JP2013027362A - 糖衣食品およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】口に入れた瞬間に強い酸味が感じられた後に、砂糖のおいしさが損なわれずに程よい酸味を感じることができ、かつ滑らかな舐め心地とクランチ性のある食感とを有する糖衣食品を提供する。
【解決手段】 中心部となる食品と、中心部の表面に形成されかつ中心部の重量に対して5倍以上の糖衣部と、糖衣部の表面に形成されかつ吸湿性の有機酸から成る最外層と、で構成され、糖衣部が砂糖層とビタミンC層とが交互に重なり合った多層構造で成り立ち、砂糖層に含まれる砂糖結晶の平均粒径が5〜15μmの範囲内であることを特徴とする糖衣食品。
【選択図】なし

Description

本発明は糖衣食品およびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、口に入れた瞬間に有機酸の強い酸味が感じられた後、砂糖の甘味とビタミンCの程よい酸味とが感じられる、滑らかな舐め心地とクランチ性のある食感とを有する糖衣食品およびその製造方法を提供するものである。
一般に、菓子類や錠剤等に利用される糖衣食品は、以下のように製造される。すなわち、まず中心部となる食品に、糖衣部の主成分となる糖類と、副成分となる他の糖類や澱粉等の結合剤とを含む水溶液(以下、糖衣液という)をスプレー等で散布し、中心部の表面全体に行き渡らせる。この後、必要であれば炭酸カルシウム等の微粉末混合物を散布して食品(中心部)相互間の結着を防ぎ、次に送風して糖衣部を乾燥させる工程を複数回繰り返す。その後、場合により、色素を含む糖衣液をスプレーし、送風して乾燥させる工程を繰り返して糖衣部を着色したり、さらに、着色した糖衣部の表面にワックス等で艶を出したりすることもある。また、中心部が比較的大きなものや歪なものであるときには、下掛け、中掛け、上掛けの3段階の糖衣工程を経て糖衣部が形成されるのが一般的である。
さらに、糖衣は一般的に中心部の被覆を目的として使用される技術であり、糖衣部が中心部の重量に対して2倍程度までであることが多い。例外として、極めて古くから存在しかつ砂糖の糖衣菓子として知られるチャイナマーブルのように中心部の重量に対して数十倍の糖衣部を有するものがある。このチャイナマーブルの場合、砂糖を主成分とする糖衣液を中心部に均一に散布して乾燥させる工程を繰り返し、この作業が数十日に及ぶのが一般的である。こうして得られる糖衣部は、砂糖結晶の大きさが不均一で、粒径が30μmを超えるような極めて大きい砂糖結晶をも含み、かつ砂糖結晶同士が密な構造を形成することから、非常に硬い食感を有し、時には噛み砕けない硬さにもなる。
糖衣部の主成分となる糖類には、砂糖が使用されるのが一般的である。しかしながら、砂糖を使用する際には甘味が強すぎることが問題となる。これは酸味料を加えることで解決できるが、砂糖を主体とする糖衣液に酸味料を添加すると、砂糖の一部が分解されてグルコースとフラクトースとが生成することによって糖衣液の水分の乾燥が著しく遅くなり、極端な場合には全く乾燥しなくなる。そのため、これまでに糖衣液への酸味料の添加は行われていなかった(特許文献1参照)。
そこで、食用ガムを含有する溶液に酸味料と香料との混合物および砂糖と水飴との混合物を順次添加して乳化したシロップと、砂糖とを、転動している食品に対して交互に添加して糖衣部を形成する方法が提案されている(特許文献2参照)。この方法によれば、砂糖を分解させることなく、酸味料を糖衣部に添加している。しかしながら、この方法により得られる糖衣部は、ソフトな食感を有する軟質コーティングであり、滑らかな舐め心地とクランチ性のある食感を有する硬質コーティングではなかった。
さらに、クエン酸等の有機酸とブドウ糖とを含有し、表面に複数の角状の突起を有する糖衣部により中心部表面を被覆した突起付き酸糖衣製品(特許文献3参照)や、パラチノースを主成分とする糖衣部にクエン酸等の有機酸を添加した糖衣物(特許文献4参照)等も提案されている。しかしながら、これらは糖衣部の主成分となる糖類が砂糖ではなくブドウ糖やパラチノースである上に、糖衣部は軟質コーティングであり、滑らかな舐め心地やクランチ性の食感を有するものではなかった。糖衣部が硬質コーティングであるものとしては、アスコルビン酸を糖衣部に含有させた糖衣物(特許文献5参照)が提案されているが、これはアスコルビン酸の保存性を高めることを目的としており、糖衣部を舐めて喫食するものではなかった。
糖衣部に酸味料を添加し、かつその糖衣部が砂糖を主成分とする硬質コーティングである、糖衣部を舐めて喫食する糖衣食品も提案されている(特許文献6、7参照)。これらは、砂糖の甘味と酸味料の酸味とが感じられ、滑らかな舐め心地とクランチ性のある食感を有するおいしい糖衣食品であるが、ビタミンC粉末による食感のざらつきや有機酸による砂糖の分解が生じないようにするために、酸味料を多量に添加することができず、強い酸味を付与できないという問題があった。
強い酸味が付与された菓子としては、「ピュレグミ(登録商標)、カンロ株式会社製」や、「シゲキックス(登録商標)、ユーハ味覚糖株式会社製」等、粉末状の酸味料をコーティングしたグミキャンディが人気となっている。また、「こっちの梅はすっぱいぞ♪(商品名)、株式会社千雀飴本舗製」等、ハードキャンディに同様のコーティングを行ったものもある。これらはいずれもグミキャンディやハードキャンディの表面に粉末状の酸味料を付着させたものであるが、表面が滑らかで水分含量の低い糖衣食品には粉末が付着しにくく、同様の方法で強い酸味を付与することは困難であった。
特許第4494536号明細書 特許第2978685号明細書 特開平8−89174号公報 特許第2923072号明細書 特許第3562660号明細書 特許第3765419号明細書 特開2007−222157号公報
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、中心部となる食品が糖衣部により被覆された糖衣食品において、口に入れた瞬間に強い酸味が感じられた後に、砂糖のおいしさが損なわれずに程よい酸味を感じることができ、かつ滑らかな舐め心地とクランチ性のある食感とを有する、新規な糖衣食品およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
前記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、糖衣部を砂糖層とビタミンC層との多層構造とすることで、ビタミンCによる砂糖の分解が極小まで抑えられることを見出し、さらに、糖衣部の多層構造中の砂糖層において、砂糖結晶の平均粒径を5〜15μmの範囲にコントロールすることにより、砂糖のおいしさが損なわれずに程よい酸味を感じることができ、かつ、滑らかな舐め心地とクランチ性のある食感とが得られることを見出した。また本発明者らは、該糖衣部の表面に吸湿性の有機酸から成る最外層を形成することにより、食感のざらつきや砂糖の分解が生じずに、口に入れた瞬間に強い酸味が感じられる糖衣食品となることを発見した。
さらに、本発明者らは、中心部となる食品に砂糖を主成分とする糖衣液を散布し乾燥させて砂糖層を形成した後に、該砂糖層の表面にビタミンC粉末を散布してビタミンC層を形成する工程と該ビタミンC層の表面に上記と同じ糖衣液を散布して乾燥させて砂糖層を形成する工程とを交互に1回以上行って多層構造の糖衣部を形成すること、さらに該糖衣部の表面に揮発性の高いアルコールを溶媒とした吸湿性の有機酸溶液を散布しアルコールを揮発させることにより、前記糖衣食品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る糖衣食品は、中心部となる食品と、前記中心部の表面に形成されかつ前記中心部の重量に対して5倍以上の糖衣部と、前記糖衣部の表面に形成されかつ吸湿性の有機酸から成る最外層と、で構成される糖衣食品であって、前記糖衣部が砂糖層とビタミンC層とが交互に重なり合った多層構造で成り立ち、前記砂糖層に含まれる砂糖結晶の平均粒径が5〜15μmの範囲内であることを特徴とするものである。
また、本発明に係る糖衣食品の製造方法は、
(1)中心部となる食品の表面に砂糖を主成分とする糖衣液を散布し、乾燥させて砂糖層を形成する第1の工程と、
(2)前記砂糖層の表面にビタミンC粉末を散布してビタミンC層を形成する工程と、前記ビタミンC層の表面に前記糖衣液を散布し、乾燥させて砂糖層を形成する工程と、を交互に1回以上ずつ行うことにより、前記中心部の表面に多層構造で成り立つ糖衣部を形成する第2の工程と、
(3)前記糖衣部の表面に揮発性の高いアルコールを溶媒とした吸湿性の有機酸溶液を散布し、アルコールを揮発させて、吸湿性の有機酸から成る最外層を形成する第3の工程と、
を含むことを特徴とするものである。
本発明により、口に入れた瞬間に強い酸味が感じられた後に、砂糖のおいしさが損なわれずに程よい酸味を感じることができ、かつ滑らかな舐め心地とクランチ性のある食感とを有する、新規な糖衣食品を提供することが可能になった。
本発明の糖衣食品は、中心部となる食品と、中心部の表面に形成されかつ中心部の重量に対して5倍以上の糖衣部と、糖衣部の表面に形成されかつ吸湿性の有機酸から成る最外層と、で構成される糖衣食品であって、糖衣部が砂糖層とビタミンC層とが交互に重なり合った多層構造で成り立ち、砂糖層に含まれる砂糖結晶の平均粒径が5〜15μmの範囲内であることに特徴がある。特に本発明の糖衣食品は、前記した構成を有する糖衣部の表面に、吸湿性の有機酸から成る最外層が形成されていることを最大の特徴とする。これにより、本発明の糖衣製品を口に入れた瞬間に、さわやかで強い酸味を感じることができる。
中心部となる食品としては特に限定されないが、例えば、キャンディ、ガム、焼菓子、ドライフルーツ、ナッツ等が挙げられる。また、食品の形態としても特に限定されないが、例えば、打錠物、カプセル、丸薬等が挙げられる。また、これらの食品の大きさ、形状についても特に限定はない。
中心部の表面を被覆する糖衣部は、砂糖層とビタミンC層とが少なくとも1層ずつ交互に積層した多層構造を有し、かつ、中心部に対して5倍以上、好ましくは10倍以上の重量を有している。このような糖衣部を形成することにより、砂糖のおいしさが損なわれずに程よい酸味を感じることができ、かつ滑らかな舐め心地とクランチ性のある食感とが得られる。
糖衣部の多層構造は、中心部の表面に接する側から少なくとも1層ずつの砂糖層とビタミンC層とが交互に重なり合った多層構造であることが好ましく、中心部の表面に接する側から少なくとも砂糖層、ビタミンC層および砂糖層が重なり合った3層以上の多層構造であることがさらに好ましい。このような3層以上の多層構造を有することにより、クランチ性のある食感が適度に向上し、歯触りが良好になる。さらに、糖衣部における中心部の表面から最も離れた側の層(すなわち糖衣部の最外層)は、砂糖層であることが好ましい。これにより、吸湿性の有機酸から成る最外層の、糖衣部への被覆性および付着性が向上し、生産効率が高くなる。
また、糖衣部の重量が中心部の重量の5倍以上であることにより、糖衣部の厚みが適度に厚くなり、砂糖のおいしさとビタミンCの適度な酸味とを感じる時間が長くなり、かつ、クランチ性のある食感(カリっとして軽く噛み砕ける歯触り感)を明らかに感じることができる。
糖衣部における砂糖層は砂糖結晶を含み、砂糖結晶の平均粒径が、5〜15μmであることを特徴とする。なお、本発明では、砂糖結晶の平均粒径は、糖衣部の断面を電子顕微鏡により1000倍で観察し、任意に選択した5つの砂糖結晶の長辺と短辺との平均粒径とした。砂糖結晶の平均粒径が前記範囲内であることにより、砂糖の甘みとビタミンCの酸味とを適度にバランス良く味わうことができる。さらに、砂糖結晶の平均粒径が前記範囲である砂糖層の表面に吸湿性の有機酸から成る最外層を設けることにより、吸湿性の有機酸が結晶状態で砂糖層の表面に均一に付着する。その結果、本発明の糖衣食品を口に入れた瞬間に、さわやかで強い酸味が感じられるとともに、その直後に感じられる砂糖のおいしさとビタミンCの程良い酸味とがミックスした味を一層際立たせることができる。
砂糖結晶の平均粒径が5μm未満では、糖衣部が非常に脆い食感となり、そのような場合には、たとえ砂糖層とビタミンC層との多層構造にしても、その酸味感は劣ったものとなる。一方、砂糖結晶の平均粒径が15μmを超えると、砂糖層に含まれる砂糖結晶の粒径のばらつきが大きくなり、砂糖結晶同士が密な構造を形成することから、糖衣部が非常に硬い食感を有し、時には噛み砕けない硬さにもなる。
砂糖層は、砂糖と共に、本発明の糖衣食品の食感を阻害しない範囲で結合剤を含むことができる。結合剤としては、アラビアガム、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、結晶セルロース、粉末セルロース、デキストリン、澱粉、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ゼラチン、キサンタンガム、トラガント、マクロゴール、グリコール等を挙げることができる。これらの結合剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
また、砂糖層には、砂糖のおいしさを損なわない程度にキシリトール等の糖アルコールや、他の糖を加えてもよい。このような糖としては、果糖、ブドウ糖、液糖、酵素糖化水飴、酸糖化水飴、麦芽糖、オリゴ糖、高分子水飴、澱粉、還元基を持たない糖アルコール等が挙げられる。これらの中でも、酵素糖化水飴、酸糖化水飴、オリゴ糖、高分子水飴、澱粉が、砂糖の再結晶化(糖化)を防ぐ点で、本発明において好ましい糖である。これらの糖は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
さらに、砂糖層には、上記以外の成分として、香料、酸、果汁、色素等を適宜加えることができる。
砂糖層は、砂糖を含有する糖衣液を、スプレーその他の液状物の散布方法により、中心部またはビタミンC層の表面に散布し、乾燥することにより作製できる。この時、乾燥後に形成される砂糖層中の砂糖結晶の平均粒径を前記範囲内にするためには、例えば、糖衣液の液温、糖衣液の乾燥温度、糖衣液の乾燥時間等を適宜調整すればよい。糖衣液は、例えば、砂糖および必要に応じて上記した各成分の少なくとも1種を、水等の適当な溶媒に溶解または分散することにより調製できる。
糖衣部のビタミンC層を形成するためのビタミンCとしては、一般に知られているビタミンCを用いればよく、粉末果汁等のビタミンCを多量に含有するものを用いてもよい。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。さらに、ビタミンCの粒度および使用量に特に制限はないが、粒度は325メッシュパス以下であることが好ましく、使用量は本発明の糖衣食品の総重量に対して0.5〜3.0重量%程度が好ましい。すなわち、本発明では、ビタミンCを複数回に分けて散布するが、その合計使用量が前記範囲にあることが好ましい。
糖衣部の表面に形成される最外層は、吸湿性の有機酸からなっている。最外層では、吸湿性の有機酸が、糖衣部表面(砂糖層表面)に結晶状態で分布している。吸湿性の有機酸の結晶は、糖衣部表面に付着し、ほぼ均一に分布している。これにより、本発明の糖衣食品を口に入れた瞬間に、強くさわやかな酸味を感じることが可能になる。なお、従来から酸味料として知られているビタミンCや吸湿性を有しない有機酸であるフマル酸等からなる最外層を形成した場合には、その糖衣食品を口に入れた瞬間に、酸味と共にざらつきを感じる。
吸湿性とは、一般的には物質が大気から水を吸収する性質のことをいうが、本発明での吸湿性の有機酸とは、温度37℃、相対湿度85%の環境下で保持したときに吸湿して溶解する性質を有する有機酸のことをいう。従って、常温では液体で存在する酢酸や乳酸(発酵乳酸)等の液酸、また常温では固体であっても前記環境下では溶解しないフマル酸等は、本発明における吸湿性の有機酸の範囲外である。本発明の糖衣食品においては、前記吸湿性の有機酸としては、クエン酸、酒石酸およびリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも1種を使用することが、より好ましい態様である。
吸湿性の有機酸として、上記したクエン酸、酒石酸およびリンゴ酸から選ばれる少なくとも1種を用いることにより、糖衣部表面の滑らかさを損なうことなく、これらの有機酸を均一にかつ結晶状態で糖衣部の表面に安定的に付着させることができる。その結果、本発明の糖衣食品を口に入れた瞬間に強くさわやかな酸味を十分に感じることができ、ざらつき感もない。
これに対し、例えば、酢酸や乳酸を糖衣部表面に付着させると、これらが常温で液体であることから、表面が湿った状態になり、糖衣食品として成り立たない。また、フマル酸を用いた場合には、フマル酸がアルコール等の溶媒に溶解しにくいので、糖衣部の表面にフマル酸を均一に付着させることができない。その結果、フマル酸からなる最外層を有する糖衣食品を口に入れた瞬間に、酸味の強さが一定せず、刺激性の強い不快な酸味を感じる場合がある。また、ビタミンCからなる最外層を有する糖衣食品は、ざらつき感が大きくなる。
吸湿性を有する有機酸からなる最外層は、例えば、揮発性の高いアルコールを溶媒とする吸湿性の有機酸溶液を、スプレーその他の液状物の散布方法により、糖衣部表面に散布し、乾燥させることにより作製できる。前記有機溶媒溶液に含有されるアルコールは、食用でありかつ揮発性を有していれば特に限定はないが、揮発性を有し乾燥時間が短い高純度のアルコールが好ましい。このような揮発性のアルコールを用いることにより、吸湿性の有機酸を糖衣部の表面に均一にかつ結晶状態で安定的に付着させ得る。例えば、溶媒として水を用いると、吸湿性の有機酸の糖衣部表面への付着が不十分になるだけでなく、ざらつき感が生じ、本発明の糖衣食品の風味および商品価値を損なう。また、最外層には、食感のざらつきやべたつきを生じない程度に、香料、果汁、色素等を加えてもよい。
前記有機溶媒溶液は、吸湿性の有機酸を揮発性の高いアルコールに溶解させることにより、作製できる。この有機酸溶液における有機酸の濃度は1〜50重量%、より好ましくは5〜20重量%である。1重量%未満であると、溶液中の有機酸濃度が低いために、有機酸から成る最外層を形成するのに時間がかかり、50重量%を超えると、有機酸が溶解するのに時間がかかったり、有機酸が溶解できずに沈殿したりしてしまう。
本発明の糖衣食品の製造方法は、第1の工程と、第1の工程に引き続いて行われる第2の工程と、第2の工程に引き続いて行われる第3の工程と、を含むことを特徴とする。以下、各工程について詳しく説明する。なお、本発明の製造方法によれば、吸湿性の有機酸からなる最外層を形成している。これにより、ざらついた食感を舌で感じることなく、刺激性の強い不快な酸味を感じることなく、糖衣部および最外層に起因する酸味や甘み等の風味の変化、糖衣部の滑らかな舌触りおよび糖衣部のカリッとして軽く噛み砕ける食感、中心部のおいしさ等を一粒で味わうことのできる糖衣食品を提供することができる。
第1の工程では、中心部となる食品の表面に砂糖を主成分とする糖衣液を散布し、乾燥させて砂糖層を形成する。糖衣液の中心部表面への散布は、例えば、レボリングバン等の食品コーティング装置に中心部となる食品を投入し、中心部となる食品の表面全体に均一に掛かるように糖衣液を散布することにより行なわれる。このとき、レボリングパンの回転数は好ましくは10〜50rpmとする。これにより、中心部となる食品の表面に、糖衣液が散布される。次に、糖衣液を乾燥させることにより、砂糖層を形成する。乾燥は、例えば、温度50〜70℃、湿度45〜65%、風速3〜8m/秒程度の送風下で行われる。
砂糖層における砂糖結晶の粒径のコントロールは、糖衣液の乾燥条件および乾燥時間による要因が大きく、乾燥が遅すぎると結晶が大きくなりすぎ、場合によっては歯が入らない程に硬くなる。また、乾燥が速すぎると結晶が大きくならずに、脆い食感となる。この砂糖結晶の粒径のコントロールは、糖衣液の温度にも左右され、糖衣液の温度を40〜90℃にすることが好ましく、さらに好ましくは70〜80℃の範囲に調温する。
第2の工程では、前記第1の工程で形成された砂糖層の表面に、ビタミンC層と砂糖層とを少なくとも1層ずつ交互に形成し、糖衣部を形成する。ビタミンC層は、前記第1の工程または本工程で形成された砂糖層の表面に、ビタミンC粉末を均一になるように散布することにより形成される。ビタミンCを散布するタイミングも重要であり、クランチ性のある食感を形成する要因の一つになっている。ビタミンCをタイミングよく散布することで、砂糖層とビタミンC層との多層構造が形成される。これにより、砂糖のおいしさとビタミンCのほど良い酸味とを同時に感じることができ、舐め心地が滑らかで、クランチ性の食感を有する糖衣食品となる。
ビタミンCは、例えば、糖衣液が十分に乾燥せず、湿潤状態にある段階で散布することが好ましい。すなわち、糖衣液を乾燥させている途中で、ビタミンCを散布することが好ましい。また、糖衣液の乾燥温度も重要であり、一般的な20〜40℃よりも高い、例えば50〜60℃程度、特に55℃程度の乾燥温度が、本発明にとって好ましい温度条件である。ビタミンC層の表面への砂糖層の形成は、中心部となる食品の表面への砂糖層の形成と同様にして実施することができる。
上記のようなビタミンC層の形成および砂糖層の形成を交互に少なくとも1回以上行うことにより、糖衣部が形成される。この作業は、糖衣部が中心部に対して少なくとも5倍以上の重量を有するようになるまで繰り返す。また、砂糖層とビタミンC層とが交互に重なり合った少なくとも3層以上の多層構造を有する糖衣部が形成されるまで繰り返すことが好ましい。
第3の工程では、第2の工程で形成された糖衣部の表面に、揮発性の高いアルコールを溶媒とした吸湿性の有機酸溶液を表面に均一になるように散布し、得られた有機酸溶液からアルコールを揮発させることにより、吸湿性の有機酸から成る最外層を形成する。これにより、本発明の糖衣食品を得ることができる。本発明の糖衣食品は、最外層の形成により、口に入れた瞬間にさわやかでかつ強い酸味を感じることができる。
次に実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら制限されるものではない。なお、実施例中の組成に関する数字は重量部を意味する。
(実施例1)
「造粒物の作製」
下記表1に示す組成の造粒物を流動層造粒機にて作製した。得られた造粒物の粒径は1mm以下であり、造粒物の平均粒径は250μmであった。
Figure 2013027362
「糖衣を施す打錠物(中心部)の作製」
下記表2に示す組成にて各成分を混合し、打錠機にて直径5mm、単重0.07gの打錠物を作製した。この打錠物が、中心部となる。
Figure 2013027362
「糖衣液の作製」
下記表3に示す組成にて各成分を水に溶解して糖衣液を作製した。なお、糖度は80%に調整し、温度は80℃とした。
Figure 2013027362
「有機酸溶液の作製」
下記表4に示す組成にて各成分を混合して有機酸溶液を作製した。
Figure 2013027362
「糖衣食品の作製」
中心部(打錠物)を糖衣用のレボリングパンに投入し、回転数15rpmで回転させながら、糖衣液を掛けて被覆して55℃の送風下で乾燥する砂糖層の形成と、ビタミンCの散布によるビタミンC層の形成とを交互に繰り返し行った。ビタミンCは、中心部重量に対して、3倍、3.5倍、4倍、5倍、5.5倍、7倍、7.5倍、8.5倍、12倍、15倍、17倍および18.5倍の重量まで糖衣部を形成した各段階で、完全に乾ききっていない湿潤状態の砂糖層の表面に散布した。ビタミンCとしては、サイズ325メッシュの粉末を用いた。各段階において散布したビタミンCの合計量は、最終的に得られた糖衣食品の総重量に対して1%であった。こうして、砂糖層とビタミンC層とが重ね合わさった多層構造を有し、中心部重量に対して20倍の糖衣部を形成した。
さらに、上記で形成された糖衣部の表面に有機酸溶液を散布し、25℃の送風下で乾燥する工程を繰り返し行い、有機酸から成る最外層を形成し、目的の糖衣食品を作製した。
得られた糖衣食品を切断し、その断面を電子顕微鏡で観察すると、砂糖層における砂糖結晶の平均粒径は7μmであり、低倍率での観察では砂糖層とビタミンC層とが交互に重なり合った多層構造となっていた。また、砂糖層の断面の観察により、砂糖結晶間には僅かではあるが隙間を有することが分かった。
また、この糖衣食品は、口に入れた瞬間に強くてさわやかな酸味を感じた後、砂糖のおいしさと程よい酸味、および滑らかな舐め心地とクランチ性のある食感を感じることができ、非常においしい糖衣食品であった。
(比較例1)
糖衣液の乾燥時の送風温度を30℃とする以外は、実施例1と同様に糖衣食品の作製を行った。
得られた糖衣食品を切断し、その断面を電子顕微鏡で観察すると、砂糖層とビタミンC層とが多層構造となっていたが、砂糖結晶の大きさは不均一であり、平均粒径が20μmの極めて大きい結晶も存在し、砂糖結晶間が密であった。また、この糖衣食品は、実施例と同様の、口に入れた瞬間の強い酸味や、砂糖のおいしさと程よい酸味が感じられる糖衣部を有するものの、食感は非常に硬くて噛み砕くことができなかった。
(比較例2)
糖衣液の乾燥時の送風温度を80℃とする以外は、実施例1と同様に糖衣食品の作製を行った。
得られた糖衣食品を切断し、その断面を電子顕微鏡で観察すると、砂糖層とビタミンC層とが多層構造となっていたが、砂糖結晶の平均粒径は2μmであった。また、この糖衣食品は、実施例と同様の、口に入れた瞬間の強い酸味や、砂糖のおいしさと程よい酸味が感じられる糖衣部を有するものの、食感は非常に脆く、噛むとぼろぼろと崩れてしまった。
(比較例3)
有機酸溶液を散布して最外層を形成しない以外は、実施例1と同様に糖衣食品の作製を行った。
得られた糖衣食品は、実施例と同様に、滑らかな舐め心地とクランチ性のある食感、砂糖のおいしさと程よい酸味が感じられるものの、口に入れた瞬間の強い酸味がないために、喫食した際のインパクトに欠けるものであった。
(比較例4)
有機酸として、酒石酸に代えてフマル酸を使用する以外は、実施例1と同様に糖衣食品の作製を行なった。しかし、最外層を形成する際に、フマル酸がエタノール(揮発性を有するアルコール)に溶解しないので、糖衣層の表面にフマル酸を十分に付着させることができなかった。得られた糖衣食品を口に入れた瞬間には、強くさわやかな酸味を感じることができず、最外層から糖衣部への味の変化も強く感じることができなかった。
(比較例5)
有機酸として、酒石酸に代えて酢酸を使用する以外は、実施例1と同様に糖衣食品の作製を行なったが、酢酸が常温で液体であるため、得られた食品の表面が湿った状態になり、糖衣食品として成り立っていなかった。

Claims (5)

  1. 中心部となる食品と、前記中心部の表面に形成されかつ前記中心部の重量に対して5倍以上の糖衣部と、前記糖衣部の表面に形成されかつ吸湿性の有機酸から成る最外層と、で構成される糖衣食品であって、
    前記糖衣部が砂糖層とビタミンC層とが交互に重なり合った多層構造で成り立ち、前記砂糖層に含まれる砂糖結晶の平均粒径が5〜15μmの範囲内であることを特徴とする糖衣食品。
  2. 前記有機酸がクエン酸、酒石酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1に記載の糖衣食品。
  3. 前記糖衣部は、前記中心部の表面に接する側から、少なくとも前記砂糖層、前記ビタミンC層および前記砂糖層が重なり合った3層以上の多層構造で成り立っている請求項1または2に記載の糖衣食品。
  4. 前記糖衣部の前記中心部の表面から最も離れた側の層が前記砂糖層である請求項1〜3のいずれか1項に記載の糖衣食品。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の糖衣食品の製造方法であって、
    (1)中心部となる食品の表面に砂糖を主成分とする糖衣液を散布し、乾燥させて砂糖層を形成する第1の工程と、
    (2)前記砂糖層の表面にビタミンC粉末を散布してビタミンC層を形成する工程と、前記ビタミンC層の表面に前記糖衣液を散布し、乾燥させて砂糖層を形成する工程と、を交互に1回以上ずつ行うことにより、前記中心部の表面に多層構造で成り立つ糖衣部を形成する第2の工程と、
    (3)前記糖衣部の表面に揮発性の高いアルコールを溶媒とした吸湿性の有機酸溶液を散布し、アルコールを揮発させて、吸湿性の有機酸から成る最外層を形成する第3の工程と、を含むことを特徴とする、糖衣食品の製造方法。
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