JP2013092124A - ガスタービンエンジンの多段圧縮機の可変抽気弁構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ガスタービンエンジンの多段圧縮機に於ける前段圧縮機と後段圧縮機との間に設けられる抽気構造に於いて、低回転域に於いて効率の良い抽気が実行可能であり、定格回転域に於いて圧縮機性能に対する影響が少なくなるように抽気を停止できるようにすること。
【解決手段】 本発明の多段圧縮機を有するガスタービンエンジンは、後段圧縮機のシュラウドの前端に圧縮空気の流れ方向に傾斜し環状の抽気孔の一方の壁を形成するシュラウド斜面と、前段圧縮機のシュラウドの後端に圧縮空気の流れ方向に沿って前後方向に移動可能であり且つシュラウド斜面と同じ角度を有し抽気孔の他方の壁を形成する傾斜面を含み、該傾斜面がシュラウド斜面に接触する位置に於いて抽気孔を閉鎖する環状の抽気弁体とを含む抽気弁構造を有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ガスタービンエンジンの多段圧縮機の構造に係り、より詳細には、多段圧縮機に於ける抽気のための可変抽気弁の構造に係る。
航空機の動力源などに利用されるガスタ―ビンエンジンに於いては、圧縮機により圧縮された空気が燃焼器へ導入される。かかる圧縮機としては、種々の態様の多段軸流圧縮機、多段軸流−遠心圧縮機、多段遠心圧縮機が採用されている。多段圧縮機の場合、定格回転域よりも低い回転域に於いては、前段の圧縮機から後段の圧縮機へ送られる空気の圧縮の程度が低減することにより、後段の圧縮機入口の空気密度が低減し、後段の圧縮機がチョ―ク状態となり、前段の圧縮機の空気流量が制限される。そのため、前段圧縮機に於いては、サージング状態となり得る。この前段圧縮機のサージング状態は、前段圧縮機と後段圧縮機との間に於いて、抽気(即ち、空気流量の一部の漏出)により回避可能である。そこで、従前より、前段圧縮機と後段圧縮機との間に於いて、低回転域での運転時(エンジン始動、加速、減速)に抽気が実行されるように、スリット又は開口(抽気孔)が設けられている。この点に関し、低回転域では上流の圧力が高くないので、必要な抽気量を確保するのに大きな開口面積の抽気孔が必要となり、条件によっては、与えられたスペ―スの制限内に必要な抽気面積を確保できない場合も生じる。従って、抽気孔としては、大きな流量係数の得られる形状が望まれる。―方、高速回転の定格運転時には抽気の必要はなく、抽気を続けると出力損失に繋がるため、抽気を止める必要があるところ、抽気孔を開いたままにして抽気孔外側のチヤンバ―出口に設けた開閉弁で抽気を停止すると、チャンバ―内の空気が抽気孔から出人りし、圧縮機入口の流れが影響を受けて性能低下の原因になる。そこで、抽気が必要の無い定格回転では圧縮機性能に影響を与えないように抽気孔は閉鎖する構成が採用されている。(例えば、特許文献1−4)
特許第3682976号公報 特開2007−138816 特開平5−125957号公報 特開2007−231949
一般に、従前の多段圧縮機の抽気孔は、図4(A)に示すように空気流に対して平行に配置されているので、抽気孔の流れは、流速の影響を受けて、流量係数の小さな流れになる。即ち、流れに対して孔が垂直であるオリフィス構造の場合、その流量係数は、約0.6となるところ、多段圧縮機の抽気孔のように流れに孔が平行な場合には流量係数は更に小さくなり、より大きな開口面積が必要になる。また、孔前後の静圧差が十分にあれば、孔の面積を然程に大きくせずに必要な抽気流量を確保できるが、多段圧縮機に於いて抽気が必要とされる低回転域に於いては、圧力が低く、従って、抽気孔前後の静圧差は小さいので、必要な抽気量を確保するために、より大きな開口面積が必要になる。更に、既に述べた如く、定格運転時には抽気を停止する必要のあるところ、この動作を圧縮機シュラウドの外側のチャンバ―出口部に制御弁を設けて行う場合、チャンバ―内の循環流が抽気孔から出入りするため圧縮機性能が影響を受ける(図4(B)参照)。
かくして、本発明の一つの目的は、ガスタービンエンジンの多段圧縮機に於いて、前段圧縮機のサージングの回避のために前段圧縮機と後段圧縮機との間に設けられる抽気構造であって、抽気差圧が小さい低回転域に於いて、効率の良い抽気が実行可能であると同時に、抽気の必要無い定格回転域に於いて圧縮機性能に対する影響が少なくなるように抽気を停止できる可変抽気弁構造を提供することである。
本発明によれば、上記の課題は、多段圧縮機を有するガスタービンエンジンであって、多段圧縮機の後段圧縮機のシュラウドの前端に設けられ、圧縮空気の流れ方向に傾斜し環状の抽気孔の一方の壁を形成するシュラウド斜面と、多段圧縮機の前段圧縮機のシュラウドの後端に設けられ圧縮空気の流れ方向に沿って前後方向に移動可能であり且つシュラウド斜面と同じ角度を有し抽気孔の他方の壁を形成する傾斜面を含み、該傾斜面がシュラウド斜面に接触する位置に於いて抽気孔を閉鎖する環状の抽気弁体とを含む抽気弁構造を有するガスタービンエンジンによって達成される。なお、多段圧縮機は、多段軸流圧縮機、前段が軸流圧縮機であり後段が遠心圧縮機である多段軸流−遠心圧縮機、多段遠心圧縮機のいずれであってもよい。
上記の構成によれば、多段圧縮機の前段圧縮機のシュラウドと後段圧縮機のシュラウドとの間にて、環状の抽気弁体の傾斜面と後段圧縮機のシュラウド斜面とにより、シュラウドの内側を流れる圧縮空気の流れ方向に傾斜して突出した環状抽気孔が形成される。抽気孔は、平面から突出した形状であることから、抽気流が突出形状に案内され、これにより、抽気孔の開孔状態に於いて、抽気孔の流量係数がより大きくなるよう改善される。かくして、低回転域の抽気孔前後の圧力差が小さい運転域でも効率の良い抽気を行うことでき、必要な抽気量を確保することが容易となる。また、定格運転時には、抽気弁体が後段方向に移動され、後段圧縮機のシュラウド斜面と接触し、抽気孔を閉鎖することとなり、抽気孔からの空気の出入りの流れがなくなるので、性能への影響を抑えることができる。なお、弁体の移動は、外部に設けられたアクチュエータにより駆動されるドライブシャフトの回転により移動するリンクなどによって達成されてよい。
かくして、上記の本発明によれば、開閉可能な抽気弁構造がシュラウド上にて圧縮空気の流れ方向に傾斜して突出した形状に形成されていることにより、従前の平面的な抽気孔が開閉する構造に比してより大きな流量係数が達成され、かつ、シュラウド上にて傾斜したシュラウド斜面と弁体とがシールされることで、定格回転域に於いて圧縮機性能に対する影響が少なくなるように抽気を停止可能とかることができる。また、本発明では、従前に比して、より小さいスペースで抽気孔を設けることが可能となるので、ガスタービンエンジンの多段圧縮機に於ける設計の自由度が増大し、有利である。
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
図1は、本発明による環状可変抽気弁構造を備えたガスタービンエンジンの多段圧縮機の模式的な断面図である。 図2は、本発明による環状可変抽気弁構造に於ける弁体と弁体の駆動機構の模式的な斜視図である。 図3は、本発明による環状可変抽気弁構造に於ける弁体の動きの模式図である。(A)は、開孔状態であり、(B)は、閉鎖状態である。 図4は、従前の抽気孔構造の模式図(A)と多段圧縮機の模式的な断面図(B)である。
1…前段圧縮機のシュラウド
1a…前段圧縮機のロータ
1b…前段圧縮機のステータ
2…後段圧縮機のシュラウド
2a…後段圧縮機のシュラウド前端の斜面
2b…後段圧縮機のインペラ
3…リンク
4…ドライブシャフト
5…環状弁体
5a…環状弁体支持幹
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
図1を参照して、ガスタービンエンジンに於いて、本発明による環状可変抽気弁構造は、多段圧縮機の前段圧縮機のシュラウド1と後段圧縮機のシュラウド2との間に設けられる。図示の例の多段圧縮機に於いては、前段圧縮機は、ロータ1aとステータ1bを含む軸流圧縮機であり、後段圧縮機は、インペラ1bとディフューザ(図示せず)を含む遠心圧縮機であるが、これに限定されず、本発明が適用される多段圧縮機は、多段軸流圧縮機、多段遠心圧縮機であってもよい。多段圧縮機に於いては、公知の態様にて、前方(左方)から空気が前段圧縮機へ流入し、ここで圧縮された後、後段圧縮機に於いて、空気が更に圧縮されて、燃焼器(図示せず)へ送られる。かかる構成に於いて、既に述べた如く、前段圧縮機及び後段圧縮機は、基本的には定格回転域にて効率良く空気の圧縮が達成されるよう設計され構成されている。そして、回転が定格回転域を下回ると(低回転域)、前段圧縮機に於いて十分な圧縮が達成されないことから、後段圧縮機の入口で空気の密度の低減が生じ、これにより、後段圧縮機はチョーク状態となり得る。その結果、前段圧縮機は、後段圧縮機のチョーク状態に起因して空気流量が制限されて流れがストールするサージング状態となる。そこで、従前より、前段圧縮機のシュラウド1と後段圧縮機のシュラウド2との間に、低回転域に於いて、空気流量の一部を抽気して、前段圧縮機のサージング状態の防止を図るための抽気孔構造を設けられる。また、多段圧縮機が定格回転域にて運転される際には、抽気は必要ないので、抽気孔が閉鎖されるよう構成される。
上記の抽気孔について、既に述べた如く、従前では、図4(A)に示すように空気流に対して平行に配置され、これにより、孔幅がDであっても、シュラウド内の流速の影響を受けて、抽気孔の流れの幅がDより小さいdとなり、流量係数の小さな流れになっていた。また、定格運転時には、抽気が不要であり、抽気を閉じる必要があるところ、この動作を、図4(B)に示されている如く、圧縮機のシュラウドの外側のチャンバ15の出口部分12に制御弁を設ける態様の場合、チャンバ内の循環流が抽気孔10から出入りするために圧縮機性能が影響を受けることとなる。そこで、本発明に於いては、抽気孔の形状がシュラウド内の圧縮空気の流れの方向に傾斜して平面から突出し、且つ、かかる形状を維持しながら、抽気孔の幅が可変となるよう構成され、これにより、より大きな流量係数と定格回転域に於いて圧縮機性能に対する影響が少ない状態での抽気の停止とが図られる。
具体的には、図1に示されている如く、まず、後段圧縮機のシュラウド2の前端2a(シュラウド斜面)がシュラウドの全周に亘って、外方へ突出し、更に、圧縮空気の流れ方向に傾斜され、抽気孔10の一方の環状の壁を形成する。また、シュラウド斜面2aに対向して、抽気弁体5が設けられる。抽気弁体5は、図1及び図2に模式的に示されている如く、環状であり、シュラウド斜面の傾斜角と同一の角度にて圧縮空気の流れ方向に傾斜した傾斜面を有する。そして、抽気弁体5は、支持幹5aを介してシュラウドの前後方向に延在したリンク3へ連結し、リンク3は、ドライブシャフト4と係合される。ドライブシャフト4は、図示していないアクチュエータにより回転され、ドライブシャフト4の回転によって、リンク3が前後方向に移動することにより、抽気弁体5がシュラウド1上にて摺動可能となっている。
作動に於いては、エンジンが定格回転域を下回る回転域にて運転されているときには、図3(A)に示されている如く、抽気弁体5は、シュラウド斜面2aから前方に隔置された状態とされ、これにより、抽気弁体5とシュラウド斜面2aとの間に抽気孔が形成される。この状態に於いては、抽気孔が斜めの壁で案内されるので、抽気孔の流れは平面形状の孔に比べて高い流量係数の流れになり、シュラウド内外の圧力差が小さくても、効率の良い抽気が可能になり、必要な抽気量が確保される。一方、エンジンが定格回転域にて運転される際には、アクチュェ―タの回転駆動により、ドライブシャフト4が回転してリンク3及び弁体5がシュラウドの後方へ移動し、図3(B)の如く、弁体5の傾斜面がシュラウド斜面2aと整合して接触し、これにより、チャンバ内に循環流を生ずることなく、抽気孔が閉鎖されることとなる。なお、ここで理解されるべきことは、抽気孔が閉鎖した状態で、弁体5の傾斜面とシュラウド斜面2aとが同一の角度にて傾斜していることにより、シュラウド内壁上に空間が形成されず、余計な空間に空気が出入りすることによる圧縮機性能に対する影響がなくなるということである。
かくして、上記の構成によれば、抽気差圧が小さい低回転域に於いて、効率の良い抽気がなされ、前段圧縮機のサージングの回避及び後段圧縮機のチョークの脱出が図られ、なおかつ、抽気の必要無い定格回転域に於いて圧縮機性能に対する影響が少なくなるように抽気が停止されることとなる。
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。

Claims (1)

  1. 多段圧縮機を有するガスタービンエンジンであって、前記多段圧縮機の後段圧縮機のシュラウドの前端に設けられ圧縮空気の流れ方向に傾斜し環状の抽気孔の一方の壁を形成するシュラウド斜面と、前記多段圧縮機の前段圧縮機のシュラウドの後端に設けられ圧縮空気の流れ方向に沿って前後方向に移動可能であり且つ前記シュラウド斜面と同じ角度を有し前記抽気孔の他方の壁を形成する傾斜面を含み、該傾斜面が前記シュラウド斜面に接触する位置に於いて前記抽気孔を閉鎖する環状の抽気弁体とを含む抽気弁構造を有するガスタービンエンジン。
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