以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である車両用駆動装置10を示す概略図である。図1に示すように、車両用駆動装置10は、エンジン11、トルクコンバータ12、無段変速機13および前後進切換機構14を有している。エンジン11には、トルクコンバータ12および入力クラッチ(クラッチ機構)15を介して無段変速機13が連結されている。また、無段変速機13には、前後進切換機構14およびフロントデファレンシャル機構16を介して前輪(駆動輪)17fが連結されている。さらに、無段変速機13には、前後進切換機構14およびトランスファクラッチ18を介して後輪(駆動輪)17rが連結されている。このように、入力クラッチ15および前後進切換機構14は、エンジン11と駆動輪17f,17rとの間の動力伝達径路19に設けられている。
図示する車両用駆動装置10はアイドリングストップ機能を有しており、所定の停止条件が成立したときにはエンジン11を自動的に停止させる一方、所定の始動条件が成立したときにはエンジン11を自動的に再始動させている。エンジン11の停止条件としては、停車状態(車速=0km/h)であり、且つブレーキペダルが踏み込まれること等が挙げられる。また、エンジン11の始動条件としては、ブレーキペダルの踏み込みが解除されることや、アクセルペダルが踏み込まれること等が挙げられる。なお、エンジン11を始動回転させるスタータモータとしては、始動時にピニオンが突出してエンジン11の図示しないリングギヤに噛み合う方式のスタータモータであっても良く、一方向クラッチを介してリングギヤに常時噛み合う方式のスタータモータであっても良い。さらに、オルタネータをスタータモータとして機能させても良い。
エンジン11に連結されるトルクコンバータ12は、クランク軸20に連結されるポンプインペラ21と、このポンプインペラ21に対向するとともにタービン軸22に連結されるタービンランナ23とを備えている。なお、トルクコンバータ12には、フロントカバー24とタービンランナ23とを直結するロックアップクラッチ25が設けられている。また、無段変速機13は、プライマリ軸30とこれに平行となるセカンダリ軸31とを有している。プライマリ軸30にはプライマリプーリ32が設けられており、プライマリプーリ32の背面側にはプライマリ油室33が区画されている。また、セカンダリ軸31にはセカンダリプーリ34が設けられており、セカンダリプーリ34の背面側にはセカンダリ油室35が区画されている。さらに、プライマリプーリ32およびセカンダリプーリ34には駆動チェーン36が巻き掛けられている。プライマリ油室33およびセカンダリ油室35の油圧を調整することにより、プーリ溝幅を変化させて駆動チェーン36の巻き付け径を変化させることができ、プライマリ軸30からセカンダリ軸31に対する無段変速が可能となる。
トルクコンバータ12から無段変速機13にエンジン動力を伝達するため、トルクコンバータ12と無段変速機13との間には入力クラッチ15および歯車列40が設けられている。入力クラッチ15は、タービン軸22に連結されるクラッチドラム41と、これに収容されるクラッチハブ42とを備えている。クラッチドラム41の内周面には摩擦板41aが装着されており、クラッチハブ42の外周面には摩擦板42aが装着されている。また、クラッチドラム41には摩擦板41a,42aに対向するピストン43が収容されている。ピストン43を締結方向に移動させることにより、摩擦板41a,42aが押圧されて入力クラッチ15は締結状態に切り換えられる。一方、ピストン43を解放方向に移動させることにより、摩擦板41a,42aの押圧が解除されて入力クラッチ15は解放状態に切り換えられる。このように、ピストン43を移動させて入力クラッチ15を切り換えるため、入力クラッチ15には電磁駆動部44および油圧駆動部45が設けられている。電磁駆動部44が備える電磁石46に対して通電を行うことにより、ピストン43が締結方向に移動して入力クラッチ15が締結される一方、電磁石46に対する通電を遮断することにより、ピストン43が解放方向に移動して入力クラッチ15が解放されることになる。また、油圧駆動部45が備える締結油室47に作動油を供給することにより、ピストン43が締結方向に移動して入力クラッチ15が締結される一方、締結油室47から作動油を排出することにより、ピストン43が解放方向に移動して入力クラッチ15が解放されることになる。なお、電磁駆動部44および油圧駆動部45の構成については、後述の図3を用いて詳細に説明する。また、歯車列40は、クラッチハブ42にクラッチ出力軸48を介して連結される駆動ギヤ40aと、プライマリ軸30に連結される従動ギヤ40bとを備えている。
また、車室内に設置される操作ユニット50には、運転手に操作されるセレクトレバー50aが設けられている。このセレクトレバー50aは、走行レンジであるDレンジ(前進走行レンジ)やRレンジ(後退走行レンジ)、非走行レンジであるPレンジ(駐車レンジ)やNレンジ(ニュートラルレンジ)に操作可能となっている。そして、セレクトレバー50aがDレンジやRレンジに操作されると、エンジン停止時においては電磁駆動部44の電磁石46に対して通電が実施され、エンジン作動時においては油圧駆動部45の締結油室47に対して作動油が供給され、入力クラッチ15は動力伝達径路19を接続する締結状態に切り換えられる。一方、セレクトレバー50aがPレンジやNレンジに操作されると、エンジン停止時においては電磁駆動部44の電磁石46に対する通電が遮断され、エンジン作動時においては油圧駆動部45の締結油室47から作動油が排出され、入力クラッチ15は動力伝達径路19を切断する解放状態に切り換えられる。このように、エンジン停止時には電磁駆動部44を用いて入力クラッチ15の切換制御が実行され、エンジン作動時には油圧駆動部45を用いて入力クラッチ15の切換制御が実行される。
また、無段変速機13から駆動輪17f,17rに向けてエンジン動力を出力するため、セカンダリ軸31には歯車列51を介して前後進切換機構14が接続されている。歯車列51は、セカンダリ軸31に固定される駆動ギヤ51aと、前後進切換機構14の前後進入力軸52に固定される従動ギヤ51bとを備えている。さらに、前後進切換機構14は、ダブルピニオン式の遊星歯車列53、前進クラッチ54および後退ブレーキ55によって構成されている。前後進切換機構14の遊星歯車列53は、前後進入力軸52に固定されるサンギヤ56と、これの径方向外方に回転自在に設けられるリングギヤ57とを備えている。サンギヤ56とリングギヤ57との間には相互に噛み合う一対のプラネタリピニオンギヤ58,59が複数設けられている。サンギヤ56とリングギヤ57とを連結するプラネタリピニオンギヤ58,59はキャリア60によって回転自在に支持されており、このキャリア60は前後進出力軸61に固定されている。
また、前後進切換機構14の前進クラッチ(摩擦係合機構)54は、前後進入力軸52に固定されるクラッチドラム62と、キャリア60に固定されるクラッチハブ63とを備えている。クラッチドラム62とクラッチハブ63との間には複数枚の摩擦板62a,63aが設けられており、摩擦板62aはクラッチドラム62の内周面に装着され、摩擦板63aはクラッチハブ63の外周面に装着されている。また、クラッチドラム62内には摩擦板62a,63aを押圧する油圧ピストン64が摺動自在に設けられている。また、クラッチドラム62に収容される油圧ピストン64の一方面側には締結油室65が区画される一方、油圧ピストン64の他方面側には解放油室66が区画されている。さらに、締結油室65にはスプリング(付勢手段)67が組み込まれており、スプリング67によって油圧ピストン64は締結方向に付勢されている。なお、締結方向とは油圧ピストン64が摩擦板62a,63aに近づく方向であり、後述する解放方向とは油圧ピストン64が摩擦板62a,63aから離れる方向である。
そして、前進クラッチ54の締結油室65に作動油を供給して解放油室66から作動油を排出することにより、油圧ピストン64を締結方向に移動させることが可能となる。これにより、油圧ピストン64を押し当てて摩擦板62a,63aを係合状態とすることができ、前進クラッチ54は締結状態に切り換えられる。一方、締結油室65から作動油を排出して解放油室66に作動油を供給することにより、油圧ピストン64を解放方向に移動させることが可能となる。これにより、油圧ピストン64を離して摩擦板62a,63aの係合状態を解除することができ、前進クラッチ54は解放状態に切り換えられる。また、締結油室65と解放油室66との双方から作動油が排出された場合であっても、油圧ピストン64はスプリング67によって締結方向に付勢されることから、前進クラッチ54は滑り状態または締結状態に制御される。なお、前進クラッチ54の滑り状態とは、摩擦板62a,63a間に設定される遊びが無くなる状態であり、摩擦板62a,63a同士が完全に締結される前の状態である。すなわち、前進クラッチ54の滑り状態とは、摩擦板62a,63a同士が軽く接触している状態であり、前進クラッチ54が解放状態から締結状態に移行する過程の状態である。
さらに、前後進切換機構14の後退ブレーキ55は、図示しないケースに固定されるブレーキドラム70と、リングギヤ57に固定されるブレーキハブ71とを有している。ブレーキドラム70とブレーキハブ71との間には複数枚の摩擦板70a,71aが設けられており、摩擦板70aはブレーキドラム70の内周面に装着され、摩擦板71aはブレーキハブ71の外周面に装着されている。また、ブレーキドラム70内には摩擦板70a,71aを押圧する油圧ピストン72が摺動自在に収容されている。さらに、油圧ピストン72の一方面側には締結油室73が区画されており、この締結油室73に作動油を供給することにより、油圧ピストン72を締結方向に移動させることができ、後退ブレーキ55を締結状態に切り換えることが可能となる。なお、後退ブレーキ55の油圧ピストン72には、図示しないリターンスプリングが組み付けられており、締結油室73から作動油を排出することにより、後退ブレーキ55はバネ力によって解放状態に切り換えられる。
なお、Dレンジが選択される前進走行時には、後退ブレーキ55が解放されて前進クラッチ54が締結される。これにより、前後進入力軸52と前後進出力軸61とが直結されるため、前後進入力軸52に入力されるエンジン動力は、そのままの回転方向で前後進出力軸61に伝達される。一方、Rレンジが選択される後退走行時には、前進クラッチ54が解放されて後退ブレーキ55が締結される。これにより、リングギヤ57が固定されるため、前後進入力軸52に入力されるエンジン動力は、逆向きの回転方向で前後進出力軸61に伝達される。このように、動力伝達径路19に設けられる前進クラッチ54および後退ブレーキ55を制御することにより、前後進出力軸61の回転方向を切り換えることが可能となる。
ここで、図2は車両用駆動装置10の一部を制御系とともに示す概略図である。図2に示すように、車両用駆動装置10には、入力クラッチ15や前後進切換機構14等に対して作動油を供給するため、トロコイドポンプ等のオイルポンプ74が設けられている。また、入力クラッチ15の締結油室47、前進クラッチ54の締結油室65および解放油室66、後退ブレーキ55の締結油室73等に作動油を供給制御するため、車両用駆動装置10内には複数のソレノイドバルブを備えたバルブユニット75が設けられている。オイルポンプ74とバルブユニット75とは油路76を介して接続されており、オイルポンプ74から吐出される作動油は、バルブユニット75を経て入力クラッチ15、前進クラッチ54および後退ブレーキ55等に供給される。オイルポンプ74には従動スプロケット77bが連結されており、トルクコンバータ12のポンプインペラ21には駆動スプロケット77aが連結されている。また、駆動スプロケット77aと従動スプロケット77bとはチェーン77cを介して連結されている。このように、エンジン11とオイルポンプ74とは連結されており、エンジン回転数に連動してオイルポンプ74が回転駆動されることになる。なお、オイルポンプ74から吐出される作動油は、バルブユニット75を経てトルクコンバータ12や無段変速機13にも供給されている。
また、入力クラッチ15の電磁駆動部44に対する通電制御を実行するため、電磁駆動部44には駆動回路ユニット80を介してバッテリ(電源)81が接続されている。駆動回路ユニット80には、複数の電子部品からなる制御回路部(通電制御手段)82が設けられるとともに、通電経路83を切断するリレー(リレー手段)84が設けられている。すなわち、電磁駆動部44とバッテリ81とを接続する通電経路83には、制御回路部82およびリレー84が設けられている。そして、駆動回路ユニット80、エンジン11およびバルブユニット75等に制御信号を出力するため、車両用駆動装置10には制御ユニット85が設けられている。制御ユニット85には、セレクトレバー50aの操作位置を検出するインヒビタスイッチ86、アクセルペダルの操作状況を検出するアクセルペダルセンサ87、ブレーキペダルの操作状況を検出するブレーキペダルセンサ88、車速を検出する車速センサ89、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ90、オイルポンプ74から吐出される作動油の圧力を検出する油圧センサ91等が接続されている。そして、制御ユニット85は、各種センサ等からの情報に基づき車両状態を判定し、駆動回路ユニット80、エンジン11およびバルブユニット75等に対して制御信号を出力する。なお、制御ユニット85は、制御信号等を演算するCPUを備えるとともに、制御プログラム、演算式、マップデータ等を格納するROMや、一時的にデータを格納するRAMを備えている。
前述したように、本発明の車両用駆動装置10を構成する前進クラッチ54には、油圧ピストン64を締結方向に付勢するスプリング67が組み込まれている。これにより、所定の停止条件が成立してエンジン11が自動的に停止される場合、すなわちアイドリングストップが実行されて制御油圧が低下する場合であっても、前進クラッチ54を滑り状態または締結状態に保持することができ、その後のエンジン再始動に伴う前進クラッチ54の締結ショックを抑制することが可能となる。さらに、電磁駆動部44を備える入力クラッチ15を動力伝達径路19に設けるようにしたので、エンジン停止時であってもセレクトレバー50aをNレンジに操作することにより、入力クラッチ15を解放してエンジン11と駆動輪17f,17rとを切り離すことが可能となる。すなわち、前進クラッチ54はバネ力によって滑り状態または締結状態に保持されることから、制御油圧を得ることのできないエンジン停止時においては、前進クラッチ54を解放することが不可能であり、車両用駆動装置10をニュートラル状態に切り換えることが不可能であった。そこで、本発明の車両用駆動装置10においては、エンジン11と駆動輪17f,17rとの間の動力伝達径路19に、電磁駆動部44の通電によって解放される入力クラッチ15を設けるようにしている。これにより、エンジン停止時であっても、入力クラッチ15を解放して車両用駆動装置10をニュートラル状態に制御することができ、車両の牽引作業等を安全に行うことが可能となっている。
続いて、入力クラッチ15の構造および制御系について詳細に説明する。ここで、図3は入力クラッチ15の構造および制御系を示す概略図である。まず、エンジン作動時に使用される入力クラッチ15の油圧駆動部45について説明した後に、エンジン停止時に使用される入力クラッチ15の電磁駆動部44について説明する。図3に示すように、入力クラッチ15のクラッチドラム41には、摩擦板41a,42aに対向するピストン43が収容されている。ピストン43の背面側には隔壁部材92が配置されており、ピストン43と隔壁部材92との間に締結油室47が区画されている。また、クラッチドラム41にはスナップリング93が装着されており、このスナップリング93によって隔壁部材92の後退移動が所定位置で規制されている。さらに、ピストン43の前面側にはリターンスプリング94が装着されており、このリターンスプリング94によってピストン43は解放方向に付勢されている。このような油圧駆動部45の締結油室47に作動油を供給することにより、リターンスプリング94のバネ力に抗してピストン43を締結方向に移動させることができ、摩擦板41a,42aを押圧して入力クラッチ15を締結することが可能となる。一方、油圧駆動部45の締結油室47から作動油を排出することにより、リターンスプリング94のバネ力によってピストン43を解放方向に移動させることができ、摩擦板41a,42aの押圧を解除して入力クラッチ15を解放することが可能となる。なお、締結方向とはピストン43が摩擦板41a,42aに近づく方向であり、解放方向とはピストン43が摩擦板41a,42aから離れる方向である。
このような油圧駆動部45の締結油室47に作動油を供給するため、クラッチハブ42には締結油室47に開口するクラッチ油路100が形成されている。クラッチ油路100にはバルブユニット75から延びる分岐油路101が接続されており、この分岐油路101はクラッチ圧制御弁102とマニュアル弁103とを接続する油路104から分岐する構造となっている。バルブユニット75には、ライン圧制御弁105、クラッチ圧制御弁102およびマニュアル弁103等が組み込まれている。オイルポンプ74から吐出される作動油は、ライン圧制御弁105を介して基本油圧に調圧された後に、クラッチ圧制御弁102を介して前進クラッチ54や後退ブレーキ55の作動状態に応じたクラッチ圧に調圧される。そして、クラッチ圧制御弁102から出力された作動油は、セレクトレバー50aに連動するマニュアル弁103を介して、前進クラッチ54の締結油室65または後退ブレーキ55の締結油室73に供給される。
すなわち、オイルポンプ74が駆動されるエンジン作動時に、DレンジやRレンジが選択された場合には、クラッチ圧制御弁102から油路104に作動油(クラッチ圧)が供給される。このとき、油路104に連通する分岐油路101にも作動油が供給され、分岐油路101からクラッチ油路100を経て締結油室47にも作動油が供給されるため、入力クラッチ15は締結状態に切り換えられることになる。一方、NレンジやPレンジが選択された場合には、マニュアル弁103やクラッチ圧制御弁102等を介して油路104から作動油が排出される。したがって、締結油室47の作動油もクラッチ油路100から分岐油路101を経て排出されるため、入力クラッチ15は解放状態に切り換えられることになる。
続いて、入力クラッチ15の電磁駆動部44について説明する。図3に示すように、入力クラッチ15のクラッチドラム41には、隔壁部材92に隣接するようにパイロットクラッチ110が収容されている。このパイロットクラッチ110は、クラッチドラム41の内周面に装着される摩擦板111aと、クラッチハブ112の外周面に装着される摩擦板111bとを有している。また、クラッチドラム41には、摩擦板111a,111bを両側から挟み込むように電磁石46とプレッシャプレート113とが収容されている。また、隔壁部材92の端面にはカム山92aが形成されており、これに対向するクラッチハブ112の端面にもカム山112aが形成されている。さらに、隔壁部材92とクラッチハブ42との間には、双方のカム山92a,112aに挟まれるように複数個のボール部材114が周方向に配置されている。すなわち、隔壁部材92とクラッチハブ112との間にはカム機構115が設けられており、隔壁部材92とクラッチハブ112との回転数差に応じて軸方向に推力が発生するようになっている。
このような電磁駆動部44を用いて入力クラッチ15を締結する際には、電磁石46の電磁コイル46aに対して通電が実施される。これにより、磁化する電磁石46に向けてプレッシャプレート113が吸引され、プレッシャプレート113によって摩擦板111a,111bが押圧されてパイロットクラッチ110が締結状態に切り換えられる。このように、パイロットクラッチ110が締結されると、クラッチドラム41とクラッチハブ112とは一体に回転し、クラッチハブ112と隔壁部材92との間に回転数差が発生する。これにより、カム機構115を介して隔壁部材92およびピストン43は締結方向に押し込まれ、入力クラッチ15は締結状態に切り換えられる。一方、電磁駆動部44を用いて入力クラッチ15を解放する際には、電磁石46の電磁コイル46aに対する通電が遮断される。これにより、パイロットクラッチ110が解放されてピストン43の押し込みが解除され、入力クラッチ15は解放状態に切り換えられる。なお、エンジン停止時に電磁コイル46aに対して通電した場合には、エンジン停止に伴ってクラッチドラム41の回転も停止していることから、パイロットクラッチ110が締結されていても、入力クラッチ15は解放状態を維持することになる。しかしながら、エンジン11が始動されてクラッチドラム41が回転を開始すると、パイロットクラッチ110からカム機構115に動力が伝達され、入力クラッチ15が締結状態に切り換えられることになる。すなわち、電磁コイル46aに通電することにより、エンジン始動直後に入力クラッチ15を締結することが可能となっている。
以下、入力クラッチ15の作動状況について説明する。図4(a)および(b)はエンジン作動時における入力クラッチ15の作動状況を示す説明図である。また、図5(a)および(b)はエンジン停止時における入力クラッチ15の作動状況を示す説明図である。図4(a)に示すように、オイルポンプ74が駆動されるエンジン作動時に、セレクト操作によってDレンジやRレンジが選択された場合には、油圧駆動部45の締結油室47に作動油(クラッチ圧)が供給され、締結方向に移動するピストン43によって入力クラッチ15は締結状態に切り換えられる。一方、図4(b)に示すように、セレクト操作によってNレンジやPレンジが選択された場合には、油圧駆動部45の締結油室47から作動油が排出され、バネ力により解放方向に移動するピストン43によって入力クラッチ15は解放状態に切り換えられる。このように、エンジン作動時においては、油圧駆動部45を用いて入力クラッチ15の作動状態が切り換えられる。なお、エンジン作動時においては、電磁駆動部44の電磁石46に対する通電は遮断されている。
また、図5(a)に示すように、オイルポンプ74が停止するエンジン停止時に、セレクト操作によってDレンジやRレンジが選択された場合には(走行レンジ選択時)、電磁駆動部44の電磁石46に対して通電が実施され、パイロットクラッチ110が締結状態に切り換えられる。これにより、所定の始動条件が成立してエンジン11が始動された場合には、直ちに入力クラッチ15を締結状態に切り換えることが可能となる。一方、図5(b)に示すように、セレクト操作によってNレンジやPレンジが選択された場合には(非走行レンジ選択時)、電磁駆動部44の電磁石46に対する通電が遮断され、パイロットクラッチ110が解放状態に切り換えられる。これにより、リターンスプリング94のバネ力によってピストン43を解放方向に移動させることができ、入力クラッチ15を解放状態に切り換えることが可能となる。このように、エンジン停止時においては、電磁駆動部44を用いて入力クラッチ15の作動状態が切り換えられる。なお、エンジン停止時においては、オイルポンプ74が停止することから油圧駆動部45の締結油室47から作動油は排出されている。
前述したように、オイルポンプ74が停止するエンジン停止時に、車両用駆動装置10をニュートラル状態に切り換えるためには、電磁駆動部44によって解放される入力クラッチ15を設ける必要がある。しかしながら、入力クラッチ15を電磁駆動部44だけで制御しようとすると、エンジン停止時だけでなくエンジン始動後も電磁駆動部44に対する通電が必要となることから、入力クラッチ15の消費電力を増大させることになる。そこで、入力クラッチ15に対し、電磁駆動部44を設けるとともに、油圧駆動部45を設けるようにしている。これにより、エンジン作動時には、オイルポンプ74からの作動油によって入力クラッチ15の締結状態を維持することができるため、電磁駆動部44に対する通電を遮断することができ、入力クラッチ15の電力消費量を抑制することが可能となる。しかも、入力クラッチ15に電磁駆動部44と油圧駆動部45とを設けるようにしたので、一方の駆動部が故障した場合であっても他方の駆動部を用いて入力クラッチ15の制御状態を維持することができ、入力クラッチ15の信頼性を高めることが可能となる。
また、DレンジやRレンジが選択された状態のもとで、エンジン停止中に始動条件が成立してエンジン11が再始動される場合には、以下のように、電磁駆動部44を制御することにより、入力クラッチ15を締結状態に保持するようにしている。すなわち、図5(a)に示すように、エンジン停止中においては電磁コイル46aに対して通電を実施することにより、電磁駆動部44によってエンジン始動直後に入力クラッチ15が締結状態に切り換えられる。そして、エンジン11が再始動されてオイルポンプ74が駆動されると、制御ユニット85は油圧センサ91を用いてオイルポンプ74から吐出される作動油圧を判定し、オイルポンプ74から吐出される作動油圧(作動油の圧力)が所定値を超えてから、電磁コイル46aに対する通電を遮断するようにしている。このように、オイルポンプ74の作動油圧が十分に確保されてから、電磁コイル46aに対する通電を遮断するようにしたので、入力クラッチ15の締結状態を維持することができ、締結ショック等の発生を防止することが可能となる。なお、前述の説明では、オイルポンプ74から吐出される作動油圧を検出することにより、油圧駆動部45の締結油室47に供給される作動油圧を推定しているが、これに限られることはなく、締結油室47に供給される作動油圧を直に検出しても良い。また、エンジン回転数から締結油室47に供給される作動油圧を推定しても良く、エンジン始動後の経過時間に基づいて締結油室47に供給される作動油圧を推定しても良い。
さらに、図3に示すように、入力クラッチ15の電磁駆動部44とバッテリ81とを接続する通電経路83には、通電経路83を接続する接続状態と通電経路83を切断する切断状態とに切り換えられるリレー84が設けられている。このリレー84は制御ユニット85によって制御されており、制御回路部82の正常時にはリレー84が接続状態に切り換えられる一方、制御回路部82の異常時にはリレー84が切断状態に切り換えられるようになっている。このように、通電経路83にリレー84を設けることにより、駆動回路ユニット80の制御回路部82に異常が発生した場合であっても、運転手のセレクト操作に合わせて入力クラッチ15を適切に切り換えることが可能となる。ここで、図6(a)および(b)は制御回路部82の異常時における入力クラッチ15の作動状況を示す説明図である。図6(a)に示すように、制御回路部82の異常によって電磁コイル46aに対する通電が遮断できない場合には、図6(b)に示すように、リレー84が切断状態に切り換えられて電磁コイル46aに対する通電が強制的に遮断される。このように、制御回路部82に異常が発生した場合には、リレー84を切断状態に制御することにより、入力クラッチ15の制御系統から電磁駆動部44を切り離すことが可能となる。これにより、制御回路部82の異常が入力クラッチ15の切換制御に影響を及ぼすことがなく、入力クラッチ15の誤作動を防止して入力クラッチ15の信頼性を向上させることが可能となる。なお、制御回路部82の異常によって電磁コイル46aに対して通電ができない場合にも、リレー84を切断状態に制御することにより、入力クラッチ15の制御系統から電磁駆動部44が切り離れることになる。
また、制御回路部82の異常発生に伴いリレー84が切断された場合に、エンジン制御手段として機能する制御ユニット85は、アイドリングストップ制御を禁止してエンジン11の自動停止を禁止する。これにより、オイルポンプ74を駆動し続けることができるため、油圧駆動部45を用いて入力クラッチ15を締結状態と解放状態とに切り換えることが可能となる。このように、異常発生によってリレー84が切断された場合であっても、油圧駆動部45を用いて入力クラッチ15を制御し続けることができるため、入力クラッチ15の信頼性を向上させることが可能となる。なお、制御回路部82の異常に限られることはなく、パイロットクラッチ110等に異常が発生して電磁駆動部44を用いることができない場合にも、アイドリングストップ制御を禁止するとともに、油圧駆動部45を用いて入力クラッチ15を制御しても良い。
前述の説明では、摩擦クラッチによって入力クラッチ15を構成しているが、これに限られることはなく、噛合クラッチによって入力クラッチ120を構成しても良い。ここで、図7は本発明の他の実施の形態である車両用駆動装置が備える入力クラッチ120の構造および制御系を示す概略図である。なお、図7において、図3に示す部品と同様の部品については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図7に示すように、入力クラッチ(クラッチ機構)120は、タービン軸22に連結される駆動噛合部材121と、これに対向する従動噛合部材122とを備えている。駆動噛合部材121には噛合歯121aが形成されており、従動噛合部材122には噛合歯122aが形成されている。また、従動噛合部材122を覆うようにクラッチドラム123が設けられており、従動噛合部材122とクラッチドラム123とはスプライン歯124a,124bを介して結合されている。このように、クラッチドラム123内には軸方向に移動自在に従動噛合部材122が収容されており、従動噛合部材122は駆動噛合部材121に噛み合う前進位置と駆動噛合部材121から離れる後退位置とに移動することになる。そして、従動噛合部材122を前進位置に移動させることにより、噛合歯121aと噛合歯122aとを噛み合わせることができ、入力クラッチ120を締結状態に切り換えることが可能となる。一方、従動噛合部材122を後退位置に移動させることにより、噛合歯121aと噛合歯122aとの噛み合いを解除することができ、入力クラッチ120を解放状態に切り換えることが可能となる。また、駆動噛合部材121と従動噛合部材122との間には、従動噛合部材122を後退位置に向けて付勢するリターンスプリング125が設けられている。なお、クラッチドラム123には、歯車列40を構成する駆動ギヤ40aが固定されている。
この入力クラッチ120を締結状態と解放状態とに切り換えるため、入力クラッチ120にはエンジン停止時に使用される電磁駆動部126とエンジン作動時に使用される油圧駆動部127とが設けられている。以下、入力クラッチ120が備える電磁駆動部126の構成について説明する。クラッチドラム123に形成される貫通孔128にはクラッチロッド129が摺動自在に挿入されている。このクラッチロッド129は先端部材129aと基端部材129bとを備えており、先端部材129aと基端部材129bとの間にはスプリング129cが組み込まれている。このようなクラッチロッド129を軸方向に作動させるため、クラッチロッド129にはリンク機構130を介して電動アクチュエータ131が連結されている。また、リンク機構130は揺動自在となるリンクレバー130aによって構成されており、リンクレバー130aの一端側には電動アクチュエータ131の駆動ロッド131aが連結され、リンクレバー130aの他端側には基端部材129bが連結されている。
このような電磁駆動部126を用いて入力クラッチ120を締結する際には、駆動回路ユニット80から電動アクチュエータ131の図示しない電磁コイルに対して通電が実施される。これにより、図7に矢印Aで示すように、通電状態となる電動アクチュエータ131によって駆動ロッド131aが引き込まれ、クラッチドラム123に対してクラッチロッド129が挿し込まれ、入力クラッチ120は締結状態に切り換えられる。一方、電磁駆動部126を用いて入力クラッチ120を解放する際には、電動アクチュエータ131に対する通電が遮断される。これにより、図7に矢印Bで示すように、非通電状態となる電動アクチュエータ131から駆動ロッド131aが押し出され、クラッチドラム123からクラッチロッド129が引き抜かれ、入力クラッチ120は解放状態に切り換えられる。
続いて、入力クラッチ120の油圧駆動部127について説明する。図7に示すように、クラッチドラム123の中心部には環状凸部132が形成されており、このクラッチドラム123に収容される従動噛合部材122には環状凸部132に対応する円形凹部133が形成されている。従動噛合部材122の外周面にはオイルシール134が組み付けられており、従動噛合部材122の円形凹部133の内周面にはオイルシール135が組み付けられている。このように、従動噛合部材122に対して一対のオイルシール134,135を組み付けることにより、クラッチドラム123と従動噛合部材122との間にはオイルシール134,135を境に締結油室136が区画される。また、クラッチドラム123には締結油室136に開口するクラッチ油路137が形成されており、このクラッチ油路137には前述した分岐油路101から作動油が供給されている。
オイルポンプ74が駆動されるエンジン作動時に、DレンジやRレンジが選択された場合には、クラッチ圧制御弁102から油路104に作動油(クラッチ圧)が供給される。このとき、油路104に連通する分岐油路101にも作動油が供給され、分岐油路101からクラッチ油路137を経て締結油室136にも作動油が供給されるため、入力クラッチ120は締結状態に切り換えられる。一方、NレンジやPレンジが選択された場合には、マニュアル弁103やクラッチ圧制御弁102等を介して油路104から作動油が排出される。したがって、締結油室136の作動油もクラッチ油路137から分岐油路101を経て排出されるため、入力クラッチ120は解放状態に切り換えられる。
以下、入力クラッチ120の作動状況について説明する。図8(a)および(b)はエンジン作動時における入力クラッチ120の作動状況を示す説明図である。また、図9(a)および(b)はエンジン停止時における入力クラッチ120の作動状況を示す説明図である。図8(a)に示すように、オイルポンプ74が駆動されるエンジン作動時に、セレクト操作によってDレンジやRレンジが選択された場合には、油圧駆動部127の締結油室136に作動油(クラッチ圧)が供給され、前進位置に向けて移動する従動噛合部材122によって入力クラッチ120は締結状態に切り換えられる。一方、図8(b)に示すように、セレクト操作によってNレンジやPレンジが選択された場合には、油圧駆動部127の締結油室136から作動油が排出され、後退位置に向けて移動する従動噛合部材122によって入力クラッチ120は解放状態に切り換えられる。このように、エンジン作動時においては、油圧駆動部127を用いて入力クラッチ120の作動状態が切り換えられる。なお、エンジン作動時においては、電磁駆動部126の電動アクチュエータ131に対する通電は遮断されている。
また、図9(a)に示すように、オイルポンプ74が停止するエンジン停止時に、セレクト操作によってDレンジやRレンジが選択された場合には(走行レンジ選択時)、電磁駆動部126の電動アクチュエータ131に対して通電が実施され、電動アクチュエータ131によって駆動ロッド131aが引き込まれる。これにより、クラッチドラム123に対してクラッチロッド129が挿し込まれ、入力クラッチ120は締結状態に切り換えられる。一方、図9(b)に示すように、セレクト操作によってNレンジやPレンジが選択された場合には(非走行レンジ選択時)、電磁駆動部126の電動アクチュエータ131に対する通電が遮断され、電動アクチュエータ131から駆動ロッド131aが押し出される。これにより、クラッチドラム123からクラッチロッド129が引き抜かれ、入力クラッチ120は解放状態に切り換えられる。なお、エンジン停止時においては、オイルポンプ74が停止することから油圧駆動部127の締結油室136から作動油は排出されている。
前述した車両用駆動装置10と同様に、オイルポンプ74が停止するエンジン停止時に、車両用駆動装置をニュートラル状態に切り換えるためには、電磁駆動部126によって解放される入力クラッチ120を設ける必要がある。しかしながら、入力クラッチ120を電磁駆動部126だけで制御しようとすると、エンジン停止時だけでなくエンジン始動後も電磁駆動部126に対する通電が必要となることから、入力クラッチ120の消費電力を増大させることになる。そこで、入力クラッチ120に対し、電磁駆動部126を設けるとともに、油圧駆動部127を設けるようにしている。これにより、エンジン作動時には、オイルポンプ74からの作動油によって入力クラッチ120の締結状態を維持することができるため、電磁駆動部126に対する通電を遮断することができ、入力クラッチ120の電力消費量を抑制することが可能となる。しかも、入力クラッチ120に電磁駆動部126と油圧駆動部127とを設けるようにしたので、一方の駆動部が故障した場合であっても他方の駆動部を用いて入力クラッチ120の制御状態を維持することができ、入力クラッチ120の信頼性を高めることが可能となる。
また、DレンジやRレンジが選択された状態のもとで、エンジン停止中に始動条件が成立してエンジン11が再始動される場合には、以下のように、電磁駆動部126を制御することにより、入力クラッチ120を締結状態に保持するようにしている。すなわち、図9(a)に示すように、エンジン停止中においては電動アクチュエータ131に対して通電を実施することにより、電磁駆動部126によって入力クラッチ120が締結状態に切り換えられる。そして、エンジン11が再始動されてオイルポンプ74が駆動されると、制御ユニット85は油圧センサ91を用いてオイルポンプ74から吐出される作動油圧(作動油の圧力)を判定し、オイルポンプ74から吐出される作動油圧が所定値を超えてから、電動アクチュエータ131に対する通電を遮断するようにしている。このように、オイルポンプ74の作動油圧が十分に確保されてから、電動アクチュエータ131に対する通電を遮断するようにしたので、入力クラッチ120の締結状態を維持することができ、締結ショック等の発生を防止することが可能となる。なお、前述の説明では、オイルポンプ74から吐出される作動油圧を検出することにより、油圧駆動部127の締結油室136に供給される作動油圧を推定しているが、これに限られることはなく、締結油室136に供給される作動油圧を直に検出しても良い。また、エンジン回転数から締結油室136に供給される作動油圧を推定しても良く、エンジン始動後の経過時間に基づいて締結油室136に供給される作動油圧を推定しても良い。
さらに、前述した車両用駆動装置10と同様に、入力クラッチ120の電磁駆動部126とバッテリ81とを接続する通電経路83には、通電経路83を接続する接続状態と通電経路83を切断する切断状態とに切り換えられるリレー84が設けられている。このように、通電経路83にリレー84を設けることにより、駆動回路ユニット80の制御回路部82に異常が発生した場合であっても、運転手のセレクト操作に合わせて入力クラッチ120を適切に切り換えることが可能となる。ここで、図10(a)および(b)は制御回路部82の異常時における入力クラッチ120の作動状況を示す説明図である。図10(a)に示すように、制御回路部82の異常によって電動アクチュエータ131に対する通電が遮断できない場合には、図10(b)に示すように、リレー84を切断して電動アクチュエータ131に対する通電が強制的に遮断される。このように、制御回路部82に異常が発生した場合には、リレー84を切断状態に制御することにより、入力クラッチ120の制御系統から電磁駆動部126を切り離すことが可能となる。これにより、制御回路部82の異常が入力クラッチ120の切換制御に影響を及ぼすことがなく、入力クラッチ120の誤作動を防止して入力クラッチ120の信頼性を向上させることが可能となる。なお、制御回路部82の異常によって電動アクチュエータ131に対して通電ができない場合にも、リレー84を切断状態に制御することにより、入力クラッチ120の制御系統から電磁駆動部126が切り離れることになる。
また、制御回路部82の異常発生に伴いリレー84が切断された場合に、エンジン制御手段として機能する制御ユニット85は、アイドリングストップ制御を禁止してエンジン11の自動停止を禁止する。これにより、オイルポンプ74を駆動し続けることができるため、油圧駆動部127を用いて入力クラッチ120を締結状態と解放状態とに切り換えることが可能となる。このように、異常発生によってリレー84が切断された場合であっても、油圧駆動部127を用いて入力クラッチ120を制御し続けることができるため、入力クラッチ120の信頼性を向上させることが可能となる。なお、制御回路部82の異常に限られることはなく、電動アクチュエータ131等に異常が発生して電磁駆動部126を用いることができない場合にも、アイドリングストップ制御を禁止するとともに、油圧駆動部127を用いて入力クラッチ120を制御しても良い。
なお、前述の説明では、無段変速機13よりも駆動輪17f,17r側に前後進切換機構14を配置しているが、これに限られることはなく、動力伝達径路19上の他の位置に前後進切換機構14を配置しても良い。また、前述の説明では、前進クラッチ54よりもエンジン11側に入力クラッチ15を配置しているが、これに限られることはなく、前進クラッチ54よりも駆動輪17f,17r側に入力クラッチ15を配置しても良い。さらに、無段変速機13よりもエンジン11側に入力クラッチ15を配置しているが、これに限られることはなく、無段変速機13よりも駆動輪17f,17r側に入力クラッチ15を配置しても良い。前進クラッチ54や入力クラッチ15は、エンジン11と駆動輪17f,17rとの間の動力伝達径路19上に配置すれば良く、他の機構に対する前後の位置関係が問われるものではない。なお、イグニッション操作によるエンジン始動を考慮した場合には、エンジン11から回転体を切り離して始動性を向上させるため、入力クラッチ15をエンジン11に近づけて配置することが望ましい。特に、変速機構が無段変速機13である場合には、イグニッション操作によるエンジン始動時に、制御油圧が大きく低下している無段変速機13を回転させることがないように、無段変速機13よりもエンジン11側に入力クラッチ15を配置することが好ましい。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前述の説明では、前後進切換機構14の前進クラッチ54に対してスプリング67を組み付けているが、これに限られることはなく、前後進切換機構14の後退ブレーキ(摩擦係合機構)55に対して油圧ピストン72を締結方向に付勢するスプリングを組み付けても良い。これにより、後退走行時にアイドリングストップ制御が実行される車両においても、エンジン再始動時における後退ブレーキ55の締結ショックを抑制することが可能となる。なお、前進クラッチ54と後退ブレーキ55との双方に対し、油圧ピストン64,72を締結方向に付勢するスプリングを組み付けても良い。
また、前述の説明では、車両用駆動装置10にチェーンドライブ式の無段変速機13が搭載されているが、これに限られることはなく、ベルトドライブ式やトラクションドライブ式の無段変速機を搭載しても良く、遊星歯車式や平行軸式の自動変速機を搭載しても良い。なお、自動変速機を採用する場合には、前進発進時や後退発進時に締結される摩擦クラッチ(摩擦係合機構)や摩擦ブレーキ(摩擦係合機構)に対して、油圧ピストンを締結方向に付勢するスプリングが組み付けられる。
また、オイルポンプ74としてトロコイドポンプを用いているが、これに限られることはなく、他の形式の内接型ギヤポンプであっても良く、外接型ギヤポンプであっても良い。さらに、図示する車両用駆動装置10は、四輪駆動用の車両用駆動装置であるが、これに限られることなく、前輪駆動用や後輪駆動用の車両用駆動装置であっても良い。なお、本発明の車両用駆動装置を、動力源としてエンジン11と電動モータとを備えたハイブリッド車両に適用しても良いことはいうまでもない。