JP2013060658A - 軸体に電気めっきを形成するための装置、めっき皮膜を有する軸体の製造方法および軸体上に亜鉛系めっき皮膜を形成するためのめっき液 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】軸体8の被めっき部を内包し両端部が鉛直方向に開口する中空部を有する管状の管状部材7、前記中空部の鉛直方向上側端部の開口の上方に設けられ前記軸体を前記中空部内に保持する支持手段1、前記中空部の鉛直方向下側端部の開口から前記中空部内にめっき液を供給するめっき液噴流手段、前記中空部の鉛直方向上側端部の開口近傍に設けられ前記めっき液噴流手段により前記中空部内に供給されためっき液を前記管状部材外に排出可能にする排出構造9、および前記排出構造を通じて前記管状部材から排出されためっき液を前記めっき液噴流手段に供給する環送手段を備え、前記支持手段は前記軸体と電気的に接続可能な接点部2を備え、前記管状部材はその中空部に不溶性陽極を備える。
【選択図】図1
Description
本発明において、軸体とは、中心軸を有し、ほぼ回転対称の形状を有する部材をいう。
(1)被めっき部材である軸体におけるめっき皮膜が形成されるべき部分を内包し両端部が鉛直方向に開口する中空部を有する管状の管状部材、前記中空部の鉛直方向上側端部の開口の上方に設けられ前記軸体を前記中空部内に保持する支持手段、前記中空部の鉛直方向下側端部の開口から前記中空部内にめっき液を供給するめっき液噴流手段、前記中空部の鉛直方向上側端部の開口近傍に設けられ前記めっき液噴流手段により前記中空部内に供給されためっき液を前記管状部材外に排出可能にする排出構造、および前記排出構造を通じて前記管状部材から排出されためっき液を前記めっき液噴流手段に供給する環送手段を備え、前記支持手段は前記軸体と電気的に接続可能な接点部を備え、前記管状部材はその中空部に不溶性陽極を備える、軸体上に電気めっき皮膜を形成するための装置。
本実施形態に係るめっき装置は、被めっき部材である軸体(以下、「軸状ワーク」ともいう。)の中心軸をほぼ鉛直方向にして、その中空部内をめっき液がほぼ鉛直方向上向きに流れる管状部材中に配置し、好ましい一態様では軸状ワークを回転させながら、めっき(電解)を行って、軸状ワーク上にめっき皮膜を形成するためのものである。
図1は、本実施形態に係るめっき装置の具体的な一例を概念的に示す上面図(a)および上面図のA−A断面での断面図(b)である。
本めっき液は、水溶性亜鉛含有物質およびポリエチレンイミンを含有し、pHが1以上2以下の硫酸亜鉛系めっき液である。ここで、亜鉛系めっき液とは、亜鉛めっき皮膜を形成するためのめっき液である亜鉛めっき液と、亜鉛合金めっき皮膜を形成するためのめっき液である亜鉛合金めっき液との総称である。本めっき液が亜鉛合金めっき液である場合には、水溶性金属含有物質をさらに含有してもよい。この水溶性金属含有物質に含まれる金属元素の具体例として、鉄およびニッケルからなる群から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。
本めっき液は、水溶性亜鉛含有物質を含有する。本明細書において水溶性亜鉛含有物質とは、亜鉛系めっき皮膜として析出する亜鉛の供給源であって、亜鉛の陽イオンおよびこれを含有する水溶性物質からなる群から選ばれる一種または二種以上の成分をいう。
本めっき液が亜鉛合金めっき液である場合には、水溶性金属含有物質を含有する。本明細書において水溶性金属含有物質とは、亜鉛合金めっき皮膜に含有される亜鉛以外の金属の供給源であって、金属元素の陽イオンおよびこれを含有する水溶性物質からなる群から選ばれる一種または二種以上の成分をいう。水溶性金属含有物質に含有される金属元素として、鉄およびニッケルが例示される。好ましい一例において、金属含有物質に含まれる金属元素は鉄およびニッケルからなる群から選ばれる。
本実施形態に係るめっき装置100は不溶性陽極を備えるため、陽極においてめっき液に含有される成分の電気分解が生じやすい。このような化学的に活性な環境においても優れた特性を示すことができる観点から、本めっき液はポリエチレンイミンを有機添加剤として含有する。
本めっき液のpHは1以上2以下である。pHが過度に低い場合には、めっき析出と同時に析出しためっき金属の溶解が進行するため、見掛け上のめっき皮膜の析出速度が低下し、高速めっきを行うことが困難となる。一方、pHが過度に高い場合には、高電流密度、特に80A/dm2程度以上での析出状態が不安定となり、めっき皮膜の外観が劣化する。めっき皮膜の析出速度を低下させることなく外観が良好なめっき皮膜をより安定的に形成する観点から、本めっき液のpHは1.0以上2.0以下とすることが好ましく、1.5±0.3とすることがより好ましく、1.5±0.2とすることが特に好ましい。
前述のように、本実施形態に係るめっき装置100は不溶性陽極を採用するため、本めっき液に含まれる成分は電気分解されやすい。したがって、本めっき液は、上記の成分以外に含有される成分数を可能な限り少なくすることが好ましい。例えば、亜鉛源や金属源は硫酸塩として、本めっき液に含有される金属イオンのカウンターアニオンの種類は硫酸イオンのみとすることが好ましい。また、本めっき液は、酸化防止剤や消泡剤、ポリエチレンイミン以外の有機添加剤、亜鉛合金めっき液の場合にはさらに錯化剤などを含有してもよいが、その含有量は少ないことが好ましく、これらの成分を含有しないことがより好ましい。このようにめっき液に含有される成分数が少ないことは廃液処理の負荷を緩和することにもなるため、めっき液に含有される成分数が少ないことにより廃液処理まで含めた処理コストを低減させることができる。
本めっき液を用いて亜鉛系めっき皮膜を電気めっきにて形成するにあたり、その電流密度は20A/dm2以上100A/dm2以下の条件とすることが好ましい。電流密度が20A/dm2未満の場合には、本実施形態に係るめっき装置100を用いても、析出速度が高まらず、生産性を向上させることが困難となる。一方、電流密度が100A/dm2超の場合には、上記のようにポリエチレンイミンの分子量や含有量を調整したり、pHを調整したりしても、優れた外観のめっき皮膜を安定的に形成することが困難となる。
本実施形態に係るめっき装置100および本めっき液を用いて、上記の好ましい条件で電気めっきを行うと、半光沢のめっき皮膜を幅広い電流密度の範囲で得ることができる。めっき皮膜が半光沢である場合には、光沢を有する被めっき部材上にめっき皮膜が形成されたことを目視で容易に確認できるため、好ましい。また、前述のように、めっき温度を適切な範囲とすることで、めっき皮膜の残留応力の絶対値を小さくすることができる。残留応力の絶対値が大きい場合、特に強い引張応力が残留している場合には、めっき皮膜が剥離しやすくなったり、めっき皮膜の応力腐食が生じやすくなったりする。
全体がチタンからなり内径50mm接液部の長さ300mmの管状部材の内部に、図2に示す形状を有する軸状ワーク(有効処理面積1.22dm2)を、支持部材を用いて保持した。このとき、図2におけるAの範囲(長さ200mm)が管状部材の内面にある不溶性陽極に対向するように軸状ワークは配置された。
水溶性亜鉛含有物質の亜鉛換算含有量:100g/L(亜鉛源:硫酸亜鉛)
硫酸アンモニウム:30g/L
ポリエチレンイミン(分子量7000):0.5g/L
溶媒:水
pH:2.5
得られためっき厚に関する測定結果を表1に示す。
実施例1におけるめっき液を次の組成に変更した以外は実施例1と同様の作業を軸状ワークに対して行い、得られた軸状ワークのめっき厚を測定した。
水溶性亜鉛含有物質の亜鉛換算含有量:100g/L(亜鉛源:塩化亜鉛)
ユケン工業(株)製 メタスMZ−996A1:60ml/L
溶媒:水
得られためっき厚に関する測定結果を表1に示す。
実施例1におけるめっき液を次の組成に変更した以外は実施例1と同様の作業を軸状ワークに対して行い、得られた軸状ワークのめっき厚を測定した。
水溶性亜鉛含有物質の亜鉛換算含有量:50g/L(ユケン工業(株)製 メタスZn−CONCにて)
ユケン工業(株)製 メタスZJK−M:5ml/L
ユケン工業(株)製 メタスZJK−C2:5ml/L
溶媒:水
得られためっき厚に関する測定結果を表1に示す。
実施例1において軸状ワークを回転させなかったこと以外は実施例1と同様の作業を軸状ワークに対して行い、得られた軸状ワークのめっき厚を測定した。
得られためっき厚に関する測定結果を表1に示す。
全体がチタンからなり内径50mm接液部の長さ300mmの管状部材の内部に、図2に示す形状を有する軸状ワーク(有効処理面積1.22dm2)を、支持部材を用いて保持した。このとき、図2におけるAの範囲(長さ200mm)が管状部材の内面にある不溶性陽極に対向するように軸状ワークは配置された。
水溶性亜鉛含有物質の亜鉛換算含有量:85g/L(亜鉛源:硫酸亜鉛)
ポリエチレンイミン(分子量2000):1g/L
溶媒:水
pH:1.5
以下、実施例1と同様にめっき厚さの測定を行った。得られためっき厚に関する測定結果を表1に示す。
実施例5において調製しためっき液を基準として、ポリエチレンイミンの分子量(重量平均分子量)およびpHが異なるめっき液6−1〜6−8を用意した。なお、めっき液6−1は実施例5において調製しためっき液と同一の組成を有しているものであった。
スターラー回転数500rpmの液循環型ハルセル試験器(山本鍍金試験器社製:スマートハルセルB−53−SM)を用意した。この試験器のめっき槽内の所定の位置に、縦64mm、横64mm、厚さ1mmのアノードとしてのチタン−白金クラッド、および縦67mm、横100mm、厚さ0.2mmの被めっき部材(カソード)としての銅板を配置した。めっき槽内に上記のめっき液6−1〜6−8のそれぞれを液面が所定の高さとなるまで入れた。アノードおよびカソードをめっき電源に接続し、次の条件で電気めっきを行って、亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
電流:20A
通電時間:10秒間
めっき浴温度:40℃
上記の電流では、カソードの有効範囲の電流密度は100A/dm2から10A/dm2の範囲であった。
1:異常析出や異物付着が認められず、めっき皮膜は良好な外観であった
2:異常析出や異物付着は認められないが、めっき皮膜の光沢が過剰であって、めっき皮膜の形成を確認しにくい
3:異常析出や異物付着が認められ、めっき皮膜の外観が不良であった
評価結果を表2に示す。
実施例6において調製しためっき液6−1から6−4のそれぞれに対して、水溶性鉄含有物質の鉄換算含有量が1.3g/Lとなるように、FeSO4・7H2Oからなる鉄源がさらに添加されてなるめっき液7−1から7−4を調製した。
これらのめっき液7−1から7−4を用いて実施例6と同様の操作にて電気めっきを行い、亜鉛−鉄合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
この亜鉛系めっき部材に対して、実施例6と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
実施例6において調製しためっき液6−1から6−4のそれぞれに対して、水溶性ニッケル含有物質の鉄換算含有量が15g/Lとなるように、NiSO4・6H2Oからなるニッケル源がさらに添加されてなるめっき液8−1から8−4を調製した。
これらのめっき液8−1から8−4を用いて実施例6と同様の操作にて電気めっきを行い、亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
この亜鉛系めっき部材に対して、実施例6と同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例5において調製しためっき液を用いて、めっき条件を次のとおり変化させて電気めっきを行い、めっき皮膜応力測定装置(山本鍍金試験器社製:Plate Laboratory ST)の測定面(8×25mmの角状歪みゲージ付き銅板)上に亜鉛めっき皮膜を形成した。
めっき温度:20℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃
電流密度:10A/dm2から50A/dm2まで10A/dm2毎
めっき時間:15秒間
めっき液の攪拌条件:スターラー回転数 500rpm
測定面上のめっき皮膜の残留応力を測定した結果を表5に示す。なお、表5では、めっき皮膜の残留応力が引張応力であった場合に正の値とし、圧縮応力であった場合に負の値として示した。
Claims (8)
- 被めっき部材である軸体におけるめっき皮膜が形成されるべき部分を内包し両端部が鉛直方向に開口する中空部を有する管状の管状部材、
前記中空部の鉛直方向上側端部の開口の上方に設けられ前記軸体を前記中空部内に保持する支持手段、
前記中空部の鉛直方向下側端部の開口から前記中空部内にめっき液を供給するめっき液噴流手段、
前記中空部の鉛直方向上側端部の開口近傍に設けられ前記めっき液噴流手段により前記中空部内に供給されためっき液を前記管状部材外に排出可能にする排出構造、および
前記排出構造を通じて前記管状部材から排出されためっき液を前記めっき液噴流手段に供給する環送手段を備え、
前記支持手段は前記軸体と電気的に接続可能な接点部を備え、前記管状部材はその中空部に不溶性陽極を備える、軸体上に電気めっき皮膜を形成するための装置。 - 前記支持手段は、前記接点部における前記軸体との電気的接続を維持しつつ前記軸体の軸周りの回転を可能とする回転機構を有し、この回転機構により前記軸体を回転させながらめっき皮膜を形成することが可能とされる請求項1記載の装置。
- 鉛直方向の両端に開口を有する中空部を備える管状の管状部材の前記中空部の内面に設けられた不溶性陽極と、被めっき部材である軸体を前記管状部材の中空部内に保持する支持手段が備えるものであって前記軸体との電気的接続を可能とする接点部との間に電圧を印加して前記軸体上にめっき皮膜を形成する方法であって、
前記中空部の鉛直方向下側端部の開口から前記中空部内にめっき液を供給するめっき液噴流手段、前記中空部の鉛直方向上側端部の開口近傍に設けられ前記めっき液噴流手段により前記中空部内に供給されためっき液を前記管状部材外に排出可能にする排出構造、および前記排出構造を通じて前記管状部材から排出されためっき液を前記めっき液噴流手段に供給する環送手段により、前記中空部内にめっき液を電気めっき中に継続的に供給することが可能とされる、
めっき皮膜を有する軸体の製造方法。 - 前記支持手段に設けられた、前記接点部における前記軸体との電気的接点を維持しつつ前記軸体の軸周りの回転を可能とする回転機構により、前記軸体を回転させながら前記軸体上にめっき皮膜を形成することが可能とされる請求項3記載の製造方法。
- 前記めっき液は、水溶性亜鉛含有物質およびポリエチレンイミンを含有する硫酸亜鉛系めっき液であって、
前記水溶性亜鉛含有物質の含有量は亜鉛換算で70g/L以上100g/L以下であり、
前記ポリエチレンイミンは、重量平均分子量が1500以上2500以下であって、その含有量は0.1g/L以上10g/Lであり、
前記めっき液のpHは1以上2以下であって、
めっき温度が30℃以上50℃以下、かつ電流密度が20A/dm2以上100A/dm2以下の条件で電気めっきが行われる、請求項3または4に記載の製造方法。 - 前記めっき液は、水溶性金属含有物質をさらに含有し、
当該水溶性金属含有物質に含まれる金属元素は鉄、ニッケルからなる群から選ばれる一種または二種以上である、請求項5に記載の製造方法。 - 不溶性アノードを用い、めっき温度が30℃以上50℃以下かつ電流密度が20A/dm2以上100A/dm2以下の条件で電気めっきを行って軸体上に亜鉛系めっき皮膜を形成するためのめっき液であって、
前記めっき液は、水溶性亜鉛含有物質およびポリエチレンイミンを含有する硫酸亜鉛系めっき液であって、
前記水溶性亜鉛含有物質の含有量は亜鉛換算で70g/L以上100g/L以下であり、
前記ポリエチレンイミンは、重量平均分子量が1500以上2500以下であって、その含有量は0.1g/L以上10g/Lであり、
前記めっき液のpHは1以上2以下であること
を特徴とするめっき液。 - 前記めっき液は、水溶性金属含有物質をさらに含有し、
当該水溶性金属含有物質に含まれる金属元素は鉄およびニッケルからなる群から選ばれる一種または二種以上である、請求項7に記載のめっき液。
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