JP2013089267A - 光情報記録媒体およびその製造方法、ならびに記録層 - Google Patents

光情報記録媒体およびその製造方法、ならびに記録層 Download PDF

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Abstract

【課題】記録密度を向上できる光情報記録媒体およびその製造方法、と記録層を提供する。
【解決手段】光情報記録媒体10は、光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層2を備える。記録層は、ヒドロキシ基を有する高分子樹脂を含み、ヒドロキシ基同士は水素結合し、含まれるカルボン酸無水物の添加剤が、この高分子樹脂とカルボニル基を介して結合している。この添加剤同士は鎖状に結合し、添加剤は記録マークを形成するための光を吸収する2光子吸収材料からなる。
【選択図】図1

Description

本技術は、光情報記録媒体およびその製造方法、ならびに記録層に関する。詳しくは、光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である光情報記録媒体およびその製造方法、ならびに記録層に関する。
従来、光情報記録媒体としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)およびBlu−ray Disc(登録商標)などが広く普及している。しかし、近年では、テレビのハイビジョン化やPC(Personal Computer)で取り扱うデータの急激な増大に伴い、光情報記録媒体の更なる大容量化が求められている。
そこで、光情報記録媒体を大容量化する方法の一つとして、光情報記録媒体の厚み方向に3次元的に情報を記録する方法が提案されている。このような方法を採用した光情報記録媒体として、記録層中に光子吸収によって発泡する記録材料を含有させておき、光ビームを照射することにより空洞としての記録マークを形成するものがある(例えば特許文献1参照)。
上述の光情報記録媒体の記録材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂および光硬化型樹脂などの高分子樹脂を用いることが提案されている(例えば特許文献2参照)。近年では、高分子樹脂を記録材料として用いた光情報記録媒体の記録密度をさらに向上することが望まれている。
特開2005−37658号公報 特開2010−162846号公報
したがって、本技術の目的は、記録密度を向上できる光情報記録媒体およびその製造方法、ならびに記録層を提供することにある。
上述の課題を解決するために、第1の技術は、
光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層を備え、
記録層は、ヒドロキシ基を有する高分子樹脂を含んでいる光情報記録媒体である。
第2の技術は、
ヒドロキシ基を有する高分子樹脂を含み、
光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層である。
第3の技術は、
ヒドロキシ基を有する樹脂材料を含む樹脂組成物を調製し、
樹脂組成物を用いて記録層を形成する光情報記録媒体の製造方法である。
第1および第2の技術では、記録層は、ヒドロキシ基を有する高分子樹脂を含んでいるので、記録層内において高分子樹脂のヒドロキシ基同士が水素結合を形成する。この水素結合の形成により、記録マークとしての空洞の形成時において高分子樹脂の熱流動を抑制できる。したがって、空洞の広がりを抑制し、かつ、空洞の間隔を狭くできる。
第3の技術では、樹脂組成物は、ヒドロキシ基を有する樹脂材料を含んでいるので、記録層形成の際に、樹脂材料のヒドロキシ基同士が水素結合を形成する。この水素結合の形成により、記録マークとしての空洞の形成時において樹脂材料の熱流動を抑制できる。したがって、空洞の広がりを抑制し、かつ、空洞の間隔を狭くできる。
以上説明したように、本技術によれば、記録密度を向上できる。
図1は、本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。 図2は、本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体の記録および再生時の動作の一例について説明するための概略断面図である。 図3Aは、参考例1〜4の光情報記録媒体の再生波形評価に用いたレーザ光照射パターンS1、S2を示す概略図である。図3Bは、図3Aに示すレーザ光照射パターンS1により情報信号を記録した参考例1〜4の光情報記録媒体の再生波形を示す図である。図3Cは、図3Aに示すレーザ光照射パターンS2により情報信号を記録した参考例1〜4の光情報記録媒体の再生波形を示す図である。 図4は、実施例1、2、比較例1の光情報記録媒体の記録感度特性を示すグラフである。 図5は、実施例1、2、比較例1の光情報記録媒体に対するレーザ光の照射パワーを説明するためのグラフである。 図6は、実施例1〜3、比較例1の光情報記録媒体の記録マークを示す図である。 図7Aは、実施例4、5の記録層における加熱乾燥前後の蛍光スペクトルを示す。図7Bは、実施例6の記録層における加熱乾燥前後の蛍光スペクトルを示す。
本技術の実施形態について以下の順序で説明する。
1.光情報記録媒体の構成
2.光情報記録媒体の製造方法
3.光情報記録媒体の記録再生時の動作
4.効果
5.変形例
<1.第1の実施形態>
[1.光情報記録媒体の構成]
図1は、本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。この光情報記録媒体10は、その内部に3次元的に情報信号を記録する体積記録ディスクであり、図1に示すように、基板1上に、記録層2、中間層3、選択反射層4、カバー層5を順次積層した構成を有している。光情報記録媒体10は、全体として略円板状の形状を有し、その中央部にはチャッキング用の開口部(以下センターホールと称する。)が設けられている。
この一実施形態に係る光情報記録媒体10では、当該光情報記録媒体10を回転駆動させるとともに、そのカバー層5側の表面からレーザ光を記録層2に照射することにより、情報信号の記録または再生が行われる。
光情報記録媒体10は、ボイド記録方式の媒体である。ボイド記録方式は、記録層2に対して比較的高パワーでレーザ光照射を行い、記録層2内にボイド(空洞)を記録マークとして記録する記録方式である。このように形成されたボイド部分は、記録層2内における他の部分とは屈折率が異なる部分となり、それらの境界部分で光の反射率が高められることになる。したがって、上記ボイド部分は、記録マークとして機能し、これによってボイドマークの形成による情報信号の記録が実現される。
以下、光情報記録媒体10を構成するカバー層5、選択反射層4、中間層3、記録層2および基板1について順次説明する。
(カバー層)
カバー層5は、透明性を有するものであればよく特に限定されるものではなく種々の材料を用いることができ、例えば、透明性を有するプラスチック材料などの有機材料、ガラスなどの無機材料を用いることができる。プラスチック材料としては、例えば、公知の高分子材料を用いることができる。公知の高分子材料としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。無機材料としては、例えば、石英、サファイア、ガラスなどが挙げられる。
カバー層5は、例えば、中央にセンターホールが形成された略円板形状を有する。このカバー層5の一主面は、例えば、凹凸面となっており、この凹凸面上に選択反射層4が設けられている。凹凸面は、記録または再生位置を案内するための案内溝により形成されている。光情報記録媒体10を一主面側から見たときの案内溝の全体形状としては、例えば、スパイラル状、同心円状などの各種形状が挙げられる。
案内溝としては、例えば、連続溝(グルーブ)、ピット列またはそれらの組合せを用いることができる。線速の安定化や位置情報(例えば回転角度情報や半径位置情報など)を付加するために案内溝を蛇行させるようにしてもよい。
(選択反射層)
選択反射層4は、カバー層5の凹凸面側に設けられている。バルク記録方式では、記録層2に対してマーク記録を行うための記録光(以下第1レーザ光と適宜称する。)とは別に、上記カバー層5の案内溝に基づきトラッキングやフォーカスのエラー信号を得るためのサーボ光(以下第2レーザ光と適宜称する。)が選択反射層4に別途照射される。サーボ光の照射に際して、サーボ光が記録層2に到達してしまうと、当該記録層2内におけるマーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、サーボ光は反射し、記録光は透過するという選択性を有する反射層が必要とされる。
バルク記録方式では、記録光とサーボ光としてはそれぞれ、波長の異なるレーザ光が用いられる。選択反射層4としては、サーボ光と同一の波長帯の光は反射するのに対して、それ以外の波長による光(例えば記録光)は透過するという、波長選択性を有する選択反射層が用いられる。
選択反射層4としては、例えば、屈折率の異なる低屈折率層および高屈折率層を交互に積層してなる積層膜を用いることができる。低屈折率層および高屈折率層としては、例えば、誘電体層を用いることができる。誘電体層の材料としては、例えば、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化チタン、フッ化マグネシウム、酸化亜鉛などを用いることができる。
(中間層)
中間層3は、記録層2と選択反射層4との間に設けられる。中間層3は、例えば、選択反射層4が設けられたカバー層5と、記録層2とを貼り合わせるための貼合層である。中間層3の材料としては、記録光の透過性に優れた材料を用いることが好ましく、例えば、紫外線硬化樹脂などの感光性樹脂、感圧性粘着剤(PSA:Pressure Sensitive Adhesive)などを用いることができる。
(記録層)
記録層2に対しては、記録層2の深さ方向における予め定められた各位置に対し、逐次レーザ光を合焦させてボイドマーク形成による情報記録が行われる。したがって、記録済みとなった光情報記録媒体10において、記録層2内には、複数のマーク形成層(以下情報記録層と適宜称する。)Lが形成される。図1では、情報記録層L0〜Lnとして示しているように、多数((n+1)個)の情報記録層が記録層2内には形成される。
記録層2の厚みやサイズなどは特に限定されるものではないが、例えば青色レーザ光(波長405nm)をNA=0.85の光学系で記録層2に照射することを考えた場合、記録媒体表面(カバー層5の表面)から深さ方向に50μm〜300μmの位置に情報記録層を形成することが好ましい。これは球面収差補正を考慮した範囲である。図1では、ディスク表面から70μm〜260μmの位置に情報記録層を形成する例が示されている。当然ながら、深さ方向の位置範囲が同一の条件では、層間隔を狭くするほど、多数の情報記録層を形成することができる。
また、各情報記録層においては、カバー層5に形成された案内溝を用いてトラッキングサーボがとられた状態でボイドマークによる記録が行われる。したがって、情報記録層に形成されるボイドマーク列は、光情報記録媒体10の一主面側から見ると、スパイラル状または同心円状などに形成されることになる。
記録層2は、光の吸収により発泡し、記録マークとしてのボイドを形成可能である体積記録型の記録層である。記録層2は、ヒドロキシ基を有する高分子樹脂を含んでいる。これにより、高分子樹脂のヒドロキシ基同士が水素結合できるので、記録マークとしてのボイド形成時に、高分子樹脂の熱流動を抑制できる。すなわち、ボイド径の拡大を抑制することができ、かつ、ボイド間隔(ピッチ)を縮小することができる。よって、記録密度を向上できる。記録層2が、ヒドロキシ基を有する高分子樹脂以外にも別の高分子樹脂を含んでいてもよいが、記録密度の観点からすると、ヒドロキシ基を有する高分子樹脂を主成分として含んでいることが好ましい。記録層2は、ヒドロキシ基を有する高分子樹脂を母剤とし、添加剤をさらに含んでいてもよい。
ここで、「母剤」とは、記録層2に含まれる高分子樹脂のことをいう。「添加剤」とは、母剤以外の低分子材料や微粒子などの材料のことをいう。添加剤である低分子材料としては、有機材料および無機材料のいずれを用いることも可能であり、両者を組み合わせて用いるようにしてもよい。
ヒドロキシ基を有する高分子樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基を有する熱可塑性樹脂、ヒドロキシ基を有する光硬化型樹脂、およびヒドロキシ基を有する熱硬化型樹脂などからなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。ヒドロキシ基を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基を有するセルロース系ポリマー、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系ポリマー、およびヒドロキシ基を有するビニル系ポリマーなどからなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
「ヒドロキシ基を有するセルロース系ポリマー」とは、セルロースまたはその誘導体のことをいい、例えば、以下の構造式(1)により表される。ここで、セルロース誘導体は、ヒドロキシ基を有するセルロース誘導体である。
(式中、R1〜R6は独立してニトロ基、水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基などを表し、R1〜R6のうちの1個以上が水素(H)、ヒドロキシ基、またはヒドロキシ基を有する置換基である。ヒドロキシ基を有する置換基は、例えば、ヒドロキシアルキル基などである。)
上記構造式(1)により表されるセルロース系ポリマーとしては、例えば、三酢酸セルロース、酢酸セルロース、フタル酸酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
「ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系ポリマー」とは、(メタ)アクリルポリマーの一部がヒドロキシ基、またはヒドロキシ基を有する置換基で置換された(メタ)アクリルポリマーの誘導体のことをいう。ここで、「(メタ)アクリル系ポリマー」とは、アクリル系ポリマーまたはメタアクリル系ポリマーのことを示し、「(メタ)アクリルポリマー」とは、アクリルポリマーまたはメタアクリルポリマーのことを示す。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸、ポリ(2-エチルアクリル酸)を用いることができる。以下に、ポリアクリル酸、ポリ(2-エチルアクリル酸)の構造式を示す。
(ポリアクリル酸)
(ポリ(2-エチルアクリル酸))
「ヒドロキシ基を有するビニル系ポリマー」とは、ビニルポリマーの一部がヒドロキシ基、またはヒドロキシ基を有する置換基で置換されたビニルポリマーの誘導体のことをいう。ヒドロキシ基を有するビニル系ポリマーとしては、例えば、ポリビニルホスホン酸を用いることができる。以下に、ポリビニルホスホン酸の構造式を示す。
(ポリビニルホスホン酸)
ヒドロキシ基を有する高分子樹脂において、単位ユニット当たりのヒドロキシ基の平均個数は特に限定されるものではないが、一例として挙げるならば1個以上である。
(添加剤)
記録層2は、高感度化の観点からすると、レーザ光を吸収して発熱する添加剤をさらに含んでいることが好ましい。記録層2がレーザ光を吸収して発熱する添加剤をさらに含む場合には、記録層2が母剤としてニトロセルロースを含んでいることが好ましい。これにより、ニトロセルロースおよび添加剤のうち添加剤が主としてレーザ光を吸収し、その光吸収により発生した熱をニトロセルロースが受け取って熱分解する。したがって、ニトロセルロースと添加剤とが光吸収の過程で競争的となることを抑制して、添加剤の効果を引き出して記録感度を向上できる。また、この熱分解時にニトロセルロース自体が発熱し、その発熱によりニトロセルロースの分解がさらに促進される。したがって、記録感度をさらに向上できる。なお、ニトロセルロースおよび添加剤のうち添加剤が主としてレーザ光を吸収するのは、ニトロセルロースは励起状態のエネルギー準位が高いため、レーザ光の吸収率が低いためである。
添加剤は、例えば、光を吸収し、吸収した光を熱として母剤に与えて、ニトロセルロースの分解反応を促進させる光増感剤として作用する。添加剤としては、例えば、レーザ光を吸収する1光子または多光子吸収材料を用いることができ、情報記録層Lの多層化の観点からすると、多光子吸収材料を用いることが好ましい。多光子吸収材料としては、例えば、2光子吸収材料を用いることができる。
添加剤としては、例えば、非線形吸収材料および線形吸収材料の少なくとも一方を用いることができ、所望とする記録層2の特性に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、レーザ光に対する透明性向上の観点からすると、添加剤としては非線形吸収材料を用いることが好ましい。また、レーザ光の吸収効率向上の観点からすると、添加剤としては線形吸収材料を用いることが好ましい。さらに、所望の透明性と光吸収効率とを達成するために、非線形吸収材料と線形吸収材料との両方を用い、それらの含有量を適宜調整するようにしてもよい。
添加剤は、母剤としての高分子樹脂と結合していることが好ましい。母剤と添加剤との相溶性が改善されて、添加剤を記録層2に高濃度で添加できるからである。添加剤と母剤としての高分子樹脂との結合は、共有結合であることが好ましく、カルボニル基を介した結合であることがより好ましい。添加剤は、酸無水物を含む添加剤、またはヒドロキシ基を有する添加剤であることが好ましく、これらの2つの添加剤を併用してもよい。これにより、母剤としての高分子樹脂のヒドロキシ基と、添加剤の酸無水物またはヒドロキシ基との反応により、母剤と添加剤とがカルボニル基を介して結合し、母剤と添加剤との相溶性が改善される。したがって、添加剤を記録層2に高濃度で添加できる。
酸無水物を含む添加剤は、熱または光などにより重合反応可能な置換基を有していることが好ましい。これにより、母剤に結合した添加剤の置換基同士が重合反応し、置換基が直鎖状など鎖状に結合する。したがって、添加剤を記録層2にさらに高濃度で添加できる。重合反応可能な置換基としては、例えば、炭素−炭素間に三重結合を有する置換基を用いることができる。炭素−炭素間に三重結合を有する置換基としては、例えば、アルキニル基またはその誘導体を用いることができ、アルキニル基の誘導体としては、例えば、フェニルエチニル基を用いることができる。
酸無水物としては、カルボン酸無水物などを用いることが好ましい。カルボン酸無水物としては、具体的には例えば、フタル酸無水物、フタル酸無水物の誘導体、ナフタレンカルボン酸無水物、ナフタレンカルボン酸無水物の誘導体を用いることができる。ヒドロキシ基を有する添加剤としては、フタル酸(イソフタル酸、テレフタル酸)、フタル酸の誘導体、ナフタレンカルボン酸、ナフタレンカルボン酸の誘導体などを用いることが好ましい。
フタル酸無水物の誘導体としては、例えば、4-tert-ブチルフタル酸無水物、4-エチニルフタル酸無水物、4-フェニルエチニルフタル酸無水物、および3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物などからなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。ナフタレンカルボン酸無水物としては、例えば、2,3-ナフタレンカルボン酸無水物、1,2-ナフタル酸無水物、1,8-ナフタル酸無水物およびナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物などからなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
重合反応可能な置換基を有する酸無水物としては、例えば、4-エチニルフタル酸無水物および4-フェニルエチニルフタル酸無水物などからなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。以下に、これらのカルボン酸無水物の構造式を示す。
(4-tert-ブチルフタル酸無水物)(tBPA)
(4-エチニルフタル酸無水物)(4EtPA)
(4-フェニルエチニルフタル酸無水物)(PEPA)
(3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物)(BpAA)
(2,3-ナフタレンカルボン酸無水物)(23NDA)
(1,2-ナフタル酸無水物)(12NA)
(1,8-ナフタル酸無水物))(18NA)
(ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物)(NTAA)
(基板)
基板1は、例えば、中央部にセンターホールが設けられた略円板形状を有する。この基板1の一主面に記録層2が設けられる。基板1の材料としては、透明性または不透明性を有する材料のいずれも用いることが可能であり、例えば、プラスチック材料またはガラスを用いることができ、成形性の観点から、プラスチック材料を用いることが好ましい。プラスチック材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などを用いることができ、コストの観点から、ポリカーボネート系樹脂を用いることが好ましい。
[2.光情報記録媒体の製造方法]
次に、本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体の製造方法の一例について説明する。
(カバー層の形成工程)
まず、一主面に凹凸形状が形成されたカバー層5を形成する。カバー層5の形成方法としては、例えば、射出成形(インジェクション)法、フォトポリマー法(2P法:Photo Polymerization)などを用いて、スタンパの形状を樹脂材料に転写する方法を用いることができる。また、原反から巻き出された帯状のシートを円板状に打ち抜き、この円板状のシートにスタンパの凹凸形状を熱転写する方法も用いることができる。
(選択反射層の形成工程)
次に、例えばスパッタリング法により、カバー層5の凹凸面に選択反射層4を形成する。
(記録層の形成工程)
次に、例えば、ヒドロキシ基を有する樹脂材料を溶剤に溶解させて、記録層形成用樹脂組成物を調製する。必要に応じて、添加剤をさらに溶剤に溶解させるようにしてもよい。樹脂材料は、母剤または母剤の原料となる樹脂材料であり、例えば、ヒドロキシ基を有するポリマー、オリゴマーおよびモノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を用いることができる。溶剤としては、ヒドロキシ基を有する樹脂材料を溶解可能なものであればよく特に限定されるものではなく、例えばアセトン、酢酸ブチルなどを用いることができる。
記録層形成用樹脂組成物が酸無水物を含む添加剤をさらに含有している場合には、記録層形成用樹脂組成物の調製の際に、記録層形成用樹脂組成物を加熱または加熱攪拌することが好ましい。添加剤と樹脂材料とを反応(分子間脱水により結合)させることで、添加剤の溶解性を改善できるからである。
次に、例えばキャスティング法により、調製した記録層形成用樹脂組成物を塗布して、樹脂組成物層(すなわち前駆体として記録層)を形成する。次に、樹脂組成物層を乾燥硬化させることにより、シート状の記録層を形成する。樹脂組成物層の硬化方法は、記録層形成用樹脂組成物に含まれる樹脂材料の種類に応じて、冷却硬化、光硬化、熱硬化などから適宜選択される。
この記録層2の形成の際に、記録層形成用樹脂組成物を加熱(例えば加熱乾燥)することが好ましい。これにより、添加剤と樹脂材料とを反応(分子間脱水により結合)させることで、添加剤と樹脂材料との相溶性を改善できる。したがって、記録層形成用樹脂組成物に対して添加剤を高濃度で添加できる。また、添加剤が熱により重合反応可能な置換基を有している場合には、樹脂材料と反応した添加剤の置換基同士が重合反応により直鎖状などの鎖状に結合するので、添加剤と樹脂材料との相溶性をさらに改善できる。したがって、記録層形成用樹脂組成物に対して添加剤をさらに高濃度で添加できる。
次に、シート状の記録層を円板状に打ち抜いて、円板状の記録層2を形成する。
(基板の成形工程)
次に、平面状の両主面を有する基板1を成形する。基板1の成形の方法としては、例えば、射出成形法、フォトポリマー法などを用いることができる。
(貼合工程)
次に、記録層2の一主面と、選択反射層4が形成されたカバー層5の凹凸面とを、感光性樹脂または感圧性粘着剤(PSA)を介して貼り合わせる。これにより、記録層2と選択反射層4との間に、感光性樹脂または感圧性粘着剤を主成分とする中間層3が形成される。
次に、記録層2の他主面と、基板1の一主面とを感光性樹脂または感圧性粘着剤(PSA)を介して貼り合わせる。これにより、記録層2と選択反射層4との間に、感光性樹脂または感圧性粘着剤を主成分とする貼合層が形成される。
以上により、目的とする光情報記録媒体が得られる。
[3.光情報記録媒体の記録再生]
次に、図2を参照しながら、本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体の記録および再生時の動作の一例について説明する。
光情報記録媒体10に対して、情報信号の記録または再生をするための記録光または再生光としての第1レーザ光LZ1と共に、これとは波長の異なるサーボ光としての第2レーザ光LZ2を照射する。これら第1レーザ光LZ1と第2レーザ光LZ2は、例えば、記録再生装置における共通の対物レンズを介して光情報記録媒体10に照射される。
ここで図1に示したように光情報記録媒体10における記録層2には、例えばDVDやBlu−ray Discなどの多層の光情報記録媒体とは異なり、記録対象とする各層位置にはピットやグルーブなどによる案内溝を有する反射面が形成されていない。このため、未だマークの形成されていない記録時においては、第1レーザ光LZ1についてのフォーカスサーボやトラッキングサーボは、第1レーザ光LZ1自身の反射光を用いて行うことはできないことになる。このため、光情報記録媒体10に対する記録時において、第1レーザ光LZ1についてのトラッキングサーボ、フォーカスサーボは共に、サーボ光としての第2レーザ光LZ2の反射光を用いて行うことになる。したがって、記録再生装置には、第1レーザ光LZ1と第2レーザ光LZ2をそれぞれ独立してフォーカス制御できる機構が設けられる。
記録時には、第2レーザ光LZ2を選択反射層4(案内溝形成面)に合焦させる。その状態で選択反射層4(案内溝形成面)を基準とした図2のようなオフセットofを与えるように第1レーザ光LZ1のフォーカス制御を行う。図中では、記録層2に情報記録層L0〜Lnを設定するとした場合に対応した各オフセットofの例を示している。すなわち、情報記録層L0の層位置に対応したオフセットof−L0、情報記録層L1の層位置に対応したオフセットof−L1、・・・、情報記録層Lnの層位置に対応したオフセットof−Lnが設定される場合を示している。これらのオフセットofの値を用いて第1レーザ光LZ1についてのフォーカス機構を駆動することで、深さ方向におけるマークの形成位置(記録位置)を、情報記録層L0としての層位置から情報記録層Lnとしての層位置までのうちで適宜選択することができる。
また、記録時における第1レーザ光LZ1についてのトラッキングサーボに関しては、上述のように第1レーザ光LZ1と第2レーザ光LZ2とを共通の対物レンズを介して照射するという点を利用して、選択反射層4からの第2レーザ光LZ2の反射光を用いた対物レンズのトラッキングサーボを行うことで実現する。このようにサーボ制御が行われる状態で、第1レーザ光LZ1が記録データに基づいて変調され、所定の情報記録層位置に照射されることで、ボイドによるマーク列が形成されていくことになる。
一方、再生時には、図1に示したように記録層2には情報記録層Lが形成された状態となるので、このような情報記録層Lからの第1レーザ光LZ1の反射光を得ることができる。このことから再生時において、第1レーザ光LZ1についてのフォーカスサーボは、第1レーザ光LZ1自身の反射光を利用して行う。
また、再生時における第1レーザ光LZ1のトラッキングサーボは、第2レーザ光LZ2の反射光に基づく対物レンズのトラッキングサーボを行うことによって実現する。ここで、再生時においても、選択反射層4としての案内溝形成面に記録された絶対位置情報の読み出しのために上記案内溝形成面(案内溝)を対象とした第2レーザ光LZ2のフォーカスサーボおよびトラッキングサーボが行われる。すなわち、再生時においても記録時と同様、対物レンズの位置制御は、第2レーザ光LZ2の反射光に基づいて上記案内溝形成面(案内溝)を対象とした第2レーザ光LZ2のフォーカスサーボおよびトラッキングサーボが行われることになる。
なお、再生時の第1レーザ光LZ1のトラッキングサーボは、ボイドマークの記録マーク列に対する第1レーザ光LZ1の反射光に基づいて対物レンズを制御することでトラッキングサーボを行うようにしてよい。また少なくともシーク後の再生中は、記録マーク列からアドレス情報を読み取ることができる。このため再生時には第2レーザ光LZ2を使用しないことも考えられる。
以上のサーボ制御がなされる状態において、ある情報記録層に第1レーザ光LZ1が照射され、その反射光情報としてボイドによるマーク列の情報が得られる。その反射光情報に基づく信号に対し、所定のデコード処理が行われて、再生データが得られる。
[4.効果]
本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体では、記録層2は、ヒドロキシ基を有する高分子樹脂を含んでいるので、記録層内において高分子樹脂のヒドロキシ基同士が水素結合を形成する。この水素結合の形成により、記録マークとしてのボイドの形成時において高分子樹脂の熱流動を抑制できる。したがって、ボイドの広がりを抑制し、かつ、トラック方向(周方向)のボイドの間隔を狭くできる。
記録層2が酸無水物を含む添加剤をさらに含有している場合には、添加剤が高分子樹脂である母剤と反応(分子間脱水により結合)するので、母剤と添加剤との相溶性を改善できる。したがって、母剤に対して添加剤を高濃度で添加できる。
記録層形成用樹脂組成物が、樹脂材料と、酸無水物を含む添加剤と、溶剤とを含む溶液である場合、記録層形成用樹脂組成物の調製する際に、この樹脂組成物を加熱または加熱攪拌させることで、添加剤と樹脂材料とを反応(分子間脱水により結合)させることができる。したがって、記録層形成用樹脂組成物に対する添加剤の溶解性を改善できる。
[5.変形例]
以上、本技術の実施形態について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
また、上述の実施形態では、選択反射層をカバー層と記録層との間に設ける構成を例として説明したが、選択反射層を設ける位置はこの例に限定されるものではない。例えば、選択反射層を基板と記録層との間に設ける構成や、選択反射層を記録層内に設ける構成を採用するようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、記録層と選択反射層との間に中間層を設ける構成を例として説明したが、中間層を省略して記録層と選択反射層とを隣接して設ける構成を採用してもよい。この場合、記録層の両主面のうち選択反射層側の一主面を凹凸面とすることが好ましい。
また、本技術は以下の構成を採用することもできる。
(1)
光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層を備え、
上記記録層は、ヒドロキシ基を有する高分子樹脂を含んでいる光情報記録媒体。
(2)
上記高分子樹脂のヒドロキシ基同士は、水素結合している(1)記載の光情報記録媒体。
(3)
上記記録層は、添加剤をさらに含み、
上記高分子樹脂と上記添加剤とが結合している(1)または(2)記載の光情報記録媒体。
(4)
上記結合が、カルボニル基を介した結合である(3)記載の光情報記録媒体。
(5)
上記添加剤は、酸無水物を含み、
上記高分子樹脂のヒドロキシ基と上記添加剤の酸無水物との反応により結合が形成されている(3)または(4)記載の光情報記録媒体。
(6)
上記酸無水物は、カルボン酸無水物である(5)記載の光情報記録媒体。
(7)
上記高分子樹脂に結合された添加剤同士は、鎖状に結合している(3)〜(6)のいずれかに記載の光情報記録媒体。
(8)
上記添加剤は、記録マークを形成するための光を吸収する2光子吸収材料である(3)〜(7)のいずれかに記載の光情報記録媒体。
(9)
ヒドロキシ基を有する高分子樹脂を含み、
光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層。
(10)
ヒドロキシ基を有する樹脂材料を含む樹脂組成物を調製し、
上記樹脂組成物を用いて記録層を形成する光情報記録媒体の製造方法。
(11)
上記樹脂組成物は、酸無水物を含む添加剤をさらに含む(10)記載の光情報記録媒体の製造方法。
(12)
上記添加剤は、重合反応可能な基を有している(11)記載の光情報記録媒体の製造方法。
(13)
上記重合反応可能な基は、炭素−炭素間に三重結合を有する基である(12)記載の光情報記録媒体の製造方法。
(14)
上記樹脂組成物の調製の際に、上記樹脂組成物を加熱する(11)〜(13)のいずれかに記載の光情報記録媒体の製造方法。
(15)
上記記録層の形成の際に、上記記録層を加熱する(11)〜(13)のいずれかに記載の光情報記録媒体の製造方法。
以下、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
本技術の実施例および比較例について以下の順序で説明する。
1.記録密度についての検討(1)
2.記録密度についての検討(2)
3.相溶性についての検討
<1.記録密度についての検討(1)>
(参考例1)
(カバー層の形成工程)
まず、シクロオレフィンポリマーからなる厚さ0.1mmのシートを準備した。このシートから直径12cmの円板を打ち抜いて、円板状のカバー層を形成した。次に、このカバー層の一主面に対してスタンパの凹凸形状を熱転写して、案内溝となるグルーブをスパイラル状に形成した。
(選択反射層の形成工程)
スパッタリング法により、カバー層のグルーブ形成面上に選択反射層を形成した。なお、選択反射層は、窒化シリコン層/酸化シリコン層/窒化シリコン層/酸化シリコン層/窒化シリコン層の5層構造とした。
(記録層の形成工程)
まず、キャスティング法により、熱可塑性樹脂としてのポリアリレートからなる厚さ0.1mmの記録層形成用シートを成形した。次に、このシートから直径12cmの円板を打ち抜いて、円板状の記録層を形成した。
(基板の形成工程)
射出成形により、直径12cm、厚さ1.1mmのポリカーボネート基板を成形した。
(貼合工程)
まず、選択反射層が形成されたカバー層のグルーブ形成面を、記録層の一主面に感圧性粘着剤(PSA)を介して貼り合わせた。次に、記録層の他主面を、感圧性粘着剤を介してポリカーボネート基板に対して貼り合わせた。
以上により、厚さ1.3mm、直径12cmを有するとともに、中央部にセンターホールが設けられた光情報記録媒体が得られた。
(参考例2)
キャスティング法により、熱可塑性樹脂としてのポリサルフォンからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは参考例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(参考例3)
キャスティング法により、熱可塑性樹脂としてのポリカーボネートからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは参考例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(参考例4)
キャスティング法により、熱可塑性樹脂としてのポリエーテルサルフォンからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは参考例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
表1は、参考例1〜4の光情報記録媒体の記録層の構成を示す。
(再生波形評価)
上述のようにして得られた参考例1〜4の光情報記録媒体に対して、記録時のレーザ光照射パターンを変えて情報信号を記録し、その再生波形を評価した。以下にその評価方法の詳細を説明する。
まず、図3Aに示すレーザ光照射パターンS1により情報信号を、チタンサファイアレーザを用いて以下のようにして光情報記録媒体に記録した。回転させた光情報記録媒体に対して、開口数NA:0.85の対物レンズを介して、波長λ:405nm、ピークパワーPp:170W、パルス幅T:2.3ps、周波数f:76MHzのレーザ光を表面深さd:50μmの位置に照射した。なお、光情報記録媒体は、線速度v:0.15m/secのCLV(Constant Linear Velocity)方式により回転駆動させた。次に、回転させた光情報記録媒体に対してレーザ光を照射して、記録した情報信号を再生した。
次に、図3Aに示すレーザ光照射パターンS2を用いる以外は、図3A示すレーザ光照射パターンS1を用いた場合と同様に光情報記録媒体に情報信号を記録した。なお、図3Aに示すレーザ光照射パターンS2は、図3Aに示すレーザ光照射パターンS1のパルス間の間隔をΔT(=T/10、T:パルス幅)短くしたものである。次に、光情報記録媒体にレーザ光を照射して、記録した情報信号を再生した。
図3Bは、図3Aに示すレーザ光照射パターンS1により情報信号を記録した参考例1〜4の光情報記録媒体の再生波形を示す。図3Cは、図3Aに示すレーザ光照射パターンS2により情報信号を記録した参考例1〜4の光情報記録媒体の再生波形を示す。
上述の評価結果から、ポリアリレートやポリサルフォンなどの熱可塑性樹脂を記録層の材料として用いた場合には、記録マークとしてのボイドのピッチ(間隔)を挟ピッチ化し、記録密度を向上することは困難であることがわかる。これは、ボイドを挟ピッチ化した場合には、熱可塑性樹脂がレーザ光(記録光)を吸収後に熱流動して、隣り合うボイド同士が繋がってしまうためと考えられる。
<2.記録密度についての検討(2)>
(実施例3)
(カバー層の形成工程)
まず、シクロオレフィンポリマーからなる厚さ0.1mmのシートを準備した。このシートから直径12cmの円板を打ち抜いて、円板状のカバー層を形成した。次に、このカバー層の一主面に対してスタンパの凹凸形状を熱転写して、案内溝となるグルーブをスパイラル状に形成した。
(選択反射層の形成工程)
スパッタリング法により、カバー層のグルーブ形成面上に選択反射層を形成した。なお、選択反射層は、窒化シリコン層/酸化シリコン層/窒化シリコン層/酸化シリコン層/窒化シリコン層の5層構造とした。
(記録層の形成工程)
まず、キャスティング法により、セルロース系樹脂であるニトロセルロースと、添加剤である4-フルオロ-4'-(フェニルエチニル)ベンゾフェノンとからなる記録層形成用シートを成形した。なお、記録層形成用シートにおけるニトロセルロースの含有量を90質量%とし、4-フルオロ-4'-(フェニルエチニル)ベンゾフェノンの含有量を10質量%とした。ニトロセルロースとしては、単位ユニット当たりのヒドロキシ基の平均個数が1.6のものを用いた。次に、成形した記録層形成用シートから直径12cmの円板を打ち抜いて、円板状の記録層を形成した。
(基板の形成工程)
射出成形により、直径12cm、厚さ1.1mmのポリカーボネート基板を成形した。
(貼合工程)
まず、選択反射層が形成されたカバー層のグルーブ形成面を、記録層の一主面に感圧性粘着剤(PSA)を介して貼り合わせた。次に、記録層の他主面を、感圧性粘着剤を介してポリカーボネート基板に対して貼り合わせた。
以上により、厚さ1.3mm、直径12cmを有するとともに、中央部にセンターホールが設けられた光情報記録媒体が得られた。
(実施例2)
キャスティング法により、セルロース系樹脂であるフタル酸酢酸セルロースと、添加剤である4-フルオロ-4'-(フェニルエチニル)ベンゾフェノンとからなる記録層形成用シートを成形した。なお、記録層形成用シートにおけるフタル酸酢酸セルロースの含有量を90質量%とし、4-フルオロ-4'-(フェニルエチニル)ベンゾフェノンの含有量を10質量%とした。フタル酸酢酸セルロースとしては、単位ユニット当たりのヒドロキシ基の平均個数が4のものを用いた。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例3)
キャスティング法により、メタアクリル系樹脂であるポリ-2-ヒドロキシメタクリレートからなる記録層形成用シートを成形した。ポリ-2-ヒドロキシメタクリレートとしては、単位ユニット当たりのヒドロキシ基の平均個数が1のものを用いた。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(比較例1)
キャスティング法により、非晶ポリアリレートからなる記録層形成用シートを成形した。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
表2は、実施例1〜3、比較例1の光情報記録媒体の記録層の構成を示す。
(記録感度の評価)
上述のようにして得られた実施例1〜3、比較例1の光情報記録媒体の記録感度を以下のようにして評価した。
光源としてピコ秒パルスレーザダイオード(PLD)が備えられた評価装置を用いて、以下のようにして光情報記録媒体の記録時間を測定した。停止させた状態(回転させていない状態)の光情報記録媒体に対して、開口数NA:0.85の対物レンズを介して、波長λ:405nmのレーザ光を表面深さd:50μmの位置に照射し、記録層に対する記録マークの記録時間を測定した。この記録時間の測定を、レーザ光の光強度(ピークパワーおよび平均出射光強度)を変化させて行った。なお、記録マークが記録されているか否かは、レーザ光照射による反射光強度の変化に基づき判断した。
ピークパワーは、パルス出力されるレーザ光の最大出射光強度であり、測定された平均出射光強度から計算により算出されたものである。レーザ光のパルス幅Tは2.3ps、繰返周波数fは1GHzとした。
図4は、実施例1、2、比較例1の光情報記録媒体の記録感度特性を示すグラフである。なお、図4において、「NC」、「CAP」、「PAR」および「FPEB」は以下の高分子樹脂および添加剤を示す。
NC:ニトロセルロース
CAP:フタル酸酢酸セルロース
PAR:非晶ポリアリレート
FPEB:4-フルオロ-4'-(フェニルエチニル)ベンゾフェノン
図4に示すように、実施例1、2、比較例1の光情報記録媒体の感度特性はそれぞれ異なっている。以下では、図4に示される各感度曲線に対応する照射パワーを「限界記録パワー」を称する。
(記録マーク観察)
まず、光源としてピコ秒パルスレーザダイオード(PLD)が備えられた評価装置を用いて、記録マークとしてのボイドを以下のようにして記録層に形成した。停止させた状態(回転させていない状態)の光情報記録媒体に対して、開口数NA:0.85の対物レンズを介して、波長λ:405nmのレーザ光を表面深さd:50μmの位置に照射し、記録層に対する記録マークの記録時間を測定した。
ピークパワー(照射パワー)は、図5に示すように、限界記録パワーの1.25倍とした。これは、限界記録パワーでは、ボイド径が光学限界(回折限界)以下となり、透過光像では観測不可能になることがあるためである。レーザ光のパルス幅Tは2.3ps、繰返周波数fは1GHzとした。
次に、光情報記録媒体の基板側から白色光を照射して、カバー層側からCCDイメージセンサにより記録層のボイドを光学顕微鏡により観察した。その結果を図6に示す。
図6は、実施例1〜3、比較例1の光情報記録媒体の記録マークを示す図である。図6から以下のことがわかる。
熱可塑性樹脂としてニトロセルロース、フタル酸酢酸セルロース、およびポリ-2-ヒドロキシメタクリレートを用いた実施例1〜3では、熱可塑性樹脂として非晶ポリアリレートを用いた比較例1に比べてボイド径を小さくでき、かつ、ボイドを挟ピッチ化できる。これは、ニトロセルロース、フタル酸酢酸セルロース、およびポリ-2-ヒドロキシメタクリレートが有するヒドロキシ基同士が水素結合を形成し、ボイド形成時において、これらの熱可塑性樹脂の熱流動が抑制されたためと考えられる。
したがって、ボイド径の広がりを抑制し、かつ、ボイドのピッチを挟ピッチ化するためには、熱可塑性樹脂としてヒドロキシ基を有する熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
<3.相溶性についての検討>
(実施例4)
まず、セルロース系樹脂(母剤)としてのニトロセルロースと、酸無水物(添加剤)である1,2-ナフタル酸無水物とを、溶剤としてのテトラヒドロフランに混合し、記録層形成用樹脂組成物を調製した。なお、ニトロセルロースと1,2-ナフタル酸無水物とは固形分であり、この固形分中におけるニトロセルロースの含有量を95質量%とし、1,2-ナフタル酸無水物の含有量を5質量%とした。ニトロセルロースとしては、単位ユニット当たりのヒドロキシ基の平均個数が1.6のものを用いた。
次に、キャスティング法により、調製した樹脂組成物をPETシート上に塗布し、前駆体としての記録層をPETシート上に形成した。次に、この記録層の蛍光スペクトルを測定した。次に、前駆体としての記録層を加熱乾燥させることにより、最終形態としての記録層を形成した。次に、この記録層の蛍光スペクトルを再度測定した。
(実施例5)
酸無水物(添加剤)として4-エチニルフタル酸無水物を用いた。記録層形成用樹脂組成物の固形分中におけるニトロセルロースの含有量を95質量%とし、4-エチニルフタル酸無水物の含有量を5質量%とした。これ以外のことは実施例4と同様にして記録層をPETシート上に形成するとともに、記録層の加熱乾燥前後の蛍光スペクトルを測定した。
(実施例6)
酸無水物(添加剤)として4-フェニルエチニルフタル酸無水物を用いた。記録層形成用樹脂組成物の固形分中におけるニトロセルロースの含有量を97質量%とし、4-フェニルエチニルフタル酸無水物の含有量を3質量%とした。これ以外のことは実施例4と同様にして記録層をPETシート上に形成するとともに、記録層の加熱乾燥前後の蛍光スペクトルを測定した。
表3は、実施例4〜6の記録層の組成を示す。
以下に、実施例4〜6の記録層に含まれる添加剤の構造式を示す。
(1,2-ナフタル酸無水物)
(4-エチニルフタル酸無水物)
(4-フェニルエチニルフタル酸無水物)
図7Aは、実施例4、5の記録層における加熱乾燥前後の蛍光スペクトルを示す。図7Bは、実施例6の記録層における加熱乾燥前後の蛍光スペクトルを示す。なお、図7Aおよび図7Bにおいて、「NC」、「12NA」、「4EtPA」および「PEPA」は以下のセルロース系樹脂(母剤)および酸無水物(添加剤)を示す。
NC:ニトロセルロース
12NA:1,2-ナフタル酸無水物
4EtPA:4-エチニルフタル酸無水物
PEPA:4-フェニルエチニルフタル酸無水物
図7Aおよび図7Bから以下のことがわかる。
添加剤として1,2-ナフタル酸無水物を用いた実施例4では、加熱乾燥前後で蛍光強度が増加する。これは、1,2-ナフタル酸無水物とニトロセルロースとの反応(分子間脱水による結合)が熱により促進されたためと考えられる。
添加剤として4-エチニルフタル酸無水物を用いた実施例5では、加熱乾燥前後で蛍光強度が増加する。これは、4-エチニルフタル酸無水物とニトロセルロースとの反応(分子間脱水による結合)が熱により促進されたためと考えられる。
実施例5では、加熱乾燥前後で蛍光強度が長波長側に移動(レッドシフト)している。これは、ニトロセルロースに結合した4-エチニルフタル酸無水物のエチニル基同士が重合反応して二重結合の鎖(すなわちπ共役系の鎖)が形成されたためと考えられる。
添加剤として4-フェニルエチニルフタル酸無水物を用いた実施例6では、加熱乾燥前後で蛍光強度が増加する。これは、4-フェニルエチニルフタル酸無水物とニトロセルロースとの反応(分子間脱水による結合)が熱により促進されたためと考えられる。
実施例6では、加熱乾燥前後で蛍光強度が長波長側に移動(レッドシフト)している。これは、ニトロセルロースに結合した4-フェニルエチニルフタル酸無水物のフェニルエチニル基の同士(炭素−炭素の三重結合の部分同士)が重合反応して二重結合の鎖(すなわちπ共役系の鎖)が形成されたためと考えられる。
以上の結果を総合すると、ヒドロキシ基を有する母剤と、酸無水物を含む添加剤とを組み合わせて用いることで、両者を塗布時または加熱時に結合させることができる。したがって、母剤と添加剤との相溶性を改善し、母剤に対して添加剤を高濃度で添加できる。
また、記録層形成用樹脂組成物(母剤、溶剤および添加剤を含む溶液)を加熱攪拌することで、母剤と添加剤との反応を促進させて、記録層形成用樹脂組成物に対する添加剤の溶解性を向上できると推測される。
1 基板
2 記録層
3 中間層
4 選択反射層
5 カバー層
10 光情報記録媒体
L0〜Ln 情報記録層

Claims (15)

  1. 光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層を備え、
    上記記録層は、ヒドロキシ基を有する高分子樹脂を含んでいる光情報記録媒体。
  2. 上記高分子樹脂のヒドロキシ基同士は、水素結合している請求項1記載の光情報記録媒体。
  3. 上記記録層は、添加剤をさらに含み、
    上記高分子樹脂と上記添加剤とが結合している請求項1記載の光情報記録媒体。
  4. 上記結合が、カルボニル基を介した結合である請求項3記載の光情報記録媒体。
  5. 上記添加剤は、酸無水物を含み、
    上記高分子樹脂のヒドロキシ基と上記添加剤の酸無水物との反応により結合が形成されている請求項3記載の光情報記録媒体。
  6. 上記酸無水物は、カルボン酸無水物である請求項5記載の光情報記録媒体。
  7. 上記高分子樹脂に結合された添加剤同士は、鎖状に結合している請求項3記載の光情報記録媒体。
  8. 上記添加剤は、記録マークを形成するための光を吸収する2光子吸収材料である請求項3記載の光情報記録媒体。
  9. ヒドロキシ基を有する高分子樹脂を含み、
    光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層。
  10. ヒドロキシ基を有する樹脂材料を含む樹脂組成物を調製し、
    上記樹脂組成物を用いて記録層を形成する光情報記録媒体の製造方法。
  11. 上記樹脂組成物は、酸無水物を含む添加剤をさらに含む請求項10記載の光情報記録媒体の製造方法。
  12. 上記添加剤は、重合反応可能な基を有している請求項11記載の光情報記録媒体の製造方法。
  13. 上記重合反応可能な基は、炭素−炭素間に三重結合を有する基である請求項12記載の光情報記録媒体の製造方法。
  14. 上記樹脂組成物の調製の際に、上記樹脂組成物を加熱する請求項11記載の光情報記録媒体の製造方法。
  15. 上記記録層の形成の際に、上記記録層を加熱する請求項11記載の光情報記録媒体の製造方法。
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