図1は、本発明の一実施例の空気調和装置の概略構成図である。図1において、1は本実施例の空気調和装置Xの冷凍サイクル装置、2は冷凍サイクル装置1の蒸発器16にて冷却される被調和室である。即ち、空気調和装置Xは、冷凍サイクル装置1の蒸発器16と熱交換して冷却された空気(冷気)により被調和室2を冷却するものであり、外気を導入し、且つ、外気から導入した量に相当する当該被調和室2の空気を外部に排出することにより換気を行って、該被調和室2内の空気質を維持している。
実施例の冷凍サイクル装置1は、圧縮機10、放熱器12、第2の放熱器13、膨張弁14(減圧装置)及び蒸発器16を冷媒配管により順次接続することにより冷媒回路が構成されている。即ち、圧縮機10の冷媒吐出管32は放熱器12の入口に接続されている。放熱器12の出口側には第2の放熱器13が接続され、第2の放熱器13の出口に接続された冷媒配管34は膨張弁14(本発明における減圧装置)に至る。尚、本実施例では減圧装置として膨張弁14を用いるものとしたが、本発明の減圧装置は、冷媒を減圧することができるものであればどのようなものであっても良く、例えば、キャピラリチューブを用いるものとしても差し支えない。
膨張弁14から出た冷媒配管35は、蒸発器16の入口に接続されている。そして、蒸発器16の出口には圧縮機10の冷媒導入管30が接続されて環状の閉回路が構成されている。また、冷媒回路には冷媒として二酸化炭素が封入されている。上記放熱器12、第2の放熱器13及び蒸発器16は共に、冷媒と空気とを熱交換する熱交換器であり、例えば、銅管とアルミフィンから成る所謂チューブフィンタイプの熱交換器、或いは、アルミ多孔管を用いた所謂マイクロチャンネルタイプの熱交換器等が使用される。放熱器12、第2の放熱器13及び蒸発器16の近傍には送風手段としてのファン(図示せず)が設置されている。
放熱器12は、被調和室2外(屋外)に設けられ、外気と熱交換可能に配置されている。第2の放熱器13は、図1に示すように冷媒回路の放熱器12の冷媒下流側に設けられた第2の放熱手段であり、被調和室2内から外部に排出される空気の排出通路42内に当該被調和室2から外部に排出される空気と熱交換可能に配設されている。また、蒸発器16は被調和室2内に導入する外気の導入通路41内に介設されている。従って、被調和室2内には蒸発器16を流れる冷媒と熱交換した空気(外気)が導入されることとなる。
また、図1において3は、被調和室2内の空気を蒸発器16に流すための空気通路であり、当該空気通路3の一端は、被調和室2に接続され、他端は前記導入通路41の途中部であって、蒸発器16の風上側に接続されている。これにより、被調和室2内の空気は、当該空気通路3、導入通路41を介して蒸発器16に流入し、この蒸発器16を流れる冷媒と熱交換して冷却された後、被調和室2内に戻ることとなる。このように、被調和室2内の空気を循環させることで、被調和室2内を冷房することができる。
更に、導入通路41と空気通路3の他端の接続箇所には、外部から導入される空気(外気)及び被調和室2内の空気の量を調節するため、図示しないダンパ等の空気量調節手段が取り付けられており、外部から空気を導入する換気運転、外部から空気を導入すること無しに、被調和室2の空気のみを循環する冷房運転、或いは、外部から空気を導入しながら被調和室2の空気を循環する冷房運転を切換可能に構成されているものとする。
以上の構成で次に本実施例の空気調和装置Xの動作を図2のp−h線図(モリエル線図)を用いて説明する。尚、本実施例では、外部から空気を導入する換気を行いながら被調和室2の空気を循環する冷房運転について説明する。先ず、空気調和装置Xの図示しない制御手段により、圧縮機10が起動されると、冷媒導入管30から圧縮機10内に低温低圧冷媒が吸い込まれる(図2のe6の状態)。圧縮機10に吸い込まれた冷媒は、圧縮されて高温高圧の冷媒ガスとなり、冷媒吐出管32から吐出される。このとき、冷媒吐出管32から吐出される高温高圧の冷媒は、図2のa1の状態となる。即ち、冷媒は圧縮機10における圧縮で超臨界状態となる。
冷媒吐出管32に吐出された冷媒はこの状態で放熱器12に流入し、そこで図示しないファンにて送風される外気と熱交換して放熱し、放熱器12から出る。このとき、放熱器12にて冷媒は超臨界を維持したまま放熱するので、冷媒の温度が低下する(図2のa3の状態)。そして、放熱器12から出た冷媒は第2の放熱器13に流入し、そこで当該第2の放熱器13の近傍に設けられたファンにて送風される被調和室2内の空気と熱交換して更に放熱する。このとき、第2の放熱器13に送風される被調和室2内の空気は蒸発器16にて冷却された空気であり、前記放熱器12にて冷媒と熱交換する外気より低温であるため、放熱器12にて放熱した冷媒を更に冷却することができる。また、冷媒は超臨界を維持したまま放熱するので、更に冷媒の温度が低下する(図2のa4の状態)。
このように、放熱器12の冷媒下流側に第2の放熱器13を設けて、冷媒と被調和室2内からの空気とを熱交換させることで、冷媒をより放熱させることができる。特に、二酸化炭素冷媒のように冷媒回路の高圧側が超臨界圧力で運転される場合には、冷媒の放熱と共に温度が低下するため、外気より温度の低い被調和室2内の空気と熱交換させることで、冷媒の温度をより一層低温とすることができ、冷媒の比エンタルピを小さくすることができる。
第2の放熱器13を出た冷媒は冷媒配管34を経て膨張弁14に入り、そこで減圧される。このとき、冷媒は図2のa4の状態からe5の状態まで減圧されて気液二相状態となる。冷媒はこの状態で蒸発器16に流入し、そこで通風される空気(前述したように外気と被調和室2内からの空気とが混合されたもの)から熱を奪って蒸発する。また、蒸発器16にて冷媒から熱を奪われて冷却された空気(冷気)は、被調和室2内に吐出される。これにより、当該被調和室2内が冷却(冷房)されていく。
一方、蒸発器16における蒸発で、冷媒は図2のe5の状態からe6の状態まで比エンタルピが変化する。即ち、前記第2の放熱器13により冷媒の比エンタルピをより小さくすることができたので、係る蒸発器16における蒸発で十分な比エンタルピ差を確保することが可能となる。
図2において、f6、c1、c4、f5を結ぶ破線は、被調和室2外部の空気(外気)を直接被調和室2内に導入し、且つ、第2の放熱器13が設けられていない、或いは、外気を導入せず(即ち、換気を行わない)、且つ、第2の放熱器13が無い従来の構成の空気調和装置のp−h線図である。放熱器12から出た冷媒は図2のc4の状態であり、この状態で蒸発器16にて蒸発した場合、冷媒は図2のf5の状態からf6の状態となる。即ち、蒸発器16の入口における冷媒の比エンタルピが大きく、その結果、蒸発器16において十分な比エンタルピ差を確保することができない。更に、被調和室2内に導入する外部からの空気(外気)を蒸発器16に流入させない、或いは、被調和室2内に外部から空気を導入しない場合には、蒸発器16にて冷媒と熱交換させる空気は温度の低い被調和室2の空気だけとなるので、蒸発器16における冷媒の蒸発温度及び蒸発圧力は低いものであった。
そこで、図2のe6、c1、c4、e’5を結ぶ破線は、被調和室2内に導入する外気を冷媒回路の蒸発器16にて冷却した後、被調和室2内に導入した場合の空気調和装置のp−h線図である。当該破線(e6、c1、c4、e’5を結ぶ破線)で示すように被調和室2内に導入する外気を冷媒回路の蒸発器16にて冷却した後、被調和室2内に導入することで、蒸発器16にて冷媒と熱交換する空気の温度は、被調和室2内の空気のみを蒸発器16に流入させた場合より、著しく高くなる。このため、外気を被調和室2内に直接導入する従来のものより蒸発器16における冷媒の蒸発温度及び蒸発圧力を高くすることができる。従って、圧縮機10に吸い込まれる冷媒の温度及び圧力も高くなるので、その分、圧縮機10の圧力比が小さくなり、圧縮仕事も低減することができて、冷凍サイクルの効率をより一層向上できる。
更に、本発明の如く第2の放熱器13を設けることで、蒸発器16の入口における冷媒の比エンタルピを小さくすることができるようなる。これにより、蒸発器16において十分な比エンタルピ差を確保することができるので、冷凍サイクルの冷凍効果が増大し、効率の向上を図ることができる。総じて、空気調和装置X全体の効率の向上を図ることができるようになる。
他方、蒸発器16にて蒸発した冷媒は(図2のe6の状態)、蒸発器16から出て冷媒導入管30に入り、圧縮機10に吸い込まれるサイクルを繰り返す。
尚、本実施例では放熱器12及び第2の放熱器13とは別々に構成された独立の熱交換器として、放熱器12を室外に設置し、第2の放熱器13を排出通路42に設置するものとしたが、これに限らず、放熱器12及び第2の放熱器13を一台の熱交換器にて構成しても構わない。この場合、熱交換器は冷媒の入口側、即ち、圧縮機10側を室外に配置し、出口側(膨張弁14側)を外部から排出通路42の壁面を貫通して延在させ、当該排出通路42内に配置されるよう構成する。これにより、上記実施例の如く外気と熱交換して温度低下した冷媒を被調和室2内から排出される空気(冷気)により効果的に低温にすることが可能となる。
次に、図3を用いて本発明の空気調和装置の他の実施例について説明する。図3は本実施例の空気調和装置Yの概略構成図である。尚、図3において図1と同一の符号が付されているものは同様或いは類似の効果若しくは作用を奏するものであり、ここでは説明を省略する。
図3に示す本実施例の空気調和装置Yの冷凍サイクル装置1は、前記実施例同様に圧縮機10、放熱器12、第2の放熱器13、膨張弁14(減圧装置)及び蒸発器16を冷媒配管により順次接続することに冷媒回路が構成されている。また、冷媒回路には前記実施例同様に冷媒として二酸化炭素が封入されている。
図3において、43は、放熱器12に外気を送風し、この放熱器12通過後の空気をデシカントロータ5の一部に送風するための空気通路である。即ち、本実施例の放熱器12は被調和室2の外部に形成された空気通路43の入口側に配設されている。また、上記デシカントロータ5は水分を吸収し、且つ、放出可能な吸湿剤を備える回転式の吸湿部材である。吸湿剤は、シリカゲル、ゼオライト、架橋ポリエチレン等、常温(或いは、常温以下)にて水分を吸収し、加熱することにより水分を放出する性質を有する素材から成り、これを所定厚さの円盤状に形成することで構成される。デシカントロータ5は、空気通路43からの空気及び導入通路からの空気の流れ方向を軸心として回転し、導入通路41とこの導入通路41に並設された上記空気通路43を回転により順次通過可能に配置されている。
即ち、デシカントロータ5の一部分に着目すると、図示しない電動機により回転されることにより、上記一部分は導入通路41から空気通路43に移行し、再び導入通路41に戻るサイクルが繰り返されるものである。そして、空気通路43において、デシカントロータ5に流入する空気は、空気通路43の入口側に配設された放熱器12にて加熱された空気であるため、導入通路41にて外気から吸収した水分がここで放出されることとなる。そして、デシカントロータ5を通過して当該デシカントロータ5の水分を吸収した空気は、即ち、水分を多く含んだ空気は、出口から空気通路43の外部に排出されるよう構成されている。
係る構成により、外気から導入通路41に導入された空気中の水分を当該導入通路41に位置するデシカントロータ5にて吸収させ、このデシカントロータ5が吸収した水分を空気通路43にて放熱器12にて加熱された外気中に放出させることができる。
このように、デシカントロータ5により外部から導入通路41内に導入された空気中(外気中)の水分を除去することができ、その後、蒸発器16に流入させる空気の潜熱を低減することができる。また、デシカントロータ5の乾燥再生には上述の如く放熱器12にて冷媒と熱交換して加熱された空気(外気)が利用されるので、従来外部に排出されていた放熱器12の排熱を有効利用することができる。
更に、この放熱器12の出口側の冷媒回路に第2の放熱器13を設けることで、放熱器12を流れる冷媒温度が高くなり、この冷媒との熱交換により外気温度も上昇させることができる。即ち、デシカントロータ5を乾燥再生するための空気温度が上昇するので、デシカントロータ5の乾燥、及び、吸収の効率を向上させることができる。従って、空気調和装置Y全体の効率をより一層向上できる。更に、デシカントロータ5の乾燥、及び、吸収の効率が向上することで、従来のデシカントロータより小型のデシカントロータ5を用いても同様の効果を発揮させることができるので、デシカントロータ5を小型化することができる。これにより、空気調和装置Y全体をコンパクト化することも可能となる。
更にまた、デシカントロータ5にて蒸発器16に流入させる空気中の水分を予め除去することで、蒸発器16や蒸発器16のフィルタ(図示されず)等に着く水分を未然に回収することができる。これにより、蒸発器16やそのフィルタ等に水分が付着し、この水分から細菌が発生する等の不都合を抑えることができる。更に、デシカントロータ5により、少ないエネルギー損失で新鮮な外気を室内に導入することが可能となるので、上記細菌発生の抑制効果に加えて、室内の空気質の向上を図ることができる。
更に、デシカントロータ5により被調和室2内に導入する空気の水分を除去し湿度を低下させることができるので、快適性を維持しつつ、被調和室2内の空気を上昇させることができる。このことによっても、冷房負荷を低減することができるので、冷房のためのエネルギー消費を削減することができる。
ところで、上記の如くデシカントロータ5にて水分を除去することで、蒸発器16における潜熱負荷を低減することが可能となるが、係る外気のデシカントロータ5による水分除去は、等エンタルピ変化であるため、潜熱負荷は低減できても、その分、顕熱負荷が増大、即ち、水分除去後の空気温度が上昇するため、冷凍サイクルにより冷却しなければならない全冷却負荷は殆ど変わらなかった。
また、図2において点a6、点d1、点d4、点d5を結ぶ破線は、顕熱ロータを用いたダブルロータ式(熱交換器7は設置されていない)の従来の空気調和装置のp−h線図である。即ち、蒸発器16にはデシカントロータ5にて水分のみが除去され、顕熱ロータで冷却された空気が供給され、放熱器12には顕熱ロータで熱回収して高温となった空気が供給されることとなる。
当該破線で示すp−h線図からも明らかなように、上述する従来のダブルロータ式の空気調和装置では、顕熱ロータで回収された高温空気が放熱器12に供給されるため、放熱器12に流れる空気温度が上昇し、放熱器12出口における冷媒の比エンタルピを小さくすることができなかった。その結果、蒸発器における蒸発で充分なエンタルピ差を十分に確保できず、冷凍サイクルの効率が著しく低下することわかる。従って、空気調和装置全体の効率を効果的に向上させることができなかった。更に、図2の点a6、点d1、点d4、点d5を結ぶ破線からもわかるように圧縮機における圧力比も増大するため、空気調和装置全体のエネルギー消費効率の向上させる効果も期待できなかった。
そこで、本実施例の空気調和装置Yでは、デシカントロータ5の風下側であって、蒸発器16の風上側で、且つ、空気通路3の他端の接続箇所より風上側の導入通路41内に当該デシカントロータ5を経て蒸発器16に流入する空気と外気とを熱交換させる熱交換器7を設ける。この熱交換器7は、デシカントロータ5にて水分除去された後の空気と外気とを熱交換させて、蒸発器16に流入する外気の顕熱負荷を低減するためのものである。熱交換器7の型式は、例えば、プレート式やチューブフィンタイプであっても良いし、ヒートパイプ等から構成しても良く特に限定されるものではない。即ち、本実施例において蒸発器16にはデシカントロータ5にて水分が除去された後、熱交換器7にて外気と熱交換した空気が供給されることとなる。
以上の構成で次に本実施例の空気調和装置Yの動作を前記図2及び図4を用いて説明する。図4は各部における空気の絶対湿度と乾球温度を示す図である。先ず、空気調和装置Yの図示しない制御手段により、圧縮機10が起動されると、冷媒導入管30から圧縮機10内に低温低圧冷媒が吸い込まれる(図2のa6の状態)。圧縮機10に吸い込まれた冷媒は、圧縮されて高温高圧の冷媒ガスとなり、冷媒吐出管32から吐出される。このとき、冷媒吐出管32から吐出される高温高圧の冷媒は、図2のa1の状態となる。即ち、冷媒は圧縮機10における圧縮で超臨界状態となる。
冷媒吐出管32に吐出された冷媒はこの状態で放熱器12に流入し、そこで図示しないファンにて送風される外気と熱交換して放熱し、放熱器12から出る。このとき、放熱器12にて冷媒は超臨界を維持したまま放熱するので、冷媒の温度が低下する(図2のa3の状態)。そして、放熱器12から出た冷媒は第2の放熱器13に流入し、そこで当該第2の放熱器13の近傍に設けられたファンにて送風される被調和室2内の空気と熱交換して更に放熱する。このとき、第2の放熱器13に送風される被調和室2内の空気は蒸発器16にて冷却された空気であり、前記放熱器12にて冷媒と熱交換する外気より低温であるため、放熱器12にて放熱した冷媒を更に冷却することができる。また、冷媒は超臨界を維持したまま放熱するので、更に冷媒の温度が低下する(図2のa4の状態)。
このように、放熱器12の冷媒下流側に第2の放熱器13を設けて、冷媒と被調和室2内からの空気とを熱交換させることで、冷媒をより放熱させることができる。特に、二酸化炭素冷媒のように冷媒回路の高圧側が超臨界圧力で運転される場合には、冷媒の放熱と共に温度が低下するため、外気より温度の低い被調和室2内の空気と熱交換させることで、冷媒の温度をより一層低温とすることができ、冷媒の比エンタルピを小さくすることができる。
第2の放熱器13を出た冷媒は冷媒配管34を経て膨張弁14に入り、そこで減圧される。このとき、冷媒は図2のa4の状態からa5の状態まで減圧されて気液二相状態となる。冷媒はこの状態で蒸発器16に流入し、そこで通風される空気(デシカントロータ5、熱交換器7を経た空気と被調和室2内からの空気とが混合されたもの)から熱を奪って蒸発する。
一方、空気の流れについて図3及び図4を用いて説明する。この場合、外気から導入される空気の相対湿度を40%、外気温度を+35℃とし、この温度及び相対湿度を一例として本実施例を説明する。先ず、導入通路41から相対湿度40%、外気温度+35℃の外気が導入される(図4のA1の状態)。そして、導入通路41内に導入された外気はデシカントロータ5を通過する過程で、当該デシカントロータ5により水分が除去される。これにより、デシカントロータ5を通過した後の空気は図4に示すA2の状態となり、相対湿度は10%である。従って、外気中の潜熱を低下することができる。しかしながら、デシカントロータ5にて潜熱が低下した分、顕熱が上昇し、本実施例では空気温度が+50℃に上昇する。
この状態で次に導入通路41内の空気は熱交換器7を通過し、熱交換器7にて外気と熱交換して冷却されて、図4に示すA3の状態となる。このとき、熱交換器7通過後の空気の相対湿度は20%、温度は+38℃となる。これにより、空気の顕熱も低下することができる。その後、外気から導入された当該空気は、被調和室2内から循環される空気と合流して、図4に示すA4の状態になる。本実施例において被調和室2内の空気の相対湿度は45%、温度は+27℃であるため、合流後の空気の相対湿度は35%、温度は+30℃となる。
合流した空気は、その後蒸発器16に流入される。このとき、蒸発器16にて冷媒と熱交換する当該空気は、上記に詳述した如く潜熱及び顕熱の低下した空気であるため、その分、蒸発器16における潜熱負荷及び顕熱負荷を低減することができる。これにより、冷凍サイクルにより冷却しなければならない全冷却負荷を低減でき、冷房のためのエネルギー消費を削減することができる。更に、冷凍サイクルの蒸発温度及び蒸発圧力が上昇するので、圧縮機10における圧力比も小さくすることができる。即ち、デシカントロータ5と熱交換器7を設置せずに、外気をそのまま蒸発器16に流入させる構成では、圧縮機10入口における冷媒はe6の状態であり、圧縮機10にてa1まで圧縮する必要があるが、本実施例では圧縮機10入口における冷媒はa6の状態であり、その分、圧縮機10における圧縮仕事を減らすことができる。これにより、冷凍サイクルの効率を向上させることができる。
更に、蒸発器16における蒸発で、冷媒は図2のa5の状態からa6の状態まで比エンタルピが変化する。即ち、前記第2の放熱器13により冷媒の比エンタルピをより小さくすることができるので、係る蒸発器16における蒸発で十分な比エンタルピ差を確保することが可能となる。これにより、蒸発器16における蒸発で十分な比エンタルピ差を確保することができるので、冷凍サイクルの冷凍効果が増大し、効率の向上を図ることができる。
そして、蒸発器16にて蒸発する冷媒から熱を奪われて冷却された空気は、図4に示すA5の状態になる。この蒸発器16通過後の空気の相対湿度は60%であり、温度は+20℃である。このように、蒸発器16にて冷却された空気は被調和室2内に吐出され、これによって、被調和室2内が冷却(冷房)されていく。
図2において点a6、c1、c4、c5を結ぶ破線は、本実施例の構成から第2の放熱器13を削除した場合の空気調和装置のp−h線図である。この場合、放熱器12から出た冷媒は図2のc4の状態であり、この状態で蒸発器16にて蒸発した場合、冷媒は図2のc5の状態からa6の状態となる。即ち、蒸発器16の入口における冷媒の比エンタルピが大きく、蒸発器16における蒸発で十分な比エンタルピ差を確保することができなかった。また、圧縮機10の圧力比も大きいものであった。
しかしながら、本発明の如く第2の放熱器13を設けることで、蒸発器16の入口における冷媒の比エンタルピを小さくすることができるようなる。これにより、蒸発器16における蒸発で十分な比エンタルピ差を確保することができるので、冷凍サイクルの冷凍効果が増大し、効率の向上を図ることができる。また、圧力比も小さくすることができる。従って、圧縮仕事に対する冷凍効果の比率で表される冷凍サイクルの成績係数(COP)も向上することができる。
一方、被調和室2からは当該被調和室2内に導入される空気に相当する被調和室2内の空気が排出される。この場合、排出される空気は排出通路42内に入り、第2の放熱器13を通過して、第2の放熱器13を流れる冷媒と熱交換して加熱され、図4に示すD1の状態からD2の状態になる。このとき、空気の相対湿度は30%、温度は+35℃となり、この状態で外部に排出される。
他方、導入通路41にて水分を吸収したデシカントロータ5は、前述したように回転して導入通路41から空気通路43に移行し、放熱器12にて加熱された空気に水分を放出する。前述したように放熱器12の冷媒回路の出口側には第2の放熱器13を設けて、被調和室2内の空気と熱交換可能に構成されているため、放熱器12の冷媒温度が高くなる。従って、空気通路43の入口から流入した外気(図4に示すC1の状態であり、前記導入通路41に導入される図4のA1の状態の外気と同じ)を、放熱器12を冷媒との熱交換により充分に加熱することができる(図4のC2の状態)。このとき、放熱器12にて加熱された空気の相対湿度は15%、温度は+55℃である。
また、上述の如く充分に加熱された空気が当該空気通路43内に設けられたデシカントロータ5に流入する。そして、導入通路41で吸収したデシカントロータ5の水分がこの空気中に放出される(図4に示すC3の状態)。このデシカントロータ5で水分を受け取った空気の相対湿度は35%、温度は+43℃である。
このように、冷凍サイクルの排熱を利用して外気をより高温に加熱し、空気通路43内に設けられたデシカントロータ5に流入させることで、デシカントロータ5の水分を空気中に放出させて、効率よく乾燥再生することができる。これにより、デシカントロータ5の水分除去効率も向上し、蒸発器16における潜熱負荷を低減することができる。
更に、熱交換器7にて外気と熱交換させることで、蒸発器16における顕熱負荷も低減でき、冷凍サイクルの全冷却負荷を低減でき、且つ、冷凍サイクルの蒸発温度及び蒸発圧力が上昇し、冷凍サイクルの効率の向上を図ることができる。その結果、空気調和装置Y全体のエネルギー消費効率が向上する。
本実施例において記載された各部の相対湿度及び温度は一例であり、外気温度、冷凍サイクル装置1の運転状況、ファンの風量、或いは、装置の大きさや配置などによって異なることは言うまでもない。また、本実施例において熱交換器7は外気と熱交換する空冷式のもの以外に、クーリングタワー等を用いてデシカントロータ5からの空気と水とを熱交換させる水冷式の熱交換器を適用しても有効である。
尚、本実施例の空気調和装置Yを、例えば、図5に示すように第2の放熱器13と、膨張弁14及び蒸発器16から成る室内機ユニットU1と、放熱器12、熱交換器7及びデシカントロータ5から成る室外機ユニットU2の2つのユニットから構成しても良い。 この場合、当該室内機ユニットU1は被調和室2内に設置され、室外機ユニットU2は被調和室2外に設置される。尚、図5において図1乃至図4と同一の符号が付されているものは同様或いは類似の効果又は作用を奏するものとしてここでは説明を省略する。
また、図6は上述のように第2の放熱器13、膨張弁14及び蒸発器16から成る室内機ユニットU1を被調和室2に配置した一例を示すものである。図6において、20は空気調和装置Yの被調和室2内に配置される室内機ユニットU1を被覆するカバーであり、被調和室2の壁Wに取り付けられている。また、カバー20内は区画部材21により蒸発器16、16が設けられた導入通路41側の空間41Aと第2の放熱器13が設けられた排出通路42側の空間42Aに仕切られている。尚、図6において、16Fは、導入通路41側の空間41Aに設置された蒸発器16と熱交換した冷気を被調和室2内に吐出するための送風手段としてのファンである。
そして、カバー20には当該カバー20内の導入通路41側の空間41Aに被調和室2内の空気を導入するための図示しない吸気口と、排出通路42側の空間42Aに被調和室2内の空気を導入するための図示しない吸気口と、導入通路41内の空間41Aの蒸発器16を流れる冷媒と熱交換した冷気を被調和室2内に吐出するための吐出口23が形成されている。
更に、壁Wにはカバー20内の上記排出通路42側の空間42Aと被調和室2外とを連通する連通孔24と、カバー20内の導入通路41側の空間41Aと被調和室2外とを連通する連通孔25が形成されている。そして、カバー20に形成された図示しない吸気口を経てカバー20内の空間42Aに流入した被調和室2内の空気は、そこに設けられた第2の放熱器13にて冷媒と熱交換して加熱された後、連通孔24から被調和室2外に排出されることとなる。
また、上述した連通孔25には室外機ユニットU2のデシカントロータ5、熱交換器7を経た空気を導入する導入通路41が接続され、この導入通路41からデシカントロータ5にて水分が除去され、熱交換器7にて放熱した空気(外気からの空気)が空間41A内に導入され、この空間41A内に設けられた蒸発器16と熱交換して冷却された後、ファン16Fにて排出口23から被調和室2内に吐出されるのである。尚、図6において、導入通路41内の空間41Aには2台の蒸発器16、16を設けているが、前記各図1乃至図5に示すように1台の蒸発器16にて構成しても差し支えない。
次に、図7を用いて本実施例の空気調和装置のもう一つの他の実施例について説明する。図7は本実施例の空気調和装置Zの概略構成図である。尚、図7において図1乃至図6と同一の符号が付されているものは同様或いは類似の効果若しくは作用を奏するものであり、ここでは説明を省略する。
本実施例の空気調和装置Zは、放熱器12が冷媒上流側に位置する第1の放熱器12Aと、この第1の放熱器12Aの冷媒下流側に位置する第3の放熱器12Bとに区分されている。そして、放熱器12の冷媒上流側に位置する第1の放熱器12Aと熱交換した空気が前記デシカントロータ5に流入し、冷媒下流側に位置する第3の放熱器12Bと熱交換した空気がデシカントロータ5に流れることなく、外部に排出されるよう構成されている。
本実施例では、第1の放熱器12Aと第3の放熱器12Bとを一体型の熱交換器(放熱器12)にて構成し、これらを冷媒上流側と冷媒下流側とに2つに区分するものとする。この場合、放熱器12の冷媒上流側の第1の放熱器12Aを前記排出通路42内の入口付近に配置し、冷媒下流側の第3の放熱器12Bを排出通路42に並設された空気通路44に配置する。即ち、本実施例の放熱器12は排出通路42の一方の壁面に当接する一端(第1の放熱器12A)から並設された空気通路44側に延在して排出通路42の他方の壁面及びこの壁面に当接する空気通路44の一方の壁面を貫通し、他端(第3の放熱器12B)が空気通路44の他方の壁面に当接するよう配置されている。この空気通路44には外部から空気(外気)が導入され、第3の放熱器12Bを通過した後、外部に排出可能に構成されている。
この第3の放熱器12Bへの外気の導入は、第1の放熱器12Aに外気を導入する図示しないファンと共有するもので有っても良いし、個別にファンを取り付けても構わない。また、一台のファンを共有する場合には、空気通路44にダンパを取り付けて、第3の放熱器12Bに導入される外気の風量を調節するものとしても差し支えない。
以上の構成で次に本実施例の空気調和装置Zの動作を前記図2のp−h線図を用いて説明する。先ず、空気調和装置Zの図示しない制御手段により、圧縮機10が起動されると、冷媒導入管30から圧縮機10内に低温低圧冷媒が吸い込まれる(図2のa6の状態)。圧縮機10に吸い込まれた冷媒は、圧縮されて高温高圧の冷媒ガスとなり、冷媒吐出管32から吐出される。このとき、冷媒吐出管32から吐出される高温高圧の冷媒は、図2のa1の状態となる。即ち、冷媒は圧縮機10における圧縮で超臨界状態となる。
冷媒吐出管32に吐出された冷媒はこの状態で放熱器12の冷媒上流側の第1の放熱器12Aに流入し、そこで図示しないファンにて送風される外気と熱交換して放熱し、図2のa2の状態となる。更に、冷媒は冷媒下流側の第3の放熱器12Bに移行し、そこで図示しないファンにて送風される外気と熱交換して更に放熱して、図2のa3の状態となる。このとき、放熱器12にて冷媒は超臨界を維持したまま放熱するので、冷媒の温度が低下する。そして、放熱器12から出た冷媒は第2の放熱器13に流入し、そこで当該第2の放熱器13の近傍に設けられたファンにて送風される被調和室2内の空気と熱交換して更に放熱する。このとき、第2の放熱器13に送風される被調和室2内の空気は蒸発器16にて冷却された空気であり、前記放熱器12にて冷媒と熱交換する外気より低温であるため、放熱器12にて放熱した冷媒を更に冷却することができる。また、冷媒は超臨界を維持したまま放熱するので、更に冷媒の温度が低下して、図2のa4の状態となる。
このように、放熱器12の冷媒下流側に第2の放熱器13を設けて、冷媒と被調和室2内からの空気とを熱交換させることで、冷媒をより放熱させることができる。特に、二酸化炭素冷媒のように冷媒回路の高圧側が超臨界圧力で運転される場合には、冷媒の放熱と共に温度が低下するため、外気より温度の低い被調和室2内の空気と熱交換させることで、冷媒の温度をより一層低温とすることができ、冷媒の比エンタルピを小さくすることができる。
第2の放熱器13を出た冷媒は冷媒配管34を経て膨張弁14に入り、そこで減圧される。このとき、冷媒は図2のa4の状態からa5の状態まで減圧されて気液二相状態となる。冷媒はこの状態で蒸発器16に流入し、そこで通風される空気(デシカントロータ5、熱交換器7を経た空気と被調和室2内からの空気とが混合されたもの)から熱を奪って蒸発する。
一方、空気調和装置Zの被調和室2内に導入される空気、被調和室2内を循環する空気、及び、被調和室2から排出される空気の流れについては前記図4に示す実施例2と同様であるためここでは説明を省略する。
他方、導入通路41にて水分を吸収したデシカントロータ5は、前述したように回転して導入通路41から空気通路43に移行し、放熱器12にて加熱された空気に水分を放出する。前述したように放熱器12の冷媒回路の出口側には第2の放熱器13を設けて、被調和室2内の空気と熱交換可能に構成されているため、放熱器12の冷媒温度が高くなる。更に、本実施例では放熱器12を冷媒上流側の第1の放熱器12Aと冷媒下流側の第3の放熱器12Bとに区分し、冷媒上流側の第1の放熱器12Aと熱交換した空気のみをデシカントロータ5に流入させているので、デシカントロータ5を乾燥再生する空気温度を更に上昇することができる。
即ち、第1の放熱器12Aを流れる冷媒は圧縮機10から出た最も温度の高い冷媒である。具体的には、前記実施例2では放熱器12にて外気と熱交換する冷媒は図2に示すa1の状態からa3の状態であるのに対して、本実施例の第1の放熱器12Aにおいて外気と熱交換する冷媒は図2に示すa1の状態からa2の状態の冷媒である。即ち、デシカントロータ5にて乾燥再生に利用される空気を、最も高温域の冷媒と熱交換させることができるので、前記実施例2の場合より高温に加熱することができる。
これにより、デシカントロータ5を乾燥再生するための空気温度を上昇するので、デシカントロータ5の乾燥、及び、吸収の効率をより一層向上させることができる。従って、空気調和装置Z全体の効率を更に向上することができるようになる。また、デシカントロータ5の乾燥、及び、吸収の効率が更に向上することで、上記実施例2のデシカントロータより更に小型のデシカントロータ5を用いても同様の効果を発揮させることができるようになる。その結果、デシカントロータ5を更に小型化し、空気調和装置全体をより一層コンパクト化することが可能となる。
尚、乾燥再生されたデシカントロータ5は、再び導入通路41にて外気から水分を吸収する。当該デシカントロータ5にて水分が除去された空気は、前記実施例2と同様に熱交換器7にて外気と熱交換して冷却される。これにより、蒸発器16における顕熱負荷も低減でき、冷凍サイクルの冷却負荷を低減でき、且つ、冷凍サイクルの蒸発温度及び蒸発圧力が上昇し、冷凍サイクルの効率の向上を図ることができる。これにより、空気調和装置Z全体のエネルギー消費効率も向上することができる。
本実施例では、第1の放熱器12Aと第3の放熱器12Bとを一体型の熱交換器(放熱器12)にて構成し、これらを冷媒上流側と冷媒下流側とに2つに区分するものとしたが、この第1の放熱器12Aと第3の放熱器12Bとを別々の熱交換器にて構成し、個別に配置しても本発明は有効である。また、本実施例の第3の放熱器12Bは当該第3の放熱器12Bを流れる冷媒と外気とを熱交換させる空冷式の熱交換器としたが、これに限らず、クーリングタワー等を用いて冷媒と水とを熱交換させる水冷式の熱交換器を採用しても差し支えない。