JP2021139331A - 多気筒エンジン - Google Patents

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隆雅 松本
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Abstract

【課題】低負荷域でのCI燃焼と高負荷域でのSI燃焼とを簡単な構成で両立する。【解決手段】多気筒エンジンの排気通路は、各気筒の排気ポートに接続された複数の独立排気管と、各独立排気管の下流端部が互いに独立状態を維持したまま近接する集約部と、集約部の下流側に接続された集合管部とを有する。各独立排気管の下流端部は、下流側に至るほど断面積が小さくなるように形成される。低負荷側の第1運転領域では、吸気行程の途中まで続く一連の期間に亘って排気弁が開弁するように排気可変機構が制御され(第1特性)、かつ各気筒でCI燃焼が行われる。高負荷側の第2運転領域では、排気弁の開閉時期が全体的に進角するように排気可変機構が制御され(第2特性)、かつ各気筒でSI燃焼が行われる。【選択図】図5

Description

本発明は、混合気の自着火による燃焼であるCI燃焼と火花点火による混合気の強制燃焼であるSI燃焼とを選択的に実行可能な多気筒エンジンに関する。
上記のようにCI燃焼およびSI燃焼の双方が可能なエンジンとして、下記特許文献1のものが知られている。この特許文献1のエンジンは、13以上30以下の比較的高い幾何学的圧縮比を有するガソリンエンジンであり、低負荷域および中負荷域ではCI燃焼が、高負荷域ではSI燃焼が、それぞれ行われるようになっている。なお、特許文献1では、CI燃焼として、混合気の一部をSI燃焼させて残りの混合気をCI燃焼させる燃焼形態(同文献ではこれをSPCCI燃焼と称している)が採用されている。言い換えると、SPCCI燃焼とは、混合気の一部を火花点火による点火点からの火炎伝播により燃焼させ、残りの混合気を自着火により燃焼させる燃焼形態のことである。
上記のように、低負荷域を含む運転領域でCI燃焼を実現するには、気筒内を十分に高温化する必要がある。そこで、特許文献1では、CI燃焼(SPCCI燃焼)が行われる低負荷域において、排気上死点の前後に亘って吸気弁および排気弁の双方が閉じるネガティブオーバーラップ期間を設け、当該ネガティブオーバーラップ期間中に気筒内に閉じ込められる高温の既燃ガスにより気筒内の温度(筒内温度)を高めることが行われている。なお、以下では、気筒内に残される高温の既燃ガスにより筒内温度を高める操作のことを、内部EGRと称する。
特開2018−193986号公報
上記特許文献1のようにネガティブオーバーラップ期間を利用して内部EGRを実行することは、筒内温度の上昇(ひいては混合気の自着火の促進)につながるものの、排気上死点の前後に亘って気筒内が密閉されるので、ピストンにより筒内ガスが圧縮される(言い換えると筒内ガスからピストンに圧縮反力が作用する)結果、ポンピングロスが増大してしまう。
そこで、内部EGRを実現するための別の手段として、排気弁の開弁期間を吸気行程の途中まで延長することが考えられる。すなわち、排気弁を排気行程だけでなく吸気行程でも開くことにより、一旦気筒から排出された高温の排気ガス(既燃ガス)を、排気弁の開弁延長中(吸気行程のうち排気弁が開弁している期間中)に排気ポートから気筒内に逆流させることにより、筒内温度を上昇させるのである。このようにすれば、気筒内の密閉によるポンピングロスの増大が避けられるので、CI燃焼の実現による燃費性能の向上効果を最大限に引き出すことが可能になると考えられる。
しかしながら、上記のように内部EGRのために排気弁を排気行程だけでなく吸気行程でも開くようにした場合には、排気弁の開弁期間(開弁から閉弁までのクランク角期間)がかなり長くなるので、内部EGRが不要な運転領域において内部EGR量を十分に減らすことが困難になると考えられる。例えば、高負荷域でSI燃焼を行うときは、プリイグニッション等の異常燃焼を避けるために内部EGR量をできるだけ減らすことが望まれるが、これは必ずしも容易なことではない。なお、プリイグニッションとは、火花点火による狙いの着火時期よりも前に混合気が自着火してしまう異常燃焼のことである。
例えば、上記のように排気弁の開弁延長により達成される内部EGR量は、排気弁の作動位相(開閉時期)を進角させることによってある程度減らすことが可能である。しかしながら、バルブタイミングは種々の制約の下で決まっており、排気弁の作動位相の調整幅には限界がある。このため、低負荷域においてCI燃焼促進のために多量の内部EGR量を確保しようとすれば、高負荷域で内部EGR量を十分に減らすことが困難になり、当該高負荷域において上述したプリイグニッション等の異常燃焼が起きることが懸念される。
もちろん、排気弁の開弁期間(開弁から閉弁までのクランク角期間)を可変にするための機構を排気弁の動弁機構に追加すれば、上記のような高負荷域での異常燃焼を回避できるようになると考えられる。しかしながら、このように開弁期間変更のための機構を追加することは、製造コストの増大につながり、好ましくない。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、低負荷域でのCI燃焼と高負荷域でのSI燃焼とを比較的簡単な構成で両立することが可能な多気筒エンジンを提供することを目的とする。
前記課題を解決するためのものとして、本発明の多気筒エンジンは、複数の気筒を含むエンジン本体と、前記エンジン本体に接続されかつ前記各気筒から排出された排気ガスが流通する排気通路と、前記各気筒での燃焼を制御する制御部とを備え、前記エンジン本体は、前記各気筒に連通する吸気ポートおよび排気ポートをそれぞれ開閉する吸気弁および排気弁と、前記排気弁の開時期および閉時期を同量ずつ変更可能な位相式の排気可変機構と、前記各気筒に燃料を供給する燃料供給装置と、前記燃料供給装置から供給された燃料と空気とが混合した混合気に点火する点火プラグとを有し、前記排気通路は、複数の前記気筒の各排気ポートに接続された複数の独立排気管と、前記各独立排気管の下流端部が互いに独立状態を維持したまま近接する集約部と、前記集約部の下流側に接続され、前記独立排気管の全てと連通する共通の空間が内部に形成された集合管部とを有し、前記集約部に対応する各独立排気管の下流端部は、下流側に至るほど断面積が小さくなるように形成され、前記制御部は、所定の第1運転領域において、膨張行程の後期または排気行程の前期に含まれる所定時期から吸気行程の途中までの一連の期間に亘って前記排気弁が開弁するように前記排気可変機構を制御するとともに、混合気の自着火による燃焼であるCI燃焼が前記各気筒で行われるように前記燃料供給装置を制御し、前記第1運転領域よりも負荷の高い第2運転領域において、前記第1運転領域のときよりも前記排気弁の開閉時期が進角するように前記排気可変機構を制御するとともに、火花点火による混合気の強制燃焼であるSI燃焼が前記各気筒で行われるように前記燃料供給装置および前記点火プラグを制御する、ことを特徴とするものである(請求項1)。
本発明によれば、CI燃焼が行われる第1運転領域において、排気行程を過ぎて吸気行程の途中まで排気弁が継続的に開弁されるので、排気弁が吸気行程中に開弁している期間の間、排気ポートから気筒内に既燃ガス(排気ガス)を引き戻すことができ(内部EGR)、当該内部EGRによって気筒を高温化することができる。これにより、混合気の自着火を促進することができ、当該自着火に基づく適切なCI燃焼を実現することができる。
一方、SI燃焼が行われる第2運転領域では、排気弁の開閉時期(作動位相)が進角側にシフトされるので、排気弁が吸気行程中に開弁する上述した期間が縮小され、内部EGRが起き難くなる。むしろ、第2運転領域では、任意の気筒から排出されて集合管部へと流入する排気ガスを利用したエゼクタ効果により、他の気筒から排気ガスを積極的に吸い出すことができる。これにより、各気筒に残留する高温の排気ガスを排気ポートを通じて効率よく排出することができ、各気筒の掃気性(排気ガスと吸入空気との置換性)を向上させることができる。なお、エゼクタ効果とは、高速で流入する駆動流体の周囲に発生する負圧を利用して被駆動流体を吸引する作用のことである。このようなエゼクタ効果による掃気性の向上は、筒内温度を十分に低下させるので、例えばプリイグニッション(火花点火による狙いの着火時期よりも前に混合気が自着火する現象)のような異常燃焼が起きる可能性を十分に低減でき、適切なSI燃焼を実現することができる。
すなわち、エンジン負荷が高い第2運転領域では、混合気の燃焼温度および燃焼圧力が高いので、各気筒の排気弁の開弁直後に、排気ポートから非常に強い勢いで排気ガスが排出される(以下では、このように排気弁の開弁直後に生じる強い勢いの排気ガスのことをブローダウンガスという)。ブローダウンガスは、独立排気管を通じて強い勢いを保持したまま集合管部に流入し、その際にブローダウンガスの周囲に強い負圧を発生させる(エゼクタ効果)。このエゼクタ効果による負圧は、各気筒からの排気ガスの排出を促進し、各気筒の筒内温度を低下させる。このように、第2運転領域では、エゼクタ効果に基づく吸引作用により各気筒の掃気性が高められるので、上述した排気弁の開閉時期の進角(つまり吸気行程中の排気弁の開弁期間の縮小)と相俟って、筒内温度を十分に低下させることができ、プリイグニッション等の異常燃焼を伴わない適切なSI燃焼を実現することができる。
しかも、エゼクタ効果により生じる負圧を利用して掃気性を高めているので、排気可変機構として排気弁の開時期および閉時期を同量ずつシフトさせる比較的簡易なタイプの可変機構を用いながらも、各気筒から排気ガスを効率よく排出させて筒内温度を十分に低下させることができ、第2運転領域で懸念される異常燃焼を効果的に抑制することができる。
好ましくは、前記エンジンは、前記吸気弁の少なくとも開時期を変更可能な吸気可変機構をさらに備え、前記第1運転領域での運転時、前記制御部は、吸気行程の前期に前記排気弁のみが開弁する期間が生じるように前記吸気可変機構および前記排気可変機構を制御する(請求項2)。
このように、第1運転領域での運転時に、吸気行程の前期に排気弁のみが開弁する期間が生じるように各可変機構を制御した場合には、当該期間中に十分な量の既燃ガスを内部EGRガスとして気筒内に引き戻すことができ、混合気の自着火(CI燃焼)を促進するのに十分なレベルの温度まで筒内温度を上昇させることができる。このことは、例えば点火プラグを用いた火花点火により初期火炎を形成するといった、一種のアシスト燃焼を行わせることが基本的に不要になることを意味する。これにより、高い確率で混合気の全てをCI燃焼させる(いわゆるHCCI燃焼を実現する)ことが可能になるので、エンジンの熱効率を効果的に向上させることができる。
前記構成において、より好ましくは、前記第2運転領域での運転時、前記制御部は、前記吸気弁が排気行程の後期に開きかつ前記排気弁が吸気行程の前期に閉じるように、前記吸気可変機構および前記排気可変機構を制御する(請求項3)。
この構成によれば、第2運転領域での運転時に、排気上死点の前後に亘って吸・排気弁の双方が開くオーバーラップ期間が形成されるので、上述したエゼクタ効果により集合管部に生じた負圧が当該オーバーラップ期間中に排気ポートに作用したときに、吸気ポートから排気ポートへと吹き抜ける吸気の流れが生成される。これにより、気筒内の掃気が一層促進されるので、異常燃焼が発生する確率をより低減することができる。
好ましくは、前記第2運転領域での運転時、前記制御部は、膨張下死点よりも進角側でかつ膨張行程の後期に含まれるタイミングで前記排気弁が開くように前記排気可変機構を制御する(請求項4)。
この構成によれば、第2運転領域での運転時にエゼクタ効果による負圧を適切なタイミングで各気筒の排気ポートに作用させることができ、掃気性を高めることができる。すなわち、エンジン負荷が高いために気筒から多量の排気ガスが排出される第2運転領域において、仮に膨張下死点もしくはこれよりも遅角側で排気弁を開くようにした場合には、任意の気筒の排気弁の開弁直後に高速で排出される排気ガス(ブローダウンガス)が集合管部に到達してエゼクタ効果が生じるタイミングが遅くなり、当該エゼクタ効果による負圧を適切なタイミングで他の気筒(燃焼順序が1つ前の気筒)に作用させることが困難になるおそれがある。これに対し、前記構成では、膨張下死点よりも進角側(膨張行程の後期)で排気弁が開かれるので、エゼクタ効果による負圧を、前記他の気筒が排気上死点近傍にある適切なタイミングで排気ポートに作用させることができ、当該負圧を利用して各気筒の掃気性を十分に高めることができる。
前記構成において、より好ましくは、前記排気弁の開時期から閉時期までの期間である開弁期間は、前記吸気弁の開弁期間よりも長い(請求項5)。
この構成によれば、第1運転領域において吸気行程中の排気弁の開弁期間を十分に確保しながら、第2運転領域では前記のように排気弁が比較的早いタイミングで開くというセッティングを支障なく実現することができる。
好ましくは、前記排気弁のリフト特性は、クランク角の進行に応じてリフト量が山型に増減する山部と、当該山部に連なりかつリフト量がゼロより大きい値で略一定になる棚部と、当該棚部に連なりかつリフト量がゼロへと漸減する裾部とを有するように設定される(請求項6)。
このように、リフト量が略一定の棚部を含むリフト特性を排気弁に付与した場合には、排気上死点でのリフト量を略一定に保ちながら排気弁の開閉時期を変更できるので、当該開閉時期の調整幅の確保と、排気弁とピストンとの干渉回避とを高次元に両立することができる。
好ましくは、前記集合管部は、前記集約部の下流端に接続されかつ下流側ほど断面積が小さくなるように形成されたノズル部と、ノズル部の下流側に連なりかつ断面積が略一定となるように形成されたストレート部と、ストレート部の下流側に連なりかつ下流側ほど断面積が大きくなるように形成されたディフューザ部とを有する(請求項7)。
この構成によれば、独立排気管の各下流端から集合管部に駆動流体として流入する排気ガス(ブローダウンガス)をノズル部において加速することができ、当該駆動流体の周りに生じる負圧を強化することができる。これにより、エゼクタ効果をより効率よく生じさせることができ、第2運転領域での気筒の掃気性を向上させることができる。また、ノズル部によって一旦加速された排気ガスを、ストレート部およびディフューザ部によって減速させて排気ガスの圧力を回復させることができる。
本発明は、4つの気筒を有する4気筒エンジンに好適に適用され得る。すなわち、本発明において、前記エンジン本体は4つの前記気筒を有することが好ましい(請求項8)。
以上説明したように、本発明の多気筒エンジンによれば、低負荷域でのCI燃焼と高負荷域でのSI燃焼とを比較的簡単な構成で両立することができる。
本発明の一実施形態にかかる多気筒エンジンの概略構成を示す平面図である。 エンジン本体の断面図である。 エンジン本体と排気通路の上流側の一部とを拡大して示す概略平面図である。 エンジン本体の上部と排気通路の上流側の一部とを拡大して示す概略側面図である。 図3のV−V線に沿った断面図である。 吸気弁および排気弁のリフト特性がそれぞれ変更可能であることを説明するための図である。 排気弁のリフト特性を詳細に示す図である。 リフトカーブの最初と最後の部分を拡大して示す図である。 エンジンの制御系統を示すブロック図である。 エンジンの回転速度/負荷に応じた制御の相違を示す運転マップである。 第1運転領域での制御の具体例を示すタイムチャートである。 第2運転領域での制御の具体例を示すタイムチャートである。
(1)エンジンの全体構成
図1および図2は、本発明の一実施形態にかかる多気筒エンジンの概略構成を示す図である。当実施形態のエンジンは、走行用の動力源として車両に搭載される4サイクルのガソリンエンジンであり、列状に並ぶ複数(ここでは4つ)の気筒2を有する直列多気筒型のエンジン本体1と、エンジン本体1に導入される吸気が流通する吸気通路20と、エンジン本体1から排出される排気ガスが流通する排気通路30とを備えている。
エンジン本体1は、上記複数の気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、各気筒2を上から閉塞するようにシリンダブロック3の上面に取り付けられたシリンダヘッド4と、各気筒2に往復摺動可能に挿入された複数のピストン5とを有している。
各ピストン5の上方にはそれぞれ燃焼室Cが形成されている。燃焼室Cには、後述するインジェクタ10からの噴射によって、ガソリンを含有する燃料が供給される。そして、供給された燃料が燃焼室Cで空気と混合しつつ燃焼し、その燃焼による膨張力を受けてピストン5が上下方向に往復運動する。
ピストン5の下方には、エンジン本体1の出力軸であるクランク軸17が設けられている。クランク軸17は、ピストン5とコネクティングロッド18を介して連結され、ピストン5の往復運動(上下動)に応じて中心軸回りに回転駆動される。
気筒2の幾何学的圧縮比、つまりピストン5が上死点にあるときの燃焼室Cの容積とピストン5が下死点にあるときの燃焼室Cの容積との比は、後述する第1運転領域A1でCI燃焼を行わせるのに好適な値として、14以上20以下、好ましくは16以上18以下に設定される。
シリンダブロック3には、クランク軸17の回転角度(クランク角)およびクランク軸17の回転速度(エンジン回転速度)を検出するクランク角センサSN1が設けられている。
シリンダヘッド4には、気筒2ごとに、吸気通路20から供給される空気を燃焼室Cに導入するための吸気ポート6と、燃焼室Cで生成された既燃ガス(排気ガス)を排気通路30に排出するための排気ポート7と、吸気ポート6の燃焼室C側の開口を開閉する吸気弁8と、排気ポート7の燃焼室C側の開口を開閉する排気弁9とが設けられている。なお、当実施形態のエンジンのバルブ形式は、吸気2バルブ×排気2バルブの4バルブ形式である。すなわち、当実施形態では、各気筒2の燃焼室Cに対し吸気ポート6および排気ポート7が2つずつ設けられるとともに、各ポート6,7の数に対応して吸気弁8および排気弁9が各気筒2に対し2つずつ設けられている。
図3は、エンジン本体1と排気通路30の上流側の一部とを拡大して示す概略平面図である。この図3および先の図2に示すように、シリンダヘッド4には、各気筒2の吸気弁8を開閉するための吸気動弁機構12と、各気筒2の排気弁9を開閉するための排気動弁機構13とが設けられている。詳細は後述するが、これらの動弁機構12,13は、クランク軸17と連動連結されたカムシャフト等を含んでおり、クランク軸17の回転に連動して吸気弁8および排気弁9を開閉する。
図1〜図3に示すように、シリンダヘッド4には、インジェクタ10および点火プラグ11が各気筒2に対し1組ずつ設けられている。インジェクタ10は、燃料(ガソリンを含有する燃料)を燃焼室Cに向けて噴射するものである。点火プラグ11は、インジェクタ10から噴射された燃料と空気とが混合した混合気に点火するものである。なお、インジェクタ10は、本発明における「燃料供給装置」に相当する。
インジェクタ10は、例えば、燃料の噴射口となる複数の噴孔を先端部に有した多噴孔型のインジェクタであり、各気筒2の燃焼室Cをその吸気側の側方から臨むように設けられている。
点火プラグ11は、火花を放出するための電極を先端部に有したプラグであり、各気筒2の燃焼室Cを上方から臨むように設けられている。
ここで、当実施形態のような4サイクル4気筒のガソリンエンジンでは、各気筒2に設けられたピストン5がクランク角で180°(180°CA)の位相差をもって上下運動する。このため、点火プラグ11による強制点火が必要な運転条件(後述する第2運転領域A2および第3運転領域A3)において、各気筒2の点火プラグ11は、180°CAずつずれたタイミングで駆動される。より詳しくは、エンジン本体1に備わる4つの気筒2を図1(または図3)の左側から順に第1気筒2A、第2気筒2B、第3気筒2C、第4気筒2Dとしたとき、当実施形態では、第1気筒2A→第3気筒2C→第4気筒2D→第2気筒2Bの順に混合気が燃焼し、かつその燃焼間隔(ある気筒での燃焼開始から次の気筒での燃焼開始までの間隔)が180°CAに設定される。これに対応して、点火プラグ11は、第1気筒2A→第3気筒2C→第4気筒2D→第2気筒2Bの順に駆動され、かつその駆動間隔(ある気筒での点火プラグの駆動から次の気筒での点火プラグの駆動までの間隔)が180°CAに設定される。なお、以下では、特定の気筒を指す場合にのみ第1気筒2A、第2気筒2B‥‥などといい、4つの気筒2A〜2Dを特に区別せずに指すときは単に気筒2という。
図1に示すように、吸気通路20は、各気筒2の吸気ポート6に連通するようにエンジン本体1に接続された複数(4つ)の独立吸気管21と、各独立吸気管21の上流側(エンジン本体1から遠い側)の端部が接続された共通のサージタンク22と、サージタンク22から上流側に延びる単管状の共通吸気管23とを有している。
共通吸気管23の途中部には、吸気流量を調整するためのスロットル弁25が開閉可能に設けられている。また、共通吸気管23におけるスロットル弁25とサージタンク22との間には、吸気流量を検出するエアフローセンサSN2が設けられている。
図1および図3に示すように、排気通路30は、各気筒2の排気ポート7に連通するようにエンジン本体1に接続された複数(3つ)の独立排気管31,32,33と、各独立排気管31,32,33の下流側(エンジン本体1から遠い側)の端部が独立状態を維持したまま互いに近接するように束ねられた集約部34と、集約部34の下流側に接続された集合管部35と、集合管部35の下流側に接続された単管状の共通排気管36と、共通排気管36の途中部に設けられた触媒コンバータ37とを有している。触媒コンバータ37には、排気ガス中の有害成分を浄化するための三元触媒等の触媒が内蔵されている。
(2)吸気動弁機構の詳細
図2および図3に示すように、吸気動弁機構12は、カムシャフト12aと吸気VVL14とを有している。なお、吸気VVL14は、本発明における「吸気可変機構」に相当する。
カムシャフト12aは、例えばチェーンやスプロケット等を用いた動力伝達機構を介してクランク軸17と連係されており、クランク軸17と連動して回転することにより各気筒2の吸気弁8を開閉駆動する。図示を省略するが、カムシャフト12aは、第1気筒2Aから第4気筒2Dに亘って延びる軸部と、当該軸部に取り付けられた複数のカム部とを有している。複数のカム部は、各気筒2の吸気弁8を押し下げることが可能な位置に設けられており、上記軸部の回転に伴い吸気弁8を開閉駆動する。
吸気VVL14は、吸気弁8のリフト量を可変とするための機構である。具体的に、当実施形態の吸気VVL14は、吸気弁8のリフト特性を、最大リフト量および開弁期間が異なる2つの特性の間で択一的に切り替えるように構成されている。
図6は、クランク角の進行に応じた吸気弁8および排気弁9の各リフト量の変化(リフト特性)を示しており、INで示す波形が吸気弁8のリフト特性(リフトカーブ)を、EXで示す波形が排気弁9のリフト特性(リフトカーブ)を示している。本図に示すように、吸気VVL14は、吸気弁8のリフト特性INを、実線で示す第1特性と破線で示す第2特性との間で択一的に切り替えるように構成されている。当実施形態において、第1特性および第2特性は、そのいずれもが、クランク角の進行に応じてリフト量が山型に増減する(リフト量が漸増した後に漸減する)ように設定されているが、最大リフト量および開弁期間が互いに異なる。具体的に、吸気弁8のリフト量の最大値である最大リフト量は、第1特性のときの方が第2特性のときよりも小さい。また、吸気弁8の開時期から閉時期までの期間(クランク角期間)である開弁期間は、第1特性のときの方が第2特性のときよりも短い。言い換えると、吸気弁8の開時期は第1特性のときの方が第2特性のときよりも遅く、吸気弁8の閉時期は第1特性のときの方が第2特性のときよりも早い。
吸気VVL14の上述した機能を達成するため、当実施形態では、形状(カムプロフィール)の異なる2種類のカムが吸気弁8ごとに用意されている。すなわち、カムシャフト12aの軸部には、各気筒2の吸気弁8を押し下げるためのカム部として、上記第1特性に対応する第1カムと、上記第2特性に対応する第2カムとが取り付けられている。吸気VVL14は、これら第1・第2カムのいずれかが選択的に吸気弁8を押し下げるようにカムシャフト12aの状態を切り替える切替機構を含んでいる。このような切替機構の具体例は種々考えられるが、例えば、カムシャフト12aの軸部に対し第1カムおよび第2カムをスライド可能に支持するスライド支持機構と、これら第1カムおよび第2カムをスライドさせるための駆動機構とを含んだものを例示することができる。
(3)排気動弁機構の詳細
図2および図3に示すように、排気動弁機構13は、カムシャフト13aと排気SVT15とを有している。なお、排気SVT15は、本発明における「排気可変機構」に相当する。
カムシャフト13aは、例えばチェーンやスプロケット等を用いた動力伝達機構を介してクランク軸17と連係されており、クランク軸17と連動して回転することにより各気筒2の排気弁9を開閉駆動する。図示を省略するが、カムシャフト13aは、第1気筒2Aから第4気筒2Dに亘って延びる軸部と、当該軸部に取り付けられた複数のカム部とを有している。複数のカム部は、各気筒2の排気弁9を押し下げることが可能な位置に設けられており、上記軸部の回転に伴い排気弁9を開閉駆動する。
図7は、排気弁9のリフト特性EXを示す図である。本図に示すように、排気弁9のリフト特性EXは、クランク角の進行に応じてリフト量が山型に増減する(リフト量が漸増した後に漸減する)山部X1と、リフト量がゼロより大きい一定値をとる棚部X2と、リフト量がゼロへと漸減する裾部X3とを有している。棚部X2は山部X1の遅角側に連なり、裾部X3は棚部X2の遅角側に連なっている。カムシャフト13aのカム部(排気カム)は、これら山部X1、棚部X2、および裾部X3からなるリフト特性(リフトカーブ)に対応した特殊な形状(プロフィール)を有したカムである。
山部X1のリフト量の最大値(言い換えると排気弁9の最大リフト量)を第1リフト量Q1とし、棚部X2のリフト量(一定値)を第2リフト量Q2とすると、第2リフト量Q2は第1リフト量Q1の25〜35%に設定されている。また、山部X1に対応するクランク角期間を第1期間CA1とし、棚部X2および裾部X3に対応するクランク角期間を第2期間CA2とすると、第2期間CA2は第1期間CA1の約半分(45〜60%)に設定されている。なお、第1期間CA1および第2期間CA2をより詳しく定義すると、第1期間CA1は、排気弁9の開時期(山部X1の開始)から山部X1と棚部X2との境界までのクランク角期間のことであり、第2期間CA2は、山部X1と棚部X2との境界から排気弁9の閉時期(裾部X3の終了)までのクランク角期間のことである。
第1期間CA1および第2期間CA2の合計、つまり排気弁9の開弁期間(開時期から閉時期までの期間)は、260〜300°CAという比較的長い期間に設定されている。この排気弁9の開弁期間は、吸気弁8の開弁期間よりも長い。なお、当実施形態では上述したとおり、図6に示した第1特性および第2特性のいずれが選択されているかによって吸気弁8の開弁期間が異なるが、両特性のいずれが選択されている場合であっても、排気弁9の開弁期間の方が吸気弁8の開弁期間よりも長くなるという関係が変わることはない。
排気SVT15は、カムシャフト13aの回転位相を変更することにより排気弁9の開閉時期を調整する位相式の可変機構である。すなわち、排気SVT15は、排気弁9のリフト量および開弁期間を一定に維持したまま、排気弁9の開時期および閉時期を同量ずる変更するように構成されている。このような排気SVT15が設けられることにより、排気弁9のリフト特性EXは、図6に示すように、遅角側の第1特性(実線)と、この第1特性を進角側に平行移動した第2特性(破線)とを含む範囲において連続的に変化することが可能である。
上記のような排気SVT15の具体例は種々考えられるが、例えば、カムシャフト13aと同軸に配置されてクランク軸17により直接駆動される被動軸と、当該被動軸とカムシャフト13aとを両者の位相差を変更可能に連結する位相変更部とを含んだものを例示することができる。
ここで、吸気弁8および排気弁9の開時期/閉時期の定義について説明しておく。図8に示すように、吸気弁8および排気弁9のリフトカーブは、その最初と最後の部分に、クランク角に対するリフト量の変化率が十分に小さい略一定値に設定されたランプ部(緩衝区間)を有する。本明細書において、吸気弁8および排気弁9の開時期とは、開側(図8の左側)のランプ部が終了するタイミングのことをいい、閉時期とは、閉側(図8の右側)のランプ部が始まるタイミングのことをいう。言い換えると、吸気弁8および排気弁9の開時期/閉時期とは、ランプ部を除いた実質的な開弁期間をバルブの開弁期間と定義した場合における開弁/閉弁のタイミングであって、リフト量が完全にゼロになる時期を指すわけではない。なお、ランプ部の高さ、つまりバルブの開時期/閉時期でのリフト量は、例えば0.3mm〜0.4mmに設定される。
(4)排気通路の詳細構造
図4は、エンジン本体1の上部と排気通路30の上流側の一部とを拡大して示す概略側面図である。この図4および先の図1、図3等を参照しつつ排気通路30の詳細構造について説明する。上述したとおり、当実施形態では、4つの気筒2(第1〜第4気筒2A〜2D)に対し3つの独立排気管31,32,33が用意されている。気筒数に比べて独立排気管の数が1つ少ないのは、第2気筒2Bおよび第3気筒2Cによって1つの独立排気管32が共用されているからである。すなわち、当実施形態では、第2気筒2Bおよび第3気筒2Cに対し共通の独立排気管32が用意されている一方、第1気筒2Aおよび第4気筒2Dに対しては専用の独立排気管31,33が用意されている。なお、以下では適宜、第1気筒2A用の独立排気管31のことを第1独立排気管31といい、第4気筒2D用の独立排気管33のことを第3独立排気管33といい、第2気筒2Bおよび第3気筒2C用の独立排気管32のことを第2独立排気管32という。
第1独立排気管31は、分岐のない単管状のパイプであり、その上流端が第1気筒2Aの排気ポート7に接続されている。同様に、第3独立排気管33は、分岐のない単管状のパイプであり、その上流端が第4気筒2Dの排気ポート7に接続されている。一方、第2独立排気管32は、上流側で二股に分岐したY字状の分岐パイプであり、その上流端が第2気筒2Bおよび第3気筒2Cの各排気ポート7にそれぞれ接続されている。すなわち、第2独立排気管32は、第2気筒2Bおよび第3気筒2Cの各排気ポート7から延びて下流側で集合する2つの分岐管部32a,32bと、各分岐管部32a,32bが集合した部分から下流側に延びる単管状の共通管部32cとを有している。
上述したように、当実施形態のような4サイクル4気筒エンジンでは、第1気筒2A→第3気筒2C→第4気筒2D→第2気筒2Bの順に燃焼が行われる。このため、第2独立排気管32を共用する第2気筒2Bおよび第3気筒2Cは、燃焼順序が連続しない関係にある。このことは、第2気筒2Bおよび第3気筒2Cから排出された排気ガスが第2独立排気管32内で互いに合流しない(混じり合わない)ことを意味する。すなわち、第2気筒2Bから排出された排気ガスが第2独立排気管32を流通している期間中、第3気筒2Cから排出された排気ガスは第2独立排気管32を流通せず、第3気筒2Cから排出された排気ガスが第2独立排気管32を流通している期間中、第2気筒2Bから排出された排気ガスは第2独立排気管32を流通しない。言い換えると、第2気筒2Bおよび第3気筒2Cの一方から排出された排気ガスは、他方から排出された排気ガスと一度も合流することなく下流側の集合管部35へと流出する。
また、第1気筒2Aおよび第4気筒2Dは、それぞれ単管状の独立排気管(第1独立排気管31または第3独立排気管33)によって集合管部35と接続されているので、第1気筒2Aおよび第4気筒2Dから排出された排気ガスも、集合管部35に到達するまでの間に一度も他の気筒からの排気ガスと合流しない。
このように、当実施形態における独立排気管31,32,33は、任意の気筒2からの排気ガスが対応する独立排気管(31〜33のいずれか)を流通する過程で他の気筒2からの排気ガスと合流しないように構成されている。
図1および図3に示すように、第1、第3独立排気管31,33は、その各下流端部の位置が第2独立排気管32の下流端部と略一致するように、気筒列方向の中央側を指向して延びている。すなわち、第1独立排気管31の下流端部と、第2独立排気管32の共通管部32cの下流端部と、第3独立排気管33の下流端部とが、それぞれ、エンジン本体1における排気側の壁面の中央部(上面視で第2気筒2Bと第3気筒2Cの間に対応する位置)から下流側に離れた位置において1箇所に束ねられている。そして、束ねられた上記3つの独立排気管31,32,33の各下流端部と、これらを束ねた状態に保持する図略の保持部材等により、上述した集約部34が形成されている。
図5に示すように、各独立排気管31,32,33の下流端部、つまり、第1独立排気管31の下流端部と、第2独立排気管32の共通管部32cの下流端部と、第3独立排気管33の下流端部とは、それぞれ、円を3等分したような扇型の断面を有しており、このような断面を有する各下流端部が3つ集まることにより、全体としてほぼ円形の集約部34が形成されている。
図3および図4に示すように、集約部34において近接配置された各独立排気管31,32,33の下流端部は、下流側に至るほど断面積(流路面積)が小さくなるように先細り状に形成されている。このため、各独立排気管31,32,33を流通する排気ガスは、その下流端部を通過する際に加速され、高い流速をもって集合管部35へと噴出される。
また、各独立排気管31,32,33の下流端部は、集約部34において、比較的平行に近い角度で束ねられている。具体的に、各独立排気管31,32,33の下流端部は、それぞれの軸心どうしがなす角度が例えば10度前後の浅い角度となるように配置されている。
図3および図4に示すように、集合管部35は、下流側ほど断面積が小さくなるように形成されたノズル部41と、ほぼ一様の断面積を有するように形成されたストレート部42と、下流側ほど断面積が大きくなるように形成されたディフューザ部43とを、上流側からこの順に有している。このため、各独立排気管31,32,33のいずれかの下流端部から噴出された排気ガスは、まずノズル部41へと流入し、そこでさらに加速する(このとき排気ガスの圧力は低下する)。また、ノズル部41で加速された排気ガスは、ストレート部42およびディフューザ部43を通過するにつれて減速され、これに伴って排気ガスの圧力が回復する。
上記のように各独立排気管31,32,33のいずれかの下流端部から集合管部35のノズル部41に向けて高速で排気ガスが噴出されると、その噴出ガスの周囲に、相対的に圧力の低い負圧部が生成される。したがって、ある気筒2の独立排気管(31,32,33のいずれか)から集合管部35に排気ガスが噴出されたときには、他の気筒2の排気ポート7に負圧が作用して、そこから排気ガスが下流側へと吸い出されることになる。これは、エゼクタ効果として知られている。
なお、エゼクタ効果は、ノズル部41の下流端部の面積(ストレート部42の面積に同じ)の等価円直径をD、独立排気管31,32,33の各下流端部の等価円直径をaとしたときに、a/D≧0.5であれば充分なエゼクタ効果が得られることが分かっている。このため、当実施形態でも、a/Dは0.5以上(例えば0.65)に設定される。ここで、等価円直径とは、ある形状をもった断面を面積が同じ真円に置き換えたときの直径のことである。
(5)制御系統
図9は、当実施形態のエンジンの制御系統を示すブロック図である。本図に示されるECU50は、エンジンを統括的に制御するためのマイクロプロセッサであり、周知のCPU、ROM、RAM等から構成されている。なお、ECU50は、本発明における「制御部」に相当する。
ECU50には、各種センサによる検出情報が入力される。例えば、ECU50は、上述したクランク角センサSN1およびエアフローセンサSN2と電気的に接続されており、これらのセンサにより検出された情報(つまりクランク角、エンジン回転速度、および吸気流量等の情報)がECU50に逐次入力されるようになっている。
また、車両には、当該車両を運転するドライバーにより操作されるアクセルペダルの開度(以下、アクセル開度という)を検出するアクセルセンサSN3が設けられており、当該アクセルセンサSN3による検出信号もECU50に逐次入力される。
ECU50は、上記各センサ(SN1〜SN3等)からの入力信号に基づいて種々の判定や演算等を実行しつつエンジンの各部を制御する。すなわち、ECU50は、インジェクタ10、点火プラグ11、吸気VVL14、排気SVT15、およびスロットル弁25等と電気的に接続されており、上記演算等の結果に基づいてこれらの機器にそれぞれ制御用の信号を出力する。
(6)運転領域ごとの制御
図10は、エンジンの回転速度/負荷に応じた制御の相違を示す運転マップである。本図に示すように、エンジンの運転領域は、第1運転領域A1、第2運転領域A2、および第3運転領域A3に大別される。第1運転領域A1は、負荷が所定負荷Lx未満でかつ回転速度が所定速度Nx未満となる低速・低負荷の領域であり、第2運転領域A2は、負荷が所定負荷Lx以上でかつ回転速度が所定速度Nx未満の低速・高負荷の領域であり、第3運転領域A3は、回転速度が所定速度Nx以上の高速領域である。
詳細は後述するが、第1運転領域A1は、混合気の自着火による燃焼であるCI燃焼を行う領域として設定されている。一方、第2運転領域A2および第3運転領域A3は、点火プラグ11を用いた火花点火による混合気の強制燃焼であるSI燃焼を行う領域として設定されている。ECU50は、エンジンの運転中、クランク角センサSN1の検出値からエンジン回転速度を特定するとともに、エアフローセンサSN2およびアクセルセンサSN3の各検出値からエンジン負荷(要求トルク)を特定する。そして、特定したエンジン回転速度/負荷の組合せに基づいて、上述した第1〜第3運転領域A1〜A3のいずれでエンジンが運転されているかを逐次判定し、判定した運転領域に応じた燃焼(CI燃焼またはSI燃焼)が行われるように、インジェクタ10、点火プラグ11、吸気VVL14、排気SVT15、およびスロットル弁25を制御する。
以下、第1運転領域A1および第2運転領域A2における制御の詳細について説明する。なお、第2運転領域A2および第3運転領域A3での制御は基本的に同一であるため、第3運転領域A3についての詳細な説明は省略する。以下の説明では、バルブタイミング等を具体的に特定するために排気行程や吸気行程等の各行程について「前期」「中期」「後期」といった用語を用いるが、これは次のことを前提とする。すなわち、本明細書では、任意の行程を3等分した場合の各期間を前から順に「前期」「中期」「後期」と定義する。このため、例えば排気行程の開始点(膨張下死点)を0°CAとした場合における排気行程の前期、中期、後期とは、それぞれ、0〜60°CA、60〜120°CA、120〜180°CAの各期間のことを指す。
(i)第1運転領域
図11は、第1運転領域A1での制御の具体例を説明するためのタイムチャートである。本図に示すように、第1運転領域A1では、インジェクタ10から燃焼室C(気筒2)に噴射された燃料と空気とが混合した混合気をピストン5の圧縮作用により自着火させるCI燃焼が実行される。具体的に、第1運転領域A1では、例えば吸気行程中の所定時期にインジェクタ10から燃料が噴射される(燃料噴射F1)。すると、この燃料噴射F1に基づき、燃料と空気とが比較的均質に混じり合った混合気(予混合気)が燃焼室Cに形成される。この混合気は、圧縮行程においてピストン5の圧縮作用により高温、高圧化し、圧縮上死点(圧縮行程と膨張行程の間のTDC)付近で自着火する。そして、このような自着火に基づき、波形W1に示すような熱発生を伴うCI燃焼が実現される。
第1運転領域A1での燃料噴射F1のタイミングは、圧縮上死点に近い所望のタイミングで混合気が自着火するように、演算等によって随時決定される。例えば、第1運転領域A1では、燃料を噴射してからその燃料が自着火するまでに要する時間等が各種条件(筒内温度等)に基づき予測され、その予測時間を考慮した適切なタイミングで燃料が噴射されるようにインジェクタ10が制御される。このため、図11のようにインジェクタ10から吸気行程中に燃料が噴射される例はあくまで一例であり、吸気行程以外のタイミングで燃料が噴射される場合もあり得る。例えば、条件によっては、1サイクル中に噴射すべき燃料の少なくとも一部が圧縮行程中に噴射されることもあり得る。また、燃料の噴射回数も1回に限られず、吸気行程から圧縮行程までの期間内で複数回に分けて燃料を噴射してもよい。
上記のとおり、第1運転領域A1では混合気が自着火により燃焼するので、点火プラグ11を駆動することは基本的に不要である。もちろん、混合気の自着火(CI燃焼)を促進するために、点火プラグ11を用いた火花点火により混合気中に初期火炎(もしくは火種)を形成することも考えられるが、当実施形態ではそのような火花点火を用いた自着火の促進は原則として採用されない。言い換えると、当実施形態において第1運転領域A1で行われる混合気の燃焼形態は、原則として、ピストン5の圧縮のみによって予混合気を自着火させる燃焼、つまりHCCI燃焼(Homogeneous-Charge Compression Ignition Combustion)である。
上記のようなCI燃焼(HCCI燃焼)を実現するため、第1運転領域A1では、吸気弁8および排気弁9の各リフト特性がそれぞれ図6に示した第1特性になるように、吸気VVL14および排気SVT15が制御される。すなわち、排気弁9の開閉タイミングが全体的に遅角側にシフトされるとともに、吸気弁8の最大リフト量および開弁期間がともに小さくされる。これにより、図11に示すように、吸気行程の前期に、排気弁9のみが開弁する第1期間T1が形成される。
第1期間T1は、排気ポート7から燃焼室Cに高温の既燃ガス(排気ガス)を逆流させる内部EGRを実現させる。詳しくは、ピストン5が下降を開始する吸気行程の前期において排気ポート7のみが開弁していることにより、排気ポート7に一旦導出された既燃ガスが低圧の燃焼室Cへと逆流し、有意な量の既燃ガスが燃焼室Cに残される(内部EGR)。この内部EGRは、燃焼室Cの温度である筒内温度を上昇させるので、混合気の自着火(CI燃焼)の促進につながる。
第1期間T1の終了と同時に吸気弁8が開弁を開始するが、この時点で排気弁9は依然として開弁状態にある。このため、当該第1期間T1に続く第2期間T2では、吸気弁8および排気弁9の双方が開弁している。すなわち、吸気弁8および排気弁9の双方が開弁するバルブオーバーラップ期間が形成される。このバルブオーバーラップ期間としての第2期間T2も、内部EGRを行うための期間として利用される。ただし、第2期間T2では排気弁9だけでなく吸気弁8も開弁しているため、排気弁9のみが開弁する第1期間T1に比べれば、既燃ガスは燃焼室Cに逆流し難くなる。言い換えると、燃焼室Cに残される既燃ガスの量である内部EGR量を確保するのにより有効なのは、排気弁9のみが開弁している第1期間T1である。つまり、当実施形態では、第1期間T1において排気弁9のみを開弁させることで十分に多くの内部EGR量を確保し、それによって点火プラグ11(火花点火)を原則利用しないCI燃焼(HCCI燃焼)を実現するようにしている。
第1運転領域A1での吸気弁8および排気弁9の開閉タイミングについて、図11を用いてより詳しく説明する。排気弁9は、膨張下死点(膨張行程と排気行程の間のBDC)もしくはその近傍である時点e1aで開き、吸気行程の中期に含まれる時点e2aで閉じる。吸気弁8は、排気上死点(排気行程と吸気行程の間のTDC)と排気弁9の閉時期e2aとの間であって吸気行程の前期に含まれる時点i1aで開き、吸気下死点(吸気行程と圧縮行程の間のBDC)の遅角側の近傍である時点i2aで閉じる。排気上死点から吸気弁8の開時期i1aまでの期間が、上述した第1期間T1であり、吸気弁8の開時期i1aから排気弁9の閉時期e2aまでの期間が、上述した第2期間T2である。排気弁9のみが開弁する第1期間T1の間、排気弁9のリフト量は、図7に示した棚部X2に対応する値(第2リフト量Q2)で略一定とされる。
(ii)第2運転領域
第1運転領域A1よりも負荷が高い第2運転領域A2では、図12に示すような制御が実行される。すなわち、インジェクタ10からの燃料噴射により燃焼室C(気筒2)に形成された混合気に対し点火プラグ11の火花点火SPによる放電エネルギーを供給することにより、点火点からの火炎伝播により混合気を燃焼させるSI燃焼が実行される。具体的に、第2運転領域A2では、例えば吸気行程中の所定時期にインジェクタ10から燃料が噴射される(燃料噴射F2)。その後、圧縮上死点の近傍で点火プラグ11による火花点火SPが実行され、燃料噴射F2による供給燃料と空気とが混合した混合気が強制的に着火させられる。そして、このような強制着火に基づき、波形W2に示すような熱発生を伴うSI燃焼が実現される。
なお、図12では、インジェクタ10から吸気行程中に燃料を噴射するケースを代表的に例示したが、第2運転領域A2での燃料噴射F2のタイミングは必ずしも吸気行程中に限られない。例えば、1サイクル中に噴射すべき燃料の少なくとも一部を圧縮行程中に噴射することも可能である。また、燃料の噴射回数も1回に限られず、吸気行程から圧縮行程までの期間内で複数回に分けて燃料を噴射してもよい。
上記のように、第2運転領域A2は、火花点火SPによる混合気の強制燃焼が行われる領域であり、しかも筒内温度が高くなり易い高負荷の領域であるため、内部EGRにより筒内温度を意図的に上昇させることは不要である。そこで、第2運転領域A2では、吸気弁8および排気弁9の各リフト特性がそれぞれ図6に示した第2特性になるように、吸気VVL14および排気SVT15が制御される。すなわち、排気弁9の開閉タイミングが全体的に進角側にシフトされるとともに、吸気弁8の最大リフト量および開弁期間がともに大きくされる。これにより、図12に示すように、吸気行程中に排気弁9のみが開弁する期間は存在しなくなり、代わりに、排気上死点の前後に亘って吸気弁8および排気弁9の双方が開弁するバルブオーバーラップ期間、つまり第3期間T3が形成される。
第2運転領域A2での吸気弁8および排気弁9の開閉タイミングについて、図12を用いてより詳しく説明する。排気弁9は、膨張下死点から進角側に離れかつ膨張行程の後期に含まれる時点e1bで開き、吸気行程の前期に含まれる時点e2bで閉じる。吸気弁8は、排気行程の後期に含まれる時点i1bで開き、圧縮行程の前期に含まれる時点i2bで閉じる。吸気弁8の開時期i1bから排気弁9の閉時期e2bまでの期間が、上述した第3期間T3(バルブオーバーラップ期間)である。
(7)作用効果
以上説明したように、当実施形態の多気筒エンジンでは、複数の独立排気管31〜33の各下流端部が先細り状に(下流側ほど断面積が小さくなるように)形成されるとともに、各下流端部が集約された集約部34に共通の集合管部35が接続されている。エンジン負荷が比較的低い第1運転領域A1では、図11に示すように、膨張下死点の近傍から吸気行程の途中(より詳しくは吸気行程の中期)までの一連の期間に亘って排気弁9が開弁するように排気SVT15が制御されるとともに、混合気の自着火による燃焼であるCI燃焼が各気筒2で行われる。一方、第1運転領域A1よりも負荷の高い第2運転領域A2では、図12に示すように、排気弁9の開時期および閉時期が同量ずつ進角側にずれる(作動位相が進角する)ように排気SVT15が制御されるとともに、火花点火による混合気の強制燃焼であるSI燃焼が各気筒2で行われる。このような構成によれば、第1運転領域A1(低負荷域)でのCI燃焼と第2運転領域A2(高負荷域)でのSI燃焼とを比較的簡単な構成で両立できるという利点がある。
すなわち、上記実施形態では、CI燃焼が行われる第1運転領域A1において、排気行程を過ぎて吸気行程の中期まで排気弁9が継続的に開弁されるので、排気弁9が吸気行程中に開弁している期間(図11の第1期間T1および第2期間T2)の間、排気ポート7から気筒2内に既燃ガス(排気ガス)を引き戻すことができ(内部EGR)、当該内部EGRによって気筒2を高温化することができる。これにより、混合気の自着火を促進することができ、当該自着火に基づく適切なCI燃焼を実現することができる。
一方、SI燃焼が行われる第2運転領域A2では、排気弁9の開閉時期(作動位相)が進角側にシフトされるので、吸気行程中の排気弁9の開弁期間(T1,T2)が縮小され、内部EGRが起き難くなる。むしろ、第2運転領域A2では、任意の気筒2から排出されて集合管部35へと流入する排気ガスを利用したエゼクタ効果により、他の気筒2から排気ガスを積極的に吸い出すことができる。これにより、各気筒2に残留する高温の排気ガスを排気ポート7を通じて効率よく排出することができ、各気筒2の掃気性(排気ガスと吸入空気との置換性)を向上させることができる。なお、エゼクタ効果とは、高速で流入する駆動流体の周囲に発生する負圧を利用して被駆動流体を吸引する作用のことである。このようなエゼクタ効果による掃気性の向上は、筒内温度を十分に低下させるので、例えばプリイグニッション(火花点火による狙いの着火時期よりも前に混合気が自着火する現象)のような異常燃焼が起きる可能性を十分に低減でき、適切なSI燃焼を実現することができる。
すなわち、エンジン負荷が高い第2運転領域A2では、混合気の燃焼温度および燃焼圧力が高いので、各気筒2の排気弁9の開弁直後に、排気ポート7から非常に強い勢いで排気ガスが排出される(以下では、このように排気弁9の開弁直後に生じる強い勢いの排気ガスのことをブローダウンガスという)。ブローダウンガスは、独立排気管(31〜33のいずれか)を通じて強い勢いを保持したまま集合管部35に流入し、その際にブローダウンガスの周囲に強い負圧を発生させる(エゼクタ効果)。このエゼクタ効果による負圧は、各気筒2からの排気ガスの排出を促進し、各気筒2の筒内温度を低下させる。例えば、第1気筒2Aよりも燃焼順序が1つ後の第3気筒2Cからのブローダウンガスが第2独立排気管32を通じて集合管部35に流入すると、当該流入に伴って集合管部35内に強い負圧が発生する(エゼクタ効果)。このエゼクタ効果による負圧は、第1独立排気管31を遡って第1気筒2Aの排気ポート7に作用する。このとき、第1気筒2Aは排気行程の終了直前の状態(排気上死点の近傍)にあるから、上記のように排気ポート7に負圧が作用するのに応じて、第1気筒2Aでは、その内部に残っている既燃ガス(排気ガス)が閉止直前の排気ポート7を通じて下流側に吸い出され、残留排気ガスの量が可及的に減らされる。このことは、燃焼順序が連続する他の気筒の組合せにおいても同様である。このように、第2運転領域A2では、エゼクタ効果に基づく吸引作用により各気筒2の掃気性が高められるので、上述した排気弁9の開閉時期の進角(つまり吸気行程中の排気弁9の開弁期間の縮小)と相俟って、筒内温度を十分に低下させることができ、プリイグニッション等の異常燃焼を伴わない適切なSI燃焼を実現することができる。
しかも、エゼクタ効果により生じる負圧を利用して掃気性を高めているので、排気SVT15として排気弁9の開時期および閉時期を同量ずつシフトさせる比較的簡易なタイプの可変機構を用いながらも、各気筒2から排気ガスを効率よく排出させて筒内温度を十分に低下させることができ、第2運転領域A2で懸念される異常燃焼を効果的に抑制することができる。
また、上記実施形態では、CI燃焼が行われる第1運転領域A1において、吸気行程の前期に排気弁9のみが開弁する期間(図11の第1期間T1)が生じるように吸気VVL14および排気SVT15が制御されるので、当該期間中に十分な量の既燃ガスを内部EGRガスとして気筒2内に引き戻すことができ、混合気の自着火(CI燃焼)を促進するのに十分なレベルの温度まで筒内温度を上昇させることができる。このことは、例えば点火プラグ11を用いた火花点火により初期火炎を形成するといった、一種のアシスト燃焼を行わせることが基本的に不要になることを意味する。これにより、高い確率で混合気の全てをCI燃焼させる(HCCI燃焼を実現する)ことが可能になるので、エンジンの熱効率を効果的に向上させることができる。
また、上記実施形態では、SI燃焼が行われる第2運転領域A2において、吸気弁8が排気行程の後期に開きかつ排気弁9が吸気行程の前期に閉じるように、言い換えると排気上死点の前後に亘って吸・排気弁8,9の双方が開くオーバーラップ期間(図12の第3期間T3)が形成されるように、吸気VVL14および排気SVT15が制御されるので、上述したエゼクタ効果により集合管部35に生じた負圧が当該オーバーラップ期間中に排気ポート7に作用したときに、吸気ポート6から排気ポート7へと吹き抜ける吸気の流れが生成される。これにより、気筒2内の掃気が一層促進されるので、異常燃焼が発生する確率をより低減することができる。
また、上記実施形態では、SI燃焼が行われる第2運転領域A2において、膨張下死点から進角側に離れかつ膨張行程の後期に含まれるタイミングで排気弁9が開くように排気SVT15が制御されるので、エゼクタ効果による負圧を適切なタイミングで各気筒2の排気ポート7に作用させることができ、掃気性を高めることができる。すなわち、エンジン負荷が高いために気筒2から多量の排気ガスが排出される第2運転領域A2において、仮に膨張下死点もしくはこれよりも遅角側で排気弁9を開くようにした場合には、任意の気筒2の排気弁9の開弁直後に高速で排出される排気ガス(ブローダウンガス)が集合管部35に到達してエゼクタ効果が生じるタイミングが遅くなり、当該エゼクタ効果による負圧を適切なタイミングで他の気筒2(燃焼順序が1つ前の気筒)に作用させることが困難になるおそれがある。これに対し、上記実施形態では、膨張下死点よりも進角側(膨張行程の後期)で排気弁9が開かれるので、エゼクタ効果による負圧を、上記他の気筒が排気上死点近傍にある適切なタイミングで排気ポート7に作用させることができ、当該負圧を利用して各気筒2の掃気性を十分に高めることができる。
特に、上記実施形態では、排気弁9の開弁期間(開時期から閉時期までの期間)が吸気弁8の開弁期間よりも長く設定されているので、第1運転領域A1において吸気行程中の排気弁9の開弁期間(図11の第1期間T1および第2期間T2)を十分に確保しながら、第2運転領域A2では上記のように排気弁9が比較的早いタイミングで開くというセッティングを支障なく実現することができる。
また、上記実施形態では、山部X1、棚部X2、および裾部X3を有する図7に示したリフト特性が排気弁9に付与されるように、カムシャフト13aのカム部(排気カム)の形状が設定されているので、排気弁9の開閉時期(作動位相)を十分な幅をもって変更可能としながら、排気弁9がピストン5と干渉するのを有効に回避することができる。例えば、第2運転領域A2での運転時に、排気上死点における排気弁9のリフト量が棚部X2に対応する値(図7の第2リフト量Q2)になるようにリフト特性を設定しておけば、第1運転領域A1への移行に伴い排気弁9の開閉時期が比較的大きく変更されたとしても、排気上死点における排気弁9のリフト量は、棚部X2に対応する第2リフト量Q2もしくはその近傍の値に維持される。このように、リフト量が一定の棚部X2を含むリフト特性を排気弁9に付与した場合には、排気上死点でのリフト量を略一定に保ちながら排気弁9の開閉時期を変更できるので、当該開閉時期の調整幅の確保と、排気弁9とピストン5との干渉回避とを高次元に両立することができる。
また、上記実施形態において、集合管部35は、下流側ほど断面積が小さくなるノズル部41と、断面積が略一定のストレート部42と、下流側ほど断面積が大きくなるディフューザ部43とを上流側からこの順に有しているので、独立排気管31,32,33の各下流端から集合管部35に駆動流体として流入する排気ガス(ブローダウンガス)をノズル部41において加速することができ、当該駆動流体の周りに生じる負圧を強化することができる。これにより、エゼクタ効果をより効率よく生じさせることができ、第2運転領域A2での気筒2の掃気性を向上させることができる。また、ノズル部41によって一旦加速された排気ガスを、ストレート部42およびディフューザ部43によって減速させて排気ガスの圧力を回復させることができる。
(8)変形例
上記実施形態では、上流側で二股に分岐したY字状の第2独立排気管32を第2気筒2Bおよび第3気筒2Cに接続するとともに、単管状の第1、第3独立排気管31,33を第1気筒2Aおよび第4気筒2Dにそれぞれ接続することにより、4つの気筒2A〜2Dに対し3つの独立排気管31,32,33を用意するようにしたが、第1、第3独立排気管31,33と同様の単管状の排気管を全ての気筒2A〜2Dに接続することにより、気筒2A〜2Dと同数の(4つの)独立排気管を用意するようにしてもよい。すなわち、本発明の多気筒エンジンに用いられる複数の独立排気管は、各気筒から排出された排気ガスが各独立排気管を個別に流通するように配設されていればよく、各独立排気管は、単一の気筒から延びる単管状の排気管であってもよいし、燃焼順序が連続しない複数の気筒の各排気ポートから延びて下流側で合流する分岐形状を有した排気管であってもよい。
上記実施形態では、CI燃焼が行われる第1運転領域A1において、膨張下死点もしくはその近傍の時点e1a(図11)で排気弁9が開くように排気SVT15を制御したが、第1運転領域A1での排気弁9の開時期は、膨張行程の後期から排気行程の前期までの期間のいずれかに含まれていればよく、必ずしも膨張下死点もしくはその近傍でなくてもよい。
上記実施形態では、吸気弁8に適用される吸気可変機構として、最大リフト量および開弁期間が異なる2つの特性の間でリフト特性を択一的に切り替える吸気VVL14を設けたが、吸気可変機構は、少なくとも吸気弁の開時期を変更可能なものであればよく、その限りにおいて種々のタイプの可変機構を吸気弁に適用することが可能である。例えば、上記実施形態で用いた吸気VVL14に加えて、排気SVT15と同様の位相式の可変機構を吸気弁8に適用してもよい。また、吸気VVL14に代えて、吸気弁8の最大リフト量および開弁期間を無段階に(もしくは2段階よりも多い多段階に)変更するタイプの可変機構を吸気弁8に適用してもよい。
上記実施形態では、リフト量が一定の棚部X2を含むリフト特性(図7)を排気弁9に付与にしたが、同リフト特性における棚部X2は、クランク角に対するリフト量の変化率の最大値が他の部分(山部X1および裾部X3)と比べて十分に小さくなるように設定されていればよい。すなわち、棚部X2は、その始期から終期に亘って完全に同一のリフト量を有するものである必要はなく、ある微小範囲内で変動するリフト量を有するものであってもよい。
上記実施形態では、直列4気筒エンジンに本発明を適用した例について説明したが、本発明を適用可能なエンジンは、ある気筒の排気弁の開弁直後に排出されるブローダウンガスを利用したエゼクタ効果による負圧を他の気筒の排気ポートに及ぼすことが可能な多気筒エンジンであればよく、その限りにおいて種々の形式のエンジンに本発明を適用することが可能である。例えば、4以外の気筒数を有する多気筒エンジンや、V型多気筒エンジンに本発明を適用してもよい。
1 エンジン本体
2(2A〜2D) 気筒
6 吸気ポート
7 排気ポート
8 吸気弁
9 排気弁
10 インジェクタ(燃料供給装置)
11 点火プラグ
14 吸気VVL(吸気可変機構)
15 排気SVT(排気可変機構)
30 排気通路
31〜33 独立排気管
34 集約部
35 集合管部
41 ノズル部
42 ストレート部
43 ディフューザ部
50 ECU(制御部)
A1 第1運転領域
A2 第2運転領域
X1 山部
X2 棚部
X3 裾部

Claims (8)

  1. 複数の気筒を含むエンジン本体と、
    前記エンジン本体に接続されかつ前記各気筒から排出された排気ガスが流通する排気通路と、
    前記各気筒での燃焼を制御する制御部とを備え、
    前記エンジン本体は、
    前記各気筒に連通する吸気ポートおよび排気ポートをそれぞれ開閉する吸気弁および排気弁と、
    前記排気弁の開時期および閉時期を同量ずつ変更可能な位相式の排気可変機構と、
    前記各気筒に燃料を供給する燃料供給装置と、
    前記燃料供給装置から供給された燃料と空気とが混合した混合気に点火する点火プラグとを有し、
    前記排気通路は、
    複数の前記気筒の各排気ポートに接続された複数の独立排気管と、
    前記各独立排気管の下流端部が互いに独立状態を維持したまま近接する集約部と、
    前記集約部の下流側に接続され、前記独立排気管の全てと連通する共通の空間が内部に形成された集合管部とを有し、
    前記集約部に対応する各独立排気管の下流端部は、下流側に至るほど断面積が小さくなるように形成され、
    前記制御部は、
    所定の第1運転領域において、膨張行程の後期または排気行程の前期に含まれる所定時期から吸気行程の途中までの一連の期間に亘って前記排気弁が開弁するように前記排気可変機構を制御するとともに、混合気の自着火による燃焼であるCI燃焼が前記各気筒で行われるように前記燃料供給装置を制御し、
    前記第1運転領域よりも負荷の高い第2運転領域において、前記第1運転領域のときよりも前記排気弁の開閉時期が進角するように前記排気可変機構を制御するとともに、火花点火による混合気の強制燃焼であるSI燃焼が前記各気筒で行われるように前記燃料供給装置および前記点火プラグを制御する、ことを特徴とする多気筒エンジン。
  2. 請求項1に記載の多気筒エンジンにおいて、
    前記吸気弁の少なくとも開時期を変更可能な吸気可変機構をさらに備え、
    前記第1運転領域での運転時、前記制御部は、吸気行程の前期に前記排気弁のみが開弁する期間が生じるように前記吸気可変機構および前記排気可変機構を制御する、ことを特徴とする多気筒エンジン。
  3. 請求項2に記載の多気筒エンジンにおいて、
    前記第2運転領域での運転時、前記制御部は、前記吸気弁が排気行程の後期に開きかつ前記排気弁が吸気行程の前期に閉じるように、前記吸気可変機構および前記排気可変機構を制御する、ことを特徴とする多気筒エンジン。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の多気筒エンジンにおいて、
    前記第2運転領域での運転時、前記制御部は、膨張下死点よりも進角側でかつ膨張行程の後期に含まれるタイミングで前記排気弁が開くように前記排気可変機構を制御する、ことを特徴とする多気筒エンジン。
  5. 請求項4に記載の多気筒エンジンにおいて、
    前記排気弁の開時期から閉時期までの期間である開弁期間は、前記吸気弁の開弁期間よりも長い、ことを特徴とする多気筒エンジン。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の多気筒エンジンにおいて、
    前記排気弁のリフト特性は、クランク角の進行に応じてリフト量が山型に増減する山部と、当該山部に連なりかつリフト量がゼロより大きい値で略一定になる棚部と、当該棚部に連なりかつリフト量がゼロへと漸減する裾部とを有するように設定されている、ことを特徴とする多気筒エンジン。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の多気筒エンジンにおいて、
    前記集合管部は、前記集約部の下流端に接続されかつ下流側ほど断面積が小さくなるように形成されたノズル部と、ノズル部の下流側に連なりかつ断面積が略一定となるように形成されたストレート部と、ストレート部の下流側に連なりかつ下流側ほど断面積が大きくなるように形成されたディフューザ部とを有する、ことを特徴とする多気筒エンジン。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の多気筒エンジンにおいて、
    前記エンジン本体は4つの前記気筒を有する、ことを特徴とする多気筒エンジン。
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