けることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ドアパネルの補強構造。
  4. 前記補強部材取り付け部は、前記ハンドル基体から前記ドアの上方に向けて延設されて前記ハンドル基体よりも上側の前記アウターパネルの内面に対向することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の車両用ドアパネルの補強構造。
  5. 前記補強部材は緩衝材であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の車両用ドアパネルの補強構造。
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