JP2013029046A - 車両の消音装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】安価で軽量でありながらも、排気音を効果的に抑制することのできる車両の消音装置を提供する。
【解決手段】サブマフラー1の内部に形成された膨張室2は、排気管3から分岐された2つの共鳴パイプ4,5の先端に設けられた開口6,7を通じて外部に開放されている。そして開口6を、膨張室2のマフラー前後方向の一端から同膨張室2のマフラー前後方向の長さLの2分の1の長さ分離れた位置に配置し、開口7を、同一端から長さLの4分の1の長さ分離れた位置に配置することで、膨張室2で発生するマフラー前後方向の気柱共鳴に対しての消音効果が発揮されるようにした。
【選択図】図2

Description

本発明は、マフラーと、そのマフラーの内部に形成された膨張室と、を備える車両の消音装置に関する。
車両の消音装置として、内燃機関の排気系の途中に設けられるマフラーがある。マフラーの内部には、その内部で排ガスを膨張させることで消音を行う、複数又は単数の膨張室が形成されている。
ここで、図7に示すような、マフラー前後方向の長さが「L」の膨張室が内部に形成されたマフラーを考える。こうしたマフラーでは、膨張室のマフラー前後方向の両端を閉口端とする気柱共鳴が発生して、マフラーの消音性能を低下させる。マフラー前後方向で気柱共鳴を起す定常波の波長λは、「2L/n(n:1以上の整数)」となる。また音速を「C(≒20×√T,T:マフラー内のガス温度)」とすると、そうした気柱共鳴の周波数fは、「C×m/2L(m:1以上の整数)」となる。こうした気柱共鳴のうち、最も顕著に表れるのは、マフラー前後方向の膨張室の長さLの2倍を波長λ(=2L)とする定常波(マフラー内1節共鳴モード)と、マフラー前後方向の膨張室の長さLを波長λ(=L)とする定常波(マフラー内2節共鳴モード)との2つの定常波となる。
従来においては、こうしたマフラー前後方向の気柱共鳴のような高周波の排気音への対策としては、例えばマフラーの容量を拡大したり、特許文献1に見られるようにマフラー内部に吸音材を設置したりすることがなされている。
特開2009−062922号公報
吸音材を設けたり、マフラーの容量を拡大したりすれば、排気音の増大を抑制することが確かに可能ではある。しかしながら、吸音材を設けたり、マフラーの容量を拡大したりすれば、コストの増大やマフラー質量の増大は避けられないことになる。したがって、より安価で軽量な車両消音装置の実現が求められている。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、安価で軽量でありながらも、排気音を効果的に抑制することのできる車両の消音装置を提供することにある。
(発明の解決原理)
ここでまず、上記課題についての本発明の解決原理を説明する。ここでは、図1(a)、(b)に示すような、マフラー50の内部に形成された、マフラー前後方向の長さが「L」の膨張室51に、そのマフラー前後方向の一端(同図では図中左側の端)から長さLの4分の1の長さ(L/4)分離れた位置と、同一端から長さLの2分の1の長さ(L/2)分離れた位置とにそれぞれに、膨張室51を外部に開放する開口52、53が配置された場合を考える。
こうしたマフラー50には、そのマフラー前後方向において、膨張室51のマフラー前後方向の長さLの2倍を波長λ(=2L)とする定常波と、膨張室51のマフラー前後方向の長さLを波長λ(=L)とする定常波との2つの定常波による気柱共鳴が発生する。すなわち、こうしたマフラー50では、膨張室51のマフラー前後方向の長さLの2倍を波長λとするマフラー内1節共鳴モードと、膨張室51のマフラー前後方向の長さLを波長λとするマフラー内2節共鳴モードとの2つのモードによる共鳴が発生する。
ここで開口53を中心に考えると、図1(a)に示すように、その開口53よりも左側の空間は、開口52を通じて外部に開かれた空間となる。これに対して、図中にハッチングで示された、開口53よりも図中左側の空間は、外部に開放されない閉じた空間となる。こうした閉空間は、長さL/2の音響管として機能する。そしてこうした音響管は、波長λ=2Lの気柱共鳴に対して、逆位相の定常波を共振により発生して吸音効果を発揮する(1/2位置開放端の共鳴モード)。
一方、開口52を中心に考えると、図1(b)に示すように、その開口52よりも右側の空間は、開口53を通じて外部に開かれた空間となる。これに対して、図中にハッチングで示された、開口52よりも左側の空間は、外部に開放されない閉じた空間となる。こうした閉空間は、長さL/4の音響管として機能する。そしてこうした音響管は、波長λ=Lの気柱共鳴に対して、逆位相の定常波を共振により発生して吸音効果を発揮する(1/4位置開放端の共鳴モード)。
このように、上記位置に開口52、53の形成されたマフラー50の膨張室51では、そのマフラー前後方向の気柱共鳴のうち、最も顕著に表れる波長λ=2Lの気柱共鳴及び波長λ=Lの気柱共鳴に対しての吸音効果を発揮する。そのため、膨張室51のマフラー前後方向の一端からその長さLの4分の1の長さ分離れた位置とその端から長さLの2分の1の長さ分離れた位置とに外部に通じる開口52、53が形成されたマフラー50によれば、マフラー前後方向の気柱共鳴に起因した排気音の増大を効果的に抑制することができる。
(課題を解決するための手段)
上記課題を解決するため、マフラーと、そのマフラーの内部に形成された膨張室とを備える車両の消音装置としての請求項1に記載の発明は、膨張室のマフラー前後方向の一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの4分の1の長さ分離れた位置と、同一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの2分の1の長さ分離れた位置とにそれぞれ配置された開口を通じて膨張室を外部に開放させている。
上記構成では、マフラー前後方向の一端からマフラー前後方向の長さLの4分の1の長さ(L/4)分離れた位置と、その一端から長さLの2分の1の長さ(L/2)分離れた位置とに設けられた開口を通じて膨張室が外部に開放されている。上述したように、こうしたマフラーの膨張室は、そのマフラー前後方向の気柱共鳴の内、最も顕著に表れる波長λ=2Lの気柱共鳴及び波長λ=Lの気柱共鳴に対して吸音効果を発揮する。そのため、吸音材を設けたり、マフラーの容積を拡大したりせずとも、マフラー前後方向の気柱共鳴に起因した排気音の増大が効果的に抑制されるようになる。したがって、上記構成によれば、安価で軽量でありながらも、排気音を効果的に抑制することができる。
また上記課題を解決するため、マフラーと、そのマフラーの内部に形成された膨張室とを備える車両の消音装置としての請求項2に記載の発明は、膨張室を、その内部に配置された複数の開口を通じて外部に開放させるとともに、その膨張室のマフラー前後方向の一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの4分の1の長さ分離れた位置に開口の一部を配置し、同一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの2分の1の長さ分離れた位置に開口の残りのものを配置している。
上記構成では、マフラー前後方向の一端からマフラー前後方向の長さLの4分の1の長さ(L/4)分離れた位置と、その一端から長さLの2分の1の長さ(L/2)分離れた位置とに設けられた開口を通じて膨張室が外部に開放されるようになる。上述したように、こうしたマフラーの膨張室は、そのマフラー前後方向の気柱共鳴の内、最も顕著に表れる波長λ=2Lの気柱共鳴及び波長λ=Lの気柱共鳴に対して吸音効果を発揮する。そのため、吸音材を設けたり、マフラーの容積を拡大したりせずとも、マフラー前後方向の気柱共鳴に起因した排気音の増大が効果的に抑制されるようになる。したがって、上記構成によれば、安価で軽量でありながらも、排気音を効果的に抑制することができる。
なお、請求項3によるように、マフラーに設けられた複数の膨張室の全てにおいて、上記のような開口の配置を行えば、膨張室の全てにおいてマフラー前後方向の気柱共鳴を効果的に消音することができる。
更に上記課題を解決するため、マフラーと、そのマフラーの内部に形成された膨張室と、その膨張室をマフラー前後方向に貫通して設けられた排気管と、その排気パイプから分岐された2つの共鳴パイプと、を備える車両の消音装置としての請求項4に記載の発明は、共鳴パイプの一方が、膨張室のマフラー前後方向の一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの4分の1の長さ分離れた位置にて膨張室の内部に開口され、共鳴パイプの他方が、上記一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの2分の1の長さ分離れた位置にて膨張室の内部に開口されている。
上記構成では前後方向の一端からマフラー前後方向の長さLの4分の1の長さ(L/4)分離れた位置と、その一端から長さLの2分の1の長さ(L/2)分離れた位置とにそれぞれ設けられた共鳴パイプの開口を通じて膨張室が外部に開放されるようになる。上述したように、こうしたマフラーの膨張室は、そのマフラー前後方向の気柱共鳴の内、最も顕著に表れる波長λ=2Lの気柱共鳴及び波長λ=Lの気柱共鳴に対して吸音効果を発揮する。そのため、吸音材を設けたり、マフラーの容積を拡大したりせずとも、マフラー前後方向の気柱共鳴に起因した排気音の増大が効果的に抑制されるようになる。したがって、上記構成によれば、安価で軽量でありながらも、排気音を効果的に抑制することができる。
また上記課題を解決するため、マフラーと、そのマフラーの内部に形成された膨張室と、その膨張室をマフラー前後方向に貫通して設けられた排気パイプと、を備える車両の消音装置としての請求項5に記載の発明は、膨張室のマフラー前後方向の一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの4分の1の長さ分離れた位置と、同一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの2分の1の長さ分離れた位置との間を、排気パイプの内部を膨張室に連通する共鳴孔の形成区間とするようにしている。
上記構成では、その膨張室は、マフラー前後方向の一端からマフラー前後方向の長さLの4分の1の長さ(L/4)分離れた位置と、その一端から長さLの2分の1の長さ(L/2)分離れた位置とにおいて、外部に開放されるようになる。上述したように、こうしたマフラーの膨張室は、そのマフラー前後方向の気柱共鳴の内、最も顕著に表れる波長λ=2Lの気柱共鳴及び波長λ=Lの気柱共鳴に対して吸音効果を発揮する。そのため、吸音材を設けたり、マフラーの容積を拡大したりせずとも、マフラー前後方向の気柱共鳴に起因した排気音の増大が効果的に抑制されるようになる。したがって、上記構成によれば、安価で軽量でありながらも、排気音を効果的に抑制することができる。
(a)(b)マフラーの膨張室で音響管として機能する閉空間の形成態様を示す断面図と、その膨張室内で発生する定常波及びその閉空間により発生される定常波の波形を示すグラフとを併せ示す図。 本発明の第1の実施の形態にかかる車両の消音装置について、(a)はその平面断面構造を示す断面図であり、(b)は同図(a)のB−B線に沿った正面断面構造を示す断面図であり、(c)はその内部で発生される定常波の波形を示すグラフである。 同実施の形態の車両の消音装置の各波長における消音量を、開口の位置が最適化されていない場合と比較して示すグラフ。 本発明の第2の実施の形態にかかる車両の消音装置について、(a)はその平面断面構造を示す断面図であり、(b)は同図(a)のB−B線に沿った正面断面構造を示す断面図である。 本発明の第3の実施の形態にかかる車両の消音装置について、(a)はその平面断面構造を示す断面図であり、(b)はその正面断面構造を示す断面図である。 (a)、(b)同実施の形態のマフラーの各膨張室における開口及び連通孔の配置を示す図。 従来の車両の消音装置のマフラーの構成と、そのマフラーの膨張室で発生する定常波の波形とを併せ示す図。
(第1の実施の形態)
以下、本発明の車両の消音装置を具体化した第1の実施の形態を、図2及び図3を参照して詳細に説明する。
まず、図2を参照して、本実施の形態の車両の消音装置の構成を説明する。本実施の形態の車両の消音装置は、図2(a)及び(b)に示すサブマフラー1を備えている。このサブマフラー1は、排気管のメインマフラーの排気上流側又は排気下流側に設置される。サブマフラー1の内部には、マフラー前後方向の長さが「L」の膨張室2が形成されている。
サブマフラー1には、膨張室2をマフラー前後方向に貫通するように排気管3が通されている。膨張室2内において排気管3からは、2つの共鳴パイプ4,5が分岐されている。共鳴パイプ4は、膨張室2の後端(図中右端)から上記長さLの2分の1の長さ(L/2)分離れた位置まで延伸され、その位置に形成された開口6を通じて膨張室2内に開放されている。一方、共鳴パイプ5は、膨張室2の後端から上記長さLの4分の1の長さ(L/4)分離れた位置まで延伸され、その位置に形成された開口7を通じて膨張室2内に開放されている。
次に、こうした本実施の形態の車両の消音装置の作用を説明する。以上のように構成されたサブマフラー1の膨張室2は、同膨張室2の後端から上記長さLの4分の1の長さ分離れた位置と、同後端から上記長さLの2分の1の長さ分離れた位置とにそれぞれ配置された開口6,7を通じて外部に開放されている。上述したように、こうした膨張室2を開口6を中心として見た場合には、長さL/2の音響管として機能する閉空間が形成され、開口7を中心として見た場合には、長さL/4の音響管として機能する閉空間が形成されることになる。そのため、こうした膨張室2では、長さLの2倍を波長λとするマフラー内1節共鳴モードと、膨張室51のマフラー前後方向の長さLを波長λとするマフラー内2節共鳴モードとの2つのモードによる気柱共鳴に対する消音効果が発揮される。
なお、下式(1)は、2箇所の開放端を有する膨張室2の消音特性を示す数式である。下式(1)の左辺は、サブマフラー1の消音特性を表し、右辺第1項は、膨張室2の閉空間としての消音性能を表している。また右辺第2項及び第3項は、開口から閉口端までの閉空間により形成される音響管の消音特性を表している。
Figure 2013029046
図3は、上式(1)から導かれるサブマフラー1における音響の周波数と消音量との関係を示している。上式(1)のLa、Lbが適切にチューニングされていない場合、同図に一点鎖線で示すように、周波数A,Bにおいて消音量が大きく低下する。この周波数A,Bは、膨張室2のマフラー前後方向の長さLの2倍を振幅とするマフラー内1節共鳴モードの気柱共鳴の周波数、及び同長さLを振幅とするマフラー内2節共鳴モードの気柱共鳴の周波数となっている。
一方、上式(1)のLaを膨張室2のマフラー前後方向の長さLの2分の1に、Lbを膨張室2のマフラー前後方向の長さLの4分の1に設定した場合には、同図に太実線で示すように、消音量が大きく落ち込む領域がなくなる。これは、マフラー内1節共鳴モード及びマフラー内2節共鳴モードの気柱共鳴の周波数と、閉空間により形成される音響管の消音効果が発揮される周波数とが一致することによる。なお、膨張室2の内部を両端が閉口した空間としたときの共鳴周波数は、下式(2)に示すようになり、片側のみが閉口した空間としたときの共鳴周波数は、下式(3)及び下式(4)に示すようになる。これらの式から明らかなように、「La=L/2」、「Lb=L/4」とすれば、両端閉口端の共鳴周波数と方端閉口端の共鳴周波数とが一致し、気柱共鳴による定常波が低減されることになる。
Figure 2013029046
以上の本実施の形態の車両の消音装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、膨張室2のマフラー前後方向の一端から同膨張室2のマフラー前後方向の長さLの4分の1の長さ分離れた位置と、同一端から同膨張室2のマフラー前後方向の長さLの2分の1の長さ分離れた位置とにそれぞれ配置された開口6,7を通じて膨張室2が外部に開放されている。そのため、吸音材を設けたり、マフラーの容積を拡大したりせずとも、マフラー前後方向の気柱共鳴に起因した排気音の増大が効果的に抑制されるようになる。したがって、本実施の形態によれば、安価で軽量でありながらも、排気音を効果的に抑制することができる。
(2)本実施の形態では、膨張室2を、その内部に配置された2つの開口6,7を通じて外部に開放している。そして膨張室2のマフラー前後方向の一端から同膨張室2のマフラー前後方向の長さLの4分の1の長さ分離れた位置にそれら開口の一つ(開口7)を配置し、同一端から同膨張室2のマフラー前後方向の長さLの2分の1の長さ分離れた位置にそれら開口の残りのもの(開口6)を配置している。そのため、吸音材を設けたり、マフラーの容積を拡大したりせずとも、マフラー前後方向の気柱共鳴に起因した排気音の増大が効果的に抑制されるようになる。したがって、本実施の形態によれば、安価で軽量でありながらも、排気音を効果的に抑制することができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の車両の消音装置を具体化した第2の実施の形態を、図4を参照して詳細に説明する。
まず、図4を参照して、本実施の形態の車両の消音装置の構成を説明する。本実施の形態の車両の消音装置は、図4(a)及び(b)に示すサブマフラー10を備えている。このサブマフラー10は、排気管のメインマフラーの排気上流側又は排気下流側に設置される。サブマフラー10の内部には、マフラー前後方向の長さが「L」の膨張室11が形成されている。
サブマフラー10には、その膨張室11をマフラー前後方向に貫通するように排気管12が通されている。膨張室2の後端(図中右端)から上記長さLの2分の1の長さ(L/2)分離れた位置から同後端から上記長さLの4分の1の長さ(L/4)分離れた位置までの区間における排気管12には、多数の共鳴孔13が形成されている。こうした共鳴孔13の形成区間においては、排気管12の内部は、膨張室11と連通された一体の空間となる。したがって、膨張室11は、その後端からそのマフラー前後方向の長さLの4分の1の長さ(L/4)分離れた位置と、同後端から長さLの2分の1の長さ(L/2)分離れた位置とにおいて、外部に開放されることになる。
こうしたサブマフラー10は、そのマフラー前後方向の気柱共鳴の内、最も顕著に表れる波長λ=2Lの気柱共鳴及び波長λ=Lの気柱共鳴に対して吸音効果を発揮する。そのため、吸音材を設けたり、マフラーの容積を拡大したりせずとも、マフラー前後方向の気柱共鳴に起因した排気音の増大が効果的に抑制されるようになる。したがって、本実施の形態の車両の消音装置によれば、安価で軽量でありながらも、排気音を効果的に抑制することができる。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の車両の消音装置を具体化した第3の実施の形態を、図5及び図6を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態の車両の消音装置は、図5(a),(b)に示すようなマフラー40を備えている。このマフラー40は、メインマフラーとして用いられ、高さに対して幅が大となる扁平形状に形成されている。
図5(a)、(b)に示すように、マフラー40の内部は、仕切り板41によって、第1膨張室42及び第2膨張室43の2つの空間に区画されている。なお、各膨張室42,43は、マフラー40の前後方向の長さが同マフラー40の幅Wの4分の1以上となるように形成されている。
こうしたマフラー40の内部に排気を導入する、円管形状の入口パイプ44は、その先端が仕切り板41を貫通して第2膨張室43に開口するように配設されている。またマフラー40から排気を導出する、円管形状の出口パイプ45は、仕切り板41を貫通した後、マフラー40の幅方向(図中上方向)に屈曲されており、その先端は、第1膨張室42に開口されている。そして、入口パイプ44の開口44aは、その図中下側の端が、マフラー40の幅方向の一端(図中上側の端)から同マフラー40の幅Wの2分の1の長さ分離れた位置に接するように配置されている。また出口パイプ45の開口45aは、マフラー40の幅方向の一端(図中上側の端)から同マフラー40の幅Wの2分の1の長さ分離れた位置に配置されている。
またこのマフラー40では、入口パイプ44の開口44aは、仕切り板41から、マフラー前後方向における第2膨張室43の長さLbの2分の1の長さ(Lb/2)分離れた位置に配置されている。また出口パイプ45の開口45aは、その図中左方の端が、マフラー40の先端から、マフラー前後方向における第1膨張室42の長さLaの4分の1の長さ(La/4)分離れた位置に配置されている。
一方、このマフラー40の仕切り板41には、これを貫通するように、円管形状の連通管46が配設されている。連通管46は、マフラー40の幅方向において、その図中上側の端が、マフラー40の図中上側の端から幅Wの4分の1の長さ(W/4)分離れた位置に接するように配置されている。また連通管46のマフラー前方(図中左方)の開口46aは、マフラー40の先端から、マフラー前後方向における第1膨張室42の長さLaの2分の1の長さ(La/2)分離れた位置に配置されている。更に、連通管46のマフラー後方(図中右方)の開口46bは、仕切り板41から、マフラー前後方向における第2膨張室43の長さLbの4分の1の長さ(Lb/4)分離れた位置に配置されている。
図6(a)に示すように、このマフラー40の第1膨張室42は、同マフラー40の幅方向における図中右側の端から幅Wの4分の1の長さ分離れた位置に接するように配置された連通管46の開口46aと、同端から幅Wの2分の1の長さ分離れた位置に配置された出口パイプ45の開口45aとによって外部に開放されている。また図6(b)に示すように、このマフラー40の第2膨張室43は、同マフラー40の幅方向における図中右側の端から幅Wの4分の1の長さ分離れた位置に接するように配置された連通管46の開口46bと、同端から幅Wの2分の1の長さ分離れた位置に接するように配置された入口パイプ44の開口44aとによって外部に開放されている。
以上のように、このマフラー40では、各膨張室42,43は、マフラー長さ方向の一端からそれらの長さLa,Lbの4分の1の長さ分離れた位置と、同一端から長さLa,Lbの2分の1の長さ分離れた位置とにそれぞれ配設された開口を通じて外部に開放されている。こうしたマフラー40では、各膨張室42,43のマフラー長さ方向の気柱共鳴に対しての吸音効果が発揮される。そのため、本実施の形態によれば、マフラー長さ方向の気柱共鳴に起因した排気音の増大を効果的に抑制することができる。
また高さに対して幅が大となる扁平形状のマフラー40の各膨張室42,43では、そのマフラー幅方向において、波長λをマフラー50の幅Wの2倍とする定常波(λ=2W)と、波長λをマフラー50の幅Wと等しくする定常波(λ=W)との2つの定常波による気柱共鳴が発生する。
ここで各膨張室42,43のマフラー幅方向の一端からその幅Wの4分の1の長さ分離れた位置に配設された開口45a,46a,46bを中心に考えると、各膨張室42,43のそれら開口45a,46a,46bよりも図中下方の部分は、開口44a,45aを通じて外部に開かれた空間となる。これに対して、それら開口45a,46a,46bよりも図中上方の空間は、外部に開放されない閉じた空間となる。こうした閉空間は、長さW/4の音響管として機能する。そしてこうした音響管は、波長λ=Wの気柱共鳴に対して、逆位相の定常波を共振により発生して吸音効果を発揮する。
一方、各膨張室42,43のマフラー幅方向の一端からその幅Wの2分の1の長さ分離れた位置に配設された開口44a,45aを中心に考えると、各膨張室42,43のそれら開口44a,45aよりも図中上方の部分は、開口45a,46a,46bを通じて外部に開かれた空間となる。これに対して、それら開口44a,45aよりも図中下方の空間は、外部に開放されない閉じた空間となる。こうした閉空間は、長さW/2の音響管として機能する。そしてこうした音響管は、波長λ=2Wの気柱共鳴に対して、逆位相の定常波を共振により発生して吸音効果を発揮する。
こうしたマフラー40の各膨張室42,43では、その長さ方向の気柱共鳴に対しての吸音効果と同様の原理により、各膨張室42,43のマフラー幅方向の気柱共鳴に対しての吸音効果が発揮される。そのため、本実施の形態によれば、マフラー幅方向の気柱共鳴に起因した排気音の増大についても効果的に抑制することができる。
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・第3の実施の形態では、マフラー40の幅方向の一端からその幅Wの4分の1の長さ分離れた位置と同一端から同幅Wの2分の1の長さ分離れた位置とに設けられた開口を通じて各膨張室42,43を外部に開放する構成とすることで、マフラー幅方向の気柱共鳴に起因した排気音の増大を抑えるようにしていた。もっとも、各膨張室42,43のマフラー幅方向の気柱共鳴に起因した排気音が問題とならないのであれば、マフラー幅方向における開口の配置を異なった配置としても良い。
・第1、第2の実施の形態では、マフラー(サブマフラー1、10)の後端から長さLの4分の1の長さ分離れた位置に開口を設けるようにしていたが、それらの開口をマフラーの先端から長さLの4分の1の長さ分離れた位置に設けるようにしても、同様の作用効果を奏することができる。
・マフラーに形成される膨張室の数は、任意に変更しても良い。いずれにせよ、膨張室のマフラー前後方向の一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの4分の1の長さ分離れた位置と、同一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの2分の1の長さ分離れた位置とにそれぞれ配置された開口を通じて膨張室を外部に開放する構成とすれば、マフラー長さ方向の気柱共鳴に起因した排気音の増大を抑えることができる。なお、そうした開口の配置は、マフラーに設けられるすべての膨張室に採用することが望ましいが、膨張室の一部でマフラー前後方向の気柱共鳴が問題とならないのであれば、そうした膨張室では、上記以外の開口の配置を採用するようにしても良い。
・マフラーの膨張室や管等の数や配置、形状は、適宜に変更しても良い。いずれにせよ、膨張室のマフラー前後方向の一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの4分の1の長さ分離れた位置と、同一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの2分の1の長さ分離れた位置とにそれぞれ配置された開口を通じて膨張室を外部に開放する構成とすれば、マフラー長さ方向の気柱共鳴に起因した排気音の増大を抑えることができる。
1…サブマフラー、2…膨張室、3…排気管、4…共鳴パイプ、5…共鳴パイプ、6…開口、7…開口、10…サブマフラー、11…膨張室、12…排気管、13…共鳴孔、40…マフラー、41…仕切り板、42…第1膨張室、43…第2膨張室、44…入口パイプ、44a…開口、45…出口パイプ、45a…開口、46…連通管、46a…開口、46b…開口、50…マフラー、51…膨張室、52…開口、53…開口。

Claims (5)

  1. マフラーと、そのマフラーの内部に形成された膨張室とを備える車両の消音装置において、
    前記膨張室のマフラー前後方向の一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの4分の1の長さ分離れた位置と、同一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの2分の1の長さ分離れた位置とにそれぞれ配置された開口を通じて前記膨張室が外部に開放されてなる
    ことを特徴とする車両の消音装置。
  2. マフラーと、そのマフラーの内部に形成された膨張室とを備える車両の消音装置において、
    前記膨張室は、その内部に配置された複数の開口を通じて外部に開放されるとともに、前記膨張室のマフラー前後方向の一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの4分の1の長さ分離れた位置に前記開口の一部が配置され、同一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの2分の1の長さ分離れた位置に前記開口の残りのものが配置されてなる
    ことを特徴とする車両の消音装置。
  3. 前記マフラーには、前記膨張室が複数設けられ、その全ての膨張室において、前記開口の配置がなされてなる
    請求項1又は2に記載の車両の消音装置。
  4. マフラーと、そのマフラーの内部に形成された膨張室と、その膨張室をマフラー前後方向に貫通して設けられた排気管と、その排気パイプから分岐された2つの共鳴パイプと、を備える車両の消音装置において、
    前記共鳴パイプの一方は、前記膨張室のマフラー前後方向の一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの4分の1の長さ分離れた位置にて前記膨張室の内部に開口され、前記共鳴パイプの他方は、前記一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの2分の1の長さ分離れた位置にて前記膨張室の内部に開口されてなる
    ことを特徴とする車両の消音装置。
  5. マフラーと、そのマフラーの内部に形成された膨張室と、その膨張室をマフラー前後方向に貫通して設けられた排気パイプと、を備える車両の消音装置において、
    前記膨張室のマフラー前後方向の一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの4分の1の長さ分離れた位置と、同一端から同膨張室のマフラー前後方向の長さの2分の1の長さ分離れた位置との間が、前記排気パイプの内部を前記膨張室に連通する共鳴孔の形成区間とされてなる
    ことを特徴とする車両の消音装置。
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