A.印刷装置の概略構成:
図1は、本発明の一実施例としての印刷装置1000の要部を示す斜視図である。図1には、互いに直交するXYZ軸が描かれている。これ以降に示す図についても必要に応じてXYZ軸を付している。本実施例において、印刷装置1000の使用姿勢では、Z軸方向が鉛直方向であり、印刷装置1000のX軸方向の面が正面である。印刷装置1000は、主走査送り機構と、副走査送り機構と、ヘッド駆動機構を有している。主走査送り機構は、キャリッジモーター14の動力を用いて、駆動ベルト16に接続されたキャリッジ30を主走査方向に往復動させる。副走査送り機構は、図示しない紙送りモーターを動力とする紙送りローラー12を用いて印刷用紙Pを副走査方向に搬送する。印刷装置1000の主走査方向はY軸方向であり、副走査方向はX軸方向である。ヘッド駆動機構は、キャリッジ30に備えられた印刷ヘッド32を駆動してインクの吐出およびドット形成を実行する。印刷装置1000は、更に、上述した各機構を制御するための制御ユニット40を備えている。制御ユニット40は、フレキシブルケーブル42を介してキャリッジ30と接続されている。
キャリッジ30は、カートリッジ装着部20と、印刷ヘッド32とを備えている。カートリッジ装着部20は、複数のカートリッジを装着可能に構成されており、印刷ヘッド32の上側に配置されている。カートリッジ装着部20に装着されたカートリッジは、Y方向に並ぶ。カートリッジ装着部20を「ホルダー」とも呼ぶ。図1に示す例では、カートリッジ装着部20には、4つのカートリッジが独立に装着可能であり、例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4種類のカートリッジが1つずつ装着される。カートリッジの装着方向は、−Z方向(本実施例では鉛直下向き方向)である。なお、カートリッジ装着部20としては、これ以外の任意の複数種類のカートリッジを装着できるものを利用可能である。印刷ヘッド32の上部には、カートリッジから印刷ヘッド32にインクを供給するためのインク供給管24が配置されている。この印刷装置1000のように、利用者により交換されるカートリッジが、印刷ヘッドのキャリッジ上のカートリッジ装着部に装着される印刷装置のタイプを、「オンキャリッジタイプ」と呼ぶ。
本実施例では、キャリッジ30が、−Y方向の端の位置に移動した位置を、「ホームポジション」という。ホームポジションでは、例えば、キャリッジ30に新規のカートリッジが装着された際に、印刷ヘッド32へのインクを充填するための処理や、電源がオフにされる際に、印刷ヘッド32に対してインクの乾燥を抑制するためのキャッピング処理が行われる。また、キャリッジ30が、Y方向の略中央に移動した位置を、「交換ポジション」という。キャリッジ30が交換ポジションに移動すると、ユーザーは、キャリッジ30からカートリッジを抜き差し可能(交換可能)となる。
B.カートリッジの構成:
図2は、カートリッジ10の斜視図である。カートリッジ10をカートリッジ装着部20に装着する際の装着方向SDは、−Z方向(本実施例では、鉛直下向き方向)である。このカートリッジ10は、印刷材としてインクを収容するインク収容部100と、基板200と、を備えている。インク収容部100の内部には、インクを収容するインク室108が形成されている。インク収容部100は、全体として略直方体の形状を有しており、底面101と、上面102と、正面103と、背面104と、左側面105と、右側面106と、の6つの面を有している。
底面101には、カートリッジ10がカートリッジ装着部20に装着されたときに、印刷装置1000のインク供給管24と接続されるインク供給口110が形成されている。使用前の状態では、インク供給口110の開口はキャップやフィルムなどによって封止されていてもよい。正面103には、レバー120が設けられている。このレバー120は、カートリッジ装着部20にカートリッジ10を着脱する際に使用される。底面101と正面103とが交わる位置(すなわちインク収容部100の正面下端のコーナー部)には、基板設置部180が形成されており、この基板設置部180に基板200が設置されている。基板設置部180は、底面101に対して傾いた斜面として構成されている。基板設置部180には、基板200が、その基板表面を下向きにした状態で設置されている。なお、このようなカートリッジの構成は一例であり、他の任意の構成を有するカートリッジを採用することが可能である。なお、カートリッジ10とキャリッジ30とには、カートリッジ10内のインク残量を光学的に検出するためのセンサー機構が設けられているが、ここでは図示が省略されている。
図3は、基板200の構成を示す図である。図3(A)は、基板200の表面の構成を示している。基板200の表面は、カートリッジ10に装着されたときに外側に露出している面である。図3(B)は、基板200を側面から見た図を示している。基板200の上端部には、基板固定用のボス溝201が形成され、基板200の下端部には、ボス穴202が形成されている。
図3(A)における矢印Zは、カートリッジ装着部20へのカートリッジ10の挿入方向を示している。基板200は、裏面に記憶装置203と抵抗素子204とを備え、表面に9つのカートリッジ側端子210〜290からなる端子群を備えている。記憶装置203は、カートリッジ10のインク残量に関する情報を格納する。カートリッジ側端子210〜290は、略矩形状に形成され、挿入方向Zと略垂直な列を2列形成するように配置されている。2つの列のうち、挿入方向Z側、すなわち、図3(A)における下側に位置する列を下側列と呼び、挿入方向Zの反対側、すなわち、図3(A)における上側に位置する列を上側列と呼ぶ。
上側列を形成するカートリッジ側端子210〜240と、下側列を形成するカートリッジ側端子250〜290は、それぞれ以下の順に配列されている。
<上側列>
(1)第1の短絡検出端子210(短絡検出/全装着検出兼用)
(2)リセット端子220
(3)クロック端子230
(4)第2の短絡検出端子240(短絡検出/全装着検出兼用)
<下側列>
(5)第1の装着検出端子250(短絡検出/個別装着検出兼用)
(6)電源端子260
(7)接地端子270
(8)データ端子280
(9)第2の装着検出端子290(短絡検出/個別装着検出兼用)
各カートリッジ側端子210〜290は、その中央部に、複数の装置側端子のうちの対応する端子と接触する接触部cpを含んでいる。上側列を形成するカートリッジ側端子210〜240の各接触部cpと、下側列を形成するカートリッジ側端子250〜290の各接触部cpは、互い違いに配置され、いわゆる千鳥状の配置を構成している。また、上側列を形成するカートリッジ側端子210〜240と、下側列を形成するカートリッジ側端子250〜290も、互いの端子中心が挿入方向Zに並ばないように、互い違いに配置され、千鳥状の配置を構成している。
第1の装着検出端子250は、2つのカートリッジ側端子(電源端子260と、第1の短絡検出端子210)と隣り合っているが、そのうちの第1の短絡検出端子210は、第1の装着検出端子250の近傍にあり、特に第1の装着検出端子250に最も近い位置に配置されている。同様にして、第2の装着検出端子290は、2つのカートリッジ側端子(第2の短絡検出端子240と、データ端子280)と隣り合っているが、そのうちの第2の短絡検出端子240は、第2の装着検出端子290の近傍にあり、特に第2の装着検出端子290に最も近い位置に配置されている。
接触部cp間の関係についてみると、第1の装着検出端子250の接触部cpは、2つの端子(電源端子260と、第1の短絡検出端子210)の各接触部cpと隣り合っている。同様にして、第2の装着検出端子290の接触部cpは、2つの端子(第2の短絡検出端子240と、データ端子280)の各接触部cpと隣り合っている。
図3(A)から解るように、第1の装着検出端子250および第2の装着検出端子290は、下側列の両端部、すなわち、下側列の最も外側にそれぞれ配置されている。また、下側列は、上側列より端子数が多く、下側列の挿入方向Zと略垂直方向の長さは上側列の長さより長い。従って、第1の装着検出端子250および第2の装着検出端子290は、上側列および下側列を含む全端子210〜290のうち、挿入方向Zと略垂直方向にみて、最も外側に位置している。
また、第1の装着検出端子250および第2の装着検出端子290の接触部cpは、各端子の接触部cpにより形成される下側列の両端部、すなわち、下側列の最も外側にそれぞれ位置している。また、第1の装着検出端子250および第2の装着検出端子290の接触部cpは、上側列および下側列を含む全端子210〜290の接触部cpの中で、挿入方向Zと略垂直方向にみて、最も外側に位置している。
第1の短絡検出端子210および第2の短絡検出端子240は、上側列の両端部、すなわち、上側列の最も外側にそれぞれ配置されている。結果として、第1の短絡検出端子210および第2の短絡検出端子240の接触部cpも、同様に、各端子の接触部cpにより形成される上側列の両端部、すなわち、最も外側に位置している。従って、記憶装置203用の端子220、230、260、270、280は、第1の短絡検出端子210および第1の装着検出端子250のペアと、第2の短絡検出端子240および第2の装着検出端子290のペアとに両側から挟まれるように配置されている。
図4は、カートリッジ装着部20内に設けられている接点機構22の斜視図である。接点機構22は、基板200上の各カートリッジ側端子210〜290と印刷装置1000内の制御回路とを電気的に接続するための部材である。この接点機構22には、複数の装置側端子510〜590が設けられている。これらの複数の装置側端子510〜590は、カートリッジ10がカートリッジ装着部20に装着された際に、基板200上のカートリッジ側端子210〜290にそれぞれ電気的に接続される。装置側端子510〜590のそれぞれは、弾性変形可能な金属部材(弾性部材)で形成されており、カートリッジ10が装着された状態で基板200を上方に付勢する。なお、下端列の中央の端子570は、他の端子よりも上方への突出高さが大きい。従って、カートリッジ10がカートリッジ装着部20内に装着される際には、この端子570が他の装置側端子よりも早く基板の端子に接触する。換言すれば、基板200の端子210〜290(図3)のうちで、接地端子270が他の端子よりも早く装置側端子に接触する。
C.電気的構成:
図5は、カートリッジ10および印刷装置1000の電気的構成を示すブロック図である。印刷装置1000は、表示パネル430と、操作パネル450と、主制御回路400と、キャリッジ回路500とを備えている。図5には、説明の簡単のため、キャリッジ回路500に対して、カートリッジ10が1つだけ接続された例が示されている。また、図5において、装置側端子510〜590と、基板200のカートリッジ側端子210〜290とを接続する配線には、配線名SCK,VDD,SDA,RST,OV1,OV2,DT1,DT2が付されている。これらの配線名のうち、記憶装置用の配線のものは、信号名と同じ名称が使用されている。
表示パネル430は、主制御回路400からの指示に応じて、印刷装置1000の動作状態や、カートリッジ10の装着状態などの各種の情報を表示する表示装置である。
操作パネル450は、印刷に関する操作やカートリッジ10の交換に関する操作をユーザーから受け付け、主制御回路400にその操作内容を伝達するための入力装置である。
主制御回路400は、図1に示した制御ユニット40内に含まれている。一方、キャリッジ回路500は、主走査方向に往復動するキャリッジ30に設けられている。そのため、主制御回路400とキャリッジ回路500とは、図1に示したフレキシブルケーブル42を介してバス接続されている。
主制御回路400は、CPU410と、メモリー420とを有している。CPU410は、メモリー420に記憶された所定の制御プログラムを実行することで、主走査送り機構や副走査送り機構、ヘッド駆動機構を用いた印刷機能を実現する。また、CPU410は、メモリー420に記憶された所定の制御プログラムを実行することで、交換検出部415として機能する。
交換検出部415は、カートリッジ10が交換されるか否かを検出する機能を有する。本実施例では、交換検出部415は、操作パネル450を通じてユーザーがカートリッジ10を交換するための所定の操作を行ったことを検出した場合に、カートリッジ10が交換されると判断する。
キャリッジ回路500は、記憶装置制御回路501と、装着検出回路503とを有している。キャリッジ回路500には、高電圧電源VHVと低電圧電源VDDとの2種類の電源電圧が印加されている。高電圧電源VHVの電位は、本実施例では42Vであり、低電圧電源VDDの電位は3.3Vである。なお、これらの電位は、回路設計に応じて適宜、他の値とすることが可能である。ただし、低電圧電源VDDの電位よりも高電圧電源VHVの電位の方が高いものとする。
記憶装置制御回路501は、カートリッジ10の基板200に備えられた記憶装置203を制御してデータの読み書きを実行する回路である。記憶装置制御回路501とカートリッジ10の記憶装置203とは、低電圧電源VDDに基づいて動作する低電圧回路である。記憶装置制御回路501は、トランジスターによってそれぞれ構成された複数のスイッチ回路502を備えており、このスイッチ回路502を介して、装置側端子520,530,560,570,580のそれぞれに接続されている。記憶装置制御回路501は、これらのスイッチ回路502を制御することで、装置側端子520,530,560,570,580のそれぞれを、個別に、導通状態、接地状態、ハイインピーダンス状態(Hi−Z)、の3つ電気的状態に切り換えることができる。なお、「ハイインピーダンス状態」のことを、「フローティング状態」、あるいは、「絶縁状態」という。装置側端子を導通状態にした場合には、記憶装置制御回路501から記憶装置203にアクセス可能な状態となり、ハイ(3.3V)またはロー(0V)の信号を出力(あるいは入力)することができる。以下では、装置側端子520,530,560,570,580のことを、「本体側のメモリー端子」ともいう。なお、スイッチ回路502による接地状態は、導通状態においてロー信号を出力することで実現してもよい。
カートリッジ10の基板200に設けられた9つの端子のうち、リセット端子220と、クロック端子230と、電源端子260と、接地端子270と、データ端子280とは、記憶装置203に電気的に接続されている。以下では、これらの端子のことを、「カートリッジ側のメモリー端子」ともいう。記憶装置203は、例えば、メモリーセルアレイ(図示省略)を備えており、クロック信号SCKとデータ信号SDAとに基づいてメモリーセルアレイへのデータの書き込み、もしくは、メモリーセルアレイからのデータの読み出しを行う不揮発性メモリーである。
クロック端子230は、カートリッジ10がカートリッジ装着部20に装着されたときに、装置側端子530と電気的に接続される。クロック端子230は、装置側端子530に接続されたスイッチ回路502が導通状態のときには、記憶装置制御回路501から記憶装置203にクロック信号SCKを供給するために用いられる。データ端子280は、カートリッジ10がカートリッジ装着部20に装着されたときに、装置側端子580と電気的に接続される。データ端子280は、装置側端子580に接続されたスイッチ回路502が導通状態のときには、記憶装置制御回路501と記憶装置203との間で、データ信号SDAをやり取りするために用いられる。リセット端子220は、カートリッジ10がカートリッジ装着部20に装着されたときに、装置側端子520と電気的に接続される。リセット端子220は、装置側端子520に接続されたスイッチ回路502が導通状態のときには、記憶装置制御回路501から記憶装置203にリセット信号RSTを供給するために用いられる。電源端子260は、カートリッジ10がカートリッジ装着部20に装着されたときに、装置側端子560と電気的に接続され、記憶装置制御回路501(より詳しくは、装置側端子560に接続されたスイッチ回路502)を通じて、電源電圧(3.3Vのハイ信号)の供給を受けるために用いられる。接地端子270は、カートリッジ10がカートリッジ装着部20に装着されたときに、装置側端子570と電気的に接続され、記憶装置制御回路501(より詳しくは、装置側端子570に接続されたスイッチ回路502)によって、接地状態とされるために用いられる。
上述したように、記憶装置制御回路501は、装置側端子520,530,560,570,580の電気的状態を個別に導通状態、接地状態、ハイインピーダンス状態にすることができる。そのため、記憶装置制御回路501が、装置側端子520,530,560,570,580の電気的状態をすべてハイインピーダンス状態にすると、基板200上の記憶装置203は、カートリッジ10がカートリッジ装着部20に装着された状態であっても、電気的にキャリッジ回路500から絶縁された状態になる。また、記憶装置制御回路501が、装置側端子520,530,560,570,580の電気的状態をすべて接地状態にすると、カートリッジ10がカートリッジ装着部20に装着された状態であっても、かートリッジ側のメモリー端子は、すべて接地された状態になる。
装着検出回路503には、装置側端子510,540,550,590が電気的に接続されている。装置側端子510は、カートリッジ10がカートリッジ装着部20に装着されたときに、基板200上の第1の短絡検出端子210に電気的に接続される。装置側端子540は、カートリッジ10がカートリッジ装着部20に装着されたときに、第2の短絡検出端子240に電気的に接続される。装置側端子550は、カートリッジ10がカートリッジ装着部20に装着されたときに、第1の装着検出端子250に電気的に接続される。装置側端子590は、カートリッジ10がカートリッジ装着部20に装着されたときに、第2の装着検出端子290に電気的に接続される。
基板200上の第1の装着検出端子250と第2の装着検出端子290とは、抵抗素子204を介して接続されている。また、第1の短絡検出端子210と第2の短絡検出端子240とは、基板200内で配線205により接続されている。なお、2つの端子が配線によって接続されている状態を、「短絡接続」又は「導線接続」とも呼ぶ。配線による短絡接続は、意図しない短絡とは異なる状態である。
装着検出回路503は、装置側端子540から、基板200上の第2の短絡検出端子240に対して、所定の周期のパルス信号を印加する。第2の短絡検出端子240に出力するこのパルス信号のことを、以降、「全装着検出信号」という。全装着検出信号は、基板200の第2の短絡検出端子240、配線205、および、第1の短絡検出端子210を流れて、装置側端子510を通じて装着検出回路503に再び入力される。なお、図5には、説明の簡単のため、カートリッジ10が1つだけ示されているが、後述のように、実際には、全装着検出信号は、カートリッジ装着部20に全ての(本実施例では4つの)カートリッジ10が装着されることで直列的に接続される各カートリッジ10の第2の短絡検出端子240、配線205、および、第1の短絡検出端子210を全て流れた場合に、装着検出回路503に応答信号として再び入力される。装着検出回路503は、この応答信号の状態に基づいて、全てのカートリッジ10がカートリッジ装着部20に装着されたか否かを検出する。なお、全装着検出信号は、第1の短絡検出端子210側に印加し、その応答信号を装置側端子540側から受信してもよい。
装着検出回路503は、装置側端子550および装置側端子590を通じて、基板200上の第1の装着検出端子250および第2の装着検出端子290に対して交互に(選択的に)所定の周期のパルス信号を印加する。第1の装着検出端子250および第2の装着検出端子290に対して交互に印加するパルス信号のことを、以降、「個別装着検出信号」という。この個別装着検出信号は、「短絡検出信号」ともいう。装置側端子550および装置側端子590の一方から出力された個別装着検出信号は、基板200の第1の装着検出端子250、抵抗素子204、および、第2の装着検出端子290を流れて、他方の端子を通じて装着検出回路503に応答信号として再び入力される。装着検出回路503は、この応答信号に基づいて、各カートリッジ10がカートリッジ装着部20に装着されたか否かを個別に検出する。
図6は、全装着検出信号と個別装着検出信号の例を示す図である。図6(A)には、装置側端子540から第2の短絡検出端子240(OV2)に対して印加される全装着検出信号の例が示されている。図6(B)には、装置側端子550から第1の装着検出端子250(DT1)に対して印加される個別装着検出信号と、装置側端子590から第2の装着検出端子290(DT2)に対して印加される個別装着検出信号の例と、が示されている。本実施例では、全装着検出信号として、4ms周期で、0Vから3.3Vまで電位が変化する矩形波状のパルス信号が出力される。また、個別装着検出信号としては、2ms周期で、0Vから42Vまで電位が変化する矩形波状のパルス信号が出力される。なお、全装着検出信号と個別装着検出信号の周期は任意であり、これらの信号の周期は同期していてもよいし、非同期であってもよい。また、波形についても、矩形波に限られず、正弦波や三角波、のこぎり波など、種々の波形を採用することが可能である。
図7は、装着検出回路503の詳細な内部構成を示す図である。ここでは、4つのカートリッジ10が、カートリッジ装着部20に装着された状態が示されており、各カートリッジ10を区別するために参照符号IC1〜IC4が使用されている。装着検出回路503は、高電圧制御部610と、個別装着検出部620と、レジスター630と、全装着検出部640と、全装着検出信号発生部650と、短絡検出部660と、を有している。
高電圧制御部610は、高電圧電源VHVと接地電位とが入力され、2つの入出力ポートVA,VBと、1つの入力ポートVCと、を備えている。高電圧制御部610は、入出力ポートVAおよび入出力ポートVBから、交互に、図6(B)に示した個別装着検出信号を、各カートリッジIC1〜IC4の第1の装着検出端子250および第2の装着検出端子290に並列的に出力する。入力ポートVCには、後述する短絡検出部660が接続される。
入出力ポートVAは、各カートリッジIC1〜IC4の装着位置に設けられた4つの装置側端子550に並列に接続される。各装置側端子550は、対応するカートリッジの第1の装着検出端子250に接続される。各カートリッジ内では、第1の装着検出端子250と第2の装着検出端子290との間に、抵抗素子204がそれぞれ設けられている。4つのカートリッジIC1〜IC4の抵抗素子204の抵抗値は、同一の値Rに設定されている。装着検出回路503内には、各カートリッジの抵抗素子204とそれぞれ直列接続される抵抗素子631〜634が設けられている。これらの抵抗素子631〜634の抵抗値は、互いに異なる値に設定されている。具体的には、これらの抵抗素子631〜634のうち、n番目(n=1〜4)のカートリッジICnに対応づけられた抵抗素子63nの抵抗値は、(2n−1)R(Rは一定値)に設定されている。この結果、n番目のカートリッジ内の抵抗素子204と、装着検出回路503内の抵抗素子63nとの直列接続によって、2nRの抵抗値を有する直列接続抵抗が形成される。n番目(n=1〜N)のカートリッジに対する2nRの抵抗は、高電圧制御部610の入出力ポートVBに対して互いに並列に接続される。
図8は、直列接続抵抗と高電圧制御部610との接続状態を簡略的に示す図である。図8に示すように、n番目(n=1〜N)のカートリッジに対する2nRの直列接続抵抗701〜704は、高電圧制御部610の入出力ポートVAおよび入出力ポートVBの間に並列に接続される。高電圧制御部610は、各カートリッジの装着状態に応じて決まる検出電流IDETを、入出力ポートVBまたは入出力ポートVAから交互に取得し、その検出電流IDETを個別装着検出部620に出力する。検出電流IDETは、4つの直列接続抵抗701〜704の合成抵抗値Rcで電圧VHVを除した値VHV/Rcである。ここで、カートリッジの個数をNとしたとき、N個のカートリッジがすべて装着されている場合には、検出電流IDETは、例えば、以下の式で与えられる。ただし、検出電流IDETの電流値を測定するために高電圧制御部610または個別装着検出部620に設けられた内部抵抗は本実施例では無視することとする。
なお、1つ以上のカートリッジが未装着であれば、これに応じて合成抵抗値Rcが上昇し、検出電流IDETは低下する。
図8(B)は、カートリッジIC1〜IC4の装着状態と、検出電流IDETとの関係を示している。図の横軸は、16種類の装着状態を示しており、縦軸はこれらの装着状態における検出電流IDETの値を示している。16種類の装着状態は、4つのカートリッジIC1〜IC4から任意に1〜4個を選択することによって得られる16個の組み合わせに対応している。検出電流IDETは、これらの16種類の装着状態を一意に識別可能な電流値となる。換言すれば、4つのカートリッジIC1〜IC4に対応づけられた4つの直列接続抵抗701〜704の個々の抵抗値は、4つのカートリッジが取り得る16種類の装着状態が、互いに異なる合成抵抗値Rcを与えるように設定されている。
4つのカートリッジIC1〜IC4がすべて装着状態にあれば、検出電流IDETはその最大値Imaxとなる。一方、最も抵抗値の大きな直列接続抵抗704に対応づけられたカートリッジIC4のみが未装着の状態では、検出電流IDETは最大値Imaxの0.93倍となる。従って、検出電流IDETが、これらの2つの電流値の間の値として予め設定されたしきい値電流Ithmax以上であるか否かを調べれば、4つのカートリッジIC1〜IC4がすべて装着されているか否かを検出することが可能である。なお、カートリッジの装着を個別に検出するために、低電圧電源VDDの電圧(約3.3V)よりも高い電圧VHV(42V)を使用する理由は、検出電流IDETのダイナミックレンジを広くとることによって、検出精度を高めるためである。
個別装着検出部620は、高電圧制御部610から検出電流IDETを取得すると、その値に応じて、図8(B)に示した16種類の組み合わせの中から、各カートリッジの装着状態を特定する。この特定は、入出力ポートVAおよび入出力ポートVBから交互に出力される個別装着検出信号の立ち上がり毎、すなわち、1ms毎に行われる。そして、個別装着検出部620は、特定された装着状態を、レジスター630(図6)に記録する。
図9は、レジスター630の記録内容の一例を示す図である。レジスター630には、各カートリッジの現在の装着状態が、「1」または「0」によって記録される。本実施例では、カートリッジが抜かれている場合に「1」が記録され、装着されている場合に「0」が記録される。上記のように、この装着状態は、1ms毎に更新される。レジスター630の記録内容は、所定の周期(例えば、400ms)で主制御回路400によって読み取られる。主制御回路400は、その読み取り結果に応じて、各カートリッジの装着状態を表示パネル430に表示する。主制御回路400が記録内容を読み取る周期は、ユーザーがカートリッジを物理的に交換するのに要する最短の時間よりも短い時間に設定されている。
レジスター630には、各カートリッジの装着履歴情報も記録される。装着履歴情報とは、現在、装着されているカートリッジが、過去に1回でも抜かれたことがあるか否かを示す情報である。例えば、過去に1回でも抜かれたことがある場合には、「1」が記録され、抜かれたことがない場合には「0」が記録される。過去に1回でも抜かれたことがあるか否かは、例えば、カートリッジに備えられた記憶装置203に記録されている装着履歴情報に基づいて判断することが可能である。主制御回路400は、例えば、レジスター630内の装着履歴情報を読み込み、現在装着されているカートリッジが、過去にも装着されたことがあると判断した場合には、インク供給管24に対するインクの初期充填時の吸引量を、過去に装着されたことのないカートリッジよりも多くするといった制御を行うことが可能である。このような制御を行えば、新たに装着されたカートリッジと再装着されたカートリッジとのインクに対する気泡のとけ込み量の相違に応じて、適切な充填処理を行うことができる。
ここで説明を図7に戻す。各カートリッジ内において、第1の短絡検出端子210と第2の短絡検出端子240とは配線205で接続されている。1番目のカートリッジIC1の第1の短絡検出端子210は、対応する装置側端子510を介して装着検出回路503内の配線651に接続され、この配線651は、全装着検出部640に接続されている。n番目(n=1〜3)のカートリッジの第2の短絡検出端子240と、n+1番目のカートリッジの第1の短絡検出端子210とは、対応する装置側端子540,510を介して互いに接続される。また、4番目のカートリッジIC4の第2の短絡検出端子240は、全装着検出信号発生部650に接続される。そのため、すべてのカートリッジIC1〜IC4がカートリッジ装着部20内に装着されていれば、全装着検出信号発生部650と全装着検出部640との間がすべて導通した状態になる。よって、全装着検出部640は、全装着検出信号発生部650から出力され、全てのカートリッジIC1〜IC4の第2の短絡検出端子240と配線205と第1の短絡検出端子210とを流れた全装着検出信号を、配線651を通じて応答信号として受信することで、未装着のカートリッジが存在するか否かを判定することができる。このように、本実施例では、すべてのカートリッジIC1〜IC4がカートリッジ装着部20内に装着されたときには各カートリッジの短絡検出端子240,210が順次直列に接続されるので、その接続先の配線651から全装着検出信号を入力したか否かに応じて、1つ以上のカートリッジが未装着であるか否かを直ちに判定することが可能である。なお、全装着検出部640による判定結果は、装着検出回路503の所定の出力ポート647を介して出力される。本実施例では、全装着検出部640は、未装着のカートリッジが存在する場合には、出力ポート647の出力をハイ(「1」)とし、未装着のカートリッジが存在しない場合、すなわち、全てのカートリッジが装着されている場合には、その出力はロー(「0」)とする。
4つのカートリッジIC1〜IC4の第1の短絡検出端子210は、対応する装置側端子510を介して、ダイオード641〜644のアノード端子に接続される。また、4つのカートリッジIC1〜IC4の第2の短絡検出端子240は、対応する装置側端子540を介して、ダイオード642〜645のアノード端子に接続される。なお、ダイオード642のアノード端子は、第1のカートリッジIC1の第2の短絡検出端子240と、第2のカートリッジIC2の第1の短絡検出端子210に共通に接続される。ダイオード643,644も同様に、1つのカートリッジの第2の短絡検出端子240と隣接するカートリッジの第1の短絡検出端子210に共通に接続される。
これらのダイオード641〜645のカソード端子は、短絡検出部660に並列に接続されている。正常時には、短絡検出部660には、全装着検出信号発生部650から出力された全装着検出信号が、各ダイオードを通じて入力される。入力される全装着検出信号は、ダイオードによる電圧降下によって、3.3Vの電位が、2.5V程度まで低下する。しかし、短絡検出端子210,240に異常な電圧(具体的には、低電圧電源VDDの電圧値を超える電圧)が印加された場合には、いずれかのダイオード641〜645を通じて、短絡検出部660に、その異常な電圧が印加される。このような異常電圧は、各カートリッジの短絡検出端子210,240のいずれかと、装着検出端子250,290のいずれかとの間に意図しない短絡が生じた場合に発生する。このような短絡は、例えば、基板200(図3(A))の第1の短絡検出端子210と第1の装着検出端子250の間、又は、第2の短絡検出端子240と第2の装着検出端子290の間に異物(例えば、インク滴やゴミ)が付着した場合に生じ得る。短絡検出部660は、ダイオードによる電圧降下後の全装着検出信号の最大電圧を超える所定の基準電圧(例えば、3.3V)と、印加された電圧(ダイオードによる電圧降下後の電圧)とを常時対比し、印加された電圧が、基準電圧を超えた場合に、高電圧制御部610に対して、異常電圧の発生を示す信号を供給する。高電圧制御部610は、この信号を受信すると、ただちに、個別装着検出信号の出力を停止させ、個別装着検出信号の電圧が、記憶装置203の絶対最大定格の電圧(例えば、5V)を超えないようにする。
図10は、短絡検出部660が異常電圧を検出した場合の個別装着検出信号の波形を示す図である。図10の横軸は、短絡検出部660が異常電圧を検出してからの経過時間を示し、縦軸は、短絡検出部660に印加される電圧を示している。図10に示すように、例えば、異常電圧を検出した後にただちに個別装着検出信号の出力を停止すれば、本実施例では、概ね、電位の上昇を、記憶装置203の絶対最大定格を下回る3.8V程度に留めることが可能となり、0.15μs後には、その電位を0Vまで低下させることができる。本実施例では、このように異常電圧を検出した後に直ちに個別装着検出信号を停止することで、カートリッジ側の記憶装置203や、印刷装置側の回路(例えば、記憶装置制御回路501)に高電圧が印加されることを抑制することができる。
前述のように、本実施例では、高電圧制御部610は、2つの入出力ポートVA,VBを通じて、基板200上の第1の装着検出端子250および第2の装着検出端子290に、交互に個別装着検出信号を出力する。以下、このように個別装着検出信号を交互に出力することによる利点を説明する。
図11は、交互に個別装着検出信号を出力する利点を説明するための図である。図11(A),(B)には、それぞれ、カートリッジIC1と高電圧制御部610とが接続されている例を示している。図11(A)は、入出力ポートVAから個別装着検出信号を出力する場合を示し、図11(B)には、入出力ポートVBから個別装着検出信号を出力する場合を示している。
図7にも示したように、カートリッジ装着部20にカートリッジIC1が装着されると、高電圧制御部610の入出力ポートVAと、カートリッジIC1の第1の装着検出端子250とは、直接的に接続される。これに対して、高電圧制御部610の入出力ポートVBと、カートリッジIC1の第2の装着検出端子290とは、抵抗素子631を介して接続される。また、基板200上において、第1の装着検出端子250と第2の装着検出端子290とは、抵抗素子204を介して接続されている。そのため、入出力ポートVAから42Vの電圧を出力した場合に第1の装着検出端子250および第2の装着検出端子290にそれぞれ印加される電圧の組み合わせと、入出力ポートVBから42Vの電圧を出力した場合に第1の装着検出端子250および第2の装着検出端子290にそれぞれ印加される電圧の組み合わせとは、抵抗素子204および抵抗素子631による分圧によって、それぞれ異なることになる。
ここで、例えば、カートリッジIC1側の抵抗素子204の抵抗値を62kΩ、印刷装置1000側の抵抗素子631の抵抗値を20kΩとする。そして、図11(A)に示すように、入出力ポートVAから42Vの電圧を出力した場合には、第1の装着検出端子250の電位は42Vとなり、第2の装着検出端子290に印加される電圧は約10Vとなる。前述のように、本実施例では、検出電流IDETの電流値を測定するための高電圧制御部610または個別装着検出部620の内部抵抗を無視するため、入出力ポートVBの電位は0Vとする。また、図11(B)に示すように、入出力ポートVBから42Vの電圧を出力した場合には、第2の装着検出端子290に印加される電圧は、抵抗素子631による電圧降下によって約32Vとなり、第1の装着検出端子250の電位は0Vとなる。そのため、例えば、第2の装着検出端子290と第2の短絡検出端子240との間に短絡が生じた際に、入出力ポートVAから42Vの電圧を印加した場合と入出力ポートVBから42Vの電圧を印加した場合とでは、第2の装着検出端子290に印加される電圧は、入出力ポートVBから電圧を印加した場合の方が高くなり、短絡を検出できる可能性が高まる。そのため、短絡が発生した際に、入出力ポートVBから42Vの電圧を印加した場合には、短絡の検出が可能であるが、入出力ポートVAから42Vの電圧を印加した場合には、短絡が検出できない場合が生じ得る。よって、本実施例では、入出力ポートVAおよび入出力ポートVBから交互に個別装着検出信号を出力することで、基板200上での短絡の発生を精度良く検出することができる。
次に、他のカートリッジ、例えば、カートリッジIC4の抵抗素子204の抵抗値を62kΩ、抵抗素子634の抵抗値を270kΩとした場合について考える。そうすると、入出力ポートVAから42Vの電圧を出力した場合には、第1の装着検出端子250の電位は42Vとなり、第2の装着検出端子290に印加される電圧は約34Vとなる。また、入出力ポートVBから42Vの電圧を出力した場合には、第2の装着検出端子290に印加される電圧は、抵抗素子634による電圧降下によって約8Vとなり、第1の装着検出端子250の電位は0Vとなる。この場合、入出力ポートVBから電圧を印加しなくても、入出力ポートVAからの電圧の印加だけで、十分に、第2の装着検出端子290側の短絡についても検出可能である。なお、短絡の検出を精度良く行うには、第1の装着検出端子250および第2の装着検出端子290に、それぞれ、30V以上の電圧が印加されることが好ましい。
D.カートリッジ交換処理:
図12は、主制御回路400がキャリッジ回路500を用いて実行するカートリッジ交換処理のフローチャートである。このカートリッジ交換処理は、印刷装置1000の動作中に繰り返し実行される処理である。なお、このカートリッジ交換処理の実行の有無にかかわらず、本実施例では、印刷装置1000の動作中には、高電圧制御部610の入出力ポートVA,VBからは、常に全装着検出信号が交互に出力され、全装着検出信号発生部650からは、常に全装着検出信号が出力される。また、印刷装置1000の電源がオンとなっており、記憶装置制御回路501が記憶装置203にアクセスしていないときには、記憶装置203の端子(カートリッジ側のメモリー端子)と、端子550,250,590,290との間の短絡を精度良く検出するために、記憶装置203の端子はハイインピーダンス状態(フローティング状態)とされている。
このカートリッジ交換処理が実行されると、まず、主制御回路400の交換検出部415は、ユーザーからカートリッジの交換要求があったか否かを判断する(ステップS10)。交換要求があったか否かは、例えば、操作パネル450中のカートリッジ交換ボタンが押されたか否かを検出することで判断することができる。その他、例えば、印刷装置1000に接続されたコンピューターのプリンタードライバーから交換指示があったか否かを検出することで判断することができる。
カートリッジの交換要求がなかったと判断された場合には(ステップS10:No)、交換検出部415は、上記ステップS10の処理をループする。一方、カートリッジの交換要求があったと判断された場合には(ステップS10:Yes)、主制御回路400は、記憶装置制御回路501に所定の指令を与え、本体側のメモリー端子(装置側端子520,530,560,570,580)を全て、一定電位(本実施例では、接地状態)にする(ステップS12)。そして、主制御回路400は、本体側のメモリー端子の電位を一定電位にしたまま、キャリッジ30を、交換ポジション(図1)に移動させる(ステップS14)。「一定電位」は、記憶装置203の誤動作等の発生を抑制するため、記憶装置203の定格電圧以下の電位であることが好ましく、本実施例のように接地電位(0V)であることがより好ましい。キャリッジ30が交換ポジションに移動されると、ユーザーは、カートリッジ10を物理的に交換(脱着)することが可能になる。なお、ステップS12において、メモリー端子を一定電位に移行させる前には、メモリー端子は、ハイインピーダンス状態に設定されていることとする。本実施例では、上述のように、カートリッジ10の交換の際に、全てのメモリー端子を接地状態にするため、印刷装置1000側から常時出力されている42Vの個別装着検出信号や、3.3Vの全装着検出信号が、カートリッジ10の記憶装置203に誤って印加されてしまうことを抑制することができる。
キャリッジ30を交換ポジションに移動させると、主制御回路400は、装着検出回路503のレジスター630を参照し、各カートリッジ10が装着されたか否かを個別に検出する(ステップS16)。そして、検出された各カートリッジの装着状態に基づき、カートリッジ10の交換が行われている交換位置を表示パネル430に表示する(ステップS18)。カートリッジ10の「交換位置」とは、4種類のカートリッジIC1〜IC4のうち、どのカートリッジ10が外されているかを表す。上述したように、装着検出回路503では、高電圧制御部610から個別装着検出信号が常時出力され、これに伴い、個別装着検出部620によって、レジスター630内の各カートリッジ10の装着状態を示すデータも常時更新される。よって、主制御回路400は、レジスター630内のデータを読み込むだけで、各カートリッジ10の装着状態を直ちに検出することができる。なお、本実施例では、カートリッジ10の交換位置を表示パネル430に表示することとしたが、例えば、各カートリッジ10が挿入される位置に応じたキャリッジ30上の所定の位置に、発光ダイオードなどの表示手段を設け、これにより、交換位置を表示することとしてもよい。
カートリッジ10の交換位置を表示パネル430に表示すると、主制御回路400は、装着検出回路503の出力ポート647を参照して、全てのカートリッジ10が装着されているか否かを検出する(ステップS20)。上述したように、装着検出回路503では、全装着検出信号発生部650から全装着検出信号が常時出力され、これに伴い、全装着検出部640によって、全てのカートリッジ10が装着されているか否かを示す信号が、出力ポート647を通じて常時出力される。よって、主制御回路400は、出力ポート647を参照するだけで、全てのカートリッジ10が装着されているか否かを直ちに検出することができる。なお、本実施例では、出力ポート647を通じて出力される信号に基づいて、全てのカートリッジ10が装着されているか否かを検出することとしたが、レジスター630を参照することで、全てのカートリッジ10が装着されているか否かを検出することも可能である。また、出力ポート647とレジスター630との両方を参照して、全てのカートリッジ10が装着されているか否かを検出してもよい。この場合、出力ポート647の出力が「0」で、かつ、レジスター630の値が全てのカートリッジ10について「0」となった場合に、全てのカートリッジ10が装着されていると判断することができる。このように、出力ポート647とレジスター630との両方を参照することとすれば、全てのカートリッジ10が装着されているか否かを、より精度高く判断することができる。
ステップS20において、未装着のカートリッジ10が存在することが検出された場合には(ステップS20:No)、主制御回路400は、処理をステップS16に戻して、全てのカートリッジ10が装着されるまで、ステップS16〜20の処理を繰り返す。これに対して、全てのカートリッジ10が装着されたことが検出された場合には(ステップS20:Yes)、主制御回路400は、キャリッジ30をホームポジション(図1)に移動させる(ステップS22)。そして、主制御回路400は、記憶装置制御回路501に所定の指令を与え、本体側のメモリー端子を全て、ハイインピーダンス状態にする(ステップS24)。なお、上記ステップS22では、全てのカートリッジ10が装着されたことが検出され、かつ、ユーザーが、再度、カートリッジ交換ボタン等を操作したことを検出した場合に、キャリッジ30をホームポジションに移動させることとしてもよい。
本体側のメモリー端子が全てハイインピーダンス状態になると、装着検出回路503は、カートリッジ10の基板200上における短絡を正常に検出することが可能になる。この理由は以下の通りである。すなわち、第1の短絡検出端子210と第1の装着検出端子250との間や、第2の短絡検出端子240と第2の装着検出端子290との間に異物が付着した場合には、これらの端子だけではなく、記憶装置203に電気的に接続されたカートリッジ側端子220,230,260,270,280(特に、第1の短絡検出端子210および第1の装着検出端子250に隣接した電源端子260や、第2の短絡検出端子240および第2の装着検出端子290に隣接したデータ端子280)にも同時に異物が付着している場合が少なくない。そのため、本体側のメモリー端子を一定電位(0V)のままにすると、第1の装着検出端子250や第2の装着検出端子290に高電圧を印加したとしても、その高電圧は、一定電位とされたメモリー端子によって吸収されてしまい、第1の短絡検出端子210や第2の短絡検出端子240を通じて、異常電圧を検出することが困難となる。しかし、本体側のメモリー端子がハイインピーダンス状態であれば、本体側のメモリー端子とカートリッジ側のメモリー端子とが、電気的に絶縁された状態になるため、高電圧が一定電位に吸収される現象は生じない。よって、本体側のメモリー端子が全てハイインピーダンス状態になると、装着検出回路503は、カートリッジ10の基板200上における短絡を正常に検出することが可能になる。
以上のように、ステップS24において本体側のメモリー端子が全てハイインピーダンス状態にされると、装着検出回路503において短絡の検出が正常に行われる。そこで、主制御回路400は、装着検出回路503によって短絡が検出されたか否かを判断する(ステップS26)。短絡が検出された場合には、主制御回路400は、当該カートリッジ交換処理を異常終了させ、短絡が検出されない場合には、当該カートリッジ交換処理を正常終了させる。主制御回路400は、短絡が検出されたか否かを、例えば、レジスター630を参照することで判断することができる。具体的には、主制御回路400は、キャリッジ30をホームポジションに移動させた後にレジスター630を参照し、全てのカートリッジの装着状態が、未装着であると判断した場合に、短絡が検出されたと判断することができる。これは、短絡検出部660によって短絡が検出されると、高電圧制御部610による個別装着検出信号の出力が停止され、個別装着検出部620に対して、検出電流IDETが出力されなくなるためである。短絡が検出されたか否かは、その他にも、例えば、装着検出回路503から直接的に短絡が生じたことを表す信号を受信することによっても判断することができる。
主制御回路400は、当該カートリッジ交換処理を異常終了させた場合には、例えば、短絡が検出されたことを表示パネル430に表示し、キャリッジ30を、再度、交換ポジションに移動させて、ユーザーにカートリッジ10の再装着を促すことが可能である。また、主制御回路400は、当該カートリッジ交換処理を正常終了させた場合には、印刷処理を行うことが可能である。
E.メモリーアクセス処理:
図13は、メモリーアクセス処理のフローチャートである。このメモリーアクセス処理は、主制御回路400が、カートリッジ10の記憶装置203にアクセスする際に記憶装置制御回路501によって実行される処理である。
このメモリーアクセス処理では、まず、記憶装置制御回路501は、主制御回路400から、記憶装置203に対するアクセス要求を受信する(ステップS50)。このアクセス要求には、例えば、リード要求やライト要求が含まれる。
アクセス要求を受信すると、記憶装置制御回路501は、本体側のメモリー端子(装置側端子520,530,560,570,580)を、ハイインピーダンス状態から、記憶装置203を動作させるための通常の電気的状態に移行させる。具体的には、基板200のリセット端子220に接続される装置側端子520と、クロック端子230に接続される装置側端子530と、データ端子280に接続される装置側端子530とを導通状態にし、基板200の電源端子260に接続される装置側端子560を導通状態にした上でハイレベルとし、基板200の接地端子270に接続される装置側端子570を接地状態にする。
本体側のメモリー端子を通常の電気的状態に移行させると、記憶装置制御回路501は、受信したアクセス要求に応じて、記憶装置203に対してアクセス(リードまたはライト)を行う(ステップS54)。記憶装置制御回路501は、このアクセスによって取得したデータやステータスを、主制御回路400に対して転送する。記憶装置203に対するアクセスが終了すると、記憶装置制御回路501は、本体側のメモリー端子を通常の電気的状態から、全て、ハイインピーダンス状態に移行させる(ステップS56)。このように、本実施例では、記憶装置203に対するアクセス時には、本体側のメモリー端子をハイインピーダンス状態から、通常の電気的状態に移行させるため、正常に、記憶装置203に対するアクセスを行うことができる。また、本実施例では、記憶装置203へのアクセス終了後には、本体側のメモリー端子をすべてハイインピーダンス状態に戻すため、メモリーへのアクセスが行われない場合において、短絡の検出を精度良く監視することができる。
以上で説明した本実施例の印刷装置1000では、カートリッジの交換が行われる際には、本体側のメモリー端子をすべて接地状態とし、短絡の検出を行う場合には、本体側のメモリー端子をすべてハイインピーダンス状態にする。また、記憶装置203にアクセスする場合には、本体側のメモリー端子を、記憶装置203を動作させることが可能な通常の電気的状態にする。このように、本実施例では、印刷装置1000の処理内容に応じて、本体側のメモリー端子の電気的状態を切り換えるため、各処理を的確に行うことが可能になる。具体的には、カートリッジの交換が行われる際には、本体側のメモリー端子をすべて接地状態とするため、個別装着検出信号や全装着検出信号の印加により、記憶装置203に対して異常な電圧が印加されることを抑制することができる。また、短絡の検出を行う場合には、本体側のメモリー端子をすべてハイインピーダンス状態にするため、短絡を検出するための高電圧が記憶装置203の接地端子270等を通じて吸収されることがない。そのため、的確に異常電圧の検出を行うことができ、短絡の検出を精度良く行うことが可能になる。また、記憶装置203にアクセスする場合には、本体側のメモリー端子を、記憶装置203を動作させることが可能な通常の電気的状態にするため、記憶装置203へのアクセスを的確に行うことが可能になる。
更に、本実施例の印刷装置1000では、基板200上での短絡の検出に用いられる42Vの個別装着検出信号を、第1の装着検出端子250と第2の装着検出端子290とに対して交互に印加する。そのため、第1の装着検出端子250と第2の装着検出端子290との間に設けられた抵抗素子204と、第2の装着検出端子290に接続された本体側の抵抗素子631〜634とによる電圧降下の影響があっても、第1の装着検出端子250だけではなく、第2の装着検出端子290に対しても、比較的高い電圧を印加することができる。この結果、第1の装着検出端子250と第2の装着検出端子290との間、もしくは、第2の装着検出端子290と第2の短絡検出端子240との間、のどちらに異物が付着したとしても、精度良く短絡の検出を行うことが可能になる。
また、本実施例では、個別装着検出信号を常時出力することとしたため、カートリッジの装着状態をリアルタイムに検出することができる。よって、カートリッジの交換の最中に個々のカートリッジの装着状態がリアルタイムに表示パネル430に表示されるので、ユーザーはこの表示を見ながらカートリッジ交換の作業を行うことが可能である。特に、カートリッジを交換するときに、そのカートリッジが未装着から装着に変わったことが表示パネル430に表示されるので、カートリッジの交換作業に不慣れなユーザーでもカートリッジを正常に装着できたか否かを直感的に確認することが可能である。
F.カートリッジの電気的接続の他の例:
上記実施例では、図7に示したように、各カートリッジIC1〜IC4の第1の装着検出端子250は、それぞれ並列に高電圧制御部610の入出力ポートVAに接続され、第2の装着検出端子290は、それぞれ並列に高電圧制御部610の入出力ポートVBに接続される。これに対して、第2の装着検出端子290と高電圧制御部610との接続の態様は、種々の態様を採用することが可能である。
図14は、高電圧制御部610に対する各カートリッジの他の接続状態の第1の例を示す図である。この例では、4つのカートリッジIC1〜IC4の第1の装着検出端子250は、上記実施例と同様に、それぞれ並列に高電圧制御部610の入出力ポートVAに接続されている。これに対して、カートリッジIC1とカートリッジIC2の第2の装着検出端子290は、抵抗素子631,632を通じて、並列に高電圧制御部610の入出力ポートVB0に接続され、カートリッジIC3とカートリッジIC4の第2の装着検出端子290は、抵抗素子633,634を通じて、並列に高電圧制御部610の入出力ポートVB1に接続されている。つまり、4つのカートリッジが2組に分離され、それぞれの組の2つの第2の装着検出端子290に対して、1つの入出力ポートVB1またはVB2が割り当てられている。なお、入出力ポートVB1と入出力ポートVB2とは、上記実施例の入出力ポートVBと全く同一の機能を有する端子である。
このように、本体側の抵抗素子631〜634が接続される第2の装着検出端子290について、2組ずつ、個別に入出力ポートVB1,VB2を割り当てれば、入出力ポートVAと入出力ポートVB1との間、および、入出力ポートVAと入出力ポートVB2との間で、個別に、カートリッジの装着状態を検出することができる。そのため、図8(B)に示した電流値の16段階の区分をそれぞれの組で減じることができる。よって、カートリッジの個別の装着状態をより精度高く検出することが可能になる。
図15は、高電圧制御部610に対する各カートリッジの他の接続状態の第2の例を示す図である。この例では、4つのカートリッジIC1〜IC4の第1の装着検出端子250は、上記実施例と同様に、それぞれ並列に高電圧制御部610の入出力ポートVAに接続されている。これに対して、4つのカートリッジIC1〜IC4の第2の装着検出端子290は、抵抗素子631〜634を通じて、それぞれ、個別に、高電圧制御部610の入出力ポートVB1〜VB4に接続されている。なお、入出力ポートVB1〜VB4は、いずれも上記実施例の入出力ポートVBと全く同一の機能を有する端子である。
このように、本体側の抵抗素子631〜634が接続される第2の装着検出端子290について、それぞれ個別に入出力ポートVB1〜VB4を割り当てれば、図8(A),(B)に示した合成抵抗値によらず、電流あるいは電圧が出力されるか否かだけに基づいて、容易に各カートリッジの装着状態を検出することができる。
なお、入出力ポートVBに対して並列に接続するカートリッジの組み合わせについては、図7,14,15に示した例に限られない。例えば、図15に示したように、入出力ポートVBを3つ用意しておけば、1つの入出力ポートVBに対して4つのカートリッジを接続することができるので、最大で12個のカートリッジの個別の装着状態を検出することができる。また、1つの入出力ポートVBに対する接続数を減ずれば、それだけ、検出電流の区分(図8(B))を減ずることができるので、各カートリッジの装着状態の検出精度が向上する。よって、例えば、1つの入出力ポートVBに対して接続可能なカートリッジの数を3つに限定したとしても、それでも、最大で、9個のカートリッジの個別の装着状態を検出することができる。もちろん、入出力ポートVB1には1個、入出力ポートVB2には2個、入出力ポートVB3には3個、入出力ポートVB4には4個のように、各入出力ポートVB1〜VB4に接続するカートリッジの数をそれぞれ個別に設定してもよい。また、入出力ポートVAについても、入出力ポートVBと同様に複数個用意し、各カートリッジに対して、個別に、あるいは、複数個単位で接続してもよい。
G.変形例:
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこのような実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができる。例えば、ハードウェアによって実現した機能は、ソフトウェアによって実現するものとしてもよく、その逆もまた可能である。そのほか、以下の変形が可能である。
・変形例1:
上記実施例では、オンキャリッジタイプの印刷装置について説明したが、印刷装置は、オフキャリッジタイプの印刷装置であってもよい。オフキャリッジタイプとは、印刷ヘッドを有するキャリッジ以外の場所に設けられたカートリッジ装着部にカートリッジが装着されるタイプのことをいう。オフキャリッジタイプの印刷装置では、カートリッジとキャリッジとは、例えば、チューブによって接続され、そのチューブによってインクが印刷ヘッドに供給される。上記実施例の印刷装置をオフキャリッジタイプとした場合には、図12に示したカートリッジ交換処理では、ステップS14におけるキャリッジの交換ポジションへの移動や、ステップS24におけるキャリッジのホームポジションへの移動は行われない。また、ステップS10では、カートリッジを固定しているレバーが解除されたり、カートリッジを覆う筐体のカバーが開かれたりした場合に、カートリッジが交換されると判断してもよい。
・変形例2:
上記実施例では、個別装着検出信号や全装着検出信号が、印刷装置の動作中に常時出力されることとした。しかし、これらの信号は、図12に示したカートリッジ交換処理のステップS16における各カートリッジの装着検出や、ステップS20における全てのカートリッジの装着検出、ステップS26における短絡検出の際に、必要に応じて出力することとしてもよい。
・変形例3:
上記実施例では、個別装着検出信号を、装置側端子510と装置側端子540とに対して交互に出力することとした。しかし、個別装着検出信号は、これらの端子のうち、いずれか一方だけに出力することも可能である。また、個別装着検出信号は、本実施例では、パルス信号としたが、一定電位の直流(DC)信号としてもかまわない。全装着検出信号についても、パルス信号に限らず、直流(DC)信号とすることが可能である。
・変形例4:
上記実施例では、図11に示したように、基板200の第2の装着検出端子290と高電圧制御部610との間に、抵抗素子631が設けられている。これに対して、各カートリッジの装着状態を個別に判断可能であれば、例えば、第1の装着検出端子250と高電圧制御部610との間に抵抗素子が設けられていてもよい。また、第2の装着検出端子290と高電圧制御部610との間、および、第1の装着検出端子250と高電圧制御部610との間、の両方に抵抗素子が設けられていてもよい。両方の抵抗素子は、同一の抵抗値であってもよいし、異なる抵抗値であってもよい。
・変形例5:
上記実施例に記載されている各種の構成要素のうち、特定の目的・作用・効果に関係の無い構成要素は省略可能である。例えば、カートリッジ内の記憶装置203は、カートリッジの装着状態の検出に使用されていないので、カートリッジの装着検出を主な目的とする場合には省略可能である。
・変形例6:
上記実施例では、基板200に設けられる抵抗素子204と、印刷装置1000側に設けられる抵抗素子631〜634とを通る電流の電流値に基づいて各カートリッジの装着状態を検出した。これに対して、出力される電流や電圧、周波数等の電気的変量が電気信号の印加によって変化する他の電気デバイスを抵抗素子に代えて用いることとしてもよい。例えば、コンデンサーやコイル、ダイオード、抵抗素子、圧電センサー等の電気デバイスを、単独または様々な組み合わせで用いることが可能である。
・変形例7:
上記実施例では、インクカートリッジに本発明を適用しているが、インクカートリッジに限らず、他の印刷材、例えば、トナーが収容された印刷材収容体についても同様に本発明を適用可能である。
・変形例8:
図16は、基板の変形例を示す図である。これらの基板200a〜200cは、図3(A)に示した基板200と端子210〜290の表面形状が異なるだけである。但し、これらの基板200a〜200cにおいても、各端子210〜290に対応する装置側端子との接触部cpの配置は、図3(A)の基板200と同じである。このように、個々の端子の表面形状としては、接触部cpの配置が同一である限り、種々の変形が可能である。
・変形例9:
図17は、カートリッジの変形例を示す斜視図である。このカートリッジ10Bは、インク収容部10Baと、アダプター10Bbとに分離されている。このカートリッジ10Bは、図2のカートリッジ10と互換性を有するものである。インク収容部10Baは、インクを収容するインク室108Bと、インク供給口110Bとを有している。インク供給口110Bは、インク収容部10Baの底面に形成されており、インク室108Bに連通している。
アダプター10Bbは、その上部に開口102Bが設けられており、その内部にインク収容部10Baを受け入れる空間が形成されている。アダプター10Bbのその他の形状は、図2のカートリッジ10とほぼ同じである。すなわち、アダプター10Bbは、全体として略直方体の形状を有しており、その外面は、直交する6面のうちの天井面(上端面)を除く5つの面と、下端のコーナー部に設けられた斜面状の基板設置部180Bとで構成されている。アダプター10Bbの正面103Bには、レバー120Bが設けられている。アダプター10Bbの底面101Bには、カートリッジ装着部20に装着されたときに、カートリッジ装着部20のインク供給管24を通過させる開口109Bが形成されている。インク収容部10Baがアダプター10Bbの中に収められた状態では、インク収容部10Baのインク供給口110Bが、カートリッジ装着部20のインク供給管24に接続される。アダプター10Bbの正面103Bの下端近傍には、斜面状の基板設置部180Bが形成されており、この基板設置部180Bに基板200が設置されている。
このカートリッジ10Bを使用する場合には、インク収容部10Baをアダプター10Bbと組み合わせた状態で、両者をカートリッジ装着部20に同時に装着する。あるいは、まずアダプター10Bbをカートリッジ装着部20に装着し、その後に、インク収容部10Baをアダプター10Bb内に装着してもよい。後者の場合には、アダプター10Bbをカートリッジ装着部20に装着したままで、インク収容部10Baのみの脱着が可能である。なお、アダプター10Bbの正面103B、左側面105B、右側面106B、および、背面104Bは、これらのうち少なくとも一つを省略することが可能である。
ここで、本願の特許請求の範囲における「第1のカートリッジ側端子」は、例えば、上記実施例におけるカートリッジ側端子220,230,260,270,280に対応する。「第2のカートリッジ側端子」は、例えば、第1の装着検出端子250および第2の装着検出端子290に対応する。「第3のカートリッジ側端子」は、例えば、第1の短絡検出端子210および第2の短絡検出端子240に対応する。「第1の装置側端子」は、例えば、装置側端子520,530,560,570,580に対応する。「第2の装置側端子」は、例えば、装置側端子550および装置側端子590に対応する。「第3の装置側端子」は、例えば、装置側端子510および装置側端子540に対応する。「装着状態検出信号」は、個別装着検出信号に対応する。「制御部」は、例えば、主制御回路400およびキャリッジ回路500に対応する。