JP2013054836A - ダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置 - Google Patents

ダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置 Download PDF

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Abstract

【課題】MEAに対する気相のメタノールの供給量の変動を抑制し、かつ必要十分にすることができるダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置を提供すること。
【解決手段】 メタノール水溶液を燃料とし、そのメタノール水溶液を膜・電極接合体1のアノード側に供給する燃料チャンネル13が形成されたプレート9を備えているダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置14において、膜・電極接合体1のアノード側に液体に比較して気体の透過性が高い気液分離膜15が設けられ、その気液分離膜15とプレート9との間にメタノール水溶液を保持する燃料保持部16が設けられていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

この発明は、ダイレクトメタノール型燃料電池に燃料を供給する装置に関するものである。
ダイレクトメタノール型の燃料電池(以下、DMFCと記す。)は、メタノールを燃料とし、そのメタノールと酸素との電気化学反応によって発電をおこなうように構成された燃料電池である。このDMFCは、その動作温度が他の燃料電池に比較して低いこと、可燃性ガスを燃料として使用する燃料電池と比較して液体燃料を用いるために燃料のエネルギ密度が高いこと、またそれにより燃料を貯留する容器を小型化できること、これらに加えて、貯蔵の難しい水素ガスを燃料に用いないなどのことから燃料電池全体の構成を簡素化したり小型化したりすることができるなどの特徴を備えている。したがって、DMFCは、今後、小型携帯型の機器用電源として有望視されている燃料電池である。
DMFCは、膜・電極接合体(以下、MEAと記す。)のアノードにおいて、メタノールと、それと同量以上の水分が存在すると、白金とルテニウムとの等量混合物によって構成される触媒を介してメタノールが下記の(1)式に示したように酸化されてプロトンと電子と二酸化炭素とを生成する。その電子は外部回路を移動してカソードに到達し、プロトンは電解質膜を透過してカソードに到達する。二酸化炭素はメタノールが透過してきたアノード側のガス拡散層や電極などを介してDMFCの外部に放出される。一方、カソードにおいては下記の(2)式に示したように、DMFCの外部からMEAに供給された酸素が主として白金によって構成される触媒を介してアノードから移動してきたプロトンおよび電子と反応して水が生成される。
アノードにおける反応
CHOH + HO → CO+ 6H 十 6e …(1)式
カソードにおける反応
3/2O + 6H + 6e → 3HO …(2)式
DMFCは、MEAに対する燃料の供給方法によって、液体供給型と気化供給型とに大別することができる。液体供給型のDMFCは、液相のメタノール水溶液を直接、MEAに供給するように構成されており、そのため、メタノールのクロスオーバー現象を低減させるためには予め定められた低濃度のメタノール水溶液をMEAに供給する必要があり、また、発電量を向上させるためには燃料の供給量を増大させる必要がある。その結果、液体供給型のDMFCにおいては、低濃度かつ多量のメタノール水溶液をMEAに供給するためのポンプが必要になる。そのポンプの駆動を制御するためには一般的に電力が必要であり、DMFCが発電した電力の一部をポンプの駆動に用いると、その分、DMFCの出力電力の低下を招くことになる。
他方、気化供給型のDMFCは、蒸気化させたメタノールをMEAに供給するように構成されており、その気化供給型のDMFCは装置の外部で例えば電気ヒータを使用してメタノールを蒸気化させてMEAに供給する外部気化型と、装置の内部でメタノールの酸化反応に伴って発生する酸化熱によってメタノールを蒸気化させてMEAに供給する内部気化型とに更に大別することができる。外部気化型のDMFCは上述したように、電気ヒータを使用してメタノールを蒸気化させるように構成されており、メタノールを蒸気化させる方法やその供給方法などがいわゆるアクティブな構造となっている。
これに対して、内部気化型のDMFCはメタノールを蒸気化させるための電気ヒーターやこれを駆動させるための電力を必要としないので、上記の外部気化型のDMFCに対してメタノールの蒸気化方法やその供給方法などがいわゆるパッシブな構造とすることができる。したがって、内部気化型のDMFCはMEAに蒸気化したメタノールを供給するための燃料供給装置を小さくすることが可能になる。
ところで、DMFCに限らずいずれの燃料電池においても、一般的にMEAのアノードにおいて燃料の酸化反応が生じ、カソードにおいて酸素の還元反応が生じるように構成されており、これに加えて、カソード側から反応生成物として水が生成する。このように燃料電池は燃料と酸化剤との電気化学反応によって発電をおこなうように構成されており、燃料電池の出力電力はそれらの電気化学反応に依存している。したがって、MEAに対する燃料の供給状態やアノードとカソードとにおける電気化学反応などを安定化させることが従来検討されている。その一例が特許文献1に記載されている。
特許文献1には、液体供給型のDMFCが記載されており、そのMEAのアノード側に延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(以下、ePTFEと記す。)によって構成された気化膜が設けられている。その気化膜の厚みや空隙率は液体を透過させずに気体のみを透過させるように調整されており、したがって、気化膜を透過した気相のメタノールのみをMEAに供給することができるように構成されている。その結果、特許文献1に記載された発明によれば、液相のメタノールをMEAに供給しないため、メタノールのクロスオーバー現象を防止できる、とされている。
特許文献2には、液体供給型のDMFCが記載されており、そのDMFCにおけるMEAのカソード側触媒層とカソード側ガス拡散層との間に、疎水性多孔質層が設けられている。その疎水性多孔質層の透湿度はカソード側ガス拡散層の透湿度よりも小さくされており、したがって、カソードにおいて生成した水を電解質膜を透過させてアノード側に供給することができるように構成されている。そのため、特許文献2に記載された発明によれば、アノードにおける電気化学反応に必要とされる水分量を確保できるため、アノードにおける水分量が不足することによってDMFCの出力電力が変動することを抑制できる、とされている。
特許文献3には、内部気化型のDMFCが記載されており、そのDMFCは燃料収容部に貯留されている液相のメタノールをMEAのアノードに供給する燃料供給機構を備えている。その燃料供給機構は、MEAのアノードの面方向に液相のメタノールを分散させて供給する燃料分散板と、液相のメタノールを気化させる燃料拡散室とによって構成される燃料供給部を備えている。これに加えて、MEAと燃料供給機構との間にMEAのカソード側において生成した水をトラップする保水層が設けられている。したがって、気相のメタノールをMEAに供給でき、かつ保水層がカソードにおいて生成した水をトラップするため、燃料供給機構に水が流入することを防止できるとともに、アノードに対して発電に必要な水を安定的に供給することができる、とされている。
なお、特許文献4には、周辺技術として、MEAの触媒層とガス拡散層との間に、導電性炭素質粉末とポリテトラフルオロエチレンとによって構成された湿度調整膜を設けた固体高分子形燃料電池が記載されている。この湿度調整膜は、全体として導電性および通気性ならびに疎水性を有しており、その膜厚および水蒸気の透湿度が固体高分子形燃料電池におけるドライアップとフラッディングとの両方を防止できる膜厚および水蒸気の透湿度に調整されている。そのため、MEAにおけるドライアップとフラッディングとの両方を防止できる、とされている。
また、特許文献5には、MEAの加湿状態が変動したとしてもこれによって燃料電池の出力電力を変動させないために、アノードおよびカソードの各電極に、保水性を有する多孔質電極基材を用いることが記載されている。その多孔質電極基材は炭素短繊維紙にポリテトラフルオロエチレン粉末とポリアクリロニトリル粉末とを付与し、その後にこれを加熱加圧して形成されることが記載されている。このようにして形成された多孔質電極は高いガス透過度を備えるとともに、保水性を有しているため、MEAに対する加湿状態が変動しても燃料電池の出力電力の変動を抑制することができる、とされている。
さらにまた、特許文献6には、例えば水とアルコールとの混合液から水を選択的に透過させるパーベーパレイション膜(いわゆる分離膜)として、一対のePTFE膜の間にポリビニルアルコールの架橋体やフッ素系イオン交換樹脂を挟み込んで形成した複合膜を用いることが記載されている。
特開2009−140618号公報 特開2010−86662号公報 特開2010−146767号公報 特開2006−252948号公報 特開2010−244956号公報 特開2010−5515号公報
上述した特許文献1に記載されたDMFCは、燃料タンクから供給された液相のメタノールと気化膜とを直接接触させ、これらの界面において蒸気化したメタノールのみをMEAに供給するように構成されている。したがって、気相のメタノールをMEAに供給するためには、気化膜と液相のメタノールとが接触している必要がある。しかしながら、特許文献1に記載された構成では、液相のメタノールの供給量に変動が生じてこれらの接触面積が変化すると、それにともなってこれらの界面で蒸気化されるメタノールの量も変化し、その結果、MEAに供給されるメタノールの量も変化する可能性がある。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、MEAに対する気相のメタノールの供給量の変動を抑制し、かつ必要十分にすることができるダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、メタノール水溶液を燃料とし、そのメタノール水溶液を膜・電極接合体のアノード側に供給する燃料チャンネルが形成されたプレートを備えているダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置において、前記膜・電極接合体のアノード側に液体に比較して気体の透過性が高い気液分離膜が設けられ、その気液分離膜と前記プレートとの間に前記メタノール水溶液を保持する燃料保持部が設けられていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記気液分離膜における気体の透過度は、50〜200g/m・hの範囲であり、前記燃料保持部は、シート状に形成され、かつ毛細管力を生じるウイックを含むことを特徴とするダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置である。
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記気液分離膜は、その表面で前記メタノール水溶液を気化させる第一の層と、直径が1.0〜4.0μmの範囲の空孔が複数形成されかつ空隙率が20〜80%の第二の層とを備えていることを特徴とするダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置である。
請求項4の発明は、請求項3の発明において、膜状に形成された延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、シリコンゴムシートとのいずれか一方によって前記第一の層が構成され、いずれか他方によって前記第二の層が構成されていることを特徴とするダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置である。
請求項5の発明は、請求項2の発明において、前記ウイックは、複数の細孔を有する多孔質構造体と、複数の網目を有するメッシュ構造体とのいずれか一つを含むことを特徴とするダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置である。
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記多孔質構造体は、親水処理された多孔質セラミックスと、親水処理された有機高分子多孔質体と、金属多孔質体と、金属酸化物多孔質体とのいずれか一つを含むことを特徴とするダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置である。
請求項1の発明によれば、膜・電極接合体のアノード側に気液分離膜が設けられ、その気液分離膜と燃料チャンネルとの間に液相のメタノール水溶液を保持する燃料保持部が設けられている。すなわち、燃料チャンネルに供給された液相のメタノール水溶液の一部は一旦、燃料保持部に保持されることになる。そして、この燃料保持部は気液分離膜に接触しているため、燃料チャンネルに供給される液相のメタノール水溶液の量が変動したとしても、少なくとも燃料チャンネルに液相のメタノール水溶液が供給されている間においては、気液分離膜は液相のメタノール水溶液に接触している状態になる。メタノールは蒸気圧が低く、蒸気になりやすいため、温度に応じて液相のメタノールから所定量のメタノールの蒸気が発生する。そのため、高濃度のメタノール蒸気が気液分離膜を透過して膜・電極接合体に供給されることとなる。また、膜・電極接合体のアノードにおけるメタノールの酸化反応に伴って生じた二酸化炭素は気液分離膜を透過して燃料チャンネルに供給され、燃料チャンネルを介して膜・電極接合体の外部に排出される。これに加えて、カソードにおいて生成した水の一部はアノードに移動するが、気液分離膜は液体を透過させにくいため、結果的にその生成水の一部は気液分離膜と膜・電極接合体との間にある程度保持されることとなり、その保持された生成水がアノードにおけるメタノールの酸化反応に利用される。これらの結果、高濃度のメタノール蒸気を必要十分に膜・電極接合体に供給することができるとともに、二酸化炭素の排出を向上させ、さらに膜・電極接合体における水分量を確保することができ、DMFCの発電特性を従来になく高くすることができる。さらに、燃料を濃縮したり、蒸気化したりするための装置類を必要としないので、燃料供給装置をいわゆるパッシブな構成とすることができ、これによりDMFCを小型化することができる。したがって、上記のように構成された燃料供給装置を備えたDMFCは小型携帯型の機器用電源として搭載性に優れている。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明による効果と同様の効果に加えて、気液分離膜における気体の透過度が50〜200g/m・hの範囲であるから、この範囲においてメタノール蒸気を膜・電極接合体に供給することができる。言い換えれば、膜・電極接合体に供給するメタノール蒸気の量を予め定めた範囲とすることができる。燃料保持部は、シート形状に形成されかつ毛細管力を生じるウイックを含む。すなわち、ウイックはその毛細管力によって液相のメタノール水溶液を吸い上げるとともに、その内部構造中にある程度の量のメタノール水溶液を保持することができる。そのため、燃料チャンネルにおける液相のメタノール水溶液の量が変動したり、気液分離膜や燃料保持部を透過して燃料チャンネルに排出された二酸化炭素が燃料チャンネルに溜まることによって液相のメタノール水溶液の流動が阻害されたとしても、ウイックは隣接する気液分離膜に継続的に液相のメタノールを供給することができる。
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明による効果と同様の効果に加えて、気液分離膜はその表面でメタノールを蒸気化させる第一の層と、直径が1.0〜4.0μmの範囲の空孔が複数形成されかつ空隙率が20〜80%の第二の層とを備えており、言い換えれば、孔サイズおよび空隙率すなわち開効率ならびに膜厚などが異なる部材を組み合わせて構成することができる。したがって、各層の孔サイズ、空隙率、膜厚などを任意に調整することによって液体と気体との透過度を調整することができる。その結果、膜・電極接合体に供給するメタノール蒸気の濃度を調整することができる。
請求項4の発明によれば、請求項3の発明による効果と同様の効果に加えて、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンとシリコンゴムシートとのいずれか一方によって気液分離膜における第一の層を構成することができ、いずれか他方によって第二の層を構成することができる。そのため、気液分離膜を耐薬品性や耐腐食性を備えた膜とすることができる。
請求項5の発明によれば、請求項2の発明による効果と同様の効果に加えて、上記のウイックは多孔質構造体やメッシュ構造体など毛細管力を生じるとともにその内部に燃料を保持するものであればよく、したがって、素材の選択の自由度を向上でき、その結果、製造性に優れている。
請求項6の発明によれば、請求項5の発明による効果と同様の効果に加えて、多孔質構造体は、多孔質セラミックスと有機高分子多孔質体と金属多孔質体とのいずれか一つを含む。多孔質構造体は、パウダーウイックなどと称される大きな毛細管力を生じる多孔質体、または親水処理された多孔質体によって構成されるため、いわゆる液保持性を高くすることができる。
この発明に係る燃料供給装置を適用した単セル型のDMFCの構成の一例を模式的に示す図である。 この発明に係る燃料供給装置を適用した単セル型のDMFCの発電特性を模式的に示す図である。 シリコンゴムシートの膜厚と気体の透湿度との関係を測定した結果を示す図である。 図3に示した各シリコンゴムシートを気液分離膜として使用してDMFCを構成した場合における各DMFCの発電特性を模式的に示す図である。 DMFCにおけるMEAの基本的な構成を模式的に示す断面図である。
つぎにこの発明を具体的に説明する。この発明はMEAに燃料を供給するための燃料供給装置の構成に特徴を有するDMFCである。MEAは、実質的な燃料電池に相当する部分であり、その基本的な構成は、電解質として高分子電解質膜を備え、その表裏両面側に触媒層がそれぞれ設けられ、さらにその表面にガス拡散層と電極とがそれぞれ設けられている。電解質膜には、一例としてパーフルオロスルホン酸系高分子膜(例えばNafion 117(登録商標))やポリベンゾイミダゾールなどを用いることができる。アノード側、すなわち燃料極側の触媒層は、一例として、白金/ルテニウムの混合物を主成分として構成することができ、これに対してカソード側、すなわち空気極側の触媒層は白金を主成分として構成することができる。各ガス拡散層は、触媒層の表面側に燃料や空気が流通する空間を確保するためのものであり、したがって導電性の多孔構造とされている。ガス拡散層は、例えば、カーボンクロスあるいはカーボン繊維をメッシュ構造に編んだものを用いることができ、また必要に応じて撥水処理もしくは親水処理が施されている。そして、これらのガス拡散層の表面側に電極がそれぞれ設けられている。各電極は良導体によって構成され、これに加えて燃料や空気を触媒層に到達させるために通気構造とされている。一例として、白金メッキを施したチタンやステンレスからなるメッシュ構造体を用いることができる。各電極には負荷が接続されて電気回路が形成されている
この発明に係るDMFCの燃料供給装置は、液体に比較して気体の透過性が高い気液分離膜と、燃料チャンネルを流動する液相の燃料を毛細管力によって吸い上げるとともにこれを保持する燃料保持部とを備えている。気液分離膜は液相の燃料と、気相の燃料とを分離し、かつ気相の燃料を透過させることによりMEAのアノード側に気相の燃料のみを供給するためのものである。気液分離膜は一例として膜状に形成された多孔構造体とされており、その開孔径および開孔率ならびに膜厚などを調整することにより液体よりも気体の透過性が高くなるように構成されている。これに加えて、気液分離膜は撥水性もしくは疎水性を備えており、その撥水作用によって液相の水およびメタノールを弾くように構成されている。またこの発明では、気液分離膜は燃料として使用されるメタノールに接触し、その蒸気のみを透過させるものであるから、耐薬品性や耐腐食性を有していることが好ましい。したがって気液分離膜としては、例えば、ePTFEやシリコンゴムシート、あるいはこれらを組み合わせたものなどを使用することができる。
燃料保持部は、燃料チャンネルを流動する液相のメタノールを毛細管力によって吸い上げるとともにその内部構造中にこれを保持することにより、これに接触して設けられる上記の気液分離膜に燃料を継続的に供給するためのものである。したがって、燃料保持部には、例えば、多孔質セラミックス、有機高分子多孔質体、金属粉末を焼結させた金属製多孔質体などの複数の細孔を有する多孔質構造体、あるいは織布や不織布などの繊維をメッシュ状に構成したメッシュ構造体などのいわゆるウイックと称される部材を用いることができる。これに加えて、燃料保持部は上記の気液分離膜と同様に、耐薬品性や耐腐食性を有するものが好ましい。更にこれらに加えて、燃料保持部は、その内部構造中に液相のメタノール水溶液を保持する必要があるので、メタノールや水との濡れ性が優れているものが好ましく、したがって、銅粉末やカーボンなどの焼結体によって構成することが好ましい。
この発明では、上記の気液分離膜がMEAのアノード側であってかつMEAに接触して配置され、その気液分離膜と燃料チャンネルが形成されたプレートとの間であって、かつ気液分離膜に接触して燃料保持部が配置されている。燃料チャンネルは燃料タンクからMEAに供給されるメタノール水溶液の流路となり、かつそのメタノール水溶液をMEAにおけるアノードの全面に亘って均一に供給するためのものであり、したがって、複数のセルを積層して構成されるDMFCにあっては各セル間に配置されるバイポーラ−プレートの一方の面やアノード側のエンドプレートに例えば蛇状に蛇行してかつ連続的に形成されている。なお、バイポーラ−プレートの他方の面やカソード側のエンドプレートには、DMFCの外部から取り入れた酸化剤としての空気を流通させるための空気チャンネルが複数形成されている。なお、空気チャンネルは互いに平行な直線形状の細溝形状に形成してもよい。空気チャンネルを直線形状に形成した場合においては、各プレートにおける燃料チャンネルの直線部分と空気チャンネルの直線部分とが互いに直交するように構成することが好ましい。
したがって、この発明に係るDMFCでは、燃料タンクから予め定められた濃度のメタノール水溶液が燃料チャンネルに供給されると、そのメタノール水溶液の一部は燃料保持部の多孔構造が生じる毛細管力によって燃料保持部に吸い上げられるとともに、その多孔構造中に保持される。また、燃料チャンネルにおける気相のメタノール、燃料保持部および燃料保持部と気液分離膜との間で蒸気化したメタノール、言い換えれば、大気圧下において自然蒸発したメタノールは気液分離膜を透過してアノード側のガス拡散層やアノード側触媒層に供給される。これに加えて、気液分離膜に浸透した液相のメタノールが気液分離膜の表面で蒸気化してアノード側のガス拡散層やアノード側触媒層に供給される。
アノード側触媒層においては、上記の(1)式に示すメタノールの酸化反応が生じてメタノールが電子と二酸化炭素とプロトンとに分解される。その電子は電気回路を移動してカソードに移動し、プロトンは高分子電解質膜を透過してカソードに到達し、二酸化炭素は気液分離膜を透過して燃料チャンネルに移動する。これに対して、カソード側触媒層においては、上述したように、電気回路を移動してきた電子と、高分子電解質膜を透過してきたプロトンと、DMFCの外部から供給された酸素とによって上記の(2)式に示す酸素の還元反応が生じて水が生成される。燃料チャンネルに燃料を供給すると、このようにしてDMFCの発電が開始される。
一方、上記の(1)式に示す酸化反応は発熱反応であるから、その酸化熱が燃料供給装置や燃料チャンネルに熱伝達されることにより、燃料チャンネルや燃料保持部において、また燃料保持部と気液分離膜との間においてメタノールの蒸気が促進される。具体的には、上記の酸化熱が熱伝達されることによってメタノールが蒸発すると、燃料保持部の多孔構造中に形成されているメニスカスが低下するので、それに伴う毛細管力が生じ、その毛細管力をポンプ力として燃料チャンネルを流動する液相のメタノール水溶液が燃料保持部に新たに供給される。そして、メタノール蒸気の供給量が増大すると、その分、(1)式に示す酸化反応も増大するため、これに伴って酸化熱も増大し、その酸化熱の増大に伴ってメタノール蒸気の量も増大する。
他方、DMFCの動作温度、言い換えれば発電温度は一般的に70℃前後となるように設計および構成されており、このような条件下においては、水に比較してメタノールの沸点が低いことから、メタノールの蒸気分圧が高くなる。これに加えて、気液分離膜におけるメタノール蒸気の透過率はその開孔径および開孔率ならびに膜厚によって調整されている。これらの結果、気液分離膜を透過してMEAのアノード側に供給されるメタノール蒸気の供給量はある程度一定となる。そして、MEAの温度がほぼ一定となることにより燃料チャンネルや燃料保持部、あるいは燃料保持部と気液分離膜との間において、液相のメタノールと気相のメタノールとが気液平衡状態となると、蒸気化されるメタノールに量、すなわちMEAに対するメタノール蒸気の供給量の変化がより抑えられ、発電温度および発電量がほぼ一定となる。すなわち、DMFCの出力電力がほぼ一定となる。
このように、この発明に係るDMFCの燃料供給装置では、気液分離膜を設けることにより液相のメタノールに比較して拡散係数の大きなメタノール蒸気のみをアノード側触媒層に供給するように構成されているため、アノード側触媒層に燃料を均一に拡散させて供給することが可能となる。これに加えて、気液分離膜に接触して燃料保持部が設けられており、この燃料保持部がある程度の量の燃料を保持しているため、燃料チャンネルを流動するメタノール水溶液の量が変動したとしても、アノード側触媒層に対するメタノール蒸気の供給量を一定あるいはほほ一定に維持することが可能となり、その結果、DMFCの出力電力をほぼ一定にすることができる。より具体的には、気液分離膜および燃料保持部を透過して燃料チャンネルに排出された二酸化炭素が燃料チャンネルに溜まることによって燃料チャンネルにおける液相のメタノール水溶液の流動が阻害されたとしても燃料保持部の多孔構造が生じる毛細管力によって液相のメタノール水溶液が吸い上げられるため、アノード側触媒層に対するメタノール蒸気の供給量を一定あるいはほぼ一定に維持することができる。更にこれに加えて、カソード側触媒層において生成した水の一部がアノード側に移動したとしても、気液分離膜は液体の透過率が小さいため、上記の生成水が気液分離膜を越えて燃料チャンネルに供給されることを防止もしくは抑制するとともに、過剰な水をカソード側に押し戻すことができる。すなわち、MEAと気液分離膜との間にある程度の水分量を保持してその水をアノード側におけるメタノールの酸化反応に利用することが可能になる。その結果、MEAにおける水分量が不足するいわゆるドライアップや、MEAにおける水分量が過剰となってアノード側に溢れ出すいわゆるフラッディングを防止もしくは抑制することができる。
図5に、MEAの基本的な構成の一例を断面図で示してある。MEA1は電解質として高分子電解質膜2を備え、その表裏両面側に触媒層3,4がそれぞれ設けられている。その高分子電解質膜2には、一例としてパーフルオロスルホン酸系高分子膜(例えばNafion 117(登録商標))やポリベンゾイミダゾールなどを用いることができる。アノード側触媒層3は、前述した(1)式で示したように、触媒の存在下でメタノールと水とを反応させるように構成されており、例えば、チタン、ステンレス(SUS)などによって形成されたメッシュ構造体の表面に触媒として白金およびルテニウムの等量混合物が被覆されて形成されている。
カソード側触媒層4は、前述した(2)式で示したように、触媒の存在下で外部から供給された酸素と、アノードから高分子電解質膜2を透過してきたプロトンと、電気回路を移動してきた電子とを反応させるように構成されており、例えば、チタン、ステンレス(SUS)などによって形成されたメッシュ構造体の表面に触媒として白金が被覆されて形成されている。
これらの触媒層3,4の表面側には、ガス拡散層5,6がそれぞれ設けられている。各ガス拡散層5,6は、各触媒層3,4の表面側に燃料や空気を均一に拡散させて供給するための空隙を確保するためのものであり、導電性の多孔構造とされている。具体的には、カーボンクロスあるいはカーボン繊維をメッシュ構造に編んだものを使用することができ、これに加えて、各ガス拡散層5,6は、液相のメタノールや水が付着することにより、燃料および空気の拡散あるいは流動が阻害されないように撥水処理もしくは親水処理を施すことが好ましい。その親水処理は上記のカーボンクロスあるいはカーボン繊維に酸化スズを含浸させる方法など、従来知られている方法で行えばよい。撥水処理はカーボンクロスあるいはカーボン繊維にフッ素系樹脂をコーティングする方法など、従来知られている方法で行えばよい。
そして、これらのガス拡散層5,6の表面側に集電板7,8が設けられている。集電板7,8は、アノードの触媒反応で生じた電子をカソードに移動させるとともに、発電した電力をMEA1の外部に取り出すためのものであり、したがって集電板7,8は電極としても機能する。そのため、集電板7,8は導電性材料によって構成することが好ましく、これに加えて燃料や空気を触媒層3,4に到達させる必要があるため、一例としてチタンやステンレス(SUS)などの金属製のメッシュ構造体に白金や金などの導電性材料を被覆して構成されている。
そして、上記の電解質膜2および各触媒層3,4ならびに各ガス拡散層5,6そして集電板7,8を積層し、例えばホットプレス機で加熱加圧して一体構造化することによりMEA1が構成される。そして、これをエンドプレート9,10によって挟み込むことによって固定すると、いわゆる単セル型のDMFCが構成される。詳細は図示しないが、アノード側のエンドプレート9には、アノード側触媒層3側に開口し、蛇状に蛇行した細溝形状の燃料チャンネルが連続的に形成されている。この燃料チャンネルに燃料タンク(図示せず)に貯留されているメタノール水溶液が供給されるようになっている。これに対して、カソード側のエンドプレート10には、カソード側触媒層4側に開口した細溝形状の空気チャンネルが互いに平行に複数形成されている。なお、空気チャンネルはエンドプレート10の一方の面と他方の面とを連通する孔形状に形成してもよい。空気チャンネルを互いに平行な細溝形状に形成した場合においては、各空気チャンネルの両端部は外気に対して解放されており、したがって、その端部に外気が導入されることにより、MEA1に外部の空気が供給されるようになっている。また、アノード側エンドプレート9における燃料チャンネルの直線状部分と、カソード側エンドプレート10における空気チャンネルの直線状部分とは互いに直交するように配置させることが好ましい。そして、各集電板7,8に電気回路11を介して負荷12が接続されている。
なお、一つのMEA1を二つのバイポーラ−プレートによって挟み込むように積層化するとともに、その積層化したスタックの表裏両面のそれぞれにMEAを露出させ、これを上記のエンドプレート9,10で挟み込むことによって複数のセルを積層したDMFCを構成することができる。そのバイポーラープレートは、例えば合成樹脂材料もしくは合成樹脂材料と繊維との複合材料(FRP)によって構成することができ、その一方の面に上記の燃料チャンネルを形成し、他方の面に上記の空気チャンネルを形成することができる。このバイポーラ−プレートにおいても、空気チャンネルを互いに平行な細溝形状に形成した場合においては、一方の面に形成される燃料チャンネルの直線状部分と、他方の面に形成される空気チャンネルの直線状部分とをバイポーラ−プレートを挟んで互いに直交させることが好ましい。
図1に、この発明に係る燃料供給装置を適用した単セル型のDMFCの構成の一例を模式的に示してある。MEA1のアノード側に上記のアノード側エンドプレート9が設けられている。アノード側エンドプレート9には細溝形状の燃料チャンネル13が蛇状に蛇行し、かつ連続的に形成されており、その開口部がMEA1側に対向している。このアノード側エンドプレート9とMEA1との間にこの発明に係る燃料供給装置14が設けられている。燃料供給装置14は、液体に比較して気体の透過性が高い気液分離膜15と、燃料チャンネル13を流動する液相の燃料を毛細管力によって吸い上げるとともにこれを保持する燃料保持部16とを備えており、図1に示す例では、MEA1のアノード側に接触して気液分離膜15が設けられており、気液分離膜15とアノード側エンドプレート9との間に、かつこれらに接触して燃料保持部16が設けられている。
気液分離膜15は、上述したように、液相のメタノールと、気相のメタノールとを分離し、かつ気相のメタノールのみをMEA1のアノード側触媒層3に供給するためのものである。気液分離膜15は一例として多孔構造とされており、その開孔径および開孔率ならびに膜厚などが調整されて液体に比較して気体の透過率が高くなるように構成されている。これに加えて、液体が付着することにより気体の透過が阻害されないようにするために、撥水性もしくは疎水性を有する材料によって構成されており、もしくは撥水処理が施されている。更にこれに加えて、気液分離膜15はメタノールと直接接触するものであるから、上記の材料は耐薬品性や耐腐食性を有していることが好ましく、またそのような性質を有する物質が上記の多孔構造体に被覆されて構成されている。気液分離膜15は、図1に示す例では、気体の透過度が50〜200g/m・hの範囲になるように調整されたシリコンゴムシートによって構成されている。
詳細は図示しないが、気液分離膜15は例えばシリコンゴムシートとePTFEとによって構成してもよい。すなわち、気液分離膜15を気体透過性の異なる複数の材料を組み合わせて構成することによりメタノール蒸気の透過率、すなわちMEA1に対するメタノール蒸気の供給量を調整してもよい。具体的には、MEA1のアノード側に直径が1.0μmから4.0μmの範囲の孔が複数形成されかつ空隙率が20〜80%の範囲のePTFE膜を配置し、これを挟んで燃料チャンネル側に気体の透過度が50〜200g/m・hの範囲に調整されたシリコンゴムシートを配置して気液分離膜15を構成してもよい。このような構造の気液分離膜15においては、シリコンゴムシートの表面で蒸気化したメタノールのみがMEA1のアノード側に供給される。したがって、シリコンゴムシートがこの発明に係る気液分離膜における第一の層に相当し、ePTFE膜がこの発明に係る気液分離膜における第二の層に相当する。
燃料保持部16は、上述したように、気液分離膜15に燃料チャンネル13を流動するメタノール水溶液を継続的に供給するためのものであり、一例として毛細管力を生じる多孔構造とされている。その多孔構造体としては多孔質セラミックス、有機高分子多孔質体、金属粉末を焼結させた金属製多孔質体や金属酸化物の多孔質体、織布や不織布などの繊維をメッシュ状に構成したメッシュ構造体などのいわゆるウイックと称される部材を用いることができる。これに加えて、燃料保持部16は上記の気液分離膜15と同様に、耐薬品性や耐腐食性を有するとともに、その内部構造中に液相のメタノール水溶液を保持する必要があるので、メタノールや水との濡れ性が優れているものが好ましい。多孔質体にはメタノールや水との濡れ性を向上させるために親水処理を施してもよく、その親水処理は多孔質体に酸化スズを含浸させる方法など、従来知られている方法であってよい。燃料保持部16は、要は、燃料チャンネル13を流動する液相のメタノールを毛細管力によって吸い上げるとともにその内部構造中にこれを保持することができるように構成されていればよく、銅やカーボンなどによって構成することが好ましい。
MEA1のカソード側に上記のカソード側エンドプレート10が設けられている。図1に示す例では、カソード側エンドプレート10の一方の面と、他方の面とを連通する複数の孔が形成されており、各孔が空気チャンネル17とされている。したがって、空気チャンネル17を介して酸素を含む空気がMEA1のカソード側に供給されるようになっている。
つぎに、上述したように構成した単セル型のDMFCの作用について説明する。燃料タンクから予め定められた濃度のメタノール水溶液が燃料チャンネル14に供給されると、液相のメタノール水溶液は燃料保持部16の多孔構造が生じる毛細管力によって吸い上げられるとともに、その多孔構造中に保持される。また、燃料チャンネル14における気相のメタノールや、燃料保持部16および燃料保持部16と気液分離膜15との間で蒸気化したメタノールは、言い換えれば、大気圧下において自然蒸発したメタノールは気液分離膜15を透過してアノード側ガス拡散層5に到達し、かつ拡散されてアノード側触媒層3に供給される。また、気液分離膜15に浸透して気液分離膜15の表面で蒸気化したメタノールがMEA1のアノード側に供給される。
アノード側触媒層3においては、上記の(1)式に示すメタノールの酸化反応が生じてメタノール蒸気が電子と二酸化炭素とプロトンとに分解される。その電子は電気回路11を移動してカソードに移動し、プロトンは高分子電解質膜2を透過してカソードに到達し、二酸化炭素は気液分離膜15を透過して燃料チャンネル13に移動する。これに対して、カソード側触媒層4においては、上述した電子と、プロトンと、酸素とによって上記の(2)式に示す酸素の還元反応が生じて水が生成される。燃料チャンネル13に燃料を供給すると、このようにしてDMFCの発電が開始される。
一方、上記の(1)式に示す酸化反応は発熱反応であるから、その酸化熱が燃料供給装置14や燃料チャンネル13に熱伝達されることにより、燃料チャンネル13や燃料保持部16において、また燃料保持部16と気液分離膜15との間においてメタノールの蒸発が促進される。具体的には、上記の酸化熱が熱伝達されることによってメタノールが蒸発すると、燃料保持部16の多孔構造中に形成されているメニスカスが低下するので、それに伴う毛細管力が生じ、その毛細管力をポンプ力として燃料チャンネル13を流動するメタノール水溶液が燃料保持部16に新たに供給される。そして、MEA1に対してメタノール蒸気の供給量が増大すると、その分、(1)式に示す酸化反応も増大するため、これに伴って酸化熱も増大し、その酸化熱の増大に伴ってメタノール蒸気の量も増大する。
他方、DMFCの動作温度、言い換えれば発電温度は一般的に70℃前後となるように設計および構成されており、このような条件下においては、水に比較してメタノールの沸点が低いことから、メタノールの蒸気分圧が高くなる。すなわち、気液分離膜15を介して濃縮された気相のメタノールがMEA1に供給される。これに加えて、気液分離膜15におけるメタノール蒸気の透過率は上述したように調整されており、これらの結果、気液分離膜15を透過してMEA1のアノード側触媒層3に供給されるメタノール蒸気の量はある程度一定となる。そして、MEA1の温度がほぼ一定となることにより燃料チャンネル13や燃料保持部16、あるいは燃料保持部16と気液分離膜15との間において、液相のメタノールと気相のメタノールとが気液平衡状態となると、メタノール蒸気の量がほぼ一定となってMEA1に対するメタノール蒸気の供給量の変化がより抑えられ、DMFCの発電温度および発電量がほぼ一定となる。すなわち、DMFCの出力電力がほぼ一定となって安定化する。
つぎに、上述したこの発明に係る燃料供給装置14を適用した単セル型のDMFCの実験機を作成し、その発電特性を評価した。なお、燃料として蒸留水で希釈した50〜80vol%メタノール水溶液を使用し、これを燃料チャンネル13に供給した。その燃料の供給は、ポンプを使用する方法、ウイックを使用する方法、スポイトなどによって手動でかつ断続的に供給する方法など、従来一般的に知られている方法によって行った。MEA1は、従来知られているものと同様の構成のものを用いた。燃料供給装置14における気液分離膜15はシリコンゴムシートとePTFEとを組み合わせて構成した多層構造とした。具体的には、気液分離膜15におけるMEA1に対向する側に、厚さ0.38mm、孔の直径が1.5μm、空隙率が40%のePTFEを配置し、燃料保持部16側に、厚さ0.2mm、孔の直径が0.22μmのシリコンゴムシートを配置した。燃料保持部16として機能させるウイックシートには、膜厚1.0mmのセラミックファイバーを使用し、これを上記のシリコンゴムシートと燃料チャンネル13との間に配置した。
比較例1
上記の実施例1に示すDMFC実験機の構成から、燃料供給装置14を取り外した以外は、上記の実施例1と同様の構成にした。
評価1
実施例1および比較例1の発電特性を図2に模式的に示してある。図2における実線は、上述した実施例1のDMFC実験機の発電特性を示し、一点鎖線は比較例1のDMFC実験機の発電特性を示している。図2に示したように、実施例1のDMFC実験機の発電特性は、比較例1のDMFC実験機の発電特性に比較して、発電のいわゆる立ち上がりが速く、加えて、その発電を開始した直後から出力電流が高いことが認められた。これは、燃料供給装置14をMEA1と燃料チャンネル13との間に設けることにより、濃縮されたメタノール蒸気のみがMEA1に供給され、かつメタノール蒸気の拡散係数が液相のメタノールに比較して高いことにより、アノード側ガス拡散層5において均一に拡散されてアノード側触媒層3に供給されているためであると考えられる。すなわち、アノード側触媒層3の全体に亘ってメタノールの酸化反応が生じていると考えられる。これに加えて、アノード側触媒層3において生成した二酸化炭素が気液分離膜15を介して燃料チャンネル13に排出され、燃料チャンネル13における燃料の流動を阻害していたとしても、気液分離膜15に継続的に燃料が供給されているためであると考えられる。言い換えれば、二酸化炭素がMEA1から効果的に排出されていると考えられる。更にこれに加えて、カソード側触媒層5において生成した水の一部はアノード側触媒層3に移動するが、気液分離膜15がこれを越えてアノード側に生成水を浸透させず、すなわち生成水が燃料チャンネル13に流入することを防止もしくは抑制し、かつ、過剰な生成水をカソード側に押し戻すように機能するとともに、気液分離膜15と高分子電解質膜2との間にアノードの触媒反応に必要十分な水を確保しているためであると考えられる。したがって、この発明に係る燃料供給装置をDMFCのアノード側と燃料チャンネルとの間に設けることにより、DMFCの発電特性を従来になく高くすることができ、その結果、この発明に係る燃料供給装置を備えたDMFCは小型携帯型の機器用電源として優れている。
つぎに、気液分離膜15における気体の透湿度を変化させた場合におけるDMFCの発電特性を評価した。具体的には、気液分離膜15としてシリコンゴムシートのみを使用し、その膜厚を変化させることによりシリコンゴムシートにおける気体の透湿度を変化させた(実施例2ないし6)。図3に、シリコンゴムシートの膜厚と気体の透湿度との関係を測定した結果を示してある。シリコンゴムシートの透湿度はJIS L 1099や、ISO 11092に規定されている測定方法、すなわち繊維製品の透湿度試験方法に基づいて測定した。図3に示したように、シリコンゴムシートの膜厚の増大に伴って気体の透湿度が減少することが認められた。図4に、図3に示した各シリコンゴムシートを気液分離膜15として使用してDMFCを構成した場合における各DMFCの発電特性を示してある。なお、上記の実施例1に示すDMFC実験機の構成において、気液分離膜15を図3に示すシリコンゴムシートにした以外は、上記の実施例1と同様の構成にした。燃料は、上記のウイックシートに含浸させたメタノール水溶液のみとし、追加の燃料の供給は行わなかった。
評価2
図4に示したように、シリコンゴムシートの膜厚が薄く、気体の透湿度が大きいほどDMFCのいわゆる立ち上がりが速いことが認められた。一方で、シリコンゴムシートの膜厚が増大することに伴って気体の透湿度が減少するため、気体の透湿度が小さいほどDMFCの立ち上がりが緩やかになることが認められた。これに加えて、気体の透湿度が小さいほどDMFCの発電時間が長いことが認められ、特に実施例4,5のシリコンゴムシートを使用したDMFC実験機では1Wh以上の発電が認められた。これは、ウイックシートに含浸されている液相のメタノールがDMFCの反応熱によって徐々に蒸気化し、そのメタノール蒸気が徐々にシリコンゴムシートを透過してMEA1に供給されるためであると考えられる。これらの結果は、気液分離膜15の透湿度を調整することによりMEA1に対する燃料の供給量を調整してDMFCの発電量を調整できることを示している。
1…膜・電極接合体(MEA)、 3…アノード側触媒層、 14…燃料供給装置、 15…気液分離膜、 16…燃料保持部。

Claims (6)

  1. メタノール水溶液を燃料とし、そのメタノール水溶液を膜・電極接合体のアノード側に供給する燃料チャンネルが形成されたプレートを備えているダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置において、
    前記膜・電極接合体のアノード側に液体に比較して気体の透過性が高い気液分離膜が設けられ、その気液分離膜と前記プレートとの間に前記メタノール水溶液を保持する燃料保持部が設けられている
    ことを特徴とするダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置。
  2. 前記気液分離膜における気体の透過度は、50〜200g/m2・hの範囲であり、
    前記燃料保持部は、シート状に形成され、かつ毛細管力を生じるウイックを含む
    ことを特徴とする請求項1に記載のダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置。
  3. 前記気液分離膜は、その表面で前記メタノール水溶液を気化させる第一の層と、直径が1.0〜4.0μmの範囲の空孔が複数形成されかつ空隙率が20〜80%の第二の層とを備えている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置。
  4. 膜状に形成された延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、シリコンゴムシートとのいずれか一方によって前記第一の層が構成され、いずれか他方によって前記第二の層が構成されている
    ことを特徴とする請求項3に記載のダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置。
  5. 前記ウイックは、複数の細孔を有する多孔質構造体と、複数の網目を有するメッシュ構造体とのいずれか一つを含む
    ことを特徴とする請求項2に記載のダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置。
  6. 前記多孔質構造体は、親水処理された多孔質セラミックスと、親水処理された有機高分子多孔質体と、金属多孔質体と、金属酸化物多孔質体とのいずれか一つを含む
    ことを特徴とする請求項5に記載のダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置。
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