JP2013099295A - 飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】風味が良いラウリン系油脂を高油分で配合した飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物であって、高い乳化安定性を示す水中油型乳化油脂組成物を提供すること。
【解決手段】ラウリン系油脂を40〜60質量%含み、非ミセルタンパク質を0.6〜5.0質量%含みかつミセルタンパク質を0.3質量%より多く含まず、更に乳化油脂組成物の平均粒子径が0.8μm以下であることを特徴とする、飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、缶コーヒー等の工業的に製造される飲料に添加するためのクリームを製造するための、油分が高くかつ乳化安定性が高い飲料用水中油型乳化油脂組成物、前記組成物を含む飲料用クリーム並びにそれらの製造方法に関する。
従来から、コーヒークリームあるいはホワイトナー等と称される飲料添加用クリームとして、植物性油脂を原料として製造される植物性油脂置換クリーム(水中油型乳化油脂組成物)が知られている(特許文献1)。植物性クリームは、生乳から得られる生クリームに比べて安定性に優れ、かつ比較的安価に製造できるという利点を有するためにその消費量は多い。
ヤシ油などのラウリン系油脂は、その風味の良さと酸化安定性などの品質面の良さから、飲料(例えば乳飲料、コーヒー飲料等)やデザート、アイスクリーム等の油脂原料として広く使われている。しかしながら、このような油脂を使用して飲料やデザート等を製造する場合、一旦油脂を加熱溶解し、水系原料を調合、溶解した水相と合わせて乳化処理を行う必要があった。この乳化処理を行わない場合、油が浮上、分離してしまい、目的とする白濁性(ホワイトニング効果)が得られないなど、商品価値が著しく損なわれてしまうという問題がある。また乳化処理にはホモミキサーや均質機といった特殊な装置が必要であり、特に商業レベルでは設備投資への負担が大きくなってしまうという問題があった。
また、ラウリン系油脂は、そのラウリン酸を主体とするトリグリセリドの特異的な結晶化挙動から、乳化後に脂肪球が不安定化して凝集し、水中油型乳化物が増粘したり、固化してしまうという問題がある。従来、このようなラウリン系油脂を乳化して水中油型乳化油脂組成物を作成する場合、油分を10〜30質量%と低く抑えることで乳化の不安定化が問題とならないようする方法が用いられている。しかし、油分が少ない分、逆に水分が多くなるため、それを使用する製品への配合上の制約が多くなってしまうという問題があった。
一方、缶コーヒー等のクリーム入り飲料を工業的に大量生産する場合には、取り扱い性向上の観点から、水分をできる限り少なくした、高い油分のクリームを使用したいという要求がある。
しかしながら、前述のとおり、高い油分のクリーム、特にラウリン系油脂を用いた高い油分のクリームは、増粘したり固化するなど、乳化安定性に問題がある。
特開2007−037509号公報
本発明は、風味が良いラウリン系油脂を高油分(40〜60質量%)で配合した飲料用クリームを製造するための水中油型乳化油脂組成物であって、高い乳化安定性を示し、かつホワイトニング効果を低下させない水中油型乳化油脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ラウリン系油脂を高い含量で含む高油分水中油型乳化油脂組成物において、非ミセルタンパク質を油脂組成物全質量に対して0.6〜5.0質量%添加し、かつミセルタンパク質を全く加えないか、あるいは加える場合には0.3質量%以下添加し、更に、乳化物の平均粒子径を0.8μm以下とすることにより、攪拌により増粘して固化する、いわゆるボテという現象が見られず、高油分であっても安定した乳化油脂組成物を製造することができること、更にホワイトニング効果も低下せず良好であることを見いだした。
すなわち、本発明は下記を提供する。
1.ラウリン系油脂を40〜60質量%含み、非ミセルタンパク質を0.6〜5.0質量%含みかつミセルタンパク質を0.3質量%より多く含まず、更に乳化物の平均粒子径が0.8μm以下であることを特徴とする、飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物。
2.ラウリン系油脂を50〜60質量%含む上記1記載の飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物。
3.更に、乳化剤を含有することを特徴とする上記1または2記載の飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物。
4.更に、塩類を含有することを特徴とする上記1〜3のいずれか一に記載の飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物。
5.上記1〜4のいずれか一に記載の水中油型乳化油脂組成物を使用してなる飲料用クリーム。
6.ラウリン系油脂を含む油相と、タンパク質を含む水相とをホモジナイザーにより均質化して、乳化物の平均粒子径を0.8μm以下に調整することを含む、上記1〜4のいずれか一に記載の飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物の製造方法。
7.ホモジナイザーによる均質化を2回行う、上記6に記載の製造方法。
本発明によれば、風味が良いラウリン系油脂を高油分(40〜60質量%)で配合した飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物であって、ボテを生じず良好な乳化安定性を示す、飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物を提供することが出来る。
(水中油型乳化油脂組成物)
(ラウリン系油脂)
本発明の水中油型乳化油脂組成物は水相部と油相部からなり、油相部にラウリン系油脂を含む。本発明の水中油型乳化油脂組成物は、ラウリン系油脂を40〜60質量%、好ましくは45〜60質量%、更に好ましくは50〜60質量%含む。
ラウリン系油脂とはヤシ油やパーム核油など、炭素数が12のラウリン酸を主体とするトリグリセリドからなる油脂を意味する。ヤシ油が特に好ましい。
これらの油脂を更に分別、硬化、エステル交換したものも使用が可能である。風味的には硬化処理やエステル交換処理を行わない方が好ましい。近年のトランス酸含量の表示義務化等、トランス酸の摂取を規制する動きからも、非硬化のラウリン系油脂が好ましい。
(タンパク質)
本発明の水中油型乳化油脂組成物は水相部に非ミセルタンパク質を含む。本発明の水中油型乳化油脂組成物は、ミセルタンパク質を実質的に含まない。水中油型乳化油脂組成物の乳化安定性を低下させて、いわゆるボテを生じるからである。「ミセルタンパク質を実質的に含まない」とは、ミセルタンパク質の合計量が、水中油型乳化油脂組成物の質量(100質量%)に対し、0.3質量%以下(全く含まないか、含む場合には0.3質量%を上限とする)であることを意味する。好ましくは、ミセルタンパク質の含有量は、0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
また、ミセルタンパク質以外の非ミセルタンパク質であれば、食品として使用可能な植物性タンパク質、動物性タンパク質のいずれも使用可能である。タンパク質として風味の観点から乳タンパク質が好ましい。非ミセルタンパク質である乳タンパク質としては、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、ホエイタンパク質等が挙げられる。また耐酸性を付与する必要がある場合には、WPC等のホエイタンパク質を主体としたタンパク質を使用することが好ましい。
ミセルタンパク質を多く含む原料としては、カゼイン、脱脂粉乳、バターミルクパウダー、MPC等が挙げられるが、これらは、上述のとおり、含まれているミセルタンパク質が水中油型乳化油脂組成物の安定性を低下させて、いわゆるボテを生じさせるため、本発明のタンパク質源として使用することは好ましくない。
なお、ミセルタンパク質は、ヘキサメタリン酸Na、ポリリン酸Na等のキレート効果を有する物質を水中油型乳化油脂組成物に添加すると、ミセルが分解されるため、キレート剤を添加する場合には、0.3質量%より多くのミセルタンパク質を添加することも可能である。従って、本発明の水中油型乳化油脂組成物は、キレート剤を0.01〜1.0質量%含んでいても良い。0.01質量%より少ない場合にはキレート効果が期待できず、1.0質量%より多いと風味に影響を及ぼすため好ましくない。
ミセルタンパク質の問題は、水中油型乳化油脂組成物を単独で保存する際の安定性の問題であるから、本発明の水中油型乳化油脂組成物を添加するコーヒー等の飲料に脱脂粉乳等のミセルタンパク質を含む原料が含まれていてもよいことは当然である。
本発明の水中油型乳化油脂組成物の全質量に対し、非ミセルタンパク質含量は0.6〜5.0質量%であり、好ましくは、0.7〜4.5質量%、更に好ましくは0.8〜4.0質量%、最も好ましくは0.9〜1.5質量%である。かかる範囲において非ミセルタンパク質を添加することにより、40〜60質量%でラウリン系油脂を含む高油分水中油型乳化油脂組成物においても、ボテが生じない安定な組成物を得ることができる。 本発明において、非ミセルタンパク質含量は少なくとも0.6質量%であるが、これより少ないと、安定な乳化物を得ることが難しくなる。乳化物の平均粒子径が大きくなり、結果としてボテが生じやすくなるからである。
また、ミセルタンパク質は、上述のとおり、水中油型乳化油脂組成物の質量(100質量%)に対し、0.3質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。ミセルタンパク質含量が0.3質量%を越えると不安定になり、ボテが生じやすくなる。
(乳化剤)
本発明の水中油型乳化油脂組成物は乳化剤を更に含むことが好ましい。乳化剤としては、例えばレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド等従来公知の乳化剤が例示でき、本発明においてはこれらのいずれを適宜組み合わせて使用してもよい。
乳化剤を使用する場合には、本発明の水中油型乳化油脂組成物中に、0.1〜5.0質量%、更に好ましくは0.5〜5.0質量%、最も好ましくは1.0〜3.0質量%含むことが好ましい。
(塩類)
本発明の水中油型乳化油脂組成物は更に塩類を含むことが好ましい。塩類としては、例えば、クエン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第二リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、等が挙げられる。
塩類を使用する場合には、本発明の水中油型乳化油脂組成物中に、0.05〜3.0質量%、更に好ましくは0.1〜1.0質量%含むことが好ましい。
(その他の添加物)
本発明の水中油型乳化油脂組成物は更に、風味や色、甘味、粘度の調節を目的として、香料、着色料、糖類、増粘多糖類等を必要に応じて添加することができる。
(乳化物の平均粒子径)
本発明の水中油型乳化油脂組成物の乳化物の平均粒子径は、0.8μm以下であり、更に0.3〜0.8μmの範囲であることが好ましい。平均粒子径が0.8μm以下の場合、ボテが無い、乳化安定性が良好な水中油型乳化油脂組成物を得ることができる。乳化物の平均粒子径は、水中油型乳化油脂組成物の組成と均質化条件により、ある程度調整することができる。ただし、タンパク質含量が少なくなると、均質化条件の達成によっても、0.8μm以下の平均粒子径を達成することがより難しくなる。
本明細書において、平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置で測定した、体積基準での積算分布曲線の50%に相当する粒子径を意味する。
(飲料)
本発明は、上記組成と物性に特徴を有する飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物である。本明細書において「飲料」には、クリームを添加して飲用する様々な飲料が挙げられるが、好ましくは、コーヒー、紅茶、緑茶、抹茶、ほうじ茶、果実飲料等、並びに、いちごミルク等のミルクセーキ(ミルクシェーキ、ミルクシェーク、ミルクシェイク、等ともいう)類が挙げられる。
より好ましくは、飲料は、コーヒー、紅茶、抹茶、及びミルクセーキから選択される。
飲料用クリームとは、上記飲料に添加して使用するクリームを意味する。
本発明は、特に、缶コーヒーやペットボトル入りコーヒー等の缶やペットボトルに充填された飲料を工業的に製造する際に、水分の少ない高油分クリームを使用できるため、有利である。
(水中油型乳化油脂組成物の製造方法)
本発明の水中油型乳化油脂組成物は、ラウリン系油脂を含む油相と、タンパク質を含む水相とをホモジナイザーにより均質化して、乳化物の平均粒子径を0.8μm以下に調整することを含む製造方法により製造することができる。
より具体的には、油脂を含む油相部の材料を混合して、50〜80℃、好ましくは55〜70℃の温度範囲で溶解ないし分散させて油相部を調製する。乳化剤を使用する場合であって、乳化剤が親油性のものを用いる場合には、原料油脂の一部または全部に添加し溶解ないし分散させて油相部を調製する。
水相部として、タンパク質を含む水相部の材料を混合して、40〜70℃、好ましくは55〜65℃の温度範囲で溶解ないし分散させて水相部を調製する。塩類、糖類、香料等を加える場合には、水相部に添加して混合する。
油相部と水相部を、乳化物の粒子径が0.8μm以下となるように均質化することが好ましい。
油相部と水相部は、40℃から80℃、好ましくは55〜70℃に加温し、混合して予備乳化を行う。予備乳化の条件は、好ましくは回転式攪拌機である。
予備乳化後、ホモジナイザーにて均質化し、バッチ式殺菌法、または間熱加熱方式あるいは直接加熱方式によるU H T 滅菌処理法にて滅菌し、再びホモジナイザーにて均質化し冷却しエージングする。
ホモジナイザーによる均質化の条件は50〜500kg/cm2であり、好ましくは100〜300kg/cm2である。
冷却温度は15〜2℃、好ましくは10〜5℃である。
ホモジナイザーによる均質化は2回行うことが好ましい。
次に、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、実施例によって本発明が限定されるものではない。
<液状安定性評価法>
液状安定性は、100ccビーカーに60gの水中油型乳化油脂組成物を入れ、それを直径4cmの撹拌ペラで120rpmの条件で攪拌し、流動性が無くなるまでに要する時間(分)を測定した。60分の時点で流動性が維持されているものは>60と記載した。
<粘度評価法>
粘度の測定はB型粘度計を使用し、No.2ローターを用いて60rpmの条件で行った。
<平均粒子径>
乳化物の平均粒子径とは、レーザ回折式粒度分布測定装置「LA−920」((株)掘場製作所)で測定した、体積基準での積算分布曲線の50%に相当する粒子径である。
以下のように水中油型乳化油脂組成物を作製した。
ヤシ油からなる油脂(質量%については表参照)を60℃に加温溶解し、そこに油系原料(種類及び質量%については表参照)を添加し65℃に加温して油相部を調製した。
一方、水系原料(種類及び質量%については表参照)を60℃の温水に溶解し水相部を調製した。
この水相部を先の油相部と混合攪拌し、予備乳化を行った。この乳化液を、均質機を用いて一定の圧力(MPa)(表参照)にて均質処理した後、直接蒸気注入式滅菌機にて140℃で4秒間滅菌処理を行った後、再度均質機を用いて一定の圧力(MPa)(表参照)で均質処理してからプレート式冷却機にて5℃まで冷却し、水中油型乳化油脂組成物を得た。
なお、カゼインナトリウム中のタンパク質含量はカゼインナトリウム全質量に対し92質量%である。脱脂粉乳中のタンパク質含量は脱脂粉乳全質量に対し34質量%であり、ミセルタンパク質が27%、非ミセルタンパク質が7%である。
表に示される結果から明らかなとおり、本発明の油脂組成物は、ラウリン系油脂が51質量%と非常に高い油分を有するにも関わらず、ボテが無く、安定した乳化性を示した(実施例1〜4)。一方、タンパク質含量が本発明の範囲外の場合には、実施例1〜4と同じ条件において均質化を行っても、平均粒子径が大きくなってしまい、ボテが生じた(比較例1)。また、タンパク質添加の目的で脱脂粉乳を用いるとミセルタンパク質含量が多くなり、ボテが生じてしまった(比較例2及び3)。更に同じタンパク質量であっても、平均粒子径が本発明の範囲外である場合には、ボテが生じてしまった(比較例4)。
Figure 2013099295

Claims (7)

  1. ラウリン系油脂を40〜60質量%含み、非ミセルタンパク質を0.6〜5.0質量%含みかつミセルタンパク質を0.3質量%より多く含まず、更に乳化油脂組成物の平均粒子径が0.8μm以下であることを特徴とする、飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物。
  2. ラウリン系油脂を50〜60質量%含む請求項1記載の飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物。
  3. 更に、乳化剤を含有することを特徴とする請求項1または2記載の飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物。
  4. 更に、塩類を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の水中油型乳化油脂組成物を使用してなる飲料用クリーム。
  6. ラウリン系油脂を含む油相と、タンパク質を含む水相とをホモジナイザーにより均質化して、乳化物の平均粒子径を0.8μm以下に調整することを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の飲料用クリーム製造用水中油型乳化油脂組成物の製造方法。
  7. ホモジナイザーによる均質化を2回行う、請求項6に記載の製造方法。
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