JP2013076025A - フタロシアニン化合物 - Google Patents

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裕規 辰巳
Masakado Aoki
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Abstract

【課題】ケトン系溶媒やグリコール系溶媒への溶解性が高いフタロシアニン化合物を提供する。
【解決手段】フタロシアニン骨格に導入される置換基Z1〜Z16のうち、0.1〜4個は、それぞれ独立して、特定の置換基(a1)、(a2)または(a3)であり、1〜6個は、それぞれ独立して、カルボキシル基で置換されたフェノキシ基(b)またはカルボキシル基で置換されたナフトキシ基(c)であり、0〜4個は、有機置換基であり、かつ残部は水素原子またはハロゲン原子である、フタロシアニン化合物。
【選択図】なし

Description

本発明は、フタロシアニン化合物および当該化合物を含むインクジェット用インクに関するものである。詳しくは、本発明は、640〜660nmに会合由来の高い吸収を有しかつケトン系溶剤やグリコール系溶剤に優れた溶解性を発揮するフタロシアニン化合物および当該化合物を含むインクジェット用インク、特に緑色あるいは緑味のシアン色インクジェット用インクに関するものである。
インクジェット印刷は、被印刷体に対して非接触であるため、印刷時に音の発生をあまり伴わず、また、小型化、高速化、カラー化が可能であるため、近年、産業用途およびOA用途で普及してきている。特にOA用途では、高精細でフルカラーの高品質な印刷物を得ることに対する要求が高まりつつある。インクジェット印刷に使用されるインク(インクジェット用インク)は、通常、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色のインクを含むことにより、フルカラー記録に対応可能であり、必要により、他の色のインク、例えば、ブラック(B)、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)、染料濃度が低いライトインク(ライトイエローインク、ライトマゼンタインク、ライトシアンインク、ライトブラックインク、ライトレッドインク、ライトグリーンインク、ライトブルーインク等)等を含む。特に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のインクによる減法混色により画像や文字を表現する。
一方、従来より、グリーンインクとして、シアン染料(グリーン)に加えて、調色を目的として、アゾ系の黄色染料を併用した色素が使用される。例えば、シアン系の色調を有するフタロシアニン系色素を用いた場合には、ピリドンアゾ化合物等のアゾ系の黄色染料を混合させて、緑色色調を呈するインクが調製される(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のフタロシアニン化合物は、フタロシアニン骨格に直接スルホン基(−SO2−)が結合する構造を有する。このようなフタロシアニン化合物は、水溶性または水に親和性を有し、顔料として使用できる。
特開2004−277700号公報
しかしながら、一般的に、フタロシアニン系のシアン染料は耐熱性および耐候性(耐光性)に優れるものの、併用するアゾ系の黄色染料は耐熱性および耐候性(耐光性)に劣るため、このようなインクを使用して形成される緑色の画像や文字は、耐熱性や耐候性が不十分で、十分優れた色調の記録物が得られないという問題がある。特許文献1では、アゾ系の黄色染料との組み合わせについては記載のあるものの、通常の使用形態が記載されているのみである。また、特許文献1に記載のフタロシアニン化合物は、芳香族アゾ化合物がスルホン基を介して直接フタロシアニン骨格に結合する構造を有しているため、水に対する溶解性はあるものの、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒やプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と略す)等のグリコール系溶媒への溶解性には劣る。このため、特許文献1に記載のフタロシアニン化合物は、水性染料用途に限定される。
また、アゾ系の黄色染料は、通常、フタロシアニン系のシアン染料と同量以上の多量に混合されるが、上記したように、アゾ系の黄色染料は、耐熱性および耐候性(耐光性)を低減する原因となりうる。このため、アゾ系の黄色染料のグリーン色素中に含まれる量を低減して、インクの耐昇華性、耐熱性および耐候性(耐光性)を向上することが望まれている。
本発明の目的は、緑色あるいは緑味のシアン色インクジェット用インク調製時のアゾ系の黄色染料の使用量を低減できるフタロシアニン化合物を提供することである。
また、本発明の他の目的は、ケトン系溶媒やグリコール系溶剤への溶解性が高いフタロシアニン化合物を提供することである。
本発明の別の目的は、上記したようなフタロシアニン化合物を含む緑色あるいは緑味のシアン色インクジェット用インクを提供することである。
本発明者らは、上記問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、特定の構造を有するフタロシアニン化合物を使用すると、緑色あるいは緑味のシアン色インクジェット用インクを調製する際のアゾ系の黄色染料の使用量を有意の低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記目的は、下記式(1):
上記式(1)中、Z1〜Z16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、下記式(2−1):
上記式(2−1)中、Xは、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表わし;Y1は、酸素原子(−O−)またはイミノ基(−NH−)を表わし;Y2は、カルボニル基(−CO−)またはスルホニル基(−SO2−)を表わし;R1は、炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基を表わし;R2は、炭素数1〜16の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わし;R5は、炭素数1〜8のアルコキシ基またはハロゲン原子であり;nは、0〜5の整数であり;pは、0〜4の整数であり;rは、0または1である、
で表される置換基(a1)、下記式(2−2):
上記式(2−2)中、Y1は、酸素原子(−O−)またはイミノ基(−NH−)を表わし;Y2は、カルボニル基(−CO−)またはスルホニル基(−SO2−)を表わし;Y3は、炭素数1〜12のアルキレン基を表わし;R1は、炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基を表わし;R2は、炭素数1〜16の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わす、
で表される置換基(a2)、下記式(2−3):
上記式(2−3)中、Y1は、酸素原子(−O−)またはイミノ基(−NH−)を表わし;Y2は、カルボニル基(−CO−)またはスルホニル基(−SO2−)を表わし;R1は、炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基を表わし;R2は、炭素数1〜16の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わす、
で表される置換基(a3)、下記式(3):
上記式(3)中、R3は、炭素数1〜3のアルキレン基を表わし;R4は、炭素数1〜8のアルキル基を表わし;mは、1〜4の整数であり;R5およびpは、上記式(2−1)と同様の定義である、
で表される置換基(b)、下記式(4):
上記式(4)中、R5は、上記式(2−1)と同様の定義であり;R3、R4およびmは、上記式(3)と同様の定義であり;p'は、0〜6の整数である、
で表される置換基(c)、または
有機置換基を表わし、
この際、Z1〜Z16のうち、0.1〜4個は、それぞれ独立して、置換基(a1)、(a2)または(a3)であり、1〜6個は、それぞれ独立して、置換基(b)または(c)であり、0〜4個は、有機置換基であり、かつ残部は水素原子またはハロゲン原子であり、
Mは、無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす、
で示されるフタロシアニン化合物によって達成される。
本発明のフタロシアニン化合物を用いることにより、少量のアゾ系の黄色染料を混合することで優れた色調の緑色あるいは緑味のシアン色インクジェット用インクを調製できる。また、本発明のフタロシアニン化合物は、ケトン系溶媒やグリコール系溶媒に可溶性である。したがって、本発明のフタロシアニン化合物は、緑色あるいは緑味のシアン色インクジェット用インクに染料として好適に使用できる。
本発明の第一は、下記式(1):
上記式(1)中、Z1〜Z16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、下記式(2−1):
上記式(2−1)中、Xは、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表わし;Y1は、酸素原子(−O−)またはイミノ基(−NH−)を表わし;Y2は、カルボニル基(−CO−)またはスルホニル基(−SO2−)を表わし;R1は、炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基を表わし;R2は、炭素数1〜16の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わし;R5は、炭素数1〜8のアルコキシ基またはハロゲン原子であり;nは、0〜5の整数であり;pは、0〜4の整数であり;rは、0または1である、
で表される置換基(a1)(以下、単に「置換基(a1)」と称する)、下記式(2−2):
上記式(2−2)中、Y1は、酸素原子(−O−)またはイミノ基(−NH−)を表わし;Y2は、カルボニル基(−CO−)またはスルホニル基(−SO2−)を表わし;Y3は、炭素数1〜12のアルキレン基を表わし;R1は、炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基を表わし;R2は、炭素数1〜16の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わす、
で表される置換基(a2)(以下、単に「置換基(a2)」と称する)、下記式(2−3):
上記式(2−3)中、Y1は、酸素原子(−O−)またはイミノ基(−NH−)を表わし;Y2は、カルボニル基(−CO−)またはスルホニル基(−SO2−)を表わし;R1は、炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基を表わし;R2は、炭素数1〜16の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わす、
で表される置換基(a3)(以下、単に「置換基(a3)」と称する)、下記式(3):
上記式(3)中、R3は、炭素数1〜3のアルキレン基を表わし;R4は、炭素数1〜8のアルキル基を表わし;mは、1〜4の整数であり;R5およびpは、上記式(2−1)と同様の定義である、
で表される置換基(b)(以下、単に「置換基(b)」と称する)、下記式(4):
上記式(4)中、R5は、上記式(2−1)と同様の定義であり;R3、R4およびmは、上記式(3)と同様の定義であり;p'は、0〜6の整数である、
で表される置換基(c)(以下、単に「置換基(c)」と称する)、または
有機置換基を表わし、
この際、Z1〜Z16のうち、0.1〜4個は、それぞれ独立して、置換基(a1)、(a2)または(a3)であり、1〜6個は、それぞれ独立して、置換基(b)または(c)であり、0〜4個は、有機置換基であり、かつ残部は水素原子またはハロゲン原子であり、
Mは、無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす、
で示されるフタロシアニン化合物に関するものである。以下、上記式(1)で示されるフタロシアニン化合物を、単に「フタロシアニン化合物」あるいは「本発明のフタロシアニン化合物」とも称する。
本発明のフタロシアニン化合物は、フェノール、チオフェノールまたはアルキルアミノ基(−NH−アルキレン基−)を介して芳香族アゾ化合物をフタロシアニン骨格に結合させた構造を有することを特徴とする。本発明のフタロシアニン化合物は、640〜750nmの波長領域における最大吸収波長(λmax)を有するため、緑色あるいは緑味のシアン色インクに好適に使用できる。このように、フタロシアニン化合物中に芳香族アゾ化合物由来の構造を導入することによって、アゾ化合物が有する黄色の調色機能を発揮するため、緑色あるいは緑味のシアン色インクジェット用インク(以下、単に「グリーン色インクジェット用インク」)とも称する)を調製する際のアゾ系の黄色染料の使用量をフタロシアニン化合物に対して有意に低減することが可能になる。このため、本発明のフタロシアニン化合物および黄色染料を含むインクは、耐熱性および耐候性(耐光性)を低減する原因となるアゾ系の黄色染料の量が少ないため、昇華が抑制され、熱安定性に優れる。また、芳香族アゾ化合物をフェノール[−O−Ph−;Phは、フェニレン基を表わす]またはチオフェノール[−S−Ph−;Phは、フェニレン基を表わす]またはアルキルアミノ基(−NH−アルキレン基−)を介してフタロシアニン骨格に結合させることによって、当該部分がスペーサーの役割を果たして、フタロシアニン化合物同士のスタックを抑制・防止する。このため、本発明のフタロシアニン化合物は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒やPGMEA等のグリコール系溶媒への溶解性(本明細書では、単に「溶媒溶解性」とも称する)を有する。また、フタロシアニン化合物に付加させることによって、グリコール系溶媒に溶解性の低いピリドンアゾ化合物のグリコール系溶媒への溶解性を付与することができる(グリコール系溶媒に可溶にできる)。また、特定数の置換基(b)または(c)をフタロシアニン骨格に導入することによっても、溶媒溶解性を向上することができる。上記利点に加えて、本発明のフタロシアニン化合物は、フタロシアニン化合物が本来有する特性を維持するため、樹脂との相溶性、耐熱性、耐光性および耐候性の少なくとも1つの特性に優れる。高いケトン系溶媒への溶解性および優れた樹脂との相溶性のおかげで、ケトン系溶媒への溶解性が高い樹脂と色素とを組み合わせて用いることができ、また、ケトン系溶媒以外の溶媒には溶けてしまうプラスチックを用いる場合であっても、該プラスチック上に色素を塗布することができる。
したがって、本発明のフタロシアニン化合物は、緑色あるいは緑味のシアン色インクジェット用インクに特に好適に使用できる。
以下、本発明における好ましい実施の形態を説明する。
1.置換基(a)
1−1.置換基(a1)
置換基(a1)は、下記構造を有する。
上記式(2−1)中、基「−(COO)r−(CH2n−Y1−Y2−」は、左側のベンゼン環のいずれの位置(即ち、置換基「X」が結合しているベンゼン環の位置に対して、オルト位(2位)、メタ位(3位)またはパラ位(4位)のいずれの位置)に結合してもよい。基「−(COO)r−(CH2n−Y1−Y2−」が、置換基「X」が結合しているベンゼン環の位置に対して、4位または2位に結合することが好ましく、4位に結合することがより好ましい。同様にして、上記式(2−1)中、置換基「Y2」は、右側のベンゼン環のいずれの位置(即ち、アゾ結合が結合しているベンゼン環の位置に対して、オルト位(2位)、メタ位(3位)またはパラ位(4位)のいずれの位置)に結合してもよい。置換基「Y2」が、アゾ結合が結合しているベンゼン環の位置に対して、3位または4位の位置に結合することが好ましく、4位に結合することがより好ましい。
また、上記式(2−1)中、Xは、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表わし、溶媒溶解性を考慮すると、酸素原子であることが好ましい。Y1は、酸素原子(−O−)またはイミノ基(−NH−)を表わす。Y2は、カルボニル基(−CO−)またはスルホニル基(−SO2−)を表わす。また、R1は、炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基を表わす。ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、特に制限されない。具体的には、炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル、シクロヘキシル等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基などが挙げられる。これらのうち、アゾ系染料としての特性(例えば、吸収波長、溶媒溶解性)などを考慮すると、炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキル基、特に炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基が好ましい。R2は、炭素数1〜16の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わす。ここで、炭素数1〜16のアルキル基としては、特に制限されない。具体的には、上記炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖に加えて、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基等の直鎖または分岐鎖のアルキル基などが挙げられる。これらのうち、アゾ系染料としての特性(例えば、吸収波長、溶媒溶解性)などを考慮すると、炭素数1〜8の直鎖または分岐のアルキル基、特に炭素数2〜6の直鎖または分岐のアルキル基が好ましい。また、炭素数2〜8のアルコキシアルキル基としては、特に制限されない。具体的には、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、プロポキシエチル基、プロポキシプロピル基、イソプロポキシエチル基、イソプロポキシプロピル基、ブトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、ジメトキシメチル基、ジエトキシメチル基、ジメトキシエチル基、ジエトキシエチル基などが挙げられる。これらのうち、アゾ系染料としての特性(例えば、吸収波長、溶媒溶解性)などを考慮すると、炭素数2〜8のアルコキシアルキル基が好ましい。R5は、炭素数1〜8のアルコキシ基またはハロゲン原子である。ここで、炭素数1〜8のアルコキシ基としては、特に制限されない。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。これらのうち、フッ素原子、塩素原子が好ましい。nは、0〜5の整数であり、0〜3が好ましく、0〜2が特に好ましい。pは、0〜4の整数であり、0〜2が好ましく、0(即ち、R5が存在しない形態)が特に好ましい。また、rは、0または1である。
すなわち、置換基(a1)は、下記式(2'−1)で表される置換基(a1')であることが好ましい。
より好ましくは、置換基(a1)は、下記式で表される。
上記式(2'−1)及び上記式中、Y1は、酸素原子(−O−)またはイミノ基(−NH−)を表わし;Y2は、カルボニル基(−CO−)またはスルホニル基(−SO2−)を表わし;R1は、炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表わし;R2は、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わし;nは、0〜3の整数である。また、上記式(2')中、rは、0または1である。
1−2.置換基(a2)
置換基(a2)は、下記構造を有する。
上記式(2−2)中、基「−NH−Y3−Y1−Y2−」は、右側のベンゼン環のいずれの位置(即ち、アゾ結合が結合しているベンゼン環の位置に対して、オルト位(2位)、メタ位(3位)またはパラ位(4位)のいずれの位置)に結合してもよい。置換基「Y2」が、アゾ結合が結合しているベンゼン環の位置に対して、3位または4位の位置に結合することが好ましく、4位に結合することがより好ましい。
また、上記式(2−2)中、Y1は、酸素原子(−O−)またはイミノ基(−NH−)を表わす。好ましくは、Y1は、酸素原子を表わす。Y2は、カルボニル基(−CO−)またはスルホニル基(−SO2−)を表わす。好ましくは、Y2は、スルホニル基を表わす。Y3は、炭素数1〜12のアルキレン基を表わす。ここで、炭素数1〜12のアルキレン基としては、特に制限されない。具体的には、炭素数1〜12のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン等の直鎖又は分岐のアルキレン基などが挙げられる。これらのうち、アゾ系染料としての特性(例えば、吸収波長、溶媒溶解性)などを考慮すると、炭素数1〜8の直鎖または分岐のアルキレン基、特に炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキレン基が好ましい。また、R1は、炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基を表わす。R2は、炭素数1〜16の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わす。ここで、R1及びR2は、上記式(2−1)と同様の定義であるため、説明を省略する。
すなわち、置換基(a−2)は、下記式(2'−2)で表される置換基(a2')であることが好ましい。
より好ましくは、置換基(a2)は、下記式で表される。
上記式(2'−2)及び上記式中、Y3は、炭素数1〜3のアルキレン基を表わし;R1は、炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表わし;R2は、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わす。
1−3.置換基(a3)
置換基(a3)は、下記構造を有する。
上記式(2−3)中、基「−NH−CH2−」は、右側のベンゼン環のいずれの位置(即ち、−CH2−Y1−Y2−)が結合しているベンゼン環の位置に対して、オルト位(2位)、メタ位(3位)またはパラ位(4位)のいずれの位置)に結合してもよい。基「−NH−CH2−」が、−CH2−Y1−Y2−の基が結合しているベンゼン環の位置に対して、3位または4位の位置に結合することが好ましく、4位に結合することがより好ましい。同様にして、上記式(2−3)中、置換基「Y2」は、右側のベンゼン環のいずれの位置(即ち、アゾ結合(−N=N−)が結合しているベンゼン環の位置に対して、オルト位(2位)、メタ位(3位)またはパラ位(4位)のいずれの位置)に結合してもよい。置換基「Y2」が、アゾ結合が結合しているベンゼン環の位置に対して、3位または4位の位置に結合することが好ましく、4位に結合することがより好ましい。
また、上記式(2−3)中、Y1は、酸素原子(−O−)またはイミノ基(−NH−)を表わす。好ましくは、Y1は、イミノ基を表わす。Y2は、カルボニル基(−CO−)またはスルホニル基(−SO2−)を表わす。好ましくは、Y2は、スルホニル基を表わす。また、R1は、炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基を表わす。R2は、炭素数1〜16の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わす。ここで、R1及びR2は、上記式(2−1)と同様の定義であるため、説明を省略する。
すなわち、置換基(a−3)は、下記式(2'−3)で表される置換基(a3')であることが好ましい。
より好ましくは、置換基(a3)は、下記式で表される。
上記式(2'−3)及び上記式中、R1は、炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表わし;R2は、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わす。
本発明において、上記式(1)の置換基Z1〜Z16のうち、0.1〜4個は、置換基(a1)、(a2)または(a3)(本明細書中では、一括して「置換基(a)」とも称する)である。置換基(a)は、緑色あるいは緑味のシアン色インクジェット用インクを調製する際のアゾ系の黄色染料の使用量の低減効果および溶媒溶解性に寄与する。ここで、置換基(a)が複数個存在する場合には、各置換基(a)は同一であってもあるいは異なるものであってもよい。Z1〜Z16のうち、置換基(a)が0.1個未満であると、アゾ化合物(アゾ系の黄色染料)由来の構造が少なくなりすぎるため、緑色あるいは緑味のシアン色インクジェット用インクを調製する際のアゾ系の黄色染料の使用量(以下、単に「アゾ染料の使用量」とも称する)を有意の低減することができないことから好ましくない。逆に、置換基(a)が4個を超えると、分子量が大きくなり、グラム当たりの吸光係数(以下、グラム吸光係数とする)が低くなる上、黄色が強くなりすぎてしまい緑色としての色バランスが悪くなったり、溶解性が低下することから好ましくない。上記式(1)の置換基Z1〜Z16のうち、アゾ染料の使用量の低減できるため好ましくは0.15〜3個、より好ましくは、さらに溶媒溶解性に優れるために0.2〜1.5個が置換基(a)である。
0.1〜4個の置換基(a)のフタロシアニン骨格での導入位置は、全置換数が上記範囲であれば特に制限されない。このため、Z1〜Z4、Z5〜Z8、Z9〜Z12、Z13〜Z16を含む各構成単位を、それぞれ、構成単位A、B、C、Dとすると、0.1〜4個の置換基(a)が、構成単位A〜D中、ほぼ均一に導入されても不均一に導入されてもよい。好ましくは、0.1〜4個の置換基(a)は、構成単位A〜D中、不均一に導入される。このように置換基が混在することは、640〜660nmの会合由来の高い吸収(λ1/λ2)、黄色染料としての機能(λ3/λ2)、種々の溶媒への溶解性、波長制御、耐久性(耐光性、耐熱性)、グラム当りの吸光度のバランスを図る点で好ましい。また、詳細なメカニズムは不明であるが、0.1〜4個の置換基(a)が適当数不均一に存在することで、640〜660nmの会合由来の高い吸収(λ1/λ2)、黄色染料としての機能(λ3/λ2)、ケトン系溶媒への溶解性が向上するものと考えられる。また、色素全体としての分子量が大きくなることや、立体的にかさ高くなることで、特にアゾ色素の昇華性が抑えられたり、耐久性(特に耐熱性)が向上するものと考えられる。また、塩素原子または臭素原子、特に塩素原子がフタロシアニン骨格中に多数存在することで、吸収波長が長波長化でき、また耐久性(例えば、耐光性、耐熱性)が向上するものと考えられる。
より具体的には、本発明に係る置換基(a)は、下記構造を有するものが好ましい。
上記置換基のうち、置換基(a−1)〜(a−3)、(a−8)、(a−9)、(a−11)、(a−12)、(a−18)が好ましい。
2.置換基(b)または置換基(c)
置換基(b)は、下記式(3)の構造を有する。なお、下記式(3)から明らかなように、置換基(b)は、1個の置換基「−COO(R3O)m4」および必要であれば1〜4個の炭素数1〜8のアルコキシ基またはハロゲン原子である置換基(−R5)を有するフェノキシ基である。
また、置換基(c)は、下記式(4)の構造を有する。同様にして、下記式(4)から明らかなように、置換基(c)は、1個の置換基「−COO(R3O)m4」および必要であれば1〜6個の炭素数1〜8のアルコキシ基またはハロゲン原子である置換基(−R5)を有するナフトキシ基である。
なお、上記式(4)において、ナフタレン環の置換基である酸素原子(−O−)及び置換基「−COO(R3O)m4」は、ナフタレン環のいずれの水素原子と置換されてもよい。すなわち、上記式(4)では、置換基「−COO(R3O)m4」が、2個のベンゼン環のうち、酸素原子が存在する側のベンゼン環に存在しているが、この置換基は当該位置に存在することを意味するものではなく、他方のベンゼン環に存在してもよい。すなわち、上記式(4)の置換基(c)は、下記置換基(c1)及び(c2)双方を包含する。なお、下記置換基(c1)及び(c2)には、置換基R5が記載されていないが、置換基R5が導入されてもよい。式(4)の置換基(c)が置換基R5を有する場合には、当該置換基R5は、同様にして、2個のベンゼン環のうち、酸素原子が存在する側のベンゼン環または酸素原子が存在しない側のベンゼン環のいずれに存在していてもよい。あるいは、複数(2〜6個)の置換基R5が存在する場合には、これらの置換基R5は、それぞれ、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。
上記式(3)および(4)中、R3は、炭素数1〜3のアルキレン基を表わす。ここで、炭素数1〜3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基がある。これらのうち、溶媒溶解性、耐熱性などの上記特性を考慮すると、R3は、エチレン基またはプロピレン基であることが好ましく、エチレン基であることが
より好ましい。なお、「R3O」が複数個存在する(即ち、mが2〜4である)場合には、各「R3O」は、それぞれ、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。R4は、炭素数1〜8のアルキル基を表わす。ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、特に制限されず、上記R1と同様の例が使用できる。これらのうち、溶媒溶解性、耐熱性などの上記特性を考慮すると、R4は、炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキル基、特に炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基が好ましい。mは、オキシアルキレン基(R3O)の繰り返し単位数を表わし、1〜4の整数である。溶媒溶解性、耐熱性などの上記特性を考慮すると、好ましくは、mは、1または2である。また、上記式(3)中、R5およびpは、上記式(2−1)と同様の定義である。上記式(4)中、p'は、0〜6の整数であり、0〜2が好ましく、0(即ち、R5が存在しない形態)が特に好ましい。
すなわち、置換基(b)は、R3がエチレン基またはプロピレン基であり、R4が炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基であり;およびmは1または2である、式(3)で表わされることが好ましい。同様にして、置換基(c)は、R3がエチレン基またはプロピレン基であり、R4が炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基であり;およびmは1または2である、式(4)で表わされることが好ましい。
本発明において、上記式(1)の置換基Z1〜Z16のうち、1〜6個は、置換基(b)または置換基(c)である。置換基(b)または置換基(c)は、溶媒溶解性に寄与する。ここで、置換基(b)または置換基(c)が複数個存在する場合には、置換基(b)または置換基(c)は、それぞれ、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、置換基(b)及び置換基(c)が共存していてもよい。Z1〜Z16のうち、置換基(b)または置換基(c)が1個未満であると、フタロシアニン化合物の溶媒溶解性が低くなりすぎるため、好ましくない。逆に、置換基(b)または置換基(c)が6個を超えると、630nm付近の短波長側の吸収が小さくなり、また分子量も大きくなることからグラム当たりの色の強さが小さくなり、好ましくない。上記式(1)の置換基Z1〜Z16のうち、好ましくは1.0〜4.0個、より好ましくは1.2〜3.5個、特に好ましくは1.5〜3.0個が置換基(b)または置換基(c)である。
1〜6個の置換基(b)または置換基(c)のフタロシアニン骨格での導入位置は、全置換数が上記範囲であれば特に制限されない。このため、Z1〜Z4、Z5〜Z8、Z9〜Z12、Z13〜Z16を含む各構成単位を、それぞれ、構成単位A、B、C、Dとすると、1〜6個の置換基(b)または置換基(c)が、構成単位A〜D中、ほぼ均一に導入されても不均一に導入されてもよい。好ましくは、1〜6個の置換基(b)または置換基(c)は、構成単位A〜D中、不均一に導入される。このように置換基が混在することは、640〜660nmの会合由来の高い吸収(λ1/λ2)、黄色染料としての機能(λ3/λ2)、種々の溶媒への溶解性、波長制御、耐久性(耐光性、耐熱性)、グラム当りの吸光度のバランスを図る点で好ましい。また、詳細なメカニズムは不明であるが、1〜6個の置換基(b)または置換基(c)が適当数不均一に存在することで、分子の凝集を防ぐことができ、結晶化が起こり難くなるため、ケトン系溶媒やグリコール系溶媒への溶解性が向上するものと考えられる。
すなわち、本発明に係る置換基(b)は、下記構造を有するものが好ましい。
上記置換基のうち、本発明に係る置換基(b)は、置換基(b−3)、(b−4)であることがより好ましく、置換基(b−3)であることが特に好ましい。
また、本発明に係る置換基(c)は、下記構造を有するものが好ましい。
より好ましくは、本発明に係る置換基(c)は、上記置換基(c−1)、(c−2)及び(c−3)である。
3.有機置換基
本発明において、有機置換基の構造は、特に制限されず、得られるフタロシアニン化合物の特性に応じて適宜選択される。具体的には、有機置換基としては、下記式(5):
で表される置換基(d)(以下、単に「置換基(d)」と称する)、下記式(6):
で表される置換基(e)(以下、単に「置換基(e)」と称する)、下記式(7):
で表される置換基(f)(以下、単に「置換基(f)」と称する)、下記式(8):
で表される置換基(g)(以下、単に「置換基(g)」と称する)、下記式(9):
で表される置換基(h)(以下、単に「置換基(h)」と称する)、および下記式(10):
で表される置換基(i)(以下、単に「置換基(i)」と称する)がある。
上記置換基(d)は、上記式(5)で表される。上記式(5)中、Xは、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表わし、好ましくは酸素原子を表わす。R5およびpは、上記式(2−1)と同様の定義であるため、説明を省略する。R6は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、または式:−(R3O)m4で表わされる基を表わし、この際、R3、R4およびmは、上記式(3)と同様の定義である。ここで、炭素数1〜8のアルキル基の具体例は、上記式(3)と同様の定義である。これらのうち、溶媒溶解性、耐熱性などの特性を考慮すると、R6は、水素原子、炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキル基、または式:−(R3O)m4で表わされる基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基、または式:−(R3O)m4で表わされる基であることがより好ましい。
すなわち、置換基(d)は、Xは、酸素原子であり;R6は、水素原子、炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基、または式:−(R3O)m4で表わされる基であり、この際、R3が、エチレン基またはプロピレン基であり、R4は、炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基であり、mは、1または2である、式(5)で表わされることが好ましい。
また、上記式(5)の置換基(d)において、置換基−SO2NHR6のベンゼン環への結合位置は、特に制限されない。例えば、pが0である場合には、置換基(d)は、1個の置換基がフェニル基に結合した構造を有する。ここで、置換基は、フェニル基の、オルト位(2位)、メタ位(3位)またはパラ位(4位)のいずれかの位置に配置される。これらのうち、3位および4位が好ましく、4位が特に好ましい。このような構造のフタロシアニン化合物は、ケトン系溶媒に可溶性であり、樹脂との相溶性に優れる。また、上記式(5)中、pが1である場合には、置換基(d)は、1個の置換基「−SO2NHR6」および1個の置換基(−R5)がフェニル基に結合した構造を有する。ここで、置換基「−SO2NHR6」及び「R5」は、それぞれ、フェニル基のいずれの位置に導入されてもよい。この際、溶媒溶解性、耐熱性などの上記特性を考慮すると、2,4位、3,4位、3,5位などが好ましく、2,4位、3,4位がより好ましい。
上記置換基(e)は、上記式(6)で表される。上記式(6)中、Xは、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表わし、好ましくは酸素原子を表わす。R5およびpは、上記式(2−1)と同様の定義であため、説明を省略する。R6は、上記式(5)と同様の定義であるため、説明を省略する。溶媒溶解性、耐熱性などの上記特性を考慮すると、R6は、水素原子、炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキル基、または式:−(R3O)m4で表わされる基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基、または式:−(R3O)m4(この際、R3、R4およびmは、上記式(3)と同様の定義である)で表わされる基であることがより好ましい。
すなわち、置換基(e)は、Xは、酸素原子であり;R6は、水素原子、炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基、または式:−(R3O)m4で表わされる基であり、この際、R3が、エチレン基またはプロピレン基であり、R4は、炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基であり、mは、1または2である、式(6)で表わされることが好ましい。
また、上記式(6)の置換基(e)において、置換基−CONHR6のベンゼン環への結合位置は、特に制限されない。例えば、pが0である場合には、置換基(e)は、1個の置換基がフェニル基に結合した構造を有する。ここで、置換基は、フェニル基の、オルト位(2位)、メタ位(3位)またはパラ位(4位)のいずれかの位置に配置される。これらのうち、3位および4位が好ましく、4位が特に好ましい。このような構造のフタロシアニン化合物は、ケトン系溶媒に可溶性であり、樹脂との相溶性に優れる。また、上記式(6)中、pが1である場合には、置換基(e)は、1個の置換基「−CONHR6」および1個の置換基(−R5)がフェニル基に結合した構造を有する。ここで、置換基「−CONHR6」及び「R5」は、それぞれ、フェニル基のいずれの位置に導入されてもよい。この際、溶媒溶解性、耐熱性などの上記特性を考慮すると、2,4位、3,4位、3,5位などが好ましく、2,4位、3,4位がより好ましい。
上記置換基(f)は、上記式(7)で表される。上記式(7)中、Xは、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表わし、好ましくは酸素原子を表わす。R5およびpは、上記式(2−1)と同様の定義であるため、説明を省略する。R3、R4およびmは、上記式(3)と同様の定義であるため、説明を省略する。n'は、1〜3の整数である。溶媒溶解性、耐熱性などの上記特性を考慮すると、n'は、1または2であることが好ましい。
すなわち、置換基(f)は、Xは、酸素原子であり;R3は、エチレン基またはプロピレン基であり;R4は、炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基であり;mは、1または2であり;n'は、1または2である、式(7)で表わされることが好ましい。
また、上記式(7)の置換基(f)において、置換基−(CH2n'COO(R3O)m4のベンゼン環への結合位置は、特に制限されない。例えば、pが0である場合には、置換基(f)は、1個の置換基がフェニル基に結合した構造を有する。ここで、置換基は、フェニル基の、オルト位(2位)、メタ位(3位)またはパラ位(4位)のいずれかの位置に配置される。これらのうち、3位および4位が好ましく、4位が特に好ましい。このような構造のフタロシアニン化合物は、ケトン系溶媒に可溶性であり、樹脂との相溶性に優れる。また、上記式(7)中、pが1である場合には、置換基(f)は、1個の置換基「−(CH2n'COO(R3O)m4」および1個の置換基(−R5)がフェニル基に結合した構造を有する。ここで、置換基「−(CH2n'COO(R3O)m4」及び「R5」は、それぞれ、フェニル基のいずれの位置に導入されてもよい。この際、溶媒溶解性、耐熱性などの上記特性を考慮すると、2,4位、3,4位、3,5位などが好ましく、2,4位、3,4位がより好ましい。
上記置換基(g)は、上記式(8)で表される。上記式(8)中、Xは、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表わし、好ましくは酸素原子を表わす。R5およびpは、上記式(2−1)と同様の定義であるため、説明を省略する。
また、上記式(8)の置換基(g)において、シアノ基(−CN)のベンゼン環への結合位置は、特に制限されない。例えば、pが0である場合には、置換基(f)は、1個のシアノ基がフェニル基に結合した構造を有する。ここで、シアノ基は、フェニル基の、オルト位(2位)、メタ位(3位)またはパラ位(4位)のいずれかの位置に配置される。これらのうち、3位および4位が好ましく、4位が特に好ましい。このような構造のフタロシアニン化合物は、ケトン系溶媒に可溶性であり、樹脂との相溶性に優れる。また、上記式(8)中、pが1である場合には、置換基(f)は、1個のシアノ基および1個の置換基(−R5)がフェニル基に結合した構造を有する。ここで、シアノ基(−CN)及び置換基「R5」は、それぞれ、フェニル基のいずれの位置に導入されてもよい。この際、溶媒溶解性、耐熱性などの上記特性を考慮すると、2,4位、3,4位、3,5位などが好ましく、2,4位、3,4位がより好ましい。
上記置換基(h)は、上記式(9)で表される。上記式(9)中、Xは、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表わし、好ましくは酸素原子を表わす。R5およびpは、上記式(2−1)と同様の定義であるため、説明を省略する。
また、上記式(9)の置換基(h)において、ニトロ基のベンゼン環への結合位置は、特に制限されない。例えば、pが0である場合には、置換基(f)は、1個のニトロ基がフェニル基に結合した構造を有する。ここで、ニトロ基は、フェニル基の、オルト位(2位)、メタ位(3位)またはパラ位(4位)のいずれかの位置に配置される。これらのうち、3位および4位が好ましく、4位が特に好ましい。このような構造のフタロシアニン化合物は、ケトン系溶媒に可溶性であり、樹脂との相溶性に優れる。また、上記式(9)中、pが1である場合には、置換基(h)は、1個のニトロ基および1個の置換基(−R5)がフェニル基に結合した構造を有する。ここで、ニトロ基及び置換基「R5」は、それぞれ、フェニル基のいずれの位置に導入されてもよい。この際、溶媒溶解性、耐熱性などの上記特性を考慮すると、2,4位、3,4位、3,5位などが好ましく、2,4位、3,4位がより好ましい。
上記置換基(i)は、上記式(10)で表される。上記式(10)中、Xは、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表わし、好ましくは酸素原子を表わす。R5'は、ハロゲン原子であり、好ましくはフッ素原子または塩素原子である。なお、R5'が複数個存在する(すなわち、p"が2〜5の整数である)場合には、各R5'は、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。p"は、1〜5の整数である。この際、溶媒溶解性、耐熱性などの上記特性を考慮すると、p"は、1〜3の整数であることが好ましい。
また、上記式(10)の置換基(i)において、置換基「R5'」のベンゼン環への結合位置は、特に制限されない。例えば、p"が1である場合には、置換基(i)は、1個の置換基「R5'」がフェニル基に結合した構造を有する。ここで、置換基「R5'」は、フェニル基の、オルト位(2位)、メタ位(3位)またはパラ位(4位)のいずれかの位置に配置される。これらのうち、3位および4位が好ましく、4位が特に好ましい。このような構造のフタロシアニン化合物は、ケトン系溶媒に可溶性であり、樹脂との相溶性に優れる。また、上記式(10)中、p"が2である場合には、置換基(i)は、2個の置換基「R5'」がフェニル基に結合した構造を有する。ここで、置換基「R5'」は、それぞれ、フェニル基のいずれの位置に導入されてもよい。この際、溶媒溶解性、耐熱性などの上記特性を考慮すると、2,4位、2,6位、3,4位、3,5位などが好ましく、2,4位、2,6位、3,4位がより好ましい。
上記置換基(d)〜(i)のいずれかを本発明に係るフタロシアニン骨格に導入する場合には、上記置換基のうち、置換基(f)、(g)、(h)が導入されることが好ましく、置換基(f)、(g)が導入されることがより好ましい。
本発明において、上記式(1)の置換基Z1〜Z16のうち、0〜4個は、有機置換基である。ここで、有機置換基が複数個存在する場合には、各有機置換基は同一であってもあるいは異なるものであってもよい。Z1〜Z16のうち、有機置換基が4個を超えると、溶解性が悪化したり、また分子量が大きくなりグラム当たりの色の強さが小さくなるなどして好ましくない。上記式(1)の置換基Z1〜Z16のうち、好ましくは0〜3個、より好ましくは0〜2個が有機置換基である。
4.残部
上記式(1)のZ1〜Z16のうち、置換基(a)〜(c)が導入されない残部は、水素原子またはハロゲン原子である。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。残部は、ハロゲン原子であることが好ましく、塩素原子または臭素原子であるであることがより好ましい。このように残部に塩素原子または臭素原子を配置することによって、耐熱性及び耐候性(耐光性)を向上できる。特に、塩素原子を配置することで、吸収波長が長波長化でき、また、耐熱性及び耐候性(耐光性)を向上できる。
5.中心金属
上記式(1)において、Mは、無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わすものである。ここで、無金属とは、金属以外の原子、例えば、2個の水素原子であることを意味する。また、金属としては、鉄、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、錫等が挙げられる。金属酸化物としては、チタニル、バナジル等が挙げられる。金属ハロゲン化物としては、塩化アルミニウム、塩化インジウム、塩化ゲルマニウム、塩化錫(II)、塩化錫(IV)、塩化珪素等が挙げられる。好ましくは、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物であり、より好ましくは銅、バナジル及び亜鉛であり、さらに好ましくは亜鉛、銅であり、特に好ましくは亜鉛である。中心金属が亜鉛であると、吸収波長をシアン色に制御しやすく、溶剤や樹脂に対する溶解性に優れるため、特に好ましい。
なお、本明細書において、式(1)における、Z1、Z4、Z5、Z8、Z9、Z12、Z13及びZ16は、フタロシアニン核の8箇所のα位に置換する置換基を表わすため、これらの置換基をα位の置換基とも称する。また、同様にして、式(1)における、Z2、Z3、Z6、Z7、Z10、Z11、Z14及びZ15は、フタロシアニン核の8箇所のβ位に置換する置換基を表わすため、これらの置換基をβ位の置換基とも称する。一般的に、β位の置換基は耐熱性の向上、640〜660nmの会合由来の高い吸収(λ1/λ2)、黄色染料としての機能(λ3/λ2)に、α位の置換基は溶媒溶解性の向上、黄色染料としての機能(λ3/λ2)に、それぞれ、効果があるので、両者をバランスよく配合することが好ましい。
本発明のフタロシアニン化合物の吸収波長としては、波長領域の中でも640〜750nmの波長領域に最大吸収波長(λmax)を有することが好ましい。ゆえに、本発明のフタロシアニン化合物は、シアン色インクに好適に使用できる。本発明のフタロシアニン化合物は、より好ましくは640〜720nm、さらにより好ましくは640〜700nm、特に640〜690nm、最も好ましくは645〜655nmの波長領域に最大吸収波長(λmax)を有する。なお、本明細書において、最大吸収波長は、下記実施例で測定の方法で測定された値を採用する。
また、本発明のフタロシアニン化合物は、コントラストに優れ、640〜660nmに会合由来の高い吸収を有する。本発明のフタロシアニン化合物は、特に650nm付近の光を選択的に吸収する。ゆえに、本発明のフタロシアニン化合物は、シアン色インクに好適に使用できる。ここで、フタロシアニン化合物の会合の程度は、690nmの吸光度(λ2)に対する650nmの吸光度(λ1)の割合(λ1/λ2)で表わすことができ、λ1/λ2が大きいほど高い会合状態にあることを意味する。具体的には、本発明のフタロシアニン化合物の、690nmの吸光度(λ2)に対する650nmの吸光度(λ1)の割合(λ1/λ2)は、通常、0.6を超え、好ましくは0.8以上であり、より好ましくは1以上であり、特に好ましくは1.1以上である。なお、λ1/λ2は、高いほど好ましいため、その上限は特に制限されない。好ましくは、λ1/λ2の上限は、2であり、1.5であることがより好ましい。このため、本発明のフタロシアニン化合物を例えばインクジェット用インクに適用する際には、フタロシアニン化合物の添加量を少量にすることができるため、特に好ましい。なお、本明細書において、690nmの吸光度(λ2)および650nmの吸光度(λ1)は、下記実施例で測定の方法で測定された値を採用する。
上述したように、フタロシアニン化合物は、一般的に、アゾ系の黄色染料を調色のために一緒に混合して、緑色色調を呈するインクを調製する。しかし、このアゾ系の黄色染料は通常耐熱性および耐候性(耐光性)に劣るため、このようなインクを使用して形成される緑色の画像や文字は、耐熱性や耐候性が不十分で、十分優れた色調の記録物が得られないという問題があった。これに対して、本発明のフタロシアニン化合物は、調色のための黄色染料としても機能できる。このため、本発明のフタロシアニン化合物を使用すると、緑色色調を呈するインク調製時のアゾ系の黄色染料の使用量を有意に低減できるまたは当該アゾ系の黄色染料の使用を省略できる。一般的にピリドンアゾ色素は、色調は良いものの、昇華性があるために使用できない場合があるが、本発明のようにフタロシアニン化合物にピリドンアゾ色素を置換させると、単に混合して調色する場合に比べアゾ色素の昇華性が抑えられ全体として耐久性(特に耐熱性)が大幅に向上できる。ここで、フタロシアニン化合物の調色のための黄色染料としても機能の程度は、690nmの吸光度(λ2)に対する460nmの吸光度(λ3)の割合(λ3/λ2)で表わすことができ、λ3/λ2が大きいほど黄色染料としても機能に優れることを意味する。具体的には、本発明のフタロシアニン化合物の、690nmの吸光度(λ2)に対する460nmの吸光度(λ3)の割合(λ3/λ2)は、通常、好ましくは0.04を超え、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.07以上であり、特に好ましくは0.1以上である。なお、λ3/λ2は、バランスが良いほど好ましいため、その上限は0.5〜1.0前後である。好ましくは、λ3/λ2の上限は、1.0であり、0.5であることがより好ましい。このため、本発明のフタロシアニン化合物を例えば緑色色調を呈するインクジェット用インクに適用する際には、調色のための黄色染料の添加量を少量にすることができるまたは調色のための黄色染料を添加しなくてもよいため、特に好ましい。なお、本明細書において、690nmの吸光度(λ2)および460nmの吸光度(λ3)は、下記実施例で測定の方法で測定された値を採用する。
さらに、本発明のフタロシアニン化合物は、ケトン系溶媒に可溶性である。ここで、ケトン系溶媒としては、分岐または直鎖状ケトン及び環状ケトンが有効に用いられる。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、DIBK(ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、DAA(ジアセトンアルコール)などが挙げられる。これらのうち、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノンが、インクジェット用インクでは使用されることが多い。ここで、本発明のフタロシアニン化合物の溶媒溶解性は、高いほど好ましく、特に制限されないが、ケトン系溶媒(特にシクロヘキサノン)への溶解度が、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。溶解度の上限は特に限定されるものではないが、通常は30質量%以下程度である。
また、本発明のフタロシアニン化合物は、グリコール系溶媒に可溶性である。ここで、グリコール系溶媒としては、特に制限されないが、具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。これらのうち、PGMEAが好ましい。ここで、本発明のフタロシアニン化合物の溶媒溶解性は、例えば、下記実施例で評価方法に従って、評価できるが、この際のろ過テストにおいて、「全て問題なくろ過できる」ことが好ましい。または、本発明のフタロシアニン化合物は、グリコール系溶媒(特にPGMEA)への溶解度が、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。溶解度の上限は特に限定されるものではないが、通常は30質量%以下程度である。
加えて、本発明のフタロシアニン化合物は、樹脂との相溶性、耐熱性、耐光性および耐候性の少なくとも1つの特性に優れる。
上記したような特性は、フタロシアニン核に置換されている置換基(a)、置換基(b)または(c)、および有機置換基(例えば、置換基(d)〜(i))の存在ならびにその置換数に起因する。そして、置換基の種類、数、中心金属の選択により、種々の吸収波長などの特性を有するフタロシアニン化合物を得ることができる。
したがって、本発明のフタロシアニン化合物は、インクジェット用インク、特に緑色色調を呈するインクジェット用インク(緑色あるいは緑味のシアン色インクジェット用インク)に好適に使用できる。
本発明のフタロシアニン化合物の製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適当に利用することができるが、好ましくは溶融状態または有機溶媒中で、フタロニトリル化合物と金属塩とを環化反応する方法が特に好ましく使用できる。以下、本発明のフタロシアニン化合物について、製造方法の特に好ましい実施形態を記載する。しかしながら、本発明は、下記好ましい実施形態に制限されるものではない。
すなわち、下記式(I):
で示されるフタロニトリル化合物(1)、下記式(II):
で示されるフタロニトリル化合物(2)、下記式(III):
で示されるフタロニトリル化合物(3)、および下記式(IV):
で示されるフタロニトリル化合物(4)を、金属、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属(本明細書中では、一括して「金属化合物」とも称する)からなる群から選ばれる一種と環化反応させることによって、本発明のフタロシアニン化合物が製造できる。または、上記反応中、下記式(V)のフタロニトリル誘導体(特に、テトラクロロフタロニトリルまたはテトラブロモフタロニトリル)を、上記式(1)〜(4)のフタロニトリル化合物のいずれかと置換して、反応を行なってもよい。このようなフタロニトリル誘導体を反応に使用することによって、フタロシアニン骨格中に導入される塩素原子または臭素原子の数を適切に調節して、本発明に係る特定の置換基を適切な数及び種類で導入したフタロシアニン化合物を製造できる。上記反応において、式(1)のフタロシアニン化合物の構造に合わせて、フタロニトリル化合物(1)〜(4)を記載したが、目的とするフタロシアニン化合物の構造によっては、フタロニトリル化合物が1〜3種類となることもある。このため、例えば、Z1〜Z4、Z5〜Z8、Z9〜Z12、Z13〜Z16を含む構成単位A〜Dが同じ場合には、原料として使用されるフタロニトリル化合物は1種類となる。
なお、上記式(I)〜(IV)中、Z1〜Z16は、所望のフタロシアニン化合物の構造によって規定される。具体的には、上記式(I)〜(IV)中、Z1〜Z16は、それぞれ、上記式(1)中のZ1〜Z16の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。
上記態様において、出発原料である式(I)〜(IV)のフタロニトリル化合物は、特開昭64−45474号公報に開示されている方法などの、従来既知の方法により合成でき、また、市販品を用いることもできるが、好ましくは、下記式(V):
で示されるフタロニトリル誘導体(本明細書中では、単に「フタロニトリル誘導体」とも称する)を、下記式(3a):
で表される置換基(b)含有前駆体(本明細書中では、単に「置換基(b)含有前駆体」とも称する)、または下記式(4a):
で表される置換基(c)含有前駆体(本明細書中では、単に「置換基(c)含有前駆体」とも称する)と反応させることによって、置換基(b)または(c)を有するフタロニトリル化合物(本明細書中では、単に「置換基(b/c)含有フタロニトリル化合物」とも称する)を得る。なお、上記反応は、本発明のフタロシアニン化合物が有機置換基を持たないフタロシアニン化合物の製造方法の好ましい形態を示している。本発明のフタロシアニン化合物が有機置換基を有する場合には、各有機置換基の末端に水素原子(H)を付加した化合物(例えば、式(5)の置換基(d)の場合には下記式(5a)の化合物)(本明細書中では、単に「有機置換基含有前駆体」とも称する)を上記反応に適当量使用する以外は同様の方法が使用できる。これにより、置換基(b)または(c)および有機置換基を有するフタロニトリル化合物(本明細書中では、単に「置換基(b/c)及び有機置換基含有フタロニトリル化合物」とも称する)が得られる。
このようにして得られた置換基(b/c)含有フタロニトリル化合物または置換基(b/c)及び有機置換基含有フタロニトリル化合物を、上記フタロニトリル化合物(1)〜(4)として使用して、金属化合物と環化反応させることによって、置換基(b)または(c)及び必要であれば有機置換基を有するフタロシアニン前駆体(本明細書中では、単に「フタロシアニン前駆体(1)」とも称する)が製造できる。
次に、このようにして得られるフタロシアニン前駆体(1)を、下記式(2a−1):
で表される置換基(a1−1)含有前駆体(本明細書中では、単に「置換基(a1−1)含有前駆体」とも称する)、下記式(2a−2):
で表される置換基(a1−2)含有前駆体(本明細書中では、単に「置換基(a1−2)含有前駆体」とも称する)、下記式(2a−3):
で表される置換基(a1−3)含有前駆体(本明細書中では、単に「置換基(a1−3)含有前駆体」とも称する)と反応させて、フタロシアニン前駆体(1')を得る。なお、以下では、置換基(a1−1)含有前駆体、置換基(a1−2)含有前駆体及び置換基(a1−3)含有前駆体を一括して、「置換基(a1)含有前駆体」とも称する。その後、このフタロシアニン前駆体(1')を、下記式(2b):
で表される置換基(a2)含有前駆体(本明細書中では、単に「置換基(a2)含有前駆体」とも称する)と反応させることによって、本発明のフタロシアニン化合物を製造できる。なお、上記式(2a)及び(2b)中、X、Y1、Y2、Y3、R1、R2、R5、n、p及びrは、上記式の各置換基の定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、上記式(2b)中、「Hal」は、ハロゲン原子であり、好ましくは塩素原子である。上記製造方法は、いずれのフタロシアニン化合物の製造に使用できるが、特に上記式(2−1)中のY1が酸素原子(−O−)である置換基(a1)を有するフタロシアニン化合物、上記式(2−2)中のY1がイミノ基(−NH−)である置換基(a2)を、同じく上記式(2−3)中のY1がイミノ基(−NH−)である置換基(a3)を有するフタロシアニンノ化合物の製造に好適に使用できる。
または、上記式(V)のフタロニトリル誘導体を、上記式(2a−1)の置換基(a1−1)含有前駆体、上記式(2a−2)の置換基(a1−2)含有前駆体、または上記式(2a−3)の置換基(a1−3)含有前駆体と、反応させることによって、式(a2)の化合物由来の置換基(a1)、(a2)または(a3)を有するフタロニトリル化合物(本明細書中では、単に「置換基(a)含有フタロニトリル化合物」とも称する)を得る。なお、上記反応は、本発明のフタロシアニン化合物が有機置換基を持たないフタロシアニン化合物の製造方法の好ましい形態を示している。本発明のフタロシアニン化合物が有機置換基を有する場合には、各有機置換基の末端に水素原子(H)を付加した化合物(例えば、式(5)の置換基(d)の場合には上記式(5a)の化合物)(有機置換基含有前駆体)を上記反応に適当量使用する以外は同様の方法が使用できる。これにより置換基(a2)、置換基(b)または(c)および有機置換基を有するフタロニトリル化合物(本明細書中では、単に「置換基(a)及び有機置換基含有フタロニトリル化合物」とも称する)が得られる。
このようにして得られた置換基(a)含有フタロニトリル化合物または置換基(a)及び有機置換基含有フタロニトリル化合物、および置換基(b/c)含有フタロニトリル化合物または置換基(b/c)及び有機置換基含有フタロニトリル化合物を、上記フタロニトリル化合物(1)〜(4)として使用して、金属化合物と環化反応させることによって、置換基(a)、置換基(b)または(c)及び必要であれば有機置換基を有するフタロシアニン前駆体(本明細書中では、単に「フタロシアニン前駆体(2)」とも称する)が製造できる。
次に、このようにして得られるフタロシアニン前駆体(2)を、上記式(2b)の置換基(a2)含有前駆体と反応させることによって、本発明のフタロシアニン化合物を製造できる。上記製造方法は、いずれのフタロシアニン化合物の製造に使用できるが、特に上記式(2−1)中のY1がイミノ基(−NH−)である置換基(a1)を有するフタロシアニン化合物の製造に好適に使用できる。
上記反応では、式(V)のフタロニトリル誘導体を、出発原料として使用する。上記式(V)中、X1、X2、X3及びX4は、ハロゲン原子を表わす。ここで、X1、X2、X3及びX4は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。これらのうち、X1、X2、X3及びX4は、フッ素原子、塩素原子または臭素原子を表わすことが好ましく、塩素原子または臭素原子を表わすことが特に好ましい。これにより、得られるフタロシアニン化合物は、置換基(a)〜(c)及び必要であれば有機置換基が導入されない残部が塩素原子または臭素原子であるフタロシアニン化合物となるため、製造工程が少なく、また操作が簡易である。特にテトラクロロフタロニトリルまたはテトラブロモフタロニトリルを出発原料として使用する場合には、前駆体が、当該テトラクロロフタロニトリルまたはテトラブロモフタロニトリルの3〜6位の塩素原子または臭素原子とランダムに反応する。このため、テトラクロロフタロニトリルまたはテトラブロモフタロニトリルを出発原料として使用することにより、置換基(a)〜(c)及び必要であれば有機置換基が、フタロシアニン骨格のα位及びβ位にランダムに導入できる。このため、テトラクロロフタロニトリルまたはテトラブロモフタロニトリルをフタロニトリル誘導体として使用する場合には、フタロニトリル化合物は、テトラクロロフタロニトリルまたはテトラブロモフタロニトリルの4個の塩素原子または臭素原子が任意に前駆体で置換された混合物の形態で得られる。
また、上記フタロニトリル誘導体と前駆体との反応において、前記前駆体の割合は、目的とするフタロニトリル化合物の構造によって適宜選択されうる。また、前記前駆体の合計使用量は、特に制限されず、所望のフタロニトリル化合物の構造によって適宜選択されうる。
上記フタロニトリル誘導体と各前駆体との反応は、無溶媒下であるいは有機溶媒中で行われてもよいが、好ましくは有機溶媒中で行なわれる。この際使用できる有機溶媒としては、アセトニトリル及びベンゾニトリル等のニトリル;アセトン及び2−ブタノン等の極性溶媒などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、アセトニトリル、ベンゾニトリル及びアセトンである。溶媒を使用する際の有機溶媒の使用量は、フタロニトリル誘導体の濃度が、通常、2〜50質量%、好ましくは10〜40質量%となるような量である。また、このフタロニトリル誘導体と前駆体との反応は、反応中に発生するハロゲン化水素(例えば、塩化水素やフッ化水素)等を除去するために、これらのトラップ剤を使用することが好ましい。トラップ剤を使用する際の具体的なトラップ剤の例としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム及び炭酸マグネシウムなどが挙げられ、これらのうち、炭酸カリウム、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムが好ましい。また、トラップ剤を使用する際のトラップ剤の使用量は、反応中に発生するハロゲン化水素等を効率良く除去できる量であれば特に制限されないが、前駆体1モルに対して、通常1〜4モル、好ましくは1〜2モルである。
また、上記フタロニトリル誘導体と前駆体との反応条件は、両者の反応が進行して所望のフタロニトリル化合物を得られる条件であれば特に制限されない。具体的には、反応温度は、通常、20〜150℃、好ましくは40〜120℃である。また、反応時間は、通常、0.5〜20時間、好ましくは1〜10時間である。
上記反応により、上記式(I)〜(IV)のフタロニトリル化合物(1)〜(4)が得られるが、反応後は、従来公知の方法に従って、晶析、ろ過、洗浄、乾燥を行なってもよい。このような操作により、フタロニトリル化合物を効率よく、しかも高純度で得ることができる。
次に、環化反応は、式(I)〜(IV)のフタロニトリル化合物(1)〜(4)および必要であれば式(V)のフタロニトリル誘導体と、金属、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属からなる群から選ばれる一種とを、溶融状態または有機溶媒中で反応させることが好ましい。この際使用できる金属、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属としては、反応後に得られる式(1)のフタロシアニン化合物のMに相当するものが得られるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、上記式(1)におけるMの項で列挙された鉄、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム及びスズ等の金属、当該金属の、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の金属ハロゲン化合物、酸化バナジウム、酸化チタニル及び酸化銅等の金属酸化物、酢酸塩等の有機酸金属、ならびにアセチルアセトナート等の錯体化合物及びカルボニル鉄等の金属カルボニル等が挙げられる。具体的には、塩化バナジウム、塩化チタン、塩化銅、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化鉄、塩化インジウム、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化ゲルマニウム、塩化マグネシウム、ヨウ化銅、ヨウ化亜鉛、ヨウ化コバルト、ヨウ化インジウム、ヨウ化アルミニウム、臭化銅、臭化亜鉛、臭化コバルト、臭化アルミニウム、等の金属ハロゲン化物;一酸化バナジウム、三酸化バナジウム、四酸化バナジウム、五酸化バナジウム、二酸化チタン、一酸化鉄、三二酸化鉄、四三酸化鉄、酸化マンガン、一酸化ニッケル、一酸化コバルト、三二酸化コバルト、二酸化コバルト、酸化第一銅、酸化第二銅、三二酸化銅、酸化パラジウム及び酸化亜鉛、等の金属酸化物;酢酸銅、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、安息香酸銅、安息香酸亜鉛等の有機酸金属;ならびにアセチルアセトナート等の錯体化合物及びコバルトカルボニル、鉄カルボニル、ニッケルカルボニル等の金属カルボニルなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは金属、金属酸化物及び金属ハロゲン化物であり、より好ましくは金属ハロゲン化物であり、さらに好ましくは、ヨウ化アルミニウム、塩化銅およびヨウ化亜鉛であり、より好ましくは、塩化銅およびヨウ化亜鉛であり、特に好ましくはヨウ化亜鉛である。ヨウ化亜鉛を用いる場合、中心金属は、亜鉛ということになる。金属ハロゲン化物のうち、ヨウ化物を用いることが好適な理由は、溶剤や樹脂に対する溶解性に優れ、得られるフタロシアニン化合物のスペクトルがシャープであり、所望の波長に収まりやすいためである。環化反応の際にヨウ化物を用いた場合にスペクトルがシャープになる詳細なメカニズムは不明であるが、ヨウ化物を用いた場合、反応後にフタロシアニン化合物中に残存するヨウ素が、フタロシアニン化合物と何らかの相互作用を起こして、フタロシアニン化合物の層間にヨウ素が存在するようになるためであると推定される。しかしながら、上記メカニズムに限定されるものではない。環化反応に金属ヨウ化物を用いた場合と同様の効果を得るために、得られたフタロシアニン化合物をヨウ素で処理してもよい。
また、上記態様において、また、環化反応は、無溶媒中でも行なえるが、有機溶媒を使用して行なうのが好ましい。有機溶媒は、出発原料としてのフタロニトリル化合物との反応性の低い、好ましくは反応性を示さない不活性な溶媒であればいずれでもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、o−クロロトルエン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、エチレングリコール、およびベンゾニトリル等の不活性溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノ−ル、2−プロパノ−ル、1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−ペンタノール、1−オクタノール等のアルコール;ならびにピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトフェノン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、1−オクタノール、ジクロロベンゼンおよびベンゾニトリルが、より好ましくは、1−オクタノール、ジクロロベンゼンおよびベンゾニトリルが使用される。これらの溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
上記態様におけるフタロニトリル化合物および必要であれば式(V)のフタロニトリル誘導体と金属化合物との反応条件は、当該反応が進行する条件であれば特に制限されるものではないが、例えば、有機溶媒100質量部に対して、上記フタロニトリル化合物および必要であれば式(V)のフタロニトリル誘導体を、1〜500質量部、好ましくは10〜350質量部の範囲の合計量で、かつ金属化合物を該フタロニトリル化合物(式(V)のフタロニトリル誘導体を使用する場合には、フタロニトリル化合物および式(V)のフタロニトリル誘導体の合計)4モルに対して、好ましくは1〜2モル、より好ましくは1〜1.5モルの範囲で仕込む。環化の際は、特に限定されるものではないが、好ましくは反応温度30〜250℃、より好ましくは80〜200℃の範囲で反応させる。反応時間は、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜30時間である。また、上記反応は、大気雰囲気中で行なってもよいが、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの流通下)で、行なわれることが好ましい。
上記環化後のフタロシアニン前駆体(1)と置換基(a1)含有前駆体との反応条件は、当該反応が進行する条件であれば特に制限されるものではない。例えば、上記反応は、無溶媒中でも行なえるが、有機溶媒を使用して行なうのが好ましい。有機溶媒は、特に制限されない。具体的には、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、o−クロロトルエン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、エチレングリコール、ベンゾニトリル、メタノール、エタノール、1−プロパノ−ル、2−プロパノ−ル、1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−ペンタノール、1−オクタノール、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトフェノン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。なお、当該反応は、反応中に発生するハロゲン化水素(例えば、塩化水素やフッ化水素)等を除去するために、これらのトラップ剤を使用することが好ましい。トラップ剤を使用する際の具体的なトラップ剤の例としては、上記と同様のトラップ剤が使用できる。フッ化カリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムがトラップ剤として好ましい。また、トラップ剤を使用する際のトラップ剤の使用量は、反応中に発生するハロゲン化水素等を効率良く除去できる量であれば特に制限されないが、置換基(a1)含有前駆体1モルに対して、通常0.5〜4モル、好ましくは1〜2モルである。また、上記反応温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは50〜140℃である。また、反応時間は、特に限定されるものではないが、好ましくは2〜12時間である。また、上記反応は、大気雰囲気中で行なってもよいし、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの流通下)で、行なってもよい。
また、フタロシアニン前駆体(1')またはフタロシアニン前駆体(2)と、上記式(2b)の置換基(a2)含有前駆体との反応は、当該反応が進行する条件であれば特に制限されない。例えば、上記反応は、無溶媒中でも行なえるが、有機溶媒を使用して行なうのが好ましい。有機溶媒は、特に制限されない。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、o−クロロトルエン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、ベンゾニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトフェノン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルエチルケトン、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられる。なお、当該反応は、反応中に発生するハロゲン化水素(例えば、塩化水素)等を除去するために、トラップ剤を使用することが好ましい。トラップ剤を使用する際の具体的なトラップ剤の例としては、上記と同様のトラップ剤が使用できる。上記以外のトラップ剤としてはトリエチルアミン、ピリジン、ピペラジンなどの有機性アミンがトラップ剤として使用でき、特にトリエチルアミンが好ましい。また、トラップ剤を使用する際のトラップ剤の使用量は、反応中に発生するハロゲン化水素等を効率良く除去できる量であれば特に制限されないが、置換基(a2)含有前駆体1モルに対して、通常1〜4モル、好ましくは1〜3モルである。また、上記反応温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは0〜100℃である。また、反応時間は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.5〜3時間である。また、上記反応は、大気雰囲気中で行なってもよいし、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの流通下)で、行なってもよい。
上記反応後は、従来公知の方法に従って、晶析、ろ過、洗浄、乾燥を行なってもよい。このような操作により、フタロシアニン化合物を効率よく、しかも高純度で得ることができる。
本発明のフタロシアニン化合物は、有機溶媒、特にケトン系溶媒やグリコール系溶媒との相溶性に優れるため、種々の用途に用いることができる。
例えば、本発明のフタロシアニン化合物は、プラズマディスプレー用フィルター、レーザービームを使用して樹脂を熱融着させるレーザー融着用の光熱交換剤、眼精疲労防止剤あるいは光導電材料等、さらに組織透過性の良い長波長域の光に吸収を持つ腫瘍治療用感光性色素、カラートナー、インクジェット用インク、改ざん偽造防止用インク、改ざん偽造防止用バーコード用インク、写真やフィルムの位置決め用マーキング剤、およびゴーグルのレンズや遮蔽板、プラスチックリサイクルの際の仕分け用染色剤、ならびにPETボトルの成形加工時のプレヒーィング助剤などに用いる際に優れた効果を発揮するものである。
上記したような特定の構造を有するフタロシアニン化合物は、特に650nm付近の光を選択的に吸収するため、濃いシアン色を呈する。このため、本発明のフタロシアニン化合物は、少量で濃いシアン色を呈しうる。また、調色のための黄色染料としても機能できる。このため、本発明のフタロシアニン化合物を使用すると、緑色色調を呈するインク調製時のアゾ系の黄色染料の使用量を有意に低減できるまたは当該アゾ系の黄色染料の使用を省略できる。上記に加えて、本発明のフタロシアニン化合物は、優れた樹脂との相溶性、耐熱性、耐光性および耐候性をも有する。加えて、本発明のフタロシアニン化合物は、ケトン系溶媒やグリコール系溶媒に可溶性である。
上記した特性を考慮すると、本発明のフタロシアニン化合物は、インクジェット用インク、特に緑色色調を呈するインクジェット用インクに好適に使用できる。したがって、本発明は、本発明のフタロシアニン化合物を含む、インクジェット用インク、特に緑色色調を呈するインクジェット用インクをも提供する。本発明のインクジェット用インクは、鮮明なグリーン色であり、特にインクジェット光沢紙において高い鮮明な色相を有する。また、耐熱性、耐候性、耐光性に優れる。また、他のイエロー、シアンのインクと共に用いてもよく、この場合には、通常のシアンインクとイエローインクの混色による緑色では達成できないような広い可視領域の色調をかもしだすことができ、優れた記録物を提供することがができる。
本発明のインクジェット用インクは、本発明のフタロシアニン化合物を色素として含む以外は、特開2010−195904号公報、特開2009−132812号公報及び特開平11−106693号公報など、従来と同様のインクジェット用インクでありうる。
本発明のインクジェット用インクの組成は、本発明のフタロシアニン化合物を色素として含む以外は公知の組成と同様でありうる。例えば、本発明のインクジェット用インクは、色素、樹脂および溶剤を含む。
本発明のインクジェット用インクは、本発明のフタロシアニン化合物を色素として含有することが必須である。ここで、本発明のフタロシアニン化合物の配合量は特に制限されないが、インクの総重量に対して、5〜30重量%が好ましく、10〜25重量%がより好ましい。このような範囲であれば、充分な濃度の印字面が得られ、インキ中での安定した溶解しうる。なお、本発明のフタロシアニン化合物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
また、本発明のインクジェット用インクは、本発明のフタロシアニン化合物を色素として含有することが必須であるが、他の青色系顔料または染料を使用してもよい。他の青色系顔料または染料は、青色を呈する(即ち、600〜750nmに最大吸収波長(λmax)を有する)ものであれば特に制限されず、公知の青色系顔料または染料が使用できる。具体的には、ブロムクレゾールグリーン、ブロムフェノールブルー、1−エチル−2−[3−クロロ−5−(1−エチル−2(1H)−キノリニリデン)−1,3−ペンタジエニル]キノリウムブロミド(λmax=694.4nm)、1,3,3−トリメチル−2−[5−(1,3,3−トリメチル−2(1H)−ベンズ[e]インドリニリデン)−1,3−ペンタジエニル]−3H−ベンズ[e]インドリニウムパークロレート(λmax=675.6nm)、3−エチル−2−[5−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)−1,3−ペンタジエニル]ベンゾチアゾリウムヨージド(λmax=651.6nm)等のシアニン系色素などが挙げられる。なお、上記において、括弧内に、最大吸収波長(λmax)を示す。ここで、上記他の顔料または染料の配合量は、特に制限されないが、インクの総重量に対して、1〜20重量%が好ましい。なお、上記他の顔料または染料は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
特に本発明のインクジェット用インクが緑色色調を呈するインクジェット用インクである場合には、調色を目的として、黄色染料をさらに混合してもよい。これにより、緑色色調を好みの色調に容易に調整できる。ここで、黄色染料としては、特に制限されず、公知の調色用の黄色染料が使用されるが、アゾ系の黄色系色素が好ましい。この際、アゾ基の数にも特に制限はないが、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個、黄色系色素の構造中に存在していることが好ましい。また、黄色系色素は、塩の形態となっていてもよい。
かかる塩の具体例にも特に制限はないが、スルホン酸塩、又はカルボン酸塩などが挙げられる。またこれら塩を形成するカチオンは特に限定されないが、溶媒に対する溶解性を考慮すると、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;アンモニウム塩;及びエタノールアミン塩、アルキルアミン塩のような有機アミン塩などが好ましい。特に、溶媒溶解性および、樹脂への溶解性の観点からアルキルアミン塩が特に好ましい。また、この際のアルキルの炭素数にも特に制限はないが、好ましくは1〜24、より好ましくは2〜20である。また、アルキルは直鎖状であっても、分枝状であってもよい。好ましくは、溶媒溶解性の観点から直鎖状である。かようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、トリオクチル基、トリブチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。特には、トリオクチル基、トリブチル基が好ましい。よって、トリオクチルアミン塩、トリブチルアミン塩等が好ましい。
好ましい黄色染料の具体的な例としては、特開2009−155605号に記載される一般式(Y−1)で表わされる染料(Y−1)などが挙げられる。
本発明のインクジェット用インクが調色用の黄色染料をさらに含む場合の、調色用の黄色染料の配合量は特に制限されないが、インクの総重量に対して、60重量%以下であれば十分であり、15〜40重量%程度が好ましい。このような範囲であれば、本発明のインクジェット用インクは、優れた緑色の色調を呈することができる。また、特に本発明のフタロシアニン化合物中に存在する置換基(a)の数が0.1〜1.5個である場合には、アゾ染料の使用量の低減効果および溶媒溶解性双方が優れる。このため、このような場合の、調色用の黄色染料の配合量は、インクの総重量に対して、50重量%以下であれば十分であり、10〜30重量%程度が好ましい。また、本発明のフタロシアニン化合物中に存在する置換基(a)の数が1.5個を超えて4個以下である場合には、アゾ染料の使用量の低減効果に特に優れるため、このような場合の、調色用の黄色染料の配合量は、インクの総重量に対して、30重量%以下であれば十分であり、5〜20重量%程度が好ましく、場合によっては、アゾ染料を全く併用する必要がない(即ち、調色用の黄色染料の配合量が0重量%でありうる)。なお、上記調色用の黄色染料は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
本発明のインクジェット用インクに使用される樹脂は特に制限されず、インクジェット用インクに使用される公知の樹脂が使用できる。また、樹脂は、粘度や密着性等の特性を考慮して適宜選択できる。具体的には、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ブタジエン−アクリルニトリル共重合体、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、エチレン−酢ビ系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、塩酢ビ系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、シリコン樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。上記樹脂の重量平均分子量は特に制限されず、所望のインク粘度などを考慮して適宜選択できる。具体的には、上記樹脂の重量平均分子量は、1000〜30000が好ましい。このような範囲であれば、インクの粘度を適切な程度に調節できる。また、上記樹脂の配合量(インキの樹脂分)は、特に制限されないが、インクの総重量に対して、1〜60重量%が好ましく、5〜60重量%がより好ましい。このような範囲であれば、適度なインク粘度が得られるため、インクを、液滴吐出や方向乱れを起こすことなく、安定して吐出でき、印字面から剥がれることなく被印刷体への密着性に優れ、色素が良好に保持されうる。なお、上記樹脂は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。または、粘度および密着性等の特性をさらに向上することを目的として、より高分子量の樹脂を併用してもよい。
本発明のインクジェット用インクに使用される溶剤は、他の成分(色素や樹脂など)を溶解できるものであれば特に制限されないが。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、DIBK(ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、DAA(ジアセトンアルコール)等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルアルコール、エチレングリコールモノメチルアルコール、PGMEA等のグリコール系溶剤;トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤などが挙げられる。これらのうち、ケトン系溶剤もしくはグリコール系溶剤が好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、PGMEAがより好ましく、シクロヘキサノン、PGMEAが特に好ましい。また、上記溶剤の配合量は、特に制限されないが、インクの総重量に対して、30〜90重量%が好ましく、40〜80重量%がより好ましい。このような範囲であれば、他の成分(色素や樹脂など)を効率よく溶解できる。なお、上記溶剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
本発明のインクジェット用インクは、他の添加剤を含んでもよい。ここで、他の添加剤としては、特に制限されず、インクジェット用インクに使用される添加剤が同様にして使用できる。例えば、電導度調整剤、アミン、分散剤、重合禁止剤、印刷適性や印刷物耐性を高めるために表面調整剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、および酸化防止剤などが挙げられる。
これらのうち、電導度調整剤は、特に本発明のインクをコンティニュアスタイプのインクジェットプリンタによる高速の印字に使用する場合に特に有効である。ここで、電導度調整剤としては、特に制限されず、公知の電導度調整剤が使用できる。具体的には、ヨウ化カリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム等が挙げられる。これらの電導度調整剤は、印字面での残留により、温熱による変色を示さないため、好ましい。また、上記電導度調整剤の配合量は、特に制限されないが、インクの総重量に対して、0.1〜2重量%が好ましい。このような範囲であれば、十分な電導度が得られるため、適度な荷電偏向が得られ、また、変色を誘発しない。なお、上記電導度調整剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
また、アミンは、より鮮やかに青を発色させることを目的として添加されうる。ここで、アミンとしては特に制限されないが、例えば、トリエタノールアミン、セチルアミン、ペンタデシルアミン、テトラデシルアミン、トリデシルアミンドデシルアミンオクチルアミン、ジアミルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、シクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ナフチルアミン、ベンジルアミンなどが挙げられる。上記アミンは、青をより良好に発色させることができ、また、これらのアミンは温熱の履歴により印字面より消失するため、プリンタ内での遅乾燥性の成分としても作用できる。上記アミンの配合量は、特に制限されず、印字面の色素の発色、濃度および温熱の安定経過時間などを考慮して適宜設定できる。具体的には、アミンの配合量は、インクの総重量に対して、0.5〜15重量%が好ましい。このような範囲であれば、変色を誘発せず、非浸透性の被印刷体であってもすばやく乾燥でき、また、印字面の耐水性を適度に確保できる。なお、上記アミンは、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
分散剤は、色素の分散性およびインク組成物の保存安定性を向上させることを目的として添加されうる。ここで、分散剤としては、特に制限されず、公知の分散剤が使用できる。具体的には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテートなどが挙げられる。上記分散剤の配合量は、特に制限されず、所望の分散性などを考慮して適宜設定できる。具体的には、分散剤の配合量は、インクの総重量に対して、0.01〜10重量%が好ましい。このような範囲であれば、色素などの成分が良好に分散できる。なお、上記分散剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
重合禁止剤は、インクの保存安定性や、記録装置内での安定性を高めることを目的として添加されうる。ここで、重合禁止剤としては、特に制限されず、公知の重合禁止剤が使用できる。具体的には、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、ジ−t−ブチルヒドロキシトルエンなどが挙げられる。上記重合禁止剤の配合量は、特に制限されず、所望の特性などを考慮して適宜設定できる。具体的には、重合禁止剤の配合量は、インクの総重量に対して、0.01〜5重量%が好ましい。このような範囲であれば、硬化性を維持し、インクの保存安定性を高めることができる。なお、上記重合禁止剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
本発明のインクジェット用インクは、公知の方法によって製造できる。例えば、本発明のインクジェット用インクは、樹脂を溶剤に添加、攪拌して溶解した後、色素ならびに必要であれば他の添加剤を加えて、充分溶解させることによって、調製できる。なお、必要であれば、このようにして得られた混合液を、孔径3μm以下さらには、1μ以下のフィルターで濾過してもよい。
または、本発明のインクジェット用インクは、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷に使用されるインクであってもよい。この場合には、インクジェット用インクは、色素、重合性モノマー、重合開始剤を含む。
ここで、色素は、上記したのと同様である。
また、上記形態のインクジェット用インクに使用される重合性モノマーは、特に制限されず、特開2009−132812号公報に記載の式(1)の活性エネルギー線重合性物質、特開2010−195904号公報に記載の1個のトリアジン環および2個以上の重合性基を有する重合性モノマー(A)[例えば、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等]、ベンジル(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、β−カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等の単官能モノマー、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(またはテトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(またはテトラ)(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(またはテトラ)(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーなど、公知のモノマーを使用できる。上記重合性モノマーは、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
上記形態のインクジェット用インクに使用される重合開始剤は、特に制限されず、硬化速度、硬化塗膜物性、着色材料などを考慮して適宜選択することができる。具体的には、特開2009−132812号公報に記載の式(8)及び(10)〜(13)で表わされる化合物;ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、1,2−オクタンジオン、1−(4−(フェニルチオ)−2,2−(O−ベンゾイルオキシム))等の光ラジカル重合開始剤;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、および1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等の分子開裂型重合開始剤;ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィド等の水素引抜型重合開始剤などが挙げられる。上記重合開始剤の配合量は、特に制限されないが、重合性モノマーに対して、2〜25重量%であることが好ましい。このような範囲であれば、適度な硬化速度(重合性モノマーを効率よく重合)が達成でき、また、適度なインク粘度が得られるため、インクを、液滴吐出や方向乱れを起こすことなく、安定して吐出でき、印字面から剥がれることなく被印刷体への密着性に優れ、色素が良好に保持されうる。なお、上記重合開始剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。なお、上記式(8)及び(10)〜(13)で表わされる化合物を重合開始剤として使用する場合には、トリエタノールアミンやモノエタノールアミンなどの水素供与剤を重合性物質と併用してもよい。これにより、重合開始剤のラジカル発生効率を向上できる。
上記水素供与剤に加えてまたは上記水素供与剤に代えて、増感剤を併用してもよい。増感剤としては、特に制限されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、前記重合性モノマーと付加反応を起こさないアミンなどが挙げられる。
また、上記形態のインクジェット用インクは、有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤は、他の成分(色素、重合性モノマー、重合開始剤など)を溶解できるものであれば特に制限されないが。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、DIBK(ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、DAA(ジアセトンアルコール)等のケトン系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、ジエチルジグリコール、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、プロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート等のグリコールモノアセテート系溶剤;エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、エチレングリコールプロピオネートブチレート、エチレングリコールジプロピオネート、エチレングリコールアセテートジブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールプロピオネートブチレート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートジブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールプロピオネートブチレート、プロピレングリコールジプロピオネート、プロピレングリコールアセテートジブチレート等のグリコールジアセテート系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル等の乳酸エステル系溶剤などが挙げられる。これらのうち、PGMEAやケトン系溶剤が好ましく、PGMEA、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノンがより好ましく、PGMEA、シクロヘキサノンが特に好ましい。また、上記溶剤の配合量は、特に制限されないが、インクの総重量に対して、30〜90重量%が好ましく、40〜80重量%がより好ましい。このような範囲であれば、他の成分(色素、重合性モノマー、重合開始剤など)を効率よく溶解できる。なお、上記溶剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
また、上記形態のインクジェット用インクは、他の添加剤を含んでもよい。ここで、他の添加剤としては、特に制限されず、インクジェット用インクに使用される添加剤が同様にして使用できる。例えば、電導度調整剤、アミン、分散剤、重合禁止剤、印刷適性や印刷物耐性を高めるために表面調整剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、および酸化防止剤などが挙げられる。なお、これらの他の添加剤は上記と同様であるため、ここでは説明を省略する。
上記形態のインクジェット用インクは、公知の方法によって製造できる。例えば、色素、重合性モノマー、重合開始剤、および必要であれば他の添加剤を、サンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することによって、調製できる。この際、色素の高濃度の濃縮液を予め作製した後、重合性モノマーで希釈してもよい。なお、必要であれば、このようにして得られた分散液を、孔径3μm以下さらには、1μm以下のフィルターで濾過してもよい。
本発明のインクジェット用インクの使用形態は、特に制限されず、公知のインクジェットによる印刷方法が適用できる。例えば、本発明のインクジェット用インクをインクジェット記録方式用プリンタのプリンタヘッドに供給し、このプリンタヘッドから被印刷体上に吐出した後、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射する。これにより被印刷体上のインクは速やかに硬化する。なお、活性エネルギー線の光源として紫外線を照射する場合、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザーやLED、および太陽光を使用することができる。上記光源は、用いる重合開始剤の感度に合わせて適切に選択することが好ましい。本発明のインクの硬化に使用し得る紫外線強度は、硬化に有効な波長領域において、500〜5,000mW/cm2であることが好ましい。このような照射強度であれば、記録媒体にダメージを与えることなく、また色材の退色を誘発しない。
以下、参考例、実施例および比較例を説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記化合物の名称において、Pcはフタロシアニン核を表す。また、下記化合物の名称において、例えば、「α−(置換基A)a,β−(置換基A)x-aPc(0<a<x)」と記載されるフタロシアニン化合物は、α位に平均a個およびβ位に平均x−a個の置換基Aが導入されていることを意味し、即ち、α位及びβ位に合計x個の置換基Aが導入されていることを意味する。
また、本実施例において、置換基A〜Fは、それぞれ、下記構造を表わすものとする。
(参考例1)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}2.6-xCl13.4](0≦x<2.6)の合成
150mlのフラスコに、テトラクロロフタロニトリル(以下、「TCPN」と略す)15.95g(0.06モル)とp−ヒドロキシ安息香酸メチルセロソルブ7.67g(0.039モル)、ベンゾニトリル(以下、「BN」と略す)63gを投入し、100℃に昇温後、炭酸カリウム8.09g(0.058モル)を投入し、攪拌しながら約2時間反応させた。50℃に冷却した後、吸引ろ過して無機塩を除去後、液中のフタロニトリル化合物濃度が60wt%となるよう濃縮した。
次に、このようにして得られた反応液を、窒素気流下、内温160℃に昇温した後、ヨウ化亜鉛5.27g(0.017モル)を投入し、攪拌下で24時間反応させた。
次いで、反応液中の固形分濃度が約20wt%となるようにBN(75g)を加えて希釈後、20℃に冷却した。この溶液をメタノール(700g)中に滴下し、30分攪拌し、その後、蒸留水(130g)を滴下し、結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再び晶析時の1/2倍量のメタノール(350g)を加えて30分攪拌した後、晶析時の1/2倍量の蒸留水(65g)を滴下し、攪拌洗浄を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を約90℃で一晩真空乾燥することによって、所望のフタロシアニン化合物約22.2gが得られた。
(参考例2)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}2.4-xCl13.6](0≦x<2.4)の合成
参考例1において、p−ヒドロキシ安息香酸メチルセロソルブの使用量を7.06g(0.036モル)に変えた以外は、参考例1と同様に操作することによって、所望のフタロシアニン化合物約21.8gが得られた。
(参考例3)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}2.0-xCl14.0](0≦x<2.0)の合成
参考例1において、p−ヒドロキシ安息香酸メチルセロソルブの使用量を5.89g(0.03モル)に変えた以外は、参考例1と同様に操作することによって、所望のフタロシアニン化合物約20.5gが得られた。
(参考例4)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x{α−(4−CN)C64O}y,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}1.6-x{β−(4−CN)C64O}1.2-yCl13.2](0≦x<1.6,0≦y<1.2)の合成
参考例1において、p−ヒドロキシ安息香酸メチルの使用量を4.71g(0.024モル)に変え、また、p−ヒドロキシ安息香酸メチルと同時に4−シアノフェノール2.14g(0.018モル)を加えた以外は、参考例1と同様に操作することによって、所望のフタロシアニン化合物約21.4gが得られた。
(参考例5)アゾ化合物(1)の合成
以下の方法に従って、下記式で示される4−(1−ブチル−3−シアノ−6−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−5−イルアゾ)ベンゼンスルホン酸クロライド[アゾ化合物(1)]を合成した。
シアノ酢酸メチル200gとブチルアミン136gを混合し、100℃で5時間撹拌させた後、さらにアセト酢酸メチル226g、引き続きピペリジン181gを滴下し、100℃で5時間撹拌した。得られた反応溶液を室温(25℃)まで冷却後、激しく撹拌した7.2wt%塩酸2000gに対し、反応溶液を滴下した。ろ取して得られた析出物をアセトン400g/水600gで撹拌洗浄し、ろ取後、加熱真空乾燥し、下記式で表される化合物(a)を237g得た。
スルファニル酸37.0gを水150g、および濃塩酸32.0gと共に十分撹拌した後、4N亜硝酸ナトリウム25.0gを用いて5〜10℃でジアゾ化し、カップリング成分を得た。次いで、上記で得られた化合物(a)41.7gに水370gを加え、さらに2N水酸化ナトリウム水溶液でpH8に調製した溶液を、上記カップリング成分中に10℃以下の温度に保持して添加した。水酸化ナトリウムでpH5.0に調整し、カップリング反応を完結させた。反応終了後、塩化ナトリウム100gを用いて塩析させ、析出した生成物を濾別し、加熱真空乾燥することにより下記式で表される化合物(b)を70.6g得た。
このようにして得られた化合物(b)50.0gを、アセトニトリル296gとジメチルホルムアミド(DMF)19gとの混合溶液中で懸濁させ、室温(25℃)で塩化チオニルを39.5g加えた。40℃で5時間撹拌し、室温(25℃)まで冷却後、反応液を水444gにあけた。析出物をろ取後、加熱真空乾燥することによって、所望のアゾ化合物(1)を43.8g得た。
(参考例6)アゾ化合物(2)の合成
参考例5において、ブチルアミンの代わりにメトキシプロピルアミンを用い、スルファニル酸の代わりに3−アミノ安息香酸を用いた以外は、参考例5と同様に操作することによって、下記式で示される3−(3−シアノ−6−ヒドロキシ−1−メトキシプロピル−4−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−5−イルアゾ)安息香酸クロライドを[アゾ化合物(2)]を合成した。
(実施例1)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x(α−置換基A)y,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}2.6-x(β−置換基A)0.5-yCl12.9](0≦x<2.6,0≦y<0.5)の合成
50mlのフラスコに、参考例1で合成したフタロシアニン化合物3.09g(0.002モル)と4−アミノフェノール0.109g(0.001モル)、2−ブタノン18.5g投入し、攪拌下80℃に昇温した後、炭酸カリウム0.17g(0.0012モル)を投入して約5時間反応させた。その後、反応液を40℃まで降温し、参考例5で合成したアゾ化合物(1)0.41g(0.001モル)を投入し、次いでトリエチルアミン0.3gを滴下した。その後60℃に昇温し1時間反応後、室温まで冷却し吸引濾過で無機塩を除去し、そのろ液にpHが酸性になるまで塩酸を加えた。その後、その溶液にメタノール50gを加えた後、更に水25gを加えて結晶を析出させた。結晶を吸引濾過後、今一度メタノール50gに投入し更に水15gを加えて攪拌洗浄することで精製し、吸引濾過後、取り出した結晶を約90℃で一晩真空乾燥し、所望のフタロシアニン化合物(1)約3.05gを得た。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(1)について、以下の方法に従って、最大吸収波長の測定ならびにλ1、λ2およびλ3の吸光度比、耐熱性、溶解性を評価した。これらの結果を表1に示す。
(最大吸収波長の測定ならびにλ1、λ2およびλ3の吸光度比の測定)
得られたフタロシアニン化合物0.073gに、(株)日本触媒社製マレイミド系バインダーポリマー35.1wt%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと略す)溶液0.475gおよびPGMEA1.03g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート0.113g、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製(IRGACURE369)0.01gを加え、溶解、混合して、レジスト塗料液を調製する。得られたレジスト塗料液をスピンコーター(ミカサ(株)社製:1H−D7)を用いて、ガラス板に乾燥膜中の色素濃度20wt%、乾燥膜厚が2μmとなるよう塗布し、100℃にて3分間乾燥させて、フタロシアニンコーティング膜をガラス板上に形成する。
このようにして得られたフタロシアニンコーティング膜を使用し、分光光度計(日立製作所(株)社製:U−2910)を用いて最大吸収波長(λmax)を測定する。
また、同様にλ1、λ2およびλ3(λ1=650nm,λ2=690nm,λ3=460nm)での吸光度を測定し、会合度の指標である吸光度比[=(λ1の吸光度)/(λ2の吸光度)]、および、黄色吸収の強さ指標である吸光度比[=(λ3の吸光度)/(λ2の吸光度)]を求めた。
(耐熱性の評価)
上記「最大吸収波長の測定ならびにλ1、λ2およびλ3の吸光度比の測定」に記載の方法と同様にして、フタロシアニンコーティング膜をガラス板上に形成する(コーティングガラス板)。このコーティングガラス板の吸収スペクトルを分光光度計(日立製作所(株)社製:U−2910)にて測定し、これを加熱前スペクトルとした。次に、加熱前スペクトルを測定した塗膜ガラス板を220℃にて20分間、加熱処理した。この加熱処理したコーティングガラス板の吸収スペクトルを分光光度計にて測定し、これを加熱後スペクトルとした。
このように測定した加熱前、加熱後の各スペクトルにおいて380nm〜900nmまでの吸光度を積分し、加熱前と加熱後でその吸光度の差を測定した。また、加熱前スペクトルをE1、加熱後スペクトルをE2、測定した吸光度の差をΔEとしたとき、ΔEを以下の式で計算した。
(溶解性の評価)
上記「最大吸収波長の測定ならびにλ1、λ2およびλ3の吸光度比の測定」の評価に用いたレジスト塗料液と全く同組成、同重量の溶液を調製し、これを注射器にて採取し、メンブレンフィルター(φ=0.45μm)を用いてろ過した。調製液がメンブレンフィルターにより目詰まりせず通過できる場合、調製液に色素が溶解していると判断するろ過テストを実施し、全て問題なくろ過できた場合を○、ろ過できたが一部溶け残りが見られた場合を△、フィルターの目詰まりを起こした場合を×として溶解性の評価とした。
(実施例2)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x(α−置換基B)y,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}2.6-x(β−置換基B)0.5-yCl12.9](0≦x<2.6,0≦y<0.5)の合成
実施例1において、4−アミノフェノールを4−ヒドロキシベンジルアルコール0.12g(0.001モル)に変えた以外は、実施例1と同様に操作し、所望のフタロシアニン化合物(2)約3.04gを得た。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(2)について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
(実施例3)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x(α−置換基C)y,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}2.6-x(β−置換基C)0.5-yCl12.9](0≦x<2.6,0≦y<0.5)の合成
実施例1において、4−アミノフェノールを2−(4−ヒドロキシフェニル)エタノール0.14g(0.001モル)に変えた以外は、実施例1と同様に操作し、所望のフタロシアニン化合物(3)約3.15gを得た。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(3)について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
(実施例4)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x(α−置換基C)y,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}2.4-x(β−置換基C)0.5-yCl13.1](0≦x<2.4,0≦y<0.5)の合成
実施例3において、フタロシアニン化合物を参考例2で合成したフタロシアニン化合物3.02gに変えた以外は、実施例3と同様に操作し、所望のフタロシアニン化合物(3)約2.98gを得た。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(4)について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
(実施例5)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x(α−置換基C)y,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}2.6-x(β−置換基C)0.25-yCl13.15](0≦x<2.6,0≦y<0.25)の合成
実施例1において、4−アミノフェノールを2−(4−ヒドロキシフェニル)エタノール0.07g(0.0005モル)に変え、アゾ化合物(1)の量を0.2g(0.0005モル)に変え、また、滴下するトリエチルアミンの量を0.15gに変えた以外は、実施例1と同様に操作し、所望のフタロシアニン化合物(5)約2.81gを得た。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(5)について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
(実施例6)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x(α−置換基C)y,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}2.6-x(β−置換基C)0.75-yCl12.65](0≦x<2.6,0≦y<0.75)の合成
実施例1において,4−アミノフェノールを2−(4−ヒドロキシフェニル)エタノール0.21g(0.0015モル)に変え、アゾ化合物(1)の量を0.61g(0.0015モル)に変え、また、滴下するトリエチルアミンの量を0.45gに変えた以外は、実施例1と同様に操作し、所望のフタロシアニン化合物(6)約3.21gを得た.
このようにして得られたフタロシアニン化合物(6)について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
(実施例7)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x(α−置換基C)y,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}2.0-x(β−置換基C)0.75-yCl13](0≦x<2.0,0≦y<1.0)の合成
実施例1において、フタロシアニン化合物を参考例3で合成したフタロシアニン化合物3.09gに変え、4−アミノフェノールを2−(4−ヒドロキシフェニル)エタノール0.28g(0.0015モル)に変え、アゾ化合物(1)の量を0.61g(0.0015モル)に変え、また、滴下するトリエチルアミンの量を0.6gに変えた以外は、実施例1と同様に操作し、所望のフタロシアニン化合物(7)約3.19gを得た。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(7)について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
(実施例8)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x(α−置換基D)y,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}2.6-x(β−置換基D)0.5-yCl12.9](0≦x<2.6,0≦y<0.5)の合成
実施例1において、4−アミノフェノールをチラミン0.13g(0.001モル)に変えた以外は、実施例1と同様に操作し、所望のフタロシアニン化合物(8)約3.06gを得た。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(8)について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
(実施例9)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x(α−置換基E)y,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}2.6-x(β−置換基E)0.5-yCl12.9](0≦x<2.6,0≦y<0.5)の合成
実施例1において、4−アミノフェノールを4−ヒドロキシ安息香酸2−ヒドロキシエチル0.18g(0.001モル)に変えた以外は、実施例1と同様に操作し、所望のフタロシアニン化合物(9)約2.89gを得た。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(9)について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
(実施例10)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x(α−置換基C)y{(4−CN)C64O}w,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}2.6-x(β−置換基C)0.5-y{(4−CN)C64O}1.2-wCl12.7](0≦x<1.6,0≦y<0.5,0≦w<1.2)の合成
実施例3において、フタロシアニン化合物を参考例4で合成したフタロシアニン化合物2.97gに変えた以外は、実施例3と同様に操作し、下記式で示される所望のフタロシアニン化合物(10)約2.84gを得た。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(10)について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
(実施例11)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x(α−置換基F)y,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}2.6-x(β−置換基F)0.5-yCl12.9](0≦x<2.6,0≦y<0.5)の合成
実施例1において、4−アミノフェノールを2−(4−ヒドロキシフェニル)エタノール0.14g(0.001モル)に変え、アゾ化合物(1)を参考例6で合成したアゾ化合物(2)0.39g(0.001モル)に変えた以外は、実施例1と同様に操作し、所望のフタロシアニン化合物(11)約2.87gを得た。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(11)について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
(実施例12)[ZnPc−{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x(α−置換基G)y,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}2.6-x(β−置換基G)0.5-yCl12.4](0≦x<2.6,0≦y<1.0)の合成
50mlのフラスコに、参考例1で合成したフタロシアニン化合物3.47g(0.0023モル)、モノエタノールアミン0.27g(0.0045モル)、ベンゾニトリル13.9g投入し、攪拌下160℃に昇温し約3時間反応させた。その後、反応液をメタノール50g、水50gの混合液中に投入し30分攪拌後、吸引濾過で結晶を濾別した。得られた結晶を70℃で12時間真空乾燥し、3.54g(収率100.3%)のエタノールアミン置換体を得た。
次いで、得られたエタノールアミン置換体2.98g(0.0019モル)をテトラヒドロフラン(THF)12.82gに溶解し、参考例5で合成したアゾ化合物(1)0.85g(0.0021モル)をTHF12.82gに溶解した溶液中に25℃で滴下した。その後、更にトリエチルアミン0.29g(0.0029モル)を滴下し40℃に昇温し約2時間反応した。
その後、THFを40℃で留去し、メチルセロソルブ10gを加えて溶解し、メタノール90g、水45gの混合溶液中に投入し、約30分攪拌洗浄し吸引濾過で結晶を濾別した。得られた結晶を70℃で12時間真空乾燥し、所望のフタロシアニン化合物(12)3.32g(収率90.0%)を得た。
このようにして得られたフタロシアニン化合物(12)について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)
特開2010−265254号公報の実施例4に記載の方法と同様にして、比較フタロシアニン化合物[ZnPc−{α−(4−CN)C64O}2,{α−(4−COOC24OCH3)C64O}x,{β−(4−COOC24OCH3)C64O}4-xCl46](0≦x<4)を、合成した。
このようにして得られた比較フタロシアニン化合物について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
上記表1に示されるように、実施例1〜12で合成したフタロシアニン化合物(1)〜(12)は、比較例1のフタロシアニン化合物に比べて、λ3(=460nm)とλ2(=690nm)の吸光度の比(λ3/λ2)が約2.5から10倍も大きく、相対的に黄色(460nm)の吸収を大きく増加できている。これから、本発明のフタロシアニン化合物を使用することにより、緑色色調を呈するインク調製時のアゾ系の黄色染料の使用量を有意に低減できることが期待される。
また、λ2(=690nm)とλ1(=650nm)の吸光度の比においても、本願のフタロシアニン化合物を使用すると、比較例1のフタロシアニン化合物に比べて吸光度の比が30%以上改善され大きくなっており、高い会合度が得られていることが分かる。
以上のことから本願記載のフタロシアニン化合物は、アゾ化合物の置換により通常のフタロシアニン色素に比べ黄色の吸収が大きく、かつ高い会合度を有しながらも、樹脂ならびに有機溶剤への高い溶解性を維持しているため、緑色あるいは緑味のシアン色インクジェット用インクとして好適であることが示された。

Claims (5)

  1. 下記式(1):
    上記式(1)中、Z1〜Z16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、下記式(2−1):
    上記式(2−1)中、Xは、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表わし;Y1は、酸素原子(−O−)またはイミノ基(−NH−)を表わし;Y2は、カルボニル基(−CO−)またはスルホニル基(−SO2−)を表わし;R1は、炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基を表わし;R2は、炭素数1〜16の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わし;R5は、炭素数1〜8のアルコキシ基またはハロゲン原子であり;nは、0〜5の整数であり;pは、0〜4の整数であり;rは、0または1である、
    で表される置換基(a1)、下記式(2−2):
    上記式(2−2)中、Y1は、酸素原子(−O−)またはイミノ基(−NH−)を表わし;Y2は、カルボニル基(−CO−)またはスルホニル基(−SO2−)を表わし;Y3は、炭素数1〜12のアルキレン基を表わし;R1は、炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基を表わし;R2は、炭素数1〜16の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わす、
    で表される置換基(a2)、下記式(2−3):
    上記式(2−3)中、Y1は、酸素原子(−O−)またはイミノ基(−NH−)を表わし;Y2は、カルボニル基(−CO−)またはスルホニル基(−SO2−)を表わし;R1は、炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基を表わし;R2は、炭素数1〜16の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わす、
    で表される置換基(a3)、下記式(3):
    上記式(3)中、R3は、炭素数1〜3のアルキレン基を表わし;R4は、炭素数1〜8のアルキル基を表わし;mは、1〜4の整数であり;R5およびpは、上記式(2−1)と同様の定義である、
    で表される置換基(b)、下記式(4):
    上記式(4)中、R5は、上記式(2−1)と同様の定義であり;R3、R4およびmは、上記式(3)と同様の定義であり;p'は、0〜6の整数である、
    で表される置換基(c)、または
    有機置換基を表わし、
    この際、Z1〜Z16のうち、0.1〜4個は、それぞれ独立して、置換基(a1)、(a2)または(a3)であり、1〜6個は、それぞれ独立して、置換基(b)または(c)であり、0〜4個は、有機置換基であり、かつ残部は水素原子またはハロゲン原子であり、
    Mは、無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす、
    で示されるフタロシアニン化合物。
  2. 1〜Z16のうち、0.1〜4個は、それぞれ独立して、下記式(2'−1):
    上記式(2'−1)中、Y1は、酸素原子(−O−)またはイミノ基(−NH−)を表わし;Y2は、カルボニル基(−CO−)またはスルホニル基(−SO2−)を表わし;R1は、炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表わし;R2は、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わし;nは、0〜3の整数であり;rは、0または1である、
    で表される置換基(a1')、
    下記式(2'−2):
    上記式(2'−2)中、Y3は、炭素数1〜3のアルキレン基を表わし;R1は、炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表わし;R2は、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わす、
    で表される置換基(a2')、または
    下記式(2'−3):
    上記式(2'−3)中、R1は、炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表わし;R2は、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基または炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を表わす、
    で表される置換基(a3')
    である、請求項1に記載のフタロシアニン化合物。
  3. 上記式(1)中、0.15〜3個は、それぞれ独立して、置換基(a)であり、1.0〜3.5個は、それぞれ独立して、置換基(b)であり、0〜2個は、有機置換基であり、かつ残部は塩素原子または臭素原子である、請求項1または2に記載のフタロシアニン化合物。
  4. 上記有機置換基は、下記式(5):
    上記式(5)中、Xは、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表わし;R5およびpは、上記式(2−1)と同様の定義であり;R6は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、または式:−(R3O)m4で表わされる基を表わし、この際、R3、R4およびmは、上記式(3)と同様の定義である、
    で表される置換基(d)、下記式(6):
    上記式(6)中、Xは、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表わし;R5およびpは、上記式(2−1)と同様の定義であり;R6は、上記式(5)と同様の定義である、
    で表される置換基(e)、下記式(7):
    上記式(7)中、Xは、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表わし;R5およびpは、上記式(2−1)と同様の定義であり;R3、R4およびmは、上記式(3)と同様の定義であり;n'は、1〜3の整数である、
    で表される置換基(f)、下記式(8):
    上記式(8)中、Xは、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表わし;R5およびpは、上記式(2−1)と同様の定義である、
    で表される置換基(g)、下記式(9):
    上記式(9)中、Xは、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表わし;R5およびpは、上記式(2−1)と同様の定義である、
    で表される置換基(h)、または下記式(10):
    上記式(10)中、Xは、酸素原子(−O−)または硫黄原子(−S−)を表わし;R5'は、ハロゲン原子であり;p"は、1〜5の整数である、
    で表される置換基(i)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフタロシアニン化合物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のフタロシアニン化合物を含む緑色あるいは緑味のシアン色インクジェット用インク。
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