(1)エンジンの全体構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる多気筒エンジンの全体構成を示す図である。図2は、このエンジンの一部(主に排気マニホールド)を示す図である。図1に示されるエンジンは、走行駆動用の動力源として車両に搭載される往復ピストン型の多気筒エンジンである。このエンジンのエンジン本体1は、所定の方向並ぶ4つの気筒2(図2参照)を有するシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上面に設けられたシリンダヘッド4と、各気筒2に往復摺動可能に挿入されたピストン5とを有している。具体的には、図2の右から順に第1気筒2a、第2気筒2b、第3気筒2c、第4気筒2dが形成されている。本実施形態では、前記エンジンはガソリンエンジンであり、エンジン本体1に供給される燃料は、ガソリンを主成分とする。なお、この燃料は、その中身が、全てガソリンであってもよいし、ガソリンにエタノール(エチルアルコール)等を含有させたものでもよい。
エンジン本体1は4サイクルエンジンであって、各気筒2a〜2dにおいて、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程がそれぞれ180℃Aずつずれるように構成されている(図3参照)。本実施形態では、第1気筒2a→第3気筒2c→第4気筒2d→第2気筒2bの順に点火が行われてこの順に排気行程等が実施される。
ピストン5はコネクティングロッド8を介してクランク軸7と連結されており、ピストン5の往復運動に応じてクランク軸7が中心軸回りに回転する。ピストン5の冠面中央部には、凹状のキャビティ40が設けられている。キャビティ40は、後述するインジェクタ21と対向する上向きの開口部を上端に有しており、この開口部の面積(開口面積)は、キャビティ40の内部の最大断面積(キャビティ40の各高さ位置における水平方向断面積の最大値)よりも小さく設定されている。すなわち、キャビティ40は、その開口部から所定深さまでの範囲において、上方に至るほど内径が狭くなるように上窄まり状に形成されている。
ピストン5の上方には燃焼室6が形成されている。燃焼室6には吸気ポート9および排気ポート10が開口し、各ポート9,10を開閉する吸気弁11および排気弁12が、シリンダヘッド4にそれぞれ設けられている。なお、図例のエンジンはいわゆるダブルオーバーヘッドカムシャフト式(DOHC)エンジンであり、各気筒につき吸気ポート9および排気ポート10が2つずつ設けられるとともに、吸気弁11および排気弁12も2つずつ設けられている。
ここで、当実施形態のエンジン本体1は、理論熱効率の向上や、後述する圧縮自己着火燃焼の安定化等を目的として、14以上という比較的高い幾何学的圧縮比を有するように設定されている。なお、幾何学的圧縮比の上限値は、実用上の観点等から30程度であると考えられるため、エンジン本体1の幾何学的圧縮比は、14以上30以下の範囲の適宜の値に設定される。
エンジンには、各種センサが取り付けられている。例えば、エンジン冷却水の温度を検出するための水温センサSW1、クランク軸7の回転角度(クランク角)ひいてはエンジンの回転数を検出するためのクランク角センサSW2、カムシャフトの角度を検出して気筒判別(各気筒が吸気、圧縮、膨張、排気のいずれの行程にあるかの判別)用の信号を出力するカム角センサSW3、燃焼室に流入する新気の温度を検出するための外気温センサSW4が、エンジン本体1に取り付けられている。
吸気弁11および排気弁12は、それぞれ、シリンダヘッド4に配設された一対のカムシャフト(図示省略)等を含む動弁機構13,14によりクランク軸7の回転に連動して開閉駆動される。
吸気弁11用の動弁機構13には、CVVL15およびVVT(バルブ駆動手段)16がそれぞれ組み込まれている。CVVL15は、連続可変バルブリフト機構(Continuous Variable Valve Lift Mechanism)と呼ばれるものであり、吸気弁11のリフト量を連続的に(無段階で)変更するものである。また、吸気VVT16は、可変バルブタイミング機構(Variable Valve Timing Mechanism)と呼ばれるものであり、吸気弁11の開閉タイミング(位相角度)を可変的に設定するものである。これら吸気CVVL15および吸気VVT16は、エンジンの全ての吸気弁11のリフト量および開閉タイミングを変更できるように設けられており、吸気CVVL15および吸気VVT16の両方が駆動されると、各気筒2において一対の吸気弁11のリフト量および開閉タイミングが同時に変更されるようになっている。
前記のような構成の吸気CVVL15は既に公知であり、その具体例として、吸気弁11駆動用のカムをカムシャフトの回転と連動して往復揺動運動させるリンク機構と、リンク機構の配置(レバー比)を可変的に設定するコントロールアームと、コントロールアームを電気的に駆動することによって前記カムの揺動量(吸気弁11を押し下げる量)を変更するステッピングモータとを備えたものを挙げることができる(例えば特開2007−85241号公報参照)。また、吸気VVT16についても、液圧式、電磁式、機械式など、種々のタイプのものが既に公知であり、その中から適宜のものを採用し得る。
排気弁12用の動弁機構14には、吸気行程中に排気弁12を押し下げる機能を有効または無効にするON/OFFタイプの可変バルブリフト機構(Variable Valve Lift Mechanism)であるVVL(バルブ駆動手段)17が組み込まれている。排気VVL17は、排気弁12を排気行程だけでなく吸気行程でも開弁可能にするとともに、吸気行程中の排気弁12の開弁動作を実行するか停止するかを切り替える機能を有している。排気VVL17は、エンジンの全ての排気弁12に対応して設けられており、かつ、各気筒2の一対の排気弁12に対し、それぞれ個別に、吸気行程中の開弁動作を実行または停止できる。
このような構成の排気VVL17は既に公知であり、その具体例として、排気弁12駆動用の通常のカム(排気行程中に排気弁12を押し下げるカム)とは別に吸気行程中に排気弁12を押し下げるサブカムと、このサブカムの駆動力が排気弁12に伝達されるのを有効または無効にするいわゆるロストモーション機構とを備えたものを挙げることができる(例えば特開2007−85241号公報参照)。
排気VVL17の作用により排気弁12が吸気行程中に開弁することで、排気行程で燃焼室6内からいったん排気ポート10に排出された高温の排気が気筒2すなわち燃焼室6内に逆流し、燃焼室6の高温化が図られるとともに、燃焼室6に導入される空気(新気)の量が低減される。以下では、このような排気弁12の再開弁(吸気行程中の開弁)による高温排気の逆流操作を、後述する外部EGR装置30による排気の還流操作(外部EGR制御)と区別して、排気二度開き制御と称する。また、適宜、排気二度開き制御により逆流した排気を含む燃焼室6内に残留する高温排気を内部EGRガスと称し、外部EGR制御により燃焼室6内に還流した排気(低温排気)を外部EGRガスと称する。
エンジン本体1のシリンダヘッド4には、点火プラグ20およびインジェクタ21が、各気筒2につき1組ずつ設けられている。
インジェクタ21は、燃焼室6をその天井面(燃焼室6を覆うシリンダヘッド4の下面)から臨むように設けられている。各気筒2のインジェクタ21にはそれぞれ燃料供給管23が接続されており、各燃料供給管23を通じて供給される燃料(ガソリンを主成分とする燃料)が前記インジェクタ21の先端部から噴射される。
より具体的に、前記燃料供給管23の上流側には、クランク軸7と連動連結されたプランジャー式のポンプ等からなる高圧燃料ポンプが接続されているとともに、この高圧燃料ポンプと前記燃料供給管23との間には、全気筒に共通の蓄圧用のコモンレールが設けられている。そして、このコモンレール内で蓄圧された燃料が各気筒2のインジェクタ21に供給されることにより、各インジェクタ21から、30MPa以上の高い圧力の燃料が噴射される。なお、燃料噴射圧力の上限値は、実用上の観点等から120MPa程度であると考えられるため、前記インジェクタ21からの噴射圧力は、30MPa以上120MPa以下の範囲の適宜の値に設定される。
また、前記インジェクタ21は、いわゆる多噴口型のインジェクタであり、その先端部に12個の噴口を有している。これらの噴口の設置部(インジェクタ21の先端部)は、燃焼室6天井の中央部に位置しており、各噴口は、その開口方向がボア径方向外側の斜め下方を向くように穿孔されている。このため、燃料は、前記インジェクタ21の各噴口から、ピストン5の冠面(上面)に近づくほどボア径方向外側に拡がるように放射状に噴射される。
点火プラグ20は、各気筒2の燃焼室6を上方から臨むように前記インジェクタ21と隣接して配置されている。この点火プラグ20は、燃焼室6に露出する電極を先端部に有し、図外の点火回路からの給電に応じて前記電極から火花を放電する。
エンジン本体1の吸気ポート9および排気ポート10には、吸気通路28および排気マニホールド50がそれぞれ接続されている。外部からの吸入空気(新気)は、吸気通路28を通じて燃焼室6に供給されるとともに、燃焼室6で生成された排気(既燃ガス)は、排気マニホールド50を通じて外部に排出される。排気マニホールド50の詳細構造については後述する。
吸気通路28は、単一の通路からなる共通通路部28cと、共通通路部28cの下流側端部に設けられたサージタンク28bと、気筒2ごとに分岐して設けられて前記サージタンク28bと各気筒2の吸気ポート9とを接続する分岐通路部28aとを有している。
吸気通路28と排気マニホールド50との間には、この排気マニホールド50を通過する排気の一部を吸気通路28に還流させる外部EGR装置30が設けられている。具体的に、外部EGR装置30は、吸気通路28の各共通通路部28cと触媒装置60の後述するケーシング62の上流端61とを連通させるEGR通路31と、EGR通路31の途中部に設けられ、その内部を通過する排気の流量を制御するEGRバルブ32と、EGR通路31を通過する排気の温度を冷却する水冷式のEGRクーラ33とを有している。
吸気通路28の共通通路部28cには、スロットルバルブ25が開閉可能に設けられている。ただし、当実施形態では、CVVL15により吸気弁11のリフト量が調整され、また、排気VVL17により燃焼室6に残留・逆流する排気の量が調整され、さらには、外部EGR装置30により吸気通路28に還流される排気の量が調整される。したがって、これらの操作に基づいて、スロットルバルブ25を操作することなく、燃焼室6に導入される空気(新気)の量を調整することが可能である。このため、スロットルバルブ25は、エンジンの停止時等を除いて、全開もしくはそれに近い値に維持される。
(2)排気マニホールドの構成
排気マニホールド50の詳細について次に説明する。排気マニホールド50は、上流側から順に、3つの独立排気通路52と、可動部51と、触媒装置60とを備えている。ここで、排気マニホールド50のうち可動部51の後述する絞り部53よりも下流の部分が、共通排気通路50a(図2参照)を構成する。具体的には、この実施形態では、可動部51のうちの集合部58と、触媒装置60とが、共通排気通路50aを構成する。
(2−1)独立排気通路52の構成
図2に示すように、各独立排気通路52は、シリンダヘッド4に形成された各気筒2の排気ポート10に接続されている。具体的には、気筒2のうち第1気筒2aの排気ポート10と第4気筒2dの排気ポート10とは、それぞれ個別に独立排気通路52,52に接続されている。一方、排気行程が隣り合わず排気順序が連続しない第2気筒2bと第3気筒2cの排気ポート10は、これら各気筒2b,2cから同時に排気が排出されることがないため、構造を簡素化する観点から、二股状に形成された1つの独立排気通路52に接続されている。詳細には、この第2気筒2bと第3気筒2cの排気ポート10に接続されている独立排気通路52は、その上流側において2つの通路に分離しており、その一方に第2気筒2bの排気ポート10が接続され、他方に第3気筒2cの排気ポート10が接続されている。
本実施形態では、第2気筒2bおよび第3気筒2cの排気ポート10に対応する独立排気通路52は、これら気筒2b,2cの中間位置すなわちエンジン本体1の略中央部分と対向して直線的に延びており、他の気筒2a,2dの排気ポート10に対応する独立排気通路52は、対応する各排気ポート10と対向する位置から第2気筒2bおよび第3気筒2cに対応する独立排気通路52に向かって湾曲して延びている。
図5は、図2のV−V線断面図である。この図5に示されるように、独立排気通路52の下流端52aの断面形状、すなわち、この下流端52aの開口形状は円形であり、これら円形の下流端52aは、車両後方に向かって斜め下方に延びる軸線L(図2参照)上の点O1を中心とする円の円周上に互いに等間隔に配列されている。
(2−2)可動部51の構成
図2等に示すように、可動部51は、二重管構造であって、円筒状の収容管51aの内側に絞り部53と集合部58とが収容された構造を有している。絞り部53と集合部58とは、上流からこの順序で収容されている。収容管51aは、車両後方に向かって斜め下方に延びる軸線Lを中心軸として後ろ斜め下方に延びている。以下、この収容管51aの軸線Lを単に軸線Lと呼ぶ場合がある。
(2−2−1)絞り部53の構成
図6は、絞り部53の後述する外管55が最も上流側の位置にある状態(以下、この位置を流路面積最小位置という)における可動部51付近を拡大して示した断面図である。図7(a)は、図6のVII−VII線断面図のうち絞り部53のみを示した図である。図7(b)は、図7(a)のうち絞り部53の後述する内管54のみを示した図である。図7(c)は、図7(b)のうち外管55のみを示した図である。図8(a)は、図6のVIII−VIII線断面図のうち絞り部53のみを示した図である。図8(b)は、図8(a)のうち内管54のみを示した図である。図8(c)は、図8(b)のうち外管55のみを示した図である。図9は、図6のIX−IX線断面図のうち絞り部53のみを示した図である。
図10は、図6に対応する図であって、外管55が前記流路面積最小位置よりも下流側に設定された流路面積最大位置にスライドした状態における可動部51付近を拡大して示した断面図である。図11は、図9に対応する図であって、図10のIX−IX線断面図のうち絞り部53のみを示した図である。
絞り部53は、内管54と外管55とを有する。
内管54は、上下流方向に延びる管状部材である。内管54の内側には、上下流方向に延びる3つの第1通路54aが形成されている。内管54の外形は、その上流側部分が収容管51aの軸線Lを中心軸とする円筒形をなし、その下流側部分が前記軸線Lを中心として下流に向かうに従って縮径する略円錐台形状をなすように構成されている。すなわち、内管54の外周面54gは、その上流側部分に設けられて軸線Lと平行に延びる円筒面54g_1と、その下流側部分に設けられて下流に向かうに従って軸線L側に傾斜する内管側傾斜面54g_2(内管側傾斜部)とからなる。内管54の下流端の外周面54gの径は、例えば、内管54の上流端の外周面54gの径の約半分に設定されている。
各第1通路54aは、軸線Lを中心軸とする円筒の円筒面上に互いに等間隔に並んでいる。各第1通路54aは、その内周面のうち軸線L側の部分がこの軸線Lに沿って延びる一方、その内周面のうち軸線Lから径方向に離間した側の部分が、内管54の外周面54gに沿って延びる形状を有している。この形状に伴い、各第1通路54aの流路面積は、下流側ほど小さくなっている。
具体的には、各第1通路54aの上流端54bは、図7(a)、(b)に示すように、それぞれ円形をなしている。一方、各第1通路54aの下流端54cは、図8(a)、(b)に示すように、1つの円を三分割した略扇形状をなしており、その面積は、前記円形の上流端54bの面積よりも小さい面積に設定されている。そして、各第1通路54aは、その円形の上流端54bから下流側に、所定量、同一流路面積で延びた後、この上流端54bよりも流路面積の小さい下流端54cに向かって徐々に縮径しつつ延びている。本実施形態では、第1通路54aの下流端54c全体で構成される円の径と、各第1通路54aの上流端54bの円の径とはほぼ同じ寸法に設定されている。
内管54は、各第1通路54aの円形の上流端54bが、それぞれ前記各独立排気通路52の下流端52aと一致するように配置されている。そのため、各独立排気通路52の下流端52aから排出された排気は、対応する各第1通路54a内に個別に(独立して)流入する。
内管54の管壁のうち各第1通路54aに対応する部分には、これら第1通路54aと内管54の外側とを連通する連通口54dが形成されている。各連通口54dは、内管54の外周面54gのうち内管側傾斜面54g_2に開口しており、下流に向かって開口している。本実施形態では、各連通口54dは、略円形である。
内管54の管壁には、各第1通路54a間に対応する部分に、それぞれ内管54の外周面54gから軸線Lに向かって延びるとともに、上下流方向に延びる溝54eが形成されている。
外管55は、上下流方向に延びる管状部材である。この外管55の内側には1つの通路が形成されており、この通路内に内管54が収容されている。外管55の内周面55gは、外管55が図6に示す流路面積最小位置にある状態において、内管54の外周面54gに沿って延びている。すなわち、外管55の内周面55gは、その上流側部分に設けられて前記軸Lと平行に延びる円筒面55g_1と、その下流側部分に設けられて下流に向かうに従って軸L側に傾斜する外管側傾斜面55g_2(外管側傾斜部)とからなる。外管55の外管側傾斜面55g_2は、外管55が流路面積最小位置にある状態において、内管54の内管側傾斜面54g_2に接触するように延び、この状態において、前記各連通口54dを塞ぐように構成されている。
図12に、外管55の一部の斜視図を示す。この図12および図7(a)等に示すように、外管55には、内管54の各溝54eに対応して、その内周面55gから軸線Lに向かって延びるとともに上下流方向に延びる区画壁55eが形成されている。これら区画壁55eは、各溝54e内に挿入されている。
外管55は、内管54に対して下流側に相対移動可能である。本実施形態では、内管54は動かず、外管55が軸線Lと平行に上下流方向にスライドする。なお、本実施形態では、外管55は、前記集合部58と一体に形成されており、集合部58とともに上下流方向にスライドする。
具体的には、図2に示すように、外管55の外周面には、スライドアクチュエータ(通路状態変更手段)55fが取り付けられている。スライドアクチュエータ55fは、後述するECU100の指令を受けて、外管55を軸線Lと平行に、図6に示す流路面積最小位置と、この流路面積最小位置よりも下流側の位置である図10に示す流路面積最大位置との間でスライドさせる。このとき、外管55の各区画壁55eは、内管54の各溝54e内をスライドする。
図6に示す流路面積最小位置において、外管55は、内管54の上流端から下流端まで延びる。前述のように、この状態において、外管55の内周面55gは、内管54の外周面54gと接触して、連通口54dを塞ぐ。連通口54dが塞がれると、各独立排気通路52から排出された排気は、絞り部53のうち第1通路54aのみを通過して流下する。このように、外管55が流路面積最小位置にある状態(第1状態)では、絞り部53内に形成されて各独立排気通路52から排出された排気が通過可能なガス通路は、第1通路54aのみで構成され、ガス通路の流路面積は最小面積となる。
一方、外管55が前記流路面積最小位置から図10に示す流路面積最大位置にスライド移動した状態(第2状態)では、外管55の内周面55gは内管54の外周面54gから下流側および径方向外側(軸線Lから離れる方向)に離間する。この離間に伴い、前記各連通口54dは開口され、外管55の内周面55gと内管54の外周面54gとの間には第2通路55aが出現する。
図11に示されるように、外管55の各区画壁55eが内管54の各溝54e内に挿入されていることで、外管55の内周面55gと内管54の外周面54gとの間には、区画壁55eによって、3つの第2通路55aが区画される。各第2通路55aは、各第1通路54aの径方向外側にそれぞれ位置して、各連通口54dを介して第1通路54aと連通する。
このように外管55が図10に示す流路面積最大位置にスライドした状態において、絞り部53内に形成されるガス通路は、第1通路54aと第2通路55aとによって構成される。そして、各独立排気通路52から排出された排気は、第1通路54aに流入した後、その一部が連通口54dを介して第2通路55a内にも流入するようになる。このように、外管55が流路面積最大位置にある状態では、各ガス通路の流路面積は最小面積よりも大きくなる。
第2通路55aの流路面積ひいては絞り部53内のガス通路の流路面積は、外管55の下流側へのスライド量が大きくなるほど大きくなる。具体的には、外管55が下流側へスライドするほど、外管55の内周面55gと内管54の外周面54gとの離間量は大きくなり、それに応じて第2通路55aおよびガス通路の流路面積は大きくなる。
ここで、図10に示す流路面積最大位置にある状態において、外筒55は最も下流側に位置しており、第2通路55aおよびガス通路の流路面積は最大面積となる。この状態において、外管55の上流端は、内管54のうち円筒状を有する上流側部分の下流端に位置し、外管55は、この位置から下流側に延びている。
本実施形態では、前記スライドアクチュエータ55fは、外管55の位置を、流路面積最小位置と、流路面積最大位置とのいずれかに切り替える。これにより、ガス通路の流路面積は、最小面積と最大面積とに切り替えられる。
(2―2−2)集合部58の構成
集合部58は、各独立排気通路52から排出されて絞り部53を通過した排気が合流する部分である。外管55の位置に関わらず、各独立排気通路52から排出されて絞り部53の各ガス通路に流入した排気は、この集合部58内に流入する。
なお、図10に示すように、外管55が流路面積最大位置にある状態では、外管55は内管54よりも下流側に延びており、第1通路54aを通過した排気は、外管55の内側に流入して第2通路55aを通過した排気と合流した後、集合部58内に流入する。
集合部58は、図6等に示すように、上流側から順に、ノズル部58a、混合部58b、ディフューザー部58cを備えている。本実施形態では、前述のように、集合部58は外管55と一体にスライド可能に連結されており、ノズル部58aは、外管55の下流端に一体に連結されてこの下流端から下流に延びている。
後述するように、本ガソリンエンジンでは、所定の運転領域(第1運転領域A1)において、絞り部53からノズル部58a内に高速で排気を排出させてエゼクタ効果を発揮させるよう構成されている。そのため、ノズル部58aの形状は、絞り部53から排出された排気が高い速度を維持したまま流下するように、下流側ほどその流路面積が小さくなる形状に設定されている。本実施形態では、ノズル部58aは、下流に向かうに従って縮径する略円錐台形状を有している。また、ノズル部58aの内周面は、絞り部53から流出した排気がこの内周面に沿って円滑に流下するように、外管55の下流側部分の内周面すなわち外管側傾斜面55g_2に連続して、下流に向かうに従って軸線Lに近づく方向に傾斜している。このノズル部58aの軸線Lに対する傾斜角度は、前記外管55の外管側傾斜面55g_2の傾斜角度とほぼ同じに設定されている。
混合部58bは、ノズル部58aの下流端から下流側に延びる円筒形状を有しており、ノズル部58aの下流端の開口と同じ流路面積を有している。ディフューザー部58cは、この混合部58bの下流端から下流に向かうに従って流路面積が拡大する略円錐台形状を有している。
このようにノズル部58aと混合部58bとで構成される部分では、上流側の流路面積の方が下流側よりも大きい。そのため、排気はこのノズル部58aと混合部58bとを高速で通過する。この通過時に、排気の圧力・温度は低下する。従って、ノズル部58aおよび混合部58bにおいて、排気の外部への放熱量は少なく抑えられる。そして、混合部58bを通過した排気は、下流に向かうに従って流路面積が拡大するディフューザー部58cに流入することで、その圧力・温度が回復され、高い温度を維持したまま下流側に排出される。
また、前述のように、本実施形態では、集合部58および絞り部53は、中空の収容管51a内に挿入されている。そのため、これら集合部58および絞り部53の通過時における排気の外部への放熱はより一層抑制され、集合部58からは高い温度の排気が下流側に排出される。
(2−3)触媒装置60の構成
図1に示すように、触媒装置60は、エンジン本体1から排出された排気を浄化するための装置である。この触媒装置60は、触媒本体(触媒)64とこの触媒本体64を収容するケーシング62とを備えている。ケーシング62は排気の流れ方向と平行に延びる略円筒状を有している。触媒本体64は、排気中の有害成分を浄化するためのものであり、理論空燃比の雰囲気下で三元触媒機能を有する。この触媒本体64は、例えば、三元触媒を含有する。
触媒本体64は、ケーシング62の上下流方向の中央部分に収容されており、このケーシング62の上流端61には所定の空間が形成されている。集合部58の下流端、詳細には、ディフューザー部58cの下流端はこのケーシング62の上流端61に接続されており、ディフューザー部58cから排出された排気はこのケーシング62の上流端61に流入した後、触媒本体64側へ進行する。
前述のように、集合部58からは、高い温度の排気が下流側に排出される。そのため、このように集合部58に直接触媒装置60が接続されていることで、触媒装置60内には高温の排気が流入し、これにより、触媒本体64は早期活性化される、また、触媒本体64の活性状態が確実に維持される。
(3)排気マニホールド50の作用
外管55が流路面積最小位置にある第1状態では、前述のように、絞り部53内のガス通路は、下流ほど流路面積が小さくなる形状を有する第1通路54aのみで構成され、その流路面積は最小とされる。そのため、この第1状態では、各独立排気通路52から各第1通路54aに流入した排気は、第1通路54aの通過途中でその速度が高められ、高速でノズル部58a内に流入する。特に、本実施形態では、ノズル部58aも、下流ほど流路面積が小さくなる形状を有している。そのため、各独立排気通路52から排出された排気は、ノズル部58aにおいてもその速度を高く維持したまま流下する。この第1状態では、このようにノズル部58a内を所定の第1通路54aから排出された排気が高速で通過する結果、エゼクタ効果によって、隣接する他の第1通路54a内およびこれと連通する独立排気通路52および排気ポート10内に比較的高い負圧量の負圧が生成される。
一方、外管55が流路面積最大位置にある第2状態では、絞り部53内のガス通路は、第1通路54aと第2通路55aとで構成されて、その流路面積が最小面積よりも大きくされる。そのため、この第2状態では、各独立排気通路52から各第1通路54aに流入した排気は、ガス通路内で膨張し、その速度が低く抑えられた状態でノズル部58a内に流入する。この結果、この第2状態では、絞り部53内のガス通路での抵抗が抑えられ、また、前記エゼクタ効果による負圧量は少なく抑えられる。
このように、本実施形態では、外管55の位置が変更されることによって、排気マニホールド50内の排気の流通状態が、エゼクタ効果によって他の独立排気通路52内に負圧が生成されるように、各独立排気通路52内の排気が、互いに近接し、かつ、流路面積が下流側ほど小さくなる通路をそれぞれ個別に通って共通排気通路50a(本実施形態では、共通排気通路のうちの集合部58)に流入する第1状態と、各独立排気通路52内の排気が第1状態よりも流路面積の大きい通路を通過して共通排気通路に流入する第2状態とに変更され、これにより、各状態におけるエゼクタ効果によって所定の独立排気通路52内に生成される負圧量が変更される。
(4)制御系
図4は、エンジンの制御系を示すブロック図である。この図4に示されるECU(制御手段)100は、エンジンの各部を統括的に制御するための装置であり、周知のCPU、ROM、RAM等から構成されている。
ECU100には、エンジンに設けられた各種センサから種々の情報が入力される。ECU100は、エンジンに設けられた水温センサSW1、クランク角センサSW2、カム角センサSW3、および外気温センサSW4等と電気的に接続されており、これら各センサSW1〜SW4からの入力信号に基づいて、エンジンの冷却水温、クランク角、エンジン回転数、気筒判別情報、および新気の温度といった種々の情報を取得する。
また、ECU100には、車両に設けられた各種センサからの情報も入力される。例えば、車両には、運転者により踏み込み操作される図外のアクセルペダルの開度(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサSW5が設けられており、このアクセル開度センサSW5により検出されたアクセル開度が、ECU100に入力される。
ECU100が有するより具体的な機能について説明する。ECU100は、その主な機能的要素として、判定手段101、インジェクタ制御手段102、吸気制御手段103、排気二度開き制御手段104、外部EGR制御手段105、および、点火制御手段106、アクチュエータ制御手段107、を有している。
判定手段101は、クランク角センサSW2の検出値から特定されるエンジン回転数と、アクセル開度センサSW4の検出値から特定されるエンジン負荷(目標トルク)とに基づいて、エンジンをどのような態様で制御すべきかを都度判定するものである。なお、以下では、エンジン回転数をNe、エンジン負荷をTとする。
図13は、エンジン回転数Neおよび負荷Tに基づき決定される制御の種類を区分けして示す設定図(制御マップ)である。エンジンの運転中、判定手段101は、この図13の制御マップに従うようにエンジンの制御内容を決定する。
図13の制御マップにおいて、負荷Tが基準負荷T1よりも低い領域(低負荷域)には、低速域(エンジン回転数が所定の回転数よりも低い領域)を含む全エンジン回転数域にわたって第2運転領域A2が設定されている。第2運転領域A2よりも負荷Tが高い中高負荷域には、第1運転領域A1と、第3運転領域A3とが設定されている。第3運転領域A3は、中高負荷領域のうちエンジン回転数Neが基準回転数N1以上であり、かつ、負荷Tが全負荷付近の高速高負荷領域からなる。第1運転領域A1は、中高負荷領域のうち第3運転領域A3を除く領域からなり、低速高負荷領域A1_1と中負荷領域A1_2とを含む。
再び図4に戻って、インジェクタ制御手段102は、インジェクタ21に内蔵された図外のニードル弁(インジェクタ21の先端部の噴口を開閉する弁)を電磁的に開閉することにより、インジェクタ21から燃焼室6に噴射される燃料の噴射量や噴射時期を制御する。
吸排気制御手段103は、吸気CVVL15および吸気VVT16を駆動することにより、吸気弁11のリフト量(開弁量)および開閉タイミングを変更するとともに、排気VVL17を駆動することにより排気弁12の開閉タイミングを変更する制御を行う。
排気二度開き制御手段104は、排気VVL17を駆動して排気弁12の吸気行程中の開弁を実行または停止することにより、燃焼室6内に高温の排気を逆流させる操作(排気二度開き制御)の実施/停止を切り替える。なお、当実施形態において、排気弁12は1気筒あたり2つ設けられているので、吸気行程中に開弁する排気弁12の数を0,1,2の間で切り替えることにより、燃焼室6に逆流する排気の量を段階的に変化させることが可能である。
外部EGR制御手段105は、EGR通路31に設けられたEGRバルブ32の開度を調節することにより、排気通路29から吸気通路28に排気を還流する操作(外部EGR制御)の実施/停止を切り替える。
点火制御手段106は、点火プラグ20による火花点火のタイミング(点火時期)等を制御する。
(5)各運転領域での制御内容
次に、以上のような機能を有するECU100の制御に基づき、図13に示した各運転領域(A1,A2,A3)で、それぞれどのような制御が実施されるのかを説明する。ECU100は、クランク角センサSW2およびアクセル開度センサSW4の各検出値に基づいて、エンジンの運転点(負荷Tおよび回転数Ne)が図13の制御マップにおけるどの運転領域に該当するかを逐次判定する。そして、判定された運転領域が、図13中の第1運転領域A1と第2運転領域A2と第3運転領域A3のいずれであるかに応じて、それぞれ以下のような制御を実行する。
(5−1)第2運転領域A2
低負荷領域からなる第2運転領域A2では、点火プラグ20による混合気の点火は停止されて、十分に混合された燃料と空気の混合気をピストン5の圧縮作用によって自着火させる、リーンHCCI燃焼(Homogeneous−Charge Compression Ignition Combustion、予混合圧縮自己着火燃焼)モードが実行される。
図14は、リーンHCCI燃焼モードが実行された際の、燃料噴射時期と吸排気弁12,12のリフト特性、およびそれに基づく燃焼により生じる熱発生率(J/deg)を示す図である。この図14に示すように、このリーンHCCI燃焼モードでは、圧縮上死点(圧縮行程と膨張行程の間のTDC)よりも十分に早いタイミングで燃料が噴射され、燃料と空気の混合が十分に混合された圧縮上死点付近においてこの混合気をピストン5の圧縮作用によって自着火させる。
具体的に、当実施形態において、このリーンHCCI燃焼モードで運転されているときには、吸気行程中の所定時期にインジェクタ21から燃焼室6に対し比較的少量の燃料が噴射(P)され、この1回の燃料噴射Pにより一括噴射された少量の燃料と、吸気通路28から燃焼室6に導入される空気(新気)とに基づき形成される均質でかつリーンな混合気が、ピストン5の圧縮作用により高温、高圧化し、圧縮上死点付近で自着火する。すると、このような自着火に基づき、波形Qaに示すような熱発生を伴う燃焼が生じることになる。
リーンHCCI燃焼モードでは、燃焼室6内に噴射される燃料重量Fに対する燃焼室6内の全ガスの重量Gの割合であるG/Fが、30以上(例えば35)となるように設定される。ただし、このように大幅にリーンでかつ均質な空燃比下では、燃焼室内の温度を意図的に上昇させないと、失火が起きるおそれがある。前述のように、本ガソリンエンジンでは、エンジン本体1の幾何学的圧縮比が14以上と高い値に設定されており、ピストン5の圧縮作用により燃焼室6内の温度をある程度まで高めることができるが、本エンジンでは、燃焼室6内の温度が低い低負荷領域においてより安定した燃焼を実現するために、燃焼室6(気筒2)内に残留する高温の排気すなわち高温の内部EGRガス量を多く確保する制御が実施される。
具体的には、第2運転領域A2では、排気二度開き制御が実施されて、排気ポート10側に流出した高温の排気が燃焼室6内に逆流させられる。すなわち、排気VVL17が駆動されて、排気弁12が、排気行程に開弁するとともに(図14のリフトカーブEX)、吸気行程でも開弁する(図14のリフトカーブEX’)。
このように、高温の排気が燃焼室6に逆流することで、燃焼室6内に残留する高温の排気すなわち高温の内部EGRガスが多く確保される。そして、これにより燃焼室6内の混合気の温度が高温化される結果、混合気の自着火が促進される。なお、内部EGRガス量は、低負荷側ほど多く、高負荷側ほど少なく設定される。そのための制御として、例えば、第2運転領域A2における低負荷域(無負荷に近い領域)では、吸気行程中に開弁する排気弁12の数が2つとされ、それよりも負荷が高くなると、開弁数が1つに減らされる。
また、第2運転領域A2では、絞り部53の外管55の位置が流路面積最大位置とされて、排気マニホールド50内の排気の流通状態が第2状態、すなわち、絞り部53内の各ガス通路の流路面積が最大面積になる状態とされる。このような制御を実施するのは、次の理由に基づく。
前述のように、第2運転領域A2では、内部EGRガス量をより多く確保するために吸気行程中に排気弁12が再開弁される。図3に示すように、所定の気筒(吸気行程気筒)2の吸気行程と、この吸気行程気筒2よりも排気行程が1つ後の気筒(排気行程気筒)2の排気行程とは一致する。従って、吸気行程気筒2において吸気弁11に加えて排気弁12が再開弁されている期間中、排気行程気筒2内の排気は、絞り部53を通ってノズル部58aへと排出される。
前述のように、絞り部53の外管55の位置が流路面積最小位置であって排気マニホールド50内の排気の流通状態が第1状態にある場合は、所定の気筒2から排出された排気が第1通路54aを通過する際に、エゼクタ効果によって、他の気筒2の排気ポート10内に高い負圧が生成する。そのため、排気弁12の再開弁制御の実施時に、このように絞り部53の外管55の位置が流路面積最小位置とされて排気マニホールド50の排気の流通状態が第1状態とされていると、排気弁12が再開弁している気筒(吸気行程気筒)2の排気ポート10に、排気行程気筒2の排気により生成された高い負圧が作用して、吸気行程気筒2の排気ポート10内の排気が下流側に吸い出されてしまい、吸気行程気筒2内に逆流する排気の量すなわち内部EGRガス量を十分に確保できなくなる。これに対して、前述のように、絞り部53の外管55の位置を流路面積最大位置とし排気マニホールド50を第2状態とすれば、エゼクタ効果による負圧量は少なく抑えられる。
そこで、本エンジンでは、第2運転領域A2では、内部EGRガス量を多く確保するために、エゼクタ効果により生じる負圧による気筒2および排気ポート10内の排気の下流側への吸出しを抑制するべく、絞り部53の外管55の位置を流路面積最大位置として排気マニホールド50内の排気の流通状態を第2状態とする。
また、第2運転領域A2では、低温の外部EGRガスの燃焼室6内への多量の還流により燃焼室6内の温度が低下するのを回避するべく、第1運転領域A1との境界付近すなわち第2運転領域A2のうちの高負荷側の領域を除き外部EGR制御は停止される。具体的には、第2運転領域A2のうちの高負荷側の領域では、EGR通路31に設けられたEGRバルブ32が開弁されて、排気通路29から吸気通路28への比較的低温の外部EGRガスの還流が行われ、第2運転領域A2のその他の領域ではEGRバルブ32の開度は全閉とされて、外部EGRガスの還流は停止される。
以上のようにして、第2運転領域A2では、内部EGRガス量が多く確保され、G/Fが30以上という大幅にリーンの混合気が確実に自着火可能な温度にまで高められる。そして、この混合気の自着火燃焼により、NOxの発生が抑制されつつ、燃焼温度ひいては冷却損失の低減に伴う高い熱効率(燃費)が実現される。
(5−2)第1運転領域A1および第3運転領域A3
高負荷域に設定された第1運転領域A1および第3運転領域A3では、多量の燃料が噴射されて燃焼室6内の温度が高温となるため、圧縮自己着火燃焼を行わせようとすると、燃焼騒音が著しく増大する、また、ノッキングが生じるという問題がある。そこで、この第1運転領域A1および第3運転領域A3では、圧縮自己着火燃焼に代わり、混合気に点火して火炎伝播させる火花点火燃焼(SI燃焼)を実施する。
ここで、SI燃焼においても、燃焼室6内の温度が過度に高い場合には、ノッキングが生じる。特に、本ガソリンエンジンでは圧縮比が非常に高い値に設定されている。そのため、燃焼室6内の温度は高くなりやすく、燃焼騒音およびノッキングの問題が顕著になる。
そこで、本エンジンでは、第1運転領域A1および第3運転領域A3において、燃焼室6内の温度の高温化を抑制するべく、燃焼室6内に残留する高温の内部EGRガス量を少なく抑える制御が実施される。
具体的には、第1運転領域A1および第3運転領域A3では、排気二度開き制御が停止されて、排気ポート10側に流出した高温の排気の燃焼室6内への逆流が停止される。具体的には、排気弁12が排気行程中のみに開弁するよう、排気VVL17が調整される。また、吸気弁11、排気弁12および排気マニホールド50内の排気の流通状態が、以下に示す通り、第1運転領域A1と第3運転領域A3とにおいて、それぞれ、内部EGRガス量を少なく抑えることのできる適切な状態に調整される。
(i)第1運転領域A1における吸気弁11等の制御方法
第1運転領域A1では、外管55の位置が流路面積最小位置とされて、排気マニホールド50内の排気の流通状態が第1状態に、すなわち、絞り部53内の各ガス通路の流路面積が最小面積となる状態とされるとともに、図3に示すように、排気弁12の開弁期間と吸気弁11の開弁期間とが、吸気上死点(TDC)を挟んでオーバーラップし、かつ、排気弁12が他の気筒2のオーバーラップ期間T_O/L中に開弁を開始するように調整される。詳細には、第1気筒2aの吸気弁11と排気弁12とがオーバーラップしている期間中に第3気筒2cの排気弁12が開弁し、第3気筒2cの吸気弁11と排気弁12とがオーバーラップしている期間中に第4気筒2dの排気弁12が開弁し、第4気筒2dの吸気弁11と排気弁12とがオーバーラップしている期間中に第2気筒2bの排気弁12が開弁し、第2気筒2bの吸気弁11と排気弁12とがオーバーラップしている期間中に第1気筒2aの排気弁12が開弁するよう調整される。なお、本エンジンにおいて、前記吸気弁11および排気弁12の開弁時期、閉弁時期とは、それぞれ、図15に示すように、各弁11,12のリフトカーブにおいてリフトが急峻に立ち上がるあるいは立ち下がる時期であり、例えば0.4mmリフトの時期をいう。このような制御を実施するのは、次の理由に基づく。
前述のように、絞り部53の外管55の位置が流路面積最小位置であって排気マニホールド50が第1状態にある場合、所定の気筒2から排出された排気が第1通路54aを通過する際に、エゼクタ効果によって、他の気筒2の排気ポート10内に高い負圧が生成する。そのため、排気弁12の開弁期間と吸気弁11の開弁期間とが、吸気上死点(TDC)を挟んでオーバーラップし、かつ、排気弁12が他の気筒2のオーバーラップ期間T_O/L中に開弁を開始するように調整されていれば、所定の気筒(排気行程気筒)12の排気弁12が開弁してこの排気行程気筒2から排気が高速で排出されるのに伴い、オーバーラップ期間中にある吸気行程中の気筒(吸気行程気筒)の排気ポート10内に高い負圧を生成することができる。そして、この負圧によって吸気行程気筒2内の残留ガスを排気ポート10側へ吸い出すことができる。特に、排気弁12の開弁開始直後は気筒2から非常に高速で排気(いわゆるブローダウンガス)が排出されるため、このブローダウンガスが排出された直後には、吸気行程気筒2内の残留ガスの多くを排気ポート10側に吸い出すことができる。
そこで、本エンジンでは、第1運転領域A1において、内部EGRガス量を少なく抑えるためにエゼクタ効果により生じる負圧によって気筒2および排気ポート10内の排気の排気ポート10側への吸出しを促進するべく、前述のように、絞り部53の外管55の位置を流路面積最大位置として排気マニホールド50内の排気の流通状態を第2状態とするとともに、排気弁12と吸気弁11とをオーバーラップさせ、かつ、排気弁12を他の気筒2のオーバーラップ期間T_O/L中に開弁させる。
以上のようにして、本エンジンでは、第1運転領域A1において、排気二度開き制御の停止およびエゼクタ効果により生じる負圧の利用によって内部EGRガス量が少なく抑えられて燃焼室6内の混合気の過度の高温化が回避される。そして、第1運転領域A1において、異常燃焼および燃焼騒音の悪化が確実に回避され、適正な燃焼が実現される。
ここで、第1運転領域A1のうち低速高負荷領域A1_1では、高いエンジントルクを得るために新気量を多く確保する必要がある。そこで、低速高負荷領域A1_1では、外部EGR制御は停止される。具体的には、EGRバルブ32が閉弁されて低温の外部EGRガスの吸気通路28内への流入が停止される。前述のように、第1運転領域A1において、エゼクタ効果等により内部EGRガス量は少なく抑えられている。そのため、低速高負荷領域A1_1では、外部EGRガスを含まない吸気すなわち新気が多量に燃焼室6内に流入し、異常燃焼および燃焼騒音の悪化を回避しつつ、高いエンジントルクが実現される。なお、本実施形態では、前述のように異常燃焼(ノッキング)が抑制されるのに伴って点火時期の進角化が可能となり、この進角化によっても高いエンジントルクを得ることが可能となる。
一方、第1運転領域A1のうち中負荷領域A1_2では、要求される新気量は少ない。そのため、この中負荷領域A1_2では、吸気のポンピングロスの低減、および、冷却損失の低減により、高い熱効率すなわち良好な燃費性能を得るべく、また、NOxを低減するべく、外部EGR制御が実施される。具体的には、EGRバルブ32が開弁されて、EGRクーラ33によって冷却された排気(外部EGRガス)が燃焼室6内へ還流される。なお、中負荷領域A1_2において、吸気弁11の開弁期間と排気弁12の開弁期間とのオーバーラップ量は、低速側の方が高速側よりも少なくなるように調整される。
(ii)第3運転領域A3における吸気弁11等の制御方法
高速高負荷領域からなる第3運転領域A3では、吸気弁11の開弁期間と排気弁12の開弁期間とのオーバーラップ量が、第1運転領域A1よりも少なくなるように調整される。また、第3運転領域A3では、外管55の位置が流路面積最大位置とされて、絞り部53内の各ガス通路の流路面積が最大面積とされ、排気マニホールド50内の排気の流通状態が第2状態とされる。
第3運転領域A3では、エンジン回転数Neおよびエンジン負荷Tが高いことに伴い排気流量が大きい。そのため、第1運転領域A1のように、吸気弁11と排気弁12とをオーバーラップさせ、外管55の位置を流路面積最小位置として絞り部53内の各ガス通路の流路面積を小さい面積としたのでは、エゼクタ効果による掃気性能向上効果よりも背圧が高くなることによる掃気性能の悪化が大きくなり、内部EGRガス量を十分に少なく抑えることが困難となる。そこで、本ガソリンエンジンでは、第3運転領域A3において、前記のような制御を実施する。
このように制御されることで、第3運転領域A3において、各独立排気通路52から排出された排気は、流路面積が最大のガス通路を排気抵抗が小さく抑えられた状態で流下する。そのため、エンジンの背圧は小さく抑えられる。この背圧の低減に伴い掃気は促進され、内部EGRガス量が少なく抑えられる。また、排気のポンピングロスが小さく抑えられるとともに吸気効率が高められて、高いエンジントルクが実現される。
なお、第3運転領域A3では、第1運転領域A1の低速高負荷領域A1_1と同様に、高いエンジントルクを得るためにより多量の新気を確保するべく、外部EGR制御は停止される。
(iii)第1運転領域A1および第3運転領域A3の燃焼モード
ここで、本実施形態では、ノッキング等の異常燃焼をより確実に回避するべく、第1運転領域A1および第3運転領域A3において、圧縮上死点よりもかなり前(例えば吸気行程中)に燃料を噴射して圧縮上死点付近で火花点火を行わせる通常のSI燃焼ではなく、図16に示すように、圧縮行程中にインジェクタ21から燃料を噴射させ(P1,P2)、この燃料噴射P1,P2の後に点火プラグ20に火花点火を行わせて、圧縮上死点を過ぎたタイミング(膨張行程の初期)から短時間で火炎伝播により混合気を燃焼させる急速リタードSI燃焼モードを実行する。
図16は、前記急速リタードSI燃焼モードが実行された際の、燃料噴射時期と吸排気弁11,12のリフト特性、およびそれに基づく燃焼により生じる熱発生率(J/deg)を示す図である。なお、当明細書において、ある行程の「後期」とか「初期」とかいう場合は、その行程を初期、中期、後期に3分割したときの後期あるいは初期を指すものとする。例えば、圧縮行程の後期であれば、圧縮上死点前(BTDC)60〜0°CAの範囲を指し、膨張行程の初期であれば、圧縮上死点後(ATDC)0〜60°CAの範囲を指すことになる。
具体的には、図16に示すように、急速リタードSI燃焼モードでは、圧縮行程の後期に設定された2回の噴射時期(P1,P2)に分けてインジェクタ21から、30MPa以上の高圧で燃料が噴射される。各燃料噴射P1,P2のタイミングとしては、例えば、1回目の噴射P1の開始時期から、2回目の噴射P2の完了時期までの期間が、概ね圧縮上死点前(BTDC)20°〜0°CA程度の期間内に収まるように設定される。
このような噴射制御が実施されるこの急速リタードSI燃焼モードでは、前記のように30MPa以上(例えば40MPa)という非常に高い噴射圧力で燃料が噴射されることで、噴射期間を短くすることができるとともに燃料噴霧を微粒化することができ、短時間で多量の燃料を十分に気化霧化させて比較的均質な(もしくは弱成層化した)混合気を形成することができる。また、噴射圧力が高いために、燃焼室6が最も高温・高圧化する圧縮上死点をある程度過ぎるまで大きな乱流エネルギーを維持することができる。特に、燃料が2回に分けて噴射されて2回目の燃料噴射の後に点火が行われており、1回目の燃料噴射P1によって燃料を霧化させつつ、2回目の燃料噴射により点火時点での乱流エネルギーを大きくすることができる。また、本実施形態では、多噴口型のインジェクタ21が用いられて燃料が多数の噴口から噴射されていることによっても、乱流エネルギーを大きくすることができる。また、本実施形態では、ピストン5にキャビティ40が形成されていることで圧縮行程後期の燃料噴射P1,P2により噴射された燃料の噴霧を、その乱流エネルギーにより、主にキャビティ40内で迅速に拡散させることができ、これによっても燃焼期間を短縮することができる。
従って、この急速リタードSI燃焼モードでは、燃料が噴射されてから短時間、ひいては、燃料噴射に伴う乱流エネルギーの減衰が小さい期間内(乱流エネルギーが大きい期間内)に火花点火による燃焼を開始させることができ、この比較的大きな乱流エネルギーによって燃焼期間を短くすることができる。そして、この燃焼期間の短縮化に伴って、火花点火後、適正な火炎伝播によって混合気を燃焼し切ることができる。すなわち、ノッキング等の異常燃焼を回避しつつ、熱効率およびエンジントルクを高く維持することができる。また、急速リタードSI燃焼モードでは、圧縮上死点を過ぎたタイミングで燃焼が開始されるため燃焼温度が過度に上昇せず、燃料の気化霧化が不十分なまま燃焼が開始されることもないため、NOxやスートの増大が回避され、エミッション性についても良好に維持される。
なお、急速リタードSI燃焼モードでは、前記燃料噴射P1,P2によるトータルの噴射量に対して燃焼室6全体の平均の空燃比が理論空燃比(空気過剰率λ=1)となるように新気量が制御される。また、点火時期は、熱効率および出力トルク向上の観点から、ノッキングが起きない範囲での最進角時期(例えば、圧縮上死点後(ATDC)0°〜20°CA程度)に設定されている。
(6)作用効果
以上説明したように、本エンジンでは、低速高負荷領域A1_1において、排気マニホールド50内の排気の流通状態を第1状態として絞り部53内のガス通路の流路面積を最小面積とし、エゼクタ効果を効果的に発揮させ、これにより、高い掃気性能、ひいては異常燃焼や燃焼騒音の悪化の回避および高いエンジントルクを実現しつつ、低負荷領域A2において、排気マニホールド50内の排気の流通状態を第2状態として絞り部53内のガス通路の流路面積を最大面積として、エゼクタ効果による掃気性能を抑制し、これにより、排気弁12の再開弁中の排気の逆流量を確保して、適正な圧縮自己着火燃焼の実現ひいては高い熱効率を得ることができる。また、エゼクタ効果を適正に利用することで、中負荷領域A1_2における異常燃焼や燃焼騒音の悪化の回避、高速高負荷領域A3における高いエンジントルクの実現を可能とする。
特に、本実施形態では、絞り部53を内側に第1通路54aが形成された内管54とこの内管54を収容する外管55とで構成し、これら外管55と内管54との間に第2通路55aを区画するとともに、この第2通路55aの流路面積を変更するという簡単な構成で、絞り部53内の各ガス通路の流路面積を変更しており、絞り部53の構造ひいては装置全体の構造を簡素化することができる。また、外管55を上下流方向にスライドさせるだけでよく、外管55の駆動構造を簡素化することができる。
(7)他の実施形態
(7−1)第2実施形態
第1実施形態では、排気二度開き制御を実施する低負荷の第2運転領域A2においてHCCI燃焼を実施する一方、排気二度開き制御を実施しない中高負荷の第1運転領域A1および第3運転領域A3においてSI燃焼を実施する場合について示したが、各領域の燃焼形態はこれに限らない。
例えば、図17に示すように、全運転領域においてHCCI燃焼を実施してもよい。ただし、前述のように、中高負荷領域(第1実施形態と同様の領域に設定された第1運転領域A1と第3運転領域A3とからなる領域)では、多量の燃料が噴射されるのに伴う燃焼室6内の高温化により燃焼騒音が増大する、あるいは、ノッキングが生じやすくなるという問題がある。そのため、全運転領域においてHCCI燃焼を実施するこの第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、これら第1運転領域A1と第3運転領域A3とでは、燃焼室6内の高温化を回避するべく、燃焼室6内の内部EGRガス量を少なく抑える制御を実施する。
具体的には、第1運転領域A1と第3運転領域A3とにおいて、第1実施形態と同様に、排気二度開き制御を停止させて高温の内部EGRガス量の気筒2への逆流を停止する。また、排気流量の比較的少ない第1運転領域A1では、エゼクタ効果による掃気性能を発揮させるように吸気弁11等を調整する。すなわち、排気弁12の開弁期間と吸気弁11の開弁期間とが吸気上死点(TDC)を挟んでオーバーラップし、かつ、排気弁12が他の気筒2のオーバーラップ期間T_O/L中に開弁を開始するように、吸気弁11および排気弁12を制御するとともに、外管55の位置を前記流路面積最小位置として絞り部53内の各ガス通路の流路面積を最小面積とし、排気マニホールド50内の排気の流通状態を第1状態に制御する。一方、排気流量が多くエゼクタ効果による掃気性能向上効果よりも背圧が高くなることによる掃気性能の悪化が大きくなる第3運転領域A3では、排圧を小さく抑えるように吸気弁11等を調整する。すなわち、外管55の位置を流路面積最大位置付近として絞り部53内の各ガス通路の流路面積を最大面積付近とし、排気マニホールド50内の排気の流通状態を第2状態に制御する。
(7−2)第3実施形態
第1実施形態では、ガス通路の流路面積を変更するための構成として、第2通路55aの流路面積を変更するものを挙げたが、ガス通路の流路面積を変更する構成はこれに限らない。
例えば、絞り部内に形成された第1通路と第2通路との連通量を変更することでガス通路の流路面積を変更するようにしてもよい。この連通量を変更することでガス通路の流路面積を変更する構成の一例を、図18、図19(a)(b)、図29(a)(b)に示す。図18は、第1実施形態の図7(a)に対応する図である。図19(a)、(b)は、外管155を省略した状態の絞り部153の斜視図であり、(a)が連通口154dを全閉とした状態、(b)が連通口154dを全開とした状態である。図20(a)、(b)は、絞り部153の断面図であり、(a)が図19(a)と対応する図、(b)が図19(b)と対応する図である。
図18〜図20に示す第3実施形態は、第1実施形態と同様に、内管154と外管155とを有する絞り部153を有している。内管154の外周面154gは、第1実施形態と同様に、その上流側部分に設けられて中心軸Lと平行に延びる円筒面154g_1と、その下流側部分に設けられて下流に向かうに従って絞り部153の中心軸L側に傾斜する内管側傾斜面154g_2とで構成されている。内管154の内側には、第1実施形態と同様に、下流側ほど流路面積が縮小する複数の第1通路154aが形成されている。
一方、第3実施形態に係る外管155は、内管154に対して相対移動不能に固定されている。外管155は、その内周面155gが、内管154の外周面154gから径方向外側に離間して、これら内周面155gと外周面154gとの間に第2通路155aが区画された状態で固定されている。外管155の内周面155gは、内管154の外周面154gと平行に延びている。内管154の外周面154gのうち第1通路155a間に対応する位置には、径方向外側に向かって突出して外管155の内周面155gと当接する位置まで延びる区画壁154eが設けられており、外管155の内周面155gと内管154の外周面154gとの間には、第1通路155aと対応する位置にそれぞれ第2通路155aが形成されている。この第3実施形態では、3つの第1通路155aに対応して3つの第2通路155aが形成されている。内管154の管壁には、第1通路154aと第2通路155aとをそれぞれ連通する連通口154dが形成されている。各連通口154dは、内管154の外周面154gのうちの円筒面154g_1に開口している。
また、この第3実施形態に係る絞り部153には、各連通口154dをそれぞれ開閉可能な蓋159と、これら蓋159を駆動可能な回動アクチュエータ(通路状態変更手段、図示省略)が設けられている。
各蓋159は、内管154の外周面154gに沿って延びている。回動アクチュエータは、各蓋159を、内管154の外周面154gに沿って周方向に移動させる。すなわち、回動アクチュエータは、各蓋159を、絞り部153の中心軸Lを中心として回動させる。そして、この回動アクチュエータは、図19(a)および図20(a)に示す各連通口154dを全閉にする位置と、図19(b)および図20(b)に示す各連通口154dを全開にする位置との間で移動させる。この移動により連通口154dの開口量は変化し、この開口量の変化に伴って、第1通路154aと第2通路155aとの連通量は変化する。そして、絞り部153のうち排気が通過するガス通路の流路面積は変化する。ここで、第1通路154aに流入した排気は、この連通量に応じた量だけ第2通路155a内に流入する。そのため、絞り部153のうち排気が通過するガス通路の流路面積は、この連通量と第1通路154aの流路面積により規定される。すなわち、第1通路154aの流路面積と前記連通口154dの開口面積との合計面積が、ガス通路の流路面積となる。
このようにして、この第3実施形態では、第1通路154aと第2通路155aとの連通量が変更されることで、絞り部153内のガス通路の流路面積が変更される。そして、この変更により、排気マニホールド内の排気の流通状態が、第1状態と第2状態とに変更される。
(7−3)第4実施形態
第1実施形態および第3実施形態では、絞り部内に形成されたガス通路の流路面積を変更することで、排気マニホールド内の排気の流通状態を、第1状態と、第2状態とに変更した場合について示したが、排気マニホールド内の排気の流通状態を変更する具体的構成はこれに限らない。
例えば、図21および図22に示すような構成としてもよい。これらの図に示す第4実施形態に係るエンジンでは、第1実施形態と同様に、排気マニホールド450に、独立排気通路452と絞り部453とが設けられている。なお、これらの図は、排気マニホールド450のうち絞り部453よりも下流側の部分を省略した図である。一方、このエンジンでは、第1実施形態と異なり、気筒2毎に独立した独立排気通路452が設けられている。また、絞り部453内に形成されたガス通路の流路面積が変更不能とされている。また、独立排気通路452がその途中において互いに連通通路455により連通されている。また、この連通通路455に、この通路を開閉して連通通路455を介した独立排気通路452どうしの連通状態を変更可能なバルブ(連通状態変更手段、不図示)が設けられている。
具体的には、絞り部453は、内側に下流側に向かって流路面積が縮小する複数のガス通路453aが形成された筒状部材のみからなる。各ガス通路453aは、各独立排気通路452に接続されており、各気筒2から排出された排気は各ガス通路453aに個別に流入する。図21および図22に示す例では、4つの気筒2に対して、4つの独立排気通路452および4つのガス通路453aが設けられている。そして、これら4つのガス通路453aは、図22に示すように、各ガス通路453aが隣接するように円周上に配列されている。
また、前記連通通路455は、排気行程が連続しない気筒2に対応した独立排気通路452どうしを連通しており、前記バルブが全開とされて連通通路455を介して独立排気通路52どうしが連通された状態においても、各気筒2から排出された排気が干渉しないように構成されている。具体的には、第1気筒2aと第4気筒2dに対応する独立排気通路452どうしが連通され、第2気筒2bと第3気筒2cに対応する独立排気通路452どうしが連通されている。
この第4実施形態では、前記バルブが全閉とされることで、排気マニホールド450内の排気の流通状態は第1状態とされる。すなわち、前記バルブが全閉とされることで、各気筒2から排出された排気は、それぞれ1本の独立排気通路52および下流ほど流路面積が小さく設定された1本のガス通路453aのみを通過する状態とされる。そして、この状態とされることで、各独立排気通路452から排出された排気の速度はガス通路453aの通過時に高められて、高いエゼクタ効果が発揮されることになる。
一方、この第4実施形態では、前記バルブが全開とされることで、排気マニホールド450内の排気の流通状態は第2状態とされる。すなわち、前記バルブが全開とされることで、各気筒2から排出された排気は、対応する独立排気通路452に流入した後、連通通路455を介して他の独立排気通路452に分流し、前記排気は、2本の独立排気通路452に対応した2本のガス通路453aを含み、第1状態よりも流路面積の大きい通路を通過してノズル部58aに流入することになる。そして、この状態とされることで、各独立排気通路452から排出された排気の速度は弱められ、エゼクタ効果が弱められることになる。
このように、第4実施形態では、前記バルブが開閉されて、複数の独立排気通路452の連通状態が変更されることで、排気マニホールド450の状態が第1状態と第2状態とに変更される。
(7−4)第5実施形態
また、排気マニホールド内の排気の流通状態を変更する構成として、図23に示すものを用いてもよい。
この図23に示す第5実施形態に係るエンジンでは、第1実施形態と同様に、排気マニホールド550に、独立排気通路52と絞り部553とノズル部558aと混合部558bとディフューザー部558cとが設けられている。一方、このエンジンでは、第1実施形態と異なり、絞り部553内に形成された各ガス通路553aの流路面積が変更不能とされている。また、独立排気通路52の途中からそれぞれ絞り部553よりも下流側の部分である共通排気通路550aに延びて各独立排気通路52と共通排気通路550aとを接続し、排気を絞り部553をバイパスさせるバイパス通路555が設けられている。また、各バイパス通路555に、これらバイパス通路555を開閉するバイパスバルブ(バイパス通路開閉手段)555aが設けられている。ここで、第5実施形態では、各バイパス通路555は、共通排気通路550aのうち触媒装置60のケーシング61の上流端に接続されている。
具体的には、絞り部553は、内側に下流側に向かって流路面積が縮小する複数のガス通路553aが形成された筒状部材のみからなる。各ガス通路553aは、各独立排気通路52に個別に接続されている。本実施形態では、第1実施形態と同様に、3つの独立排気通路52が設けられており、これらに対応して絞り部内には3つのガス通路553aが設けられている。これら3つのガス通路553aは、第1実施形態の第1ガス通路と同様に円周上に配列されている。
この第5実施形態では、バイパスバルブ555aが全閉とされることで、排気マニホールド550内の排気の流通状態は第1状態とされる。すなわち、バイパスバルブ555aが全閉とされることで、各気筒2から排出された排気は、バイパス通路555側に分流することなくすべて、下流ほど流路面積が小さく設定されたガス通路553aに流入することになる。そして、この第5実施形態では、この状態とされることで、各独立排気通路52から排出された排気の速度はガス通路553aの通過時に高められて、高いエゼクタ効果が発揮されることになる。
一方、この第5実施形態では、バイパスバルブ555aが全開とされることで、排気マニホールド550内の排気の流通状態は第2状態とされる。具体的には、バイパスバルブ555aが全開とされることで、各気筒2から排出された排気は、対応する独立排気通路52に流入後、絞り部553内のガス通路553aとバイパス通路555とに分かれて流入し、その後触媒装置60のケーシング61の上流端で合流する。そのため、各独立排気通路52内の排気全体が共通排気通路550a、すなわち、ノズル部558aとケーシング61とに流入するまでに通過する通路の流路面積は絞り部553内のガス通路553aの流路面積とバイパス通路555の流路面積との合計面積となり、この通過通路の流路面積は第1状態よりも大きい面積とされる。
このようにして、第5実施形態では、バイパスバルブ555aが開閉されて、バイパス通路555の閉鎖と開放とが切替えられることで、排気マニホールド50内の排気の流通状態が第1状態と第2状態とに変更される。
(7−5)その他の実施形態
また、前記実施形態では、第1運転領域A1の全域においてHCCI燃焼モードを実施する場合について示したが、エンジンの回転数が高い領域では、燃料の吸熱時間が少なくなるため適正な圧縮自己着火燃焼が困難になるおそれがある。そのため、このような場合には、第1運転領域A1のうち低速域のみでHCCI燃焼モードを実施し、高速域では他の燃焼モード(例えば、SI燃焼や、火花点火により混合気の自着火が促進されるよう構成された燃焼)が実施されてもよい。
また、第2運転領域A2において火花点火燃焼を行ってもよい。ここで、冷間始動時に、燃焼温度を高めて暖房性能を改善するとともに触媒を早期活性化させるためには、第2運転領域A2において火花点火燃焼を行う場合であっても、この第2運転領域A2において燃焼室6内の内部EGRガス量を多く確保する制御を実施するのが好ましい。そのため、第2運転領域A2において火花点火燃焼を行う場合においても、第1実施形態と同様に、第2運転領域A2では、排気二度開き制御を実行するとともに、排気マニホールド50内の排気の流通状態を第2状態とする。これにより、第2運転領域A2において燃焼室6内の内部EGRガス量を多く確保することができ、燃焼温度を高めることができる。
また、前記実施形態では、図14および図16を用いて、各運転領域での燃料の噴射時期や点火時期について例示したが、これらはあくまで一例に過ぎず、燃料噴射時期や点火時期はエンジンの特性等によって適宜変更し得るものである。
また、前記実施形態では、リーンHCCI燃焼モードにおいて、G/Fを30以上に制御する場合について例示したが、G/Fではなく理論空燃比λを制御し、この理論空燃比をλ=2以上とする制御を実施してもよい。