JP2013082658A - 経口投与により食欲を抑制する素材 - Google Patents

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Abstract

【課題】PYY分泌活性剤または摂食抑制剤を提供すること。
【解決手段】本発明は、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む、ペプチドYY(PYY)分泌活性化剤あるいは小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む、摂食抑制剤を提供する。より詳細には、本発明は、これらの小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む、医薬、食品、飼料等を提供する。本発明は、これらの小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む、医薬、食品、飼料等を用いた摂食抑制法およびPYY分泌活性化法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、経口投与により、消化管ホルモンの一種であるペプチドYY(PYY)の分泌を促進して、食欲を抑制する小麦由来ペプチドに関する。したがって、本発明は、小麦グルテンに基づく摂食抑制剤およびPYY分泌活性化剤に関する。特に、本発明は、遅延型または食後後期もしくは長期の摂食抑制剤に関する。
糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病予防は、現代の先進国社会における重要な課題であり、これらの大きな原因である肥満を予防または改善することが望 まれている。規則正しい食事摂取および摂取カロリーの制限こそが肥満を予防、改善する最善策と考えられるが、食物がありふれた現代社会において、その実行は困難である場合が少なくない。
肥満治療のために食欲を抑制する薬剤として、アンフェタミン類のマジンドールが実用化されている。しかし、この薬剤に付随する中枢への直接作用や習慣性などの危険性から、高度肥満患者のみにその使用は限られており、より安全な手法が望まれている。
消化管の内分泌細胞より分泌される種々のホルモン(消化管ホルモン)が食欲を抑制する機能を有することが知られている(非特許文献1〜4)。これらのペプチドホルモンは、経口投与の場合、消化管管腔内において容易に分解されるので、経口投与によって吸収させてその効果を発揮させることは困難であり、血中投与せざるを得ない。その場合、ペプチド合成にかかる高いコストと投与法の煩雑さといった課題が存在する。
しかし、これらの消化管ホルモンは、食事摂取が強い分泌刺激となって分泌されることから、これらのホルモンの分泌を効果的に刺激できれば、食品成分の経口投与という安全な手法により食欲を抑制することが可能となる。
コレシストキニン(Cholecystokinin、以下「CCK」と略称することがある)は、他の消化管ホルモン(GLP−1、PYY)などに先駆けて食欲を抑制する作用を有することが見い出された消化管ホルモンであり、食事中の脂質、タンパク質、アミノ酸などにより分泌が刺激される(非特許文献2)。しかし、摂取カロリーの制限を目指す上で、エネルギー効率の高い脂質を用いるのは不適である。
動物試験において、大豆β−コングリシニン由来のペプチド(ペプシン分解物および合成ペプチド)によりCCK放出を刺激することができることは、本発明者らのの一部報告を含め存在する(特許文献1および特許文献2、非特許文献5〜6)。
本発明者らの一部はさらに、豚肉由来ペプチドを含有する摂食抑制組成物を開示する(特許文献3)。
特許文献4は、小麦グルテン分解物がGLP−1の分泌を上昇させたことを開示する。
PYYは、血中での安定性も高く、比較的長時間にわたり食欲を抑制することが非特許文献7において開示されている。
GLP−1およびPYYは、下部消化管に存在するといわれているが、これらの分泌は必ずしも並行ないし依存関係をもって分泌されるものではない(非特許文献8および9)。また、GLP−1についていえば、摂食抑制の効果とも相関しないことも報告されている(非特許文献9)。
非特許文献10〜12には、CKKとPYYまたはGLP−1のそれぞれの分泌についても、必ずしも並行ないし依存関係にないことが報告されている。
特開2004−10569 WO2006/132273 特開2007−230978 特表2009−517464
Woods SC,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol, 286(1):G7-13, 2004 Moran TH, et al, Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol,286(2):G183-8, 2004 Moran TH, et al, Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol,286(5):G693-7, 2004 Tso P, et al, Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol, 286(6):G885-90,2004 Nishi T, et al, J Nutr, 133(2):352-7, 2003 Nishi T, et al, J Nutr, 133(8):2537-42, 2003 Moran TH.Int J Obes (Lond). 2009 Apr;33 Suppl 1:S7-10. R.E. Roberts et al., Clinical Endocrinology (2011) 74, 67-72 Leila J.Karhunen, et al., J. Nutr. 140: 737-744, 2010. Nam Q Nguyen et al., Critical Care 2007; 11: R132 Nam Q Nguyen et al., CriticalCare 2006, 10: R175 JiHyun Song, et al., J Neurogastroenterol Motil, Vol. 17 No. 1 January, 2011
本発明者らは、小麦グルテンまたは小麦グルテンの加水分解物を調製し、これに摂食抑制活性があり、またPYY活性化活性も存在することを見出し、本発明を提供するに至った。これによって、本発明は、経口的に投与または摂取可能であり、ヒトにも適用できる、摂食抑制作用を有するペプチド、特に、低コストで実用的な、安全で摂取しやすいペプチド、およびこれを含有する摂食抑制剤、食品、医薬組成物、飼料等を提供することができる。
したがって、本発明は以下を提供する。
1つの局面において、本発明は、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む、ペプチドYY(PYY)分泌活性化剤を提供する。
1つの実施形態では、本発明のPYY分泌活性化剤は、小麦グルテン加水分解物を含む。
別の実施形態では、前記小麦グルテン加水分解物は小麦グルテン加水分解ペプチドを含む。
別の実施形態では、前記小麦グルテン加水分解物はCAS100684−25−1で特定される。
別の実施形態では、前記小麦グルテン加水分解物は、分解レベルが5〜10%(例えば、8.8%)である小麦グルテン加水分解ペプチドを含む。
別の実施形態では、前記小麦グルテン加水分解物は、適宜の条件(例えば水酸化ナトリウムの存在下)で、グルテンをアルカリ性プロテアーゼ(例えば、アルカラーゼ)で(例えば、4時間)処理し、その後中性プロテアーゼ(例えば、プロテアーゼN)で(例えば、2時間)処理することにより得られるか、または、適宜の条件(例えば水酸化ナトリウムの存在下)で、グルテンをアルカリ性プロテアーゼ(例えば、アルカラーゼ)で(例えば、4時間)およびエンドプロテアーゼとエキソペプチダーゼとの複合酵素で(例えば、1時間)反応させ、その後、パンクレアチンおよびトリプシンで(例えば、2時間)処理することにより得られるか、または、適宜の条件(例えば水酸化ナトリウムの存在下)で、グルテンをアルカリ性プロテアーゼ(例えば、アルカラーゼ)で(例えば、4時間)およびペプシンで(例えば、3時間)反応させ、その後、パンクレアチンおよびトリプシンで(例えば、2時間)処理し、必要に応じてフレーバーザイムで(例えば、1時間)処理することにより得られるものである。
別の局面では、本発明は、本発明のPYY分泌活性化剤を含む医薬を提供する。
別の局面では、本発明は、本発明のPYY分泌活性化剤を含む食品を提供する。
別の局面では、本発明は、本発明のPYY分泌活性化剤を含む飼料を提供する。
別の局面では、本発明は、PYY分泌を活性化するための、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を提供する。
別の局面では、本発明は、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を提供することを包含する、ペプチドYY(PYY)分泌活性化方法を提供する。
別の局面では、本発明は、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む、ペプチドYY(PYY)分泌活性化のための組成物を提供する。
別の局面では、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む、摂食抑制剤を提供する。
1つの実施形態では、本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む摂食抑制剤は、小麦グルテン加水分解物を含む。
別の実施形態では、本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む摂食抑制剤は、食後後期の摂食抑制のために用いられる。
別の実施形態では、本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む摂食抑制剤は、食後2〜12時間後を含む期間の摂食抑制のために用いられる。
別の実施形態では、本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む摂食抑制剤は、食後6〜12時間後を含む期間の摂食抑制のために用いられる。
別の実施形態では、本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む摂食抑制剤は、食後2〜6時間後を含む期間の摂食抑制のために用いられる。
別の実施形態では、本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む摂食抑制剤は、食後3〜6時間後を含む期間の摂食抑制のために用いられる。
別の実施形態では、本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む摂食抑制剤は、本発明のPYY分泌活性化剤としての特徴を1またはそれより多くさらに含む。
別の局面では、本発明は、本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む摂食抑制剤を含む医薬を提供する。
別の局面では、本発明は、本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む摂食抑制剤を含む食品を提供する。
別の局面では、本発明は、本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む摂食抑制剤を含む飼料を提供する。
別の局面では、本発明は、摂食抑制するための、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を提供する。
別の局面では、本発明は、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を提供することを包含する、摂食抑制法を提供する。
別の局面では、本発明は、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む、摂食抑制のための組成物を提供する。
別の局面では、本発明は、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む医薬を提供する。
1つの実施形態では、本発明の医薬は、摂食抑制のため、またはPYY分泌活性化のためのものである。
別の実施形態では、本発明の医薬は、本発明のPYY分泌活性化剤または摂食抑制剤としての特徴を1またはそれより多く含む。
別の局面では、本発明は、ラクトアルブミン加水分解物を含む、摂食抑制剤を提供する。
1つの実施形態では、本発明のラクトアルブミン加水分解物を含む摂食抑制剤は、食後前記の摂食抑制のために用いられる。
別の実施形態では、本発明のラクトアルブミン加水分解物を含む摂食抑制剤は、食後3時間までの期間の摂食抑制のために用いられる。
別の局面では、本発明は、本発明のラクトアルブミン加水分解物を含む摂食抑制剤を含む医薬を提供する。
別の局面では、本発明は、本発明のラクトアルブミン加水分解物を含む摂食抑制剤を含む食品を提供する。
別の局面では、本発明は、本発明のラクトアルブミン加水分解物を含む摂食抑制剤を含む飼料を提供する。
別の局面では、本発明は、摂食抑制するための、ラクトアルブミン加水分解物を提供する。
別の局面では、本発明は、ラクトアルブミン加水分解物を提供することを包含する、摂食抑制法を提供する。
別の局面では、本発明は、ラクトアルブミン加水分解物を含む、摂食抑制のための組成物を提供する。
上述のように、本発明者らは、食品である小麦より作製したペプチド(小麦由来ペプチド)を用いることで、安全に経口摂取できる素材とすることができ、これを経口投与することで長時間食欲が抑制されることを見出した。本発明においては、直接中枢に作用せず、消化管管腔内で消化管ホルモン分泌を介して作用を発揮する安全性の高い方法であり、また、下部消化管で分泌されることから、比較的長く持続する食欲抑制作用を持つ消化管ホルモンであるペプチド−YY(PYY)分泌を上昇させることで、より安全で持続的な食欲抑制効果を実現できる小麦由来ペプチドを見いだした。
複数の実施形態が開示されるが、本発明のなお他の実施形態は、以下の詳細な説明から当業者には明らかになる。当業者に明らかであるように、本発明は、すべて本発明の技術思想および範囲から逸脱することなく、種々の明白な態様において修飾が可能である。従って、図面および詳細な説明は、事実上例示的であると見なされ、制限的であるとは見なされない。
本発明により、安全な食品素材を用い、高度肥満患者だけに限らず、安全に経口摂取可能とするものを提供することができる。また、本発明により、食欲抑制効果を長く持続することが可能となる。本発明はまた、経口投与により、消化管において、食欲抑制作用を有するPYYの分泌を促進する、生体への安全性が高い、肥満症の予防、改善に有効な素材を提供することを提供する。本発明の組成物、摂食抑制剤、PYY分泌促進剤、およびこれらを含有する医薬、食品、飼料(以下、「(本発明の)組成物等」と総称することがある)は、食欲抑制作用を有するPYYの分泌を刺激する活性を有するため、経口摂取することにより、空腹感を低減させることができる。特に、本発明の組成物等は、摂食抑制活性を有することが知られているコレシストキニン媒介性の摂食抑制活性よりも長期ないし後期においても活性を有するので、少量の摂取で充分な摂食抑制効果を得ることができる。
また、本発明の組成物等は、安全な食品素材を食品加工用の酵素で処理することにより得られるので、安全性が高く、低コストである。
本発明の組成物等は、その高い溶解性により、カプセル等の固体形態による摂取のみならず、飲料等に溶解して摂取することも可能である。
さらに、本発明の組成物等は、摂取後約15分でその効果が発揮されることから、食事の15分ほど前に本発明のペプチド組成物を摂取して予め満腹感を惹起することにより、その後の過剰なカロリー摂取を予防することができる。また、食事開始と同時に摂取する場合には、実際の食事によって惹起される満腹感との相乗効果が期待できる。
図1は、小麦由来ペプチド、ラクトアルブミン加水分解物投与後の食事摂取量を示す。値は再給餌後の積算の摂食量の平均値+標準誤差(n=5−8)を示す。同じアルファベットを付されていないバーの間には、同時間においてに有意差があることを示す(P<0.05、Tukey’s test)。白抜き棒は、6ml/kg水の投与群を示す。黒塗り棒は、1.0g/kg小麦グルテン加水分解物(WheatP)の投与群を示す。斜線棒は、1.0g/kgラクトアルブミン加水分解物(LactP)の投与群を示す。左から食後1時間後、食後2時間後、食後3時間後、食後6時間後、食後12時間後を示す。図中NSは統計学的に有意ではないことを示す。 図2は、小麦由来ペプチド、ラクトアルブミン加水分解物投与後の食事摂取量を示す。値は再給餌後の積算の摂食量の平均値+標準誤差(n=5−6)を示す。同じアルファベットを付されていないバーの間には、同時間においてに有意差があることを示す(P<0.05、Tukey’s test)。白抜き棒は、6ml/kg水の投与群を示す。黒塗り棒は、1.0g/kg小麦グルテン加水分解物(WheatP)の投与群を示す。斜線棒は、1.0g/kgラクトアルブミン加水分解物(LactP)の投与群を示す。左から食後1時間後、食後2時間後を示す。 図3は、小麦由来ペプチド、ラクトアルブミン加水分解物投与後の門脈血中CCK濃度を示す。値は平均値+標準誤差(n=5−6)を示す。同じアルファベットを付されていないバーの間には、有意差があることを示す(P<0.05、Tukey’s test)。白抜き棒は、6ml/kg水(図中水と表示する)の投与群を示す。黒塗り棒は、1.0g/kg小麦グルテン加水分解物(WheatPと表示する)の投与群を示す。斜線棒は、1.0g/kgラクトアルブミン加水分解物(LactPと表示する)の投与群を示す。Aは、門脈血中のCCK−33濃度の1時間後での挙動を示す。 小麦由来ペプチド、ラクトアルブミン加水分解物投与後の門脈血中CCK濃度を示す。値は平均値+標準誤差(n=5−6)を示す。同じアルファベットを付されていないバーの間には、有意差があることを示す(P<0.05、Tukey’s test)。白抜き棒は、6ml/kg水(図中水と表示する)の投与群を示す。黒塗り棒は、1.0g/kg小麦グルテン加水分解物(WheatPと表示する)の投与群を示す。斜線棒は、1.0g/kgラクトアルブミン加水分解物(LactPと表示する)の投与群を示す。Bは、門脈血中のCCK−33濃度の2時間後での挙動を示す。図中NSは統計学的に有意ではないことを示す。 小麦由来ペプチド、ラクトアルブミン加水分解物投与後の門脈血中GLP−1濃度を示す。値は平均値+標準誤差(n=5−6)を示す。同じアルファベットを付されていないバーの間には、有意差があることを示す(P<0.05、Tukey’s test)。白抜き棒は、6ml/kg水(図中水と表示する)の投与群を示す。黒塗り棒は、1.0g/kg小麦グルテン加水分解物(WheatPと表示する)の投与群を示す。斜線棒は、1.0g/kgラクトアルブミン加水分解物(LactPと表示する)の投与群を示す。Cは、門脈血中のGLP−1濃度の1時間後での挙動を示す。図中NSは統計学的に有意ではないことを示す。 小麦由来ペプチド、ラクトアルブミン加水分解物投与後の門脈血中GLP−1濃度を示す。値は平均値+標準誤差(n=5−6)を示す。同じアルファベットを付されていないバーの間には、有意差があることを示す(P<0.05、Tukey’s test)。白抜き棒は、6ml/kg水(図中水と表示する)の投与群を示す。黒塗り棒は、1.0g/kg小麦グルテン加水分解物(WheatPと表示する)の投与群を示す。斜線棒は、1.0g/kgラクトアルブミン加水分解物(LactPと表示する)の投与群を示す。Dは、門脈血中のGLP−1濃度の2時間後での挙動を示す。図中NSは統計学的に有意ではないことを示す。 小麦由来ペプチド、ラクトアルブミン加水分解物投与後の門脈血中PYY濃度を示す。値は平均値+標準誤差(n=5−6)を示す。同じアルファベットを付されていないバーの間には、有意差があることを示す(P<0.05、Tukey’s test)。白抜き棒は、6ml/kg水(図中水と表示する)の投与群を示す。黒塗り棒は、1.0g/kg小麦グルテン加水分解物(WheatPと表示する)の投与群を示す。斜線棒は、1.0g/kgラクトアルブミン加水分解物(LactPと表示する)の投与群を示す。Eは、門脈血中のPYY濃度の1時間後での挙動を示す。図中NSは統計学的に有意ではないことを示す。 小麦由来ペプチド、ラクトアルブミン加水分解物投与後の門脈血中PYY濃度を示す。値は平均値+標準誤差(n=5−6)を示す。同じアルファベットを付されていないバーの間には、有意差があることを示す(P<0.05、Tukey’s test)。白抜き棒は、6ml/kg水(図中水と表示する)の投与群を示す。黒塗り棒は、1.0g/kg小麦グルテン加水分解物(WheatPと表示する)の投与群を示す。斜線棒は、1.0g/kgラクトアルブミン加水分解物(LactPと表示する)の投与群を示す。Fは、門脈血中のPYY濃度の2時間後での挙動を示す。 図4は、小麦由来ペプチド(小麦グルテン加水分解物)投与後の食事摂取量を示す。値は再給餌後の積算の摂食量の平均値+標準誤差(n=11)を示す。同じアルファベットを付されていないバーの間には、同時間においてに有意差があることを示す(P<0.05、Tukey’s test)。あるいは*は、Dunnett testで有意差がある(P<0.05)ことを示す。白抜き棒は、6ml/kg水の投与群を示す。斜線棒は、1.0g/kg小麦グルテン加水分解物A(GluHyd A)(分解度13.4%、平均分子量(TNBS法より算出):436.7)の投与群を示す。塗り潰し棒は、1.0g/kg小麦グルテン加水分解物B フレーバーザイムあり(GluHyd B)(分解度17.1%、平均分子量(TNBS法より算出):558.7)の投与群を示す。左から食後1時間後、食後2時間後、食後3時間後、食後6時間後をそれぞれ示す。図中NSは統計学的に有意ではないことを示す。 図5は、小麦由来ペプチド(小麦グルテン加水分解物)または小麦グルテン投与後の食事摂取量を示す。値は再給餌後の積算の摂食量の平均値+標準誤差(n=18−20)を示す。同じアルファベットを付されていないバーの間には、同時間においてに有意差があることを示す(P<0.05、Tukey’s test)。白抜き棒は、12ml/kg水の投与群を示す。斜線棒は、1.0g/kg小麦グルテン加水分解物(小麦グルテン加水分解物(HyPep 4601、Sigma))の投与群を示す。塗り潰し棒は、グルテン(グリコ栄養食品)の投与群を示す。左から食後1時間後、食後2時間後、食後3時間後、食後6時間後、12時間後をそれぞれ示す。図中NSは統計学的に有意ではないことを示す。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(定義)
本明細書において「グルテン」とは、小麦などの穀物の胚乳から生成されるタンパク質の一種である。胚乳内の貯蔵タンパク質であるグリアジンとグルテニンとを、水分の介在下で反応させると結合してグルテンとなる。
本明細書において「小麦グルテン」は、特に制限はなく、市販のものを適宜用いることができる。CAS番号を用いる場合、CAS8002−80−0と表すことができる。
本明細書において「小麦グルテン加水分解物」とは、小麦グルテンを加水分解酵素で分解したものであって、主にペプチドから構成される。本明細書において使用されうる加水分解酵素は、特に制限はなく、市販のものを適宜用いることができる。このように、小麦グルテン加水分解物は、小麦グルテンを分解することによって得られる。小麦グルテンは、小麦タンパク質の主要な成分である。したがって、本明細書において「小麦グルテン加水分解物」は、「小麦グルテン分解ペプチド」といわれることもある。小麦グルテンは、小麦アレルギー患者を除いては、通常、既に食経験があり、長期にわたって摂取された実績があることから、安全性については問題がないと判断されるべきものであり、その意味で安全性は充分確認されているといえる。
本発明において使用される小麦グルテンは、天然原料由来のものであってもよく、また、遺伝子組換え法等によって製造されたものであってもよい。小麦グルテン加水分解物は、CAS番号を用いた場合、CAS100684−25−1との識別番号で表示されることができる。
本発明は、小麦グルテンを加水分解酵素で処理したものを利用することができる。本発明において、加水分解酵素で使用しうる加水分解酵素としては、酸性加水分解酵素、中性加水分解酵素、アルカリ性加水分解酵素、これらの複合体、酵素を含む消化液等を挙げることができ、別の観点でいえば、用いることができる酵素製剤としては、エンド、またはエキソペプチダーゼ類、プロテアーゼ類または、これらの混合物を含むことができ、それらの例としては、トリプシン、キモトリプシンA、B及びC、ペプシン、レンニン、微生物アルカリプロテアーゼ、パパイン、フィチン、ブロメライン、カテプシンB、コラゲナーゼ、微生物中性プロテアーゼ類、カルボキシペプチダーゼA、B、及びC、カルノシナーゼ、アンセリナーゼ(anserinase)、スタフィロコッカス・アウレウス由来のV8プロテアーゼ、また当業者に周知のより多くの酵素類を挙げることができるがこれらに限定されない。また、これらのプロテアーゼ類の組合せを用いてもよい。アルカラーゼ(Alkalase)、キモトリプシン800s(Chymo−trypsine800s)、ニュートラーゼ(Neutrase)、フレーバーザイム(Flavourzyme)(すべてNovo Nordisk, Denmark社より購入可能)、プロテックス6.0L(Protex 6.0L)、ペプチダーゼFP(両者ともGenencor社, USAより購入可能)、コロラーゼL10(Corolase L10)(Rohm社製, Germany)、ペプシン(Merck社製, Germany)、パパイン、パンクレアチン、プロレザーN(proleather N)及びプロテアーゼN(アマノ社製、日本)などの市販の酵素製剤、又は、これらの組合せを用いることができるがこれらに限定されるものではない。組換えDNA技術により調製された酵素を用いることもできるがこれに限定されるものではない。加水分解処理における加水分解酵素の濃度、反応時間、温度は、適宜選択して決定することができるが、一般的には、対基質濃度0.01〜10%程度の加水分解酵素を用い、4〜60℃程度の温度で、5分〜20時間程度で処理することができる。なお、本明細書においては、特に断らない限り「%」は重量%である。加水分解酵素の溶解濃度は、懸濁できる範囲(最大30〜40%が例示されるがこれに限定されない)であれば、どの濃度を用いてもよい。一般的には、対基質濃度0.01%〜10%であり、0.05〜5%が好ましく、0.05〜1%が特に好ましい。至適反応温度は加水分解酵素により変動し、4℃〜60℃であり、ペプシン、パンクレアチン、トリプシン等では、37℃前後、アルカラーゼ、フレーバーザイム、プロテアーゼN、プロチンNY−100等では55℃前後が好ましいがこれに限定されない。酵素に適切な反応時間およびpHは、酵素の濃度・反応温度等によって異なるが、当業者は、用いる酵素に応じて適宜最適なpHを決定することができる。
「小麦グルテン加水分解物」または「小麦グルテン分解ペプチド」は、その同一性を、分解レベルまたは分解物の分布を参考にして決定することができる。本発明において使用される加水分解物の加水分解度は、タンパク質材料源、使用される加水分解酵素、および加水分解反応の完成度に依存して異なり得る。加水分解度(degree of hydrolysis=DH)は、出発ペプチド結合数に対する切断されたペプチド結合の割合で表現される。例えば、500のペプチド結合を含有する出発タンパク質が、50のペプチド結合が切断されるまで加水分解されると、得られる加水分解物のDHは10%DHである。加水分解度は、以下に詳述されるように、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)比色分析法(または代替手法としてオルト−フタルジアルデヒド(OPA)法)を用いて決定することができる。加水分解度が高い程、タンパク質の加水分解の程度は大きい。通常、タンパク質がさらに加水分解されるにつれて(すなわち、DHが高い程)、ペプチド断片の分子量は減少し、それに応じてペプチドプロファイルは変化し、そして混合物の粘度は低下する。DHは加水分解物全体(すなわち、全画分)において測定されてもよいし、あるいはDHは、加水分解物の可溶性画分(すなわち、約500〜1000×gで約5〜10分間加水分解物を遠心分離した後の上澄み画分)において測定されてもよい。
一般に、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は少なくとも約0.2%DHでありうる。一実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約0.2%DH〜約20%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、約5%DH〜約30%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約2%DH〜約10%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約5%DH〜約10%DHの範囲が使用され得る。あるいは、別の実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約0.2%DH〜約10%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約0.2%DH〜約15%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約8%DH〜約18%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約0%DH〜約9%DHの範囲が使用され得る。本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約0%DH〜約14%DHの範囲が使用され得る。本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約0%DH〜約18%DHの範囲が使用され得る。さらに別の実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約2%DH〜約30%DHの範囲でよい。さらなる実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約30%DHよりも大きくてもよい。例えば、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、下限としては、約0.2%以下でも良く、約0(加水分解がない)%、約0.1%であり得、あるいは、下限として約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.5%、約2.0%、約2.5%、約3.0%、約3.5%、約4.0%、約4.5%、約5.0%、約5.5%、約6.0%、約6.5%、約7.0%、約7.5%、約8.0%などであってもよい。上限としては、例えば、約9.0%、約9.5%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%等であり得、これらの間の数値であってもよいことが理解される。
本明細書において、分解度はTNBS(2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸)法にて測定することができる。したがって、格別な指示がない限り、本明細書では、分解度は、TNBS法で測定した数値で示される。TNBS法ではアミノ末端との反応が行われる。よって分解度が高いほど分子量の小さなペプチドが多いこととなる。以下に、TNBS測定方法は以下のとおりである。TNBS測定方法は、サンプル(0.1mg/ml)、スタンダード(グリシン溶液)125 μlを15ml適切な容器(例えば、コーニングのチューブ)に用意する。そこへ0.15M Na・10HO(pH9.5)500μlを添加する。0.01M NaSOを125 μlと0.1% TNBS 125 μlを混合(遮光保存)して、添加する。37℃で60分インキュベートする。420 nm波長で吸光値を測定する。
1つの実施形態では、本発明の小麦グルテン加水分解物としては、Sigmaから入手可能なHypepシリーズを用いることができる。このような小麦グルテン加水分解物は、CAS登録されており、CAS100684−25−1と表すことができる。
このようなHypepと同様の加水分解物を製造する方法例としては、以下を挙げることができるがこれらに限定されない。
(製造例1)
・イオン交換水750gにNaOHを1.2g加え、溶解させる。
・攪拌しながらグルテン100gを添加し、分散させる。
・加温して分散液が55℃になったら、アルカラーゼ2.4L(novozyme社製)を0.2%(対グルテン)を添加して4時間反応させる。
・続けてプロテアーゼN(または、同等品として、プロチンNY−100、いずれも天野エンザイム社製)を5.0%(対グルテン)添加して2時間反応させる。
・85℃で15分間加熱して酵素を失活させる。
・反応液を10分間、3000rpmにて遠心分離し、上清を得る。
・得られた上清を乾燥または凍結乾燥させる。
これにより、市販されるHypepと分解度が同程度のペプチドを得ることができる。
(製造例2)
・イオン交換水750gにNaOHを1.2g加え、溶解させる。
・攪拌しながらグルテン100gを添加し、分散させる。
・加温して分散液が55℃になったら、アルカラーゼ2.4L(novozyme社製)を0.2%(対グルテン)を添加して4時間反応させる。
・続けてフレーバーザイム(novozyme社製;エンドプロテアーゼとエキソペプチダーゼとの複合酵素である。)を0.1%(対グルテン)添加して1時間反応させる。
・85℃で15分間加熱して酵素を失活させる。
・反応液を10分間、3000rpmにて遠心分離し、上清を得る。
・上清を37℃にして、ペプシン(例えば、Sigma社製;酸性加水分解酵素)を0.5%(対上清中のペプチド)添加して1時間反応させる。
・さらにパンクレアチン(例えば、Sigma社製;消化酵素)を4.0%(対上清中のペプチド)、トリプシン(例えば、Sigma社製;エンドペプチダーゼ、セリンプロテアーゼの一種)を2.5%(対パンクレアチン)添加して2時間反応させる。
・100℃で20分間加熱して酵素を失活させる。
・反応液を10分間、3000rpmにて遠心分離し、上清を得る。
・得られた上清を乾燥または凍結乾燥させる。
これにより、市販されるHypepと分解度が同程度のペプチドを得ることができる。
あるいは、別の製法で分解産物を製造することができる。
(製造例3:分解度13.4%のペプチド試作方法)
・イオン交換水750gにNaOHを1.2g加え、溶解させる。
・攪拌しながらグルテン100gを添加し、分散させる。
・加温して分散液が55℃になったら、アルカラーゼ2.4L(例えば、novozyme社製)を0.2%(対グルテン)を添加して4時間反応させる。
・上清を37℃にして、ペプシン(例えば、sigma社製)を4.0%(対上清中のペプチド)添加して3時間反応させる。
・さらにパンクレアチン(例えば、sigma社製)を6.0%(対上清中のペプチド)、トリプシン(例えば、sigma社製)を2.5%(対パンクレアチン)添加して4時間反応させる。
・100℃で20分間加熱して酵素を失活させる。
・反応液を10分間、3000rpmにて遠心分離し、上清を得る。
・得られた上清を乾燥させる。
(製造例4:分解度17.1%のペプチド試作方法)
・イオン交換水750gにNaOHを1.2g加え、溶解させる。
・攪拌しながらグルテン100gを添加し、分散させる。
・加温して分散液が55℃になったら、アルカラーゼ2.4L(例えば、novozyme社製)を0.2%(対グルテン)を添加して4時間反応させる。
・上清を37℃にして、ペプシン(例えば、sigma社製)を4.0%(対上清中のペプチド)添加して3時間反応させる。
・さらにパンクレアチン(例えば、sigma社製)を6.0%(対上清中のペプチド)、トリプシン(例えば、sigma社製)を2.5%(対パンクレアチン)添加して4時間反応させる。
・続けてフレーバーザイム(例えば、novozyme社製)を1.5%(対グルテン)添加して1時間反応させる。
・100℃で20分間加熱して酵素を失活させる。
・反応液を10分間、3000rpmにて遠心分離し、上清を得る。
・得られた上清を乾燥させる。
グルテンの分解物を、適当な条件下で陽イオン交換樹脂によって処理することにより、活性成分を濃縮することができる。使用する陽イオン交換樹脂としては、アクリル酸系またはメタクリル酸系等の、弱酸性陽イオン交換樹脂などを使用することができる。
本発明の組成物の製造に用いられる小麦グルテンおよび加水分解酵素は、特に制限はなく、市販のものを適宜用いることができる。
本明細書において「ラクトアルブミン加水分解物」は、ラクトアルブミンを加水分解して得られる任意の分解物を指す。例えば、このようなラクトアルブミン加水分解物は、自分で調製することもでき、あるいはSigmaなどから市販されているものを使用してもよい。加水分解する際に使用される加水分解酵素は、本明細書において小麦グルテンに関して説明したものと同様のものを使用することができるが、基質の性質および目的とする分解物に合わせ、適宜変更することができる。
場合によっては、上記のようにして得られた分解物を、さらに精製してもよい。精製は、上記のような加水分解酵素による分解の後、分解物をイオン交換樹脂カラム(陰イオン交換樹脂カラムが好ましい)に適用することにより容易に行なうことができる。本発明の摂食抑制活性成分は、このようなクロマトグラフィーによる濃縮が可能である。必要があれば、濃縮された画分を公知の方法によってさらに濃縮または乾燥することができる。ラクトアルブミン加水分解物は、その主成分がペプチドであることから、ラクトアルブミン加水分解ペプチドと称されることもある。
本発明に関して、「ペプチド」は、2以上のアミノ酸残基からなり、もとのタンパク質またはポリペプチドよりも小さいものであれば、すべて包含する用語として使用される。
本明細書において「ペプチドYY(PYY)」とは、当該分野で慣用されるように、消化管ホルモンとして知られるホルモンをいう。PYYを被験者に投与すると摂食量が減少することが知られている(非特許文献1〜4、7)。本発明では、PYYに関連する動物は、ヒト、マウス等に限定されず、摂食等と関連が知られているものはいずれも包含される。
本明細書において「グルカゴン様ペプチド(Glucagon−like peptide−1(GLP−1)」は、当該分野で慣用されるように、消化管ホルモンとして知られるホルモンをいう(非特許文献1〜4、7)。GLP−1は食欲、糖尿病等と関連するといわれている。
本明細書において「コレシストキニン(CCK)」は、当該分野で慣用されるように、消化管ホルモンとして知られるホルモンをいう(非特許文献1〜6)。
CCK、PYYおよびGLP−1の分泌促進活性の有無または程度は、以下のようにして調べることができる(CCK、PYYおよびGLP−1分泌試験)。
(CCK、PYYおよびGLP−1分泌試験)
適宜の動物(例えば、Wistar ST系の雄性ラット(7−8 週齢))をAIN−93Gに準拠した 25% カゼイン食にて予備飼育(たとえば、1週間)を行う。飼育期間中は暗期の12時間のみ食事を与える。12時間絶食後にフィーディングチューブ(胃管)を用いて、試験対象物質(例えば、適宜の量を脱イオン水に溶解し、最終用量に調整)を試験対象量強制投与する。陰性対照として脱イオン水のみ(例えば、脱イオン水を6ml/kgの用量)を投与する。直後に給餌し、1、2時間後にペントバルビタール等での麻酔下にて開腹し、門脈血を採取する。摂食量、血漿中コレシストキニン(CCK)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、ペプチドYY(PYY)濃度を測定する。各種消化管ホルモンの測定には適宜の免疫学的手法等の手法を用いることができる(例えば、市販ELISAキットを使用することができる。)。
本発明に関して、「コレシストキニン(CCK)分泌促進活性を有する」、「グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)分泌促進活性を有する」、「ペプチドYY(PYY)分泌促進活性を有する」とは、それぞれ、上記の試験方法または別の方法によって調べた場合に、陰性対照と比較して有意にコレシストキニン(CCK)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、ペプチドYY(PYY)の分泌を促進することを意味する。
コレシストキニン分泌促進活性の有無または程度は、以下のようにしても、調べることができる(STC−1を用いたCCK分泌試験)。
CCK産生細胞のモデルとして広く用いられるマウス十二指腸由来の細胞株STC−1を用いる。48−wellプレートに培養したSTC−1細胞を、各種サンプル溶液(1mg/ml)中で60分間反応させ、上清中に放出されたCCK量を、ラット膵腺房細胞株を用いたバイオアッセイ(Logsdon CD., J. Biol.Chem.,261(5):2096−2101,1986;Hira Tl. etal., Biosci Biotehcnol.; Biochem.5(5):1007−1015)にて測定する。具体的には、ラット膵腺房細胞株AR−42Jを48−wellプレートにて培養し、100nMデキサメタゾン(dexamethasone)を添加し、48時間分化誘導する。この細胞を、STC−1細胞に30分間暴露し、上清中に放出されたアミラーゼ活性を測定する。アミラーゼ放出量に基づいてCCK濃度を算出する。陰性対照としては、サンプルを添加していないバッファー(10mM Hepes、pH7.4)を用いる。なお、陽性対照として、任意の有効成分を用いることができる。
上記試験は、動物において食欲抑制作用、CCK分泌促進作用が確認された素材が、直接的にCCK産生細胞を刺激することを確認できる試験である。このSTC−1を用いた試験は、CCK分泌作用をもつ素材のスクリーニングとしても使用することができる。動物での作用の一部を反映するものといえる。
上記方法は、別法として以下がある。すなわち、CCK産生細胞のモデルとして広く用いられるマウス十二指腸由来の細胞株STC−1を用いる。48−wellプレートに培養したSTC−1細胞を、各種サンプル溶液(5mg/ml)中で60分間反応させ、市販のELISAキット(Phoenix Pharmaceutical社)にて測定しても良い。陰性対照としては、サンプルを添加していないバッファー(10mM Hepes、pH7.4)を用いる。なお、陽性対照として、任意の有効成分を用いることができる。
本明細書において「摂食抑制」とは、食欲抑制とも呼ばれ、当該分野で慣用されるのと同様の意味で用いられ、食物を認識して口に取り込み、胃に至るまでの一連の過程(摂食)のいずれかまたはすべてにおいて抑制されることをいう。摂食障害、肥満治療、あるいは他の摂食障害に起因する疾患または障害等を処置または予防するために用いられる。
摂食抑制活性の有無または程度は、以下のようにして調べることができる。
適宜の動物(例えば、Wistar ST系の雄性ラット(7−8週齢))をAIN−93Gに準拠した25%カゼイン食にて予備飼育(たとえば、1週間)を行う。飼育期間中は暗期の12時間のみ食事を与える。12時間絶食後にフィーディングチューブ(胃管)を用いて、試験対象物質(例えば、適宜の量を脱イオン水に溶解し、最終用量に調整)を試験対象量強制投与する。陰性対照として脱イオン水のみ(例えば、脱イオン水を6ml/kgの用量)を投与する。直後に給餌し、適宜の時間の後(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12時間後等)に摂食量を測定する。
本発明に関して、「摂食抑制活性を有する」とは、上記または他の試験方法によって調べた場合に、対照と比較して有意に摂食を抑制することを意味する。
本明細書において「食後後期」とは、食事摂食後2時間以降の時期をいう。食後後期の時期には胃、腸管上部を通過して吸収されなかった食品成分が腸管下部に存在する。通常、食品成分が腸管下部に存在する時期は食後2時間以降であることが多いが、被験者の状態により前後し2時間より短い場合もあり(例えば、1時間)、2時間より長い場合もありうる(例えば、3時間、6時間)。したがって、食後後期は、例えば、食後2〜12時間後を含む期間、あるいは食後3〜12時間後、食後6〜12時間、食後2〜6時間、食後2〜7時間、食後2〜8時間、食後2〜9時間、食後2〜10時間、食後2〜11時間、食後3〜6時間、食後3〜7時間、食後3〜8時間、食後3〜9時間、食後3〜10時間、食後3〜11時間、食後4〜7時間、食後4〜8時間、食後4〜9時間、食後4〜10時間、食後4〜11時間、食後5〜6時間、食後5〜7時間、食後5〜8時間、食後5〜9時間、食後5〜10時間、食後5〜11時間等を含む期間でありうると理解される。なお、食後後期の摂食抑制については、コレシストキニンの寄与は低いといわれている。したがって、本明細書では、食後前期は、食後後期になる前の時期(食後直後を含む)をいい、通常食後2時間より前の時期をいう。
摂食抑制活性の有無または程度は、別法として、以下のようにしても調べることができる。すなわち、15週齢のSprague−Dawley系雄ラットを、精製飼料にて予備飼育後、一夜絶食させ、フィーディングチューブにより各種サンプル溶液 (50mg/ml、1ml)を胃内投与する。対照群には、水1mlを投与する。投与30分後に精製飼料を再給餌し、1時間等の適宜の時間の摂食量を測定することができ、上記方法と同視し得る。
本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物は、これを含有する摂食抑制剤またはPPY分泌促進剤として使用することができる。
本発明のラクトアルブミン加水分解物は、これを含有する摂食抑制剤またはCCK分泌促進剤として使用することができる。
本発明は、医薬としてのほか、ヒトの成長、動物の飼育等の目的の添加剤、医療デバイス、食品、飼料、健康食品もしくは機能性食品などとして用いられる。
本明細書において「医薬」とは、当該分野でもっとも広義に解釈され、任意の薬を含み、薬事法上の医薬品、医薬部外品等のほか、人に適用するものだけでなく、動物に適用するもの(獣医薬)をも包含する概念として使用され、摂食抑制、PYY分泌活性に関連する状態の治療または予防を意図する任意の用途の薬剤、組成物等を包含することが理解される。そのような例として、医療分野、獣医科学等における応用が挙げられる。通常、医薬は固体または液体の賦形剤を含むとともに、必要に応じて崩壊剤、香味剤、遅延放出剤、滑沢剤、結合剤、着色剤などの添加剤を含むことができる。医薬品の形態は、錠剤、注射剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、徐放製剤などを含むが、これらに限定されない。本発明の摂食抑制剤またはPPY分泌促進剤は、医薬的に許容されうる一般的な担体または賦形剤などの成分と一緒にして医薬組成物とすることができる。
本明細書において「医療デバイス」とは、当該分野でもっとも広義に解釈され、任意のデバイス、機器を含み、薬事法上の医療機器のほか、摂食抑制またはPYY分泌活性化を意図する任意の用途の装置、デバイス、器具を包含することが理解される。医療デバイスとしては、たとえば、ステント、カテーテル、インプラントなどが例示される。
本明細書において「食品」とは、当該分野で日常的に使用される意味を有し、人間が食することができるすべての食料(飲料を含む)を指し、一実施形態としては加工品を挙げることができる。たとえば菓子類、乳製品、穀類加工品などの加工食品に、本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物等の成分を混入させることができる。また、「健康食品」および「機能性食品」とは、業界で一般的に使用される意味を有し、摂食抑制またはPYY分泌活性化等のために特別に処方された、医薬品または一般の食品とは区別される食品の一種を指す。このような食品の例としては、例えば、食事前に患者に一定期間摂取させる食品を想定することができるがこれに限定されない。
本明細書において「飼料」とは、当該分野で日常的に使用される意味を有し、人間以外の動物が食することができるすべての食料(飲料を含む)を指し、一実施形態としては加工品を挙げることができる。たとえば加工飼料に、本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物等の成分を混入させることができる。このような飼料の例としては、例えば、飼料摂取前に家畜等の動物に一定期間摂取させる飼料を想定することができるがこれに限定されない。すなわち、本発明の摂食抑制剤およびPPY分泌促進剤の効果は、動物に対しても有効であるので、公知の一般的な栄養成分と組み合わせて、またはさらに他の有効成分と組み合わせて、本発明の摂食抑制剤またはPPY分泌促進剤を含有する飼料(ペットフード、家畜用飼料など)とすることもできる。
本明細書において「添加剤」とは、主成分に対して、何らかの目的で添加される任意の薬剤をいう。例えば、摂食抑制またはPYY分泌活性化等のための添加剤等を例示することができる。
本明細書において「治療」または「予防」とは、摂食抑制またはPYY分泌活性化をすることによって、摂食またはPYY分泌に関連する症状、状態、障害または疾患を有意に改善、緩和または予防することを意味する。本発明により摂食抑制またはPYY分泌活性化を促進することによって摂食またはPYYの分泌低下による症状、状態、障害または疾患が改善される。
(好ましい実施形態)
本発明の好ましい実施形態を、以下に掲げる。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
(PYY分泌活性化剤)
1つの局面において、本発明は、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む、ペプチドYY(PYY)分泌活性化剤を提供する。特に、本発明では、小麦グルテン加水分解物が、驚くべきことに、PYY分泌活性化効果を奏することが見出され、PYY分泌に関連する状態、障害または疾患を処置または予防することができる点で顕著な効果を奏する。本発明で用いられる小麦グルテン加水分解物は、主成分がペプチドであるため、本発明の一実施形態では、本発明では小麦グルテン加水分解ペプチドが利用される。したがって、本発明は、PYY分泌を活性化するための、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を提供するともいえる。
1つの好ましい実施形態では、本発明で用いられる小麦グルテン加水分解ペプチドはCAS100684−25−1で表される物質でありうる。このような小麦グルテン加水分解ペプチドは、市販されるもの、例えば、Sigmaから入手可能なHyPep(ペプトンとも呼ばれる。)のほか、Kingston Chemistry等から入手可能なものであってもよい。あるいは、小麦グルテン加水分解物または小麦グルテン加水分解ペプチドは、小麦グルテンを加水分解酵素によって処理して調製することもできる。ある実施形態では、小麦グルテン加水分解物は、グルテンをアルカリ性プロテアーゼ(例えば、アルカラーゼ)、その後中性プロテアーゼ(例えば、プロテアーゼN)で加水分解することによって、調製することができる。あるいは、より詳細には、ある実施形態では、小麦グルテン加水分解物は、グルテンをアルカリ性プロテアーゼ(例えば、アルカラーゼ)で例えば4時間および中性プロテアーゼ(例えば、プロテアーゼN)で例えば2時間処理することにより調製することができる。あるいは、水酸化ナトリウムの存在下で、グルテンをアルカリ性プロテアーゼ(例えば、アルカラーゼ)で例えば4時間およびエンドプロテアーゼとエキソペプチダーゼとの複合酵素で例えば1時間反応させ、その後、パンクレアチンおよびトリプシンで例えば2時間処理することにより調製することができる。あるいは、適宜の条件(例えば水酸化ナトリウムの存在下)で、グルテンをアルカリ性プロテアーゼ(例えば、アルカラーゼ)で(例えば、4時間)およびペプシンで(例えば、3時間)反応させ、その後、パンクレアチンおよびトリプシンで(例えば、2時間)処理し、必要に応じてフレーバーザイムで(例えば、1時間)処理することにより調製することができる。例えば、そのような例としては、本明細書において(製造例1)、(製造例2)、(製造例3)、(製造例4)として例示しているものや、実施例において調製したものを列挙することができるが、これらに限定されない。
あるいは、同一性の指標として分解レベルで表示する場合、好ましい小麦グルテン加水分解物または小麦グルテン加水分解ペプチドは、加水分解度として、約5%DH〜約30%DHの範囲が使用され得る。小麦グルテン自体にも摂食抑制効果が観察されていることから、下限は約0%であってもよい。別の実施形態では、約5%DH〜約25%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、約5%DH〜約20%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、約6%DH〜約30%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、約6%DH〜約25%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、約6%DH〜約20%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、約7%DH〜約30%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、約7%DH〜約25%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、約7%DH〜約20%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、約8%DH〜約20%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、約8%DH〜約30%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、約8%DH〜約25%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、約8%DH〜約20%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、加水分解度として、約0.2%DH〜約20%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約2%DH〜約10%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約5%DH〜約10%DHの範囲が使用され得る。あるいは、別の実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約0.2%DH〜約10%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約0.2%DH〜約15%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約8%DH〜約18%DHの範囲が使用され得る。別の実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約0%DH〜約9%DHの範囲が使用され得る。本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約0%DH〜約14%DHの範囲が使用され得る。本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約0%DH〜約18%DHの範囲が使用され得る。さらに別の実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約2%DH〜約20%DHの範囲でよい。さらなる実施形態では、本発明において用いられる加水分解物の加水分解度は、約20%DHよりも大きくてもよい。
本発明のPYY分泌活性化剤は、医薬、食品(機能性食品、(特定保健用)健康食品等を含む)、飼料などとして利用することができる。
(摂食抑制剤)
別の局面において、本発明は、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む、摂食抑制剤を提供する。特に、本発明では、小麦グルテン加水分解物が、驚くべきことに、摂食抑制効果を奏することが見出され、摂食抑制に関連する状態、障害または疾患(例えば、肥満、糖尿病)を処置または予防することができる点で顕著な効果を奏する。本発明で用いられる小麦グルテン加水分解物は、主成分がペプチドであるため、本発明の一実施形態では、本発明では小麦グルテン加水分解ペプチドが利用される。したがって、本発明は、摂食を抑制するための、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を提供するともいえる。
あるいは、別の局面において、本発明は、ラクトアルブミン加水分解物を含む、摂食抑制剤を提供する。特に、本発明では、ラクトアルブミン加水分解物が、驚くべきことに、摂食抑制効果を奏することが見出され、摂食抑制に関連する状態、障害または疾患(例えば、肥満、糖尿病)を処置または予防することができる点で顕著な効果を奏する。本発明で用いられる小麦グルテン加水分解物は、主成分がペプチドであるため、本発明の一実施形態では、本発明ではラクトアルブミン加水分解ペプチドが利用される。したがって、本発明は、摂食を抑制するための、ラクトアルブミン加水分解物を提供するともいえる。
1つの好ましい実施形態では、本発明で用いられる小麦グルテン加水分解ペプチドはCAS100684−25−1で表される物質でありうる。このような小麦グルテン加水分解ペプチドは、市販されるもの、例えば、Sigmaから入手可能なHyPep(ペプトンとも呼ばれる。)のほか、Kingston Chemistry等から入手可能なものであってもよい。あるいは、小麦グルテン加水分解物または小麦グルテン加水分解ペプチドは、小麦グルテンを加水分解酵素によって処理して調製することもできる。ある実施形態では、小麦グルテン加水分解物は、グルテンをアルカリ性プロテアーゼ(例えば、アルカラーゼ)、その後中性プロテアーゼ(例えば、プロテアーゼN)で加水分解することによって、調製することができる。あるいは、より詳細には、ある実施形態では、小麦グルテン加水分解物は、グルテンをアルカリ性プロテアーゼ(例えば、アルカラーゼ)で例えば4時間および中性プロテアーゼ(例えば、プロテアーゼN)で例えば2時間処理することにより調製することができる。あるいは、水酸化ナトリウムの存在下で、グルテンをアルカリ性プロテアーゼ(例えば、アルカラーゼ)で例えば4時間およびエンドプロテアーゼとエキソペプチダーゼとの複合酵素で例えば1時間反応させ、その後、パンクレアチンおよびトリプシンで例えば2時間処理することにより調製することができる。あるいは、適宜の条件(例えば水酸化ナトリウムの存在下)で、グルテンをアルカリ性プロテアーゼ(例えば、アルカラーゼ)で(例えば、4時間)およびペプシンで(例えば、3時間)反応させ、その後、パンクレアチンおよびトリプシンで(例えば、2時間)処理し、必要に応じてフレーバーザイムで(例えば、1時間)処理することにより調製することができる。例えば、そのような例としては、本明細書において(製造例1)、(製造例2)、(製造例3)、(製造例4)として例示しているものや、実施例において調製したものを列挙することができるが、これらに限定されない。
あるいは、同一性の指標として分解レベルで表示する場合、好ましい小麦グルテン加水分解物または小麦グルテン加水分解ペプチドは、PYY分泌活性化剤において使用される任意の実施形態を利用することができる。
1つの実施形態では、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を用いる場合、食後後期の摂食抑制のために利用されうる。より詳細な実施形態では、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物は、食後2時間以後、例えば、食後2時間〜12時間後、あるいは3〜12時間後、食後6〜12時間後、食後2〜6時間、食後2〜7時間、食後2〜8時間、食後2〜9時間、食後2〜10時間、食後2〜11時間、食後3〜6時間、食後3〜7時間、食後3〜8時間、食後3〜9時間、食後3〜10時間、食後3〜11時間、食後4〜7時間、食後4〜8時間、食後4〜9時間、食後4〜10時間、食後4〜11時間、食後5〜6時間、食後5〜7時間、食後5〜8時間、食後5〜9時間、食後5〜10時間、食後5〜11時間等等の期間にわたる摂食抑制のために用いることができることが理解される。もちろん、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物は、食後すぐにも効果があるため、食後後期のみに効果が限定されるというものではなく、食後すぐ(早期)および食後後期の食後全体にわたり、摂食抑制を達成するために用いられることが理解される。
他方、別の実施形態において、ラクトアルブミン加水分解物が用いられる場合は、食後すぐ(早期)、例えば、食後3時間以前、好ましくは食後2時間以前、さらに好ましくは食後1時間以内の摂食抑制を達成し、食後3時間以後、好ましくは食後2時間以後、さらに好ましくは食後1時間以後の摂食抑制が望まれない場合に有利に用いられることが理解される。
本発明において使用されうるラクトアルブミン加水分解物は、市販の任意のものを利用することができる。例えば、Sigmaから入手されるものが利用されうる。あるいは、ラクトアルブミン加水分解物は、ラクトアルブミンを加水分解酵素を用いて分解したものを用いてもよいことが理解される。
あるいは、同一性の指標として分解レベルで表示する場合、好ましいラクトアルブミン加水分解物もまた、グルテン同様の分解度が使用され得る。
本発明の摂食抑制剤は、医薬、食品(機能性食品、(特定保健用)健康食品等を含む)、飼料などとして利用することができる。
本発明の摂食抑制剤が対象としうる疾患、障害、状態、症状等としては、肥満、巨食症、糖尿病、脂質異常症、肥満関連胃食道逆流性疾患、脂肪肝炎、代謝症候群等を挙げることができる。
(医薬等)
1つの局面において、本発明は、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物、あるいはそれらの両方、および/またはラクトアルブミン加水分解物を含む、医薬を提供する。ここで、本発明の医薬に含まれる小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物あるいはラクトアルブミン加水分解物の種々の実施形態としては、本明細書において(PYY分泌活性化剤)または(摂食抑制剤)の項において説明されている任意のものを用いることができる。本発明の医薬は、患部に投与する治療補助剤等の形態としても用いることができるが、これに限定されない。
1つの実施形態では、本発明の医薬は、薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む。本発明の組成物を医薬または医薬品として使用する場合、その投与剤型としては、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、徐放製剤、カプセル剤、注射剤などが挙げられる。該医薬品は賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、香味剤、着色剤、遅延放出剤などの添加剤を含むことができる。経口製剤の場合、賦形剤として、例えば乳糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロースなど、結合剤として、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ポリビニルピロリドン、ブロックコポリマーなど、崩壊剤として、例えば澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチンなど、滑沢剤として、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油など、香味剤として、例えばココア末、ハッカ油、桂皮末などが使用できるが、これらに限定されない。必要により、徐放性または腸溶性製剤とするためのコーティングを施すことができる。注射用製剤の場合には、pH調整剤、溶解剤、等張化剤、緩衝化剤などが使用されるが、これらに限定されない。
本発明の医薬において、含まれていてもよいさらなる医薬は、目的に応じ種々考えられるが、たとえば、他の摂食抑制剤として現在使用されているもの、たとえば、特許文献1〜3に記載されているペプチド、アンフェタミン類のマジンドール等を揚げることができるがこれらに限定されない。
1つの実施形態において、本発明の医薬は、1日〜30日間、あるいは、3〜10日間などにわたり投与されることを特徴とする。理論に束縛されることを望まないが、摂食抑制は、一定程度の期間継続されることによりより効果を奏しうるからである。この期間は、体重、食事の回数、量に依存することが理解され、当業者は、投与されるべき箇所の状態(例えば、体重、食事の回数、量等)に応じて、適宜これを変更することができ、30日より長くてもよい。原料が食材であるので、常食として服用されてもよい。
本明細書において薬剤等の「有効量」とは、その薬剤が目的とする薬効を発揮することができる量をいう。本明細書において、そのような有効量のうち、最小の濃度を最小有効量ということがある。そのような最小有効量は、当該分野において周知であり、通常、薬剤の最小有効量は当業者によって決定されているか、または当業者は適宜決定することができる。そのような有効量の決定には、実際の投与のほか、動物モデルなどを用いることも可能である。本発明はまた、このような有効量を決定する際に有用である。
本発明の有効成分(例えば、小麦グルテン、小麦グルテン加水分解物、ラクトアルブミン加水分解物等)、これらを含む組成物等は、経口的に投与したり、あるいは非経口的に摂取させることができる。一般的には、投与または摂取量としては、上記のようなグルテンまたはグルテン分解物として、1被験体あたり1日1回当たり10〜5000mg(0.01g〜5g)であることができる。このような摂取量は、充分安全である。上限および下限としては、これら以外も可能であり、例えば、下限としては、1被験体あたり1日1回当たり1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、0.01g、0.02g、0.03g、0.04g、0.05g、0.06g、0.07g、0.08g、0.09g、0.1g、0.2g、0.3g、0.4g、0.5g、0.6g、0.7g、0.8g、0.9g、1.0gなどを挙げることができる。上限としては、1被験体あたり1日1回当たり1g、1.5g、2g、2.5g、3g、3.5g、4g、4.5g、5g、6g、7g、8g、9g、10gなどを挙げることができるがこれらに限定されず、1被験体あたり1日1回当たり10mg未満、あるいは1mg未満を下限としても良く、1被験体あたり1日1回当たり5g以上あるいは10g以上を上限としてもよい。。ヒトの場合は、通常成人1人につき1日1回当たり10〜5000mgでありうる。
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬のような農薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、賦形剤および/または農学的もしくは薬学的アジュバント以下が挙げられるがそれらに限定されない。
(医療デバイス等)
別の局面において、本発明は、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む、医療デバイスを提供する。ここで、本発明の医療デバイスに含まれる小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物の種々の実施形態としては、本明細書において(PYY分泌活性化剤)、(摂食抑制剤)、(医薬等)の項において説明されている任意のものを用いることができる。
1つの実施形態では、本発明の医療デバイスは、ステント、カテーテルまたはインプラントであってもよいがこれらに限定されない。
1つの実施形態では、本発明のデバイスは、生体適合性を有する基体(マトリクス)を有していてもよい。基体の形態は、ブロック体(塊状物)が好適である。ブロック体(例えば焼結体等)は、形状安定性を有しており、生体に移植したときに、本発明の成分を徐々に放出することができ、徐放効果が期待できる。基体の形態は、適用部位(移植部位)に応じて、適宜選択するようにすればよい。1つの実施形態では、基体は、多孔質なもの(多孔質体)であるのが好ましい。基体として多孔質体を用いることにより、グルテンまたはグルテン加水分解物等の有効成分を、より容易かつ確実に基体に担持させることができる。基体として、粉末状、顆粒状、ペレット状等のものを用いる場合には、例えば、基体とバインダーと前述したような液体とを混練した混練物を、成形することによりデバイスを製造することができる。
(食品等)
1つの局面において、本発明は、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む、飼料、添加剤、食品、健康食品または機能性食品を提供する。ここで、本発明の飼料、添加剤、食品、健康食品または機能性食品に含まれる小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物の種々の実施形態としては、本明細書において(PYY分泌活性化剤)、(摂食抑制剤)、(医薬等)、(医療デバイス等)の項において説明されている任意のものを用いることができる。このような添加剤、食品、健康食品または機能性食品としては、例えば、食事の前に患者に一定期間摂取させる食品等を挙げることができるがこれらに限定されない。
本発明を飼料、添加剤、食品、健康食品または機能性食品として使用する場合、これらは摂食抑制、PYY分泌活性化を必要とする疾患または状態の予防用として使用され得る。たとえば、動物用飼料、菓子類、乳製品、穀類加工品などの加工食品に、本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物等の成分を、適当な賦型剤と一緒に、また必要に応じて香味剤、着色剤などの添加剤を加えて、混入させることができる。また、「健康食品」および「機能性食品」の場合、たとえばゼラチンカプセル内に本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を封入し、あるいは本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む飲料を調製し、摂食抑制、PYY分泌活性化を必要とする疾患または状態を予防するための、健康維持食品として使用することができる。有効成分の添加量は、通常成人の場合1日あたり約10mg〜約5,000mgに相当する量であるが、この範囲に限定されない。治療前に患者に一定期間摂取させる食品の場合、本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を封入したカプセル、あるいは本発明の小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む飲料を調製し使用することができる。このようなカプセルの場合、賦型剤または滑沢剤等とともにカプセルに封入することができる。飲料の場合、甘味料、酸味料、pH調整剤、香料、着色料などを混入することができる。
(医薬等の生産方法)
1つの局面において、本発明は、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物、あるいはそれらの両方、および/またはラクトアルブミン加水分解物を含む医薬を生産する方法であって、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物、あるいはそれらの両方、および/またはラクトアルブミン加水分解物を薬学的に許容可能な賦形剤と混合する工程を包含する方法を提供する。あるいは、本発明は、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物、あるいはそれらの両方、および/またはラクトアルブミン加水分解物を医療デバイスまたは医療デバイスの材料に含ませる工程を包含する医療デバイスを生産する方法を提供する。飼料、添加剤、食品、健康食品、機能性食品なども同様に製造することができる。その場合、薬学的に許容可能な賦形剤に代えて、目的に応じた二次成分を用いることができる。ここで、本発明に含まれる小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物、あるいはそれらの両方、および/またはラクトアルブミン加水分解物の種々の実施形態としては、本明細書において、摂食抑制剤、PYY分泌活性化剤、医薬、医療デバイス、食品、飼料等に用いられるもの、たとえば、本明細書のこれらの(摂食抑制剤)、(PYY分泌活性化剤)、(医薬等)、(医療デバイス等)、(食品等)の項において説明されている任意のものを用いることができる。
(摂食抑制、治療および予防)
1つの局面において、本発明は、摂食抑制すること、およびPYY分泌を活性化することからなる群より選択される少なくとも1つのための方法であって、該方法は、摂食抑制およびPYY分泌を活性化することの少なくとも1つを必要とする患者に小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物、あるいはそれらの両方、および/またはラクトアルブミン加水分解物を、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物、あるいはそれらの両方、および/またはラクトアルブミン加水分解物を必要とする部位に送達されるように投与する工程を包含する方法を提供する。ここで、本発明に含まれる小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物、あるいはそれらの両方、および/またはラクトアルブミン加水分解物の種々の実施形態としては、本明細書において、摂食抑制剤、PYY分泌活性化剤、医薬、医療デバイス、食品、飼料等に用いられるもの、たとえば、本明細書のこれらの(摂食抑制剤)、(PYY分泌活性化剤)、(医薬等)、(医療デバイス等)、(食品等)の項において説明されている任意のものを用いることができる。
本発明の摂食抑制またはPYY分泌活性化方法において、摂食抑制またはPYY分泌活性化等の処置、治療または予防を必要とする患者が対象とされ得、そしてこの患者には、経口投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、直腸内投与などの投与法を、患者の状態、年齢、性別などに応じて適宜選択される。有効成分の用量は、通常成人の場合1日あたり約10mg〜約5,000mgであり、この範囲に限定されないが、患者の状態、年齢、性別などに応じて適宜選択される。本発明で使用される小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物は無毒性ないし低毒性であると考えられる。
本発明の処置方法または予防方法において使用される有効成分の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日〜数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回〜1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間〜1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
本発明の処置方法または予防方法において使用される薬剤の種類および量は、本発明の方法によって得られた情報(例えば、疾患に関する情報)を元に、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、投与される被検体の部位の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明のモニタリング方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。疾患状態をモニタリングする頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)のモニタリングが挙げられる。1週間−1ヶ月に1回のモニタリングを、経過を見ながら施すことが好ましい。
本発明は、キットなどとして使用されてもよく、その場合、指示書を伴うこともありうる。本明細書において「指示書」は、本発明の治療方法などを医師、患者など投与を行う人に対して記載したものである。この指示書は、本発明の医薬などを例えば、適切な部位に適切な量および適切な時期(例えば、経口の場合食事と一緒または別個)に投与することを指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省またはPMDA、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
必要に応じて、本発明の治療または予防では、2種類以上の薬剤(例えば、別の製法で製造した小麦グルテン加水分解物あるいはラクトアルブミン加水分解物、あるいは特許文献1〜3に記載のペプチド等)が使用され得る。2種類以上の薬剤を使用する場合、類似の性質または由来の物質を使用してもよく、異なる性質または由来の薬剤を使用してもよい。このような2種類以上の薬剤を投与する方法のための疾患レベルに関する情報も、本発明の方法によって入手することができる。
(本明細書において用いられる一般的技術)
本明細書において使用される技術は、そうではないと具体的に指示しない限り、当該分野の技術範囲内にある、糖科学、医療器具製造技術、製剤技術、微細加工、有機化学、生化学、遺伝子工学、分子生物学、微生物学、遺伝学および関連する分野における周知慣用技術を使用する。そのような技術は、例えば、以下に列挙した文献および本明細書において他の場所おいて引用した文献においても十分に説明されている。本明細書において使用される摂食抑制に関する実験は、例えば、Sufian KN,Hira T, Nakamori T, Furuta H, Asano K, Hara H.Biosci Biotechnol Biochem. 2011May 30;75(5):848-53. Epub 2011 May 20.; Sufian MK, Hira T, Miyashita K, NishiT, Asano K, Hara H. Biosci Biotechnol Biochem. 2006 Aug;70(8):1869-74などに記載され支持されており、本明細書においてこのすべての記載を援用する。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願等の参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下に示す実施例等において、特段の記載がない場合、一般的に、米としては以下に記載される米を用いて実験を行った。また、以下、本発明の内容を、実施例、比較例、試験例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
(実施例1:小麦ペプチド、ラクトアルブミンペプチドによる食欲抑制作用)
本実施例では、小麦ペプチド、ラクトアルブミンペプチドによる食欲抑制作用を確認した。
(方法)
Wistar ST系の雄性ラット(7−8週齢;日本エスエルシー)をAIN−93G(なお、AIN−93Gは、栄養学の分野で最も標準的な、動物実験において世界中で用いられる精製飼料であり、Components of the AIN−93 diets as improvements in the AIN−76A diet. Reeves PG.J Nutr. 1997 May;127(5 Suppl):838S−841S. Review.などを参照することができる。)に準拠した25%カゼイン食にて予備飼育(1週間)を行った。飼育期間中は暗期の12時間のみ食事を与えた。
12時間絶食後にフィーディングチューブ(胃管、アトムメディカル)を用いてペプチド溶液を強制投与(1.0g/kg体重)した。陰性対照として脱イオン水のみを投与した。投与レジメンは、以下のとおりであった。
・コントロール:脱イオン水を6ml/kgの用量にて投与した。
・小麦グルテン加水分解物:HyPep 4601(Sigmaから入手)を脱イオン水に溶解し、1.0g/kgの用量にて投与した(図中WheatPと表示)。
・ラクトアルブミン加水分解物:Sigmaから入手したラクトアルブミン加水分解物(カタログ番号:L9010)を脱イオン水に溶解し、1.0g/kgの用量にて投与した(図中LactPと表示)。
摂食量については、これらの投与直後に給餌し、1、2、3、6、12時間後に摂食量を測定した。
(結果)
摂食量の結果を図1に示す。
値は再給餌後の積算の摂食量の平均値+標準誤差(n=5〜8)を示す。同じアルファベット(a,b等)を付されていないバーの間には、同時間においてに有意差があることを示す(P<0.05、Tukey’s test)。
小麦グルテン加水分解ペプチド投与(1.0g/kg)により、3時間目まで摂食量が低下した。6、12時間後も低下傾向が見られた。ラクトアルブミンペプチド投与により、1、2時間目で摂食量の低下が見られた。2時間目では、ラクトアルブミンペプチドでは、摂食量の低下はコントロールと比べて有意なものではなく、小幅なものとなった。その後は、水投与群と同等の摂食量に回復した。
(実施例2:小麦ペプチド、ラクトアルブミンペプチドによる食欲抑制作用と血中消化管ホルモンの変動)
本実施例では、小麦ペプチド、ラクトアルブミンペプチドによる食欲抑制作用と血中消化管ホルモンの変動を検証した。
(方法)
Wistar ST系の雄性ラット(7〜8週齢)をAIN−93Gに準拠した 25% カゼイン食にて予備飼育(1週間)を行った。飼育期間中は暗期の12時間のみ食事を与えた。
12時間絶食後にフィーディングチューブ(胃管)を用いてペプチド溶液を強制投与(1.0 g/kg体重)した。陰性対照として脱イオン水のみを投与した。
・コントロール:脱イオン水を6ml/kgの用量にて投与した。
・小麦グルテン加水分解物:HyPep 4601(Sigmaから入手)を脱イオン水に溶解し、1.0g/kgの用量にて投与した(図中WheatPと表示)。
・ラクトアルブミン加水分解物:Sigmaから入手したラクトアルブミン加水分解物(カタログ番号:L9010)を脱イオン水に溶解し、1.0g/kgの用量にて投与した(図中LactPと表示)。
上記各例の投与直後に給餌し、投与後1、2時間後にペントバルビタール麻酔下にて開腹し、門脈血を採取した。摂食量、血漿中コレシストキニン(CCK)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、ペプチドYY(PYY)濃度を測定した。各種消化管ホルモンの測定には市販ELISAキットを使用した。
(結果)
結果を図2(小麦由来ペプチド、ラクトアルブミン加水分解物投与後の食事摂取量)に示す。値は再給餌後の積算の摂食量の平均値+標準誤差(n=5〜6)を示す。同じアルファベットを付されていないバーの間には、同時間においてに有意差があることを示す(P<0.05、Tukey’s test)。
小麦ペプチド投与により2時間目まで、ラクトアルブミン加水分解物投与による1時間目までの摂食量低下が見られ、上記試験の再現性が得られた。
また、図3に、小麦由来ペプチド、ラクトアルブミン加水分解物投与後の門脈血中CCK、GLP−1、PYY濃度を示す。値は平均値+標準誤差(n=5〜6)を示す。同じアルファベットを付されていないバーの間には、有意差があることを示す(P<0.05、Tukey’s test)。
門脈血中CCK濃度は、1時間後では小麦ペプチド投与群、ラクトアルブミンペプチド投与群ともにコントロール群よりも高い値を示したが、2時間後では群間差は見られなかった。GLP−1濃度は、小麦ペプチド投与群で他の2群よりも高い傾向が見られた。PYY濃度は1時間後には群間差は見られなかったが、2時間後において小麦ペプチド投与群で他の2群よりも有意に高い値を示した。
(考察)
CCK、GLP−1およびPYYの消化管ホルモンは、いずれも食欲抑制作用を持つことが知られているが、CCKは上部小腸の消化管内分泌細胞I cellで産生、分泌され、食後前記の満腹感誘導に関与し、GLP−1、PYYは、下部小腸〜大腸にかけて分布する消化管内分泌細胞L cellにて産生、分泌され、食後後期の満腹感誘導に関与するといわれている。しかしながら、非特許文献9に記載されているように、GLP−1は食欲抑制と必ずしも挙動が一致しないことが知られており、GLP−1とPYYとの相関関係も必ずしも明らかでない等、実際の挙動は未解明な点も多い。しかしながら、本実施例で明確になった摂餌量低下と各ホルモン分泌亢進とのタイミングから、これらが一致するPYYが、小麦ペプチド投与による持続的な食欲抑制に対して寄与が大きいと考えられる。
(調製例1:Hypepと分解度が同程度のペプチド試作方法)
実施例1で用いた、Hypepと同様の調製物を酵素反応によって製造し得るかを本調製例では確認した。そして、以下の手順でHypepと分解度を同程度のペプチドが調製しうることが明らかになった。
・イオン交換水750gにNaOHを1.2g加え、溶解させた。
・攪拌しながらグルテン100gを添加し、分散させた。
・加温して分散液が55℃になったら、アルカラーゼ2.4L(novozyme社製)を0.2%(対グルテン)を添加して4時間反応させた。
・続けてプロテアーゼN(天野エンザイム社製;またはプロチンNY−100でもよい)を5.0%(対グルテン)添加して2時間反応させた。
・85℃で15分間加熱して酵素を失活させた。
・反応液を10分間、3000rpmにて遠心分離し、上清を得た。
・得られた上清を乾燥させた。
(結果)
その結果、この分解度が8.8%であり、Hypepと同程度の分解レベルを示すものが得られたことが示され、実施例1で用いられる小麦グルテン加水分解物として市販品に代えて酵素分解調製物を用いうることが示された。
(調製例2:Hypepと分解度が同程度のペプチド試作方法)
本例でも調製例1と同様に、実施例1で用いた、Hypepと同様の調製物を酵素反応によって製造し得るかを本調製例では確認した。そして、以下の手順でHypepと分解度が同程度のペプチドを調製しうることが明らかになった。
・イオン交換水750gにNaOHを1.2g加え、溶解させた。
・攪拌しながらグルテン100gを添加し、分散させた。
・加温して分散液が55℃になったら、アルカラーゼ2.4L(novozyme社製)を0.2%(対グルテン)を添加して4時間反応させた。
・続けてフレーバーザイム(novozyme社製)を0.1%(対グルテン)添加して1時間反応させた。
・85℃で15分間加熱して酵素を失活させた。
・反応液を10分間、3000rpmにて遠心分離し、上清を得た。
・上清を37℃にして、ペプシン(sigma社製)を0.5%(対上清中のペプチド)添加して1時間反応させた。
・さらにパンクレアチン(sigma社製)を4.0%(対上清中のペプチド)、トリプシン(sigma社製)を2.5%(対パンクレアチン)添加して2時間反応させた。
・100℃で20分間加熱して酵素を失活させた。
・反応液を10分間、3000rpmにて遠心分離し、上清を得た。
・得られた上清を乾燥させた。
(結果)
その結果、この分解度が8.8%であり、Hypepと同程度の分解レベルを示すものが得られたことが示され、実施例1で用いられる小麦グルテン加水分解物として市販品に代えて酵素分解調製物を用いうることが示された。
(実施例3:別の調製物での効果〜摂食抑制)
調製例1および2で調製した小麦グルテン加水分解物を、実施例1および2に記載されたプロトコールにしたがって、摂食抑制について試験する。
すなわち、Wistar ST系の雄性ラット(7〜8週齢)をAIN−93Gに準拠した 25% カゼイン食にて予備飼育(1週間)を行う。飼育期間中は暗期の12時間のみ食事を与える。
12時間絶食後にフィーディングチューブ(胃管)を用いてペプチド溶液を強制投与(1.0 g/kg体重)した。陰性対照として脱イオン水のみを投与する。
・コントロール:脱イオン水を6ml/kgの用量にて投与する。
・小麦グルテン加水分解物:調製例1または2で調製したサンプルを脱イオン水に溶解し、1.0g/kgの用量にて投与する。
・ラクトアルブミン加水分解物:Sigmaから入手したラクトアルブミン加水分解物(カタログ番号:L9010)を脱イオン水に溶解し、1.0g/kgの用量にて投与する。
摂食量については、これらの投与直後に給餌し、1、2、3、6、12時間後に摂食量を測定する。
(実施例4:別の調製物での効果〜PYY分泌活性化)
調製例1および2で調製した小麦グルテン加水分解物を、実施例1および2に記載されたプロトコールにしたがって、摂食抑制について試験する。
すなわち、Wistar ST系の雄性ラット(7〜8週齢)をAIN−93Gに準拠した25% カゼイン食にて予備飼育(1週間)を行う。飼育期間中は暗期の12時間のみ食事を与える。
12時間絶食後にフィーディングチューブ(胃管)を用いてペプチド溶液を強制投与(1.0 g/kg体重)した。陰性対照として脱イオン水のみを投与する。
・コントロール:脱イオン水を6ml/kgの用量にて投与する。
・小麦グルテン加水分解物:調製例1または2で調製したサンプルを脱イオン水に溶解し、1.0g/kgの用量にて投与する。
・ラクトアルブミン加水分解物:Sigmaから入手したラクトアルブミン加水分解物(カタログ番号:L9010)を脱イオン水に溶解し、1.0g/kgの用量にて投与する。
上記各例の投与直後に給餌し、投与後1、2時間後にペントバルビタール麻酔下にて開腹し、門脈血を採取する。摂食量、血漿中コレシストキニン(CCK)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、ペプチドYY(PYY)濃度を測定した。各種消化管ホルモンの測定には市販ELISAキットを使用する。
(調製例3:分解度の異なる小麦グルテン分解ペプチドの製造(1))
本例では、分解度の異なる小麦グルテン分解ペプチドを製造した。そして、以下の手順で分解度13.4%のペプチドを調製しうることが明らかになった。
・イオン交換水750gにNaOHを1.2g加え、溶解させた。
・攪拌しながらグルテン100gを添加し、分散させた。
・加温して分散液が55℃になった後に、アルカラーゼ2.4L(novozyme社製)を0.2%(対グルテン)を添加して4時間反応させた。
・上清を37℃にして、ペプシン(sigma社製)を4.0%(対上清中のペプチド)添加して3時間反応させた。
・さらにパンクレアチン(sigma社製)を6.0%(対上清中のペプチド)、トリプシン(sigma社製)を2.5%(対パンクレアチン)添加して4時間反応させた。
・100℃で20分間加熱して酵素を失活させた。
・反応液を10分間、3000rpmにて遠心分離し、上清を得た。
・得られた上清を乾燥させた。
(結果)
その結果、TNBS法によって算出したところ分解度13.4%のものが得られたことが示された。
(調製例4:分解度の異なる小麦グルテン分解ペプチドの製造(2))
本例では、分解度の異なる小麦グルテン分解ペプチドを製造した。そして、以下の手順で分解度17.1%のペプチドを調製しうることが明らかになった。
・イオン交換水750gにNaOHを1.2g加え、溶解させた。
・攪拌しながらグルテン100gを添加し、分散させた。
・加温して分散液が55℃になった後、アルカラーゼ2.4L(novozyme社製)を0.2%(対グルテン)を添加して4時間反応させた。
・上清を37℃にして、ペプシン(sigma社製)を4.0%(対上清中のペプチド)添加して3時間反応させた。
・さらにパンクレアチン(sigma社製)を6.0%(対上清中のペプチド)、トリプシン(sigma社製)を2.5%(対パンクレアチン)添加して4時間反応させた。
・続けてフレーバーザイム(novozyme社製)を1.5%(対グルテン)添加して1時間反応させた。
・100℃で20分間加熱して酵素を失活させた。
・反応液を10分間、3000rpmにて遠心分離し、上清を得た。
・得られた上清を乾燥させた。
(結果)
その結果、TNBS法によって算出したところ分解度17.1%のものが得られたことが示された。
調製例3および4で調製したものは以下の実施例で用いた。
(実施例5:分解度の異なる小麦グルテン分解ペプチドによる食欲抑制作用の検討)
本実施例では、調製例3および4で調製した分解度の異なる小麦グルテン分解ペプチドの食欲抑制効果を検討した。
実施例1および2に記載されたプロトコールにしたがって、摂食抑制について試験した。
すなわち、Wistar ST系の雄性ラット(7〜8週齢)をAIN−93Gに準拠した25% カゼイン食にて予備飼育(1週間)を行った。飼育期間中は暗期の12時間のみ食事を与えた。
12時間絶食後にフィーディングチューブ(胃管)を用いてペプチド溶液を強制投与(1.0 g/kg体重)した。陰性対照として脱イオン水のみを投与した。
・コントロール:脱イオン水を6ml/kgの用量にて投与した。
・小麦グルテン加水分解物:調製例3で調製したサンプル(小麦グルテン加水分解物A(図4では、GluHyd Aと表記):分解度13.4%、平均分子量(TNBS法より算出):436.7)または調製例4で調製したサンプル(小麦グルテン加水分解物B フレーバーザイムあり(図4では、GluHyd Bと表記):分解度17.1%、平均分子量(TNBS法より算出):558.7)を脱イオン水に溶解し、1.0g/kgの用量にて投与した。
摂食量については、これらの投与直後に給餌し、1、2、3および6時間後に摂食量を測定した。
(結果)
結果を図4に示す。図4では、値は再給餌後の積算の摂食量および標準誤差を示す。
両グルテン加水分解物により、2時間目まで有意な摂食量の低下が見られた。グルテン加水分解Bでは、3時間目の摂食量も水投与に比べ有意に低い値を示したが、両加水分解物の作用に明確な違いは見られなかった。加えて、6時間目でも統計学的有意差とまではいかないものの摂食量の抑制の傾向が示された。6時間より後での摂食実験も試みたが、結果の判断に十分なデータが取れなかったため、再検討する予定である。
(実施例6:小麦グルテン自体の食欲抑制作用の検討)
本実施例では、小麦グルテン自体の食欲抑制効果も検討した。
実施例1および2に記載されたプロトコールにしたがって、摂食抑制について試験した。
すなわち、Wistar ST系の雄性ラット(7〜8週齢)をAIN−93Gに準拠した25% カゼイン食にて予備飼育(1週間)を行った。飼育期間中は暗期の12時間のみ食事を与えた。
12時間絶食後にフィーディングチューブ(胃管)を用いてペプチド溶液および小麦グルテン懸濁液を強制投与(1.0 g/kg体重)した。陰性対照として脱イオン水のみを投与した。
・コントロール:脱イオン水を12ml/kgの用量にて投与した(グルテン懸濁液調製のため6ml/kgより増量した)。
・小麦グルテン加水分解物:実施例1等で用いた小麦グルテン加水分解物(HyPep4601、Sigma)を脱イオン水に溶解し、1.0g/kgの用量にて投与した。
・小麦グルテン:グルテン(グリコ栄養食品から入手した)を脱イオン水に懸濁し、1.0g/kgの用量にて投与した。
摂食量については、これらの投与直後に給餌し、1、2、3、6および12時間後に摂食量を測定した。
(結果)
結果を図5に示す。図5では、値は再給餌後の積算の摂食量および標準誤差を示す。実施例1および2同様、小麦グルテン加水分解物(HyPep)投与による摂食量の低下が確認された。未分解のグルテン投与では、いずれの時点においても、統計学的有意差はないものの、摂食量の低下傾向がみられた。2時間後、6時間後を含め、測定した時点ではいずれも、小麦グルテン自体は、摂食量の低下効果のある小麦グルテン加水分解物と同程度の摂食量であった。
(実施例7:医薬:錠剤の製剤例)
本発明により同定した、有効成分(例えば、小麦グルテン、調製例1〜4で調製した小麦グルテン加水分解物または市販のHypep 4601等)について、常法により次の組成からなる錠剤を製造する。
本発明の有効成分 100mg
乳 糖 60mg
馬鈴薯でんぷん 30mg
ポリビニルアルコール 2mg
ステアリン酸マグネシウム 1mg
タール色素 微量。
このような錠剤を用いて摂食抑制の有意な効果があるかを確認することができる。
(実施例8:液剤の製剤例)
塩化ナトリウム 0.9g
本発明の有効成分(小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物)
5g
精製水 100ml
以上の固形成分を精製水に溶解または懸濁して液剤とする。
このような液剤を用いて摂食抑制の有意な効果があるかを確認することができる。
(実施例9:食品の例1)
本実施例では、食品の応用例として、一定期間摂取させる食品形態を実施する。以下のその調合例を示す。
本発明の有効成分(小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物)
5g
クエン酸 0.03g
スクラロース 0.005g
香料 適量
精製水 100ml。
このような食品例を用いて摂食抑制の有意な効果があるかを確認することができる。
(実施例10:食品の例2)
本実施例では、食品の応用例として、スポンジケーキを実施する。以下のその調合例を示す。スポンジケーキは定法により製造する。
本発明の有効成分(小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物)
15g
バター 15g
小麦粉 100g
鶏卵 120g
砂糖 100g
水 40g。
このような食品例を用いて摂食抑制の有意な効果があるかを確認することができる。
(実施例11:食品の例3)
本実施例では、食品の応用例として、ソーセージを実施する。以下のその調合例を示す。ソーセージは定法により製造する。
本発明の有効成分(小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物)
6g
豚ミンチ肉 100g
食 塩 3g
硝 石 0.1g
香 辛 料 0.5g
このような食品例を用いて摂食抑制の有意な効果があるかを確認することができる。
(実施例12:飼料例1)
本実施例では、飼料の応用例を実施する。以下のその調合例を示す。この飼料は定法により製造する。
本発明の有効成分(小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物)
3%
とうもろこし 95%
大麦 2%
このような飼料例を用いて摂食抑制の有意な効果があるかを確認することができる。
(実施例13:飼料例2)
本実施例では、飼料の応用例を実施する。以下のその調合例を示す。この飼料は定法により製造する。
本発明の有効成分(小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物)
20%
米ぬか 50%
コーングルテンフィード 30%
このような飼料例を用いて摂食抑制の有意な効果があるかを確認することができる。
(実施例14:飼料例3)
本実施例では、飼料の応用例を実施する。以下のその調合例を示す。この飼料は定法により製造する。
本発明の有効成分(小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物)
20%
脱脂粉乳 80%
このような飼料例を用いて摂食抑制の有意な効果があるかを確認することができる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明は、医薬、食品、飼料等として、食欲抑制作用あるいはPYYの分泌活性剤として、利用することができ、製薬、食品産業、農業等において利用可能である。

Claims (30)

  1. 小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む、摂食抑制剤。
  2. 小麦グルテン加水分解物を含む、請求項1に記載の摂食抑制剤。
  3. 食後後期の摂食抑制のために用いられる、請求項1に記載の摂食抑制剤。
  4. 食後2〜12時間後を含む期間の摂食抑制のために用いられる、請求項1に記載の摂食抑制剤。
  5. 食後6〜12時間後を含む期間の摂食抑制のために用いられる、請求項1に記載の摂食抑制剤。
  6. 食後2〜6時間後を含む期間の摂食抑制のために用いられる、請求項1に記載の摂食抑制剤。
  7. 食後3〜6時間後を含む期間の摂食抑制のために用いられる、請求項1に記載の摂食抑制剤。
  8. 前記小麦グルテン加水分解物は小麦グルテン加水分解ペプチドを含む、請求項2に記載の摂食抑制剤。
  9. 前記小麦グルテン加水分解物はCAS100684−25−1で特定される、請求項2に記載の摂食抑制剤。
  10. 前記小麦グルテン加水分解物は、分解レベルが5〜30%である小麦グルテン加水分解ペプチドを含む、請求項2に記載の摂食抑制剤。
  11. 請求項1に記載の摂食抑制剤を含む医薬。
  12. 請求項1に記載の摂食抑制剤を含む食品。
  13. 請求項1に記載の摂食抑制剤を含む飼料。
  14. 摂食抑制するための、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物。
  15. 小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を提供することを包含する、摂食抑制法。
  16. 小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む、摂食抑制のための組成物。
  17. 小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む、ペプチドYY(PYY)分泌活性化剤。
  18. 小麦グルテン加水分解物を含む、請求項17に記載のPYY分泌活性化剤。
  19. 前記小麦グルテン加水分解物は小麦グルテン加水分解ペプチドを含む、請求項18に記載のPYY分泌活性化剤。
  20. 前記小麦グルテン加水分解物はCAS100684−25−1で特定される、請求項18に記載のPYY分泌活性化剤。
  21. 前記小麦グルテン加水分解物は、分解レベルが5〜30%である小麦グルテン加水分解ペプチドを含む、請求項18に記載のPYY分泌活性化剤。
  22. 請求項17に記載のPYY分泌活性化剤を含む医薬。
  23. 請求項17に記載のPYY分泌活性化剤を含む食品。
  24. 請求項17に記載のPYY分泌活性化剤を含む飼料。
  25. PYY分泌を活性化するための、小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物。
  26. 小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を提供することを包含する、ペプチドYY(PYY)分泌活性化方法。
  27. 小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む、ペプチドYY(PYY)分泌活性化のための組成物。
  28. 小麦グルテンまたは小麦グルテン加水分解物を含む医薬。
  29. 摂食抑制のため、またはPYY分泌活性化のための請求項28に記載の医薬。
  30. 請求項2〜10のいずれか1項の特徴をさらに含む、請求項28に記載の医薬。
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