JP2013037093A - 液晶光変調器および液晶表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】動作温度範囲が広く高速応答性・広視野角特性を有する柔軟構造の液晶光変調器および液晶表示装置を提供する。
【解決手段】2枚の柔軟基板3a,3bの間に、ターフェニル系ネマチック液晶12にカイラル剤を添加してブルー相発現温度範囲を拡大したブルー相液晶層1を、ローラー型ナノインプリント法もしくは光重合相分離法で形成したスペーサ4を介して挟持し、2枚の基板3a,3bを接着・固定する。また、ブルー相液晶中にモノマーを添加して分子配向性のポリマーネットワークを形成すると、基板間隔を安定化するとともに、ブルー相発現温度範囲を拡大し得る。
【選択図】図1

Description

本発明は、薄い基板を用いて柔軟構造を有する液晶光変調器およびそれを備えた液晶表示装置に関する。
ガラス板などの平坦な基板間の液晶材料に電界を加えて、液晶分子の配向状態を変化させるという電気光学効果を応用すると、光変調器を構成することができる。液晶光変調器は、他の電気光学効果を示す光学結晶に比べて低電圧で動作するため、表示装置用の電気光学素子として、近年注目されている。
そのような液晶光変調器の1つとして、2つの透明導電膜間における液晶分子の配向方向を、あらかじめ基板上に形成した合成樹脂の配向膜(摩擦処理したポリイミド膜等)により制御した液晶素子がある。その場合、液体であるネマチック液晶の厚み(通常、数μm)を一定に保つために、均一な粒径の硬質樹脂製の球状スペーサ粒子を液晶層内に分散するか、フォトリソグラフィ工程により合成樹脂の柱状スペーサ構造体を液晶層内に形成するようにしている。このような液晶素子では、透明導電膜間に印加される電圧強度により液晶配向が変化し、それに応じて複屈折効果や旋光能が制御されるため(電気光学効果)、入射光の偏光状態が変化する。それにより、この素子を2つの偏光板で挟めば、印加電圧を用いて透過光を変調することができる。
通常の液晶光変調器では、その応答時間特性において、電圧で液晶分子を駆動する立ち上がり応答時間よりも、電圧除去時の緩和時間が遅くなるという問題がある。すなわち、安定した配向状態に向けて、液晶の分子配向の変化が、基板面の配向膜(配向規制力を有する)から伝わるためである。そのため高画質の動画表示を得るためには、高速応答性が得られる液晶材料が求められている。
様々な液晶材料の中でも、近年、2重ねじれ配向の円筒構造が3次元格子状結晶のように自己組織化的に配置するブルー相を示す液晶材料が注目されている(例えば下記非特許文献1〜3参照)。このブルー相液晶では、ミクロなねじれ構造の配列変化の緩和を利用するため高速な応答特性(サブミリ秒オーダー)を示し、光学的等方相を用いるため広視野角が得られるとともに、配向膜が不要なため大面積化が容易である、などの際立った特徴を有している。
一方、液晶を挟持する基板としては、これまでに硬質のガラス基板が活用されてきたが、今後、厚くて硬いガラス板ではなく、薄くて軽く柔軟なプラスチック基板等の柔軟性を有する基板の導入が検討されている。それにより、軽量・薄型で柔軟性を有して、持ち運びが便利な液晶表示装置を実現することができる。
D.C. Wright and N.D. Mermin, Rev.Mod. Phys. 61,385 (1989) H.S. Kitzerrow, Mol.Cryst.Liq.Cryst, Vol.202, p.51 (1991) H.Kikuchi, M.Yokota, Y.Hisakado, H.Yang,& T.Kajiyama. Nature Materials 1, pp.64-68 (2002)
しかし、上記の非特許文献1ないし非特許文献3に記載された液晶材料および液晶光変調器においては、以下に述べるような問題を有している。
上記の非特許文献1または2に記載されたブルー相液晶において、光学的な等方性を示すブルー相は、その発現温度範囲がコレステリック相(マクロなねじれ配向)とアイソトロピック相(分子配向の秩序性が消失)の間で1℃程度と極めて狭いため、表示装置への応用を想定した場合、実用的でないという問題がある。
そのため、非特許文献3においては、ブルー相液晶内に微量のポリマーを分散形成して、ブルー相発現温度域を広げることが報告されている。しかし、その素子作製では、狭い発現温度域でポリマーを重合しなければならず、大面積素子で高い面内均一性を確保することは困難である。
また、プラスチック基板等の柔軟性を有する基板を薄くして用いた場合、上述したような基板に固定されていない球状スペーサ粒子(パーティクルスペーサ)を用いたとすると、外部から基板に荷重が局部的に加わるとスペーサが移動するため、基板間隔すなわち液晶層の厚みが変動し、電気光学特性が変化して表示画像が大きく乱れる。特に、液晶光変調器が曲げられた場合、両基板の間には強い拡張力、圧縮力、せん断力が加わることになり、それらに対して従来のパーティクルスペーサでは対応できない。また、一方の基板に固着された柱状スペーサ構造体(ポストスペーサ)を用いる場合には、基板間の圧縮力には対応するが、拡張力やせん断力に対しては効果がない。
また、ポストスペーサの形成には高精度のパターン加工が求められ、それにはフォトリソグラフィに基づく光硬化性樹脂の均一塗布、仮焼成、パターン露光、焼成、現像、有機洗浄など、煩雑な作製工程を要する。そのためポストスペーサは、大面積かつ均一に形成するには困難を伴う。さらに、フォトリソグラフィに伴う溶剤露出や加熱処理などにより、プラスチック基板の表面平坦性が劣化するため、表示パネルの製造歩留まりが低下するという問題も生じる。
一方、配向膜(ポリイミドなど)が必要な従来のネマチック液晶を用いてプラスチック基板等の柔軟性基板により液晶光変調器を構成した場合、ポリイミド溶液などの溶剤への露出が必要となるため、基板の溶解や膨潤などで変形しやすくなり、基板の表面平坦性を保てなくなる。さらに、ポリイミド配向膜は高温で焼成する必要があるため(通常180℃以上)、基板に熱変形が生起し室温に冷却しても変形が戻らないという問題がある。上記の配向膜形成の問題は、基板サイズが拡大するに従って深刻な問題になる。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、大面積化・量産化に優れ、発現動作温度が広くて高速応答性・広視野角特性を有する柔軟構造の液晶光変調器および液晶表示装置を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するために、本発明に係る液晶光変調器は、可撓性を有する2枚の基板の間に、スペーサを介して液晶層を挟持してなる液晶光変調器において、前記液晶層は、ターフェニル系ネマチック液晶にカイラル剤を添加して形成されたブルー相発現温度範囲を拡大してなるブルー相液晶を含むことを特徴とするものである。
また、前記2枚の基板のうち、一方の基板上にローラー式ナノインプリント法を用いて凸状スペーサが形成され、該スペーサの頂部と他方の基板とが接着剤により貼り合わせられてなることが好ましい。
また、前記スペーサは、前記2枚の基板の間に挟持されたブルー相液晶にモノマーを添加した混合液に対し、紫外光を所定パターンにて照射することで形成されるポリマー壁により構成するようにしてもよい。
さらに、前記液晶層は、前記2枚の基板の間に介装された、ブルー相液晶にモノマーを添加した混合液であって、紫外光が照射されることで前記モノマーが光重合し、分子配向性のポリマーネットワークが該混合液中に析出形成されてなるものであることが好ましい。
また、前記カイラル剤の濃度が25重量%〜50重量%の範囲、さらには、30重量%〜35重量%の範囲であることが好適である。
また、前記スペーサは、前記基板側から見たパターン形状が、ストライプ状、直交格子状、四角柱状、円筒状または十字柱状であることが好ましい。
また、一方の基板に電極用の導電膜が分割されて複数設けられており、該導電膜間に印加する電圧強度により、液晶の分子配向が駆動されることが好ましい。
なお、ブルー相液晶に添加する前記モノマーとしては、液晶とともに分子が配向する液晶性モノマーを使用するのが好ましい。
さらに、本発明に係る液晶表示装置は、上述した液晶光変調器を備えてなることを特徴とする。
上述したように、本発明に係る液晶光変調器は、可撓性を有する2枚の基板の間にスペーサを介して挟持してなる液晶層を、分子間力が強く配向秩序度の高いターフェニル系ネマチック液晶にカイラル剤を添加して形成されたブルー相発現温度範囲を拡大したブルー相液晶を使用することにより、ブルー相の発現温度範囲を大幅に拡大することができ、これにより表示装置への応用が実現可能であるとともに、大面積素子で高い面内均一性を確保することが可能となり、大面積化が容易な柔軟構造を有する高速応答性の液晶光変調器を得ることができる。
また、一方の基板上にローラー式ナノインプリント法を用いてその基板材料で凸状スペーサを形成し、該スペーサの頂部と他方の基板とを接着剤により貼り合わせて構成してなるものでは、2枚の基板がスペーサ頂部で接着されて一体化されることで、基板間隔、すなわち液晶層の厚みを一定に保つことができ、またスペーサを基板に直接成形するため、外部からの荷重に強く、機械的安定性の高いスペーサを形成することが可能である。
また、他のスペーサの形成法としては、2枚の基板の間にブルー相液晶にモノマーを添加した混合液を挟持し、紫外光を所定パターンで照射することによりモノマーが光重合化したポリマー壁でスペーサを形成するという手法があり、このポリマー壁により2枚の基板を接着することができ、しかも発現温度域が拡大したブルー相液晶中でモノマーを析出させてポリマーネットワークを液晶層内部に容易に形成することができるので、基板間隔を安定化することができる。
そして、2枚の基板が一体化されているため、柔軟な基板を用いた場合でも、基板間に加わる拡張力、圧縮力、せん断力に対して高い耐性が得られて、液晶光変調器を曲げてもプラスチック基板の間隔すなわち液晶層の厚みを一定に保持することができる。
また、2枚の基板の間にブルー相液晶にモノマーを添加した混合液を介装し、紫外光を照射することでモノマーが光重合して分子配向したポリマーネットワークを液晶層に形成すると、このポリマーネットワークがブルー相液晶層の液晶配向を安定化できるため、さらにブルー相の発現温度範囲を拡げることも可能となる。特に、自己保持性を有するポリマーネットワークを液晶層に備えるため、液晶層自体の強度を高く維持することができ、さらに液晶層が一定の厚さを維持することができる。
また、カイラル剤の濃度が25重量%〜50重量%の範囲、さらには、30重量%〜35重量%の範囲に設定すると、前述のブルー相の発現温度範囲を確実に拡大することができる。
以上説明したように、基板を含む液晶光変調器において、ローラー型ナノインプリント法や光重合相分離法により形成したスペーサを用いて、温度範囲を拡大したブルー相液晶を保持することにより、特にブルー相液晶中にポリマーネットワークを形成した場合には、大面積化・量産化が可能で、高速応答性および広視野角を達成しつつ柔軟な液晶光変調器および液晶表示装置を提供することができる。
さらに、ブルー相液晶においては、従来の配向膜が必須とされないため、配向膜を形成しない場合には、配向膜形成に伴うプラスチック基板の問題も解消される。また、基板に対して溶剤が接触することがないため、基板の表面平坦性が保たれ、製造歩留まりが低下することもない。
そして、上記の構成を備えたことにより、大面積化および量産化に優れ、動作温度が広くて高速応答性および広視野角特性を有する柔軟構造の液晶光変調器および液晶表示装置を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る液晶光変調器を説明するための模式図(断面図)である。 本発明の実施形態に係る液晶光変調器の基板におけるローラー型ナノインプリント法に基づくスペーサの成形原理図である。 ブルー相のプレートレット組織の発現例を示す偏光顕微鏡写真である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る液晶光変調器を説明するための模式図(断面図)である。
本発明の一実施形態に係る液晶光変調器20(液晶光変調素子)では、図1に示すように、ブルー相液晶層1(液晶/ポリマー複合膜)が、例えばプラスチックによる可撓性を有する2つの上下基板3a,3bの間に挟まれるように積層されている。該液晶層1は、分子配向した液晶12とポリマーネットワーク5とで構成され、自己保持性を有する。なお、本例の液晶光変調器20では、従来用いられてきた液晶分子の配向を定める配向膜は必須ではなく、設置していない例を示している。
また、液晶層1内には、上下の基板3a,3bの間隔を一定に保持するため、下基板3bの表面から垂直方向に突設された樹脂製のストライプ状の凸構造ポストスペーサ4が所定間隔で設けられており、該スペーサ4により両基板3a,3bが接着されて固定されている。
上部基板3aの内面には、液晶層1に面して平面的に見てストライプ状(短冊状もしくは櫛歯状)の透明電極である導電膜2が設けられている。図示の場合、上記ストライプ状のスペーサ4と導電膜2とは互いに平行な関係にある。
さらに、ブルー相液晶層1の内部には固体のポリマーネットワーク5が形成されて、それによっても両基板3a,3bが接合されて一体化されている。スペーサ4とポリマーネットワーク5により上下の基板3a,3bが固定されるため、液晶光変調器20が曲げられても液晶層1の厚みの変動が抑制される。
液晶層1の液晶配向を電圧駆動するための透明電極であるストライプ状の導電膜2は、リード配線6を介して、交流電圧を供給する駆動電源7に接続される。この場合、導電膜2を一方の基板3aに2対に分割して周期的に複数設けるように形成される。そのため、透明導電膜2の電極間に電圧を印加すると、基板面に平行な電界が生じて液晶層1の液晶に印加されることになる。
さらに、上下の基板3a,3bの外側には、偏光透過軸が直交した2枚の偏光板8a,8bが、該上下基板3a,3bを挟むように配置され、一方の偏光板8aに入射光9が入射され、他方の偏光板8bを通して出射光10が出射される。この2枚の偏光板8a,8bの直交する偏光透過軸と、ストライプ状の導電膜2の方向とは45度異なっている。
そして、液晶12の各分子は、透明基板3aにストライプの形態で形成された導電膜2,2間に印加される電圧により、分子配向方向が変化し、液晶12の光学異方性(複屈折)が変化して、光の偏光方向が制御される。
つまり、導電膜2に電圧が印加されていない場合、液晶分子の2重ねじれシリンダ構造が3次元格子結晶のように、ねじれ弾性に基づく自己組織化により配置されているため、光学的に等方的で複屈折性を有さない。そのため、入射側偏光板8aを経た入射光9の偏光は、その偏光状態が液晶層1の液晶12によっては変化せず、直交した出射側偏光板8bで吸収されて透過できず出射光10(表示光)は生じない。
一方、導電膜2に電圧が印加されると、ブルー相液晶12の分子配列構造(液晶配向)が変化して、電界方向に複屈折を有するようになる。この時、入射側偏光板8aを透過した入射光9の偏光は、液晶層1の液晶12で複屈折を受けて、90度偏光方向が回転するため、出射側偏光板8bを透過して出射光10が生じるようになる。そのため、電圧強度に応じて光の出射強度が連続変調されることになる。
ブルー相液晶層1の液晶配向(結晶方位など)を面内均一に形成する上では、あらかじめ基板3a,3b上に既存の配向膜(例えば、ポリイミド膜など)を設けてもよいが、光変調を行う際に必ずしも必要とされるものではない。
次に、上記液晶光変調器20の各部の構造を製造方法を含め具体的に説明する。まず、ブルー相液晶層1の母材液晶12となるネマチック液晶としては、分子が細長く大きな構造を有して分子間相互作用が強く、配向秩序度や屈折率異方性Δn(Δn=異常光屈折率n−常光屈折率n)の大きなターフェニル系のネマチック液晶を用いる。このネマチック液晶に、ねじれ配向を誘発するカイラル剤を添加することによりブルー相液晶が得られ、ブルー相温度範囲(発現温度範囲)を拡大することができる。ターフェニル系ネマチック液晶のように液晶分子の分子間力が大きいと、ねじれ配向の弾性も大きいため、微細なねじれ構造の結晶配置(自己組織化)も促進されて、ブルー相液晶層1が安定化されることになる。
また、ブルー相を得るためのねじれピッチは、0.1μm〜1μmの範囲が望ましい。ねじれピッチはカイラル剤濃度と反比例の関係にあるため、カイラル剤濃度を調整する必要がある。モノマーを含めた混合液に対するカイラル剤の濃度は、25重量%から50重量%の範囲で、等方相からの降温時にブルー相の発現が確認された。また、カイラル剤の好ましい濃度は混合液の30重量%〜35重量%であり、ブルー相発現温度範囲が10℃以上に拡大する。
ブルー相液晶層1を得るためにターフェニル系ネマチック液晶に添加するカイラル剤としては、不斉炭素原子を含みねじれ配向を誘起する化合物が有用である。カイラル添加剤には、小量で短いらせんピッチが得られる材料が好ましく、光学活性を持つ不斉炭素原子を含むカイラル化合物、もしくはコレステリック相を示すコレステロール誘導体が適当である。そのほかにも、不斉炭素原子を含まないカイラル剤も使用できる。
ブルー相液晶層1の内部に分散されるポリマーネットワーク5は分子配向していることが望ましく、その場合、ブルー相液晶層1の内部から液晶12の分子にアンカリングを及ぼす。その結果、ターフェニル系ネマチック液晶の分子配向を安定化してブルー相の発現温度範囲を広げる効果が得られる。このポリマーネットワーク5を形成するためのモノマーおよび形成法については後述する。
次に、図1におけるスペーサ4を、ローラー型ナノインプリント法(熱式インプリント法)により下プラスチック基板3bに形成する例を説明する。このプラスチック基板3bの表面に形成される凸型のポストスペーサ4は、その相補的な形状である凹構造の金属型を用いたローラー型ナノインプリント法に基づき形成される。この成形方法としては、ローラープレスに基づき、ローラーに巻きつけた湾曲金属型を用いる方式と、平板状の金属型22(図2参照)を用いる方式とがあり、プラスチック基板を熱成形して作製するものである。
後者の平板状金属型を用いる方式の場合、図2に示すように、ローラー23とプラスチック基板3bの間に金属型22(モールド)を挟んで加熱加圧する。プラスチック基板3b上で回転しながら加圧するローラー23は、プラスチック基板3bを瞬時にガラス転移温度以上に加熱することで、プラスチック基板3bの表面が軟化して熱成形できる。さらにローラー23で熱プレスする前に、プラスチック基板3bを固定するステージ21をガラス転移温度近くまで予備加熱しておくことにより、ローラー23との接触時にプラスチック基板3bをガラス転移温度以上まで効率よく昇温できる。
また、熱プレスした後は、一体化した金属型22とプラスチック基板3bとは、貼り付けた状態で冷却する。温度変化で寸法が変わりやすいプラスチック基板3bを金属型22に貼り付けた状態で室温に戻すことにより、金属型22の表面凹凸形状をプラスチック基板3b上に忠実に再現して、スペーサ4を成形することができる。
このローラー型ナノインプリント法で形成されるスペーサ4は、フォトリソグラフィとは異なり、アスペクト比の大きな(幅に比べて高さの大きい)スペーサ構造も容易に作製できる。なお、上記のローラー型ナノインプリント方式は、ローラーを用いず平板型で面内一度に熱と圧力を加えるエンボス加工もしくは光ナノインプリント法に比べて、ローラーの小さな接触面で圧力を集中できるため、大面積基板を容易に加工できる特徴がある。
ローラー型ナノインプリント法に適したスペーサ形状としては、ストライプ状(ラインスペーサとも呼ばれる)、直交格子状(コラムスペーサとも呼ばれる)、円筒状、四角柱状、十字柱状などの形状が加工する上で有用であるが、熱プレス成形できるものであれば、それらに限定されるものではない。
通常の液晶光変調器20では、液晶層1の厚みが1〜20μmの範囲で作製されるため、それに応じた高さの凸構造のスペーサ4を形成する必要がある。すなわち、スペーサ4の高さは、液晶光変調器20の用途に応じて1μmから20μmの範囲で設計すればよい。また、スペーサ4の配置間隔(スペーサパターンのピッチ)は、表示装置を構成するのであれば、画素のピッチ程度(通常は数百μm)が望ましい。
上記スペーサ4の凸構造は光変調動作の妨げとなるため、つまり液晶層1が形成されない非表示部となるため、画素間の遮光部として設けるブラックマトリックス内に設けることが望ましい。そのためスペーサ4の幅は、2μm以上が望ましく、成形と取り扱いの容易さ、機械的強度の観点から2μmから20μmの範囲が適当である。
上記のローラー型ナノインプリント法で形成されたスペーサ4の頂部には、光硬化、熱硬化もしくは反応硬化する接着剤11(図1)を部分的に付着させて、2枚の基板3a,3bを貼り合わせる際に、接着剤11を硬化させて接着する。これにより、曲げに強い強固なスペーサ構造が形成できる。
なお、ブルー相液晶層1を形成する際には、両基板3a,3bの間に、液晶12などを含む混合液を塗布し、長波長の紫外線照射に伴う光重合等の手法を用いてモノマーをポリマーに変化させるとともに硬化させ、液晶12およびポリマーネットワーク5を含んでなる液晶/ポリマー複合膜による自己保持性の液晶層1を形成する。この後、両基板3a,3bの各外側に、偏光透過軸が互いに直交もしくは平行とされた2枚の偏光板8a,8bを配設することにより液晶光変調器20を作製する。
図1のスペーサ4とは異なる形態であるが、両基板3a,3bの間隔を保持するための他のスペーサ形成法としては、光重合相分離を用いて上基板3aと下基板3bとを連結するポリマー壁を液晶中での合成により形成して、両基板3a,3bを一度に接着する方法も有用である。この場合、図1における接着剤11を用いて両基板3a,3bを接着する必要がなく、より一層の工程の簡便化が可能である。その具体的な作製方法は、図示してないが、以下の通りである。なお、図1中の部材と同様の部材については、以下の説明で同じ符号を使用し、スペーサ4と同じ機能のポリマー壁についても同じ符号を使用している。
透明なプラスチック基板3a,3bを2枚使用して、一方の基板3b上にブルー相液晶12(ターフェニル系ネマチック液晶、カイラル剤を含む)とポリマー原材料(液晶性モノマー、オリゴマー、未架橋のポリマーなど)の混合液を塗布した後、もう一方の基板3aを貼り合わせる。上記のポリマー原材料は、ポリマー壁4とポリマーネットワーク5を形成する材料である。
このとき、ブルー相液晶層1(液晶とポリマーの複合膜)の厚みを制御するため、スペーサパーティクル(球状粒子)を混合液に分散して、両基板3a、3bの間隔を規定してもよい。混合液の配合比は、スペーサとしてのポリマー壁4と液晶表示部の面積比によって定められる。
混合液を透明基板3a,3bにより挟み込んだ後、この基板に露光部と遮光部を持つ光学マスクを積層して、基板と密着させる。さらに紫外線をマスク越しに照射して、紫外線透過部のポリマー原材料を重合・架橋する。これにより、樹脂材料の分子量が急速に増加して、液晶との相分離を起こして液晶が露光部から排出されるため、ポリマー壁4が形成される。
ポリマー壁形成の際は、液晶12がブルー相を示す温度範囲で行うことが望ましく、それにより、ポリマー壁表面がブルー相液晶12の分子配向に応じて形成されるため、ポリマー壁4の形成後は、液晶材料にブルー相発現を誘起しやすくなり、ブルー相を安定化する効果も期待できる。
光重合相分離により作製するポリマー壁4の幅は、2μm以上かつ200μm以下であることが望ましいが、壁の厚みや長さは全て一定でなくてもよい。ポリマー壁4の配置を直交格子状、ストライプ状とした場合、ポリマー壁4の間隔が画素ピッチと一致する場合が最適であるが、変調器の強度に応じて間隔を自由に定めることができる。また、別のポリマー壁構造の形状としては、円筒状、四角柱状、十字柱状などが有用であり、ポリマー壁4は直線状でなくても曲線状であっても良く、それらの組み合わせであっても支障は生じない。
ポリマー壁4の形成に用いる長波長紫外線露光照明は、平行度に優れる必要がある。例えば、光源ランプで放射された光を集光鏡で一方向に集め、照射面に対し複数のレンズを有するインテグレータ部によって光強度が広範囲で一様となるように光を分配した後、レンズや曲面鏡などを介して対象物に照射することが望ましい。ポリマー壁(樹脂構造体)4の形成精度を高めるには、照明光の広がりを示すコリメーション半角が5°以下に設定されたものが適当である。また、そこで用いる光源には、点光源が得やすい高出力水銀キセノンランプ、超高圧水銀ランプ、エキシマランプ、キセノンランプなどが好適であるが、それ以外の紫外線光源も用いることができる。
プラスチック基板3b上への液晶/モノマー混合液の塗布法としては、ロールコーティング、ディッピング、スピンコーティング、キャスティング、スプレー、ドクターブレードコーティングおよびワイヤーバーコーティングなどが、生産性や量産性に優れた方法として用いられる。また、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷など各種の印刷法を用いることもできる。
ブルー相液晶層1の内部に分散されるポリマーネットワーク5は、液晶12の分子配向に応じて分子配向していることが望ましい。その場合、液晶の配向を乱しにくく、高コントラストの表示動作を得ることができる。また、液晶層内部から液晶分子にアンカリングを及ぼす結果として、ブルー相液晶の分子配向を安定化してブルー相の発現温度範囲を広げる効果を有する。
分子配向性のポリマーネットワーク5の形成工程にも、連続して光重合相分離法が活用できる。すなわち、プラスチック基板3a,3bの間に挟まれた液晶/モノマー混合液(ブルー相を示す温度に制御)に紫外光を全面照射し、モノマー成分を重合して析出させることより、分子が配向したポリマーネットワーク5を液晶層1の内部に形成できる。その際、ターフェニル系液晶の導入によりブルー相発現温度範囲が大幅に拡大されているため、簡便な温度制御で均一な素子作製が可能である。
また、ポリマー壁4とポリマーネットワーク5を、光重合相分離で形成する場合には、同一の樹脂原材料により、簡便な工程により変調器素子を構成できる。すなわち、ポリマー壁4とポリマーネットワーク5のそれぞれの構造体を、プラスチック基板3a,3bで挟んだ液晶/モノマー混合液への紫外線のパターン露光および全面露光により、順次形成することができる。
ポリマー壁4やポリマーネットワーク5の形成に使用する樹脂原材料は、モノマーに限られるものではなくオリゴマーも有用である。また、重合反応が進みやすく、重合後の分子量増加が著しい材料ほどポリマーと液晶(低分子)が相分離しやすいため、多官能性の樹脂原料が好ましいが、単官能であっても使用できる。さらに、液晶との溶解性に優れたモノマーが望ましく、フェニル基やシクロヘキサン基などを有するモノマーが好適である。また、ポリマーの種類としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フッ素系樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレンなど)、またはそれらの共重合体なども使用することもできる。
種々のモノマーの中でも、液晶とともに分子が配向する液晶性モノマーが特に有用である。この液晶性モノマーは細長い分子構造を有しており、棒状の剛直部(コア)と棒状の柔軟部液晶の分子骨格を有して、ネマチック液晶材料と同様、室温近くで自ら配向する性質がある。
液晶に混合するモノマーの濃度は、2重量%以上から40重量%以下が適当である。ポリマー壁4を形成する場合、15〜40重量%の高濃度の添加が必要となる。モノマー濃度が低くポリマーネットワーク5の析出量が少なすぎても、液晶に及ぼす配向規制力が小さ過ぎ、動作温度範囲の拡大効果や基板3a,3bの接着効果が期待できない。その一方、モノマー濃度が多すぎても液晶分子が強く固定され過ぎて、高い駆動電圧が必要となる。そのため、モノマー濃度の最適値は、ブルー相液晶、ポリマーの種類により求める必要がある。なお、混合液に照射する紫外光強度は強いほど、ポリマーが急速に析出・硬化して、微細かつ強固なポリマーネットワークが形成される。
基板3a,3bの厚みは、フレキシブル性を確保する意味で、通常、400μm以下が適当であるが、それに限定されるものではない。200μm以下になると高い柔軟性が得られる。柔軟なプラスチックフィルム基板を用いた場合、軽量で柔軟性に優れた液晶光変調器や液晶表示装置を構成することができる。
透明なプラスチック基板3a,3bの樹脂材料としては、熱膨張係数が低い硬質のポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを用いることができる。その中でも、複屈折が少ないポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)を用いることにより、高コントラストの画像表示が可能になる。
また、柔軟性を有する基板3a,3bの材質としては、プラスチック基板以外にも、薄くて柔軟なガラス基板も使用できる。ガラス基板を研磨して数十μmから数百μmの厚さにする。その場合、ガラス基板が割れないように外部からプラスチックフィルムや偏光板を貼るなどして、ガラス基板を機械的に補強することが必要になる。
なお、図示していないが、プラスチック基板3a,3bの表面に塗布して空気・水分の液晶層1への侵入を防ぐガスバリア膜としては、ケイ素、アルミニウムなどの金属酸化物・金属窒化膜が用いられ、特に、透明性、機械的特性、ガスバリア性などの観点から、SiOx(1.5≦x≦2.0)やSiNを用いることが好ましい。
また、図1の実施形態では、一方の上基板3bにのみ導電膜2(ストライプ電極)を設けたが、所望の光変調効果に応じて、双方の基板3a,3bに導電膜を設けて、液晶層1の厚み方向(基板3a,3bの表面に垂直な方向)に電圧を印加して、液晶分子を駆動してもよい。
電極用の導電膜2としては、透明電極もしくは不透明な導電膜を用いてもよい。例えば、透明電極としては、錫(もしくは亜鉛)をドープした酸化インジウムITO(IZO)をはじめ、酸化インジウム、酸化錫などが好適である。それらの導電膜2は、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの真空技術で成膜することができる。また、金属酸化物以外の透明電極として、ポリチオフェン系樹脂などの透明な有機系導電性材料を、スピンコートや印刷法などにより塗布形成してもよい。また、電極用の不透明導電膜としては、スパッタリングで成膜されるアルミニウム、クロム、金などの各種金属薄膜を使用することができる。
また、上記の液晶光変調器20にバックライトを設けることにより、高コントラストの表示装置を構成することができる。柔軟構造のバックライトとしては、発光ダイオードのエッジライトを用いた薄型導光板(柔軟な透明樹脂材料で構成)や、LEDをフィルム状の耐熱樹脂基板(例えば、薄くて柔軟なポリイミド配線基板)に実装した直下照明型バックライトを使用できる。
さらに、液晶光変調器20に光を反射する柔軟な反射板や拡散板を設けることにより、バックライトを用いず低消費電力の反射型表示装置を構成することも可能である。そのような反射型表示装置の場合、一方の透明基板を不透明化したり、透明電極を金属電極に置き換えたりすることも可能である。
以下、本発明の液晶光変調器において、ブルー相液晶の作製例およびスペーサを形成するローラー型ナノインプリント法を、実施例を用いてさらに具体的に説明する。
<ブルー相液晶の作製例>
以下の工程により、ブルー相液晶を作製した。ターフェニル系組成物を含むネマチック液晶組成物(メルク社、BL-036)に、カイラル添加剤(メルク社、S811)を加えて、10μmの基板間隔の液晶素子を試作した。
そして、等方相まで加熱して温度を下げながら、偏光顕微鏡によりブルー相の発現温度範囲を調べた。この場合、図3に示すように、ブルー相はプレートレット組織を有するため、偏光顕微鏡で容易に観察できる。
評価の結果、混合液におけるカイラル剤濃度を種々変更し、ブルー相の発現を観察した結果、カイラル剤濃度が25重量%から50重量%の範囲で、等方相からの降温時にブルー相の発現が確認された。一般的に、ブルー相の発現温度域は1℃程度であるが、本実験ではカイラル剤濃度が30重量%〜35重量%で、10℃以上の広い温度範囲でブルー相発現を確認することができた。
<スペーサの形成例>
ローラー型ナノインプリント法に基づく凸型ストライプ状スペーサの試作例を示す。ここでは、ローラー型ナノインプリント装置(明昌機構、NM-0606R型)と、ポリカーボネート製のプラスチック基板(ガラス転移温度145℃、厚み100μm)を用いた。
まず、基板のガラス転移温度以上に加熱したローラー(260℃)を使って、ストライプ状の凹型(溝)パターンを有する平板状ニッケル金属型とプラスチック基板(固定ステージ温度130℃)に圧力(8000N)をかけて、ローラーを回転させながら移動した。その時、ローラーがニッケル金型に接触して、基板の温度がガラス転移点を超えるとプラスチック表面に流動性が生じて、金属型の微小溝にプラスチック基板の材料が移動した。最後に、回転ローラーが移動した後、一体化した金属型とプラスチック基板を一緒に冷却した。これにより、高さ20μm、幅20μm、間隔200μmのストライプスペーサが形成できた。
1 ブルー相液晶層
2 導電膜
3a,3b 基板
4 スペーサ(ポリマー壁)
5 ポリマーネットワーク
6 リード配線
7 駆動電源
8a,8b 偏光板
9 入射光
10 出射光
11 接着剤
12 液晶
20 液晶光変調器

Claims (9)

  1. 可撓性を有する2枚の基板の間に、スペーサを介して液晶層を挟持してなる液晶光変調器において、
    前記液晶層は、ターフェニル系ネマチック液晶にカイラル剤を添加して形成されたブルー相発現温度範囲を拡大してなるブルー相液晶を含むことを特徴とする液晶光変調器。
  2. 前記2枚の基板のうち、一方の基板上にローラー式ナノインプリント法を用いて凸状スペーサが形成され、該スペーサの頂部と他方の基板とが接着剤により貼り合わせられてなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光変調器。
  3. 前記スペーサは、前記2枚の基板の間に挟持されたブルー相液晶にモノマーを添加した混合液に対し、紫外光を所定パターンにて照射することで形成されるポリマー壁により構成されてなることを特徴とする請求項1に記載の液晶光変調器。
  4. 前記液晶層は、前記2枚の基板の間に介装された、ブルー相液晶にモノマーを添加した混合液であって、紫外光が照射されることで前記モノマーが光重合し、分子配向性のポリマーネットワークが該混合液中に析出形成されてなるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶光変調器。
  5. 前記カイラル剤の濃度が25重量%〜50重量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶光変調器。
  6. 前記カイラル剤の濃度が30重量%〜35重量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶光変調器。
  7. 前記スペーサは、前記基板側から見たパターン形状が、ストライプ状、直交格子状、四角柱状、円筒状または十字柱状のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液晶光変調器。
  8. 前記2枚の基板のうち、一方の基板に電極用の導電膜が分割されて複数設けられており、該導電膜間に印加する電圧強度に応じて、液晶の分子配向が駆動されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶光変調器。
  9. 前記請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の液晶光変調器を備えてなることを特徴とする液晶表示装置。
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