JP2013050629A - 電子写真トナー用バインダー組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】資源活用及び環境保護の観点から有意義な新規のトナー用バインダーを提供すること。
【解決手段】本発明による電子写真トナー用バインダー組成物は、エポキシドと二酸化炭素とが実質的に完全に交互に結合して得られたポリカーボネートであって、1H−NMR分析により検出可能なエーテル結合成分を含まないポリカーボネートを含むことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子写真トナー用バインダー組成物に関し、特には二酸化炭素から得られる脂肪族ポリカーボネートをトナー用バインダーとして用いることに関する。
ポリカーボネートを含む合成樹脂の製造分野において、二酸化炭素を炭素源として利用することは、資源活用及び環境保護の観点から重要な課題である。また、ポリカーボネートは、軽量性、透明性等の優れた特性を有し、中でも脂肪族ポリカーボネートは、生分解性を有することで環境負荷が低い点でも重要な樹脂といえる。従って、二酸化炭素を炭素源として利用した脂肪族ポリカーボネートの新たな用途を見出すことは、資源活用及び環境保護の観点から大きな意義がある。
電子写真用プロセスでは、紙等の上に転写されたトナーを定着するために、熱ロールを用いる方法が広く採用されている。この方法では、定着する下限温度は低いことが望ましく、一方で高温オフセットが発生する温度は高いことが望ましい。また、近年の省エネ定着に対応して樹脂の低軟化点化が望まれている。これらの性質を満足させるべく、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、ポリエステル系共重合体に代表される軟化点を制御した分子量分布の広いトナーバインダーが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
一方、エポキシドと二酸化炭素とが交互に結合して得られたポリカーボネートであって、1H−NMR分析により検出可能なエーテル結合成分を含まないポリカーボネートが開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のポリカーボネートは、二酸化炭素を炭素源として利用し、安価かつ合成が容易なコバルト触媒を使用して高収率で製造することができ、また、完全交互共重合体であることにより従来にない高い諸物性を発揮し、新規用途の開発に寄与するとされる。しかし、これらの技術により製造されるポリカーボネートが、電子写真用トナーのためのバインダーとしてどのような効果が期待されるかについては、何らの示唆もない。
特開2009−215529号公報
面谷信監修、「トナーおよびトナー材料の最新技術」、株式会社シーエムシー、2000年2月、第11章
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、資源活用及び環境保護の観点から有意義な二酸化炭素から合成されるポリカーボネートを、電子写真トナー用バインダーに応用することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、エポキシドと二酸化炭素とが実質的に完全に交互に結合して得られたポリカーボネートが、電子写真トナー用バインダーに適した特性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記一般式(1):
Figure 2013050629
(式中、R1及びR2は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、又は置換若しくは非置換の芳香族基であるか、又はR1とR2が互いに結合して置換若しくは非置換の環を形成してもよい)
で表されるエポキシドと二酸化炭素とが交互に結合して得られたポリカーボネートであって、1H−NMR分析により検出可能なエーテル結合成分を含まないポリカーボネートを含むことを特徴とする電子写真トナー用バインダー組成物を提供するものである。
本発明によるバインダー組成物は、上記エポキシドがエチレンオキシド又はプロピレンオキシドであることにより、上記ポリカーボネートがポリエチレンカーボネート又はポリプロピレンカーボネートであることが好ましい。
また本発明によるバインダー組成物は、上記ポリカーボネートのガラス転移温度Tgが35〜55℃の範囲内にあることが好ましい。
さらに本発明によるバインダー組成物は、上記ポリカーボネートの180℃における貯蔵弾性率(G’)が1×10〜1×10Paの範囲内にあることが好ましい。
また本発明によるバインダー組成物は、上記ポリカーボネートの40℃における貯蔵弾性率(G’)が1×10〜1×10Paの範囲内にあることが好ましい。
さらに本発明は、上記バインダー組成物を含んでなる電子写真用トナーをも提供する。
本発明による電子写真トナー用バインダー組成物は、原料の一部として二酸化炭素を使用するポリカーボネートを含むため、資源活用及び環境保護の観点から有意義である。また、生分解性を有する脂肪族ポリカーボネートを使用した場合には、環境負荷低減の観点からも更に有意義である。
実施例で使用したポリプロピレンカーボネートの動的粘弾性(測定温度−50〜70℃)を示すグラフである。 実施例で使用したポリプロピレンカーボネートの動的粘弾性(測定温度70〜200℃)を示すグラフである。
電子写真トナーとは着色用の微粒子である。電子写真法において、トナーは、露光プロセスによって感光体表面に形成された静電潜像を現像・転写・定着プロセスを経て、記録紙上に画像を可視化する材料である。トナーの約45〜90質量%はバインダーで占められる。したがって、バインダーの特性がトナーの性能に大きく影響する。例えば、トナーは、加熱及び加圧によって溶融し、記録紙の繊維に浸透したのち、固化することで定着が完了する。その際、バインダーは加熱による溶融、冷却による固化の性能を左右する重要な役割を有する。定着方法としては、高速化・安全性などからヒートローラー定着が主流である。この定着工程で問題となるのがオフセット現象である。すなわち、ヒートローラー温度が低すぎるときは、バインダーの溶融が不十分となり、トナーの記録紙への浸透が不十分となるため、画像が欠落するコールドオフセット現象を生じる(低温定着性の悪化)。反対に、ヒートローラー温度が高すぎるときは、バインダーの浸透後の固化が不十分となり、トナーの定着が不均一となるため、記録紙の画像に濃淡を生じるホットオフセット現象が起こる(耐高温オフセット性の悪化)。このように、電子写真トナーには、低温定着性と耐高温オフセット性を両立させる特性が求められる。
一般に、低温域から高温域まで幅広い温度範囲でトナーを定着させるため、トナー用バインダーは、低温域で低粘度であり、かつ、高温域で高い凝集力を保持することが要求される。具体的には、バインダーは、第一に、ガラス転移温度Tgが45℃付近にあることで、低温域で即座に溶融して記録紙に十分浸透する必要がある。第二に、バインダーの貯蔵弾性率G’を180℃付近において1×10Pa以上とし、高温域で溶融トナーをヒートローラー側に付着させないことが必要である。さらに、バインダーの貯蔵弾性率G’は、保存中におけるトナーの変形を防止するため、40℃付近においては1×10Pa以上であることが望ましい。
本発明によるポリカーボネートは、エポキシドと二酸化炭素とが実質的に完全に交互に結合しているため、上述の低温定着性と耐高温オフセット性を両立させる特性を具備している。具体的には、本発明によるポリカーボネートは、ガラス転移温度Tgが35〜55℃、好ましくは40〜50℃、より好ましくは43〜47℃の範囲内にあることにより、トナーに良好な低温定着性を付与することができる。また本発明によるポリカーボネートは、180℃における貯蔵弾性率G’が1×10〜1×10Pa、好ましくは2×10〜1×10Pa、より好ましくは2×10〜5×10Paの範囲内にあることにより、トナーに良好な耐高温オフセット性を付与することができる。さらに本発明によるポリカーボネートは、40℃における貯蔵弾性率G’が1×10〜1×10Pa、好ましくは1×10〜1×10Paの範囲内にあることにより、トナーに十分な保存性を付与することができる。なお、貯蔵弾性率G’は、JIS K 7244−7:1999及び同7244−10:2005に準拠して測定した値を意味する。
本発明によるトナー用バインダーは、次の一般式(1):
Figure 2013050629
(式中、R1及びR2は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、又は置換若しくは非置換の芳香族基であるか、又はR1とR2が互いに結合して置換若しくは非置換の環を形成してもよい)
で表されるエポキシドと二酸化炭素とが交互に結合して得られたポリカーボネートであって、1H−NMR分析により検出可能なエーテル結合成分を含まないポリカーボネートである。
上記ポリカーボネートの原料として用いられる一般式(1):
Figure 2013050629
で表されるエポキシドにおいて、R1及びR2は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、又は置換若しくは非置換の芳香族基であるか、又はR1とR2が互いに結合して置換若しくは非置換の環を形成してもよい。
1及びR2のアルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状の置換又は非置換のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−メチル−1−エチル−n−ペンチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、1−エチル−1,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−2,2−ジメチル−n−プロピル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられ、より好ましくはメチル基である。該アルキル基は、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、芳香族基等から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
1及びR2の置換又は非置換の芳香族基としては、炭素数6〜10の置換又は非置換の芳香族基が好ましく、例えば、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基等の置換又は非置換の芳香族炭化水素基が挙げられ、より好ましくはフェニル基である。該芳香族基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基等から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
1及びR2は、互いに結合して置換又は非置換の環を形成してもよく、好ましくは炭素数4〜10の置換又は非置換の脂肪族環を形成してもよい。例えば、R1及びR2が、−(CH24−を介して互いに結合した場合、シクロヘキサン環を形成する。このように形成された環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基等から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
上記一般式(1)で表されるエポキシドの中で特に好ましいものの具体例としては、次の式(1−1)〜(1−4)のものが挙げられる。
Figure 2013050629
本発明によるポリカーボネートの合成において、用いる触媒は、1H−NMR分析により検出可能なエーテル結合成分を含まないポリカーボネートを生成することができるものであれば特に制限されないが、例えば、次の一般式(2):
Figure 2013050629
(式中、R3及びR4は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換の芳香族基、又は置換若しくは非置換の芳香族複素環基であってよい)
で表される光学活性コバルト錯体を用いることができる。
3及びR4の置換又は非置換のアルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖状の置換又は非置換のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。該アルキル基は、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、芳香族基等から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
3及びR4の置換又は非置換の芳香族基としては、炭素数6〜10の置換又は非置換の芳香族基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等の置換又は非置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。該芳香族基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基等から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
3及びR4の置換又は非置換の芳香族複素環基としては、炭素数5〜10の置換又は非置換の芳香族複素環基が好ましく、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラリジニル基、キノリル基、イソキノリル基等の置換又は非置換の芳香族複素環基が挙げられる。該芳香族複素環基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基等から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
また、2個のR3同士又は2個のR4同士は、互いに結合して置換又は非置換の環を形成してもよく、好ましくは炭素数4〜10の置換又は非置換の脂肪族環を形成してもよい。例えば、R3及びR4が−(CH24−を介して互いに結合した場合、シクロヘキサン環を形成する。このように形成された環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基等から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
さらに、R5、R6及びR7は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換の芳香族基、置換若しくは非置換の芳香族複素環基、アシル基、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換の芳香族オキシカルボニル基、又は置換若しくは非置換のアラルキルオキシカルボニル基である。
5、R6及びR7の置換又は非置換のアルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖状の置換又は非置換のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状の置換又は非置換のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。該アルキル基は、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、芳香族基等から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
5、R6及びR7の置換又は非置換のアルケニル基としては、炭素数2〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基が好ましく、より好ましくは炭素数2〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基、例えば、ビニル基、2−プロペニル基等が挙げられる。該アルケニル基は、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、芳香族基等から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
5、R6及びR7の芳香族基としては、炭素数6〜10の置換又は非置換の芳香族基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等の置換又は非置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。該芳香族基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基等から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
5、R6及びR7の置換又は非置換の芳香族複素環基としては、炭素数5〜10の置換又は非置換の芳香族複素環基が好ましく、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラリジニル基、キノリル基、イソキノリル基等の置換又は非置換の芳香族複素環基が挙げられる。該芳香族複素環基は、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、ハロゲン原子基、ニトロ基、シアノ基等から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
5、R6及びR7のアシル基としては、炭素数1〜20のアシル基が好ましく、例えば、ホルミル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基等の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、3,5−ジメチルベンゾイル基、2,4,6−トリメチルベンゾイル基、2,6−ジメトキシベンゾイル基、2,4,6−トリメトキシベンゾイル基、2,6−ジイソプロポキシベンゾイル基、1−ナフチルカルボニル基、2−ナフチルカルボニル基、9−アントリルカルボニル基等の芳香族アシル基等が挙げられる。
5、R6及びR7の置換又は非置換のアルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜20の置換又は非置換のアルコキシカルボニル基が好ましく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、シクロオクチルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基が挙げられる。該アルコキシカルボニル基は、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、芳香族基等から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
5、R6及びR7の置換又は非置換の芳香族オキシカルボニル基としては、炭素数7〜20の置換又は非置換の芳香族オキシカルボニル基が好ましく、例えば、フェノキシカルボニル基が挙げられる。該芳香族オキシカルボニル基は、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、ハロゲン原子基、ニトロ基、シアノ基等から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
5、R6及びR7の置換又は非置換のアラルキルオキシカルボニル基としては、炭素数7〜20のアラルキルオキシカルボニル基が好ましく、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基等が挙げられる。該アラルキルオキシカルボニル基は、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、芳香族基、アルコキシアルキレンオキシ基、例えばメトキシエチレンオキシ基等から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
さらに、R6及びR7は、互いに結合して環を形成してもよく、好ましくは炭素数4〜10の置換又は非置換の脂肪族環を形成してもよい。例えば、R6及びR7が−(CH24−を介して互いに結合した場合、シクロヘキサン環を形成する。このように形成された環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基等から選択される1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
一般式(2)で表される光学活性コバルト錯体の中で特に好ましいものの具体例としては、次の式(2−1)〜(2−11)のものが挙げられる。
Figure 2013050629
Figure 2013050629
Figure 2013050629
また、一般式(2)で表される光学活性コバルト錯体から誘導して得られる、一般式(3):
Figure 2013050629
で表される光学活性コバルト錯体も、本発明で用いられるポリカーボネートを製造するための触媒として有効であり、ここでR3、R4、R5、R6、R7は一般式(2)について定義した通りであり、X-は、塩を形成し得る陰イオン対を表す。
一般式(3)におけるX-としては、I-、SbF6 -、CF3SO3 -、p−CH364SO3 -、BF4 -、OCOCF3 -、NO2 -、NO3 -、CH3CO2 -、OBz-、OBzF5 -、OBz(3,5CF3-、OBz(3,5Cl)-、OBz(4Me2N)-、OBz(4tBu)-、F-、Cl-、Br-、OH-、PF6 -、BPh4 -、SbF6 -、ClO4 -、OTf-、又はOTs-等が挙げられ、好ましくOBzF5 -、OBz-、NO3 -、OCOCF3 -、又はI-である。
一般式(3)で表される光学活性コバルト錯体の中で特に好ましいものの具体例としては、次の式(3−1)〜(3−14)のものが挙げられる。
Figure 2013050629
Figure 2013050629
Figure 2013050629
本発明に用いられるポリカーボネートは、次の一般式(4):
Figure 2013050629
で表され、ここでR1及びR2は上記のとおりである。
一般式(4)で表されるポリカーボネートの数平均分子量の範囲は、所期のガラス転移温度Tg及び貯蔵弾性率G’を提供する限り特に制限はない。上記数平均分子量の下限は、例えば、約1,000、約3,000、約5,000、約1万、約3万、約5万等であることができ、そして上記数平均分子量の上限は、例えば、約25万、約20万、約10万、約5万等であることができ、これら数平均分子量の下限及び上限を任意に組み合わせた範囲とすることができる。一般式(4)で表されるポリカーボネート樹脂の中で特に好ましいものの具体例としては、次の式(4−1)〜(4−4)のものが挙げられる。
Figure 2013050629
一般式(2)で表される光学活性コバルト錯体を用いたポリカーボネートの合成において、求核剤を使用することができる。求核剤は重合開始剤として働くが、求核剤を使用しない場合は痕跡量の水が重合開始剤として働いているものと考えられる。求核剤としては、ビス(トリフェニルホスフォラニリデン)アンモニウムクロリド(PPNCl)、ピペリジン、ビス(トリフェニルホスフォラニリデン)アンモニウムフルオリド(PPNF)、ビス(トリフェニルホスフォラニリデン)アンモニウムペンタフルオロベンゾエート(PPNOBzF5)、nBu4NCl、nBu4NBr、nBu4NBr3、nBu4NI、nBu4NOAc、Ph3P等が挙げられ、好ましくはPPNCl、PPNF、PPNOBzF5又はnBu4NClであり、より好ましくはPPNFである。
さらに、1H−NMR分析により検出可能なエーテル結合成分を含まないポリカーボネートを生成することができる触媒として、次の一般式(5):
Figure 2013050629
のコバルト錯体を挙げることができる。
一般式(5)のコバルト触媒において、Raは、それぞれ独立して、H、炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアシロキシ基、F、Cl、Br、I、又は−Si(Rb2−Rc−Xから選択され、但しRaの少なくとも1つは−Si(Rb2−Rc−Xである。ここで、−Si(Rb2−Rc−Xはシリル置換基を表し、Rbは、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14のアリール基から選択され、Rcは、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜3の二価の炭化水素基であり、Xは、F、Cl、Br又はIから選択される。
シリル置換基−Si(Rb2−Rc−Xにおける、Rbの具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの、直鎖又は分岐のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,6−キシリル基、メシチル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントリル基などの置換又は非置換のアリール基などが挙げられる。また、Rcの具体例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチルメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基などの直鎖又は分岐の二価の炭化水素基が挙げられる。Rbは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、又はフェニル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、又はフェニル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。Rcは、メチレン基、エチレン基、又はプロピレン基であることが好ましく、メチレン基であることがより好ましい。Xは、Cl、Br又はIであることが好ましく、Clであることがより好ましい。
aの具体例として、H;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの、直鎖又は分岐のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,6−キシリル基、メシチル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントリル基などの置換又は非置換のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、ビニルオキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、アリルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基などのアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、デカノイル基などのアシル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基などのアシロキシ基;F、Cl、Br、I;フロロメチルジメチルシリル基、クロロメチルジメチルシリル基、ブロモメチルジメチルシリル基、ヨードメチルジメチルシリル基、クロロメチルジエチルシリル基、クロロメチルジ(イソプロピル)シリル基、クロロメチルジフェニルシリル基、(1−クロロエチル)ジメチルシリル基、(2−クロロエチル)ジメチルシリル基、(2−クロロプロピル)ジメチルシリル基、(3−クロロプロピル)ジメチルシリル基、(4−クロロブチル)ジメチルシリル基、(6−クロロヘキシル)ジメチルシリル基、(8−クロロオクチル)ジメチルシリル基などのシリル置換基が挙げられる。Raがシリル置換基以外である場合、H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,6−キシリル基、メシチル基、メトキシ基、エトキシ基、ビニルオキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、アリルオキシ基、アセチル基、アセトキシ基、F、Cl、Br、又はIであることが好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、又はフェニル基であることがより好ましく、tert−ブチル基であることが特に好ましい。Raがシリル置換基である場合、クロロメチルジメチルシリル基、(2−クロロエチル)ジメチルシリル基、又は(3−クロロプロピル)ジメチルシリル基であることが好ましく、クロロメチルジメチルシリル基であることがより好ましい。Raの両方ともシリル置換基であることがより好ましい。
dは、各ベンゼン環上の0〜3個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアシロキシ基、F、Cl、Br又はIから選択される。Rdの具体例として、シリル置換基以外のRaについて上述した有機基を挙げることができ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,6−キシリル基、メシチル基、メトキシ基、エトキシ基、ビニルオキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、アリルオキシ基、アセチル基、アセトキシ基、F、Cl、Br、又はIであることが好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、又はフェニル基であることがより好ましく、tert−ブチル基であることが特に好ましい。Rdは各ベンゼン環について1個であることが好ましく、このとき、Rdの位置は、配位子のサリチルアルデヒドに相当する部位の3位であることが好ましい。
一般式(5)のコバルト触媒において、Yは、2個の炭素原子を介して2個のイミノ窒素を連結する二価の連結基である。その2個の炭素原子に1又は複数の、炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数3〜10のシクロアルキル基、又は置換もしくは非置換の、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14のアリール基が結合していてもよい。このような二価の連結基Yの炭素原子に結合する基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの、直鎖又は分岐のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,6−キシリル基、メシチル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントリル基などの置換又は非置換のアリール基を挙げることができる。また、二価の連結基Yにおいて、その2個の炭素原子が、置換又は非置換の、飽和もしくは不飽和の脂肪族環又は芳香環の一部を構成してもよい。このような飽和もしくは不飽和の脂肪族環又は芳香環として、例えば、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ベンゼン環などが挙げられ、これらの脂肪族環又は芳香族環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基などの、1又は複数の置換基で置換されていてもよい。
一般式(5)のコバルト触媒において、二価の連結基Yの具体例として、上述したような炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数3〜10のシクロアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよいエチレン基が挙げられ、このエチレン基は無置換であるか、1又は複数のメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、又はフェニル基で置換されていることが好ましい。また、二価の連結基Yの具体例として、隣接する2個の炭素原子がそれぞれ別のイミノ窒素に結合している置換又は非置換のシクロアルキレン基(例えばシクロヘキサン−1,2−ジイル基)又はフェニレン基(例えば1,2−フェニレン基)も挙げられる。これらの中でシクロヘキサン−1,2−ジイル基が好ましい。
一般式(5)のコバルト触媒において、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3 -、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、及びアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。アニオン性配位子はエポキシド化合物のエポキシド炭素に対して求核性を有する場合がある。Zの具体例として、F-、Cl-、Br-、I-、N3 -、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、プロピオナート、シクロヘキシルカルボキシラートなどの脂肪族カルボキシラート;ベンゾアート、p−メチルベンゾアート、3,5−ジクロロベンゾアート、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、4−tert−ブチルベンゾアート、ペンタフルオロベンゾアート(-OBzF5)、ナフタレンカルボキシラートなどの芳香族カルボキシラート;メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシドなどのアルコキシド;フェノキシド、o−ニトロフェノキシド、p−ニトロフェノキシド、m−ニトロフェノキシド、2,4−ジニトロフェノキシド、3,5−ジニトロフェノキシド、3,5−ジフルオロフェノキシド、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシド、1−ナフトキシド、2−ナフトキシドなどのアリールオキシドなどが挙げられる。Zは、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、又はペンタフルオロベンゾアートであることが好ましく、F-、Cl-、Br-、I-、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、又はペンタフルオロベンゾアートであることがより好ましく、F-、Cl-又はペンタフルオロベンゾアートであることが特に好ましい。
一般式(5)のコバルト触媒において、次の式(6):
Figure 2013050629
又は次の式(7):
Figure 2013050629
(式中、Rc、X及びZは上述の通りである。)
で表されるものが好ましく、次の式(8):
Figure 2013050629
又は次の式(9):
Figure 2013050629
(式中、Zは上述の通りである。)
で表されるものがより好ましく、式(8)で表されるものが特に好ましい。
一般式(5)のコバルト触媒に、助触媒を組み合わせた触媒システムを用いて、エポキシド化合物と二酸化炭素の共重合を行うこともできる。助触媒を併用することにより、共重合の反応速度を高める、及び/又は共重合体の交互規則性を高める、及び/又は副生成物である環状カーボネートの生成を抑制することができる。
一般式(5)のコバルト触媒と組み合わせることが可能な助触媒の一例は、リン及び/又は窒素を含むカチオンと対アニオンとからなる塩である。そのような助触媒として、
[(Re4N]+
[(Re4P]+
[(Re3P=N=P(Re3+
(式中、Reは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)、及び次の式(10):
Figure 2013050629
(式中、Rfは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、Rgは、イミダゾリウム環の炭素上の0〜3個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)からなる群から選択されるリン及び/又は窒素を含むカチオンと、F-、Cl-、Br-、I-、N3 -、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、及びアリールオキシドからなる群から選択されるアニオンとの塩を使用できる。
上記塩を構成するカチオン[(Re4N]+、[(Re4P]+、[(Re3P=N=P(Re3+における、Reの具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などの、直鎖又は分岐のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,6−キシリル基、メシチル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントリル基などの置換又は非置換のアリール基が挙げられる。式(10)のイミダゾリウムにおけるRf及びRgの具体例として、Reについて上述したような、直鎖又は分岐のアルキル基、シクロアルキル基、及び置換又は非置換のアリール基が挙げられる。これらのRe,Rf及びRgは、上記カチオン([(Re4N]+、[(Re4P]+、[(Re3P=N=P(Re3+、式(10)のイミダゾリウム)が全体として共重合反応に有利な立体的効果を発揮する、すなわち適切な嵩高さを有するように、選択して組み合わせることができる。
上記塩を構成するカチオンとして、[(Re4N]+、[(Re3P=N=P(Re3+、又は式(10)のイミダゾリウムを使用することが好ましく、[(Re3P=N=P(Re3+を使用することがより好ましい。
四級アンモニウム[(Re4N]+の具体例として、テトラブチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、トリシクロヘキシルメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウムなどが挙げられる。
四級ホスホニウム[(Re4P]+の具体例として、テトラブチルホスホニウム、テトラヘキシルホスホニウム、テトラシクロヘキシルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、テトラ(メトキシフェニル)ホスホニウムなどが挙げられる。
ビス(ホスホラニリデン)アンモニウム[(Re3P=N=P(Re3+の具体例として、ビス(トリブチルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(エチルジフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(n−ブチルジフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(ジメチルフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(トリトリルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(トリナフチルホスホラニリデン)アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムが好ましい。
式(10)のイミダゾリウムの具体例として、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムなどが挙げられる。
上記塩を構成するアニオンとして、Zについて上述したものを挙げることができ、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、又はペンタフルオロベンゾアートであることが好ましく、F-、Cl-、Br-、I-、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、又はペンタフルオロベンゾアートであることがより好ましく、F-、Cl-又はペンタフルオロベンゾアートであることが特に好ましい。
上記カチオン及びアニオンからなる塩として、例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムアセタート、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムフルオリド(PPNF)、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(PPNCl)、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムペンタフルオロベンゾアート(PPNOBzF5)、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウムクロリドなどが挙げられ、PPNF、PPNCl及びPPNOBzF5が好ましい。
一般式(5)のコバルト錯体と助触媒とを組み合わせた触媒システムにおいて、コバルト錯体を式(6)又は式(7)の化合物とすることが好ましく、式(8)又は式(9)の化合物とすることがより好ましく、式(8)の化合物とすることが特に好ましい。
このような触媒システムの中で、
式(8):
Figure 2013050629
(式中、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3 -、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、及びアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)で表される化合物と、[(Re3P=N=P(Re3+(式中、Reは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)で表されるリン及び窒素を含むカチオンと、F-、Cl-、Br-、I-、N3 -、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、及びアリールオキシドからなる群から選択されるアニオンとの塩からなる助触媒とを含むものがより好ましく、ここで、Zがペンタフルオロベンゾアートであり、助触媒がPPNClであることが特に好ましい。
エポキシド化合物と二酸化炭素の共重合は、加圧可能な公知の重合反応装置、例えば、オートクレーブを用いて行うことができる。共重合の反応温度は、一般に約0℃以上、約100℃以下とすることができ、約10℃以上、約90℃以下であることが好ましく、約20℃以上、約60℃以下であることがより好ましい。共重合を低温で行うと環状カーボネートの生成を抑制でき、高温で行うと反応速度が増加してターンオーバー速度(TOF)及び/又はターンオーバー数(TON)を向上させることができる。一般式(5)のコバルト錯体を用いると、従来の触媒又は触媒システムと比べて広い温度範囲で共重合を行うことができる。
エポキシド化合物と触媒であるコバルト錯体のモル比は、一般にエポキシド化合物:コバルト錯体=約1000:1以上とすることができ、約2000:1以上であることが好ましい。一般式(5)のコバルト錯体は、反応温度を適宜上げることによって、エポキシド化合物:コバルト錯体=約4000:1以上、約8000:1以上、約32000:1以上といった、錯体濃度が非常に低い条件で共重合することもできる。錯体濃度が低いと一般に反応時間が長くなるため、エポキシド化合物:コバルト錯体=約100000:1以下、又は約50000:1以下とすることが一般的である。必要に応じて使用される助触媒の量は、コバルト錯体1モルに対して、一般に約0.1〜約10モルとすることができ、約0.3〜約5モルであることが好ましく、約0.5〜約1.5モルであることがより好ましい。
所望量のエポキシド化合物が重合した後、公知の後処理を行うことができる。例えば、塩酸、メタノール、塩酸/メタノール混合物などを反応停止剤として反応混合物に投入し、必要に応じて昇温及び/又は攪拌して反応を終了することができる。その後、例えば、貧溶媒としてメタノール、ヘキサンなどを用いてポリマーを再沈殿してもよく、ソックスレー抽出器を利用して固体状混合物から錯体を抽出してもよい。また、カラムクロマトグラフィーなどの周知の手段を用いて、ポリマーをさらに精製してもよい。
本発明に用いられるポリカーボネートを合成するための二酸化炭素の使用量に特に制限はないが、反応は、通常、二酸化炭素雰囲気下、又は二酸化炭素加圧条件下で行われる。このうち、好ましい二酸化炭素圧は、0.1MPa〜10MPa、さらに好ましくは0.1MPa〜2MPaの範囲である。また、窒素やアルゴン等の反応に顕著な影響を与えない不活性ガスと二酸化炭素との混合ガス下で反応を行うこともできる。反応温度は、通常−40℃〜+50℃が好ましく、さらに0℃〜30℃が好ましい。反応時間は、反応条件により異なるが、通常、1〜100時間である。
また、本発明に用いられるポリカーボネートの製造において、必要に応じて溶媒を使用することができる。用いられる溶媒としては、使用されるエポキシド、二酸化炭素、光学活性コバルト錯体、求核剤と反応しないものであれば特に制限はなく、例えば、炭化水素類、エーテル類、エステル類、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。具体的には、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられ、好ましくはクロロホルムである。これらは単独で用いても、2種以上混合して用いてもかまわない。溶媒の使用量としては、原料であるエポキシドに対して質量比で0.5〜100、好ましくは1〜50の範囲で添加することができる。
本発明によるバインダー組成物に、着色剤、帯電制御剤、離型剤、外添剤等を混合することにより電子写真用トナーを製造することができる。着色剤に特に制限はなく、公知慣用のものが用いられる。例えば、黒の着色剤としては、製法により分類されるファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラック、あるいは、C.I.Pigment Black 11などの鉄酸化物系顔料、C.I.Pigment Black 12などの鉄−チタン複合酸化物系顔料が挙げられる。また、青系の着色剤としては、フタロシアニン系のC.I.Pigment Blue 1,2,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,15,16,17:1,27,28,29,56,60,63などが挙げられる。また、黄色系の着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1,3,4,5,6,12,13,14,15,16,17,18,24,55,65,73,74,81,83,87,93,94,95,97,98,100,101,104,108,109,110,113,116,117,120,123,128,129,133,138,139,147,151,153,154,155,156,168,169,170,171,172,173,180,185などが挙げられる。さらに、赤色系着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,12,14,15,17,18,22,23,31,37,38,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,54,57:1,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,65,66,67,68,81,83,88,90,90:1,112,114,115,122,123,133,144,146,147,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,185,187,188,189,190,193,194,202,208,209,214,216,220,221,224,242,243,243:1,245,246,247などが挙げられる。これら着色剤の含有量は、トナー全体に対して、1〜20質量%であることが好ましい。中でも2〜10質量%であることがさらに好ましく、3〜7質量%であることが特に好ましい。これらの着色剤は1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。また、本発明ではこれらの着色剤を、一種類以上のポリカーボネートバインダーと共に、加熱及び冷却機能を有するオープンロール型連続混練機、加圧ニーダー、加熱二本ロール、二軸押し出し混練機などを用いて溶融混練分散処理を行い、マスターバッチとして用いてもよい。
帯電制御剤に特に制限はなく、公知慣用のものが用いられる。例えば、正帯電性帯電制御剤として、トナー用として公知慣用のニグロシン化合物、第4級アンモニウム化合物、オニウム化合物、トリフェニルメタン系化合物などが使用できる。また、アミノ基、イミノ基、N−ヘテロ環などの塩基性基含有化合物、例えば3級アミノ基含有スチレンアクリル樹脂なども正帯電性帯電制御剤としてニグロシン染料と併用できる。また、用途によっては、アゾ染料金属錯体やサリチル酸誘導体金属錯塩などの負帯電制御剤を少量併用することも可能である。負帯電性帯電制御剤としては、トリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属錯塩、ベンジル酸の金属錯塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、金属錯塩アゾ系染料、アゾクロムコンプレックスなどの重金属含有酸性染料、カッリクスアレン型のフェノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基及び/またはスルホニル基を含有する樹脂などが挙げられる。帯電制御剤の含有量は0.01〜10質量%であることが好ましい。特に0.1〜6質量%であることが好ましい。これらの帯電制御剤は1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
離型剤に特に制限はなく、公知慣用のものが用いられる。例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリアミド系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等のポリオレフィンワックス及び/又は変性ポリオレフィンワックス、あるいは、高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックス等を離型剤として適宜用いることができる。離型剤の融点(滴点、軟化温度)は、60〜180℃であることが好ましく、65〜170℃であることがより好ましい。融点が低すぎる場合、保存中に凝集しやすく、トナーの流動性も低下し易くなる。融点が高すぎる場合、画像の定着工程において溶融しにくく、十分な離型効果を発揮し難い。離型剤は、単独で用いても組み合わせて用いても良く、ポリカーボネートバインダーに対して0.1〜15質量部、好ましくは1〜5質量部含有させることにより良好な定着オフセット性能が得られる。0.1質量部より少ないと耐オフセット性が損なわれ易く、15質量部より多いとトナーの流動性が悪くなり易く、また、帯電部材への固着により、トナーの帯電特性に悪影響を与え易くなる。
外添剤としては、公知慣用の無機酸化物微粒子や有機ポリマー微粒子などの外添剤をトナー粒子表面に添加することができる。疎水性シリカ、酸化チタンなどの無機微粒子、あるいは有機微粒子などは、トナー粒子に外添され、静電印刷法による乾式現像剤として用いる場合に、流動性や帯電性などの物理的特性を改良する効果がある。外添剤の種類は、各種シリコーンオイルで処理された疎水性シリカなどが好適に用いられる。例えば、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、α―メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッソ変性シリコーンオイル、及びオレフィン変性シリコーンオイルなどで処理された疎水性シリカが挙げられる。外添方法は、公知慣用の機種を用いて処理される。
本発明の電子写真用トナーは、特定の製造方法によらず一般的な製造方法により得ることができる。例えば、上記ポリカーボネートバインダーと着色剤と帯電制御剤とを、バインダーの融点(軟化点)以上で溶融混練した後、粉砕し、分級することにより得ることができる。具体的には、上記ポリカーボネートバインダー、着色剤、離型剤及び帯電制御剤等の成分を、溶融混練を行う前に、予めヘンシェルミキサー等により均一に混合することができる。この混合の条件は特に限定されるものではないが、いくつかの段階に分けて混合しても良い。ここで用いる着色剤、帯電制御剤は、ポリカーボネートバインダー中に均一に分散するように予めフラッシング処理してもよく、或いはポリカーボネートバインダーと同種の樹脂又は異種の樹脂と高濃度で溶融混練したマスターバッチを用いても良い。上記混合物を、例えば2本ロール、3本ロール、加圧ニーダー、又は2軸押し出し機等の混練手段により混合する。この際、バインダー中に、着色剤等が均一に分散すればよく、その溶融混練の条件は特に限定されるものではないが、通常80〜180℃で30秒〜2時間が好ましい。また、必要に応じて、微粉砕工程における負荷の軽減及び粉砕効率の向上を目的とした粗粉砕を行う。粗粉砕に使用する装置、条件は特に限定されるものではないが、ロートプレックス、パルペライザー等により3mmメッシュパス以下の粒径に粗粉砕するのが一般的である。次いで、ターボミル、クリプトロン等の機械式粉砕機、渦巻き式ジェットミル、カウンタージェットミル、衝突板式ジェットミル等のエアー式粉砕機で微粉砕し、風力分級機等により分級するという方法が挙げられる。微粉砕、及び分級の装置、条件は所望の粒径、粒径分布、粒子形状になるように選択、設定すれば良い。
トナーを構成する粒子の体積平均粒径は、特に制限されないが、通常5〜15μmとなる様に調整されることが好ましい。
本発明の電子写真用トナーはキャリアを混合することによって、二成分静電荷像現像剤とすることができる。静電荷像現像剤に用いられるキャリアのコア剤(磁性キャリア)は通常の二成分現像方式に用いられる鉄粉、マグネタイト、フェライトなどが使用できるが、中でも真比重が低く、高抵抗であり、環境安定性に優れ、球形にし易いため流動性が良好なフェライト、またはマグネタイトが好適に用いられる。コア剤の形状は、球形、不定形等、特に制限はない。平均粒径は、一般には10〜200μmであるが、高解像度画像を印刷するためには30〜110μmが好ましい。また、これらのコア剤を被覆するコーティング樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテルポリビニルケトン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、スチレン/アクリル共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂あるいはその変性品、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂などが使用できる。
また、本発明の電子写真用トナーは、通常の非磁性一成分現像方式の印刷装置、あるいは磁性一成分現像方式の印刷装置などにも使用できる。また、現像剤担持ロールと層規制部材とを有する非磁性一成分現像装置などを用いて摩擦帯電された粉体トナーを、トナー通過量などを調節する機能の電極を周囲に有するフレキシブルプリント基板上の穴を通して、背面電極上の紙に直接吹き付けて画像を形成する方式の、いわゆるトナージェット方式のプリンターなどにも好適に使用できる。本発明の製造方法により製造されたトナーは、潜像保持体上に静電荷像を形成させ、得られた静電荷像を、現像剤担持体上に担持された現像剤を用いて現像し、前記荷像保持体上に形成されたトナー像を紙やフィルムなどの転写材上に転写し、該転写材上のトナー像をヒートロールにより熱定着する画像形成方法により印刷を行うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例で得られた化合物の1H−NMRスペクトルの測定は、JEOL社製JNM−ECP500(500MHz)及びJEOL社製JNM−ECS400(400MHz)を用いて行った。ポリカーボネートの分子量測定は、ジーエルサイエンス社製高速液体クロマトグラフィーシステム(DG660B・PU713・UV702・RI704・CO631A)と、SHODEX社製KF−804Fカラム2本とを用いて、テトラヒドロフラン又はクロロホルムを溶出液として(40℃,1.0mL/分)、ポリスチレン標準を基準に換算して測定し、解析ソフトウェア(Scientific Software社製EZ Chrom Elite)で処理して求めた。
触媒の調製
以下の合成例に溶媒として使用したトルエン、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と称する)、ヘキサン、及びジエチルエーテルは、関東化学株式会社から入手した脱水グレードの試薬をGlass Contour社製溶媒精製装置に通したものを使用した。メタノール及びエタノールは、脱水グレードの試薬を関東化学から入手したものをそのまま使用した。また、酢酸エチルは、和光純薬株式会社から入手したものをそのまま使用した。
tert−ブチルリチウムn−ペンタン溶液、トリエチルアミン、及び酢酸コバルトは、関東化学から入手したものをそのまま使用した。クロロメチルジメチルシリルクロリド、ペンタフルオロ安息香酸は東京化成工業株式会社から、(1R,2R)−ジアミノシクロヘキサンは和光純薬株式会社から入手した試薬をそのまま使用した。塩化マグネシウム、パラホルムアルデヒドは、Aldrich社から入手した試薬をそのまま使用した。
以下の配位子合成において原料に用いられる4−ブロモ−2−tert−ブチルフェノール、及び3−tert−ブチル−5−[(3’−クロロプロピル)ジメチルシリル]サリチルアルデヒドは、J.Am.Chem.Soc.,2007,129,8082に従って調製したものを使用した。
合成例A:コバルト錯体(1)の合成
A−1:シリル置換サリチルアルデヒドの合成
Ar雰囲気下、4−ブロモ−2−tert−ブチルフェノール5.4gを、THF200mLに溶解させ、−78℃に冷却した後、tert−ブチルリチウム(1.6M n−ペンタン溶液)41mLを2時間かけて滴下した。滴下後、−78℃で2時間攪拌し、クロロメチルジメチルシリルクロリド7.1mLを加えた。溶液を室温まで徐々に温め、4時間攪拌した後、水300mLを加え4時間撹拌した。酢酸エチル200mLで抽出を行い、有機層を減圧濃縮した。得られた黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1、Rf=0.47)により精製し、2−tert−ブチル−4−[(クロロメチル)ジメチルシリル]フェノール6.3gを薄黄色オイルとして得た(収率79%)。
1H−NMR(CDCl3,500MHz)δ7.43(s,1H),7.25(dd,1H),6.69(d,1H),4.84(s,1H),2.92(s,2H),1.41(s,9H),0.38(s,6H)ppm
2−tert−ブチル−4−[(クロロメチル)ジメチルシリル]フェノール2.1gと、トリエチルアミン3.5mLと、塩化マグネシウム2.62gとを、THF120mL内で、室温で30分撹拌した。そこに、パラホルムアルデヒド0.8gを加え、3時間還流した。反応後、酢酸エチル100mL及び水100mLを加え、室温で30分撹拌した後、分液し、水層をさらに酢酸エチル100mLで抽出した。有機層を水で洗浄し、そして硫酸マグネシウムで乾燥した後、揮発分を減圧濃縮し得られた薄黄色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1、Rf=0.09)で精製した。3−tert−ブチル−5−[(クロロメチル)ジメチルシリル]サリチルアルデヒド1.4gを白色固体として得た(収率63%)。
1H−NMR(CDCl3,500MHz)δ11.89(s,1H),9.90(s,1H),7.67(s,1H),7.56(s,1H),2.94(s,2H),1.42(s,9H),0.43(s,6H)ppm
Figure 2013050629
A−2:サレン配位子の合成
3−tert−ブチル−5−[(クロロメチル)ジメチルシリル]サリチルアルデヒド808.9mgと、(1R,2R)−ジアミノシクロヘキサン136mgとを、無水エタノール20mL内で、室温で6時間攪拌した。揮発分を減圧濃縮後、析出物をろ過し、冷ヘキサン5mLで洗浄し、サレン化合物770mgを黄色粉末として得た(収率85%)。
1H−NMR(CDCl3,500MHz)δ14.10(s,2H),8.31(s,2H),7.39(s,2H),7.15(s,2H),3.37(t,2H),2.84(s,4H),2.07−1.68(m,8H),1.40(s,18H),0.33(s,12H)ppm
Figure 2013050629
A−3:コバルト錯体の合成
Ar雰囲気下、サレン配位子770mgを、脱水メタノール5mL及びトルエン1mLの混合物中に溶解させ、そこに無水酢酸コバルト212mgを加え、室温で3時間攪拌した。生じた沈殿をろ過で集め、冷メタノール5mLで洗浄し、赤色粉末のコバルト(II)錯体を得た。これを塩化メチレン10mLに溶解させ、ペンタフルオロ安息香酸240mgを加え、空気下、15時間攪拌した。揮発分を減圧濃縮した後、残留物を冷ヘキサンで洗浄し、緑褐色固体のコバルト(III)錯体(1)527mgを得た(収率48%)。
1H−NMR(DMSO−d6,500MHz)δ7.93(s,2H),7.55(s,2H),7.41(s,2H),3.65(m,2H),3.14(s,4H),2.05−1.85(m,8H),1.73(s,18H),0.37(s,6H),0.23(s,6H)ppm
Figure 2013050629
実施例1:ポリプロピレンカーボネート(PPC)の製造
内容積3Lのステンレス製オートクレーブに、コバルト錯体(1)393mg、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(以下、「PPNCl」と称する)(Strem社から購入したものを、塩化メチレン/ジエチルエーテルから再結晶して用いた)246mgを入れ、Ar雰囲気に置換した後、プロピレンオキシド600mL(コバルト錯体(1)1モルに対し、20,000モル)、二酸化炭素1.4MPaを仕込み、50℃で107時間反応させた。二酸化炭素の圧力は、反応の進行と共に減少するので、系の圧力が0.8MPaまで下がったところで、1.8MPaの圧力まで、二酸化炭素を追加で圧入した。1H−NMRを測定した後、内容物を塩化メチレンに溶解させ、1N塩酸で洗浄後、メタノールを用いて析出させ、白色固体として、PPCを282g得た。
得られたPPCは、下記に示すように、1H−NMRにより、環状カーボネート及びポリエーテルを含まない、すなわち、エポキシド(プロピレンオキシド)と二酸化炭素とが実質的に完全に交互に結合しているため、H−NMR分析により検出可能なエーテル結合成分を含まないPPCであることが確認された。
PPC:環状カーボネート:ポリエーテル=100:0:0
収率:32%
TOF:60h-1、TON:441g/g−cat(触媒の質量は、コバルト錯体と、PPNClの総量として計算した)
n=101,400、Mw/Mn=1.53
Figure 2013050629
得られたポリプロピレンカーボネート(PPC)の動的粘弾性挙動(動的貯蔵弾性率G’,動的損失弾性率G”及び損失正接tanδの温度依存性)を、TAINSTRUMENTS製粘弾性測定装置ARESを用いて測定した。測定温度−50〜70℃の範囲については、JIS K 7244−7:1999に準拠し、試験片(厚さ1mm×幅10mm×長さ40mm)を用い、周波数1Hz、昇温速度4℃/分、動的ひずみ0.05%の条件下、測定モード「Torsion Rectangular」で測定した。その結果を図1に示す。また、測定温度70〜200℃の範囲については、JIS K 7244−10:2005に準拠し、試験片(直径8mm×厚さ1mm)を用い、周波数1Hz、昇温速度4℃/分、動的ひずみ0.2%の条件下、測定モード「Parallel Plates」で測定した。その結果を図2に示す。図1のグラフから分かるように、得られたPPCは、tanδのピーク温度から判断してガラス転移温度Tgは約45℃であり、また40℃における貯蔵弾性率G’は約3×10Paであった。一方、得られたPPCの180℃における貯蔵弾性率G’は、図2のグラフから分かるように、約3×10Paであった。これらの貯蔵弾性率G’とガラス転移温度Tgの値から、得られたPPCはトナー用バインダーの定着特性に必要な動的粘弾性を有していることが分かる。
本発明による電子写真トナー用バインダー組成物は、原料の一部として二酸化炭素を使用するポリカーボネートを含むため、資源活用及び環境保護の観点から有意義である。また、生分解性を有する脂肪族ポリカーボネートを使用した場合には、環境負荷低減の観点から更に有意義である。したがって、本発明は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、ポリエステル系共重合体等に代表される従来のトナー用バインダーの代替品として有利に用いられる可能性がある。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 2013050629
    (式中、R1及びR2は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、又は置換若しくは非置換の芳香族基であるか、又はR1とR2が互いに結合して置換若しくは非置換の環を形成してもよい)
    で表されるエポキシドと二酸化炭素とが交互に結合して得られたポリカーボネートであって、1H−NMR分析により検出可能なエーテル結合成分を含まないポリカーボネートを含むことを特徴とする、電子写真トナー用バインダー組成物。
  2. 前記エポキシドがエチレンオキシド又はプロピレンオキシドであることにより、前記ポリカーボネートがポリエチレンカーボネート又はポリプロピレンカーボネートである、請求項1に記載のバインダー組成物。
  3. 前記ポリカーボネートのガラス転移温度Tgが35〜55℃の範囲内にある、請求項1又は2に記載のバインダー組成物。
  4. 前記ポリカーボネートの180℃における貯蔵弾性率(G’)が1×10〜1×10Paの範囲内にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバインダー組成物。
  5. 前記ポリカーボネートの40℃における貯蔵弾性率(G’)が1×10〜1×10Paの範囲内にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバインダー組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のバインダー組成物を含んでなる電子写真用トナー。
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