JP2013093167A - 正極活物質の製造方法、正極活物質およびそれを用いた二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】不純物混在量の少ない酸化物系正極活物質の製造方法、正極活物質およびそれを用いた二次電池を提供する。
【解決手段】正極活物質の製造方法であって、溶媒に、Liを含む化合物、Niを含む化合物およびM(Mは4価のときに6配位を取り得る元素である。)を含む化合物を、各化合物の前記元素の比率が原子比でLi:Ni:M=1:0.5:1.5となる割合で溶解、混合して混合液を得る工程、得られた混合液を加熱、濃縮することにより正極活物質前駆体を得る工程、および得られた正極活物質前駆体を空気中、425℃以上800℃未満の温度で焼成して、式:LiNi0.51.5で示される正極活物質を生成させる工程を含む、前記方法、前記の製造方法によって得られた正極活物質および前記の正極活物質を用いた二次電池。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規な正極活物質の製造方法、前記製造方法によって得られた正極活物質およびそれを用いた二次電池に関し、さらに詳しくは不純物混在量が少なくて安定した高電位材料であり得る酸化物系正極活物質の製造方法、前記製造方法によって得られた正極活物質およびそれを用いた二次電池に関する。
近年、高電圧および高エネルギー密度を有する電池としてリチウムイオン二次電池が実用化されている。リチウムイオン二次電池の用途が広い分野に拡大していることおよび高性能の要求から、電池の更なる性能向上のために種々の研究が行われている。
例えば、炭素材料やアルミニウム合金等が実用電池の負極材料として実用化されているが、高容量化および/又は高電位化に対しては十分ではない。
一方、正極材料についても高容量化および/又は高電位化の要求がある。
例えば、特許文献1には、一般式:Li(MMn2−x−y)O(式中、0.4<極材料についても高容量化および/又は高電位化の必要性がx、0<y、x+y<2、0<a<1.2である。Mは、Ni、Co、Fe、CrおよびCuよりなる群から選ばれ、少なくともNiを含む1種以上の金属元素を含む。Aは、Si、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む。但し、AがTiだけを含む場合には、Aの比率yの値は、0.1<yである。)で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物を含む4種の金属系二次電池用正極活物質、及び前記正極活物質をLi原料とLi以外の金属の複合酸化物原料との混合物を焼成して得る製造方法が記載されている。そして、具体例として原料混合物の粉末を焼成して正極活物質を得た例が示されている。
特開2003−197194号公報
しかし、前記の従来技術の固相法による製造方法によれば、不純物混在量の少ない材料を得ることが困難であり、正極活物質中に不純物が混在し単一組成のものが得られないため、スピネル型の結晶構造を有しリチウムイオン二次電池の正極活物質として安定した高電位材料である酸化物系の正極活物質を得ることができない。
従って、本発明の目的は、不純物混在量の少ない正極活物質の製造方法を提供することである。
本発明は、正極活物質の製造方法であって、
溶媒に、Liを含む化合物、Niを含む化合物およびM(Mは4価のときに6配位を取り得る元素である。)を含む化合物を、各化合物の前記元素の比率が原子比でLi:Ni:M=1:0.5:1.5となる割合で溶解、混合して混合液を得る工程、
得られた混合液を加熱、濃縮することにより正極活物質前駆体を得る工程、および
得られた正極活物質前駆体を空気中、425℃以上800℃未満の温度で焼成して、式:LiNi0.51.5で示される正極活物質を生成させる工程
を含む、前記方法に関する。
また、本発明は、前記の製造方法によって得られた正極活物質に関する。
さらに、本発明は、前記の正極活物質を用いた二次電池に関する。
本発明によれば、不純物混在量の少ない乃至はない式:LiNi0.51.5(Mは前記と同じ)で示される正極活物質を容易に得ることができる。
また、本発明によれば、高電位の二次電池を与え得る正極活物質を得ることができる。
さらに、本発明によれば、高電位の二次電池を得ることができる。
図1は、本発明の実施態様の製造方法で得られた正極活物質の結晶構造を示す模式図である。 図2は、従来公知の正極活物質の結晶構造の計算モデルである。 図3は、本発明の実施態様の製造方法で得られた正極活物質の結晶構造の計算モデルである。 図4は、正極活物質前駆体を空気中で加熱したときの加熱温度による質量変化をTG−DTA分析した結果を示すグラフである。 図5は、実施例で得られた正極活物質のXRD測定結果を示す。 図6は、比較例で正極活物質前駆体を焼成するときの熱処理条件を変えて得られた正極活物質のXRD測定結果を示す。 図7は、比較例で正極活物質前駆体を焼成するときの熱処理条件を変えて得られた正極活物質のXRD測定結果を示す。
特に、本発明において、以下の実施態様を挙げることができる。
1)前記Mが、周期律表の4、5、6、7、8、9、10、14又は16族の元素(但し、Ni、C、O、Sを除く。)である前記製造方法。
2)前記Mが、Ti、Zr、Hf、Ge、SnおよびPbからなる群から選択される前記製造方法。
3)前記溶媒が、グリコール化合物である前記製造方法。
4)前記混合液が、さらにキレート化剤を含むものである前記製造方法。
本発明においては、溶媒に、Liを含む化合物、Niを含む化合物およびM[Mは4価のときに6配位(八面体)を取り得る元素である。]を含む化合物を、各化合物の前記元素の比率が原子比でLi:Ni:M=1:0.5:1.5となる割合で溶解、混合して混合液を得る工程、
得られた混合液を加熱、濃縮することにより正極活物質前駆体を得る工程、および
得られた正極活物質前駆体を空気中、425℃以上800℃未満の温度で焼成して、式:LiNi0.51.5で示される正極活物質を生成させる工程
を含む正極活物質の製造方法であることが必要であり、これによって不純物混在量が少ない乃至はない安定した高電位材料であり得る酸化物系正極活物質を容易に得ることができる。
以下、図面を参照して本発明を詳述する。
本発明の実施態様の製造方法によって得られる式:LiNi0.5Ti1.5で示される正極活物質は、図1に示すように、結晶構造がスピネル型であると考えられる。
前記式:LiNi0.5Ti1.5で示される正極活物質について、後述の実施例の欄に詳述する方法によって理論計算を行うと、図2に示すように、従来公知のLiNi0.5Mn1.5と同様にフェルミ準位(固体内電子のエネルギー分布が急激に変化するエネルギー準位をいう。)付近はNiとOとの軌道から構成され、Tiの寄与が小さいことが分る。
一方、従来公知の固相法によるLiNi0.5Mn1.5で示される正極活物質は、高電位材料として報告されている。この材料の高電位を示す根拠を後述の実施例の欄に詳述する計算手法により理論計算を行ったところ、再安定な結晶構造が空間群P432に分類されることが分る。
さらに、特徴的な結晶構造として、図3に示すように、フェルミ準位付近がNiとOとの軌道のみから構成されており、Mnの寄与が少ないことが分る。
このことから、Mnサイトは電子状態を計算してNi軌道と混成軌道を形成していないものに置き換えられると考えられる。
本発明の製造方法で得られる正極活物質は、一般式:LiNi0.51.5[Mは4価のときに6配位を取り得る元素、例えば周期律表の4、5、6、7、8、9、10、14又は16族の元素(但し、Ni、C、O、Sを除く。)であり、好適にはTi、Zr、Hf、Ge、SnおよびPbからなる群から選択される。]であり、例えばXRD測定して不純物に基くピークが観察されないものである。
前記XRD測定して不純物に基くピークが観察されないとは、図5のAおよびBに示すように、LiNi0.51.5が例えばLiNi0.5Ti1.5である場合、12個のLiNi0.5Ti1.5に基くピーク以外のピークである、図6の3つのピーク(例えば、2θ=23.04°、2θ=33.07°、2θ=49,43°)が前記12個のピークと同程度の大きさで確認されないことを意味する。
また、本発明の実施態様の製造方法による正極活物質が前記LiNi0.5Ti1.5以外の物質である場合も同様に、XRD測定結果におけるLiNi0.51.5に基く複数のピーク以外のピークが前記複数のピークと同程度の大きさで確認されないことを意味する。
本発明の実施態様の製造方法で得られるLiNi0.5Ti1.5で示されるリチウムイオン二次電池の正極活物質は、従来公知の製造方法によるLiNi0.5Mn1.5で示される正極活物質についての電位(後述の実施例の欄に詳述する計算手法により、Liを抜いた状態と抜いていない状態のエネルギー差から電池反応電位を計算して求められる)がLi/Li+電位に対して4.70Vで、実験の報告では4.7〜4.8Vであるのに対して、Li/Li+電位に対して4.9Vであり、LiNi0.5Mn1.5よりも0.1〜0.2V大きいことが分かる。
つまり、本発明の実施態様の製造方法によって得られる前記不純物を含まないLiNi0.5Ti1.5で示される正極活物質は、Li/Li+電位に対して4.9Vであり、スピネル型の結晶構造を有しリチウムイオン二次電池の正極活物質として安定して高電位材料であり得ることが理解される。
本発明における正極活物質の製造方法は、
溶媒に、Liを含む化合物、Niを含む化合物およびM(Mは4価のときに6配位を取り得る元素である。)を含む化合物を、各化合物の前記元素の比率が原子比でLi:Ni:M=1:0.5:1.5となる割合で溶解、混合して混合液を得る工程、
得られた混合液を加熱、濃縮することにより正極活物質前駆体を得る工程、および
得られた正極活物質前駆体を空気中、425℃以上800℃未満の温度で焼成して、式:LiNi0.51.5で示される正極活物質を生成させる工程
を含むものである。
前記Liを含む化合物としては、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、過酸化リチウム酢酸リチウム、クエン酸リチウム、クエン酸リチウムなどが挙げられる。
また、Niを含む化合物としては、例えば、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、シュウ酸ニッケルなどが挙げられる。
また、前記のM(Mは前記と同じである。)を含む化合物としては、4族元素のTi、Zr、Hf、5族元素のV、Nb、Ta、6族元素のCr、Mo、W、7族元素のMn、Tc、Re、8族元素のFe、Ru、Os、9族元素のCo、Rh、Ir、10族元素のPd、Pt、14族元素のSi、Ge、Sn、Pb、16族元素のSe、Te、Poなどの元素を含む化合物、例えば前記いずれかの元素のハロゲン化物、アルキル化合物、オキシ炭酸塩あるいはアルコキシドなどが挙げられる。
前記Mを含む化合物として、好適にはTi、Zr、Hf、Ge、SnおよびPbからなる群から選択される元素の化合物、例えばチタンイソプロポキシド、チタンプロオポキシド、チタンエトキシドなどのチタン化合物、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、オキシ炭酸ジルコニウム、ジルコニウムアルコキシドなどのジルコニウム化合物、ジカルボン酸スズ、ギ酸スズ、酢酸スズ、シュウ酸スズ、テトラメチルスズ、テトラエチルスズ、四塩化スズ、二塩化スズ、2メチルスズジクロライド、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジアセテートなどのスズ化合物、ハフニウム ジ−n−ブトキシド ビス(2,4−ペンタンジオネート、ハフニウム−2,4−ペンタンジオネート、ハフニウムエトキシド、ハフニウム−n−ブトキシド、ハフニウム−tert−ブトキシド[Hf(CO)]、ハフニウム(VI)イソプロポキシドモノイソプロピレートなどのハフニウム化合物、テトラメチルゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物、テトラメチル鉛などの鉛化合物が好適に挙げられる。
本発明の製造方法において、溶媒に、原子比でLi:Ni:M=1:0.5:1.5となる割合でLiを含む化合物、Niを含む化合物および前記Mを含む化合物を溶解し、混合して混合液を得る。前記の混合は任意の方法、例えば攪拌により行われ得る。
前記の溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオールなどのグリコール化合物の中から選ばれるグリコール化合物が挙げられる。
また、前記の溶媒の一部として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノールなどのアルコールが加えられても良い。
また、前記の工程において、配位安定化のために好適にはキレート化剤、例えば有機酸、例えばクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、好適にはクエン酸を加え得る。
本発明の製造方法の実施態様においては、前記工程で得られた混合液を、加熱攪拌、次いで還流操作を経ることにより前駆体溶液を得る。前記の加熱攪拌は、50℃以上100℃未満の温度、好適には70〜90℃の範囲の温度、例えば75℃で0.5〜5時間程度において行われ得る。前記の還流操作は、通常200℃未満の温度、例えば100℃以上200℃未満の温度、好適には120〜170℃の範囲の温度、例えば160℃で1〜10時間程度で不活性雰囲気、例えばアルゴン中あるいは窒素中で行われ得る。前記の加熱攪拌、還流操作によって、得られた前駆体溶液より溶媒を留去することにより、正極活物質前駆体[Li−M−Ni−O(Mは前記と同じ)、例えば、Li−Ti−Ni−Oと表示される。]が濃縮物として得られる。
前記工程で得られた正極活物質前駆体を、焼成して、式:LiNi0.51.5で示される正極活物質を生成させる。
前記の乾燥は、通常300℃未満の温度、例えば100〜300℃未満の温度、好適には100〜200℃の範囲の温度、例えば160℃で1〜10時間程度で行われ得る。
前記の乾燥によって、正極活物質前駆体[Li−M−Ni−O(Mは前記と同じ)、例えば、Li−Ti−Ni−Oと表示される。]が濃縮物として得られる。
前記の焼成は、空気中、一般には該前駆体の分解温度以上で、好適には300℃以上で800℃未満の範囲内の温度、特に425℃以上で800℃未満の範囲内の温度で行われ得る。また、前記の焼成は、1時間以上24時間以内、好適には1時間以上5時間以内行われ得る。
前記の焼成温度が425℃未満では長時間の焼成が必要となる。
前記の方法によって、式:LiNi0.51.5(Mは前記と同じ)で示されるXRD測定して不純物に基くピークが観察されないリチウムイオン二次電池の正極活物質を得ることができる。
本発明の製造方法により得られる前記二次電池の正極活物質は、不純物混在量が少なくて安定した高電位材料であり得る酸化物系正極活物質であり、他の電池材料と組み合わせることによってリチウムイオン二次電池を与え得る。
前記リチウムイオン二次電池は、通常、主要な構成材としての前記正極活物質を含む正極、電解質(場合によりセパレータに含まれる)および負極から構成される。
前記正極は、正極集電体とその少なくとも一面に設けられた本発明に係る酸化物系正極活物質を含む正極活物質層とを有し得る。
前記正極集電体は、例えば、アルミニウム、ニッケル又はステンレスなどの金属材料によって構成され得る。
前記正極活物質層には、正極活物質として本発明に係る正極活物質単独又は本発明に係る正極活物質とともに該活物質とは異なる物質であって、LiO、LiおよびLiNiOから成る群から選択される少なくとも1種又は2種以上のLiドープ剤が含まれ得る。
また、正極活物質層には、通常、バインダー、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェンスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリレート、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などの高分子材料や、導電剤、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック又はケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン等を単独で又は2種以上を組み合わせた炭素材料が含まれ得る。
また、前記セパレータとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン製の多孔質膜、セラミック製の多孔質膜が挙げられる。例えば、多層構造、例えばPE/PP/PEの3層構造のポリオレフィン製の多孔質膜が好適に使用される場合がある。
前記電解質としては電解液、ゲル状の電解質又は固体電解質が挙げられる。
電解液は溶剤と電解質塩とを含んでいて、溶剤としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートが好適に挙げられる。その中でも、エチレンカーボネートあるいはプロピレンカーボネートなどの高粘度溶剤とジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの低粘度溶剤の少なくとも1種又は2種以上とを混合した混合溶剤が好適である。この溶剤にはビニレンカーボネートやビニルエチレンカーボネートなどの不飽和結合を有する環状カーボネートや、ビス(フルオロメチル)カーボネートなどのハロゲンを有する環状カーボネートを含有させてもよい。
前記電解液には、一般的に電解質塩が支持塩として含有されている。この電解質塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C25 SO22 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO22 )、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3 SO23 )、塩化リチウム(LiCl)あるいは臭化リチウム(LiBr)など、好適には六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )が挙げられる。
前記ゲル状の電解質は、例えば正極および負極を作製し、これらに溶剤と電解質塩とを含む電解液を塗布した後に溶剤を揮発させて形成し得る。
また、前記固体電解質としては、例えばリチウム二次電池の固体電解質材料として用いられ得る材料の粉末であれば限定されず、例えばLiO−B−P、LiO−SiO、LiO−B、LiO−B−ZnOなどの固体酸化物系非晶質電解質粉末、LiS−SiS、LiI−LiS−SiS、liI−liS−P、LiI−LiS−B、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−P、LiPS、LiS−Pなどの固体硫化物系非晶質電解質粉末が挙げられる。
また、前記固体電解質として、LiI、LiI−Al、LiN、LiN−LiI−LiOH、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO、Li1+x+yTi2−xSi3−y12(A=Al又はGa、0≦x≦0.4、0<y≦0.6)、[(B1/2Li1/21−z]TiO(B=La、Pr、Nd、Sm、C=Sr又はBa、0≦x≦0.5)、LiLaTa12、LiLaZr12、LiBaLaTa12、LiPO(4−3/2w)(w<1)、Li3.6Si0.60.4などの結晶質酸化物粉末や酸窒化物粉末など、好適には固体硫化物電解質粉末が挙げられる。
本発明の製造方法により得られる正極活物質を用いて正極を得る方法としてはそれ自体公知の方法、例えば蒸着又はスパッタもしくはCVDにより正極集電体、例えば金属箔上に正極活物質層を形成する方法が挙げられる。
または、前記正極活物質を用いて正極を得る方法として、前記正極活物質を含むペーストを正極集電体上に塗布した後、乾燥させて正極集電体上に正極活物質層を形成する塗布法が挙げられる。前記正極活物質を含むペースト又はこのペーストにさらに溶剤を加えて正極集電体上に塗布した後、乾燥し、プレスすることによって得ることができる。
前記負極は、負極集電体とその少なくとも一面に設けられた負極活物質を含む負極活物質層とを有し得る。
前記負極集電体としては、銅、または銅を主成分とする合金が挙げられる。負極集電体の形状は、リチウムイオン二次電池の形状等に応じて異なり得るため特に制限はなく、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態であり得る。車両搭載用高出力電源として用いられるリチウムイオン二次電池の負極の集電体としては、厚さが5〜100μm程度の銅箔が好適に用いられる
また、前記負極活物質層には、電荷担体となるリチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極活物質が含まれ得る。
前記負極活物質としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる物質の一種または二種以上が挙げられる。例えば、カーボン粒子が挙げられる。少なくとも一部にグラファイト構造(層状構造)を含む粒子状の炭素材料(カーボン粒子)が挙げられる。いわゆる黒鉛質のもの(グラファイト)、難黒鉛化炭素質のもの(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素質のもの(ソフトカーボン)、これらを組み合わせた構造を有するもののいずれの炭素材料も好適に挙げられる。中でも特に、黒鉛粒子を好適に挙げられる。黒鉛粒子(例えばグラファイト)は、電荷担体としてのリチウムイオンを好適に吸蔵することができるため導電性に優れる。また、粒径が小さく単位体積当たりの表面積が大きいことからよりハイレートのパルス充放電に適した負極活物質となり得る。
また、前記負極活物質層は、典型的には、その構成成分として、上記負極活物質の他に、バインダー、溶剤等の任意成分を必要に応じて含有し得る。前記バインダーとしては、一般的なリチウムイオン二次電池の負極に使用されるバインダーと同様のものであり得て、前記の正極の構成要素におけるバインダーとして機能し得る各種のポリマー材料を好適に挙げられる。
前記導電剤としては、炭素材料、リチウムと合金化し難い金属、導電性高分子材料等が挙げられ、炭素材料が好適である。前記炭素材料としては、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン等を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、前記の溶剤としては、アルコール、グリコール、セロソルブ、アミノアルコール、アミン、ケトン、カルボン酸アミド、リン酸アミド、スルホキシド、カルボン酸エステル、リン酸エステル、エーテル、ニトリル等が挙げられる。具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール、1−ブタノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−アミノエタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリルが挙げられる。
前記の負極を得る方法として、前記負極活物質を含むペースト又はこのペーストにさらに溶剤を加えて負極集電体上に塗布した後、乾燥し、プレスして、集電体上に負極材料層を形成する塗布法が挙げられる。
前記の方法によって、本発明における正極活物質を用いて得られた正極、他の構成材、例えば負極、セパレータおよび電解質を用いてリチウムイオン二次電池が得られる。
前記リチウムイオン二次電池としては任意の形状を有するものが挙げられる。
以下、本発明の実施例を示す。
以下の実施例は単に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
以下の各例において、正極活物質のXRDは以下の装置を用いて測定を行った。なお、以下の測定は例示であって当業者が同等と考える測定法も同様に用い得る。
XRD測定装置:Rigaku RINT2000
また、前駆体を加熱して燃焼する際の質量変化を下記のTG−DTA分析を行って測定した。
TG−DTA測定装置:Rigaku TAS−300
実施例1
反応容器中、原料であるTiOCH(CHをエチレングリコールおよびクエン酸に溶解させ、さらに他の原料であるCHCOOLiおよびCHCOONiを、金属元素の比率が原子比でLi:Ni:Ti=1:0.5:1.5となる割合で加え、混合攪拌した後、75℃で1時間加熱攪拌、160℃、窒素中で還流反応を施した後、溶媒留去することにより、高分子ゲル(前駆体濃縮物)を得た。
得られた前駆体濃縮物を大気中で燃焼させたときの質量変化をTG−DTA分析を行った。結果を図4に示す。この結果から、前駆体濃縮物の分解温度は420〜425℃であり、目的物を得るためにはこの温度以上の熱処理が最適であることが分った。
別途、前駆体濃縮物の加熱処理を、空気中425℃で10時間熱処理し、これを500℃で3時間熱処理し、正極活物質を得た(形状:一次粒子径が20nm)。
得られた正極活物質についてXRD測定を行った。結果を図5のAに示す。
実施例2
前駆体濃縮物の加熱処理を、空気中、425℃で10時間行うことにより酸化物系正極活物質を得た(形状:一次粒子径が10nm)。
得られた正極活物質についてXRD測定を行った。結果を図5のBに示す。
次に、この正極活物質を用いて放電反応をしたところ、OCV(Open Circuit Voltage)測定で4.9Vの電位を確認した。
比較例1
反応溶液中、原料であるTiOCH(CHをエチレングリコールおよびクエン酸に溶解させ、さらに他の原料であるCHCOOLiおよびCHCOONiを、金属元素の比率が原子比でLi:Ni:Ti=1.2:0.5:1.5となる割合で加え、160℃、窒素中で還流反応を施した後、溶媒留去することにより、濃縮して前駆体濃縮物を得た。
前駆体濃縮物の加熱処理を、空気中、425℃で10時間、次いで800℃で3時間行った。
得られた正極活物質についてXRD測定を行った。結果を図6に示す。
図5から、実施例1および実施例2において、空気中、425℃および500℃で加熱処理することにより不純物のない(XRD測定結果を示すグラフにおいて、12個のLiNi0.51.5に基くピーク以外の不純物に基くピークが確認されない)スピネル構造型のLiNi0.51.5を得ることができた。
得られた正極活物質の結晶性は、加熱温度が425℃のものより500℃のものの方が高い。
これに対して、図6に示すように、金属元素の比率が原子比でLi:Ni:Ti=1.2:0.5:1.5となる割合で合成した前駆体濃縮物を、前駆体濃縮物の加熱処理を空気中、425℃で10時間、次いで800℃で3時間行うと、目的物であるLiNi0.5Ti1.5に基くピーク以外のピーク(例えば、2θ=23.04°、2θ=33.07°、2θ=49.43°)が確認され、不純物が生成したことが分かる。
比較例2
前駆体濃縮物の加熱処理を、酸素中、図7のAに示す温度、時間で行った。
得られた酸化物系正極活物質についてXRD測定を行った。結果を図7のAに示す。
比較例3
前駆体濃縮物の加熱処理を、酸素中、図7のBに示す温度、時間で行った。
得られた酸化物系正極活物質についてXRD測定を行った。結果を図7のBに示す。
図7から、酸素中で加熱処理したものは、425℃で3時間の加熱でも目的物であるLiNi0.5Ti1.5に基くピーク以外のピーク(例えば、2θ=24.12°、2θ=33.01°、2θ=54.02°)が確認され、不純物が生成したことがわかる。
700℃でもほとんど変化がない。
このことから、熱処理条件としては、酸素雰囲気よりも大気中の方が適していると考えられる。
参考例1
下記の計算手法を用いて、高電位材料LiNi0.5Mn1.5の検証を行った。
参考文献:L. Wang, T. Maxisch and G. Ceder, Phys. Rev. B 73(2006) 197107
密度汎関数理論(DFT)に基く平面波基底第一原理計算 VSP code
Projector Augmented Wave methods(PAW法)
交換相関ポテンシャル GGA
スピン有り
平面波の打ち切りエネルギー 500eV
k点サンプリング 3x3x3(conventional cell)
GGA+Uによる電子相関効果の考慮
(Ni 3d U=6eV)
公知の固相法による正極活物質であるLiNi0.5Mn1.5は、高電位材料として報告されている。この材料が高電位を示す根拠について計算を用いて検証した。計算モデルを図3に示す。
その結果、再安定な結晶構造は、空間群P432に分類されることが分った。また、このことを支持する報告もされている。
さらに、この材料の電位は、Liを抜いた状態と抜いていない状態とのエネルギー差から電池反応電位を計算して、Li/Li電位に対して4.70Vであった。実験では4.7〜4.8Vが報告されていることから、本計算手法を用いた電位算出の精度が高いことが分かる。
充電前と放電前の電子状態の変化を評価したところ、Ni原子上では大きく変化していたが、Mn原子上では変化がなかった。このことから、Liの挿入脱離反応にはNiのみがかかわっていることがわかった。
さらに、特徴的な構造として、フェルミ準位付近がNiとOの軌道のみから構成されており、Mnの寄与が少ないことがわかった。
以上から、Mnサイトは電子状態を計算してNi軌道と混成軌道を形成していないものに置き換えられることが考えられる。
参考例2
LiNi0.5Mn1.5のMnサイトをTiに置き換えて計算を行った。計算モデルを図2に示す。
その結果、LiNi0.5Mn1.5と同様にフェルミ準位付近がNiとOの軌道のみから構成され、Tiの寄与が小さいことがわかった。
さらに、この材料の電位は、電池反応を計算してLi/Li電位に対して4.9Vで、LiNi0.5Mn1.5よりも0.1〜0.2V大きいことがわかった。
比較例4
硝酸リチウムと塩基性炭酸ニッケル、酸化チタンを乳鉢で混合[Li:Ni:Ti=1:0.5:1.5(原子比)]した後、酸素雰囲気中、750℃で16時間、焼成を行った。
得られた材料のXRD評価を行ったところ、スピネル構造LiNi0.5Ti1.5が確認できたが、多くの不純物が存在していた。
次に、充放電反応を確認したところ、OCV(Open Circuit Voltage)測定で4.9Vの電位を確認した。
本発明によれば、不純物混在量が少なくて安定して高電位材料であり得る酸化物系正極活物質を容易に得ることができる。

Claims (7)

  1. 正極活物質の製造方法であって、
    溶媒に、Liを含む化合物、Niを含む化合物およびM(Mは4価のときに6配位を取り得る元素である。)を含む化合物を、各化合物の前記元素の比率が原子比でLi:Ni:M=1:0.5:1.5となる割合で溶解、混合して混合液を得る工程、
    得られた混合液を加熱、濃縮することにより正極活物質前駆体を得る工程、および
    得られた正極活物質前駆体を空気中、425℃以上800℃未満の温度で焼成して、式:LiNi0.51.5で示される正極活物質を生成させる工程
    を含む、前記方法。
  2. 前記Mが、周期律表の4、5、6、7、8、9、10、14又は16族の元素(但し、Ni、C、O、Sを除く。)である請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記Mが、Ti、Zr、Hf、Ge、SnおよびPbからなる群から選択される請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記溶媒が、グリコール化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記混合液が、さらにキレート化剤を含むものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法によって得られた正極活物質。
  7. 請求項6に記載の正極活物質を用いた二次電池。
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