(第1実施形態)
以下、図面を用いて第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図であり、図2は、車両用空調装置1の電気制御部の構成を示すブロック図である。本実施形態では、この車両用空調装置1を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用している。
本実施形態のハイブリッド車両は、車両停車時に外部電源(商用電源)から供給された電力をバッテリ81に充電することのできるプラグインハイブリッド車両として構成されている。
このプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停車時に外部電源からバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをEV運転モードという。
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量SOCが走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをHV運転モードという。
より詳細には、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンEGを作動させて走行用電動モータを補助する。つまり、走行用電動モータから出力される走行用の駆動力(モータ側駆動力)がエンジンEGから出力される走行用の駆動力(内燃機関側駆動力)よりも大きくなる運転モードである。
換言すると、内燃機関側駆動力に対するモータ側駆動力の駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より大きくなっている運転モードであると表現することもできる。
一方、HV運転モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。つまり、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなる運転モードである。換言すると、駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より小さくなっている運転モードであると表現することもできる。
本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、このようにEV運転モードとHV運転モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。また、このようなEV運転モードとHV運転モードとの切り替え、および、駆動力比の制御は、後述する駆動力制御装置70によって制御される。
さらに、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給できる。
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、図1に示す冷凍サイクル10、室内空調ユニット30、図2に示す空調制御装置50、シート空調装置90等を備えている。まず、室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、蒸発器15、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替手段としての内外気切替箱20が配置されている。
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整して、ケーシング31内へ導入させる内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。
従って、内外気切替ドア23は、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドア23は、内外気切替ドア23用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、吸込口モードとしては、内気導入口21を全開とするとともに外気導入口22を全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口21を全閉とするとともに外気導入口22を全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風手段である送風機32(ブロア)が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。従って、この電動モータは、送風機32の送風能力変更手段を構成している。
送風機32の空気流れ下流側には、蒸発器15が配置されている。蒸発器15は、その内部を流通する冷媒と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて、送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能するものである。具体的には、蒸発器15は、圧縮機11、凝縮器12、気液分離器13および膨張弁14等とともに、蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を構成している。
圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。
また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
凝縮器12は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン12aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮機11吐出冷媒を凝縮させる室外熱交換器である。送風ファン12aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
気液分離器13は、凝縮器12にて凝縮された冷媒を気液分離して余剰冷媒を蓄えるとともに、液相冷媒のみを下流側に流すレシーバである。膨張弁14は、気液分離器13から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器15は、膨張弁14にて減圧膨張された冷媒を蒸発させて、冷媒に吸熱作用を発揮させる室内熱交換器である。これにより、蒸発器15は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能する。
また、ケーシング31内において、蒸発器15の空気流れ下流側には、蒸発器15通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
加熱用冷風通路33には、蒸発器15通過後の空気を加熱するためのヒータコア36およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順に配置されている。ヒータコア36は、エンジンEGを冷却するエンジン冷却水(以下、単に冷却水という。)と蒸発器15通過後の送風空気とを熱交換させて、蒸発器15通過後の送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。
具体的には、ヒータコア36とエンジンEGは、冷却水配管によって接続されて、ヒータコア36とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路40が構成されている。そして、この冷却水回路40には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプ40aが配置されている。この冷却水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環流量)が制御される電動式の水ポンプである。
PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア36通過後の空気を加熱する補助加熱手段としての電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
より具体的には、このPTCヒータ37は、図3に示すように、複数(本実施形態では、3本)のPTCヒータ37a、37b、37cから構成されている。なお、図3は、本実施形態のPTCヒータ37の電気的接続態様を示す回路図である。
図3に示すように、各PTCヒータ37a、37b、37cの正極側はバッテリ81側に接続され、負極側は各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各スイッチ素子SW1、SW2、SW3を介して、グランド側へ接続されている。各スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各PTC素子h1、h2、h3の通電状態(ON状態)と非通電状態(OFF状態)とを切り替えるものである。
さらに、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、独立して制御される。従って、空調制御装置50は、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の通電状態と非通電状態とを独立に切り替えることによって、各PTCヒータ37a、37b、37cのうち、通電状態となり加熱能力を発揮するものを切り替えて、PTCヒータ37全体としての加熱能力を変化させることができる。
一方、冷風バイパス通路34は、蒸発器15通過後の空気を、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
そこで、本実施形態では、蒸発器15の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア39を配置している。従って、エアミックスドア39は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。
より具体的には、エアミックスドア39は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動される回転軸と、その一端側に回転軸が連結された板状のドア本体部を有して構成される、いわゆる片持ちドアで構成されている。また、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口24〜26が配置されている。この吹出口24〜26としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口24、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口25、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口26が設けられている。
また、フェイス吹出口24、フット吹出口25、およびデフロスタ吹出口26の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口24の開口面積を調整するフェイスドア24a、フット吹出口25の開口面積を調整するフットドア25a、デフロスタ吹出口26の開口面積を調整するデフロスタドア26aが配置されている。
これらのフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口24を全開してフェイス吹出口24から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口24とフット吹出口25の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口25を全開するとともにデフロスタ吹出口26を小開度だけ開口して、フット吹出口25から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口25およびデフロスタ吹出口26を同程度開口して、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
さらに、乗員が後述する操作パネル60のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
また、本実施形態の車両用空調装置1では、図示しない電熱デフォッガを備えている。電熱デフォッガは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行う窓ガラス加熱手段である。この電熱デフォッガについても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、乗員が着座する座席の表面温度を上昇させる補助加熱手段としてのシート空調装置90を備えている。具体的には、このシート空調装置90は、座席表面に埋め込まれた電熱線で構成され、電力を供給されることによって発熱するシート加熱手段である。
そして、室内空調ユニット10の各吹出口24〜26にから吹き出される空調風によって車室内の暖房が不十分となり得る際に作動させて乗員の暖房感を補う機能を果たす。なお、このシート空調装置90は、空調制御装置50から出力される制御信号によって作動が制御され、作動時には座席の表面温度を約40℃程度となるまで上昇させるように制御される。
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50および駆動力制御装置70は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
駆動力制御装置70の出力側には、エンジンEGを構成する各種エンジン構成機器および走行用電動モータへ交流電流を供給する走行用インバータ等が接続されている。各種エンジン構成機器としては、具体的に、エンジンEGを始動させるスタータ、エンジンEGに燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路(いずれも図示せず)等が接続されている。
また、駆動力制御装置70の入力側には、バッテリ81の端子間電圧VBを検出する電圧計、バッテリ81へ流れ込む電流ABinあるいはバッテリ81から流れる電流ABoutを検出する電流計、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ、車速Vvを検出する車速センサ(いずれも図示せず)等の種々のエンジン制御用のセンサ群が接続されている。
空調制御装置50の出力側には、送風機32、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、送風ファン12a、各種電動アクチュエータ62、63、64、第1〜第3PTCヒータ37a、37b、37c、冷却水ポンプ40a、シート空調装置90等が接続されている。
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51(車室内温度検出手段)、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53(日射量検出手段)、圧縮機11吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、蒸発器15からの吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、エンジンEGから流出した冷却水の冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ58(冷却水温度検出手段)、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度検出手段としての湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサ等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に蒸発器15の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、蒸発器15のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、蒸発器15を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。また、湿度センサ、窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度センサの検出値は、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために用いられる。
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、オートスイッチ、運転モードの切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ、エコノミースイッチ、現在の車両用空調装置1の作動状態等を表示する表示部等が設けられている。
オートスイッチは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定手段である。車室内温度設定スイッチは、乗員の操作によって車室内目標温度Tsetを設定する目標温度設定手段である。また、エコノミースイッチは、乗員の投入操作によって車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段である。
さらに、エコノミースイッチを投入することにより、EV運転モード時に、走行用電動モータを補助するために作動させるエンジンEGの作動頻度を低下させる信号が駆動力制御装置70に出力される。以下では、エコノミースイッチが投入されている状態をエコモードと言う。
また、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、電気的に接続されて通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50が駆動力制御装置70へエンジンEGの要求信号を出力することによって、エンジンEGを作動させること、あるいは、エンジンEGの回転数を変化させることができる。
なお、空調制御装置50および駆動力制御装置は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
例えば、空調制御装置50のうち、圧縮機11の電動モータ11bに接続されたインバータ61から出力される交流電圧の周波数を制御して、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が圧縮機制御手段を構成し、送風手段である送風機32の作動を制御して、送風機32の送風能力を制御する構成が送風機制御手段を構成する。さらに、駆動力制御装置70と制御信号の送受信を行う構成が、要求信号出力手段50aを構成している。
次に、図4〜図10により、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。図4は、本実施形態の車両用空調装置1のメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両用空調装置1の作動スイッチが投入された状態で、オートスイッチが投入されるとスタートする。なお、図4〜図8中の各制御ステップは、空調制御装置50が有する各種の機能実現手段を構成している。
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。なお、このイニシャライズでは、フラグや演算値のうち、前回の車両用空調装置1の作動終了時に記憶された値が維持されるものもある。
次に、ステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内目標温度Tset、吸込口モードスイッチの設定信号、エコノミースイッチの操作に応じて出力される省動力化要求信号等がある。
次に、ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜58等の検出信号を読み込む。また、このステップS3では、駆動力制御装置70の入力側に接続されたセンサ群の検出信号、および駆動力制御装置70から出力される制御信号等の一部も、駆動力制御装置70から読み込んでいる。
次に、ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
続くステップS5〜S13では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS5では、エアミックスドア39の目標開度SWを目標吹出温度TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された吹出空気温度TE、冷却水温度Twに基づいて算出する。
ステップS5の詳細については、図5のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS51では、以下数式F2により仮のエアミックス開度SWを算出して、ステップS52へ進む。
SWdd=[{TAO−(TE+2)}/{MAX(10、Tw−(TE+2))}]×100(%)…(F2)
なお、数式F2の{MAX(10、Tw−(TE+2))}とは、10およびTw−(TE+2)のうち大きい方の値を意味している。
続く、ステップS52では、ステップS51にて算出された仮のエアミックス開度SWddに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、エアミックス開度SWを決定して、ステップS6へ進む。なお、この制御マップでは、図5のステップS52に示すように、仮のエアミックス開度SWddに対するエアミックス開度SWの値を非線形的に決定している。
これは、前述の如く、本実施形態では、エアミックスドア39として片持ちドアを採用しているために、エアミックス開度SWの変化に対する実際の送風空気の流れ方向から見た冷風バイパス通路34の開口面積および加熱用冷風通路33の開口面積の変化が非線形的な関係となるからである。
なお、SW=0%は、エアミックスドア39の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路34を全開し、加熱用冷風通路33を全閉する。これに対し、SW=100%は、エアミックスドア39の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路34を全閉し、加熱用冷風通路33を全開する。
次のステップS6では、送風機32の送風能力(送風量)を決定する。具体的には、ステップS4にて決定された目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、送風機32の送風能力(具体的には、電動モータに印加するブロワモータ電圧)を決定する。
より詳細には、本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値付近の高電圧にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値にして送風機32の風量を最小値にする。
次のステップS7では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
次のステップS8では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードも、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。
従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。さらに、湿度センサの検出値から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合には、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
次のステップS9では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、回転数(rpm))を決定する。このステップS9では、ステップS4で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、室内蒸発器15からの吹出空気温度Teの目標吹出温度TEOを決定する。
そして、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度Teの偏差En(TEO−Te)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量Δf_Cを求める。
また、本実施形態の空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールでは、上述の偏差Enと偏差変化率Edotに基づいて室内蒸発器15の着霜が防止されるようにΔf_Cが決定される。さらに、前回の圧縮機回転数fn−1に回転数変化量Δf_Cを加算した値を今回の圧縮機回転数fnとして更新する。なお、この圧縮機回転数fnの更新は、1秒毎の制御周期で実行される。
次のステップS10では、PTCヒータ37の作動本数および電熱デフォッガの作動状態を決定する。まず、PTCヒータ37の作動本数の決定について説明すると、ステップS10では、外気温Tam、ステップS51にて決定した仮のエアミックス開度SWdd、冷却水温度Twに応じて、PTCヒータ37の作動本数を決定する。
このステップS10の詳細については、図6のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS101では、外気温に基づいてPTCヒータ37の作動の要否を判定する。具体的には、外気センサ52が検出した外気温が所定温度(本実施形態では、26℃)よりも高いか否かを判定する。
ステップS101にて、外気温が26℃よりも高いと判定された場合は、PTCヒータ37による吹出温アシストは必要無いと判断して、ステップS105に進み、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定する。一方、ステップS101で、外気温が26℃よりも低いと判定された場合は、ステップS102に進む。
ステップS102、S103では、仮のエアミックス開度SWddに基づいてPTCヒータ37作動の要否を決定する。ここで、仮のエアミックス開度SWddが小さくなることは、加熱用冷風通路33にて送風空気を加熱する必要性が少なくなることを意味していることから、エアミックス開度SWが小さくなるに伴ってPTCヒータ37を作動させる必要性も少なくなる。
そこで、ステップS102では、ステップS5で決定したエアミックス開度SWを予め定めた基準開度と比較して、エアミックス開度SWが第1基準開度(本実施形態では、100%)以下であれば、PTCヒータ37を作動させる必要は無いものとして、PTCヒータ作動フラグf(SW)=OFFとする。
一方、エアミックス開度が第2基準開度(本実施形態では、110%)以上であれば、PTCヒータ37を作動させる必要があるものとして、PTCヒータ作動フラグf(SW)=ONとする。なお、第1基準開度と第2基準開度との開度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
そして、ステップS103では、ステップS102で決定したPTCヒータ作動フラグf(SW)がOFFであれば、ステップS105に進み、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定する。一方、PTCヒータ作動フラグf(SW)がONであれば、ステップS104へ進み、PTCヒータ37の作動本数を決定して、ステップS11へ進む。
ステップS104では、冷却水温度Twに応じてPTCヒータ37の作動本数を決定する。具体的には、冷却水温度Twが上昇過程にあるときは、冷却水温度Tw<第1所定温度T1であれば作動本数を3本とし、第1所定温度T1≦冷却水温度Tw<第2所定温度T2であれば作動本数を2本とし、第2所定温度T2≦冷却水温度Tw<第3所定温度T3であれば作動本数を1本とし、第3所定温度T3≦冷却水温度Twであれば作動本数を0本とする。
一方、冷却水温度Twが下降過程にあるときは、第4所定温度T4<冷却水温度Twであれば作動本数を0本とし、第5所定温度T5<冷却水温度Tw≦第4所定温度T4であれば作動本数を1本とし、第6所定温度T6<冷却水温度Tw≦第5所定温度T2であれば作動本数を2本とし、冷却水温度Tw≦第6所定温度T6であれば作動本数を3本としてステップS11へ進む。
なお、各所定温度には、T3>T2>T4>T1>T5>T6の関係があり、本実施形態では、具体的に、T3=75℃、T2=70℃、T4=67.5℃、T1=65℃、T5=62.5℃、T6=57.5℃としている。また、上昇過程、および下降過程、における各所定温度の温度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
また、電熱デフォッガについては、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガを作動させる。
次のステップS11では、空調制御装置50から駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定する。この要求信号としては、エンジンEGの作動要求信号(エンジンON要求信号)、エンジンEGの作動停止信号(エンジンOFF要求信号)等がある。
ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、走行時に常時エンジンを作動させているので冷却水も常時高温となる。従って、通常の車両では冷却水をヒータコア14に流通させることで十分な暖房能力を発揮することができる。
これに対して、本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、EV運転モードで走行している際に、走行用電動モータのみから走行用の駆動力を得て走行することがある。また、HV運転モードであっても走行用電動モータのアシスト量が増加してエンジンEGの出力が低下することがある。このため、高い暖房能力が必要な場合であっても、冷却水温度Twが暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇していないことがある。
そこで、本実施形態の車両用空調装置1では、高い暖房能力が必要にもかかわらず冷却水温度Twが暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇していないときは、冷却水温度Twを上昇させるために、空調制御装置50から駆動力制御装置70に対して、エンジンEGを所定の回転数で作動させるように要求信号を出力している。これにより、冷却水温度Twを上昇させて高い暖房能力を得るようにしている。
ステップS11の詳細については、図7〜図9のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS1101では、外気センサ52が検出した外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、f(外気温)を決定する。このf(外気温)は、後述するエンジンON要求抑制時間f(環境)を決定するために用いられる値である。
本実施形態では、具体的に、図7のステップS1101に示すように、外気温Tamが低い程、f(外気温)が小さな値に決定される。
続くステップS1102では、操作パネル60の車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度Tsetに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、f(車室内設定温度)を決定する。このf(車室内設定温度)は、エンジンON要求抑制時間f(環境)を決定するために用いられる値である。
本実施形態では、具体的に、図7のステップS1102に示すように、車室内設定温度Tsetが高い程、f(車室内設定温度)が小さな値に決定される。
続くステップS1103では、バッテリ81の蓄電残量SOCに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、f(バッテリ)を決定する。このf(バッテリ)は、エンジンON要求抑制時間f(環境)を決定するために用いられる値である。
本実施形態では、具体的に、図7のステップS1103に示すように、蓄電残量SOCが多い程、f(バッテリ)が大きな値に決定される。
続くステップS1104では、湿度センサが検出した車室内空気の相対湿度に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、f(湿度)を決定する。このf(湿度)は、エンジンON要求抑制時間f(環境)を決定するために用いられる値である。
本実施形態では、具体的に、図7のステップS1104に示すように、車室内空気の相対湿度が低い程、f(湿度)が大きな値に決定される。
続くステップS1105では、エコノミースイッチが投入(ON)されているか否かに基づいてf(エコモード)を決定する。このf(エコモード)は、エンジンON要求抑制時間f(環境)を決定するために用いられる値である。
本実施形態では、具体的に、図7のステップS1105に示すように、エコノミースイッチが投入(ON)されている時(エコモード時)はf(エコモード)が大きな値に決定され、エコノミースイッチが投入(ON)投入されていない時(エコモード以外時)はf(エコモード)が小さな値に決定される。
続くステップS1106では、ステップS1101〜S1105で決定したf(外気温)、f(車室内設定温度)、f(バッテリ)、f(湿度)およびf(エコモード)に基づいてエンジンON要求抑制時間f(環境)を決定して、ステップS1107へ進む。
このエンジンON要求抑制時間f(環境)は、車両起動時(車両起動直後)に、空調制御装置50から駆動力制御装置70へエンジンON要求信号を出力することを抑制する期間(所定時間)として決定される値である。したがって、ステップS1106は、所定時間を決定する時間決定手段を構成している。具体的には、エンジンON要求抑制時間f(環境)を以下数式F3により決定する。
f(環境)=MAX[0、{f(外気温)+f(車室内設定温度)+f(バッテリ)+f(湿度)+f(エコモード)}]…(F3)
なお、数式F3のMAX[0、{f(外気温)+f(車室内設定温度)+f(バッテリ)+f(湿度)+f(エコモード)}]とは、0および{f(外気温)+f(車室内設定温度)+f(バッテリ)+f(湿度)+f(エコモード)}のうち大きい方の値を意味している。
制御ステップS1101にて説明したように、外気温Tamが低い程、f(外気温)が小さな値に決定される。従って、外気温Tamが高い程、エンジンON要求抑制時間f(環境)が長くなる。
制御ステップS1102にて説明したように、車室内設定温度Tsetが高い程、f(車室内設定温度)が小さな値に決定される。従って、車室内設定温度Tsetが高い程、エンジンON要求抑制時間f(環境)が短くなる。
制御ステップS1103にて説明したように、バッテリ81の蓄電残量SOCが多い程、f(バッテリ)が大きな値に決定される。従って、蓄電残量SOCが多い程、エンジンON要求抑制時間f(環境)が長くなる。
制御ステップS1104にて説明したように、車室内空気の相対湿度が低い程、f(湿度)が大きな値に決定される。従って、車室内空気の相対湿度が低い程、エンジンON要求抑制時間f(環境)が長くなる。
制御ステップS1105にて説明したように、エコノミースイッチが投入(ON)されている時(エコモード時)は、エコノミースイッチが投入(ON)投入されていない時(エコモード以外時)に比べて、f(エコモード)が大きな値に決定される。従って、エコノミースイッチが投入(ON)されている時(エコモード時)は、エコノミースイッチが投入(ON)投入されていない時(エコモード以外時)に比べて、エンジンON要求抑制時間f(環境)が長くなる。
続くステップS1107〜S1109では、車両を起動してからの経過時間(以下、車両起動時間と言う。)に基づいて、冷却水の仮の上限温度f(TIMER)を決定する。この冷却水の仮の上限温度f(TIMER)は、車両起動時にエンジンEGの作動を抑制するために決定される値である。
より詳細には、このステップS1107〜S1109では、後述するステップS1116にて説明するように、車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達していない場合に、エンジンOFF水温Twoffが低い温度に設定されるように仮の上限温度f(TIMER)を決定している。
具体的には、ステップS1107では、車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達したか否かを判定する。車両起動時間がf(環境)に達していない場合(YES判定)、ステップS1108へ進み、冷却水の仮の上限温度f(TIMER)を小さな値に決定して、ステップS1110へ進む。
本実施形態では、図7のステップS1108に示すように、外気温Tamの上昇に伴って、仮の上限温度f(TIMER)が徐々に低下するように決定される。また、仮の上限温度f(TIMER)は、25〜45℃の範囲で決定される。
一方、ステップS1107にて車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達していた場合(NO判定)、ステップS1109へ進み、冷却水の仮の上限温度f(TIMER)を大きな値に決定して、ステップS1110へ進む。
本実施形態では、図7のステップS1109に示すように、仮の上限温度f(TIMER)=90℃とし、ステップS1108で決定される仮の上限温度f(TIMER)=25〜45℃よりも大きな値としている。
従って、車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達していない場合、車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達した場合に比べて、冷却水の仮の上限温度f(TIMER)が小さな値に決定される。
続くステップS1110では、ステップS10で決定されたPTCヒータ37の作動本数に基づいて吹出温上昇量ΔTptcを決定する。このΔTptcは、PTCヒータ37の作動による吹出温上昇量、すなわち各吹出口24〜26から車室内へ吹き出される空調風の温度(吹出温)のうちPTCヒータ37の発熱分が寄与した温度上昇量である。
従って、吹出温上昇量ΔTptcは、PTCヒータ37の作動本数の増加に伴って高い値となる。本実施形態では、具体的に、図8のステップS1110に示すように、PTCヒータ37の作動本数が0本であれば、ΔTptc=0℃とし、作動本数が1本であれば、ΔTptc=3℃とし、作動本数が2本であれば、ΔTptc=6℃とし、作動本数が3本であれば、ΔTptc=9℃としている。
続くステップS1111では、ステップS4にて決定されたTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、冷却水目標温度f(TAO)を決定する。この冷却水目標温度f(TAO)は、車両用空調装置が充分な暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度Twとして決定される値である。
従って、本実施形態の制御ステップS1111は、冷却水目標温度(f(TAO))を決定する目標温度決定手段を構成している。また、本実施形態では、具体的に、図8のステップS1111に示すように、TAOの上昇に伴ってf(TAO)が上昇するように決定される。
続くステップS1112では、外気温TamおよびステップS10で決定されたPTCヒータ37の作動本数に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、冷却水の仮の上限温度f(TAMdisp)を決定する。この仮の上限温度f(TAMdisp)は、車両用空調装置がある程度の暖房能力を発揮でき、さらに、不必要にエンジンEGの作動頻度を増加させないために決定される値である。
本実施形態では、具体的に、図8のステップS1112に示すように、外気温Tamの上昇に伴って、仮の上限温度f(TAMdisp)が徐々に低下するように決定される。さらに、PTCヒータ37の作動本数が少なくなるに伴って、仮の上限温度f(TAMdisp)が低下するように決定される。
続くステップS1113では、車両の運転モードに基づいて、仮の上限温度f(TAMdisp)に加算する運転モード補正項f(運転モード)を決定する。具体的には、ステップS1113では、車両の運転モードがHV運転モードであれば、エコノミースイッチが投入されているか否かを問わず、運転モード補正項f(運転モード)を0℃に決定する。
一方、運転モードがEV運転モードになっており、エコノミースイッチが投入されている場合は、運転モード補正項f(運転モード)を−5℃に決定する。さらに、運転モードがEV運転モードになっており、エコノミースイッチが投入されていない場合は、運転モード補正項f(運転モード)を0℃に決定する。
より詳細には、このステップS1113では、後述するステップS1116にて説明するように、EV運転モード時であって、かつ、エコノミースイッチが投入(ON)されている際に、HV運転モード時よりも後述するエンジンOFF水温Twoffが低い温度に決定されるように運転モード補正項f(運転モード)を決定している。
なお、本実施形態のハイブリッド車両では、前述の如く、バッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上となっている際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが充分であるものとしてEV運転モードとし、バッテリの蓄電残量SOCが予め定めて走行用基準残量より少ない際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが不充分であるものとして、HV運転モードとしている。
より具体的には、図10の図表に示すように運転モードが決定されている。また、乗員の操作によって、駆動力制御装置70に対して、EV運転モードを実行しないことを要求するEVキャンセルスイッチが投入(ON)されている際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが充分であっても、HV運転モードとしている。
次に、ステップS1114では、エコノミースイッチが投入(ON)されているか否かに基づいて、仮の上限温度f(TAMdisp)に加算するエコノミー補正項f(エコノミー)を決定する。具体的には、ステップS110では、エコノミースイッチが投入されている場合にはエコノミー補正項f(エコノミー)を−5℃に決定し、エコノミースイッチが投入されていない場合にはエコノミー補正項f(エコノミー)を0℃に決定する。
より詳細には、このステップS1114では、後述するステップS1116にて説明するように、省動力化要求手段であるエコノミースイッチが投入(ON)されていると、投入されていない場合(OFF)よりもエンジンOFF水温Twoffが低い温度に決定されるようにエコノミー補正項f(エコノミー)を決定している。
続くステップS1115では、車室内温度設定スイッチによって設定された車室内目標温度Tsetに基づいて、仮の上限温度f(TAMdisp)に加算する設定温度補正項f(設定温度)を決定する。具体的には、ステップS1115では、車室内目標温度Tsetが、28℃未満であれば、設定温度補正項f(設定温度)を0℃に決定し、28℃以上であれば、設定温度補正項f(設定温度)を5℃に決定する。
より詳細には、このステップS1115では、後述するステップS1116にて説明するように、目標温度設定手段である車室内温度設定スイッチによって設定された車室内目標温度Tsetが予め定めた基準車室内目標温度(本実施形態では、28℃)以上になると、エンジンOFF水温Twoffが高くなるように設定温度補正項f(設定温度)を決定している。換言すると、車室内目標温度Tsetの低下に伴って、エンジンOFF水温Twoffが低く決定されるように設定温度補正項f(設定温度)を決定している。
次に、図9に示すステップS1116では、冷却水温度Twに基づくエンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号の出力を行うか否かの判定に用いる判定閾値としてのエンジンON水温TwonおよびエンジンOFF水温Twoffを決定する。なお、エンジンON水温Twonは、停止要求信号を出力することを決定する判定基準となる冷却水温度Twであり、エンジンOFF水温Twoffは、エンジンEGの作動停止信号を出力することを決定する判定基準となる冷却水温度Twである。
つまり、エンジンOFF水温Twoffは、駆動力制御装置70がエンジンEGを作動させて冷却水温度Twを昇温させる際の上限温度となる値である。つまり、駆動力制御装置70は、冷却水温度Twを昇温させる際に、冷却水温度TwがエンジンOFF水温TwoffとなるまでエンジンEGを作動させることになる。従って、本実施形態の制御ステップS1116は、上限温度決定手段を構成している。
具体的には、エンジンOFF水温Twoffは、図9のステップS1116に示すように、冷却水目標温度f(TAO)から吹出温上昇量ΔTptcを減算した値、仮の上限温度f(TAMdisp)に運転モード補正項f(運転モード)、エコノミー補正項f(エコノミー)、設定温度補正項f(設定温度)を加えた値、f(TIMER)、および70℃のうち、一番小さい値を30℃と比較して、一番小さい値と30℃とのうち大きい方の値に決定する。
ここで、ステップS1116における冷却水目標温度f(TAO)から吹出温上昇量ΔTptcを減算した値(図9のステップS1116のA)は、車両用空調装置1が充分な暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度TwからPTCヒータ37を作動させることによる温度上昇分を減算した値なので、この温度をエンジンOFF水温Twoffとすれば、車両用空調装置1に確実に充分な暖房能力を発揮させることができる。
次に、仮の上限温度f(TAMdisp)に各補正項f(運転モード)、f(エコノミー)、f(設定温度)を加えた値(図9のステップS1116のB)は、不必要にエンジンEGの作動頻度を増加させない冷却水温度Twを、運転モード、エコノミースイッチの投入状態、車室内目標温度Tset等に基づいて補正した値なので、この温度をエンジンOFF水温Twoffとすれば、エンジンEGの作動頻度の増加を抑制できる。
次に、70℃(図9のステップS1116のC)は、ステップS1112で決定される仮の上限温度f(TAMdisp)の最大値と同じ値であり、確実にエンジンの作動停止信号を出力するための保護用の値として決定された値である。
さらに、仮の上限温度f(TIMER)(図9のステップS1116のD)は、車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達していない車両起動時に小さな値に決定されるので、この温度をエンジンOFF水温Twoffとすれば、車両起動時にエンジンEGの作動を抑制できる。
従って、これらのうちの一番小さい値を採用することで、エンジンOFF水温Twoffを、車両用空調装置が高い暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度TwあるいはエンジンEGの作動頻度を増加させないための冷却水温度Twに決定することができる。特に、車両起動時に仮の上限温度f(TIMER)が一番小さい値になった場合、車両起動時のエンジンOFF水温Twoffが小さな値に決定されるので、車両起動時に車両起動時にエンジンEGの作動を抑制することができる。
また、これらのうちの一番小さい値と、確実にエンジンの作動停止信号を出力するための下限値として決定された30℃とのうち、大きい方の値をエンジンOFF水温Twoffと決定することで、車両用空調装置1の要求によってエンジンEGの作動が継続されてしまうことを確実に抑制できる。
一方、エンジンON水温Twonは、頻繁にエンジンがON/OFFするのを防止するため、エンジンOFF水温Twoffよりも所定の値(本実施形態では、5℃)だけ低く決定されており、この所定の値は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
続くステップS1117では、冷却水温度Twに応じて、エンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号を出力するか否かの仮の要求信号フラグf(Tw)を決定する。具体的には、冷却水温度TwがステップS1116で決定されたエンジンON水温Twonより低ければ、仮の要求信号フラグf(Tw)=ONとしてエンジンEGの作動要求信号を出力することを仮決定し、冷却水温度TwがエンジンOFF水温Twoffより高ければ、仮の要求信号フラグf(Tw)=OFFとしてエンジンEGの作動停止信号を出力することを仮決定する。
続くステップS1118では、送風機32の作動状態、目標吹出温度TAO、仮の要求信号フラグf(Tw)に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定して、図4に示すステップS12へ進む。
具体的には、ステップS1118では、送風機32が作動しているときであって、かつ、目標吹出温度TAOが28℃未満の場合は、仮の要求信号フラグf(Tw)によらず、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。
また、送風機32が作動しているときであって、目標吹出温度TAOが28℃以上の場合は、仮の要求信号フラグf(Tw)がONであれば、エンジンEGを作動させる要求信号に決定し、仮の要求信号フラグf(Tw)がOFFであれば、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。さらに、送風機32が作動していないときは、目標吹出温度TAOおよび仮の要求信号フラグf(Tw)によらず、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。
制御ステップS1116にて説明したように、車両起動時にエンジンOFF水温Twoffが仮の上限温度f(TIMER)に決定されて小さな値になる場合がある。この場合、仮の要求信号フラグf(Tw)がOFFになりやすくなり、エンジンEGを停止させる要求信号に決定されやすくなるので、エンジンEGを作動させる要求信号が出力されることが抑制される。従って、ステップS1118は、要求信号出力手段50aが駆動力制御装置70に対して要求信号を出力することを抑制する抑制手段を構成している。
次に、図4に示すステップS12では、冷却水回路40にてヒータコア36とエンジンEGとの間で冷却水を循環させる冷却水ポンプ40aを作動させるか否かを決定する。
このステップS12の詳細については、図11のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS121では、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高いか否かを判定する。
ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合は、ステップS124へ進み、冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。その理由は、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合に冷却水をヒータコア36へ流すと、ヒータコア36を流れる冷却水が蒸発器15通過後の空気を冷却してしまうことになるため、かえって吹出口からの吹出空気温度を低くしてしまうからである。
一方、ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高い場合は、ステップS122へ進む。ステップS122では、送風機32が作動しているか否かが判定される。ステップS122にて、送風機32が作動していないと判定された場合は、ステップS124に進み、省動力化のために冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。
一方、ステップS122にて送風機32が作動していると判定された場合は、ステップS123へ進み、冷却水ポンプ40aを作動(ON)させることを決定する。これにより、冷却水ポンプ40aが作動して、冷却水が冷媒回路内を循環するので、ヒータコア36を流れる冷却水とヒータコア36を通過する空気とを熱交換させて送風空気を加熱することができる。
次に、ステップS13では、シート空調装置90の作動要否を決定する。シート空調装置90の作動状態は、ステップS5で決定した目標吹出温度TAO、ステップS10で決定されたPTCヒータ37の作動状態、ステップS2で読み込んだ車室内目標温度Tset、外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。
具体的には、目標吹出温度TAOが100℃より低くなっており、かつ、PTCヒータ37が作動しているときであって、かつ、外気温Tamが予め定めた基準外気温以下になっており、さらに、車室内目標温度Tsetが予め定めた基準シート空調作動温度より低い場合には、シート空調装置90を作動(ON)させることを決定する。
さらに、目標吹出温度TAOが100℃以上になっている場合は、PTCヒータ37の作動状態、外気温Tam、車室内目標温度Tsetによらず、シート空調装置90を作動(ON)させることを決定する。さらに、上記のシート空調装置90を作動(ON)させる条件が成立しても、操作パネル60のエコノミースイッチが投入されている際には、シート空調装置90を非作動(OFF)としてもよい。
次に、ステップS14では、上述のステップS5〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器32、12a、61、62、63、64、12a、37、40a、80に対して制御信号および制御電圧が出力される。さらに、要求信号出力手段50cから駆動力制御装置70に対して、ステップS11にて決定されたエンジンEGの作動要求信号が送信される。
次に、ステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。これにより、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を十分に確保することができる。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く作動するので、送風機32から送風された送風空気が、蒸発器15にて冷却される。そして蒸発器15にて冷却された冷風は、エアミックスドア39の開度に応じて、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入する。
加熱用冷風通路33へ流入した冷風は、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過する際に加熱されて、混合空間35にて冷風バイパス通路34を通過した冷風と混合される。そして、混合空間35にて温度調整された空調風が、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。
この車室内に吹き出される空調風によって車室内の内気温Trが外気温Tamより低く冷やされる場合には、車室内の冷房が実現されており、一方、内気温Trが外気温Tamより高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現されることになる。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS1107〜S1109、S1116にて説明したように、上限温度決定手段である制御ステップS1116が、車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達していない車両起動時に、エンジンOFF水温Twoffが小さくなるように冷却水の仮の上限温度f(TIMER)を決定している。
従って、車両起動時には冷却水温度TwがエンジンOFF水温Twoffに到達し易くなるので、要求信号出力手段50aが駆動力制御手段70に対してエンジンON要求信号を出力することが抑制される。つまり、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。
延いては、バッテリが満充電に近い状態であるにも関わらずエンジンが作動してしまうという違和感を乗員に与えてしまうことを抑制できる。さらに、充電電力を走行に有効に活用して車両燃費を向上させることができる。また、エンジンEGの作動を抑制することで車外音を低減することができる。
また、上限温度決定手段である制御ステップS1116は、車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達すると、車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達していない場合に比べて、エンジンOFF水温Twoffが高い温度に設定されるように冷却水の仮の上限温度f(TIMER)を決定している。
このため、時間の経過に従って、冷却水温度TwがエンジンOFF水温Twoffに到達し難くなり、内燃機関EGが作動しやすくなる。このため、時間の経過に従って、暖房能力を向上させて乗員の暖房感を向上させることができる。
また、本実施形態では、制御ステップS1101、S1106にて説明したように、外気温検出手段である外気温センサ52で検出された外気温Tamが高い程、エンジンON要求抑制時間f(環境)が長くなるようにf(外気温)を決定している。
従って、外気温Tamが高い程、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。このため、要求される暖房能力が小さい場合、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、制御ステップS1102、S1106にて説明したように、目標温度設定手段である車室内温度設定スイッチで設定された車室内設定温度Tsetが高い程、エンジンON要求抑制時間f(環境)が短くなるようにf(車室内設定温度)を決定している。
従って、車室内設定温度Tsetが高く設定される程、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制しないようにすることができる。このため、車両起動時に乗員の希望に応じて暖房能力を発揮することができるので、乗員の暖房感を損なうことを抑制できる。
また、本実施形態では、制御ステップS1103、S1106にて説明したように、バッテリ81の蓄電残量SOCが少ない程、エンジンON要求抑制時間f(環境)が短くなるようにf(バッテリ)を決定している。
従って、バッテリ81の蓄電残量SOCが多い程、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。このため、車両起動時に充電電力を走行に活用しやすくなって車両燃費を向上させることができる。
また、本実施形態では、制御ステップS1104、S1106にて説明したように、湿度検出手段である湿度センサで検出された車室内空気の相対湿度が低い程、エンジンON要求抑制時間f(環境)が長くなるようにf(湿度)を決定している。
従って、車室内空気の相対湿度が低い程、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。このため、窓ガラスに曇りが発生する可能性が低くて窓ガラスに温風を吹き出す必要性が低い場合、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、制御ステップS1105、S1106にて説明したように、省動力化要求手段であるエコノミースイッチが投入(ON)されている時(エコモード時)は、エコノミースイッチが投入(ON)投入されていない時(エコモード以外時)に比べて、エンジンON要求抑制時間f(環境)が長くなるようにf(エコモード)を決定している。
このため、車両起動時かつ省動力化が要求されているエコモード時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。さらに、乗員の意志によって省動力化が要求されているので、エンジンEGの作動を抑制することで多少の暖房能力の低下が生じたとしても、乗員に不快感を与えることもない。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、外気温、車室内設定温度、バッテリ81の蓄電残量SOC、車室内空気の相対湿度、およびエコモードの選択状況に基づいてエンジンON要求抑制時間f(環境)を決定したが、本第2実施形態では、図12に示すように、室温、日射量およびシート空調装置90の作動状況に基づいてエンジンON要求抑制時間f(環境)を決定する。
まず、ステップS1121では、内気センサ51によって検出された車室内温度Tr(内気温)に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、f(室温)を決定する。このf(室温)は、エンジンON要求抑制時間f(環境)を決定するために用いられる値である。
本実施形態では、具体的に、図12のステップS1121に示すように、車室内温度Trが高い程、f(室温)が大きな値に決定される。
続くステップS1122では、日射センサ53によって検出された車室内の日射量Tsに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、f(日射量)を決定する。このf(日射量)は、エンジンON要求抑制時間f(環境)を決定するために用いられる値である。
本実施形態では、具体的に、図12のステップS1122に示すように、日射量Tsが多い程、f(日射量)が大きな値に決定される。
続くステップS1123では、シート空調装置90の作動状況に基づいてf(シートヒータ)を決定する。このf(シートヒータ)は、エンジンON要求抑制時間f(環境)を決定するために用いられる値である。
本実施形態では、具体的に、図12のステップS1123に示すように、シート空調装置90が作動している時(シートヒータON時)は、シート空調装置90が作動していない時(シートヒータOFF時)に比べて、f(シートヒータ)が大きな値に決定される。
続くステップS1126では、ステップS1121〜S1123で決定したf(室温)、f(日射量)およびf(シートヒータ)に基づいてエンジンON要求抑制時間f(環境)を決定して、ステップS1107へ進む。具体的には、以下数式F4によりエンジンON要求抑制時間f(環境)を決定する。
f(環境)=MAX[0、{f(室温)+f(日射量)+f(シートヒータ)}]…(F4)
なお、数式F4のMAX[0、{f(室温)+f(日射量)+f(シートヒータ)}]とは、0および{f(室温)+f(日射量)+f(シートヒータ)}のうち大きい方の値を意味している。
制御ステップS1121にて説明したように、車室内温度Trが高い程、f(室温)が大きな値に決定される。従って、車室内温度Trが高い程、エンジンON要求抑制時間f(環境)が長くなる。
制御ステップS1122にて説明したように、日射量Tsが多い程、f(日射量)が大きな値に決定される。従って、日射量Tsが多い程、エンジンON要求抑制時間f(環境)が長くなる。
制御ステップS1123にて説明したように、シート空調装置90が作動している時(シートヒータON時)は、シート空調装置90が作動していない時(シートヒータOFF時)に比べて、f(シートヒータ)が大きな値に決定される。従って、シート空調装置90が作動している時(シートヒータON時)は、シート空調装置90が作動していない時(シートヒータOFF時)に比べて、エンジンON要求抑制時間f(環境)が長くなる。
続くステップS1107以降は、上記第1実施形態(図8および図9)と同じである。
本実施形態では、制御ステップS1121、S1126にて説明したように、車室内温度検出手段である内気センサ51が検出した車室内温度Trが高い程、エンジンON要求抑制時間f(環境)が長くなるようにf(室温)を決定している。
従って、車室内温度Trが高い程、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。このため、要求される暖房能力が小さい場合、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、制御ステップS1122、S1126にて説明したように、日射量検出手段である日射センサ53で検出された日射量Tsが多い程、エンジンON要求抑制時間f(環境)が長くなるようにf(日射量)を決定している。
従って、日射量Tsが多い程、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。このため、要求される暖房能力が小さい場合、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、制御ステップS1123、S1126にて説明したように、補助加熱手段であるシート空調装置90が作動している時(シートヒータON時)は、シート空調装置90が作動していない時(シートヒータOFF時)に比べて、エンジンON要求抑制時間f(環境)が長くなる。
従って、車両起動時かつシート空調装置90が作動している際に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。さらに、シート空調装置90が作動していれば、車室内へ送風される送風空気の温度が低くても、乗員に充分な暖房感を与えることができる。従って、乗員の暖房感を損なうことなく、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達していない場合、エンジンOFF水温Twoffを低い温度に設定することでエンジンEGの作動が抑制されるようにしたが、本第3実施形態では、車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達していない場合、エンジンOFF水温TwoffによらずエンジンEGの作動を禁止する。
本実施形態におけるステップS11の詳細を説明するフローチャートを図13および図14に示す。まず、図13に示すステップS1121〜S1126は、上記第2実施形態と同じである。
続くステップS1137では、車両起動時間が、S1126で決定したエンジンON要求抑制時間f(環境)に達したか否かを判定する。車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達していない場合(YES判定)、ステップS1138へ進み、エンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号を出力するか否かの仮の要求信号フラグf(TIMER)=0として、ステップS1110へ進む。
ステップS1137にて車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達していた場合(NO判定)、ステップS1139へ進み、仮の要求信号フラグf(TIMER)=1として、ステップS1110へ進む。
続くステップS1110〜S1115は、上記第1、第2実施形態(図8)と同じである。
次に、図14に示すステップS1146では、冷却水温度Twに基づくエンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号の出力を行うか否かの判定に用いる判定閾値としてのエンジンON水温TwonおよびエンジンOFF水温Twoffを決定する。なお、エンジンON水温Twonは、停止要求信号を出力することを決定する判定基準となる冷却水温度Twであり、エンジンOFF水温Twoffは、エンジンEGの作動停止信号を出力することを決定する判定基準となる冷却水温度Twである。
つまり、エンジンOFF水温Twoffは、駆動力制御装置70がエンジンEGを作動させて冷却水温度Twを昇温させる際の上限温度となる値である。つまり、駆動力制御装置70は、冷却水温度Twを昇温させる際に、冷却水温度TwがエンジンOFF水温TwoffとなるまでエンジンEGを作動させることになる。従って、本実施形態の制御ステップS1146は、上限温度決定手段を構成している。
具体的には、エンジンOFF水温Twoffは、図14のステップS1146に示すように、冷却水目標温度f(TAO)から吹出温上昇量ΔTptcを減算した値、仮の上限温度f(TAMdisp)に運転モード補正項f(運転モード)、エコノミー補正項f(エコノミー)、設定温度補正項f(設定温度)を加えた値、および70℃のうち、一番小さい値を30℃と比較して、一番小さい値と30℃とのうち大きい方の値に決定する。
ここで、ステップS1146における冷却水目標温度f(TAO)から吹出温上昇量ΔTptcを減算した値(図14のステップS1146のA)は、車両用空調装置1が充分な暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度TwからPTCヒータ37を作動させることによる温度上昇分を減算した値なので、この温度をエンジンOFF水温Twoffとすれば、車両用空調装置1に確実に充分な暖房能力を発揮させることができる。
次に、仮の上限温度f(TAMdisp)に各補正項f(運転モード)、f(エコノミー)、f(設定温度)を加えた値(図14のステップS1146のB)は、不必要にエンジンEGの作動頻度を増加させない冷却水温度Twを、運転モード、エコノミースイッチの投入状態、車室内目標温度Tset等に基づいて補正した値なので、この温度をエンジンOFF水温Twoffとすれば、エンジンEGの作動頻度の増加を抑制できる。
さらに、70℃(図14のステップS1146のC)は、ステップS1112で決定される仮の上限温度f(TAMdisp)の最大値と同じ値であり、確実にエンジンの作動停止信号を出力するための保護用の値として決定された値である。
従って、これらのうちの一番小さい値を採用することで、エンジンOFF水温Twoffを、車両用空調装置が高い暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度TwあるいはエンジンEGの作動頻度を増加させないための冷却水温度Twに決定することができる。
また、これらのうちの一番小さい値と、確実にエンジンの作動停止信号を出力するための下限値として決定された30℃とのうち、大きい方の値をエンジンOFF水温Twoffと決定することで、車両用空調装置1の要求によってエンジンEGの作動が継続されてしまうことを確実に抑制できる。
一方、エンジンON水温Twonは、頻繁にエンジンがON/OFFするのを防止するため、エンジンOFF水温Twoffよりも所定の値(本実施形態では、5℃)だけ低く決定されており、この所定の値は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
続くステップS1117は、上記第1実施形態(図9)と同じであり、冷却水温度Twに応じて、エンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号を出力するか否かの仮の要求信号フラグf(Tw)を決定する。具体的には、冷却水温度TwがステップS1116で決定されたエンジンON水温Twonより低ければ、仮の要求信号フラグf(Tw)=ONとしてエンジンEGの作動要求信号を出力することを仮決定し、冷却水温度TwがエンジンOFF水温Twoffより高ければ、仮の要求信号フラグf(Tw)=OFFとしてエンジンEGの作動停止信号を出力することを仮決定する。
続くステップS1148では、送風機32の作動状態、目標吹出温度TAO、仮の要求信号フラグf(Tw)、f(TIMER)に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定して、図4に示すステップS12へ進む。
具体的には、ステップS1148では、送風機32が作動しているときであって、かつ、目標吹出温度TAOが28℃未満の場合は、仮の要求信号フラグf(Tw)、f(TIMER)によらず、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。
また、送風機32が作動しているときであって、目標吹出温度TAOが28℃以上の場合は、仮の要求信号フラグf(Tw)がONかつ仮の要求信号フラグf(TIMER)が0であれば、エンジンEGを停止させる要求信号に決定し、仮の要求信号フラグf(Tw)がONかつ仮の要求信号フラグf(TIMER)が1であれば、エンジンEGを作動させる要求信号に決定し、仮の要求信号フラグf(Tw)がOFFであれば、仮の要求信号フラグf(TIMER)によらずエンジンEGを停止させる要求信号に決定する。
さらに、送風機32が作動していないときは、目標吹出温度TAOおよび仮の要求信号フラグf(Tw)、f(TIMER)によらず、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。
制御ステップS1138にて説明したように、車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達していない場合、仮の要求信号フラグf(TIMER)=0とする。この場合、送風機32の作動状況および目標吹出温度TAOの値によらず、エンジンEGを停止させる要求信号に決定するので、エンジンEGを作動させる要求信号が出力されることが禁止される。従って、ステップS1148は、要求信号出力手段50aが駆動力制御装置70に対して要求信号を出力することを抑制する抑制手段を構成している。
本実施形態によると、車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達していない場合、エンジンOFF水温Twoffによらず、駆動力制御装置70へ出力される要求信号をエンジンEGを停止させる要求信号に決定するので、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を確実に抑制することができる。
(第4実施形態)
本第4実施形態は、図15に示すように、上記第1実施形態(図7)のステップS1108、S1109を、上記第3実施形態(図13)のステップS1138、S1139に変更したものである。
本実施形態によると、上記第3実施形態と同様に、要求抑制手段である制御ステップS1148が、車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達していない場合、エンジンOFF水温Twoffによらず、駆動力制御装置70へ出力される要求信号をエンジンEGを停止させる要求信号に決定するので、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を確実に抑制することができる。
(第5実施形態)
上記第3、第4実施形態では、エンジンON要求抑制時間f(環境)を、外気温Tam、車室内設定温度Tset、バッテリ81の蓄電残量SOC、車室内空気の相対湿度、エコモードの選択状況、内気温Tr、日射量Ts、シート空調装置90の作動状況等の環境条件に応じて決定したが、本第5実施形態では、図16に示すように、エンジンON要求抑制時間を、乗員によって設定された時間に基づいて決定する。
まず、ステップS1156では、乗員によって設定された時間f(SET)を読み込む。時間f(SET)は、車両を起動してからエンジンOFFが継続される時間(エンジンOFF継続時間)として乗員が希望する値である。
本実施形態では、具体的に、図16のステップS1156に示すように、ディスプレイにエンジンOFF継続時間f(SET)の設定画面が表示され、この設定画面をユーザがタッチ操作することによってエンジンOFF継続時間f(SET)を設定することができるようになっている。したがって、ディスプレイは、乗員の操作によって時間を設定する時間設定手段を構成している。
続くステップS1157では、車両起動時間がエンジンON要求抑制時間に達したか否かを判定する。本実施形態では、具体的に、図16のステップS1157に示すように、車両起動時間が、S1156で読み込んだエンジンOFF継続時間f(SET)に達したか否かを判定する。つまり、本実施形態では、エンジンON要求抑制時間を、乗員によって設定されたエンジンOFF継続時間f(SET)と同じ値に決定する。なお、エンジンON要求抑制時間を、エンジンOFF継続時間f(SET)を補正した値に決定してもよい。
車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(SET)に達していない場合(YES判定)、ステップS1158へ進み、エンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号を出力するか否かの仮の要求信号フラグf(TIMER)=0として、ステップS1110へ進む。
ステップS1157にて車両起動時間がf(SET)に達していた場合(NO判定)、ステップS1159へ進み、仮の要求信号フラグf(TIMER)=1として、ステップS1110へ進む。
続くステップS1110以降は、上記第3、第4実施形態と同じである。つまり、図8に示すステップS1110〜S1115を実行した後、図14に示すステップS1146〜S1148を実行する。
本実施形態によると、乗員の操作によって設定されたエンジンOFF継続時間f(SET)が長い程、エンジンON要求抑制時間が長くなるので、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。このため、乗員の希望に応じて、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を確実に抑制することができる。
(第6実施形態)
上記第1、第2実施形態では、車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達した場合、車両起動時間がエンジンON要求抑制時間f(環境)に達していない場合に比べて、エンジンOFF水温Twoffが大きくなるが、本第6実施形態では、車両起動時にエンジンOFF水温Twoffが時間の経過に従って徐々に上昇する。
本実施形態におけるステップS11の詳細を説明するフローチャートを図17および図18に示す。図17に示すステップS1161〜S1175では、定期的に目標水温上限を決定する。従って、ステップS1161〜S1175は、目標水温上限決定手段を構成している。
この目標水温上限は、車両起動時にエンジンEGの作動を抑制するために決定される値である。つまり、目標水温上限は、車両起動時におけるエンジンOFF水温Twoffとなる値である。
より詳細には、このステップS1161〜S1175では、後述するステップS1176にて説明するように、車両起動時にエンジンOFF水温Twoffが時間の経過に従って徐々に上昇するように目標水温上限を決定している。
具体的には、まず、ステップS1161では、エコモードであるか否か(エコノミースイッチが投入(ON)されているか否か)を判定する。エコノミースイッチが投入されておらずエコモードでない場合(NO判定)、ステップS1162〜S1168の処理を行って、エコモード以外時の目標水温上限を決定する。一方、エコノミースイッチが投入されていてエコモードである場合(YES判定)、ステップS1169〜S1175の処理を行って、エコモード時の目標水温上限を決定する。
ステップS1162〜S1168の処理を具体的に説明すると、まず、ステップS1162では、車両起動後、目標水温上限の決定が初回(IG ON初回)か否かを判定する。目標水温上限の決定が初回であると判定した場合(YES判定)、ステップS1163、S1164の処理を行って、初回の目標水温上限を決定する。
具体的には、ステップS1163では、外気センサ52が検出した外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、f1(外気温)を決定する。このf1(外気温)は、初回の目標水温上限を決定するために用いられる値である。
本実施形態では、具体的に、図17のステップS1163に示すように、外気温Tamが高い程、f1(外気温)が小さな値に決定される。
続くステップS1164では、ステップS1163で決定したf1(外気温)と冷却水温度センサ58が検出した冷却水温度Twとに基づいて、初回の目標水温上限を決定して、ステップS1110へ進む。具体的には、以下数式F5により初回の目標水温上限を決定する。
初回の目標水温上限=MAX{f1(外気温)、水温}…(F5)
なお、数式F5の水温とは、冷却水温度センサ58が検出した冷却水温度Twであり、数式F3のMAX{f1(外気温)、水温}とは、f1(外気温)および水温のうち大きい方の値を意味している。つまり、初回の目標水温上限は、車両起動直後の冷却水温度Tw以上の値に決定される。
制御ステップS1163にて説明したように、外気温Tamが低い程、f1(外気温)が小さな値に決定される。従って、外気温Tamが高い程、初回の目標水温上限が小さくなる。
一方、ステップS1162にて目標水温上限の決定が初回でないと判定した場合(NO判定)、ステップS1165〜S1168の処理を行って、2回目以降の目標水温上限を決定する。
具体的には、ステップS1165では、外気センサ52が検出した外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、f2(外気温)を決定する。このf2(外気温)は、2回目以降の目標水温上限を決定するために用いられる値である。
本実施形態では、具体的に、図17のステップS1165に示すように、外気温Tamが高い程、f2(外気温)が小さな値に決定される。また、シート空調装置90が作動している時(シートヒータON時)は、シート空調装置90が作動していない時(シートヒータOFF時)に比べて、f2(外気温)が小さな値に決定される。
続くステップS1166では、日射センサ53によって検出された車室内の日射量Tsに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、f3(日射量)を決定する。このf3(日射量)は、2回目以降の目標水温上限を決定するために用いられる値である。
本実施形態では、具体的に、図17のステップS1166に示すように、日射量Tsが高い程、f3(日射量)が小さな値に決定される。
続くステップS1167では、操作パネル60の車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度Tsetに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、f4(設定温度)を決定する。このf4(設定温度)は、2回目以降の目標水温上限を決定するために用いられる値である。
本実施形態では、具体的に、図17のステップS1167に示すように、室内設定温度Tsetが高い程、f4(設定温度)が大きな値に決定される。
続くステップS1168では、ステップS1165〜S1167で決定されたf2(外気温)、f3(日射量)およびf4(設定温度)に基づいて、2回目以降の目標水温上限を決定して、ステップS1110へ進む。具体的には、以下数式F6により2回目以降の目標水温上限を決定する。
目標水温上限=前回の目標水温上限+f2(外気温)+f3(日射量)+f4(設定温度)…(F6)
この目標水温上限の値は定期的(本実施形態では1秒毎)に更新される。つまり、目標水温上限の値が更新される度に、前回の目標水温上限にf2(外気温)、f3(日射量)およびf4(設定温度)が加算されるので、目標水温上限を時間の経過に従って徐々に上昇させることができる。
なお、本実施形態では、車室内設定温度Tsetが低い場合、f4(設定温度)がマイナスの値に設定されるので目標水温上限の上昇が抑制される。つまり、乗員が強い暖房を希望していない際にエンジンEGの作動が抑制される。
制御ステップS1164にて説明したように、外気温Tamが高い程、初回の目標水温上限が小さな値に決定される。従って、外気温Tamが高い程、2回目以降の目標水温上限が小さくなる。
制御ステップS1164にて説明したように、初回の目標水温上限は、車両起動直後の冷却水温度Tw以上の値に決定される。従って、車両起動直後の冷却水温度Twが高い程、2回目以降の目標水温上限が大きくなる。
制御ステップS1165にて説明したように、外気温Tamが高い程、f2(外気温)が小さな値に決定される。従って、外気温Tamが高い程、2回目以降の目標水温上限が小さくなる。
制御ステップS1165にて説明したように、シート空調装置90が作動している時(シートヒータON時)は、シート空調装置90が作動していない時(シートヒータOFF時)に比べて、f2(外気温)が小さな値に決定される。従って、シート空調装置90が作動している時(シートヒータON時)は、シート空調装置90が作動していない時(シートヒータOFF時)に比べて、2回目以降の目標水温上限が小さくなる。
制御ステップS1166にて説明したように、日射量Tsが高い程、f3(日射量)が小さな値に決定される。従って、日射量Tsが高い程、2回目以降の目標水温上限が小さくなる。
制御ステップS1167にて説明したように、室内設定温度Tsetが高い程、f4(設定温度)が大きな値に決定される。従って、室内設定温度Tsetが高い程、2回目以降の目標水温上限が大きくなる。
以上のように、ステップS1162〜S1168にてエコモード以外時の目標水温上限が決定される。
ステップS1161でエコモードであると判定した場合(YES判定)に行うステップS1169〜S1175の処理も、ステップS1162〜S1168の処理と同様である。従って、ステップS1169〜S1175で決定されるエコモード時の目標水温上限も、ステップS1162〜S1168で決定されるエコモード以外時の目標水温上限と同様に、時間の経過に従って徐々に上昇させることができる。
ここで、ステップS1170、S1172〜S1174では、ステップS1163、S1165〜S1167に比べて、f1(外気温)、f2(外気温)、f3(日射量)、f4(設定温度)を小さな値に決定する。従って、ステップS1171、S1175では、ステップS1164、S1168に比べて、初回の目標水温上限および2回目以降の目標水温上限が小さな値に決定される。つまり、エコモード時は、エコモード以外時に比べて目標水温上限が小さな値とされる。
なお、ステップS1170では、ステップS1163と同様に、外気温Tamが高い程、f1(外気温)が小さな値に決定される。従って、外気温Tamが高い程、初回の目標水温上限が小さくなり、2回目以降の目標水温上限も小さくなる。
また、ステップS1171では、ステップS1164と同様に、初回の目標水温上限は、車両起動直後の冷却水温度Tw以上の値に決定される。従って、車両起動直後の冷却水温度Twが高い程、2回目以降の目標水温上限が大きくなる。
また、ステップS1172では、ステップS1165と同様に、外気温Tamが高い程、目標水温上限が小さくなる。従って、外気温Tamが高い程、2回目以降の目標水温上限が小さくなる。
また、ステップS1172では、ステップS1165と同様に、シート空調装置90が作動している時(シートヒータON時)は、シート空調装置90が作動していない時(シートヒータOFF時)に比べて、目標水温上限が小さくなる。従って、シート空調装置90が作動している時(シートヒータON時)は、シート空調装置90が作動していない時(シートヒータOFF時)に比べて、2回目以降の目標水温上限が小さくなる。
また、ステップS1173では、ステップS1166と同様に、日射量Tsが高い程、目標水温上限が小さくなる。従って、日射量Tsが高い程、2回目以降の目標水温上限が小さくなる。
また、ステップS1174では、ステップS1164と同様に、室内設定温度Tsetが高い程、目標水温上限が大きくなる。従って、室内設定温度Tsetが高い程、2回目以降の目標水温上限が大きくなる。
続くステップS1110〜S1115は、上記第1実施形態(図8)と同じである。そして、ステップS1115の次に、図18に示すステップS1176へ進む。このステップS1176では、冷却水温度Twに基づくエンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号の出力を行うか否かの判定に用いる判定閾値としてのエンジンON水温TwonおよびエンジンOFF水温Twoffを決定する。なお、エンジンON水温Twonは、停止要求信号を出力することを決定する判定基準となる冷却水温度Twであり、エンジンOFF水温Twoffは、エンジンEGの作動停止信号を出力することを決定する判定基準となる冷却水温度Twである。
つまり、エンジンOFF水温Twoffは、駆動力制御装置70がエンジンEGを作動させて冷却水温度Twを昇温させる際の上限温度となる値である。つまり、駆動力制御装置70は、冷却水温度Twを昇温させる際に、冷却水温度TwがエンジンOFF水温TwoffとなるまでエンジンEGを作動させることになる。従って、本実施形態の制御ステップS1176は、上限温度決定手段を構成している。
具体的には、エンジンOFF水温Twoffは、図18のステップS1176に示すように、冷却水目標温度f(TAO)から吹出温上昇量ΔTptcを減算した値、仮の上限温度f(TAMdisp)に運転モード補正項f(運転モード)、エコノミー補正項f(エコノミー)、設定温度補正項f(設定温度)を加えた値、70℃、および目標水温上限のうち、一番小さい値を30℃と比較して、一番小さい値と30℃とのうち大きい方の値に決定する。
ここで、ステップS1176における冷却水目標温度f(TAO)から吹出温上昇量ΔTptcを減算した値(図18のステップS1176のA)は、車両用空調装置1が充分な暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度TwからPTCヒータ37を作動させることによる温度上昇分を減算した値なので、この温度をエンジンOFF水温Twoffとすれば、車両用空調装置1に確実に充分な暖房能力を発揮させることができる。
次に、仮の上限温度f(TAMdisp)に各補正項f(運転モード)、f(エコノミー)、f(設定温度)を加えた値(図18のステップS1176のB)は、不必要にエンジンEGの作動頻度を増加させない冷却水温度Twを、運転モード、エコノミースイッチの投入状態、車室内目標温度Tset等に基づいて補正した値なので、この温度をエンジンOFF水温Twoffとすれば、エンジンEGの作動頻度の増加を抑制できる。
次に、70℃(図18のステップS1176のC)は、ステップS1112で決定される仮の上限温度f(TAMdisp)の最大値と同じ値であり、確実にエンジンの作動停止信号を出力するための保護用の値として決定された値である。
さらに、目標水温上限(図18のステップS1176のD)は、車両起動後、時間の経過に従って徐々に上昇する値なので、この温度をエンジンOFF水温Twoffとすれば、車両起動時にエンジンEGの作動を抑制できる。
従って、これらのうちの一番小さい値を採用することで、エンジンOFF水温Twoffを、車両用空調装置が高い暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度TwあるいはエンジンEGの作動頻度を増加させないための冷却水温度Twに決定することができる。特に、車両起動時に目標水温上限が一番小さい値になった場合、車両起動時のエンジンOFF水温Twoffが小さな値に決定されるので、エンジンEGの作動を抑制することができる。
また、これらのうちの一番小さい値と、確実にエンジンの作動停止信号を出力するための下限値として決定された30℃とのうち、大きい方の値をエンジンOFF水温Twoffと決定することで、車両用空調装置1の要求によってエンジンEGの作動が継続されてしまうことを確実に抑制できる。
一方、エンジンON水温Twonは、頻繁にエンジンがON/OFFするのを防止するため、エンジンOFF水温Twoffよりも所定の値(本実施形態では、5℃)だけ低く決定されており、この所定の値は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
続くステップS1117は、上記第1実施形態(図9)と同じであり、冷却水温度Twに応じて、エンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号を出力するか否かの仮の要求信号フラグf(Tw)を決定する。具体的には、冷却水温度TwがステップS1116で決定されたエンジンON水温Twonより低ければ、仮の要求信号フラグf(Tw)=ONとしてエンジンEGの作動要求信号を出力することを仮決定し、冷却水温度TwがエンジンOFF水温Twoffより高ければ、仮の要求信号フラグf(Tw)=OFFとしてエンジンEGの作動停止信号を出力することを仮決定する。
続くステップS1178では、送風機32の作動状態、目標吹出温度TAO、仮の要求信号フラグf(Tw)に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定して、図4に示すステップS12へ進む。
具体的には、ステップS1178では、送風機32が作動しているときであって、かつ、目標吹出温度TAOが28℃未満の場合は、仮の要求信号フラグf(Tw)によらず、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。
また、送風機32が作動しているときであって、目標吹出温度TAOが28℃以上の場合は、仮の要求信号フラグf(Tw)がONであれば、エンジンEGを作動させる要求信号に決定し、仮の要求信号フラグf(Tw)がOFFであれば、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。さらに、送風機32が作動していないときは、目標吹出温度TAOおよび仮の要求信号フラグf(Tw)によらず、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。
制御ステップS1176にて説明したように、目標水温上限は、車両起動後、時間の経過に従って徐々に上昇する値なので、車両起動時に小さな値になる。このため、車両起動時にエンジンOFF水温Twoffが目標水温上限に決定されれば、仮の要求信号フラグf(Tw)がOFFになりやすくなり、エンジンEGを停止させる要求信号に決定されやすくなるので、エンジンEGを作動させる要求信号が出力されることが抑制される。従って、ステップS1178は、要求信号出力手段50aが駆動力制御装置70に対して要求信号を出力することを抑制する抑制手段を構成している。
本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS1168、S1175、S1176にて説明したように、上限温度決定手段である制御ステップS1176が、車両起動時にエンジンOFF水温Twoffが時間の経過に従って徐々に上昇されるように目標水温上限を決定している。
従って、車両起動時にエンジンOFF水温Twoffが小さくなって、冷却水温度TwがエンジンOFF水温Twoffに到達し易くなるので、要求信号出力手段50aが駆動力制御手段70に対してエンジンON要求信号を出力することが抑制される。つまり、車両起動時(ウォームアップ初期)に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。
延いては、バッテリが満充電に近い状態であるにも関わらずエンジンが作動してしまうという違和感を乗員に与えてしまうことを抑制できる。さらに、充電電力を走行に有効に活用して車両燃費を向上させることができる。また、エンジンEGの作動を抑制することで車外音を低減することができる。
さらに、エンジンOFF水温Twoffが時間の経過に従って上昇するので、時間の経過に従ってエンジンEGを作動させやすくすることができる。このため、時間の経過に従って暖房能力を向上させて乗員の暖房感を向上させることができる。
また、本実施形態では、制御ステップS1168、S1175、S1176にて説明したように、外気温検出手段である外気温センサ52で検出された外気温Tamが高い程、車両起動時のエンジンOFF水温Twoffが小さくなるように目標水温上限を決定している。
従って、外気温Tamが高い程、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。このため、要求される暖房能力が小さい場合、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を効果的に抑制することができる。
しかも、本実施形態では、ステップS1164、S1171で説明したように、外気温Tamが高い程、初回の目標水温上限が小さくなる。そのため、外気温Tamが高い程、車両起動後に初めて決定されるエンジンOFF水温Twoffが小さくなるので、その後、エンジンOFF水温Twoffが徐々に上昇しても、エンジンOFF水温Twoffを低い値に留めることができる。
従って、外気温Tamが高い程、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を一層抑制することができる。このため、要求される暖房能力が小さい場合、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を一層効果的に抑制することができる。
なお、ステップS1164、S1171において、車室内温度Trが高い程、初回の目標水温上限が小さくなるようにしてもよい。この場合、車室内温度Trが高い程、車両起動後に初めて決定されるエンジンOFF水温Twoffが小さくなるので、その後、エンジンOFF水温Twoffが徐々に上昇しても、エンジンOFF水温Twoffを低い値に留めることができる。
従って、車室内温度Trが高い程、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を一層抑制することができる。このため、要求される暖房能力が小さい場合、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を一層効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、制御ステップS1168、S1175、S1176にて説明したように、補助加熱手段であるシート空調装置90が作動している時(シートヒータON時)は、シート空調装置90が作動していない時(シートヒータOFF時)に比べて、車両起動時のエンジンOFF水温Twoffが小さくなるように目標水温上限を決定している。
従って、シート空調装置90が作動している際には、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。さらに、シート空調装置90が作動していれば、車室内へ送風される送風空気の温度が低くても、乗員に充分な暖房感を与えることができる。従って、乗員の暖房感を損なうことなく、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。
また、本実施形態では、制御ステップS1168、S1175、S1176にて説明したように、日射量Tsが高い程、車両起動時のエンジンOFF水温Twoffが小さくなるように目標水温上限を決定している。
従って、日射量Tsが多い程、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。このため、要求される暖房能力が小さい場合、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、制御ステップS1168、S1175、S1176にて説明したように、室内設定温度Tsetが高い程、車両起動時のエンジンOFF水温Twoffが大きくなるように目標水温上限を決定している。
従って、車室内設定温度Tsetが高く設定される程、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制しないようにすることができる。このため、車両起動時に乗員の希望に応じて暖房能力を発揮することができるので、乗員の暖房感を損なうことを抑制できる。
また、本実施形態では、制御ステップS1168、S1175、S1176にて説明したように、省動力化要求手段であるエコノミースイッチが投入(ON)されている時(エコモード時)は、エコノミースイッチが投入(ON)投入されていない時(エコモード以外時)に比べて、車両起動時のエンジンOFF水温Twoffが小さくなるように目標水温上限を決定している。
このため、省動力化が要求されているエコモード時には、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。さらに、乗員の意志によって省動力化が要求されているので、エンジンEGの作動を抑制することで多少の暖房能力の低下が生じたとしても、乗員に不快感を与えることもない。
また、本実施形態では、制御ステップS1164、S1171にて説明したように、初回の目標水温上限は、車両起動直後の冷却水温度Tw以上の値に決定される。そのため、前回の停車から車両を再起動するまでの時間の間隔が短い場合のように車両起動直後の冷却水温度Twが高い場合、それに応じてエンジンOFF水温Twoffを大きくすることができる。
従って、乗員が暖房感不足を感じて車室内温度設定スイッチによって車室内目標温度Tsetを上昇させたときに、速やかにエンジンEGを作動させて冷却水温度Twを上昇させることができるので、乗員の希望に応じて暖房能力を発揮して乗員に高い暖房感を提供することができる。
(第7実施形態)
上記第6実施形態では、車両の起動時にエンジンOFF水温Twoffが時間の経過に従って上昇するようにしているが、本第7実施形態では、車両の起動時にエンジンOFF水温Twoffが車室内温度Trの上昇に従って上昇するようにしている。
本実施形態におけるステップS11の詳細を説明するフローチャートを図19に示す。まず、ステップS1181では、エコモードであるか否かを判定する。エコモードでない場合(NO判定)、ステップS1182へ進み、内気センサ51によって検出された車室内温度Trに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、エコモード以外時の目標水温上限を決定して、ステップS1110へ進む。
本実施形態では、具体的に、図19のステップS1182に示すように、車室内温度Tr(室温)が高い程、目標水温上限が小さな値に決定される。
一方、ステップS1161にてエコモードであった場合(YES判定)、ステップS1183へ進み、内気センサ51によって検出された車室内温度Trに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、エコモード時の目標水温上限を決定して、ステップS1110へ進む。
本実施形態では、具体的に、図19のステップS1183に示すように、車室内温度Tr(室温)が高い程、目標水温上限が小さな値に決定される。また、ステップS1183で決定されるエコモード時の目標水温上限は、ステップS1182で決定されるエコモード以外時の目標水温上限に比べて、小さな値に決定される。
続くステップS1110以降は、上記第6実施形態(図8、図18)と同じである。
本実施形態によると、冬期の車両起動時のように車室内温度Trが低い場合、駆動力制御装置70に対してエンジンON要求信号が出力されにくくすることができる。このため、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。
さらに、車室内温度Trの上昇に従って、駆動力制御装置70に対してエンジンON要求信号が出力されやすくなる。このため、車室内温度Trの上昇に従って、暖房能力を向上させて乗員の暖房感を向上させることができる。
また、本実施形態では、制御ステップS1182、S1183にて説明したように、省動力化要求手段であるエコノミースイッチが投入(ON)されている時(エコモード時)は、エコノミースイッチが投入(ON)投入されていない時(エコモード以外時)に比べて、目標水温上限を小さくしているので、エコノミースイッチが投入(ON)されている時(エコモード時)は、エコノミースイッチが投入(ON)投入されていない時(エコモード以外時)に比べて、車両起動時のエンジンOFF水温Twoffが小さくなる。
このため、省動力化が要求されているエコモード時には、車両起動時に、冷却水温度を昇温させるためのエンジンEGの作動を抑制することができる。さらに、乗員の意志によって省動力化が要求されているので、エンジンEGの作動を抑制することで多少の暖房能力の低下が生じたとしても、乗員に不快感を与えることもない。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の各実施形態を適宜組み合わせてもよい。例えば、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせて、エンジンON要求抑制時間f(環境)の決定を、外気温、車室内設定温度、バッテリ81の蓄電残量SOC、車室内空気の相対湿度、エコモードの選択状況室温、日射量およびシート空調装置90の作動状況に基づいて行うようにしてもよい。
また、第6実施形態と第7実施形態とを組み合わせて、車両の起動時にエンジンOFF水温Twoffが時間の経過および車室内温度Trの上昇に従って上昇するようにしてもよい。
(2)上述の実施形態では、プラグインハイブリッド車両に適用される車両用空調装置1について説明したが、本発明の車両用空調装置1を通常のハイブリッド車両に適用してもよい。
(3)上述の実施形態では、プラグインハイブリッド車両の車両走行用の駆動力について詳細を述べていないが、本発明の車両用空調装置1を、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に適用してもよい。
また、エンジンEGを発電機80の駆動源として用い、発電された電力をバッテリ81に蓄え、さらに、バッテリ81に蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に適用してもよい。