JP2013080737A - 太陽電池モジュール用裏面保護シート及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】裏面保護シートの基材層上に形成する密着強化層を高密度ポリエチレン系樹脂に電離放射線を照射して架橋処理された架橋樹脂によって形成することにより密着性と意匠性の両立を可能にする。
【選択図】図3
Description
先ず、太陽電池モジュール用裏面保護シートが使用される本発明の太陽電池モジュールの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態である太陽電池モジュ−ル1について、その層構成の一例を例示する断面の模式図である。図1に示すように、太陽電池モジュール1は、受光面側から、透明前面基板2、前面封止材層3、太陽電池素子4、背面封止材層5、裏面保護シート6が順に積層された構成となっている。本発明の実施形態である裏面保護シート6は、このように太陽電池モジュール1において最外層に配置されるものであるため、高い耐候性を備えることが必須となっており、且つ、消費者等の目にふれる部位でもあるため、意匠性についても、上記課題を解決した優れたものであることが求められる。
本発明の裏面保護シートの実施形態である裏面保護シート6を図2を用いて説明する。裏面保護シート6は、基材層61と、密着強化層62とを備える積層体である。密着強化層62は、太陽電池モジュール1において裏面保護シート6が背面封止材層5と密着する側の最外層に配置される。
基材層61としては、樹脂材料をシート状に成型した樹脂シートを用いる。このような樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等、各種の樹脂シートを用いることができる。これらの樹脂シートの中でも、特に、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンナフタレートが好ましく使用される。中でも、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート又は二軸延伸ポリプロピレン系樹脂のフィルム又はシートが特に好ましい。なお、本明細書では、これらの樹脂をシート状に加工したものの名称として樹脂シートという用語を使用するが、この用語は、樹脂フィルムも含む概念として使用される。これらは単独層であってもよく、従来公知の密着剤等で積層された複数層からなる積層体であってもよい。
密着強化層62は、裏面保護シート6の一方の最外層に配置される層であり、太陽電池モジュール1において、背面封止材層5との密着面となり、裏面保護シート6と背面封止材層5との間の密着性を向上させる機能を備える層である。一般に背面封止材層5は、エチレン−酢酸ビニルアルコール共重合体樹脂(EVA樹脂)、又はポリエチレン系樹脂からなるため、密着強化層62は、これらの樹脂との間に高い密着性を備えるものであることが求められる。更に、密着強化層62は、材料樹脂に所定の照射量の電離放射線照射による架橋処理(以下「電離放射線架橋処理」とも言う。)を行ったものであるため、電離放射線架橋処理時に発生する熱によるシートの変形や着色等を回避するため、一定密度以上の樹脂であることも望まれる。以上より、密着強化層62を形成する材料樹脂としては、高密度ポリエチレンを用いることができる。本明細書において、高密度ポリエチレンとは、密度が0.940g/cm3以上のポリエチレン系樹脂のことを言う。中でも、流動性と密着性の観点から、密度が0.945g/cm3以上0.970g/cm3以下の高密度ポリエチレンを好ましく用いることができる。密着強化層62の材料樹脂として用いる高密度ポリエチレン系樹脂の密度が0.940g/cm3未満であると、架橋処理を施したとしても下記に説明する外観不良を充分に防ぐことができず、又、密度が0.970g/cm3を超えると、架橋処理後に密着性が不充分となるため好ましくない。
裏面保護シート6には、本発明の効果を害さない範囲で、その他の層を設けてもよい。例えば、基材層61の密着強化層62の形成されている面と反対側の面、即ち、太陽電池モジュール1における最外層側に、例えばETFEに代表されるフッ素系樹脂からなる耐候性の高い耐候層(図示せず)を設けてもよいし、基材層61と密着強化層62の間に、例えばアルミ箔等、裏面保護シート6の強度を増すための他の透明な補強層(図示せず)を設けてもよい。
本発明の裏面保護シートの製造方法について説明する。裏面保護シート6は、高密度ポリエチレン樹脂を含有し、密着強化層62を形成する密着性樹脂シートに電離放射線を照射して架橋処理を行う架橋工程と、架橋工程を経た密着性樹脂シートと、基材層61を形成する基材樹脂シートを積層して一体化する一体化工程とを経ることによって製造することができる。
本発明の裏面保護シートの製造方法においては、製膜された上記の密着性樹脂シートに、所定量の電離放射線を照射して架橋処理を行う。架橋工程は、電子線(EB)、α線、β線、γ線、中性子線等の電離放射線によって行うが中でも電子線を使用することが好ましい。電子線照射における加速電圧は、被照射体である密着性樹脂シートの厚みによって決まり、厚いシートほど大きな加速電圧を必要とする。例えば、0.5mm厚みのシートでは100kV以上、好ましくは200kV以上で照射する。加速電圧がこれより低いと架橋が充分に行われない。照射線量は51〜500kGy、好ましくは80〜300kGyの範囲である。照射線量が50kGy以下であると充分な架橋が行われず、また500kGyを超えると発生する熱によるシートの変形や着色等が懸念されるようになる。なお、両面側から照射してもよい。また、照射は大気雰囲気下でもよく窒素雰囲気下であってもよい。
上記において説明した基材樹脂シート、上記架橋工程を経た密着性樹脂シート、及び必要に応じてその他の層を形成するシートを積層して、更に一体化することにより、本発明の裏面保護シート6を得ることができる。各シートの一体化は従来公知のドライラミネート法によることができる。ラミネート接着剤は従来公知のものが利用でき特に限定されず、ウレタン系、エポキシ系等の主剤と硬化剤とからなる2液硬化型のドライラミネート接着剤等が適宜使用可能である。尚、裏面保護シート6は、上記密着性樹脂シートを未架橋の状態で他の基材とこの一体化工程によって一体化した後に、上記架橋工程を施すことによっても製造することができる。そのような製造方法も当然に本発明の範囲である。
太陽電池モジュール1は、例えば、上記の透明前面基板2、前面封止材層3、太陽電池素子4、背面封止材層5、及び裏面保護シート6からなる部材を順次積層してから真空吸引等により一体化し、その後、ラミネーション法等の成形法により、上記の部材を一体成形体として加熱圧着成形して製造することができる。例えば真空熱ラミネート加工による場合、ラミネート温度は、130℃〜180℃の範囲内とすることが好ましい。また、ラミネート時間は、5〜20分の範囲内が好ましく、特に8〜15分の範囲内が好ましい。このようにして、上記各層を一体成形体として加熱圧着成形して、太陽電池モジュ−ル1を製造することができる。
図4は、電離放射線の照射による架橋処理を行っていない高密度ポリエチレンを密着性樹脂シートの材料樹脂とした従来の一般的な裏面保護シート7を用いて、真空熱ラミネート加工により製造した太陽電池モジュールの、裏面保護シート7側から見た外観の模式図である。又、図6は、後に詳細を実施例(比較例1:EVA封止材を使用)で示す通りの条件で、実際に上記の従来の一般的な裏面保護シートを用いて作成した太陽電池モジュールの積層サンプルを裏面保護シート側から撮影した写真である。図6から明らかであり、又図4に示す通り、従来の一般的な裏面保護シート7を従来の一般的な加工方法によって太陽電池モジュールとした場合、裏面保護シート7の端部71の部分に中央部72と明度の異なるプレス跡が見られ、表面の明度の不均一性が見られる。これは、上記真空熱ラミネート加工時に、流動性の高い状態にある裏面保護シート7に対して、積層される前面ガラス基板の端部周辺において過剰な圧力がかかることによるものであると考えられる。
以下の基材樹脂シート1及び2、密着性樹脂シート、を順次積層し、ドライラミネート加工により一体化して、各実施例、比較例の裏面保護シート試料となる予備シートを製造した。
基材樹脂シート1:白耐加水分解性PET(帝人デュポン社製、「VW」)厚さ50μm
基材樹脂シート2:PETフィルム(帝人デュポン社製、「Melinex S」)厚さ188μm
密着性樹脂シート:高密度ポリエチレン(プライムポリマー社製「HI−ZEX(HDPE)7000F」)に、酸化チタン(Dupont Ti−pure R105)を混錬して得た組成物(酸化チタンの組成物中の含有量は8質量%とした)を溶融押出しにより60μmに成型して得た白色高密度ポリエチレンフィルムを用いた。
実施例1〜3、比較例1〜2のそれぞれの裏面保護シート試料について、上記架橋済みの密着性樹脂シート側の表面に、試料と同サイズにカットした下記の封止材シート1又は2を150℃で15分間、太陽電池モジュールの製造用の真空ラミネータを用いてラミネートし、密着性評価用のサンプルとした。
封止材シート1(表1において「EVA」と表記):EVA高速架橋タイプ、厚さ500μm(ブリヂストン社製)
封止材シート2(表2において「PE」と表記):下記のシラン変性透明樹脂と耐候性マスターバッチと重合開始剤コンパウンド樹脂の質量比が20:5:80となるようにブレンドした樹脂を押し出し温度210℃で厚さ200μmになるように成膜した弱架橋性を有するLLDPE樹脂:ラミネート条件150℃で15分間圧着。
シラン変性透明樹脂:密度0.881g/cm3であり、190℃でのMFRが2g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)98質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.1質量部とを混合し、200℃で溶融、混練し、密度0.884g/cm3、190℃でのMFRが1.8g/10分であるシラン変性透明樹脂。
耐候性マスターバッチ:密度0.880g/cm3のチーグラー直鎖状低密度ポリエチレンを粉砕したパウダー100質量部に対して、ベンゾフェノール系紫外線吸収剤3.8質量部とヒンダードアミン系光安定化剤5質量部と、リン系熱安定化剤0.5質量部とを混合して溶融、加工し、ペレット化したマスターバッチ。
重合開始剤コンパウンド樹脂:密度0.880g/cm3、190℃でのMFRが3.1g/10分のM−LLDPEペレット100質量部に対して、t−アミル−パーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート0.1質量部を含浸させコンパウンドペレットした樹脂。
(初期密着性試験:剥離試験)
各密着性評価用のサンプルについて、剥離強度(N)を15mm幅の180度ピールにて密着性について密着強度を測定した。測定には、剥離試験装置(「株式会社エー・アンド・デイ」社製、商品名「TENSILON RTA−1150−H」)を用いて、180度ピールにて剥離条件50mm/minで23℃にて測定を行い、3回の測定の平均値を採用した。実際に、上記剥離が見られない場合は、結果を「>100N」とした。結果を表1に示す。
[評価基準]
○:密着強度が50N/15mm以上のものを好ましいものとして評価した。
×:密着強度が20N/15mm未満のものを好ましいものを好ましくないものとして評価した。
ガラス基板(強化ガラス75mm×50mm×3.3mm)上に同サイズの上記封止材シート1又は2を置き、その上に75mm×100mmにカットした実施例1〜3、比較例1〜3の裏面保護シート試料を積層し、150℃で15分間、太陽電池モジュールの製造用の真空ラミネータを用いてラミネートして一体化処理し、意匠性評価用のサンプルとした。
(意匠性評価試験)
上記意匠性評価用のサンプルを裏面保護シート試料側を表向きにビュアー(HAKUBA製ライトビュアー7000PRO)上に載置し、裏面保護シート試料側の中央部と端部における明度の均一性を濃度計(グレタグマクベス)による明度測定によって評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
○:中央部と端部の明度(L)の差が0.3未満のものを好ましいものとして評価した。
×:中央部と端部の明度(L)の差が0.3以上のものを好ましくないものとして評価した。
2 透明前面基板
3 前面封止材層
4 太陽電池素子
5 背面封止材層
6 裏面保護シート
61 基材層
62 密着強化層
63 中央部
64 端部
Claims (5)
- 基材層と、
最外層に配置される密着強化層と、を含む複数の層からなる太陽電池モジュール用裏面保護シートであって、
前記密着強化層は、高密度ポリエチレンに電離放射線を照射して架橋処理された架橋樹脂を含有してなる太陽電池モジュール用裏面保護シート。 - 太陽電池モジュールの受光面側から、
透明前面基板と、
前面封止材と、
太陽電子素子と、
背面封止材と、
請求項1に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートと、が順次積層され、一体化されている太陽電池モジュール。 - 前記背面封止材が、エチレン−酢酸ビニルアルコール共重合体樹脂又はポリエチレン系樹脂である請求項2に記載の太陽電池モジュール。
- 前記太陽電池モジュール用裏面保護シートの最外層側の全表面において、明度(L)が最も高い部分と明度(L)が最も低い部分の明度(L)の差が0.3未満である請求項2又は3に記載の太陽電池モジュール。
- 太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造方法であって、
高密度ポリエチレン樹脂を含有し、前記密着強化層を形成する密着性樹脂シートに電離放射線を照射して架橋処理を行う架橋工程と、
前記密着性樹脂シートと、前記基材層を形成する基材樹脂シートを積層して一体化する一体化工程と、を備え、
前記架橋工程における電離放射線の照射量が80kGy以上300kGy以下であることを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造方法。
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