以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図7に従って説明する。図1は、電子部品検査装置としてのICハンドラ10を示す平面図である。
ICハンドラ10は、ベース11、安全カバー12、高温チャンバ13、供給ロボット14、回収ロボット15、第1シャトル16、第2シャトル17、複数のコンベアC1〜C6を備えている。
ベース11は、その上面に前記各要素を搭載している。安全カバー12は、ベース11の大きな領域を囲っていて、この内部には、供給ロボット14、回収ロボット15、第1シャトル16及び第2シャトル17が収容されている。
複数のコンベアC1〜C6は、その一端部側が、安全カバー12の外側に位置し、他端部が安全カバー12の内側に位置するように、ベース11に設けられている。各コンベアC1〜C6は、電子部品などのICチップTを複数収容したトレイ18を、安全カバー12の外側から安全カバー12の内側へ搬送したり、反対に、トレイ18を、安全カバー12の内側から安全カバー12の外側へ搬送したりする。
供給ロボット14は、X軸フレームFX、第1のY軸フレームFY1及び供給側ロボットハンドユニット20により構成されている。回収ロボット15は、該X軸フレームFX、第2のY軸フレームFY2及び回収側ロボットハンドユニット21により構成されている。X軸フレームFXは、左右方向(X方向。図1において左右方向。)に配置されている。第1のY軸フレームFY1及び第2のY軸フレームFY2は、前後方向(Y方向。図1において下上方向。)に沿って互いに平行となるように配置され、前記X軸フレームFXに対して、左右方向に移動可能に支持されている。そして、第1のY軸フレームFY1及び第2のY軸フレームFY2は、X軸フレームFXに設けた図示しないそれぞれのモータによって、該X軸フレームFXに沿って左右方向に往復移動する。
第1のY軸フレームFY1の下側には、供給側ロボットハンドユニット20が前後方向(Y方向)に移動可能に支持されている。供給側ロボットハンドユニット20は、第1のY軸フレームFY1に設けた図示しないそれぞれのモータによって、該第1のY軸フレームFY1に沿って前後方向に往復移動する。そして、供給側ロボットハンドユニット20は、例えば、コンベアC1のトレイ18に収容された検査前のICチップTを、例えば、第1シャトル16に供給する。
第2のY軸フレームFY2の下側には、回収側ロボットハンドユニット21が前後方向(Y方向)に移動可能に支持されている。回収側ロボットハンドユニット21は、第2のY軸フレームFY2に設けた図示しないそれぞれのモータによって、該第2のY軸フレームFY2に沿って前後方向に往復移動する。そして、回収側ロボットハンドユニット21は、例えば、第1シャトル16から供給された検査後のICチップTを、例えば、コンベアC6のトレイ18に供給する。
ベース11の上面であって、供給ロボット14と回収ロボット15の間には、第1のレール24A及び第2のレール24Bがそれぞれ左右方向に平行して配設されている。第1のレール24Aには、第1シャトル16が左右方向に往復動可能に備えられている。また、第2のレール24Bには、第2シャトル17が左右方向に往復動可能に備えられている。
第1シャトル16は、左右方向に長い略板状のベース部材16Aを備えていて、その底面の図示しないレール受けによって第1のレール24Aに摺接されている。そして、第1シャトル16に設けた図示しないモータによって、第1のレール24Aに沿って往復動される。ベース部材16Aの上面の両端には、それぞれチェンジキット25,27がネジなどで交換可能に固着されて、各チェンジキット25,27の各ポケット26にICチップTを保持するようになっている。
第2シャトル17は、左右方向に長い略板状のベース部材17Aを備えていて、その底面の図示しないレール受けによって第2のレール24Bに摺接されている。そして、第2シャトル17に設けた図示しないモータによって、第2のレール24Bに沿って往復動される。ベース部材17Aの上面の両端には、それぞれチェンジキット25,27がネジなどで交換可能に固着されて、各チェンジキット25,27の各ポケット26にICチップTを保持するようになっている。
ベース11の上面であって、第1及び第2シャトル16,17との間には検査部23が設けられている。
図2において、検査部23は、その上面に検査用ソケット23Aが凹設されている。検査用ソケット23Aは、そこに装着されたICチップTに電気的な検査を行うためのソケットであって、その上部にICチップTの配置されるコネクタ部23Acが設けられている。すなわち検査部23には、検査用ソケット23Aがそのコネクタ部23Acを上方に向けるかたちに配設されている。
図3において、コネクタ部23Acには、検査対象とされるICチップTの各外部端子Bに対応した複数の検査用の接続端子としての検査用プローブ23Pが備えられている。
検査用プローブ23Pは、その基端部が検査用ソケット23A内を上下動可能に配置されるとともに、その先端部がコネクタ部23Acの底部23bから上方に突出されるようになっている。すなわち検査用プローブ23Pは、その基端部が検査用ソケット23A内をその稼動範囲の下端まで移動されたとき、その先端部がコネクタ部23Acの底部23bと同じ高さの下端位置に配置される。また、その基端部が検査用ソケット23A内をその稼動範囲の上端まで移動されたとき、その先端部がコネクタ部23Acの底部23bから最も突出される上端位置に配置されるようになっている。なお通常、図4(a)に例示されるように、検査用プローブ23Pは、その基端部が図示しないばねにより上方へ付勢されてその稼動範囲の上端に配置されるようにされており、このときその先端部が上端位置に配置されるようになっている。一方、図4(c)に例示されるように、検査用プローブ23Pは、その先端部に押圧力を受ける場合、その基端部へのばねによる上方への付勢力(受け圧力)に抗して下方に移動され、その先端部が上端位置から下端位置の方向へ移動され底部23bからの突出長が短くされる。すなわちICチップTが検査用ソケット23Aに押圧されるとき、ICチップTの各外部端子Bが各検査用プローブ23Pの受け圧力に抗しつつそれらを押し下げることにより、それら検査用プローブ23Pとの間に所定の接触圧を確保しつつ電気的な接続が確保されるようになる。
図1において、第1及び第2シャトル16,17と検査用ソケット23Aとの上方には、各シャトル16,17と検査用ソケット23Aとの間でICチップTを相互に搬送するために、前後方向(Y方向)に往復移動可能な検査用ヘッド22が設けられている。図2において、検査用ヘッド22には、ベース11上に設置された図示しないフレームに対して前後方向に移動可能な水平移動部31と、水平移動部31に対して上下(Z方向)動可能にその下部に連結された垂直移動部32と、垂直移動部32の下部に連結された把持部35とが設けられている。
水平移動部31は、フレームに設けられたY軸モータMY(図5参照)の正逆回転により同フレームに沿って前後方向に往復移動されるようになっている。
垂直移動部32は、水平移動部31に設けられたZ軸モータMZ(図5参照)の正逆回転により同水平移動部31に対して上下方向に往復移動される。すなわち、把持部35の高さが、ICチップTを各チェンジキット25,27の各ポケット26へ給排させる場合の給排高さや、ICチップTを検査用ソケット23Aに配置させる場合の配置高さ又は検査用ヘッド22とともに前後方向(Y方向)へ移動される場合の移動高さの各高さに各工程に応じて垂直移動部32の上下動により移動される。
垂直移動部32には、位置調整装置33とその位置調整装置33の下部に連結された押圧部34とが設けられている。
位置調整装置33は、その下部の位置を対向する検査部23などに対して微調整するものであって、その筐体が垂直移動部32に対して固定されているとともに、その下部が垂直移動部32に対して水平方向(XY方向)への相対移動及び水平面(XY平面)に沿った回転移動することが可能になっている。すなわち位置調整装置33には、その下部を左右方向(X方向)に移動させる図示しないX移動アクチュエータと、前後方向(Y方向)に移動させる図示しないY移動アクチュエータと、水平面に沿って回転(θ移動)させる図示しないθ移動アクチュエータとが設けられている。そしてそれらアクチュエータの協働により、位置調整装置33の下部が垂直移動部32に対して水平方向への相対移動及び水平面に沿った回転移動されるとともに、その下部に接続された押圧部34も垂直移動部32に対して水平方向への相対移動及び水平面に沿った回転移動、すなわち位置が微調整されるようになる。
押圧部34の内部には空気圧シリンダが設けられている。空気圧シリンダには、同空気圧シリンダに対して所定のストロークにて上下動可能なピストン34Pの基端部が設けられており、そのピストン34Pの先端部が押圧部34の下面から下方に向けて突出されている。空気圧シリンダは圧縮空気が供給されたときに稼動状態とされ、その供給された圧縮空気の空気圧に基づいた押圧力によりピストン34Pが同空気圧シリンダ内の下端である下降端まで下動される。一方、空気圧シリンダはその内圧が大気圧に開放されたときに非稼動状態とされ、図示しないばねなどの付勢によりピストン34Pが同空気圧シリンダ内の上端である上昇端まで上動されるようになっている。これにより押圧部34は、その下面においてピストン34Pの先端部が上昇端と下降端との間の距離に相当するストロークで上下動するようになっている。なお本実施形態では、ピストン34Pが上下動されるストロークは、垂直移動部32が上下動される距離と比べると極めて短い距離である。
押圧部34の側面には、ピストン34Pの基端部が上昇端に位置していることを検出する上昇端検出センサ34Uと、ピストン34Pの基端部が下降端に位置していることを検出する下降端検出センサ34Dとが設けられている。上昇端検出センサ34Uと下降端検出センサ34Dは、例えば近接された磁石の磁力を検出するものであって、ピストン34Pの基端部に設けられた永久磁石が空気圧シリンダ内を上昇端や下降端に位置されたときの磁力をそれぞれ検出するようになっている。すなわち上昇端検出センサ34Uは、ピストン34Pが上昇端に位置していることを検出した場合、検出したことを示す「ON」信号を出力し、それ以外の場合には検出していないことを示す「OFF」信号を出力する。また下降端検出センサ34Dは、ピストン34Pが下降端に位置していることを検出した場合、検出したことを示す「ON」信号を出力し、それ以外の場合には検出していないことを示す「OFF」信号を出力する。
ピストン34Pの先端部には前記把持部35が連結されている。すなわち、把持部35は、位置調整装置33の下部が駆動されることにより垂直移動部32に対して水平方向への相対移動及び水平面に沿った回転移動されるとともに、押圧部34のピストン34Pが駆動されることにより短距離の上下動されるようになっている。
把持部35は、その下面35bに吸着口が設けられている。吸着口は、図示しない真空装置への接続と大気圧への開放とを切り替える吸着用バルブV1(図5参照)に接続されており、真空装置に接続されたときに生じる負圧によりICチップTを把持部35に吸着把持させるようになっている。これにより、把持部35に把持される検査前のICチップTは、押圧部34が非稼動状態にされているときには押圧部34に近い上昇位置に配置され、押圧部34が稼動状態にされているときには押圧部34からピストン34Pのストロークだけ突出された下降位置に配置される。
これにより、ICチップTは把持部35の下面35bに吸着されることによって検査用ヘッド22に把持されるようになる。そして、図4(a)に示すように、ICチップTは、検査用ヘッド22の前後移動により検査用ソケット23Aに対向されつつ垂直移動部32が下降されることにより、検査用ソケット23Aのコネクタ部23Acに配置される。本実施形態では、押圧部34が非稼動状態にされICチップTが上昇位置に配置されている状態で、ICチップTがコネクタ部23Acに配置されるようになっており、その各外部端子Bと各検査用プローブ23Pとの間には微小な間隔が形成されるようになっている。なおこの微小間隔は、空気圧シリンダのピストン34Pのストロークよりも短い距離に設定されている。そして、押圧部34が非稼動状態から稼動状態にされることに伴いICチップTが上昇位置から下降位置に下動されると、図4(b)に示すように、その下動ストローク範囲の途中であるとともに検査用プローブ23Pの上端位置である当接位置にて各外部端子Bが各検査用プローブ23Pに当接されるようになる。その後、図4(c)に示すように、各外部端子Bはピストン34Pが下降端に到達されるまで各検査用プローブ23Pを当接位置から下方に押下させるようになっている。なおピストン34Pが下降端に配置されたとき、各外部端子Bに押下された検査用プローブ23Pはその基端部が稼動範囲の下端よりも上方にて停止されるようになっており、各外部端子Bには対応するそれぞれの検査用プローブ23Pからの上方への付勢力(受け圧力)以外の押圧力が印加されないようになっている。
また本実施形態では、把持部35は、その上部35aの中央にロードセル36が設けられており、そのロードセル36にピストン34Pの先端部が連結されている。ロードセル36は、その上下方向に受ける荷重に基づいて、その荷重に応じた検出信号を出力する。すなわち把持部35は、ロードセル36を介してピストン34Pにより上下動されるとともに、ピストン34Pを押し返す反力を含めたピストン34Pからの押圧力がロードセル36により検出されて、その検出された押圧力に応じた検出信号がロードセル36から出力されるようになっている。
次に、ICハンドラ10の電気的構成について図5を参照して説明する。図5は、主にICチップTを検査用ソケット23Aに配置するための電気的構成をブロック図として示したものである。
ICハンドラ10には、制御装置50が備えられている。制御装置50は、中央演算処理装置(CPU)、不揮発性メモリ(ROM)及び揮発性メモリ(RAM)を有するマイクロコンピュータを中心に構成されており、メモリに格納されている各種データ及びプログラムに基づいて各種制御を実行する。本実施形態では制御装置50にて、ICチップTを検査用ソケット23Aに押圧する押圧力制御などが実行される。またRAMには、適正押圧力の値、当接押圧力の値、最大押圧力の値とその初期値、及び静定判定用閾値などを格納する領域がそれぞれ確保されている。
制御装置50は、入出力装置51と電気的に接続されている。入出力装置51は、各種スイッチと状態表示機を有しており、前記各処理の実行を開始する指令信号や、各処理を実行するための初期値データ等を制御装置50に出力する。本実施形態では、検査に適した押圧力である適正押圧力、ICチップTが検査用ソケットに当接されるときの当接押圧力、最大押圧力の初期値、圧力検出装置の検出に基づく検出値が静定されたことを判定するための静定判定用閾値などが制御装置50に出力される。制御装置50は、入出力装置51から受けたそれらの値をそれぞれの値に対応して確保されている各領域にそれぞれ格納させる。
制御装置50は、Y軸モータ駆動回路MYD及びZ軸モータ駆動回路MZDとそれぞれ電気的に接続されている。
Y軸モータ駆動回路MYDは、制御装置50から受けた駆動信号に応答して、同駆動信号に基づく駆動量を演算し、演算された駆動量に基づいてY軸モータMYを駆動制御するようになっている。また制御装置50には、Y軸モータ駆動回路MYDを介してY軸モータエンコーダEMYによって検出されたY軸モータMYの回転速度が入力される。これにより制御装置50は、検査用ヘッド22の前後方向の位置を把握するとともに、その把握した位置と、目標位置としての検査用ソケット23Aの上方位置や、第1又は第2シャトル16,17の上方位置などとのずれを求めて、そのずれを減少させるべくY軸モータMYを駆動制御して検査用ヘッド22が目標位置に移動されるようしている。
Z軸モータ駆動回路MZDは、制御装置50から受けた駆動信号に応答して、同駆動信号に基づく駆動量を演算し、演算された駆動量に基づいてZ軸モータMZを駆動制御するようになっている。また制御装置50には、Z軸モータ駆動回路MZDを介してZ軸モータエンコーダEMZによって検出されたZ軸モータMZの回転速度が入力される。これにより制御装置50は、把持部35の上下方向の位置(高さ)を把握するとともに、その高さと、目標高さとしての給排高さや、配置高さ又は移動高さなどとのずれを求めて、そのずれを減少させるべくZ軸モータMZを駆動制御して把持部35が目標高さに移動されるようにしている。
制御装置50は、バルブ駆動回路V1Dと電気的に接続されている。バルブ駆動回路V1Dは、制御装置50から受けた制御信号に応答して吸着用バルブV1を駆動制御するようになっている。吸着用バルブV1は、駆動制御により把持部35底面の吸着口の接続先を真空装置と大気圧との間で切り替えられることにより、吸着孔の圧力を負圧と大気圧との間で切り替えるようになっている。そして吸着口の圧力が負圧にされたときにICチップTが把持部35に吸着把持される。
制御装置50は、押圧部34に対応して設けられた電空レギュレータ回路ARと電気的に接続されている。電空レギュレータ回路ARは、制御装置50から入力される圧力指令値に応答して、そこに入力される圧縮空気の圧力を圧力指令値により指示される圧力に調整して押圧部34に供給する。これにより押圧部34は、圧力指令値で指示される圧力に応じた押圧力によりそのピストン34Pが駆動される。例えば、電空レギュレータ回路ARは、制御装置50から圧力が適正押圧力である圧力指令値を受けると圧縮空気の圧力を調整して押圧部34のピストン34Pが適正押圧力で下動されるようにする。また、例えば、電空レギュレータ回路ARは、制御装置50から圧力が大気圧である圧力指令値を受けると圧縮空気の圧力を大気圧に調整して押圧部34のピストン34Pが上動されるようにする。
制御装置50は、垂直移動部32に設けられた位置調整装置33と電気的に接続されている。位置調整装置33は、制御装置50から受ける制御信号に応答してX移動アクチュエータ、Y移動アクチュエータ及びθ移動アクチュエータの各アクチュエータを駆動制御することによりその下部を垂直移動部32に対して左右方向(X方向)及び前後方向(Y方向)に相対移動させるとともに、水平面(XY平面)に沿って回転移動させる。これにより例えば、制御装置50が別途設けられるビジュアルアライメント装置などにより算出された垂直移動部32に対するICチップTの位置補正データに基づいて制御信号を出力し、位置調整装置33が同制御信号に基づいてその下部に連結された押圧部34(ICチップT)の位置を同垂直移動部32に対して微調整するようになる。
制御装置50は、上昇端検出センサ34Uと電気的に接続されている。制御装置50は、ピストン34Pが上昇端に配置されたこときに上昇端検出センサ34Uから出力される「ON」信号を受けて、ピストン34Pが上昇端に配置されていると判定する。
制御装置50は、下降端検出センサ34Dと電気的に接続されている。制御装置50は、ピストン34Pが下降端に配置されたこときに下降端検出センサ34Dから出力される「ON」信号を受けて、ピストン34Pが下降端に配置されていると判定する。
制御装置50は、ロードセル36と電気的に接続されている。制御装置50は、ロードセル36から出力される検出信号を受けて、同検出信号に基づいてピストン34Pと把持部35との間の押圧力を逐次算出するようにしている。
また、制御装置50は、当接時に用いる当接押圧力を算出するための当接押圧力算出処理を行なう。当接押圧力算出処理は、前回の当接時の最大押圧力の値から適正押圧力を減算して求められた値を、その都度前回の当接時に印加した当接押圧力から減算することにより求める。例えば、前回の当接時に最大押圧力の値が適正押圧力よりも大きい場合には、適正押圧力を超える過剰圧力(正圧)を前回の当接時に印加した当接押圧力から減算したものが新たな当接押圧力として求められる。また例えば、前回の当接時に最大押圧力の値が適正押圧力よりも小さい場合には、適正押圧力に不足する不足圧力(負圧)を前回の当接時に印加した当接押圧力に加算したものが新たな当接押圧力として求められる。
さらに、制御装置50は、検査用ソケット23Aに当接されたICチップTに印加される押圧力の最大値を検出する最大押圧力検出処理を行なう。最大押圧力検出処理は、まず最大押圧力が記録されているメモリ領域の値を「0」にしてから、例えば上昇端検出センサ34Uから「OFF」信号が入力されてから下降端検出センサ34Dから「ON」信号が入力されるまで行われる。そのとき最大押圧力検出処理では、ロードセル36から出力される検出信号に基づいて算出された押圧力(検出押圧力)がメモリに保存されている最大押圧力より大きいか否かを逐次比較して、検出押圧力が最大押圧力よりも大きい場合にはその値を最大押圧力の値にするようにしている。
また、制御装置50は、検出押圧力が静定されたことを判定する静定判定処理を行なう。静定判定処理は、下降端検出センサ34Dから「ON」信号が入力された後に、検出押圧力と圧力指令値(当接押圧力)との差分の大きさが静定判定用閾値よりも小さい期間が所定の期間経過したことにより検出押圧力が静定されたと判定する。
次に、図6及び図7を参照して、上述のような検査用ヘッド22を有するICハンドラ10がICチップTを検査用ソケット23Aへ当接させる工程(当接工程)について説明する。図6は当接工程を示すフローチャートであり、図7は当接工程においてICチップTに印加される押圧力などの変化と時間との関係を示すタイミングチャートである。
なお、このような当接工程は検査用ヘッド22により検査前のICチップTが検査用ソケット23Aに対向される位置まで移動されるたびに繰返して行われる工程であり、図7には、それら工程のうちの最初の2回の工程が示されている。すなわち図7において、左側(時間の早い側)には初回の当接工程のタイミングチャートが、右側(時間の遅い側)には2回目の当接工程のタイミングチャートが表示されている。そして以下では、2回目の当接工程(今回の当接工程)の詳細についてフローチャートに基づいて説明する。
まず、検査用ヘッド22により検査前のICチップTが検査用ソケット23Aに対向される位置まで移動されると、ICチップTを検査用ソケット23Aへ当接させる当接工程が開始される。すなわち今回の当接工程が開始されると、制御装置50は、検査用ヘッド22の垂直移動部32を下降させて同ICチップTを検査用ソケット23Aに配置させる工程としてのIC配置工程を行う(ステップS11)。なおIC配置工程においてICチップTが検査用ソケット23Aに配置されたときには、図4(a)に示すように、ICチップTの各外部端子Bと各検査用プローブ23Pとの間には微小な隙間が生じている。
ICチップTが検査用ソケット23Aに配置されると、制御装置50は、押圧指令を「ON」信号にして(図7の時間ta2)、低圧押圧工程を実行する(ステップS12)。低圧押圧工程は、検査用ソケット23Aに配置されたICチップTを同検査用ソケット23Aに適正押圧力Pr1よりも低い圧力である当接押圧力Pr2により押圧する工程である。
ところでピストン34Pの下動に伴って下動するICチップTの各外部端子Bが検査用プローブ23Pに当接される瞬間には、ピストン34Pからの下方への押圧力(例えば、当接押圧力Pr2)とともに、下動しているピストン34Pの自身の慣性力がICチップTの上面に印加される。またこのとき、ICチップTの下面にも、その各外部端子Bを介して、上方に付勢されている検査用プローブ23Pの慣性力が印加される。すなわち、ICチップTの各外部端子Bと検査用プローブ23Pとが当接されるとき、ICチップTにはピストン34Pからの下方への押圧力のみならずこれらの慣性力も同時に印加されることとなり、これらの慣性力を要因とした過大な圧力が印加されるようになる。なおこれらの慣性力はICチップTが検査用プローブ23Pに当接された瞬間に最大となるものと考えられることから、過大な圧力の最大値はICチップTが検査用プローブ23Pに当接されたときに生じるものと考えられている。そしてこのような過大な圧力の印加は、近年の電子部品の小型化、高集積化に伴い、電子部品自身の剛性の低下や内部回路の微細化とも相まって、外部からの衝撃に対する耐性が低下している電子部品としてのICチップTにダメージを与えるおそれが高くなっている。そこで、本実施形態では各外部端子Bが検査用プローブ23Pに当接されたときにICチップTに過大な圧力の印加がされないように、まず低圧押圧工程において、各外部端子Bを適正押圧力より低い当接押圧力にて検査用プローブ23Pに当接させるようにしている。
そこで今回の当接工程における押圧指令値としての当接押圧力Pr2は、前回の当接工程のときに検出された最大押圧力Psvから適正押圧力Pr1を引いた圧力差fを、前回の当接押圧力、すなわち適正押圧力Pr1から差し引いた値として算出される。これにより、今回の当接工程でICチップTが検査用プローブ23Pに当接した瞬間にICチップTに印加される最大押圧力(時間ts2)の大きさが前回の最大押圧力Psv(時間ts1)よりも圧力差fだけ低下されるようになる。
ここでついでに、初回の当接工程(前回の当接工程)における当接押圧力の算出についていても説明する。初回の当接工程のときにはそれより以前に最大押圧力が算出されていないことから、最大押圧力の初期値として適正押圧力Pr1が適用されて、最大押圧力から適正押圧力Pr1を引いた圧力差fが「0」とされている。これにより、初回の当接工程における当接押圧力は適正押圧力Pr1として算出されている。そのため、初回の当接工程においては従来の当接工程における場合と同様の過大な圧力がICチップTへ印加されるものとなっている。これにより図7においては、従来から知られている当接時に適正押圧力を印加する場合と、今回の当接工程とのそれぞれの場合においてICチップに印加される押圧力の態様が対比される態様になっている。
すなわち低圧押圧工程が開始されると、制御装置50は、上述のようにして算出された当接押圧力Pr2の圧力指令値を電空レギュレータ回路ARへ入力させ、電空レギュレータ回路ARから当接押圧力Pr2の圧縮空気が空気圧シリンダに供給される。そして空気圧シリンダは、ピストン34Pが上昇端から下動されて上昇端検出センサ34Uの信号が「ON」から「OFF」に変化する(図7の時間ta2の後)。
空気圧シリンダに当接押圧力Pr2の圧縮空気が供給されることにより低圧押圧工程が終了されるが、電空レギュレータ回路ARから空気圧ピストンへの同圧縮空気の供給は維持されるようになっている。これによりその後も空気圧シリンダのピストン34Pは下動され、図4(b)に示されるように、当接位置にて外部端子Bが検査用プローブ23Pに当接されてから、図4(c)に示されるように、下降端まで移動されて下降端検出センサ34Dの信号が「OFF」から「ON」に変化されるようになる(図7の時間td2)。
低圧押圧工程が終了されると、例えばピストン34Pが下動されて上昇端検出センサ34Uから「OFF」信号が出力されると、制御装置50は、検出押圧力から最大押圧力を記憶する圧力変動検出工程を実行する(ステップS13)。圧力変動検出工程は、下降端検出センサ34Dが「ON」信号を出力するとき(図7の時間td2)まで実行されるようになっており、それまでに検出された検出押圧力のうちの最大の値、例えば図7の時間ts2のときの押圧力が検出されるようになっている。なお今回の当接工程で求められる最大押圧力は、次回の当接工程で用いられるものであり、上述したとおり、今回の当接工程で用いた最大押圧力は前回の当接工程にて求められた最大押圧力Psvである。
圧力変動検出工程が終了されると、例えばピストン34Pが下降端に配置され下降端検出センサ34Dから「ON」信号が出力されると、制御装置50は、圧力静定検出工程を実行する(ステップS14)。圧力静定検出工程では、検出押圧力と当接押圧力Pr2との差を算出し、この差の値の大きさが静定判定用閾値の値を越えない期間が所定の期間を経過したときに、検出される押圧力が静定されたと判定される。すなわちICチップTに印加されている押圧力が静定されたと判定される。例えば、図7においては、時間tc2のときに検出押圧力(圧力Psu)が当接押圧力Pr2に静定されたものと判定されている。また例えば、図7において前回の当接工程においては時間tc1のときに検出押圧力(圧力Pc1)が当接押圧力(このときは適正押圧力Pr1)に静定されたものと判定されている。
検出押圧力が静定されたと判定されると、制御装置50は、圧力静定検出工程を終了して(図7の時間tc2)、検査用押圧工程を実行する(ステップS15)。検査用押圧工程では、制御装置50は、電空レギュレータ回路ARへの圧力指令値を当接押圧力Pr2から適正押圧力Pr1に変更する。そして検出押圧力が圧力Pc1(適正押圧力Pr1)に変化したことが確認されると、制御装置50は、ICチップTの電気的な検査を開始させる。
ICチップTの電気的な検査が終了されると、制御装置50は、IC離脱工程(ステップS16)を行う。IC離脱工程では、制御装置50は、押圧指令の信号を「OFF」にするとともに、電空レギュレータ回路ARへ入力させる圧力指令値を「0」(大気圧)に変更する。そして空気圧シリンダが大気圧にされた押圧部34はそのピストン34Pが上動開始されて下降端検出センサ34Dの信号が「ON」から「OFF」にされた後、上昇端まで上昇することにより上昇端検出センサ34Uの信号が「OFF」から「ON」にされる。そしてピストン34Pが上昇端に配置された後に、検査用ヘッド22の垂直移動部32が上昇されてICチップTが検査用ソケット23Aから離脱される。
その後、検査用ヘッド22により検査前のICチップTが検査用ソケット23Aに対向される位置まで移動されるたびに上記当接工程が繰り返し行われる。
以上説明したように、本実施形態の電子部品の押圧装置及びICハンドラによれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(1)当接時にはICチップTの外部端子Bが検査用ソケット23Aの検査用プローブ23Pに適正押圧力Pr1よりも低圧にされた当接押圧力Pr2により当接され、圧力検出装置としてのロードセル36による検出値としての検出押圧値が静定されるタイミングで押圧力指令値が適正押圧力Pr1に変更されるようにした。これにより、ICチップTが検査用ソケット23Aに当接されるときにピストン34Pの押圧力に加えてピストン34P自身の慣性力もその上面に印加されたとしても、当接時の押圧力が適正押圧力Pr1よりも低圧にされている分だけ印加される押圧力が緩和されるようになる。これによりICチップTが適正な圧力にて検査用ソケット23Aに当接されるようになる。
(2)ICチップTに印加される押圧力がその最大値も含めてロードセル36を通じて検出するようにしたので、前回の当接時の最大押圧力に基づいてICチップTの当接時の当接押圧力Pr2を算出することができるようにもなる。すなわち、経時的変化等によりピストン34Pの出力や検査用プローブ23Pの受け圧力に変化が来たして、ICチップTへの押圧力が変化されるような場合であれ、そのような押圧力の変化に柔軟に対応してICチップTに過大な押圧力が印加されないようにすることができるようにもなる。
(3)また、当接押圧力Pr2は、当接時の最大押圧力が適正押圧力Pr1近傍の値となるように算出される。これにより当接押圧力Pr2が、当接押圧力の予め設定されているような場合に比較して検出押圧力が当接押圧力Pr2へ迅速に到達しつつICチップTへの過大な押圧力の印加も緩和されるバランスの良い適切な値として算出されるようになる。
(4)ロードセル36を通じて得られる検出押圧力が静定されるタイミングを格別に算出して、当接毎に好適なタイミングでピストン34Pの押圧力が適正押圧力Pr1に変更されるようにした。これにより、静定されるタイミングが事前に設定されているような場合と比較して、当接時にピストン34Pの押圧力が適正押圧力Pr1に到達されるまでに要する時間が最短化されるようになり、このような検査用ヘッド22に把持されたICチップTの検査に要する時間が短縮されるようになる。
(5)初回の当接時のように、前回の当接時にロードセル36により検出された最大押圧力がないような場合であれ、その初期値として適正押圧力Pr1を用いることにより当接時にピストン34Pに与える押圧力が算出されるようにした。これにより、このような検査用ヘッド22による検査用ソケット23AへのICチップTの当接が、初回の当接時のような場合も含めて行なわれるようになる。
(6)ロードセル36をピストン34Pの先端部と把持部35との間に設けた。これにより、検査用ヘッド22への圧力検出装置の設置が容易となりこのような検査用ヘッド22の実現が容易にされる。
(7)また圧力検出装置としてロードセル36を採用したことから、圧力検出装置の構造がメンテナンスを要する機械的な可動部分を含まないものとされ、検査用ヘッド22としてその信頼性も高められる。
なお、上記実施形態は、例えば以下のような態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、検出押圧力が静定されたことが、検出押圧力と圧力指令値(当接押圧力)との差分の大きさが静定判定用閾値よりも小さい期間が所定の期間経過したことにより判定された。しかしこれに限らず、検出押圧力の値から該検出押圧力が静定されたことを判定する方法は、圧力指令値を適正押圧力に変更するタイミングとして好適なものが算出されるのであればその他の公知の算出方法やデータ処理方法を用いてもよい。これにより静定判定の態様の自由度が高められる。
・また、上記実施形態では、検出押圧力が静定されたと判定される時点は、検出押圧力が現に静定されたときから所定期間だけ遅れた時点であったが、下降端検出センサ34Dから「ON」信号が入力されてから静定されたと判定されるまでの時点から所定期間を減じた期間を最短静定期間として求めてもよい。この場合には、同最短制定期間を、次回の当接工程において検出押圧力が静定される時点として用いることで静定判定に要する時間を短縮することができるようにもなる。
・上記実施形態では、当接工程において毎回、圧力変動検出工程(ステップS13)と圧力静定検出工程(ステップS14)を行うこととしたが、これに限らず、図8に示すように、圧力変動検出工程と圧力静定検出工程とを省略してもよい。すなわち、一旦、好適な当接押圧力が算出された場合には、それ以降はその当接押圧力を用いて低圧押圧工程(ステップS22)における当接圧力の算出を省略してもよい。また、一旦、好適な最短静定期間が算出された場合には、それ以降はその最短静定期間を用いて検査用押圧工程(ステップS23)の開始の判断するようにしてもよい。これにより、当接工程に要する時間を短縮化することができるようにもなる。
・またそのような場合であれ、所定の期間毎に圧力変動検出工程と圧力静定検出工程とを行うこととすれば、経時変化により電子部品の押圧装置に生じる各種圧力変動などにも柔軟に対応できるようにもなる。
・上記実施形態では、ピストン34Pの上昇端や下降端を、上昇端検出センサ34Uや下降端検出センサ34Dがピストン34Pの基端部に設けられた永久磁石が近接されたことにより検出するようにした。しかしこれに限らず、ピストンが上昇端や下降端に位置されることが検出されるものであればその他の検出装置としてリミットスイッチや光センサなどが用いられてもよい。
・上記実施形態では、空気圧シリンダのピストン34Pはばねの付勢により上昇されたが、これに限らず、例えば空気圧で上昇れるようにしてもよい。
・上記実施形態では、圧力検出装置としてロードセル36が採用されたが、圧力検出装置としては、当接時に電子部品(ICチップ)に印加される押圧力が検出されるものであれば、その他の圧力検出装置としての歪みゲージなどを採用するようにしてもよい。これにより、圧力検出装置の選択の自由度が高められ、このような電子部品の押圧装置の実現が容易にされる。
・上記実施形態では、圧力検出装置としてのロードセル36がピストン34Pの先端部と把持部35との間に設けられたが、圧力検出装置の設置位置としては、当接時に電子部品に印加される押圧力が検出されるものであればその他の場所としての把持部と電子部品の間などに設けられてもよい。これにより、圧力検出装置の設置位置の選択の自由度が高められ、このような電子部品の押圧装置の実現が容易にされる。
・上記実施形態では、初回の当接工程のときには最大押圧力の初期値として適正押圧力Pr1が適用された。しかしこれに限らず、最大押圧力の初期値として経験値や実験値を用いるようにするようにしてもよい。これにより、初回の当接時のように、前回の当接時に圧力検出装置により検出された最大値がないような場合であれ、その初期値として経験値や実験値に基づく定数値を用いることにより当接時にピストンに与える押圧力が算出されるようになる。その結果、初回の当接工程における過大な圧力も低減されるようにもなり、このような電子部品の押圧装置による検査用ソケットへの電子部品の当接が、初回の当接時のような場合も含めてより好適に行なわれるようにもなる。