図1は本実施の形態に係る無線通信システム100の構成を示す図である。無線通信システム100は、例えば、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)及びLTE(Long Term Evolution)などのOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式が採用された無線通信システムである。OFDM方式では、互いに直交する複数のサブキャリアが合成されたOFDM信号が使用される。また、本実施の形態に係る無線通信システム100では、複信方式として、例えばTDD(Time Division Duplexing)方式が採用されている。
図1に示されるように、無線通信システム100は、無線通信装置である複数の基地局1を備えている。各基地局1は、無線通信装置である複数の通信端末2と双方向の無線通信を行う。複数の通信端末2には携帯電話機等の移動通信端末が含まれている。各基地局1のサービスエリア10は、周辺基地局1のサービスエリア10と部分的に重なっている。図1では、4つの基地局1だけしか示されていないため、1つの基地局1に対して周辺基地局1が2つあるいは3つだけしか存在していないが、実際には、1つの基地局1に対して例えば6つの周辺基地局1が存在することがある。
複数の基地局1は、図示しないネットワークに接続されており、当該ネットワークを通じて互いに通信可能となっている。また、ネットワークには図示しないサーバ装置が接続されており、各基地局1は、ネットワークを通じてサーバ装置と通信可能となっている。
<基地局の構成>
図2は各基地局1の構成を示す図である。基地局1は、通信端末2に対して信号を送信する際には、MIMO方式とアダプティブアレイアンテナ方式の2種類の方式を使用することが可能である。また、基地局1は、通信端末2からの信号を受信する際には、アダプティブアレイアンテナ方式を使用する。基地局1が、アダプティブアレイアンテナ方式を用いて通信端末2からの信号を受信する際には、当該基地局1での受信指向性を制御するために受信信号に設定する受信ウェイトを、通信端末2からの既知の参照信号に基づいて求める。そして、基地局1が、アダプティブアレイアンテナ方式を用いて通信端末2に信号を送信する際には、当該基地局1での送信指向性を制御するために送信信号に設定する送信ウェイトを受信ウェイトから求める。
ここで、MIMO方式とは、SDM(Spatial Division Multiplexing、空間分割多重)のように伝送速度(送信スループット)を向上させる方式と、STC(Space-Time Coding、時空間符号化)及びSFBC(Space Frequency Block Coding、空間周波数ブロック符号化)のように通信品質を向上させる方式とを含む概念である。SDMは単に「SM(Spatial Multiplexing、空間多重)」と呼ばれることがある。また、STC及びSFBCのように通信品質を向上させるMIMO方式は「送信ダイバーシティ」と呼ばれることがある。本実施の形態では、基地局1は、例えばSDMを使用する。なお、基地局1は、SDMと、通信品質を向上させるMIMO方式、例えばSTCあるいはSFBCとを使い分けても良い。以後、SDM、STC及びSFBCを、「MIMO−SDM」、「MIMO−STC」及び「MIMO−SFBC]とそれぞれ呼ぶことがある。
また、基地局1が受信及び送信に使用するアダプティブアレイアンテナ方式では、受信ウェイトを求める際に、基地局1での受信信号に含まれる干渉波の情報、具体的には当該干渉波についてのチャネル行列(応答ベクトル、チャネルベクトルとも呼ばれる)が必要とされないアルゴリズムが用いられたヌルステアリングが行われる。干渉波の情報が必要とされないアルゴリズムとしては、例えば、LMS(Least Mean Square)アルゴリズム及びRLS(Recursive Least-Squares)アルゴリズムなどのMMSE(Minimum Mean Squared. Error、最小二乗誤差法)を採用することができる。LMSアルゴリズムあるいはRLSアルゴリズムが使用される場合には、ヌルステアリング及びビームフォーミングの両方が行われる。本実施の形態では、LMSアルゴリズムあるはRLSアルゴリズムが使用されるため、送信指向性及び受信指向性に関してヌルステアリング及びビームフォーミングの両方が行われる。
また、基地局1での受信信号に含まれる干渉波とは、基地局1にとっての通信対象の通信端末2(当該基地局1のサービスエリア10内の通信端末2)以外の通信装置からの不要な信号である。この干渉波には、例えば、当該基地局1の周辺に位置する周辺基地局1と通信する通信端末2からの不要な信号が含まれる。
本実施の形態に係る無線通信システム100では、各基地局1は、その周辺に位置する周辺基地局1が通信する通信端末2の位置を特定することはできない。したがって、各基地局1では、周辺基地局1が通信する通信端末2からの干渉波がどのような伝送路(チャネル)を通ってくるのか特定することはできない。したがって、本実施の形態に係るアダプティブアレイアンテナ方式では、LMSアルゴリズム等の、干渉波の情報(干渉波のチャネル行列)が必要とされないアルゴリズムを用いたヌルステアリングを行っている。
図2に示されるように、基地局1は、複数のアンテナ12から成るアレイアンテナ13を有する無線処理部11と、当該無線処理部11を制御する制御部14とを備えている。無線処理部11は、アレイアンテナ13で受信される複数の受信信号のそれぞれに対して増幅処理、ダウンコンバート及びA/D変換処理等を行って、ベースバンドの複数の受信信号を生成して出力する。
また、無線処理部11は、制御部14で生成されるベースバンドの複数の送信信号のそれぞれに対して、D/A変換処理、アップコンバート及び増幅処理等を行って、搬送帯域の複数の送信信号を生成する。そして、無線処理部11は、生成した搬送帯域の複数の送信信号を、アレイアンテナ13を構成する複数のアンテナ12にそれぞれ入力する。これにより、各アンテナ12から送信信号が無線送信される。
なお図2の例では、無線処理部11には、2つのアンテナ12が設けられているが、2つよりも多い数のアンテナ12を設けても良い。
制御部14は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)及びメモリなどで構成されている。制御部14には、CPU及びDSPがメモリ内のプログラムを実行することによって、送信処理部140、受信処理部141、干渉強度判定部142及び使用禁止決定部143などの機能ブロックが形成される。
送信処理部140は、送信信号を生成し、当該送信信号に対して変調処理等を行ってベースバンドの送信信号を生成する。このベースバンドの送信信号は、アレイアンテナ13を構成する複数のアンテナ12の数だけ生成される。送信処理部140で生成されたベースバンドの複数の送信信号は、無線処理部11に入力される。
送信処理部140では、基地局1で使用される送信方式に応じた複数の送信信号が生成される。例えば、基地局1においてアダプティブアレイアンテナ方式が使用される場合には、送信処理部140は、同じ送信信号をアンテナ12の数だけ生成し、得られた複数の送信信号に対して、アレイアンテナ13の送信指向性を制御するための複数の送信ウェイトをそれぞれ設定する。そして、送信処理部140は、複数の送信ウェイトがそれぞれ設定された複数の送信信号に対して変調処理等を行った後に、当該複数の送信信号を無線処理部11に入力する。これにより、基地局1からは、アレイアンテナ13の送信指向性に関してヌルステアリング及びビームフォーミングが行われて通信端末2に送信信号が送信される。
一方で、基地局1においてMIMO−SDMが使用される場合には、送信処理部140は、複数系統の送信信号(互いに異なる複数の送信信号)を生成し、得られた複数の送信信号に対して変調処理等を行った後に、当該複数の送信信号を無線処理部11に入力する。これにより、基地局1からは通信端末2に対して複数系統の送信信号が同じ無線リソース(周波数帯域及び時間帯)を用いて送信され、基地局1の送信スループットを向上することができる。
なお、基地局1においてMIMO−STCあるいはMIMO−SFBCが使用される場合には、送信処理部140は、アラムーチ符号等を用いて符号化された、互い異なる複数の送信信号を生成し、得られた複数の送信信号に対して変調処理等を行った後に、当該複数の送信信号を無線処理部11に入力する。これにより、基地局1では送信ダイバーシティ効果が得られて、基地局1と通信端末2との間の通信品質が向上する。
受信処理部141は、無線処理部11から入力される複数の受信信号に対して、アレイアンテナ13での受信指向性を制御するための複数の受信ウェイトをそれぞれ設定する。受信処理部141は、複数の受信ウェイトがそれぞれ設定された複数の受信信号を合成して合成受信信号を生成する。そして、受信処理部141は、生成した合成受信信号に対して復調処理等を行って、当該合成受信信号に含まれる制御データやユーザデータなどを取得する。
受信処理部141は、アレイアンテナ13の受信指向性を制御するための複数の受信ウェイトを、通信端末2からの受信信号に含まれる既知の参照信号に基づいて算出する。受信処理部141は、例えば、LMSアルゴリズムあるいはRLSアルゴリズムを用いて複数の受信ウェイトを算出する。そして、受信処理部141は、算出した複数の受信ウェイトを、無線処理部11から出力される複数の受信信号に含まれるデータ信号にそれぞれ設定する。これにより、基地局1では、通信端末2からの参照信号に基づいたヌルステアリング及びビームフォーミングが行われて当該通信端末2のデータ信号が受信される。
一方で、送信処理部140は、アレイアンテナ13の送信指向性を制御するための複数の送信ウェイトを、受信処理部141で求められた複数の受信ウェイトから算出する。
本実施の形態に係る基地局1では、無線処理部11、送信処理部140及び受信処理部141によって、アレイアンテナ13を用いて通信端末2と通信を行う通信部15が構成されている。通信部15は、MIMO方式及びアダプティブアレイアンテナ方式を用いて信号を送信することが可能であるとともに、アダプティブアレイアンテナ方式を用いて信号を受信する。
干渉強度判定部142は、通信端末2から通知される当該通信端末2での受信品質に基づいて、当該通信端末2での受信信号に含まれる干渉波の強度が大きいか否かを所定の基準に基づいて判定する。
使用禁止決定部143は、干渉強度判定部142において、通信端末2での受信信号に含まれる干渉波の強度が大きいと判定されると、当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することを禁止する。通信部15は、使用禁止決定部143において、通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することが禁止されると、当該通信端末2への信号の送信にはMIMO方式を使用せずに、アダプティブアレイアンテナ方式を使用する。
<通信端末の構成>
図3は各通信端末2の構成を示す図である。本実施の形態に係る通信端末2は、基地局1からの信号を受信する場合には、当該基地局1が当該通信端末2に対して信号を送信する際にMIMO方式を使用していないときにはアダプティブアレイアンテナ方式を使用し、MIMO方式を使用しているときにはアダプティブアレイアンテナ方式を使用しないようになっている。
一方で、本実施の形態に係る通信端末2は、基地局1に信号を送信する場合には、当該基地局1が当該通信端末2に対して信号を送信する際にMIMO方式を使用しているか否かにかかわらずアダプティブアレイアンテナ方式を使用する。
通信端末2が受信及び送信に使用するアダプティブアレイアンテナ方式では、基地局1が使用するアダプティブアレイアンテナ方式と同様に、受信ウェイトを求める際に、通信端末2での受信信号に含まれる干渉波の情報(干渉波についてのチャネル行列)が必要とされないアルゴリズムが用いられたヌルステアリングが行われる。通信端末2では、受信ウェイトの算出にLMSアルゴリズムあるいはRLSアルゴリズムが使用される。したがって、通信端末2では、受信及び送信において、ヌルステアリング及びビームフォーミングの両方が行われる。ここで、通信端末2での受信信号に含まれる干渉波とは、当該通信端末2にとっての通信対象の基地局1以外の通信装置からの不要な信号である。この干渉波には、例えば、当該基地局1の周辺に位置する周辺基地局1からの不要な信号が含まれる。
本実施の形態に係る無線通信システム100では、各通信端末2は、自身が通信する基地局1の周辺に位置する周辺基地局1の位置を特定することはできない。したがって、各通信端末2では、自身が通信する基地局1の周辺に位置する周辺基地局1からの干渉波がどのような伝送路(チャネル)を通ってくるのか特定することはできない。よって、本実施の形態に係るアダプティブアレイアンテナ方式では、LMSアルゴリズム等の、干渉波の情報が必要とされないアルゴリズムを用いたヌルステアリングを行っている。
図3に示されるように、通信端末2は、複数のアンテナ22から成るアレイアンテナ23を有する無線処理部21と、当該無線処理部21を制御する制御部24とを備えている。無線処理部21は、アレイアンテナ23で受信される複数の受信信号のそれぞれに対して増幅処理、ダウンコンバート及びA/D変換処理等を行って、ベースバンドの複数の受信信号を生成して出力する。
また、無線処理部21は、制御部24で生成されるベースバンドの複数の送信信号のそれぞれに対して、D/A変換処理、アップコンバート及び増幅処理等を行って、搬送帯域の複数の送信信号を生成する。そして、無線処理部21は、生成した搬送帯域の複数の送信信号を、アレイアンテナ23を構成する複数のアンテナ22にそれぞれ入力する。これにより、各アンテナ22から送信信号が無線送信される。
制御部24は、CPU、DSP及びメモリなどで構成されている。制御部24では、CP及びDSPがメモリ内のプログラムを実行することによって、送信処理部240、受信処理部241及び受信品質取得部242などの機能ブロックが生成される。
送信処理部240は、同じ送信信号をアンテナ22の数だけ生成し、得られた複数の送信信号に対して、アレイアンテナ23の送信指向性を制御するための複数の送信ウェイトをそれぞれ設定する。そして、送信処理部240は、複数の送信ウェイトがそれぞれ設定された複数の送信信号に対して変調処理等を行って、複数のベースバンドの送信信号を生成する。その後、送信処理部240は、生成した複数のベースバンドの送信信号を無線処理部21に入力する。これにより、通信端末2からは、アレイアンテナ23の送信指向性に関してヌルステアリング及びビームフォーミングが行われて基地局1に送信信号が送信される。
受信処理部241は、基地局1が送信にMIMO方式を使用していない場合には、無線処理部21から入力される複数の受信信号に対して、アレイアンテナ23での受信指向性を制御するための複数の受信ウェイトをそれぞれ設定する。受信処理部241は、複数の受信ウェイトがそれぞれ設定された複数の受信信号を合成して合成受信信号を生成する。そして、受信処理部241は、生成した合成受信信号に対して復調処理等を行って、当該合成受信信号に含まれる制御データやユーザデータなどを取得する。本実施の形態では、基地局1は、通信端末2に対する送信にMIMO方式を使用するか否かを当該通信端末2に通知するようになっている。
受信処理部241は、複数の受信ウェイトを、基地局1からの受信信号に含まれる既知の参照信号に基づいて算出する。受信処理部241は、例えば、LMSアルゴリズムあるいはRLSアルゴリズムを用いて複数の受信ウェイトを算出する。そして、受信処理部241は、算出した複数の受信ウェイトを、無線処理部21から出力される複数の受信信号に含まれるデータ信号にそれぞれ設定する。これにより、通信端末2では、基地局1からの参照信号に基づいたヌルステアリング及びビームフォーミングが行われて当該基地局1が送信するデータ信号が受信される。送信処理部240は、複数の送信ウェイトを、受信処理部241で求められた複数の受信ウェイトから算出する。
一方で、基地局1が送信にMIMO方式を使用している場合には、受信処理部241は、アダプティブアレイアンテナ方式を使用せずに、基地局1からの受信信号に対して受信処理を行う。受信処理部241は、まず、無線処理部21から出力される複数の受信信号に含まれる既知の参照信号(複素信号)に基づいて、当該受信処理部241が属する通信端末2が有するアレイアンテナ23と、通信対象の基地局1のアレイアンテナ13との間の伝送路におけるチャネル行列を推定する。このチャネル行列は、通信端末2が有する複数のアンテナ22の数と、基地局1が有する複数のアンテナ12の数とを掛け合わせて得られる数のチャネル利得(チャネル係数とも呼ばれる)で構成される。そして、受信処理部241は、推定したチャネル行列を用いて、無線処理部21から出力される複数の受信信号に含まれるデータ信号(複素信号)に対して復調処理等の受信処理を行う。本実施の形態では、基地局1ではMIMO−SDMが使用されることから、この受信処理では、例えば、MLD(Maximum Likelihood Detection、最尤検出)、SIC(Successive Interference Cancellation、逐次干渉除去)あるいはMMSEが使用される。これにより、通信端末2では、基地局1が送信するユーザデータ及び制御データが取得される。
本実施の形態に係る通信端末2では、無線処理部21、送信処理部240及び受信処理部241によって、アレイアンテナ23を用いて基地局1と通信を行う通信部25が構成されている。通信部25は、アダプティブアレイアンテナ方式を用いて信号を送信するとともに、アダプティブアレイアンテナ方式を用いて信号を受信することが可能である。
受信品質取得部242は、無線処理部21から出力される受信信号に基づいて、基地局1からの信号についての受信品質を求める。本実施の形態では、受信品質取得部242は、復調処理前の受信信号に基づいて受信品質を求めるとともに、復調処理後の受信信号に基づいて受信品質を求める。以後、復調処理前の受信信号に基づいて求められる受信品質を「復調前受信品質」と呼ぶ。また、復調処理後の受信信号に基づいて求められる受信品質を「復調後受信品質」と呼ぶ。
受信品質取得部242は、復調前受信品質として、例えばCINR(Carrier to Interference and Noise Ratio、搬送波レベル対干渉雑音比)を無線処理部21から出力されるベースバンドの受信信号に基づいて算出する。なお、復調前受信品質として、RSSI(Received Signal Strength Indicator、受信信号強度)を算出しても良い。
また受信品質取得部242は、復調後受信品質として、例えばSINR(Signal to Interference and Noise power Ratio、信号対干渉雑音電力比)を、復調処理後の受信信号、つまり、受信したOFDM信号に対して復調処理を行うことによって得られる、当該OFDM信号に含まれるサブキャリアを変調する複素シンボル(以後、「復調複素シンボル」と呼ぶ)に基づいて算出する。復調後受信品質として、EVM(Error Vector Magnitude)を算出しても良い。また、復調複素シンボルに対して復号処理等を行ってビットデータを再生し、当該ビットデータに基づいて受信エラー率を算出して、この受信エラー率を復調後受信品質としても良い。
なお、通信端末2では、受信品質取得部242で復調前受信品質及び復調後受信品質が求められる際には、受信処理部241は、アダプティブアレイアンテナ方式を使用して基地局1からの受信信号を受信しないようになっている。
送信処理部240は、受信品質取得部242で取得された復調前受信品質及び復調後受信品質を通知するための受信品質通知信号を含む送信信号を生成して無線処理部21に入力する。これにより、通信端末2からは、当該通信端末2で求められた復調前受信品質及び復調後受信品質を通知するための受信品質通知信号が基地局1に送信される。
基地局1では、無線処理部11で受信された受信品質通知信号が干渉強度判定部142に入力される。干渉強度判定部142は、入力された受信品質通知信号が示す復調前受信品質及び復調後受信品質に基づいて、当該受信品質通知信号を送信する通信端末2での受信信号に含まれる干渉波の強度(以後、「干渉強度」と呼ぶ)が大きいか否かを所定の基準に基づいて判定する。そして、基地局1では、使用禁止決定部143が、干渉強度判定部142での判定結果に基づいてMIMO方式の使用を禁止するか否かを決定する。以後、通信端末2が受信品質を求めてから、当該受信品質に基づいて基地局1が当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することを禁止するか否かを決定するまでの無線通信システム100での一連の処理を「MIMO使用禁止判定処理」と呼ぶ。
<無線通信システムでのMIMO使用禁止判定処理>
図4は無線通信システム100でのMIMO使用禁止判定処理を示すフローチャートである。図4に示されるように、ステップs1において、通信端末2では、受信品質取得部242が、復調前受信品質としてCINRを求める。次にステップs2において、受信品質取得部242が、復調後受信品質としてSINRを求める。そして、ステップs3において、送信処理部240は、受信品質取得部242が求めた復調前受信品質(CINR)及び復調後受信品質(SINR)を通知するための受信品質通知信号を生成し、無線処理部21が当該受信品質通知信号を通信対象の基地局1に送信する。CINR及びSINRは、例えばCQI(Channel Quality Indicator )として通信端末2から基地局1に通知される。通信端末2は、ステップs1〜s3までの処理を基地局1からの指示に基づいて行っても良いし、基地局1からの指示無しで定期的あるいは不定期的に自ら行っても良い。
基地局1では、無線処理部11が通信端末2から受信品質通知信号を受信すると、ステップs4において、干渉強度判定部142は、当該受信品質通知信号が示すCINR及びSINRに基づいて当該通信端末2での干渉強度が大きいか否かを判定する。図5は干渉強度判定部142での動作を説明するための図である。
干渉強度判定部142は、図5に示されるような、横軸及び縦軸にCINR及びSINRをそれぞれ示す二次元座標系300を考える。干渉強度判定部142は、この二次元座標系300に示される、右上がりのしきい値直線310と、受信品質通知信号が示すCINR及びSINRから成る座標値320の二次元座標系300での位置とを比較する。干渉強度判定部142は、座標値320がしきい値直線310よりも上側に位置する場合には、通信端末2での干渉波強度が小さいと判定する。つまり、干渉強度判定部142は、しきい値直線310上において、座標値320のCINRと同じCINRのときのSINRよりも、座標値320のSINRが大きい場合には、通信端末2での干渉波強度が小さいと判定する。
一方で、干渉強度判定部142は、図5に示されるように、座標値320がしきい値直線310よりも下側に位置する場合には、通信端末2での干渉波強度が大きいと判定する。つまり、干渉強度判定部142は、しきい値直線310上において、座標値320のCINRと同じCINRのときのSINRよりも、座標値320のSINRが小さい場合には、通信端末2での干渉波強度が大きいと判定する。
干渉強度判定部142は、座標値320がしきい値直線310上に位置する場合には、通信端末2での干渉波強度が小さいと判定しても良いし、通信端末2での干渉波強度が大きいと判定しても良い。
このように、座標値320が、右上がりのしきい値直線310よりも上側に位置する場合には、通信端末2での干渉波強度が小さいと判定し、座標値320が、右上がりのしきい値直線310よりも下側に位置する場合には、通信端末2での干渉波強度が大きいと判定することによって、通信端末2での復調処理前受信品質が悪い場合には、当該通信端末2での復調後受信品質があまり良くなくても、当該通信端末2での干渉波強度は小さいと判定される。また、通信端末2での復調処理前受信品質が良好の場合には、当該通信端末2での復調後受信品質がある程度良くても、当該通信端末2での干渉波強度は大きいと判定される。
なお、干渉強度判定部142での処理について別の見方をすると、干渉強度判定部142は、通信端末2でのSINRを、当該通信端末2でのCINRに応じて変化するしきい値と比較し、当該SINRが当該しきい値よりも大きければ、当該通信端末2での干渉波強度が小さいと判定し、当該SINRが当該しきい値よりも小さければ、当該通信端末2での干渉波強度が大きいと判定していると言える。通信端末2でのSINRと比較されるしきい値は、当該通信端末2でのCINRが大きいほど大きく設定される。
干渉強度判定部142で使用されるしきい値直線310は、通信端末2での受信信号に干渉波が含まれていないと仮定した場合に予測される、当該通信端末2でのCINRとSINRとの関係を示す予測直線350に基づいて決定される。本実施の形態では、しきい値直線310を予測直線350よりも少し下側に設定している。
通信端末2が、復調前受信品質としてRSSIを求めて、復調後受信品質としてSINRを求める場合であっても、同様にして、当該通信端末2での干渉波強度が大きいか否かを判定することができる。この場合には、二次元座標系300の代わりに、横軸及び縦軸にRSSI及びSINRをそれぞれ示す二次元座標系を使用することになる。
また、通信端末2が、復調前受信品質としてCINRあるいはRSSIを求めて、復調後受信品質として受信エラー率あるいはEVMを求める場合には、右上がりのしきい値直線ではなく、右下がりのしきい値曲線を使用することになる。図6はこの場合の干渉強度判定部142の動作を説明するための図である。
図6に示されるように、干渉強度判定部142は、横軸にCINRあるいはRSSI、縦軸に受信エラー率あるいはEVMをそれぞれ示す二次元座標系400を考える。干渉強度判定部142は、この二次元座標系400に示される、右下がりのしきい値曲線410(より詳細には、横軸の値が大きくなればなるほど縦軸の値が小さくなるしきい値曲線410)と、受信品質通知信号が示すCINR(あるいはRSSI)及び受信エラー率(あるいはEVM)から成る座標値420の二次元座標系400での位置とを比較する。干渉強度判定部142は、図6に示されるように、座標値420がしきい値曲線410よりも上側に位置する場合には、通信端末2での干渉波強度が大きいと判定する。一方で、干渉強度判定部142は、座標値420がしきい値曲線410よりも下側に位置する場合には、通信端末2での干渉波強度が小さいと判定する。干渉強度判定部142は、座標値420がしきい値曲線410上に位置する場合には、通信端末2での干渉波強度が小さいと判定しても良いし、通信端末2での干渉波強度が大きいと判定しても良い。
なお、干渉強度判定部142でのこのような処理について別の見方をすると、干渉強度判定部142は、通信端末2での受信エラー率あるいはEVMを、当該通信端末2でのCINRあるいはRSSIに応じて変化するしきい値と比較し、当該受信エラー率あるいはEVMが当該しきい値よりも小さければ、当該通信端末2での干渉波強度が小さいと判定し、当該受信エラー率あるいはEVMが当該しきい値よりも大きければ、当該通信端末2での干渉波強度が大きいと判定していると言える。通信端末2での受信エラー率あるいはEVMと比較されるしきい値は、当該通信端末2でのCINRあるいはRSSIが大きいほど小さく設定される。
干渉強度判定部142で使用されるしきい値曲線410は、通信端末2での受信信号に干渉波が含まれていない仮定した場合に予測される、当該通信端末2でのCINR(あるいはRSSI)と受信エラー率(あるいはEVM)との関係を示す予測曲線450に基づいて決定される。本実施の形態では、しきい値曲線410を予測曲線450よりも少し上側に設定している。
以上に説明したように、本実施の形態に係る基地局1では、通信端末2での復調前受信品質及び復調後受信品質の両方に基づいて当該通信端末2での干渉強度が大きいか否かを判定していることから、当該通信端末2での干渉波強度が大きいか否かをより正しく判定することができる。以下にこの点について説明する。
通信端末2でのSINR等の復調後受信品質については、当該通信端末2での干渉波強度が小さい場合であっても、当該通信端末2と基地局1との間の距離が大きい場合には、悪くなることがある。したがって、通信端末2での復調後受信品質が悪い場合であっても、当該通信端末2での干渉強度が小さい場合がある。また、通信端末2での復調後受信品質については、当該通信端末2での干渉波強度が大きい場合であっても、当該通信端末2と基地局1との間の距離が小さい場合には、良好となることがある。したがって、通信端末2での復調後受信品質が良好であっても、当該通信端末2での干渉強度が大きい場合がある。
このように、通信端末2での復調後受信品質が悪い場合であっても、当該通信端末2での干渉強度が小さい場合があり、通信端末2での復調後受信品質が良好であっても、当該通信端末2での干渉強度が大きい場合があることから、本実施の形態とは異なり、通信端末2での復調後受信品質だけを参照して当該通信端末2での干渉強度が大きいか否かを判定する場合には、判定精度がそれほど高くはならない。
一方で、通信端末2と基地局1との間の距離が小さい場合は、当該通信端末2でのCINR等の復調前受信品質が良好となり、通信端末2と基地局1との間の距離が大きい場合は、当該通信端末2での復調前受信品質は悪くなる。
そこで、本実施の形態では、通信端末2での復調後受信品質だけではなく復調前受信品質にも基づいて当該通信端末2での干渉強度が大きいか否かを判定することによって、その判定精度を向上させている。具体的には、通信端末2での復調処理前受信品質が悪い場合には、当該通信端末2と基地局1との間の距離が大きいと判定して、当該通信端末2での復調後受信品質があまり良くなくても、当該通信端末2での干渉波強度は小さいと判定する。一方で、通信端末2での復調処理前受信品質が良好の場合には、当該通信端末2と基地局1との間の距離が小さいと判定して、当該通信端末2での復調後受信品質がある程度良くても、当該通信端末2での干渉波強度は大きいと判定する。これにより、通信端末2での干渉波強度が大きいか否かを正しく判定することができる。
図4に戻って、ステップs4において干渉強度判定部142が通信端末2での干渉強度が大きいと判定すると、ステップs5において、使用禁止決定部143は、当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することを禁止する。一方で、ステップs4において干渉強度判定部142が通信端末2での干渉強度が小さい(大きくない)と判定すると、使用禁止決定部143において、当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することは禁止されない。
通信部15は、使用禁止決定部143において、通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することが禁止されると、当該通信端末2への信号の送信にはMIMO方式を使用せずに、アダプティブアレイアンテナ方式を使用する。
なお、本実施の形態では、通信部15は、送信にMIMO方式を使用しない場合には、送信にアダプティブアレイアンテナ方式を使用しているが、送信にアダプティブアレイアンテナ方式を使用せずにオムニ送信しても良い。
<基地局での送信スループットの調整方法>
次に基地局1での送信スループットの調整方法について説明する。本実施の形態に係る無線通信システム100では、変調方式及び符号化率の組み合わせが異なるM個(M≧2)のMCSが規定されている。LTEにおいては、29個のMCSが規定されている。そして、M個のMCSに対しては、0段階から(M−1)段階までのランクがそれぞれ付与されており、ランクが上がるほど、それに対応するMCSでの変調方式及び符号化率の組み合わせで決定される基地局1の瞬時の送信スループットが大きくなっている。送信処理部140は、通信部15が通信端末2に送信する送信信号に適用するMCSを、当該通信端末2からの上記のCQIに基づいてM個のMCSから決定する。つまり、送信処理部140は、通信部15が通信端末2に送信する送信信号に適用するMCSを、当該通信端末2での受信品質に基づいて決定する。送信処理部140は、通信端末2での受信品質が良好であるほど、高いランクのMCSを、当該通信端末2に送信する送信信号に適用する。
通信部15は、送信処理部140が通信端末2への送信信号に適用するMCSを決定すると、当該MCSを当該通信端末2に対して通知する。通信端末2では、受信処理部241が、基地局1から通知されたMCSに応じた受信処理を、基地局1からの受信信号に対して行って、当該受信信号に含まれるデータを取得する。
なお、基地局1は、通信端末2に対して、当該通信端末2に送信する送信信号に適用するMCSを通知する際に、当該通信端末2に対して信号を送信する際にMIMO方式を使用しているか否かを通知する。
また、送信処理部140は送信信号に適用するMCSの調整を行う。以下にMCSの調整方法について説明する。
本実施の形態では、各通信端末2において、通信部25が基地局1からの信号を受信すると、受信処理部241は、その受信信号に含まれるデータを適切に取得することができたか否かを示すACK/NACK情報を生成する。このACK/NACK情報は送信信号に含められて、通信部25から基地局1に通知される。基地局1の送信処理部140は、通信端末2から通知されるACK/NACK情報を観測し、当該通信端末2での受信エラー率を算出する。そして、送信処理部140は、通信端末2についての受信エラー率が大きい場合や小さい場合には、当該通信端末2に送信する送信信号に適用するMCSを変更する。例えば、送信処理部140は、通信端末2についての受信エラー率が大きい場合、つまり受信エラー率が第1のしきい値よりも大きい場合には、当該通信端末2に送信する送信信号に適用するMCSのランクを1つ下げる。また、送信処理部140は、通信端末2についての受信エラー率が小さい場合、つまり受信エラー率が第2のしきい値(<第1のしきい値)よりも小さい場合には、当該通信端末2に送信する送信信号に適用するMSCのランクを1つ上げる。
このように、送信処理部140では、通信端末2での受信エラー率が大きい場合には、当該通信端末2に送信する送信信号に適用するMCSのランクを1つ下げ、通信端末2での受信エラー率が小さい場合には、当該通信端末2に送信する送信信号に適用するMCSのランクを1つ上げることによって、通信端末2での受信エラー率が所定範囲内に収まるようにしている。
なお、上記の例では、基地局1で通信端末2での受信エラー率を求めていたが、上述のように、通信端末2が復調後受信品質として受信エラー率を求めて基地局1に通知する場合には、基地局1は通信端末2から通知される受信エラー率に基づいて、当該通信端末2への送信信号に適用するMCSのランクを決定しても良い。
また、本実施の形態に係る基地局1が通信端末2との通信を開始する場合には、通信部15は、まず、MIMO方式を使用せずに、当該通信端末2と通信を開始する。そして、送信処理部140が、当該通信端末2への送信信号に適用するMCSを調整した結果、当該MCSのランクが最高ランク、つまり(M−1)ランクに到達し、当該通信端末2での受信エラー率が第2のしきい値よりも小さく、当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することが禁止されていない場合には、通信部15は、基地局1の送信スループットをさらに向上するために、当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式(MIMO−SDM)を使用する。以後、MIMO方式を使用せずに信号を送信する送信方式を「non−MIMO方式」と呼ぶことがある。
通信端末2に対してMIMO方式を用いて信号を送信する通信部15は、当該通信端末2での受信エラー率が第1のしきい値よりも大きくなると、当該通信端末2に対して信号を送信する際にMIMO方式を使用しないようにする。つまり、通信部15は、送信方式をMIMO方式からnon−MIMO方式に切り替える。そして、通信部15は、通信端末2への送信信号に適用するMCSのランクが最高ランクの場合に、当該通信端末2での受信エラー率が第2のしきい値よりも小さくなると、当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式(MIMO−SDM)を使用する。つまり、通信部15は、送信方式をnon−MIMO方式からMIMO方式に切り替える。以後、基地局1は同様に動作する。
このように、基地局1では、通信端末2への送信信号に適用するMCSと、当該通信端末2に信号を送信する際にMIMO方式(MIMO−SDM)を使用するか否かとを組み合わせることによって、当該通信端末2についての送信スループットを適切に調整している。
なお、使用禁止決定部143において通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することが禁止されている場合には、通信部15は、当該通信端末2への送信信号に適用するMCSが最高ランクとなり、当該通信端末2での受信エラー率が第2のしきい値よりも小さい場合であっても、当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用しない。つまり、通信部15は、送信方式をnon−MIMO方式からMIMO方式に切り替えない。
また、基地局1は、通信端末2と通信する際に、まず、MIMO−STCあるいはMIMO−SFBC等の送信ダイバーシティを使用して当該通信端末2に信号を送信し、当該通信端末2への送信信号に適用するMCSのランクが最高ランクとなると、当該通信端末2への送信にMIMO−SDMを使用するようにしても良い。
以上のように、本実施の形態に係る基地局1では、通信端末2での受信信号に含まれる干渉波の強度が大きい場合には、当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することが禁止される。通信端末2での干渉強度が大きい場合には、当該通信端末2が受信する、基地局1からの参照信号に含まれる干渉波の強度が大きくなることから、当該通信端末2が当該参照信号に基づいて推定するチャネル行列の精度は劣化する。したがって、通信端末2での干渉強度が大きい場合に、当該通信端末2に対してMIMO方式を使用して信号を送信すると、当該通信端末2では、精度が良くないチャネル行列に基づいて基地局1からのデータ信号に対して受信処理を行うことになり、当該データ信号に含まれるデータを適切に取得できない。つまり、当該通信端末2での受信エラー率が増加する。本実施の形態では、通信端末2での干渉強度が大きい場合には、当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することが禁止されることから、このような問題が生じることがなく、当該通信端末2では、基地局1からのデータ信号に含まれるデータを適切に取得することができる。つまり、当該通信端末2での受信エラー率が低減する。よって、基地局1と通信端末2との間での通信性能を向上することができる。
また、上述のようにして基地局1が送信スループットを調整する場合において、仮に通信端末2での干渉波強度が大きい場合に、当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することが禁止されないとすると、通信端末2での干渉強度が大きい状況において、当該通信端末2への送信信号に適用されるMCSが最高ランクとなって、当該通信端末2での受信エラー率が第2のしきい値よりも小さい場合には、基地局1の送信方式がnon−MIMO方式からMIMO方式に切り替えられるようになる。そうすると、当該通信端末2では、精度の悪いチャネル行列に基づいて基地局1からの信号に対して受信処理を行うことになる。その結果、当該通信端末2での受信エラー率が大きくなる。
通信端末2での受信エラー率が大きくなると、基地局1は送信方式をMIMO方式からnon−MIMO方式に切り替えるようになる。そうすると、当該通信端末2は、基地局1からの信号をアダプティブアレイアンテナ方式を使用して受信する。通信端末2がアダプティブアレイアンテナ方式を用いて基地局1からの信号を受信する場合には、その受信信号に含まれる干渉波の強度を低減することができることから、当該通信端末2での受信エラー率は低下する。
通信端末2での受信エラー率が低下すると、基地局1では、送信方式がnon−MIMO方式からMIMO方式に再度切り替えられるようになる。基地局1が、送信方式をnon−MIMO方式からMIMO方式に切り替えると、同様にして、通信端末2での受信エラー率が大きくなり、その結果、基地局1では送信方式がMIMO方式からnon−MIMO方式に切り替えられるようになる。以後、基地局1は同様の動作を繰り返すことになる。
このように、仮に、通信端末2での干渉波強度が大きい場合に当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することが禁止されないとすると、基地局1では、non−MIMO方式からMIMO方式への切り替えと、MIMO方式からnon−MIMO方式への切り替えとが交互に頻繁に発生するようになり、基地局1の動作が不安定となる。その結果、基地局1と通信端末2との間の通信性能が低下することになる。
本実施の形態では、通信端末2での干渉波強度が大きい場合には、基地局1は、当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することを禁止するため、基地局1において、non−MIMO方式からMIMO方式への切り替えと、MIMO方式からnon−MIMO方式への切り替えとが交互に頻繁に発生することを抑制することができる。よって、基地局1の動作が不安定となることを抑制することができる。その結果、基地局1と通信端末2との間の通信性能を向上することができる。
また、本実施の形態に係る通信端末2では、基地局1が当該通信端末2への送信にMIMO方式を使用する場合には、基地局1からのデータ信号をアダプティブアレイアンテナ方式を用いて受信していないことから、当該通信端末2は、基地局1がMIMO方式を使用して送信する信号を適切に受信することができる。以下に、この点について詳細に説明する。
基地局1がMIMO方式を用いて信号を送信する際には、通信端末2において基地局1からの参照信号を用いて適切にチャネル行列を推定できるように、基地局1の複数のアンテナ12からは同じ無線リソース(同じ周波数帯域及び同じ送信時間帯)を用いて互いに異なる複数の参照信号が送信されないようになっている。
一方で、基地局1がMIMO方式を用いて送信するデータ信号については、複数のアンテナ12からは、同じ無線リソースを用いて互いに異なる複数のデータ信号が送信される。例えば、MIMO−SDMでは、複数のアンテナ12からは、複数系統にそれぞれ属する、互いに異なる複数のデータ信号が同じ無線リソースを用いて送信される。また、MIMO−STCあるいはMIMO−SFBCでは、複数のアンテナ12からは、例えば、一方の系統に属するデータ信号と、他方の系統に属するデータ信号の複素共役信号とが同じ無線リソースを用いて送信される。
図7は、各アンテナ12が参照信号及びデータ信号を送信する際に使用する無線リソースの一例を示す図である。図7では、周波数方向に一つのサブキャリアを含み、時間方向に一つのOFDMシンボル期間を含む単位無線リソース500が丸印で示されている。また図7では、参照信号の送信に使用される単位無線リソース500を示す丸印には斜線が示されており、データ信号の送信に使用される単位無線リソース500を示す丸印には縦線が示されており、信号の送信に使用されない単位無線リソース500を示す丸印にはハッチングが示されていない。また図7では、基地局1が備える一方のアンテナ12を「第1アンテナ」として示し、基地局1が備える他方のアンテナ12を「第2アンテナ」として示している。図7では、左側に第1アンテナが信号を送信する際に使用する無線リソースの一例が示されており、右側に第2アンテナが信号を送信する際に使用する無線リソースの一例が示されている。
図7の例では、第2アンテナは、第1アンテナが参照信号の送信に使用する単位無線リソース500と同じ単位無線リソース500を用いて信号を送信しておらず、第1アンテナは、第2アンテナが参照信号の送信に使用する単位無線リソース500と同じ単位無線リソース500を用いて信号を送信していない。つまり、ある一つの単位無線リソース500を用いて基地局1から送信される参照信号については、第1及び第2アンテナの一方だけから送信されている。
なお、図7の例とは異なり、基地局1においては、複数のアンテナ12から互いに同じ複数の参照信号が同じ無線リソースを用いて送信されることがある。
このように、基地局1では、MIMO方式を用いて信号を送信する際には、チャネル行列を推定するための参照信号の送信態様と、データ信号の送信態様とが異なっている。
一方で、MIMO方式を用いて基地局1が送信するデータ信号を、通信端末2がアダプティブアレイアンテナ方式を用いて適切に受信する場合には、通信端末2は、複数のアンテナ22での受信指向性を制御して、基地局1が備える複数のアンテナ12から送信される、互いに異なる複数のデータ信号のそれぞれを個別に受信する必要がある。つまり、通信端末2は、基地局1の複数のアンテナ12のそれぞれについて、当該アンテナ12から送信されるデータ信号に対してビームを向けるとともに、当該アンテナ12以外の他のアンテナ12から送信されるデータ信号に対してヌルを向ける必要がある。
しかしながら、基地局1では、MIMO方式が使用される際には、参照信号の送信態様とデータ信号の送信態様とが異なっていることから、通信端末2が、基地局1から送信される参照信号に基づいて複数のアンテナ22での受信指向性に関してヌルステアリングを行ったとしても、基地局1が備える複数のアンテナ12のそれぞれについて、当該アンテナ12から送信されるデータ信号に対してビームを向けるとともに、当該アンテナ12以外の他のアンテナ12から送信されるデータ信号にヌルを向けることはできない。よって、通信端末2では、基地局1がMIMO方式を用いて送信するデータ信号を、アダプティブアレイアンテナ方式を用いて適切に受信することができない。
図7の例では、基地局1では、一方のアンテナ12から参照信号が送信される場合には、他方のアンテナ12から信号が送信されないことから、通信端末2は、一方のアンテナ12から送信される参照信号に基づいてヌルステアリング及びビームフォーミングを行ったとしても、当該一方のアンテナ12から送信されるデータ信号にビームを向けることはできるものの、他方のアンテナ12から送信されるデータ信号にヌルを向けることはできない。したがって、通信端末2は、基地局1の一方のアンテナ12から送信されるデータ信号とともに、基地局1の他方のアンテナ12から送信されるデータ信号を不要な信号として受信することになり、当該一方のアンテナ12から送信されるデータ信号を適切に受信することができない。
そこで、本実施の形態では、通信端末2は、基地局1が当該通信端末2への送信にMIMO方式を使用する場合には、基地局1からのデータ信号をアダプティブアレイアンテナ方式を用いて受信していないようにしている。これにより、通信端末2は、基地局1がMIMO方式を使用して送信する信号を適切に受信することができる。その結果、基地局1と通信端末2との間での通信性能を向上することができる。
<各種変形例>
<第1変形例>
上記の例では、基地局1は、通信端末2での干渉強度が大きい場合には、直ちに当該通信端末2への送信にMIMO方式を使用することを禁止したが、通信端末2での干渉強度が大きい場合であって、かつ、当該通信端末2での受信品質が良好でない(悪い)場合にはじめて当該通信端末2への送信にMIMO方式を使用することを禁止しても良い。以下にこの変形例について説明する。
図8は本変形例に係る無線通信システム100が備える基地局1の構成を示すブロック図である。図8に示されるように、本変形例に係る基地局1では、制御部14は、機能ブロックとして、受信品質判定部144をさらに備えている。受信品質判定部144は、通信端末2での受信品質が良好であるか否かを所定の基準に基づいて判定する。
図9は本変形例に係る無線通信システム100でのMIMO使用禁止判定処理を示すフローチャートである。図9に示されるように、本変形例に係るMIMO使用禁止判定処理では、上述のステップs1〜3が実行される。その後、ステップs4において、基地局1の干渉強度判定部142が通信端末2での干渉強度が大きくないと判定すると、使用禁止決定部143では、当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することが禁止されずに、MIMO使用禁止判定処理が終了する。
一方で、ステップs4において、干渉強度判定部142が通信端末2での干渉強度が大きいと判定すると、ステップs11において、基地局1の受信品質判定部144は、当該通信端末2での受信品質が良好であるか否かを所定の基準に基づいて判定する。ここでの通信端末2での受信品質は、ステップs4で使用される受信品質ではなく、ステップs4において干渉強度判定部142が通信端末2での干渉強度が大きいと判定した後における当該通信端末2での受信品質である。つまり、ここでの通信端末2での受信品質は、当該通信端末2での干渉強度が大きい場合での当該通信端末2での受信品質である。
ステップs11では、通信端末2で求められた復調前受信品質を使用しても良いし、通信端末2で求められた復調後受信品質を使用しても良い。ステップs11において、例えば通信端末2が求めたCINRが使用される場合には、受信品質判定部144は、通信端末2が求めたCINRと所定のしきい値とを比較し、CINRが所定のしきい値よりも大きい場合には、当該通信端末2での受信品質は良好であると判定する。一方で、受信品質判定部144は、通信端末2が求めたCINRが、所定のしきい値よりも小さい場合には、当該通信端末2での受信品質は良好ではない(悪い)と判定する。なお、CINRが所定のしきい値と一致する場合は、通信端末2での受信品質は良好であると判定しても良いし、良好ではないと判定しても良い。
また、ステップs11において、例えば通信端末2が求めたEVMが使用される場合には、受信品質判定部144は、通信端末2が求めたEVMと所定のしきい値とを比較し、通信端末2が求めたEVMが所定のしきい値よりも小さい場合には、当該通信端末2での受信品質は良好であると判定する。一方で、受信品質判定部144は、通信端末2が求めたEVMが所定のしきい値よりも大きい場合には、当該通信端末2での受信品質は良好ではない(悪い)と判定する。EVMが所定のしきい値と一致する場合は、通信端末2での受信品質は良好であると判定しても良いし、良好ではないと判定しても良い。
なお、ステップs11において、受信品質判定部144は、通信端末2から通知されるACK/NACK情報に基づいて当該通信端末2についての受信エラー率を算出し、算出した受信エラー率に基づいて当該通信端末2での受信品質が良好か否かを判定しても良い。
ステップs11において、通信端末2での受信品質が良好であると判定されると、使用禁止決定部143では、当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することが禁止されずに、MIMO使用禁止判定処理が終了する。
一方で、ステップs11において、通信端末2での受信品質が良好ではないと判定されると、使用禁止決定部143は、当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することを禁止する。
このように、本変形例では、通信端末2での干渉強度が大きい場合であっても、当該通信端末2での受信品質が良好である場合には、当該通信端末2への送信にMIMO方式を使用することを禁止していないため、通信端末2での受信品質が良好であるにもかかわらず、当該通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用することが禁止されることを防止することができる。よって、基地局1ではより適切にMIMO方式を使用することができ、基地局1と通信端末2との間の通信品質がさらに向上する。
<第2変形例>
基地局1が送信にMIMO方式を使用する場合には、通信端末2は、チャネル行列を求めるための参照信号を基地局1から受信する際に、アダプティブアレイアンテナ方式を使用しても良い。以下に本変形例について説明する。
図10は基地局1が通信端末2に対する信号の送信にMIMO方式を使用している場合での当該通信端末2の動作を示すフローチャートである。
図10に示されるように、基地局1からMIMO方式を用いて信号が送信される通信端末2では、ステップs21において、通信部25は、基地局1からの参照信号をアダプティブアレイアンテナ方式を用いて受信する。ステップs21においては、まず、通信部25の受信処理部241は、基地局1からの参照信号に基づいて、アレイアンテナ23での受信指向性を制御するための複数の受信ウェイトを算出する。そして、受信処理部241は、算出した複数の受信ウェイトを、複数のアンテナ22で受信された複数の参照信号にそれぞれ設定する。その後、受信処理部241は、複数の受信ウェイトが設定された複数の参照信号を合成して合成信号を生成する。この合成信号を「アレイ受信参照信号」と呼ぶ。これにより、通信部25では、複数のアンテナ22での受信指向性に関してヌルステアリング及びビームフォーミングが行われて基地局1からの参照信号が受信される。
なお、受信ウェイトを求める際に使用された参照信号に対して、当該受信ウェイトを設定しても良いし、当該参照信号とは別の参照信号に当該受信ウェイトを設定しても良い。
次にステップs22において、受信処理部241は、ステップs21で生成されたアレイ受信参照信号に基づいて、つまり、アダプティブアレイアンテナ方式を用いて受信された参照信号に基づいて所望波のチャネル行列を推定する。以下に所望波のチャネル行列の推定方法について説明する。
アレイ受信参照信号をyとし、複数のアンテナ22でそれぞれ受信される複数の参照信号から成る受信参照信号ベクトルをXとし、当該複数の参照信号にそれぞれ設定される複数の受信ウェイトから成る受信ウェイトベクトルをWとすると、アレイ受信参照信号yは以下の式(1)で表される。
y=W×X ・・・(1)
また、受信参照信号ベクトルXは以下の式(2)で表される。
X=Ht×St+H1×U1+・・・+HL×UL+N ・・・(2)
Stは所望波の信号ベクトルを示し、Ui(1≦i≦L)は干渉波の信号ベクトルを示している。また、Htは所望波のチャネル行列を示し、Hiは干渉波のチャネル行列を示している。そして、Nは内部雑音の信号ベクトルを示している。
式(2)を用いて式(1)を書き直すと以下の式(3)となる。
y=W×(Ht×St+H1×U1+・・・+HL×UL+N) ・・・(3)
ここで、WとNとの相関は低いことから、W×Nは零に近い値となる。また、Wは、アレイアンテナ23での受信指向性に関するヌルを干渉波に向けるためのものであることから、W×Hi×Uiは小さい値となる。したがって、式(3)を以下の式(4)に書き換える。
y≒W×Ht×St ・・・(4)
受信処理部241では、所望波、つまり基地局1が送信する参照信号の理想的な値(本来の値)の信号ベクトルStは既知であり、アレイ受信参照信号yと受信ウェイトベクトルWとが得られることから、これらの値と、式(4)とを用いて、受信処理部241は所望波のチャネル行列Htを推定する。
次にステップs23において、受信処理部241は、ステップs22で推定した所望波のチャネル行列を用いて、基地局1からのデータ信号に対して復調処理等の受信処理を行う。これにより、通信端末2では、基地局1が送信するユーザデータ及び制御データが取得される。
このように、本変形例では、通信端末2は、複数のアンテナ22での受信指向性に関してヌルステアリングを行って基地局1からの参照信号を受信することから、それに含まれる干渉波の強度が小さい参照信号に基づいて所望波のチャネル行列を推定することができる。したがって、精度の高いチャネル行列を得ることができる。よって、当該チャネル行列を用いて基地局1からのデータ信号に対して受信処理を行うことによって、当該データ信号に含まれるデータを適切に取得することができる。その結果、基地局1と通信端末2との間の通信性能がさらに向上する。
なお、上述の第1変形例と本変形例とを組み合わせる場合には、基地局1は、上述のステップs11において、通信端末2においてステップs23が実行されることによって取得されるデータについての受信エラー率に基づいて当該通信端末2での受信品質が良好か否かを判定することが望ましい。
<第3変形例>
通信端末2がMIMO方式を用いて基地局1に信号を送信することが可能である場合には、基地局1は、当該通信端末2からの受信信号に含まれる干渉波の強度に基づいて、当該通信端末2でのMIMO方式の使用を禁止するか否かを決定しても良い。
また、基地局1は、通信端末2がMIMO方式を使用して信号を送信する際には、当該通信端末2からの信号を受信するときにはアダプティブアレイアンテナ方式を使用しないようにしても良い。
以下に本変形例について説明する。なお本変形例では、特に断らない限り、「通信端末2」と言えば、「MIMO方式を使用して信号を送信することが可能な通信端末2」を意味するものとする。また、通信端末2が使用するMIMO方式は、例えばMIMO−SDMとする。
図11は本変形例に係る基地局1の構成を示す図である。図11に示されるように、本変形例に係る基地局1では、制御部14は、機能ブロックとして、受信品質取得部145をさらに備えている。
受信品質取得部145は、通信端末2が有する受信品質取得部242と同様の動作を行う。受信品質取得部145は、無線処理部11から出力される受信信号に基づいて、通信端末2についての復調前受信品質及び復調後受信品質を求める。受信品質取得部145は、復調前受信品質として、例えばCINRあるいはRSSIを算出する。また、受信品質取得部145は、復調語受信品質として、例えば、SINR、EVMあるいは受信エラー率を算出する。なお、基地局1では、受信品質取得部145で復調前受信品質及び復調後受信品質が求められる際には、受信処理部141は、アダプティブアレイアンテナ方式を使用して通信端末2からの受信信号を受信しないようになっている。
また基地局1では、干渉強度判定部142は、通信端末2が基地局1から受信する受信信号に含まれる干渉波の強度が大きいか否かを判定するだけではなく、基地局1が当該通信端末2から受信する受信信号に含まれる干渉波の強度が大きいか否かを判定する。また使用禁止決定部143は、基地局1でのMIMO方式の使用を禁止するか否かを決定するとともに、通信端末2でのMIMO方式の使用を禁止するか否かを決定する。
通信端末2での送信スループットの調整は基地局1が行う。基地局1では、送信処理部140が基地局1の送信スループットを調整するときと同様に、まず受信処理部141が、通信端末2からの信号についての基地局1での受信品質に基づいて、当該通信端末2が送信信号に適用するMCSを決定する。そして、受信処理部141は、通信部15が通信端末2からの信号を受信すると、その受信信号に含まれるデータを適切に取得することができたか否かを判定し、その判定結果に基づいて、当該通信端末2についての受信エラー率を算出する。受信処理部141は、通信端末2についての受信エラー率が第1のしきい値よりも大きい場合や、第2のしきい値(<第1のしきい値)よりも小さい場合には、送信処理部140が通信端末2に送信する送信信号に適用するMCSを調整するときと同様に、当該通信端末2が送信信号に適用するMCSを調整する。これにより、基地局1では、通信端末2からの受信信号についての受信エラー率が所定範囲内に収まるようになる。
通信部15は、受信処理部141において、通信端末2が送信信号に適用するMCSが決定及び変更されると、当該MCSを当該通信端末2に通知する。通信端末2は、使用するMCSが基地局1から通知されると、当該MCSを基地局1への送信信号に適用する。
また、本変形例に係る基地局1は、通信端末2との通信を開始する場合には、当該通信端末2にMIMO方式を使用しないように指示する。そして、受信処理部141が、当該通信端末2が送信信号に適用するMCSを調整した結果、当該MCSのランクが最高ランクに到達し、当該通信端末2からの信号についての受信エラー率が第2のしきい値よりも小さく、当該通信端末2が信号を送信する際にMIMO方式を使用することが禁止されていない場合には、通信部15は、当該通信端末2の送信スループットをさらに向上するために、当該通信端末2に対して送信にMIMO方式(MIMO−SDM)を使用することを指示する。通信端末2では、基地局1から送信にMIMO方式を使用することが通知されると、通信部25がMIMO方式を使用して基地局1に信号を送信する。
基地局1では、MIMO方式を用いて信号を送信する通信端末2からの信号についての受信エラー率が第1のしきい値よりも大きくなると、通信部15は、当該通信端末2に対して送信にMIMO方式を使用しないように指示する。通信端末2では、送信にMIMO方式を使用しないことが基地局1から通知されると、通信部25は、MIMO方式を使用せずに、アダプティブアレイアンテナ方式を用いて基地局1に信号を送信する。そして、通信部15は、通信端末2が送信信号に適用するMCSのランクが最高ランクの場合に、当該通信端末2からの信号についての受信エラー率が第2のしきい値よりも小さくなると、当該通信端末2に対して、送信にMIMO方式を使用することを指示する。以後、基地局1及び通信端末2は同様に動作する。
このように、基地局1では、通信端末2が送信信号に適用するMCSと、当該通信端末2が信号を送信する際にMIMO方式(MIMO−SDM)を使用するか否かとを組み合わせることによって、当該通信端末2の送信スループットを適切に調整している。
なお、使用禁止決定部143において通信端末2が信号の送信にMIMO方式を使用することが禁止されている場合には、通信部15は、当該通信端末2が送信信号に適用するMCSが最高ランクとなり、当該通信端末2からの信号についての受信エラー率が第2のしきい値よりも小さい場合であっても、当該通信端末2に対して信号の送信にMIMO方式を使用することを通知しない。したがって、この場合には、当該通信端末2では、送信方式がnon−MIMO方式からMIMO方式に切り替えられない。
また、基地局1は、通信端末2との通信を開始する際に、まず、通信端末2に対してMIMO−STCあるいはMIMO−SFBC等の送信ダイバーシティを使用して信号を送信するように指示し、当該通信端末2が送信信号に適用するMCSのランクが最高ランクとなると、当該通信端末2に対して信号の送信にMIMO−SDMを使用するように指示しても良い。
また、基地局1では、通信端末2が基地局1からの信号を受信するときと同様に、通信端末2が送信にMIMO方式を使用する場合には、受信処理部141は、アダプティブアレイアンテナ方式を使用せずに当該通信端末2からのデータ信号を受信する。受信処理部141は、通信端末2がMIMO方式を用いて送信する信号を受信する際には、当該通信端末2からの参照信号に基づいて、基地局1と当該通信端末2との間の伝送路のチャネル行列を推定する。そして、受信処理部141は、推定したチャネル行列を用いて、無線処理部11から出力される複数の受信信号に含まれるデータ信号に対して受信処理を行う。一方で、通信端末2が送信にMIMO方式を使用しない場合には、受信処理部141は、アダプティブアレイアンテナ方式を使用して当該通信端末2からのデータ信号を受信する。
図12は、上述の図4に対応する、本変形例に係る無線通信システム100の動作を示すフローチャートである。図12に示されるように、ステップs31において、基地局1では、受信品質取得部145が通信端末2からの信号についての復調前受信品質を求める。次にステップs32において、受信品質取得部145が通信端末2からの信号についての復調後受信品質を求める。
次にステップs33において、干渉強度判定部142は、通信端末2での干渉強度が大きいか否かを判定する場合と同様にして(図5を参照して説明した方法と同様にして)、ステップs31,s32で求められた復調前受信品質及び復調後受信品質に基づいて、通信端末2からの受信信号に含まれる干渉波の強度が大きいか否かを判定する。
ステップs33において、通信端末2からの受信信号に含まれる干渉強度が大きいと判定されると、ステップs34において、使用禁止決定部143は、当該通信端末2が基地局1に対する信号の送信にMIMO方式を使用することを禁止する。一方で、ステップs33において、通信端末2からの受信信号に含まれる干渉強度が小さい(大きくない)と判定されると、使用禁止決定部143は、当該通信端末2が基地局1に対する信号の送信にMIMO方式を使用することを禁止しない。
以上のように、本変形例では、基地局1が通信端末2から受信する受信信号での干渉強度が大きい場合には、当該通信端末2が信号の送信にMIMO方式を使用することが禁止されるため、基地局1が当該通信端末2からのデータ信号に対して精度の良くないチャネル行列を用いて受信処理することを防止することができる。よって、基地局1と通信端末2との間での通信性能を向上することができる。
また、上述のようにして基地局1が通信端末2での送信スループットを調整する場合において、仮に通信端末2からの受信信号に含まれる干渉波の強度が大きい場合に、当該通信端末2が信号の送信にMIMO方式を使用することが禁止されないとすると、通信端末2からの受信信号において干渉強度が大きい状況において、当該通信端末2が送信信号に適用するMCSが最高ランクとなって、当該通信端末2からの受信信号についての受信エラー率が第2のしきい値よりも小さい場合には、当該通信端末2の送信方式がnon−MIMO方式からMIMO方式に切り替えられるようになる。そうすると、基地局1では、精度の悪いチャネル行列に基づいて当該通信端末2からのデータ信号に対して受信処理を行うことになる。その結果、基地局1では、当該通信端末2からの信号について受信エラー率が大きくなる。
基地局1において、通信端末2からの信号についての受信エラー率が大きくなると、基地局1は当該通信端末2の送信方式をMIMO方式からnon−MIMO方式に切り替えるようになる。そうすると、基地局1は、当該通信端末2からの信号をアダプティブアレイアンテナ方式を使用して受信する。基地局1がアダプティブアレイアンテナ方式を用いて当該通信端末2からの信号を受信する場合には、その受信信号に含まれる干渉波の強度を低減することができることから、当該通信端末2からの信号についての受信エラー率は低下する。
通信端末2からの信号についての受信エラー率が低下すると、基地局1は、当該通信端末2の送信方式をnon−MIMO方式からMIMO方式に再度切り替えるようになる。通信端末2の送信方式がnon−MIMO方式からMIMO方式に切り替えられると、同様にして、基地局1では、当該通信端末2からの信号についての受信エラー率が大きくなり、その結果、当該通信端末2の送信方式がMIMO方式からnon−MIMO方式に切り替えられるようになる。以後、基地局1及び通信端末2は同様の動作を繰り返すことになる。
このように、仮に、通信端末2からの受信信号に含まれる干渉波の強度が大きい場合に当該通信端末2が信号の送信にMIMO方式を使用することが禁止されないとすると、当該通信端末2では、non−MIMO方式からMIMO方式への切り替えと、MIMO方式からnon−MIMO方式への切り替えとが交互に頻繁に発生するようになり、当該通信端末2の動作が不安定となる。その結果、基地局1と通信端末2との間の通信性能が低下することになる。
本実施の形態では、通信端末2からの受信信号に含まれる干渉波の強度が大きい場合には、基地局1は、当該通信端末2が信号の送信にMIMO方式を使用することを禁止するため、当該通信端末2において、non−MIMO方式からMIMO方式への切り替えと、MIMO方式からnon−MIMO方式への切り替えとが交互に頻繁に発生することを抑制することができる。よって、通信端末2の動作が不安定となることを抑制することができる。その結果、基地局1と通信端末2との間の通信性能を向上することができる。
また、本変形例では、基地局1は、通信端末2が送信にMIMO方式を使用する場合には、当該通信端末2からのデータ信号をアダプティブアレイアンテナ方式を用いて受信していないことから、基地局1は、通信端末2がMIMO方式を使用して送信する信号を適切に受信することができる。以下に、この点について説明する。
基地局1がMIMO方式を使用して信号を送信する場合と同様に、通信端末2がMIMO方式を用いて信号を送信する際には、基地局1において参照信号を用いて適切にチャネル行列を推定できるように、複数のアンテナ22からは同じ無線リソース(同じ周波数帯域及び同じ送信時間帯)を用いて互いに異なる複数の参照信号が送信されないようになっている。一方で、通信端末2がMIMO方式を用いて送信するデータ信号については、複数のアンテナ22からは、同じ無線リソースを用いて互いに異なる複数のデータ信号が送信される。
ここで、基地局1が、MIMO方式を用いて通信端末2が送信するデータ信号をアダプティブアレイアンテナ方式を用いて適切に受信する場合には、基地局1は、通信端末2の複数のアンテナ22のそれぞれについて、当該アンテナ22から送信されるデータ信号に対してビームを向けるとともに、当該アンテナ22以外の他のアンテナ22から送信されるデータ信号に対してヌルを向ける必要がある。
しかしながら、通信端末2では、MIMO方式が使用される際には、上述のように参照信号の送信態様とデータ信号の送信態様とが異なっていることから、基地局1が、通信端末2から送信される参照信号に基づいて複数のアンテナ12での受信指向性に関してヌルステアリングを行ったとしても、通信端末2が備える複数のアンテナ22のそれぞれについて、当該アンテナ22から送信されるデータ信号に対してビームを向けるとともに、当該アンテナ22以外の他のアンテナ22から送信されるデータ信号にヌルを向けることはできない。よって、基地局1では、通信端末2がMIMO方式を用いて送信するデータ信号を、アダプティブアレイアンテナ方式を用いて適切に受信することができない。
そこで、本変形例では、基地局1は、通信端末2が基地局1への送信にMIMO方式を使用する場合には、通信端末2からのデータ信号をアダプティブアレイアンテナ方式を用いて受信しないようにしている。これにより、基地局1は、通信端末2がMIMO方式を使用して送信する信号を適切に受信することができる。その結果、基地局1と通信端末2との間での通信性能を向上することができる。
なお、本変形例においても、第1変形例と同様に、基地局1は、通信端末2からの受信信号での干渉強度が大きい場合であって、かつ当該通信端末2からの信号についての受信品質が良好でない(悪い)場合に当該通信端末2が送信にMIMO方式を使用することを禁止し、通信端末2からの受信信号での干渉強度が大きい場合であっても、当該通信端末2からの信号についての受信品質が良好である場合には当該通信端末2が送信にMIMO方式を使用することを禁止しなくても良い。
このように、通信端末2からの受信信号での干渉強度が大きい場合であっても、当該通信端末2からの信号についての受信品質が良好である場合には、当該通信端末2が送信にMIMO方式を使用することを禁止しないことによって、通信端末2からの信号についての受信品質が良好であるにもかかわらず、当該通信端末2が信号の送信にMIMO方式を使用することが禁止されることを防止することができる。よって、通信端末2ではより適切にMIMO方式を使用することができ、基地局1と通信端末2との間の通信品質がさらに向上する。
また本変形例においても、第2変形例と同様に、通信端末2が送信にMIMO方式を使用する場合には、基地局1は、チャネル行列を求めるための参照信号を通信端末2から受信する際に、アダプティブアレイアンテナ方式を使用しても良い。この場合には、まず、基地局1の受信処理部141は、通信端末2からの参照信号に基づいて、アレイアンテナ13での受信指向性を制御するための複数の受信ウェイトを算出する。そして、受信処理部141は、算出した複数の受信ウェイトを、複数のアンテナ12で受信された複数の参照信号にそれぞれ設定する。その後、受信処理部141は、複数の受信ウェイトが設定された複数の参照信号を合成してアレイ受信参照信号を生成する。これにより、通信部15では、複数のアンテナ12での受信指向性に関してヌルステアリング及びビームフォーミングが行われて通信端末2からの参照信号が受信される。
その後、受信処理部141は、生成したアレイ受信参照信号に基づいて、つまり、アダプティブアレイアンテナ方式を用いて受信された参照信号に基づいて、基地局1と通信端末2との間の伝送路での所望波のチャネル行列を推定する。所望波のチャネル行列の推定には、上記の式(4)を用いることができる。
受信処理部141は、所望波のチャネル行列を推定すると、当該チャネル行列を用いて、通信端末2からのデータ信号に対して復調処理等の受信処理を行う。これにより、基地局1では、通信端末2が送信するユーザデータ及び制御データが取得される。
このように、基地局1が、複数のアンテナ12での受信指向性に関してヌルステアリングを行って通信端末2からの参照信号を受信することによって、それに含まれる干渉波の強度が小さい参照信号に基づいて所望波のチャネル行列を推定することができる。よって、精度の高いチャネル行列を得ることができ、当該チャネル行列を用いて通信端末2からのデータ信号に対して受信処理を行うことができる。その結果、通信端末2からのデータ信号に含まれるデータを適切に取得することができる。