JP2013075640A - 走行制御装置および車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両の速度または加速度を考慮しつつ、運転者に安心感を与えながら物体の衝突回避を行うことができる走行制御装置および車両を提供すること。
【解決手段】車両速度Vが速いほど、車両1の進行方向において仮想バンパー領域71が広くなるように形成されるので、車両1が速い速度で走行している場合に、より早い段階から進行方向にある物体80との衝突回避を行うことができる。また、車両1が減速している場合に、その減速度の大きさが大きいほど、その車両1の進行方向とは逆方向において仮想バンパー領域71が広くなるように設定される。これにより、車両速度Vが急激に遅くなる場合に、その進行方向とは逆方向にある物体80との衝突、例えば、進行方向とは逆方向からの追突を回避することができる。従って、車両1の車両速度Vまたは加速度aを考慮しつつ、運転者に安心感を与えながら物体の衝突回避を行うことができる。
【選択図】図8

Description

本発明は、走行制御装置および車両に関し、特に、車両の速度または加速度を考慮しつつ、運転者に安心感を与えながら物体の衝突回避を行うことができる走行制御装置および車両に関するものである。
従来より、電動車椅子などの移動体の周辺に設定した所定領域に何らかの物体(障害物)が存在する場合に、その物体を回避するための反発力が仮想的に移動体に加えられたものとして、移動体の走行を制御することで、その物体との衝突を回避する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
特開平7−110711号公報
特許文献1に記載される技術では、物体の衝突回避が行われる前記所定領域として、移動体(電動車椅子1)の外縁から一定距離(規準距離z)離れた地点までの領域を設定している。
しかしながら、この所定領域は、移動体の速度や加速度にかかわらず、所定領域は一定の範囲となっている。よって、例えば、移動体が速い速度で移動していても、所定領域の範囲は一定であるので、所定速度以上となった場合は、車両の進行方向にある物体との衝突回避動作が遅れてしまうおそれがあった。また、移動体が大きな減速度(減速時の加速度)で減速している場合も、速度の場合と同様に、所定領域の範囲は常に一定であるので、所定以上の大きさの減速度となったときには、車両の進行方向とは逆方向にある物体との衝突回避動作が遅れてしまうおそれがあった。従って、従来の技術では、車両の速度または加速度(減速度)が大きい場合を考慮した所定領域の設定を行う必要があり、高い速度などを考慮して広く設定された所定領域を適用した場合には、低速走行時に運転者に違和感を与えてしまうという問題点があった。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、車両の速度または加速度を考慮しつつ、運転者に安心感を与えながら物体の衝突回避を行うことができる走行制御装置および車両を提供することを目的としている。
課題を解決するための手段および発明の効果
この目的を達成するために請求項1記載の走行制御装置によれば、検出手段により検出された物体が、設定手段により設定された所定領域内に存在していると、その物体との衝突を回避するための仮想的な反発力が、その物体と車両との位置関係に基づいて算出手段により算出される。そして、その算出された反発力が車両に加えられたものとして、制御手段によって、車両の走行に伴う制御が行われる。これにより、物体が所定領域内に存在すると、その物体との衝突を回避するように反発力が仮想的に車両に加えられ、その反発力に基づいて車両の走行に伴う制御が行われるので、容易に且つ速やかにその物体を回避して車両を走行させることができる。
また、取得手段により取得された車両の速度に関する速度情報から、車両の速度が速いほど、その車両の進行方向において所定領域の範囲が広くなるように、所定領域が設定手段により設定されるので、車両が速い速度で走行している場合に、より早い段階から進行方向にある物体との衝突回避を行うことができる。よって、車両の速度を考慮しつつ、運転者に安心感を与えながら物体の衝突回避を行うことができるという効果がある。
請求項2記載の走行制御装置によれば、請求項1記載の走行制御装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、取得手段により取得された車両の加速度に関する加速度情報から、車両が加速される方向において、その加速度の大きさが大きいほど所定領域の範囲が広くなるように、所定領域が設定手段により設定される。これにより、車両に加速度が大きく加えられ、速度が急激に速くなる場合には、より早い段階からその加速される方向(車両の進行方向)にある物体との衝突回避を行うことができる。また、車両に減速時の加速度である減速度が大きく加えられ、速度が急激に遅くなる場合には、より早い段階からその減速される方向(車両の進行方向とは逆方向)にある物体との衝突、例えば、進行方向とは逆方向からの追突などを回避することができる。よって、加速度を考慮しつつ、運転者に安心感を与えながら物体との衝突回避を行うことができるという効果がある。
請求項3記載の走行制御装置によれば、請求項1記載の走行制御装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、取得手段により取得された車両の加速度に関する加速度情報から、車両が減速している場合に、その減速時の加速度である減速度の大きさが大きいほど、その車両の進行方向とは逆方向において所定領域の範囲が広くなるように、所定領域が設定手段により設定される。車両の進行方向については、請求項1記載の構成により、車両の速度に応じて所定領域の範囲が広くなるように、所定領域が設定手段により設定されるので、車両が速い速度で走行している場合に、より早い段階から進行方向にある物体との衝突回避を行うことができる。一方、車両1の進行方法とは逆方向については、車両に大きな減速度が加えられ、速度が急激に遅くなる場合に、その進行方向とは逆方向にある物体との衝突、例えば、進行方向とは逆方向からの追突を回避することができる。よって、車両の進行方向およびその進行方向とは逆方向にある物体との衝突回避を、車両の速度と減速度とに応じて、早い段階で行うことができる。従って、運転者に安心感を与えながら物体の衝突回避を行うことができるという効果がある。
請求項4記載の走行制御装置によれば、請求項1記載の走行制御装置と同様に、物体が所定領域内に存在すると、その物体との衝突を回避するように反発力が仮想的に車両に加えられ、その反発力に基づいて車両の走行に伴う制御が行われるので、容易に且つ速やかにその物体を回避して車両を走行させることができる。一方、請求項4記載の走行制御装置によれば、取得手段により取得された車両の加速度に関する加速度情報から、車両が加速される方向において、その加速度の大きさが大きいほど所定領域の範囲が広くなるように、所定領域が設定手段により設定される。これにより、車両に加速度が大きく加えられ、速度が急激に速くなる場合には、より早い段階からその加速される方向(車両の進行方向)にある物体との衝突回避を行うことができる。また、車両に減速時の加速度である減速度が大きく加えられ、速度が急激に遅くなる場合には、より早い段階からその減速される方向(車両の進行方向とは逆方向)にある物体との衝突、例えば、進行方向とは逆方向からの追突などを回避することができる。よって、加速度を考慮しつつ、運転者に安心感を与えながら物体との衝突回避を行うことができるという効果がある。
請求項5記載の車両によれば、請求項1から4のいずれかに記載の走行制御装置が設けられているので、その車両において、対応する請求項に記載の走行制御装置と同様の効果を奏する。
本発明の一実施形態における車両を模式的に示した模式図である。 走行制御装置における物体の衝突回避方法を説明する説明図である。 走行制御装置を含む車両の電気的構成を示したブロック図である。 仮想バンパー領域の基準形状を模式的に示す模式図である。 バネ設定テーブルメモリの内容を模式的に示した模式図である。 物体回避処理を示すフローチャートである。 仮想バンパー設定処理を示すフローチャートである。 (a)は、仮想バンパー領域の外郭を形成する場合に用いる3つの楕円を示す図であり、(b),(c)は、車両速度および加速度を考慮した場合に形成される仮想バンパー領域の例を示す図である。 物体回避実行処理を示すフローチャートである。 車両左右方向の反発力が加えられた場合において生じる反モーメント力によって取り得るべき車両の操舵角を算出する場合に用いるパラメータを説明する図である。 (a)は、変形例において、仮想バンパー領域の外郭を形成する場合に用いる5つの閉曲線を示す図であり、(b),(c)は、(a)の変形例に基づき、車両速度および加速度を考慮した場合に形成される仮想バンパー領域の例を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態である走行制御装置100を有する車両1を模式的に示した模式図である。
まず、図1を参照して、車両1の構成について説明する。車両1は、その車両1の速度または加速度を考慮しつつ、運転者に安心感を与えながら物体の衝突回避を行うことができるように構成されている。
なお、図1において、矢印Fによって示される方向が車両1の前方向を示している。この矢印Fは、その他の図面においても同様に、矢印Fによって示される方向を車両1の前方向として示している。また、以下の説明において、車両1が矢印F方向に進行する場合を「前進」、車両1が矢印F方向とは逆方向に進行する場合を「後退」と称す。
走行制御装置100は、車両1の走行を制御するコンピュータ装置である。この走行制御装置100によって、車両1の速度または加速度を考慮しつつ、運転者に安心感を与えながら物体の衝突回避が行われる。
ここで、図2を参照して、走行制御装置100における物体の衝突回避の方法について、その概略を説明する。図2は、走行制御装置100における物体の衝突回避方法を説明する説明図である。
走行制御装置100は、車両1周囲に、衝突を避けるべき物体を検出する領域として、仮想バンパー領域71を設定(形成)する。走行制御装置100は、その仮想バンパー領域71に、複数のバネ72を仮想的に並設することで、仮想バンパーを構成することを想定する。
このとき、各バネ72は、いずれも、一端を車両1の外周11に取着した状態で、他端が仮想バンパー領域71の外縁71aに位置するように、仮想バンパー領域71に並設されることを走行制御装置100にて想定する。また、各バネ72の一端は、車両1の外周11において、10cm間隔で取着されることを走行制御装置100にて想定する。
更に、車両1の前方側または後方側の仮想バンパー領域71に配設されるバネ72f,72bは、一端が車両1の前方先端(前端)または後方先端(後端)に取着された状態で、バネの長さ方向が車両1の前後方向と平行となるように配設され、他端は車両1前方側または後方側の外縁71aに位置されることを走行制御装置100にて想定する。
車両1の右側または左側の仮想バンパー領域71に配設されるバネ72r,72lは、一端が車両1の右側面または左側面に取着された状態で、バネの長さ方向が車両1の左右方向と平行となるように配設され、他端は車両1右側または左側の外縁71aに位置されることを想定する。
また、車両1の右前コーナー,左前コーナー,左後コーナー,右後コーナー側の仮想バンパー領域71に配設されるバネ72fr,72fl,72bl,72brは、一端が車両1の対応するコーナー部分に取着された状態で、バネの長さ方向が、車両1の右前方向,左前方向,左後方向または右後方向となるように配設され、他端が車両1の左前コーナー,左後コーナー,右後コーナー側の外縁71aに位置されることを想定する。
走行制御装置100は、車両1に設けられた後述の第1〜第4カメラ26a〜26d(図1参照)によって取得された画像から、車両1の周辺にある物体の位置を判断し、以下に従って、その物体80との衝突を回避するための反発力Frを算出する。
即ち、走行制御装置100は、仮想バンパー領域71内に仮想的に並設されたバネ72のうち、物体80の存在によって収縮されたバネ73を検索する。そして、収縮されたバネ73がある場合、仮想バンパー領域71内に物体80が存在するとして、そのバネ73の収縮量dを物体80と車両1との位置関係から判断し、その収縮量dに基づいて、バネ73に生じる弾性力Feを以下の式(1)により算出する。なお、以下の式(1)において、knはバネ73のバネ定数である。
Fe=kn×d ・・・(1)
走行制御装置100は、弾性力Feの反作用として、その弾性力Feが発生したバネ73の一端が取着されている車両1上の点に、反発力Frが、バネ73の長さ方向に車両1の内側に向けて加えられるものとする。
例えば、図2に示すように、物体80によって収縮されたバネ73が、車両1の前方に配設されたバネ72fの一つであった場合、そのバネ72fが取着された車両1上の点に、車両1に対して後向きの反発力Fr1が車両1に加えられる。同様に、バネ73が車両1の左側または右前方向に配設されたバネ72l,72frの一つであった場合、そのバネ72l又はバネ72frが取着された車両1上の点に、車両1に対して右向き又は左後向きの反発力Fr2又はFr3が車両1に加えられる。つまり、各バネ72が取着される車両1の外周11上の点が、反発力Frが加えられる作用点となる。
走行制御装置100は、各バネ72(73)から加えられた反発力Frの前後方向成分(車両1の前後方向と同じ方向の成分)を合成して、車両1の重心Cに加えられる車両1の前後方向の反発力Fryを算出する。また、各バネ72(73)から加えられた反発力Frの左右方向成分(車両1の前後方向に対する左右方向と同じ方向の成分)から、車両1の重心Cに加えられる反モーメント力Mを算出する。
そして、走行制御装置100は、車両1の重心Cに加えられた前後方向の反発力Fryに基づいて、その反発力Fryによって生じる車両1の加速度を算出する。走行制御装置100には、車両1に設けられたアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量に関する情報も入力される。走行制御装置100は、現在の車両1の速度と、運転者によって踏み込まれたアクセルペダルの踏み込み量と、前後方向の反発力Fryによって生じる車両1の加速度とから、目標とすべき車両速度を決定し、その目標とすべき車両速度を示す制御信号を、後述する車輪駆動装置3(図1参照)へ送信する。これにより、車両1が、前後方向の反発力Fryによって生じる車両1の加速度を反映させた速度で走行するように、車両1の走行の制御が行われる。
また、走行制御装置100は、その算出した反モーメント力Mに応じて車両1の操舵角を算出して、その操舵角を示す制御信号を、後述する操舵駆動装置5(図1参照)へ送信する。これにより、車両1が、反発力Frによって生じる反モーメント力を反映させた操舵角で走行するように、車両1の走行の制御が行われる。
このように、走行制御装置100は、仮想バンパー領域71内に存在する物体との衝突を回避するために、仮想的に並設したバネ72の一部(バネ73)が物体80によって収縮されたものとし、そのバネ73の弾性力Feを算出して、その反作用として反発力Frが車両1に加えたものとすることで、その反発力Frに基づいて、車両1の速度や操舵角を制御する。これにより、容易に且つ速やかに、その物体80を回避しながら車両1を走行させることができる。
また、物体80が車両1に近いほど、仮想バンパー領域71内に想定上並設されているバネ72の一部(バネ73)がその物体80によって大きく縮められる。バネの弾性力Feはバネの収縮量(縮み量)が大きいほど大きいので、物体80が車両1に近いほど、大きな反発力Frを車両1に加えることができる。よって、物体80が車両1に近いほど大きくなる反発力Frにより、確実に物体80との衝突を回避できる。
なお、走行制御装置100には、車両1に設けられ、運転者によって回転操作される後述のステアリングホイール13(図1参照)から、ステアリングホイール13の回転角速度を示す情報も入力されている。反力Frが車両1に仮想的に加えられていない場合、即ち、仮想バンパー領域71内に物体が存在しない場合には、走行制御装置100は、ステアリングホイール13の回転角速度を積分して得られるステアリングホイール13の操舵角に応じて車両1の操舵角を決定し、その操舵角を示す制御信号を操舵駆動装置5へ送信する。
図1に戻って、車両1の構成について説明を続ける。車両1は、走行制御装置100の他に、複数(本実施形態では4輪)の車輪2FL,2FR,2RL,2RRと、それら複数の車輪2FL〜2RRの内の一部(本実施形態では、左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、複数の車輪2FL〜2RRの内の一部(本実施形態では、左右の前輪2FL,2FR)を操舵するステアリング装置6及び操舵駆動装置5と、各車輪2FL〜2RRの車輪速を検出する第1〜第4車輪速検出センサ12FL〜12RRと、運転者から車両1の操舵方向の指示を受け付けるステアリングホイール13と、車両1の周囲を第1〜第4カメラ26a〜26dとを主に有している。
車輪2FL,2FRは、車両1の前方側に配置される左右の前輪であり、車輪駆動装置3によって回転駆動される駆動輪として構成されている。一方、車輪2RL,2RRは、車両1の後方側に配置される左右の後輪であり、車両1の走行に伴って従動する従動輪として構成されている。
車輪駆動装置3は、左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与するものであり、デファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに接続されている。車輪駆動装置3は、走行制御装置100から通知された、目標とすべき車両速度を示す制御信号に基づき、ドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する。これにより、車両1は、走行制御装置100から通知された車両速度に応じた速度で走行する。
なお、車輪駆動装置3は、走行制御装置100から、その走行制御装置100によって算出された反発力Frの車両1の前後方向の反発力Frfによって生じる車両1の加速度を示す制御信号を受け取り、その車両1の加速度と、運転者によって踏み込まれたアクセルペダルの踏み込み量と、現在の車両1の速度とから目標とすべき車両速度を算出して、その目標とすべき車両速度となるように、ドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与してもよい。
操舵駆動装置5は、左右の前輪2FL,2FRを操舵するための装置であり、ステアリング装置6に回転駆動力を付与する電動モータ5a(図3参照)を備えて構成されている。ステアリング装置6は、ステアリングシャフト61と、フックジョイント62と、ステアリングギヤ63と、タイロッド64と、ナックルアーム65とを主に備えて構成されている。なお、ステアリング装置6は、ステアリングギヤ63がピニオン(図示せず)とラック(図示せず)とを備えたラックアンドピニオン機構によって構成されている。
操舵駆動装置5は、走行制御装置100から車両1の操舵角を示す制御信号を受信すると、その操舵角に応じて電動モータ5aを駆動し、電動モータ5aの回転駆動力がステアリング装置6のステアリングシャフト61に付与される。その回転駆動力は、ステアリングシャフト61を介してフックジョイント62に伝達されると共にフックジョイント62によって角度を変えられ、ステアリングギヤ63のピニオンに回転運動として伝達される。そして、ピニオンに伝達された回転運動はラックの直線運動に変換され、ラックが直線運動することで、ラックの両端に接続されたタイロッド64が移動し、ナックルアーム65を介して前輪2FL,2FRが操舵される。これにより、車両1は、走行制御装置100から指示された操舵角で、前輪2FL,2FRが操舵される。
第1車輪速検出センサ12FLは、車輪2FLに設けられ、車輪2FLの車輪速を検出するセンサである。また、第2車輪速検出センサ12FR,第3車輪速検出センサ12RL,第4車輪速検査12RRは、それぞれ対応する車輪2FR,2RL,2RRに設けられ、その対応する車輪2FL,2RL,2RRの車輪速を検出するセンサである。第1〜第4車輪速検出センサ12FL〜12RRによって検出された各車輪2FL〜2RRの車輪速は、走行制御装置100に入力され、走行制御装置100において、この入力された車輪速に基づいて車両1の速度(車両速度)と加速度が算出される。
ステアリングホイール13は、車両1の搭乗者から回転操作されることで、車両1の操舵方向の指示を受け付けるものである。ステアリングホイール13は、搭乗者によって回転操作されると、その回転角速度を走行制御装置100へ送信する。なお、ステアリングホイール13は、搭乗者によって回転操作された回転角を走行制御装置100へ送信してもよい。そして、走行制御装置100が、ステアリングホイール13から取得した回転角を微分して、回転角速度を算出してもよい。
第1〜第4カメラ26a〜26dは、車両1の周囲を撮像するための撮像装置であり、CCDイメージセンサや、CMOSイメージセンサなどの撮像素子が搭載されたデジタルカメラで構成されている。各第1〜第4カメラ26a〜26dは、撮像した画像を画像データに変換して走行制御装置100へ出力する。
第1カメラ26aは、車両1の前方中央に配設され、第2カメラ26bは、車両1の後方中央に配設され、第3カメラ26cは、車両1の右側面のサイドミラー(図示せず)に配設され、第4カメラ26dは、車両1の左側面のサイドミラー(図示せず)に配設されている。本実施形態では、4つの第1〜第4カメラ26a〜26dにより、車両1を中心として車両1の前後方向に少なくとも30mと、車両1を中心として車両1の左右方向に少なくとも15mの範囲を撮像可能に構成されている。なお、第1〜第4カメラ26a〜26dによって撮像可能な範囲は、適宜設定されるものであってよい。
各第1〜第4カメラ26a〜26dは、撮像した画像を画像データに変換して走行制御装置100へ出力する。走行制御装置100へ出力された画像データは、その走行制御装置100によって解析され、車両1の周囲に存在する物体と、車両1を基準としたその物体の位置とが検出される。そして、検出された物体の位置から、仮想バンパー領域71内に物体が存在するか否かが判断される。また、仮想バンパー領域71内に物体が存在する場合には、走行制御装置100において、その物体の位置から収縮されるバネ73(図2参照)が検索され、そのバネ73にかかる弾性力が算出されて、車両1に加えられる反発力が求められる。
次いで、図3を参照して、走行制御装置100の詳細構成について説明する。図3は、走行制御装置100を含む車両1の電気的構成を示したブロック図である。
走行制御装置100は、CPU91、フラッシュメモリ92及びRAM93を有しており、それらがバスライン94を介して入出力ポート95に接続されている。入出力ポート95には、上述した、車輪駆動装置3,操舵駆動装置5、第1〜第4車輪速検出センサ12FL〜12RR、ステアリングホイール13、第1〜第4カメラ26a〜26d、及び、その他の入出力装置99などが接続されている。
CPU91は、入出力ポート95に接続された第1〜第4車輪速検出センサ12FL〜12RR、ステアリングホイール13、第1〜第4カメラ26a〜26dなどから送信された各種の情報に基づいて、車輪駆動装置3や操舵駆動装置5等を制御する演算装置である。
フラッシュメモリ92は、CPU91によって実行される制御プログラムや固定値データ等を記憶するための書き換え可能な不揮発性のメモリである。このフラッシュメモリ92には、プログラムメモリ92aと基準形状メモリ92bとが設けられている。
プログラムメモリ92aは、CPU91にて実行される各種のプログラムが格納されたフラッシュメモリ92上の領域である。後述する図6のフローチャートに示す物体回避処理、図7のフローチャートに示す仮想バンパー設定処理、図9のフローチャートに示す物体回避実行処理をCPU91にて実行されるための各プログラムは、このプログラムメモリ92aに格納されている。CPU91は、このプログラムメモリ92aに格納された各プログラムに従って各種処理を実行することで、車両1の速度または加速度を考慮しつつ、運転者に安心感を与えながら物体の衝突回避が行われるように、車両1の走行を制御する。
基準形状メモリ92bは、仮想バンパー領域71の基準形状を規定するパラメータを格納するメモリである。ここで、図4を参照して、仮想バンパー領域71の基準形状について説明する。図4は、仮想バンパー領域71の基準形状を模式的に示す模式図である。
仮想バンパー領域71の基準形状は、図4に示す通り、車両1の重心Cを中心とし、車両1の前後方向を長軸、車両1の左右方向(側面方向)を短軸として、短径をWvb、長径をLvbとする楕円である。基準形状メモリ92bには、この短径Wvb及び長径Lvbの大きさが格納されている。
詳細については図7,図8を参照して後述するが、走行制御装置100(CPU91)では、所定時間間隔毎(本実施形態では、50ミリ秒毎)に、車両1の車両速度および加速度を、第1〜第4車輪速検出センサ12FL〜12RRからの車輪速に基づいて算出する。そして、算出した車両速度が大きいほど、車両1の進行方向に仮想バンパー領域71が広がるように、基準形状を変形して仮想バンパー領域71の外郭を形成する。また、算出した加速度から車両1が減速している場合に、その減速時の加速度である減速度が大きいほど、車両1の進行方向とは逆方向に仮想バンパー領域71が広がるように、基準形状を変形して仮想バンパー領域71の外郭を形成する。
なお、基準形状メモリ92bに格納された短径Wvb、長径Lvbの値は、車両1に設けられた操作パネル(図示せず)を運転者(搭乗者)が操作することにより、その運転者(搭乗者)によって設定変更可能に構成されてもよい。
また、本実施形態では、基準形状の楕円の中心を車両1の重心Cとする場合について説明するが、必ずしも車両1の重心Cとする必要はなく、任意の場所に設定されてよい。例えば、車両1中央の前後軸と、後輪軸(後輪2RL,2RRを結んだ直線)との交点に、その楕円の中心としてもよい。また、その楕円の中心位置(座標)も基準形状メモリ92bに格納するようにし、運転者(搭乗者)が操作パネル(図示せず)を操作することにより、その運転者(搭乗者)によって楕円の中心位置(座標)を設定変更可能に構成してもよい。
図3に戻り説明を続ける。RAM93は、書き換え可能な揮発性のメモリであり、CPU91によって実行される制御プログラムの実行時に各種のデータを一時的に記憶するためのメモリである。RAM93には、バネ設定テーブルメモリ93aが設けられている。
バネ設定テーブルメモリ93aは、仮想バンパー領域71に仮想的に並設した複数のバネ72に関する情報を記憶するメモリである。ここで、図5を参照して、バネ設定テーブルメモリ93aの詳細について説明する。図5は、バネ設定テーブルメモリ93aの内容を模式的に示した模式図である。
走行制御装置100(CPU91)は、仮想バンパー領域71を設定(形成)すると、その仮想バンパー領域71内に複数のバネ72を仮想的に並設する。その並設されたバネ72の情報として、図5に示す通り、バネ72毎に、バネ72の識別情報であるバネ番号nに対応付けて、そのバネ番号nで示されるバネの作用点X座標Xpnと、作用点Y座標Ypnと、外郭X座標Xcnと、外郭Y座標Ycnと、取付角度αnと、バネ長Lvbnと、バネ定数knとを格納する。
バネ番号nは、並設されたバネ1本1本を識別するための情報である。本実施形態では、車両1の前端に取着されたバネ72fの一番右側になるバネのバネ番号nを1とし、バネ番号1のバネから順に、反時計回りに各バネ72に対してバネ番号nを1ずつ大きくしながら、バネ番号nを割り振る。
作用点X座標Xpn,作用点Y座標Ypnは、バネ番号nのバネにおける一端が、車両1に取着される点、つまり、そのバネの反発力Frが作用する作用点の座標を示すものである。本実施形態では、車両1中央の前後軸をY軸(車両1の前方向、即ち、矢印Fで示す方向を正方向)とし、車両1の重心を通る左右軸(後輪軸と平行な軸)をX軸(車両1の右方向を正方向)として、X軸とY軸との交点を原点とした座標系で、作用点X座標Xpn,作用点Y座標Ypnを表す。
外郭X座標Xcn,外郭Y座標Ycnは、バネ番号nのバネ72における他端、つまり、仮想バンパー領域71の外郭に位置する他端の座標を示すものである。本実施形態では、上記の作用点X座標Xpn,作用点Y座標Ypnと同じ座標系で、外郭X座標Xcn,外郭Y座標Ycnを表す。
取付角度αnは、バネ番号nのバネ72の車両1に対する取付角度を示すものである。ここでは、車両1中央の前後軸から車両1の右方向に伸びる半直線と、各バネ72の一端と他端とを結んだ直線とのなす角度を取付角度αnとして規定する。
つまり、車両1の前端から前方側に配設されたバネ72fは、取付角度αnが90°となる。また、車両1の左側面から左側に配設されたバネ72l,車両1の後端から後方側に配設されたバネ72b,車両1の右側面から右側に配設されたバネ72rは、それぞれ、取付角度αnが180°,270°,0°となる。
また、車両1の右前コーナーから右前方向に配設されるバネ72fr,車両1の左前コーナーから左前方向に配設されるバネ72fl,車両1の左後コーナーから左後方向に配設されるバネ72bl,車両1の右後コーナーから右後方向に配設されるバネ72brの取付角度αnは、それぞれ、0〜90°,90°〜180°,180°〜270°,270°〜360°の範囲内で次の式(2)で定まる角度となる。
αn=tan−1((Ypn−Ycn)/(Xpn−Xcn)) ・・・(2)
バネ長Lvbnは、バネ番号nのバネ72の自然長(バネ72を伸縮させない状態におけるバネ72の長さ)を示すものである。各バネ72のバネ長Lvbnは、バネ72の一端が接続される作用点(作用点X座標Xpn,作用点Y座標Ypnで示される点)と、バネ72の他端が位置する外郭X座標Xcn,外郭Y座標Ycnで示される点との距離によって算出される。
バネ定数knは、バネ番号nのバネ72のバネ定数を示すものである。なお、本実施形態では、すべてのバネ72において、バネ定数knを一定の大きさ(例えば、100N/m)とする。ただし、各バネについて、バネ定数knの大きさを異ならせてもよい。例えば、車両1の進路方向に近い位置に配設されたバネ72ほど、大きなバネ定数knを設定してもよい。これにより、車両1の進路方向に近い場所に物体80が存在するほど車両1に大きな反発力が加えられるので、より安全に、物体80との衝突回避を行うことができる。
また、バネ定数knの大きさは、操作パネル(図示せず)を運転者(搭乗者)が操作することにより、その運転者(搭乗者)によって設定変更可能に構成されてもよい。
次いで、図6〜図10までのフローチャートと模式図とを参照して、車両1に搭載された走行制御装置100のCPU91により実行される物体回避処理について説明する。まず、図6は、この物体回避処理を示すフローチャートである。
物体回避処理は、所定時間間隔(本実施形態では50ミリ秒)でCPU91により実行される処理で、車両1の進路方向に基づいて仮想バンパー領域71を設定(形成)し、その設定した仮想バンパー領域71内に物体80が存在する場合には、その物体80との衝突回避動を行う処理である。
この物体回避処理が実行されると、CPU91は、まず、仮想バンパー設定処理を実行する(S11)。この仮想バンパー設定処理では、車両1の車両速度V及び加速度aに応じて仮想バンパー領域71を形成し、設定する処理を行う。この仮想バンパー設定処理の詳細については、図7を参照して後述する。
仮想バンパー設定処理の次には、物体回避実行処理を行う(S12)。この物体回避実行処理では、仮想バンパー領域71内に物体80が存在する場合に、その仮想バンパー領域71内に仮想的に並設させた複数のバネ72の一部(バネ73)が、物体80によって収縮されたとして、そのバネ73に生じる弾性力Feの反作用として車両1に反発力Frを加え、車両1の走行を制御する処理を行う。この物体回避実行処理の詳細については、図9を参照して後述する。
物体回避処理は、物体回避実行処理の終了後、その処理を終了する。
次に、図7を参照して、図6の物体回避処理の一処理である仮想バンパー設定処理(S11)について説明する。図7は、この仮想バンパー設定処理を示すフローチャートである。
仮想バンパー設定処理が実行されると、CPU91は、まず、第1〜第4車輪速検出センサ12FL〜12RRから入力される各車輪2FL〜2RRの車輪速を取得し、その車輪速から、車両1の車両速度Vを算出する(S21)。次いで、S21で算出した車両速度を時間微分し、加速度aを算出する(S22)。
そして、S23〜S28の処理により、車両速度Vと加速度aとに応じて、仮想バンパー領域71の外郭を形成する。
ここで、図7と図8との両方を参照しながら、仮想バンパー領域71の外郭形成方法について、説明する。図8(a)は、仮想バンパー領域71の外郭を形成する場合に用いる3つの楕円E1〜E3を示す図である。なお、仮想バンパー領域71の外郭を形成する場合、車両1中央の前後軸をY軸(車両1の前方向、即ち、矢印Fで示す方向を正方向)とし、車両1の重心を通る左右軸をX軸(車両1の右方向を正方向)として、X軸とY軸との交点を原点とした座標系を用いて行う。
図8(a)に示す楕円E1は、仮想バンパー領域71の基準形状であり、以下の式(3)で表される。
/Wvb+y/Lvb=1 ・・・(3)
楕円E2は、車両速度Vを考慮して仮想バンパー領域71を広げる場合に用いる楕円であり、以下の式(4)で表される。
/Wvb+y/Lvb1=1 ・・・(4)
ここで、Lvb1は、車両速度Vの大きさに応じて、基準形状を長径方向(Y軸方向)に広げるときの楕円E2の長径であり、車両速度Vに比例して以下の式(5)によって定まる。
Lvb1=A×V ・・・(5)
楕円E3は、加速度aを考慮して仮想バンパー領域71を広げる場合に用いる楕円であり、以下の式(6)で表される。
/Wvb+y/Lvb2=1 ・・・(6)
ここで、Lvb2は、加速度aの大きさに応じて、基準形状を長径方向(Y軸方向)に広げるときの楕円E3の長径であり、加速度aの絶対値に比例して以下の式(7)によって定まる。
Lvb2=A×|a| ・・・(7)
ただし、A,Aは任意の比例係数であり、予め所定の値に定められている。なお、この比例係数A,Aは、運転者(搭乗者)が操作パネル(図示せず)を操作することにより設定を変更可能に構成されてもよい。
図7に示す通り、S23の処理では、式(5)、式(7)を用いて、車両速度Vの大きさに応じて基準形状をY軸方向に広げた楕円E2の長径Lvb1と、加速度aの大きさに応じて基準形状をY軸方向に広げる楕円E3の長径Lvb2とを計算する。
なお、本実施形態では、楕円E2の長径Lvb1及び楕円E3の長径Lvb2が、車両速度V又は加速度aに比例する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、車両速度V又は加速度aの増加に従って、楕円E3の長径Lvb1及び楕円E2の長径Lvb2が長くなるように、その長径Lvb1及びLvb2を計算するようにしてもよい。例えば、長径Lvb1が車両速度Vの二乗に比例するように、また、長径Lvb2が加速度aの二乗に比例するように、これら長径Lvb1及びLvb2を計算してもよい。
そして、S24の処理によって、楕円E2の長径Lvb1が基準形状(楕円E1)の長径Lvb以上か否かを判断し(S24)、Lvb1がLvb以上である場合(S24:Yes)は、速度成分Vを考慮した楕円E2を用いて、仮想バンパー領域71の外郭を設定し(S25)、S26の処理へ移行する。
具体的には、車両1が前進している場合は、車両1の進行方向であるY座標が0以上の領域における仮想バンパー領域71の外郭として楕円E2を設定する。車両1が後進している場合は、車両1の進行方向であるY座標が0以下における領域の仮想バンパー領域71の外郭として楕円E2を設定する。
一方、S24の処理によって、Lvb1がLvb未満である場合(S24:No)は、車両速度Vが所定の速度未満であると判断できる。つまり、この場合、車両1がゆっくり走行しているので、速度成分に応じて仮想バンパー領域71を進行方向に広げなくても、基準形状(楕円E1)の仮想バンパー領域71を用いて、安全に物体との衝突回避を行うことができる。よって、この場合はS25の処理をスキップし、S26の処理へ移行する。この場合、仮想バンパー領域71の外郭としては、基準形状の楕円E1が設定される。
S26の処理では、車両1が減速中か否かを判断し(S26)、車両1が減速中の場合は、楕円E3のLvb2が基準形状(楕円E1)の長径Lvb以上か否かを判断する(S27)。その結果、Lvb2がLvb以上である場合(S26:Yes)は、加速度(減速度)aを考慮した楕円E3を用いて、仮想バンパー領域71の外郭を設定し(S28)、S29の処理へ移行する。
具体的には、車両1が前進している場合は、車両1の進行方向とは逆方向であるY座標が0以下の領域における仮想バンパー領域71の外郭として楕円E3を設定する。車両1が後進している場合は、車両1の進行方向とは逆方向であるY座標が0以上における領域の仮想バンパー領域71の外郭として楕円E3を設定する。
一方、S26の処理のよって、車両1が減速中ではないと判断される場合(S26:No)、又は、S27の処理によって、Lvb2がLvb未満であると判断される場合は(S27:No)、S28の処理をスキップして、S29の処理へ移行する。この場合、仮想バンパー領域の外郭としては、基準形状の楕円E1が設定される。
ここで、車両1が減速中でない場合は、車両1の進行方向とは逆方向にある物体と衝突する可能性は低い。よって、車両1の進行方向とは逆方向における仮想バンパー領域71の外郭を、楕円E1に設定しても安全に物体との衝突回避を行うことができる。また、Lvb2が基準形状の長径Lvb未満である場合は、加速度(減速度)aが小さいと判断できるので、加速度成分に応じて仮想バンパー領域71を進行方向とは逆方向に広げなくても、基準形状(楕円E1)の仮想バンパー領域71を用いて、安全に物体との衝突回避を行うことができる。
S29の処理では、仮想バンパー領域71の外郭を最終的に形成する処理を実行する(S29)。この処理では、S25又はS28の処理によって、所定の領域における仮想バンパー領域71の外郭が楕円E2又は楕円E3に設定されている場合、その所定の領域における仮想バンパー領域71の外郭を楕円E2又は楕円E3によって形成する。また、その他の領域については、仮想バンパー領域71の外郭を基準形状である楕円E1によって形成する。
これにより、車両1が大きな速度で前進しており(V>>0)、大きな減速度で減速している(a<<0)場合は、図8(b)に示すように、仮想バンパー領域71は、Y座標が0以上の領域において楕円E2によって形成され、Y座標が0以下の領域において楕円E3によって形成される。また、車両1が大きな速度で後進しており(V<<0)、大きな減速度で減速している(a>>0)場合は、図8(c)に示すように、仮想バンパー領域71は、Y座標が0以上の領域において楕円E3によって形成され、Y座標が0以下の領域において楕円E2によって形成される。
このように、車両速度Vが速いほど、車両1の進行方向において仮想バンパー領域71が広くなるように形成されるので、車両1が速い速度で走行している場合に、より早い段階から進行方向にある物体80との衝突回避を行うことができる。よって、車両1の速度を考慮しつつ、運転者に安心感を与えながら物体80の衝突回避を行うことができる。
加えて、車両1が減速している場合に、その減速度の大きさが大きいほど、その車両1の進行方向とは逆方向において仮想バンパー領域71が広くなるように設定される。これにより、車両1の進行方法とは逆方向については、車両1に大きな減速度が加えられ、車両速度が急激に遅くなる場合に、その進行方向とは逆方向にある物体80との衝突、例えば、進行方向とは逆方向からの追突を回避することができる。よって、車両1の進行方向に加えて、その進行方向とは逆方向にある物体80との衝突回避を、車両1の速度と減速度とに応じて、早い段階で行うことができる。従って、運転者に安心感を与えながら物体の衝突回避を行うことができる。
外郭形成処理(S29)の次に、バンパー形成処理を実行する(S30)。このバンパー形成処理では、図2に示すように、仮想バンパー領域71内に、バネ72を仮想的に並設する。具体的には、各バネ72の一端を、車両1の外周11において、10cm間隔で取着する。そして、車両1の前方側または後方側の仮想バンパー領域71に配設されるバネ72f,72bは、一端が車両1の前方先端(前端)または後方先端(後端)に取着された状態で、バネの長さ方向が車両1の前後方向と平行となるように配設し、他端を車両1前方側または後方側の外縁71aに位置させる。
また、車両1の右側または左側の仮想バンパー領域71に配設されるバネ72r,72lは、一端が車両1の右側面または左側面に取着された状態で、バネの長さ方向が車両1の左右方向と平行となるように配設し、他端を車両1右側または左側の外縁71aに位置させる。
また、車両1の右前コーナー,左前コーナー,左後コーナー,右後コーナー側の仮想バンパー領域71に配設されるバネ72fr,72fl,72bl,72brは、一端が車両1の対応するコーナー部分に取着された状態で、バネの長さ方向が、車両1の右前方向,左前方向,左後方向または右後方向となるように配設し、他端を車両1の左前コーナー,左後コーナー,右後コーナー側の外縁71aに位置させる。
S28の処理では、このようにして配設した各バネ72のバネ情報をバネ設定テーブルメモリ93aに格納することで、バネ72の設定を完了する。そして、S28の処理の終了後、仮想バンパー設定処理を終了し、物体回避処理へ戻る。
次いで、図9を参照して、図6の物体回避処理の一処理である物体回避実行処理(S12)について説明する。図9は、この物体回避実行処理を示すフローチャートである。
物体回避実行処理が実行されると、CPU91は、まず、第1〜第4カメラ26a〜26dにて撮像された画像の画像データから、車両1の周囲に存在する物体80と、車両1を基準としたその物体80の位置とを判断する(S51)。次に、S51の処理にて判断された物体80の位置と、バネ設定テーブルメモリ93aに格納された各バネ72のバネ情報とから、物体80の存在によって、仮想バンパー領域71内に仮想的に並設されたバネ72の中から収縮されたバネ73を検索する(S52)。
そして、S52の処理の結果、収縮されたバネ73があるか否かを判断する(S53)。その結果、収縮されたバネ73がなければ(S53:No)、仮想バンパー領域71内に物体80がないと判断し、そのまま物体回避実行処理を終了する。
一方、収縮されたバネ73があると判断された場合(S53:Yes)、仮想バンパー領域71内に物体80があると判断できるので、次に説明するS54〜S59の処理を実行して、物体80を回避するよう、車両1の走行を制御する。
まず、S54の処理では、収縮したバネ73から車両1に対して加えられる反発力Frを算出する(S54)。反発力Frの大きさは上述の式(1)によって算出される。このとき、式(1)で用いるバネ定数は、収縮したバネ73のバネ定数をバネ設定テーブルメモリ93aより取得する。なお、収縮したバネ73が複数ある場合は、それぞれのバネ73から加えられる反発力の向きも考慮して、すべてのバネ73から車両1に加えられる反発力を算出する。
次に、S54の処理にて算出した各バネ72(バネ73)から加えられた反発力Frの前後方向成分を合成して、車両1の重心Cに加えられる前後方向の反発力Fryを算出する。(S55)。そして、以下の式(8)により、車両1の加速度aを算出する(S56)。
a=Fry/m ・・・(8)
ここで、mは、車両1の重量(質量)である。
続くS58の処理では、前進時において、S54の処理にて算出した各バネ72(73)から加えられた反発力Frの左右方向成分から、車両1の重心Cに加えられる反モーメント力Mを算出する(S58)。
そして、算出した反モーメント力Mから、以下の式により、車両1の操舵角δfを算出する。
Figure 2013075640
なお、車両1が前進する場合、後進する場合のいずれにおいても、その車両速度が毎秒0.5m以下である場合、次の式(9)により、車両1の操舵角δfを算出する。
δf=−M/(2・Kf・Lf) ・・・(9)
ここで、[数1],式(9)の各式で用いられる各種パラメータの意味について、図10を参照して説明する。図10は、反モーメント力によって取り得るべき車両1の操舵角δfを算出する場合に用いるパラメータを説明する図である。
まず、Lfは、前輪軸と車両1の重心との距離であり、Lrは、後輪軸と車両1の重心との距離である。Kfは、前輪等価コーナーリングスティフネスであり、Krは、後輪等価コーナーリングスティフネスである。βは、重心位置における車両1の横滑り角であり、γは車両1のヨーレートである。Vは、車両速度である。なお、図10において、δrは、後輪における操舵角であるが、本実施形態における車両1は、前輪のみ操舵可能であるので、δrを0として取り扱っている。
図9に戻り説明を続ける。S58の処理が終了すると、続いて、S59の処理を実行する。S59の処理では、S56の処理により算出した加速度aと、現在の車両1の速度と、運転者によって踏み込まれたアクセルペダルの踏み込み量とから、目標とすべき車両速度を決定し、その目標とすべき車両速度を示す制御信号を、後述する車輪駆動装置3(図1参照)へ送信する。また、S59の処理では、S58の処理により算出した操舵角δfを示す制御信号を、後述する操舵駆動装置5(図1参照)へ送信する。そして、S59の処理の終了後、物体回避実行処理を終了する。
このS59の処理により、車両1が、前後方向の反発力Fryによって生じる車両1の加速度を反映させた速度で走行するように、車両1の走行の制御が行われる。また、車両1が、左右方向の反発力によって生じる反モーメント力Mを反映させた操舵角で走行するように、車両1の走行の制御が行われる。よって、容易に且つ速やかに、その物体80を回避しながら車両1を走行させることができる。
以上説明した通り、本実施形態によれば、車両速度Vが速いほど、車両1の進行方向において仮想バンパー領域71が広くなるように形成されるので、車両1が速い速度で走行している場合に、より早い段階から進行方向にある物体80との衝突回避を行うことができる。また、車両1が減速している場合に、その減速度の大きさが大きいほど、その車両1の進行方向とは逆方向において仮想バンパー領域71が広くなるように設定される。これにより、車両1に大きな減速度が加えられ、車両速度Vが急激に遅くなる場合に、その進行方向とは逆方向にある物体80との衝突、例えば、進行方向とは逆方向からの追突を回避することができる。従って、車両1の車両速度Vまたは加速度aを考慮しつつ、運転者に安心感を与えながら物体の衝突回避を行うことができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記各実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
上記実施形態では、車両1の車両速度Vや加速度aを考慮して仮想バンパー領域71の外郭を形成する場合に、図8に示す方法で行う場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。車両1の車両速度Vの大きさに応じて、車両1の進行方向における仮想バンパー領域71を広げる方法であれば任意の方法を用いてよい。また、車両1の減速時に、車両1の車両速度aに応じて、車両1の進行方向とは逆方向における仮想バンパー領域71を広げる方法であれば任意の方法を用いてよい。
例えば、上記実施形態では、楕円E2の長径Lvb1と楕円E3の長径Lvb2とを、上述した式(5),式(7)によって算出する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、次の式(10),(11)を用いて算出してもよい。
Lvb1=Lvb+A×V ・・・(10)
Lvb2=Lvb+A×|a| ・・・(11)
ただし、A,Aは任意の比例係数であり、予め所定の値に定められている。なお、この比例係数A,Aとは、運転者(搭乗者)が操作パネル(図示せず)を操作することにより設定を変更可能に構成されてもよい。
これによっても、車両速度Vが速いほど、車両1の進行方向において仮想バンパー領域71が広くなるように形成される。また、車両1が減速している場合に、その減速度の大きさが大きいほど、その車両1の進行方向とは逆方向において仮想バンパー領域71が広くなるように設定される。従って、運転者に安心感を与えながら物体の衝突回避を行うことができる。
なお、楕円E2の長径Lvb1を、上述した式(10)によって算出する場合は、Lvb1は必ず基準形状(楕円である閉曲線E1)の長径Lvb以上となるので、仮想バンパー設定処理(図7)のS24を省略し、S23の処理の後、S26の処理を実行してもよい。また、S24の処理において、Lvb1が、基準形状の長径Lvb以上の所定長Lmin1以上か否かを判断してもよい。そして、Lvb1がLmin1以上であれば(S24:Yes)、S25の処理を実施し、Lvb1がLmin1未満であれば(S24:No)、車両1がゆっくり走行しているものとして、S25の処理をスキップしてもよい。
これにより、車両1がゆっくり走行している場合は、仮想バンパー領域71の外郭としては、基準形状の楕円E1が設定される。車両1がゆっくり走行している場合は、速度成分に応じて仮想バンパー領域71を進行方向に広げなくても、基準形状(楕円E1)の仮想バンパー領域71を用いて、安全に物体との衝突回避を行うことができる。よって、車両1がゆっくり走行している場合は、仮想バンパー領域71の外郭として、基準形状の楕円E1を設定することにより、仮想バンパー領域71が必要以上に広げられ、物体との衝突回避が必要以上に早い段階から行われることを抑制できる。なお、S24の処理を、Lvb1が、基準形状の長径Lvb以上の所定長Lmin1以上か否かを判断とすることは、上記実施形態のように式(5)を用いてLvb1を算出する場合においても適用可能である。
一方、楕円E3の長径Lvb2を、上述した式(11)によって算出する場合は、Lvb2は必ず基準形状の長径Lvb以上となるので、仮想バンパー設定処理(図7)のS27を省略し、S26のYesの分岐の後、S28の処理を実行してもよい。また、S27の処理において、Lvb2が、基準形状の長径Lvb以上の所定長Lmin2以上か否かを判断してもよい。そして、Lvb2がLmin2以上であれば(S27:Yes)、S28の処理を実施し、Lvb2がLmin2未満であれば(S27:No)、加速度(減速度)aが小さいと判断できるので、S25の処理をスキップしてもよい。
これにより、車両1の加速度(減速度)aが小さい場合は、仮想バンパー領域71の外郭としては、基準形状の楕円E1が設定される。加速度(減速度)aが小さい場合は、加速度成分に応じて仮想バンパー領域71を進行方向とは逆方向に広げなくても、基準形状(楕円E1)の仮想バンパー領域71を用いて、安全に物体との衝突回避を行うことができる。よって、加速度(減速度)aが小さい場合は、仮想バンパー領域71の外郭として、基準形状の楕円E1を設定することにより、仮想バンパー領域71が必要以上に広げられ、物体との衝突回避が必要以上に早い段階から行われることを抑制できる。なお、S27の処理を、Lvb2が、基準形状の長径Lvb以上の所定長Lmin2以上か否かを判断とすることは、上記実施形態のように式(7)を用いてLvb2を算出する場合においても適用可能である。
また、車両1の車両速度Vや加速度aを考慮して仮想バンパー領域71の外郭を形成する別の方法として、図11に示す方法を例示する。図11(a)は、仮想バンパー領域71の外郭を形成する場合に用いる5つの閉曲線E1〜E3,E2’,E3’を示す。
図11(a)に示す閉曲線(楕円)E1は、仮想バンパー領域71の基準形状であり、上述した式(3)で表される。閉曲線E2は、車両1が前進している場合に、車両速度Vを考慮して仮想バンパー領域71を広げる場合に用いるものであり、以下の式(12),(13)で表される。
/Wvb+y/Lvb=1 (y>=0) ・・・(12)
/Wvb+y/(Lvb+L=1 (y<0) ・・・(13)
閉曲線E2’は、車両1が後進している場合に、車両速度Vを考慮して仮想バンパー領域71を広げる場合に用いるものであり、以下の式(14),(15)で表される。
/Wvb+y/(Lvb+L=1 (y>=0) ・・・(14)
/Wvb+y/Lvb=1 (y<0) ・・・(15)
ここで、Lは、車両速度Vの大きさに応じて、基準形状を長径方向(Y軸方向)に広げる長さであり、車両速度Vに比例して次の式(16)によって定まる。
=A×V ・・・(16)
ただし、Aは任意の比例係数であり、予め所定の値に定められている。
閉曲線E3は、車両1が前進しながら減速している場合に、加速度aを考慮して仮想バンパー領域71を広げる場合に用いるものであり、以下の式(17),(18)で表される。
/Wvb+y/(Lvb+L=1 (y>=0) ・・・(17)
/Wvb+y/Lvb=1 (y<0) ・・・(18)
閉曲線E3’は、車両1が後進しながら減速している場合に、加速度aを考慮して仮想バンパー領域71を広げる場合に用いるものであり、以下の式(19),(20)で表される。
/Wvb+y/Lvb=1 (y>=0) ・・・(19)
/Wvb+y/(Lvb+L=1 (y<0) ・・・(20)
ここで、Lは、加速度aの大きさに応じて、基準形状を長径方向(Y軸方向)に広げる長さであり、加速度aの絶対値に比例して次の式(21)によって定まる。
=A×|a| ・・・(21)
ただし、Aは任意の比例係数であり、予め所定の値に定められている。なお、この比例係数Aと、上述の比例係数Aとは、運転者(搭乗者)が操作パネル(図示せず)を操作することにより設定を変更可能に構成されてもよい。
図11の方法を用いた場合も、図7に示す仮想バンパー設定処理と同様の処理によって、仮想バンパー領域71を設定する。ただし、仮想バンパー設定処理(図7)のS23の処理では、式(16),式(21)を用いて、上記のL,Lを算出する。そして、S24の処理では、Lが基準形状(楕円である閉曲線E1)の長径Lvb以上か否かを判断し、LがLvb以上であれば(S24:Yes)、S25の処理を実施する。
S25の処理では、車両1が前進している場合において、閉曲線E2を車両1の進行方向(Y軸の正方向)に長さLだけ移動させた上で、その移動後の閉曲線E2のY座標が0以上における部分を、仮想バンパー領域71の外郭として設定する。また、車両1が後進している場合において、閉曲線E2’を車両1の進行方向(Y軸の負方向)に長さLだけ移動させた上で、その移動後の閉曲線E2’のY座標が0以下における部分を、仮想バンパー領域71の外郭として設定する。
一方、S24の処理の結果、LがLvb未満であれば(S24:No)、S25の処理をスキップする。この場合、仮想バンパー領域71の外郭としては、基準形状の楕円E1が設定される。この場合は、車両1がゆっくり走行しているので、速度成分に応じて仮想バンパー領域71を進行方向に広げなくても、基準形状(楕円E1)の仮想バンパー領域71を用いて、安全に物体との衝突回避を行うことができる。なお、S24の処理そのものを省略し、Lの長さにかかわらず、S25の処理を実行してもよい。
また、S27の処理では、Lが基準形状(閉曲線E1)の長径Lvb以上か否かを判断し、LがLvb以上であれば(S27:Yes)、S28の処理を実施する。S28の処理では、車両1が前進している場合において、閉曲線E3を車両1の進行方向とは逆方向(Y軸の負方向)に長さLだけ移動させた上で、その移動後の閉曲線E3のY座標が0以下における部分を、仮想バンパー領域71の外郭として設定する。また、車両1が後進している場合において、閉曲線E3’を車両1の進行方向とは逆方向(Y軸の正方向)に長さLだけ移動させた上で、その移動後の閉曲線E3’のY座標が0以上における部分を、仮想バンパー領域71の外郭として設定する。
一方、S27の処理の結果、LがLvb未満であれば(S27:No)、S28の処理をスキップする。この場合、仮想バンパー領域71の外郭としては、基準形状の楕円E1が設定される。この場合は、加速度(減速度)aが小さいと判断できるので、速度成分に応じて仮想バンパー領域71を進行方向とは逆方向に広げなくても、基準形状(楕円E1)の仮想バンパー領域71を用いて、安全に物体との衝突回避を行うことができる。なお、S27の処理そのものを省略し、Lの長さにかかわらず、S28の処理を実行してもよい。
これにより、車両1が大きな速度で前進しており(V>>0)、大きな減速度で減速している(a<<0)場合は、図11(b)に示すように、仮想バンパー領域71は、Y座標が0以上の領域において閉曲線E2によって形成され、Y座標が0以下の領域において閉曲線E3によって形成される。また、車両1が大きな速度で後進しており(V<<0)、大きな減速度で減速している(a>>0)場合は、図11(c)に示すように、仮想バンパー領域71は、Y座標が0以上の領域において閉曲線E3’によって形成され、Y座標が0以下の領域において閉曲線E2’によって形成される。
よって、図8にて示した方法と同様に、車両速度Vが速いほど、車両1の進行方向において仮想バンパー領域71が広くなるように形成される。また、車両1が減速している場合に、その減速度の大きさが大きいほど、その車両1の進行方向とは逆方向において仮想バンパー領域71が広くなるように設定される。従って、運転者に安心感を与えながら物体の衝突回避を行うことができる。
なお、図11で示した変形例では、閉曲線E2、閉曲線E2’を車両1の進行方向に移動させる長さLと、閉曲線E3、閉曲線E3’を車両1の進行方向とは逆方向に移動させる長さLとは、車両速度V又は加速度aに比例する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、車両速度V又は加速度aの増加に従ってL及びLが長くなるように、L及びLを計算するようにしてもよい。例えば、Lが車両速度Vの二乗に比例するように、また、Lが加速度aの二乗に比例するように、これらL及びLを計算してもよい。
また、図11で示した変形例では、閉曲線E2,閉曲線E2’において、基準形状の楕円E1から長径方向(Y軸方向)に広げられる長さ(以下「拡大長」と称す)Lと、車両1の進行方向に移動させる長さ(以下「移動長」と称す)Lとを同一の長さとする場合について説明したが、拡大長と移動長とを必ずしも同一とさせる必要はない。また、閉曲線E3,閉曲線E3’においても、同様に、基準形状の楕円E1からの拡大長Lと、車両1の進行方向とは逆方向への移動長Lとを必ずしも同一の長さとさせる必要はない。この場合、閉曲線E2,E2’,E3,E3’の移動長については、車両速度V又は加速度aの増加に従って長くなるように算出すればよい。一方、閉曲線E2,E2’,E3,E3’の拡大長については、車両速度V又は加速度aの増加に従って長くなるように算出してもよいし、任意の値を設定してもよい。
上記実施形態では、車両1の車両速度Vと加速度aとの両方を考慮して、仮想バンパー領域71を形成する場合について説明したが、いずれか一方を考慮せずに仮想バンパー領域71を形成してもよい。車両1の加速度aを考慮せずに仮想バンパー領域71を形成する場合は、図7に示すS26〜S28の処理を省略すればよい。また、車両1の車両速度Vを考慮せずに仮想バンパー領域71を形成する場合は、図7に示すS24,S25の処理を省略すればよい。
上記実施形態では、車両1が減速する場合に限り車両1の加速度aを考慮して仮想バンパー領域71を形成する場合について説明したが、車両1が減速しているか否かにかかわらず、車両1の加速度aを考慮して仮想バンパー領域71を形成してもよい。この場合、図7に示すS26の処理を省略すればよい。そして、S28の処理では、車両1が加速している場合は、その加速度aの大きさに応じて、車両1の進行方向における仮想バンパー領域71が広がるように、仮想バンパー領域71を設定すればよい。例えば、図8に示す方法では、S24,S25の処理によって車両1の進行方向に設定された楕円の長径に、加速度aの絶対値に比例した長さを加算して、車両1の進行方向における楕円の長径を更に長くするようにしてもよい。これにより、車両1に加速度が大きく加えられ、速度が急激に速くなる場合には、より早い段階からその加速される方向(車両1の進行方向)にある物体80との衝突回避を行うことができる。また、車両1の車両速度Vを考慮せず、車両1の加速度aを、車両1が減速しているか否かにかかわらず考慮して、仮想バンパー領域71を形成してもよい。この場合も、車両1が加速している場合は、その加速度aの大きさに応じて、車両1の進行方向における仮想バンパー領域71が広がるように、仮想バンパー領域71を設定すればよい。
上記実施形態における仮想バンパー領域71では、反発力Frが作用する作用点を車両1の外周に分散させ、その分散させた作用点から仮想バンパー領域71の外縁71aに向けて仮想的にバネ72を並設する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、反発力Frが作用する作用点を車両1の任意の1点または複数個所の点に集中させて、仮想バンパー領域71に複数のバネ72を並設してもよい。例えば、車両1中央の前後軸と車両1の前輪軸との交点、及び、その前後軸と車両1の後輪軸との交点を、反発力Frが作用する作用点とし、これら2か所に、バネ72の一端を取着させて、バネ72を仮想バンパー領域71に並設させてもよい。
上記実施形態において、仮想バンパー領域71内に存在する物体80によって車両1に反発力Frが加えられた場合に、前輪2FL,2FRの操舵角がその反発力Frに基づいて算出した操舵角δfとなるよう、走行制御装置100が操舵駆動装置5を制御する場合について説明したが、車両1にステアリングホイール13に回転力を加える駆動装置を設け、走行制御装置100は、その駆動装置を制御して、操舵角δfの方向に、操舵角δfの大きさに応じた回転力をステアリングホイール13に加えるようにしてもよい。運転者は、ステアリングホイール13に加えられた回転力によってステアリングホイール13を回転操作することにより、物体80との衝突回避を行うことができる。
上記各実施形態では、第1〜第4カメラ26a〜26dを搭載して、車両1の周辺情報を取得する場合について説明したが、周辺情報を取得する手段として、ステレオカメラ、赤外線カメラを用いてもよいし、ミリ波レーダ、レーザレーダ、UWB(Ultra Wide Band)レーダ等の各種レーダや、ソナーを用いてもよい。また、道路と車両との間の通信である路車間通信や、他車との間の通信による車車間通信によって、物体の位置情報を取得してもよい。またこれらを複数組み合わせて使用してもよい。
例えば、レーザレーダは、レーザビームを車両1の周囲へ照査し、その反射の有無や反射を検出した方向およびレーザビームを照射してから反射を検出するまでの時間に基づいて、車両1の周辺にある道路や物体の形状等を把握するものである。走行制御装置100は、このレーザレーダを用いることにより、レーザレーダにより照射したレーザビームの反射の検出結果から、車両1の周辺に存在する物体等の形状をマップ化し、それに基づいて、物体の位置等を検出するように構成してもよい。
上記各実施形態では、操舵装置5がラック&ピニオン式のステアリングギヤとして構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ボールナット式等の他のステアリングギヤ機構を採用することは当然可能である。
1 車両
26a〜26d 第1〜第4カメラ(検出手段)
100 走行制御装置
S21,S22 (取得手段)
S23〜S30 (設定手段)
S54 (算出手段)
S59 (制御手段)

Claims (5)

  1. 車両の周囲に存在する物体を検出する検出手段と、
    その検出手段により検出された物体であって、前記車両に設定された所定領域内に存在する物体との衝突を回避するための仮想的な反発力を、前記物体と前記車両との位置関係に基づいて算出する算出手段と、
    その算出手段により算出された反発力が前記車両に加えられたものとして、前記車両の走行に伴う制御を行う制御手段と、
    前記車両の速度に関する速度情報を取得する取得手段と、
    その取得手段により取得された前記速度情報に基づき、前記車両の速度が速いほど、その車両の進行方向において前記所定領域の範囲が広くなるように、前記所定領域を設定する設定手段とを備えることを特徴とする走行制御装置。
  2. 前記取得手段は、更に、前記車両の加速度に関する加速度情報を取得するものであり、
    前記設定手段は、前記取得手段により取得された前記加速度情報に基づき、前記車両が加速される方向において、その加速度の大きさが大きいほど前記所定領域の範囲が広くなるように、前記所定領域を設定するものであることを特徴とする請求項1に記載の走行制御装置。
  3. 前記取得手段は、更に、前記車両の加速度に関する加速度情報を取得するものであり、
    前記設定手段は、前記取得手段により取得された前記加速度情報に基づき、前記車両が減速している場合に、その減速時の加速度である減速度の大きさが大きいほど、その車両の進行方向とは逆方向において前記所定領域の範囲が広くなるように、前記所定領域を設定するものであることを特徴とする請求項1に記載の走行制御装置。
  4. 車両の周囲に存在する物体を検出する検出手段と、
    その検出手段により検出された物体であって、前記車両に設定された所定領域内に存在する物体との衝突を回避するための仮想的な反発力を、前記物体と前記車両との位置関係に基づいて算出する算出手段と、
    その算出手段により算出された反発力が前記車両に加えられたものとして、前記車両の走行に伴う制御を行う制御手段と、
    前記車両の加速度に関する加速度情報を取得する取得手段と、
    その取得手段により取得された前記加速度情報に基づき、前記車両が加速される方向において、その加速度の大きさが大きいほど前記所定領域の範囲が広くなるように、前記所定領域を設定する設定手段とを備えることを特徴とする走行制御装置。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の走行制御装置を備えることを特徴とする車両。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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