JP2013049639A - クロメ由来のフロロタンニン類を有効成分とする紫外線照射障害保護剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】
新規な紫外線照射障害保護剤を提供する。
【解決手段】
クロメから抽出されたフロロタンニン類を有効成分とする紫外線照射障害保護剤であり、皮膚外用剤として、ヒト皮膚の繊維芽細胞の増殖を促進するのに有効であり、創傷治癒剤、化粧品、食品、浴用剤、繊維芽細胞用培地などの構成原料として用いることができる。
【選択図】なし
Description
(1)クロメ由来のフロロタンニン類を有効成分とすることを特徴とする紫外線照射障害保護剤。
(2)クロメ由来のフロロタンニン類が、クロメのエタノール水溶液抽出物である上記(1)に記載の紫外線照射障害保護剤。
(3)エタノール水溶液が、エタノール濃度40〜80(v/v)%の水溶液である上記(2)に記載の紫外線照射障害保護剤。
(4)クロメ由来のフロロタンニン類が、クロメのエタノール水溶液抽出物をさらに溶離液としてエタノール水溶液を用いてカラム分画した画分である上記(2)または(3)に記載の紫外線照射障害保護剤。
(5)溶離液としてのエタノール水溶液が、エタノール濃度20〜60(v/v)%の水溶液である上記(4)に記載の紫外線照射障害保護剤。
(6)下記化学構造式:
(7)皮膚を紫外線照射傷害から保護する機能を有する上記(1)から(6)のいずれかに記載の紫外線照射障害保護剤。
(8)皮膚が皮膚繊維芽細胞である上記(7)に記載の紫外線照射障害保護剤。
(9)上記(1)から(8)のいずれかに記載の紫外線照射障害保護剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
(10)上記(1)から(8)のいずれかに記載の紫外線照射障害保護剤を含有することを特徴とする化粧料。
(11)上記化粧料が、日焼け止め材料である上記(10)に記載の化粧料。
太陽から照射される紫外線は、人間の健康や環境への影響と観点から、UVA、UVB、UVCと分類されているが、UVCは大気により吸収されて地上には到達しないので、健康上の理由からは主としてUVAおよびUVBからの保護が重要である。
これらの紫外線について説明する。
UVAは、地表に到達する紫外線のー種であり、波長320〜400nmの紫外線を言う。この紫外線は、肌の奥深く真皮まで届き、肌の弾力の低下やしわ、たるみなど皮膚の老化を促進する。また、強い日ざしを浴びた直後に肌が黒くなり、30分から数時間で消える反応(即時黒化)はUVAが関係している。これは,皮膚の表皮にある淡色のメラニン色素が濃色のメラニン色素に変化して黒くなる現象である。
UVBは、地表に到達する紫外線の一種であり、波長290〜320nmの紫外線を言う。大部分が表皮で吸収され,短時間で皮膚に炎症(赤み,腫れ,皮膚癌など)を起こさせる作用がある。炎症が治まると数日して皮膚のメラニン色素が増加して黒く変化する(遅延黒化)。黒くなった表皮は,約1ケ月で新陳代謝によってはがれて元の肌色に戻るが、繰返しUVBを浴びることによりしわやしみなどの皮膚老化を促進する。また,皮膚癌を誘発することもある。
クロメは、こんぶ目こんぶ科かじめ属の褐藻の一種であり、潮下帯付近の岩に付着して生育する海藻である。藻体の大きさは普通40〜50cm、時には1m以上にもなり冬場の藻体は食用になる。その形態は、同属のカジメに似ているが、葉状の部分にしわが生じること、全体的に小型であることなどから区別できる。またアラメとは異なり、茎部が二分岐しない。日本近海では本州太平洋岸の中南部から九州にかけて、および瀬戸内海、日本海に分布する。大形で多年生。芽生えはじめの個体は短い茎に単葉である。
海藻に含有されるフロロタンニン類としては、図1に示す、No.7=エコール(eckol)、No.3=ダイエコール(dieckol)、No.2=8,8’−バイエコール(bieckol)、No.15=6,8’−バイエコール(bieckol)、No.6=2−フロロエコール(phloroeckol)、No.5=フロロフコフロエコールA(phlorofucofuroeckol-A)、No.4=ダイオキシノデヒドロエコール(dioxinodehydroeckol)が知られている。フロロタンニン類の総量は、「フロログルシノール(phloroglucinol)を標準品としたフォーリンチオカルト法(Folin-Ciocalteu法)」(測定波長は720nm)により測定されるポリフェノール総量で示す。
クロメからフロロタンニン類を抽出する方法を以下に説明する。
本発明では、人体への影響、食品、医薬品などへの使用を考慮してクロメからフロロタンニン類を抽出するには食品工業で利用されている溶剤であるエタノール水溶液を使用した。抽出試験には、水、エタノール、およびエタノール濃度20〜80(v/v)%の水溶液を使用し、原料のクロメと混合後撹拌することにより抽出を促進させた。撹拌時間と総ポリフェノールの抽出量については図3にみられるごとく、撹拌が長時間であるほど抽出量は増加し、24時間後は全量が抽出されると考えられる。抽出用の溶媒のエタノール濃度については、エタノール濃度が40(v/v)%以上でポリフェノールが抽出され、特に好ましくは、エタノール濃度40〜80(v/v)%の範囲であり、さらに好ましくはエタノール濃度50〜70(v/v)%の範囲を挙げることができる。
以下の説明において、「エタノール」を「EtOH」と略記し、「エタノール**(v/v)%の水溶液」を「**(v/v)%EtOH」と略記することがある。
上記の抽出方法によりクロメからのエタノール70(v/v)%、および50(v/v)%による抽出物をダイヤイオン(登録商標)HP20〔三菱化学(株)製]を充填したカラムで分画した。溶離液として、水、20〜80(v/v)%のエタノール濃度の水溶液、および100(v/v)%エタノールを使用したところ、総ポリフェノール量は水から60(v/v)%エタノール濃度の分画で多量に溶離された。各濃度で溶出した液をNMRにより分析したところ、各分画の含有組成は次のようになり、フロロタンニン類は20〜60(v/v)%のエタノールの分画に溶離することが判明した。
各画分の溶出物を次に記載する。
「水溶出」画分:無機塩を除き、ほぼ多糖類である。
「20(v/v)%EtOH溶出」画分: フロロタンニン類が出始める。不飽和脂肪酸の混入が多少認められる。
「40(v/v)%EtOH溶出」画分: フロロタンニン類の排出の主流画分。多少の不飽和脂肪酸の混入が認められる。
「60(v/v)%EtOH溶出」画分: 不飽和脂肪酸が主となるが、残余のフロロタンニン類が出切る。フロロタンニン類としての絶対量は「20(v/v)%EtOH」画分と「40(v/v)%EtOH」画分を合わせた量の5〜10%程度と推定される。
「80(v/v)%EtOH溶出」画分: ほぼ不飽和脂肪酸のみで、フロロタンニン類は認められない。
「100(v/v)%EtOH溶出」画分: ほぼ不飽和脂肪酸のみで、フロロタンニン類は認められない。
(1)フォーリンチオカルト法(Folin-Ciocalteu法)で検出されるが、NMRでフロロタンニン類のピークが認められない画分は、フロロタンニン類とは異なる還元物質が含まれていることが推定される。
(2)「70(v/v)%EtOH」を抽出の基本としているが、抽出EtOHの濃度を比較したところでは「50〜70(v/v)%EtOH」がポリフェノール(フロロタンニン類)の抽出に適していることが判明した。
(3)「70(v/v)%EtOH抽出物のカラムでの分画」の結果、目的のフロロタンニン類は「20(v/v)%EtOH溶出画分」〜「60(v/v)%EtOH溶出画分」に高率に溶出されることが判明した。
(4)「50(v/v)%EtOH抽出物のダイヤイオン(登録商標)HP20カラム分画」の結果、目的のフロロタンニン類は「20(v/v)%EtOH溶出画分」〜「60(v/v)%
EtOH溶出画分」に高率に溶出されることが判明した。
本発明のクロメ分画物のUVA照射障害に対する保護効果を実証するために、ヘアレスマウスの皮膚に分画物をUVAの増感剤である8-メトキシソラーレンとともに塗布してUVAを照射した。その後の障害の程度を、皮膚厚及び色調により判断したところ、皮膚厚の変化はコントロール(エタノール水溶液)と比較して大きく減少するとともに、ポジティブコントロール(市販の日焼け止め剤)と同等の効果が認められた。また、照射72時間後の色調の変化は、本発明のクロメ分画物は、コントロール群よりも変化量が少なく優れた効果を示した。光源をUVBとし、クロメ分画物の濃度を変えて同様の動物実験をしたところ、濃度1%〜0.25%の範囲で皮膚肥厚抑制効果が認められた。
20〜60(v/v)%エタノール水溶液で溶離したクロメポリフェノール(フロロタンニン類)を含有する画分にはUVBによる皮膚肥厚の抑制作用が認められ、本発明のクロメ画分は、UVAおよびUVBの照射障害に対する保護効果を示した。
クロメHP20カラム分画物のUVB防御効果を検討した。ヒト皮膚繊維芽細胞TIG
−114にUVBを照射し、培養した後の細胞数を計測して防御効果を判定した結果、20〜60(v/v)%EtOHにより溶離した画分にはUVB照射によるヒト皮膚繊維芽細胞障害抑制効果が認められた。上記動物実験および細胞実験の結果より、クロメなどの海藻類から抽出したフロロタンニン類が、皮膚外用剤として、ヒト皮膚の繊維芽細胞の増殖を促進するのに有効であり、創傷治癒剤、化粧品、浴用剤、繊維芽細胞用培地、食品などの構成原料として用いることができる有用な物質であることが判明した。
次に、本発明について具体例を挙げて説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例におけるクロメからフロロタンニン類の抽出装置および評価方法の概要を示す。
1.抽出用装置
使用ビーカー:3L(直径130mm)
使用器材:スリーワンモーター BLh300P(新東科学)を用いて撹拌羽根(φ100mm,6枚羽根雪結晶型)で撹拌。
原料クロメ:熊本県天草漁業協同組合五和支所鬼池地区で養殖しているクロメ2010年収穫品(水分含量=9.9%、固形分=90.1%、ポリフェノール含量(対固形分)=3.41%)
原料状態=粗粉砕品(ガーデンシュレッダーで破砕した状態)
抽出後の濾過条件=水流式の吸引濾過、150mmφのNo2の濾紙使用
(1)抽出溶媒=EtOH濃度0〜100%水溶液
(2)クロメ:溶媒の比率=1:10
(3)抽出条件=7日間静置抽出または1〜24時間撹拌
(4)抽出温度=20℃
(1)抽出効率は「乾燥重量」により判断した。
(2)ポリフェノール含量は、「フロログルシノールを標準品としたフォーリンチオカルト法」を用い、720nmの測定波長により求めた。
(3)組成の確認は、次の方法でNMR解析によった。
1)EtOH抽出物を乾燥後、エタノール−水混合液にて溶解。
2)ロータリーエバボレーターで溶媒留去後、真空にて一晩乾燥。
3)重水素化メタノール(CD3OD)に溶解する。
4)ブルカーバイオスピン(株)製核磁気共鳴装置BrukerAVANCEIII500(1H共鳴周波数=500MHz)により測定した。
5)各抽出物のNMRチャートについて、次の2つの範囲の積分強度(面積強度)比により組成を確認した。大量に含まれる「多糖類のCHシグナル」を「100.0」とした。この値は、直接化合物(群)間のモル比や重量比を示すものではないが相対的な量比の目安となる。
a)δ3.6〜4.0ppm 多糖類のシグナル
b)δ5.8〜6.9ppm フロロタンニン類の芳香族Hのシグナル
クロメのエタノール抽出液を濃縮しスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤の一例である三菱化学(株)製ダイヤイオン(登録商標)HP20を充填したカラムに吸着させた後エタノールで分画する条件の概要を示す。
1.抽出液の乾燥重量の測定法;
抽出液の一部(100ml)をサンプリングし、その抽出液をロータリーエバボレーターで溶媒留去後、真空ポンプで24時間以上乾燥させて秤量して乾燥重量を求めた。
2.ダイヤイオン(登録商標) HP20カラムによる分画;
(1)クロメからのエタノール抽出液を、ダイヤイオン(登録商標)HP20を充填したカラムで分画した。50または70(v/v)%EtOH抽出液をロータリーエバボレーターで濃縮し、その濃縮液をダイヤイオン(登録商標)HP20樹脂で分画するにあたりφ38mm×600mmサイズのカラム(樹脂長は110mm)を使用した。
(2)乾燥重量は,分画液をロータリーエバボレーターで溶媒留去後、真空ポンプで24時間以上乾燥させて秤量した結果から求めた。
(3)分画には0〜100(v/v)%エタノール水溶液を使用した。
本実施例では最適抽出時間を検討した。
試料はクロメ200g(固形分:180.2g)をクロメ:70(v/v)%EtOHの比率=1:10で所定時間撹拌した後の抽出物の乾燥濃度、および抽出物に含まれる総ポリフェノール量を測定した。同時に7日間静置抽出試験を行った。乾燥重量については図2に、総ポリフェノール量については図3に試験結果を示す。
その結果、原料のクロメのポリフェノール含量(対固形分3.41%)と比べると、「7日間静置条件」と「24時間撹拌条件」でほぼ全量のポリフェノールが抽出されたものと推定される。各抽出物にポリフェノールが含まれていることはNMRで確認できた。撹拌抽出条件としては「少なくとも1時間以上,望ましくは3時間以上」の抽出時間が必要であることが判明した。
本実施例では、抽出に最適なEtOH濃度を検討した。試料はクロメ200g(固形分=180.2g)を、クロメ:EtOH溶液の比率=1:10で所定時間撹拌した後の抽出物の乾燥濃度、および抽出物に含まれる総ポリフェノール量を測定した。「0(v/v)% EtOH」、「30(v/v)%EtOH」の抽出では、抽出液の粘性が高いため、濾紙による濾過ができなかったが、他の手段による濾過は可能であると判断される。乾燥重量については図4に、総ポリフェノール量については図5に試験結果を示す。図4,5から明らかなように「70(v/v)%EtOH抽出」よりも「50(v/v)%EtOH抽出」の方がポリフェノールを多く抽出できた。
サンプル「クロメからの70(v/v)%EtOH抽出液」〔クロメ216.7g相当(固形分=195.2g)]をロータリーエバポレータで濃縮し、この濃縮液をダイヤイオン(登録商標) HP20カラムに吸着させ、0〜100(v/v)%のEtOH水溶液で分画した。各分画の乾燥重量を図6に示す。各分画中の総ポリフェノール量を測定し図7に示す。「水溶出画分」はポリフェノールの含有比率は低いが乾燥重量が多い(配分が多い)ためポリフェノールの総量は多くなっている。
「80(v/v)%EtOH溶出画分」と「100(v/v)%EtOH溶出画分」ではフォーリンチオカルト法で少量ポリフェノールが検出されているが、NMRチャート上でフロロタンニン類の芳香族Hのシグナルが認められないことから,別の還元物質が含まれていると推定される。フォーリンチオカルト法で検出されるポリフェノール総量は
「2.15%」であり,原料クロメのポリフェノール含量(対固形分3.41%)に比べると約63%の回収率である。
また、条件検討を行なった「6hr撹拌抽出」条件での「回収率=2.9%」と比べると約74%の回収率である。フロロタンニン類が含まれていると推定される「20(v/v)%EtOH溶出画分」、「40(v/v)%EtOH溶出画分」、「60(v/v)%EtOH溶出画分」のポリフェノール含量を合計すると,「2871.5mg」で対「原料固形分」比率は「1.47%」となる。原料クロメのポリフェノール含量(対固形分3.41%)に比べると約43%の回収率となる。また、条件検討を行なった「6hr撹拌抽出」条件での「回収率=2.9%」と比べると約51%の回収率である。
クロメを70(v/v)%EtOHで抽出した抽出物を分画した各分画物(実施例5)の組成をNMRチャートの次のピークで比較、検討した。
(1)δ3.6〜4.0ppm:多糖類のCHシグナル
(2)δ5.3〜5.5ppm:不飽和脂肪酸のオレフィンHのシグナル
(3)δ5.8〜6.9ppm:フロロタンニン類の芳香族Hのシグナル
各画分のNMRチャートの解析結果は次の通りである。
「水溶出」画分: 無機塩を除き、ほぼ多糖類である。
「20(v/v)%EtOH溶出」画分: フロロタンニン類が出始める。不飽和脂肪酸の混入が多少認められる。
「40(v/v)%EtOH溶出」画分: フロロタンニン類の排出の主流画分。多少の不飽和脂肪酸の混入が認められる。
「60(v/v)%EtOH溶出」画分: 不飽和脂肪酸が主となるが、残余のフロロタンニン類が出切る。フロロタンニン類としての絶対量は「20(v/v)%EtOH」画分と「40(v/v)%EtOH」画分を合わせた量の5〜10%程度と推定される。
「80(v/v)%EtOH溶出」画分: ほぼ不飽和脂肪酸のみで、フロロタンニン類は認められない。
「100(v/v)%EtOH溶出」画分: ほぼ不飽和脂肪酸のみで、フロロタンニン類は認められない。
本実施例では、クロメ70(v/v)%EtOH抽出物をダイヤイオン(登録商標)HP20カラムにて分画した40(v/v)%EtOH溶出物について、UVA照射短期モデルでUVA照射障害保護効果を確認するための試験条件の概要を示した(参考文献:非特許文献1,2)。
1.試薬・検体
(1)クロメ抽出物: 乾燥クロメ30kgから70(v/v)%EtOH 120Lで7日間静置抽出した抽出物。
(2)クロメ分画物: クロメ抽出物をダイヤイオン(登録商標)HP20カラムに吸着させた後、「40(v/v)%EtOH」で溶出させた分画物。
(3)ソラーレン溶液:8−メトキシソラーレン〔8−MOPS:東京化成工業(株)製]を0.1%でEtOHに溶解。UVAによる障害を増幅する増感剤として用いる。
(4)コントロール溶液: 60(v/v)%EtOH。
(5)KP40 溶液: 40(v/v)%EtOH 溶出分画物を2.5%になるように60(v/v)%EtOHに溶解する。
(6)サンスクリーン剤: 市販日焼け止め(SPF 25、PA++)。皮膚に当たる紫外線をブロックする効果がある。ポジティブコントロールとして使用。
(7)UVA: 三共電機 GL-20BLB×5本を平行に並べて照射。
2.試験群
(1)コントロール群: コントロール溶液を使用。
(2)ポジティブコントロール 群: サンスクリーン剤を使用。
(3)KP-40 群: KP-40溶液を使用。
(1)ヘアレスマウスを18頭用意する。
(2)すべてのマウスに耳パンチでラベルし、背部皮膚厚をマイクロメーターで測定する。
(3)皮膚厚の平均が均等になるように3群に分ける(コントロール群, ポジティブコントロール群, KP−40群)
(4)マウスの背中をセロテープ(登録商標)で5回ゆっくりストリッピングする。
(5)マウスの背部に0.1%8-MOP/EtOHを50microL滴下し、ドライヤーで乾燥させる。
(6)(4)-(5)を2度繰り返す。
(7)30分後コントロール群マウス背部にハトメ(15mm径)と朱肉で印をし、印内に60(v/v)%EtOHを25microL滴下して広げ、ドライヤーで乾かす。
(8)ポジティブコントロール群マウスも同様にハトメで印をつけ、中に市販日焼け止めを塗る(ミクロスパーテル1杯目安)。
(9)KP−40群マウスにもハトメで印をし、印内にKP40を25microL滴下して拡げ、ドライヤーで乾かす。
(10)マウス尾部をガムテープでケージに固定し、さらに後肢を含む臀部と前肢を含む後頭部をビニールテープで固定する。プラスチックケージに4頭×3列=12頭並べる。
(11)UVAを2時間照射する。
(12)紫外線照射直後、および20時間後に背部の印内の皮膚厚をマイクロメーターで測定する。
(13)(4)−(10)を再度行い、今度は4時間照射する。
(14)紫外線照射直後、および20時間後に背部の印内の皮膚厚をマイクロメーターで測定する。
KP−40によるUVA照射障害に対する保護効果の動物試験の結果を図8に示す。
コントロール群はUVA照射により皮膚厚が増加し、UVA照射による皮膚障害を示した。ポジティブコントロール群は皮膚厚のUVAによる肥厚を抑えることが判明した。KP−40群はポジティブコントロール群よりもさらに強くUVAによる皮膚の肥厚を抑制することが判明した。40(v/v)%EtOH溶出物はNMR分析によりポリフェノールが主成分であることから、UVA照射障害保護効果はクロメポリフェノール(フロロタンニン類)によるものと推察される。
本実施例では、クロメ70(v/v)%EtOH抽出物をダイヤイオン(登録商標)HP20カラムにて分画した、40(v/v)%EtOH溶出物について、UVB照射短期モデルでUVB照射障害防護効果を確認するための試験条件の概要を示した(参考文献:非特許文献1,2)。
1.試薬・検体
(1)クロメ抽出物: 乾燥クロメ30kgから70(v/v)%EtOH 120Lで7日間静置抽出した抽出物。
(2)クロメ分画物: クロメ抽出物をダイヤイオン(登録商標) HP20カラムに吸着させた後、「40(v/v)% EtOH」で溶出させた分画物。
(3)親水軟膏: 局方親水軟膏「ホエイ」(ニプロファーマ製)
(4)コントロール軟膏: 水を4倍量の親水軟膏に加えて、乳鉢でよく撹拌した。
(5)KP−40 軟膏: 40(v/v)%EtOH溶出分画物を10%になるように60(v/v)%EtOHに溶解し、4倍量の親水軟膏に加えて,乳鉢でよく撹拌した(最終濃度=2% KP−40)。
(6)サンスクリーン剤: 市販日焼け止め(SPF 25、PA++)。皮膚に当たる紫外線をブロックする効果がある。ポジティブコントロールとして使用。
(7)UVB: 三共電機 GL-20SE×4本を,SCHOTT WG295相当のガラスフィルターで低波長成分をカットしたものを照射。
2.試験群
(1)コントロール群: コントロール軟膏を使用。
(2)ポジティブコントロール群: サンスクリーン剤を使用。
(3)KP-40 群: KP-40 軟膏を使用。
(1)へアレスマウスHOS: HR−1(メス)(8週令)を18頭用意する。
(2)背部皮膚の色調を分光測色計(コニカミノルタ CR-400 )で測定し、a*値(赤色度)が均一になるように3群(1群6頭)に分ける。
(3)各群背部にそれぞれ コントロール軟膏、サンスクリーン剤、KP−40 軟膏を約10mg/cm2 塗布する。
(4)UVBを200mJ/cm2照射する。
(5)照射直後に再度 各群の軟膏を塗布する。
(6)照射48時間後,72時間後にマイクロメーターで皮膚厚を計り,浮腫の指標とする。
(7) 照射72時間後に分光測色計で背部皮膚3ヶ所の色調を測定し,a*値を算出する。
KP−40によるUVB照射障害に対する保護効果の動物試験の結果を図9および図
10に示す。コントロール群はUVB照射により皮膚厚が増加し、同時に赤みを増し、
UVB照射による皮膚障害を示した。ポジティブコントロール群は皮膚厚、色調のいずれもUVBによる障害を抑えることが判明した。KP−40軟膏の2.0%濃度群ではポジティブコントロール群と同等の障害抑制効果が認められた。
さらにKP−40軟膏の有効成分濃度を、1.0%、0.25%、0.1%、
0.025%、0.01%と変化させてUVB照射による24〜72時間後の皮膚肥厚を測定したところ、皮膚厚は全郡ともに照射48時間後に最大値を示した。48時間後の皮膚厚を比較すると、図11に示す如く、「KP−40」の「1%群」と「0.25%群」に皮膚肥厚抑制作用が認められた。
また、通常、UV照射障害保護効果の判断に使用される48時間後の皮膚肥厚を対比すると、「20(v/v)%EtOH溶出画分」、「40(v/v)%EtOH溶出画分」、「60(v/v)%EtOH溶出画分」軟膏群は、「UV(+)コントロール」群に比べて有意に皮膚厚の上昇(浮腫)を抑制していることが認められた(図12)。これらの画分はポリフェノールの含有が認められているところから、UVB照射障害保護効果はクロメポリフェノール(フロロタンニン類)によるものと推察される。
クロメ70(v/v)%EtOH抽出物をHP−20カラムにて分画した各分画物についてヒト繊維芽細胞TIG−114のUVB照射による障害に対する保護効果を検討した(参考文献:非特許文献3〜5)。
1.試薬・検体
(1)クロメ抽出物: 乾燥クロメ30kgから70(v/v)%EtOHで6時間撹拌抽出した抽出物
(2)クロメ分画物: クロメ抽出物からHP−20カラムに吸着させた後、「水」、「20(v/v)%EtOH」、「40%(v/v)EtOH」、「60(v/v)%EtOH」、「80(v/v)%EtOH」、「100(v/v)%EtOH」で溶出させた分画物。
(3)ヒト繊維芽細胞TIG−114: ヒューマンサイエンス研究資源バンクから入手(JCRB0534)し、10%牛胎児血清添加DMEM培地で培養。
(4)UVB: 三共電機GL−15SE ×3本を平行に並べて照射。
2.試験群
(1)コントロール群: クロメ抽出物も分画物も含まないPBS培地に混合。
(2)クロメ分画物群: 「水」、「20(v/v)%EtOH」、「40(v/v)%EtOH」、「60(v/v)%EtOH」分画物は「200μg/ml、400μg/ml」の濃度で含むPBS培地に混合。「80%EtOH」、「100(v/v)%EtOH」分画物は「100μg/ml、200μg/ml」の濃度で含むPBS培地に混合。
(1)細胞濃度を1×105Cells/mlに調節する。
(2)96ウエルマイクロブレートに100μl/well(10,000cells/
well)まく。
(3)37℃で24時間培養する。(10%牛胎児血清添加DMEM培地)
(4)培地を各試験群の検体を含むPBS(−)培地100μlに交換し,UVBを
400mJ/cm2照射する。
(5)72時間後に10%のCell Counting Kit-8(和光純薬(株)製)を加えて37度、5%CO2インキュベーターで1.5時間インキュべ−卜し、450nmの吸光度を測定する事により繊維芽細胞の数を測定する。
72時間培養後の細胞数を「∪VB(−)時の細胞数」に対する割合(UVB(+)/UVB(−))で表示し図13に結果を示す。
クロメのHP−20分画物のうち、「20(v/v)%EtOH溶出物」、「40(v/v)%EtOH溶出物」、「60%(v/v)EtOH溶出物の低濃度群」には「∪VB照射によるヒト皮膚繊維芽細胞の障害に対する保護作用」が認められた。これらの画分はポリフェノール含量が高い画分であり、また動物試験の結果とも共通する結果が得られた。
クロメのダイヤイオン(登録商標)HP20分画物のうち,「水溶出物」、「80(v/v)%EtOH溶出物」、「100(v/v)%EtOH溶出物」には、「UVB照射によるヒト皮膚繊維芽細胞の障害に対する保護作用」は認められなかった。「60(v/v)%EtOH溶出物」、「80(v/v)%EtOH溶出物」、「100(v/v)%EtOH溶出物」では濃度が高くなると細胞数が減る傾向が認められる。これらの画分には脂肪酸が含まれているので,脂肪酸による細胞障害が発生している可能性がある。
クロメ70(v/v)%EtOH抽出物をダイヤイオン(登録商標)HP20カラムにて分画して得た40(v/v)%EtOH分画物から次の工程で19種類の既知及び新規化合物単体を得た。
得られた第2画分(23.8mg)について、ユニソンUK−C18カラム(インタクト(株)製、10×250mm)を用いた高速液体クロマトグラフィーを実施した。溶媒として水/アセトニトリル85/15液を用い、流速2mL/分で行い、溶出物をUV270nmの吸収で検出した。1回の精製により、「8,8’−バイエコール−7−サルフェート(8,8'-bieckol-7-sulfate),溶出時間12.8分」(図1−1のNo.1)を10.3g得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C36H21O21SNa (高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:844.59 (ESI-MS法により測定した(M-H)−=821.0296)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(400MHz、溶媒CD3OD):
(ppm):6.95(s、1H)、6.20(s、1H)、6.17(s、1H)、6.14(s、1H)、5.98(d、J=1.84Hz、2H)、5.97(d、J=1.84Hz、2H)、5.95(t、J=1.84Hz、1H)、5.95(t、J=1.84Hz、1H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(100MHz、溶媒 DMSO-d6):
(ppm):160.3、160.3、158.7(2C)、158.7(2C)、151.3、147.2、146.0、145.7、144.3、144.0、141.8、141.7、141.4、141.0、137.1、136.9、126.6、124.0、123.3、123.1、122.5、122.5、109.9、105.3、99.4、98.5、98.1、96.3、96.3、94.9、93.9(2C)、93.9(2C)
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
得られた第7画分(48.8mg)について、ユニソンUK−フェニルカラム(10×250mm)カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーを実施した。溶媒として水/アセトニトリル(8/2)液を用い、流速2mL/分で行い、溶出物をUV270nmの吸収で検出した。1回の精製により、「8,8’−バイエコール(8,8'-bieckol),溶出時間28.8分)」(図1−1のNo.2)を33.5mg得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C36H22O18(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:742.55(ESI-MS法により測定した(M-H)−=741.0722)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(400MHz、溶媒CD3OD):
(ppm):6.19(s、2H)、6.14(s、2H)、5.98(d、J=1.88Hz、4H)、5.96(t、J=1.88Hz、2H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(100MHz、溶媒 DMSO-d6):
(ppm):160.4(2C)、158.8(4C)、151.8(2C)、145.9(2C)、144.6(2C)、141.9(2C)、141.3(2C)、137.3(2C)、123.4(2C)、123.1(2C)、122.5(2C)、104.4(2C)、98.2(2C)、96.3(2C)、94.0(4C)、93.9(2C)
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
第3溶出分画分(3g)について、コスモシール75C18−OPNカラム(Φ5cm×12cm)を用いたODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施した。メタノール/水が1/9液250mL、2/8液700mL、3/7液700mL、4/6液300mL、メタノール500mLにより分離して、5画分を得た。メタノール分画(468mg)に「ダイエコール(dieckol)」(図1−1のNo.3)を得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C36H22O18(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:742.55(ESI−MS法により測定した(M+Na)+=765.0704)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(400 MHz(溶媒CD3OD)):
(ppm):6.21(s、1H)、6.19(s、1H)、6.15(s、2H)、6.12(d、J=2.9 Hz、1H)、6.11(d、J=2.9 Hz、1H)、6.04(d、J=2.7 Hz、1H)、6.01(d、J=2.7 Hz、1H)、5.98(s、3H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(125 MHz(溶媒DMSO-d6)):
(ppm):160.3、158.8(2C)、155.9、154.2、153.0、151.1(2C)、146.1、146.0、145.9、145.9、142.6、142.4、141.9、141.8、137.2、137.0、124.2、124.0、123.2、123.1、122.6、122.3、122.2、98.5、98.3、98.2、98.0、96.2、94.5(2C)、93.8、93.6(2C)、93.5
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性
第1溶出分画分(10g)について、コスモシール75C18−OPNカラム(Φ5cm×13cm)を用いたODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施した。メタノール/水が1/9液650mL、2/8液600mL、3/7液600mL、4/6液600mL、メタノール500mLにより分離して、5画分を得た。得られた第4溶出分画分(102mg)を更にユニソンUS−C18カラム(250×20mm)を用いた高速液体クロマトグラフィーにより分離した。溶媒としてアセトニトリル/水=15/85液を用い流速10.0mL/分で行い溶出物をUV270nmの吸収で検出した。精製操作を1回行い、「ジオキシノデヒドロエコール(dioxinodehydroeckol),溶出時間32.8分)」(図1−1のNo.4)を36.8mg得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C18H10O9(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:370.27(ESI−MS法により測定した(M+Na)+=393.0229)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(400 MHz(溶媒CD3OD)):
(ppm):6.19(s、1H)、6.06(d、J=2.8 Hz、1H)、6.05(d、J=2.8 Hz、1H)、6.03(d、J=2.8 Hz、1H)、6.00(d、J=2.8 Hz、1H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(100 MHz(溶媒DMSO-d6)):
(ppm):153.3、153.0、146.1、145.9、142.1、141.7、140.1、137.2、131.6、125.9、122.7、122.5、122.3、98.9、98.8、97.6、93.9、93.9
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
第3溶出分画分(3g)について、コスモシール75C18−OPNカラム(Φ5cm×12cm)を用いたODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施した。メタノール/水が1/9液250mL、2/8液700mL、3/7液700mL、4/6液300mL、メタノール500mLにより分離して、5画分を得た。得られた第4溶出分画分(828mg)を更にコスモシール75C18−OPNカラム(Φ3cm×13cm)によるODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施した。メタノール/水が1/9液180mL、2/8液180mL、3/7液420mL、4/6液150mL、5/5液150mL、メタノール500mLにより分離して、6画分を得た。得られた第3溶出画分(80mg)をユニソンUS−C18カラム(250×20mm)を用いた高速液体クロマトグラフィーにより分離した。溶媒としてアセトニトリル/水=25/75液を用い流速10.0mL/分で行い溶出物をUV270nmの吸収で検出した。精製操作を1回行ない、「フロロフコフロエコール−A(phlorofucofuroeckol−A),溶出時間58.4分」(図1−1のNo.5)を7.9mg得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C30H18O14(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:602.46(ESI−MS法により測定した(M−H)−=601.0615)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(500 MHz(溶媒CD3OD)):
(ppm):6.68(s、1H)、6.45(s、1H)、6.31(s、1H)、6.01(d、J=2.2 Hz、2H)、5.99(t、J=2.2 Hz、1H)、5.97(t、J=2.2 Hz、1H)、5.93(d、J=2.2 Hz、2H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(125 MHz(溶媒DMSO-d6)):
(ppm):160.3、160.1、159.1(2C)、158.9(2C)、150.9、150.5、149.6、147.0、146.6、144.8、142.1、136.9、134.1、126.5、122.7、122.6、120.2、103.5、103.3、99.2、98.4、96.6、96.5、94.9、93.8(2C)、93.6(2C)
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
第1溶出分画分(10g)について、コスモシール75C18−OPNカラム(Φ5cm×13cm)を用いたODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施した。メタノール/水が1/9液650mL、2/8液600mL、3/7液600mL、4/6液600mL、メタノール500mLにより分離して、5画分を得た。得られた第1溶出分画分(2.9g)を更にコスモシール75C18−OPNカラム(Φ4cm×12cm)によるODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施した。水600mL、メタノール/水が1/9液350mL、2/8液350mL、3/7液300mL、5/5液300mL、メタノール300mLにより分離して、6画分を得た。得られた第2溶出分画分(565mg)を更にコスモシール75C18−OPNカラム(Φ3cm×13cm)によるODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施した。水300mL、メタノール/水が5/95液90mL、1/9液90mL、15/85液90mL、2/8液60mL、3/7液90mL、35/65液90mL、4/6液90mL、2/8液60mLにより分離して、9画分を得た。得られた第2溶出画分(122mg)をユニソンUS−C18カラム(250×20mm)を用いた高速液体クロマトグラフィーにより分離した。溶媒としてアセトニトリル/水=15/85液を用い流速9.0mL/分で行い溶出物をUV270nmの吸収で検出した。精製操作を1回行い、「2−フロロエコール(2−phloroeckol),溶出時間41.6分」(図1−1のNo.6)を37.2mg得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C24H16O12(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:496.38(ESI−MS法により測定した(M+Na)+=519.0374)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(500 MHz(溶媒CD3OD)):
(ppm):6.12(d、J=2.2 Hz、2H)、6.02(t、d=2.2 Hz、1H)、6.01(d、J=2.5 Hz、1H)、6.00(d、J=2.5 Hz、2H)、5.95(s、2H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(100 MHz(溶媒DMSO-d6)):
(ppm):160.4、158.6(2C)、154.7、153.0、151.0(2C)、147.6、146.0、142.0、141.5、137.3、124.9、122.9、122.7、121.8、98.7、96.4、96.2、94.9(2C)、94.2(2C)、93.9
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
第1溶出分画分(10g)について、コスモシール75C18−OPNカラム(Φ5cm×13cm)を用いたODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施した。メタノール/水が1/9液650mL、2/8液600mL、3/7液600mL、4/6液600mL、メタノール500mLにより分離して、5画分を得た。得られた第1溶出分画分(2.9g)を更にコスモシール75C18−OPNカラム(Φ4cm×12cm)によるODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施した。水600mL、メタノール/水が1/9液350mL、2/8液350mL、3/7液300mL、5/5液300mL、メタノール300mLにより分離して、6画分を得た。得られた第2溶出分画分(565mg)を更にコスモシール75C18−OPNカラム(Φ3cm×13cm)によるODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施した。水300mL、メタノール/水が5/95液90mL、1/9液90mL、15/85液90mL、2/8液60mL、3/7液90mL、35/65液90mL、4/6液90mL、2/8液60mLにより分離して、9画分を得た。得られた第2溶出画分(122mg)をユニソンUS−C18カラム(250×20mm)を用いた高速液体クロマトグラフィーにより分離した。溶媒としてアセトニトリル/水=15/85液を用い流速9.0mL/分で行い溶出物をUV270nmの吸収で検出した。精製操作を1回行い、「エコール(eckol),溶出時間36.0分」(図1−1のNo.7)を18.0mg得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C18H12O9(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:372.28(ESI−MS法により測定した(M−H)−=371.0410)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(500 MHz(溶媒CD3OD)):
(ppm):6.20(s、1H)、6.01(s、2H)、6.00(s、3H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(125 MHz(溶媒DMSO-d6)):
(ppm):160.5、158.9(2C)、153.1、146.2、146.1、142.7、142.0、137.3、123.3、122.8、122.4、98.6、98.3、96.4、94.0、93.9(2C)
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
得られた第2画分(105.8mg)について、ユニソンUS−C18カラム(20×250mm)を用いた高速液体クロマトグラフィーを実施した。溶媒として水/アセトニトリル(88/12)液を用い、流速10mL/分で行ない、溶出物をUV270nmの吸収で検出した。1回の精製により、「フコジフロレトールG(fucodiphlorethol G),溶出時間15.6分」(図1−1のNo.8)を3.9mg得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C24H18O12(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:498.39(ESI-MS法により測定した(M-H)−=497.0726)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(400MHz、溶媒CD3OD):
(ppm):6,16(d、J=2.32Hz、1H)、6.10(s、2H)、6.06(d、J=2.32Hz、1H)、6.05(d、J=2.76Hz、1H)、5.95(s、2H)、5.73(d、J=2.76Hz、1H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(100MHz、溶媒 DMSO-d6):
(ppm):157.8、157.7、157.2、157.1(2C)、156.5、154.6、154.5、153.0、151.1(2C)、150.3、123.3、121.9、101.6、101.0、96.8、95.7、94.7(2C)、94.7(2C)、93.3、92.3
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
第3溶出分画分(3g)について、コスモシール75C18−OPNカラム(Φ5cm×12cm)を用いたODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施した。メタノール/水が1/9液250mL、2/8液700mL、3/7液700mL、4/6液300mL、メタノール500mLにより分離して、5画分を得た。得られた第4溶出分画分(828mg)を更にコスモシール75C18−OPNカラム(Φ3cm×13cm)によるODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施した。メタノール/水が1/9液180mL、2/8液180mL、3/7液420mL、4/6液150mL,5/5液150mL、メタノール500mLにより分離して、6画分を得た。得られた第3溶出分画分(80mg)をユニソンUS−C18カラム(250×20mm)を用いた高速液体クロマトグラフィーにより分離した。溶媒としてアセトニトリル/水=25/75液を用い流速10.0mL/分で行い溶出物をUV270nmの吸収で検出した。精製操作を1回行い、「フロロフコフロエコール−B(phlorofucofuroeckol−B),溶出時間52.0分」(図1−2のNo.9)を7.9mg得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C30H18O14(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:602.46(ESI−MS法により測定した(M−H)−=601.0618)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(500 MHz(溶媒CD3OD)):
(ppm):6.71(s、1H)、6.42(s、1H)、6.21(s、1H)、6.02(d、J=2.2 Hz、2H)、5.99(t、J=2.2 Hz、1H)、5.97(t、J=2.2 Hz、1H)、5.92(d、J=2.2 Hz、2H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(125 MHz(溶媒CD3OD)):
(ppm):162.0、161.8、160.2(2C)、160.1(2C)、152.6、151.5、150.9、147.6、147.6、143.4、143.2、138.7、138.3、127.8、125.5、124.6、122.5、109.8、106.9、99.7、99.3、97.7、97.6、95.5(2C)、95.3(2C)、92.6
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
第6溶出分画分(725mg)について、コスモシール75C18−OPNカラム(Φ3cm×12cm)を用いたODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施した。メタノール/水が2/8液300mL、3/7液600mL、5/5液360mL、メタノール500mLにより分離して、4画分を得た。得られた第3溶出分画分(96mg)をユニソンUS−C18カラム(250×20mm)を用いた高速液体クロマトグラフィーにより分離した。溶媒としてアセトニトリル/水=25/75液を用い流速10.0mL/分で行ない溶出物をUV270nmの吸収で検出した。精製操作を1回行い、「No.10(化合物名未確定の新規化合物),溶出時間69.6分」(図1−2のNo.10)を18.8mg得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C48H30O23(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:974.74(ESI−MS法により測定した(M+Na)+=997.1077)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(500 MHz(溶媒CD3OD)):
(ppm):6.68(s、1H)、6.45(s、1H)、6.30(s、1H)、6.25(d、J=2.3 Hz、1H)、6.23(d、J=2.2 Hz、1H)、6.17(d、J=2.2 Hz、1H)、6.09(d、J=2.8 Hz、1H)、5.98(s、2H)、5.96(t、J=2.0 Hz、1H)、5.95(d、J=2.3 Hz、1H)、5.93(d、J=2.0 Hz、2H)5.79(d、J=2.8 Hz、1H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(125 MHz(溶媒CD3OD)):
(ppm):161.7、160.3(2C)、159.5、159.5、159.0、159.0、157.5、156.9、156.4、156.4、153.7、153.3、152.1(2C)、151.8、151.6、151.1、148.1、147.6、145.7、144.2、138.0、135.1、127.6、125.0、124.9、124.3、124.2、122.3、105.2、105.2、102.6、102.4、99.9、99.3、98.7、98.4、97.7、97.6、96.4(2C)、96.0、95.3(2C)、95.2、94.4、94.2
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
第6溶出分画分(725mg)について、コスモシール75C18−OPNカラム(Φ3cm×12cm)を用いたODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施した。メタノール/水が2/8液300mL、3/7液600mL、5/5液360mL、メタノール500mLにより分離して、4画分を得た。得られた第3溶出分画分(96mg)をユニソンUS−C18カラム(250×20mm)を用いた高速液体クロマトグラフィーにより分離した。溶媒としてアセトニトリル/水=25/75液を用い流速10.0mL/分で行い溶出物をUV270nmの吸収で検出した。精製操作を1回行い、「No.11(化合物名未確定の新規化合物),溶出時間56.0分」(図1−2のNo.11)を47.3mg得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C48H30O23(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:974.74(ESI−MS法により測定した(M+Na)+=997.1077)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(500 MHz(溶媒CD3OD)):
(ppm):6.73(s、1H)、6.43(s、1H)、6.27(d、J=2.5 Hz、1H)、6.25(d、J=2.2 Hz、1H)、6.22(s、1H)、6.20(d、J=2.2 Hz、1H)、6.11(d、J=2.7 Hz、1H)、6.05(s、2H)、5.96(t、J=2.0 Hz、1H)、5.95(d、J=2.5 Hz、1H)、5.93(d、J=2.0 Hz、2H)5.81(d、J=2.7 Hz、1H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(125 MHz(溶媒CD3OD)):
(ppm):161.8、160.0(2C)、159.6、159.5、159.1、158.9、157.4、156.8、156.5、156.3、153.7、152.6、152.1(2C)、151.9、151.5、150.8、148.2、146.9、143.7、142.8、138.0、137.9、127.3、125.3、124.7、124.0(2C)、122.2、109.8、106.3、102.6、102.5、99.6、99.5、98.6、98.4、97.7、97.6、96.5(2C)、95.3(2C)、95.1、94.3(2C)、92.8
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
(932.8mg)をコスモシール75C18−OPNカラム(Φ3.5×11cm)を用いて、ODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行なった。メタノール/水が1/9液300mL、13/87液200mL、3/7液100mL、4/6液100mL、メタノール100mLにより分離して7画分を得た。
得られた第2画分(63.4mg)について、ユニソンUS−C18カラム(20×250mm)を用いた高速液体クロマトグラフィーを実施した。溶媒として水/アセトニトリル(9/1)液を用い、流速10mL/分で行ない、溶出物をUV270nmの吸収で検出した。1回の精製により、「トリフロレトールA(Triphlorethol A),溶出時間20.4分」(図1−2のNo.12)を3.8mg得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C18H14O9(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:374.30(ESI-MS法により測定した(M-H)−=373.0573)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(500MHz、溶媒CD3OD):
(ppm):6.10(d、J=2.76Hz、1H)、6.05(d、J=2.13Hz、2H)、5.98(t、J=2.13Hz、1H)、5.94(s、2H)、5.80(d、J=2.76Hz、1H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(125MHz、溶媒 DMSO-d6):
(ppm):160.7、158.6(2C)、154.5、154.2、153.0、151.1、151.1(2C)、123.2、122.2、96.1、95.7、94.7(2C)、94.0(2C)、92.7
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
得られた第9画分(93.6mg)について、ユニソンUS−C18カラム(10×250mm)を用いた高速液体クロマトグラフィーを実施した。溶媒として水/アセトニトリル(85/15)液を用い、流速2mL/分で行ない、溶出物をUV270nmの吸収で検出した。1回の精製により、「ジオキシノデヒドロエコール−11−サルフェート(dioxinodehydroeckol-11-sulfate)、溶出時間48.0分」(図1−2のNo.13)を14.0mg得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C18H9O12SNa-(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:472.31(ESI-MS法により測定した(M-H)−=448.9801)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(400MHz、溶媒CD3OD):
(ppm):6.57(d、J=2.68Hz、1H)、6.52(d、J=2.68Hz、1H)、6.21(s、1H)、6.05(d、J=2.74Hz、1H)、6.03(d、J=2.74Hz、1H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(125MHz、溶媒 DMSO-d6):
(ppm):153.0、149.0、145.9、145.4、141.6、141.3、140.1、137.2、131.3、125.9、125.2、122.6、122.4、104.1、99.2、98.8、97.9、93.9
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
得られた第9画分(12.1mg)について、ユニソンUK−フェニルカラム(10×250mm)を用いた高速液体クロマトグラフィーを実施した。溶媒として水/アセトニトリル(7/3)液を用い、流速2mL/分で行ない、溶出物をUV270nmの吸収で検出した。1回の精製により、「No.14(化合物名未確定の新規化合物)、溶出時間30.4分」(図1−2のNo.14)を1.6mg得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C24H14O11(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:478.36(ESI-MS法により測定した(M-H)−=477.0445)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(400MHz、溶媒CD3OD):
(ppm):6.68(s、1H)、6.49(d、J=1.88Hz、1H)、6.31(d、overlapped、1H)、6.30(s、1H)、6.01(d、J=2.07Hz、2H)、5.99(t、J=2.07Hz、1H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(100MHz、溶媒 DMSO-d6):
(ppm):160.2、158.8(2C)、158.2、157.7、150.4、150.2、146.9、144.3、141.9、136.9、133.5、126.1、122.6、122.4、103.1、102.3、98.2、98.0、96.3、94.6、93.7(2C)、90.5
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
200mL、5/5液200mL、6/4液200mL、7/3液200mL、メタノール200mLにより分離して13画分を得た。
得られた第1画分(21.3mg)について、ユニソンUK−C18カラム(10×250mm)を用いた高速液体クロマトグラフィーを実施した。溶媒として水/アセトニトリル(85/15 0.1%トリフルオロ酢酸含有)液を用い、流速2mL/分で行ない、溶出物をUV270nmの吸収で検出した。1回の精製により、「6,8’−バイエコール(6,8'-bieckol),溶出時間86.4分」(図1−2のNo.15)を4.9mg得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C36H22O18(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:742.55(ESI-MS法により測定した(M-H)−=741.0737)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(400MHz、溶媒CD3OD):
(ppm):6.21(s、1H)、6.19(s、1H)、6.12(s、2H)、5.98(d、overlapped、2H)、5.98(d、overlapped、2H)、5.97(t、overlapped、1H )、5.97(t、overlapped、1H )
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(100MHz、溶媒 DMSO-d6):
(ppm):160.4、160.4、158.7(2C)、158.7(2C)、151.5、151.5、145.8、145.4、144.8、144.3、141.9、141.8、141.6、140.9、137.3、137.2、123.6、123.4、123.0、122.9、122.4、122.0、104.5、99.5、98.2、97.9、97.9、96.3、96.2、93.9(2C)、93.7(2C)、93.6
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
得られた第3画分(34.3mg)について、ユニソンUK−C18カラム(10×250mm)を用いた高速液体クロマトグラフィーを実施した。溶媒として水/アセトニトリル(9/1)液を用い、流速2mL/分で行ない、溶出物をUV270nmの吸収で検出した。1回の精製により、「6,8’−バイエコール−7’−サルフェート(6,8'-bieckol-7’-sulfate),溶出時間24.8分」(図1−2のNo.16)を16.2mg得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C36H21O21SNa-(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:844.59(ESI-MS法により測定した(M-H)−=821.0296)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(400MHz、溶媒CD3OD):
(ppm):7.00(s、1H)、6.21(s、1H)、6.10(s、1H)、6.08(s、1H)、6.00(d、J=2.07Hz、2H)、6.00(d、J=2.07Hz、2H)、5.96(t、J=2.07Hz、1H)、5.96(t、J=2.07Hz、1H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(125MHz、溶媒 DMSO-d6)
(ppm):160.3、160.3、158.8(2C)、158.7(2C)、151.1、147.5、145.9、145.5、145.0、143.6、141.9、141.4、140.9、140.6、137.0、136.7、125.9、123.9、123.4、122.8、122.4、122.3、108.4、99.3、98.8、98.5、98.4、98.0、96.2、96.1、93.8(2C)、93.6(2C)
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
得られた第5画分(60.0mg)について、ユニソンUS−C18カラム(20×250mm)を用いた高速液体クロマトグラフィーを実施した。溶媒として水/アセトニトリル(75/25)液を用い、流速10mL/分で行ない、溶出物をUV270nmの吸収で検出した。1回の精製により、「No.17(化合物名未確定の新規化合物),溶出時間18.0分」(図1−3のNo.17)を20.1mg得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C36H24O18(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:744.56(ESI-MS法により測定した(M+Na)+=767.0836)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(400MHz、溶媒CD3OD):
(ppm):6.24(d、J=2.26Hz、1H)、6.22(d、J=2.26Hz、1H)、6.17(s、1H)、6.16(d、J=2.26Hz、1H)、6.09(d、J=2.76Hz、1H)、5.99(d、J=2.76Hz、1H)、5.98(s、2H)、5.97(d、J=2.76Hz、1H)、5.92(d、J=2.26Hz、1H)、5.79(d、J=2.76Hz、1H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(125MHz、溶媒CD3OD)
(ppm):159.6、159.5、159.2、159.1、157.5、156.9、156.6、156.5、154.7、153.9、152.3(2C)、151.9、147.0、146.7、144.2、143.8、138.4、125.5、124.8、124.4、124.1、124.0、102.6、102.5、99.6、99.2、98.6、
98.4、97.6、96.4(2C)、95.7、95.3、94.4、94.3
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
得られた第6画分(83.9mg)について、ユニソンUS−C18カラム(20×250mm)を用いた高速液体クロマトグラフィーを実施した。溶媒としてA:水/アセトニトリル(95/5)液、B:水/アセトニトリル(5/5)液、を用い、0−45min;15−60%Bにてグラジエント溶出を行なった。流速5mL/分で行ない、溶出物をUV270nmの吸収で検出した。1回の精製により、「6,6’−バイエコール(6,6'-bieckol)溶出時間44.0分」(図1−3のNo.18)を10.5mg得た。
以下に理化学的性質を示す。
1)分子式:C36H22O18(高分解能質量スペクトル(HRMS)法により測定)
2)分子量:742.55(ESI-MS法により測定した(M-H)−=741.0717)
3)水素核磁気共鳴スペクトル(500MHz、溶媒CD3OD):
(ppm):6.18(s、2H)、6.12(s、2H)、6.02(d、J=2.05Hz、4H)、5.99(t、J=2.05Hz、2H)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(100MHz、溶媒 DMSO-d6):
(ppm):160.4(2C)、158.8(4C)、151.3(2C)、145.4(2C)、144.5(2C)、141.9(2C)、141.4(2C)、137.2(2C)、123.6(2C)、122.7(2C)、122.0(2C)、99.7(2C)、97.9(2C)、97.8(2C)、96.2(2C)、93.7(4C)
5)呈色反応:アニスアルデヒド−硫酸に陽性。
以下に市販試薬の理化学的性質を示す。
試薬名:phloroglucinol, dehydrate
製造元:東京化成工業株式会社
製品番号:P1376
1)分子式:C6H6O3
2)分子量:162.14
3)水素核磁気共鳴スペクトル(300MHz、溶媒CDCl3+ DMSO-d6):
(ppm):5.92(s)
4)炭素核磁気共鳴スペクトル(60MHz、溶媒CDCl3+ DMSO-d6):
(ppm):158.8、94.2
クロメ70(v/v)%EtOH抽出物をダイヤイオン(登録商標)HP20カラムにて分画して得た40(v/v)%EtOH分画物に含まれる19種類の既知及び新規化合物単体についてヒト繊維芽細胞TIG−114のUVB照射による障害に対する保護効果を検討した(参考文献:非特許文献3〜5)。
1.試薬・検体
(1)クロメ抽出物: 乾燥クロメ30kgから70(v/v)%EtOHで6時間撹拌抽出した抽出物
(2)クロメ分画物: クロメ抽出物からダイヤイオン(登録商標)HP20カラムに吸着させた後、「水」、「20(v/v)%EtOH」に続けて「40%(v/v)EtOH」で溶出させた分画物。
(3)ヒト繊維芽細胞TIG−114: ヒューマンサイエンス研究資源バンクから入手(JCRB0534)し、10%牛胎児血清添加DMEM培地で培養。
(4)UVB: 三共電機GL−15SE ×3本を平行に並べて照射。
2.試験群
(1)コントロール群: クロメ抽出物も分画物も含まないPBS培地に混合。
(2)ポジティブコントロール群: ビタミンCを50μMの濃度で含むPBS培地に混合。
(3)クロメ各化合物群: 実施例11で得た19種類の各化合物を50μg/mlの濃度で含むPBS培地に混合。
(4)KP−40分画物群:比較の為に「40%(v/v)EtOH」分画物を50μg/mlの濃度で含むPBS培地に混合。
(1)細胞濃度を1×105Cells/mlに調節する。
(2)96ウエルマイクロブレートに50μl/well(5,000cells/well)まく。
(3)37℃で24時間培養する。(10%牛胎児血清添加DMEM培地)
(4)培地を各試験群の検体を含むPBS(−)培地100μlに交換し,UVBを400mJ/cm2照射する。
(5)48時間後に10%のCell Counting Kit-8(和光純薬(株)製)を加えて37度、5%CO2インキュベーターで1.5hrインキュべ−卜し、450nmの吸光度を測定する事により繊維芽細胞の数を測定する。
48時間培養後のサンプル群の細胞の生存率(%)を次の式で求めて図14に結果を示す。
細胞生存率(%)=(サンプル群の細胞数−コントロール群の細胞数)/
(UV未照射の細胞数−コントロール群の細胞数)×100
分画物であるKP−40群はポジティブコントロール群であるビタミンC群と同程度の生存率を示した。
各化合物のうち,新規化合物であるNo.10と,既知物質であるがクロメでの含有が
公知となっていないNo.8のフコジフロレトールG(fucodiphlorethol G),No.9のフロロフコフロエコールB(phlorofucofuroeckol−B),及びクロメでの含有が公知であるNo.4のジオキシノデヒドロエコール(dioxinodehydroeckol)の4種の化合物にポジティブコントロール群であるビタミンC群よりも細胞生存率が高い傾向が認められた。これらの化合物にはUVB照射障害から細胞を守る効果があると推定される。
本実施例では、クロメ70(v/v)%EtOH抽出物をダイヤイオン(登録商標)HP20カラムにて分画した40(v/v)%EtOH溶出物について、UVB照射長期モデルでUVB照射障害防護効果を確認するための試験条件の概要を示した(参考文献:非特許文献1,2)。
1.試薬・検体
(1)クロメ抽出物: 乾燥クロメ30kgから70(v/v)%EtOH 120Lで7日間静置抽出した抽出物。
(2)クロメ分画物: クロメ抽出物をダイヤイオン(登録商標)HP20カラムに吸着させた後、「40(v/v)%EtOH」で溶出させた分画物。
(3)親水軟膏: 局方親水軟膏「ホエイ」(ニプロファーマ製)
(4)コントロール軟膏: 60%(v/v)EtOHを4倍量の親水軟膏に加えて、乳鉢でよく撹拌した。
(5)0.025% 軟膏: 40(v/v)%EtOH 溶出分画物を0.125%になるように60(v/v)%EtOHに溶解し、4倍量の親水軟膏に加えて,乳鉢でよく撹拌した(最終濃度=0.025% KP−40)。
(6)0.25% 軟膏: 40(v/v)%EtOH 溶出分画物を1.25%になるように60(v/v)%EtOHに溶解し、4倍量の親水軟膏に加えて,乳鉢でよく撹拌した(最終濃度=0.25% KP−40)。
(7)UVB: 三共電機 GL-20SE×5本を,SCHOTT WG295相当のガラスフィルターで低波長成分をカットしたものを照射。
2.試験群
(1)UV(−)コントロール群:コントロール軟膏を使用。UVBの照射は無し。
(2)UV(+)コントロール群:コントロール軟膏を使用。UVBの照射を行なう。
(3)0.025%KP-40 群: 0.025%KP-40軟膏を使用。UVB照射を行なう。
(4)0.25%KP-40 群: 0.25%KP-40軟膏を使用。UVB照射を行なう。
(1)へアレスマウスHOS: HR−1(メス)(7週令)を24頭用意する。
(2)3日間の予備飼育後,各群の体重平均が等しくなるように4群に分ける。
(3)各群背部にそれぞれコントロール軟膏、0.025%KP−40 軟膏,0.25%KP−40 軟膏を約10mg/cm2塗布する。
(4)UV(−)コントロール群以外の群について,週3回UVBを背部に照射する。照射線量は週ごとに54,108,162,216,216,216 mJ/cm2 と増加させる。
(5)照射直後に再度 各群の軟膏を塗布する。
(6)7週間の照射・塗布試験後に,各測定を行なう。マイクロメーターで皮膚厚を計り,浮腫の指標とする。分光測定計で背部皮膚3ヶ所の色調を測定し,L*値,a*値,b*値を算出する。皮膚水分量を測定する。経皮水分蒸散量(TEWL)を測定する。
KP−40によるUVB照射障害に対する保護効果の長期塗布動物試験の結果を図15
および図16に示す。7週間の照射・塗布試験後には、UV(+)コントロール群は
UVB照射により皮膚厚が増加し、同時に皮膚水分量が減少してUVB照射による皮膚障害を示した。
0.025%KP−40軟膏を塗布した群では、7週間のUVB照射による皮膚水分量
の減少を有意に抑制した。
また、0.25%KP−40軟膏を塗布した群では、7週間のUVB照射による皮膚厚
の上昇(浮腫)を有意に抑制していることが認められた。
これらの結果から、この軟膏の継続塗布により,日常の紫外線による障害から皮膚を保護する効果が期待される。また、この画分にはポリフェノールの含有が認められているところから、UVB照射障害保護効果はクロメポリフェノール(フロロタンニン類)によるものと推察される。
Claims (11)
- クロメ由来のフロロタンニン類を有効成分とすることを特徴とする紫外線照射障害保護剤。
- クロメ由来のフロロタンニン類が、クロメのエタノール水溶液抽出物である請求項1に記載の紫外線照射障害保護剤。
- エタノール水溶液が、エタノール濃度40〜80(v/v)%の水溶液である請求項2に記載の紫外線照射障害保護剤。
- クロメ由来のフロロタンニン類が、クロメのエタノール水溶液抽出物をさらに溶離液としてエタノール水溶液を用いてカラム分画した画分である請求項2または3に記載の紫外線照射障害保護剤。
- 溶離液としてのエタノール水溶液が、エタノール濃度20〜60(v/v)%の水溶液である請求項4に記載の紫外線照射障害保護剤。
- 下記化学構造式:
- 皮膚を紫外線照射傷害から保護する機能を有する請求項1から6のいずれかに記載の紫外線照射障害保護剤。
- 皮膚が皮膚繊維芽細胞である請求項7に記載の紫外線照射障害保護剤。
- 請求項1から8のいずれかに記載の紫外線照射障害保護剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
- 請求項1から8のいずれかに記載の紫外線照射障害保護剤を含有することを特徴とする化粧料。
- 上記化粧料が、日焼け止め材料である請求項10に記載の化粧料。
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- 2011-08-30 JP JP2011187131A patent/JP5829866B2/ja active Active
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