以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。なお、本発明は、電子写真方式を採用し中間転写ベルトを備える画像形成装置、例えばコピー機、プリンタ、ファクシミリ、これらの機能を備える複合機等に適用することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の構造を示す正面断面図である。画像形成装置1は、装置本体11に、画像形成部12、定着装置13、給紙部14、用紙排出部15、および原稿読取部16等を備えて構成されている。
装置本体11は、下部本体111と、この下部本体111の上方に対向配置された上部本体112と、この上部本体112と下部本体111との間に介設された連結部113とを備えている。連結部113は、下部本体111と上部本体112との間に用紙排出部15を形成させた状態で両者を互いに連結するための構造物であり、下部本体111の左部および後部から立設され、平面視でL字状を呈している。上部本体112は、連結部113の上端部に支持されている。
下部本体111には、画像形成部12、定着装置13および給紙部14が内装されているとともに、上部本体112には原稿読取部16が装着されている。給紙部14は、装置本体11に対して挿脱可能の給紙カセット142を有している。この給紙カセット142には用紙Pが積層されてなる用紙束P1が収容されている。なお、本実施形態では、給紙カセット142は1段で設けられているが、2段以上設けてもよい。また下部本体111には、装置本体11に対する通電のON−OFFを切り替える電源スイッチ10と、装置本体11内の温度を検知する温度センサ60(温度検知手段)とが備えられている。
画像形成部12は、給紙部14から給紙された用紙Pにトナー像を形成する画像形成動作を行う。画像形成部12は、上流側から下流側へ向けて水平に順次配設された、マゼンタ色のトナーを用いるマゼンタ用現像ユニット12M、シアン色のトナーを用いるシアン用現像ユニット12C、イエロー色のトナーを用いるイエロー用現像ユニット12Yおよびブラック色のトナーを用いるブラック用現像ユニット12Bk(以下、各現像ユニットを区別することなく述べる場合には、それぞれを「現像ユニット120」と言う)と、駆動ローラー125A(張架ローラー)等の複数のローラー間に画像形成における副走査方向へ無端走行可能に張架された中間転写ベルト125と、中間転写ベルト125が駆動ローラー125Aに張架される部分で中間転写ベルト125の外周面に当接する二次転写ローラー196と、ベルトクリーニング装置198と、を備えている。
各現像ユニット120は、感光体ドラム121(像担持体)と、感光体ドラム121へトナーを供給する現像装置122と、トナーを収容するトナーカートリッジ(不図示)と、帯電装置123とドラムクリーニング装置127と、をそれぞれ一体的に備えている。また、隣接する現像ユニット120の下方には、それぞれの感光体ドラム121を露光するための露光装置124が水平に配置されている。
感光体ドラム121は、その周面に静電潜像およびこの静電潜像に沿ったトナー像を形成する。現像装置122は、感光体ドラム121へトナーを供給する。各現像装置122には、前記トナーカートリッジからトナーが適宜補給される。
帯電装置123は、各感光体ドラム121の直下位置にそれぞれ設けられている。露光装置124は、各帯電装置123の下方位置に設けられている。帯電装置123は、各感光体ドラム121の周面を一様に帯電させる。露光装置124は、コンピューター等から入力された画像データや原稿読取部16が取得した画像データに基づく各色に対応したレーザー光を、帯電後の感光体ドラム121の周面に照射し、各感光体ドラム121の周面に静電潜像を形成する。現像装置122は、矢印の方向へ回転する感光体ドラム121の周面の静電潜像にトナーを供給して当該トナーを積層させ、感光体ドラム121の周面に前記画像データに応じたトナー像を形成する。
ドラムクリーニング装置127は、各感光体ドラム121の左方位置に設けられ、感光体ドラム121の周面の残留トナーを除去してクリーニングする。このドラムクリーニング装置127によってクリーニングされた感光体ドラム121の周面は、新たな帯電処理のために帯電装置123へ向かう。
画像形成部12の左方位置には、上下方向に延びる用紙搬送路190が形成されている。用紙搬送路190には、適所に搬送ローラー対192が設けられ、搬送ローラー対192は、給紙部14から繰り出された用紙Pを、二次転写ローラー196を有する二次転写ニップ部へ向けて搬送する。
定着装置13は、内部に加熱源であるハロゲンランプなどの通電発熱体を備えた加熱ローラー132と、加熱ローラー132に対向配置された加圧ローラー134と、を備えている。定着装置13は、画像形成部12で転写された用紙P上のトナー像に対し、用紙Pが加熱ローラー132と加圧ローラー134との間の定着ニップ部を通過する間に加熱ローラー132から熱を与えて定着処理を施す。定着処理の完了したカラー印刷済みの用紙Pは、定着装置13の上部から延設された排紙搬送路194を通って装置本体11の頂部に設けられた排紙トレイ151へ向けて排出される。
給紙部14は、装置本体11の図1における右側壁に開閉自在に設けられた手差しトレイ141と、装置本体11内における露光装置124より下方位置に挿脱可能に装着された給紙カセット142とを備えている。
手差しトレイ141は、下部本体111の右面の下方位置に設けられた、用紙Pを1枚ずつ手差し操作で画像形成部12へ向けて給紙するためのトレイである。給紙カセット142は、複数枚の用紙Pが積層されてなる用紙束P1を収容する。給紙カセット142の上方には、ピックアップローラー143が設けられ、ピックアップローラー143は、給紙カセット142に収容された用紙束P1の最上位の用紙Pを用紙搬送路190へ向けて繰り出す。
用紙排出部15は、下部本体111と上部本体112との間に形成されている。用紙排出部15は、下部本体111の上面に形成された排紙トレイ151を備える。排紙トレイ151は、画像形成部12でトナー像が形成された用紙Pが、定着装置13で定着処理が施された後に排出されるトレイである。
原稿読取部16は、上部本体112の上面開口に装着された、原稿を載置するためのコンタクトガラス161と、このコンタクトガラス161に載置された原稿を押さえる開閉自在の原稿押さえカバー162と、コンタクトガラス161に載置された原稿の画像を走査して読み取る走査機構163とを備えている。走査機構163は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサを用いて原稿の画像を光学的に読み取り、画像データを生成する。また、装置本体11は、この画像データから作像画像を生成する画像処理部(不図示)を有する。
図2は、本実施形態に係る中間転写ベルト125周辺の断面構造を示す図である。中間転写ベルト125は、無端のベルトであって、基層、弾性層、及びコート層から成る積層構造を有する導電性の軟質ベルトである。前記基層は中間転写ベルト125の最下層(最内層)を構成するものであり、前記コート層が最上層(最外層)を構成し、感光体ドラム121と接触する。基層は、例えばPVDF(ポリフッ化ビニリデン)やポリイミド樹脂等が好適に用いられる。弾性層は、中間転写ベルト125に適度な弾性を付与する。弾性層の材質としては、例えばヒドリンゴムやクロロプレンゴム、ポリウレタンゴム等が用いられる。コート層は弾性層を保護するものであり、材質としてはアクリル、シリコン、フッ素樹脂等が用いられる。なお、中間転写ベルト125としては、基層を含まない構成や、基層、弾性層、コート層以外の他の層を含む構成であっても良い。また、積層構造に限らず弾性層のみの単層構造が選択されても良い。
ここで、中間転写ベルト125に弾性層を設けることで中間転写ベルト125の用紙Pへの追従性が向上する。従って、用紙Pへのトナー画像の転写性が高くなり、用紙Pに二次転写されたトナー画像の画質を向上させることができる。一方、このような弾性層を有する中間転写ベルト125では、前述の転写ニップ部A(図9)において当該弾性層が圧縮されることから、ベルトしわWが発生しやすい。
本実施形態における中間転写ベルト125は、画像形成部12(図1)の上方において、略水平方向に配置された複数の張架ローラーに掛け回されている。張架ローラーは、定着装置13の近傍に配置され中間転写ベルト125を回転駆動する駆動ローラー125Aと、駆動ローラー125Aに対して水平方向に所定間隔を置いて配設され従動回転するテンションローラー125Eと、テンションローラー125Eの左斜め下方に配置された支持ローラー125Dと、駆動ローラー125Aの右斜め下方に配置され中間転写ベルト125に張力を与える従動ローラー125Bとを含む。
中間転写ベルト125は、駆動ローラー125Aに回転駆動力が与えられることにより、図中に矢印で示す通り時計方向に周回駆動される。中間転写ベルト125の周回経路でみて、中間転写ベルト125は、駆動ローラー125Aとテンションローラー125Eとの間の上面側に水平上面部Xを形成し、テンションローラー125Eで折り返され、支持ローラー125Dと従動ローラー125Bとの間で水平下面部Yを形成し、駆動ローラー125Aで折り返されている。
水平下面部Yの下方には、各色トナーに対応して、円筒形からなる感光体ドラム121Bk、121Y、121C、121Mが水平に隣接配置されており、それぞれ中間転写ベルト125に対向している。また、中間転写ベルト125の水平下面部Yにおいて中間転写ベルト125を内方から支持する一次転写ローラー126(転写ローラー)が、各感光体ドラム121に対向するようにそれぞれ配設されている。
中間転写ベルト125を挟んで、駆動ローラー125Aの外側には、対向配置された二次転写ローラー196が配設されている。二次転写ローラー196と駆動ローラー125Aとの間に印加される転写電圧によって、中間転写ベルト125上に形成されたトナー画像は、下方の搬送ローラー対192から搬送された用紙Pに転写される。
駆動ローラー125Aの上方には、定着装置13(加熱ローラー132、加圧ローラー134)が配設されている。駆動ローラー125Aは上記張架ローラーの中で最も定着装置13に近い位置に配置されていることから、加熱ローラー132から輻射される熱によって加熱される。
テンションローラー125Eの外側には、中間転写ベルト125を介して、対向配置されるベルトクリーニング装置198が配設されている。ベルトクリーニング装置198は、二次転写ローラー196によって用紙Pに二次転写が行われた後に、中間転写ベルト125上に残存したトナーをクリーニングする。
なお、本実施形態における中間転写ベルト125周りの構成は、4色の画像を形成するフルカラーモードと、ブラック色のみの画像を形成するモノクロ印字モードとに対応しており、図2はモノクロ印字モードにおける各ローラーの位置関係を示している。この場合、支持ローラー125Dおよび一次転写ローラー126Y、126C、126Mは、所定の距離だけ上方(中間転写ベルト125の内方)に退避しており、イエロー、シアン、マゼンタの3色については、感光体ドラム121と一次転写ローラー126による押圧力(ニップ)が中間転写ベルト125には加えられていない。
また、ブラック位置の感光体ドラム121Bkと、一次転写ローラー126Bkの接触状態を安定して維持するために、水平下面部Yにおいて、ブラックの感光体ドラム121Bkとイエローの感光体ドラム121Yとの間に支持ローラー125Cが配置されている。支持ローラー125Cは、モノクロ印字モードにおいて、中間転写ベルト125をその内面側から支持する。
なお、フルカラー画像形成時には、支持ローラー125Dおよび、一次転写ローラー126Y、126C、126Mは、この退避位置から、下方に移動し、一次転写ローラー126Y、126C、126Mはそれぞれ感光体ドラム121Y、121C、121Mとの間で一次転写ニップ部を形成する。
以下、本実施形態の画像形成装置1を、図2のモノクロ印字モードにおける構成、動作にて説明する。本発明は、モノクロ印字モードに限るものではなく、フルカラーモードにおいても適用されるものである。
図3〜図5を用いて、第1の実施形態に係る中間転写ベルト125の動作、制御について説明する。図3は、中間転写ベルト125における、ブラック色の一次転写ニップ部Aから駆動ローラー125A周辺までの拡大断面図である。また、図4は中間転写ベルト125の停止制御に関わる電気的構成を示すブロック図であり、図5は中間転写ベルト125の停止制御に関するフローチャートである。
前述のとおり、本実施形態に係る中間転写ベルト125は、弾性層を有する軟質ベルトから構成されている。このような比較的柔らかいベルトは、図3に示す一次転写ニップ部Aにおいて、感光体ドラム121Bkおよび一次転写ローラー126Bkによって挟持され続けると、図9(b)に示すように、被ニップ部Nの周辺部分GにベルトしわWを生じることがある。このようなベルトしわWは、たとえば、1昼夜から数日の間、画像形成動作が行われなかった場合などに発生し、その状態のまま画像形成を行った場合などに発生しうる。
そこで、本実施形態では、このように連続して所定期間、画像形成が行われなかった場合に、画像形成動作に先立って、ベルト駆動制御部312(図4)が、ベルト駆動手段400によって中間転写ベルト125を回転させる。
ベルト駆動手段400は、回転駆動力を発生させるステッピングモーター401と、このステッピングモーター401の出力軸に接続された回転ギア402とを含む。回転ギア402に伝達された回転駆動力は、張架ローラーである駆動ローラー125Aに伝達され、駆動ローラー125Aの外周面と、中間転写ベルト125の内周面との間における摩擦力によって、中間転写ベルト125が回転駆動される。
また、ブラック色の一次転写ニップ部Aよりも中間転写ベルト125の周回方向下流側であって、そのベルト表面に対向する部分には、表面情報取得手段として、ベルト表面形状を検知する光センサ50(表面形状検知手段)が配設されている。光センサ50には、回転駆動された中間転写ベルト125のベルト表面に光を発光する発光部と、該ベルト表面からの反射光を受光する受光部とを備える(不図示)。ベルトしわWがないベルト表面に比べて、ベルトしわWを有するベルト表面では、光センサ50の発光部から照射された光が乱反射するため、光センサ50の受光部が受光する反射光量が少なくなる。このため、光センサ50によって、中間転写ベルト125表面におけるベルトしわWの有無が検知可能となる。
上記光センサ50によって中間転写ベルト125上のベルトしわWが検知された場合には、後述する判定部316において、ベルトしわWの修復動作の要否が判定される。ここで修復動作が必要と判定されると、ベルト駆動制御部312(図4)が、一次転写ニップ部Aで停止していた中間転写ベルト125の被ニップ部N(ベルトしわW)を、駆動ローラー125Aに接触する長さlの領域Bまで移動し、停止させる。駆動ローラー125Aでは、中間転写ベルト125に付与されるベルト回転方向の張力によって、ベルト表面に生成されたベルトしわWが引っ張られる。したがって、ベルトしわWに相当する部分を、所定時間、駆動ローラー125Aに接触させた後、画像形成動作に移行することで、ベルトしわWによって生じる画像欠陥を効果的に防止することが可能となる。
更に、本実施形態では、張架ローラーであるローラー125A〜125Eのうち、定着装置13に最も近い駆動ローラー125Aが選択され、その表面に中間転写ベルト125上のベルトしわWが接触するよう中間転写ベルト125が周回駆動される。ここで、定着装置13は画像形成動作に先立って、定着のための必要温度を維持するために、いわゆるスタンバイ状態に制御される。この過程で、加熱ローラー132内のハロゲンランプ(不図示)が発熱制御されるため、近接する駆動ローラー125Aに巻きつけられた中間転写ベルト125の表面にも熱が伝わることとなる。この定着装置13からの熱によって、中間転写ベルト125の表面は軟化するため、駆動ローラー125Aによってもたらされる引っ張り張力によってベルトしわWの修復が促進される。
次に、上記中間転写ベルト125の回転、および停止に関する制御について、図4および図5を用いて詳述する。図4において、制御部30は画像形成装置1を統括的に制御するもので、制御信号の送受先として、同じく装置本体に備えられている電源スイッチ10、画像形成部12、温度センサ60(温度検知手段)、光センサ50(表面形状検知手段)、ベルト駆動手段400(ステッピングモーター401)、画像処理部34などに電気的に接続されている。
制御部30は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成され、CPUが前記制御プログラムを実行することにより、全体制御部311、ベルト駆動制御部312、演算部313、記憶部314、修復時間積算部315、判定部316を機能的に有するよう動作する。
全体制御部311は、画像形成装置1に備えられている各種機能部を制御するほか、ベルトしわWの修復にために、中間転写ベルト125の周回駆動動作および停止動作を制御する。具体的には、ベルト駆動制御部312に制御信号を与え、ベルト駆動手段400によって中間転写ベルト125を回転駆動させる。この後、光センサ50によって中間転写ベルト125上のベルトしわWが検知され、判定部316においてベルトしわWの修復動作が必要と判定された場合、全体制御部311は、ベルト駆動制御部312に中間転写ベルト125の停止位置を指示する。本実施形態では、駆動ローラー125Aの外周面上にベルトしわWの部位が停止するよう制御され、修復動作が実行される。
ベルト駆動制御部312は、全体制御部311からの制御信号に従い、ベルト駆動手段400内のステッピングモーター401(図3)を駆動し、中間転写ベルト125を回転、及び停止させる。
演算部313は、光センサ50から中間転写ベルト125に関する表面形状情報を受け取る。この表面形状情報は、例えば光センサ50の受光部から出力される反射光量に関するデータであり、演算部313は、前記データと予め設定された演算式とをもとに、判定部316でベルトしわWの修復動作の要否判定に必要な数値データHを演算により求める。
記憶部314は、演算部313で数値化された中間転写ベルト125に関する数値データHを受け取り、該情報を格納する。また、判定部316において、ベルトしわWの修復動作の実行要否が判定される際に、比較参照される参照閾値H1が予め格納されている。更に、記憶部314は、修復時間積算部315が積算するベルトしわWの修復動作中の中間転写ベルト125の停止時間T1を受け取り格納するとともに、判定部316において比較参照されるための停止時間に関する参照閾値T2を予め格納している。また、記憶部314には、ベルトしわWの修復のために、被ニップ部Nを停止させるための、駆動ローラー125Aの位置情報が格納されている。
修復時間積算部315は、タイマー機能を備え、駆動ローラー125Aの外周面上に、ベルトしわW部分が移動された後の中間転写ベルト125の停止時間T1を積算する。
判定部316は、記憶部314に格納された中間転写ベルト125の数値データH(表面形状情報)と、予め記憶部314に格納された参照閾値H1とを比較し、ベルトしわWの修復動作が必要か否かを判定する。また、修復時間積算部315が積算するベルトしわWの修復動作中の中間転写ベルト125の停止時間T1と、予め記憶部314に格納された参照閾値T2とを比較し、ベルトしわWの修復動作の終了を判定する。
次に、これらの構成を用いて、画像形成装置1の電源スイッチ10がオンされてから制御部30において実行される制御の詳細を説明する。
図5において、装置本体の電源スイッチがオンされると(ステップS110)、全体制御部311は、画像形成動作に先立ち、ルーチン動作としてのセットアップのために、ベルト駆動制御部312に中間転写ベルト125を回転させる指示信号を出力する(ステップS120)。ベルト駆動制御部312は、ステッピングモーター401に制御電圧を出力し、この結果、中間転写ベルト125が回転駆動される。この時、ベルト駆動制御部312は、駆動開始からの中間転写ベルト125の回転駆動時間と、ステッピングモーター401の回転数とを積算している。したがって、ベルト駆動制御部312は、中間転写ベルト125の回転開始前に、一次転写ニップ部Aで停止していた被ニップ部N(図9)の回転開始後の周回方向における位置を算出することができる。なお、上記のセットアップの段階で、全体制御部311は、定着装置13の加熱ローラー132の加熱を開始する。
中間転写ベルト125の回転が開始されると、全体制御部311は、光センサ50を通電状態とし、中間転写ベルト125の表面状態の検知動作を実行させる(ステップS130)。ここで、表面状態を検知するための光が光センサ50の発光部から、中間転写ベルト125の表面に照射されるとともに、該ベルト表面からの反射光が光センサ50の受光部によって受光される。この際、ベルトしわWの検知には、上記ステッピングモーター401の回転情報などを用いて、被ニップ部N(図9)に対応する部分のみを1度だけ検知してもよいし、検知精度を上げるために、中間転写ベルト125を複数回、周回させ、検知作業を繰り返しても良い。光センサ50から得られたベルト表面情報としての電気信号は、演算部313に伝送され、数値データHに換算される。数値データHは、たとえば、被ニップ部Nにおける光センサ50からの照射光量に対する反射受光量の割合や、ベルト1周における反射受光量の平均値に対する被ニップ部Nでの反射受光量の割合などとして、数値換算されたのち、記憶部314に格納される。
数値データHが記憶部314に格納されると、全体制御部311は、判定部316を制御し、ベルトしわWの修復動作の要否について判定させる(ステップS140)。ここで、判定部316は、数値データHと、予め記憶部314に格納された参照閾値H1とを比較し、中間転写ベルト125に対して、ベルトしわWの修復動作が必要か否かを判定する。本実施形態では、数値データHを、被ニップ部Nにおける光センサ50からの照射光量に対する反射受光量の割合とする。判定部316は、演算されたHと参照閾値H1とを比較し、H1≧Hの場合は、ベルト面からの反射光量が少ないことから、ベルトしわWによる光の乱反射が顕著であり、ベルトしわWの修復動作が必要と判定する。逆に、H1<Hの場合は、ベルトしわWの修復動作は不要と判定する。
全体制御部311は、判定部316において、ベルトしわWの修復動作が必要と判定された場合、ベルト駆動制御部312に、ベルト停止位置の決定を実行させる(ステップS150)。他方、判定部316において、ベルトしわWの修復動作が不要と判定された場合は、全体制御部311は、中間転写ベルト125の停止位置を個別に指示することなく、前述のセットアップ動作が終了次第、通常停止させる(ステップS162)。
ステップS150では、全体制御部311からの制御指示により、ベルト駆動制御部312は、予め記憶部314に格納されている駆動ローラー125Aの位置情報を参照し、被ニップ部Nの停止位置を決定する。
ベルト停止位置(被ニップ部Nの停止位置)の決定後、全体制御部311は、ベルト駆動制御部312に対して、中間転写ベルト125の停止を実行させる(ステップ160)。ベルト駆動制御部312は、積算している中間転写ベルト125の回転駆動時間と、ステッピングモーター401の回転数情報とから、被ニップ部Nが、次に、停止位置である駆動ローラー125Aに接触、停止可能な時刻(タイミング)を算出し、同時刻でベルト駆動手段400を介して、中間転写ベルト125を停止させる。
上記ステップを経て、駆動ローラー125Aの外周面には、中間転写ベルト125の回転前に、一次転写ニップAで停止していた被ニップ部Nが接触した状態となる。更に、セットアップ動作によって発熱している加熱ローラー132からの熱が、中間転写ベルト125の表面を暖めることとなる。この場合、図9(b)に示す被ニップ部Nおよび周辺のベルトしわWが、駆動ローラー125Aに接触することが好ましいため、被ニップ部Nの中央部(感光体ドラム121と一次転写ローラー126との中心線を結んだ直線と中間転写ベルト125面の交点)であった部分が、駆動ローラー125Aのベルト接触範囲(図3のB)の中央部に移動するように、中間転写ベルト125の停止が制御されることが好適である。
中間転写ベルト125の停止が実行されると、全体制御部311は、修復時間積算部315に対して、被ニップ部Nが駆動ローラー125Aに接触停止した時刻から中間転写ベルト125の停止時間T1をカウントさせる(ステップS170)。
更に、全体制御部311は、判定部316に対して、ベルトしわWの修復動作の終了について判定させる(ステップS180)。ここで、判定部316は、修復時間積算部315がカウントする停止時間T1と、予め記憶部314に格納された参照閾値T2とを比較し、T1≧T2であった場合は、ベルトしわWの修復動作の終了を判定する。また、T1<T2であった場合は、判定部316は、ベルトしわWの修復を継続させ、上記T1≧T2となるまで判定を繰り返す。
判定部316によって、ベルトしわWの修復動作の終了が判定されると、全体制御部311は、中間転写ベルト125の停止制御およびベルトしわWの修復動作制御全体を終了し、画像形成動作の実行が可能となる。
以上のように、本実施形態では、画像形成動作に先立って、中間転写ベルト125が回転駆動され、ベルトしわWに関するベルト表面情報を光センサ50が検知する。ここで、検知されたベルトしわWの表面情報に対して修復動作が必要と判定された場合、全体制御部311は、中間転写ベルト125上の被ニップ部Nを駆動ローラー125Aの周面に接触させる。ベルトしわWは、定着装置13からの熱と、駆動ローラー125Aによって付与される張力とによって解消される。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。ここで第2の実施形態は、上記第1の実施形態におけるベルト停止位置の決定処理(ステップS150)に特徴を有するものであり、その他の構成、制御の流れは第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。図6は、第2の実施形態に係るベルト停止位置制御に関するフローチャートである。
第1の実施形態では、判定部316において、ベルトしわWの修復動作が必要と判定された場合(ステップS140)、全体制御部311からの制御指示により、ベルト駆動制御部312は、予め記憶部314に格納されている駆動ローラー125Aの位置情報を参照し、被ニップ部Nの停止位置を決定した(ステップS150)。
これに対し、第2の実施形態では、上記のステップS150の代わりに、ステップS250を有し、ベルト駆動制御部312は、ベルトしわWの程度に応じて、複数の張架ローラーの中から被ニップ部Nの停止位置を選択、決定する。このため、記憶部314には、予め複数の張架ローラーに関する位置情報が格納されているとともに、判定部316がベルトしわWの程度を判定するための第2の参照閾値H2が、予め格納されている。
第1の実施形態と同様、数値データHが記憶部314に格納されると、全体制御部311は、判定部316を制御し、ベルトしわWの修復動作の要否について判定させる(ステップS140)。ここで、判定部316は、数値データHと、予め記憶部314に格納された参照閾値H1とを比較し、中間転写ベルト125に対して、ベルトしわWの修復動作が必要か否かを判定する。判定部316は、演算されたHと参照閾値H1とを比較し、H1≧Hの場合は、ベルト面からの反射光量が少ないことから、ベルトしわWによって光の乱反射が顕著であり、ベルトしわWの修復動作が必要と判定する。
ベルトしわWの修復動作が必要と判定された場合、本実施形態では、全体制御部311は、更に、判定部316に第2の判定を実行させる(ステップS252)。判定部316は、数値データHについて、記憶部314に格納された第2の参照閾値H2と比較を行う。ここで、ベルトしわWが顕著である(H2>H)と判定された場合は、前述の第1の実施形態同様、ベルト駆動制御部312は、停止位置として、定着装置13近傍の駆動ローラー125Aを選択し(ステップS254)、全体制御部311は、中間転写ベルト125の停止を実行させる(ステップS160)。
一方、ベルトしわWの数値データHが、第2の参照閾値H2との比較の結果、比較的軽微である(H≧H2)と判断された場合は、現時点で停止しうる最も近い張架ローラーを停止位置として選択する(ステップS256)。この場合、被ニップ部Nの停止位置は、張架ローラーとしての機能を有するローラー125A、125B、125C、125D、125E(図2)のいずれかから選択されることとなる。選択された最も近い張架ローラーに対する位置情報が、記憶部314から参照される。
ベルト停止位置(被ニップ部の停止位置)の決定後、全体制御部311は、第1の実施形態と同様に、ベルト駆動制御部312に対して、選択された張架ローラーに被ニップ部Nが接触するように、中間転写ベルト125の停止を実行させる(ステップ160)。
このように、第2の実施形態にかかるベルト停止位置制御では、ベルト上に生じたベルトしわWの程度に応じて、定着装置13近傍の駆動ローラー125Aを選択する場合と、最短時間で接触できる張架ローラーを選択する場合とを、制御することができる。ここで、後者の場合は、次の画像形成動作に移行するまでの全体の時間を縮小するという点で有効となる。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図7は、第3の実施形態にかかる中間転写ベルトの停止制御に関わる電気的構成を示すブロック図である。本実施形態では、第1および第2の実施形態で説明した光センサ50(表面形状検知手段)に代わり、表面情報取得手段として、図7の装置停止時間積算部417(積算手段)を採用する点に特徴をもつものである。第1および第2の実施形態において、光センサ50が中間転写ベルト125上のベルトしわWを直接検知することに対して、本実施形態では、全体制御部311が、装置停止時間積算部417が積算する画像形成装置1(中間転写ベルト125)の停止時間から、ベルトしわWの発生を予測し、その修復動作を実行する。
装置停止時間積算部417は、タイマー機能を備え、中間転写ベルト125の周回駆動が終了した時点からタイムカウントをスタートする。その後、中間転写ベルト125の周回駆動が再開されると、前記タイムカウントをストップし、画像形成装置の停止時間を導出する。
図8は、第3の実施形態におけるベルト停止位置制御のフローチャートを示している。本実施形態では、装置本体11の電源スイッチ10がオンされると(ステップS310)、全体制御部311は、装置停止時間積算部417が積算する画像形成装置の停止時間T3を確認する(ステップS320)。停止時間T3は、中間転写ベルト125が回転駆動された場合は、ゼロリセットされる。なお、この積算される停止時間T3は、所定時間毎に記憶部314に格納される態様でも良い。この段階で、中間転写ベルト125の回転駆動が開始されている必要はない。
停止時間T3の確認を終えると、全体制御部311は、判定部316に対して、停止時間T3に関する判定を実行させる(ステップS330)。判定部316は、上記で確認された停止時間T3が、予め記憶部314に格納された停止時間に関する参照閾値T4を越えている場合には、一次転写ニップ部A(図3)の中間転写ベルト125上にベルトしわWが発生していると判定する。一方、判定部316は、ステップS320で確認された画像形成装置の停止時間T3が、参照閾値T4を下回っている場合には、ベルトしわWは発生していないと判定する。この場合、以後、個別の中間転写ベルト125の停止位置制御は実施されず、ステップは終了する。
ベルトしわWが発生していると判定された場合、全体制御部311は、中間転写ベルト125の停止位置(被ニップ部Nの停止位置)の決定を実行する(ステップS340)。ここでは、第1および第2の実施形態同様、全体制御部311は、記憶部314から予め格納された駆動ローラー125Aなどの位置情報を取得する。
なお、本実施形態では、ベルトしわWを直接検知する必要がないため、事前に中間転写ベルト125を回転駆動させることを要しない。したがって、後の画像形成動作に対して、中間転写ベルト125の回転を伴うセットアップを必要としない場合は、上記のベルト停止位置の決定(ステップS340)が実行され次第、全体制御部311は、ベルト駆動制御部312を通じて、中間転写ベルト125を被ニップ部Nの移動に必要な分だけ回転させる(ステップS350およびステップS360)。この場合、ベルト駆動制御部312は、一次転写ニップAの被ニップ部Nを移動させるにあたり、図3の領域B(一次転写ニップ部Aに対して距離LからL+lの範囲)で停止するようステッピングモーター401を制御することとなる。
なお、被ニップ部Nが選択された張架ローラーに接触した後の制御(ステップS370、ステップS380)については、第1および第2の実施形態と同様のため、詳細な説明は省略する。
以上、本実施形態では、表面情報取得手段として、装置停止時間積算部417を採用した場合を説明したが、ベルトしわWを効果的に予測する手段として、装置本体の環境温度を検知する温度センサ60(図4)を補助的に用いることも可能である。中間転写ベルト125のベルトしわWは、高温高湿環境で顕著に発生する傾向があるため、上記のステップS330で停止時間T3と比較する参照閾値T4を、検知された温度環境に応じて選択するようにしてもよい。すなわち、装置停止時間積算部417が積算する停止時間T3の温度環境が高温であった場合は、低温であった場合よりも、ベルトしわWの発生が促進されていることから、より厳しい参照閾値T5(ベルトしわW有りと判定しやすい閾値)で、ベルト停止位置制御の実行を判定させるようにしてもよい。
以上、本発明の実施形態に係る画像形成装置1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
(1)上記の実施形態では、ベルト表面形状検知手段として、光センサ50を用いているが、ベルトしわWを検知することができるものであれば特に限定はない。たとえば、レーザー変位計などを用いることができる。また、ベルトしわWによって、一次転写ニップ部Aやベルトクリーニング装置198との対向部において、一時的に、中間転写ベルト125の表面速度が低下する現象を利用して、中間転写ベルト125の表面やベルト駆動手段400の回転軸に設置した速度計を利用することも可能である。
(2)更に、本実施形態では、表面情報取得手段として、表面形状検知手段および装置停止時間積算部を用いて説明したが、これに限られるものではなく、たとえば、目視による中間転写ベルト125にベルトしわWが生じている情報や、長期間の装置停止情報そのものを装置本体(制御部30)に入力する態様でもよい。
(3)また、上記の実施形態において説明した光センサ50は、中間転写ベルト125上に形成された濃度パターンを測定するための画像濃度センサを兼用させることも可能である。
(4)また、上記の実施形態では、中間転写ベルト125の連続停止時間を積算する積算手段として、装置本体の停止時間を積算する積算部を用いて説明したが、中間転写ベルト125のベルト駆動手段400などから、連続停止時間に関する情報を取得することも可能である。