JP2013027287A - 永久磁石同期電動機の永久磁石の不可逆減磁が発生したか否かを検出する制御装置 - Google Patents

永久磁石同期電動機の永久磁石の不可逆減磁が発生したか否かを検出する制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】永久磁石同期電動機の駆動軸の動作範囲が制限された場合でも永久磁石同期電動機の磁石の不可逆減磁が発生したか否かを適切に検出することができる制御装置を提供する。
【解決手段】正弦波状指令信号生成部17は、永久磁石同期電動機3へのトルク指令に対する正弦波状指令信号を生成する。推定トルク定数計算部23は、正弦波状指令信号の複数周期に亘る同一の動作状態での複数の電流値と複数の加速度値から取得した電流代表値及び加速度代表値と、永久磁石同期電動機3に関連する予め設定されたイナーシャとから、永久磁石同期電動機3に関連する推定トルク定数を計算する。減磁検出部24は、推定トルク定数と永久磁石同期電動機3に関連する予め設定されたトルク定数との差分に基づいて、永久磁石同期電動機3の永久磁石34a,34b,34c,34dに不可逆減磁が発生したか否かを検出する。
【選択図】図1

Description

本発明は、工作機械等においてワークや工具のような被駆動体を動作させる永久磁石同期電動機の永久磁石の不可逆減磁が発生したか否かを検出する制御装置に関する。
従来、ステータとロータのうちのいずれか一方に永久磁石が設けられた回転型サーボモータ、ステータとスライダのうちのいずれか一方に永久磁石が設けられたリニアサーボモータ、ステータとバイブレータのうちのいずれか一方に永久磁石が設けられた振動型サーボモータ等の永久磁石同期電動機が、種々の分野で広く用いられている。
永久磁石同期電動機において、永久磁石同期電動機の永久磁石の異常な温度上昇、永久磁石同期電動機の巻線に流れる異常な駆動電流等が原因で永久磁石同期電動機の永久磁石に不可逆減磁が発生することがある。
この場合、永久磁石電動機が所定のトルクを生成することができないので、永久磁石動機電動機によって動作する被駆動体の実際の移動軌跡は、CNC(数値制御装置)等の上位制御装置によって指令される被駆動体の移動軌跡から外れ、軌跡精度の悪化や、場合によっては被駆動体の破損を引き起こす可能性がある。
したがって、永久磁石電動機の永久磁石の不可逆減磁が原因で引き起こされる加減速能力の低下による軌跡精度の悪化や、場合によっては被駆動体の破損を回避するためには、永久磁石同期電動機の永久磁石の不可逆減磁が発生したか否かを検出する必要がある。
従来、永久磁石同期電動機の永久磁石の不可逆減磁を検出するために、永久磁石動機電動機の被駆動体の算出イナーシャと、永久磁石電動機に固有の既定イナーシャとを、永久磁石電動機のロータの回転角度に基づいて検出された磁極位置ごとに比較して、減磁が生じている永久磁石の位置を特定する制御装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
特許第38574425号公報
しかしながら、従来の制御装置では、算出イナーシャと既定イナーシャとを永久磁石の位置ごとに比較するので、永久磁石電動機のロータを少なくとも1電気角以上回転させる必要がある。したがって、工作機械等において永久磁石同期電動機を用いて被駆動物を円弧運動させる場合のように、永久磁石同期電動機の駆動軸の動作範囲が制限され、永久磁石電動機のロータを1電気角以上回転させることができないときには、永久磁石同期電動機の永久磁石の不可逆減磁の位置を特定することができない。さらに従来の制御装置では、イナーシャを推定することで間接的に減磁を検出している。この場合、トルク定数と検出電流の積を、検出加速度で割ることで算出するが、一般に加速度は速度の差分から求めるためノイズが入りやすく、除算による誤差を含みやすい。よって、加速度が小さい場合には演算精度が大きく悪化する場合があった。
本発明の目的は、永久磁石同期電動機の駆動軸の動作範囲が制限された場合でも永久磁石同期電動機の永久磁石の不可逆減磁が発生したか否かを適切に検出することができる制御装置を提供することである。さらに、トルク定数を推定することで、減磁を直接的に検出する。この場合、イナーシャと検出加速度の積を、検出電流で割って求めるので、除算による誤差を含みにくいので精度的に優れた制御装置を提供できる。
本発明による制御装置は、永久磁石同期電動機への位置指令信号、速度指令信号及びトルク指令信号のうちのいずれか一つに対する正弦波状指令信号を生成する正弦波状指令信号生成部と、前記永久磁石同期電動機に流れる電流値を取得する電流値取得部と、前記永久磁石同期電動機の加速度値を取得する加速度値取得部と、前記正弦波状指令信号の複数周期に亘る同一の動作状態での複数の前記電流値と複数の前記加速度値から取得した電流代表値及び加速度代表値と、前記永久磁石同期電動機に関連する予め設定されたイナーシャとから、前記永久磁石同期電動機に関連する推定トルク定数を計算する推定トルク定数計算部と、前記推定トルク定数と前記永久磁石同期電動機に関連する予め設定されたトルク定数との差分に基づいて、前記永久磁石同期電動機の永久磁石に不可逆減磁が発生したか否かを検出する減磁検出部と、を備える。
好適には、本発明による制御装置は、前記永久磁石同期電動機の速度値又は速度の極性に応じた摩擦を計算する摩擦計算部と、前記摩擦に応じて前記電流値を補正した補正電流値を生成する補正電流値生成部と、を更に備える。
好適には、本発明による制御装置は、前記永久磁石同期電動機に流れる電流値のオフセット成分を除去するオフセット成分除去部を更に備える。
好適には、前記減磁検出部は、前記差分を複数の減磁レベルと比較し、前記永久磁石同期電動機の永久磁石に不可逆減磁が発生した場合にアラームを生成し又は前記永久磁石同期電動機の動作を制限するために、前記差分と前記複数の減磁レベルとの比較結果を出力する。
好適には、前記減磁検出部は、前記推定トルク定数及び前記予め設定されたトルク定数に基づいて前記永久磁石同期電動機のトルク定数の減少率を計算し、前記減少率に基づいて前記永久磁石同期電動機の速度ゲインを変更する減少率計算及び速度ゲイン変更部を有する。
本発明によれば、正弦波状指令信号の複数周期に亘る同一の動作状態での複数の電流値と複数の加速度値から取得した電流代表値及び加速度代表値と、永久磁石同期電動機に関連する予め設定されたイナーシャとから、永久磁石同期電動機に関連する推定トルク定数を計算し、推定トルク定数と永久磁石同期電動機に関連する予め設定されたトルク定数との差分に基づいて、永久磁石同期電動機の永久磁石に不可逆減磁が発生したか否かを検出する。これによって、永久磁石同期電動機は、推定トルク定数計算時に正弦波状指令信号に応じた周期動作を短時間行うことになるので、推定トルク定数計算時の永久磁石同期電動機の動作範囲を小さくすることができる。このように永久磁石同期電動機の動作範囲を小さくすることができるので、永久磁石電動機のロータを1電気角以上回転させる必要がなくなる。したがって、永久磁石同期電動機の駆動軸の動作範囲が制限された場合でも永久磁石同期電動機のロータの磁石の不可逆減磁を適切に検出することができる。
本発明の第1の実施の形態の制御装置を有するシステムのブロック図である。 本発明の第1の実施の形態の制御装置の動作のフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態の制御装置を有するシステムのブロック図である。 本発明の第3の実施の形態の制御装置を有するシステムのブロック図である。
本発明による制御装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、図面中、同一構成要素には同一符号を付す。
図1は、本発明の第1の実施の形態の制御装置を有するシステムのブロック図である。図1において、制御装置1は、制御装置1に接続されたCNC(数値制御装置)等の上位制御装置2からの作業工程に応じた指令信号に基づいて、永久磁石同期電動機3の位置、速度、トルク等を制御する。制御装置1の制御により、永久磁石同期電動機3に接続されたテーブル、アーム、それらに着脱されるワーク等の被駆動体4が所定の運動(例えば、円弧運動)を行うようになる。
制御装置1が永久磁石同期電動機3の位置、速度、トルク等を制御するために、永久磁石同期電動機3の速度(回転速度)を検出し、検出した速度を制御装置1に供給する検出器5を設ける。検出器5を、例えば、永久磁石同期電動機3の速度に比例したパルスを生成するエンコーダとする。
永久磁石同期電動機3は、例えば、工作機械においてワークを保持するテーブルの位置や姿勢を変えるためのもの、ロボットのアームを回転操作させるもの等であってもよい。本実施の形態では、永久磁石同期電動機3を、検出器5が取り付けられた回転軸31を有するロータ32と、ロータ32を取り囲むように配置されたステータ33とを有する回転型サーボモータとする。
ロータ32は、90°間隔で配置された4個の永久磁石34a,34b,34c,34dを有する。永久磁石34a,34b,34c,34dは、ステータ33側の端部がロータ32の回転方向に対して互いに90°ずつ離れるとともに、永久磁石34a,34b,34c,34dの外側の端部が交互にN極、S極、N極及びS極となるように配置される。
ステータ33は、120°間隔で配置され、U相、V相及びW相の交流電流がそれぞれ供給される3個のコイル35u,35v,35wを有する。したがって、永久磁石同期電動機3は、3相同期電動機として機能する。
本実施の形態によれば、制御装置1は、後に詳細に説明するように、永久磁石34a,34b,34c,34dに不可逆減磁が発生したか否かを検出し、不可逆減磁が発生したか否かについての検出結果を上位制御装置2に出力し、上位制御装置2は、永久磁石34a,34b,34c,34dに不可逆減磁が発生した場合にアラームを生成し又は永久磁石同期電動機3の動作を制限する。また、本実施の形態では、後に詳細に説明するように、上位制御装置2は、アラームを生成するためにLED等のランプ6を点灯させ、永久磁石同期電動機3の動作を停止させる。
制御装置1は、位置制御部11と、速度制御部12と、加算器13と、電流制御部14と、アンプ15と、正弦波指令信号周波数設定部16と、正弦波指令信号生成部17と、電流値取得部18と、速度値取得部19と、サンプリングデータ記憶部20と、加速度取得部21と、既知データ記憶部22と、推定トルク23と、減磁検出部24と、を備える。
なお、制御装置1の各部及び上位制御装置2は、便宜上別個の構成として示しているが、別個のハードウェアに対応するものでなくてもよく、各部間の明確な区分を持たないハードウェアによって実現されるものであってもソフトウェアによって実現されるものであってもよい。なお、ソフトウェアによって実現される場合、各部を、別個のソフトウェア部分として構成することもできるが、各部間の明確な区分を持たないソフトウェアによって実現されるものであってもよい。
位置制御部11は、設定された位置ゲインに基づいて、上位制御装置2からの位置指令信号と、検出器5からの速度のフィードバック信号を積分することによって生成される位置のフィードバック信号とに応じた動作を行う。速度制御部12は、設定された速度ゲインに基づいて、位置制御部11からの速度指令信号と、検出器5からの速度のフィードバック信号とに応じた動作を行う。加算器13は、一方の入力部に入力される速度制御部12からのトルク指令信号と、他方の入力部に入力される後述する正弦波状指令信号とを加算し、加算器13の出力信号を電流制御部14に供給する。
電流制御部14は、加算器13の出力信号と、アンプ15からの電流のフィードバック信号とに応じた動作を行う。アンプ15は、アンプ15に入力される電流制御部14の出力信号に応じて、永久磁石同期電動機3への供給電力を制御する。本実施の形態において、電流のフィードバック信号とは、3相同期電動機として機能する永久磁石同期電動機3の3相電流フィードバックをサンプリングし、検出器5によって取得される位相情報を用いて、3相交流電流値から2相交流電流値にdq変換した結果の有効電流であるq相電流フィードバックを意味する。
正弦波状指令信号周波数設定部16は、正弦波状指令信号生成部17が生成する正弦波状指令信号の周波数を所定の周波数(例えば、10Hz)に設定する。正弦波状指令信号生成部17は、正弦波状指令信号周波数設定部16によって設定された周波数を有する正弦波状指令信号を、加算器13の他方の入力部に供給する。
電流値取得部18は、アンプ5からの電流フィードバックの信号を電流値として所定のサンプリング周期T(例えば、T=10ミリ秒)で取得し、電流フィードバック値としてサンプリングデータ記憶部20に記憶させる。速度値取得部19は、検出器5からの速度フィードバックの信号を速度値として所定のサンプリング周期T(例えば、T=10ミリ秒)で取得し、速度フィードバック値としてサンプリングデータ記憶部20に記憶させる。
加速度値取得部21は、サンプリングデータ記憶部20に記憶された速度フィードバック値から加速度値を計算し、計算した加速度値をサンプリングデータ記憶部20に記憶させる。本実施の形態では、加速度値取得部21は、今回のサンプリングで取得した速度フィードバック値v(n)と前回のサンプリングで取得した速度フィードバック値v(n−1)との差分から加速度値a=(V(n)−v(vn−1))/Tを計算する。
既知データ記憶部22には、永久磁石34a,34b,34c,34dに不可逆減磁が発生したか否かを検出するための基準となる少なくとも一つの減磁レベルと、永久磁石同期電動機3に関連する予め設定されたトルク定数、すなわち、永久磁石同期電動機3の実際のトルク定数又は被駆動体4を取り付けた永久磁石同期電動機3の実際のトルク定数と、永久磁石同期電動機3に関連する予め設定されたイナーシャ、すなわち、永久磁石同期電動機3の実際のイナーシャ又は永久磁石同期電動機3の実際のイナーシャと被駆動体4の実際のイナーシャとの和に相当するイナーシャが記憶されている。
本実施の形態では、既知データ記憶部22には、減磁レベル1と、減磁レベル1より低い減磁レベル2と、被駆動体4を取り付けた永久磁石同期電動機3の実際のトルク定数Ktと、永久磁石同期電動機3の実際のイナーシャと被駆動体4の実際のイナーシャとの和に相当するイナーシャJが記憶されている。
推定トルク定数計算部23は、正弦波状指令信号生成部17によって生成された正弦波状指令波形の数周期分(例えば、20周期分)について、サンプリングデータ記憶部20に記憶された電流フィードバック値の最大値及び最小値を抽出する。すなわち、正弦波状指令信号に応じてトルク指令信号値を周期変動させることによって、正弦波指令信号の周期ごとに電流フィードバック値に最大ピーク及び最小ピークが生じるので、推定トルク定数計算部23は、最大ピークの値及び最小ピークの値を抽出する。
電流フィードバック値の最大値及び最小値の抽出後、推定トルク計算部23は、電流フィードバック値の最大値の平均値である平均Imax及び電流フィードバック値の最小値の平均値である平均Iminを求める。そして、推定トルク計算部23は、電流フィードバック値の最大値の絶対値及び電流フィードバック信号の最小値の絶対値の平均をとった平均電流Iを電流代表値として求める。したがって、平均電流Iは、(|平均Imax|+|平均Imin|)/2となる。
同様に、推定トルク定数計算部23は、正弦波状指令信号生成部17によって生成された正弦波状指令波形の数周期分(例えば、20周期分)について、サンプリングデータ記憶部20に記憶された加速度値の最大値及び最小値を抽出する。すなわち、正弦波状指令信号に応じてトルク指令信号値を周期変動させることによって、正弦波指令信号の周期ごとに加速度値に最大ピーク及び最小ピークが生じるので、推定トルク定数計算部23は、最大ピークの値及び最小ピークの値を抽出する。
加速度値の最大値及び最小値の抽出後、推定トルク計算部23は、加速度値の最大値の平均値である平均Amax及び加速度値の最小値の平均値である平均Aminを求める。そして、推定トルク計算部23は、加速度値の最大値の絶対値及び加速度信号の最小値の絶対値の平均をとった平均加速度aを加速度代表値として求める。したがって、平均加速度aは、(|平均Amax|+|平均Amin|)/2となる。
なお、正弦波状指令信号に応じた電流フィードバック値及び加速度値を抽出するので、速度制御部12から出力されるトルク指令信号がゼロでない場合には、推定トルク計算部23は、その影響分を補正する。
平均電流I及び平均加速度aを求めた後、推定トルク計算部23は、推定トルク定数Ksを、Ks=J・a/Iの式に従って求める。その後、減磁検出部24は、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分を求め、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より大きいか否か及び推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル2より大きいか否かを判断する。
推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より大きい場合、減磁検出部24は、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より大きい旨の情報を比較結果として上位制御装置2に供給し、上位制御装置2は、永久磁石同期電動機3の動作を制限する。本実施の形態では、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より大きい場合、上位制御装置2は、アンプ15の電源をオフにし、永久磁石同期電動機3の動作を停止させる。
推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より小さいが減磁レベル2より大きい場合、減磁検出部24は、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より小さいが減磁レベル2より大きい旨の情報を比較結果として上位制御装置2に供給し、上位制御装置2は、アラームを生成する。本実施の形態では、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より小さいが減磁レベル2より大きい場合、上位制御装置2は、ランプ6を点灯させる。
図2は、本発明の第1の実施の形態の制御装置の動作のフローチャートである。このフローチャートは、上位制御装置2からの減磁検出処理の起動指令信号を制御装置1が受信した後に実行される。
ステップS1において、正弦波状指令信号生成部17は、正弦波状指令信号を生成する。次に、ステップS2において、電流値取得部18が電流フィードバックの信号を電流値として取得するとともに、速度値取得部19が速度フィードバックの信号を速度値として取得する。
次に、ステップS3において、推定トルク計算部23は、指定された周期Tが経過したか否か判断する。指定された周期Tが経過していない場合、ステップS2に戻る。それに対し、指定された周期Tが経過した場合、ステップS4において、推定トルク計算部23は、正弦波状指令信号の複数周期としての周期Tに亘る同一の動作状態(例えば、被駆動体4の円弧運動)での複数の電流値と複数の加速度値から取得した電流代表値としての平均電流I及び加速度代表値としての平均加速度aを取得する。
次に、ステップS5において、推定トルク定数計算部23は、推定トルク定数Ksを、Ks=J・a/Iの式に従って求める。次に、ステップS6において、減磁検出部24は、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より大きいか否かを判断する。
推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より大きい場合、ステップS7において、減磁検出部24は、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より大きい旨の情報を比較結果として上位制御装置2に供給し、上位制御装置2は、アンプ15の電源をオフにし、永久磁石同期電動機3の動作を停止させ、処理を終了する。
推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1以下である場合、ステップS8において、減磁検出部24は、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル2より大きいか否かを判断する。推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル2より大きい場合、ステップS9において、減磁検出部24は、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より小さいが減磁レベル2より大きい旨の情報を比較結果として上位制御装置2に供給し、上位制御装置2は、ランプ6を点灯させ、処理を終了する。なお、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル2以下である場合、そのまま処理を終了する。
本実施の形態によれば、永久磁石同期電動機3は、推定トルク定数計算時に正弦波状指令信号に応じた周期動作を短時間行うことになるので、推定トルク定数計算時の永久磁石同期電動機3の動作範囲を小さくすることができる。このように永久磁石同期電動機3の動作範囲を小さくすることができるので、ロータ32を1回以上回転させる必要がなくなる。したがって、円弧動作のように駆動軸31の動作範囲が制限された場合でも磁石34a,34b,34c,34dの不可逆減磁を適切に検出することができる。
また、複数周期に亘る電流フィードバックの信号及び速度フィードバックの信号を用いるので、複数周期間での平均化によってノイズの影響を軽減することができる。さらに、複数の減磁レベルを設定することによって、減磁レベルに応じた対策を講じることができるので、安全性が向上する。
図3は、本発明の第2の実施の形態の制御装置を有するシステムのブロック図である。図3において、制御装置1’は、図1の制御装置1の構成要素の他に、摩擦計算部25と、補正電流値生成部26と、オフセット成分除去部27と、を更に備える。
摩擦計算部25は、速度値取得部19で取得した速度値又は速度の極性に応じた摩擦(粘性摩擦及びクーロン摩擦)を計算する。補正電流値生成部26は、摩擦計算部25で計算した摩擦に応じて、電流値取得部18で取得した電流値を補正し、補正電流値を生成する。オフセット成分除去部27は、補正電流値生成部26で生成した補正電流値のオフセット成分を除去する。なお、オフセット成分除去部27は、例えば、ハイパスフィルタによって構成される。
なお、摩擦計算部25による摩擦の計算、補正電流値生成部26による補正電流値の生成及びオフセット成分除去部27による補正電流値のオフセット成分の除去は、図2のフローチャートのステップS4で行われる。
永久磁石同期電動機3に重力等の一定の力が加わる場合、永久磁石同期電動機3に流れる電流値にオフセット成分が生じるが、本実施の形態によれば、電流値のオフセット成分をオフセット成分除去部27で除去することによって、推定トルク定数計算部23による推定トルク定数Ksの計算精度が向上する。また、本実施の形態によれば、摩擦計算部25で計算した摩擦に応じて、電流値取得部18で取得した電流値を補正しているので、推定トルク定数計算部23による推定トルク定数Ksの計算精度が更に向上する。
図4は、本発明の第3の実施の形態の制御装置を有するシステムのブロック図である。図4において、制御装置1”は、図1の制御装置1の構成要素の他に、減少率計算及び速度ゲイン変更部28を更に備える。
減少率計算及び速度ゲイン変更部28は、減少率σをσ=Ks/Ktの式に従って計算し、減少率σに基づいて永久磁石同期電動機3の速度ゲインを変更する。例えば、減少率計算及び速度ゲイン変更部28は、速度積分ゲインK1及び速度比例ゲインK2を、K1=K1/σおよびK2=K2/σの式に従ってそれぞれ変更する。
なお、減少率計算及び速度ゲイン変更部28による減少率σの計算及び速度ゲインの変更は、図2のフローチャートのステップS9で行われる。
本実施の形態によれば、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が比較的小さい場合、例えば、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より小さいが減磁レベル2より大きい場合、速度ゲインを変更することによって、永久磁石同期電動機3の動作を安定化することができる。速度ゲインは実際のトルク定数Ktに反比例するので、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が比較的小さい場合、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分に反比例するように速度ゲインを大きくすることによって、永久磁石同期電動機3の動作を安定化することができる。
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。例えば、上記実施の形態において、永久磁石同期電動機3として、ロータ32に永久磁石34a,34b,34c,34dが設けられた回転型サーボモータを用いた場合について説明したが、ステータに永久磁石が設けられた回転型サーボモータ、ステータとスライダのうちのいずれか一方に永久磁石が設けられたリニアサーボモータ、ステータとバイブレータのうちのいずれか一方に永久磁石が設けられた振動型サーボモータ等を、永久磁石同期電動機3として用いることができる。
また、上記実施の形態において、正弦波状指令信号をトルク指令信号に加算する場合について説明したが、正弦波状指令信号を、トルク指令信号に加算する代わりに位置指令信号又は速度指令信号に加算することができる。なお、永久磁石同期電動機3を含めた被駆動体の剛性が高い場合には、正弦波状指令信号をトルク指令信号に加算するのが好ましく、この場合トルク指令信号の周波数は高くできる。周波数を高くできると大きな加速度が得られるので精度が向上し、またロータの回転角度が小さくでき、さらに推定時間が短くできる。一方、剛性が低い場合は、バックラッシやばね等のロストモーションの影響で、推定精度が悪化する。そこで信号周波数を低くする必要があるが、信号周波数を低くすると速度制御、位置制御の影響で十分な加速が得られなくなる。この場合、位置指令信号又は速度指令信号に加算するのが好ましい。
また、上記実施の形態において、正弦波状指令信号の周期ごとの電流フィードバック値の最大値の絶対値及び電流フィードバック信号の最小値の絶対値を複数周期間で平均化した平均電流Iを電流代表値として求めるとともに、周期ごとの加速度値の最大値の絶対値及び加速度信号の最小値の絶対値を複数周期間で平均化した平均加速度aを加速度代表値として求める場合について説明したが、電流代表値及び加速度代表値は、これらに限定されない。例えば、正弦波状指令信号の複数周期間に亘る電流フィードバック値の絶対値を積算したものを電流代表値として求めるとともに、正弦波状指令信号の複数周期間に亘る加速度フィードバック値の絶対値を積算したものを加速度代表値として求めることもできる。
さらに、アラームを生成するためにランプ6を用いる場合について説明したが、アラームを生成するために液晶ディスプレイ(LED)、ブザー等を用いることもできる。
1,1’,1” 制御装置
2 上位制御装置
3 磁石同期電動機
4 被駆動体
5 検出器
6 ランプ
11 位置制御部
12 速度制御部
13 加算器
14 電流制御部
15 アンプ
16 正弦波状指令信号周波数設定部
17 正弦波状指令信号生成部
18 電流値取得部
19 速度値取得部
20 サンプリングデータ記憶部
21 加速度取得部
22 既知データ記憶部
23 推定トルク定数計算部
24 減磁検出部
25 摩擦計算部
26 補正電流値生成部
27 オフセット成分除去部
28 減少率計算及び速度ゲイン変更部
31 回転軸
32 ロータ
33 ステータ
34a,34b,34c,34d 永久磁石
35u,35v,35w コイル
本発明は、工作機械等においてワークや工具のような被駆動体を動作させる永久磁石同期電動機の永久磁石の不可逆減磁が発生したか否かを検出する制御装置に関する。
従来、ステータとロータのうちのいずれか一方に永久磁石が設けられた回転型サーボモータ、ステータとスライダのうちのいずれか一方に永久磁石が設けられたリニアサーボモータ、ステータとバイブレータのうちのいずれか一方に永久磁石が設けられた振動型サーボモータ等の永久磁石同期電動機が、種々の分野で広く用いられている。
永久磁石同期電動機において、永久磁石同期電動機の永久磁石の異常な温度上昇、永久磁石同期電動機の巻線に流れる異常な駆動電流等が原因で永久磁石同期電動機の永久磁石に不可逆減磁が発生することがある。
この場合、永久磁石電動機が所定のトルクを生成することができないので、永久磁石動機電動機によって動作する被駆動体の実際の移動軌跡は、CNC(数値制御装置)等の上位制御装置によって指令される被駆動体の移動軌跡から外れ、軌跡精度の悪化や、場合によっては被駆動体の破損を引き起こす可能性がある。
したがって、永久磁石電動機の永久磁石の不可逆減磁が原因で引き起こされる加減速能力の低下による軌跡精度の悪化や、場合によっては被駆動体の破損を回避するためには、永久磁石同期電動機の永久磁石の不可逆減磁が発生したか否かを検出する必要がある。
従来、永久磁石同期電動機の永久磁石の不可逆減磁を検出するために、永久磁石動機電動機の被駆動体の算出イナーシャと、永久磁石電動機に固有の既定イナーシャとを、永久磁石電動機のロータの回転角度に基づいて検出された磁極位置ごとに比較して、減磁が生じている永久磁石の位置を特定する制御装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
特許第3857425号公報
しかしながら、従来の制御装置では、算出イナーシャと既定イナーシャとを永久磁石の位置ごとに比較するので、永久磁石電動機のロータを少なくとも1電気角以上回転させる必要がある。したがって、工作機械等において永久磁石同期電動機を用いて被駆動物を円弧運動させる場合のように、永久磁石同期電動機の駆動軸の動作範囲が制限され、永久磁石電動機のロータを1電気角以上回転させることができないときには、永久磁石同期電動機の永久磁石の不可逆減磁の位置を特定することができない。さらに従来の制御装置では、イナーシャを推定することで間接的に減磁を検出している。この場合、トルク定数と検出電流の積を、検出加速度で割ることで算出するが、一般に加速度は速度の差分から求めるためノイズが入りやすく、除算による誤差を含みやすい。よって、加速度が小さい場合には演算精度が大きく悪化する場合があった。
本発明の目的は、永久磁石同期電動機の駆動軸の動作範囲が制限された場合でも永久磁石同期電動機の永久磁石の不可逆減磁が発生したか否かを適切に検出することができる制御装置を提供することである。さらに、トルク定数を推定することで、減磁を直接的に検出する。この場合、イナーシャと検出加速度の積を、検出電流で割って求めるので、除算による誤差を含みにくいので精度的に優れた制御装置を提供できる。
本発明による制御装置は、永久磁石同期電動機への位置指令信号、速度指令信号及びトルク指令信号のうちのいずれか一つに対する正弦波状指令信号を生成する正弦波状指令信号生成部と、前記永久磁石同期電動機に流れる電流値を取得する電流値取得部と、前記永久磁石同期電動機の加速度値を取得する加速度値取得部と、前記正弦波状指令信号の複数周期に亘る同一の動作状態での複数の前記電流値と複数の前記加速度値から取得した電流代表値及び加速度代表値と、前記永久磁石同期電動機に関連する予め設定されたイナーシャとから、前記永久磁石同期電動機に関連する推定トルク定数を計算する推定トルク定数計算部と、前記推定トルク定数と前記永久磁石同期電動機に関連する予め設定されたトルク定数との差分に基づいて、前記永久磁石同期電動機の永久磁石に不可逆減磁が発生したか否かを検出する減磁検出部と、を備える。
好適には、本発明による制御装置は、前記永久磁石同期電動機の速度値又は速度の極性に応じた摩擦を計算する摩擦計算部と、前記摩擦に応じて前記電流値を補正した補正電流値を生成する補正電流値生成部と、を更に備える。
好適には、本発明による制御装置は、前記永久磁石同期電動機に流れる電流値のオフセット成分を除去するオフセット成分除去部を更に備える。
好適には、前記減磁検出部は、前記差分を複数の減磁レベルと比較し、前記永久磁石同期電動機の永久磁石に不可逆減磁が発生した場合にアラームを生成し又は前記永久磁石同期電動機の動作を制限するために、前記差分と前記複数の減磁レベルとの比較結果を出力する。
好適には、本発明による制御装置は、前記推定トルク定数及び前記予め設定されたトルク定数に基づいて前記永久磁石同期電動機のトルク定数の減少率を計算し、前記減少率に基づいて前記永久磁石同期電動機の速度ゲインを変更する減少率計算及び速度ゲイン変更部を更に備える
本発明によれば、正弦波状指令信号の複数周期に亘る同一の動作状態での複数の電流値と複数の加速度値から取得した電流代表値及び加速度代表値と、永久磁石同期電動機に関連する予め設定されたイナーシャとから、永久磁石同期電動機に関連する推定トルク定数を計算し、推定トルク定数と永久磁石同期電動機に関連する予め設定されたトルク定数との差分に基づいて、永久磁石同期電動機の永久磁石に不可逆減磁が発生したか否かを検出する。これによって、永久磁石同期電動機は、推定トルク定数計算時に正弦波状指令信号に応じた周期動作を短時間行うことになるので、推定トルク定数計算時の永久磁石同期電動機の動作範囲を小さくすることができる。このように永久磁石同期電動機の動作範囲を小さくすることができるので、永久磁石電動機のロータを1電気角以上回転させる必要がなくなる。したがって、永久磁石同期電動機の駆動軸の動作範囲が制限された場合でも永久磁石同期電動機のロータの磁石の不可逆減磁を適切に検出することができる。
本発明の第1の実施の形態の制御装置を有するシステムのブロック図である。 本発明の第1の実施の形態の制御装置の動作のフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態の制御装置を有するシステムのブロック図である。 本発明の第3の実施の形態の制御装置を有するシステムのブロック図である。
本発明による制御装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、図面中、同一構成要素には同一符号を付す。
図1は、本発明の第1の実施の形態の制御装置を有するシステムのブロック図である。図1において、制御装置1は、制御装置1に接続されたCNC(数値制御装置)等の上位制御装置2からの作業工程に応じた指令信号に基づいて、永久磁石同期電動機3の位置、速度、トルク等を制御する。制御装置1の制御により、永久磁石同期電動機3に接続されたテーブル、アーム、それらに着脱されるワーク等の被駆動体4が所定の運動(例えば、円弧運動)を行うようになる。
制御装置1が永久磁石同期電動機3の位置、速度、トルク等を制御するために、永久磁石同期電動機3の速度(回転速度)を検出し、検出した速度を制御装置1に供給する検出器5を設ける。検出器5を、例えば、永久磁石同期電動機3の速度に比例したパルスを生成するエンコーダとする。
永久磁石同期電動機3は、例えば、工作機械においてワークを保持するテーブルの位置や姿勢を変えるためのもの、ロボットのアームを回転操作させるもの等であってもよい。本実施の形態では、永久磁石同期電動機3を、検出器5が取り付けられた回転軸31を有するロータ32と、ロータ32を取り囲むように配置されたステータ33とを有する回転型サーボモータとする。
ロータ32は、90°間隔で配置された4個の永久磁石34a,34b,34c,34dを有する。永久磁石34a,34b,34c,34dは、ステータ33側の端部がロータ32の回転方向に対して互いに90°ずつ離れるとともに、永久磁石34a,34b,34c,34dの外側の端部が交互にN極、S極、N極及びS極となるように配置される。
ステータ33は、120°間隔で配置され、U相、V相及びW相の交流電流がそれぞれ供給される3個のコイル35u,35v,35wを有する。したがって、永久磁石同期電動機3は、3相同期電動機として機能する。
本実施の形態によれば、制御装置1は、後に詳細に説明するように、永久磁石34a,34b,34c,34dに不可逆減磁が発生したか否かを検出し、不可逆減磁が発生したか否かについての検出結果を上位制御装置2に出力し、上位制御装置2は、永久磁石34a,34b,34c,34dに不可逆減磁が発生した場合にアラームを生成し又は永久磁石同期電動機3の動作を制限する。また、本実施の形態では、後に詳細に説明するように、上位制御装置2は、アラームを生成するためにLED等のランプ6を点灯させ、永久磁石同期電動機3の動作を停止させる。
制御装置1は、位置制御部11と、速度制御部12と、加算器13と、電流制御部14と、アンプ15と、正弦波指令信号周波数設定部16と、正弦波指令信号生成部17と、電流値取得部18と、速度値取得部19と、サンプリングデータ記憶部20と、加速度取得部21と、既知データ記憶部22と、推定トルク23と、減磁検出部24と、を備える。
なお、制御装置1の各部及び上位制御装置2は、便宜上別個の構成として示しているが、別個のハードウェアに対応するものでなくてもよく、各部間の明確な区分を持たないハードウェアによって実現されるものであってもソフトウェアによって実現されるものであってもよい。なお、ソフトウェアによって実現される場合、各部を、別個のソフトウェア部分として構成することもできるが、各部間の明確な区分を持たないソフトウェアによって実現されるものであってもよい。
位置制御部11は、設定された位置ゲインに基づいて、上位制御装置2からの位置指令信号と、検出器5からの速度のフィードバック信号を積分することによって生成される位置のフィードバック信号とに応じた動作を行う。速度制御部12は、設定された速度ゲインに基づいて、位置制御部11からの速度指令信号と、検出器5からの速度のフィードバック信号とに応じた動作を行う。加算器13は、一方の入力部に入力される速度制御部12からのトルク指令信号と、他方の入力部に入力される後述する正弦波状指令信号とを加算し、加算器13の出力信号を電流制御部14に供給する。
電流制御部14は、加算器13の出力信号と、アンプ15からの電流のフィードバック信号とに応じた動作を行う。アンプ15は、アンプ15に入力される電流制御部14の出力信号に応じて、永久磁石同期電動機3への供給電力を制御する。本実施の形態において、電流のフィードバック信号とは、3相同期電動機として機能する永久磁石同期電動機3の3相電流フィードバックをサンプリングし、検出器5によって取得される位相情報を用いて、3相交流電流値から2相交流電流値にdq変換した結果の有効電流であるq相電流フィードバックを意味する。
正弦波状指令信号周波数設定部16は、正弦波状指令信号生成部17が生成する正弦波状指令信号の周波数を所定の周波数(例えば、10Hz)に設定する。正弦波状指令信号生成部17は、正弦波状指令信号周波数設定部16によって設定された周波数を有する正弦波状指令信号を、加算器13の他方の入力部に供給する。
電流値取得部18は、アンプ5からの電流フィードバックの信号を電流値として所定のサンプリング周期T(例えば、T=10ミリ秒)で取得し、電流フィードバック値としてサンプリングデータ記憶部20に記憶させる。速度値取得部19は、検出器5からの速度フィードバックの信号を速度値として所定のサンプリング周期T(例えば、T=10ミリ秒)で取得し、速度フィードバック値としてサンプリングデータ記憶部20に記憶させる。
加速度値取得部21は、サンプリングデータ記憶部20に記憶された速度フィードバック値から加速度値を計算し、計算した加速度値をサンプリングデータ記憶部20に記憶させる。本実施の形態では、加速度値取得部21は、今回のサンプリングで取得した速度フィードバック値v(n)と前回のサンプリングで取得した速度フィードバック値v(n−1)との差分から加速度値a=(V(n)−v(vn−1))/Tを計算する。
既知データ記憶部22には、永久磁石34a,34b,34c,34dに不可逆減磁が発生したか否かを検出するための基準となる少なくとも一つの減磁レベルと、永久磁石同期電動機3に関連する予め設定されたトルク定数、すなわち、永久磁石同期電動機3の実際のトルク定数又は被駆動体4を取り付けた永久磁石同期電動機3の実際のトルク定数と、永久磁石同期電動機3に関連する予め設定されたイナーシャ、すなわち、永久磁石同期電動機3の実際のイナーシャ又は永久磁石同期電動機3の実際のイナーシャと被駆動体4の実際のイナーシャとの和に相当するイナーシャが記憶されている。
本実施の形態では、既知データ記憶部22には、減磁レベル1と、減磁レベル1より低い減磁レベル2と、被駆動体4を取り付けた永久磁石同期電動機3の実際のトルク定数Ktと、永久磁石同期電動機3の実際のイナーシャと被駆動体4の実際のイナーシャとの和に相当するイナーシャJが記憶されている。
推定トルク定数計算部23は、正弦波状指令信号生成部17によって生成された正弦波状指令波形の数周期分(例えば、20周期分)について、サンプリングデータ記憶部20に記憶された電流フィードバック値の最大値及び最小値を抽出する。すなわち、正弦波状指令信号に応じてトルク指令信号値を周期変動させることによって、正弦波指令信号の周期ごとに電流フィードバック値に最大ピーク及び最小ピークが生じるので、推定トルク定数計算部23は、最大ピークの値及び最小ピークの値を抽出する。
電流フィードバック値の最大値及び最小値の抽出後、推定トルク計算部23は、電流フィードバック値の最大値の平均値である平均Imax及び電流フィードバック値の最小値の平均値である平均Iminを求める。そして、推定トルク計算部23は、電流フィードバック値の最大値の絶対値及び電流フィードバック信号の最小値の絶対値の平均をとった平均電流Iを電流代表値として求める。したがって、平均電流Iは、(|平均Imax|+|平均Imin|)/2となる。
同様に、推定トルク定数計算部23は、正弦波状指令信号生成部17によって生成された正弦波状指令波形の数周期分(例えば、20周期分)について、サンプリングデータ記憶部20に記憶された加速度値の最大値及び最小値を抽出する。すなわち、正弦波状指令信号に応じてトルク指令信号値を周期変動させることによって、正弦波指令信号の周期ごとに加速度値に最大ピーク及び最小ピークが生じるので、推定トルク定数計算部23は、最大ピークの値及び最小ピークの値を抽出する。
加速度値の最大値及び最小値の抽出後、推定トルク計算部23は、加速度値の最大値の平均値である平均Amax及び加速度値の最小値の平均値である平均Aminを求める。そして、推定トルク計算部23は、加速度値の最大値の絶対値及び加速度信号の最小値の絶対値の平均をとった平均加速度aを加速度代表値として求める。したがって、平均加速度aは、(|平均Amax|+|平均Amin|)/2となる。
なお、正弦波状指令信号に応じた電流フィードバック値及び加速度値を抽出するので、速度制御部12から出力されるトルク指令信号がゼロでない場合には、推定トルク計算部23は、その影響分を補正する。
平均電流I及び平均加速度aを求めた後、推定トルク計算部23は、推定トルク定数Ksを、Ks=J・a/Iの式に従って求める。その後、減磁検出部24は、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分を求め、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より大きいか否か及び推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル2より大きいか否かを判断する。
推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より大きい場合、減磁検出部24は、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より大きい旨の情報を比較結果として上位制御装置2に供給し、上位制御装置2は、永久磁石同期電動機3の動作を制限する。本実施の形態では、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より大きい場合、上位制御装置2は、アンプ15の電源をオフにし、永久磁石同期電動機3の動作を停止させる。
推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より小さいが減磁レベル2より大きい場合、減磁検出部24は、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より小さいが減磁レベル2より大きい旨の情報を比較結果として上位制御装置2に供給し、上位制御装置2は、アラームを生成する。本実施の形態では、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より小さいが減磁レベル2より大きい場合、上位制御装置2は、ランプ6を点灯させる。
図2は、本発明の第1の実施の形態の制御装置の動作のフローチャートである。このフローチャートは、上位制御装置2からの減磁検出処理の起動指令信号を制御装置1が受信した後に実行される。
ステップS1において、正弦波状指令信号生成部17は、正弦波状指令信号を生成する。次に、ステップS2において、電流値取得部18が電流フィードバックの信号を電流値として取得するとともに、速度値取得部19が速度フィードバックの信号を速度値として取得する。
次に、ステップS3において、推定トルク計算部23は、指定された周期Tが経過したか否か判断する。指定された周期Tが経過していない場合、ステップS2に戻る。それに対し、指定された周期Tが経過した場合、ステップS4において、推定トルク計算部23は、正弦波状指令信号の複数周期としての周期Tに亘る同一の動作状態(例えば、被駆動体4の円弧運動)での複数の電流値と複数の加速度値から取得した電流代表値としての平均電流I及び加速度代表値としての平均加速度aを取得する。
次に、ステップS5において、推定トルク定数計算部23は、推定トルク定数Ksを、Ks=J・a/Iの式に従って求める。次に、ステップS6において、減磁検出部24は、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より大きいか否かを判断する。
推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より大きい場合、ステップS7において、減磁検出部24は、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より大きい旨の情報を比較結果として上位制御装置2に供給し、上位制御装置2は、アンプ15の電源をオフにし、永久磁石同期電動機3の動作を停止させ、処理を終了する。
推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1以下である場合、ステップS8において、減磁検出部24は、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル2より大きいか否かを判断する。推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル2より大きい場合、ステップS9において、減磁検出部24は、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より小さいが減磁レベル2より大きい旨の情報を比較結果として上位制御装置2に供給し、上位制御装置2は、ランプ6を点灯させ、処理を終了する。なお、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル2以下である場合、そのまま処理を終了する。
本実施の形態によれば、永久磁石同期電動機3は、推定トルク定数計算時に正弦波状指令信号に応じた周期動作を短時間行うことになるので、推定トルク定数計算時の永久磁石同期電動機3の動作範囲を小さくすることができる。このように永久磁石同期電動機3の動作範囲を小さくすることができるので、ロータ32を1回以上回転させる必要がなくなる。したがって、円弧動作のように駆動軸31の動作範囲が制限された場合でも磁石34a,34b,34c,34dの不可逆減磁を適切に検出することができる。
また、複数周期に亘る電流フィードバックの信号及び速度フィードバックの信号を用いるので、複数周期間での平均化によってノイズの影響を軽減することができる。さらに、複数の減磁レベルを設定することによって、減磁レベルに応じた対策を講じることができるので、安全性が向上する。
図3は、本発明の第2の実施の形態の制御装置を有するシステムのブロック図である。図3において、制御装置1’は、図1の制御装置1の構成要素の他に、摩擦計算部25と、補正電流値生成部26と、オフセット成分除去部27と、を更に備える。
摩擦計算部25は、速度値取得部19で取得した速度値又は速度の極性に応じた摩擦(粘性摩擦及びクーロン摩擦)を計算する。補正電流値生成部26は、摩擦計算部25で計算した摩擦に応じて、電流値取得部18で取得した電流値を補正し、補正電流値を生成する。オフセット成分除去部27は、補正電流値生成部26で生成した補正電流値のオフセット成分を除去する。なお、オフセット成分除去部27は、例えば、ハイパスフィルタによって構成される。
なお、摩擦計算部25による摩擦の計算、補正電流値生成部26による補正電流値の生成及びオフセット成分除去部27による補正電流値のオフセット成分の除去は、図2のフローチャートのステップS4で行われる。
永久磁石同期電動機3に重力等の一定の力が加わる場合、永久磁石同期電動機3に流れる電流値にオフセット成分が生じるが、本実施の形態によれば、電流値のオフセット成分をオフセット成分除去部27で除去することによって、推定トルク定数計算部23による推定トルク定数Ksの計算精度が向上する。また、本実施の形態によれば、摩擦計算部25で計算した摩擦に応じて、電流値取得部18で取得した電流値を補正しているので、推定トルク定数計算部23による推定トルク定数Ksの計算精度が更に向上する。
図4は、本発明の第3の実施の形態の制御装置を有するシステムのブロック図である。図4において、制御装置1”は、図1の制御装置1の構成要素の他に、減少率計算及び速度ゲイン変更部28を更に備える。
減少率計算及び速度ゲイン変更部28は、減少率σをσ=Ks/Ktの式に従って計算し、減少率σに基づいて永久磁石同期電動機3の速度ゲインを変更する。例えば、減少率計算及び速度ゲイン変更部28は、速度積分ゲインK1及び速度比例ゲインK2を、K1=K1/σおよびK2=K2/σの式に従ってそれぞれ変更する。
なお、減少率計算及び速度ゲイン変更部28による減少率σの計算及び速度ゲインの変更は、図2のフローチャートのステップS9で行われる。
本実施の形態によれば、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が比較的小さい場合、例えば、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が減磁レベル1より小さいが減磁レベル2より大きい場合、速度ゲインを変更することによって、永久磁石同期電動機3の動作を安定化することができる。速度ゲインは実際のトルク定数Ktに反比例するので、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分が比較的小さい場合、推定トルク定数Ksと実際のトルク定数Ktとの差分に反比例するように速度ゲインを大きくすることによって、永久磁石同期電動機3の動作を安定化することができる。
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。例えば、上記実施の形態において、永久磁石同期電動機3として、ロータ32に永久磁石34a,34b,34c,34dが設けられた回転型サーボモータを用いた場合について説明したが、ステータに永久磁石が設けられた回転型サーボモータ、ステータとスライダのうちのいずれか一方に永久磁石が設けられたリニアサーボモータ、ステータとバイブレータのうちのいずれか一方に永久磁石が設けられた振動型サーボモータ等を、永久磁石同期電動機3として用いることができる。
また、上記実施の形態において、正弦波状指令信号をトルク指令信号に加算する場合について説明したが、正弦波状指令信号を、トルク指令信号に加算する代わりに位置指令信号又は速度指令信号に加算することができる。なお、永久磁石同期電動機3を含めた被駆動体の剛性が高い場合には、正弦波状指令信号をトルク指令信号に加算するのが好ましく、この場合トルク指令信号の周波数は高くできる。周波数を高くできると大きな加速度が得られるので精度が向上し、またロータの回転角度が小さくでき、さらに推定時間が短くできる。一方、剛性が低い場合は、バックラッシやばね等のロストモーションの影響で、推定精度が悪化する。そこで信号周波数を低くする必要があるが、信号周波数を低くすると速度制御、位置制御の影響で十分な加速が得られなくなる。この場合、位置指令信号又は速度指令信号に加算するのが好ましい。
また、上記実施の形態において、正弦波状指令信号の周期ごとの電流フィードバック値の最大値の絶対値及び電流フィードバック信号の最小値の絶対値を複数周期間で平均化した平均電流Iを電流代表値として求めるとともに、周期ごとの加速度値の最大値の絶対値及び加速度信号の最小値の絶対値を複数周期間で平均化した平均加速度aを加速度代表値として求める場合について説明したが、電流代表値及び加速度代表値は、これらに限定されない。例えば、正弦波状指令信号の複数周期間に亘る電流フィードバック値の絶対値を積算したものを電流代表値として求めるとともに、正弦波状指令信号の複数周期間に亘る加速度フィードバック値の絶対値を積算したものを加速度代表値として求めることもできる。
さらに、アラームを生成するためにランプ6を用いる場合について説明したが、アラームを生成するために液晶ディスプレイ(LED)、ブザー等を用いることもできる。
1,1’,1” 制御装置
2 上位制御装置
3 磁石同期電動機
4 被駆動体
5 検出器
6 ランプ
11 位置制御部
12 速度制御部
13 加算器
14 電流制御部
15 アンプ
16 正弦波状指令信号周波数設定部
17 正弦波状指令信号生成部
18 電流値取得部
19 速度値取得部
20 サンプリングデータ記憶部
21 加速度取得部
22 既知データ記憶部
23 推定トルク定数計算部
24 減磁検出部
25 摩擦計算部
26 補正電流値生成部
27 オフセット成分除去部
28 減少率計算及び速度ゲイン変更部
31 回転軸
32 ロータ
33 ステータ
34a,34b,34c,34d 永久磁石
35u,35v,35w コイル
この場合、永久磁石同期電動機が所定のトルクを生成することができないので、永久磁石同期電動機によって動作する被駆動体の実際の移動軌跡は、CNC(数値制御装置)等の上位制御装置によって指令される被駆動体の移動軌跡から外れ、軌跡精度の悪化や、場合によっては被駆動体の破損を引き起こす可能性がある。
したがって、永久磁石同期電動機の永久磁石の不可逆減磁が原因で引き起こされる加減速能力の低下による軌跡精度の悪化や、場合によっては被駆動体の破損を回避するためには、永久磁石同期電動機の永久磁石の不可逆減磁が発生したか否かを検出する必要がある。
従来、永久磁石同期電動機の永久磁石の不可逆減磁を検出するために、永久磁石同期電動機の被駆動体の算出イナーシャと、永久磁石同期電動機に固有の既定イナーシャとを、永久磁石同期電動機のロータの回転角度に基づいて検出された磁極位置ごとに比較して、減磁が生じている永久磁石の位置を特定する制御装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、従来の制御装置では、算出イナーシャと既定イナーシャとを永久磁石の位置ごとに比較するので、永久磁石同期電動機のロータを少なくとも1電気角以上回転させる必要がある。したがって、工作機械等において永久磁石同期電動機を用いて被駆動物を円弧運動させる場合のように、永久磁石同期電動機の駆動軸の動作範囲が制限され、永久磁石同期電動機のロータを1電気角以上回転させることができないときには、永久磁石同期電動機の永久磁石の不可逆減磁の位置を特定することができない。さらに従来の制御装置では、イナーシャを推定することで間接的に減磁を検出している。この場合、トルク定数と検出電流の積を、検出加速度で割ることで算出するが、一般に加速度は速度の差分から求めるためノイズが入りやすく、除算による誤差を含みやすい。よって、加速度が小さい場合には演算精度が大きく悪化する場合があった。
本発明による制御装置は、永久磁石同期電動機への位置指令信号、速度指令信号及びトルク指令信号のうちのいずれか一つに対する正弦波状指令信号を生成する正弦波状指令信号生成部と、前記永久磁石同期電動機に流れる電流値を取得する電流値取得部と、前記永久磁石同期電動機の加速度値を取得する加速度値取得部と、前記正弦波状指令信号の周期ごとの電流フィードバック値の最大値の絶対値及び電流フィードバック値の最小値の絶対値を複数周期間で平均化した平均電流並びに前記正弦波状指令信号の周期ごとの加速度値の最大値の絶対値及び加速度値の最小値の絶対値を複数周期間で平均化した平均加速度からなる第1の組と、前記正弦波状指令信号の複数周期間に亘る電流フィードバック値の絶対値を積算したもの及び前記正弦波状指令信号の複数周期間に亘る加速度フィードバック値の絶対値を積算したものからなる第2の組のうちのいずれか一方の組と、前記永久磁石同期電動機に関連する予め設定されたイナーシャとから、前記永久磁石同期電動機に関連する推定トルク定数を計算する推定トルク定数計算部と、前記推定トルク定数と前記永久磁石同期電動機に関連する予め設定されたトルク定数との差分に基づいて、前記永久磁石同期電動機の永久磁石に不可逆減磁が発生したか否かを検出する減磁検出部と、を備える。
本発明によれば、正弦波状指令信号の周期ごとの電流フィードバック値の最大値の絶対値及び電流フィードバック値の最小値の絶対値を複数周期間で平均化した平均電流並びに正弦波状指令信号の周期ごとの加速度値の最大値の絶対値及び加速度値の最小値の絶対値を複数周期間で平均化した平均加速度からなる第1の組と、正弦波状指令信号の複数周期間に亘る電流フィードバック値の絶対値を積算したもの及び正弦波状指令信号の複数周期間に亘る加速度フィードバック値の絶対値を積算したものからなる第2の組のうちのいずれか一方の組と、永久磁石同期電動機に関連する予め設定されたイナーシャとから、永久磁石同期電動機に関連する推定トルク定数を計算し、推定トルク定数と永久磁石同期電動機に関連する予め設定されたトルク定数との差分に基づいて、永久磁石同期電動機の永久磁石に不可逆減磁が発生したか否かを検出する。これによって、永久磁石同期電動機は、推定トルク定数計算時に正弦波状指令信号に応じた周期動作を短時間行うことになるので、推定トルク定数計算時の永久磁石同期電動機の動作範囲を小さくすることができる。このように永久磁石同期電動機の動作範囲を小さくすることができるので、永久磁石同期電動機のロータを1電気角以上回転させる必要がなくなる。したがって、永久磁石同期電動機の駆動軸の動作範囲が制限された場合でも永久磁石同期電動機のロータの磁石の不可逆減磁を適切に検出することができる。
制御装置1は、位置制御部11と、速度制御部12と、加算器13と、電流制御部14と、アンプ15と、正弦波指令信号周波数設定部16と、正弦波指令信号生成部17と、電流値取得部18と、速度値取得部19と、サンプリングデータ記憶部20と、加速度取得部21と、既知データ記憶部22と、推定トルク定数計算部23と、減磁検出部24と、を備える。
電流値取得部18は、アンプ15からの電流フィードバックの信号を電流値として所定のサンプリング周期T(例えば、T=10ミリ秒)で取得し、電流フィードバック値としてサンプリングデータ記憶部20に記憶させる。速度値取得部19は、検出器5からの速度フィードバックの信号を速度値として所定のサンプリング周期T(例えば、T=10ミリ秒)で取得し、速度フィードバック値としてサンプリングデータ記憶部20に記憶させる。
加速度値取得部21は、サンプリングデータ記憶部20に記憶された速度フィードバック値から加速度値を計算し、計算した加速度値をサンプリングデータ記憶部20に記憶させる。本実施の形態では、加速度値取得部21は、今回のサンプリングで取得した速度フィードバック値v(n)と前回のサンプリングで取得した速度フィードバック値v(n−1)との差分から加速度値a=(V(n)−v(n−1))/Tを計算する。
電流フィードバック値の最大値及び最小値の抽出後、推定トルク計算部23は、電流フィードバック値の最大値の平均値である平均Imax及び電流フィードバック値の最小値の平均値である平均Iminを求める。そして、推定トルク計算部23は、電流フィードバック値の最大値の絶対値及び電流フィードバックの最小値の絶対値の平均をとった平均電流Iを電流代表値として求める。したがって、平均電流Iは、(|平均Imax|+|平均Imin|)/2となる。
加速度値の最大値及び最小値の抽出後、推定トルク計算部23は、加速度値の最大値の平均値である平均Amax及び加速度値の最小値の平均値である平均Aminを求める。そして、推定トルク計算部23は、加速度値の最大値の絶対値及び加速度の最小値の絶対値の平均をとった平均加速度aを加速度代表値として求める。したがって、平均加速度aは、(|平均Amax|+|平均Amin|)/2となる。
また、上記実施の形態において、正弦波状指令信号の周期ごとの電流フィードバック値の最大値の絶対値及び電流フィードバックの最小値の絶対値を複数周期間で平均化した平均電流Iを電流代表値として求めるとともに、周期ごとの加速度値の最大値の絶対値及び加速度の最小値の絶対値を複数周期間で平均化した平均加速度aを加速度代表値として求める場合について説明したが、電流代表値及び加速度代表値は、これらに限定されない。例えば、正弦波状指令信号の複数周期間に亘る電流フィードバック値の絶対値を積算したものを電流代表値として求めるとともに、正弦波状指令信号の複数周期間に亘る加速度フィードバック値の絶対値を積算したものを加速度代表値として求めることもできる。

Claims (5)

  1. 永久磁石同期電動機への位置指令信号、速度指令信号及びトルク指令信号のうちのいずれか一つに対する正弦波状指令信号を生成する正弦波状指令信号生成部と、
    前記永久磁石同期電動機に流れる電流値を取得する電流値取得部と、
    前記永久磁石同期電動機の加速度値を取得する加速度値取得部と、
    前記正弦波状指令信号の複数周期に亘る同一の動作状態での複数の前記電流値と複数の前記加速度値から取得した電流代表値及び加速度代表値と、前記永久磁石同期電動機に関連する予め設定されたイナーシャとから、前記永久磁石同期電動機に関連する推定トルク定数を計算する推定トルク定数計算部と、
    前記推定トルク定数と前記永久磁石同期電動機に関連する予め設定されたトルク定数との差分に基づいて、前記永久磁石同期電動機の永久磁石に不可逆減磁が発生したか否かを検出する減磁検出部と、
    を備える制御装置。
  2. 前記永久磁石同期電動機の速度値又は速度の極性に応じた摩擦を計算する摩擦計算部と、
    前記摩擦に応じて前記電流値を補正した補正電流値を生成する補正電流値生成部と、
    を更に備える請求項1に記載の制御装置。
  3. 前記永久磁石同期電動機に流れる電流値のオフセット成分を除去するオフセット成分除去部を更に備える請求項1又は2に記載の制御装置。
  4. 前記減磁検出部は、前記差分を複数の減磁レベルと比較し、前記永久磁石同期電動機の永久磁石に不可逆減磁が発生した場合にアラームを生成し又は前記永久磁石同期電動機の動作を制限するために、前記差分と前記複数の減磁レベルとの比較結果を出力する請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の制御装置。
  5. 前記減磁検出部は、前記推定トルク定数及び前記予め設定されたトルク定数に基づいて前記永久磁石同期電動機のトルク定数の減少率を計算し、前記減少率に基づいて前記永久磁石同期電動機の速度ゲインを変更する減少率計算及び速度ゲイン変更部を有する請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の制御装置。
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