JP2013106330A - 狭帯域のフィードバック経路を有する適応的リニアライザ - Google Patents

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Abstract

【課題】フィードバック経路の帯域幅の制限による信号スペクトルの再成長を減少させるリニアライザを提供する。
【解決手段】LPFによる干渉成分と同様の干渉成分を、HPAモデルユニットの出力に導入するISIレプリカユニットが設けられる。HPAモデルユニットは、プレディストータの出力信号と、ISIレプリカユニットの出力からフィードバック信号を減算することによって得られる誤差信号とを用いて、誤差信号が0に近づくように、HPAの特性をモデル化する。フィードバック信号は、LPFのフィルタリングの後に使用され、干渉成分を含む。LPF後のフィードバック信号とISIレプリカユニットの出力信号から得られる誤差信号は、ほとんど干渉成分を含まず、したがって、HPAモデルユニットによるモデル化が正確になり、線形化性能が良くなる。
【選択図】図5

Description

以下に記載される実施形態は、狭帯域のフィードバック経路を有する適応的リニアライザに関する。
最近、高ビットレート通信システムの発展により、精度良く動作するために、高出力増幅器用のリニアライザが必要となっている。RF(無線周波数)信号が非線形工出力増幅器(HPA)を通る場合に問題が発生する。しばしば、これらの高出力増幅器は、効率向上のために、非線形領域で駆動される。
デジタル通信システムにおける非線形HPAの効果は、様々な論文で検討されている(非特許文献1−4)。結果として、HPAの非線形性は、インバンド及びアウトオブバンド信号の歪みを生成することが示されている。
デジタルプレディストーション(PD)は、非線形HPAを通る信号の歪みを線形化することにより、アウトオブバンド及びインバンドの歪みを減少させる最も期待される技術の一つである。HPAの非線形歪みを補償するためのプレディストーションによるアプローチの基本は、補償される非線形システム(HPA)の逆システムを設計することである。
図1は、従来技術による、間接学習アーキテクチャを持つ適応的デジタルプレディストータ(PD)を有する送信機の簡単なブロック図を示す。
信号x(n)は、信号送信機(不図示)から送信されるデジタルベースバンド信号である。信号x(n)は、プレディストータ10に入力される。プレディストータ10は、HPA12の逆特性を示すメモリ多項式にしたがって、入力信号x(n)を歪ませる。プレディストータ10は、ハードロジックを持つカルキュレータ、デジタル信号処理器(DSP)あるいは、インストールされたプログラムで動作するプロセッサなどである。プレディストータ10の出力信号z(n)は、RF I−Q変調器11に入力される。RF I−Q変調器11は、プレディストータ10からのベースバンド信号x(n)を変調し、無線周波数信号にする。
RF I−Q変調器11からの出力信号は、HPA12に入力される。HPA12は、RF I−Q変調器11からの出力信号をゲインGで増幅する。HPA12からの出力信号y(n)は、アンテナ13から送出される。更に、信号y(n)は、フィードバック経路を介して、ゲイン1/Gの減衰器14に入力され、HPA12によって信号に加えられるゲインGがキャンセルされる。減衰器14からの出力信号は、RF I−Q復調器15に入力され、RF I−Q変調器11よって信号に加えられた変調がキャンセルされる。RF I−Q復調器15からの出力信号は、アナログ−デジタル変換器(ADC)18によってデジタル化される。ADC18からの出力信号は、ローパスフィルタ16に通され、信号yFBが出力される。
信号yFBは、トレーニングプレディストータ17に入力される。トレーニングプレディストータ17は、信号z(n)から信号z^(n)を減算することによって得られる誤差信号εを受信する。トレーニングプレディストータ17は、後述するように、誤差信号εが最小化されるように、メモリ多項式の係数A=[a10,・・・、aK0、・・・、a1Q,・・・、aKQ]を計算する。HPA12の逆特性をモデル化する、計算された係数を有するメモリ多項式は、プレディストータ10にコピーされる。
HPAの非線形性は、出力信号y(n)における、入力信号x(n)のP倍の帯域幅を占める寄生的周波数成分の出現の原因となる。通常、Pは、5と仮定される(非特許文献3)。経験則によると、HPAの5次の非線形性は、入力信号の5倍の帯域幅を占める寄生的成分の出現の原因となる。適応的PD(プリディストータ)システムでは、フィードバック経路が必要である。DAC(デジタル−アナログ変換器、不図示)の出力からの入力信号x(n)(図1)は、100MHzの帯域幅の信号に対し、1GHz程度のサンプリングクロックを持つことができる。HPA出力におけるインターモジュレーションプロダクト(当該分野でIMDとして知られる)を考慮すると、信号z(n)とz^(n)とをサンプル毎に比較するためのフィードバック帯域幅は、5×100=500MHzに達する。
このような場合、システムコストは、高性能(高スピード、高ビット解像度)アナログ−デジタル変換器(ADC)によって大きく影響される。ADCの例としては、ナショナルインストルメントから販売されるPXI−5922があり、高速ADCとして使用が可能である。デジタイザのカタログは、ウェブサイト(WWW.ni.com)で得ることができる。例えば、500MHzの帯域幅を持つベースバンド信号をデジタル化する場合、ナイキストのサンプリング定理によると、少なくとも1GHzのADCサンプリングレートが必要となる(非特許文献2)。
しかし、実際の実装においては、2GHzのより高いサンプリングレートが好ましい。よりコストの低い別法は、狭帯域のフィードバックしか用いないDPD(デジタルプレディストータ)を採用することである。
ベースバンドプレディストーションシステムでは、送信経路は、PDを含む。図1に示した適応的PDシステムでは、HPA12からのフィードバック経路、ゲイン1/Gの減衰器14、ベースバンドPD適応システム(トレーニングPDブロック17)を加えることが必要である。送信経路に配置される実際のPD10は、フィードバック経路のトレーニングPD17の正確なコピーである。
最も実用的な実装においては、フィードバック経路の帯域幅は、無限ではなく、有限の値を持っている。図1に示されるように、PDのフィードバック経路の帯域幅は、アンチエイリアシングLPF16の通過帯域によって制限される。信号のエイリアシングは、ADC18によって発生する。アナログ信号は、広帯域幅を有し、ADC18によってアナログ信号がデジタル化されるとき、ADC18のサンプリングクロックの周波数が制限されているため、デジタル化処理は、必然的に、エイリアシングである、アウトオブバンド周波数成分を誘発する。一般に、PDの線形化性能は、狭帯域のフィードバック経路の帯域幅によって劣化する。というのも、狭帯域のフィードバック経路の帯域幅は、HPAの出力から来る信号に更なる歪みを導入するからである。
図2は、PDフィードバック経路にアンチエイリアシングLPFが設けられた場合のPDが搭載されたHPAのスペクトルを、規格化されたLPF透過帯域をパラメータとして示したものである。図3は、図2に対応するLPFの伝達関数を示す。
LPFのインデックスは、規格化LPF透過帯域幅−PDの入力信号x(n)帯域幅ΔFに対して規格化されたLPF透過帯域幅Δfを指定する。ベースバンド入力x(n)は、2048個のサブキャリア、ΔF=20MHzのRF帯域幅を有するOFDM信号である。
図2及び図3において、横軸は、信号帯域の中心からの周波数オフセットを周波数で示し、縦軸は、インバンド信号の強度を0とした周波数成分の強度をdBで示している。「OBO」は、output back-offの略で、高出力増幅器の出力端において計測された信号パワーの、最大出力信号パワーに対する比を意味する。LPFの後ろの数字は、規格化帯域幅である。「Mem」は、メモリを意味し、Mem LPFは、メモリ効果を備えたLPFを意味する。
図2及び図3から分かるように、PDのフィードバック経路にLPFを挿入すると、線形化性能が非常に劣化し、アウトオブバンド周波数において、HPA出力信号のスペクトルの再成長を引き起こす。すなわち、アウトオブバンド周波数成分が少ないほど、PDの線形化性能は良い。
メモリ多項式プレディストータの動作を以下に説明する。
最初に、非特許文献3にならって、メモリ多項式線形化を簡単におさらいする。
図1は、PD同定に用いられる間接学習アーキテクチャを示す。ここで、PD同等化は、トレーニングプレディストータ17のメモリ多項式を、プレディストータ10のメモリ多項式と同じにすることを意味する。線形化の目的は、メモリ効果の影響を受ける非線形HPAと縦続につながるとき、HPAの出力に歪みのない目的の信号を生成する同等なシステムを生ずるような信号の変換(z(n)=HPA−1(x(n))を見つけること、すなわち、y(n)の復調結果をx(n)と等しくさせることである。このアプローチでは、2つの同じメモリ多項式システム(図1では、PD10,トレーニングPD17と示されている)がトレーニングプレディストーションに用いられる。
フィードバック経路は、フィードバック経路の帯域幅を制限するLPF16と、yFB(n)を入力とし、z^(n)を出力とするトレーニングPD17を含んでいる。実際のプレディストータ10は、トレーニングプレディストータ17の正確なコピーであり、x(n)を入力、z(n)を出力とする。
LPF16は、メモリを持った線形システムであり、したがって、フィードバックサンプルyFB(n)とHPA出力間に干渉(ISI;Interference Signal Indicator)成分を生ずる。したがって、フィードバック経路のLPF出力における信号サンプルは、自身と相関することになる。更なるPD性能劣化解析によると、図1に記載のPDのLPF16を、図4に記載の等価な外部干渉源と置き換えることが可能である。
図4は、LPFと等価な干渉源を有するリニアライザを示す。
図4において、図1と同様な構成要素には同様な参照符号を付す。
図4において、図1のADC18、RF I−Q変調器11、RF I−Q復調器15は、説明の簡略化のため省略されており、減衰器14の出力に加えられる干渉δ(n)の源20が、LPF16が干渉を導入することに対して、LPF16の等価構成として導入されている。
今、PDフィードバック経路に配置されたLPFの帯域幅が十分広い、すなわち、LPFがHPA出力からのPDのフィードバック信号y(n)に大きな歪みを導入することがないと仮定する。フィードバック経路に配置されたLPFの、PDの線形化性能への正確な影響は、後に記述する。したがって、以下のような近似が成り立つ。yFB(n)=y(n)、ISIの項δ(n)=0。メモリ多項式プレディストータは、非特許文献3と同様に次式で記述できる。
ここで、akqは、未知の複素メモリ多項式プレディストータ係数、x(n)は、離散時間nにおける送信信号サンプルである。メモリ多項式プレディストータは、式(1)を用いて、出力信号z(n)を計算する。式(1)は、メモリ多項式プレディストータに予め実装されており、akqは、変数で、kは、メモリ多項式の次数を示すインデックスで、Kは、メモリ多項式の次数で、qは、メモリ多項式のメモリ効果を示すインデックスで、Qは、メモリ多項式にメモリ効果として含まれる最大のサンプルを示す。
理想的には、間接学習を通した初期化の後、収束すると、z(n)=z^(n)となる、あるいは、行列形式で(非特許文献1参照)、次式が成立する。
ここで、Z、Y、Aは、それぞれ、z(n)、y(n)、akqの行列表式である。ここで、収束すると、y(n)がz(n)に等しくなると仮定している。
誤差の項は、間接学習の式(2)には明示的には存在しない。したがって、更なる議論で、線形化誤差の影響を調べるために、直線回帰の方法を用いる。
間接学習及び多項式回帰を以下に説明する。
多項式回帰は、yFB(n)の値と、z^(n)の対応する条件付き平均値との間の非線形関係にフィッティングする(図1参照)。z^(n)は、未知のパラメータakq、すなわち、式(1)のakqに対し線形であるので、これらの未知数は、単純な最小自乗法によって評価することができる。ここで、yFB,yFB ,・・・、yFB K−1は多重回帰モデルにおける異なる独立変数として扱う。通常、多項式回帰に対しては、近似の解が得られるのみなので、以下の式(3)における平均が0となり、観測できないランダムな誤差ε(n)(擾乱項として知られる)がある。したがって、次式が成立する。
回帰結果は、独立変数が相関しており、擾乱項がi.i.d.(独立かつ均等分布)していない場合には、全く不十分である。比較的広帯域のLPFでは、誤差ε(n)は、i.i.d.なランダム変数と仮定することができる。y(n)及びz(n)が与えられると、PDのトレーニングタスクは、プレディストータとなる式(2)で表されるメモリ多項式PDのパラメータakqを見つけることである。アルゴリズムは、誤差エネルギー||ε(n)||が最小のとき、収束する。したがって、多項式回帰モデルにおいて、
となる。
目標は、
を、利用できる全てのn=0、・・・、N−1のデータサンプルについて最小化することである。LPFの透過帯域幅が、未知の回帰係数akqを用いて、線形の回帰関数で書き直すことができると仮定すると、LPFとトレーニングPDを含むフィードバック経路の入力と出力との間の伝達関数は、
のように表される。
式(5)は、設計行列Y、応答ベクトルZ、パラメータベクトルA、従属変数と回帰係数との間の線形関係にノイズを加えるランダムなi.i.d.誤差の「擾乱項」ベクトルεを用いて、行列表式で表すことが出来る。行列表式を用いると、
と書くことができる。ここで、設計行列Yとパラメータ行列Aは、式(3)で定義される。そして、
は、擾乱ベクトルである。しかし、暗示的な擾乱項を持つ同様な表式も非特許文献1において報告されている。式(6)の最小自乗解を用いて、評価された多項式回帰係数akqのベクトルは、
である。
上記された直線回帰解析においては、ISIとしてのδ(n)は、式(4)と(6)において、擾乱項を、ε(n)からε(n)+δ(n)に増加させる。したがって、PDのフィードバック経路にLPFを含めたことによる擾乱項の全ノイズパワーは、δ^(n)とδ(n)の部分的なノイズパワーを合計したものとして計算することができる。
ここで、σは、各ノイズ成分の標準偏差、Σは、全ノイズ、εは、ε(n)のノイズ成分、δは、δ(n)のノイズ成分を意味する。
式(4)と(6)における擾乱項の増加は、図2に示されるように、スペクトルの再成長の増加として現れる。スペクトルの再成長が増加すると、HPAの特性を学習するトレーニングPDの性能が劣化し、リニアライザの線形化性能を劣化させる。
従来技術には、増幅器レプリカを用いたプレディストータ、入力信号に予め歪みを与えるシステム、歪み補償多項式を用いたプレディストータが記載されたものがある。
特開2005−333353号公報 特開2003−124752号公報 特開2010−50908号公報
Hsin-Hung Chen, Chih-Hung Lin, Po-Chiun Huang, and Jiunn-Tsair Chen, "Joint Polynomial and Look-Up-Table Predistortion Power Amplifier Linearization," IEEE Transactions On Circuits And Systems-II: EXPRESS BRIEFS, VOL. 53, NO. 8, AUGUST 2006 Y. Akaiwa "Introduction to Digital Mobile Communication," Wiley, New York (1997) Lei Ding et al., "A Robust Digital Baseband Predistorter Constructed Using Memory Polynomials," IEEE Transaction On Communications, Vol. 52, No 1, Jan. 2004. R. Marsalek, P. Jardin, and G. Baudoin, "From Post-Distortion to Pre-Distortion for Power Amplifier Linearization, "IEEE Communications Letters, VOL. 7, NO. 7, JULY 2003.
以下に記載の実施形態では、フィードバック経路の帯域幅の制限による信号スペクトルの再成長を減少させるリニアライザを提供する。
実施形態の一側面によれば、適応的リニアライザは、増幅器の出力信号帯域幅に比べ透過帯域が制限されたフィードバック経路と、増幅器の特性をモデル化する出力信号に、フィードバック経路の制限された透過帯域幅によって誘導される干渉成分と同様な特性を持つ干渉成分を導入するレプリカ部と、レプリカ部の出力信号と、フィードバック経路によってフィードバックされる、増幅器の出力信号との間の誤差信号を用いて、増幅器の特性の逆特性を計算するトレーニング部と、トレーニング部によって計算された逆特性に従って、増幅器に入力される信号を歪ませるプレディストータとを備える。
以下に記載の実施形態によれば、フィードバック経路の帯域幅の制限による信号スペクトルの再成長を減少させるリニアライザを提供することができる。
従来技術による、間接学習アーキテクチャを有する適応的デジタルプレディストータ(PD)を備える送信機の簡単化されたブロック図である。 PDのフィードバック経路にアンチエイリアシングLPFを配置した場合にPDを備えるHPAのスペクトルを規格化LPF帯域をパラメータとして表したものである。 図2に対応するLPFの伝達関数である。 LPFに等価な干渉源を備えるリニアライザである。 実施形態に従ったリニアライザのブロック図である。 実施形態に従った送信機の構成例である。 間接学習を用いる一般のHPAメモリ多項式モデルのための2段階アプローチの1実装例である。 異なるステップサイズパラメータμについてのトレーニングOFDMシンボルの数の関数としての、RMSメモリ多項式HPA(P=5、メモリ深さQ=2)の残留同定誤差εを示す図である。 ステップサイズ定数μが2.0に対する、トレーニングOFDMシンボル数をパラメータとした、間接学習アーキテクチャを用いた線形化後のメモリ多項式HPA出力信号を示す図である。
以下に記載の実施形態は、プレディストータ(PD)のフィードバック帯域幅への要求を削減し、HPAの非線形性を補償するための、狭帯域のフィードバック経路を伴った、単純な、適応的プレディストーションシステムの設計を可能とする。
したがって、フィードバック経路に配置されたアナログ−デジタル変換器(ADC)への要求を緩めることができる。したがって、低速、高ビット解像度の商用ADCを、高価な高速中ビット解像度ADCの代わりに、PDに実装することができる。実施形態で、HPA出力におけるアウトオブバンドスペクトルのレベルは結果的に縮小される。
現在、大体、ADCの高ビット解像度は、19÷16ビット以上、低ビット解像度は、約6÷8ビット、中ビット解像度は、約10÷12ビットを言う。
実施形態は、誤差信号ε(n)のISI項δ(n)のレベルを減少される。したがって、より少ないノイズ(より高精度)のHPAモデルを得ることができる。したがって、HPAモデルの逆関数の計算において、線形化の質を改善することができる。
図5は、実施形態に従ったリニアライザのブロック図である。
図5において、図4と同様の構成要素には同様に符号を付す。図5において、ADC、RF I−Q変調器、RF I−Q復調器は、説明の簡単化のため省略されている。
図1のトレーニングPD17は、HPAモデルユニット32とINVERSEユニット33に置き換えられているが、プレディストーションの機能は同様である。
ISIレプリカユニット31は、δ(n)と同様のISI項δ^(n)を、HPAモデルユニット32の出力信号に加える。したがって、減算器30の出力において、すなわち、誤差信号εの計算の間、HPAモデルユニット32からのISI項δ^(n)とLFP16からのδ(n)とは、互いに打ち消しあう。
ISIレプリカユニット31は、LPF16による干渉成分のレプリカを生成し、減算器30の出力において、LPF16による干渉成分は、ISIレプリカユニット31によって生成されるレプリカによってキャンセルされる。したがって、HPAモデルユニット32は、ISIの影響が少なくなった状態で、信号z(n)とεからHPA12の特性のモデルを計算することができ、正確なモデル化と、より良い線形化性能を可能とする。HPAモデルユニット32によるHPAの計算された特性は、INVERSEユニット33に送られる。INVERSEユニット33は、HPAモデルユニット32によって計算されたHPAの特性からメモリ多項式の係数を計算する。メモリ多項式の係数によって表される特性関数は、HPAモデルユニット32によってモデル化されるHPAの特性の逆関数である。
レプリカISIδ^(n)を生成し、HPAモデルユニット32の出力信号にこのISIを加える最も単純な方法は、PDのフィードバック経路に配置されるLPFと同様なLPFを実装することである。実施形態では、追加のフィルタが、図6に示されるように、HPAモデルユニット32からの参照信号経路に導入される。
図6は、実施形態による送信機の構成例を示す図である。
図6において、図1及び図5と同様な構成要素には、同様な参照符号を付し、それらの説明を省略する。
このLPF40は、フィードバック経路に配置されるLPF16からのISI項δ(n)を補償する、ISI項δ^(n)(ISI項δ(n)と同様)を導入する(詳細説明については、式(10)〜(14)を参照)。
レプリカISIδ^(n)生成の他の考えられる方法は、等化器を用いることである。通常、等化器は、LPFと同様に動作する。等化器の構成の例としては、米国特許5,175,747号を参照されたい。
線形化処理は、2つの主なステップに分けられる。
−ステップ1 第1のステップの間では、(HPA12とHPAモデルユニット32のモデルの間の)狭帯域フィードバック経路を介したHPA同定が行なわれ、HPAモデルパラメータがえられる。HPAモデルは、直接学習によって同定することが可能である(非特許文献1、4)。この場合、HPAモデル多項式係数pは、次の式(9)及び(10)によって更新される。
HPAモデル同定アルゴリズムは、式(10)の誤差信号ε(n)を0とさせるようにする。適応的最小自乗平均アルゴリズムをこの目的のために使用可能である(非特許文献1、3)。
したがって、図6によれば、誤差信号は、次に示す参照信号y^FBとフィードバック信号yFB間の差である。
式(11)及び(12)において、LPF{●}は、LPFによるフィルタリングの動作を示す。HPAモデルユニット32の最小自乗平均アルゴリズムは、誤差信号ε(n)を0とさせる。
したがって、収束後は、次式が成立する。
式(11)及び(12)を式(10)に代入すると、
が得られる。
収束の間、
であるので、差の項、すなわち、
が達成される。
したがって、狭帯域フィードバックLPFを実装したにもかかわらず、(LPF16とLPF40が完全に一致する場合)誤差信号ε(n)におけるISI項は存在しない。言い換えると、ISI項δ^(n)とδ(n)は、式(10)による誤差信号ε(n)の計算の間に互いに打ち消しあう。
HPAモデルのパラメータが同定されたら、第1のステップは終了である。
−ステップ2 第2のステップの間に、HPAモデルのための逆関数(すなわち、逆メモリ多項式)の係数A=[a10、・・・、aK0、・・・、a1Q、・・・、aKQが得られ、得られた結果は、送信経路のプレディストータ10にコピーされる。式(7)は、間接学習の間、逆メモリ多項式係数の計算に用いることが可能である(非特許文献3、4)。
狭帯域のフィードバックを備えた図6のブロック図では、ステップ1で得られたHPAモデルの逆関数を計算するINVERSEユニット33を含む。逆関数の解析的に閉じられた形式の式は、多項式の次数Pが5以下のメモリなし多項式によってモデル化されるHPAモデルについてのみ得ることができる。
次数が5より大きいメモリなし多項式HPAモデルあるいは、メモリ多項式のより一般的な場合は、数値的再帰的アプローチが必要である。非特許文献3による間接学習は、メモリ多項式逆関数の良い近似を与える。
図7は、間接学習を用いる一般のHPAメモリ多項式モデルへの2ステップアプローチの1実装例を示す。
図7において、図6と同様な構成要素には、同様な参照符号を付し、それらの説明を省略する。
図7において、ADC、RF I−Q変調器、RF I−Q復調器は、説明の簡単化のため省略している。
第2のステップの間、HPAモデルに対する逆関数は、トレーニングPD50で計算される。この動作は、非特許文献3に記載されるものと同じである(図1)。
トレーニングアルゴリズムは、誤差信号
が0になるように、トレーニングPDパラメータA=[a10、・・・、aK0、・・・、a1Q、・・・、aKQを調整する。行列表式では、次式が成立するようにパラメータAを調整する。
最小自乗平均解法によると、PDパラメータAは、非特許文献3によって定義される。
最後に、式(15)で得られる係数A=[a10、・・・、aK0、・・・、a1Q、・・・、aKQは、送信経路に配置される実際のPD10にコピーされる(図7)。したがって、提案した2ステップ線形化アルゴリズムの間、干渉項δ(n)のDPD線形化性能に対する負の影響は、消去される。
HPAモデルユニット32のトレーニングPD50に対する出力信号y FBは、LPF40によるフィルタリングなしにトレーニングPD50に送られる。したがって、この、トレーニングPD50へのフィードバック信号は、干渉項δ^(n)を含まない。したがって、トレーニングの間、トレーニングPD50は、干渉項によって歪まされることなく、HPAモデルユニット32によってモデル化されたモデルの逆伝達関数を計算する。
図8は、式(9)のステップサイズパラメータμの異なる値に対するトレーニングOFDMシンボル数の関数として、RMSメモリ多項式HPA(P=5、メモリ深さQ=2)残留同定誤差εを示す図である。図9は、ステップサイズ定数μを2.0として、トレーニングOFDMシンボル数をパラメータとした、間接学習アーキテクチャを用いた線形化後のメモリ多項式HPA出力信号を示す。
図8において、全ての場合について、トレーニングシンボル数が増えると、誤差εは、0に近づく。メモリがない場合には、誤差εが0に最も速く近づく。他の場合は、ステップサイズパラメータμが増加すると、誤差εがより速く0に近づく。
図9においては、目標の信号が点線で示されている。「AvP」は、信号の平均パワーを示し、全ての場合で同じである。「N」は、トレーニングシンボル数を示す。トレーニングシンボル数が増えると、信号のアウトオブバンド成分が減り、目標の信号に近づいている。これは、トレーニングシンボル数が増えると、トレーニングが進行し、正しい解に導かれることを意味する。
上記実施形態では、アンチエイリアシングのための要素として、フィードバック経路にLPFのみが示されている。しかし、さまざまな応用例に従って、LPFの代わりに、バンドパスフィルタや、ハイパスフィルタを使うことが可能である。この場合、ISIレプリカユニットは、対応する周波数特性を有するバンドパスフィルタ、ハイパスフィルタ、あるいは、等化器でよい。ISIレプリカユニットは、アンチエイリアシングのためにフィードバック経路に導入されるフィルタと同様の周波数特性を持つなら、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、等化器にも限定されない。
10 メモリ多項式プレディストータ
11 RF I−Q変調器
12 高出力増幅器(HPA)
13 アンテナ
14 減衰器
15 RF I−Q復調器
16、40 ローパスフィルタ
17、50 トレーニングメモリ多項式プレディストータ
20 干渉源
30 減算器
31 ISIレプリカユニット
32 HPAモデルユニット
33 INVERSEユニット

Claims (8)

  1. 増幅器の出力信号帯域幅に比べ通過帯域が制限されたフィードバック経路と、
    該増幅器の特性がモデル化された信号に、該フィードバック経路の制限された通過帯域幅によって誘導される干渉成分と同様な特性を持つ干渉成分を導入するレプリカ部と、
    該レプリカ部の出力信号と、該フィードバック経路によってフィードバックされる、該増幅器の出力信号との間の誤差信号を用いて、該増幅器の特性の逆特性を計算するトレーニング部と、
    該トレーニング部によって計算された逆特性に従って、該増幅器に入力される信号を歪ませるプレディストータと、
    を備えることを特徴とする適応的リニアライザ。
  2. 前記フィードバック経路が、
    前記増幅器の出力信号をデジタル化するアナログ−デジタル変換器と、
    該アナログ−デジタル変換器の後段で、該フィードバック経路内に配置され、該アナログ−デジタル変換器の出力信号の帯域幅を制限するフィルタと、
    を備え、
    前記レプリカ部は、該フィルタの干渉成分と同様の干渉成分を導入することを特徴とする請求項1に記載の適応的リニアライザ。
  3. 前記フィルタは、第1のローパスフィルタであり、
    前記レプリカ部は、該第1のローパスフィルタと同様の特性を有する第2のローパスフィルタであることを特徴とする請求項2に記載の適応的リニアライザ。
  4. 前記トレーニング部は、
    前記増幅器の特性をモデル化する増幅器モデルユニットと、
    前記増幅器の特性の逆特性を計算し、前記プレディストータに該逆特性を出力する逆ユニットと、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の適応的リニアライザ。
  5. 前記増幅器の特性は、メモリ多項式によって表され、
    前記増幅器モデルユニットは、該メモリ多項式の係数を調整することによって、該増幅器の特性をモデル化することを特徴とする請求項4に記載の適応的リニアライザ。
  6. 前記増幅器は、非線形領域にまで広がる動作領域で動作することを特徴とする請求項1に記載の適応的リニアライザ。
  7. 請求項1の適応的リニアライザが搭載された送信機。
  8. 増幅器と、該増幅器の出力信号の帯域幅と比べて制限された等価帯域を有するフィードバック経路を備える適応的リニアライザのための適応的線形化方法であって、
    該フィードバック経路の制限された通過帯域幅によって誘導される干渉成分と同様な特性を有する干渉成分を、該増幅器が特性をモデル化された信号に導入し、
    該増幅器の特性がモデル化された信号に対して該干渉成分が導入された結果の信号と、該フィードバック経路によってフィードバックされる、該増幅器の出力信号との間の誤差信号を用いて、該増幅器の特性の逆特性を計算し、
    該増幅器の特性の逆特性に従って、該増幅器へ入力される信号を歪ませる、
    ことを特徴とする適応的線形化方法。
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