JP2013043324A - ボールペンチップ - Google Patents

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【課題】安定したインキ流出量を得るとともに、インキリターンし易すく、チップ先端部の内壁の摩耗を抑制したボールペンチップを簡単な構造で提供する。
【解決手段】チップ本体に、ボール抱持室の底壁の中央に形成したインキ流通孔と、該インキ流通孔から放射状に延びる複数本のインキ流通溝とを有し、前記ボール抱持室の底壁に、略円弧面状のボール座を設け、前記ボール座にボールを載置し、チップ先端部を内側にかしめることにより、ボールの一部をチップ先端縁より突出させて回転自在に抱持してなるボールペンチップにおいて、前記チップ先端部の内壁に、略円弧面状のシール面を形成し、前記ボールの表面及び/又は前記シール面の表面に潤滑被膜層を設けるとともに、縦断面における前記ボール座の先端縁と、前記先端縁と軸心で対峙する位置のシール面との先端縁を結ぶ交線の交点が、前記ボールの略中心を通ることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、チップ本体に、ボール抱持室の底壁の中央に形成したインキ流通孔と、該インキ流通孔から放射状に延びる複数本のインキ流通溝とを有し、前記ボール抱持室の底壁に、略円弧面状のボール座を設け、前記ボール座にボールを載置し、チップ先端部を内側にかしめることにより、ボールの一部をチップ先端縁より突出させて回転自在に抱持してなるボールペンチップに関する。
従来から、チップ本体に、ボール抱持室の底壁の中央に形成したインキ流通孔と、該インキ流通孔から放射状に延びる複数本のインキ流通溝とを有し、前記ボール抱持室の底壁に、略円弧面状のボール座を設け、前記ボール座にボールを載置し、チップ先端部を内側にかしめることにより、ボールの一部をチップ先端縁より突出させて回転自在に抱持してなるボールペンチップについてよく知られている。
こうしたボールペンチップを用いたボールペンにおいて、紙面へのインキ吐出のメカニズムは、水性ボールペン用インキなどの紙面へ浸透するタイプと、油性ボールペン用インキなどの紙面へ転写するタイプとに大別できる。こうした、ボールペンでは、紙面へ浸透又は転写できなかったボールペン用インキは、再度、チップ内に戻る、インキリターンを行うことで、チップ先端部にインキが残り、滴化する泣き現象、該チップ先端部に残ったインキが滴化して筆跡に転写されるとボテ現象が発生する問題を抱えている。
ところで、ボールペンチップにおいて、特開平6−15218号公報「塗布具の製造方法」に開示のように、チップ先端部からのインキ漏れ防止等のため、チップ先端部の内壁に、略円弧面状のシール面を形成することが開示されている。
また、特開2001−171280号公報「ボールペンチップの製造方法」では、チップ先端部の内壁とボールとの隙間やチップ先端部の内壁面幅によって、インキ流出量をコントロールし、描線濃度やボール座の摩耗を抑制することが開示されている。
特開平6−15218号公報 特開2001−171280号公報
しかし、筆記時のボールの回転によって、ボール座など、ボール抱持室の底壁側の摩耗が発生しやすいことも事実であるが、チップ先端部の内壁も摩耗が発生している。このチップ先端部の内壁の摩耗が大きくなると、インキの垂れ下がりや筆跡に影響する恐れがあった。
本発明はこれらの従来技術に鑑みてなされたものであって、安定したインキ流出量を得るとともに、インキリターンし易すく、チップ先端部の内壁の摩耗を抑制したボールペンチップを簡単な構造で提供することにある。
本発明は、前記問題を解決するために、チップ本体に、ボール抱持室の底壁の中央に形成したインキ流通孔と、該インキ流通孔から放射状に延びる複数本のインキ流通溝とを有し、前記ボール抱持室の底壁に、略円弧面状のボール座を設け、前記ボール座にボールを載置し、チップ先端部を内側にかしめることにより、ボールの一部をチップ先端縁より突出させて回転自在に抱持してなるボールペンチップにおいて、前記チップ先端部の内壁に、略円弧面状のシール面を形成し、前記ボールの表面及び/又は前記シール面の表面に潤滑被膜層を設けるとともに、縦断面における前記ボール座の先端縁と、前記先端縁と軸心で対峙する位置のシール面との先端縁を結ぶ交線の交点が、前記ボールの略中心を通ることを特徴とする。
また、前記チップ先端部のかしめ角度が、鈍角であることを特徴とする。
さらにまた、前記ボール座の径が、前記シール面の先端内径と略同等であることを特徴とする。
本願発明の請求項1の構成によれば、前記チップ先端部の内壁に、略円弧面状のシール面を形成するとともに、縦断面における前記ボール座の先端縁と、前記端縁と軸心で対峙する位置のシール面との先端縁を結ぶ交線の交点が、前記ボールの略中心を通ることで、ボールの偏りを抑制し、ボールがボール座から外れないようにしているため、ボールの回転をスムーズにするとともに、前記ボールとチップ先端部の内壁との隙間も一定に維持しやすいため、安定したインキ流出量を得ることができ、インキリターンしやすい効果を奏する。
また、ボールの偏りを抑制することで、ボールの回転によるボール座及びチップ先端部のシール面の偏摩耗を抑制することもできる。さらに、前記ボールが、略円弧状のボール座とシール面によって前後方向の移動を規制されているため、ボールの回転をスムーズにすることができる。
また、ボールの表面及び/又はシール面の表面に潤滑被膜層を設けることで、ボールとチップ内壁との接触抵抗を軽減して、ボールの回転をよりスムーズにするとともに、シール面の耐摩耗性を著しく向上することができ、より安定したインキ流出量を得ることができる。
尚、本発明に用いる潤滑被膜層としては、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、二硫化タングステン(WS2)、二硫化モリブデン(MoS2)やグラファイト、四フッ化エチレン(PTFE)等の含フッ素高分子、シリコーン樹脂等、従来から知られている固体潤滑剤などを適宜用いることができる。また、潤滑被膜層を被覆する方法は、特に制限されず、真空蒸着、イオン蒸着、物理的蒸着、化学的蒸着、真空アーク蒸着などが挙げられ、直接又は前記した潤滑剤を含有した被覆層であってもよい。特に前記した潤滑被膜層の中でも、耐摩耗性を考慮してダイヤモンドライクカーボン(DLC)を用いることが最も好ましい。
本発明に用いるボール材としては、タングステンカーバイドの超硬材やジルコニアなどのセラミックス材、ステンレス鋼材等、特に限定されるものではく、チップ本体もステンレス鋼や銅合金、アルミニウム等、特に限定されるものではない。
尚、本願発明の縦断面における前記ボール座の先端縁と、前記先端縁と軸心で対峙する位置のシール面との先端縁を結ぶ交線の交点が、前記ボールの略中心を通るとは、ボールの中心及びその近傍を通過するものであり、具体的には、前記交点が、ボールの中心及びボールの中心からボール径の10.0%以下、好ましくは5.0%以下の範囲を通ることが望ましい。
本願発明の請求項2の構成によれば、ボールペンチップにおいて、前記チップ先端部のかしめ角度を鈍角とすることで、ボール保持力を高めるとともに、かしめ角度を90度以下にする場合に比べ、ボールとチップ先端部の間にインキを溜める空間を大きくすることができるため、インキリターンしやすく、インキの這い上がりを抑制することができる。
本願発明の請求項3の構成によれば、前記ボール座の径が、前記シール面の先端内径と略同等とすることで、筆圧を受けた状態で、ボールがボール座に安定して載置して回転しやすい。
本発明のボールペンチップは、剪断減粘性を付与した水性又は油性ボールペン用インキ、ニュートン粘性の油性ボールペン用インキなど、特に限定されるものではなく、インキ粘度もまた特に限定されるものではないが、筆記時の粘度が10mPa・s未満の場合には、インキ粘度が低過ぎて、ボール座の摩耗が抑制し難くなる傾向があり、また、筆記時のインキ粘度が5,000mPa・sを超えると、筆記時のボール回転抵抗が大きくなり、筆感が重くなる傾向がある。そのため、筆記時のインキ粘度は、10〜5,000mPa・sが好ましい。より好ましくは、30〜3,000mPa・sであり、最も好ましくは、50〜2,500mPa・sである。
前記したインキ粘度は、剪断減粘性を付与した水性ボールペン用インキの場合には、ブルックフィールド社製DV−II粘度計(CPE−42ローター)、20℃、剪断速度384sec−1におけるインキ粘度、剪断減粘性を付与した油性ボールペン用インキ、ニュートン粘性の油性ボールペン用インキの場合には、ティー・エイ・インスツルメント株式会社製AR−G2(ステンレス製40mm2° ローター)、20℃、剪断速度500sec−1におけるインキ粘度を示す。
剪断減粘性を付与した水性ボールペン用インキを用いた場合には、100m当たりのインキ消費量Yが、100〜800mg、好ましくは200〜500mgとすることで、濃い筆跡及び滑らかな筆感を得られやすくすることができる。
また、油性ボールペン用インキを用いた場合には、100m当たりのインキ消費量Yが、ボール径Xとしたとき、Y≧60X、好ましくはY≧70Xとすることで、濃い筆跡及び滑らかな筆感を得られやすくすることができる。
本発明は、安定したインキ流出量を得るとともに、インキリターンし易すく、チップ先端部の内壁の摩耗を抑制したボールペンチップを簡単な構造で提供することができた。
実施例1のボールペンチップを示す一部省略した要部縦断面図である。 図1における、一部省略した要部拡大断面図である。 実施例1のボールペンチップを用いたボールペンレフィルを示す図である。
図1、図2に示す実施例1のボールペンチップ1は、ステンレス鋼線材からなるチップ本体2のボール抱持室3の中央にインキ流通孔7と、このインキ流通孔7から放射状に延び、チップ後部孔9に達しないインキ流通溝6を形成した底壁4に、略円弧面状のボール座5を設け、このボール座5にφ0.5mmのタングステンカーバイド製のボール9を載置し、チップ先端部2aを内側にかしめことにより、ボール9の一部がチップ先端縁より突出するように回転自在に抱持してある。また、チップ先端部2aの内壁には、略円弧面状のシール面2bを設けてある。
具体的には、ボールペンチップ1は、φ2.3mm、硬度が230Hv〜280Hvのステンレス鋼線材を所望の長さに切断し、ボール抱持室3、インキ流通孔7と、インキ流通孔7から放射状に伸びるインキ流通溝6を作製後、ボール抱持室3の底壁4に、略円弧面状のボール座5を形成してあり、ボール座5の表面には、予めダイヤモンドライクカーボン(DLC)の表層部からなる潤滑被膜層Sを被覆して設けてある。その後、ボール9をボール座5に載置し、チップ先端部2aを内側へかしめる。
また、ボール9が、ボール座5に載置している状態のチップ先端より臨出するボール出Hは、ボール径の30.0%、かしめ角度αは93度、シール面2bの先端縁の内径は、ボール径の95.4%、ボール9の縦方向のクリアランスが20μmとし、ボール抱持室の内径は、ボール径の110.0%、ボール座5の径は、ボール径の95.0%としてある。
また、チップ先端部2aの内壁には、略円弧形状のシール面2bを形成してあり、シール面2bの表面には、予めダイヤモンドライクカーボン(DLC)の表層部からなる潤滑被膜層Sを被覆して設けてある。
また、縦断面にけるボール座5とシール面2bは、ボール座5の先端縁と、軸心Jで対峙する位置のシール面2bの先端縁を結ぶ交線K1、K2の交点Kが、ボール9がボール座5に載置した状態で、ボール9の略中心Cを通過するようにしてある。尚、ボール9の中心Cと同心の円R1は、ボール9に対して直径が約10.0%の円であり、R2はボール9に対して直径が約5.0%の円である。
図3に示すのは、本発明のボールペンチップ1をボールペン11として用いた例である。具体的には、インキ収容筒12の先端部に、実施例1のボールペンチップ1を装着してある。インキ収容筒12内には、体積基準で平均粒径が0.5μmの可逆熱変色性のマイクロカプセル顔料を含有し、剪断速度384sec−1におけるインキ粘度が84mPa・s(25℃)で、剪断減粘指数が0.48の剪断減粘性を付与した水性ボールペン用インキ14と、グリース状のインキ追従体15を収容してある。
ボール9の後方には、コイルスプリング13を配設してあり、この押圧力によって、ボール9をチップ先端部2aのシール面2b側に押圧してある。尚、ボール9を押圧するコイルスプリング13の押圧力は10gfとしてあり、ボール保持力は、450gfであった。
このボールペンレフィル11を用いて紙面に筆記すると、インキ収容筒12にあるボールペンインキ14は、ボールペンチップ1の後部孔9からインキ流通孔7、インキ流通溝6を通じてボール9とボール抱持室3に供給される。また、ボール9とボール抱持室3に供給されたボールペンインキ14は、筆圧によって、前記した縦方向のクリアランス分、ボール9がボール座5側に移動して、チップ先端部2aの内壁とボール9に隙間を生じ、インキを吐出して筆記することができる。
尚、本実施例では、かしめ角度として93度としてあるが、鈍角であれば特に限定されるものではないが、かしめ角度が大きすぎると、紙当たり角度が小さくなる傾向となるため、120度以下、好ましくは110度以下とすることが好ましい。かしめ角度を鈍角とすることで、ボール9とチップ先端縁の間にインキを溜める空間Lを大きくすることができるため、インキリターンしやすく、インキの這い上がりを抑制することができる。
また、ボール出、クリアランス、ボール抱持室の内径は、特に限定されるものではないが、前記したインキ消費量を得るために、ボール出は、ボール径の10.0〜30.0%、クリアランスは、5〜30μm、ボール抱持室の内径は、ボール径の105.0〜120.0%とすることが好ましい。
さらにまた、本実施例では、便宜上、チップ本体にのみ潤滑被膜層を設けているが、チップ本体とボールの表面又はボールの表面のみに潤滑被膜層を設けてもよく、ボール座にも潤滑被膜層を設けることが最も好ましい。
本発明のボールペンチップは、使用するインキに限定されることなく使用可能で、油性ボールペン用インキや水性ボールペン用インキ、剪断減粘性を付与したインキ、修正用インキなど、インキの種類に関わらず使用することができるため、ボールペンとして広く利用可能である。
1 ボールペンチップ
2 チップ本体
2a 先端部
2b シール面
3 ボール抱持室
4 底壁
5 ボール座
6 インキ流通溝
7 インキ流通孔
9 ボール
11 ボールペンレフィル
12 インキ収容筒
13 コイルスプリング
14 ボールペン用インキ
15 インキ追従体
C ボールの中心
J 軸心
K 交点
K1、K2 交線
S 潤滑被膜層

Claims (3)

  1. チップ本体に、ボール抱持室の底壁の中央に形成したインキ流通孔と、該インキ流通孔から放射状に延びる複数本のインキ流通溝とを有し、前記ボール抱持室の底壁に、略円弧面状のボール座を設け、前記ボール座にボールを載置し、チップ先端部を内側にかしめることにより、ボールの一部をチップ先端縁より突出させて回転自在に抱持してなるボールペンチップにおいて、前記チップ先端部の内壁に、略円弧面状のシール面を形成し、前記ボールの表面及び/又は前記シール面の表面に潤滑被膜層を設けとともに、縦断面における前記ボール座の先端縁と、前記先端縁と軸心で対峙する位置のシール面との先端縁を結ぶ交線の交点が、前記ボールの略中心を通ることを特徴とするボールペンチップ。
  2. 前記チップ先端部のかしめ角度が、鈍角であることを特徴とするボールペンチップ。
  3. 前記ボール座の径が、前記シール面の先端内径と略同等であることを特徴とする請求項1または2に記載のボールペンチップ。
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