以下、本発明に係る構成を図1から図18に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
<第1の実施形態>
(画像形成装置)
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す全体構成図である。図1に示すように、画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタである。画像形成装置本体1の上方にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。
各作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。また、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電部75、現像部76、クリーニング部77、除電部(不図示)等が配設されている。そして、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)がおこなわれて、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成されることになる。
感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、不図示の駆動モータによって図1中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部75の位置で、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光の照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、現像装置76との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78及び第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程)。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、クリーニング部77との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程)。
最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト78上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト78上にカラー画像が形成される。
ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80、等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82〜84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動される。
4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kは、それぞれ、中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。
そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト78は、2次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラ82が、2次転写ローラ89との間に中間転写ベルト78を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト78上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される。このとき、中間転写ベルト78には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。
その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。こうして、中間転写ベルト78上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、装置本体1の下方に配設された給紙部12から、給紙ローラ97やレジストローラ対98等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。
レジストローラ対98に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対98のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト78上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対98が回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置20の位置に搬送される。そして、この位置で、定着スリーブ21及び加圧ローラ31による熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。
その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された被転写Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
(定着装置)
図2は、本発明に係る定着装置の一実施形態を示す断面図である。図2に示すように、本実施形態に係る定着装置20は、回転する無端状ベルトである定着部材(定着スリーブ21)と、定着部材の外周側に該定着部材を押圧可能に配置され、定着部材との間にニップ部を形成する加圧部材(加圧ローラ31)と、定着部材の内周側に配置され、該定着部材を加熱する抵抗体発熱部(抵抗発熱層22b)を有した面状発熱体(面状発熱体22(発熱シート22s))と、を備え、面状発熱体から定着部材への伝熱を制御して、面状発熱体の発熱を所定温度以下に設定される該面状発熱体の耐熱温度内に収束させるものである。なお、図2は、定着装置20の装置立ち上げ後など装置内の所定部材(発熱体支持部材32aなど)が熱膨張している時(熱膨張時)の状態を示している。
定着スリーブ(定着部材、定着ベルト)21は、軸方向が通紙される記録媒体Pの幅に対応する長さを有し、可撓性を有するパイプ形状の無端状ベルトであり、例えば厚さが30〜50μmの金属材料からなる基材上に少なくとも離型層を形成したものであって、外径が30mmになっている。また、定着スリーブ21の内周面には、当接部材26との間の摺動抵抗を低減させるために、グリースや潤滑オイルなどの潤滑剤が塗布されている。
以降、図3(a)に示すように、定着スリーブ21のパイプ長手方向を軸方向と、図3(b)に示すように、定着スリーブ21のパイプ円周方向を周方向と称する。
定着スリーブ21の基材を形成する材料としては、鉄、コバルト、ニッケル、又はこれらの合金等の伝熱性のよい金属材料を用いることができる。
定着スリーブ21の離型層は、層厚が10〜50μmであって、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、PTFE(4フッ化エチレン樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等の材料で形成されている。離型層は、記録媒体P上のトナー像(トナー)Tが直接的に接する定着スリーブ21表面のトナー離型性を高めるためのものである。
加圧ローラ31は、アルミニウム、銅等の金属材料からなる芯金上に、シリコーンゴム(ソリッドゴム)等の耐熱性弾性層、離型層が順次形成されたものであって、外径が30mmになっている。弾性層は、肉厚が2mmとなるように形成されている。離型層は、PFAチューブを被覆したものであって、厚さが50μmになるように形成されている。また、芯金内には必要に応じてハロゲンヒータなどの発熱体を内蔵してもよい。また、加圧ローラ31は、加圧手段(不図示)により定着スリーブ21を介して当接部材26に圧接され、その圧接部は定着スリーブ21側が凹んだニップ部を形成している。そして、このニップ部に、記録媒体Pが搬送されることになる。
また、加圧ローラ31は、定着スリーブ21に圧接した状態で不図示の駆動機構により駆動回転され(図2において時計回り方向に回転)、この加圧ローラ31の回転に伴って定着スリーブ21が従動回転することになる(図2において反時計回り方向に回転)。
当接部材26は、定着スリーブ21の軸方向に長さを有し、少なくとも定着スリーブ21を介して加圧ローラ31と圧接する部分がフッ素系ゴムなどの耐熱性を有する弾性体からなるものであり、コア保持部材28により定着スリーブ21の内周側の所定位置に保持された状態で固定されている。また、当接部分26の定着スリーブ21の内周面と接する部分はテフロン(登録商標)シートなどの摺動性及び耐磨耗性の優れた材料からなるものとするとよい。
コア保持部材(支持部材)28は、金属などの板材が板金加工されてなり、定着スリーブ21の軸方向の長さに対応する長さを有し断面がH型形状の剛性部材であり、定着スリーブ21の内周側の略中心部分に配置されるものである。
また、コア保持部材28は、定着スリーブ21の内周側に配置される種々の部材を所定位置に保持するものであり、例えばコア保持部材28のH型の一方(加圧ローラ31に対向する側)のくぼんだ部分に当接部材26を収納保持し、当接部材26が加圧ローラ31により加圧されても大きく変形しないようにニップ部とは反対面側から支持している。また、コア保持部材28は、当接部材26を該コア保持部材28から加圧ローラ31側に少し突出するように保持しており、ニップ部でコア保持部材28が定着スリーブ21に接触しないように配置されている。
また、コア保持部材28のH型の他方(加圧ローラ31側とは反対側)のくぼんだ部分に、発熱体押圧機構部32としての発熱体支持部材32a、弾性部材32bが配置されている。
また、コア保持部材28と発熱体支持部材32aにおける面状発熱体22(発熱シート22s)を支持する面とは反対側の面との間であって、発熱体支持部材32aにおける面状発熱体22(発熱シート22s)を支持する面とは反対側の面に、発熱体支持部材32aとともに移動可能に固設されるプレート形状のストッパ部材32tを備える。また、図2に示すように、弾性部材32bを支持する弾性部材ホルダ32hを備えることも好ましい。なお、弾性部材ホルダ32hおよびストッパ部材32tも発熱体押圧機構部32を構成するものである。
また、面状発熱体22(発熱シート22s)へは、電源30から給電線25を介して電力供給がなされている。
[面状発熱体(1)]
次に、定着装置20が備える面状発熱体22(発熱シート22s)について詳細に説明する。先ず、図4を参照して、面状発熱体の構成例(1)を説明する。
面状発熱体22は、図4に示すように、絶縁性を有する基層22a上に、耐熱性樹脂中に導電性粒子が分散されてなる抵抗発熱層22bと、該抵抗発熱層22bに電力を供給する電極層22cと、が形成され、定着スリーブ21の軸方向、周方向に対応して所定の幅及び長さをもち可撓性を示す発熱シート22sを有する。また、基層22a上には、抵抗発熱層22bと隣接する別の給電系統の電極層22cとの間や発熱シート22sの縁部分と外部との間を絶縁する絶縁層22dが設けられている。なお、面状発熱体22は、発熱シート22sの端部で電極層22cに接続され、電源30から給電線25を介して供給される電力を該電極層22cに供給する端子部(図12の端子部22t)を備える。また、端子部は、発熱シート22sの長手方向(通紙幅方向)の幅外に設けられる。
また、発熱シート22sの厚さは0.1〜1mm程度であり、少なくとも発熱体支持部材32aの曲面に沿って密着させることができる程度の可撓性を有している。
ここで、基層22aは、PETまたはポリイミド樹脂などのある程度の耐熱性を有する樹脂からなる薄膜の弾性体フィルムであり、このうちポリイミド樹脂からなるフィルム部材であることが好ましい。これにより、耐熱性と、絶縁性と、ある程度の柔軟性(可撓性)を備える。
抵抗発熱層22bは、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂中にカーボン粒子や金属粒子などの導電性粒子が均一に分散してなる導電性を有する薄膜であり、通電されると内部抵抗によりジュール熱として発熱する構成となっている。このような抵抗発熱層22bは、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂の前駆体中にカーボン粒子や金属粒子などの導電性粒子を分散させた塗料を基層22a上に塗布して成膜するとよい。
また、抵抗発熱層22bは、基層22a上にまずカーボン粒子や金属粒子からなる薄膜の導電層が形成され、ついでその導電層上にポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂からなる絶縁性薄膜を積層して一体化したものであってもよい。
なお、抵抗発熱層22bに使用するカーボン粒子は、通常のカーボンブラック粉末でもよいが、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイルの少なくともいずれかからなるカーボンナノ粒子であってもよい。
また、金属粒子は、Ag、Al、Niなどからなる粒子であり、その形状は粒状であってもよいし、フィラメント状であってもよい。
絶縁層22dは、ポリイミド樹脂などの基層22aと同じ耐熱性樹脂からなる絶縁材料を塗布により形成するとよい。
電極層22cは、導電性インクやAgなどの導電性ペーストなどを塗布して形成したものでもよいし、金属箔や金属網などを接着して形成したものであってもよい。
面状発熱体22を構成する発熱シート22sは、厚みの薄いシートであることから熱容量が小さく、急速な加熱が可能であり、その発熱量は抵抗発熱層22bの体積抵抗率によって任意に設定できる。すなわち、抵抗発熱層22bを構成する導電性粒子の構成材料、形状、大きさ、分散量などにより発熱量を調整することが可能であり、例えば単位面積当りの発熱量35W/cm2で、総電力1200W程度の出力が得られる面状発熱体22の実現が可能である。この場合、発熱シート22sは、例えば幅(軸方向)20cm、長さ(周方向)2cm程度のサイズとなる。
また、面状発熱体としてステンレスなどの金属フィラメントからなるものを用いた場合、フィラメントの存在により面状発熱体の表面には凹凸が生じていることから、本発明のように定着スリーブ21の内周面と摺動させると、表面が容易に磨耗してしまうが、本発明で使用する発熱シート22sは前述のように表面に凹凸がなく平坦であることから、定着スリーブ21の内周面との摺動に対して優れた耐久性を示す。またさらに、発熱シート22sの抵抗発熱層22b表面にフッ素系樹脂をコーティングすると、定着スリーブ21の内周面との接触に対する耐久性がさらに向上するので好ましい。また、面状発熱体の表面保護、および軸方向の温度分布を均一にする目的で面状発熱体に金属のカバーを取り付けても良い。
[面状発熱体(2)]
次に、図5および図6を参照して、面状発熱体の構成例(2)について説明する。なお、構成例(1)と同様の点についての説明は省略する。
図5および図6に示すように、面状発熱体22は、抵抗発熱層22bが電気絶縁層(基層22aおよび高熱伝導絶縁層22e)に挟まれる形で積層されている。また、面状発熱体22の端子部22tを面状発熱体22(発熱シート22s)の長手方向(軸方向)における幅外(少なくとも抵抗発熱層22bの長手方向幅外であればよい)に設けることにより、面状発熱体22の抵抗発熱層22b以外の領域で、後述のように、発熱体支持部材32aにねじ留め固定させる空間が設けることができる。なお、図6において端子部22tと面状発熱体22の抵抗発熱層22bとは不図示の電極層22c等を介して通電可能に構成されている。
ここで、抵抗発熱層22bは、正温度係数(PTC特性)を有する材料で形成されることが好ましい。これにより、通電加熱時にも、ヒータ耐熱温度に到達しないように制御され、急速な昇温でもヒータ耐熱温度に到達しないようになる。
また、図4の例とは異なり、面状発熱体22の定着スリーブ21側の伝熱面を、高熱伝導率を有する電気絶縁層からなる高熱伝導絶縁層(熱伝達強化層)22eとすることで、抵抗発熱層22bを通電加熱した際、熱を定着スリーブ21へ効率良く伝えることができ、局所的な昇温による焼損がなくなり、定着スリーブ21の発熱を均一にすることが可能となる。
高熱伝導絶縁層22eとしては、ポリイミド(PI)、ポリイミドアミド(PAI)などの耐熱性樹脂に、窒化アルミなどの絶縁性で高熱伝導性の充填材を添加したフィルムを用いることができる。このようなフィルムとしては、例えば、カプトンMTフィルムを用いることができ、その特性は、例えば、厚さ25μmで耐電圧3kV以上、熱伝導率0.37W/mKである。また、例えば、厚さ25μmで耐電圧1kV以上、熱伝導率2.5W/mKのもの等を用いることも好ましい。
また、高熱伝導絶縁層22eの定着スリーブ21側の面には、9.0W/mK程度の熱伝導率を有する耐熱性のグリースを塗布することも好ましい。これにより、熱伝導が良くなり、さらに良好な昇温性能を得ることができる。
以上のように積層作製される面状発熱体22は、その作成後に通電加熱エージング処理を施すことにより、抵抗値の変動を抑えることができ、高い信頼性および高い耐久性を有する面状発熱体22とすることができる。
[発熱体押圧機構部]
次に、定着装置20が備える発熱体押圧機構部32について詳細に説明する。発熱体押圧機構部32は、発熱体支持部材32a、弾性部材32b、弾性部材ホルダ32hおよびストッパ部材32tにより構成される。図7に発熱体押圧機構部32の斜視図を、図8に発熱体押圧機構部32の上面図を示す。なお、図7及び図8では、弾性部材ホルダ32hの図示は省略している。また、ストッパ部材32tを有さず、弾性部材32bのみで発熱体支持部材32aを支持するようにしても良い。
発熱体押圧機構部32において、発熱体支持部材32aは、面状発熱体22(発熱シート22s)を定着スリーブ21の内周面と当接させて配置するために該面状発熱体22(発熱シート22s)を支持するものである。そのため、発熱体支持部材32aにおいて面状発熱体22(発熱シート22s)を支持する面は、断面形状を円形とした定着スリーブ21の内周面に沿った所定の弧の長さの外周面を有している。
また、発熱体支持部材32aは、面状発熱体22(発熱シート22s)の発熱に耐えるだけの耐熱性と、回転走行する定着スリーブ21が面状発熱体22(発熱シート22s)に接触した際に変形することなく面状発熱体22(発熱シート22s)を支持するだけの強度と、面状発熱体22(発熱シート22s)の熱をコア保持部材28側に伝えずに、定着スリーブ21側に伝えるようにする断熱性と、を有することが好ましく、例えばポリイミド樹脂の発泡成形体などの耐熱樹脂発泡体からなることが好ましい。例としては、PI(ポリイミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PAI(ポリアミドイミド)、PEI(ポリエーテルイミド)、LCP(液晶ポリマー)、PEK(ポリエーテルケトン)、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン)樹脂等である。
なお、発熱体支持部材32aは、耐熱樹脂発泡体32a1と、該耐熱樹脂発泡体32a1よりも熱膨張率の大きな耐熱ゴム部材32a2とからなることも好ましい。これにより、発熱体支持部材32aとして、線膨張率の高い耐熱ゴム部材32a2を用いることで、後述する熱膨張時の定着スリーブ21と面状発熱体22(発熱シート22s)の押し付け力を大きくすることができる。
また、耐熱樹脂発泡体32a1が、例えば、ポリイミドからなるときには、耐熱ゴム部材32a2はシリコーンゴムからなることが好適である。例えば、発熱体支持部材32aを構成する耐熱ゴム部材32a2をシリコーンゴムからなるものとした場合、その線膨張係数は2.5×10−4〜4.0×10−4/℃であることから、耐熱ゴム部材32a2の厚みを10mmとすると100degの温度上昇で最大0.4mmの熱膨張が発生することになる。
また、発熱体支持部材32aにおける面状発熱体22(発熱シート22s)を支持する面とは反対側の面は、対向するコア保持部材28の面と略平行な平面となっている。
弾性部材32bは、スプリングバネや板バネなどからなり、発熱体支持部材32aとコア保持部材28の間でコア保持部材28に支持されるとともに発熱体支持部材32aに接触した状態にあり、少なくとも発熱体支持部材32aの軸方向2箇所(図7、図8では両端部)を定着スリーブ21側に押圧するように配置されている。
ストッパ部材32tは、発熱体支持部材32aとコア保持部材28の間に、その板面が発熱体支持部材32aにおける面状発熱体22(発熱シート22s)を支持する面とは反対側の面と平行となるように定着装置20の側板20fでその両端が固設されている(図8)。なお、コア保持部材28も側板20fに固設されている。また、ストッパ部材32tには、弾性部材32bと接触しないように、弾性部材32bを通す貫通孔を有する。
このような発熱体押圧機構部32における発熱体支持部材32aとストッパ部材32tの配置関係は、定着装置20が20℃程度の室温状態にある冷間時には、発熱体支持部材32aにおける面状発熱体22(発熱シート22s)を支持する面とは反対側の面とストッパ部材32tとは離間した状態にあり(図9)、装置立ち上げに伴って発熱体支持部材32aが熱膨張すると該発熱体支持部材32aにおける面状発熱体22(発熱シート22s)を支持する面とは反対側の面とストッパ部材32tとが接触する(図2に示す状態)、配置関係とする。
例えば、冷間時の発熱体支持部材32aにおける面状発熱体22(発熱シート22s)を支持する面とは反対側の面とストッパ部材32tとのギャップを0.1〜0.5mmとするとよい。
このような発熱体支持部材32aとストッパ部材32tの配置関係としておくと、定着装置における立ち上げ動作において、定着スリーブ21と面状発熱体22(発熱シート22s)の接触力(面圧)及び定着装置20の回転駆動に関する動トルクはつぎのようになる。図10及び図11に示すグラフを参照しつつ説明する。
すなわち、装置立ち上げ開始時である冷間時には、発熱体支持部材32aは熱膨張しておらず、発熱体支持部材32aとストッパ部材32tとは離間した状態にあることから(図9)、発熱体支持部材32aは弾性部材32bの小さい弾性力のみで押圧されるようになり、面状発熱体22(発熱シート22s)は比較的低い面圧で定着スリーブ21の内周面と当接することになる(図10の経過時間0のとき)。
このとき、定着スリーブ21の内周面に塗布されている潤滑剤も冷えた状態にあり粘性が高く摺動抵抗が大きいため、定着装置20の回転駆動に関する動トルクも大きい状態にある。ただし、本実施形態では、弾性部材32bは比較的弾性力の小さいもの(弱バネ)を使用しているため、定着装置20の回転駆動を行うことのできる許容範囲内(許容限界未満)の動トルクとなっている(図11の経過時間0のとき)。
ちなみに、弾性部材32bのみで装置立ち上げ後において定着スリーブ21と面状発熱体22(発熱シート22s)の間で十分な接触力(面圧)を確保しようとした場合、弾性力の大きいもの(強バネ)を使用する必要があるが、この場合には冷間時に定着装置20の回転駆動に関する動トルクが許容限界を超えてしまい不適である(図10の「強バネのみ」の経過時間0のときを参照。)。
次に、面状発熱体22(発熱シート22s)に通電を開始すると、面状発熱体22(発熱シート22s)の発熱は接触している定着スリーブ21を加熱すると同時に、面状発熱体22(発熱シート22s)と接触する発熱体支持部材32aも加熱されて熱膨張を開始する。このとき、発熱体支持部材32aにおける面状発熱体22を支持する面は所定の張力で張られた定着スリーブ21と当接支持された状態にあるため、発熱体支持部材32aは面状発熱体22(発熱シート22s)を支持する面とは反対側に(すなわち弾性部材32bの押圧に対向する方向に)熱膨張し、弾性部材32bが発熱体支持部材32aにより圧縮されるのに伴って面状発熱体22(発熱シート22s)と定着スリーブ21の内周面との面圧(接触力)は徐々に増加することになる(図10の経過時間aまで)。
一方、定着装置20の回転駆動に関する動トルクに関しては、面状発熱体22(発熱シート22s)と定着スリーブ21の内周面との面圧(接触力)が増加するに伴い両者の摺動抵抗は増加するが、定着スリーブ21の加熱に伴って潤滑剤も加熱されて粘性が低下するため、動トルクは徐々に低下することになる(図11の経過時間aまで)。ここまでは、弾性力の小さい弾性部材32bのみを作用させて定着スリーブ21に面状発熱体22(発熱シート22s)を押し付けている場合(弱バネのみ)と同様な動トルクの挙動を示す。
さらに、発熱体支持部材32aが熱膨張すると、図2のように発熱体支持部材32aとストッパ部材32tが接触するようになる。ここでストッパ部材32tは側板20fに固設されていることから、発熱体支持部材32aはそれ以上面状発熱体22(発熱シート22s)を支持する面とは反対側(弾性部材32bの押圧に対向する方向)に膨張することができないため、以降の熱膨張分はそのまま面状発熱体22(発熱シート22s)の定着スリーブ21への押し付け力増加につながる(図10の経過時間a以降)。すなわち、面状発熱体22(発熱シート22s)の発熱により定着スリーブ21及び発熱体支持部材32aがある程度まで加熱されると、面状発熱体22(発熱シート22s)は弾性部材32bで与える面圧よりも高い面圧で定着スリーブ21の内周面と当接することになり、最終的には発熱体支持部材32aの温度が飽和したところで面状発熱体22(発熱シート22s)と定着スリーブ21の内周面との面圧(接触力)も飽和し、「強バネのみ」と同等の面圧(接触力)が得られるようになる。
このとき、発熱体支持部材32aがストッパ部材32tに接触した後は面状発熱体22(発熱シート22s)と定着スリーブ21の内周面との面圧(接触力)増加の勾配が大きくなるため動トルク低下が鈍化するが、定着スリーブ21の内周面にある潤滑剤は十分に加熱されて粘性が低くなっているため、動トルク全体としては低い値に抑えられており、低い動トルクでの定着装置20の回転駆動を行うことが可能である(図11の経過時間a以降)。
以上説明したように、発熱体支持部材32aが熱膨張すると、ストッパ部材32tとコア保持部材28が接触するようになるが、ここでコア保持部材28は側板20fに固設されていることから、ストッパ部材32tと一体となった発熱体支持部材32aはそれ以上面状発熱体22(発熱シート22s)を支持する面とは反対側(弾性部材32bの押圧に対向する方向)に膨張することができないため、以降の熱膨張分はそのまま面状発熱体22(発熱シート22s)の定着スリーブ21への押し付け力増加につながるようになる。
したがって、面状発熱体22を支持する発熱体支持部材32aの熱膨張と弾性部材32bの弾性力を利用することで、潤滑剤の温まり方に対応させて定着スリーブ21への面状発熱体22の押し付け力を変化させるので、特別な加圧力変更機構を有することなしに、定着装置20の回転駆動における低トルク化と定着スリーブ21への面状発熱体22の押し付け力の適正化とを両立することができる。
なお、図12に示すように、面状発熱体22の発熱体支持部材32a側の面に、さらに、高い断熱性を有する弾性体33を設けることも好ましい。これにより、弾性体33の弾性力を利用して密着力を高め、面状発熱体22の伝熱面方向以外への熱損失を減少させることができ、熱伝導が良くなり良好な昇温性能を得られエネルギー効率の高い小型の熱源を用いることが可能となる。なお、高い断熱性を有する弾性体33としては、例えば、耐熱温度が200℃以上あるシリコンスポンジや、フッ素系の高耐熱スポンジ等を用いることが好ましい。
また、電源30からの給電線25の端子部25tと、面状発熱体22の端子部22tとを、導電性弾性体24を介して接続することが好ましい。
[面状発熱体の伝熱制御]
面状発熱体22が、抵抗体発熱部22bの発熱により設計された面状発熱体自身の耐熱温度を超えてしまうと、破損、性能劣化、焼損等のおそれが生じる。そこで、本実施形態に係る定着装置20は、面状発熱体22から定着スリーブ21への伝熱制御を適切に行うことにより、面状発熱体22の発熱が、所定温度(例えば、220℃)以下に設定される面状発熱体22の耐熱温度内に収束する、換言すれば、面状発熱体22自身の発熱により面状発熱体22が破損もしくは性能劣化しない温度範囲に制御されるものである。この定着装置20は、以下に説明する要素のいずれかまたは複数の要素を考慮して、面状発熱体22を所定の耐熱温度以下に制御するものである。
先ず、定着スリーブ21の構成により、定着スリーブ21への伝熱を向上させることで面状発熱体22の発熱制御を行うことができる。面状発熱体22のように比較的大きな電力を扱う場合、与えられた電力を消費するためには加熱対象物となる定着スリーブ21には、熱伝導率や熱容量の高い材質を用い、面状発熱体22自身の温度と加熱対象物との温度を極力同じ温度に近づけることが理想である。このため、定着スリーブ21を、熱伝導率および/または熱容量の高い材質により構成することが好ましい。
ここで、伝熱における熱伝導率の寄与は、次式(1)に示すように伝熱面積(接触面積)と温度勾配の比例係数として表される。
単位時間あたりの伝熱量(W)
=熱伝導率(W/(m・k))×温度勾配(k/m)×伝熱面積(m2)・・・(1)
また、伝熱における熱容量の寄与は、次式(2)に示すように伝熱されるものどうしの温度差に対する比例係数として表される。
伝熱量(J)=熱容量(J/k)×温度差(k)・・・(2)
なお、熱伝導率や熱容量の大きな材質として、金属系ではCuやAl等を用いることができる。また、上述のように、NiやSUSを基材とした金属ベルトを用いることが好ましい。また、樹脂系の材料としては絶縁性の熱伝導強化層を持つポリイミド、ポリイミドアミドなどの耐熱性樹脂に、窒化アルミなどの絶縁性で高熱伝導性の充填材を添加したカプトンMT等を用いることができる。
このように、適切な熱伝導率と熱容量を有する定着スリーブ21を面状発熱体22に接触させる構成とすることにより、高い電力を有する面状発熱体22においても面状発熱体22自身が破損もしくは性能劣化しない温度範囲に制御されて、伝熱効率がよく、信頼性の高い定着装置20を構成できる。
また、定着スリーブ21の材質の変更と併せて、または、これに替えて、面状発熱体22自身の出力を制御して、上記(1),(2)式における伝熱量を減らす、すなわち、面状発熱体の総電力は同じにしたまま、単位面積あたりの電力量(電力密度)を減らしてやることにより、面状発熱体自身の温度と加熱対象物との温度を極力同じ温度に近づけるものである。
図13に示すグラフは、図14に示すように、面状発熱体22の表面(発熱体支持部材32a側)と定着スリーブ21の表面に熱電対29を取り付け、所定の電力密度にて伝熱状態を計測したものであり、電力密度と、定着スリーブ21と面状発熱体22との平均温度差との関係を示すグラフである。なお、総電力はすべて約1000Wで共通とした。
図13に示すように、電力密度が大きくなるほど面状発熱体22の表面と定着スリーブ21の表面との平均温度差は大きくなる。すなわち、総電力が同じでも伝熱面積を大きくすれば熱の伝わりがよくなり温度差が無くなっていくといえる。電力密度が小さいほど温度差が小さいので面状発熱体22を耐熱温度以下に制御することが容易となる。
ここで、電力密度は、面状発熱体22(抵抗発熱層22b、高熱伝導絶縁層22eなど)の表面性状(表面粗さ)を変えることにより所望の値とすることができる。すなわち、面状発熱体22の表面性状を変えることにより、定着スリーブ21との接触面積(伝熱面積)を異なるものとすることができる。具体的には、接触面積が大きくなるほど熱の伝わりを良くすることができる。
また、電力密度は、上述のように、抵抗発熱層22bの体積抵抗率によって任意に設定できる。すなわち、抵抗発熱層22bを構成する導電性粒子の構成材料、形状、大きさ、分散量などにより所望の値となるようにすることができる。
例えば、抵抗発熱層22bに印加する電圧を100Vとし、面状発熱体22の出力を1200Wとすると、抵抗発熱層22bの抵抗値を変えることで設定した所望の電力密度とすることができる。この時、インバータを用いた回路構成により可変の電圧変更手段を構成することで所望の電力密度に設定することができる。
また、電力密度は、面状発熱体22の定着スリーブ21に対する面圧、定着スリーブ21、面状発熱体22の変形量、面状発熱体22と定着スリーブ21との間に生じる空隙(離間量)等に応じて最適な値となるように1つの面状発熱体内において異なる値となるように面状発熱体22を構成することが好ましい。例えば、面状発熱体22と定着スリーブ21との間に空間ができ熱伝導性が悪くなることが想定される位置についての電力密度を変えることで定着スリーブ21への伝熱量をコントロールすることができ、定着スリーブ21と面状発熱体22との間の温度差を低減することが可能となり伝熱効率を向上させることができる。
例えば、面状発熱体22は、発熱体押圧機構部32により定着スリーブ21に押し付けられるが、加圧される応力状態により図16(A)〜(C)の例に示されるような応力と変形の関係にあるため、押し付けられる状態により変形量が最大になる位置が存在する。
図15に示すグラフは、図14に示したように、面状発熱体22の表面(発熱体支持部材32a側)と定着部材21の表面に熱電対29を取り付け、所定の電力密度(X1〜X4)にて伝熱状態を計測したものであり、面状発熱体22の押圧力(面圧)と温度差の関係を示すグラフである。なお、面圧が大きければ、面状発熱体22と定着スリーブ21との接触面積は大きくなり、面圧が小さければ、面状発熱体22と定着スリーブ21との接触面積は小さくなり、両者の間に空隙が生じ得る。
ここで、図15に示すグラフによれば、面圧が大きい(接触面積が大きい)ほど温度差が低く、面圧が小さく、ヒータと定着部材の間に空間が存在するほど温度差が大きくなることがわかる。
したがって、加圧される応力状態による面状発熱体22の変形量を想定し、各位置における定着スリーブ21との接触状態に応じて、電力密度を適切に設定することが好ましい。例えばツヅミをもった定着ローラ形状などの定着部材の形状、もしくは定着部材の表面粗さといった表面性状による温度差が予想でき、予想結果から変形量や形状による適切な電力密度の設定が可能となる。同様に、想定される定着スリーブ21の変形量に応じて、定着スリーブ21の熱伝導率、熱容量を適切に設定することも好ましい。これにより、定着スリーブ21と面状発熱体22との間にギャップが生じた場合でも伝熱量をコントロールし効率的な加熱ができる定着装置20を構成することができる。
また、面状発熱体22の温度制御の基準となる温度センサ(温度検知手段)34の配置位置に関し、図16に示したように、面状発熱体22は、加圧される応力および応力状態による変形量と、定着スリーブ21の形状、もしくは表面性状等により温度差が生じる位置(変形量min)に配置することが好ましい。
当該位置は、例えば、面状発熱体22と定着スリーブ21が最も離間し、一番温度の高くなることが想定される位置であるので当該位置に温度センサ34を配置して、当該位置での温度検知結果に基づいて、面状発熱体22を耐熱温度以下に制御することで耐熱温度を超えた場合のヒータ破損や性能劣化が防止できる。また、同様の理由により、温度センサ34を電力密度が最も高い部分、熱伝導率、熱容量が最も低い部分に配置することも好ましい。
なお、温度センサ34を用いて面状発熱体22により面状発熱体自身の温度が耐熱温度以下で制御されるような電力供給手段40としては、例えば、図17に示すように、インバータ35を用いた回路構成として、電圧を可変とすることができる。なお、電力供給手段40の回度構成は特に限られるものではない。
以上説明した本実施形態に係る定着装置によれば、面状発熱体と定着部材との間の伝熱を適切に制御して、面状発熱体の抵抗体発熱部による発熱を、ハロゲンヒータ等に比べて低い面状発熱体の耐熱温度内に収束させることができ、熱容量を小さくすることで昇温時間が短く、省電力でエネルギー効率の高い小型の定着装置を構成することができる。
[定着装置の動作]
以上説明した定着装置20(図2)の動作の一例を説明する。先ず、画像形成装置が出力信号を受ける、例えば、ユーザの操作パネルの操作あるいはパソコンからの通信などにより画像形成装置に印刷要求があると、定着装置20において、加圧脱圧手段により加圧ローラ31が定着スリーブ21を介して当接部材26を押圧し、ニップ部を形成する。
次いで、不図示の駆動装置によって、加圧ローラ31が図2の時計回り方向に回転駆動されると、定着スリーブ21も連れ回りして反時計回り方向に回転する。このとき、定着スリーブ21の内周面と発熱シート22sとは、弾性部材32bの弾性力により当接している。
そして、それと同期して外部電源または内部の蓄電装置(電源30)から給電線25を通じて面状発熱体22に電力が供給され、発熱シート22sが発熱し、定着スリーブ21は該発熱シート22sから軸方向全幅において効率的に熱が伝達され、急速に加熱される。なお、駆動装置の動作と面状発熱体22による加熱は同時刻に同時に開始する必要はなく、適宜時間差を設けて開始しても良い。
このとき、ニップ部上流側であって、定着スリーブ21に対して接触又は非接触に配置された温度検知手段(不図示)で検知される温度により、ニップ部が所定の温度となるように、面状発熱体22による加熱制御が行われており、定着に必要な温度まで昇温された後、保持され、記録媒体Pの通紙が開始される。
このように、定着装置20によれば、定着スリーブ21及び面状発熱体22の熱容量が小さいため、省エネを図りつつウォームアップ時間やファーストプリント時間を短くすることができる。また、面状発熱体22における発熱シート22sは樹脂ベースのシートであるため、加圧ローラ31の回転、振動に起因する応力が発熱シート22sに繰り返し作用して、発熱シート22sの屈曲が繰り返し行われても疲労破壊することがなく、長時間の運転が可能である。またさらに、面状発熱体22(発熱シート22s)を支持する発熱体支持部材32aの熱膨張と弾性部材32bの弾性力を利用することで、潤滑剤の温まり方に対応させて定着スリーブ21への面状発熱体22(発熱シート22s)の押し付け力を変化させるので、特別な加圧力変更機構を有することなしに、定着装置20の回転駆動における低トルク化と定着スリーブ21への面状発熱体22(発熱シート22s)の押し付け力の適正化とを両立することができる。またその結果、定着スリーブ21は、軸方向で均一に加熱されるので、軸方向で良好な定着性及び均一な画像光沢を得ることが可能となる。
また、画像形成装置への出力信号がない場合、通常は消費電力を抑えるために加圧ローラ31及び定着スリーブ21は非回転で、面状発熱体22は通電を停止されているが、すぐに再出力を開始したい(復帰させたい)場合は、加圧ローラ31及び定着スリーブ21が非回転の状態でも面状発熱体22に通電しておくことが可能である。この場合は、面状発熱体22に定着スリーブ21全体を保温させておく程度の通電を行う。
なお、図2に示す構成のように、コア保持部材28は当接部材26を保持しており、加圧ローラ31の押圧方向に、当接部材26、コア保持部材28、弾性部材32b、発熱体支持部材32a、面状発熱体22(発熱シート22s)がこの順番で配列されていることが好適である。定着スリーブ21に対して、当接部材26と発熱体支持部材32aで反対方向の力をかけることで、発熱体支持部材32aと定着スリーブ21の間のテンションを効率的に付与することができるためである。
また、本実施形態に係る定着装置は、簡単な構成で内周面に潤滑剤が塗布された定着部材に対して面状発熱体を潤滑剤の温まり方に応じて加圧力を変化させて当接させ、定着部材を効率的かつ均一に加熱することができ、熱伝導が良く、良好な昇温性能を得ることができる。
さらに、面状発熱体を支持する発熱体支持部材の熱膨張と弾性部材の弾性力を利用することで、潤滑剤の温まり方に対応させて定着部材への面状発熱体の押し付け力を変化させるので、特別な加圧力変更機構を有することなしに、定着装置の回転駆動における低トルク化と定着部材への面状発熱体の押し付け力の適正化とを両立することができる。
また、当該定着装置を備えた画像形成装置(図1)によれば、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短く、軸方向で良好な定着性及び均一な画像光沢を得ることが可能となる。
<第2の実施形態>
ところで、図2に示す定着装置20では、回転時はニップ部で加圧ローラ31に引っ張られることから、ニップ部の上流側の定着スリーブ21は張力が付与された張り側となり、ニップ部の下流側では定着スリーブ21に張力は作用しておらず弛んだ状態となっており、この状態のまま装置の高速化を図ろうとすると、ニップ部の下流側の定着スリーブ21の弛む程度がひどくなり、定着スリーブ21の回転走行安定性に支障が出て場合がある。また、定着スリーブ21が撓んだ状態で発熱体支持部材32aに進入してくると、発熱シート22sとの当接状態も不安定になりかねない。
そこで、図18に示すように、定着装置20において、定着スリーブ21の内周側であって少なくともニップ部下流側で、該定着スリーブ21の回転状態を支持する回転支持部材27を備えることも好ましい。
回転支持部材27は、例えば厚さ0.1〜1mmの鉄、ステンレス等の薄肉金属からなるパイプ形状のものであり、その外径が定着スリーブ21の内径よりも直径で0.5〜1mm程度小さいものとなっている。また、回転支持部材27のパイプ円周上において、ニップ部に対応する箇所に凹部を有し、該凹部がコア保持部材28の凹部に嵌め込まれるとともに、回転支持部材27の凹部にさらに当接部材26が嵌め込まれている。
また、回転支持部材27のニップ部とは円周中心を挟んで反対側は、面状発熱体22(発熱シート22s)を露出させて定着スリーブ21に当接させる開口部を有している。さらに、回転支持部材27の内部には、発熱体押圧機構部32を構成する発熱体支持部材32a、ストッパ部材32t、弾性部材32b、弾性部材ホルダ32hが図2と同様に配置されている。
したがって、面状発熱体22(発熱シート22s)は、発熱体支持部材32aに支持されて、定着スリーブ21の内周面と接触して配置され、定着スリーブ21を効率的に加熱することが可能である。
なお、パイプ形状の回転支持部材27のそのパイプ周面が軸方向に切断されてできた端部は、コア保持部材28にニップ部の周方向前後で拘持されることにより、回転支持部材27は保持されている。また、回転支持部材27の軸方向両端は定着装置20のフレームを構成する側板20fで保持されている。
以上の構成のように、回転支持部材27により定着スリーブ21の回転走行安定性が確保できるだけでなく、定着スリーブ21を剛性の高い金属製の回転支持部材27で支持できるので組立上のハンドリングが容易となる。
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。