以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
図1は、定着装置の第1の実施形態における構成を示す断面模式図である。
図2は、定着装置中の定着部材の構成を示す模式図であり、(a)は定着部材の斜視模式図、(b)は定着部材の断面模式図である。
図1に示す定着装置20は、回転する無端状ベルトからなる定着部材21(定着スリーブ21または定着回転体21ともいう)と、定着部材21の外周面と当接する加圧部材31(加圧ローラ31または加圧回転体31ともいう)と、定着部材21の内周側に配置され、定着部材21を介して加圧部材31と当接してニップ部を形成する当接部材26と、定着部材21の内周側に定着部材21と当接または近接して配置され、定着部材21を直接または間接的に加熱する面状発熱体22と、定着部材21の内周側に定着部材21との間に面状発熱体22を挟むように配置され、面状発熱体22を所定位置で支持する発熱体支持部材23と、を備える。なお、図1では、面状発熱体22が定着部材21の内周面と当接し、直接加熱する構成を示している。
また、定着装置20は、面状発熱体22と発熱体支持部材23との間に配置され、面状発熱体22の表面温度を検知する第1温度検知手段41と、第1温度検知手段41に対して定着部材21を挟んで対向する位置に配置され、定着部材21の外周面温度を検知する第2温度検知手段42と、定着部材21の内周側から定着部材21に押し当て力を与えることによって定着部材21の張力を変動させる張力変動手段55と、を備える。図1に示す張力変動手段55の周方向における位置は、一例であり、ニップ部以外のいずれかの位置に配置されていればよい。
さらに、定着装置20は、第1温度検知手段41で検知した温度と第2温度検知手段42で検知した温度とに基づいて、張力変動手段55を作動させ、定着部材21の張力を調整する制御部45を備える。なお、温度検知手段は、例えばサーミスタであるが、これに限らない。また、第1温度検知手段41と第2温度検知手段42とは、図1の例では対向する位置に設けられているが、定着部材21の周方向に所定のズレがあってもよい。このズレがあるときは、ずれを考慮した制御を行えばよい。
面状発熱体22は、絶縁性を有する基層上に、耐熱性樹脂中に導電性粒子が分散されてなる抵抗発熱層と、該抵抗発熱層に電力を供給する電極層と、が形成され、定着部材21の軸方向、周方向に対応して所定の幅及び長さをもち可撓性を示す発熱シートを有する。定着装置20は、第1温度検知手段41で検知した温度と、第1温度検知手段41で検知した温度と第2温度検知手段42で検知した温度との温度差と、から張力発生手段55の定着部材21に対する押し当て力を調整する。
定着部材21は、軸方向が通紙される記録媒体Pの幅に対応する長さを有し、可撓性を有するパイプ形状の無端状ベルトであり、例えば厚さが30〜50μmの金属材料からなる基材上に少なくとも離型層を形成したものであって、外径が30mmになっている。以降、図2(a)に示すように、定着部材21のパイプ長手方向を軸方向と、図2(b)に示すように、定着部材21のパイプ円周方向を周方向と称する。
定着部材21の基材を形成する材料としては、鉄、コバルト、ニッケル、またはこれらの合金等の伝熱性のよい金属材料を用いることができる。
定着部材21の離型層は、PFA等のフッ素化合物をチューブ状に被覆したものであって、その厚さは50μmになっている。離型層は、記録媒体P上のトナー像(トナー)Tが直接的に接する定着部材21表面のトナー離型性を高めるためのものである。
加圧部材31は、アルミニウム、銅等の金属材料からなる芯金上に、シリコーンゴム(ソリッドゴム)等の耐熱性弾性層、離型層が順次形成されたものであって、外径が30mmになっている。弾性層は、肉厚が2mmとなるように形成されている。離型層は、PFAチューブを被覆したものであって、厚さが50μmになるように形成されている。また、芯金内には必要に応じてハロゲンヒータなどの発熱体を内蔵してもよい。また、加圧部材31は、加圧手段(不図示)により定着部材21を介して当接部材26に圧接され、その圧接部が定着部材21側で凹んだニップ部21nを形成している。そして、このニップ部21nに、記録媒体Pが搬送されることになる。
また、加圧部材31は、定着部材21に圧接した状態で不図示の駆動機構により回転駆動され(図1において時計回り方向に回転)、この加圧部材31の回転に伴って定着部材21が回転することになる(図1において反時計回り方向に回転)。
当接部材26は、定着部材21の軸方向に長さを有し、少なくとも定着部材21を介して加圧部材31と圧接する部分がフッ素系ゴムなどの耐熱性を有する弾性体からなるものであり、コア保持部材28により定着部材21の内周側の所定位置に保持された状態で固定されている。また、当接部分26の定着部材21の内周面と接する部分はテフロン(登録商標)シートなどの摺動性及び耐磨耗性の優れた材料からなるものとするとよい。
コア保持部材28は、金属などの板材が板金加工されてなり、定着部材21の軸方向の長さに対応する長さを有し断面がH型形状の剛性部材であり、定着部材21の内周側の略中心部分に配置されるものである。
また、コア保持部材28は、定着部材21の内周側に配置される種々の部材を所定位置に保持するものであり、例えばコア保持部材28のH型の一方(加圧部材31に対向する側)のくぼんだ部分に当接部材26を収納保持し、当接部材26が加圧部材31により加圧されても大きく変形しないようにニップ部21nとは反対面側から支持している。また、コア保持部材28は、当接部材26が該コア保持部材28から加圧部材31側に少し突出するように保持しており、ニップ部21nでコア保持部材28(また後述する加熱パイプ27)が定着部材21に接触しないように配置されている。
また、コア保持部材28のH型の他方(加圧部材31側とは反対側)のくぼんだ部分に、定着部材21の軸方向の長さに対応する長さを有し断面がT字型形状の端子台ステイ24及び端子台ステイ24上に延設され外部からの電力を供給する給電線25を収納保持している。さらに、コア保持部材28のH型の外面に発熱体支持部材23を保持している。図1では、定着部材21の下方半周分(ニップ部の入側半周分)の領域で発熱体支持部材23を保持している。その際、組み立て性を勘案して発熱体支持部材23とコア保持部材28を接着してもよい。あるいは発熱体支持部材23側からコア保持部材28側への伝熱を防止するために、両者を非接着としてもよい。
発熱体支持部材23は、面状発熱体22を定着部材21の内周面と当接または所定ギャップで近接させて配置するために該面状発熱体22を支持するものである。そのため、発熱体支持部材23は、断面形状を円形とした定着部材21の内周面に沿った所定の弧の長さの外周面を有している。
また、発熱体支持部材23は、面状発熱体22の発熱に耐えるだけの耐熱性と、回転走行する定着部材21が近接する面状発熱体22に接触した際に変形することなく面状発熱体22を支持するだけの強度と、面状発熱体22の熱をコア保持部材28側に伝えずに、定着部材21側に伝えるようにする断熱性を有することが好ましく、例えばポリイミド樹脂であることが好ましい。なお、面状発熱体22が定着部材21の内周面と当接する構成の場合、回転走行する定着部材21が面状発熱体22をニップ部側に引っ張る力が該面状発熱体22に作用するため、発熱体支持部材23は変形することなく面状発熱体22を支持するだけの強度が必要になるが、この場合にもポリイミド樹脂が好適である。
図3は、面状発熱体中の発熱シートの基本構成の断面模式図である。
面状発熱体22は、絶縁性を有する基層22a上に、耐熱性樹脂中に導電性粒子が分散されてなる抵抗発熱層22bと、該抵抗発熱層22bに電力を供給する電極層22cと、が形成され、定着部材21の軸方向、周方向に対応して所定の幅及び長さをもち可撓性を示す発熱シート22sを有する。また、基層22a上には、抵抗発熱層22bと隣接する別の給電系統の電極層22cとの間や発熱シート22sの縁部分と外部との間を絶縁する絶縁層22dが設けられている。なお、面状発熱体22は、発熱シート22sの端部で電極層22cに接続され、給電線25から供給される電力を該電極層22cに供給する電極端子22e(図3にて不図示、後述)を備える。
また、発熱シート22sの厚さは0.1〜1mm程度であり、少なくとも発熱体支持部材23の外周面に沿って巻きつけることができる程度の可撓性を有している。
ここで、基層22aは、PETまたはポリイミド樹脂などのある程度の耐熱性を有する樹脂からなる薄膜の弾性体フィルムであり、このうちポリイミド樹脂からなるフィルム部材であることが好ましい。これにより、耐熱性と、絶縁性と、ある程度の柔軟性(可撓性)を備える。
抵抗発熱層22bは、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂中にカーボン粒子や金属粒子などの導電性粒子が均一に分散してなる導電性を有する薄膜であり、通電されると内部抵抗によりジュール熱として発熱する構成となっている。このような抵抗発熱層22bは、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂の前駆体中にカーボン粒子や金属粒子などの導電性粒子を分散させた塗料を基層22a上に塗布して成膜するとよい。
また、抵抗発熱層22bは、基層22a上にまずカーボン粒子や金属粒子からなる薄膜の導電層が形成され、ついでその導電層上にポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂からなる絶縁性薄膜を積層して一体化したものであってもよい。
なお、抵抗発熱層22bに使用するカーボン粒子は、通常のカーボンブラック粉末でもよいが、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイルの少なくともいずれかからなるカーボンナノ粒子であってもよい。
また、金属粒子は、Ag、Al、Niなどからなる粒子であり、その形状は粒状であってもよいし、フィラメント状であってもよい。
絶縁層22dは、ポリイミド樹脂などの基層22aと同じ耐熱性樹脂からなる絶縁材料を塗布により形成するとよい。
電極層22cは、導電性インクやAgなどの導電性ペーストなどを塗布して形成したものでもよいし、金属箔や金属網などを接着して形成したものであってもよい。
面状発熱体22を構成する発熱シート22sは、厚みの薄いシートであることから熱容量が小さく、急速な加熱が可能であり、その発熱量は抵抗発熱層22bの体積抵抗率によって任意に設定できる。すなわち、抵抗発熱層22bを構成する導電性粒子の構成材料、形状、大きさ、分散量などにより発熱量を調整することが可能であり、例えば単位面積当りの発熱量35W/cm2で、総電力1200W程度の出力が得られる面状発熱体22の実現が可能である。この場合、発熱シート22sは、例えば幅(軸方向)20cm、長さ(周方向)2cm程度のサイズとなる。
また、面状発熱体としてステンレスなどの金属フィラメントからなるものを用いた場合、フィラメントの存在により面状発熱体の表面には凹凸が生じるので、定着部材21の内周面と摺動させると、表面が容易に磨耗してしまう。しかし、発熱シート22sは前述のように表面に凹凸がなく平坦であることから、定着部材21の内周面との摺動に対して優れた耐久性を示す。またさらに、発熱シート22sの抵抗発熱層22b表面にフッ素系樹脂をコーティングすると、定着部材21の内周面との接触に対する耐久性がさらに向上するので好ましい。
なお、発熱シート22sの定着部材21内周面における配置領域としては、図1では、定着部材21の内周面のニップ部とは反対側の位置からニップ部手前までにかけて配置された構成が示されているが、これに限定されるものではなく、例えば発熱シート22sをニップ部の位置まで配置してもよいし、定着部材21の内周面全周に配置してもよい。
定着装置20における定着部材21の組み立ては、例えばつぎの手順で行う。
図4〜図6は、定着部材の組み立てを説明する図である。図5(b)は、図5(a)の拡大図である。
(S11ステップ)
まず、図4に示すように、発熱体支持部材23の外周面に沿って面状発熱体22の発熱シート22sを接着剤により貼り付ける。この際、接着剤としては、発熱体支持部材23への熱の流出を防ぐために熱伝導率の低いものを用いることが望ましい。
このとき発熱シート22sにおける定着部材21の周方向に対応する一方の端部に、電極層22cに接続される複数の電極端子22e(電極端子22e1、22e2)の全てを設けておく。例えば、発熱シート22sにおいて定着部材21の周方向に対応する一方の端部(加圧部材31(ニップ部)側とは反対側の端部)の辺(端辺)上であって、定着部材21の軸方向に対応する両端それぞれに電極端子22e1、22e2が1つずつ設けられている。
これはつぎのような理由による。すなわち、面状発熱体22には、抵抗発熱層22bに電力を供給する関係上少なくとも2つの電極端子22eを備えることになるが、例えば2つの電極端子22eを発熱シート22sの両端にそれぞれ1つずつ設けた場合、給電に要する電源ハーネス等を両端それぞれの電極端子22eに接続する必要がある。このとき、発熱シート22s自体は薄膜であり、それ自体の剛性が低いために給電用ハーネスを接続するための端子台を発熱シート22sの両端それぞれに設ける必要があり、装置が大型化してしまう。そこで、実施形態では電極端子22eを発熱シート22sの一方の端部にまとめて設けて給電される構成にすることにより装置の小型化を図っている。
また、発熱シート22sにおける定着部材21の軸方向に対応する端部に電極端子22eを配置することも考えられるが、発熱体支持部材23の外周面に沿って発熱シート22sを貼り付けたとき、電極端子22eも湾曲するようになり、電源供給する電極部としてはネジ締結時の変形や端子部材の複雑化、組み立て性の悪化等の不都合が生じてしまう。
そこで、実施形態では発熱シート22sにおける定着部材21の周方向に対応する一方の端部に複数の電極端子22eを配置しており、これにより発熱体支持部材23の外周面に沿って発熱シート22sを貼り付けたときでも電極端子22eを湾曲させず良好な組み立て性を実現している。
(S12ステップ)
次に、図5に示すように、電極端子22e近傍の発熱シート22sを、電極端子22eが定着部材21の内部中央側に向かうように折り曲げた上で、電極端子22e1、22e2のそれぞれを、端子台ステイ24上で給電線25と接続固定する。電極端子22e1、22e2の端子台ステイ24上での接続固定は、図5(b)に示すようにネジ締結により行うとよい。また、面状発熱体22には、発熱シート22sの電極端子22eが設けられる端辺の中央部から発熱シート22sの固定用に延設された固定端子22fが設けられており、この固定端子22fも端子台ステイ24にネジ締結して固定する。
なお、発熱体支持部材23と発熱シート22sを接着剤等で固定しない場合には、発熱シート22sにおいてニップ部とは反対側に位置する電極端子22e及び固定端子22fが端子台ステイ24にネジ締結によって固定されるとともに、その固定された側から発熱シート22sをニップ部側に引っ張るように定着部材21が回転することにより発熱シート22sは発熱体支持部材23と定着部材21の内周面との間に挟まれた状態で安定して定着部材21と接触するようになり、効率的に定着部材21の加熱が可能となる。
(S13ステップ)
次に、図6に示すように、コア保持部材28をそのH型の一方のくぼんだ部分に端子台ステイ24が収納されるように装着し、さらにH型の他方のくぼんだ部分に当接部材26を装着して定着部材21側の内部機構部を形成する。
最後に、この内部機構部を定着部材21の内周側に挿入して、図1のように配置して定着装置20における定着部材21側の組み立てを終了させる。
このように構成された定着装置20は、次のような作用効果を奏する。
定着装置20は、図1に示すように、第1温度検知手段41と、第2温度検知手段42と、張力変動手段55と、を備える。また、張力変動手段55は、図7に示すように構成され、押し当て部材50と、平面形状が楕円状のカム51と、を含む。押し当て部材50は、定着部材21の内周側に付設され、定着部材21の内周面の形状に沿ったR形状を有する部材である。該押し当て部材50は、カム51側に不図示の付勢手段で付勢されている。カム51を回転させることにより、押し当て部材50の定着部材21への押し当て力が変動する。
定着装置20は、第1温度検知手段41で検知した温度と、第1温度検知手段41で検知した温度と第2温度検知手段42で検知した温度との温度差と、から押し当て部材50の定着部材21に対する押し当て力を調整することができる。但し、張力変動手段55としての押し当て部材50とカム51とは例示であり、図7の例示に限らず、定着部材21の内周側から定着部材21の張力を変動可能な機構であればよい。
まず、画像形成装置が出力信号を受けると(例えばユーザの操作パネルの操作あるいはパソコンからの通信などにより画像形成装置に印刷要求があると)、定着装置20において、加圧部材31が定着部材21を介して当接部材26に押圧され、ニップ部を形成する。
次に、不図示の駆動装置によって、加圧部材31が図1の時計回り方向に回転駆動されると、定着部材21も連れ回りして時計方向に回転する。このとき、面状発熱体22は発熱体支持部材23で支持された状態で、定着部材21の内周面と当接し摺動する状態となる。
そして、それと同期して外部電源または内部の蓄電装置から給電線25を通じて面状発熱体22に電力が供給され、発熱シート22sが発熱し、定着部材21は発熱シート22sと接触していることから効率的に熱が伝達され、急速に加熱される。なお、駆動装置の動作と面状発熱体22による加熱は同時刻に同時に開始する必要はなく、適宜時間差を設けて開始してもよい。
このとき、ニップ部21nの上流側であって、定着部材21の外側または発熱シート22sの内周側の発熱体支持部材23内から接触または非接触に配置された第2温度検知手段で検知される温度により、ニップ部21nが所定の温度となるように、面状発熱体22による加熱制御が行われており、定着に必要な温度まで昇温された後、保持され、記録媒体Pの通紙が開始される。
この昇温過程においては、面状発熱体22の温度と定着部材21の温度が同じであることが好ましい。しかし、面状発熱体22と定着部材21との間には絶縁層が存在している。従って、実際には昇温過程においてそれぞれに温度差が生じてしまう。また、面状発熱体22と定着部材21との間に微小な空隙があると熱伝導が悪くなり、面状発熱体22の異常発熱が起きる。実施形態では、定着部材21の張力を上昇させることによって、面状発熱体22と定着部材21とを密着させ、該空隙を生じなくさせている。
特に、昇温過程において面状発熱体22の抵抗発熱部22bの昇温が早い場合には、面状発熱体22と定着部材21との間に温度差が生じる。例えば、定着部材21がより冷えている状態では、面状発熱体22をより大きい点灯率で点灯させるため、この温度差は大きくなり易い。また、面状発熱体22と定着部材21との接触が弱い場合にも、面状発熱体22と定着部材21と間の温度差が大きくなる。
面状発熱体22と定着部材21との間の温度差が大きくなった場合に、面状発熱体22と定着部材21との接触が弱いと、面状発熱体22から定着部材21への熱伝導が劣り、面状発熱体22の絶縁層(基層22aまたは絶縁層22d)の温度が上昇してしまう。該絶縁層の温度が上昇しすぎると、該絶縁層が耐熱温度以上にまで加熱されて、該絶縁層が変形したり、剥離したりする場合がある。これにより、定着装置20の作動中に面状発熱体22中で電気的な短絡が起きる等、その機能を維持できなくなる場合がある。
実施形態では、第1温度検知手段41で検知された温度T1(面状発熱体22の表面温度)、並びに第2温度検知手段42で検知された温度T2(定着部材21の外周面温度)を検知し、第1温度検知手段41で検知された温度T1がある温度T0に到達した場合、面状発熱体22の表面温度(第1温度検知手段41で検知された温度T1)と定着部材21の温度(第2温度検知手段42で検知された温度T2)との温度差ΔTに応じて、張力変動手段55で定着部材21の張力を調節する。ここで温度T0は、目標温度である。換言すれば、張力変動手段55で定着部材21の張力を調節することにより、面状発熱体22と定着部材21との押し当て力を制御する。
例えば、絶縁層がポリイミドの場合は上限温度(耐熱温度)が250℃になるため、T0を200℃とする。そして、温度T1がT0(200℃)になったときに、面状発熱体22の点灯率に上限を設ける。そして、温度差ΔTが所定の温度差ΔT12を超えたときに押し当て力Pを所定の押し当て力P1より高い押し当て力に制御して、面状発熱体22から定着部材21へ熱伝導を促進させる。ここで、温度差ΔT12は、目標温度差とする。また、温度差ΔTが所定の温度差ΔT12以下の場合には押し当て力を押し当て力P1以下に制御する。このような調整は、制御部45によって制御されている。
定着部材21への張力の掛け方は、例えば、温度差ΔTが所定の温度差ΔT12を超えた場合は、押し当て部材50に当接するカム51を回転させることにより、カム51に当接する押し当て部材50を介して、定着部材21に押し当て力を与える。例えば、カム51の先端部51tを押し当て部材50に突き立てたときが押し当て力の最大値Pmaxになる(図7(a)参照)。
一方、温度差ΔTが所定の温度差ΔT12以下の場合は、カム51の先端部51tとは反対側の部分を、押し当て部材50に突き立てる。この場合、カム51の先端部51tとは反対側の部分を、押し当て部材50に垂直に突き立てたときが押し当て力の最小値Pminになる(図7(b)参照)。押し当て力P1は、PmaxとPminとの間で適宜定めればよい。
以上の制御をフローで表すと、図8のようになる。
図8は、押し当て力の制御を説明するフロー図である。
制御部45は、第1温度検知手段41で検知した温度が目標温度T0よりも高く、第1温度検知手段41で検知した温度と第2温度検知手段42で検知した温度との温度差が目標温度差ΔT12よりも高い場合に、所定圧力値P1より大きい圧力を押し当て部材50によって定着部材21に与える。
まず、制御部45は、第1温度検知手段41で検知された温度T1(面状発熱体22の表面温度)を検知する(S100)。また、第2温度検知手段42でT2を検知する。これによりΔT(ΔT=T1−T2)が決定される。ここで、温度T1が温度T0より大きい場合は、次のステップに進み、温度差ΔTとΔT12との比較を行う(S101)。温度T1が温度T0以下の場合は、押し当て力PをP1以下にする(S200)。
次に、温度差ΔTがΔT12より大きい場合は、押し当て力PをP1より大きくする(S102)。温度差ΔTがΔT12以下の場合は、押し当て力PをP1以下にする(S201)。
このように、制御部45は、第1温度検知手段41で検知した温度、および第1温度検知手段41で検知した温度と第2温度検知手段42で検知した温度との温度差ΔTを判断して、カム51を回転させることにより定着部材21に対する押し当て力を調整する。
これにより、面状発熱体22の温度がT0を超えたとしても、面状発熱体22と定着部材21との接触圧が調整されて、面状発熱体22の表面温度と定着部材21の温度との温度差ΔTが一定に制御される(帰還制御)。その結果、面状発熱体22の温度が面状発熱体22の絶縁層の上限温度にまで到達することがないように、面状発熱体22から定着部材21に所定の量の熱が伝導する。これにより、面状発熱体22の絶縁層の変形、剥離が起きにくくなり、面状発熱体22は安定して動作する。
なお、図8では、制御パラメータとしてΔTを用いたが、制御方法はこれに限られたものではなく、T1とT2との比に基づいて制御してもよく、ΔTを所定数の区分に分けて、区分ごとに対応する押し当て力Pを設定してもよい。
また、定着装置20では、定着部材21及び面状発熱体22の熱容量が小さいため、省エネを図りつつウォームアップ時間やファーストプリント時間を短くすることができる。さらに、面状発熱体22における発熱シート22sは樹脂ベースのシートであるため、加圧部材31の回転、振動に起因する応力が発熱シート22sに繰り返し作用して、発熱シート22sの屈曲が繰り返し行われても疲労破壊することがなく、長時間の運転が可能である。
なお、画像形成装置への出力信号がない場合、通常は消費電力を抑えるために加圧部材31及び定着部材21は非回転で、面状発熱体22は通電を停止されているが、すぐに再出力を開始したい(復帰させたい)場合は、加圧部材31及び定着部材21が非回転の状態でも面状発熱体22に通電しておくことが可能である。この場合は、面状発熱体22に定着部材21全体を保温させておく程度の通電を行う。
つぎに、実施形態で使用する面状発熱体22における発熱シート22sの詳細構成について説明する。
すなわち、発熱シート22sは、基層22aの主面上全面あるいはある1つの領域に抵抗発熱層22bが形成されたものでもよいが、基層22aの主面上で任意に区画された複数の領域それぞれに、抵抗発熱層22bが独立して発熱可能に形成されてなることが好ましい。図9〜図11に、その構成例を示す。
図9(a)は、面状発熱体の構成例(1)を示す上面模式図である。
ここでは、面状発熱体22を発熱体支持部材23に貼り付ける前の状態で平坦面上に展開し上から見た状態を示している。また、図中横方向は、定着部材21の軸方向に対応する幅方向であり、縦方向は定着部材21の周方向に対応する長さ方向となっている。
図9(a)において、発熱シート22sは、その主面上について概略として幅方向(軸方向)で3分割され、さらに長さ方向(周方向)で2分割された6つの分割領域が形成されている。ここで、6つの分割領域を、長さ方向(周方向)が行成分、幅方向(軸方向)が列成分からなる行列マトリクスとして見たとき(図9(b))、(1、2)成分の分割領域(定着部材21の軸方向中央部に対応する領域)に所定幅と長さをもつ抵抗発熱層22b1が形成され、(2、1)成分及び(2、3)成分の分割領域(定着部材21の軸方向両端部に対応する領域それぞれ)に所定幅と長さをもつ抵抗発熱層22b2が形成されている。
また、(1、1)成分及び(1、3)成分の分割領域には、抵抗発熱層22b1に接続された電極層22cが形成されており、さらにそれぞれの電極層22cには発熱シート22sの一辺(図中下方の一辺)から延設された電極端子22e1が設けられ、第1の発熱回路が形成されている。
また、(2、2)成分の分割領域には、2つの抵抗発熱層22b2間を接続する電極層22cが形成され、さらに、2つの抵抗発熱層22b2それぞれには発熱シート22sの長さ方向(周方向)であって前記一辺(図中下方の一辺)側に延びる電極層22cが接続され、またさらにこれらの電極層22cそれぞれには発熱シート22sの該一辺から延設された電極端子22e2が設けられ、第2の発熱回路が形成されている。
また、第1の発熱回路と第2の発熱回路の間には両者のショートを防ぐ絶縁層22dが設けられている。
図9(a)の構成の面状発熱体22において、電極端子22e1から通電すると、抵抗発熱層22b1の内部抵抗によりジュール熱として発熱し、電極層22cでは低抵抗のために発熱しないことから、発熱シート22sの(1、2)成分の分割領域のみが発熱することになり、定着部材21の軸方向中央部を加熱することができる。
また、電極端子22e2から通電すると、抵抗発熱層22b2の内部抵抗によりジュール熱として発熱し、電極層22cでは低抵抗のために発熱しないことから、発熱シート22sの(2、1)成分及び(2、3)成分の分割領域のみが発熱することになり、定着部材21の軸方向両端部を加熱することができる。
したがって、定着装置20に小サイズ(狭い幅)の記録媒体Pが通紙される際には、電極端子22e1にのみ通電して、定着部材21の軸方向中央部のみを加熱し、広い幅の記録媒体Pが通紙される際には、電極端子22e1及び22e2に通電して、定着部材21の軸方向全幅を加熱することにより、エネルギー消費を抑えつつ記録媒体Pの幅に応じて適切な定着が可能となる。また、記録媒体Pのサイズに応じて面状発熱体22の発熱量を制御できるので、小サイズ紙を連続して通紙しても非通紙部の温度が過度に上昇することなく、部材保護のための機器停止や生産性の低下を招くことがないようにすることができる。さらに、その異なる発熱部位の位置関係を一体の面状発熱体22で提供することにより別体の発熱体で構成するよりも軸方向の温度偏差の少ない発熱体とすることができる。
なお、発熱シート22sにおいて、それぞれの抵抗発熱層22b1、22b2の端部では、絶縁層22dや比較的熱伝導率の高い電極層22cへの熱の流出が発生するために発熱量が低くなる傾向にある。そのため、図9(a)のように、発熱シート22sの幅方向(軸方向)において中央の抵抗発熱層22b1と端部の抵抗発熱層22b2の境目を同一面とする構成であると、電極端子22e1及び22e2に通電した場合に、定着部材21の軸方向の温度分布として抵抗発熱層22b1と抵抗発熱層22b2の境界で温度低下が生じ、定着不良等の異常画像が発生していた。そこで、図10または図11の構成を採用し、この不具合を改善することが好ましい。
図10は、面状発熱体の構成例(2)を示す上面模式図である。
図10に示す面状発熱体22の基本的構成は、図9(a)に示すものと同じであるが、抵抗発熱層22b1と抵抗発熱層22b2のお互いの一部が発熱シート22sの幅方向(軸方向)で重なり合ってオーバーラップ領域を形成している点で相違する。これにより、電極端子22e1及び22e2に通電した場合の抵抗発熱層22b1と抵抗発熱層22b2の境界での温度低下を防ぐことができる。
図11は、面状発熱体の構成例(3)を示す上面模式図である。
図11に示す面状発熱体22の基本的構成は、図10に示すものと同じであるが、抵抗発熱層22b1と抵抗発熱層22b2のオーバーラップ領域において、抵抗発熱層22b1、22b2それぞれと電極層22cとの境界線を長さ方向(周方向)に対してお互いに異なる方向に傾斜させて、抵抗発熱層22b1、22b2の重なり合う量を調整している点で相違する。
これは、図10の構成では抵抗発熱層22b1、22b2の重なり合う領域の面積比は幅方向(軸方向)で一定であり、その重なり合う幅のばらつきに伴い発熱量のばらつきも大きくなってしまうという不具合があるが、図11の構成では、抵抗発熱層22b1、22b2の重なり合う領域における面積比が幅方向(軸方向)で一定の割合で変化するようにして発熱分布の調整及び部品ばらつきの影響を低減させ、軸方向全体での温度均一性の改善を図り、図10の構成で生じる不具合を改善している。
以上のような図9〜図11の構成の発熱シート22sは、まず基層22a主面上の抵抗発熱層22b1、22b2に当る領域のみを露出させて塗布により抵抗発熱層22b1、22b2を形成し、ついで絶縁層22dに当る領域のみを露出させた状態で塗布により耐熱性樹脂のみからなる絶縁層22dを形成し、ついで電極層22cに当る領域のみを露出させて導電ペーストを塗布して電極層22cを形成することにより可能である。したがって、抵抗発熱層22b1、22b2に当る領域の露出形状を調整することにより、任意の形状の抵抗発熱層22b1、22b2を形成することができる。
また、実施形態で使用する面状発熱体22は、複数の発熱シート22sが積層されてなり、該複数の発熱シート22sはそれぞれの基層22aの主面上の任意の領域に、抵抗発熱層22bが独立して発熱可能に形成されてなることが好ましい。図12に、その具体的構成を示す。
図12は、面状発熱体の構成例(4)を示す分解斜視図である。
図12において、面状発熱体22は、図中上から順に、第1の発熱シート22s、絶縁層22dからなる絶縁シート、第2の発熱シート22sが積層されてなるものである。
ここで、第1の発熱シート22sは、その主面が幅方向(軸方向)に3分割されており、中央の分割領域に抵抗発熱層22b1が形成され、その両側の分割領域それぞれに該抵抗発熱層22b1に接続された電極層22cが形成されている。また、第2の発熱シート22sは、その主面が幅方向(軸方向)に5分割されており、幅方向(軸方向)の2番目と4番目の分割領域に抵抗発熱層22b2が形成され、残りの分割領域それぞれに該抵抗発熱層22b2に接続された電極層22cが形成されている。
この第1の発熱シート22sと第2の発熱シート22sが絶縁層22dからなる絶縁シートを挟んで重ね合わされており、第1の発熱シート22sには独立した第1の発熱回路が形成され、第2の発熱シート22sには独立した第2の発熱回路が形成されている。
これにより、第1の発熱回路に通電すると、抵抗発熱層22b1の内部抵抗によりジュール熱として発熱し、第1の発熱シート22sの幅方向(軸方向)中央領域のみが発熱することになり、定着部材21の軸方向中央部を加熱することができる。また、第2の発熱回路に通電すると、抵抗発熱層22b2の内部抵抗によりジュール熱として発熱し、第2の発熱シート22sの幅方向(軸方向)両端部領域のみが発熱することになり、定着部材21の軸方向両端部を加熱することができる。
図9〜図11に示した面状発熱体22のように、長さ方向(周方向)の分割まで行うと必要な発熱量を確保するために面状発熱体22全体の面積が大きくなり、小径の定着部材21に対応できなくなる場合がある。そこで、図12に示すように面状発熱体22の厚さ方向に異なる発熱部位の発熱シート22sを積層することにより、図9〜図11に示した面状発熱体22と同様に異なる発熱分布を得られる面状発熱体22を実現しつつ、省スペース(小サイズ化)で高出力化を図ることが可能となる。
ところで、定着装置20では、回転時はニップ部で加圧部材31に引っ張られることから、ニップ部の上流側の定着部材21は張力が付与された張り側となり、定着部材21の内周面は発熱体支持部材23に圧接した状態で面状発熱体22と摺動している。一方で、ニップ部の下流側では定着部材21に張力は作用しておらず弛んだ状態となっており、この状態のまま装置の高速化を図ろうとすると、ニップ部の下流側の定着部材21の弛む程度がひどくなり、定着部材21の回転走行安定性に支障が出てくることになる。
そこで、定着装置20において、定着部材21の内周側であって少なくともニップ部下流側で、該定着部材21の回転状態を支持する回転支持部材を備えることが好ましい。
図13は、定着装置における回転支持部材と面状発熱体と当接部材の配置例を示す断面模式図である。ここでは、回転支持部材と面状発熱体22と当接部材26の配置例を示している。
図13(a)は、回転支持部材27Aとして金属体、例えばステンレスの薄膜パイプの内周に面状発熱体22を設け、回転支持部材27Aの外周側で定着部材21を支持する構成例である。この構成により、定着部材21の回転走行安定性が確保できるだけでなく、定着部材21を剛性の高い金属製の回転支持部材27Aで支持できるので組立上のハンドリングが容易である。また、面状発熱体22が定着部材21と直接接触摺動することはないので、面状発熱体22表面の保護層(摺動層)や絶縁層が摺動摩耗して、抵抗発熱層22bや電極層22cなどの導電体の露出による電気的リークの懸念がなくなる。なお、回転支持部材27Aとして金属体を備えているので熱容量が大きくなり、ウォームアップ時の昇温速度が図1の構成のものよりも遅くなる欠点がある。
図13(b)は、回転支持部材27A自体の機能は図13(a)と同じであるが、回転支持部材27Aの外周側に面状発熱体22を設けることにより定着部材21への熱伝導を図13(a)のものよりも改善した構成である。ただし、面状発熱体22の裏面(回転支持部材27A側)からの熱流出(損失)は避けられない。
図13(c)は、図13(b)における回転支持部材27Aに替えて金属体よりも熱伝導率が低いソリッド樹脂からなる回転支持部材27Bとした構成である。これにより、面状発熱体22の裏面(回転支持部材27B側)からの熱流出(損失)を抑制することが可能であるが、一般的に樹脂の耐熱性は金属よりも低く、また高耐熱性樹脂は高額でありコスト的に不利であった。
図13(d)は、図13(c)におけるソリッド樹脂製の回転支持部材27Bに替えてポリイミド樹脂の発泡体からなる回転支持部材27Cとした構成である。ポリイミド樹脂の発泡体を用いることにより回転支持部材として必要な断熱性と剛性を確保することができる。
また、図13(e)のように、ポリイミド発泡体からなる回転支持部材27Cの内周部に補助的に樹脂部材27Dを設けると、剛性がより向上するので好ましい。
図14〜16は、定着装置の第2の実施形態における構成を示す断面模式図である。ここでは、図1の定着装置に図13(a)の構成を追加したものとなっている。
すなわち定着装置20は、基本的構成が図1に示すものと同じであるが、定着部材21の内周側に設けられるパイプ形状の回転支持部材27Aと、回転支持部材27Aの内周側であってニップ部下流側に配置されるようにコア支持部材28のH型外面に断熱支持部材29と、を備える点で相違する。なお、張力変動手段55が設けられる位置には、断熱指示部材29を設けず、回転支持部材27Aには開口部52を設ければよい。
ここで、回転支持部材27Aは、例えば厚さ0.1〜1mmの鉄、ステンレス等の薄肉金属からなるパイプ形状のものであり、その外径が定着部材21の内径よりも直径で0.5〜1mm程度小さいものとなっている。また、回転支持部材27Aの外周面においてニップ部側が軸方向に切断されて開口しており、その端部がコア支持部材28側に折り込まれて、ニップ部に接触しないようになっている。
断熱支持部材29は、ニップ部出側で、回転支持部材27Aを介して定着部材21の熱に耐えるだけの耐熱性と、定着部材21と接触する回転支持部材27Aからの熱流出(損失)を防ぐ断熱性と、回転走行する定着部材21が回転支持部材27Aに接触した際に変形することがないように回転支持部材27Aを支持するだけの強度と、を有するものであり、発熱体支持部材23と同じポリイミド樹脂であることが好ましい。
また、回転支持部材27Aは、図15に示すように、ニップ部の上流側の一定領域の外周面が除去されて開口部27aが設けられている。これにより、図16に示すように、定着部材21の内部機構部を構成した場合に、開口部27aから面状発熱体22の全面が露出するようになり、該面状発熱体22が定着部材21の内周面に近接して配置されるようになる。また、開口部27aと反対側には、押し当て部材50が突出できるように開口部52が設けられている。
したがって、面状発熱体22(発熱シート22s)は、発熱体支持部材23に支持されて、定着部材21の内周面と所定ギャップδで近接して配置されるが、その定着部材21とのギャップδは、回転支持部材27Aの厚さ以下、すなわち0<δ≦1mmとなることから、図13(a)における問題点を改善し、定着部材21を効率的に加熱することが可能である。
図14に示した第2の実施形態の定着装置20は、第1の実施形態の定着装置20(図1)の作用効果に加え、省エネを図りつつウォームアップ時間やファーストプリント時間を短くすることができる。また、面状発熱体22における発熱シート22sは樹脂ベースのシートであるため、加圧部材31の回転、振動に起因する応力が発熱シート22sに繰り返し作用して、発熱シート22sの屈曲が繰り返し行われても疲労破壊することがなく、長時間の運転が可能である。また、面状発熱体22において、定着部材21の軸方向の異なる発熱部位で発熱することにより、通紙する記録媒体Pのサイズに対応して効率的な温度制御を行うことが可能である。これに加えて、回転支持部材27A(必要に応じて断熱支持部材29)を設けることにより、定着部材21の回転走行安定性を向上させることができ、高速化を図ること可能となる。また、回転支持部材27Aにおいて定着部材21の軸方向への熱伝導により、定着部材21の軸方向の温度均一化を補助的に行うことができるので、より高速の装置へ対応することが可能となる。
つぎに、本発明に係る画像形成装置について説明する。
図17は、画像形成装置の構成を示す全体構成図である。
図17に示すように、画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタである。画像形成装置本体1の上方にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。
各作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。また、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電部75、現像部76、クリーニング部77、除電部(不図示である。)等が配設されている。そして、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)がおこなわれて、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成されることになる。
感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、不図示の駆動モータによって図17中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部75の位置で、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、現像装置76との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78及び第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、クリーニング部77との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程である。)。
最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト78上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト78上にカラー画像が形成される。
ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80、等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82〜84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって図17中の矢印方向に無端移動される。
4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kは、それぞれ、中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。
そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト78は、2次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラ82が、2次転写ローラ89との間に中間転写ベルト78を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト78上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される。このとき、中間転写ベルト78には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。
その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト78上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、装置本体1の下方に配設された給紙部12から、給紙ローラ97やレジストローラ対98等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図17中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。
レジストローラ対98に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対98のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト78上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対98が回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置20の位置に搬送される。そして、この位置で、定着部材21及び加圧部材31による熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。
その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された被転写Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
以上説明したように、本発明の画像形成装置において、前述した定着装置20を備えているので、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短く、記録媒体Pのサイズが変わっても消費エネルギーを抑えつつ適切な画像形成が可能であり、装置を高速化した場合であっても定着不良等の不具合が生じるのを抑止することができる。
このように、本発明によれば、面状発熱体の発熱部と定着部材の間に絶縁層があるため、面状発熱体と定着部材に温度差が生じてしまう場合においても、第1温度検知手段で検知した面状発熱体の温度と、第1温度検知手段で検知した温度と第2温度検知手段で検知した温度との温度差から押し当て部材の押し当て力を調整する。これにより面状発熱体と定着部材の間に微小な空隙域を発生させずに、面状発熱体の耐熱温度を超えることなく定着可能な定着装置および該定着装置を備える画像形成装置が実現する。
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
以上、実施形態を説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではない。他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができる。いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。