(実施形態1)
本実施形態の通信システムは、図1(a)に示すように、2線式の伝送路2に接続される伝送ユニット4を備えた通信システムである。
この通信システムは、伝送路2に接続され伝送ユニット4と通信する複数台の端末装置301,302と、伝送路2に接続され互いに直接通信する複数台の重畳通信端末101,102,111,112とを備えている。この通信システムでは、伝送路2を伝送される伝送信号と、伝送信号に重畳される重畳信号とを用いて通信が行われる。重畳信号は、伝送信号より周波数が高い信号である。
以下では、各端末装置301,302を区別しないときにはこれらをまとめて端末装置3と呼び、各重畳通信端末101,102,111,112を区別しないときにはこれらをまとめて重畳通信端末1と呼ぶ。図1(a)の例では伝送路2には端末装置3が2台、重畳通信端末1が4台接続されているが、端末装置3は3台以上、重畳通信端末1は5台以上接続されていてもよい。
なお、伝送ユニット4と伝送路2との間には、重畳信号に対して高インピーダンスとなるインピーダンス整合モジュール5がそれぞれ挿入されている。インピーダンス整合モジュール5は、端末装置3の各々と伝送路2との間にも設けられていてもよい。
複数台の端末装置3は、伝送ユニット4に対して伝送路2を介して並列接続されている。伝送ユニット4および端末装置3は、伝送ユニット4から端末装置3へのデータ伝送と端末装置3から伝送ユニット4へのデータ伝送とが時分割で行われる時分割多重伝送システム(以下、「基本システム」という)を構築する。
基本システムにおいて、端末装置3は、スイッチやセンサなど(図示せず)を付設した監視端末器と、負荷(図示せず)を付設した制御端末器との2種類に分類される。これにより、監視端末器に付設したスイッチやセンサなどからの監視入力に応じて、制御端末器に付設した負荷を制御することが可能となる。ここで、端末装置3は予め割り当てられた自己のアドレスをそれぞれ記憶部(図示せず)に記憶している。
監視端末器は、監視入力を受けると伝送ユニット4に対して監視入力に対応した制御情報を伝送する。伝送ユニット4は、制御情報を受け取るとアドレスによって上記監視端末器と対応付けられている制御端末器に向けて制御情報を伝送する。制御端末器は、制御情報を受け取ると上記制御情報に従って負荷を制御する。制御情報はスイッチ等の監視入力を反映しているから、結局、スイッチ等の監視入力が負荷の制御に反映されることになる。
続いて、基本システムの動作について説明する。
伝送ユニット4は、伝送路2に対して図2に示すように時間軸方向において複数の期間に分割された形式の電圧波形からなる時分割方式の伝送信号を送信する。すなわち、伝送信号は、予備割込期間31と、予備期間32と、送信期間33と、返送期間34と、割込期間35と、短絡検出期間36と、休止期間37とからなる複極(±24V)の時分割多重信号である。予備割込期間31は2次割込を検出するための期間、予備期間32は割込期間35および短絡検出期間36に合わせて設定された期間であり、送信期間33は端末装置3にデータを伝送するための期間である。返送期間34は端末装置3からの返送信号を受信するタイムスロットであり、割込期間35は後述の割込信号を検出するための期間であり、短絡検出期間36は短絡を検出するための期間である。休止期間37は処理が間に合わないときのための期間である。伝送信号は、パルス列からなるキャリアを変調することによってデータを伝送する信号である。
伝送ユニット1は、伝送路2に対して図2のような信号波形の伝送信号を繰り返し送出しており、この伝送信号が1フレームごとに時間軸方向において上述した複数の期間31〜37に分割されている。これらの期間31〜37は機能的に分割されているだけで実際には連続した期間である。ここでいう1フレームは、伝送信号の繰り返しの1周期に相当し、本実施形態では、伝送信号の割込期間35から返送期間34までを1フレームとする(図3参照)。
各端末装置3では、伝送路2を介して受信した伝送信号の送信期間33に含まれるアドレスデータが各々の記憶部(図示せず)に記憶されているアドレスに一致すると、伝送信号から負荷を制御するための制御情報を取り込む。さらに、端末装置3は、伝送信号の返送期間34に同期して制御情報を電流モードの信号(適当な低インピーダンスを介して伝送路2を短絡することにより送出される信号)として返送する。なお、端末装置3の内部回路の電源は、伝送路2を介して伝送される伝送信号を整流し安定化することによって供給される。
伝送ユニット4は、常時は伝送信号に含まれるアドレスデータをサイクリックに変化させて端末装置3に順次アクセスする常時ポーリングを行う。常時ポーリングの際には、伝送信号に含まれるアドレスデータが自己のアドレスに一致した端末装置3は、伝送信号に制御情報が含まれていれば制御情報を取り込んで動作し、自己の動作状態を伝送ユニット4に返送する。
また、伝送ユニット4は、いずれかの監視端末器(端末装置3)においてスイッチ等の監視入力に対応して発生する割込信号を受信すると、割込信号を発生した端末装置3を検索し、その端末装置3にアクセスして割込ポーリングも行う。
すなわち、伝送ユニット4は、常時はモードデータを通常モードとした伝送信号を送出し、監視端末器(端末装置3)で発生した割込信号を伝送信号の割込期間35に同期して検出すると、モードデータを割込ポーリングモードとした伝送信号を送出する。
割込信号を発生した端末装置3は、割込ポーリングモードの伝送信号のアドレスデータの上位ビットが自己のアドレスの上位ビットに一致していれば、その伝送信号の返送期間34に同期して自己のアドレスの下位ビットを返送データとして返送する。これにより伝送ユニット4では割込信号を発生した端末装置3のアドレスを取得できる。
割込信号を発生した端末装置3のアドレスが伝送ユニット4で取得されると、伝送ユニット4は当該端末装置3に対して制御情報の返送を要求する伝送信号を送出し、端末装置3はスイッチ等の監視入力に対応した制御情報を伝送ユニット4に返送する。伝送ユニット4は制御情報を受け取ると、該当する端末装置3の監視入力をクリアするように指示を与え、当該端末装置3では監視入力のクリアを返送する。
制御情報を受け取った伝送ユニット4は、当該制御情報の発信元の端末装置(監視端末器)3とアドレスの対応関係によって対応付けられている端末装置(制御端末器)3へ送信する制御情報を生成する。伝送ユニット4は、この制御情報を含む伝送信号を伝送路2に送出して、端末装置(制御端末器)3に付設した負荷を制御する。
上述したように、基本システムでは、ポーリング・セレクティング方式のプロトコルに従い、伝送ユニット4を介して端末装置(監視端末器、制御端末器)3同士が通信を行うこととなる。
ところで、本実施形態に係る通信システムでは、複数台の重畳通信端末1が、上記基本システムと伝送路2を共用しつつ、伝送信号に重畳される重畳信号を用いて互いに通信を行う。
本実施形態においては、伝送路2に接続された複数台の重畳通信端末101,102,111,112のうち、重畳通信端末101,111がマスタとして機能し、残りの重畳通信端末102,112がスレーブとして機能する。マスタとしての重畳通信端末101とスレーブとしての重畳通信端末102とは組を成し、第1のプロトコルに従って重畳信号により互いに通信する。一方、マスタとしての重畳通信端末111とスレーブとしての重畳通信端末112とは組を成し、第1のプロトコルとは別の第2のプロトコルに従って重畳信号により互いに通信する。
マスタとしての各重畳通信端末101,111は、各々と組を成すスレーブとしての重畳通信端末102,112に対して重畳信号を送信してポーリングを行い、このポーリングに対する応答として重畳通信端末102,112からそれぞれデータを取得する。なお、マスタとしての重畳通信端末101,111の各々と組を成すスレーブとしての重畳通信端末は複数台ずつ設けられていてもよい。この場合、各重畳通信端末101,111は、各々と組を成すスレーブとしての重畳通信端末に対して順次ポーリングを行う。
ここで、マスタとしての重畳通信端末101,111には監視装置6がそれぞれ接続され、スレーブとしての重畳通信端末102,112には被監視機器7がそれぞれ接続されている。被監視機器7は、重畳通信端末1間で伝送される監視情報を重畳通信端末102,112に出力し、監視装置6は、上記監視情報を重畳通信端末101,111から取得する。被監視機器7や監視装置6は、定期的に通信を行うことによって重畳通信端末1とデータの授受を行う。
すなわち、伝送路2を介した通信(データ伝送)を行うのは重畳通信端末1であるが、伝送するデータ(監視情報)を生成するのは被監視機器7であって、受信したデータを処理するのは監視装置6である。ここに、重畳通信端末1は、各々に接続された被監視機器7あるいは監視装置6からのデータを変換し伝送路2上に送出することで通信を行うアダプタとして機能する。なお、被監視機器7が出力する監視情報には、たとえば電気機器の消費電力や、温度・湿度などの情報がある。ここでは、重畳通信端末102に接続された被監視機器7は消費電力を計測し、重畳通信端末112に接続された被監視機器7は温度・湿度を計測して、各々の計測結果を監視情報として重畳通信端末1経由で監視装置6に出力する。
重畳通信端末1は、図1(b)に示すように、伝送路2に接続される重畳送出部11および重畳受信部12と、重畳送出部11および重畳受信部12に接続された処理部13と、処理部13に接続されたインタフェース部14とを備えている。重畳送出部11は重畳信号の送出を行い、重畳受信部12は重畳信号の受信を行う。インタフェース部14は、監視装置6あるいは被監視機器7に接続される。
スレーブとしての重畳通信端末102,112においては、処理部13はインタフェース部14を介して被監視機器7から監視情報を取得し、この監視情報を重畳信号により重畳送出部11から伝送路2に送出する。マスタとしての重畳通信端末101,111においては、処理部13は重畳受信部12が受信した重畳信号から監視情報を取得し、この監視情報を監視装置6へインタフェース部14を介して出力する。
具体的には、重畳通信端末1は、他の重畳通信端末1に伝送すべきデータを含んだパケットを伝送路2に送出し、且つ他の重畳通信端末1が送信したパケットを受信する。重畳通信端末1間で送受信されるパケットは、伝送ユニット4から送出されている伝送信号に重畳される。要するに、端末装置3同士の通信は伝送ユニット4を経由して行われるのに対し、重畳通信端末1同士の通信は伝送ユニット4を経由せず重畳通信端末1間で直接行われる。そのため、重畳通信端末1同士の通信は、端末装置3同士の通信に比べて通信速度を高速化でき、たとえばアナログ量(消費電力等)のように比較的データ量の多い情報の伝送に適している。
また、重畳通信端末1は、基本システムの伝送ユニット4と端末装置3との間で伝送される伝送信号を監視する信号監視部15(図1(b)参照)を備え、信号監視部15では伝送信号からデータ伝送状況(以下、「ステート」という)を解析する。重畳送出部11は、信号監視部15で解析されたステートが重畳信号の重畳に適した状況にあるか否かを判定し、伝送に適していると判断したタイミングで重畳信号を送信する機能を具備している。
ここで、伝送信号は図2に示すような信号フォーマットを採用している。予備割込期間31や予備期間32や休止期間37は、重畳信号が重畳されても伝送信号による通信に影響がなく、重畳信号も伝送信号の影響を受けにくいので、重畳信号を重畳可能な期間(以下、「重畳可能期間」という)となる。
その他の期間(送信期間33と返送期間34と割込期間35と短絡検出期間36)は、伝送信号がハイレベルあるいはローレベルに安定している時間が相対的に短く、重畳信号が重畳されると伝送信号による通信に影響を与えやすい。また上記他の期間に重畳信号が重畳されると、重畳信号も伝送ユニット4と端末装置3との間で授受される信号(割込信号や返送データ)の影響を受けやすい。そのため、上記他の期間は、重畳信号の重畳には使用されない期間(以下、「重畳不可期間」という)となる。
また、伝送信号の立ち上がりおよび立ち下がりの期間も、高調波ノイズの影響や信号の電圧反転に伴う過渡応答の影響などにより、重畳信号を重畳するのに適していない。したがって、伝送信号は、予備割込期間31と予備期間32と休止期間37の中でも、期間の切り替わり(立ち上がりまたは立ち下がり)後の所定時間(たとえば300μs)については、重畳不可期間となる。
そこで、重畳送出部11は、伝送信号のステートの解析結果に基づいて重畳可能期間か重畳不可期間かの判定を行い、重畳可能期間と判定したときに限って重畳信号を送出するように構成されている。重畳通信端末1は、このように伝送信号に同期させて伝送信号の重畳可能期間にのみ重畳信号を重畳させることにより、共通の伝送路2を使用する伝送信号による通信と重畳信号による通信との干渉を回避する。
ここで、重畳通信端末1は、送信データのデータ量が多く一度の重畳可能期間内で送信しきれなかった場合には、当該重畳可能期間の終了に合わせて通信を中断し、次回の重畳可能期間に残りのデータを送信する。
なお、重畳通信端末1の各部への電源供給は、基本システムの端末装置3と同様に伝送ユニット4から伝送路2を介して伝送される伝送信号を整流し安定化することによって供給される方式(集中給電方式)によって為される。ただし、この構成に限らず、重畳通信端末1の各部への電源供給は、商用電源を整流し安定化することによって供給される方式(ローカル給電方式)で為されてもよい。
ところで、本実施形態の通信システムにおいては、マスタとしての重畳通信端末101,111が複数台存在している。そのため、マスタとしての各重畳通信端末101,111はそれぞれ固有のプロトコルを採用した重畳信号により、各々と組を成すスレーブとしての重畳通信端末102,112と通信を行うことになる。重畳信号の送出および受信に用いられる各組の重畳通信端末1に固有のプロトコルは、各重畳通信端末1の記憶部16(図1(b)参照)に予め記憶されている。
ただし、プロトコルの異なる複数組の重畳通信端末1がそれぞれ独立して通信を行っていると、プロトコルの異なる重畳信号同士で使用する重畳可能期間が重複した場合に、重畳信号同士のコリジョンが発生して通信エラーとなる可能性がある。
そこで、本実施形態では、図1(b)に示すように、記憶部16に記憶されているプロトコルの重畳信号の重畳に使用する重畳可能期間を選択する期間選択部17を、各重畳通信端末1がそれぞれ備えている。期間選択部17は、プロトコルの異なる重畳信号同士で使用する重畳可能期間が重複しないように、各々に固有のプロトコルの重畳信号の重畳に使用する重畳可能期間を選択する。
ここで、重畳送出部11は、信号監視部15で監視されている伝送信号のうち期間選択部17で選択された重畳可能期間に重畳されるように、記憶部16に記憶されているプロトコルの重畳信号を伝送路2に送出する。要するに、期間選択部17は、記憶部16に記憶されているプロトコルの重畳信号の重畳を、いずれの重畳可能期間に行うのかを決定している。
以下、期間選択部17による重畳可能期間の選択方法についてより詳しく説明する。
本実施形態では、伝送信号は1フレーム内に重畳可能期間となる期間が複数(予備割込期間31と予備期間32と休止期間37)含まれている。そのため、期間選択部17は、図2に示すように伝送信号の1フレーム内の各期間を単位にして、重畳信号の重畳に使用する重畳可能期間を選択する。図2の例では、第1のプロトコルに従って重畳信号の送受信を行う重畳通信端末101,102は、期間選択部17により伝送信号の休止期間37を重畳信号の重畳に使用する重畳可能期間として選択している。一方、第2のプロトコルに従って重畳信号の送受信を行う重畳通信端末111,112は、期間選択部17により伝送信号の予備割込期間31と予備期間32とを重畳信号の重畳に使用する重畳可能期間として選択している。
つまり、図2の例では、重畳通信端末101,102の重畳送出部11および重畳受信部12は、伝送信号の休止期間37に第1のプロトコルの重畳信号P1を重畳させることにより通信を行う。一方、重畳通信端末111,112の重畳送出部11および重畳受信部12は、伝送信号の予備割込期間31と予備期間32とに第2のプロトコルの重畳信号P2を重畳させることにより通信を行う。言い換えれば、図2に示すように伝送信号の予備割込期間31と予備期間32とは第2のプロトコルの重畳信号P2に割り当てられ、休止期間37は第1のプロトコルの重畳信号P1に割り当てられることになる。
ここで、重畳通信端末1には、ユーザの操作入力を受け付ける操作部としてのディップスイッチ(図示せず)が設けられており、期間選択部17は、操作部への操作入力(ディップスイッチの接点出力)に従って重畳期間の重畳に使用される重畳可能期間を選択する。そのため、いずれの重畳可能期間をいずれのプロトコルの重畳信号に割り当てるかについては、ユーザが操作部を操作することにより任意に指定することができる。ただし、プロトコルの異なる重畳信号同士で使用する重畳可能期間が重複しないように、ユーザは、プロトコルごとに異なる重畳可能期間を割り当てる必要がある。
具体的には、重畳通信端末1には、予備割込期間31と予備期間32と休止期間37との各期間に対応するディップスイッチが設けられ、期間選択部17は、オン状態にあるディップスイッチに対応する期間を重畳信号の重畳に使用される重畳可能期間とする。たとえば、記憶部16に第1のプロトコルが記憶されている重畳通信端末101,102において、休止期間37に対応するディップスイッチがオン状態にあれば、休止期間37は第1のプロトコルの重畳信号に割り当てられる。
以上説明した構成の通信システムによれば、各重畳通信端末1が、各々に固有のプロトコルの重畳信号の重畳に使用する重畳可能期間を選択する期間選択部17をそれぞれ備えているので、重畳信号同士で使用する重畳可能期間が重複することを回避できる。すなわち、複数組の重畳通信端末1がそれぞれ固有のプロトコルを採用した重畳信号を用いて通信しながらも、各組の重畳通信端末1がそれぞれの期間選択部17で選択した重畳可能期間に重畳信号の通信を行うことにより、重畳信号同士のコリジョンを回避できる。したがって、上記通信システムでは、複数組の重畳通信端末1がそれぞれ固有のプロトコルを採用した重畳信号を用いて通信する場合でも、通信エラーが生じにくいという利点がある。
しかも、期間選択部17は、伝送信号の1フレーム内の各期間を単位にして重畳可能期間を選択するので、複数のプロトコルの重畳信号による通信が比較的短いスパンで可能になる。さらに、期間選択部17は、操作部への操作入力に従って重畳可能期間を選択するので、比較的簡単な構成で、重畳期間の重畳に使用される重畳可能期間を異なるプロトコルの重畳信号に割り当てることが可能になる。
また、期間選択部17は、図3に示すように、伝送信号の1フレームを単位にして、重畳信号の重畳に使用する重畳可能期間を選択する構成であってもよい。ここでは、伝送信号は割込期間35から返送期間34までを1フレームとする。図3の例では、第1のプロトコルに従って重畳信号の送受信を行う重畳通信端末101,102は、期間選択部17により第1、第3、第5、第7フレームF1,F3,F5,F7の重畳可能期間を、重畳信号の重畳に使用する重畳可能期間として選択している。一方、第2のプロトコルに従って重畳信号の送受信を行う重畳通信端末111,112は、期間選択部17により第2、第4、第6フレームF2,F4,F6の重畳可能期間を、重畳信号の重畳に使用する重畳可能期間として選択している。
つまり、図3の例では、重畳通信端末101,102の重畳送出部11および重畳受信部12は、伝送信号の第1、第3、第5、第7フレームF1,F3,F5,F7の重畳可能期間に第1のプロトコルの重畳信号P1を重畳させることにより通信を行う。一方、重畳通信端末111,112の重畳送出部11および重畳受信部12は、伝送信号の第2、第4、第6フレームF2,F4,F6の重畳可能期間に第2のプロトコルの重畳信号P2を重畳させることにより通信を行う。言い換えれば、図3に示すように伝送信号は重畳可能期間(休止期間37、予備割込期間31、予備期間32)が1フレームごとに第1のプロトコルの重畳信号P1と第2のプロトコルの重畳信号P2とに交互に割り当てられることになる。
このように期間選択部17が伝送信号の1フレームを単位にして重畳可能期間を選択すると、各プロトコルの重畳信号による通信に当てられる時間が比較的長くなる。したがって、重畳通信端末1は、伝送するデータ量が多く1回の重畳可能期間に送信しきれない場合などに、通信に要する時間を短くすることができる。
(実施形態2)
本実施形態の通信システムは、期間選択部17による重畳可能期間の選択方法が実施形態1の通信システムとは相違する。
すなわち、実施形態1では期間選択部17はユーザによる操作部への操作入力に従って重畳可能期間を選択していたのに対し、本実施形態では期間選択部17は重畳通信端末1間の通信にて交換される通信情報に基づいて自動的に重畳可能期間を選択する。ここでいう通信情報は、各組の重畳通信端末1に固有のプロトコルに従った通信に関する情報であり、たとえば重畳通信端末1間で授受されるデータ量や、通信の頻度などがある。
本実施形態における期間選択部17は、伝送信号の重畳可能期間に他の組の重畳通信端末1と共通のプロコトル(以下、「共通プロトコル」という)の重畳信号を用いて、他の組の重畳通信端末1の期間選択部17と通信により通信情報の交換を行う。つまり、重畳通信端末1の記憶部16には、各組の重畳通信端末1に固有のプロトコルの他、共通プロトコルが記憶されており、重畳送出部11および重畳受信部12は共通プロトコルによる重畳信号の送出、受信が可能である。
期間選択部17は、通信システムの起動後に伝送ユニット4から送信される伝送信号の最初の1フレームの重畳可能期間に、他の組の重畳通信端末1と共通プロトコルの重畳信号を用いた通信を行い、たとえば図4に示すように重畳可能期間を選択する。図4の例では、伝送信号の最初の1フレームの予備割込期間31に、第1のプロトコルに従って重畳信号の送受信を行う重畳通信端末101,102から、共通プロトコルの重畳信号を用いて通信情報S1が送出されている。また、伝送信号の最初の1フレームの予備期間32には、第2のプロトコルに従って重畳信号の送受信を行う重畳通信端末111,112から、共通プロトコルの重畳信号を用いて通信情報S2が送出されている。
図4の例においては、期間選択部17は、各組の重畳通信端末1がそれぞれに固有のプロコトルの重畳信号を用いて授受するデータ量に基づいて、重畳可能期間を選択している。つまり、期間選択部17は、各組の重畳通信端末1がそれぞれに固有のプロコトルの重畳信号を用いて授受するデータ量からなる通信情報を、共通プロトコルの重畳信号を用いてやり取りし、データ量の相対的な関係に応じて重畳可能期間を選択する。具体的には、期間選択部17は、重畳通信端末101,102間で授受されるデータ量と、重畳通信端末111,112間で授受されるデータ量とを比較し、その比較結果に応じて重畳可能期間を選択する。
図4では、重畳通信端末101,102間で第1のプロトコルの重畳信号を用いて授受されるデータ量が、重畳通信端末111,112間で第2のプロトコルの重畳信号を用いて授受されるデータ量よりも少ない場合を例に示す。図4の例では、データ量が多い第2のプロトコルの重畳信号P2には予備割込期間31と予備期間32とが割り当てられ、データ量が少ない第1のプロトコルの重畳信号P1には休止期間37のみが割り当てられている。
要するに、期間選択部17は、授受するデータ量が多い方のプロトコルの重畳信号に、相対的に長い重畳可能期間が優先して割り当てられるように、重畳信号の重畳に使用する重畳可能期間を選択する。これにより、重畳通信端末1は、各々の授受するデータ量に適した長さの重畳可能期間に重畳信号による通信が可能となり、通信システム全体としてスムーズなデータ伝送が可能となる。
また、他の例として、期間選択部17は、各組の重畳通信端末1がそれぞれに固有のプロコトルの重畳信号を用いて通信を行う頻度に基づいて、重畳可能期間を選択する構成であってもよい。つまり、期間選択部17は、各組の重畳通信端末1がそれぞれに固有のプロコトルの重畳信号を用いて通信する頻度からなる通信情報を、共通プロトコルの重畳信号を用いてやり取りし、通信頻度の相対的な関係に応じて重畳可能期間を選択する。具体的には、期間選択部17は、重畳通信端末101,102間で通信が行われる頻度と、重畳通信端末111,112間で通信が行われる頻度とを比較し、その比較結果に応じて重畳可能期間を選択する。
図5では、重畳通信端末101,102間における第1のプロトコルの重畳信号を用いた通信は1分間隔で行われ、重畳通信端末111,112間における第2のプロトコルの重畳信号を用いた通信は1時間間隔で行われる場合を例に示す。図5の例では、伝送信号の最初の第1フレームF1の予備割込期間31に、第1のプロトコルに従って重畳信号の送受信を行う重畳通信端末101,102から、共通プロトコルの重畳信号を用いて通信情報S1が送出されている。また、伝送信号の第1フレームF1の予備期間32には、第2のプロトコルに従って重畳信号の送受信を行う重畳通信端末111,112から、共通プロトコルの重畳信号を用いて通信情報S2が送出されている。
図5の例では、通常時には通信頻度が高い第1のプロトコルP1の重畳信号に重畳可能期間が割り当てられ、第2のプロトコルの重畳信号P2にはある時間帯(ここでは第4フレームF4)にのみ重畳可能期間が割り当てられている。
要するに、期間選択部17は、通信頻度が高い方のプロトコルの重畳信号に、重畳可能期間が優先して割り当てられるように、重畳信号の重畳に使用する重畳可能期間を選択する。これにより、重畳通信端末1は、各々の通信頻度に適したタイミングの重畳可能期間に重畳信号による通信が可能となり、通信システム全体としてスムーズなデータ伝送が可能となる。
以上説明した本実施形態の構成によれば、期間選択部17は、重畳信号の重畳に使用される重畳可能期間を、重畳通信端末1間の通信にて交換される通信情報に基づいて自動的に選択するので、ユーザが重畳可能期間を割り当てる手間が省けるという利点がある。また、プロトコルの異なる重畳信号同士で使用する重畳可能期間が重複することを確実に回避できるという利点もある。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
(実施形態3)
本実施形態の通信システムは、期間選択部17による重畳可能期間の選択方法が実施形態1の通信システムとは相違する。
すなわち、本実施形態では期間選択部17は重畳通信端末1間の通信にて使用要求を行い、この使用要求が他の組の重畳通信端末1の期間選択部17に認められれば使用要求どおりに重畳可能期間を選択する。ここでいう使用要求は、以降の1以上の重畳可能期間を記憶部16に記憶されている各々に固有のプロトコルの重畳信号の重畳に使用することを要求するコマンドである。
本実施形態における期間選択部17は、伝送信号の重畳可能期間に他の組の重畳通信端末1と共通のプロコトル(以下、「共通プロトコル」という)の重畳信号を用いて、他の組の重畳通信端末1の期間選択部17と通信することにより使用要求を行う。つまり、重畳通信端末1の記憶部16には、各組の重畳通信端末1に固有のプロトコルの他、共通プロトコルが記憶されており、重畳送出部11および重畳受信部12は共通プロトコルによる重畳信号の送出、受信が可能である。
図6の例では、伝送信号の最初の第1フレームF1の予備割込期間31に、第1のプロトコルに従って重畳信号の送受信を行う重畳通信端末101から、共通プロトコルの重畳信号により使用要求R1が出されている。この使用要求R1では、重畳通信端末101の期間選択部17は、次フレーム(第2フレームF2)と次々フレーム(第3フレームF3)との2フレーム内の重畳可能期間を、第1のプロトコルの重畳信号の重畳に使用することを要求している。この使用要求R1が他の組の重畳通信端末111,112の期間選択部17に認容されることにより、重畳通信端末101,102は、図6の第2、第3フレームF2,F3の重畳可能期間を専有し、第1のプロトコルの重畳信号P1の重畳に使用することができる。
図6の第4フレームF4の予備割込期間31には、第2のプロトコルに従って重畳信号の送受信を行う重畳通信端末111から、共通プロトコルの重畳信号により使用要求R2が出されている。この使用要求R2では、重畳通信端末111の期間選択部17は、次フレーム(第5フレームF5)内の重畳可能期間を、第2のプロトコルの重畳信号の重畳に使用することを要求している。この使用要求R2が他の組の重畳通信端末101,102の期間選択部17に認容されることにより、重畳通信端末111,112は、図6の第5フレームF5の重畳可能期間を専有し、第2のプロトコルの重畳信号P2の重畳に使用することができる。
要するに、重畳通信端末1は、各々に固有のプロトコルの重畳信号を用いて通信する必要が生じた場合、その都度、事前に使用要求を出して必要な重畳可能期間を確保し、確保した重畳可能期間に重畳信号による通信を行うことになる。そのため、いずれのプロトコルの重畳信号にいずれの重畳可能期間が割り当てられるかは、固定的に決められるのではなく、通信システムの稼働中に随時変化する。これにより、重畳通信端末1は、各々の授受するデータ量や通信頻度等に適した重畳可能期間に重畳信号による通信が可能となり、通信システム全体としてスムーズなデータ伝送が可能となる。
ところで、本実施形態の通信システムにおいては、期間選択部17が行った使用要求が認められるか否かは、以下のような判断基準に従って決められている。
基本的には、期間選択部17が使用要求にて要求した重畳可能期間が、異なるプロトコルの重畳信号に割り当てられることなく空いていれば、この使用要求が他の組の重畳通信端末1の期間選択部17に認容されたことになる。つまり、使用要求にて要求した重畳可能期間が、既に異なるプロトコルの重畳信号に割り当てられている場合には、この使用要求は否認(却下)されることになる。
ただし、互いに異なるプロトコルに従って重畳信号の送受信を行う複数台の重畳通信端末1で、略同時に重畳信号を用いて通信する必要が生じた場合、伝送信号の同一フレームに複数台の重畳通信端末1から複数の使用要求が行われることがある。この場合、使用要求同士のコリジョンが生じないように、本実施形態では、使用要求を行うことができる重畳可能期間が、伝送信号の1フレーム内の各期間を単位にして重畳通信端末1ごとに割り当てられている。ここで、伝送信号の同一フレームに複数の使用要求が行われると、期間選択部17は、先に行われた使用要求から順に優先して認めるように判断基準が定められている。
図7は、伝送信号の同一フレームに複数の使用要求が行われた例として、伝送信号の第1フレームF1に重畳通信端末101からの使用要求R1と、重畳通信端末111からの使用要求R2とが行われた場合を示している。使用要求R1では、重畳通信端末101の期間選択部17は、次フレーム(第2フレームF2)内の重畳可能期間を、第1のプロトコルの重畳信号の重畳に使用することを要求している。使用要求R2では、重畳通信端末111の期間選択部17は、次フレーム(第2フレームF2)内の重畳可能期間を、第2のプロトコルの重畳信号の重畳に使用することを要求している。
ここで、図7では、第1フレームF1の予備割込期間31に重畳通信端末101から使用要求R1があり、その後の予備期間32に重畳通信端末111から使用要求R2があるので、先に行われた重畳通信端末101からの使用要求R1が優先して認容される。一方、重畳通信端末111からの使用要求R2は認容されず、却下される。その結果、重畳通信端末101,102は、図7の第2フレームF2の重畳可能期間を専有し、第1のプロトコルの重畳信号P1の重畳に使用することができる。
また、図7の第3フレームF3においては、予備期間32に重畳通信端末111から使用要求R2があるだけで、重畳通信端末101からの使用要求はないので、重畳通信端末111からの使用要求R2が認容される。このときの使用要求R2では、重畳通信端末111の期間選択部17は、次フレーム(第4フレームF4)と次々フレーム(第5フレームF5)との2フレーム内の重畳可能期間を、第2のプロトコルの重畳信号の重畳に使用することを要求している。したがって、重畳通信端末111,112は、図7の第4、第5フレームF4,F5の重畳可能期間を専有し、第2のプロトコルの重畳信号P2の重畳に使用することができる。
ただし、図7の例では、伝送信号の同一フレームに重畳通信端末101からの使用要求R1と重畳通信端末111からの使用要求R2とがあった場合、常に重畳通信端末101からの使用要求R1が優先して認容され、他の使用要求R2は却下される。そのため、重畳通信端末101の期間選択部17が使用要求R1を出し続けていると、長時間に亘って重畳通信端末111は第2のプロトコルの重畳信号を用いた通信を行うことができない。
そこで、本実施形態では、既定回数(たとえば2回)連続して伝送信号の同一フレームに複数の期間選択部17が使用要求を行った場合、これら複数の期間選択部17の間で使用要求を行うことができる重畳可能期間の割り当てが入れ替わる構成を採用する。
たとえば図8に示すように第1、第3フレームF1,F3で2回続けて、同一フレームに重畳通信端末101からの使用要求R1と重畳通信端末111からの使用要求R2とがあった場合、使用要求R1と使用要求R2とで割り当てられる重畳可能期間が入れ替わる。つまり、第1、第3フレームF1,F3においては、予備割込期間31に重畳通信端末101から使用要求R1があり、その後の予備期間32に重畳通信端末111から使用要求R2があるので、重畳通信端末101からの使用要求R1が優先して認容される。一方、重畳可能期間の割り当てが入れ替わった第5フレームF5では、予備割込期間31に重
畳通信端末111から使用要求R2があり、その後の予備期間32に重畳通信端末101から使用要求R1があるので、使用要求R2が優先して認容される。
上記構成によれば、使用要求を出す機会が各組の重畳通信端末1に略平等に与えられることになり、長時間に亘っていずれかの重畳通信端末1が固有のプロトコルの重畳信号を用いた通信を行えないという事態を回避することができる。
また、長時間に亘っていずれかの重畳通信端末1が固有のプロトコルの重畳信号を用いた通信を行えないという事態を回避するための他の構成として、以下のような構成も考えられる。
すなわち、伝送信号の同一フレームに複数の期間選択部17が使用要求を行った場合、後から使用要求を行った期間選択部17は、使用要求が認容された重畳通信端末1からの重畳信号による通信終了直後の重畳可能期間に、優先的に使用要求を行う構成とする。図7の場合を例にすると、第1フレームF1においては重畳通信端末101からの使用要求R1と重畳通信端末111からの使用要求R2があるため、使用要求R1が優先して認容され、使用要求R2は却下される。そのため、重畳通信端末101,102は、第2フレームF2の重畳可能期間を専有し、第1のプロトコルの重畳信号P1にて通信を行う。
この際、使用要求R2が却下された重畳通信端末111は、重畳通信端末101,102による第1のプロトコルの重畳信号P1を用いた通信が終了した直後の第3フレームF3において、使用要求R2を重畳通信端末101より優先して行うことができる。つまり、第3フレームF3には、重畳通信端末101からの使用要求は禁止されるため、予備期間32に出された重畳通信端末111からの使用要求R2は、優先的に認容されることになる。そのため、重畳通信端末111,112は、図7の第4、第5フレームF4,F5の重畳可能期間を専有し、第2のプロトコルの重畳信号P2の重畳に使用することができる。
さらに他の例として、使用要求には優先度が付加され、期間選択部17は、伝送信号の同一フレームに複数の使用要求が行われると、付加された優先度が高い使用要求から順に優先して認容するように判断基準が定められていてもよい。たとえば、重畳通信端末101からの使用要求に、重畳通信端末111からの使用要求よりも高い優先度が付加されていた場合、伝送信号の同一フレームに両重畳通信端末1から使用要求があると、常に重畳通信端末101からの使用要求が優先して認容される。
つまり、伝送信号の同一フレームに重畳通信端末111、重畳通信端末101の順に使用要求があっても、使用要求が行われた順番に関係なく、重畳通信端末101からの使用要求が優先して認容されることになる。この構成は、固有のプロトコルの重畳信号を用いた通信を、いずれかの重畳通信端末1に優先的に行わせるような場合に有用である。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
なお、上記各実施形態では、第1のプロトコルと第2のプロコトルとの2種類のプロトコルの重畳信号が混在した通信システムを例示したが、この例に限らず、3種類以上のプロトコルの重畳信号が混在していてもよい。3種類以上のプロトコルの重畳信号が混在する場合でも、期間選択部17が各プロトコルの重畳信号の重畳に使用する重畳可能期間を選択することにより、通信エラーの発生を低減することができる。