JP2013088898A - 3dデータ解析のための装置、方法及びプログラムと、微小粒子解析システム - Google Patents

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Abstract

【課題】解析対象とする微小粒子あるいは微小粒子小集団を分布図上で容易かつ直感的に特定でき、これらについての正確な統計データを得ることが可能なデータ解析装置の提供。
【解決手段】微小粒子の測定データを保存するデータ格納部130と、前記測定データから独立した3種の変数を選択する入力部141と、前記3種の変数を座標軸とする座標空間内における位置と図形を計算し、前記微小粒子の特性分布を表す3D立体画像を作成するデータ処理部120と、前記3D立体画像を表示する表示部142と、を有し、前記3D立体画像において、平面によって複数の領域に区分けされた前記座標空間の各領域内の前記図形を領域毎に異なる色で表示する3Dデータ解析装置1を提供する。
【選択図】図2

Description

本技術は、3Dデータ解析のための装置、方法及びプログラムと、微小粒子解析システムに関する。より詳しくは、微小粒子の測定データを3D立体画像により表示し、該画像を用いてポピュレーション情報などのデータ解析を行うことができる3Dデータ解析装置等に関する。
細胞、微生物及びリポソーム等の生体関連粒子や、ラテックス粒子、ゲル粒子及び工業用粒子等の合成粒子などの微小粒子を解析するため、微小粒子の分散液を流路内に導入して、微小粒子を光学的、電気的あるいは磁気的に測定する微小粒子測定装置が用いられている。
一例として、合成粒子を大きさや形状に応じて判別するパーティクルアナライザーがある。パーティクルアナライザーで測定可能なパラメータ(変数)には、微小粒子の元素組成及び粒径などがある。
また、生体関連粒子の解析では、フローサイトメータ(フローサイトメトリー)が用いられている。フローサイトメータで測定可能なパラメータには、微小粒子の前方散乱光(FS)、側方散乱(SS)、蛍光(FL)及びインピーダンスなどがある。前方散乱光(FS)、側方散乱(SS)及び蛍光(FL)は細胞や微生物(以下、単に「細胞」という)の光学的特性を示すパラメータとして、インピーダンスは細胞の電気的特性を示すパラメータとして用いられる。
具体的には、まず、前方散乱光は、レーザー光の軸に対して前方向の小さい角度で散乱する光であり、細胞の表面で生じるレーザー光の散乱光や回折光、屈折光からなる。前方散乱光は、主として細胞の大きさを示すパラメータとして用いられている。次に、側方散乱は、レーザー光の軸に対して約90度の角度で散乱する光であり、細胞の内部の顆粒や核などで生じるレーザー光の散乱光である。側方散乱は、主として細胞の内部構造を示すパラメータとして用いられている。また、蛍光は、細胞に標識された蛍光色素から発生する光であり、蛍光色素標識抗体が認識する細胞表面抗原の有無や蛍光色素が結合した核酸の量などを示すパラメータとして用いられている。また、インピーダンスは、電気抵抗法によって測定され、細胞の容積を示すパラメータとして用いられている。
フローサイトメータにおける測定データの解析のため、これらの測定パラメータを軸にとって各細胞の測定値をプロットすることにより、細胞集団中における細胞の特性分布を表す図を作成して表示するデータ解析装置が用いられている。測定パラメータを1つとした一次元分布図はヒストグラムとも称され、測定パラメータをX軸にとり、細胞数(カウント)をY軸にとったグラフとして作成される。また、測定パラメータを2つとした二次元分布図はサイトグラムとも称され、一方の測定パラメータをX軸とし、他方の測定パラメータをY軸とした座標面内に、各細胞をその測定値に基づいてプロットしていくことにより作成される。
ヒストグラム上あるいはサイトグラム上に領域を設定することで、各領域内に存在する細胞に関して統計的なデータを得ることが可能である。統計的なデータとしてよく用いられているものに、細胞集団中に目的細胞がどれくらいの割合で含まれているのかを示す頻度分布(ポピュレーション情報)がある。頻度分布は、ヒストグラム上あるいはサイトグラム上に設定された各領域内に存在する細胞が全体に占める割合として算出される。
例えば、目的細胞が所定のパラメータについて一定値以上の値を示すことが既知である場合、ヒストグラムによる目的細胞の分布頻度の算出は、ヒストグラムをX軸上の一定値で2分割することから行われる。これにより、ヒストグラムを一定値以上の領域(目的細胞が存する領域)と一定値未満の領域(非目的細胞が存する領域)とに区分けする。データ解析装置は、設定された各領域について、領域内に存在する細胞の数から分布頻度を算出する。また、サイトグラムを用いる場合には、分布頻度の計算は、サイトグラムをX軸上及びY軸上の一定値で分割して4つの領域に区分けすることから行われる。これにより、サイトグラムを2つのパラメータがともに一定値以上の領域(目的細胞が存する領域)といずれかのパラメータが一定値未満の領域(非目的細胞が存する領域)に区分けする。
特許文献1には、「分析物から第1、第2及び第3の測定データを取得する測定データ取得手段と、前記第1、第2及び第3の測定データを軸とし、分析物に含まれる有形成分の分布を示す三次元分布図を作成する三次元分布図作成手段と、前記三次元分布図上に分画領域を変更可能に設定する領域設定手段と、前記領域設定手段によって設定された前記分画領域に属する有形成分について、前記第1及び第2の測定データを軸とする2次元分布図及び前記第1の測定データを軸とする度数分布図の少なくとも一方を作成する参考用分布図作成手段と、を備える分析装置。」が提案されている(当該文献請求項9参照)。この分析装置によれば、三次元分布図とともに表示される2次元分布図(サイトグラム)及び度数分布図(ヒストグラム)を参照しながら、三次元分布図上に分画領域を設定することができる。なお、この分析装置の三次元分布図は、ディスプレイ上に平面的に表示されるものであり、立体視されるものではない。
本技術に関連して、二眼式ステレオ立体画像技術(3D立体画像技術)について説明する。二眼式ステレオ立体映像では、まず、対象物を右眼及び左眼で見たときの2つの映像を用意する。そして、これらの映像を同時に表示した上で、右眼用映像を右眼だけに、左眼用映像を左眼だけに提示する。これにより、三次元空間で対象物を見ている際に目に映る映像を再現し、ユーザに対象物を立体視させる。
立体視が可能な3Dディスプレイには、(a)メガネ方式、(b)裸眼方式、(c)ビューア方式が主に採用されている。(a)メガネ方式には、さらにアナグリフ方式、偏光フィルタ方式、時分割方式がある。また、(b)裸眼方式にはパララックスバリア方式、レンティキュラ方式があり、(c)ビューア方式にはステレオスコープ方式、ヘッドマウント方式がある。
特開2006−17497号公報
A New "Logicle" Display Method Avoids Deceptive Effects of Logarithmic Scaling for Low Signals and Compensated Data. Cytometry Part A 69A:541-551, 2006.
一つの測定パラメータを軸としたヒストグラム上あるいは一つの組み合わせの測定パラメータを軸としたサイトグラム上においては、解析対象とする細胞小集団と不要な細胞とが重なり合う領域に存在している場合がある。例えば、ヒト末梢血をサンプルとしてリンパ球の解析を行う際、前方散乱光(FS)と側方散乱(SS)を軸にとったサイトグラム上では、一部の単球がリンパ球と同一の領域に存在する場合がある。
このため、従来のヒストグラム及びサイトグラムを用いたデータ解析では、目的細胞の特定が困難で、目的細胞のみが存在するように領域を設定することが難しく、頻度分布などの統計データを正確に得ることができなかった。
そこで、本技術は、解析対象とする微小粒子あるいは微小粒子小集団を分布図上で容易かつ直感的に特定でき、これらについての正確な統計データを得ることが可能なデータ解析装置を提供することを主な目的とする。
上記課題解決のため、本技術は、微小粒子の測定データを保存するデータ格納部と、前記測定データから独立した3種の変数を選択する入力部と、前記3種の変数を座標軸とする座標空間内における位置と図形を計算し、前記微小粒子の特性分布を表す3D立体画像を作成するデータ処理部と、前記3D立体画像を表示する表示部と、を有し、前記3D立体画像において、平面によって複数の領域に区分けされた前記座標空間の各領域内の前記図形を領域毎に異なる色で表示する3Dデータ解析装置を提供する。
この3Dデータ解析装置では、任意に選択した3種のパラメータを座標軸とした三次元分布図を立体視しながらデータ解析のための領域を設定する際、各領域内の図形が領域毎に異なる色で表示される。このため、各図形がいずれの領域に存在しているのかを直感的に確認しながら領域の設定を行うことができ、領域間の境界を明確に認識して、正確な領域設定を行うことができる。
この3Dデータ解析装置において、前記データ処理部は、前記領域毎の分布頻度を計算し、前記表示部は、各領域内の前記図形を、分布頻度に関連付けられた色で表示することが好ましい。さらに、前記データ処理部は、前記平面の位置変更に連動して前記分布頻度を計算し、各領域内の前記図形の色がリアルタイムに変化して表示されるようにすることが好ましい。
3D立体画像中において各領域内の図形を頻度分布に応じた異なる色によって表示することで、ユーザが直感的に頻度分布の解析結果を知得することができる。
この3Dデータ解析装置は、前記入力部からの入力信号に基づいて前記表示部において前記3D立体画像を回転させ、任意に選択された座標軸方向からの該画像の立体像を観察できるように構成されることが好ましい。
また、本技術は、微小粒子の測定データを保存するデータ格納部と、前記測定データから独立した3種の変数を選択する入力部と、前記3種の変数を座標軸とする座標空間内における位置と図形を計算し、前記微小粒子の特性分布を表す3D立体画像を作成するデータ処理部と、前記3D立体画像を表示する表示部と、を有し、前記3D立体画像において、平面によって複数の領域に区分けされた前記座標空間の各領域内の前記図形を、領域毎に異なる色で表示する3Dデータ解析装置と、微小粒子測定装置と、を連設してなる微小粒子解析システムを提供する。
さらに、本技術は、微小粒子の測定データから独立した3種の変数を選択する手順と、前記3種の変数を座標軸とする座標空間内における位置と図形を計算し、前記微小粒子の特性分布を表す3D立体画像を作成する手順と、前記3D立体画像を表示させる手順と、前記3D立体画像において前記座標空間を複数の領域に区分けする平面を設定する手順と、各領域内の前記図形を領域毎に異なる色で表示させる手順と、を含む3Dデータ解析方法を提供する。併せて、本技術は、微小粒子の測定データから選択される独立した3種の変数を座標軸とする座標空間内における位置と図形を計算し、前記微小粒子の特性分布を表す3D立体画像を作成するステップと、前記3D立体画像を表示するステップと、前記3D立体画像においてユーザにより設定される平面により複数の領域に区分けされた前記座標空間の各領域内の前記図形を領域毎に異なる色で表示するステップと、をコンピュータに実行させる3Dデータ解析プログラムをも提供する。
本技術において、「微小粒子」には、細胞、微生物及びリポソーム等の生体関連粒子、ラテックス粒子、ゲル粒子、工業用粒子等の合成粒子などの微小粒子が広く含まれるものとする。
細胞には、動物細胞(血球系細胞など)及び植物細胞が含まれる。微生物には、大腸菌等の細菌類、タバコモザイクウイルス等のウイルス類、イースト菌等の菌類などが含まれる。生体関連粒子には、各種細胞を構成する染色体、リポソーム、ミトコンドリア、オルガネラ(細胞小器官)なども含まれる。さらに、生体関連粒子には、核酸やタンパク質、これらの複合体などの生体関連高分子も包含され得るものとする。工業用粒子は、有機もしくは無機高分子材料、金属などであってもよい。有機高分子材料には、ポリスチレン、スチレン・ジビニルベンゼン及びポリメチルメタクリレートなどが含まれる。無機高分子材料には、ガラス、シリカ及び磁性体材料などが含まれる。金属には、金コロイド及びアルミなどが含まれる。これら微小粒子の形状は、一般には球形であるが、非球形であってもよい。また、微小粒子の大きさや質量なども特に限定されない。
本技術により、解析対象とする微小粒子あるいは微小粒子小集団を分布図上で容易かつ直感的に特定でき、これらについての正確な統計データを得ることが可能なデータ解析装置が提供される。
フローサイトメータに連設された本技術に係る3Dデータ解析装置の構成を説明するブロック図である。 本技術に係る3Dデータ解析装置の機能的構成を説明するブロック図である。 本技術に係る3Dデータ解析装置により表示される三次元分布図を説明する模式図である。 本技術に係る3Dデータ解析装置により表示される二眼式ステレオ立体画像(3D立体画像)を説明する模式図である。 三次元分布図の座標空間に設定される平面(ガイド面)と領域を説明する模式図である。 座標空間を8領域に区分した三次元分布図を説明するための模式図である。 三次元分布図の座標空間を8領域に区分するガイド面を移動させるための標識図形の配置を説明するための模式図である。 三次元分布図の座標空間に斜めに設定されるガイド面を説明するための模式図である。 座標空間を8領域に区分した三次元分布図における頻度分布の解析結果の表示例を説明するための図である。 分布頻度を反映させて多色表示した三次元分布図を説明するための模式図である。 3D立体画像中の微小粒子に対応する図形の形状を説明する模式図である。 シェード処理された図形の立体観察像を説明する概念図である。 シェード処理の処理方法を説明する模式図である。 座標軸の立体観察像を説明する概念図である。 各座標軸方向からの三次元分布図の立体観察像を説明する概念図である。 微小粒子に対応する図形を揺動させた動画像の立体観察像を説明する概念図である。
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。説明は以下の順序で行う。

1.3Dデータ解析装置の構成
2.3D立体画像の表示
3.データ解析
4.データ表示
5.3D立体画像の特徴
(5−1)図形の形状
(5−2)図形のシェード処理
(5−3)座標軸
(5−4)動画像
6.3Dデータ解析プログラム
1.3Dデータ解析装置の構成
図1に、本技術に係る3Dデータ解析装置の装置構成を示す。ここでは、3Dデータ解析装置を微小粒子測定装置に連設して微小粒子解析システムとして構成した実施形態を示す。また、図2に、この微小粒子解析システムの機能的構成を示す。以下では、微小粒子測定装置としてフローサイトメータを用いる場合を例に説明する。
図中符号1で示す3Dデータ解析装置は、通信ケーブル4によりフローサイトメータ2と接続されて微小粒子解析システム3を構成している。3Dデータ解析装置1は、中央処理装置(CPU)10、メモリ20、ハードディスク30、ユーザインターフェイスなどを含んでいる。ハードディスク30には、3Dデータ解析プログラム31、微小粒子の測定データ32及びオペレーティングシステム(OS)33などが格納・保持されている。ユーザインターフェイスには、ユーザからの情報の入力を受け付けるマウス41及びキーボード42と、ユーザに対して情報を出力するディスプレイ43及びプリンタ44などが含まれる。なお、マウス41及びキーボード42に替えて、あるいはこれらとともに、スティックコントローラ及びペンタブレットなどの入力デバイスを設けてもよい。
データ格納部130(ハードディスク30)は、フローサイトメータ2から出力される微小粒子(細胞)の測定データ32を保存する。フローサイトメータ2の入出力インターフェイス250から出力される測定データは、通信ケーブル4を介して3Dデータ解析装置1の入出力インターフェイス150に入力され、データ格納部130(ハードディスク30)に格納される。
測定データ32は、データ処理部120において処理される。データ処理部120は、入力部141(マウス41あるいはキーボード42など)からのユーザの入力を受けて処理を開始する。すなわち、データ処理部120は、ユーザによって測定データ32から独立した3種の変数(パラメータ)が選択され入力されると、選択されたパラメータを座標軸として微小粒子の特性分布を表す三次元分布図を作成する。三次元分布図は、選択されたパラメータを座標軸とした座標空間内に微小粒子をプロットすることにより作成される。微小粒子のプロットは、選択されたパラメータの測定値から各微小粒子の座標空間内の位置と図形を計算し、算出された位置に算出された図形を描画することによって行われる。
ここで、「独立したパラメータ」とは、微小粒子の前方散乱光(FS)、側方散乱(SS)、蛍光(FL)及びインピーダンスなどから選択される互いに異なるパラメータを意味する。蛍光(FL)は、微小粒子に標識された蛍光色素の波長域毎に異なるパラメータとして扱うことができ、FL1,FL2〜FLn(nは3以上の整数)などと表記される。独立した3種のパラメータとしては、例えば、前方散乱光(FS)、側方散乱(SS)及び蛍光(FL1)の組み合わせや、前方散乱光(FS)、側方散乱(SS)及びインピーダンスの組み合わせが例示される。この他、独立した3種のパラメータは、測定データから任意に選択して組み合わせることができる。
データ処理部120により作成された三次元分布図は、表示部142(ディスプレイ43)に3D立体画像として表示される。表示部142に表示される3D立体画像は、一または二以上とできる。二以上の3D立体画像を表示する場合、同一の三次元分布図について複数の異なる方向から観察した3D立体画像を表示しても、選択された3種のパラメータのうち少なくとも一つを異にする複数の三次元分布図の3D立体画像を表示してもよい。この3D立体画像は、次に詳しく説明する二眼式ステレオ立体画像とされる。
さらに、測定データ32に複数の異なる時刻(タイムポイント)における測定値が含まれる場合には、表示部142は、複数のタイムポイントにおける微小粒子の特性分布を表す三次元分布図を3D立体画像により表示してもよい。複数のタイムポイントにおける測定値を含む測定データとしては、例えば、細胞表面分子複合体の会合又は解離を蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法を用いて経時的に測定したデータ、細胞膜の変化を細胞膜の電荷に対応して蛍光波長が変化する蛍光色素を用いて経時的に測定したデータ、又は細胞表面分子の発現強度を細胞内カルシウムの流入レスポンスと相関させて測定したデータなどがある。
複数のタイムポイントにおける三次元分布図の3D立体画像は、並べて一度に表示させてもよく、あるいは切り換えながら一つずつ表示させてもよい。3D立体画像の切り換え表示を行う場合、切り換えは自動的に行われてもよく、ユーザの入力信号に基づいて行われてもよい。複数のタイムポイントにおける三次元分布図の3D立体画像を表示させることで、ユーザが微小粒子の特性分布の経時的変化を確認しながらデータ解析を行うことができ、3種のパラメータ(座標軸)に時間(時間軸)を加えたより多元的な解析が可能となる。
表示部142への3D立体画像の表示は、入力部141(マウス41あるいはキーボード42など)からのユーザの入力信号に基づき任意に回転、拡大あるいは縮小させて行ってもよい。また、入力部141からの入力信号に基づいて三次元分布図の座標空間内に、ゲーティングのための分画領域あるいは後述するデータ分析のための解析領域が設定される場合には、3D立体画像は該画像中に表示された分画領域あるいは解析領域を示す立体形状とともに回転、拡大あるいは縮小される。
フローサイトメータ2は、従来公知の装置と同様の構成あるいはこれを適宜改変した構成とでき、具体的には、制御部210、フロー系220、検出系230、入出力インターフェイス250等から構成される。
フロー系220は、フローセルやマイクロチップに形成された流路内において、微小粒子を含むサンプル液層流をシース液層流の中心に流し、層流中に微小粒子を一列に配列させる。検出系230は、流路を通流する微小粒子の特性を示すパラメータ値を取得する。具体的には、光学検出部231は、通流する微小粒子に光を照射し、微小粒子から生じる散乱光や蛍光などを検出し、その強度を取得する。光学検出部231は、レーザー光源、レンズ、ミラー、フィルタ、CCD及びCMOS素子等のエリア撮像素子あるいはPMT(photo multiplier tube)などを含んでなる。また、電気検出部232は、通流する微小粒子に対向して配された電極を含んでなり、微小粒子のインピーダンス、容量値(キャパシタンス)及びインダクタンスなどを取得する。フローサイトメータ2は、解析の結果所望の特性を有すると判定された微小粒子を分取するための分取系240を備えていてもよい。分取系240には、例えば、微小粒子を含む液滴をフローセル外の空間に吐出し、液滴の移動方向を制御することにより、所望の微小粒子のみを容器に回収する方式を採用できる。
検出系230において検出された散乱光及び蛍光などの強度の測定値、あるいはインピーダンス、容量値(キャパシタンス)及びインダクタンスなどの測定値は、電気信号に変換され、測定データとして入出力インターフェイス250から出力される。
2.3D立体画像の表示
図3に、本技術に係る3Dデータ解析装置により表示される三次元分布図を模式的に示す。この三次元分布図は、表示部142に3D立体画像により表示され、ユーザによって立体的に視認され得るものである。
三次元分布図5は、ユーザにより選択された3種のパラメータを座標軸とした座標空間6内に微小粒子の特性分布を示す。三次元分布図5では、選択されたパラメータの測定値から算出される位置に各微小粒子に対応する図形7が描画される。
図では、3種のパラメータを、前方散乱光(FS-Lin:X軸)、側方散乱(SS-Lin:Y軸)及び第一の蛍光(FL1-Lin:Z軸)の組み合わせとした場合を例示した。各座標軸にとるパラメータは、任意に選択される組み合わせとできる。例えば、X軸に第一の蛍光(FL1)、Y軸に第二の蛍光(FL2)、Z軸にインピーダンスをとることもできる。
三次元分布図5の3D立体表示は、二眼式ステレオ立体画像により行われる。図4に、本技術に係る3Dデータ解析装置により表示される二眼式ステレオ立体画像を模式的に示す。
データ処理部120は、ユーザによってパラメータが選択されると三次元分布図5を作成して、該分布図を左眼で見たときの画像(左眼用画像5L)と、右眼で見たときの画像(右眼用画像5R)を作成する。表示部142(ディスプレイ43)は、左眼用画像5L及び右眼用画像5Rを同時に表示し、左眼用画像5Lを左眼だけに、右眼用画像5Rを右眼だけに分離提示する。
分離提示は、例えばメガネ方式の一つである時分割方式では、左眼用画像5Lと右眼用画像5Rとをわずかな時間差で交互に表示させ、これにシャッタメガネ8を同期させることによって行うことができる。この他、分離提示は、アナグリフ方式及び偏光フィルタ方式などの他のメガネ方式、パララックスバリア方式及びレンティキュラ方式などの裸眼方式、ステレオスコープ方式及びヘッドマウント方式などのビューア方式を採用してもよい。
ディスプレイ43は、左眼用画像5L及び右眼用画像5Rを分離提示することによって、三次元空間で三次元分布図を見ている際に目に映る映像を再現し、ユーザに分布図を立体視させる。
3.データ解析
データ分析のための解析領域の設定は、ユーザが、表示部142に表示された3D立体画像を見ながら、マウス41あるいはキーボード42などの入力デバイスを用いて、三次元分布図5の座標空間6を複数の領域に区分けする平面を設定することによって行われる。図5に、設定される平面と領域の具体例を示す。ここでは、簡略のため、1つの座標軸Xに沿って平面(以下、「ガイド面」とも称する)51によって座標空間6を2つの領域61,62に区分けする例を示した。
ガイド面51は、座標軸Xに対して垂直であり、座標空間6を軸方向において領域61及び領域62に分割している。ガイド面51は、ガイド面51と座標軸Xとの交点に配置された標識図形511をマウス41あるいはキーボード42などの入力デバイスを用いて移動させることによって、標識図形511とともに移動される。すなわち、入力部141からの入力信号に基づいて標識図形511が座標軸上を移動されると、これに伴ってガイド面51が座標空間6内を移動されて位置変更される。図中矢印は、座標軸X上の標識図形511の移動方向及び座標空間6内のガイド面51の移動方向を示す。
具体的には、例えば、目的細胞が所定のパラメータについて一定値以上の値を示すことが既知である場合、該パラメータをとった座標軸X上の標識図形511を一定値にまで移動させる。そして、標識図形511の移動に伴って座標空間6内を移動するガイド面51によって、座標空間6を一定値以上の領域(目的細胞に対応する図形7が存する領域)62と一定値未満の領域(非目的細胞に対応する図形7が存する領域)61とに区分けする。
3D立体画像において、ガイド面51は、立体視した際にガイド面51よりも奥に観察される図形7(ここでは、領域62に位置する図形7)をユーザが観察できるように、半透明で表示される。ユーザは、ガイド面51よりも奥の図形7を、半透明のガイド面51を透かして視認することができる。これにより、例えば、目的細胞に対応する図形7と非目的細胞とに対応する図形7とをパラメータの値によってではなく、分布状況に応じた適切な座標位置で区分けする場合に、ユーザが、座標軸X方向における図形7の分布を視認しながらガイド面51の位置を設定できる。
ガイド面51は、入力部141からの信号入力時にのみ3D立体画像中に表示されるようにしてもよい。これにより、ユーザがガイド面51の設定を行う際に、ガイド面51よりも奥に観察される図形7をより良好に視認できる。また、ガイド面51よりも奥に観察される座標軸や、座標軸の目盛及び数値も見易くなる。なお、入力部141からのユーザの入力信号に基づいて3D立体画像中へのガイド面51の表示の有無を切り換え可能とすることによっても同様の効果を得られる。この場合、ユーザは、ガイド面51の位置調整を行う際には、画像中にガイド面51を表示させ、設定後のガイド面51の位置及びこれによって区分けされた領域を確認したい場合には、画像中にガイド面51を非表示とすればよい。
座標空間6は、解析するデータに応じて2以上の領域に区分けすることができる。領域の数は特に限定されないが、各座標軸にそれぞれ垂直なガイド面を設定することにより、座標空間6を8つの領域に区分することが好ましい。図6に、座標空間6を8領域に区分した三次元分布図を示す。
ガイド面51,52,53はそれぞれX,Y,Zの座標軸に垂直であり、これらの3つのガイド面によって座標空間6は領域61〜68の8つの領域に分割されている。8つの領域のうち、例えば、領域61は、X軸にとったパラメータの値が標識図形511の位置する値よりも大きく、Y軸にとったパラメータの値が標識図形521の値よりも小さく、Z軸にとったパラメータの値が標識図形531の値よりも小さい領域である。また、例えば、領域68は、X軸にとったパラメータの値が標識図形511の位置する値よりも小さく、Y軸にとったパラメータの値が標識図形521の値よりも大きく、Z軸にとったパラメータの値が標識図形531の値よりも大きい領域である。
ガイド面51,52,53は、上述のように、座標軸との交点に配置された標識図形511,521,531を移動させることによってそれぞれ位置変更することができる(図7(A)参照)。あるいは、ガイド面51,52,53を移動させるための標識図形として、3つの平面の交点に標識図形541を配置してもよい。この場合、標識図形541を移動させることによって、ガイド面51,52,53を一括して同時に位置変更できる。
なお、ここでは、ガイド面を座標軸に対して垂直な面として設定する場合について説明したが、ガイド面はいずれの座標軸に対しても垂直でない斜めの面として設定することもできる(図8参照)。この場合も、ガイド面と各座標軸との交点に配置した標識図形を移動させることで、ガイド面の位置及び傾きを変更できる。
4.データ表示
データ処理部120は、各領域におけるパラメータの値及び/又は分布頻度を計算し、表示部142に、パラメータの値及び/又は分布頻度に関する情報(解析結果)を表示させる。
パラメータの値に関する情報は、例えば当該領域に存在する図形7についてのパラメータの最小値、最大値、平均値、中央値、標準偏差あるいは標準誤差などとできる。また、分布頻度に関する情報は、当該領域に存在する図形7の数が、座標空間6全体に存在する図形7の数に占める割合とされる。分布頻度は、例えば、細胞集団中に目的細胞がどれくらいの比率で含まれているのかを示すポピュレーション情報として有用である。
図9に、座標空間6を8領域に区分した三次元分布図における頻度分布の解析結果の表示例を示す。ここでは、図6に示した領域61〜68を設定した三次元分布図5において、X軸、Y軸及びZ軸のパラメータにそれぞれ第一の蛍光(FL1)、第三の蛍光(FL3)及び第5の蛍光(FL5)をとった例を説明する。
図に示す解析結果の表中において、例えば、FL1(+)・FL3(−)・FL5(−)の欄は、FL1の測定値が標識図形511の位置する値よりも大きく、FL3の測定値が標識図形521の値よりも小さく、FL5の測定値が標識図形531の値よりも小さい領域61の頻度分布の解析結果(15.6%)を示している。また、例えば、FL1(−)・FL3(+)・FL5(+)の欄は、FL1の測定値が標識図形511の位置する値よりも小さく、FL3の測定値が標識図形521の値よりも大きく、FL5の測定値が標識図形531の値よりも大きい領域68の頻度分布の解析結果(7.7%)を示している。
頻度分布の解析結果は、表示部142に表示される3D立体画像において、各領域内の図形7を分布頻度に関連付けされた色で多色表示することでユーザに提示してもよい。分布頻度と図形7の色との関連付けには、従来、頻度情報の視覚化に用いられているヒートマップ表示を応用できる。
図10に、分布頻度を反映させて多色表示した三次元分布図を示す。(A)に示す三次元分布図は、図6に示した図と同一であり、ガイド面51,52,53によって領域61〜68に区分けされ、各領域の分布頻度は図9に示したように算出されているものとする。(B)は各領域について算出された分布頻度の数値に応じ、当該領域内に存在する図形7に付与する色を示す図であり、分布頻度が高いほど濃い色が、分布頻度が低いほど淡い色が対応付けされている。
(A)に示す三次元分布図では、(B)に示す分布頻度と色の対応関係に基づき、頻度分布が高い領域内(図6の領域63が最も高い)では図形7の色が濃く、頻度分布が低い領域(図6の領域67が最も低い)では図形の色が淡く表示されている。このように、頻度分布の解析結果を、3D立体画像中において各領域内の図形7を頻度分布に応じた異なる色によって表示することで、ユーザが直感的に解析結果を知得することが可能となる。
分布頻度と色の対応付けは、ここで示したように単一色の濃淡のみならず、異なる明度、彩度又は色相によって多色表示することが可能である。例えば、従来のヒートマップ表示のように、分布頻度が高い領域には赤などの暖色系を用い、中程度の領域には緑などの中間色系を用い、低い領域には青などの寒色系を用いて、分布頻度が下がるにしたがって暖色系から寒色系へ色を変化させて表示する方式を採用できる。
データ処理部120による各領域のパラメータの値及び/又は分布頻度の計算は、ユーザが入力デバイスを用いてガイド面を移動させるのに連動させて、ガイド面の位置変更と領域の再設定が行われる都度に新たに実行されるようにしてもよい。さらに、新たに算出された分布頻度は、三次元分布図の各領域内の図形7の色を該分布頻度に応じた色に都度更新することによって、表示部142に表示される3D立体画像に反映させることが好ましい。このように、ユーザによるガイド面の位置変更及び領域の再設定に応答して、3D立体画像中にリアルタイムに分布頻度の解析結果を表示させることでユーザが解析結果をより直感的に知得することができ、データの解析効率の向上に寄与できる。
上記のようなユーザによるガイド面の位置変更及び領域の再設定に連動して自動的に三次元分布図の各領域内の図形7の色を変化させる方法に加えて、ユーザがガイド面の位置変更等の後に所望のタイミングで図形7の色を変化させ、分布頻度の解析結果を確認することができるようにしてもよい。この場合、ユーザによるガイド面の位置変更及び領域の再設定の作業中は、各領域内の全ての図形7を同一色で表示してもよいが、好ましくは領域毎に固有の色で図形7を表示することが好ましい。例えば、図6に示した座標空間6を8領域に区分した三次元分布図の例では、領域61〜68の8つの領域内の図形7をそれぞれ固有の異なる色によって表示させる。このように、各領域に固有の色を付与して図形7の表示を行うことで、ユーザがガイド面の位置変更を行う際に、各図形7がいずれの領域に存在しているのかを確認しながら領域の設定を行うことができ、領域間の境界を明確に認識して、正確な領域設定を行うことが可能となる。なお、ガイド面の位置変更等が完了した後は、ユーザが所望のタイミングで図形7の色を領域固有の色から各領域の分布頻度を反映した色に変化させ、分布頻度の解析結果を確認できるようにすることが好ましい。
このように、3Dデータ解析装置1では、ユーザは、任意に選択した3種のパラメータを座標軸とした三次元分布図を立体視しながらデータ解析のための領域を設定し、該領域における変数値及び/又は分布頻度の解析結果を得ることができる。このため、3Dデータ解析装置1では、従来の1種又は2種のパラメータを座標軸としたヒストグラムあるいはサイトグラムでは解析対象とする微小粒子の特定が困難なサンプルであっても、解析対象微小粒子のみが存在するような領域を設定して、正確な解析結果を得ることが可能となる。また、座標軸に用いるパラメータを任意に組み合わせて三次元分布図を表示させることで、一つのグラフで微小粒子の3つの特性に関する情報を得ることができる。さらに、同一の三次元分布図について複数の異なる方向から観察した3D立体画像を表示させたり、選択された3種のパラメータのうち少なくとも一つを異にする複数の三次元分布図の3D立体画像を表示させたりすることで、より多くの情報を得ることができる。このため、3Dデータ解析装置1では、従来のヒストグラムあるいはサイトグラムによる解析に比べて参照すべきグラフ数を減らして、効率的な解析を行うことができる。
5.3D立体画像の特徴
以下、本技術に係る3Dデータ解析装置により表示される3D立体画像の特徴について順に説明する。
(5−1)図形の形状
図3中符号7で示した微小粒子に対応する図形は、所定形状のポリゴンの組み合わせからなる多面体として計算され、3D立体画像中に表示される。上記のように、データ処理部120は、ユーザが選択したパラメータの測定値に基づいて各微小粒子の座標空間内の位置と図形7を計算し、三次元分布図を作成する。この際、図形7を所定形状のポリゴンの組み合わせからなる多面体として計算することで、データ処理部120における計算負荷を軽減できる。また、図形7を所定形状のポリゴンの組み合わせからなる多面体として3D立体画像中に表示することで、立体視した際の画像の立体感を増強することができる。
所定形状のポリゴンの組み合わせからなる多面体としては、例えば、図11(A)に示すような、三角形のポリゴンが6つ組み合わされてなる6面体や、(B)に示す該ポリゴンが8つ組み合わされてなる8面体を採用できる。図形7の形状は、所定形状のポリゴンの組み合わせからなる多面体である限りにおいて特に限定されないが、計算負荷の軽減と立体感の観点から6面体あるいは8面体が好ましい。
(5−2)図形のシェード処理
3D立体画像において、図形7は、立体視した際に手前に観察される図形ほど濃く、奥に観察される図形ほど淡く表示される。このように図形7の濃淡を変化させる処理を、以下「シェード処理」と称するものとする。
シェード処理された図形7の立体観察像(以下単に「立体像」という)の概念図を図12に示す。図中矢印の方向に従って、手前に観察される図形7ほど濃く、奥に観察される図形7ほど淡くなっている。このように、図形7のシェード処理を行うことによって、3D立体画像の立体像に奥行きを与えて立体感を向上できる。
図13を参照して、シェード処理の処理方法を説明する。ディスプレイ43には左眼用画像と右眼用画像が同時に表示され、立体視した際にディスプレイ43の画面の位置に観察される図形70の左眼用画像と右眼用画像は重なった状態で表示される(図13(B)参照)。
ディスプレイ43に表示される左眼用画像が右眼用画像よりも右側にある場合(図13(A)参照)、図形は、ディスプレイ43の画面の位置よりも手前に立体視される。画面位置から飛び出して観察される図形の立体像を図中符号71で示し、ディスプレイ43に表示される図形71の左眼用画像を符号71Lで、右眼用画像を符号71Rで示す。一方、ディスプレイ43に表示される左眼用画像が右眼用画像よりも左側にある場合(図13(C)参照)、図形は、ディスプレイ43の画面の位置よりも奥に立体視される。画面位置から飛び出して観察される図形の立体像を図中符号72で示し、ディスプレイ43に表示される図形71の左眼用画像を符号72Lで、右眼用画像を符号72Rで示す。
シェード処理では、手前に観察される図形71の左眼用画像71L及び右眼用画像71Rをより濃く、奥に観察される図形72の左眼用画像72L及び右眼用画像72Rをより淡く表示するようにする。
(5−3)座標軸
3D立体画像において、座標軸は、立体視した際に手前に観察される部分ほど太く、奥に観察される分ほど細く表示される。太さを変化させた座標軸の立体像の概念図を図14に示す。このように、座標軸の太さを変化させることによって、3D立体画像の立体像に奥行きを与えて立体感を向上できる。
また、図14に示すように、座標軸の目盛間隔を立体視した際に手前に観察される部分ほど広く、奥に観察される分ほど狭く表示することによって、立体像にさらに奥行きを与えられる。また、座標軸名(図ではSS-Lin)及び目盛数値(図では200, 400, 600, 800, 1000)の文字を手前ほど大きく、奥ほど小さく表示したりすることによっても同様の効果が得られる。なお、座標軸の太さ、目盛間隔及び文字の大きさを変化させる処理は、上述のシェード処理を応用して行うことが可能である。
座標軸は、線形軸(リニア軸)と対数軸とが組み合わされた特性を有するバイエクスポネンシャル軸(非特許文献1参照)としてもよい。バイエクスポネンシャル軸では、座標軸として選択されたパラメータの測定値が所定値より小さいデータに対しては、線形関数を主たる関数要素とする関数を適用して微小粒子に対応する図形7の位置が算出される。また、測定値が所定値より大きいデータに対しては、対数関数を主たる関数要素とする関数を適用して図形7の位置を算出する。より簡便には、バイエクスポネンシャル軸は、所定値よりも大きい領域を対数軸、所定値よりも小さい領域を線形軸としたものとできる。三次元分布図の座標軸をバイエクスポネンシャル軸とすることで、対数軸の特性を活かした広いダイナミックレンジの表示が可能となり、同時に線形軸の特性により負数の表示も可能となる。なお、三次元分布図の座標軸は、少なくとも一つがバイエクスポネンシャル軸とされればよいものとする。
(5−4)動画像
既に説明したように、表示部142(ディスプレイ43)への3D立体画像の表示は、入力部141(マウス41あるいはキーボード42など)からのユーザの入力信号に基づき任意に回転、拡大あるいは縮小させて行ってもよい。3D立体画像を回転する際には、図3に示したように、座標空間6を構成する立体形状(図では立方体)の各辺に座標軸が表示されていることが好ましい。これらの座標軸により座標空間6の立体形状が明確になるため、3D立体画像を回転させた際の三次元分布図の向きの変化を認識し易くなる。
ディスプレイ43に表示される3D立体画像は、ユーザからの入力により随意に回転される他、常時一定方向あるいは不特定方向にゆっくりと回転していてもよい。3D立体画像を常時回転する動画像により表示することで、静止画像による表示に比べて立体感を高められる。
さらに、ディスプレイ43に表示される3D立体画像は、ユーザによる回転操作中及び自動回転中の任意のタイミングで、ユーザの入力信号に基づいて、ユーザにより選択された座標軸方向からの立体観察像を提供する向きにまで自動的に回転される。図15に、各座標軸方向からの三次元分布図の立体観察像を示す。(A)はZ軸方向からの観察像、(B)はX軸方向からの観察像、(C)はY軸方向からの観察像を示す。各座標軸方向からの視点の切り換えは、例えばキーボード42からのZキーの入力によって画像がZ軸方向視点に回転し、Xキーの入力によって画像がZ軸方向視点からX軸方向視点へ回転するようにすればよい。また、各座標軸方向からの視点の切り換えは、例えばディスプレイ43に表示されたアイコンをマウス41によってクリックすることによって行われるようにしてもよい。このように、簡単な入力によって各座標軸方向からの視点を切り換えて3D立体画像を観察できるようにすることで、三次元分布図における微小粒子の特性分布をユーザが把握し易くなる。
なお、ディスプレイ43において3D立体画像を常時回転させて表示する場合、3D立体画像は、三次元分布図の上下方向を保つように回転されることが好ましい。すなわち、3D立体画像は、三次元分布図のXY平面、YZ平面及びZX平面から選択されるいずれかの面を常に分布図下方に向けた状態で回転されることが好ましい。具体的には、例えば図15(A)に示す3D立体画像を常時回転させる場合、ZX平面が三次元分布図の底面に常に位置するように画像を回転させる。この際、三次元分布図の回転軸を傾けたり、傾き角度を変化させたりしながら、画像を回転させてもよい。このように、3D立体画像の回転方向に一定の制限を加えたほうが、ユーザが三次元分布図に対する自身の視点方向を知覚し易く、三次元分布図の向きを把握できなくなるのを防止できる。
ディスプレイ43に表示される3D立体画像は、微小粒子に対応する図形が揺動する動画像により表示されてもよい。このとき、立体視した際に奥に観察される図形に比して手前に観察される図形を大きく揺動させて表示させる。揺動動作が付与された図形の立体像の概念図を図16に示す。図形71,72は、図中矢印に示すように左右に揺動し、左右への揺動幅は手前に観察される図形71で大きく、奥に観察される図形72で小さくなっている。このように、立体視した際に奥に観察される図形に比して手前に観察される図形をより大きく揺動させて表示することで、3D立体画像の立体像に奥行きを与えて立体感を向上できる。
また、3D立体画像を動画像により表示する場合、微小粒子に対応する図形が点滅するようにしてもよい。このとき、立体視した際に奥に観察される図形に比して手前に観察される図形をより高頻度に点滅させて表示させることで、3D立体画像の立体感をさらに向上できる。
さらに、測定データ32に複数のタイムポイントにおける測定値が含まれる場合には、各タイムポイントにおける三次元分布図の3D立体画像を動画像により表示させることもできる。これにより、例えば上述の細胞表面分子複合体の会合又は解離を測定する例においては、細胞表面分子複合体の会合等の経時的変化を動画像によって確認することができる。
以上のように、本技術に係る3Dデータ解析装置は、表示される3D立体画像の立体感を向上させるための工夫がなされている。従って、点(微小粒子に対応する図形)と線(座標軸)のみからなる三次元分布図であっても、ユーザはその立体像を良好に視認しながら測定データの解析を行うことができ、分布図上において解析対象とする微小粒子ならびに微小粒子小集団を容易かつ直感的に特定できる。
6.3Dデータ解析プログラム
本技術に係る3Dデータ解析プログラムは、微小粒子の測定データから選択される独立した3種の変数を座標軸とする座標空間内における位置と図形を計算し、前記微小粒子の特性分布を表す3D立体画像を作成するステップと、前記3D立体画像を表示するステップと、前記3D立体画像においてユーザにより設定される平面により複数の領域に区分けされた前記座標空間の各領域内の前記図形を領域毎に異なる色で表示するステップと、をコンピュータに実行させる。
図1及び図2を再度参照して上述した実施形態に基づき説明すると、3Dデータ解析プログラムは、ハードディスク30に格納・保持される(図中符号31参照)。3Dデータ解析プログラムは、CPU10及びオペレーティングシステム(OS)33の制御の下でメモリ20に読み込まれて、データ処理部120における三次元分布図の3D立体画像の作成処理と、表示部142への3D立体画像の表示処理を実行する。
3Dデータ解析プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたものとできる。記録媒体としては、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であれば特に制限はないが、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM等の円盤形記録媒体が用いられる。また、磁気テープ等のテープ型記録媒体を用いてもよい。
本技術に係る3Dデータ解析装置は、以下のような構成をとることもできる。
(1)微小粒子の測定データを保存するデータ格納部と、前記測定データから独立した3種の変数を選択する入力部と、前記3種の変数を座標軸とする座標空間内における位置と図形を計算し、前記微小粒子の特性分布を表す3D立体画像を作成するデータ処理部と、前記3D立体画像を表示する表示部と、を有し、前記3D立体画像において、平面によって複数の領域に区分けされた前記座標空間の各領域内の前記図形を領域毎に異なる色で表示する3Dデータ解析装置。
(2)前記データ処理部は、前記領域毎の分布頻度を計算し、前記表示部は、各領域内の前記図形を、分布頻度に関連付けられた色で表示する上記(1)記載の3Dデータ解析装置。
(3)前記入力部からの入力信号に基づいて前記平面を位置変更可能に設定し、前記3D立体画像中に表示する上記(1)又は(2)記載の3Dデータ解析装置。
(4)前記データ処理部が前記平面の位置変更に連動して前記分布頻度を計算し、各領域内の前記図形の色がリアルタイムに変化して表示される上記(1)〜(3)のいずれかに記載の3Dデータ解析装置。
(5)前記入力部からの入力信号に基づいて前記表示部において前記3D立体画像を回転させ、任意に選択された座標軸方向からの該画像の立体像観察を可能とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の3Dデータ解析装置。
本技術に係る3Dデータ解析装置によれば、任意に選択した3種のパラメータを座標軸とした三次元分布図を立体視しながらデータ解析のための領域を設定することで、従来のヒストグラムあるいはサイトグラムを用いた装置では解析が困難なサンプルについても正確な解析結果を得ることができる。従って、本技術に係る3Dデータ解析装置は、例えばフローサイトメータとともに用いられて、医療分野、公衆衛生分野あるいは創薬分野等において、細胞や微生物の特性を容易かつ高精度に解析するために用いられ得る。
1:3Dデータ解析装置、10:中央処理装置、110:制御部、120:データ処理部、130:データ格納部、141:入力部、142:表示部、150:入出力インターフェイス、2:フローサイトメータ、20:メモリ、210:制御部、220:フロー系、230:検出系、231:光学検出部、232:電気検出部、240:分取系、250:入出力インターフェイス、3:微小粒子解析システム、30:ハードディスク、31:3Dデータ解析プログラム、32:測定データ、33:オペレーティングシステム、4:通信ケーブル、41:マウス、42:キーボード、43:ディスプレイ、44:プリンタ、5:三次元分布図、51,52,53:ガイド面、511,521,531,541:標識図形、6:座標空間、61,62,63,64,65,66,67,68:領域、7:図形、8:シャッタメガネ

Claims (8)

  1. 微小粒子の測定データを保存するデータ格納部と、
    前記測定データから独立した3種の変数を選択する入力部と、
    前記3種の変数を座標軸とする座標空間内における位置と図形を計算し、前記微小粒子の特性分布を表す3D立体画像を作成するデータ処理部と、
    前記3D立体画像を表示する表示部と、を有し、
    前記3D立体画像において、平面によって複数の領域に区分けされた前記座標空間の各領域内の前記図形を領域毎に異なる色で表示する3Dデータ解析装置。
  2. 前記データ処理部は、前記領域毎の分布頻度を計算し、
    前記表示部は、各領域内の前記図形を、分布頻度に関連付けられた色で表示する請求項1記載の3Dデータ解析装置。
  3. 前記入力部からの入力信号に基づいて前記平面を位置変更可能に設定し、前記3D立体画像中に表示する請求項2記載の3Dデータ解析装置。
  4. 前記データ処理部が前記平面の位置変更に連動して前記分布頻度を計算し、各領域内の前記図形の色がリアルタイムに変化して表示される請求項3記載の3Dデータ解析装置。
  5. 前記入力部からの入力信号に基づいて前記表示部において前記3D立体画像を回転させ、任意に選択された座標軸方向からの該画像の立体像観察を可能とする請求項4記載の3Dデータ解析装置。
  6. 微小粒子の測定データを保存するデータ格納部と、前記測定データから独立した3種の変数を選択する入力部と、前記3種の変数を座標軸とする座標空間内における位置と図形を計算し、前記微小粒子の特性分布を表す3D立体画像を作成するデータ処理部と、前記3D立体画像を表示する表示部と、を有し、前記3D立体画像において、平面によって複数の領域に区分けされた前記座標空間の各領域内の前記図形を、領域毎に異なる色で表示する3Dデータ解析装置と、
    微小粒子測定装置と、を連設してなる微小粒子解析システム。
  7. 微小粒子の測定データから独立した3種の変数を選択する手順と、
    前記3種の変数を座標軸とする座標空間内における位置と図形を計算し、前記微小粒子の特性分布を表す3D立体画像を作成する手順と、
    前記3D立体画像を表示させる手順と、
    前記3D立体画像において前記座標空間を複数の領域に区分けする平面を設定する手順と、
    各領域内の前記図形を領域毎に異なる色で表示させる手順と、を含む3Dデータ解析方法。
  8. 微小粒子の測定データから選択される独立した3種の変数を座標軸とする座標空間内における位置と図形を計算し、前記微小粒子の特性分布を表す3D立体画像を作成するステップと、
    前記3D立体画像を表示するステップと、
    前記3D立体画像においてユーザにより設定される平面により複数の領域に区分けされた前記座標空間の各領域内の前記図形を領域毎に異なる色で表示するステップと、をコンピュータに実行させる3Dデータ解析プログラム。
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